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特表2024-541462冷却のため及び/又は大気水採取のための多段吸着装置及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】冷却のため及び/又は大気水採取のための多段吸着装置及びその使用
(51)【国際特許分類】
   F25B 17/08 20060101AFI20241031BHJP
   F25B 39/02 20060101ALI20241031BHJP
   F25B 27/00 20060101ALI20241031BHJP
   E03B 3/28 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
F25B17/08 Z ZAB
F25B39/02 B
F25B27/00 L
E03B3/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024530449
(86)(22)【出願日】2021-12-02
(85)【翻訳文提出日】2024-07-17
(86)【国際出願番号】 IB2021061229
(87)【国際公開番号】W WO2023099945
(87)【国際公開日】2023-06-08
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524024018
【氏名又は名称】フレシェイプ ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】オン,チン リー
(72)【発明者】
【氏名】ルビ,マチュー
【テーマコード(参考)】
3L093
【Fターム(参考)】
3L093NN04
3L093PP14
3L093PP15
3L093PP19
(57)【要約】
多段吸着装置(10)が記載され、多段吸着装置(10)は、順番に配置された複数の吸着段(S1~S5)を備え、各吸着段(S1~S5)は、隣接する蒸気チャンバ(VC)に結合された吸着器(AB)を含み、後続の各吸着段(S2~S5)の吸着器(AB)は、熱伝達構造(HT)を介して、先行の吸着段(S1~S4)の蒸気チャンバ(VC)に熱的に結合される。吸着段(S1~S5)の最初の吸着段(S1)に加熱段(HS)が熱的に結合されて吸着器(AB)に熱エネルギーを選択的に供給する一方で、吸着段(S1~S5)の最後の吸着段(S5)に冷却段(CS)が熱的に結合されて蒸気チャンバ(VC)内の脱着蒸気を選択的に凝縮させる。吸着装置(10)は、冷却段(CS)と吸着器(AB)の各々とをそれぞれ通って冷却流体を選択的に循環させるための第1冷却セクション(CC1)及び第2冷却セクション(CC2)を有する冷却回路(CC)をさらに備える。脱着サイクル中、加熱段(HS)が作動されて吸着器(AB)内で蒸気脱着を引き起こし、その結果、脱着蒸気が各吸着器(AB)から隣接する蒸気チャンバ(VC)に流れ込み、冷却流体は、第1冷却セクション(CC1)を介して冷却段(CS)のみを循環する。その結果、脱着サイクル中、脱着蒸気が熱伝達構造(HT)の表面に沿って凝縮し、後続の吸着段(S2~S5)の吸着器(AB)に伝達される潜熱が放出される。吸着サイクル中、加熱段(HS)の作動が停止され、吸着器(AB)への蒸気吸着を可能にし、冷却流体は、第1冷却セクション(CC1)及び第2冷却セクション(CC2)を介して冷却段(CS)と吸着器(AB)の各々との両方を通って循環する。このような吸着装置(10)の使用は、特に、冷却及び/又は大気水採取(AWH)用途のために考慮される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多段吸着装置(10;AD1~AD4;AD、AD)であって、
順番に配置された複数の吸着段(S1~S5)であって、各吸着段(S1~S5)は、隣接する蒸気チャンバ(VC)に結合された吸着器(AB)を含み、後続の各吸着段(S2~S5)の前記吸着器(AB)は、熱伝達構造(HT)を介して先行する吸着段(S1~S4)の前記蒸気チャンバ(VC)に熱的に結合される、複数の吸着段(S1~S5)と、
前記吸着段(S1~S5)の最初の吸着段(S1)に熱的に結合されて、前記吸着器(AB)に選択的に熱エネルギーを提供する加熱段(HS)と、
前記吸着段(S1~S5)の最後の吸着段(S5)に熱的に結合されて、前記蒸気チャンバ(VC)で脱着蒸気を選択的に凝縮させる冷却段(CS)と、
前記冷却段(CS)を通って冷却流体を循環させる第1冷却セクション(CC1)と、前記吸着器(AB)の各々を通って前記冷却流体を選択的に循環させる第2冷却セクション(CC2)と、を有する冷却回路(CC)と、を備え、
前記多段吸着装置(10;AD1~AD4;AD、AD)の脱着サイクル中、前記加熱段(HS)が作動されて前記吸着器(AB)で蒸気脱着を引き起こし、その結果、脱着蒸気が各吸着器(AB)から隣接する前記蒸気チャンバ(VC)に流入し、
各熱伝達構造(HT)は、前記多段吸着装置(10;AD1~AD4;AD、AD)の前記脱着サイクル中、前記熱伝達構造(HT)の表面に沿って前記脱着蒸気の凝縮を引き起こし、その結果、前記脱着蒸気の凝縮から生じる潜熱が後続の前記吸着段(S2~S5)の前記吸着器(AB)に伝達されるように構成され、
前記多段吸着装置(10;AD1~AD4;AD、AD)の吸着サイクル中、前記加熱段(HS)の作動が停止されて、前記吸着器(AB)への蒸気吸着を可能にし、
前記冷却回路(CC)は、前記多段吸着装置(10;AD1~AD4;AD、AD)の前記脱着サイクル中、前記第1冷却セクション(CC1)のみを通る前記冷却流体の循環を引き起こすように構成され、
前記冷却回路(CC)は、前記多段吸着装置(10;AD1~AD4;AD、AD)の前記吸着サイクル中、前記第1冷却セクション(CC1)と前記第2冷却セクション(CC2)との両方を通る前記冷却流体の循環を引き起こすようにさらに構成される、多段吸着装置(10;AD1~AD4;AD、AD)。
【請求項2】
前記冷却段(CS)及び前記吸着器(AB)は各々、前記冷却流体の循環を可能にするように構成された1以上の熱交換器管(20A、20)を含み、
前記冷却回路(CC)の前記第1冷却セクション(CC1)は前記冷却段(CS)の前記1以上の熱交換器管(20A)に結合され、
前記冷却回路(CC)の前記第2冷却セクション(CC2)は各吸着器(AB)の前記1以上の熱交換器管(20)に結合される、請求項1に記載の多段吸着装置(10;AD1~AD4;AD、AD)。
【請求項3】
前記熱交換器管(20A、20)は、薄壁フィン管又はプレート管から構成される、請求項2に記載の多段吸着装置(10;AD1~AD4;AD、AD)。
【請求項4】
前記冷却流体は50℃~60℃の温度で供給される、請求項1~3のいずれか1項に記載の多段吸着装置(10;AD1~AD4;AD、AD)。
【請求項5】
前記冷却流体は水である、請求項1~4のいずれか1項に記載の多段吸着装置(10;AD1~AD4;AD、AD)。
【請求項6】
前記冷却回路(CC)は、前記多段吸着装置(10;AD1~AD4;AD、AD)の前記吸着サイクル中、前記第1冷却セクション(CC1)に前記第2冷却セクション(CC2)を選択的に結合するためのスロットルバルブ(TV1)を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の多段吸着装置(10;AD1~AD4;AD、AD)。
【請求項7】
前記加熱段(HS)は熱エネルギー源(TES)に結合される、請求項1~6のいずれか1項に記載の多段吸着装置(10;AD1~AD4;AD、AD)。
【請求項8】
前記加熱段(HS)は、前記吸着段(S1~S5)の最初の前記吸着段(S1)の前記吸着器(AB)を通って延在する1以上の加熱管(15)を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の多段吸着装置(10;AD1~AD4;AD、AD)。
【請求項9】
前記1以上の加熱管(15)を通って加熱流体が流される、請求項8に記載の多段吸着装置(10;AD1~AD4;AD、AD)。
【請求項10】
前記加熱流体は90℃~95℃の温度で供給される、請求項9に記載の多段吸着装置(10;AD1~AD4;AD、AD)。
【請求項11】
一連のn個の吸着段(S1~S5)を備え、nは2~15の整数である、請求項1~10のいずれか1項に記載の多段吸着装置(10;AD1~AD4;AD、AD)。
【請求項12】
前記多段吸着装置(10;AD1~AD4;AD、AD)の前記脱着サイクル中、前記吸着段(S1~S5)の前記蒸気チャンバ(VC)に形成された凝縮物を収集するためのリザーバ(RES;CT)をさらに備える、請求項1~11のいずれか1項に記載の多段吸着装置(10;AD1~AD4;AD、AD)。
【請求項13】
冷却のための請求項1~12のいずれか1項に記載の前記多段吸着装置(10;AD1~AD4;AD、AD)の使用。
【請求項14】
大気水採取(AWH)のための請求項1~12のいずれか1項に記載の前記多段吸着装置(10;AD1~AD4;AD、AD)の使用。
【請求項15】
冷却装置として機能する、請求項1~11のいずれか1項に記載の多段吸着装置(10;AD1~AD4;AD、AD)と、
前記多段吸着装置(10;AD1~AD4;AD、AD)に冷却流体を供給するための冷却剤リザーバ(RES)と、
前記多段吸着装置(10;AD1~AD4;AD、AD)の前記吸着サイクル中に前記多段吸着装置(10;AD1~AD4;AD、AD)の前記吸着段(S1~S5)に蒸気を供給するための蒸発器(EVA)と、を備える冷却装置。
【請求項16】
前記蒸発器(EVA)は、前記多段吸着装置(10;AD1~AD4;AD、AD)の前記吸着サイクル中に選択的に作動されて、蒸気が前記多段吸着装置(10;AD1~AD4;AD、AD)の前記吸着段(S1~S5)に供給されることを可能にするスロットルバルブ(TV2)を通じて前記吸着段(S1~S5)の前記蒸気チャンバ(VC)に結合され、
前記スロットルバルブ(TV2)は、前記多段吸着装置(10;AD1~AD4;AD、AD)の前記脱着サイクル中に選択的に作動されて、前記吸着段(S1~S5)の前記蒸気チャンバ(VC)内で形成される凝縮物が前記冷却剤リザーバ(RES)内に収集されることを可能にする、請求項15に記載の冷却装置。
【請求項17】
前記蒸発器(EVA)は、
熱源(W)からの熱の伝達を可能にするように構成された熱交換器構造(HEX;1000;1000)と、
前記熱交換器構造(HEX;1000;1000)に熱的に結合され、前記冷却流体によって湿潤可能であるように構成された多孔質ウィック構造(WS;3000;3000)と、
前記冷却流体によって前記多孔質ウィック構造(WS;3000;3000)を湿らすように構成された冷却剤分配システム(2000)と、を備え、
前記多孔質ウィック構造(WS;3000;3000)は、蒸気の流れに部分的に曝されて前記冷却流体の一部を蒸発させるように構成される、請求項15又は16に記載の冷却装置。
【請求項18】
前記多孔質ウィック構造(WS;3000;3000)は、前記熱交換器構造(HEX;1000;1000)上に直接的又は間接的に設けられた焼結多孔質ウィック構造である、請求項17に記載の冷却装置。
【請求項19】
前記多孔質ウィック構造(WS;3000;3000)は約20%~80%の多孔度を有する、請求項17又は18に記載の冷却装置。
【請求項20】
前記多孔質ウィック構造(WS;3000;3000)は、約5μm~50μmの平均サイズを有する細孔を示す、請求項17~19のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項21】
前記多孔質ウィック構造(WS;3000;3000)は、約0.5mm~5mmの厚さを示す、請求項17~20のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項22】
前記多孔質ウィック構造(WS)がフィン構造(3000)として構成されている、請求項17~21のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項23】
前記多孔質ウィック構造(WS)がピンフィン構造(3000)として構成されている、請求項17~21のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項24】
