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特表2024-541471特定の水溶性UV遮断剤と、塩基と、揮発性油と、疎水性皮膜形成ポリマーと、ポリオキシアルキレン化直鎖状ポリジメチルメチルシロキサンと、ビタミンB3とを含む化粧用油中水型エマルション
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】特定の水溶性UV遮断剤と、塩基と、揮発性油と、疎水性皮膜形成ポリマーと、ポリオキシアルキレン化直鎖状ポリジメチルメチルシロキサンと、ビタミンB3とを含む化粧用油中水型エマルション
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/06 20060101AFI20241031BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 8/894 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20241031BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/31
A61K8/891
A61K8/46
A61K8/49
A61K8/19
A61K8/894
A61K8/67
A61Q1/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024530538
(86)(22)【出願日】2022-11-18
(85)【翻訳文提出日】2024-07-19
(86)【国際出願番号】 EP2022082417
(87)【国際公開番号】W WO2023094277
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】2112584
(32)【優先日】2021-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ソニア・エイロー
(72)【発明者】
【氏名】マリナ・メルニク
(72)【発明者】
【氏名】ジェラルディーヌ・ドゥジャン
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB031
4C083AB032
4C083AB171
4C083AB172
4C083AB231
4C083AB241
4C083AB332
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC541
4C083AC581
4C083AC851
4C083AC911
4C083AC912
4C083AD021
4C083AD022
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD161
4C083AD162
4C083AD531
4C083AD631
4C083AD632
4C083BB14
4C083BB43
4C083BB46
4C083CC12
4C083DD23
4C083DD32
4C083EE07
4C083EE12
(57)【要約】
特定の水溶性UV遮断剤と、塩基と、揮発性油と、疎水性皮膜形成ポリマーと、ポリオキシアルキレン化直鎖状ポリジメチルメチルシロキサンと、ビタミンB3とを含む化粧用油中水型エマルション。本発明は、特にケラチン物質をコーティングするための、より詳細にはケラチン物質をメイクアップ及び/又はケアするための、特に生理学的に許容可能な媒体を含む、油中水型エマルションの形態の組成物であって、a)揮発性炭化水素油、揮発性シリコーン油及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの揮発性油を含む少なくとも1つの油性連続相と、b)少なくとも1つのベンジリデンカンフルスルホン酸基を含む少なくとも1つの水溶性有機UV遮断剤及び/又は少なくとも1つのベンゾオキサゾールスルホン酸基を含む少なくとも1つの水溶性有機UV遮断剤を含む、前記油性相中に分散された少なくとも1つの水性相と、c)前記水溶性有機UV遮断剤を部分的に又は完全に中和することができる少なくとも1つの有機又は無機塩基と、d)少なくとも1つの疎水性皮膜形成ポリマーと、e)HLB≦8.0であるポリオキシアルキレン化直鎖状ポリジメチルメチルシロキサンから選択される少なくとも1つの乳化界面活性剤と、f)少なくとも1つのビタミンB3とを含み、不揮発性エステル油を含有しない組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特にケラチン物質をコーティングするための、より詳細にはケラチン物質をメイクアップ及び/又はケアするための、特に生理学的に許容可能な媒体を含む、油中水型エマルションの形態の組成物であって、
a)揮発性炭化水素油、揮発性シリコーン油及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの揮発性油を含む少なくとも1つの油性連続相と、
b)少なくとも1つのベンジリデンカンフルスルホン酸基を含む少なくとも1つの水溶性有機UV遮断剤及び/又は少なくとも1つのベンゾオキサゾールスルホン酸基を含む少なくとも1つの水溶性有機UV遮断剤を含む、前記油性相中に分散された少なくとも1つの水性相と、
c)前記水溶性有機UV遮断剤を部分的に又は完全に中和することができる少なくとも1つの有機又は無機塩基と、
d)少なくとも1つの疎水性皮膜形成ポリマーと、
e)HLB≦8.0であるポリオキシアルキレン化直鎖状ポリジメチルメチルシロキサンから選択される少なくとも1つの乳化界面活性剤と、
f)少なくとも1つのビタミンB3と
を含み、不揮発性エステル油を含有しない組成物。
【請求項2】
前記1つ又は複数の揮発性炭化水素油は、石油由来のC~C16イソアルカンから選択され、特に、前記揮発性炭化水素油は、イソドデカンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記1つ又は複数の揮発性シリコーン油は、10-6~8×10-6/sの範囲の粘度を有する直鎖状シリコーン油から選択され、特にオクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン及びそれらの混合物から選択され、より具体的にはドデカメチルペンタシロキサンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも1つの揮発性炭化水素油と少なくとも1つの揮発性シリコーン油との混合物、特にイソドデカンとドデカメチルペンタシロキサンとの混合物を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
油性相の総濃度は、前記組成物の総質量に対して20質量%~95質量%で変動し、より詳細には30質量%~60質量%で変動する、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記揮発性油は、前記組成物の総質量に対して5質量%~45質量%の範囲、より優先的には10質量%~40質量%の範囲、更により優先的には12質量%~35質量%の範囲の濃度で存在する、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記水性相は、前記組成物の総質量に対して少なくとも20質量%、好ましくは30質量%~60質量%、より詳細には35質量%~50質量%の範囲の濃度で存在する、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記水溶性UV遮断剤は、テレフタリリデンジカンフルスルホン酸、1,4-ビス-ベンズイミダゾリル-フェニレン-3,3’,5,5’-テトラスルホン酸、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸及びそれらの混合物から選択され、より詳細にはフェニルベンズイミダゾールスルホン酸である、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記水溶性UV遮断剤は、前記組成物の総質量に対して0.1質量%~10質量%の範囲、より優先的には1質量%~8質量%の範囲、更により優先的には2質量%~5質量%の範囲の濃度で本発明の前記組成物中に存在する、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記有機塩基は、アミノ酸、アルカノールアミン及びそれらの混合物から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記無機塩基は、アルカリ金属陽イオン塩基及びアルカリ土類金属陽イオン塩基から選択され、より詳細には水酸化ナトリウムである、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記疎水性皮膜形成ポリマーは、
- シリコーン樹脂;
- ブロックエチレンコポリマー;
- カルボシロキサンデンドリマー由来の少なくとも1つの単位を含むビニルポリマー;
- シリコーン-アクリレートコポリマー;
- それらの混合物
から選択され;より詳細にはトリメチルシロキシケイ酸樹脂から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物の総質量に対して0.5質量%~15質量%、より優先的には1質量%~10質量%、より詳細には2質量%~7質量%の疎水性皮膜形成ポリマーを活性物質として含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記直鎖状ポリオキシアルキレン化ポリジメチルメチルシロキサン乳化界面活性剤は、以下の式(I):
【化1】
(式中、R、R及びRは、互いに独立して、C~Cアルキル基又は-(CH-(OCHCH-(OCHCHCH-OR基を表し、少なくとも1つのR、R又はR基は、アルキル基ではなく、Rは、水素、C~Cアルキル基又はC~Cアシル基であり;
Aは、0~200の範囲の整数であり;
Bは、0~50の範囲の整数であり;ただし、A及びBは、同時に0に等しいことがないことを条件とし;
xは、0~6の範囲の整数であり;
yは、1~30の範囲の整数であり;
zは、0~30の範囲の整数である)
に対応する、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
式(I)の前記直鎖状ポリオキシアルキレン化ポリジメチルメチルシロキサン乳化界面活性剤は、R=R=メチル基であり、x=0~3であり、及びRが水素であるものから選択される、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記直鎖状ポリオキシアルキレン化ポリジメチルメチルシロキサン乳化界面活性剤は、
- PEG/PPG-8/8ジメチコン;
- PEG/PPG-18/18ジメチコン;
- シクロペンタシロキサン及びPEG/PPG-18/18ジメチコン混合物;
- シクロテトラシロキサン及びシクロペンタシロキサン及びPEG/PPG-18/18ジメチコン混合物;
- ジメチコン及びPEG/PPG-18/18ジメチコン混合物;
- PEG/PPG-19/19ジメチコン及びC13~C16イソパラフィン及びC10~C13イソパラフィン混合物;
- PEG-3ジメチコン;
- PEG-10ジメチコン;
- それらの混合物
から選択される、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
PEG/PPG-18/18ジメチコンを好ましくはシリコーン油、より詳細にはジメチコンタイプのシリコーン油と組み合わせて含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
PEG/PPG-18/18ジメチコンとPEG-10ジメチコンとの混合物、好ましくはPEG/PPG-18/18ジメチコンと、ジメチコンと、PEG-10ジメチコンとの混合物を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記直鎖状ポリオキシアルキレン化ポリジメチルメチルシロキサンは、前記組成物の総質量に対して0.1質量%~10質量%の範囲、より優先的には0.5質量%~7質量%の範囲、更により優先的には1質量%~4質量%の範囲の濃度で存在する、請求項1~18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記ビタミンBは、ナイアシンアミドである、請求項1~19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記ビタミンBは、前記組成物の総質量に対して0.01質量%~20質量%、更により良好には0.1質量%~10質量%、更により好ましくは0.5質量%~5質量%の範囲の濃度で活性物質として存在する、請求項1~20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
好ましくは、二酸化チタン及び/又は酸化鉄から選択される、特に疎水性表面処理剤、とりわけN-アシル化アミノ酸及び/又はその塩の1つ、特にグルタミン酸誘導体及び/又はその塩の1つ、とりわけステアロイルグルタメート、例えばステアロイルグルタミン酸アルミニウムなどでコーティングされた少なくとも1つの顔料を追加的に含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
前記組成物の総質量に対して少なくとも5質量%の顔料、より優先的には5質量%~40質量%の顔料、特に10質量%~30質量%、より詳細には10質量%~20質量%の顔料を含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項24】
好ましくは、少なくとも1つのシリコーン油、特にジメチコンタイプの直鎖状シリコーン油中で運ばれるゲル形態の少なくとも1つの非乳化オルガノポリシロキサンエラストマーを含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
前記組成物の質量に対して0.1質量%~10質量%、好ましくは0.5質量%~5質量%で変動する含量の非乳化オルガノポリシロキサンエラストマーを活性物質として含む、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
疎水性シリカエアロゲル粒子、前述のもの以外のシリカ粒子及びそれらの混合物から選択されるシリカ粒子を追加的に含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
ファンデーションの形態で提供される、請求項1~26のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケラチン物質をケア及び/又はメイクアップする分野に関し、より詳細には、皮膚をケア及び/又はメイクアップすることを目的とする組成物を提供することを対象とする。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、色が均一である平滑な面ではなく、毛穴、小ジワ、シワ、吹き出物、瘢痕及び乾燥部分といった大小の起伏を呈し、そのため、表面には多少の凸凹がある。かなりの多くの場合、この凸凹がある表面は、全体としてきれいに見えるが、この凸凹は、ときに表面の見栄えが悪いとみなされる。
【0003】
毛穴、シワ及び/若しくは小ジワ並びに/又は瘢痕など、皮膚の起伏の不完全性を目立たなくし、滑らかに整え、且つ/又は一様にするために、化粧用メイクアップ及び/又はケア組成物が広く用いられている。この点において、現在まで多くの固体又は液体の無水又は含水配合物が開発されてきた。
【0004】
ファンデーションなどのメイクアップ組成物の適用は、シミ及び色素異常を目立たなくし、毛穴及びシワなどの凹凸による難点を見えにくくし、吹き出物及びニキビ跡を隠すことを可能にすることにより、一様でない皮膚を美しく見せることを促進するための最も効果的なアプローチであり、この点に関して追求されている主要な特性の1つがカバー力である。一般に、これらの組成物では、ソフトフォーカス効果がある充填剤として知られる粒子と組み合わせて、酸化鉄及び酸化チタンなどの金属酸化物に基づく大量の顔料が使用される。しかし、これらの組成物は、毛穴及びシワなどの凸凹に蓄積する傾向があり、その結果、皮膚上の不均一な蓄積物がその欠陥を強調し、皮膚上で不自然なものとして感じられる、艶のない仕上がりとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、保存時に安定であり、特に温度変化に対して安定であり、良好なカバー性能によって効果的に皮膚の欠陥を滑らかに整え、隠し、それが1日中長続きする(摩耗特性)こと及び皮膚などのケラチン物質上において、凸凹を強調する効果及び隠蔽効果を実質的に低下させる、実際には更に抑制すること、肌の色の良好な均一性及び好ましくは艶のない感じがより低く、よりナチュラルな外観及びまた消費者の快適さを満たす美容特性も得ることを可能にする、新規な化粧用組成物を見出すことが依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一連のその研究において、本出願人企業は、驚くべきことに、この目的が、油中水型エマルションの形態の組成物であって、
a)揮発性炭化水素油、揮発性シリコーン油及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの揮発性油を含む少なくとも1つの油性連続相と、
b)少なくとも1つのベンジリデンカンフルスルホン酸基を含む少なくとも1つの水溶性有機UV遮断剤及び/又は少なくとも1つのベンゾオキサゾールスルホン酸基を含む少なくとも1つの水溶性有機UV遮断剤を含む、前記油性相中に分散された少なくとも1つの水性相と、
c)前記水溶性有機UV遮断剤を部分的に又は完全に中和することができる少なくとも1つの有機又は無機塩基と、
d)少なくとも1つの疎水性皮膜形成ポリマーと、
e)HLB≦8.0であるポリオキシアルキレン化直鎖状ポリジメチルメチルシロキサンから選択される少なくとも1つの乳化界面活性剤と、
f)少なくとも1つのビタミンB3と
を含み、不揮発性エステル油を含有しない組成物で達成され得ることを発見した。
【0007】
この発見が本発明の基礎となる。
【0008】
本発明は、特にケラチン物質をコーティングするための、より詳細にはケラチン物質をメイクアップ及び/又はケアするための、特に生理学的に許容可能な媒体を含む、油中水型エマルションの形態の組成物であって、
a)揮発性炭化水素油、揮発性シリコーン油及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの揮発性油を含む少なくとも1つの油性連続相と、
b)少なくとも1つのベンジリデンカンフルスルホン酸基を含む少なくとも1つの水溶性有機UV遮断剤及び/又は少なくとも1つのベンゾオキサゾールスルホン酸基を含む少なくとも1つの水溶性有機UV遮断剤を含む、前記油性相中に分散された少なくとも1つの水性相と、
c)前記水溶性有機UV遮断剤を部分的に又は完全に中和することができる少なくとも1つの有機又は無機塩基と、
d)少なくとも1つの疎水性皮膜形成ポリマーと、
e)HLB≦8.0であるポリオキシアルキレン化直鎖状ポリジメチルメチルシロキサンから選択される少なくとも1つの乳化界面活性剤と、
f)少なくとも1つのビタミンB3と
