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特表2024-541472がん治療のためにRARγアゴニストを使用する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】がん治療のためにRARγアゴニストを使用する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/343 20060101AFI20241031BHJP
   C07D 307/81 20060101ALI20241031BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 31/201 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 31/231 20060101ALI20241031BHJP
   C07C 251/40 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
A61K31/343
C07D307/81 CSP
A61P35/00
A61K45/00
A61K31/192
A61K31/201
A61K31/231
C07C251/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024530570
(86)(22)【出願日】2022-11-23
(85)【翻訳文提出日】2024-07-17
(86)【国際出願番号】 US2022080408
(87)【国際公開番号】W WO2023097259
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】63/282,547
(32)【優先日】2021-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518150220
【氏名又は名称】アイオー セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】サンダース、マーティン イー
(72)【発明者】
【氏名】ヴュリゴンダ、ヴィディヤサガル
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC752
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BA06
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC41
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA03
4C206DA04
4C206DB07
4C206DB43
4C206HA08
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZB26
4C206ZC41
4C206ZC75
4H006AA01
4H006AB28
4H006BW12
4H006BW30
4H006BW41
4H006BW44
4H006BW46
(57)【要約】
本発明は、がんの治療で用いられる新規のRARγ選択的アゴニストを開示する。本発明は、RARγ受容体を選択的に活性化し、腫瘍浸潤リンパ球を活性化することでがんを治療するための、ヒトを含む哺乳類へのRARγ選択的アゴニストの投与も開示する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療を必要とする患者に有効量の下記の構造を有するRARγ選択的アゴニストまたはその医薬的に許容可能な塩を投与することを含む、がんを治療する方法。
【化1】
(GAG1)
(ただし、Rは、HまたはC1-6アルキルであり、=N-OH基への交差二重結合は立体化学が不特定であることを示し、RからR12は、独立して、C1-6アルキル、水素原子、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシ基、OCF、またはCOR13(ただし、R13は、C1-6アルキルまたはCF)であり、Yは、酸素、硫黄、またはNR14(ただし、R14はC1-6アルキル)であり、R16はHまたはFである。)
【請求項2】
前記RARγ選択的アゴニストは下記の構造を有する、請求項1に記載の方法。
【化2】
(GA1E)
【請求項3】
前記がんは、固形腫瘍である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記がんは、乳がんである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記乳がんは、三種陰性乳がんである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記乳がんは、Her2乳がんである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記がんは、肺がんである、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記有効量は、約1から約100mg/日である、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
CAR-T細胞の投与をさらに含む、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
免疫チェックポイント阻害剤の投与をさらに含む、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
腫瘍浸潤リンパ球(tumor-infiltrating lymphocyte、TIL)をRARγ選択的アゴニストと接触させることにより前記TILを生成するまたは拡大培養する方法。
【請求項12】
前記接触は、がんを有する対象に前記RARγ選択的アゴニストを投与することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記接触は、前記RARγ選択的アゴニストが添加された培地において前記TILをインビトロで培養することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
腫瘍外植体からTILを単離することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記RARγ選択的アゴニストが添加された培地において、放射線照射腫瘍細胞の存在下、末梢血単核細胞(peripheral blood mononuclear cell、PBMC)をインビトロで培養することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記PBMCおよび前記放射線照射腫瘍細胞は、同じ個体から取得される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記培地は、IL-2をさらに添加されている、請求項13から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体を前記培養培地に添加することをさらに含む、請求項13から17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
治療を必要とする患者に請求項11から18のいずれか1項にしたがって生成または拡大培養された前記TILを注入することを含む、がんを治療する方法。
【請求項20】
治療を必要とする患者にRARγ選択的アゴニストで拡大培養されたTILを提供することを含む、がんを治療する方法。
【請求項21】
前記RARγ選択的アゴニストが添加された培地においてインビトロで培養されたTILを投与することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記提供は、前記患者に前記RARγ選択的アゴニストを投与することを含む、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記がんは、固形腫瘍である、請求項20から22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記がんは、乳がんである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記乳がんは、三種陰性乳がんである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記乳がんは、Her2乳がんである、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記がんは、肺がんである、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記RARγ選択的アゴニストは、下記の構造の化合物またはその医薬的に許容可能な塩である、請求項11から27のいずれか1項に記載の方法。
【化3】
(GAG3p)
(ただし、Rは、HまたはC1-6アルキルであり、RおよびRは、それぞれ、独立して、HまたはC1-6アルキルであり、R、R3’、R、およびR4’は、独立して、HまたはFであり、Xは、O、S、CH、C(R、またはNR(ただし、RおよびRは、それぞれ、独立して、HまたはC1-6アルキル)であり、=N-OH基への交差二重結合は立体化学が不特定であることを示す。)
【請求項29】
前記RARγ選択的アゴニストは、下記の構造の化合物またはその医薬的に許容可能な塩である、請求項28に記載の方法。
【化4】
(GA2E)
【請求項30】
前記RARγ選択的アゴニストは、下記の構造の化合物またはその医薬的に許容可能な塩である、請求項28に記載の方法。
【化5】
(GA3Ep)
【請求項31】
前記RARγ選択的アゴニストは、下記の構造の化合物またはその医薬的に許容可能な塩である、請求項19から30のいずれか1項に記載の方法。
【化6】
(GAG1)
(ただし、Rは、HまたはC1-6アルキルであり、=N-OH基への交差二重結合は立体化学が不特定であることを示し、RからR12は、独立して、C1-6アルキル、水素原子、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシ基、OCF、またはCOR13(ただし、R13は、C1-6アルキルまたはCF)であり、Yは、酸素、硫黄、またはNR14(ただし、R14はC1-6アルキル)であり、R16はHまたはFである。)
【請求項32】
前記RARγ選択的アゴニストは、下記の構造を有する、請求項31に記載の方法。
【化7】
(GA1E)
【請求項33】
前記方法は、対象に前記RARγ選択的アゴニストを投与することを含み、前記投与は、治療期間全体にわたり定期的に行われる、請求項1から10および19から32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記方法は、対象に前記RARγ選択的アゴニストを投与することを含み、前記投与は、治療期間全体にわたり反復周期で行われる、請求項1から10および19から32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
治療の一周期が、1)第1期間にわたり定期的に前記RARγ選択的アゴニストを投与することと、2)第2期間にわたり前記RARγ選択的アゴニストの投与を中断することとを含み、前記第2期間後に新しい周期が開始されてもよい、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記第1期間は、10から15日である、または、そのうちの任意の整数の日数である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記第2期間は、2週から1ヶ月である、または、そのうちの任意の整数の日数である、請求項35または36に記載の方法。