前記熱交換器構造(HEX;1000)が、前記熱源として機能する温かい流体(W)を流すための複数のチャネル(1000a)を含むように構成される、請求項17~23のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項25】
前記冷却剤分配システム(2000)は、毛細管現象によって前記多孔質ウィック構造(WS;3000;3000)を湿らすように構成されている、請求項17~24のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項26】
冷却装置システム(100;200)であって、
冷却装置として機能する、請求項1~11のいずれか1項に記載の少なくとも1つの多段吸着装置(10)を各々備える第1冷却装置モジュール(AD1/AD2;AD)及び第2冷却装置モジュール(AD3/AD4;AD)と、
前記第1冷却装置モジュール(AD1/AD2;AD)及び前記第2冷却装置モジュール(AD3/AD4;AD)に冷却流体を供給するための冷却剤リザーバ(RES)と、
前記第1冷却装置モジュール(AD1/AD2;AD)又は前記第2冷却装置モジュール(AD3/AD4;AD)に選択的に蒸気を供給するための蒸発器(EVA)と、
前記冷却剤リザーバ(RES)及び前記蒸発器(EVA)に結合されて、前記冷却剤リザーバ(RES)から来る温かい冷却流体を再冷却するためのラジエータ(RAD)と、を備え、
前記冷却装置システム(100;200)は、前記第1冷却装置モジュール(AD1/AD2;AD)が前記吸着サイクルを受けている場合、前記第2冷却装置モジュール(AD3/AD4;AD)が前記脱着サイクルを受けるように、かつ、その逆となるように構成され、
前記冷却装置システム(100;200)はさらに:
前記第1冷却装置モジュール(AD1/AD2;AD)又は前記第2冷却装置モジュール(AD3/AD4;AD)が前記吸着サイクルを受けているかどうかに応じて、冷却流体が前記冷却剤リザーバ(RES)から前記ラジエータ(RAD)を通じて前記第1冷却装置モジュール(AD1/AD2;AD)又は前記第2冷却装置モジュール(AD3/AD4;AD)に供給され;
前記第1冷却装置モジュール(AD1/AD2;AD)又は前記第2冷却装置モジュール(AD3/AD4;AD)が前記脱着サイクルを受けているかどうかに応じて、冷却流体が前記冷却剤リザーバ(RES)から前記第1冷却装置モジュール(AD1/AD2;AD)又は前記第2冷却装置モジュール(AD3/AD4;AD)に供給され;
前記第1冷却装置モジュール(AD1/AD2;AD)及び前記第2冷却装置モジュール(AD3/AD4;AD)から前記冷却剤リザーバ(RES)に冷却流体が戻され;
前記第1冷却装置モジュール(AD1/AD2;AD)又は前記第2冷却装置モジュール(AD3/AD4;AD)が前記吸着サイクルを受けているかどうかに応じて、前記蒸発器(EVA)から前記第1冷却装置モジュール(AD1/AD2;AD)又は前記第2冷却装置モジュール(AD3/AD4;AD)に蒸気が供給され;かつ、
前記脱着サイクルを受けている場合に前記第1冷却装置モジュール(AD1/AD2;AD)又は前記第2冷却装置モジュール(AD3/AD4;AD)内で凝縮の結果生成された凝縮物が前記冷却剤リザーバ(RES)に戻されるようにさらに構成される、冷却装置システム(100;200)。
【請求項27】
前記第1冷却装置モジュール(AD1/AD2)及び前記第2冷却装置モジュール(AD3/AD4)は各々、前記多段吸着装置(10)の相互接続対を備える、請求項26に記載の冷却装置システム(100)。
【請求項28】
前記第1冷却装置モジュール(AD)及び前記第2冷却装置モジュール(AD)は各々、単一の前記多段吸着装置(10)を備える、請求項26に記載の冷却装置システム(200)。
【請求項29】
前記第1冷却装置モジュール(AD1/AD2;AD)又は前記第2冷却装置モジュール(AD3/AD4;AD)が前記脱着サイクルを受けているかどうかに応じて、前記第1冷却装置モジュール(AD1/AD2;AD)又は前記第2冷却装置モジュール(AD3/AD4;AD)に選択的に結合される熱エネルギー源(TES)をさらに備える、請求項26~28のいずれか1項に記載の冷却装置システム(100;200)。
【請求項30】
吸着中及び脱着中に前記第1冷却装置モジュール(AD1/AD2;AD)及び前記第2冷却装置モジュール(AD3/AD4;AD)を部分真空状態に維持するための低圧システムをさらに備える、請求項26~28のいずれか1項に記載の冷却装置システム(100;200)。
【請求項31】
前記低圧システムは、前記冷却剤リザーバ(RES)及び前記蒸発器(EVA)に選択的に結合可能な真空ポンプ(VAC)を備える、請求項30に記載の冷却装置システム(100;200)。
【請求項32】
前記冷却装置システム(100;200)内の圧力が、吸着中及び脱着中に1~8kPaの範囲内に維持される、請求項30又は31に記載の冷却装置システム(100;200)。
【請求項33】
大気水採取デバイスとして機能する、請求項1~11のいずれか1項に記載の多段吸着装置(10;AD1~AD4;AD、AD)と
前記多段吸着装置(10;AD1~AD4;AD、AD)に冷却流体を供給するための冷却液リザーバ(RES)と、
前記多段吸着装置(10;AD1~AD4;AD、AD)の前記吸着サイクル中に前記多段吸着装置(10;AD1~AD4;AD、AD)の前記吸着段(S1~S5)に湿った空気を供給するための大気吸気口(AAI)と、を備える、大気水採取装置。
【請求項34】
前記大気吸気口(AAI)は、前記多段吸着装置(10;AD1~AD4;AD、AD)の前記吸着段(S1~S5)の前記蒸気チャンバ(VC)に、前記多段吸着装置(10;AD1~AD4;AD、AD)の前記吸着サイクル中に選択的に作動されるスロットルバルブ(TV2)を通じて結合され、前記多段吸着装置(10;AD1~AD4;AD、AD)の前記吸着段(S1~S5)に湿った空気が供給されることを可能にし、
前記多段吸着装置(10;AD1~AD4;AD、AD)の前記脱着サイクル中に前記スロットルバルブ(TV2)が選択的に作動されて、前記吸着段(S1~S5)の前記蒸気チャンバ(VC)で形成される凝縮物が前記冷却剤リザーバ(RES)に収集されることを可能にする、請求項33に記載の大気水採取装置。
【請求項35】
大気水採取システム(300;400)であって、
各々が大気水採取デバイスとして機能する、請求項1~11のいずれか1項に記載の2以上の多段吸着装置(AD1~AD4;AD、AD)と、
各前記多段吸着装置(AD1~AD4;AD、AD)に冷却流体を供給するための冷却剤リザーバ(RES)と、
前記多段吸着装置(AD1~AD4;AD、AD)に湿った空気を選択的に供給するための大気吸気口(AAI)と、
前記冷却剤リザーバ(RES)から来る温かい冷却流体を再冷却するために前記冷却剤リザーバに結合されたラジエータ(RAD)と、を備え、
前記大気水採取システム(300;400)は、任意の時点で前記多段吸着装置(AD1~AD4;AD、AD)のうちの1つのみが前記脱着サイクルを受ける一方で、残りのすべての多段吸着装置が前記吸着サイクルを受けるように構成され、
前記大気水採取システム(300;400)はさらに:
前記吸着サイクルを受けている各多段吸着装置に前記冷却剤リザーバ(RES)から前記ラジエータ(RAD)を通じて冷却流体が供給され;
前記脱着サイクルを受けている前記多段吸着装置に前記冷却剤リザーバ(RES)から冷却流体が供給され;
前記多段吸着装置(AD1~AD4;AD、AD)から前記冷却剤リザーバ(RES)に冷却流体が戻され;
前記大気吸気口(AAI)から、前記吸着サイクルを受けている各多段吸着装置に湿った空気が供給され;かつ、
前記脱着サイクルを受けている前記多段吸着装置内での凝縮の結果として形成された凝縮物が前記冷却剤リザーバ(RES)に戻されるように構成される、大気水採取システム(300;400)。
【請求項36】
3以上の前記多段吸着装置(AD1~AD4)を備える、請求項35に記載の大気水採取システム(300)。
【請求項37】
四重吸着床配置を形成する合計4つの前記多段吸着装置(AD1~AD4)を備える、請求項36に記載の大気水採取システム(300)。
【請求項38】
二重吸着床配置を形成する合計2つの前記多段吸着装置(AD、AD)を備える、請求項35に記載の大気水採取システム(400)。
【請求項39】
前記脱着サイクルを受けている前記多段吸着装置に選択的に結合された熱エネルギー源(TES)をさらに備える、請求項35~38のいずれか1項に記載の大気水採取システム(300;400)。
【請求項40】
前記脱着サイクルを受けている前記多段吸着装置を部分真空状態に維持するための低圧システムをさらに備える、請求項35~39のいずれか1項に記載の大気水採取システム(300;400)。
【請求項41】
前記低圧システムは、前記冷却剤リザーバ(RES)に選択的に結合可能な真空ポンプ(VAC)を備える、請求項40に記載の大気水採取システム(300;400)。
【請求項42】
前記大気吸気口(AAI)が送風ファン(BF)に結合されて、前記吸着サイクルを受けている前記多段吸着装置の前記吸着器(AB)を通じて湿った空気を強制的に循環させる、請求項35~41のいずれか1項に記載の大気水採取システム(300;400)。
【請求項43】
冷却及び大気水採取複合システム(500)であって、
冷却装置として機能する、請求項1~11のいずれか1項に記載の多段吸着装置の第1対(AD1、AD3)、及び、大気水採取装置として機能する、請求項1~11のいずれか1項に記載の多段吸着装置の第2対(AD2、AD4)と、
各多段吸着装置(AD1~AD4)に冷却流体を供給するための冷却剤リザーバ(RES)と、
前記多段吸着装置の第1対(AD1、AD3)の一方又は他方の多段吸着装置に選択的に蒸気を供給するための蒸発器(EVA)と、
前記多段吸着装置の第2対(AD2、AD4)の一方又は他方の多段吸着装置に選択的に湿った空気を供給するための大気吸気口(AAI)と、
前記冷却剤リザーバ(RES)及び前記蒸発器(EVA)に結合され、前記冷却剤リザーバ(RES)から来る温かい冷却流体を再冷却するためのラジエータ(RAD)と、
前記多段吸着装置の第2対(AD2、AD4)の各多段吸着装置によって生成された凝縮物を収集するための凝縮物タンク(CT)と、を備え、
前記冷却及び大気水採取複合システム(500)は、前記多段吸着装置の第1対(AD1、AD3)のうちの一方の多段吸着装置が前記吸着サイクルを受けている場合、他方の前記多段吸着装置が前記脱着サイクルを受けるように、かつ、前記多段吸着装置の第2対(AD2、AD4)のうちの一方の多段吸着装置が前記吸着サイクルを受けている場合、他方の前記多段吸着装置が前記脱着サイクルを受けるように構成され、
前記冷却及び大気水収集複合システム(500)は、
前記冷却剤リザーバ(RES)から前記ラジエータ(RAD)を通じて、前記吸着サイクルを受けている各多段吸着装置に冷却流体が供給され、
前記冷却剤リザーバ(RES)から、前記脱着サイクルを受けている各多段吸着装置に冷却流体が供給され、
前記多段吸着装置(AD1~AD4)から前記冷却剤リザーバ(RES)に冷却流体が戻され、
前記蒸発器(EVA)から、前記多段吸着装置の第1対(AD1、AD3)のうち、前記吸着サイクルを受けている多段吸着装置に蒸気が供給され、
前記多段吸着装置の第1対(AD1、AD3)のうち、前記脱着サイクルを受けている多段吸着装置における凝縮の結果として形成された凝縮物が前記冷却剤リザーバ(RES)に戻され、
前記大気吸気口(AAI)から、前記多段吸着装置の第2対(AD2、AD4)のうち、前記吸着サイクルを受けている多段吸着装置に湿った空気が供給され、
前記多段吸着装置の第2対(AD2、AD4)のうち、前記脱着サイクルを受けている多段吸着装置における凝縮の結果として形成された凝縮物が前記凝縮物タンクに収集されるようにさらに構成される、冷却及び大気水採取複合システム(500)。
【請求項44】
前記脱着サイクルを受けている各多段吸着装置に選択的に結合された熱エネルギー源(TES)をさらに備える、請求項43に記載の冷却及び大気水採取複合システム(500)。
【請求項45】