を含み、不揮発性エステル油を含有しない組成物に関する。
【0009】
本発明は、ケラチン物質をコーティングする、より特に皮膚などのケラチン物質をメイクアップ及び/又はケアする方法において、上記で定義されたようなエマルションの、ケラチン物質への適用を含むことを特徴とする方法にも関する。
【0010】
本発明は、より詳細には、上記で定義されるようなエマルションの皮膚への適用を含むことを特徴とする、皮膚に対するメイクアップ及び/又はケアのための方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
定義
本発明に関連して、「ケラチン物質」という用語は、皮膚及びより具体的には顔、頬、手、胴体、肢及び大腿などの領域、眼の周辺領域並びに眼瞼を意味する。
【0012】
「生理学的に許容可能な」という用語は、好感を覚える色、匂い及び感触を呈し、消費者にこの組成物の使用を敬遠させかねない許容できない不快感(ヒリつき又はこわばり)を生じさせない、皮膚及び/又はその外見的な身体成長と適合性を有することを意味するものと理解される。
【0013】
本発明の意味内では、「乳化界面活性剤」という語は、両親媒性界面活性剤化合物、即ち異なる極性の2つの部分を呈する化合物を意味するものと理解される。一般に、一方が脂溶性(油性相中で可溶性又は分散性)であり、他方が親水性(水中で可溶性又は分散性)である。乳化界面活性剤は、分子における親水性部分と脂溶性部分との比であるそれらのHLB(親水性脂溶性バランス)の値によって特徴付けられる。HLBという用語は、当業者に周知であり、例えば「The HLB System.A Time-Saving Guide to Emulsifier Selection」(ICI Americas Inc.;1984によって公開)に記載されている。乳化界面活性剤について、W/O型エマルションを調製するためにHLBは、一般的に、3~8の範囲である。本発明に従って使用される界面活性剤のHLBは、グリフィン法又はデイビス法によって決定され得る。
【0014】
「油中水型エマルション」という用語は、混ざらない油性相及び水性相を含み;肉眼的に均一な組成物を得るために水性相が油性相中で液滴の形態で分散される(連続として記載)、組成物を意味すると理解される。
【0015】
「油」という用語は、環境温度(25℃)及び大気圧(760mmHg、即ち10Pa)で液体である脂肪有機物質を意味すると理解される。
【0016】
「不揮発性油」という用語は、周囲温度(25℃)及び大気圧(760mmHg)で少なくとも数時間、ケラチン物質上に留まり、且つ特に10-3mmHg(0.13Pa)未満の蒸気圧を有する油を意味すると理解される。
【0017】
用語「不揮発性エステル油」は、単一のエステル化合物又はエステル化合物の混合物から構成される任意の不揮発性油を意味すると理解される。前記エステル油又はエステル油の混合物は、特に、12~30個の炭素原子を有するカルボン酸の1つ以上のモノ-、ジ-又はトリエステル並びにモノアルコール又はポリオール、例えばグリコール、特にアルキレングリコール、例えばINCI名:Propylene Glycol Dicaprylate/Dicaprate and Butylene Glycol Dicaprylate/Dicaprate(プロピレングリコールジカプリレート/ジカプレート及びブチレングリコールジカプリレート/ジカプレート)を有するエステルの混合物から構成される。
【0018】
「不揮発性エステル油を含有しない組成物」という用語は、組成物の総質量に対して2.0質量%未満の不揮発性エステル油、実際には更に1.0質量%未満、実際には更に0.5質量%未満を含有する任意の組成物、実際には更に不揮発性エステル油を含有しない任意の組成物を意味すると理解される。
【0019】
油性連続相
本発明の組成物は、揮発性炭化水素油、揮発性シリコーン油及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの揮発性油を含む油性連続相を含む。
【0020】
前記相は、(構造化剤の非存在下で)周囲温度(25℃)及び大気圧(760mmHg)で液体である。これは、有機物である。即ち、これは、少なくとも炭素及び水素原子を含み、水と混ざらない。
【0021】
油性相は、少なくとも1つの揮発性油と、任意選択的に、前記相に可溶性又は混和性である成分とを含む。
【0022】
「油」という用語は、環境温度(25℃)及び大気圧(760mmHg、即ち10Pa)で液体である脂肪物質を意味するものと理解される。
【0023】
本発明の組成物の油性相の総濃度は、本組成物の総質量に対して好ましくは20質量%~95質量%、より詳細には30質量%~60質量%の範囲で変動する。
【0024】
揮発性油
本発明の意味内では、「揮発性油」という用語は、周囲温度(25℃)及び大気圧(760mmHg)で、皮膚と接触すると1時間未満で蒸発することが可能ないずれかの油を意味すると理解される。揮発性油は、揮発性の化粧料化合物であり、これは、周囲温度で液体であり、とりわけ蒸気圧が周囲温度及び大気圧でゼロでなく、特に蒸気圧が0.13Pa~40000Pa(10-3~300mmHg)、特に1.3Pa~13000Pa(0.01~100mmHg)、より詳細には1.3Pa~1300Pa(0.01~10mmHg)の範囲に及ぶ。
【0025】
1つ又は複数の揮発性油は、好ましくは、組成物の総質量に対して5質量%~45質量%、より優先的には10質量%~40質量%の範囲、更により優先的には12質量%~35質量%の濃度の範囲で存在する。
【0026】
a)揮発性炭化水素油
「炭化水素油」という用語は、主に炭素及び水素原子を含み、任意選択的にヒドロキシル、エステル、エーテル又はカルボキシル官能基から選択される1つ以上の官能基を含む油を意味すると理解される。
【0027】
本発明で使用され得る揮発性炭化水素油の例としては、8~16個の炭素原子を有する炭化水素油、特に石油由来のC~C16イソアルカン(イソパラフィンとしても知られる)、例えばイソドデカン(2,2,4,4,6-ペンタメチルヘプタンとしても知られる)及びイソヘキサデカン、例えばIsopar(登録商標)又はPermethyl(登録商標)の商品名で販売されている油、分岐C~C16エステル、ネオペンタン酸イソヘキシル及びそれらの混合物を挙げることができる。他の揮発性炭化水素油、例えば石油蒸留物、特にShellによって名称Shell Soltで販売されているもの;揮発性直鎖アルカン、例えばCognis製の特許出願独国102008012457号明細書に記載されているものなども使用することができる。
【0028】
より特にイソドデカンが使用されるであろう。
【0029】
b)揮発性シリコーン油
本発明の意味内では、「シリコーン油」という用語は、少なくとも1つのケイ素原子及び特に少なくとも1つのSi-O基を含む油、より具体的にはオルガノポリシロキサンを意味すると理解される。
【0030】
組成物中に使用することができる揮発性シリコーン油のうち、例えば揮発性直鎖又は環状シリコーン油、特に8センチストークス(8×10-6/s)以下の粘度を有し、且つ特に2~7つのケイ素原子を有するものが挙げられ得、これらのシリコーンは、任意選択的に、1~10個の炭素原子を有するアルキル又はアルコキシ基を含む。
【0031】
これらの油のうち、1~8cSt(1×10-6~8×10-6/s)の範囲の粘度を有する揮発性直鎖シリコーン油、例えば以下がより優先的に使用される:
- オクタメチルトリシロキサン、特にXiameter PMX-200 Silicone Fluid 1CS(登録商標)の名称でDow Corningによって販売されているもの;
- デカメチルテトラシロキサン、特にXiameter PMX-200 Silicone Fluid 1.5CS(登録商標)の名称でDow Corningによって販売されているもの;
- ドデカメチルペンタシロキサン、例えばKF-96L-2CS(登録商標)及びDM-Fluid-2CS(登録商標)の名称で信越化学工業によって;Berb-DM2(登録商標)の名称でBRB Internationalによって又はXiameter PMX-200 Silicone Fluid 2CS(登録商標)の名称でDow Corningによって販売されている市販品;
- それらの混合物。
【0032】
より具体的には、ドデカメチルペンタシロキサンが使用される。
【0033】
本発明で使用され得る揮発性環状シリコーン油として、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン及びそれらの混合物が特に挙げられ得る。
【0034】
本発明の特定の形態によれば、少なくとも1つの揮発性炭化水素油及び少なくとも1つの揮発性シリコーン油の混合物、より詳細にはイソドデカン及びドデカメチルペンタシロキサンの混合物が使用される。
【0035】
水性相
水性相は、水と、任意選択的に水溶性又は水混和性の成分、例えば水溶性溶媒などとを含む。
【0036】
本発明に適切な水は、コーンフラワーウォーターなどのフローラルウォーター並びに/或いはヴィッテル水、ルーカス水若しくはラ・ロッシュ・ポゼ水及び/又は温泉水などのミネラル水であり得る。
【0037】
本発明では、「水溶性溶媒」という用語は、周囲温度で液体であり、且つ水混和性である化合物を指す(水中での混和性は、25℃及び大気圧下で50質量%を超える)。
【0038】
本発明の組成物で使用され得る水溶性溶媒は、更に揮発性であり得る。
【0039】
特に、本発明による組成物で使用され得る水溶性溶媒のうち、1~5つの炭素原子を有する低級モノアルコール、例えばエタノール及びイソプロパノール、2~8つの炭素原子を有するグリコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、プロパンジオール、ペンチレングリコール、グリセロール及びジプロピレングリコール、C~Cケトン及びC~Cアルデヒドなどが挙げられ得る。
【0040】
水性相は、好ましくは、前記組成物の総質量に対して少なくとも20質量%、好ましくは30~60質量%、より詳細には35~50質量%の範囲の濃度で存在する。
【0041】
水溶性有機UV遮断剤
本発明による組成物は、少なくとも1つのベンジリデンカンフルスルホン酸基を含むUV遮断剤、少なくとも1つのベンゾオキサゾールスルホン酸基を含むUV遮断剤及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの水溶性有機UV遮断剤を含む。
【0042】
「水溶性有機UV遮断剤」という用語は、液体水性相中に分子状態で完全に溶解させることが可能であるか若しくは混和性であるか、又は液体水性相中にコロイド形態(例えば、ミセル形態)で溶解させることが可能である、280~400nmの波長範囲のUV光線を遮断するいずれかの有機化合物を意味すると理解される。
【0043】
a)ベンジリデンカンフルスルホン酸基を有する水溶性UV遮断剤
ベンジリデンカンフルスルホン酸基を有する水溶性有機UV遮断剤のうち、特に特許出願である仏国特許出願公開第A-2528420号明細書及び仏国特許出願公開第A-2639347号明細書に記載のINCI名:Terephthalylidene Dicamphor Sulfonic Acid(テレフタリリデンジカンフルスルホン酸)を有するベンゼン-1,4-ジ(3-メチリデン-10-カンフルスルホン酸)及びその様々な塩が挙げられ得る。
【0044】
これらの水溶性UV遮断剤は、以下の一般式(I):
【化1】
(式中、Fは、水素原子、アルカリ金属又はNH(R3+基も表し、R基は、同一であるか又は異なり得、水素原子又はC~Cアルキル若しくはヒドロキシアルキル基或いは多価金属陽イオンを表すMn+基も表し、nは、2、又は3、又は4に等しく、好ましくはCa2+、Zn2+、Mg2+、Ba2+、Al3+及びZr4+から選択される金属陽イオンである)
に対応する。上の式(I)の化合物は、1つ以上の二重結合の周囲で「シス-トランス」異性体を生じさせ得、異性体が全て本発明に関連することが明確に理解される。
【0045】
以下のUV遮断剤も挙げられ得る:
- ChimexによってMexoryl SL(登録商標)の名称で製造されるベンジリデンカンフルスルホン酸、
- ChimexによってMexoryl SO(登録商標)の名称で製造されるカンファーベンザルコニウムメトスルフェート(Camphor Benzalkonium Methosulfate)、
- ChimexによってMexoryl SW(登録商標)の名称で製造されるポリアクリルアミドメチルベンジリデンカンファー(Polyacrylamidomethyl Benzylidene Camphor)。
【0046】
b)ベンゾオキサゾールスルホン酸基を有する水溶性UV遮断剤
本発明によるベンゾオキサゾールスルホン酸基を有する水溶性有機UV遮断剤及びそれらの塩のうち、欧州特許出願公開第A-0669323号明細書に記載のものなど、少なくとも2つのベンゾオキサゾールスルホン酸基を含む化合物が挙げられ得る。これらは、米国特許第2463264号明細書及び欧州特許出願第0669323B1号明細書に示される合成に従って記載され、調製される。
【0047】
これらの化合物のうち、以下の構造を有する1,4-ビス-ベンズイミダゾリル-フェニレン-3,3’,5,5’-テトラスルホン酸を挙げることができる。これは、以下の式:
【化2】
を有するINCI名:Phenyl Dibenzimidazole Tetrasulfonate(フェニルジベンズイミダゾールテトラスルホン酸二ナトリウム)の二ナトリウム塩形態においてSymriseからNeoheliopan AP(登録商標)の名称で販売されている。
【0048】
本発明によるベンゾオキサゾールスルホン酸基を有する水溶性有機UV遮断剤及びそれらの塩のうち、INCI名がPhenylbenzimidazole Sulfonic Acid(フェニルベンズイミダゾールスルホン酸)であり、特にMerckによってEusolex232(登録商標)の商品名で販売されているUV遮断剤も挙げられ得る。
【0049】
好ましくは、テレフタリリデンジカンフルスルホン酸、1,4-ビス-ベンズイミダゾリル-フェニレン-3,3’,5,5’-テトラスルホン酸、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸及びそれらの混合物から選択される水溶性UV遮断剤、より詳細にはフェニルベンズイミダゾールスルホン酸が使用される。
【0050】
本発明による水溶性有機UV遮断剤は、無機塩基によって部分的に又は完全に中和される。
【0051】
本発明による水溶性UV遮断剤は、好ましくは、前記組成物の総質量に対して0.1質量%~10質量%の範囲、より優先的には1質量%~8質量%の範囲、更により優先的には2質量%~5質量%の範囲の濃度で本発明の組成物中に存在する。
【0052】
塩基
本発明による組成物は、本発明の前記水溶性有機UV遮断剤を部分的に又は完全に中和することが可能な少なくとも1つの有機又は無機塩基を含む。
【0053】
「有機塩基」という用語は、少なくとも炭素原子と、水素原子と、酸素、窒素又は硫黄などの少なくとも1つのヘテロ原子とを含み、水性媒体中で1つ以上のプロトンを捕捉することができる炭化水素分子を意味すると理解される。
【0054】
「無機塩基」という用語は、水性媒体中で1つ以上のプロトンを捕捉可能な炭素原子を含まない分子を意味すると理解される。
【0055】
有機起源の塩基は、好ましくは、アルギニンなどのアミノ酸;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン又はアミノメチルプロパンなどのアルカノールアミン;2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール(トロメタミンとしても知られる)及びアミノメチルプロパンジオールなどの一級(ポリ)ヒドロキシアルキルアミン;及びそれらの混合物から選択される。
【0056】
本発明による無機塩基は、好ましくは、アルカリ金属陽イオン塩基、例えば水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化リチウム及び水酸化セシウムなど、又はアルカリ土類金属陽イオン塩基、例えば水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム又は水酸化バリウムなどから選択される。
【0057】
特に、無機塩基、より具体的には水酸化ナトリウムが使用される。
【0058】
疎水性皮膜形成ポリマー
本発明の意味内では、「ポリマー」という用語は、1つ以上の単位(これらの単位はモノマーとして知られる化合物から得られる)の反復に対応する化合物を意味することが理解される。この又はこれらの単位は、少なくとも2回、好ましくは少なくとも3回反復される。
【0059】
本発明の意味内では、「疎水性皮膜形成ポリマー」という用語は、水に対する親和性を欠き、この点で、それ自体、水性媒体中の溶質の形態の処方に適合しない皮膜形成ポリマーを示すと理解される。特に「疎水性ポリマー」という用語は、25℃の水への溶解度が1質量%未満であるポリマーを意味することが理解される。
【0060】
「皮膜形成ポリマー」という用語は、それ自体単独で又は補助的な皮膜形成剤の存在下において、支持体、特にケラチン物質上の肉眼的に連続した皮膜、好ましくは粘着性皮膜及び更により良好には例えばTeflonコーティング又はシリコーンコーティング表面などの非付着性の表面上に注ぐことによって前記皮膜が調製される場合、前記皮膜が分離可能及び分離の際に操作可能であり得るような付着及び機械的特性を有する皮膜を形成することが可能なポリマーを意味するものと理解される。
【0061】
特に、疎水性皮膜形成ポリマーは、有機溶剤媒体中で可溶性である皮膜形成ポリマー、特に脂溶性ポリマーからなる群から選択されるポリマーであり;これは、有機媒体中でポリマーが可溶性であるか又は混和性であり、それが媒体中に組み込まれる場合、単一の均一な相を形成することを意味する。
【0062】
疎水性皮膜形成ポリマーとして、特に以下が挙げられ得る:
- シリコーン樹脂;
- ブロックエチレンコポリマー;
- カルボシロキサンデンドリマー由来の少なくとも1つの単位を含むビニルポリマー;
- シリコーン-アクリレートコポリマー;
- それらの混合物。
【0063】
優先的には、本発明による組成物は、本組成物の総質量に対して0.5質量%~15%質量%、より優先的には1質量%~10%質量%、より詳細には2質量%~7%質量%の疎水性皮膜形成ポリマーを活性物質として含む。
【0064】
I.シリコーン樹脂
より一般的には、「樹脂」という用語は、構造が三次元である、化合物を意味すると理解される。「シリコーン樹脂」は「シロキサン樹脂」とも呼ばれる。従って、本発明の意味内では、ポリジメチルシロキサンはシリコーン樹脂ではない。
【0065】
シリコーン樹脂(シロキサン樹脂とも呼ばれる)の命名法は、「MDTQ」の名称で知られ、樹脂は、それが含む様々なシロキサンモノマー単位に応じて記載され、文字「MDTQ」のそれぞれは、単位の1タイプを特徴付ける。
【0066】
文字「M」は、式RSiO1/2の単官能性単位を表し、ケイ素原子は、この単位を含むポリマー中の唯一の酸素原子に連結される。
【0067】
「D」の文字は、二官能性単位RSiO2/2を表し、ケイ素原子は、2つの酸素原子に連結される。
【0068】
文字「T」は、式RSiO3/2の三官能性単位を表す。
【0069】