【請求項38】
定期は、毎日である、請求項33から37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
定期は、毎日2回である、請求項33から37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
定期は、一日置きである、請求項33から37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記治療期間は、最初の投与から、完全奏功が達成されるまでにわたる、請求項33から40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記治療期間は、最初の投与から、安定状態または退縮の後に前記がんが再び進行するまでにわたる、請求項33から40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
Treg細胞の阻害剤を投与することをさらに含む、請求項から1から10および19から42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記Treg細胞の阻害剤は、RARαアンタゴニストを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記Treg細胞の阻害剤は、Treg除去抗体を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記Treg除去抗体は、抗CD25抗体、抗GITR抗体、抗FoxP3抗体、抗CCR抗体、または抗葉酸受容体4抗体を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体の投与をさらに含む、請求項1から8および19から46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
下記の構造を有するRXRアゴニストまたはその医薬的に許容可能な塩を投与することをさらに含む、請求項1から10および19から46のいずれか1項に記載の方法。
【化8】
(XAG)
(ただし、Rは、HまたはC1-6アルキルである。)
【請求項49】
前記RXRアゴニストは、3,7-ジメチル-6(S),7(S)-メタノ,7-[1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフト-7-イル]2(E),4(E)ヘプタジエン酸(IRX4204)である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
キメラ抗原受容体-T(chimeric antigen receptor-T、CAR-T)細胞を、受けている最中である、受けたことがある、または受ける予定であるがん患者に、有効量の下記の構造を有するRARγ選択的アゴニストまたはその医薬的に許容可能な塩を投与することを含む、CAR-Tがん免疫療法を増強する方法。
【化9】
(GAG1)
(ただし、Rは、HまたはC1-6アルキルであり、=N-OH基への交差二重結合は立体化学が不特定であることを示し、RからR12は、独立して、C1-6アルキル、水素原子、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシ基、OCF、またはCOR13(ただし、R13は、C1-6アルキルまたはCF)であり、Yは、酸素、硫黄、またはNR14(ただし、R14はC1-6アルキル)であり、R16はHまたはFである。)
【請求項51】
免疫チェックポイント阻害剤を、受けている最中である、受けたことがある、または受ける予定であるがん患者に、有効量の下記の構造を有するRARγ選択的アゴニストまたはその医薬的に許容可能な塩を投与することを含む、免疫チェックポイント阻害剤がん免疫療法を増強する方法。
【化10】
(GAG1)
(ただし、Rは、HまたはC1-6アルキルであり、=N-OH基への交差二重結合は立体化学が不特定であることを示し、RからR12は、独立して、C1-6アルキル、水素原子、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシ基、OCF、またはCOR13(ただし、R13は、C1-6アルキルまたはCF)であり、Yは、酸素、硫黄、またはNR14(ただし、R14はC1-6アルキル)であり、R16はHまたはFである。)
【請求項52】
下記の構造のRARγ選択的アゴニストまたはその医薬的に許容可能な塩。
【化11】
(GAG1)
(ただし、Rは、HまたはC1-6アルキルであり、RからR12は、独立して、C1-6アルキル、水素原子、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシ基、OCF、またはCOR13(ただし、R13は、C1-6アルキルまたはCF)であり、Yは、酸素、硫黄、またはNR14(ただし、R14はC1-6アルキル)である。)
【請求項53】
Rは、H、メチル、またはエチルである、請求項52に記載のRARγ選択的アゴニスト。
【請求項54】
Yは、Oである、請求項52に記載のRARγ選択的アゴニスト。
【請求項55】
下記の構造を有する、請求項54に記載のRARγ選択的アゴニスト。
【化12】
(GAG1-1)
【請求項56】
前記=N-OH基は、E配置である、請求項52に記載のRARγ選択的アゴニスト。
【請求項57】
下記の構造を有する、請求項56に記載のRARγ選択的アゴニスト。
【化13】
(GAG1-2)
【請求項58】
前記RARγ選択的アゴニストは、下記の構造を有する4-((1E,3E)-3-(3-(tert-ブチル)-2-エチル-ベンゾフラン-5-イル)-3-(ヒドロキシイミノ)プロプ-1-エン-1-イル)-3-フルオロ安息香酸(GA1E)である、請求項52に記載のRARγ選択的アゴニスト。
【化14】
(GA1E)
【請求項59】
前記RARγ選択的アゴニストは、下記の構造を有する4-((1E,3Z)-3-(3-(tert-ブチル)-2-エチル=ベンゾフラン-5-イル)-3-(ヒドロキシイミノ)プロプ-1-エン-1-イル)-3-フルオロ安息香酸(GA1Z)である、請求項52に記載のRARγ選択的アゴニスト。
【化15】
(GA1Z)
【請求項60】
下記の構造を有するRARγ選択的アゴニストまたはその医薬的に許容可能な塩。
【化16】
GAG2
(ただし、Rは、HまたはC1-6アルキルであり、=N-OH基への交差二重結合は立体化学が不特定であることを示す。)
【請求項61】
Rは、H、メチル、またはエチルである、請求項60に記載のRARγ選択的アゴニスト。
【請求項62】
前記=N-OH基は、E配置である、請求項60に記載のRARγ選択的アゴニスト。
【請求項63】
前記RARγ選択的アゴニストは、下記の構造を有する3-フルオロ-4-((1E,3E)-3-(ヒドロキシイミノ)-3-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)プロプ-1-エン-1-イル)安息香酸(GA2E)である、請求項60に記載のRARγ選択的アゴニスト。
【化17】
(GA2E)
【請求項64】
前記RARγ選択的アゴニストは、下記の構造を有する3-フルオロ-4-((1E,3Z)-3-(ヒドロキシイミノ)-3-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)プロプ-1-エン-1-イル)安息香酸(GA2Z)である、請求項60に記載のRARγ選択的アゴニスト。
【化18】
(GA2Z)
【請求項65】
下記の構造を有するRARγ選択的アゴニストまたはその医薬的に許容可能な塩。
【化19】
GAG3
(ただし、Rは、HまたはC1-6アルキルであり、RおよびRは、それぞれ、独立して、HまたはC1-6アルキルであり、RおよびR3’は、独立して、Hまたはハロゲンであり、(Rは、RおよびR4’を含み、これらは独立して、H、ハロゲン、C1-6アルキル、またはC1-6アルコキシであり、Xは、O、S、CH、C(R、またはNR(ただし、RおよびRは、それぞれ、独立して、HまたはC1-6アルキル)であり、=N-OH基への交差二重結合は立体化学が不特定であることを示し、COOR基はメタまたはパラ位置にあり、かつ、2つの前記R基が環の残りの位置を占める。)
【請求項66】
下記の構造のいずれかを有する、請求項65に記載のRARγ選択的アゴニスト。
【化20】
GAG3p
【化21】
GAG3m
【化22】
(GAG3Ep)
【請求項67】
下記の構造のいずれかを有する、請求項65に記載のRARγ選択的アゴニスト。
【化23】
GA3Ep
【化24】
GA3Em
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、RARγアゴニストでがんを治療する方法に関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2022年11月23日に出願された米国仮出願第63/282,547号に基づき優先権を主張し、その内容全体を参照により本明細書に援用する。
【背景技術】
【0003】
レチノイドは、核内受容体であるチノイン酸受容体(RAR)およびレチノイドX受容体(RXR)と相互作用する小分子類である。RXRと相互作用するレチノイドは、レキシノイドと呼ばれ、文脈によっては、レチノイドという用語は、RARと相互作用する化合物を示すために用いられる。RARおよびRXRは、両方とも、3種のサブタイプ、α、β、およびγを有する。レチノイドは、これらの受容体のアゴニストまたはアンタゴニストのいずれかとして作用し得る。いくつかのレチノイドは、RARおよびRXRの両方ならびにサブタイプのそれぞれと相互作用するが、一方で、その他のレチノイドは、特定の受容体のタイプまたはサブタイプと優先的にまたは特異的に相互作用する。レチノイドは、発生および複数種の細胞の分化を制御する。レチノイドは、特定のレチノイドが活性化または阻害する特定の受容体のタイプおよびサブタイプに部分的には依存して、多面的作用を有する。レチノイドは、あり程度の構造多様性を示す。特定のレチノイドがどの受容体のタイプまたはサブタイプと相互作用するか、または、特定のレチノイドがアゴニストまたはアンタゴニストのいずれとして作用するかを、確実に予測することは不可能である。
【0004】
何の作用が観察されたかもしれないのかについて科学文献においてある程度の食い違いがあることから、レチノイドの特定のサブタイプから予測できる事柄についての更なる不確実性が生じる。白血病細胞株の組織培養研究で、Perri等(Exp Cell Res. 327(2):183-191,2014)は、RARαアゴニストおよびRARγアンタゴニストがそれぞれ細胞増殖を阻害したこと、RARγアンタゴニストとBCL-xおよびMCL-1の二重アンタゴニストとの組み合わせが大きく阻害性であったことを発見した。対照的に、Meister等(Anticancer Res.18(3A):1777-1786,1998)は、RARγアゴニストが神経芽腫細胞株に対して最大の抗増殖性作用を示したことを発見した。両方の研究で、アポトーシスが腫瘍細胞増殖を阻害する主要機序としてみられた。Cheung等(Biochem Biophys Res Commun. 229(1):349-54,1996)は、各RARサブタイプを神経芽腫細胞株に遺伝子導入することでRARサブタイプ特異的薬剤の作用を研究し、RARβ発現が成長阻害に必要であると結論づけた。Raffo等(Anticancer Res. 20(3A):1535-43,2000)は、3種全てのサブタイプのアゴニストによる乳がん細胞株に対する幾ばくかのアポトーシス活性を観察したが、最大の作用はRARαアゴニストからであった。これらのインビトロ実験と比べると、これらの化合物のいずれかがインビボで何の作用を有し得るのか、何処で多面的作用が勢揃いして働くだろうかは、さらに不明確である。