吸着中及び脱着中に前記多段吸着装置の第1対(AD1、AD3)の各多段吸着装置を部分真空状態に維持し、かつ、前記脱着サイクルを受けている前記多段吸着装置の第2対(AD2、AD4)の多段吸着装置も部分真空状態に維持するための低圧システムをさらに備える、請求項43又は44に記載の冷却及び大気水採取複合システム(500)。
【請求項46】
前記低圧システムは、前記冷却剤リザーバ(RES)及び前記蒸発器(EVA)に選択的に結合可能な真空ポンプ(VAC)を備える、請求項45に記載の冷却及び大気水採取複合システム(500)。
【請求項47】
多段吸着を実行する方法であって、
(a)交互の脱着サイクル及び吸着サイクルで動作するように設計された少なくとも1つの多段吸着モジュール(10;AD1~AD4;AD、AD)を提供するステップであって、前記多段吸着モジュール(10;AD1~AD4;AD、AD)は、隣接する蒸気チャンバ(VC)に結合された吸着器(AB)を各々が備える2以上の連続する吸着段(S1~S5)を含み、後続の各吸着段(S2~S5)の前記吸着器(AB)は、熱伝達構造(HT)を介して先行する吸着段(S1~S4)の前記蒸気チャンバ(VC)に熱的に結合される、少なくとも1つの多段吸着モジュール(10;AD1~AD4;AD、AD)を提供するステップと、
(b)前記吸着段(S1~S5)の少なくとも最初の前記吸着段(S1)の前記吸着器(AB)に熱エネルギーを供給して蒸気脱着を引き起こし、かつ、前記吸着段(S1~S5)の最後の前記吸着段(S5)の前記吸着器(AB)から熱エネルギーを奪って脱着蒸気の凝縮を引き起こし、それによって、前記脱着蒸気が、各吸着器(AB)から放出され、かつ、隣接する各蒸気チャンバ(VC)に流れ、そこで各熱伝達構造(HT)の表面に沿って凝縮し、それによって、後続の各吸着段(S2~S5)の前記吸着器(AB)に伝達される潜熱を放出して蒸気脱着を維持することによって、前記多段吸着モジュール(10;AD1~AD4;AD、AD)を前記脱着サイクルで動作させるステップと、
(c)前記吸着段(S1~S5)の最初の前記吸着段(S1)の前記吸着器(AB)への熱エネルギーの供給をすべて停止し、かつ、すべての吸着段(S1~S5)の前記吸着器(AB)から熱エネルギーを奪って前記吸着器(AB)を冷却して吸着を維持することによって、前記多段吸着モジュール(10;AD1~AD4;AD、AD)を前記吸着サイクルで動作させるステップと、を含む方法。
【請求項48】
冷却の目的に適用される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
大気水採取(AWH)の目的に適用される、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
熱源(W)からの熱の伝達を可能にするように構成された熱交換器構造(HEX;1000;1000)と、
前記熱交換器構造(HEX;1000;1000)に熱的に結合され、かつ、液体冷却媒体によって湿潤可能であるように構成された多孔質ウィック構造(WS;3000;3000)と、
前記液体冷却媒体によって前記多孔質ウィック構造(WS;3000;3000)を湿らすように構成された冷却剤分配システム(2000)と、を備え、
前記多孔質ウィック構造(WS;3000;3000)は、蒸気の流れに部分的に曝されて前記液体冷却媒体の一部を蒸発させるように構成される、蒸発器(EVA)。
【請求項51】
前記多孔質ウィック構造(WS;3000;3000)は、前記熱交換器構造(HEX;1000;1000)上に直接的又は間接的に設けられた焼結多孔質ウィック構造である、請求項50に記載の蒸発器(EVA)。
【請求項52】
前記多孔質ウィック構造(WS;3000;3000)は、約20%~80%の多孔度を有する、請求項50又は51に記載の蒸発器(EVA)。
【請求項53】
前記多孔質ウィック構造(WS;3000;3000)は、約5μm~50μmの平均サイズを有する細孔を示す、請求項50~52のいずれか1項に記載の蒸発器(EVA)。
【請求項54】
前記多孔質ウィック構造(WS;3000;3000)は、約0.5mm~5mmの厚さを示す、請求項50~53のいずれか1項に記載の蒸発器(EVA)。
【請求項55】
前記多孔質ウィック構造(WS)がフィン構造(3000)として構成される、請求項50~54のいずれか1項に記載の蒸発器(EVA)。
【請求項56】
前記多孔質ウィック構造(WS)がピンフィン構造(3000)として構成される、請求項50~55のいずれか1項に記載の蒸発器(EVA)。
【請求項57】
前記熱交換器構造(HEX;1000)は、前記熱源として機能する温かい流体(W)を流すための複数のチャネル(1000a)を含むように構成される、請求項50~56のいずれか1項に記載の蒸発器(EVA)。
【請求項58】
前記冷却剤分配システム(2000)は、毛細管現象によって前記多孔質ウィック構造(WS;3000;3000)を湿らすように構成される、請求項50~57のいずれか1項に記載の蒸発器(EVA)。
【請求項59】
前記冷却剤分配システム(2000)は、前記多孔質ウィック構造(WS;3000)の上部の上方に配置された上部冷却剤ディスペンサ(2000A)を含み、上部冷却剤ディスペンサ(2000A)は、前記多孔質ウィック構造(WS;3000)の上部を滴下して湿らすために前記上部冷却剤ディスペンサ(2000A)の底部に複数の滴下孔(2000a)を含む、請求項50~58のいずれか1項に記載の蒸発器(EVA)。
【請求項60】
前記冷却剤分配システム(2000)は、前記多孔質ウィック構造(WS;3000)の側方部分の横に配置された少なくとも1つの側方冷却剤ディスペンサ(2000B)を含み、前記側方冷却剤ディスペンサ(2000B)は、前記多孔質ウィック構造(WS;3000)の前記側方部分に連通する長手方向分配スリット(2000b)を含む、請求項50~59のいずれか1項に記載の蒸発器(EVA)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、冷却のため及び/又は大気水採取(AWH)のための多段吸着装置及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
気候変動の主な原因である地球温暖化が現実のものとなった。経済、人口動態及び社会の課題によって増幅された気候変動の影響は、我々の世界的なエネルギー需要に非常に大きな重荷となっている。エネルギー、水及び食料の安全保障の間の関係として定義されるエネルギー-水-食料の関連拡大は切り離せない。気候変動の影響を受けるエネルギー安全保障は、ひいては、食糧及び水の安全保障にも影響を及ぼし、人類の人口と我々が依存する生態系の健全性とを脅かす。
【0003】
これらの課題を緩和し、かつ、継続的な経済発展を確実にするため、我々はこれまで以上に発電用の化石燃料に依存している。現在、地球上のエネルギーの約84%が化石燃料資源から得られている。予測によれば、世界のエネルギー消費量は2003年から2030年にかけて71%増加すると見込まれている(例えば、「Applications of solar energy for domestic hot-water and building heating/cooling」、Loan Sarbu他、International Journal of Energy、第2号、第5巻、pp.34-42,2011年を参照のこと)。エネルギー危機はすでに世界経済発展の持続可能性に影響を及ぼしており、エネルギー利用率を向上させる必要がある。さらに、水は、エネルギー生産及び発電の基本的にあらゆる段階で使用されるので、水とエネルギーシステムとは互いに依存している。
【0004】
淡水不足はますます人類の人口に影響を及ぼしており、飲料水へのアクセス制限に苦しむ人々がますます増えており、この問題は日々拡大している。2025年までに、約18億人が絶対的な水不足地域で生活することになる一方で、世界の人口の3分の2が水ストレスの状況下で生活することになることが推定されている。2030年までに、世界の人口の半数が高い水ストレス下で、すなわち、清浄で淡水かつ安全な飲料水へのアクセスなしで生活することになり得る。さらに、人間の多様な用途に適した水質の水を抽出、輸送及び供給し、及びその後、環境に戻す前に廃水を処理するために、エネルギーが必要とされる。
【0005】
冷却/冷凍、及び、特に空調は、「贅沢な」生活を維持するために必要不可欠であり、かつ、世界中に広がり続けることになる。冷却/冷凍設備はすべて、電力を消費し、前述のエネルギー危機に拍車をかけ、かつ、より一般的には気候変動に寄与する。現在、冷却用途の空調機器及び扇風機の使用は、世界中の建物で使用される全電力の約5分の1、すなわち、今日の世界の電力消費量の約10%を占めると推定されている(「The Future of Cooling - Opportunities for energy-efficient air conditioning」、IEA出版物、国際エネルギー機関(IEA)、2018年5月を参照のこと)。
【0006】
電気は「質の高い」エネルギーと考えられる。電気は、最小限の損失であらゆる場所に簡単に輸送可能である。さらに、電気は、圧力、電位、運動、機械、熱などを含むあらゆる形態のエネルギーに容易に変換可能である。夏季などのピーク需要時に主要都市でより頻繁に停電が発生しており、空調機器の使用増加がそうした停電の主な原因となっている。
【0007】
エネルギー、水及び食糧は、人間の生命を維持するための必需品である。一方で、冷却/冷凍は贅沢品である。したがって、空調などの冷却/冷凍用途に貴重で質の高い電気エネルギーを消費することは、エネルギー資源の全く誤った使用である。
【0008】
図1は、冷却/冷凍用途、より具体的には空調に最も広く使用されている技術である、一般的な蒸気圧縮冷凍サイクルの概略フロー図である。一般的な蒸気圧縮式冷却装置の主な構成部品には、(i)蒸発器、(ii)凝縮器、(iii)圧縮機、及び(iv)膨張弁システムが含まれる。蒸気圧縮式冷却装置には、一般的に、
-最小限の冷凍質量流量で大きな冷却能力が得られること、
-特に高い成績係数(COP)を有する、おそらく間違いなく優れた効率、及び、
-準大気条件まで冷却する能力を含む、多くの利点がある。
【0009】
蒸気圧縮式冷却装置にもいくつか欠点があり、最も顕著であるのは:
-気候変動に寄与するハイドロフルオロカーボン(HFC)冷媒や、オゾン層の破壊に寄与するクロロフルオロカーボン(CFC)冷媒及びハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)冷媒(現在ではほとんどの国で禁止されている)などの特定の液体化合物すなわち冷媒の使用を蒸気圧縮式冷却装置が必要とし、
-冷媒充填量の低下によりサイズが小さくなると蒸気圧縮式冷却装置の動作効率が低下し、チャネルが小さいほど摩擦圧力降下と熱力学的損失とが比較的高くなり、及び
-「質の高い」エネルギーすなわち電力を消費し、その電力は、二酸化炭素排出に寄与する化石燃料の燃焼によって依然として生成され、二酸化炭素排出は、気候変動と地球温暖化とにつながる温室効果ガス排出の主な原因である。
【0010】
図2は、前述の蒸気圧縮式冷却装置技術の使用の代替手段を構成する、いわゆる吸着式冷却装置の概略図である。吸着式冷却装置は、吸着質の流体分子が固体多孔質吸着材の微細孔に付着する吸着プロセスを活用する。図2は、より具体的には、交互に動作して連続的な吸着サイクル及び脱着サイクルを受ける2つの吸着床を備える、二重床構成タイプの吸着式冷却装置を示している。吸着サイクル中、蒸発器に接触している冷媒プール(吸着質)から蒸気が蒸発し、その過程で蒸発冷却を引き起こす。別個のループで循環する冷却剤(水など)は、蒸発器を通って、例えば空間冷却に使用される冷却された冷却剤として蒸発器から排出される。蒸発器によって生成された蒸気は、吸着効率を高めるために通常は冷却される第1吸着剤床によって吸着される。第1吸着床が吸着を受けている間に、第2吸着床は脱着サイクルを受ける。より具体的には、第2吸着床を加熱して蒸気の脱着を引き起こし、その結果、脱着蒸気が第2吸着床から凝縮器に放出され、凝縮器で、脱着蒸気が凝縮水に凝縮して冷媒プールに戻される。凝縮によって生じた潜熱は、その後の排熱のために凝縮器を循環する流体に伝達される。各吸着床の動作は、交互に行われ、かつ、連続した吸着サイクルと脱着サイクルとの間で循環され、冷却を維持する。