このような樹脂は、例えば、the Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,vol.15,John Wiley and Sons,New York,(1989),pp.265-270並びに米国特許第2676182号明細書、米国特許第3627851号明細書、米国特許第3772247号明細書、米国特許第5248739号明細書又は米国特許第5082706号明細書、米国特許第5319040号明細書、米国特許第5302685号明細書及び米国特許第4935484号明細書に記載されている。
【0070】
上で定義されるM、D及びT単位では、R、即ちR及びRは、1~10個の炭素原子を有する炭化水素基(特にアルキル基)、フェニル基、フェニルアルキル基又はさもなければヒドロキシル基を表す。
【0071】
最後に、文字「Q」は、四官能性単位SiO4/2を意味し、ケイ素原子は、4つの酸素原子に結合され、これらの酸素原子自体は、ポリマーの残りの部分に結合される。
【0072】
これらの異なる単位から、異なる性状の様々なシリコーン樹脂を得ることができ、これらのポリマーの性状は、モノマー(又は単位)のタイプ、R基の性質及び数、ポリマーの鎖長、分岐度及びペンダント鎖のサイズに応じて変化する。
【0073】
本発明による組成物で使用され得るシリコーン樹脂として、例えばMQ型、T型又はMQT型のシリコーン樹脂が使用され得る。
【0074】
MQタイプのシリコーン樹脂の例として、式[(RSiO1/2(SiO4/2(MQ単位)のアルキルシロキシケイ酸が挙げられ得、ここで、x及びyは、50~80の範囲の整数であり、R基は、上で定義されるような基を表し、好ましくは1~8つの炭素原子を有するアルキル基又はヒドロキシル基、好ましくはメチル基である。
【0075】
トリメチルシロキシケイ酸型のMQ型の固形シリコーン樹脂の例として、General ElectricによってSR1000(登録商標)の参照記号で、WackerによってTMS 803(登録商標)の参照記号で、信越化学工業によってKF-7312(登録商標)Jの名称で且つDow CorningによってDC749(登録商標)及びDC593(登録商標)の名称で販売されているものが挙げられ得る。
【0076】
シロキシケイ酸MQ単位を含むシリコーン樹脂として、フェニルプロピルジメチルシロキシケイ酸(General Electricによって販売されているSilshine 151(登録商標))などのフェニルアルキルシロキシケイ酸樹脂も挙げられ得る。そのような樹脂の調製は特に米国特許第5817302号明細書に記載されている。
【0077】
a)T樹脂
T型のシリコーン樹脂の例として、式(RSiO3/2(T単位)(式中、xは100より大きく、R基は、1~10個の炭素原子を有するアルキル基であるようなものである)のポリシルセスキオキサンが挙げられ得、前記ポリシルセスキオキサンは、追加的にSi-OH末端基を含むことが可能である。
【0078】
好ましくは、例えば以下のものなど、Rがメチル基を表すポリメチルシルセスキオキサン樹脂が使用され得る:
- Wackerにより、例えばBelsil PMS MK(登録商標)など、Resin MK(登録商標)の参照記号で販売されているもの:最大1質量%の(CHSiO2/2単位(D単位)も含み得る、およそ10000g/モルの平均分子量を示すCHSiO3/2反復単位(T単位)を含むポリマー、又は
- 信越化学工業によってKR-220L(登録商標)の参照記号で販売されているもの(式CHSiO3/2のT単位から構成され、Si-OH(シラノール)末端基を有する)、KR-242A(登録商標)の参照記号で販売されているもの(T単位を98%及びDジメチル単位を2%含み、Si-OH末端基を有する)又はKR-251(登録商標)の参照記号で販売されているもの(T単位を88%及びDジメチル単位を12%含み、Si-OH末端基を有する)。
【0079】
b)MQT樹脂
特に知られているMQT単位を含む樹脂は、米国特許第5110890号明細書の文献に挙げられるものである。
【0080】
MQT型の樹脂の好ましい形態は、MQT-プロピル(MQTprとしても知られる)樹脂である。本発明による組成物で使用され得るこのような樹脂は、特に国際公開第2005/075542号パンフレットに記載され、調製されるものである。
【0081】
MQT-プロピル樹脂は、好ましくは、以下の単位:
(i)(R1SiO1/2
(ii)(R2SiO2/2
(iii)(R3SiO3/2;及び
(iv)(SiO4/2
を含み、ここで、
- R1、R2及びR3は、独立して、1~10個の炭素原子を有する炭化水素(特にアルキル)基、フェニル基、フェニルアルキル基又は他にヒドロキシル基、好ましくは1~8つの炭素原子を有するアルキル基又はフェニル基を表し、
- aは0.05~0.5であり、-bは、0~0.3であり、-cは、0より大きく、
- dは、0.05~0.6であり、
- a+b+c+d=1であり、a、b、c及びdが、モル分率であり、
ただし、シロキサン樹脂のR3基の40モル%超がプロピル基であることを条件とする。
【0082】
好ましくは、シロキサン樹脂は、以下の単位:
(i)(R1SiO1/2
(iii)(R3SiO3/2;及び
(iv)(SiO4/2
を含み、ここで、
- R1及びR3は、独立して、1~8つの炭素原子を有するアルキル基を表し、R1は、好ましくは、メチル基であり、R3は、好ましくは、プロピル基であり、
- aは、0.05~0.5、好ましくは0.15~0.4であり、
- cは、0より大きく、好ましくは0.15~0.4であり、
- dは、0.05~0.6、好ましくは0.2~0.6であるか又は0.2~0.55でもあり、
- a+b+c+d=1であり、a、b、c及びdが、モル分率であり、
ただし、シロキサン樹脂のR3基の40モル%超がプロピル基であることを条件とする。
【0083】
本発明によって使用され得るシロキサン樹脂は、
A)少なくとも80モル%の(R1SiO1/2及び(SiO4/2単位を含むMQ樹脂
(式中、
- R1は、1~8つの炭素原子を有するアルキル基、アリール基、カルビノール基又はアミノ基を表し、
- a及びdは、0より大きく、
- 比率a/dが、0.5~1.5である)
と、
B)少なくとも80モル%の(R3SiO3/2単位を含むT-プロピル樹脂
(式中、
- R3は、1~8つの炭素原子を有するアルキル基、アリール基、カルビノール基又はアミノ基を表し、
- cは、0より大きく、
ただし、R3基の少なくとも40モル%がプロピル基である)
との反応を含む方法であって、質量比A/Bは、95:5~15:85であり、好ましくは、質量比A/Bは、30:70である、方法によって得ることができる。
【0084】
有利には、質量比A/Bは、95:5~15:85である。好ましくは、比A/Bは、70:30以下である。これらの好ましい比は、沈着物中のMQ樹脂の剛性粒子の浸出がないため、満足のいく沈着物を可能にすることが分かっている。
【0085】
従って、好ましくは、シリコーン樹脂は、特に、(i)式[R1SiO1/2(SiO4/2のトリメチルシロキシケイ酸であり得る、アルキルシロキシケイ酸(式中、x及びyは、50~80の範囲の整数であり、R1基は、1~10個の炭素原子を有する炭化水素基、フェニル基、フェニルアルキル基又は他にヒドロキシル基を表し、好ましくは1~8つの炭素原子を有するアルキル基、好ましくはメチル基であるようになっている)及び(ii)フェニルアルキルシロキシケイ酸樹脂、例えばフェニルプロピルジメチルシロキシケイ酸樹脂などから選択されるMQ型の樹脂から選択される。
【0086】
有利には、本発明による組成物は、疎水性皮膜形成ポリマーとして、少なくとも1つのトリメチルシロキシケイ酸樹脂、例えばMomentive Performance MaterialsによってSilsoft 74(登録商標)の参照記号で、General ElectricによってSR1000(登録商標)の参照記号で、WackerによってTMS803(登録商標)の参照記号で、信越化学工業によってKF-7312(登録商標)Jの名称で且つDow CorningによってDC749(登録商標)及びDC593(登録商標)の名称で販売されているものなどを含む。
【0087】
c)シルセスキオキサン樹脂
本発明による組成物で使用され得るシルセスキオキサン樹脂のうち、式R1SiO(4-n)/2(式中、各R1は、独立して、水素原子又はC~C10アルキル基を示し、80モル%超のR1基は、C~C10アルキル基を表し、nは、1.0~1.4の数である)の平均シロキサン単位を有するシルセスキオキサンホモポリマー及び/又はコポリマーであるアルキルシルセスキオキサン樹脂が挙げられ、より詳細にはシルセスキオキサンコポリマー(ここで、60モル%超は、R1SiO3/2単位を含み、R1は、上で示される定義を有する)が使用される。
【0088】
好ましくは、シルセスキオキサン樹脂は、R1がC1~C10アルキル基、好ましくはC1~C4アルキル基、より詳細にはプロピル基であるように選択される。より詳細に、ポリプロピルシルセスキオキサン又はt-プロピルシルセスキオキサン樹脂(INCI名:Polypropylsilsesquioxane(and)Isododecane(ポリプロピルシルセスキオキサン(及び)イソドデカン))、例えばDow CorningによってDow Corning(登録商標)670 Fluidの商品名で販売されている製品が使用される。
【0089】
II.ブロックエチレンコポリマー
疎水性皮膜形成ポリマーは、40℃以上のガラス転移温度(Tg)を有し、1つ以上の第1のモノマーから全体又は一部を生じさせる少なくとも1つの第1のブロックであって、これらのモノマーから調製されたホモポリマーが、40℃以上のガラス転移温度を有するようになっている少なくとも1つの第1のブロックと、20℃以下のガラス転移温度を有し、1つ以上の第2のモノマーから全体又は一部を生じさせる少なくとも1つの第2のブロックであって、これらのモノマーから調製されるホモポリマーが、20℃以下のガラス転移温度を有するようになっている第2のブロックと、を含有するブロックエチレンコポリマーであり得、前記第1のブロック及び前記第2のブロックが、第1のブロックの前記第1の成分モノマーの少なくとも1つと、第2のブロックの前記第2の成分モノマーの少なくとも1つとを含むランダム中間セグメントを介して一緒に連結され、前記ブロックコポリマーは、2を超える多分散指数Iを有する。
【0090】
本発明に適切なこのタイプのポリマーは、文献欧州特許第1411069号明細書に記載されている。
【0091】
より詳細には、このようなポリマーの例として、Chimexによって販売されているMexomere PAS(登録商標)(イソドデカン中で50%希釈されたアクリル酸/アクリル酸イソブチル/アクリル酸イソボルニルコポリマー)が挙げられ得る。
【0092】
ブロックエチレンコポリマーは、米国特許出願公開第2002/005562号明細書及び米国特許第5221534号明細書に記載されるような特にジブロック、トリブロック、マルチブロック、ラジカル又はスター分岐状コポリマー又はそれらの混合物であり得る。
【0093】
コポリマーは、そのガラス転移温度が好ましくは20℃未満、好ましくは0℃以下、好ましくは-20℃以下、より好ましくは-40℃以下である、少なくとも1つのブロックを示し得る。前記ブロックのガラス転移温度は、-150℃~20℃、特に-100℃~0℃であり得る。このコポリマーは、非晶質であり、オレフィンの重合によって形成される。オレフィンは、特に、エラストマーエチレン系不飽和モノマーであり得る。
【0094】
オレフィンの例として、特に1又は2つのエチレン性不飽和を有し、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン又はペンタジエンなどの2~5つの炭素原子を有する、エチレン性カーバイドモノマーが挙げられ得る。
【0095】
有利には、炭化水素ブロックコポリマーは、スチレン及びオレフィンの非晶質ブロックコポリマーである。
【0096】
少なくとも1つのスチレンブロックを含むブロックコポリマー及びブタジエン、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン又はそれらの混合物の1つから選択される単位を含む少なくとも1つのブロックが特に好ましい。
【0097】
好ましい一実施形態によれば、モノマーの重合後の残留するエチレン不飽和を低減させるために、炭化水素ブロックコポリマーが水素化される。
【0098】
特に、炭化水素ブロックコポリマーは、スチレンブロックを有し、エチレン/C~Cアルキレンブロックを有する、任意選択的に水素化されたコポリマーである。
【0099】
好ましくは水素化されているジブロックコポリマーとして、スチレン-エチレン/プロピレンコポリマー、スチレン-エチレン/ブタジエンコポリマー又はスチレン-エチレン/ブチレンコポリマーが挙げられ得る。ジブロックポリマーは、特にKraton PolymersによってKraton(登録商標)G1701Eの名称で販売されている。
【0100】
好ましくは水素化されているトリブロックコポリマーとして、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレンコポリマー、スチレン-エチレン/ブタジエン-スチレンコポリマー、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンコポリマー、スチレン-イソプレン-スチレンコポリマー又はスチレン-ブタジエン-スチレンコポリマーが挙げられ得る。トリブロックポリマーは、特にKraton PolymersによってKraton(登録商標)G1650、Kraton(登録商標)G1652、Kraton(登録商標)D1101、Kraton(登録商標)D1102又はKraton(登録商標)D1160の名称で販売されている。
【0101】
本発明の一実施形態によれば、炭化水素系ブロックコポリマーは、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレントリブロックコポリマーである。
【0102】
本発明の好ましい実施形態によれば、特にスチレン-ブチレン/エチレン-スチレントリブロックコポリマー及びスチレン-エチレン/ブチレンジブロックコポリマーの混合物、特にKraton PolymersによってKraton(登録商標)G1657Mという名称で販売されているものを使用することが可能である。
【0103】
水素化スチレン-ブチレン/エチレン-スチレントリブロックコポリマー及び水素化エチレン-プロピレン-スチレン星型分岐ポリマーの混合物も使用され得、このような混合物は、特にイソドデカン中のものである。このような混合物は、例えば、Versagel(登録商標)M5960及びVersagel(登録商標)M5670の商品名でPenrecoによって販売されている。
【0104】
III.カルボシロキサンデンドリマー由来の少なくとも1つの単位を含むビニルポリマー
疎水性皮膜形成ポリマーは、カルボシロキサンデンドリマー由来の少なくとも1つの単位を含むビニルポリマーからも選択され得る。
【0105】
ビニルポリマーは、特に、骨格及び少なくとも1つの側鎖を有し、この側鎖は、カルボシロキサンデンドリマー構造を呈するカルボシロキサンデンドリマー由来の単位を含む。
【0106】
特に、Dow Corningからの国際公開第03/045337号パンフレット及び欧州特許第963751号明細書に記載のような少なくとも1つのカルボシロキサンデンドリマー単位を含むビニルポリマーが使用され得る。
【0107】
本発明に関連して、「カルボシロキサンデンドリマー構造」という用語は、高分子量の分岐基を有する分子構造であって、主鎖への結合を始点として半径方向に高い規則性を有する分子構造を表す。このようなカルボシロキサンデンドリマー構造は、特開平9-171154号公報において、高度に分岐したシロキサン-シリルアルキレンコポリマーの形態で記載されている。
【0108】
カルボシロキサンデンドリマー由来の少なくとも1つの単位を有するビニルポリマーは、カルボシロキサンデンドリマー構造を含有する分子側鎖を有し、
- 0~99.9質量部のビニルモノマー;及び
- 100~0.1質量部の、以下の一般式:
【化3】
(式中、Yは、ラジカル重合性有機基を表し、
は、1~10個の炭素原子を有するアリール基又はアルキル基を表し、
は、i=1である場合、以下の式:
【化4】
(式中、Rは、上で定義されるとおりであり、Rは、2~10個の炭素原子を有するアルキレン基を表し、Rは、1~10個の炭素原子を有するアルキル基を表し、Xi+1は、水素原子、1~10個の炭素原子を有するアルキル基、アリール基又は上で定義されるシリルアルキル基を表し、i=i+1であり;iは、前記シリルアルキル基の生成を表す1~10の整数であり、aは、0~3の整数である)
によって表されるシリルアルキル基を表す)
によって表される、ラジカル重合性有機基を含有するカルボシロキサンデンドリマー
の重合から得ることができ;
前記ラジカル重合性有機基は、メタクリル基又はアクリル基を含有し、以下の式:
【化5】
及び
【化6】
(式中、Rは、水素原子又はアルキル基を表し、
は、1~10個の炭素原子を有するアルキレン基及びスチリル基を含有する有機基を表し、これらは、以下の式:
【化7】
によって表され、
は、水素原子又はアルキル基を表し、Rは、1~10個の炭素原子を有するアルキル基を表し、Rは、1~10個の炭素原子を有するアルキレン基を表し、bは、0~4の整数であり、cは、値0又は1を有し、cが0である場合、-(R-は、結合を表すようなものである)
によって表される有機基から選択される。
【0109】
ビニルポリマー中の構成成分(A)であるビニル型のモノマーは、ラジカル重合性ビニル基を含有するビニル型のモノマーである。
【0110】
このようなモノマーに関して特に制限はない。
【0111】