【0005】
がん治療は常に進歩しており、特異性および洗練性が増している。早期非外科的がん治療は、一般的に、放射線学的または化学的攻撃へより感受性である急速に分裂する細胞を標的とする。時とともに、より特異的で全身毒性がより低い治療が開発されてきた。いくつかの治療は、例えば免疫チェックポイント阻害剤などの、幅広い用途を有するようにみえる。他の治療は、多数のモノクローナル抗体およびキナーセ阻害剤をはじめとする、増殖または分化の制御に関与する特定の抗原または他のバイオマーカーを発現するがんを標的とする。種々のがん治療が発展しているものの、どの候補治療が生産性を追求されどの適応症のためのものであり得るのかを決定することは益々難しくなってきている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書に開示されるのは、腫瘍浸潤リンパ球(tumor-infiltrating lymphocyte、TIL)をインビトロで拡大培養する方法、および、治療を必要とする対象に有効量のRARγ選択的アゴニストおよび/または拡大培養されたTILを投与することを含むがんを治療する関連方法である。
【0007】
一態様は、治療を必要とする患者に有効量の下記の構造を有するRARγ選択的アゴニストまたはその医薬的に許容可能な塩を投与することを含む、がんを治療する方法である。
【化1】
(GAG1)
ここで、Rは、HまたはC1-6アルキルであり、=N-OH基への交差二重結合は立体化学が不特定であることを示す。しかし、いくつかの実施形態では、=N-OH基のE配置が好ましい。RからR12は、独立して、C1-6アルキル、水素原子、アルコキシ基、ハロゲン原子(例えば、F、Cl、またはBr)、ニトロ基、ヒドロキシ基、OCF、またはCOR13(ただし、R13は、C1-6アルキルまたはCF)である。Yは、酸素、硫黄、またはNR14(ただし、R14はC1-6アルキル)であり、R16はHまたはFである。
【0008】
いくつかの実施形態では、前記RARγ選択的アゴニストは下記の構造を有する。
【化2】
(GA1E)
【0009】
一態様は、多数のTILをRARγ選択的アゴニストと接触させることにより、当該TILを生成し、分化させ、または、拡大培養する方法である。いくつかの実施形態では、接触は、RARγ選択的アゴニストが添加された培地においてTILをインビトロで培養することを含む。いくつかの実施形態では、接触は、腫瘍を有する対象にRARγ選択的アゴニストを投与することを含む。
【0010】
上記の態様について、いくつかの実施形態では、RARγ選択的アゴニストは、臨床的に意義のある濃度でRARαについてアゴニスト活性を有しないまたは無視できるアゴニスト活性を有する点で選択的である。いくつかの実施形態では、RARγ選択的アゴニストは、臨床的に意義のある濃度でRARαおよびRARβの両方についてアゴニスト活性を有しないまたは無視できるアゴニスト活性を有する点で選択的である。
【0011】
いくつかの実施形態では、RARγ選択的アゴニストは、下記の構造の化合物またはその医薬的に許容可能な塩である。
【化3】
(GAG1)
ここで、Rは、HまたはC1-6アルキルであり、=N-OH基への交差二重結合は立体化学が不特定であることを示す。しかし、いくつかの実施形態では、=N-OH基のE配置が好ましい。RからR12は、独立して、C1-6アルキル、水素原子、アルコキシ基、ハロゲン原子(例えば、F、Cl、またはBr)、ニトロ基、ヒドロキシ基、OCF、またはCOR13(ただし、R13は、C1-6アルキルまたはCF)である。Yは、酸素、硫黄、またはNR14(ただし、R14はC1-6アルキル)であり、R16はHまたはFである。
【0012】
いくつかの実施形態では、RARγ選択的アゴニストは、下記の構造を有する4-((1E,3E)-3-(3-(tert-ブチル)-2-エチル-ベンゾフラン-5-イル)-3-(ヒドロキシイミノ)プロプ-1-エン-1-イル)-3-フルオロ安息香酸(GA1E)またはその医薬的に許容可能な塩である。
【化4】
(GA1E)
いくつかの実施形態では、RARγ選択的アゴニストは、下記の構造を有する4-((1E,3Z)-3-(3-(tert-ブチル)-2-エチル-ベンゾフラン-5-イル)-3-(ヒドロキシイミノ)プロプ-1-エン-1-イル)-3-フルオロ安息香酸(GA1Z)またはその医薬的に許容可能な塩である。
【化5】
(GA1Z)
【0013】
いくつかの実施形態では、RARγ選択的アゴニストは、下記の構造の化合物またはその医薬的に許容可能な塩である。
【化6】
(GAG2)
ここで、Rは、HまたはC1-6アルキルであり、=N-OH基への交差二重結合は立体化学が不特定であることを示す。しかし、いくつかの実施形態では、=N-OH基のE配置が好ましい。いくつかの実施形態では、RARγアゴニストは、下記の構造を有する3-フルオロ-4-((1E,3E)-3-(ヒドロキシイミノ)-3-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)プロプ-1-エン-1-イル)安息香酸(GA2E)またはその医薬的に許容可能な塩である。
【化7】
(GA2E)
いくつかの実施形態では、RARγ選択的アゴニストは、下記の構造を有する3-フルオロ-4-((1E,3Z)-3-(ヒドロキシイミノ)-3-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)プロプ-1-エン-1-イル)安息香酸(GA2Z)またはその医薬的に許容可能な塩である。
【化8】
(GA2Z)
【0014】
いくつかの実施形態では、RARγ選択的アゴニストは、下記の構造の化合物またはその医薬的に許容可能な塩である。
【化9】
(GAG3)
ここで、Rは、HまたはC1-6アルキルであり、RおよびRは、それぞれ、独立して、HまたはC1-6アルキルであり、RおよびR3’は、独立して、Hまたはハロゲン(例えば、Cl、F、またはBr)であり、(Rは、RおよびR4’を含み、これらは独立して、H、ハロゲン(例えば、Cl、F、またはBr)、C1-6アルキル、またはC1-6アルコキシであり、Xは、O、S、CH、C(R、またはNR(ただし、RおよびRは、それぞれ、独立して、HまたはC1-6アルキル)であり、=N-OH基への交差二重結合は立体化学が不特定であることを示し、COOR基はメタまたはパラ位置にあり、かつ、2つのR基が環の残りの位置を占める。いくつかの実施形態では、パラ位置のCOOR基が好ましい。いくつかの実施形態では、=N-OH基のE配置が好ましい。いくつかの実施形態では、両方のRは、CHである。いくつかの実施形態では、両方のRは、Hである。いくつかの実施形態では、Xは、C(Rである。いくつかの実施形態では、両方のRは、CHである。いくつかの実施形態では、一方のRは、Hであり、他方のRは、Fである。いくつかの実施形態では、両方のRはHである。いくつかの実施形態では、RおよびRの全ては、Hである。いくつかの実施形態では、Rは、Hである。いくつかの実施形態では、Rは、メチルまたはエチルである。いくつかの実施形態では、COOR基はパラ位置である。いくつかの実施形態では、COOR基はメタ位置である。いくつかの実施形態では、=N-OH基はE配置である。いくつかの実施形態では、=N-OH基はZ配置である。特定の実施形態では、Rは、Hであり、カルボン酸基は、パラ位置にあり、両方のRは、CHであり、両方のRは、Hであり、Xは、C(CHであり、RおよびRの全ては、Hであり、=N-OH基はE配置である(GA3Ep)。いくつかの実施形態は、具体的には、1つ以上の特定の置換基を可変位置の1つ以上に含む。いくつかの実施形態は、具体的には、1つ以上の特定の置換基を可変位置の1つ以上に含まない。
【0015】
いくつかの実施形態では、RARγ選択的アゴニストは、CD437、CD2325、CD666、トリファロテン、またはBMS961である。
【0016】
一態様は、RARγアゴニストで拡大培養されたTILでがんを治療する方法である。いくつかの実施形態では、RARγアゴニストは、治療予定のがんを有する対象に投与される。
【0017】
代替的な実施形態では、Tリンパ球が、インビトロ培養物において当該培養物をRARγアゴニストに暴露することにより拡大培養され、養子T細胞療法として、RARγアゴニストで拡大培養されたTリンパ球は、治療予定のがんを有する対象に投与される。すなわち、培地はRARγアゴニストを添加される。培地中のRARγアゴニストの濃度は、1pMから1mMの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、培地中のRARγアゴニストの濃度は、0.5nMである。いくつかの実施形態では、Tリンパ球は、対象由来の腫瘍外植体から単離されたTILである。いくつかの実施形態では、Tリンパ球は、末梢血単核細胞(peripheral blood mononuclear cell、PBMC)である。いくつかの実施形態では、Tリンパ球培養物は、致死量放射線照射腫瘍細胞を含む。いくつかの実施形態では、致死量の放射線を照射される腫瘍細胞は、治療予定の対象から取得される。いくつかの実施形態では、培地は、インターロイキン2(IL-2)を添加される。いくつかの実施形態では、拡大培養されたTリンパ球は、対象に、注入により、例えば、静脈内または腫瘍内注入により、投与される。
【0018】
いくつかの実施形態では、対象は、哺乳類である。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。いくつかの実施形態では、RARγアゴニストは、GA1Eである。いくつかの実施形態では、RARγアゴニストは、GA2Eである。
【0019】
上記の態様について、いくつかの実施形態では、がんは、乳がんである。いくつかの実施形態では、乳がんは、三種陰性乳がんである。いくつかの実施形態では、がんは、Her2乳がんである。いくつかの実施形態では、がんは、肺がん、例えば、非小細胞肺がんである。いくつかの実施形態では、がんは、固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、がんは、血液がんである。いくつかの実施形態では、がんは、癌腫、肉腫、黒色腫、膠芽腫、白血病、リンパ腫、骨髄腫、または形質細胞がんである。
【0020】
いくつかの実施形態では、RARγアゴニストの有効量は、約0.01から約300mg/m/日であるが、この例示的な範囲より下または上の投与量も本開示の範囲内である。一日用量は、約0.5から約100mg/m/日、約1から約90mg/m/日、約5から約80mg/m/日であってもよいし、または、少なくとも、約0.02、0.03、0.05、0.07、0.1、0.2、0.3、0.5、0.7、1、2、3、5、7、10、15、20、25、30、50、70、または100mg/m/日であってもよいし、または、多くとも、約0.1、0.2、0.3、0.5、0.7、1、2、3、5、7、10、15、20、25、30、50、60、70、80、90、100、125、150、175、200、225、250、275、または300mg/m/日であってもよいし、または、前述の値のいずれか2つにより画定された範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、ヒトについての有効量は、約0.006から約200mg/日または約1から約100mg/日である。