【0011】
吸着冷却は、非常に有望な技術であり、かつ、多くの利点を有し、特に注目すべきは:
-水、エタノール、メタノールなどの環境に優しい冷媒の使用、
-作業の単純さ、
-可動部品及び振動の少なさ、
-低コストのメンテナンス、
-再生可能な熱エネルギー源(例えば、太陽熱エネルギー)、産業プロセスからの質の低い熱及び/又は廃熱の入力によって駆動可能な能力である。
【0012】
しかしながら、現在利用可能な吸着式冷却装置は、蒸気圧縮式冷却装置ほど効率的ではなく、かつ、比較的低い成績係数(COP)を示している。吸着剤と吸着質との間の熱及び質量移動特性が悪いと、エネルギー効率も低下し、結果として比エネルギー消費量が高くなる。これらの冷却装置では、比冷却力(SCP)が低いという問題もあるので、大量の吸着剤とかさばる吸着剤床/吸着装置を必要とする。したがって、現在の吸着式冷却装置は、動作中に断続的かつ不連続な冷却を実行する必要があるので、重量があり、かつ、サイズも大きい。非効率的な蒸発器設計も吸着式冷却装置の全体的な性能に影響する。
【0013】
実際のところ、現在市販されている吸着式冷却装置は、成績係数(COP)が一般的に0.75未満と低いので、既存の蒸気圧縮システムに置き換わることはできない。このような技術は、1を超えるCOPを可能にする特定のエネルギー消費量の点で画期的な進歩が達成されれば、実行可能で競争力のある代替手段になる可能性がある。
【0014】
当該技術分野では、単一床、二重床又は多床構成を含む、いくつかのタイプの吸着式冷却装置が存在する。既存の吸着式冷却装置の概念の検討が以下の文献に記載されている:
-「Review and future trends of solar adsorption refrigeration systems」、M.S. Fernandes他、Renewable and Sustainable Energy Reviews、第39巻、pp.102-123,2014年11月;
-「A review on adsorption cooling systems with silica gel and carbon as adsorbents」、R.P. Sah他、Renewable and Sustainable Energy Reviews、第45巻、pp.123-134、2015年5月;及び
-「Review on improvement of adsorption refrigeration systems performance using composite adsorbent: current state of art」、P. Soni他、Energy Sources, Part A:Recovery, Utilization, and Environmental Effects、2021年5月21日。
【0015】
したがって、改善された解決策が依然として必要とされる。
【発明の概要】
【0016】
本発明の一般的な目的は、例えば冷却装置として使用可能であり、かつ、従来技術の解決策の制限及び欠点を解消する吸着装置を提供することである。
【0017】
より具体的には、本発明の目的は、実装及び運用に非常に効率的かつコスト効率の高いそのような解決策を提供することである。
【0018】
本発明のさらなる目的は、モジュール式で簡単に拡張可能であり、必要なニーズまでシステムスループットを増加及び調整することができる解決策を提供することである。
【0019】
本発明の別の目的は、脱着を実行するための効率的な熱回収を保証するようなそうした解決策を提供することである。
【0020】
本発明のさらに別の目的は、システムのエネルギー消費要件(電気及び熱の両方)を低くし、かつ、熱力学的損失を最小限に抑えるそうした解決策を提供することである。
【0021】
本発明のさらなる目的は、冷却用途だけでなく、大気水採取(AWH)などの他の用途にも使用可能なそうした解決策を提供することである。
【0022】
本発明の別の目的は、再生可能エネルギー源、特に太陽エネルギーと適切に組み合わせて統合可能であり、及び/又は、産業プロセスからの廃熱を最適に利用することができるそうした解決策を提供することである。
【0023】
これらの目的及び他の目的は、請求の範囲で定義された解決策によって達成される。
【0024】
したがって、請求項1に記載の特徴を有する多段吸着装置が提供され、すなわち、多段吸着装置は、
順番に配置された複数の吸着段であって、各吸着段は、隣接する蒸気チャンバに結合された吸着器を含み、後続の各吸着段の前記吸着器は、熱伝達構造を介して先行する吸着段の前記蒸気チャンバに熱的に結合される、複数の吸着段と、
前記吸着段の最初の吸着段に熱的に結合されて、前記吸着器に選択的に熱エネルギーを提供する加熱段と、
前記吸着段の最後の吸着段に熱的に結合されて、前記蒸気チャンバで脱着された蒸気を選択的に凝縮させる冷却段と、
前記冷却段を通って冷却流体を循環させる第1冷却セクションと、前記吸着器の各々を通って前記冷却流体を選択的に循環させる第2冷却セクションと、を有する冷却回路と、を備え、
前記多段吸着装置の脱着サイクル中、前記加熱段が作動されて前記吸着器における蒸気脱着を引き起こし、その結果、脱着された蒸気が各吸着器から隣接する前記蒸気チャンバに流入し、
各熱伝達構造は、前記多段吸着装置の前記脱着サイクル中、前記熱伝達構造の表面に沿って前記脱着された蒸気の凝縮を引き起こすように構成され、その結果、前記脱着された蒸気の凝縮から生じる潜熱が後続の前記吸着段の前記吸着器に伝達され、
前記多段吸着装置の吸着サイクル中、前記加熱段の作動が停止されて、蒸気が前記吸着器に吸着されることを可能にし、
前記冷却回路は、前記多段吸着装置の前記脱着サイクル中、前記第1冷却セクションのみを通って前記冷却流体の循環を引き起こすように構成され、
前記冷却回路は、前記多段吸着装置の前記吸着サイクル中、前記第1冷却セクションと前記第2冷却セクションとの両方を通って前記冷却流体を循環させるようにさらに構成される。
【0025】
本発明によれば、前記脱着された蒸気が前記熱伝達構造に対して凝縮することによって生じる潜熱を利用して、後続の吸着段の前記吸着器を再加熱することによって、各脱着サイクル中に高い効率が達成される。さらに、前記吸着器の各々を通る前記冷却流体の循環により、各吸着サイクル中に急速冷却が達成され、前記吸着剤の温度が所望の吸着温度まで下がり、吸着効率を向上させる。
【0026】
この多段吸着装置のさまざまな好ましい及び/又は有利な実施形態は従属請求項2~12の主題を形成する。
【0027】
また、冷却又は大気水採取(AWH)のための本発明の多段吸着装置の使用も請求される。
【0028】
また、冷却装置として機能する本発明に係る多段吸着装置と、前記多段吸着装置に冷却流体を供給するための冷却剤リザーバと、前記多段吸着装置の前記吸着サイクル中に前記吸着段に蒸気を供給するための蒸発器と、を備える冷却装置も請求される。
【0029】
この冷却装置のさまざまな好ましい及び/又は有利な実施形態は従属請求項16~25の主題を形成する。
【0030】
さらに、請求項26に記載の冷却装置システムが提供され、すなわち、冷却装置システムは、
冷却装置として機能する本発明に係る少なくとも1つの多段吸着装置を各々備える第1冷却装置モジュール及び第2冷却装置モジュールと、
前記第1冷却装置モジュール及び前記第2冷却装置モジュールに冷却流体を供給するための冷却剤リザーバと、
前記第1冷却装置モジュール又は前記第2冷却装置モジュールに選択的に蒸気を供給するための蒸発器と、
前記冷却剤リザーバ及び前記蒸発器に結合されて、前記冷却剤リザーバから来る温かい冷却流体を再冷却するためのラジエータと、を備え、
前記冷却装置システムは、前記第1冷却装置モジュールが前記吸着サイクルを受けている場合、前記第2冷却装置モジュールが前記脱着サイクルを受けるように、かつ、その逆となるように、構成され、
前記冷却装置システムはさらに:
前記第1冷却装置モジュール又は前記第2冷却装置モジュールが前記吸着サイクルを受けているかどうかに応じて、冷却流体が前記冷却剤リザーバから前記ラジエータを通じて前記第1冷却装置モジュール又は前記第2冷却装置モジュールに供給され;
前記第1冷却装置モジュール又は前記第2冷却装置モジュールが前記脱着サイクルを受けているかどうかに応じて、冷却流体が前記冷却剤リザーバから前記第1冷却装置モジュール又は前記第2冷却装置モジュールに供給され;
前記第1冷却装置モジュール及び前記第2冷却装置モジュールから冷却流体が前記冷却剤リザーバに戻され;
前記第1冷却装置モジュール又は前記第2冷却装置モジュールが前記吸着サイクルを受けているかどうかに応じて、前記蒸発器から前記第1冷却装置モジュール又は前記第2冷却装置モジュールに蒸気が供給され;かつ、
前記脱着サイクルを受けている場合に前記第1冷却装置モジュール又は前記第2冷却装置モジュール内で凝縮の結果生成された凝縮物が前記冷却剤リザーバに戻されるように構成される。
【0031】
この冷却装置システムのさまざまな好ましい及び/又は有利な実施形態は従属請求項27~32の主題を形成する。
【0032】
大気水採取デバイスとして機能する本発明に係る多段吸着装置と、前記多段吸着装置に冷却流体を供給するための冷却剤リザーバと、前記多段吸着装置の吸着サイクル中に前記多段吸着装置の吸着段に湿った空気を供給する大気吸気口と、を備える大気水採取(AWH)装置も請求される。
【0033】
好ましくは、前記大気吸気口は、前記多段吸着装置の吸着サイクル中に選択的に作動されて前記多段吸着装置の吸着段に湿った空気が供給されることを可能にするスロットルバルブを通じて前記多段吸着装置の吸着段の蒸気チャンバに結合される。前記多段吸着装置の脱着サイクル中、前記スロットルバルブが選択的に作動されて、前記吸着段の前記蒸気チャンバ内で形成された凝縮物が前記冷却剤リザーバに収集せることを可能にする。
【0034】
さらに、請求項35に記載の大気水採取システムが提供され、すなわち、大気水採取システムは:
各々が大気水採取デバイスとして機能する本発明に係る2以上の多段吸着装置と、
各多段吸着装置に冷却流体を供給するための冷却剤リザーバと、
前記多段吸着装置に湿った空気を選択的に供給するための大気吸気口と、
前記冷却剤リザーバから来る温かい冷却流体を再冷却するために前記冷却剤リザーバに結合されたラジエータと、を備え、
前記大気水採取システムは、任意の時点で前記多段吸着装置のうちの1つのみが脱着サイクルを受ける一方で、残りのすべての多段吸着装置が吸着サイクルを受けるように構成され、
前記大気水採取システムはさらに:
前記吸着サイクルを受けている各多段吸着装置に前記冷却剤リザーバから前記ラジエータを通じて冷却流体が供給され;
前記脱着サイクルを受けている前記多段吸着装置に前記冷却剤リザーバから冷却流体が供給され;
前記多段吸着装置から前記冷却剤リザーバに冷却流体が戻され;
前記大気吸気口から前記吸着サイクルを受けている各多段吸着装置に湿った空気が供給され;かつ、
前記脱着サイクルを受けている前記多段吸着装置内での凝縮の結果として生成された凝縮物が前記冷却剤リザーバに戻されるように構成される。
【0035】
この大気水採取装置のさまざまな好ましい及び/又は有利な実施形態は従属請求項36~42の主題を形成する。
【0036】
さらに、請求項43に記載の冷却及び大気水採取複合システムが提供され、すなわち、冷却及び大気水採取複合システムは:
冷却装置として機能する本発明に係る多段吸着装置の第1対、及び、大気水採取デバイスとして機能する本発明に係る多段吸着装置の第2対と、
各多段吸着装置に冷却流体を供給するための冷却剤リザーバと、
前記多段吸着装置の第1対の一方又は他方の多段吸着装置に選択的に蒸気を供給するための蒸発器と、
前記多段吸着装置の第2対の一方又は他方の多段吸着装置に選択的に湿った空気を供給するための大気吸気口と、
前記冷却剤リザーバ及び前記蒸発器に結合され、前記冷却剤リザーバから来る温かい冷却流体を再冷却するためのラジエータと、
前記多段吸着装置の第2対の各多段吸着装置によって生成された凝縮物を収集するための凝縮物タンクと、を備え、
前記冷却及び大気水採取複合システムは、前記多段吸着装置の第1対のうちの一方の多段吸着装置が吸着サイクルを受けている場合、他方の前記多段吸着装置が脱着サイクルを受けるように、かつ、前記多段吸着装置の第2対のうちの一方の多段吸着装置が吸着サイクルを受けている場合、他方の前記多段吸着装置が脱着サイクルを受けるように構成され、