このビニルタイプのモノマーの例を次に示す:メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル又は類似の低級アルキルのメタクリレート;メタクリル酸グリシジル;メタクリル酸ブチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸n-ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル又は類似の高級メタクリレート;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル又は類似の低級脂肪酸のビニルエステル;カプロン酸ビニル、2-エチルヘキサン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル又は類似の高級脂肪酸のエステル;スチレン、ビニルトルエン、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、ビニルピロリドン又は類似のビニル芳香族モノマー;メタクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、N-メトキシメチルメタクリルアミド、イソブトキシメトキシメタクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド又はアミド基を含有するビニル型の類似のモノマー;メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル又はヒドロキシル基を含有するビニル型の類似のモノマー;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸又はカルボン酸基を含有するビニル型の類似のモノマー;メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸ブトキシエチル、メタクリル酸エトキシジエチレングリコール、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ヒドロキシブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル又はエーテル結合を有するビニル型の類似のモノマー;メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、その分子末端の1つにメタクリル基を有するポリジメチルシロキサン、その分子末端の1つにスチリル基を有するポリジメチルシロキサン又は不飽和基を有する類似のシリコーン化合物;ブタジエン;塩化ビニル;塩化ビニリデン;メタクリロニトリル;フマル酸ジブチル;無水マレイン酸;無水コハク酸;メタクリルグリシジルエーテル;アミンの有機塩、アンモニウム塩及びメタクリル酸の、イタコン酸の、クロトン酸の、マレイン酸の又はフマル酸の、アルカリ金属塩;スルホン酸基、例えばスチレンスルホン酸基を有するラジカル重合性不飽和モノマー;メタクリル酸に由来する第四級アンモニウム塩、例えば2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドなど;及び第三級アミン基を有するアルコールのメタクリル酸エステル、例えばジエタノールアミンのメタクリル酸エステル。ビニルタイプの多官能性モノマーも使用することができる。
【0112】
以下は、このような化合物の例に相当する:トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリチルトリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチルメタクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジメタクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリメタクリレート、両末端にジビニルベンゼン基を有するスチリル基でキャップされたポリジメチルシロキサン又は不飽和基を有する類似のシリコーン化合物。
【0113】
化粧品に対する出発物質の混合物を調製し易くするために、カルボシロキサンデンドリマーを含有するビニルポリマーの数平均分子量は、3000g/モル~2000000g/モルの範囲、好ましくは5000g/モル~800000g/モルの範囲内で選択され得る。これは、液体、ガム状、ペースト状、固形、粉末又はいずれかの他の形態であり得る。好ましい形態は、シリコーン油又は有機油などの溶媒中の分散物又は粉末の希釈によって形成される溶液である。
【0114】
分散液又は溶液中に含有されるビニルポリマーは、0.1質量%~95質量%、好ましくは5質量%~70質量%の範囲内の濃度を有し得る。しかし、混合物の取扱い及び調製を容易にするために、この範囲は、好ましくは、10質量%~60質量%とすべきである。
【0115】
好ましい形態によれば、本発明に適切なビニルポリマーは、特許出願、欧州特許第0963751号明細書の実施例に記載されるポリマーの1つであり得る。
【0116】
好ましい実施形態によれば、カルボシロキサンデンドリマーでグラフトされたビニルポリマーは、以下の重合から得ることができる:
- 0.1~99質量部の1つ以上のアクリレート又はメタクリレートモノマー;及び
- 100~0.1質量部のトリス[トリ(トリメチルシロキシ)シリルエチルジメチルシロキシ]シリルプロピルカルボシロキサンデンドリマーのアクリレート又はメタクリレートモノマー。
【0117】
一実施形態によれば、カルボシロキサンデンドリマー由来の少なくとも1つの単位を有するビニルポリマーは、式、
【化8】
の1つに対応するトリス[トリ(トリメチルシロキシ)シリルエチルジメチルシロキシ]シリルプロピルカルボシロキサンデンドリマー由来の単位を含み得る。
【0118】
好ましい形態によれば、本発明で使用されるカルボシロキサンデンドリマー由来の少なくとも1つの単位を有するビニルポリマーは、少なくとも1つのアクリル酸ブチルモノマーを含む。
【0119】
一実施形態によれば、ビニルポリマーは少なくとも1つのフッ素化された有機基を追加的に含み得る。フッ素化されたビニルポリマーは、国際公開第03/045337号パンフレットの実施例に記載のポリマーの1つであり得る。
【0120】
好ましい実施形態によれば、本発明の意味内のグラフトされたビニルポリマーは、好ましくは、特にシリコーン油及び炭化水素油並びにそれらの混合物から選択される揮発性物質である油又は油の混合物中で運ばれ得る。
【0121】
特定の実施形態によれば、本発明に適切なシリコーン油は、シクロペンタシロキサンであり得る。
【0122】
別の特定の実施形態によれば、本発明に適切な炭化水素油は、イソドデカンであり得る。
【0123】
本発明に特に適切であり得るカルボシロキサンデンドリマー由来の少なくとも1つの単位がグラフトされたビニルポリマーは、Dow CorningによってTIB 4-100(登録商標)、TIB 4-101(登録商標)、TIB 4-120(登録商標)、TIB 4-130(登録商標)、TIB 4-200(登録商標)、FA 4002 ID(登録商標)(TIB 4-202(登録商標))、TIB 4-220(登録商標)及びFA 4001 CM(登録商標)(TIB 4-230(登録商標))の名称で販売されているポリマーである。Dow CorningによってFA 4002 ID(登録商標)(TIB 4-202(登録商標))及びFA 4001 CM(登録商標)(TIB 4-230(登録商標))の名称で販売されているポリマーが好ましくは使用される。
【0124】
好ましくは、本発明の組成物で使用され得るカルボシロキサンデンドリマー由来の少なくとも1つの単位がグラフトされたビニルポリマーは、アクリレート/ポリトリメチルシロキシメタクリレートコポリマーであり、INCI名:Acrylates/Polytrimethyl Siloxymethacrylate Copolymer(アクリレーツ/メタクリル酸ポリトリメチルシロキシコポリマー)であり、特にDow CorningによってDow Corning FA 4002 ID(登録商標)Silicone Acrylateの名称においてイソドデカンで販売されているものである。
【0125】
IV.シリコーン-アクリレートコポリマー
特定の実施形態によれば、本発明に従って使用される組成物は、疎水性皮膜形成ポリマーとして、カルボキシレート基及びポリジメチルシロキサン基を含む少なくとも1つのコポリマーを含み得る。
【0126】
「カルボキシレート基及びポリジメチルシロキサン基を含むコポリマー」という用語は、本特許出願では、(a)1つ以上のカルボン(酸又はエステル)モノマー、及び(b)1つ以上のポリジメチルシロキサン(PDMS)鎖から得られるコポリマーを意味するものと理解される。
【0127】
本特許出願では、「カルボン酸モノマー」という用語は、カルボン酸モノマー及びカルボン酸エステルモノマーの両方を意味する。従って、モノマー(a)は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、それらのエステル及びこれらのモノマーの混合物から選択され得る。
【0128】
エステルとして以下のモノマーが挙げられ得る:アクリレート、メタクリレート、マレート、フマレート、イタコネート及び/又はクロトネート。本発明の好ましい実施形態によれば、エステル形態のモノマーは、より詳細には、直鎖状又は分岐鎖状、好ましくはC~C24、更により良好にはC~C22の、アクリル酸アルキル及びメタクリル酸アルキルから選択され、アルキル基は、優先的には、メチル、エチル、ステアリル、ブチル及び2-エチルヘキシル基及びそれらの混合物から選択される。
【0129】
従って、本発明の特定の実施形態によれば、コポリマーは、カルボキシレート基として、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸又はメタクリル酸メチル、エチル、ステアリル、ブチル又は2-エチルヘキシル及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの基を含む。
【0130】
本特許出願では、「ポリジメチルシロキサン」という用語(オルガノポリシロキサンとしても知られているか又はPDMSと略記)は、一般に認められているものによれば、可変の分子量の、直鎖状構造を有するいずれかの有機ケイ素ポリマー又はオリゴマーを示すことが理解され、これは、適切に官能化されたシランの重合及び/又は重縮合によって得られ、且つ主要な単位の繰り返し(ここで、ケイ素原子は、酸素原子によって一緒に連結される(シロキサン結合-Si-O-Si-))から基本的に形成され、炭素原子を介して前記ケイ素原子に直接結合されるメチル基を含む。本発明に従って使用されるコポリマーを得るために使用され得るPDMS鎖は、好ましくは、鎖の末端の少なくとも1つに位置する少なくとも1つの重合性ラジカル基を含み、即ち、PDMSは、例えば、鎖の2つの末端に重合性ラジカル基を有し得るか、又は鎖の1つの末端に重合性ラジカル基及び鎖の他方の末端にトリメチルシリル末端基を有し得る。重合性ラジカル基は、特に、アクリル又はメタクリル基、特にCH=CR-CO-O-R基であり得、Rは、水素又はメチル基を表し、Rは、-CH-、-(CH-(ここで、n=3、5、8又は10である)、-CH-CH(CH)-CH-、-CH-CH-O-CH-CH-、-CH-CH-O-CH-CH-CH(CH)-CH-、-CH-CH-O-CH又は-CH-O-CH-CH-CH-を表す。
【0131】
本発明の組成物に使用されるコポリマーは、一般に、重合及びグラフト化の通常の方法に従い、例えば米国特許第5061481号明細書及び米国特許第5219560号明細書の文献に記載されるように、例えば(A)少なくとも1つのラジカル重合性基を(例えば、鎖の末端の1つ又は両方の末端に)含むPDMSと、(B)少なくとも1つのカルボン酸モノマーとのラジカル重合によって得られる。
【0132】
得られるコポリマーは、一般に、およそ3000g/モル~200000g/モル、好ましくはおよそ5000g/モル~100000g/モルの範囲の分子量を有する。
【0133】
本発明の組成物で使用されるコポリマーは、そのままで又は2~8つの炭素原子を含む低級アルコール、例えばイソプロピルアルコール若しくは油、例えば揮発性シリコーン油(例えば、シクロペンタシロキサン)などの溶媒中で分散された形態で提供され得る。
【0134】
本発明の組成物で使用され得るコポリマーとして、例えば、ポリジメチルシロキサングラフトを有するアクリル酸及びアクリル酸ステアリルのコポリマー、ポリジメチルシロキサングラフトを有するメタクリル酸ステアリルのコポリマー、ポリジメチルシロキサングラフトを有するアクリル酸及びメタクリル酸ステアリルのコポリマー、ポリジメチルシロキサングラフトを有する、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル及びメタクリル酸ステアリルのコポリマーが挙げられ得る。本発明の組成物で使用され得るコポリマーとして、信越化学工業によってKP-561(登録商標)の名称で販売されているコポリマー(CTFA名:アクリレーツ/ジメチコン)、コポリマーがイソプロピルアルコール中60質量%で分散されるKP-541(登録商標)(CTFA名:アクリレーツ/ジメチコン及びイソプロピルアルコール)及びコポリマーがシクロペンタシロキサン中において30%で分散されるKP-545(登録商標)(CTFA名:アクリレーツ/ジメチコン及びシクロペンタシロキサン)が挙げられ得る。
【0135】
本発明の好ましい実施形態によれば、KP561(登録商標)が好ましくは使用され;このコポリマーは、溶媒中で分散されないが、ワックス形態で提供され、その融点はおよそ30℃である。
【0136】
KP-550(登録商標)の名称で信越化学工業によって販売されている、イソドデカン中で溶解された、ポリジメチルシロキサンがグラフトされたアクリル酸コポリマーも挙げられ得る。
【0137】
特に好ましい形態によれば、本発明による組成物は、疎水性皮膜形成ポリマー、少なくとも1つのトリメチルシロキシケイ酸樹脂、例えばGeneral ElectricによってSR1000(登録商標)の参照記号で、WackerによってTMS803(登録商標)の参照記号で、信越化学工業によってKF-7312(登録商標)Jの名称で且つDow CorningによってDC749(登録商標)及びDC593(登録商標)の名称で販売されているものなどを含む。
【0138】
有利には、本発明による組成物は、疎水性皮膜形成ポリマーとして、少なくとも1つのトリメチルシロキシケイ酸樹脂、例えばGeneral ElectricによってSR1000(登録商標)の参照記号で、WackerによってTMS803(登録商標)の参照記号で、信越化学工業によってKF-7312(登録商標)Jの名称で、Dow CorningによってDC749(登録商標)及びDC593(登録商標)の名称で販売されているものなどを含む。
【0139】
直鎖状ポリオキシアルキレン化ポリジメチルメチルシロキサン乳化界面活性剤
本発明による油中水型エマルションの形態の組成物は、特に以下の式(I)に対応する、好ましくは直鎖状オキシプロピレン化及び/又はポリオキシエチレン化されている、HLBが≦8の、少なくとも1つの直鎖状ポリオキシアルキレン化ポリジメチルメチルシロキサンを含む:
【化9】
(式中、R、R及びRは、互いに独立して、C~Cアルキル基又は-(CH-(OCHCH-(OCHCHCH-OR基を表し、少なくとも1つのR、R又はR基がアルキル基ではなく、Rは、水素、C~Cアルキル基又はC~Cアシル基であり;
Aは、0~200の範囲の整数であり;
Bは、0~50の範囲の整数であり;ただし、A及びBは、同時に0に等しいことがないことを条件とし;
xは、0~6の範囲の整数であり;
yは、1~30の範囲の整数であり;
zは、0~30の範囲の整数である)。
【0140】
本発明の好ましい実施形態によれば、式(I)の化合物では、R=R=メチル基であり、x=0~3であり、Rは、水素である。
【0141】
式(I)の化合物の例として、以下のINCI名の乳化界面活性剤が挙げられ得る:
- PEG/PPG-8/8 Dimethicone(PEG/PPG-8/8ジメチコン)、例えばSilube J208-4I(登録商標)、Silube J208-6I(登録商標)及びSilube J208-8I(登録商標)の商品名で販売されている製品など;
- 単独で使用されるPEG/PPG-18/18 Dimethicone(PEG/PPG-18/18ジメチコン)、例えばAB Specialty SiliconesによってAndisil SP 1818(登録商標)、Jeen International CorporationによってJeesilc DMC 19(登録商標)、Siltech LLCによってSilsurf J-1013-V-CG(登録商標)又はDow Chemical CompanyによってXiameter OFX-0190 Fluid(登録商標)の商品名で販売されている製品など;
- Cyclopentasiloxane and PEG/PPG-18/18 Dimethicone(シクロペンタシロキサン及びPEG/PPG-18/18ジメチコン)混合物、例えばDow ChemicalによってDowsil 5225C Formulation Aid(登録商標);Innospec Performance ChemicalsによってEmusil WO-5115(登録商標);Grant Industries Inc.によってGransurf 10C(登録商標);Jeen International CorporationによってJeesilc DMC522(登録商標);Siltech LLCによってSilsurf 400R(登録商標)の商品名で販売されている製品など;
- Cyclotetrasiloxane and Cyclopentasiloxane and PEG/PPG-18/18 Dimethicone(シクロテトラシロキサン及びシクロペンタシロキサン及びPEG/PPG-18/18ジメチコン)混合物、例えばDow ChemicalによってDowsil 3225C Formulation Aid(登録商標);Innospec Performance ChemicalsによってEmulsil WO-3115(登録商標);Jeen International CorporationによってJeesilc DMC252(登録商標)及びJeesilc DMC322(登録商標)の名称で販売されている商品など;
- Dimethicone and PEG/PPG-18/18 Dimethicone(ジメチコン及びPEG/PPG-18/18ジメチコン)混合物、例えばDow Chemicalからの商品Dowsil ES-5226 DM Formulation Aid(登録商標)及びDowsil ES-5227 DM Formulation Aid(登録商標);Grant Industries Inc.からのGransurf 50C(登録商標)及びGransurf 50C-HM(登録商標);及び信越化学工業からのX-22-6711Dなど;
- PEG/PPG-19/19 Dimethicone and C13-C16Isoparaffin and C10-C13Isoparaffin(PEG/PPG-19/19ジメチコン及びC13~C16イソパラフィン及びC10~C13イソパラフィン)混合物、例えばDow Chemicalからの市販品Dow Corning(登録商標)BY 25-337など;
- PEG-3 Dimethicone(PEG-3ジメチコン)、例えば信越化学工業からの市販品KF-6015(登録商標)など;
- PEG-10 Dimethicone(PEG-10ジメチコン)、例えば信越化学工業からの市販品KF-6017(登録商標);KCC Corporation からのSerasol SC 86(登録商標)及びSerasol SC 86A(登録商標)など;
- それらの混合物。
【0142】
本発明の特定の形態によれば、本発明の組成物は、少なくともPEG/PPG-18/18ジメチコンを好ましくはシリコーン油、特にジメチコンタイプの直鎖状シリコーン油(INCI名:ジメチコン及びPEG/PPG-18/18ジメチコン)、例えばDow Chemicalからの商品Dowsil ES-5226 DM Formulation Aid(登録商標)及びDowsil ES-5227 DM Formulation Aid(登録商標);Grant Industries Inc.からのGransurf 50C(登録商標)及びGransurf 50C-HM(登録商標);並びに信越化学工業からのX-22-6711Dなどと組み合わせて含む。
【0143】
別の具体的態様によれば、本発明の組成物は、PEG/PPG-18/18ジメチコン及びPEG-10ジメチコンの少なくとも1つの混合物、好ましくはPEG/PPG-18/18ジメチコンとジメチコンとPEG-10ジメチコンとの混合物を含む。