【0021】
いくつかの実施形態では、RARγアゴニストの有効量は、約0.27μg/kg/日から約8mg/kg/日であるが、この例示的な範囲より下または上の投与量も本開示の範囲内である。一日用量は、約0.013から約2.7mg/kg/日、約0.025から約2.5mg/kg/日、約0.130から約22mg/kg/日であってもよいし、または、少なくとも、約0.0005、0.0008、0.001、0.0013、0.0020、0.0025、0.005、0.0008、0.0010、0.0013、0.0020、0.0027、0.005、0.008、0.010、0.013、0.020、0.027、0.05、0.08、0.1、0.13、0.2、0.5、0.8、1.0、1.3、1.8、2.0、または2.7mg/kg/日であってもよいし、または、多くとも、約0.0027、0.005、0.008、0.010、0.013、0.020、0.027、0.05、0.08、0.1、0.13、0.2、0.5、0.8、1.0、1.3、1.8、2.0、または2.7、3.3、4.0、4.7、5.4、6.1、6.8、7.4、または8.0mg/kg/日であってもよいし、または、前述の値のいずれか2つにより画定された範囲であってもよい。
【0022】
対象にRARγ選択的アゴニストを投与することを含む任意の態様について、いくつかの実施形態では、投与は、治療期間全体にわたり定期的に行われる。すなわち、RARγアゴニストは、治療期間内に規則的に存在する時間点で投与される。いくつかの実施形態では、定期は、毎日2回、毎日1回、一日置き、二日置き、または毎週2回である。いくつかの実施形態では、投与は、治療期間全体にわたり反復周期で行われる。いくつかの実施形態では、一周期が、1)第1期間にわたり定期的にRARγ選択的アゴニストを投与することと、2)第2期間にわたりRARγ選択的アゴニストの投与を中断することとを含み、第2期間後に新しい周期が開始されてもよい。いくつかの実施形態では、第1期間(その最中にRARγアゴニストが投与される)は、10から15日、または、そのうちの任意の整数の日数である。いくつかの実施形態では、第2期間(その最中にRARγアゴニストの投与が中断される)は、2週から1ヶ月である、または、そのうちの任意の整数の日数である。様々な実施形態では、治療期間は、RARγアゴニストの最初の投与から、完全奏功が達成されるまで、安定状態が得られるまで、または、安定状態または退縮の後に疾患の進行が再び生じるまでにわたる。
【0023】
対象にRARγ選択的アゴニストを投与することを含む任意の態様について、いくつかの実施形態は、制御性T細胞(Treg)の阻害剤を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、Tregの阻害剤は、Treg除去抗体である。様々な実施形態では、Treg除去抗体は、抗CD25抗体、抗糖質コルチコイド誘導性腫瘍壊死因子関連タンパク質(GITR)抗体、抗FoxP3抗体、抗CCR抗体、または抗葉酸受容体4抗体である。いくつかの実施形態では、Tregの阻害剤は、RARαアンタゴニストを含む。
【0024】
対象にRARγ選択的アゴニストを投与することを含む任意の態様について、いくつかの実施形態は、下記の構造を有するRXRアゴニストまたはその医薬的に許容可能な塩を投与することをさらに含む。
【化10】
(XAG)
ここで、Rは、HまたはC1-6アルキルである。いくつかの実施形態では、RXRアゴニストは、3,7-ジメチル-6(S),7(S)-メタノ,7-[1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフト-7-イル]2(E),4(E)ヘプタジエン酸(IRX4204)である。
【0025】
対象にRARγ選択的アゴニストを投与することを含む任意の態様について、いくつかの実施形態は、CAR-T細胞を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、RARγ選択的アゴニストは、上で定義のGAG1の構造を有する化合物である。
【0026】
対象にRARγ選択的アゴニストを投与することを含む任意の態様について、いくつかの実施形態は、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体を投与することをさらに含む。
【0027】
TILをRARγ選択的アゴニストに接触させることによりTILを生成または拡大培養することを含む任意の態様について、いくつかの実施形態は、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体を、必要に応じて、培地に添加または投与することをさらに含む。
【0028】
一態様は、キメラ抗原受容体-T(chimeric antigen receptor-T、CAR-T)細胞を、受けている最中である、受けたことがある、または受ける予定であるがん患者に、有効量のGAG1の構造を有するRARγ選択的アゴニストを投与することを含む、CAR-Tがん免疫療法を増強する方法である。
【0029】
一態様は、上で定義のGAG1の構造を有する化合物である。一実施形態は、4-((1E,3E)-3-(3-(tert-ブチル)-2-エチル-ベンゾフラン-5-イル)-3-(ヒドロキシイミノ)プロプ-1-エン-1-イル)-3-フルオロ安息香酸(GA1E)である。いくつかの実施形態は、GA1Eの医薬的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態では、GA1EのC1-6エステルである。いくつかの実施形態は、GA1Eまたはその塩もしくはエステルを含む医薬組成物である。
【0030】
一態様は、図1の合成スキームに従ったGAG1の一般的合成の方法である。完全合成は、化合物1から始まり、中間生成物である化合物2から5を経て進み、GAG1の化学種であるGA1EおよびGA1Zの異性体が作られる。いくつかの実施形態は、化合物3をn-BuLiおよびN-メトキシル-N-メチルアセトアミドと反応させることにより中間化合物4を製造することを含む、GAG1化学種を合成する方法である。いくつかの実施形態は、化合物4を3-フルオロ-4-ホルミル安息香酸メチルと反応させることにより中間化合物5を製造することを含む、GAG1化学種を合成する方法。いくつかの実施形態は、有機または無機の塩基の存在下で化合物5を塩酸ヒドロキシルアミンと反応させることによりGAG1化学種を合成する方法である。いくつかの実施形態では、塩基はピリジンである。
【0031】
一態様は、下記の構造を有する中間化合物4である。
【化11】
さらなる態様は、化合物3をn-BuLiおよびN-メトキシル-N-メチルアセトアミドと反応させることにより化合物4を合成する方法である。
【0032】
一態様は、下記の構造を有する中間化合物5である。
【化12】
更なる態様は、NaOHなどの塩基の存在下で化合物4を3-フルオロ-4-ホルミル安息香酸メチルと反応させることにより化合物5を合成する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、GAG1化学種であるGA1EおよびGA1Zの合成のためのスキームを示す。
図2図2は、GAG1化学種であるGAG1-1およびGAG1-2の合成のためのスキームを示す。
図3図3A-Bは、GA1E(図3A)およびGA2E(図3B)のRARαおよびRARγ転写活性化アッセイ結果を示す。
図4図4A-Bは、ビークル対照に対してのRARγ選択的アゴニストであるタザロテン酸およびGA2Eでの同系免疫適格性マウスモデルにおける三種陰性乳がんの治療の結果を示す。図4Aは、本研究の3群のそれぞれにおける実験過程にわたる腫瘍体積、ひいては、腫瘍成長の阻害を示す。図4Bは、本研究の3群のそれぞれにおける実験過程にわたる体重を示す。
図5図5A-Bは、GA2E、タザロテン酸、およびビークル対照の各投与について実施例3に記載の研究の終了時点に切り取った腫瘍のフローサイトメトリー分析の結果を示す。結果は、百分率(上部パネル)および細胞/腫瘍の絶対数(下部パネル)の両方で示した。図5Aは、腫瘍内の生細胞の数と全細胞におけるそれらの百分率(Live)、CD45染色に基づく白血球の数と生細胞におけるそれらの百分率(CD45)、CD3染色に基づくT細胞の全体数と白血球におけるそれらの百分率(Tot T)、CD4染色に基づくCD4T細胞と全T細胞におけるそれらの百分率(CD4T)を示す。図5Bは、CD4および細胞内IFNγの染色に基づくメモリーTヘルパー細胞の数と全CD4細胞におけるそれらの百分率(TH IFNγ)、CD4および細胞内IL-17の染色に基づくTh17の数と全CD4細胞におけるそれらの百分率(TH IL17)、CD4、CD25、およびFOXP3の染色に基づく制御性T細胞の数と全CD4細胞におけるそれらの百分率(Treg)、CD8染色に基づくCD8T細胞と全T細胞におけるそれらの百分率(CD8T)、および、CD8および細胞内IFNγの染色に基づく細胞障害性メモリーT細胞およびCD8細胞におけるそれらの百分率(TC IFNγ)を示す。
図6図6A-Bは、10mg/kg(正方形)、25mg/kg(正三角形)、または50mg/kg(バツ字形)でGA2Eを投与したマウス、および、対照マウス(菱形)に、EMT6三種陰性乳がん細胞を移植したBalb/cマウスにおける、投与初日(0日)から研究の終了時点までの体重変化を、質量(図6A)または百分率変化(図6B)として示す。
図7図7は、10mg/kg(正方形)、25mg/kg(正三角形)、または50mg/kg(バツ字形)でGA2Eを投与したマウス、および、対照マウス(菱形)に、EMT6三種陰性乳がん細胞を移植したBalb/cマウスにおける、投与初日(0日)から研究の終了時点までの腫瘍成長を、mm単位で示す。
図8図8A-Cは、ビークル対照またはRARγ選択的アゴニスト(図8AではGA2E、図8BではGA3Ep、図8Cではタザロテン酸)で処理したリコール抗原刺激PBMCによるIFNγの産生量(pg/ml)を示す。
図9図9A-Cは、ビークル対照またはRARγ選択的アゴニスト(図9AではGA2E、図9BではGA3Ep、図9Cではタザロテン酸)で処理したリコール抗原刺激CD8PBMCのPBMC増殖を示す。
図10図10A-Bは、対照マウス(菱形)およびGA2E投与マウス(四角形)に、Her2乳がん細胞株(JIMT-1)およびヒトPBMCを移植したNSG-B2Mマウスにおける、投与初日(0日)から研究の終了時点までの体重変化を、質量(図10A)または百分率変化(図10B)として示す。
図11図11は、対照マウス(菱形)およびGA2E投与マウス(四角形)に、Her2乳がん細胞株(JIMT-1)およびヒトPBMCを移植したNSG-B2Mマウスにおける、投与初日(0日)から研究の終了時点までの腫瘍成長を、mm単位で示す。
図12図12A-Eは、研究の26日目(終了時点)の対照マウス(菱形)およびGA2E投与マウス(四角形)に、Her2乳がん細胞株(JIMT-1)およびヒトPBMCを移植したNSG-B2Mマウス由来のCD8TILのフローサイトメトリーによるT細胞のサブセット分析を示す。サブセットは、全CD8T細胞(図12A、TC)、ナイーブCD8T細胞(図12B、CD8 Naive)、セントラルメモリーCD8T細胞(図12C、CD8 TCM)、エフェクターメモリーCD8T細胞(図12D、CD8 TEM)、および、最終分化エフェクターCD8T細胞(図12E、CD8TEFF)であった。投与群と対照群との間の有意差について、*はP<0.05、***はP<0.001、アスタリスクなしはP>0.05を示す。