前記冷却及び大気水収集複合システムは、
前記冷却剤リザーバから前記ラジエータを通じて、前記吸着サイクルを受けている各多段吸着装置に冷却流体が供給され、
前記冷却剤リザーバから、前記脱着サイクルを受けている各多段吸着装置に冷却流体が供給され、
前記多段吸着装置から前記冷却剤リザーバに冷却流体が戻され、
前記蒸発器から、前記多段吸着装置の第1対のうち、前記吸着サイクルを受けている多段吸着装置に蒸気が供給され、
前記脱着サイクルを受けている前記多段吸着装置の第1対のうちの多段吸着装置における凝縮の結果として生成された凝縮物が前記冷却剤リザーバに戻され、
前記大気吸気口から、前記吸着サイクルを受けている前記多段吸着装置の第2対のうちの多段吸着装置に湿った空気が供給され、
前記脱着サイクルを受けている前記多段吸着装置の第2対のうちの多段吸着装置における凝縮の結果として生成された凝縮物が凝縮物タンクに収集されるようにさらに構成される。
【0037】
この冷却及び大気水採取複合システムのさまざまな好ましい及び/又は有利な実施形態が従属請求項44~46の主題を形成する。
【0038】
さらに、その特徴が独立請求項47に記載される多段吸着を実行する方法が提供され、すなわち、当該方法は:
(a)交互の脱着サイクル及び吸着サイクルで動作するように設計された少なくとも1つの多段吸着モジュールを提供するステップであって、前記多段吸着モジュールは、隣接する蒸気チャンバに結合された吸着器を各々が備える2以上の連続する吸着段を含み、後続の各吸着段の前記吸着器は、熱伝達構造を介して先行する吸着段の前記蒸気チャンバに熱的に結合される、少なくとも1つの多段吸着モジュールを提供するステップと、
(b)前記吸着段の少なくとも最初の前記吸着段の前記吸着器に熱エネルギーを供給して蒸気の脱着を引き起こし、かつ、前記吸着段の最後の前記吸着段の前記吸着器から熱エネルギーを奪って脱着蒸気の凝縮を引き起こし、それによって、前記脱着蒸気が、各吸着器から放出され、かつ、隣接する各蒸気チャンバに流れ、そこで各熱伝達構造の表面に沿って凝縮し、それによって、後続の各吸着段の前記吸着器に伝達される潜熱を放出して蒸気脱着を維持することによって、前記多段吸着モジュールを前記脱着サイクルで動作させるステップと、
(c)最初の吸着段の前記吸着器への熱エネルギーの供給をすべて停止し、かつ、すべての吸着段の前記吸着器から熱エネルギーを奪って前記吸着器を冷却して吸着を維持することによって、前記多段吸着モジュールを前記吸着サイクルで動作させるステップと、を含む。
【0039】
本発明の方法は、特に冷却目的又は大気水採取(AWH)目的に適用されてもよい。
【0040】
最後に、本発明の関連で使用するのに適した蒸発器がさらに提供され、その特徴は独立請求項50に記載されており、すなわち、蒸発器は、熱源からの熱の伝達を可能にするように構成された熱交換器構造と、前記熱交換器構造に熱的に結合され、かつ、液体冷却媒体によって湿潤可能であるように構成された多孔質ウィック構造と、前記液体冷却媒体によって前記多孔質ウィック構造を湿潤するように構成された冷却剤分配システムと、を備え、前記多孔質ウィック構造は、蒸気の流れに部分的に曝されて前記液体冷却媒体の一部を蒸発させるように構成される。
【0041】
この蒸発器のさまざまな好ましい及び/又は有利な実施形態が従属請求項51~60の主題を形成する。
【0042】
本発明のさらなる有利な実施形態を以下で説明する。
【0043】
本発明の他の特徴及び利点は、本発明の実施形態の以下の詳細な説明を読むことでより明確に理解され、これらの実施形態は、非限定的な例としてのみ提示され、かつ、添付の図面によって説明される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1図1は、既知の蒸気圧縮機冷凍サイクルの動作を示す概略フロー図である。
図2図2は、既知の吸着式冷却装置の概略図である。
図3図3は、本発明の好ましい実施形態に係る多段吸着装置の概略図である。
図3A図3Aは、脱着サイクル中のその動作を示す図3の多段吸着装置の概略図である。
図3B図3Bは、吸着サイクル中のその動作を示す図3の多段吸着装置の概略図である。
図4図4は、本発明の一実施形態に係る四重吸着床冷却装置システムの一例の概略図である。
図5図5は、本発明の別の実施形態に係る二重吸着床冷却装置システムの一例の概略図である。
図6図6は、本発明の一実施形態に係る四重吸着床大気水採取(AWH)システムの一例の概略図である。
図7図7は、本発明の別の実施形態に係る二重吸着床大気水採取(AWH)システムの一例の概略図である。
図8図8は、本発明の一実施形態に係る複合冷却及び大気水採取(AWH)のための四重吸着床ハイブリッドシステムの一例の概略図である。
図9A図9Aは、浸漬式蒸発器の公知の原理を示す概略図である。
図9B図9Bは、スプレー式蒸発器の公知の原理を示す概略図である。
図10図10は、本発明の一実施形態に係る蒸発器の多孔質ウィック構造の湿潤を示す説明図である。
図10A図10Aは、図10の湿潤多孔質ウィック構造が蒸発を受けている様子を示す説明図である。
図11図11は、発明の好ましい実施形態に係る蒸発器の概略斜視図である。
図11A図11Aは、図11の蒸発器の断面を示す部分斜視図である。
図11B図11Bは、図11の蒸発器の断面を示す部分斜視図である。
図12図12は、本発明の別の実施形態に係る、蒸発器の一部として使用可能な多孔質ウィック構造すなわちピンフィン構造の代替構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明は、さまざまな例示的な実施形態に関連して説明される。本発明の範囲は、本明細書に開示された実施形態の特徴のあらゆる組み合わせ及びサブ組み合わせを包含することが理解される。
【0046】
本明細書で説明するように、2以上の部品又はコンポーネントが、互いに接続され、取り付けられ、固定され又は結合されるものとして説明される場合、それらは、互いに直接又は1以上の中間部品を介して、そのように接続され、取り付けられ、固定され又は結合され得る。
【0047】
本発明の多段吸着装置、その使用及び関連の吸着方法の実施形態について、冷却、大気水採取(AWH)及びそれらの組み合わせへのその適用に特に関連して以下に説明する。
【0048】
図3は、本発明の好ましい実施形態に係る、全体として参照符号10で示される多段吸着装置の概略図である。図3には、適切な吸着材から構成される又は適切な吸着材を含む吸着器ABを各々が含む複数の吸着段S1~S5が示されており、この吸着器ABは、隣接する蒸気チャンバVCに結合される。
【0049】
吸着材は、例えば充填シリカゲル又はゼオライトを含む任意の適切な吸着材であってもよい。ただし、他の吸着材が検討され得る。一般に、適切な吸着材には、シリカ、シリカゲル、ゼオライト、アルミナゲル、モルキュラシーブ、モンモリロナイト粘土、活性炭、吸湿性塩、ジルコニウム又はコバルトベースの吸着剤などの金属有機構造体(MOF)、親水性ポリマー又はセルロース繊維及びそれらの組み合わせの誘導体が含まれる。
【0050】
図3の図示には、5つの吸着段S1~S5(「効果」とも呼ばれる)が示されている。より具体的には、5つの吸着段S1~S5が順番に交互に配置され、先行する各吸着段S1、S2、S3、S4の蒸気チャンバVCがそれぞれ、対応の熱伝達構造HTを介して、後続の吸着段S2、S3、S4、S5のそれぞれの吸着器ABに結合される。さらに、加熱段HSは、第1吸着段S1に熱的に結合されて、吸着器ABに選択的に熱エネルギーを提供する一方で、冷却段CSは最後の吸着段S5に熱的に結合される。図示の例では、第1吸着段S1と第2吸着段S2との間、第2吸着段S2と第3吸着段S3との間、第3吸着段S3と第4吸着段S4との間、第4吸着段S4と第5吸着段S4との間、そして最後に、最後の第5吸着段S5と冷却段CSとの間の境界に、合計5つの熱伝達構造HTが設けられていることがわかる。以下で理解されるように、各熱伝達構造HTは、吸着装置10の脱着サイクル中に生成された脱着蒸気を、関連の熱伝達構造HTの露出面に沿って各蒸気チャンバVC内で凝縮させ、それによって、脱着を維持するために後続の吸着器ABに伝達される潜熱を放出するように設計される。
【0051】
図示の例では、加熱段HSは、実際には、すなわち、第1吸着段S1の吸着器ABを通って延在する1以上の加熱管15を設けることによって、第1吸着段S1の吸着器ABに直接統合される。1以上の加熱管15には、有利には、加熱流体入口HTINから加熱流体出口HTOUTまで循環する加熱流体が流される。これにより、脱着段階中に吸着器ABが効率的に加熱されて、蒸気の脱着が引き起こされ、かつ、脱着蒸気が隣接の蒸気チャンバVCに放出されることが確保される。ただし、第1吸着段S1の吸着器ABへの熱エネルギーの供給を確保するため、任意の他の適切な加熱段構成も考えられる。
【0052】
冷却段CSは、吸着装置10から熱を奪うために最後の吸着段S5に熱的に結合された適切な冷却構造を含む。より具体的には、図示の例では、冷却段CSは、最後の吸着段S5の熱伝達構造HTに熱的に結合された冷却基板を含む。他の実施形態では、最後の吸着段S5の熱伝達構造HTは冷却段CSの一体部分であってもよい。冷却段CSは、冷却回路CCの第1冷却セクションCC1に結合されて、冷却段CSに冷却流体を循環させる。図示の例では、冷却段CSは、第1冷却セクションCC1に結合された1以上の熱交換管20Aを含む。
【0053】
本発明によれば、冷却回路CCは、吸着器ABの各々を通って冷却流体を選択的に循環させることを可能にするように設計された第2冷却セクションCC2をさらに含む。図示の例では、冷却段CSと同様に、各吸着器ABも、そこを通って冷却流体を循環させることを可能にするように構成された1以上の熱交換管20を含み、これらの熱交換管20は第2冷却セクションCC2に結合される。
【0054】
冷却流体(水など)は、冷却流体入口CLINから冷却流体出口CLOUTまで冷却回路CCを通って循環する。より具体的には、本発明によれば、冷却回路CCは、吸着装置10の脱着サイクル中は第1冷却セクションCC1のみ(及びしたがって、冷却段CSのみ)を通って冷却流体を循環させ、吸着装置10の吸着サイクル中は第1冷却セクションCC1及び第2冷却セクションCC2の両方(及びしたがって、冷却段CS及び各吸着器AB)を通って冷却流体を循環させるように選択的に構成される。
【0055】
前述の熱交換管20A、20は、熱伝達効率を向上させるため、薄壁フィン管(すなわち、管の外壁に延びるフィンを備える管)又はプレート管(すなわち、プレート構造に一体化された管)から構成されることが好ましい。これにより、特に、所定の容積に対して熱交換器管20との良好な熱接触を保ちながら、吸着器AB内の吸着材の量を増やすことを可能にする。
【0056】
第1冷却セクションCC1及び第2冷却セクションCC2は、互いに独立して供給されることもできる一方で、第1冷却セクションCC1及び第2冷却セクションCC2は、好ましくは、スロットルバルブTV1を介して互いに結合され、このスロットルバルブTV1は、脱着サイクル中に閉じられて第1冷却セクションCC1のみを通って冷却流体を循環させ、かつ、吸着サイクル中に開かれて第1冷却セクションCC1及び第2冷却セクションCC2の両方を通って冷却流体を循環させる。
【0057】
図3には、吸着サイクル中、例えば蒸気を供給する蒸発器や湿った空気を供給する大気吸気口などの外部吸着源に吸着段S1~S5を選択的に結合するために使用する別のスロットルバルブTV2も示されている。脱着サイクル中、スロットルバルブTV2が使用されて、蒸気チャンバVCで生成される凝縮物を収集することを可能にする。
【0058】
図3Aは、図3の多段吸着装置10の脱着サイクル中の動作を示す概略図である。すでに述べたように、スロットルバルブTV1は脱着中に閉じられ、スロットルバルブTV2が作動されて、吸着段S1~S5で形成される凝縮物の収集を可能にする。したがって、冷却流体は冷却段CSにのみ供給される。加熱段HSが作動されて、第1吸着段S1の吸着器ABに熱エネルギーを供給し、蒸気の脱着を引き起こして、吸着器ABから隣接する蒸気チャンバVCに脱着蒸気を流す。脱着蒸気は、第1吸着段S1の熱伝達構造HTの表面に沿って凝縮して、第2脱着段S2の吸着器ABに伝達される潜熱が放出されて脱着を持続する。したがって、潜熱が回収されて、後続の吸着器ABに配置された吸着材を再加熱し、それによって、エネルギー利用効率を向上させる。脱着サイクル中に蒸気チャンバVC内で凝縮して形成された凝縮物が収集され、かつ、スロットルバルブTV2を介して適切な冷却剤リザーバ又は収集タンク(図3Aには図示せず)に戻される。