【0144】
本発明による直鎖状ポリオキシアルキレン化ポリジメチルメチルシロキサンは、組成物の総質量に対して好ましくは0.1質量%~10質量%の範囲、より優先的には0.5質量%~7質量%の範囲、更により優先的には1質量%~4質量%の範囲の濃度で本発明の組成物中に存在する。
【0145】
ビタミンB3、誘導体及び塩
「ビタミンB」という用語は、一般式:
【化10】
(式中、Rは、-CONH(即ちナイアシンアミド、イソナイアシンアミド)、-COOH(即ちニコチン酸)又は-CHOH(即ちニコチニルアルコール)である)
を有する任意の分子並びにその誘導体及びその有機若しくは無機酸塩又はその無機若しくは有機塩基塩(上に述べたもの等)を意味すると理解される。ビタミンBの誘導体の例として以下を挙げることができる:
- ニコチン酸のエステル、例えば以下のINCI名を有するもの:アスコルビン酸ナイアシンアミド、グリコール酸ナイアシンアミド、ヒドロキシ安息香酸ナイアシンアミド、ヒドロキシクエン酸ナイアシンアミド、乳酸ナイアシンアミド、リンゴ酸ナイアシンアミド、マンダリン酸ナイアシンアミド、サリチル酸ナイアシンアミド、チオクト酸ナイアシンアミド、Bioderma Tech.Co.Ltd.から供給;
- 四級アンモニウム塩、例えばメチルナイアシンアミドクロリド(Methyl Niacinamide Chloride)(INCI名)、例えばPharmenaからの市販品であるMNA Chloride(登録商標);
- ナイアシンアミドとポリペプチドとの反応生成物、例えば酵母から得られるもの:INCI名ナイアシンアミド/酵母ポリペプチド(Niacinamide/YeastPolypeptide)、例えばArch Personal Care Products,L.P./Lonza Personal CareからVitazymeB(登録商標)の商品名で販売されている市販品。
【0146】
より詳細には、
Niacinamide PC(登録商標)(DSM Nutritional Products,Inc.)、
OriStar NA(登録商標)(Orient Stars LLC)、
RonaCare Nicotinamide(登録商標)(Merck KGaA /EMD Chemicals)、
RonaCare Nicotinamide(登録商標)(EMD Chemicals)
の名称で販売されている市販品のようなナイアシンアミドを使用することができる。
【0147】
ビタミンB3及び/又はその誘導体の1つは、好ましくは、本発明による組成物中において組成物の総質量に対して0.01~20質量%、より良好には0.1~10質量%、更により好ましくは0.5~5質量%の範囲の濃度で活性物質として存在する。
【0148】
顔料
本発明の特定の形態によれば、本組成物は、少なくとも1つの顔料を追加的に含む。
【0149】
「顔料」という用語は、水性媒体中で不溶であり、結果として得られる組成物及び/又は沈着物を着色及び/又は不透明化することが意図される、白色又は有色の無機又は有機粒子を意味すると理解される。これらの顔料は、白色又は有色であり、無機物質及び/又は有機物質であり得る。
【0150】
好ましくは、組成物は、前記組成物の総質量に対して少なくとも5質量%の顔料、より優先的には5質量%~40質量%の顔料、特に10質量%~30質量%の顔料、好ましくは9質量%~20質量%の顔料を含む。
【0151】
特定の実施形態によれば、本発明に従って使用される顔料は、無機顔料から選択される。
【0152】
「無機顔料」という用語は、Ullmann’s Encyclopaediaの「Pigments,Inorganic」の章の定義を満たすいずれかの顔料を意味すると理解される。本発明で使用する無機顔料のうち、酸化ジルコニウム又は酸化セリウム及びまた酸化亜鉛、酸化鉄(黒色、黄色若しくは赤色)又は酸化クロム、マンガンバイオレット、ウルトラマリンブルー、クロムハイドレート並びにフェリックブルー、二酸化チタン又はアルミニウム粉末及び銅粉末などの金属粉末が挙られ得る。以下の無機顔料も使用され得る:Ta、Ti、Ti、TiO、TiOとの混合物としてのZrO、ZrO、Nb、CeO及びZnS。
【0153】
本発明に関連して有用な顔料の径は、一般に100nmを超え、10μmまで、好ましくは200nm~5μm、より優先的には300nm~1μmの範囲であり得る。
【0154】
本発明の特定の形態によれば、顔料の径は、D[50]が100nmを超えることを特徴とし、10μmまで、好ましくは200nm~5μm、より優先的には300nm~1μmの範囲であり得る。
【0155】
粒径は、MalvernからのMasterSizer 3000(登録商標)型の市販の粒径分析装置を使用した静的光散乱によって測定され、これにより0.01μm~1000μmに及び得る広い範囲にわたる全ての粒子の粒径分布を決定することができる。データは、従来のMie散乱理論に基づいて処理される。この理論は、サブミクロン~マルチミクロンの範囲のサイズ分布に最も適しており、これにより有効な粒子径を決定することが可能になる。この理論は、特にVan de Hulst,H.C.,Light Scattering by Small Particles,Chapters 9 and 10,Wiley,New York,1957による刊行物に記載されている。
【0156】
D[50]は、粒子の50体積%によって示される最大サイズを表す。
【0157】
本発明に関連して、無機顔料は、より詳細には酸化鉄及び/又は二酸化チタンである。例として、ステアロイルグルタミン酸アルミニウムでコーティングされている二酸化チタン及び酸化鉄がより詳細には挙げられ得、例えば三好化成によってNAI(登録商標)の参照記号で販売されている。
【0158】
本発明で使用され得る無機顔料として、真珠光沢剤も挙げられ得る。
【0159】
「真珠光沢剤」という用語は、虹色の光沢を有しても又は有しなくてもよい、特に特定の軟体動物によってその殻中で生成されるか又は合成されたあらゆる形状の着色された粒子を意味するものと理解されるべきである。
【0160】
真珠光沢剤は、真珠光沢顔料、例えば酸化鉄でコーティングされた酸化チタンコーティング雲母、オキシ塩化ビスマスでコーティングされた酸化チタンコーティング雲母、酸化クロムでコーティングされた酸化チタンコーティング雲母、有機色素でコーティングされた酸化チタンコーティング雲母及びまたオキシ塩化ビスマスをベースとする真珠光沢顔料から選択され得る。これらは、雲母粒子の表面に金属酸化物及び/又は有機着色剤の少なくとも2つの連続した層が重ねられている雲母粒子であり得る。
【0161】
真珠光沢剤の例として、酸化チタン、酸化鉄、天然顔料又はオキシ塩化ビスマスでコーティングされた天然雲母も挙げられ得る。
【0162】
市販されている真珠光沢剤のうち、Engelhardによって販売されているTimica(登録商標)、Flamenco(登録商標)及びDuochrome(登録商標)真珠光沢剤(雲母をベースとする)、Merckによって販売されているTimiron(登録商標)真珠光沢剤、Eckartによって販売されている、雲母をベースとするPrestige(登録商標)真珠光沢剤及びSun Chemicalによって販売されている、合成雲母をベースとするSunshine(登録商標)真珠光沢剤が挙げられ得る。
【0163】
真珠光沢剤は、より詳細には、黄色、桃色、赤色、青銅色、橙色、茶色、金色及び/又は銅色を有するか又はこれらの色の輝きを有し得る。
【0164】
本発明に関して使用され得る真珠光沢剤の例として、特にBrilliant Gold 212G(登録商標)(Timica)、Gold 222C(登録商標)(Cloisonne)、Sparkle Gold(登録商標)(Timica)、Gold 4504(登録商標)(Chromalite)及びMonarch Gold 233X(登録商標)(Cloisonne)の名称でEngelhardによって販売されている金色の真珠光沢剤;特にBronze Fine(登録商標)(17384)(Colorona)及びBronze(登録商標)(17353)(Colorona)の名称でMerckによって及びSuper Bronze(Cloisonne)の名称でEngelhardによって販売されている青銅色の真珠光沢剤;特にOrange 363C(登録商標)(Cloisonne)及びOrange MCR 101(Cosmica)の名称でEngelhardによって及びPassion Orange(登録商標)(Colorona)及びMatte Orange(17449)(登録商標)(Microna)の名称でMerckによって販売されているオレンジ色の真珠光沢剤;特にNu-Antique Copper 340XB(登録商標)(Cloisonne)及びBrown CL4509(登録商標)(Chromalite)の名称でEngelhardによって販売されている茶色の真珠光沢剤;特にCopper 340A(登録商標)(Timica)の名称でEngelhardによって販売されている銅のような輝きを有する真珠光沢剤;特にSienna Fine(登録商標)(17386)(Colorona)の名称でMerckによって販売されている赤色の輝きを有する真珠光沢剤;特にYellow(4502)(登録商標)(Chromalite)の名称でEngelhardによって販売されている黄色の輝きを有する真珠光沢剤;特にSunstone G012(登録商標)(Gemtone)の名称でEngelhardによって販売されている金色の輝きを有する赤色の真珠光沢剤;特にTan Opale G005(登録商標)(Gemtone)の名称でEngelhardによって販売されている桃色の真珠光沢剤;特にNu-Antique Bronze 240 AB(登録商標)(Timica)の名称でEngelhardによって販売されている金色の輝きを有する黒色の真珠光沢剤;特にMatte Blue(登録商標)(17433)(Microna)の名称でMerckによって販売されている青色の真珠光沢剤;特にXirona Silver(登録商標)の名称でMerckによって販売されている銀色の輝きを有する白色の真珠光沢剤及び特にIndian Summer(登録商標)(Xirona)の名称でMerckによって販売されている、金緑色であり、桃色とオレンジ色とを帯びた真珠光沢剤並びにそれらの混合物が特に挙げられ得る。
【0165】
本発明に従って使用され得る顔料のうち、例えば単色顔料など、単純な従来の着色効果と異なる光学効果、即ち従来の着色剤によって生成されるような統一された安定した効果を有する顔料も挙げられ得る。本発明の意味の範囲内では、「安定化された」という用語は、観察角度による又は同様に温度変化に応じた色の変動の影響がないことを意味する。
【0166】
例えば、この材料は、金属の輝きを有する粒子、ゴニオクロマティック着色剤、回折顔料、熱変色剤、光学的光沢剤及びまた繊維、特に干渉繊維から選択され得る。当然のことながら、これらの様々な材料を、2つの効果を同時に示すように、実際には本発明に従って新規な効果さえ示すように組み合わせ得る。
【0167】
本発明で使用することができる金属光輝を有する粒子は、特に、
- 少なくとも1つの金属の及び/又は少なくとも1つの金属誘導体の粒子、
- 単一材料又は複合材料の有機又は無機基材を含み、少なくとも一部が少なくとも1つの金属及び/又は少なくとも1つの金属誘導体を含む金属光沢を有する少なくとも1つの層でコーティングされた粒子;及び
- 前記粒子の混合物
から選択される。
【0168】
前記粒子中に存在し得る金属のうち、例えば、Ag、Au、Cu、Al、Ni、Sn、Mg、Cr、Mo、Ti、Zr、Pt、Va、Rb、W、Zn、Ge、Te、Se及びそれらの混合物又は合金が挙げられる。Ag、Au、Cu、Al、Zn、Ni、Mo、Cr及びそれらの混合物又は合金(例えば、青銅及び真ちゅう)が好ましい金属である。
【0169】
「金属誘導体」という用語は、金属から誘導された化合物、特に酸化物、フッ化物、塩化物及び硫化物を表す。
【0170】
これらの粒子の実例として、アルミニウム粒子、例えばSilberlineによって名称Starbrite 1200EAC(登録商標)で且つEckartによってMetalure(登録商標)で販売されているものなどが挙げられ得る。
【0171】
銅又は合金混合物から形成された金属粉末、例えば2844の参照記号でRadium Bronzeによって販売されているもの、金属顔料、例えばアルミニウム又は青銅、例えばRotosafe 700(登録商標)の名称でEckartから販売されているもの、Visionaire Bright Silver(登録商標)の名称でEckartから販売されているシリカコーティングアルミニウム粒子及び金属合金から形成される粒子、例えばVisionaire Bright Natural Gold(登録商標)の名称でEckartから販売されているシリカでコーティングされた青銅(銅及び亜鉛合金)から形成された粉末も挙げられ得る。
【0172】
これらは、例えば、日本板硝子によってMicroglass Metashine(登録商標)の名称で販売されているものなど、ガラス基材を含む粒子でもあり得る。
【0173】
ゴニオクロマティック着色剤は、例えば、多層干渉構造体及び液晶着色剤から選択され得る。
【0174】
本発明に従って製造される組成物に使用することができる対称性多層干渉構造体の例は、例えば、以下の構造体:Al/SiO/Al/SiO/Al(この構造を有する顔料は、DuPont De Nemours社によって販売されている);Cr/MgF/Al/MgF/Cr(この構造を有する顔料は、Flex社によって名称Chromaflai(登録商標)で販売されている);MoS/SiO/Al/SiO/MoS;Fe/SiO/Al/SiO/Fe及びFe/SiO/Fe/SiO/Fe(これらの構造を有する顔料は、BASF社によって名称Sicopearl(登録商標)で販売されている);MoS/SiO/雲母-酸化物/SiO/MoS;Fe/SiO/雲母-酸化物/SiO/Fe;TiO/SiO/TiO及びTiO/Al/TiO;SnO/TiO/SiO/TiO/SnO;Fe/SiO/Fe;SnO/雲母/TiO/SiO/TiO/雲母/SnO(これらの構造を有する顔料は、Merck社(Darmstadt)によって名称Xirona(登録商標)で販売されている)である。一例として、これらの顔料は、Xirona Magic(登録商標)の名称でMerckによって販売されているシリカ/酸化チタン/酸化スズ構造を有する顔料、Xirona Indian Summer(登録商標)の名称でMerckによって販売されているシリカ/褐色酸化鉄構造を有する顔料及びXirona Caribbean Blue(登録商標)の名称でMerckによって販売されているシリカ/酸化チタン/雲母/酸化スズ構造を有する顔料であり得る。資生堂からのInfinite Colors顔料も挙げられ得る。様々な層の厚み及び性質に応じて異なる効果が得られる。従って、Fe/SiO/Al/SiO/Fe構造を用いると、320~350nmのSiO層では色が緑金色から赤灰色に変化し;380~400nmのSiO層では赤色から金色に変化し;410~420nmのSiO層では紫色から緑色に変化し;430~440nmのSiO層では銅色から赤色に変化する。
【0175】
ポリマー多層構造を有する顔料の例として、名称Color Glitter(登録商標)で3Mによって販売されているものが挙げられ得る。
【0176】
液晶ゴニオクロマティック粒子として、例えばChenixによって販売されているもの及びWackerによって名称Helicone(登録商標)HCで販売されているものが使用され得る。
【0177】
疎水性コーティングされた顔料
本発明の特性の形態によれば、本発明による組成物は、少なくとも1つの親油性又は疎水性化合物でコーティングされた、特に以下に詳細に記載されるような少なくとも1つの顔料を含む。
【0178】
このタイプの顔料は、多量の水と一緒に多量に考えられ得る限り、特に有利である。更に、これらは、疎水性化合物で処理されている限り、ゲル化された油性相に対して顕著な親和性を示し、この油性相は、後段でこれらを輸送し得る。
【0179】
当然のことながら、本発明による組成物は、コーティングされていない顔料を同時に含有し得る。
【0180】
コーティングは、少なくとも1つの追加の非親油性化合物も含み得る。
【0181】
本発明の意味内では、本発明による顔料の「コーティング」は、一般的に、前記顔料に吸収、吸着又はグラフトされる表面処理剤による顔料の全体的又は部分的な表面処理を示す。
【0182】
表面処理された顔料は、当業者に周知の化学的、電気的、機械化学的又は機械的性質の表面処理技術に従って調製され得る。市販品を使用することもできる。
【0183】
表面処理剤は、溶媒の蒸発、化学反応及び共有結合の生成により、顔料上に吸収させるか、吸着させるか又は顔料にグラフトさせることができる。
【0184】
一代替形態によれば、表面処理は、顔料のコーティングからなる。
【0185】
コーティングは、コーティングされた顔料の総質量の0.1質量%~20質量%、特に0.5質量%~5質量%に相当し得る。
【0186】
メイクアップ又はケア組成物の他の成分に粒子を組み込む前に、コーティングは、例えば、任意選択的に加熱しながら、粒子と前記表面処理剤を撹拌しながら単純に混合することにより、固体粒子の表面に液体表面処理剤を吸着させることによって作製され得る。
【0187】
コーティングは、例えば、表面処理剤と固体顔料粒子の表面との化学反応及び表面処理剤と粒子との間の共有結合の生成によって作製され得る。本方法は、特に米国特許第4578266号明細書に記載されている。
【0188】
化学的表面処理は、表面処理剤を揮発性溶媒中で希釈し、この混合物中に顔料を分散させ、次いで揮発性溶媒をゆっくり蒸発させて、表面処理剤が顔料の表面に沈着するようにすることからなり得る。
【0189】
親油性又は疎水性処理剤
顔料が親油性又は疎水性コーティングを含む場合、後者は、好ましくは、本発明による組成物の脂肪相中に存在する。
【0190】
本発明の特定の実施形態によれば、顔料は、本発明に従って、シリコーン表面処理剤;フッ素化表面処理剤;フルオロシリコーン表面処理剤;金属石鹸;N-アシルアミノ酸又はそれらの塩;レシチン及びその誘導体;トリイソステアリン酸イソプロピルチタン;セバシン酸イソステアリル;天然の植物性又は動物性ワックス;極性合成ワックス;脂肪エステル;リン脂質;及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの化合物によってコーティングされ得る。
【0191】
シリコーン表面処理剤
特定の実施形態によれば、顔料は、シリコーン性の化合物で完全又は部分的に表面処理することができる。
【0192】
シリコーン表面処理剤は、オルガノポリシロキサン、シラン誘導体、シリコーン-アクリレートコポリマー、シリコーン樹脂及びこれらの混合物から選択され得る。
【0193】
「オルガノポリシロキサン化合物」という用語は、交互のケイ素原子と酸素原子とを含み、且つケイ素原子に結合する有機基を含む構造を有する化合物を意味すると理解される。
【0194】
非エラストマー性オルガノポリシロキサン
特に、非エラストマー性オルガノポリシロキサンとして、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルヒドロシロキサン及びポリアルコキシジメチルシロキサンが挙げられ得る。
【0195】