図13図13A-Cは、研究の26日目(終了時点)の対照マウス(菱形)およびGA2E投与マウス(四角形)に、Her2乳がん細胞株(JIMT-1)およびヒトPBMCを移植したNSG-B2Mマウス由来のCD8TILのフローサイトメトリーによるバイオマーカー分析を示す。サブセットは、PD-1CD8T細胞(図13A、TC PD1)、CD18βCD8T細胞(図13B、TC CD18)、およびCD54CD8T細胞(図13C、TC CD54)であった。投与群と対照群との間の有意差について、**はP<0.005、***はP<0.001、****はP<0.0001を示す。
図14図14A-Eは、研究の26日目(終了時点)の対照マウス(菱形)およびGA2E投与マウス(四角形)に、Her2乳がん細胞株(JIMT-1)およびヒトPBMCを移植したNSG-B2Mマウス由来のCD4TILのフローサイトメトリーによるT細胞のサブセット分析を示す。サブセットは、全CD4T細胞(図14A、TH)、ナイーブCD4T細胞(図14B、CD4 Naive)、セントラルメモリーCD4T細胞(図14C、CD4 TCM)、エフェクターメモリーCD4T細胞(図14D、CD4 TEM)、および、最終分化エフェクターCD4T細胞(図14E、CD4TEFF)であった。投与群と対照群との間の有意差について、*はP<0.05、***はP<0.001、アスタリスクなしはP>0.05を示す。
図15図15A-Dは、研究の26日目(終了時点)の対照マウス(菱形)およびGA2E投与マウス(四角形)に、Her2乳がん細胞株(JIMT-1)およびヒトPBMCを移植したNSG-B2Mマウス由来のCD4TILのフローサイトメトリーによるバイオマーカー分析を示す。サブセットは、PD-1CD8T細胞(図15A、TH PD1)、CD18βCD4T細胞(図15B、TH CD18)、CD54CD4T細胞(図15C、TH CD54)、およびFox3PCD4T細胞(図15D、Tregs)であった。投与群と対照群との間の有意差について、*はP<0.05、アスタリスクなしはP>0.05を示す。
図16図16は、3種のRARγアゴニスト、GA1E(正方形)、GA2E(円形)、およびGA3Ep(正三角形)の存在下で生育されたEMT6細胞の細胞生存能力についての用量反応曲線を示す。
図17図17は、3種のRARγアゴニスト、GA1E(正方形)、GA2E(円形)、およびGA3Ep(正三角形)の存在下で生育されたルイス肺がん(Lewis Lung carcinoma、LLC)細胞の細胞生存能力についての用量反応曲線を示す。
図18図18は、10mg/kg(正方形)または25mg/kg(正三角形)でGA2Eを投与したマウス、および、対照マウス(菱形)に、LLC細胞を移植したB57BL/6マウスにおける、投与初日(0日)から研究の終了時点までの体重変化を、質量(図18A)または百分率変化(図18B)として示す。
図19図19は、10mg/kg(正方形)または25mg/kg(正三角形)でGA2Eを投与したマウス、および、対照マウス(菱形)に、LLC細胞を移植したB57BL/6マウスにおける、投与初日(0日)から研究の終了時点までの腫瘍成長を、mm単位で示す。
図20図20は、ビークル対照(各パネルのカラム1)ならびに10mg/kg(カラム2)および25mg/kg(カラム3)の用量でのGA2Eの各投与について実施例10に記載の研究の終了時点に切り取ったLLC腫瘍のフローサイトメトリー分析の結果を示す。結果は、百分率(上部パネル)およびmg/腫瘍当たりの細胞の絶対数(下部パネル)の両方で示した。腫瘍内の生細胞の数と全細胞におけるそれらの百分率(Live)、CD45染色に基づく白血球の数と生細胞におけるそれらの百分率(CD45)、CD3染色に基づくT細胞の全体数と白血球におけるそれらの百分率(Tot T)を示した。
図21図21は、ビークル対照(各パネルのカラム1)ならびに10mg/kg(カラム2)および25mg/kg(カラム3)の用量でのGA2Eの各投与について実施例10に記載の研究の終了時点に切り取ったLLC腫瘍のフローサイトメトリー分析の結果を示す。結果は、百分率(上部パネル)およびmg/腫瘍当たりの細胞の絶対数(下部パネル)の両方で示した。CD4染色に基づくCD4T細胞と全T細胞におけるそれらの百分率(CD4+)、CD4および細胞内IFNγの陽性染色に基づくTヘルパー細胞(Thelper1)、およびCD4、CD25、およびFOXP3の陽性染色に基づく制御性T細胞を示した。
図22図22は、ビークル対照(各パネルのカラム1)ならびに10mg/kg(カラム2)および25mg/kg(カラム3)の用量でのGA2Eの各投与について実施例10に記載の研究の終了時点に切り取ったLLC腫瘍のフローサイトメトリー分析の結果を示す。結果は、百分率(上部パネル)およびmg/腫瘍当たりの細胞の絶対数(下部パネル)の両方で示した。CD8染色に基づくCD8T細胞と全T細胞におけるそれらの百分率(CD8+)、CD8および細胞内IFNγの染色に基づく細胞障害性T細胞(Cytotoxic CD8)、CD8およびCD62Lの陽性染色ならびにCD44の陰性染色に基づくナイーブCD8T細胞(CD8 naive)、CD8、CD62L、およびCD44の陽性染色に基づくCD8セントラルメモリーT細胞(CD8 Tcm)、CD8およびCD44の陽性染色ならびにCD62Lの陰性染色に基づくCD8エフェクターメモリーT細胞(CD8 Tem)を示した。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本明細書で開示されるのは、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を拡大培養する方法、および、治療を必要とする対象に有効量のRARγ選択的アゴニストを投与することによりがんを治療する関連方法である。
【0035】
本明細書において、『RARγ選択的アゴニスト』は、ある臨床的に意義のある濃度でRARαについてアゴニスト活性を有しないまたは無視できるアゴニスト活性を有するRARγアゴニストを指す。いくつかの実施形態では、RARγ選択的アゴニストは、ある臨床的に意義のある濃度でRARαおよびRARβの両方についてアゴニスト活性を有しないまたは無視できるアゴニスト活性を有する点で選択的である。『臨床的に意義のある濃度』は、有効用量のRARγ選択的アゴニストを受けている患者の(典型的には血漿または血清をアッセイすることにより決定される)血中での濃度、または、RARγ選択的アゴニストが用いられている方法に関して、TILを生成、分化、または拡大培養するためにインビトロ培養で用いられる濃度を指す。いくつかの実施形態では、RARγの活性化のためのEC50は、RARαの活性化のためのまたはRARαおよびRARβの活性化のためのEC50の、少なくとも100分の1、または、少なくとも50分の1である。
【0036】
一態様は、治療を必要とする患者に有効量の下記の構造を有するRARγ選択的アゴニストまたはその医薬的に許容可能な塩を投与することを含む、がんを治療する方法である。
【化13】
(GAG1)
ここで、Rは、HまたはC1-6アルキルであり、=N-OH基への交差二重結合は立体化学が不特定であることを示す。しかし、いくつかの実施形態では、=N-OH基のE配置が好ましい。RからR12は、独立して、C1-6アルキル、水素原子、アルコキシ基、ハロゲン原子(例えば、F、Cl、またはBr)、ニトロ基、ヒドロキシ基、OCF、またはCOR13(ただし、R13は、C1-6アルキルまたはCF)である。Yは、酸素、硫黄、またはNR14(ただし、R14はC1-6アルキル)であり、R16はHまたはFである。いくつかの実施形態では、Rは、メチルまたはエチルである。いくつかの実施形態では、Rは、Hである。いくつかの実施形態では、R16は、Fである。
【0037】
GAG1化学種の合成スキームを図1および2に示す。
【0038】
いくつかの実施形態では、GAG1の構造を有するRARγ選択的アゴニストにおいて、Yは、Oである。
【化14】
(GAG1-1)
【0039】
いくつかの実施形態では、GAG1の構造を有するRARγ選択的アゴニストにおいて、=N-OH基は、E配置である。
【化15】
(GAG1-2)
【0040】
いくつかの実施形態では、GAG1の構造を有するRARγ選択的アゴニストは下記の構造を有する。
【化16】
(GA1E)
【0041】
本明細書において、アルキルは、二重結合も三重結合も含まない炭素と水素から構成される部分を意味する。アルキルは、直鎖アルキル、分岐アルキル、シクロアルキル、またはこれらの組み合わせであってもよい。C1-6アルキルは、1から6個の炭素原子を有するアルキル基を意味し、これらに限定されるわけではないものの、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル異性体、ヘキシル異性体、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、および1から6個の範囲の炭素原子を有するこれらの組み合わせを含む。これらの考慮事項はアルキル部分またはアルコキシ基にも等しく適用される。
【0042】
R基で置換された芳香環を含む本明細書で開示の構造について、R基がアルコキシ基である場合、酸素原子の1原子価は芳香環に結合され、他の原子価はアルコキシ基のアルキル部分に結合される。
【0043】
本明細書で開示される一態様は、TILをRARγ選択的アゴニストと接触させることにより、TILを生成し、分化させ、または、拡大培養する方法である。RARγアゴニストは、T細胞エフェクター機能を刺激するものの、Treg細胞を刺激せず、したがって、抗がん免疫応答を促進し得る。とくに、本明細書に記載のRARγ選択的アゴニストは、CD8TILを生成の拡大培養を促進し得る。TILを拡大培養するために従前はIL-2が用いられてきた。インビトロ培養はT細胞受容体レパートリーに変化をもたらし、インビトロで拡大培養されたTILは典型的には成長因子としての追加のIL-2とともに注入される。しかし、IL-2も様々な毒性をともない、いくつかは、注入から数時間のうちに、尿量減少、低血圧、および、浮腫により引き起こされる毛細血管漏出症候群をともない、また、発熱、悪寒、筋肉痛、および悪心をもともなう。こうした実質的な毒性を生じさせることなくTILを拡大培養するための代替的な剤は、未だ満たされぬ長年にわたる切実な要求である。
【0044】
本明細書では、『TIL』という用語は、腫瘍内で発見され得るリンパ球を主に指す。こうしたTILは、拡大培養された腫瘍組織から単離し、インビトロで拡大培養できる。TILは、腫瘍の外側から腫瘍内へとまだ浸潤するので、腫瘍の外側でも発見され得る。したがって、腫瘍抗原(例えば、致死量放射線照射腫瘍細胞)の存在下でインビトロでPBMCを培養し、腫瘍内に浸潤する能力を有するT細胞を生成または拡大培養することも可能である。TILを生成し、分化させ、または、拡大培養する方法は、PBMCのこうした使用を包含する。
【0045】
いくつかの実施形態では、TILをRARγ選択的アゴニストと接触させることは、RARγ選択的アゴニストが添加された培地においてTILをインビトロで培養することを含む。TILを培養する手順は当業者にとって既知である。基本的な手順を要約すると、切除した腫瘍組織を刻んで約1~3mmの断片とし、培養液に(例えば、2mLまたは1mLの培地をそれぞれ含む24ウェルまたは48ウェルプレート内に)入れ、TILが組織から侵出するに任せる。代替的に、単一細胞懸濁液を得るために腫瘍組織を酵素消化および/または機械的脱凝集に掛けてもよい。拡大培養のために、TILを、適切な培地で、培地を半分ずつ2~3日毎に交換し、80%のコンフルエンスで分割しながら、3~6週間にわたりインビトロで培養できる。最初の1~3週間で腫瘍細胞は培養液から消失する。TILをより迅速に拡大培養するために、抗CD3抗体および100から200倍の過剰量の放射線照射フィーダー細胞(自己由来または同種のもの)を培養液に添加できる。高細胞密度を支え10から2×1011細胞の集団を達成するためにTILをバイオリアクターに移すことができる。培養ではRARγ選択的アゴニストを継続的に用いる。