【0059】
好ましくは、加熱流体は、90℃~95℃の温度で加熱段HSに供給される一方、冷却流体は、50℃~60℃の温度で供給される。
【0060】
図3Bは、図3の多段吸着装置10の吸着サイクル中の動作を示す概略図である。吸着サイクル中、加熱段HSの動作が停止され、したがって、熱エネルギーの供給がすべて停止される。すでに述べたように、スロットルバルブTV1は吸着中に開かれる一方で、スロットルバルブTV2は、外部吸着質源に吸着段S1~S5を結合するために使用される。したがって、冷却段CSと各吸着器ABの各々との両方に冷却流体が供給され、したがって、脱着サイクル後に所望の吸着温度まで吸着剤を急速に冷却して、吸着を強化することを実現する。吸着剤ABの冷却により、吸着熱を除去し、かつ、吸着サイクル全体にわたって吸着剤の温度を一定に維持して、最適な吸着効率を確保することを可能にする。
【0061】
本発明の多段吸着装置は、特に、冷却のため又は大気水採取(AWH)のために使用されてもよい。具体例について図4図8を参照して説明する。冷却装置として吸着装置10を動作させる場合、専用の蒸発器によって生成された蒸気は、吸着サイクル中にスロットルバルブTV2を介して吸着段S1~S5に供給され、かつ、吸着器ABに流入して、水分子を吸着する。大気水採取(AWH)装置として吸着装置10を動作させる場合、専用の大気吸気口によって供給される湿った空気は、吸着サイクル中にスロットルバルブTV2を介して吸着段S1~S5に供給され、湿った空気吸気口に含まれる水分子を吸着させる。
【0062】
本発明の多段吸着装置は、任意の適切な数の吸着段を備えてもよい。実用的な観点から、有利に考慮され得る吸着段の整数nは2~15の範囲であってもよい。実際に使用される吸着段の実際の数は、特に、吸着器として使用される吸着材の種類と、その性能特性と、に応じて選択される。
【0063】
一般的な観点から、本発明に係る適切な冷却装置は、本質的に、冷却装置として機能する前述した少なくとも1つの多段吸着装置と、多段吸着装置に冷却流体を供給するための冷却剤リザーバと、多段吸着装置の吸着サイクル中に多段吸着装置の吸着段に蒸気を供給するための蒸発器と、を備える。蒸発器は、冷却流体の蒸発を引き起こすことができる任意の適切な蒸発器であってもよい。好ましくは、蒸発器は、図10図12を参照して本明細書でより詳細に説明するような特に有利な蒸発器構成に基づいている。
【0064】
一般的な観点から、本発明に係る適切な大気水採取(AWH)装置は、本質的に、大気水採取デバイスとして機能する、前述した少なくとも1つの多段吸着装置と、多段吸着装置に冷却流体を供給するための冷却剤リザーバと、多段吸着装置の吸着サイクル中に吸着段に湿った空気を供給するための大気吸気口と、を備える。
【0065】
図4は、本発明の一実施形態に係る四重吸着床冷却装置システム100の例示的な概略図である。冷却装置システム100は、相互接続された2対の多段吸着装置AD1~AD4、すなわち、第1冷却装置モジュールAD1/AD2を形成する第1相互接続対AD1、AD2と、第2冷却装置モジュールAD3/AD4を形成する第2相互接続対AD3、AD4と、を含む。第1冷却モジュールAD1/AD2及び第2冷却モジュールAD3/AD4に冷却流体を供給するために冷却剤リザーバRESが設けられる。例えば空間冷却に使用される適切な蒸発器EVAがさらに設けられ、第1冷却装置モジュールAD1/AD2又は第2冷却装置モジュールAD3/AD4に蒸気を選択的に供給する。図示の例では、ラジエータRADがさらに設けられており、このラジエータRADは、冷却剤リザーバRES及び蒸発器EVAに接続され、冷却剤リザーバRESから来る温かい冷却流体を再冷却する。冷却剤リザーバRESからの冷却流体の供給は適切なポンプによって確実に行われる。
【0066】
図4の冷却装置システム100は、第1冷却装置モジュールAD1/AD2が吸着サイクルを受ける場合、第2冷却装置モジュールAD3/AD4が脱着サイクルを受け、その逆も同様に受けるように構成される。第1冷却装置モジュールAD1/AD2又は第2冷却装置モジュールAD3/AD4の冷却装置が吸着サイクルを受けて各関連の吸着装置の冷却段及び吸着器に供給するかどうかに応じて、冷却流体は、冷却剤リザーバRESからラジエータRADを通じて第1冷却装置モジュールAD1/AD2又は第2冷却装置モジュールAD3/AD4に供給される。逆に、冷却流体は、第1冷却装置モジュールAD1/AD2又は第2冷却装置モジュールAD3/AD4が脱着サイクルを受けて各関連の吸着装置の冷却段のみに供給するかどうかに応じて、冷却剤リザーバRESから第1冷却装置モジュールAD1/AD2又は第2冷却装置モジュールAD3/AD4に直接供給される。
【0067】
第1冷却装置モジュールAD1/AD2又は第2冷却装置モジュールAD3/AD4が吸着サイクルを受けるかどうかに応じて、蒸発器EVAから第1冷却装置モジュールAD1/AD2又は第2冷却装置モジュールAD3/AD4に蒸気が供給される。
【0068】
脱着サイクルを受けている場合、第1冷却装置モジュールAD1/AD2又は第2冷却装置モジュールAD3/AD4で凝縮して形成された凝縮物は冷却剤リザーバRESに戻される。
【0069】
説明のため、図4は、第1冷却装置モジュールAD1/AD2が吸着サイクルを受けている一方で、第2冷却装置モジュールAD3/AD4が脱着サイクルを受けていることを示している。第1冷却装置モジュールAD1/AD2及び第2冷却装置モジュールAD3/AD4の動作は、吸着サイクルと脱着サイクルとの間で循環されて交互に実行されることが理解される。
【0070】
図4には図示していないが、第1冷却装置モジュールAD1/AD2又は第2冷却装置モジュールAD3/AD4が脱着サイクルを受けているかどうかに応じて、第1冷却装置モジュールAD1/AD2又は第2冷却装置モジュールAD3/AD4に熱エネルギーを供給するための適切な熱エネルギー源がある。
【0071】
図5は、本発明の別の実施形態に係る二重吸着床冷却装置システム200の例示的な概略図である。冷却装置システム200は、第1冷却装置モジュールを形成する第1吸着装置ADと、第2冷却装置モジュールを形成する第2吸着装置ADと、の2つの吸着装置を含む。第1冷却装置モジュールAD及び第2冷却装置モジュールADに冷却剤を供給するために冷却剤リザーバRESも設けられる。空間冷却SCに使用される適切な蒸発器EVAも同様にさらに設けられ、第1冷却装置モジュールAD又は第2冷却装置モジュールADに選択的に蒸気を供給する。図示の例では、ラジエータRADもさらに設けられ、このラジエータRADは、冷却剤リザーバRES及び蒸発器EVAに接続され、冷却剤リザーバRESから来る温かい冷却流体を再冷却する。冷却剤リザーバRESからの冷却流体の供給は、1以上の適切なポンプP1、P1’によって確保される。
【0072】
図5には、第1冷却装置モジュールAD又は第2冷却装置モジュールADが脱着サイクルを受けているかどうかに応じて、第1冷却装置モジュールAD又は第2冷却装置モジュールAD、すなわち、その加熱段HSに熱エネルギーを供給するための適切な熱エネルギー源TESも示されている。熱エネルギー源TESから対応の冷却装置モジュールAD又はADの加熱段HSへの加熱流体の供給は適切なポンプP2によって確保される。
【0073】
熱エネルギー源TESは、理想的には、太陽熱エネルギー又は産業廃熱プロセスなどの再生可能エネルギー源から生み出されてもよい。より具体的には、熱エネルギー源TESには、相転移を受け(いわゆる「相転移材料」/PCM)、かつ、いわゆる「潜熱蓄熱」(LHS)を実行することができる材料を備えるデバイスなど、熱エネルギーを貯蔵することができる任意の適切な貯蔵装置が含まれ得る。例えば塩、ポリマー、ゲル、パラフィンワックス及び金属合金を含む、さまざまなPCMが利用可能である。その他の適切な解決策としては、溶融塩又は金属などのいわゆる「顕熱蓄熱」(SHS)を実行することができる材料を依存するものであってもよい。「熱化学蓄熱」(TCS)は、熱エネルギー貯蔵を実行するためのさらに別の可能な解決策を構成する。
【0074】
図5の冷却装置システム200は、第1冷却装置モジュールADが吸着サイクルを受けている場合、第2冷却装置モジュールADが脱着サイクルを受け、かつ、その逆も同様であるように構成される。第1冷却装置モジュールAD又は第2冷却装置モジュールADが吸着サイクルを受けて各関連の吸着装置の冷却段CS及び吸着器ABに供給するかどうかに応じて、冷却流体は、冷却剤リザーバRESからラジエータRADを通じて第1冷却装置モジュールAD又は第2冷却装置モジュールADに供給される。逆に、第1冷却モジュールAD又は第2冷却モジュールADが脱着サイクルを受けて関連の冷却段CSのみに供給するかどうかに応じて、冷却流体は、冷却剤リザーバRESから第1冷却モジュールAD又は第2冷却モジュールADに直接供給される。
【0075】
第1冷却装置モジュールAD又は第2冷却装置モジュールADが吸着サイクルを受けているかどうかに応じて、蒸発器EVAから第1冷却装置モジュールAD又は第2冷却装置モジュールADに蒸気が供給される。
【0076】
脱着サイクルを受けている場合、第1冷却装置モジュールAD又は第2冷却装置モジュールADで凝縮して形成された凝縮物は冷却剤リザーバRESに戻される。
【0077】
説明のため、図5は、吸着サイクルを受けている第1冷却装置モジュールADを示しており、関連のスロットルバルブTV1が開かれてその冷却段CS及び吸着器ABが適切に冷却されることを確保する一方、関連のスロットルバルブTV2を介して蒸発器EVAから第1冷却装置モジュールADに蒸気が供給される。逆に、第2冷却装置モジュールADは脱着サイクルを受け、関連のスロットルバルブTV1が閉じられて、この場合、冷却段CSのみが冷却されることを確保する。ここでは、熱エネルギーは第2冷却モジュールADの加熱段HSに供給されて、脱着を維持し、結果として生じる凝縮物は冷却剤リザーバRESに送り返される。
【0078】
第1冷却装置モジュールAD及び第2冷却装置モジュールADの動作は、吸着サイクルと脱着サイクルとの間で循環されて交互に実行されることが再度認識されて理解される。
【0079】
図5には、吸着中及び脱着中に第1冷却装置モジュールADと第2冷却装置モジュールADとを部分真空状態に維持するための低圧システムも示されている。より具体的には、図示の例では、真空ポンプVACは、起動段階中に、システムから空気を除去し、かつ、吸着冷却装置システム200全体の圧力を部分真空圧(例えば、1kPa以下)まで下げることを目的として、冷却剤リザーバRESと蒸発器EVAとに選択的に結合され得る。部分真空が達成されると、冷却剤リザーバRES及び蒸発器EVAに真空ポンプVACを接続するバルブが閉じられてもよく、かつ、真空ポンプVACのスイッチがオフにされてもよい。理想的には、吸着中及び脱着中のシステム圧力は1~8kPa(又はそれ未満)の範囲内に維持される。
【0080】
図6は、本発明の一実施形態に係る四重吸着床大気水採取(AWH)システム300の例示的な概略図である。AWHシステム300は、各々がAWH装置として機能する合計4つの多段吸着装置AD1~AD4を含む。各AWH装置AD1~AD4に冷却流体を供給するための冷却剤リザーバRESが設けられる。周囲の大気から湿った空気を抽出するために使用される適切な大気吸気口AAIがさらに設けられて、AWH装置に湿った空気を選択的に供給する。図示の例では、ラジエータRADがさらに設けられ、このラジエータRADは、冷却剤リザーバRESから来る温かい冷却流体を再冷却するために冷却剤リザーバRESに結合されている。
【0081】
図6のAWHシステム300は、任意の時点で1つのAWH装置AD1、AD2、AD3又はAD4のみが脱着サイクルを受ける一方で、残りのすべての多段吸着装置が吸着サイクルを受けるように構成される。冷却流体は、冷却剤リザーバRESからラジエータRADを通じて、吸着サイクルを受けている各AWH装置に供給され、各関連のAWH装置の冷却段と吸着器とに供給される。逆に、冷却流体は、冷却剤リザーバRESから、脱着サイクルを受けているAWH装置に直接供給され、その冷却段にのみ供給される。