アルコキシ基は、Rがメチル、エチル、プロピル、ブチル若しくはオクチル、2-フェニルエチル、2-フェニルプロピル若しくは3,3,3-トリフルオロプロピル基、アリール基、例えばフェニル、トリル若しくはキシリルなど、又は置換アリール基、例えばフェニルエチルなどを表すようなものであるR-O-基によって表され得る。
【0196】
顔料をポリメチルヒドロシロキサンで表面処理することを可能にする1つの方法は、顔料を有機溶媒中に分散させることと、次いでシリコーン化合物を添加することとを含む。混合物を加熱すると、共有結合がシリコーン化合物と顔料の表面との間にもたらされる。
【0197】
好ましい実施形態によれば、シリコーン表面処理剤は、特にポリジメチルシロキサンから選択される非エラストマー性オルガノポリシロキサンであり得る。
【0198】
アルキルシラン及びアルコキシシラン
アルコキシ官能性を有するシランは、特にA Silane Primer,Chemistry and Applications of Alkoxysilanes,Journal of Coatings Technology,65,822,pages 57-60,1993にWituckiによって記載されている。
【0199】
参照記号Milquet A-137(登録商標)(OSI Specialities)及びProsil 9202(登録商標)(PCR)で販売されているアルキルトリエトキシシラン及びアルキルトリメトキシシシランなどのアルコキシシランを、顔料をコーティングするために使用することができる。
【0200】
アルコキシ、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノ又はイミノなど、反応性末端基を有するアルキルポリシロキサンの使用は、特開平07-196946号公報に記載されている。それらは、顔料を処理するためにも好適である。
【0201】
シリコーン-アクリレートポリマー
米国特許第5725882号明細書、米国特許第5209924号明細書、米国特許第4972037号明細書、米国特許第4981903号明細書、米国特許第4981902号明細書、米国特許第5468477号明細書及び米国特許第5219560号明細書及び欧州特許第0388582号明細書に記載されるようなシリコーン骨格を有するグラフトシリコーン-アクリルポリマーが使用され得る。
【0202】
他のシリコーン-アクリレートポリマーは、以下の式(II)の単位をその構造に含むシリコーンポリマーであり得る:
【化11】
(式中、G基は、同一であるか又は異なり、水素若しくはC~C10アルキル基又はフェニル基も表し;G基は、同一であるか又は異なり、C~C10アルキレン基を表し;Gは、少なくとも1つのエチレン性不飽和アニオン性モノマーを(ホモ)重合させた結果として生じるポリマー性残基を表し;Gは、少なくとも1つのエチレン性不飽和疎水性モノマーを(ホモ)重合させた結果生じるポリマー性残基を表し;m及びnは、0又は1と等しく;aは、0~50の範囲の整数であり;bは、10~350の間となり得る整数であり、cは、0~50の範囲の整数であり;ただし、パラメータa及びcの一方は0以外である)。
【0203】
好ましくは、上の式(II)の単位は、以下の特徴の少なくとも1つ、更により優先的には全ての特徴を示す:
- G基は、アルキル基、好ましくはメチル基を表し;
- nは、非ゼロであり、G基は、二価のC~C基、好ましくはプロピレン基を表し;
- Gは、エチレン性不飽和カルボン酸型の少なくとも1つのモノマー、好ましくはアクリル酸及び/又はメタクリル酸の(ホモ)重合から生じるポリマー基を表し;
- Gは、(C~C10)アルキル(メタ)アクリレート型の、好ましくはイソブチル又はメチル(メタ)アクリレート型の少なくとも1つのモノマーの(ホモ)重合から生じるポリマー基を表す。
【0204】
式(II)に対応するシリコーンポリマーの例は、特に、ポリ(メタ)アクリル酸型の及びポリメチル(メタ)アクリレート型の混合ポリマー単位がチオプロピレン型連結リンクを介してそれにグラフトされているポリジメチルシロキサン(PDMS)である。
【0205】
式(II)に対応するシリコーンポリマーの他の例は、特に、ポリイソブチル(メタ)アクリレート型のポリマー単位がチオプロピレン型連結リンクを介してそれにグラフトされるポリジメチルシロキサン(PDMS)である。
【0206】
シリコーン樹脂
シリコーン表面処理剤は、上で定義したものなどのシリコーン樹脂から選択することができる。
【0207】
フッ素化表面処理剤
顔料は、フッ素化性の化合物で完全に又は部分的に表面処理することができる。
【0208】
フッ素化表面処理剤は、パーフルオロアルキルホスフェート、パーフルオロポリエーテル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルカン、パーフルオロアルキルシラザン、ポリヘキサフルオロプロピレンオキシド又はパーフルオロアルキルパーフルオロポリエーテル基を含むポリオルガノシロキサンから選択され得る。
【0209】
「パーフルオロアルキル基」という用語は、水素原子が全てフッ素原子で置き換えられているアルキル基を意味すると理解される。
【0210】
パーフルオロポリエーテルは、特に特許出願書類、欧州特許第0486135号明細書に記載されており、MontefluosによってFomblinの商品名で販売されている。
【0211】
パーフルオロアルキルホスフェートは、特に特公平05-86984号公報に記載されている。参照記号Asahi Guard AG530(登録商標)で旭硝子によって販売されているパーフルオロアルキルホスフェートジエタノールアミンを使用することができる。
【0212】
直鎖状パーフルオロアルカンのうち、パーフルオロシクロアルカン、パーフルオロ(アルキルシクロアルカン)、パーフルオロポリシクロアルカン、全フッ素化芳香族炭化水素(パーフルオロアレーン)及び少なくとも1つのヘテロ原子を含む有機全フッ素化炭化水素化合物が挙げられ得る。
【0213】
パーフルオロアルカンのうち、一連の直鎖アルカン、例えばパーフルオロオクタン、パーフルオロノナン又はパーフルオロデカンなどが挙げられ得る。
【0214】
パーフルオロシクロアルカン及びパーフルオロ(アルキルシクロアルカン)のうち、RhodiaによってFlutec PP5 GMPの名称で販売されているパーフルオロデカリン、パーフルオロ(メチルデカリン)又はパーフルオロ((C~C)アルキルシクロヘキサン)、例えばパーフルオロ(ブチルシクロヘキサン)などが挙げられ得る。
【0215】
パーフルオロポリシクロアルカンのうち、ビシクロ[3.3.1]ノナン誘導体、例えばパーフルオロトリメチルビシクロ[3.3.1]ノナンなど、アダマンタン誘導体、例えばパーフルオロジメチルアダマンタンなど、及び水素化フェナントレンの全フッ素化誘導体、例えばテトラコサフルオロテトラデカヒドロフェナントレンなどが挙げられ得る。
【0216】
パーフルオロアレーンのうち、ナフタレンの全フッ素化誘導体、例えばパーフルオロナフタレン及びパーフルオロ-1-メチルナフタレンなどが挙げられ得る。
【0217】
フッ化化合物で処理された顔料の商業参照記号の例として以下を挙げることができる:
- 大東化成工業によって参照記号PF 5 Yellow 601(登録商標)で販売されている黄色酸化鉄/パーフルオロアルキルホスフェート;
- 大東化成工業によって参照記号PF 5 Red R 516L(登録商標)で販売されている赤色酸化鉄/パーフルオロアルキルホスフェート;
- 大東化成工業によってPF 5 Black BL100(登録商標)の参照記号で販売されている黒色酸化鉄/パーフルオロアルキルホスフェート;
- 大東化成工業によってPF 5 TiO2 CR 50(登録商標)の参照記号で販売されている二酸化チタン/パーフルオロアルキルホスフェート;
- ToshikiによってIron Oxide Yellow BF-25-3(登録商標)の参照記号で販売されている黄色酸化鉄/パーフルオロポリメチルイソプロピルエーテル;
- Cardre Inc.によってD&C Red 7 FHC(登録商標)の参照記号で販売されているDC Red 7/パーフルオロポリメチルイソプロピルエーテル;及び
- Warner-JenkinsonによってT 9506(登録商標)の参照記号で販売されているDC Red 6/PTFE。
【0218】
フルオロシリコーン表面処理剤
顔料は、フルオロシリコーン性の化合物で完全又は部分的に表面処理することができる。
【0219】
フルオロシリコーン化合物は、パーフルオロアルキルジメチコン、パーフルオロアルキルシラン及びパーフルオロアルキルトリアルコキシシランから選択することができる。パーフルオロアルキルシランとして、信越シリコーンから販売されているLP-IT(登録商標)及びLP-4T(登録商標)が挙げられ得る。パーフルオロアルキルジメチコンは、以下の式:
【化12】
(式中、
- Rは、1~6つの炭素原子を有する直鎖若しくは分岐の二価のアルキル基、好ましくは二価のメチル、エチル、プロピル又はブチル基を表し;
- Rfは、1~9つの炭素原子、好ましくは1~4つの炭素原子を有するパーフルオロアルキル基を表し;
- mは、0~150、好ましくは20~100から選択され;
- nは、1~300、好ましくは1~100から選択される)
で表すことができる。
【0220】
フルオロシリコーン化合物で処理された顔料の商業参照記号の例として、Advanced Dermaceuticals International Inc.によって参照記号Fluorosil Titanium Dioxide 100TA(登録商標)で販売されている、二酸化チタン/フルオロシリコーンが挙げられ得る。
【0221】
他の親油性表面処理剤
疎水性処理剤は、
(i)ジミリスチン酸アルミニウム及び水添獣脂脂肪酸グルタミン酸のアルミニウム塩などの金属石鹸
から選択することもできる。
【0222】
特に、金属石鹸として、12~22個の炭素原子を有する脂肪酸の金属石鹸、特に12~18個の炭素原子を有するものが挙げられ得る。
【0223】
金属石鹸の金属は、特に亜鉛又はマグネシウムであり得る。
【0224】
金属石鹸として、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛及びそれらの混合物が使用され得る。
【0225】
疎水性処理剤は、ii)脂肪酸、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸又はパルミチン酸から選択することもできる。
【0226】
疎水性処理剤は、iii)8~22個の炭素原子を有するアシル基、例えば2-エチルヘキサノイル、カプロイル、ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル又はココイル基などを含み得る、N-アシル化アミノ酸又はそれらの塩からも選択され得る。
【0227】
アミノ酸は、例えば、リジン、グルタミン酸又はアラニンであり得る。
【0228】
これらの化合物の塩は、アルミニウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、ジルコニウム塩、亜鉛塩、ナトリウム塩又はカリウム塩であり得る。
【0229】
従って、特に好ましい実施形態によれば、N-アシル化アミノ酸誘導体は、特にグルタミン酸誘導体及び/又はその塩の1つ、より詳細にはステアロイルグルタメート、例えばステアロイルグルタミン酸アルミニウムなどであり得る。
【0230】
疎水性処理剤は、iv)レシチン及びその誘導体からも選択され得る。
【0231】
疎水性処理剤は、v)トリイソステアリン酸イソプロピルチタンでもあり得る。
【0232】
トリイソステアリン酸イソプロピルチタン(ITT)で処理された顔料の例として、KoboによってBWBO-I2(登録商標)(酸化鉄CI77499及びトリイソステアリン酸イソプロピルチタン)、BWYO-I2(登録商標)(酸化鉄CI77492及びトリイソステアリン酸イソプロピルチタン)及びBWRO-I2(登録商標)(酸化鉄CI77491及びトリイソステアリン酸イソプロピルチタン)の商品参照記号で販売されているものが挙げられ得る。
【0233】
疎水性処理剤は、vi)セバシン酸イソステアリルでもあり得る。
【0234】
疎水性処理剤は、vii)天然の植物性又は動物性のワックス又は極性合成ワックスからも選択され得る。
【0235】
疎水性処理剤は、viii)脂肪エステル、特にホホバエステルからも選択され得る。
【0236】
疎水性処理剤は、ix)リン脂質からも選択され得る。
【0237】
上で引用された化合物で言及されたワックスは、後に定義されるように、化粧品分野で一般に使用されているものであり得る。
【0238】
それらは、特に、任意選択的にエステル又はヒドロキシル官能基を含む炭化水素、シリコーン及び/又はフッ素化であり得る。それらは、天然又は合成由来のものでもあり得る。
【0239】
「極性ワックス」という用語は、少なくとも1つの極性基を含む化合物を含有するワックスを意味すると理解される。極性基は、当業者に周知であり;それらは、例えば、アルコール、エステル又はカルボン酸基であり得る。ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、微結晶ワックス、オゾケライト又はフィッシャー-トロプシュワックスは、極性ワックスのうちに含まれない。
【0240】
特に、極性ワックスは、δa>0(J/cm1/2、更により良好にはδa>1(J/cm1/2のような、25℃での平均ハンセン溶解度パラメータδa:
【数1】
(式中、δp及びδhは、それぞれハンセン溶解度パラメータへの極性の寄与及び特異的な相互作用のタイプの寄与である)
を有する。
【0241】
ハンセンによる3次元溶解度空間における溶媒の定義は、C.M.Hansen,The three-dimensional solubility parameters,J.Paint Technol.,39,105(1967)に記載されている:
- δhは、特異的相互作用(水素結合、酸/塩基又はドナー/アクセプター結合など)の力を特徴付け;
- δpは、永久双極子間のDebye相互作用力及びまた誘起双極子と永久双極子との間のKeesom相互作用力も特徴付ける。
【0242】
パラメータδp及びδhは、(J/cm1/2で表される。
【0243】
極性ワックスは、特にそれらの化学構造中に炭素原子及び水素原子以外にヘテロ原子(O、N及びPなど)を含む分子から形成される。
【0244】
特に、これらの極性ワックスの非限定的な例として、ミツロウ、ラノリンロウ、オレンジロウ、レモンロウ及びイボタロウ、コメヌカロウ、カルナウバロウ、カンデリラロウ、オウリキュリーロウ、コルク繊維ロウ、サトウキビロウ、モクロウ(Japan wax)、モクロウ(sumac wax)又はモンタンロウなどの天然極性ロウが挙げられ得る。
【0245】
特定の一実施形態によれば、顔料は、シリコーン系表面処理剤;フッ素系表面処理剤;N-アシル化アミノ酸又はその塩;トリイソステアリン酸イソプロピルチタン;天然の植物系又は動物系ワックス;脂肪エステル;及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの化合物でコーティングされ得る。
【0246】
特に好ましい実施形態によれば、顔料は、N-アシル化アミノ酸及び/又はその塩の1つ、特にグルタミン酸誘導体及び/若しくはその塩の1つ又は脂肪エステル、特にホホバエステルでコーティングされ得る。
【0247】
より特に好ましい実施形態によれば、顔料は、N-アシル化アミノ酸及び/又はその塩の1つ、特にグルタミン酸誘導体及び/又はその塩の1つ、特にステアロイルグルタメート、例えばステアロイルグルタミン酸アルミニウムなどでコーティングされ得る。
【0248】
本発明によるコーティングされている顔料の例として、より詳細には例えば三好化成によってNAIの参照記号で販売されている、ステアロイルグルタミン酸アルミニウムでコーティングされた二酸化チタン及び酸化鉄が挙げられ得る。
【0249】
疎水性化合物でコーティングされていない顔料
上で述べたように、組成物は、親油性又は疎水性化合物でコーティングされていない顔料を追加的に含有し得る。
【0250】
これらの他の顔料は、親水性化合物でコーティングされても又はされなくてもよい。
【0251】
これらの顔料は、無機顔料、特に上で定義されるようなものであり得る。
【0252】
これらの顔料は、有機顔料でもあり得る。
【0253】
「有機顔料」という用語は、Ullmann’s Encyclopaediaの「Pigments,Organic」の章の定義を満たすいずれかの顔料を意味すると理解される。有機顔料は、特に、ニトロソ、ニトロ、アゾ、キサンテン、キノリン、アントラキノン、フタロシアニン、金属錯体型、イソインドリノン、イソインドリン、キナクリドン、ペリノン、ペリレン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、ジオキサジン、トリフェニルメタン又はキノフタロン化合物から選択され得る。
【0254】
有機顔料は、例えば、カーマイン、カーボンブラック、アニリンブラック、メラニン、アゾイエロー、キナクリドン、フタロシアニンブルー、ソルガムレッド、Colour IndexにおいてCI 42090、69800、69825、73000、74100及び74160の番号で分類されている青色顔料、Colour IndexにおいてCI 11680、11710、15985、19140、20040、21100、21108、47000及び47005の番号で分類されている黄色顔料、Colour IndexにおいてCI 61565、61570及び74260の記号で番号されている緑色顔料、Colour IndexにおいてCI 11725、15510、45370及び71105の番号で分類されている橙色顔料、Colour IndexにおいてCI 12085、12120、12370、12420、12490、14700、15525、15580、15620、15630、15800、15850、15865、15880、17200、26100、45380、45410、58000、73360、73915及び75470の番号で分類されている赤色顔料並びに仏国特許第2679771号明細書に記載されているようなインドール又はフェノール誘導体の酸化重合によって得られる顔料から選択され得る。
【0255】
これらの顔料は、欧州特許第1184426号明細書に記載されているなどの複合顔料の形態でもあり得る。これらの複合顔料は、特に、有機顔料で少なくとも部分的にコーティングされる無機コアと、有機顔料をコアに固定させる少なくとも1つの結合剤とを含む粒子から構成され得る。
【0256】
顔料は、レーキでもあり得る。「レーキ」という用語は、不溶性粒子上に吸着された不溶化色素を意味し、こうして得られた集合体は、使用中に不溶性のままであると理解される。
【0257】
色素が吸着される無機基材は、例えば、アルミナ、シリカ、ホウケイ酸カルシウムナトリウム又はホウケイ酸カルシウムアルミニウム及びアルミニウムである。
【0258】
有機色素のうち、コチニールカルミンが挙げられ得る。以下の名称で知られている製品も挙げられ得る:D&C Red 21(CI 45 380)、D&C Orange 5(CI 45 370)、D&C Red 27(CI 45 410)、D&C Orange 10(CI 45 425)、D&C Red 3(CI 45 430)、D&C Red 4(CI 15 510)、D&C Red 33(CI 17 200)、D&C Yellow 5(CI 19 140)、D&C Yellow 6(CI 15 985)、D&C Green(CI 61 570)、D&C Yellow 10(CI 77 002)、D&C Green 3(CI 42 053)又はD&C Blue 1(CI 42 090)。