【0046】
TILがPBMCから生成または拡大培養されている、いくつかの実施形態では、PBMCは治療予定の対象から得られる(自己由来である)。別の実施形態では、PBMCはHLA適合ドナーから得られる。いくつかの実施形態では、腫瘍細胞は治療予定の対象から得られ、一方、他の実施形態では、腫瘍細胞は異なる個体から得られる。いくつかの実施形態では、PBMCおよび腫瘍細胞は同じ個体から得られる。いくつかの実施形態では、当該個体は治療予定の対象である。いくつかの実施形態では、PBMCおよび腫瘍細胞は別々の個体から得られ、例えば、PBMCが、自己由来であるものの、HLA適合ドナーまたは同種ドナー由来の腫瘍細胞とともに培養されることも可能である。いくつかの実施形態では、PBMC(またはTIL)は致死量放射線照射腫瘍細胞とともに培養されるが、代替的な実施形態では、培養液は腫瘍細胞可溶化物または精製もしくは合成腫瘍抗原を含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、接触は、腫瘍を有する対象にRARγ選択的アゴニストを投与することを含む。
【0048】
本明細書で開示される一態様は、治療を必要とする患者にRARγ選択的アゴニストで拡大培養されたTILを提供することを含む、がんを治療する方法である。一実施形態では、RARγ選択的アゴニストは、治療予定のがんを有する対象に投与される。代替的な実施形態では、TILは、培養液をRARγ選択的アゴニストに暴露することにより、培養液中で拡大培養され、RARγ選択的アゴニストで拡大培養されたTILは、養子T細胞療法として治療予定のがんを有する対象に投与される。いくつかの実施形態では、対象は、哺乳類である。ある実施形態では、対象は、ヒトである。いくつかの実施形態では、RARγ選択的アゴニストはGAG1である。いくつかの実施形態では、RARγ選択的アゴニストは、GAG2である。いくつかの実施形態では、RARγ選択的アゴニストは、GAG3pである。場合によっては、GAG1、GAG2、またはGAG3pの=N-OH基は、E配置である。またさらなる実施形態では、RARγ選択的アゴニストは、GAG1、GAG2、またはGAG3の構造に包含される、個別の化学種のいずれか、または、化学種の集合である。ある実施形態は、特に、GAG1、GAG2、またはGAG3の構造に包含される、個別の化学種のいずれか、または、化学種の集合を含まない。
【0049】
任意の関連態様について、いくつかの実施形態では、がんは、固形腫瘍、癌腫、肉腫、または血液がんである。任意の関連態様について、いくつかの実施形態では、がんは、黒色腫、膠芽腫、腎細胞癌、肺がん、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、結腸がん、胆嚢がん、喉頭がん、肝臓がん、甲状腺がん、胃がん、唾液腺がん、前立腺がん、膵臓がん、卵巣がん、白血病、リンパ腫、骨髄腫、または形質細胞がんである。任意の関連態様について、いくつかの実施形態では、がんは、乳がんである。いくつかの実施形態では、乳がんは、三種陰性乳がんである。いくつかの実施形態では、がんは、Her2乳がんである。いくつかの実施形態では、がんは、肺がん、例えば、非小細胞肺がんである。いくつかの実施形態では、治療が必要な対象は、ヒトである。
【0050】
多種の乳がんの増殖が、エストロゲン、プロゲステロン、および、(特に、がんが過剰なヒト上皮増殖因子受容体2(Her2)を発現する場合)上皮増殖因子により刺激される。これらの作用と拮抗する剤が乳がんの治療に有効であることが証明されてきている。しかし、乳がんの約10~20%は、エストロゲン受容体も、プロゲステロン受容体も、過剰なHer2も発現しない。そのため、こうしたがんは、『三種陰性乳がん』と呼ばれる。三種陰性乳がんは、典型的には、より悪性度が高く、治療選択肢が少ないことに部分的に起因して、他種の乳がんよりも予後が悪い。三種陰性乳がんは、転位する可能性もより高く、治療後に再発する可能性もより高い。乳がんは、正常で健康な乳細胞との類似度に基づいて3点の尺度でグレード付けされており、高いグレードほど正常細胞との類似度が低いことを示す。三種陰性乳がんは、グレード3であることが多い。三種陰性乳がんは普通は『基底様(basal-like)』であり、これはそれらが乳管を裏打ちする基底細胞に類似していることを意味する。基底様がんは、悪性度がより高くグレードもより高い傾向がある。三種陰性乳がんの発症は、より早い年齢で、例えば、より一般的には60歳以上の人で診断される他種の乳がんと比べて、50歳未満で、始まる傾向がある。BRCA変異を有するがんの約70%が三種陰性である。これらの因子が三種陰性乳がんを特に治療の困難な疾患としている。
【0051】
三種陰性乳がんの現在の治療は、術前化学療法(腫瘍の外科摘出の前の化学療法)、ポリADP-リボースポリメラーゼ(RARP)の阻害剤(オラパリブなど)、および、免疫療法(例えば、アルブミン結合パクリタキセルと併用したアテゾリズマブなどのPD-1遮断による免疫療法)を含む。
【0052】
RARγ選択的アゴニストが対象に投与される、いくつかの実施形態では、有効量は、約0.01から約300mg/m/日であるが、この例示的な範囲より下または上の投与量も本開示の範囲内である。一日用量は、約0.5から約100mg/m/日、約1から約90mg/m/日、約5から約80mg/m/日であってもよいし、または、少なくとも、約0.02、0.03、0.05、0.07、0.1、0.2、0.3、0.5、0.7、1、2、3、5、7、10、15、20、25、30、50、70、または100mg/m/日であってもよいし、または、多くとも、約0.1、0.2、0.3、0.5、0.7、1、2、3、5、7、10、15、20、25、30、50、60、70、80、90、100、125、150、175、200、225、250、275、または300mg/m/日であってもよいし、または、前述の値のいずれか2つにより画定された範囲であってもよい。これらの投与量は、37で割ることでmg/kg/日単位のヒトでのおおよその等価投与量に変換できる。
【0053】
いくつかの実施形態では、RARγアゴニストの有効量は、約0.27μg/kg/日から約8mg/kg/日であるが、この例示的な範囲より下または上の投与量も本開示の範囲内である。一日用量は、約0.013から約2.7mg/kg/日、約0.025から約2.5mg/kg/日、約0.130から約22mg/kg/日であってもよいし、または、少なくとも、約0.0005、0.0008、0.001、0.0013、0.0020、0.0025、0.005、0.0008、0.0010、0.0013、0.0020、0.0027、0.005、0.008、0.010、0.013、0.020、0.027、0.05、0.08、0.1、0.13、0.2、0.5、0.8、1.0、1.3、1.8、2.0、または2.7mg/kg/日であってもよいし、または、多くとも、約0.0027、0.005、0.008、0.010、0.013、0.020、0.027、0.05、0.08、0.1、0.13、0.2、0.5、0.8、1.0、1.3、1.8、2.0、または2.7、3.3、4.0、4.7、5.4、6.1、6.8、7.4、または8.0mg/kg/日であってもよいし、または、前述の値のいずれか2つにより画定された範囲であってもよい。これらの投与量は、37で割ることでmg/kg/日単位のヒトでのおおよその等価投与量に変換できる。
【0054】
いくつかの実施形態では、ヒトについての有効量は、約0.006から約200mg/日または約1から約100mg/日である。いくつかの実施形態では、一日用量は、単回投与で与えられる。別の実施形態では、一日用量は、複数回の投与に、例えば、9~15時間、10~14時間、11~13時間、または12時間離れた、2回の投与に分けられる。
【0055】
RARγ選択的アゴニストは必ずしも治療全体を通して対象内で治療レベルで存在せねばならないわけではない。その理由は、RARγ選択的アゴニストの主要治療効果は間接的であり、免疫応答、TILの拡大培養を促進し、これはRARγ選択的アゴニストの不在下でも持続するからである。免疫応答が発達するには時間が掛かるため、有益な効果はRARγ選択的アゴニストの投与を休止するまで観察されないかもしれない。実際、いくつかの実施形態では、RARγ選択的アゴニストの投与が中断される休薬日をもうけることが有益であるかもしれない。RARγ選択的アゴニストの投与が毒性または他の望ましくない副作用をともなう限りにおいて、投与の中断は弊害が悪化を続けるのではなく対象が弊害から回復するための時間を与える。本明細書では、『中断』は、後で再開する意図および期待とともに薬の投与の休止を意味し、薬の投与を再開する計画がない中止とは異なる。投与の再開は、免疫応答が経時的に減弱する傾向にあることから、有益であり得る。したがって、対象にRARγ選択的アゴニストを投与することを含む任意の態様について、いくつかの実施形態では、投与は、治療期間全体にわたり定期的に行われる。すなわち、RARγアゴニストは、治療期間内に規則的にくる時間点で投与される。いくつかの実施形態では、定期は、毎日2回、毎日1回、一日置き、二日置き、または毎週2回である。いくつかの実施形態では、投与は、治療期間全体にわたり反復周期で行われる。いくつかの実施形態では、一周期が、1)第1期間にわたり定期的にRARγ選択的アゴニストを投与することと、2)第2期間にわたりRARγ選択的アゴニストの投与を中断することとを含み、第2期間後に新しい周期が開始されてもよい。いくつかの実施形態では、第1期間(その最中にRARγアゴニストが投与される)は、10から15日、または、そのうちの任意の整数の日数である。いくつかの実施形態では、第2期間(その最中にRARγアゴニストの投与が中断される)は、2週から1ヶ月である、または、そのうちの任意の整数の日数である。様々な実施形態では、治療期間は、RARγアゴニストの最初の投与から、完全奏功が達成されるまで、安定状態が得られるまで、または、疾患の進行が生じるまでにわたる。
【0056】
RARγ選択的アゴニストは、任意の適切な投与経路により対象に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、RARγ選択的アゴニストは、経口投与される。いくつかの実施形態では、RARγ選択的アゴニストは、注射または注入により、例えば、静脈内、皮下、または腫瘍内に、投与される。いくつかの実施形態では、RARγ選択的アゴニストは、鼻腔内投与される。いくつかの実施形態では、RARγ選択的アゴニストは、経鼻または経口(肺)吸入により投与される。
【0057】
エクスビボで拡大培養されたTILは、一般的に、注入、例えば、静脈内または腫瘍内注入により、投与される。しかし、いくつかの実施形態では、エクスビボで拡大培養されたTILは、静脈内または腫瘍内への、単回ボーラスで投与される、または、複数回のボーラスに分割される。いくつかの実施形態では、RARγ選択的アゴニストは、TILとともに、ボーラスまたは注入液に含まれる。種々の実施形態では、注入は、30分、1時間、数時間、1日、または数日にわたってもよい。
【0058】
いくつかの実施形態では、約10から>1011のTILが、例えば、1×1010から2×1011が、投与される。RARγ選択的アゴニストは、培養液中で継続的に用いられ、注入される拡大培養されたTILに含まれてもよい。RARγアゴニストは、設定期間にわたり、または、腫瘍が除去されるもしくはTILから更なる利益が観察されなくなるまで、TIL注入後に患者に投与されてもよい。