【0082】
湿った空気は、大気吸気口AAIから、吸着サイクルを受けているすべてのAWH装置に供給される。
【0083】
脱着サイクルを受けているAWH装置内での凝縮の結果として形成された凝縮物は冷却剤リザーバRESに戻される。図6に概略的に示すように、冷却剤リザーバRESには、満杯になった場合に冷却剤リザーバRESから凝縮物を選択的に排出するための排出ポートが設けられてもよい。
【0084】
説明のため、図6は、第1AWH装置AD1が脱着サイクルを受けている一方で、残りのAWH装置AD2、AD3、AD4が吸着サイクルを受けていることを示している。第1AWH装置AD1~第4AWH装置AD4の動作は、吸着サイクルと脱着サイクルとの間で循環されることが認識されて理解される。
【0085】
図6には図示していないが、関連のAWH装置が脱着サイクルを受けるかどうかに応じて、各AWH装置に熱エネルギーを供給するための適切な熱エネルギー源がある。
【0086】
図7は、本発明の別の実施形態に係る二重吸着床AWHシステム400の例示的な概略図である。AWHシステム400は、第1AWH装置として機能する第1吸着装置ADと、第2AWH装置として機能する第2吸着装置ADと、の2つの吸着装置を含む。第1AWH装置AD及び第2AWH装置ADに冷却流体を供給するために冷却剤リザーバRESも設けられる。同様に、第1AWH装置AD又は第2のAWH装置ADに湿った空気を選択的に供給するために、適切な大気吸気口AAIがさらに設けられる。図示の例では、ラジエータRADもさらに設けられ、ラジエータRADは、冷却剤リザーバRESに接続され、冷却剤リザーバRESから来る温かい冷却流体を再冷却する。冷却剤リザーバRESからの冷却流体の供給は1以上の適切なポンプP1、P1’によって再び確保される。
【0087】
図7に示すように、大気吸気口AAIは送風ファンBFに接続され、吸着サイクルを受けている関連の多段吸着装置AD又はADの吸着器ABを通じて湿った空気を強制的に循環させる。
【0088】
図7には、第1AWH装置AD又は第2AWH装置ADが脱着サイクルを受けるかどうかに応じて、第1AWH装置AD又は第2AWH装置AD、すなわち、その加熱段HSに熱エネルギーを供給するための適切な熱エネルギー源TESも示されている。熱エネルギー源TESから関連のAWH装置AD又はADの加熱段HSへの加熱流体の供給は適切なポンプP2によって再び確保される。
【0089】
図7のAWHシステム400は、第1AWH装置ADが吸着サイクルを受ける場合、第2AWH装置ADが脱着サイクルを受けるように、かつ、その逆も同様であるように構成される。第1AWH装置AD又は第2AWH装置ADが吸着サイクルを受けて関連のAWH装置の冷却段CS及び吸着器ABに供給するかどうかに応じて、冷却流体が冷却剤リザーバRESからラジエータRADを通じて第1AWH装置AD又は第2AWH装置ADに供給される。逆に、第1AWH装置AD又は第2AWH装置ADが脱着サイクルを受けて関連の冷却段CSのみに供給するかどうかに応じて、冷却流体が冷却剤リザーバRESから第1AWH装置AD又は第2AWH装置ADに直接供給される。
【0090】
第1AWH装置AD又は第2AWH装置ADが吸着サイクルを受けるかどうかに応じて、湿った空気が大気吸気口AAIから第1AWH装置AD又は第2AWH装置ADに供給される。
【0091】
脱着サイクルを受けている場合、第1AWH装置AD又は第2AWH装置ADでの凝縮の結果として形成された凝縮物は冷却剤リザーバRESに戻される。
【0092】
説明のため、図7は、吸着サイクルを受けている第1AWH装置ADを示しており、関連のスロットルバルブTV1が開かれて冷却段CSとその吸着器ABとが適切に冷却されることを確保する一方で、湿った空気が大気吸気口AAIから関連のスロットルバルブTV2を介して第1AWH装置ADに供給される。逆に、第2AWH装置ADは脱着サイクルを受け、関連のスロットルバルブTV1が閉じられて、この場合、冷却段CSのみが冷却されることを確保する。ここで、熱エネルギーは第2AWH装置ADの加熱段HSに供給されて、脱着を維持し、かつ、結果として生じる凝縮物は冷却剤リザーバRESに送り返される。
【0093】
第1AWH装置AD及び第2AWH装置ADの動作は、吸着サイクルと脱着サイクルとの間で循環されて交互に実行されることが再び認識されて理解される。
【0094】
図7には、脱着中に第1AWH装置AD又は第2AWH装置ADを部分真空状態に維持するための低圧システムも示されている。より具体的には、図示の例では、真空ポンプVACが冷却剤リザーバRESに選択的に結合されて、脱着を受けている関連のAWH装置内の部分真空圧を維持することができ、それによって、圧力によって吸着剤の細孔内の水分保持が減少するので、脱着効率を向上させ、したがって、水は吸着器ABからより容易に脱着する。対照的に、吸着は大気圧下で行われる。
【0095】
図8は、本発明の一実施形態に係る冷却及び大気水採取(AWH)複合四重吸着床ハイブリッドシステム500の例示的な概略図である。ハイブリッドシステム500は、合計4つの多段吸着装置AD1~AD4、すなわち、冷却装置として機能する第1対の吸着装置AD1、AD3と、AWH装置として機能する第2対の吸着装置AD2、AD4と、を含む。各吸着装置AD1~AD4に冷却流体を供給するための冷却剤リザーバRESが設けられる。いずれかの他方の冷却装置AD1又はAD3に選択的に蒸気を供給するため、空間冷却SCに使用される適切な蒸発器EVAが設けられる。いずれか他方のAWH装置AD2又はAD4に選択的に湿った空気を供給するため、周囲大気から湿った空気を抽出するために使用される適切な大気吸気口AAIがさらに設けられる。図示の例では、ラジエータRADがさらに設けられ、このラジエータRADは、冷却剤リザーバRES及び蒸発器EVAに結合され、冷却剤リザーバRESから来る温かい冷却流体を再冷却する。さらに、脱着中、各AWH装置AD2、AD4によって生成された凝縮物を収集するための別の凝縮物タンクCTが設けられている。
【0096】
図8のハイブリッドシステム500は、冷却装置AD1、AD3のうちの一方が吸着サイクルを受ける場合、他方の冷却装置が吸着サイクルを受けるように、かつ、AWH装置AD2、AD4のうちの一方が吸着サイクルを受ける場合、他方のAWH装置が吸着サイクルを受けるように構成される。冷却流体は、冷却剤リザーバRESからラジエータRADを通じて、吸着サイクルを受けている各吸着装置に供給され、各関連の吸着装置の冷却段及び吸着器に供給される。逆に、冷却流体は、冷却剤リザーバRESから、脱着サイクルを受けている吸着装置に直接供給され、その冷却段にのみ供給される。
【0097】
蒸気は、蒸発器EVAから、吸着サイクルを受けている関連の冷却装置AD1又はAD3に供給される一方で、湿った空気は、大気吸気口AAIから、吸着サイクルを受けている関連のAWH装置AD2又はAD4に供給される。
【0098】
脱着サイクルを受けている冷却装置AD1又はAD3内での凝縮の結果として形成された凝縮物は冷媒リザーバRESに戻される一方で、脱着サイクルを受けているAWH装置AD2又はAD4内での凝縮の結果として形成された凝縮物は凝縮物タンクCTに収集される。
【0099】
説明のため、図8では、冷却装置AD1とAWH装置AD2とが吸着サイクルを受けている一方で、他の冷却装置AD3とAWH装置AD4とが脱着サイクルを受けていることを示している。冷却装置AD1、AD3及びAWH装置AD2、AD4の動作は、吸着サイクルと脱着サイクルとの間で循環されることが認識されて理解される。
【0100】
図6には図示していないが、関連の吸着装置が脱着サイクルを受けるかどうかに応じて、各冷却装置AD1、AD3及びAWH装置AD2、AD4に熱エネルギーを供給するための適切な熱エネルギー源がある。
【0101】
図5に示すシステムと同様に、吸着中及び脱着中に各冷却装置AD1、AD3を部分真空状態に維持するための低圧システムが設けられてもよい(図5の低圧システムを参照して前述したコメントは、図8に示す冷却装置セクションに直接転用可能である)。同様に、図7に示すシステムと同様に、脱着サイクルを受けているAWH装置AD2、AD4を部分真空状態で維持するための低圧システムが設けられてもよい(図7の低圧システムを参照して前述した説明は、図8に示すAWHセクションに直接適用可能である)。
【0102】
より一般的に言えば、本発明は、特に冷却又は大気水採取(AWH)の目的で多段階吸着を実行する方法を提供し、当該方法は、以下のステップ:
(a)交互の脱着サイクル及び吸着サイクルで動作するように設計された少なくとも1つの多段吸着モジュールを提供するステップであって、前記多段吸着モジュールは、隣接する蒸気チャンバに結合された吸着器を備える2以上の連続する吸着段を含み、後続の各吸着段の前記吸着器は、熱伝達構造を介して先行の吸着段の前記蒸気チャンバに熱的に結合される、提供するステップと;
(b)少なくとも最初の前記吸着段の前記吸着器に熱エネルギーを供給して蒸気の脱着を引き起こし、かつ、最後の前記吸着段の前記吸着器から熱エネルギーを奪って脱着蒸気の凝縮を引き起こし、それによって、脱着蒸気が各吸着器によって放出されて、隣接する各蒸気チャンバに流れ、そこで各熱伝達構造の表面に沿って凝縮し、それによって潜熱を放出して、潜熱が後続の各吸着段の前記吸着器に伝達されて蒸気脱着を維持することによって、前記多段吸着モジュールを前記脱着サイクルで動作させるステップと;
(c)最初の前記吸着段の前記吸着器への熱エネルギーの供給をすべて停止し、かつ、すべての吸着段の前記吸着器から熱エネルギーを奪って前記吸着器を冷却して吸着を維持することによって、前記吸着サイクルで前記多段吸着モジュールを動作させるステップと、を含む。
【0103】
本発明の吸着装置の冷却装置としての性能に関して、冷媒の蒸発が重要な役割を果たすことが理解される。現在の蒸発器の設計では、熱伝達のボトルネックは、主に蒸発器の冷たい側からの非効率的な熱伝達に起因する。
【0104】
図9Aは、関連の熱交換器構造を冷却剤/冷媒に直接浸漬することにより熱が冷却剤/冷媒に伝達される浸漬式蒸発器の既知の原理を示す概略図である。効率的な冷却には、浸漬式熱交換器領域全体の最適な液体接触が必要とされる。この解決策の主な欠点は、(i)熱交換器領域を完全に浸すために必要な巨大な液体プールの容積により、高い輻射熱が生じること、(ii)蒸発は通常、液体プール容積の液体-蒸気界面で生じるので、蒸発のための熱伝達面積が不十分であること、及び、(iii)熱交換器と冷媒との間の熱伝達係数が低いことにある。
【0105】
図9Bは、冷却剤がノズルを介して熱交換器の外面に噴霧されるスプレー式蒸発器の既知の原理を示す概略図である。この他の解決策には、噴霧によって薄膜蒸発が引き起こされるので、浸漬式蒸発器に比べて高い熱伝達係数を実現することができるという利点がある。液体の膜厚が最小限に抑えられるので、熱抵抗が最小限に抑えられ、蒸発熱伝達を向上させる。ただし、この解決策を実装すると、スプレーノズル全体で大きな圧力降下を引き起こすので、ポンプの補助を必要とし、及びしたがって、電力消費を増加させる。さらに、一定量の冷却剤が蒸発しないので、冷却剤の使用量は最適とは言えず、蒸発しなかった冷却剤を収集して再循環させる必要があり、通常、専用のポンプを必要とする。
【0106】
図10及び図10Aは、本発明の特に好ましい実施形態に係る蒸発器EVAの基本原理を説明する概略図である。この蒸発器EVAは、図4図5及び図8を参照して説明した実施形態に関連するなど、冷却用途に使用される場合、前述の多段吸着装置と組み合わせて適切に使用可能である。本質的に、この蒸発器EVAは、(i)例えば空間冷却に使用される温かい流体Wなどの熱源からの熱伝達を可能にするように構成された適切な熱交換器構造HEX、(ii)熱交換器構造HEXに熱的に結合され、かつ、水などの適切な液体冷却媒体によって湿潤可能であるように構成された多孔質ウィック構造WS、及び、(iii)液体冷却媒体によって多孔質ウィック構造WSを湿潤するように構成された冷却剤分配システムの使用に依存している。図10は、冷却剤分配システムによって冷却剤入口CLIで供給される液体冷却媒体によって湿潤されるプロセスにある多孔質ウィック構造WSを示している。多孔質ウィック構造WSの湿潤は、図10Aに概略的に示すように、多孔質ウィック構造WSが、完全にかつ最適に湿潤され、かつ、蒸発が必要な限り湿潤状態を維持することを確保するように選択された1以上の適切な冷却剤入口に液体冷却媒体を供給することによって、毛細管作用によって実行されることが好ましい。多孔質ウィック構造WSへの液体冷却媒体の連続(又は半連続)供給を確保するのに十分な適切なポンプ又はマイクロポンプを備えることによって、液体冷却媒体の供給が確保されてもよい。例えば、図5の冷却装置システム200を参照すると、適切な量の冷却流体が冷却剤リザーバRESから取り出されて、ポンプP1によってラジエータRADを介して蒸発器EVAの多孔質ウィック構造WSに供給され、蒸発による冷却を引き起こすことができる。このような蒸発の副産物、すなわち、冷却流体の蒸気は、前述のように吸着を受けている関連の1以上の多段吸着装置に供給され得る。