【0259】
レーキの例として、名称D&C Red 7(CI 15 850:1)で知られる製品が挙げられ得る。
【0260】
親水性コーティングの性質
上で述べられるように、これらの他の顔料は、親水性化合物でコーティングされ得る。
【0261】
ゲル状水性相中での顔料の分散を最適化するために顔料の表面処理を可能にする前記親水性化合物は、より詳細には、生物学的ポリマー、炭水化物、多糖、ポリアクリレート又はポリエチレングリコール誘導体から選択される。
【0262】
生物学的ポリマーの例としては、炭水化物タイプのモノマーに基づくポリマーが挙げられ得る。
【0263】
より詳細には、バイオサッカライドガム、キトサン及びその誘導体、例えばブトキシキトサン、カルボキシメチルキトサン、カルボキシブチルキトサン、キトサングルコネート、キトサンアジペート、キトサングリコレート、キトサンラクテートなど;キチン及びその誘導体、例えばカルボキシメチルキチン又はキチングリコレート;セルロース及びその誘導体、例えばセルロースアセテートなど;微結晶性セルロース;リン酸架橋デンプン;ヒアルロン酸ナトリウム;可溶性プロテオグリカン;ガラクトアラビナン;グリコサミノグリカン;グリコーゲン;スクレロチウムガム;デキストラン;デンプン及びその誘導体;及びそれらの混合物が挙げられ得る。
【0264】
炭水化物の例として、ポリヒドロキシアルデヒド又はポリヒドロキシケトン、一般式:C(HO)
(式中、x及びyは、1~1000000の範囲であり得る)
が特に挙げられ得る。
【0265】
炭水化物は、単糖類、二糖類又は多糖類であり得る。
【0266】
特に、炭水化物の例として、アミロデキストリン、ベータ-グルカン、シクロデキストリン、変性コーンスターチ、グリコーゲン、ヒアルロン酸、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、ラクトース、マルチトール、グアノシン、グリセリルデンプン、トリチクム・ブルガレデンプン、トレハロース、スクロース及びその誘導体、ラフィノース又はコンドロイチン硫酸ナトリウムが挙げられ得る。
【0267】
表面処理剤として、C~C20アルキレングリコール又はC~C20アルキレングリコールエーテルは、単独で使用し得るか又はトリ(C~C20)アルキルシランと組み合わせて使用することもできる。
【0268】
例として、PEGアルキルエーテルアルコキシシランで表面処理された顔料、例えばKoboによってSW顔料の名称で販売されている、PEG-8メチルエーテルトリエトキシシランで処理された顔料が挙げられ得る。
【0269】
ジメチコンコポリオール又はアルキルジメチコンコポリオールの名称でも知られている親水性基を有するジメチコンなどのシリコーンも、表面処理剤として本発明に適したものであり得る。特に、このようなジメチコンは、繰り返し単位として、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドなどのC~C20アルキレンオキシドを含み得る。
【0270】
例として、Sensient CorporationによってLCW AQ(登録商標)Pigmentの名称で販売されている、PEG-12-ジメチコンで処理された顔料が挙げられ得る。
【0271】
少なくとも1つの親水性化合物でコーティングされた顔料及び/又はコーティングされていない顔料の量は、特に、検討されている化粧用組成物の意図された用途によって左右され、この量の調整が組成物の配合者の能力の範囲内に入ることは、明白である。
【0272】
非乳化性オルガノポリシロキサンエラストマー
本発明の好ましい形態によれば、本組成物は、少なくとも1つの非乳化性オルガノポリシロキサンエラストマーを追加的に含む。
【0273】
「非乳化性」という用語は、親水性鎖を含有しない、特にポリオキシアルキレン単位(特にポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレン単位)又はポリグリセリル単位を含有しないオルガノポリシロキサンエラストマーを定義する。
【0274】
従って、オルガノポリシロキサンエラストマーは、特に白金触媒の存在下における、ケイ素に結合された少なくとも1つの水素を含有するジオルガノポリシロキサンと、ケイ素に結合されたエチレン性不飽和基を有するジオルガノポリシロキサンとの架橋付加反応;又は特に有機スズ化合物の存在下における、ヒドロキシル末端基を含むジオルガノポリシロキサンと、ケイ素に結合された少なくとも1つの水素を含有するジオルガノポリシロキサンとの間の脱水架橋縮合反応;又はヒドロキシル末端基を含むジオルガノポリシロキサンと、加水分解性オルガノポリシロキサンとの架橋縮合反応;又は特に有機過酸化物触媒の存在下におけるオルガノポリシロキサンの熱架橋;又はガンマ線、紫外線若しくは電子線などの高エネルギー放射線によるオルガノポリシロキサンの架橋によって得ることができる。
【0275】
好ましくは、オルガノポリシロキサンエラストマーは、(A)それぞれがケイ素に結合される少なくとも2つの水素を含有するジオルガノポリシロキサンの、及び(B)ケイ素に結合される少なくとも2つのエチレン不飽和基を有するジオルガノポリシロキサンの、特に(C)白金触媒の存在下での付加-架橋反応によって得られる。
【0276】
特に、オルガノポリシロキサンエラストマーは、白金触媒の存在下において、ジメチルビニルシロキシ末端があるジメチルポリシロキサンとトリメチルシロキシ末端があるメチルヒドロポリシロキサンとの反応によって得ることができる。
【0277】
化合物(A)は、オルガノポリシロキサンエラストマーの形成のための基礎反応物であり、架橋は、触媒(C)の存在下における化合物(A)と化合物(B)との付加反応によって行われる。
【0278】
化合物(A)は、特に、各分子で別々のケイ素原子に結合している少なくとも2つの水素原子を有するオルガノポリシロキサンである。
【0279】
化合物(A)は、いずれかの分子構造、特に直鎖状若しくは分岐鎖状構造又は環状構造を呈し得る。
【0280】
化合物(A)は、特に、化合物(B)と容易に混和性であるために、25℃で1~50000センチストークスの範囲の粘度を有することができる。
【0281】
化合物(A)のケイ素原子に結合される有機基は、アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル又はオクチルなど;置換アルキル基、例えば2-フェニルエチル、2-フェニルプロピル又は3,3,3-トリフルオロプロピルなど;アリール基、例えばフェニル、トリル、キシリルなど;置換アリール基、例えばフェニルエチルなど;及び置換一価炭化水素系基、例えばエポキシ基、カルボン酸エステル基又はメルカプト基など、であり得る。
【0282】
従って、化合物(A)は、トリメチルシロキシ末端があるメチルヒドロポリシロキサン、トリメチルシロキシ末端があるジメチルシロキサン/メチルヒドロシロキサンコポリマー又は環状ジメチルシロキサン/メチルヒドロシロキサンコポリマーから選択され得る。
【0283】
化合物(B)は、有利には、少なくとも2つの低級(例えば、C~C)アルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンであり;低級アルケニル基は、ビニル、アリル及びプロペニル基から選択され得る。これらの低級アルケニル基は、オルガノポリシロキサン分子のいずれかの位置に配置され得るが、好ましくはオルガノポリシロキサン分子の末端に配置され得る。オルガノポリシロキサン(B)は、分岐鎖状、直鎖状、環状又は網目構造を有し得るが、直鎖状構造が好ましい。化合物(B)は、液体状態からゴム状の範囲の粘度を有し得る。好ましくは、化合物(B)は、25℃で少なくとも100センチストークスの粘度を有する。
【0284】
上記のアルケニル基に加えて、化合物(B)中のケイ素原子に結合される他の有機基は、アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル又はオクチルなど;置換アルキル基、例えば2-フェニルエチル、2-フェニルプロピル又は3,3,3-トリフルオロプロピルなど;アリール基、例えばフェニル、トリル又はキシリルなど;置換アリール基、例えばフェニルエチルなど;及び置換一価炭化水素基、例えばエポキシ基、カルボン酸エステル基又はメルカプト基などであり得る。
【0285】
オルガノポリシロキサン(B)は、メチルビニルポリシロキサン、メチルビニルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、ジメチルビニルシロキシ末端があるジメチルポリシロキサン、ジメチルビニルシロキシ末端があるジメチルシロキサン/メチルフェニルシロキサンコポリマー、ジメチルビニルシロキシ末端があるジメチルシロキサン/ジフェニルシロキサン/メチルビニルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキシ末端があるジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキシ末端があるジメチルシロキサン/メチルフェニルシロキサン/メチルビニルシロキサンコポリマー、ジメチルビニルシロキシ末端があるメチル(3,3,3-トリフルオロプロピル)ポリシロキサン及びジメチルビニルシロキシ末端があるジメチルシロキサン/メチル(3,3,3-トリフルオロプロピル)シロキサンコポリマーから選択され得る。
【0286】
特に、オルガノポリシロキサンエラストマーは、白金触媒の存在下でのジメチルビニルシロキシ末端があるジメチルポリシロキサン及びトリメチルシロキシ末端があるメチルヒドロポリシロキサンの反応によって得ることができる。
【0287】
別の代替的な形態によれば、化合物(B)は、少なくとも2つの低級(例えば、C~C)アルケニル基を有する不飽和炭化水素化合物であり得;低級アルケニル基は、ビニル、アリル及びプロペニル基から選択され得る。これらの低級アルケニル基は、分子のいずれかの位置に配置され得るが、好ましくは末端に配置される。例として、ヘキサジエン及び特に1,5-ヘキサジエンが挙げられ得る。
【0288】
有利には、化合物(B)の1分子当たりのエチレン基の数及び化合物(A)の1分子当たりのケイ素原子に結合された水素原子の数の合計は、少なくとも5である。
【0289】
化合物(A)中のケイ素原子に結合された水素原子の総量と、化合物(B)中の全てのエチレン性不飽和基の総量との分子比が、1.5/1~20/1の範囲内であるような量で、化合物(A)が添加されるのが有利である。
【0290】
化合物(C)は、架橋反応の触媒であり、特に塩化白金酸、塩化白金酸-オレフィン錯体、塩化白金酸-アルケニルシロキサン錯体、塩化白金酸-ジケトン錯体、白金黒及び担体担持白金である。
【0291】
触媒(C)は、好ましくは、化合物(A)及び(B)の総量1000質量部当たりでクリーンな白金金属として0.1~1000質量部、更により良好には1~100質量部添加される。
【0292】
例えば、球状非乳化性エラストマーとして、DC9040(登録商標)、DC9041(登録商標)、DC9509(登録商標)及びDC9505(登録商標)の名称でDow Corningによって販売されているものが使用され得る。
【0293】
以下の名称で販売されているものも使用され得る:信越化学工業により、KSG-6(登録商標)、KSG-15(登録商標)、KSG-16(登録商標)、KSG-18(登録商標)、KSG-41(登録商標)、KSG-42(登録商標)、KSG-43(登録商標)及びKSG-44(登録商標)の名称で;Grant Industriesから、Gransil SR 5CYC(登録商標)gel、Gransil SR DMF 10 gel(登録商標)、Gransil SR DC556gel(登録商標)、Gransil RPS(登録商標)、Gransil DMG-6(登録商標)及びGransil DMG-6(登録商標)LCの名称で;General Electricから、1229-02-167(登録商標)、1229-02-168(登録商標)及びSFE 839(登録商標)の名称で販売されているもの。
【0294】
好ましい実施形態によれば、本発明による組成物は、少なくとも1つのシリコーン油、好ましくはジメチコンタイプの直鎖状シリコーン油中で運ばれるゲル形態の少なくとも1つの非乳化性オルガノポリシロキサンエラストマーを含む。
【0295】
例えば、Polysilicone-11/ジメチコン混合物、例えばGrant Industriesからの市販品Gransil DMG-6(登録商標)及びGransil DMG-6(登録商標)LCなどが挙げられ得る。
【0296】
本発明による組成物は、好ましくは、前記組成物の質量に対して0.1質量%~10質量%、好ましくは0.5質量%~5質量%で変動する、オルガノポリシロキサンエラストマーとして(即ち活性物質として)表現されるオルガノポリシロキサンエラストマーの含量を含む。
【0297】
本発明の1つの特定の形態によれば、本組成物は、以下を含む:
a)10-6~8×10-6/sの粘度を有する少なくとも1つのジメチコン及び/又はC~C16イソアルカン、好ましくはイソドデカンを含む少なくとも1つの油性連続相、
b)テレフタリリデンジカンフル、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、1,4-ビス-ベンズイミダゾリル-フェニレン-3,3’,5,5’-テトラスルホン酸及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの水溶性有機UV遮断剤、より具体的にはフェニルベンズイミダゾールスルホン酸を含む、前記油性相中に分散された少なくとも1つの水性相、
c)水酸化ナトリウム、
d)トリメチルシロキシケイ酸樹脂から選択される少なくとも1つの疎水性皮膜形成ポリマー、
e)好ましくはジメチコンとの混合物の形態の、少なくとも乳化界面活性剤であるPEG/PPG-18/18ジメチコン、及び
f)ナイアシンアミド。
【0298】
本発明の1つの特定の形態によれば、組成物は、以下を含む:
a)10-6~8×10-6/sの粘度を有する少なくとも1つのジメチコン及び/又はC~C16イソアルカン、好ましくはイソドデカンを含む少なくとも1つの油性連続相、
b)テレフタリリデンジカンフル、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、1,4-ビス-ベンズイミダゾリル-フェニレン-3,3’,5,5’-テトラスルホン酸及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの水溶性有機UV遮断剤、より具体的にはフェニルベンズイミダゾールスルホン酸を含む、前記油性相中に分散された少なくとも1つの水性相、
c)水酸化ナトリウム、
d)トリメチルシロキシケイ酸樹脂から選択される少なくとも1つの疎水性皮膜形成ポリマー、
e)少なくとも乳化界面活性剤であるPEG/PPG-18/18ジメチコンとPEG-10ジメチコンとの混合物、好ましくは乳化界面活性剤:ジメチコンと、PEG/PPG-18/18ジメチコンと、PEG-10ジメチコンとの混合物、及び
f)ナイアシンアミド。
【0299】
特定の実施形態によれば、本組成物は、特に、疎水性表面処理剤で、特にN-アシル化アミノ酸及び/又はその塩の1つで、特にグルタミン酸誘導体及び/又はその塩の1つで、特にステアロイルグルタメート、例えばステアロイルグルタミン酸アルミニウムなどで、コーティングされている、二酸化チタン及び/又は酸化鉄から選択される少なくとも1つの顔料を追加的に含む。
【0300】
添加物
本発明による組成物は、上に記載のもの以外の有機UV遮断剤;無機UV遮断剤;保湿剤、例えばポリオール、例えばグリセロール、プロパンジオール又はペンチレングリコールなど;充填剤;着色剤;増粘剤又はゲル化剤;保存剤;キレート剤;香料;及びそれらの混合物など、ケア及び/又はメイクアップ製品で一般的に使用される添加物を追加的に含み得る。
【0301】
充填剤
本発明による組成物は、特に、向上した安定性、耐摩耗性、カバー力及び/又はマットさの追加の特性をそれに付与することを可能にする有機又は無機性の少なくとも1つの充填剤も含み得る。
【0302】
「充填剤」という用語は、本組成物の媒体中に分散された不溶性の形態で提供される任意の形態の無色又は白色の固形粒子を意味すると理解すべきである。無機又は有機性のこれらの粒子は、本組成物における粘り若しくは剛性並びに/又はメイクアップにおける軟らかさ及び均一性を付与することを可能にする。
【0303】
本発明による組成物で使用される充填剤は、層状、球形、球状若しくは繊維状形態であり得るか、又はこれらの規定される形態間の中間のいずれかの他の形態であり得る。
【0304】
本発明による充填剤は、表面コーティングされていても又はされていなくてもよく、特に、これらは、シリコーン、アミノ酸、フッ素化誘導体又は組成物中における充填剤の分散及び相溶性を高めるいずれかの他の物質で表面処理され得る。
【0305】
無機充填剤の例として、タルク、雲母、シリカ、中空シリカ微小球、カオリン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素、ガラス又はセラミックマイクロカプセル、シリカの及び二酸化チタンの複合材、例えば日本板硝子によって販売されているTSG(登録商標)シリーズ又は疎水性シリカエアロゲルが挙げられ得る。
【0306】
有機充填剤の例として、ポリアミドから形成される粉末(AtochemからのNylon(登録商標)Orgasol)、ポリエチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリテトラフルオロエチレン(Teflon(登録商標))又はアクリル酸コポリマー(Dow CorningからのPolytrap(登録商標))、ラウロイルリジン、ポリ塩化ビニリデン/アクリロニトリルのものなどの中空ポリマー微小球、例えばExpancel(登録商標)(Nobel Industrie)、ヘキサメチレンジイソシアネート/トリメチロールヘキシルラクトンコポリマー粉末(ToshikiからのPlastic Powder(登録商標))、シリコーン樹脂マイクロビーズ(例えば、東芝からのTospearl(登録商標))、合成又は天然微粉化ワックス、8~22個の炭素原子、好ましくは12~18個の炭素原子を有する有機カルボン酸に由来する金属石鹸、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウム、ラウリン酸亜鉛又はミリスチン酸マグネシウム、Polypore(登録商標)L200(Chemdal Corporation)又はシリコーン樹脂、特に例えば米国特許第5538793号明細書に記載のようなシルセスキオキサン樹脂でコーティングされる架橋エラストマー性オルガノポリシロキサンから形成される粉末が挙げられ得る。これは、セルロース粉末、例えば大東化成工業によってCellulobeadsのシリーズで販売されているものなどでもあり得る。
【0307】
シリカ粒子
好ましい形態によれば、本発明による組成物は、疎水性シリカエアロゲル粒子、前述のもの以外のシリカ粒子及びそれらの混合物から選択されるシリカ粒子を追加的に含む。