【0059】
いくつかの実施形態では、RARγ選択的アゴニストは、単剤療法として用いられる。別の実施形態では、RARγ選択的アゴニストは、現在の治療の一つと組み合わせて、他の療法の前、他の治療の途中、または他の治療の後に、用いられる。
【0060】
RARγ選択的アゴニストは、CD8エフェクター細胞であるTILの拡大培養を促進する。CD8エフェクター細胞について一般的に知られている事柄と一致して、これらの細胞はPD-1を発現し、これはCD8エフェクター細胞活性の負の制御因子として作用し得る。したがって、いくつかの実施形態では、RARγ選択的アゴニストによる治療は、PD-1遮断と組み合わされる。RARγ選択的アゴニストによる治療は、CD8TILのうちPD-1T細胞の存在を増加させもし得る。この理由でも、いくつかの実施形態では、RARγ選択的アゴニストによる治療は、PD-1遮断と組み合わされる。免疫チェックポイント阻害とも呼ばれる、PD-1遮断のためのいくつかの製品が、臨床評価を経ている最中である。これらは、抗PD-1抗体である、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、ドスタルリマブ、チスレリズマブ、スパルタリズマブ、カムレリズマブ、シンチリマブ、トリパリマブ、JTX-4014、INCMGA00012、AMP-514、およびブディガリマブ、ならびに、抗PD-L1抗体である、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、エンバフォリマブ、CK-301、CS-1001、KN035SHR-1316、CBT-502、BGB-A333、およびBMS-936559を含む。AUNP12(29アミノ酸長のペプチド)、CA-170(小有機分子)、およびBMS-986189(大環状ペプチド)をはじめとする、PD-L1のいくつかの非抗体阻害剤も開発中である。AMP-224は、PD-L2(B7-DCとも呼ばれる)と抗体Fc領域との融合タンパク質であり、抗PD-1チェックポイント阻害剤として開発中である。こうした抗体はPD-1遮断の手段を構成する。
【0061】
がん治療の成長中の方策のひとつが、キメラ抗原受容体T細胞(chimeric antigen receptor T cell、CAR-T)療法である。CAR-T細胞は有効な人工的TILである。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載のような、RARγ選択的アゴニストによる治療は、CAR-T療法と組み合わされる。RARγ選択的アゴニストは、米国特許出願公開第2019001563号および米国特許出願公開第20180338940号に記載のように、キメラ抗原受容体改変免疫細胞(chimeric antigen receptor-modified immune cell、CAR-MIC)療法を増強し得る(本明細書ではRARγアゴニストによるCAR-MICの増強についての各特許文献の教示の全てを参照により援用する)。したがって、ある実施形態は、CAR-MICを、受けている最中である、受けたことがある、または受ける予定であるがん患者に、GAG1の構造を有するRARγ選択的アゴニストを投与することを含む、CAR-MICがん免疫療法を増強する方法である。場合によっては、CAR-MICはCAR-T細胞である。
【0062】
対象にRARγ選択的アゴニストを投与することを含む任意の態様について、いくつかの実施形態は、制御性T細胞(Treg)の阻害剤を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、Tregの阻害剤は、Treg除去抗体である。様々な実施形態では、Treg除去抗体は、抗CD25抗体、抗GITR抗体、抗FoxP3抗体、抗CCR抗体、または抗葉酸受容体4抗体である。いくつかの実施形態では、Tregの阻害剤は、RARαアンタゴニストを含む。
【0063】
対象にRARγ選択的アゴニストを投与することを含む任意の態様について、いくつかの実施形態は、下記の構造を有するRXRアゴニストまたはその医薬的に許容可能な塩を投与することをさらに含む。
【化17】
(XAG)
ここで、Rは、HまたはC1-6アルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、メチルまたはエチルである。いくつかの実施形態では、Rは、Hであり、すなわち、RXRアゴニストは、IRX4204としても知られている、3,7-ジメチル-6(S),7(S)-メタノ,7-[1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフト-7-イル]2(E),4(E)ヘプタジエン酸である。XAGの構造を有する化合物は、米国特許出願公開第2008/0300312号および米国特許出願公開第2020/0390736号に記載のように、抗がん活性を有する(本明細書ではこれらのRXRアゴニストによるがんの治療についての各特許文献の教示の全てを参照により援用する)。RARγ選択的アゴニストによる治療は、下記の実施例のいくつかで示されるように特に高投与量で過剰となり得る体重減少などの望ましくない副作用を有し得る。XAGの構造を有する化合物は、米国特許出願公開第20070185055号に記載のように、抗悪液質作用を有し(本明細書ではRXRアゴニストによる悪液質の治療についての当該特許文献の教示の全てを参照により援用する)、これは潜在的過剰体重減少に寄与するRARγアゴニストの副作用を相殺または緩和し得る。したがって、これらの理由の一方または両方について、ある実施形態では、本明細書で記載のような、RARγ選択的アゴニストによる治療は、IRX4204などの適切なRXRアゴニストによる治療と組み合わされる。
【0064】
人体の平均表面積は、一般的に、成人男性では1.9m、成人女性では1.6m、12~13歳の子どもでは1.33mであると受け入れられている。これらの値は、RARγ選択的アゴニストの用量についての用量範囲を計算するために用いることができる。RARγ選択的アゴニスト活性剤の合計一日投与量は、単回投与として、または、8時間から16時間または10時間から14時間を置いた24時間周期で投与される2回の投与として、投与され得る。数日またはこれよりも長期の反復投与について、治療は疾患または疾患症状の所望の抑制が生じるまで反復され得る。しかし、他の投与計画も有益である可能性があり、本開示の範囲内である。所望の投与量が、組成物の単回ボーラス投与により、組成物の複数回ボーラス投与により、または、組成物の持続注入投与により、送達され得る。
【0065】
RARγ選択的アゴニストは、非経口投与、経口投与、静脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、肺投与、経皮投与、筋肉内投与、鼻腔内投与、頬側投与、舌下投与、または座薬投与をはじめとする標準的投与手法を用いて、哺乳類に投与され得る。本明細書では、『非経口』という用語は、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、直腸投与、膣内投与、および腹腔内投与を含む。RARγ選択的アゴニストは、好ましくは、例えば、ピル、錠剤、またはカプセルとしての、経口投与に適している。
【0066】
投与は継続的でも間欠的でもよい。投与量は投与の時期および頻度により決定されてもよい。したがって、本明細書に開示のRARγ選択的アゴニストは、ある期間にわたり、毎日、毎週、隔週、または、毎月、与えられ、その後、任意選択的な休薬日(薬なしの期間)が設けられ得るが、この薬投与/休薬日のサイクルは必要に応じて反復され得る。例えば、RARγ選択的アゴニストは、1週間にわたり毎日投与され、その後、1ヶ月の残りにわたり投与されず、その後、次の1週間にわたり投与されるなどが考えられる。特定の実施形態では、RARγアゴニストの合計1日投与量は、単回投与として、または、8時間から16時間または10時間から16時間を置いた24時間周期で投与される2回の投与として、投与され得る。
【0067】
がん療法の有効性は、典型的には、『奏功』に関して測定される。奏功を監視する技術は、これらに限定されるわけではないが、以下などのがんの診断のために用いられる検査と同様であり得る。
・いくつかのリンパ節に関する腫瘤または腫瘍が、理学的検査により感知され測定され得る。
・いくつかの内部がん腫瘍が、X線またはCTスキャンで現れ、定規で測定され得る。
・臓器機能を測定するものなどをはじめとする血液検査が行われ得る。
・腫瘍マーカー検査が特定のがんについて行われ得る。
【0068】
用いられた検査にかかわらず、血液検査か、細胞計数か、腫瘍マーカー検査かによらず、同種の早期検査と結果が比較できるように検査は特定の間隔で反復される。
【0069】
がん治療への奏功はいくつかに定義される。
・完全奏功:がんまたは腫瘍の全てが消える。疾患の所見がない。腫瘍マーカーの発現レベル(該当する場合)が正常範囲に収まり得る。
・部分奏功:がんがある程度収縮するが疾患が残る。腫瘍マーカーのレベル(該当する場合)が低下する(または、腫瘍量の減少を示すものとして、腫瘍マーカーに基づき、増加する)が、疾患の所見が残る。
・安定状態:がんが成長も収縮もしない。疾患の量が変化しない。腫瘍マーカー検査(該当する場合)が顕著に変化しない。
・疾患進行:がんが成長する。治療前よりも疾患が多く存在する。腫瘍マーカー検査(該当する場合)が腫瘍マーカーの増加を示す。
【0070】
がん治療の効能の他の尺度は、全生存期間(すなわち、診断から、または、評価中の治療の開始から、任意の原因による死亡までの時間)、無がん生存期間(すなわち、完全奏功後のがんが未検出のままである時間の長さ)、および、無増悪生存期間(すなわち、疾患の安定化または部分奏功の後の再発した腫瘍の成長が検出されない時間の長さ)を含む。
【0071】
腫瘍の大きさ(腫瘍量)について固形がん治療の奏功を評価する標準的な方法は2つあり、WHO評価基準とRECIST評価基準である。これらの方法は、固形腫瘍を測定して、現在の腫瘍を過去の測定値と比較する、または、変化を将来の測定値と比較して治療計画を変更する。WHO法では、固形腫瘍の長軸および短軸を測定し、これら2つの測定値の積を計算する。RECIST法では、長軸のみを測定する。複数の固形腫瘍が存在する場合、全ての長軸測定値の合計を計算する。しかし、リンパ節については、長軸の代わりに短軸を測定する。
【0072】
『治療する』または『治療』という用語は、広義には、ヒトまたは他の動物での疾患の緩和もしくは予防またはこれらの一態様をはじめとする任意の種類の治療活動、または、ヒトまたは他の動物の身体の構造もしくは機能に他のやり方で影響を与える任意の活動を含む。治療活動は、療従事者、患者自身、または他の人によるものであるかを問わぬ、特に、種々の治療方法、および、本明細書に開示のTILを精製し、分化させ、または拡大培養する方法による、医患者への、本明細書に記載の、医薬、剤形、および医薬組成物の投与を含む。治療活動は、他の医療従事者または患者自身をはじめとする任意の他の人により後で遂行される、医師、医師助手、診療看護師などの医療従事者の命令、指示、および助言を含む。これは、例えば、患者が受けるべきまたは臨床検査室が実行すべき指示、がん診療およびステージ分けのためなどの診断手順を含み、その結果、最終的に患者は有益で適切な治療を受けることが可能となる。いくつかの実施形態では、治療活動の、命令、指示、および助言の態様は、保険会社または薬剤給付管理会社などにより行われるかもしれない、医薬の保険適用を承認することにより、代替医薬への適用を拒否することにより、採用医薬品集に当該医薬を含めるもしくは代替医薬を除外することにより、または、医薬の使用への報奨金を提供することにより、特定の医薬またはその併用をある症状の治療のために選択すべきであり、当該医薬が実際に使用されることを、推奨、誘導、または義務づけることも含み得る。いくつかの実施形態では、医療活動は、病院、診療所、健康保険維持機構、医業または医師団体などにより確立されるかもしれない方針または実施基準により、特定の医薬をある症状の治療のために選択すべきであり、当該医薬が実際に使用されることを、推奨、誘導、または義務づけることも含み得る。こうした命令、指示、および助言の全ては、指示を遵守した際の治療の利益の条件付きレセプトとしてみることができる。場合によっては、こうした命令、指示、または助言を遵守した場合に患者が報奨金も受け取る。場合によっては、こうした命令、指示、または助言を遵守した場合に医療従事者が報奨金も受け取る。