【0107】
好ましくは、熱交換器構造HEXが、熱源として機能する温かい流体Wを導くための複数のチャネル(図10及び図10Aでは説明のために1つのみが示されている)を含むように構成される。図10及び図10Aでは、温かい流体Wが、温かい液体入口WINから冷たい液体出口WOUTへと左から右へ流れる様子が概略的に示されている。
【0108】
多孔質ウィック構造WSは、おそらく1以上の熱伝導性中間層又はコーティングを介して、熱交換器構造HEX上に直接的又は間接的に設けられてもよい。適切な熱伝導層又はコーティングは、設けられる場合、考慮の対象となり得、これには、限定されないものの、微細ダイヤモンドコーティング、Cu-Zr/ダイヤモンド複合材などのダイヤモンド強化粒子を有する銅マトリックス複合材、チタンコーティングダイヤモンド粒子、並びに、インジウム、金属酸化物及びシリカ化合物などの金属化合物を含む熱接着剤が含まれる。いずれの場合も、多孔質ウィック構造WSは熱の抽出と蒸発器の効率とに重要な役割を果たすように意図されているので、最大の冷却効率を確保するために熱交換器構造HEXと多孔質ウィック構造WSとの間の良好な熱伝導率が確保されるべきである。より具体的には、多孔質ウィック構造WSは、以下でより詳しく説明するように、蒸発によって冷却を引き起こすように設計される。
【0109】
多孔質ウィック構造は、任意の適切な技術によって形成されてもよい。結果として得られる焼結構造の多孔度を所望の許容範囲内に適切に制御可能であるので、焼結が特に考慮される。その点では、多孔質ウィック構造WSを製造するために使用される実際の技術に関係なく、その多孔度は理想的には約20%~80%であるべきである。本発明の好ましい実施形態によれば、多孔質ウィック構造は、平均サイズが約5μm~50μmの細孔を有することが有利である。
【0110】
多孔質ウィック構造WSの厚さは、特定の蒸発器の構成及び要件に従って選択される。好ましくは、このような厚さは約0.5mm~最大5mmの範囲とされ、通常、これは、構造の適切な湿潤と最適な冷却効率とを確保するのに十分である。ただし、冷却電力負荷と関連の蒸発器の幾何学的制約とに応じて他の寸法が検討され得る。
【0111】
多孔質ウィック構造WSの構成並びにそれを製造及び形成するために使用される関連技術に関する前述の考慮事項は、本明細書に開示されるすべての実施形態に適用可能である。
【0112】
動作中、熱交換器構造HEXを通って流れる流入する温かい流体Wからの熱エネルギーは、湿った多孔質ウィック構造WSに伝達される。湿った多孔質ウィック構造の露出部分と相互作用する蒸気流の作用により、蒸発チャンバ内の蒸気空間と湿った多孔質ウィック構造WSとの間の界面で蒸発冷却が引き起こされ、薄膜蒸発と呼ばれるプロセスが行われる。その結果、システムから熱が奪われ、多孔質ウィック構造WSを湿らせるために使用される液体冷却媒体が蒸気に変わる。したがって、本発明の蒸発器はこの蒸発冷却原理に基づいている。
【0113】
図11図11A及び図11Bは、本発明の好ましい実施形態に係る蒸発器EVAの概略的な斜視図である。参照符号1000及び3000はそれぞれ、熱交換器構造HEX及び多孔質ウィック構造WSを示している一方で、参照符号2000は全体として、関連の冷却剤分配システム2000を示している。
【0114】
図示の例では、蒸発器EVAは、図示するように垂直位置に配置されることになっており(ただし、水平位置/配向を含む他の配置も考えられる)、熱交換器構造1000(HEX)は、液体入口マニホールド1000A及び液体出口マニホールド1000Bに結合され、温かい液体Wが、温かい液体入口WINから冷たい液体出口WOUTまで、熱交換器構造1000(HEX)を通って循環する。より具体的には、熱交換器構造1000(HEX)は、図11A及び図11Bの断面に示すように、複数のチャネル1000aを示すように構成され、これらのチャネルは垂直方向に配置される。
【0115】
多孔質ウィック構造3000(WS)は、図11Bに示すように、熱交換器構造1000(HEX)の両側とその上部とに設けられている。図示の例では、多孔質ウィック構造3000(WS)は、図示するように、複数の長手方向フィンを有するフィン構造として構成される。ただし、多孔質ウィック構造WSは、任意の他の適切な方法で構築されてもよい。例えば、図12は、熱交換器構造1000(HEX)上に設けられた多孔質ウィック構造3000(WS)を示しており、この多孔質ウィック構造3000(WS)は、熱交換器構造1000(HEX)から離間して延在する複数のピンフィンを有するピンフィン構造として構成されている。この交互多孔質ウィック構造の構成は、蒸発熱伝達面積が増大し、蒸発効率を向上させるという利点を有する。図11図12に示されているフィン構造及びピンフィン構造以外にも、他の構造が考慮されることが理解される。
【0116】
図示の例では、冷却剤分配システム2000は、多孔質ウィック構造3000(WS)の上部の上方に位置決めされた上部冷却剤ディスペンサ2000Aと、多孔質ウィック構造3000(WS)の側部の横に配置された2対の側方冷却剤ディスペンサ2000Bと、を有利に含む。液体冷却媒体は、図11に示すように、右上隅に設けられた冷却剤入口CLIで冷却剤分配システム2000に供給される。有利には、上部冷却剤ディスペンサ2000Aは、図11Bに示すように、上部冷却剤ディスペンサ2000Aの底部に複数の滴下孔2000aを含み、多孔質ウィック構造3000(WS)の上部を滴下で湿らす。一方で、各側方冷却剤ディスペンサ2000Bは、図11Aに示すように、それに沿って配置される多孔質ウィック構造3000(WS)の関連の側方部分に連通する長手方向分配スリット2000bを有利に含む。
【0117】
図示の冷却剤分配システム2000は、毛細管現象によって多孔質ウィック構造3000(WS)の最適な湿潤を確保するのに十分である。必要に応じて、多孔質ウィック構造3000(WS)に沿って及び直接接触する長手方向の冷却剤ディスペンサをさらに追加することによって、追加の湿潤ポイントを考慮してもよい。
【0118】
図11図11A及び図11Bに示す蒸発器EVAは、本発明に係る蒸発器の1つの可能な実施形態であり、他の蒸発器構成が考慮され得る。例えば、複数の熱交換器構造HEXの配列を並列に(垂直方向又は水平方向のいずれの方向でも)配置し、各多孔質ウィック構造WSを湿らすために液体冷却媒体を適切に分配する共通の冷却剤分配システム、及び、例えば各熱交換器構造HEXに温かい液体を供給するための共通の流体供給源を有することによって、より高い冷却力を達成することができる。
【0119】
添付の請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、上述した実施形態に対してさまざまな変更及び/又は改良が加えられてもよい。
【0120】
例えば、図4は、各々が1対の多段吸着装置を含む第1冷却装置モジュール及び第2冷却装置モジュールが交互に吸着-脱着サイクルで動作される四重吸着床冷却装置システムの例示的な例を示しているが、他方の吸着装置(例えば、AD2)が吸着を開始する前に一方の吸着装置(例えば、AD1)が吸着サイクルを完了し、同様に、他方の吸着装置(例えば、AD4)が脱着を開始する前に一方の吸着装置(例えば、AD3)が脱着サイクルを完了するように、段階的に関連の多段吸着装置を動作させることを完全に考慮してもよい。吸着サイクルと脱着サイクルとの部分的な重複(例えば、50%の重複)が考慮されてもよい。
【0121】
より一般的には、本発明の多段吸着装置の一部を形成する関連の吸着器は、任意の適切な方法で構成及び構築されてもよい。1つの特に有利な解決策は、吸着器を構成する吸着材をコーティング又は層として熱伝達構造及び熱交換器管に直接塗布することから構成されてもよい。
【符号の説明】
【0122】
10 多段吸着装置
HS 多段吸着装置10の加熱段
HTIN 加熱段HSの加熱流体入口
HTOUT 加熱段HSの加熱流体出口
S1~S5 多段吸着装置10の吸着段
AB 吸着材(例えば、充填シリカゲル又はゼオライトなど)を含む吸着器
VC 蒸気チャンバの隣接する吸着器
HT 熱伝達構造
CS 多段吸着装置10の冷却段
CLIN 冷却段CSを含む冷却回路CCの冷却流体入口
CLOUT 冷却段CSを含む冷却回路CCの冷却流体出口
CC 冷却回路
CC1 冷却回路CCの第1冷却セクション(冷却段CSの冷却)
CC2 冷却回路CCの第2冷却セクション(吸着器ABの冷却)
TV1 第1冷却セクションCC1に第2冷却セクションCC2を選択的に結合するためのスロットルバルブ
TV2 吸着段S1~S5への蒸気の選択的な供給(冷却に使用する場合)又は吸着段S1~S5への湿った空気の供給(大気水採取に使用する場合)ためのスロットルバルブ
15 第1吸着段S1の吸着器ABを通って延在する加熱管
20A 冷却段CS(冷却回路CCの第1冷却セクションCC1の一部)を通って延在する熱交換器管
20 各吸着器ABを通って延在する熱交換器管(冷却回路CCの第2冷却セクションCC1の一部)
100 冷却装置システム(四重吸着床冷却装置システム)
200 冷却装置システム(二重吸着床冷却装置システム)
300 大気水採取(AWH)システム(四重吸着床AWHシステム)
400 大気水採取(AWH)システム(二重吸着床AWHシステム)
500 冷却及び大気水採取(AWH)複合システム(四重吸着床冷却装置/AWHシステム)
AD1 多段吸着装置/冷却装置(図4及び図8)/大気水収集装置(図6
AD2 多段吸着装置/冷却装置(図4)/大気水採取装置(図6及び図8
AD3 多段吸着装置/冷却装置(図4及び図8)/大気水採取装置(図6
AD4 多段吸着装置/冷却装置(図4)/大気水採取装置(図6及び図8
AD 多段吸着装置/冷却装置(図5)/大気水採取装置(図7
AD 多段吸着装置/冷却装置(図5)/大気水採取装置(図7
RES 冷却剤リザーバ
VAC 真空ポンプ
RAD 排熱用ラジエータ(周囲)
TES 熱エネルギー源(例えば、太陽エネルギー収集システムによって生成される熱エネルギー又は産業廃熱源から得られる熱エネルギー)
EVA 蒸発器
SC 空間冷却
AAI 大気吸気口(湿った空気吸気口)
BF 送風ファン
CT 凝縮物タンク
P1 冷却剤リザーバRESからの冷却流体の供給用ポンプ
P2 熱エネルギー源TESからの加熱流体の供給用ポンプ
W 冷却されるべき温かい液体(例えば、空間冷却用の水)
IN 蒸発器EVAの温かい液体入口(空間冷却)
OUT 蒸発器EVAの冷たい液体出口(空間冷却)
WS (焼結)多孔質ウィック構造
HEX 熱交換器基板/冷却されるべき液体のチャネリングW
CLI 多孔質ウィック構造WSの湿潤用冷却剤入口
1000 熱交換器基板/冷却されるべき液体のチャネリングW
1000a 冷却されるべき液体用チャネルW
1000A 液体入口マニホールド
1000B 液体出口マニホールド
2000 冷却剤分配システム
2000A 上部冷却剤ディスペンサ
2000a 上部冷却剤ディスペンサ2000Aの底部に設けられたドリップ穴
2000B 横方向冷却剤ディスペンサ
2000b 横方向冷却剤ディスペンサ2000Bの側面に沿って設けられた長手方向分配スリット
3000 (焼結)多孔質ウィック構造(フィン構造)
1000 熱交換器基板
3000 (焼結)多孔質ウィック構造(ピンフィン構造)
図1
図2
図3
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図10A
図11
図11A
図11B
図12
【国際調査報告】