【0308】
i.疎水性シリカエアロゲル
疎水性シリカエアロゲルは、シリカゲルの液体成分を空気と置き換える(特に乾燥により)ことによって得られる多孔質材料である。これらは一般に、ゾル-ゲル法によって液体媒体中で合成され、その後、通常は超臨界流体で抽出することによって(最も一般的に使用されているのは超臨界COである)乾燥される。このタイプの乾燥により、細孔及び材料の収縮を回避することが可能になる。ゾル-ゲル法及び様々な乾燥操作は、Brinker C.J.and Scherer G.W.,Sol-Gel Science,New York,Academic Press,1990で詳述されている。
【0309】
本発明によって使用される疎水性シリカエアロゲルは、好ましくは、シリル化シリカエアロゲル(INCI名:Silica Silylate(シリル化シリカ))である。
【0310】
「疎水性シリカ」という用語は、OH基をSi-Rシリル基、例えばトリメチルシリル基で官能化させるように、シリル化剤、例えばアルキルクロロシラン、シロキサン、特にヘキサメチルジシロキサンなどのジメチルシロキサン又はシラザンなどで表面が処理されたいずれかのシリカを意味すると理解される。
【0311】
シリル化によって表面修飾されている疎水性シリカエアロゲル粒子の調製に関しては、文献米国特許第7470725号明細書を参照し得る。
【0312】
特に、トリメチルシリル基で表面修飾されている疎水性シリカ(トリメチルシロキシル化シリカ)から形成されるエアロゲル粒子が使用される。
【0313】
「疎水性エアロゲル粒子」という用語は、0.1ml/g未満、即ち10gの水/100gの粒子未満の湿潤点で水吸収能を示すエアロゲル型のいずれかの粒子を意味すると理解される。
【0314】
湿潤点で測定され、WPと示される吸収能は、均一なペーストを得るために、1gの粒子に添加する必要がある溶媒の量(グラム又はミリリットルで表される)に対応する。これは、「湿潤点」法又は規格NF T 30-022に記載の粉末の溶媒(水又は油)の取り込みを決定するための方法に従って測定される。これは、後述されるように、湿潤点の測定による、粉末の利用可能な表面上に吸着される及び/又は粉末によって吸収される溶媒の量に対応する。
【0315】
ガラスプレート(25x25mm)を秤の上に置き、1gの粉末の量wをガラスプレート上に測り取り、次に、溶媒(例えば、水又はイソノナン酸イソノニル)を滴下して添加する。粉末に溶媒を徐々に添加し、スパチュラを使用して全てを規則的に練る(3~4滴ごと)。均一なペーストが得られたときに溶媒の添加を停止する。このペーストは、亀裂又は塊形成なく、ガラス板上に広げることができなければならない。湿潤点を得るために必要な溶媒の質量を記録する。3回の試験にわたる平均をとる。溶媒の密度が既知であるため、使用される溶媒の体積Vs(mlで表される)がそこから推定される。溶媒の取り込みは、比Vs/wに対応する。
【0316】
好ましくは、本発明による疎水性シリカエアロゲル粒子は、好ましくは、5~18ml/g、好ましくは6~15ml/g、更により良好には8~12ml/gの範囲の、湿潤点で測定される油吸収能を有する。
【0317】
本発明で使用される疎水性シリカエアロゲル粒子は、好ましくは、200~1500m/gの範囲、好ましくは600~1200m/gの範囲、更により良好には600~800m/gの範囲の、単位質量当たりの比表面積(S)及び1500μm未満、好ましくは1~30μmの範囲、好ましくは5~25μm、更により良好には5~20μm、一層良好には5~15μmである、体積平均径(D[0.5])として表されるサイズを示す。
【0318】
質量単位当たりの比表面積は、The Journal of the American Chemical Society,Vol.60,page 309,February 1938に記載されており、国際規格ISO 5794/1(Annex D)に対応する、BET(Brunauer-Emmett-Teller)法として知られる窒素吸収法によって求められ得る。BET比表面積は、検討中の粒子の全比表面積に対応する。
【0319】
本発明によるエアロゲル粒子のサイズは、MalvernからのMastersizer 2000(登録商標)タイプの市販の粒径分析器を用いて静的光散乱によって測定され得る。データは、Mie散乱理論に基づいて処理する。この理論は、等方性粒子に妥当であり、非球状粒子の場合、有効粒子径を求めることを可能にする。この理論は、特にVan de Hulst,H.C.による刊行物、Light Scattering by Small Particles,Chapters 9 and 10,Wiley,New York,1957に記載されている。
【0320】
本発明で使用される疎水性シリカエアロゲル粒子は、有利には、0.02g/cm~0.10g/cm、好ましくは0.02g/cm~0.08g/cmの範囲のタンプド密度を示し得る。
【0321】
本発明に関して、この密度は、タンプド密度プロトコールとして知られる以下のプロトコールに従って評価され得る:粉体40gをメスシリンダーに注ぎ入れ、次いでこのメスシリンダーをStampf VolumeterからのStav2003(登録商標)装置に置き;続いてメスシリンダーに対してタンピング動作を2500回連続して行い(この操作は2回の連続の試験間の体積の差が2%未満になるまで反復する)、次いでタンピングした粉体の最終体積Vfをメスシリンダーで直接測定する。タンプド密度は、w/Vfの比によって求められ、この場合、40/Vfのポイントである(Vfの単位は、cm単位で、wは、g単位で表される)。
【0322】
一実施形態によれば、本発明で使用される疎水性エアロゲル粒子の単位体積当たりの比表面積(S)は、5~60m/cmの範囲、好ましくは10~50m/cmの範囲であり、更により良好には15~40m/cmの範囲である。
【0323】
単位体積当たりの比表面積は、以下の関係式:S=S×ρによって与えられ、ここで、上に定義されるように、ρは、g/cmで表されるタンプド密度であり、Sは、m/gで表される単位質量当たりの比表面積である。
【0324】
特定の実施形態によれば、使用されるエアロゲル粒子は、無機であり、より詳細には上で述べた特性を示す疎水性シリカエアロゲル粒子である。
【0325】
本発明で使用され得る疎水性シリカエアロゲルとして、例えば、Dow CorningによってVM-2260(INCI名:Silica Silylate(シリル化シリカ))の名称で販売されているエアロゲルが挙げられ得、その粒子の平均径は、およそ1000ミクロンであり、単位質量当たりの比表面積は、600~800m/gの範囲である。
【0326】
CabotによってAerogel TLD 201(登録商標)、Aerogel OGD 201(登録商標)、Aerogel TLD 203(登録商標)、Enova(登録商標)Aerogel MT 1100及びEnova Aerogel MT 1200(登録商標)の参照記号で販売されているエアロゲルも挙げられ得る。
【0327】
より詳細には、Dow CorningによってVM-2270(登録商標)(INCI名:Silica Silylate(シリル化シリカ))の名称で販売されているエアロゲルが使用され得、この粒子の平均径は、5~15ミクロンの範囲であり、単位質量当たりの比表面積は、600~800m/gの範囲である。
【0328】
CabotによってEnova(登録商標)Aerogel MT 1100(INCI名:Silica Silylate(シリル化シリカ))の名称で販売されているエアロゲルも使用され、この粒子の平均径は、2~25ミクロンの範囲であり、単位質量当たりの比表面積は、600~800m/gの範囲である。
【0329】
疎水性エアロゲル粒子は、組成物の総質量に対して0.05質量%~10質量%、好ましくは0.1質量%~8質量%、更により良好に0.2質量%~5質量%、より好ましくは0.3質量%~3質量%に相当する。
【0330】
他のシリカ粒子
使用され得る他のシリカは、天然及び未処理であり得る。従って、Hoffmann Mineralにより、Sillitin N85(登録商標)、Sillitin N87(登録商標)、Sillitin N82(登録商標)、Sillitin V85(登録商標)及びSillitin V88(登録商標)の名称で提供されるシリカが挙げられ得る。
【0331】
これらは、ヒュームドシリカであり得る。
【0332】
ヒュームドシリカは、酸水素炎での揮発性ケイ素化合物の高温熱分解により、微粉シリカを生成することによって得ることができる。この方法により、特にそれらの表面で多数のシラノール基を示す親水性シリカを得ることが可能となる。シラノール基の数を減少させる化学反応により、前記シリカの表面を化学修飾することが可能である。特に、疎水性基によってシラノール基を置換することが可能である。次に、疎水性シリカが得られる。
【0333】
疎水性基は、以下であり得る:
(a)特にヘキサメチルジシラザンの存在下でのフュームドシリカの処理によって得られる、トリメチルシロキシ基。このように処理されたシリカは、CTFA(6th edition,1995)に従い、「Silica Silylate(シリル化シリカ)」として知られる。
(b)ジメチルシリルオキシ基又はポリジメチルシロキサン基、これらは、特にポリジメチルシロキサン又はジメチルジクロロシランの存在下でのフュームドシリカの処理によって得られる。このように処理されたシリカは、CTFA(6th Edition、1995)に従い、「Silica Dimethyl Silylate(ジメチルシリル化シリカ)」として知られる。
【0334】
より詳細には、シリコーンエアロゲル以外のシリカ粉末として以下が挙げられ得る:
- 三好化成によってSilica Beads SB-700(登録商標)の名称で且つ旭硝子によってSunsphere H51(登録商標)及びSunsphere H33(登録商標)の名称で販売されている多孔性シリカミクロスフェア;
- AGC エスアイテックによってSA Sunsphere(登録商標)H33(登録商標)及びSA Sunsphere(登録商標)H53(登録商標)の名称で販売されている、ポリジメチルシロキサンコーティングされているアモルファスシリカミクロスフェア;
- 例えば、ポリエチレンなどのミネラルワックスでコーティングされる、特にEvonik DegussaによってAcematt(登録商標)OK 412(登録商標)の名称で販売されている沈降シリカミクロスフェア。
【0335】
より詳細には、シリカ粉末として、多孔性シリカミクロスフェア、例えば三好化成によってSilica Beads SB-700(登録商標)の名称で且つAGC エスアイテックによってSunsphere H51(登録商標)及びSunsphere H33(登録商標)の名称で販売されているものなどが使用される。
【0336】
疎水性シリカエアロゲル粒子以外のシリカ粒子は、本発明による組成物中において組成物の総質量に対して0.01質量%~15質量%、好ましくは0.1質量%~10質量%の範囲及び非常に優先的には0.5質量%~5質量%の範囲の含量で存在する。
【0337】
優先的な形態によれば、本発明による組成物は、上記のものなどの少なくとも疎水性シリカエアロゲル粒子及び他のシリカ粒子、例えば上記のものなど、特に多孔性シリカミクロスフェアを含む混合物を含む。
【0338】
追加の着色剤
本発明による組成物は、好ましくは、前記組成物の総質量に対して少なくとも0.01質量%の割合で少なくとも1つの追加の着色剤を追加的に含み得る。
【0339】
明らかな理由から、この量は、所望の色効果の強度及び検討中の着色剤によって与えられる色の強度の観点から大きく変化し易く、その調整は明らかに当業者の能力の範囲内である。
【0340】
本発明に適切な追加の着色剤は、水溶性であり得るが、脂溶性でもあり得る。
【0341】
本発明の意味内では、「水溶性着色剤」という用語は、水性相又は水混和性溶媒中で可溶性であり、色を付与することが可能ないずれかの天然又は合成の、一般には有機である化合物を意味すると理解される。
【0342】
特に、本発明に適切な水溶性色素として、合成又は天然の水溶性色素、例えばFDC Red 4、DC Red 6、DC Red 22、DC Red 28、DC Red 30、DC Red 33、DC Orange 4、DC Yellow 5、DC Yellow 6、DC Yellow 8、FDC Green 3、DC Green 5、FDC Blue 1、ベタニン(ビートルート)、カーマイン、銅クロロフィリン、メチレンブルー、アントシアニン(エノシアニン、ブラックキャロット、ハイビスカス又はニワトコ)、カラメル又はリボフラビンが挙げられ得る。
【0343】
水溶性色素は、例えば、ビートルート汁及びカラメルである。
【0344】
本発明の意味内では、「脂溶性着色剤」という用語は、脂肪物質と混和性である油性相又は溶媒中で可溶性であり、色を付与することが可能である、いずれかの天然又は合成の、一般には有機の、化合物を意味すると理解される。
【0345】
特に、本発明に好適な脂溶性染料として、例えば、DC Red 17、DC Red 21、DC Red 27、DC Green 6、DC Yellow 11、DC Violet 2、DC Orange 5、スーダンレッド、カロテン(β-カロテン、リコペン)、キサントフィル(カプサンシン、カプソルビン、ルテイン)、パーム油、スーダンブラウン、キノリンイエロー、アナトー又はクルクミンなどの合成又は天然の脂溶性色染料が挙げられ得る。
【0346】
化粧用組成物
本発明は、生理学的に許容される媒体中において、上で定義されたような組成物を含む化粧用組成物にも関する。
【0347】
「生理学的に許容される媒体」という用語は、本発明の組成物の皮膚への適用に特に好適である媒体を表すと理解される。
【0348】
生理学的に許容可能な媒体は、一般的に、本組成物が適用されなければならない支持体の性質に適切であり、本組成物が包装されなければならない外観にも適切である。
【0349】
適用
一実施形態によれば、本発明の組成物は、有利には、胴体の又は顔の、特に顔の皮膚をケアするための組成物の形態で提供することができる。
【0350】
別の実施形態によれば、本発明の組成物は、有利には、ケラチン物質、特に胴体の又は顔の、特に顔の皮膚をメイクアップするための組成物の形態で提供することができる。
【0351】
従って、この実施形態の下位態様によれば、本発明の組成物は、有利には、メイクアップのためのベース組成物の形態で提供し得る。
【0352】
本発明の組成物は、有利には、ファンデーションの形態で提供され得る。
【0353】
この実施形態の別の下位態様によれば、本発明の組成物は、有利には、皮膚及び特に顔をメイクアップするための組成物の形態で提供され得る。従って、それは、アイシャドー又はフェイスパウダーであり得る。
【0354】
このような組成物は、特に当業者の一般知識に従って調製される。
【0355】
特許請求の範囲を含む本明細書全体を通して、「含む」という表現は、別段の指定がない限り、「少なくとも1つを含む」と同義であると理解すべきである。
【0356】
「...~...」及び「...~...の範囲」という表現は、特に明記されていない限り、限界点が含まれることを意味するものと理解すべきである。
【0357】
本発明は、以下に示される実施例及び図によってより詳細に例示される。別段の指示がない限り、指示される量は、質量百分率として表される。
【実施例
【0358】
実施例1及び2(本発明)並びに実施例1a’(本発明外)
本発明による組成物1及び2並びに発明外の組成物1a及び1bを製造した。
【0359】
【表1】
【0360】
【表2】
【0361】
a)水性相の調製:
相B1の成分全てを量り取り、Rayneriミキサー(デフロキュレーター)を用いて撹拌を行った。水酸化ナトリウムでpHを調整し、喪失した水の量を添加した。
【0362】
b)油性相の調製:
相Cの不揮発性ジメチコン及び次に相A1のイソドデカン及び界面活性剤を量り取り、渦ができるように速度を調整しながら、Moritzミキサー(ローター/固定子)下で5分間混合し、次いでアセンブリを氷冷水浴下に置いた。相A3のシリコーンエラストマーを量り取り、常に渦ができるように速度を調整しながら15分間、混合を行った。続いて、相A3の皮膜形成ポリマーと相A4の充填剤を量り取った。処理し易くするために、Dow Corning VM-2270(登録商標)エアロゲル微粒子-Dow Corningをイソドデカンに予め分散させておくことができる。その後、常に渦が発生するように速度を調整しながら15分間混合を行った。
【0363】
c)乳化
Moritzミキサー下及び依然として氷冷水浴下でエマルションを生成させ、水性相を脂肪相に導入した。アセンブリを20分間、1300rev/minの速度のままにした(漸増/ボルテックス)。
【0364】
続いて、Rayneriミキサー下でアルコールを添加し、温度を40℃未満に維持しながら5分間分散させた。
【0365】
濁度測定
以下のプロトコールに従い、皮膜の形態で展着させた後、ナイアシンアミドを用いた本発明による実施例1及び2並びに反例1a及び1bに対して濁度性能測定を行った。
【0366】
a)展着プロトコール
透明なポリエステルシート全体に厚さ25μmの皮膜の形態で自動スプレッダーを使用して各試験組成物を塗り広げた。得られた沈着物を周囲温度(25℃)で1時間置いた。
【0367】
b)濁度測定プロトコール
Haze Gard(登録商標)装置(Haze-Gard Plus Brant Industrie S.A.R.L.-BYK Gardner)を使用して、濁度測定を行った。
【0368】
測定の1時間前にレーザーのスイッチを入れた。アプライアンスの較正段階の後に、前もって1時間乾燥させた皮膜をレーザーの経路におけるアプライアンスに配置した。アプライアンスによって自動的に濁度測定が行われた。
【0369】
各組成物を3回塗り広げ、濁度平均及び標準偏差を決定するために、組成物ごとに10回、濁度測定を行った。結果を下の表で示す。
【0370】
安定性試験
実施例1及び1bをガラス製のサンプル管に20gの割合で導入した。各サンプル管をHeraeus Voetsch(登録商標)タイプのサイクルオーブンに10日間入れた。24時間ごとに、各サンプル管を6時間の以下の4つの温度サイクルにかけた。
+20℃で6時間
6時間で20℃から-20℃まで徐々に温度を下げる
-20℃で6時間
6時間で-20℃から20℃まで徐々に温度を上げる
【0371】
10日後、各実施例1及び1bの外観を、
i)肉眼で巨視的に、及び
ii)10倍の倍率のLeica DM2500(登録商標)顕微鏡で微視的に
観察した。得られた結果を下記の表2及び3に示す。
【0372】
【表3】
【0373】
濁度試験から、ナイアシンアミドと、イソドデカンと、揮発性ジメチコン(5cSt)とを含む本発明による実施例1及び2が、
- 同一の組成であるがナイアシンアミドを含まない本発明外の実施例1a、及び
- 同一の組成であるが、揮発性ジメチコン(5cSt)の代わりに不揮発性エステル油であるプロピレングリコールジカプリレート/ジカプレートを同じ濃度で含む本発明外の実施例1b
と比較して、より良好な欠陥のぼかしを生じることが示された。
【0374】
【表4】
【0375】
10日間の保存安定性試験から、ナイアシンアミドと、イソドデカンと、揮発性ジメチコン(5cSt)とを含む本発明の実施例1は、実施例1bと異なり、安定で均一なままであることが示された。
【国際調査報告】