【0073】
(RARγ選択的アゴニスト)
一態様は、下記の構造を有する化合物またはその医薬的に許容可能な塩であるRARγ選択的アゴニストを含む。
【化18】
(GAG1)
ここで、Rは、HまたはC1-6アルキルである。しかし、いくつかの実施形態では、=N-OH基のE配置が好ましい。RからR12は、独立して、C1-6アルキル、水素原子、アルコキシ基、ハロゲン原子(例えば、F、Cl、またはBr)、ニトロ基、ヒドロキシ基、OCF、またはCOR13(ただし、R13は、C1-6アルキルまたはCF)である。Yは、酸素、硫黄、またはNR14(ただし、R14はC1-6アルキル)である。ある実施形態では、Rは、メチルまたはエチルである。ある実施形態では、Rは、Hである。ある実施形態は、GAG1の構造を有する化合物またはその医薬的に許容可能な塩を含む医薬組成物または製剤である。任意の方法の態様について、ある実施形態では、RARγ選択的アゴニストは、GAG1の構造を有する化合物またはその医薬的に許容可能な塩である。
【0074】
いくつかの実施形態では、GAG1の構造を有するRARγ選択的アゴニストにおいて、Yは、Oである。
【化19】
(GAG1-1)
【0075】
いくつかの実施形態では、GAG1の構造を有するRARγ選択的アゴニストにおいて、=N-OH基は、E配置である。
【化20】
(GAG1-2)
【0076】
任意の態様について、いくつかの実施形態では、RARγ選択的アゴニストは、下記の構造を有する4-((1E,3E)-3-(3-(tert-ブチル)-2-エチル-ベンゾフラン-5-イル)-3-(ヒドロキシイミノ)プロプ-1-エン-1-イル)-3-フルオロ安息香酸(GA1E)である。
【化21】
(GA1E)
【0077】
いくつかの実施形態では、RARγ選択的アゴニストは、下記の構造を有する4-((1E,3Z)-3-(3-(tert-ブチル)-2-エチル=ベンゾフラン-5-イル)-3-(ヒドロキシイミノ)プロプ-1-エン-1-イル)-3-フルオロ安息香酸(GA1Z)である。
【化22】
(GA1Z)
【0078】
使用態様の任意の方法、または、TILを生成し、分化させ、または拡大培養する任意の方法について、いくつかの実施形態では、RARγ選択的アゴニストは、下記の構造の化合物または医薬的に許容可能な塩である。
【化23】
(GAG2)
ここで、Rは、HまたはC1-6アルキルであり、=N-OH基への交差二重結合は立体化学が不特定であることを示す。しかし、いくつかの実施形態では、=N-OH基のE配置が好ましい。いくつかの実施形態では、Rは、メチルまたはエチルである。いくつかの実施形態では、Rは、Hである。いくつかの実施形態では、Rは、メチルまたはエチルである。
【0079】
いくつかの実施形態では、RARγ選択的アゴニストは、下記の構造を有する3-フルオロ-4-((1E,3E)-3-(ヒドロキシイミノ)-3-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)プロプ-1-エン-1-イル)安息香酸(GA2E)である。
【化24】
(GA2E)
いくつかの実施形態では、RARγ選択的アゴニストは、下記の構造を有する3-フルオロ-4-((1E,3Z)-3-(ヒドロキシイミノ)-3-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)プロプ-1-エン-1-イル)安息香酸(GA2Z)である。
【化25】
(GA2Z)
【0080】
使用態様の任意の方法、または、TILを生成し、分化させ、または拡大培養する任意の方法について、いくつかの実施形態では、RARγ選択的アゴニストは、下記の構造の化合物または医薬的に許容可能な塩である。
【化26】
(GAG3)
ここで、Rは、HまたはC1-6アルキルであり、RおよびRは、それぞれ、独立して、HまたはC1-6アルキルであり、RおよびR3’は、独立して、Hまたはハロゲン(例えば、Cl、F、またはBr)であり、(Rは、RおよびR4’を含み、これらは独立して、H、ハロゲン(例えば、Cl、F、またはBr)、C1-6アルキル、またはC1-6アルコキシであり、Xは、O、S、CH、C(R、またはNR(ただし、RおよびRは、それぞれ、独立して、HまたはC1-6アルキル)であり、=N-OH基への交差二重結合は立体化学が不特定であることを示し、COOR基はメタまたはパラ位置にあり、かつ、2つのR基が環の残りの位置を占める。いくつかの実施形態では、パラ位置のCOOR基が好ましい。いくつかの実施形態では、=N-OH基のE配置が好ましい。いくつかの実施形態では、両方のRは、CHである。いくつかの実施形態では、両方のRは、Hである。いくつかの実施形態では、Xは、C(Rである。いくつかの実施形態では、両方のRは、CHである。いくつかの実施形態では、一方のRは、Hであり、他方のRは、Fである。いくつかの実施形態では、両方のRはHである。いくつかの実施形態では、RおよびRの全ては、Hである。いくつかの実施形態では、Rは、Hである。いくつかの実施形態では、Rは、メチルまたはエチルである。いくつかの実施形態では、COOR基のパラ位置が好ましい。いくつかの実施形態では、=N-OH基のE配置が好ましい。いくつかの実施形態では、両方のRは、CHである。いくつかの実施形態では、両方のRは、Hである。いくつかの実施形態では、両方のRは、Hである。いくつかの実施形態では、Xは、C(R.である。いくつかの実施形態では、Xは、CHである。いくつかの実施形態では、両方のRは、CHである。いくつかの実施形態では、両方のRは、Hであり、一方、他の実施形態では、一つのRは、Hであり、かつ、一つのRは、Fである。いくつかの実施形態では、両方のRは、Hである。いくつかの実施形態では、RおよびRの全ては、Hである。いくつかの実施形態では、COOR基はパラ位置である。いくつかの実施形態では、COOR基はメタ位置である。いくつかの実施形態では、=N-OH基はE配置である。いくつかの実施形態では、=N-OH基はZ配置である。特定の実施形態では、Rは、Hであり、カルボン酸基は、パラ位置にあり、両方のRは、CHであり、両方のRは、Hであり、Xは、C(CHであり、RおよびRの全ては、Hであり、=N-OH基はE配置である(GA3Ep)。いくつかの実施形態は、具体的には、1つ以上の特定の置換基を可変位置の1つ以上に含む。いくつかの実施形態は、具体的には、1つ以上の代替を含み、一方、他の実施形態は、1つ以上のこれらの代替を含まない。
【0081】
GAG3について、ある実施形態では、RARγ選択的アゴニストは、下記の構造を有し、
【化27】
(GAG3p)
他の実施形態は、下記の構造を有する。
【化28】
(GAG3m)
【0082】
GAG3について、ある実施形態では、RARγ選択的アゴニストは、下記の構造を有する。
【化29】
(GAG3Ep)
【0083】
いくつかの実施形態では、RARγ選択的アゴニストは、下記の構造をともなう化合物であり、
【化30】
(GA3Ep)
別の実施形態では、RARγ選択的アゴニストは、下記の構造をともなう化合物である。
【化31】
(GA3Em)
【0084】
COOR基を含むこの節の前述の任意のRARγ選択的アゴニストについて、ある実施形態では、Rは、Hである。RがC1-6アルキルである実施形態では、エステルのアルキル部分は、1から6個の範囲の炭素原子を有し、これらに限定されるわけではないものの、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル異性体、ヘキシル異性体、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、および1から6個の範囲の炭素原子を有するこれらの組み合わせ等を含む。C1-6アルキル属内の任意の長さまたは任意の組の長さの、直鎖、分岐、および/または、環状の部分を含む、種々のサブセット(個々の化学種を含む)およびこれらのエステルの組み合わせが、更なる異なる実施形態として考えられる。
【0085】
=N-OH基を含むこの節の前述の任意のRARγ選択的アゴニストについて、ある実施形態は、この基の、いずれの配置も含むが、一方、別の実施形態は、E配置のみを含み、また、更に別の実施形態は、Z配置のみを含む。
【0086】
使用の態様の任意の方法について、ある実施形態では、RARγ選択的アゴニストは、タザロテン酸(RARβよりもではないが、RARαよりもRARγに選択的)、CD437、CD2325、CD666、トリファロテン、またはBMS961である。
【化32】
CD437
【化33】
CD2325
【化34】
CD666
【化35】
トリファロテン
【化36】
BMS961
【0087】
いくつかの実施形態では、RARγアゴニストは、臨床的に意義のある濃度でRARαおよびRARβの両方についてアゴニスト活性を有しないまたは無視できるアゴニスト活性のみを有する点で選択的な、RARγ選択的アゴニストである。いくつかの実施形態では、RARγアゴニストは、臨床的に意義のある濃度でRARαについてアゴニスト活性を有しないまたは無視できるアゴニスト活性のみを有する点で選択的な、RARγ選択的アゴニストである。種々の実施形態では、RARγ選択的アゴニストは、RARγについての当該アゴニストのKDが(1種または複数種の)他のRARについてのKDの10分の1、20分の1、50分の1、または100分の1より大きい場合に、ある臨床的に意義のある濃度でRARαまたはRARβについてアゴニスト活性を有しないまたは無視できるアゴニスト活性のみを有する。KDは典型的には結合アッセイにより決定される。種々の実施形態では、RARγ選択的アゴニストは、RARγについての当該アゴニストのEC50が(1種または複数種の)他のRARについてのEC50の10分の1、20分の1、50分の1、または100分の1より大きい場合に、ある臨床的に意義のある濃度でRARαまたはRARβについてアゴニスト活性を有しないまたは無視できるアゴニスト活性のみを有する。EC50は、典型的には、結合アッセイ、例えば、転写活性化アッセイにより決定される。選択性の特定の基準が明言されていないある実施形態では、RARγ選択的アゴニストは、これらの基準の少なくとも1つを、例えば、最も厳しくないものを満たす。
【0088】
これらの、RARγアゴニストは、RARγを活性化するための手段を、または、TILを生成し、分化させ、または拡大培養するための手段を構成する。ある実施形態は、具体的には、これらのRARγアゴニストの、開示の化学属、副化学属、または化学種の、1つ以上を含む。ある実施形態は、具体的には、これらのRARγアゴニストの、開示の化学属、副化学属、または化学種の、1つ以上を含まない。
【0089】
(実施例)
以下の非限定的な実施例は、現在考えられる代表的な実施形態のより完全な理解を助けるための例示を目的として記載されているに過ぎない。これらの実施例は、本明細書に記載のいずれの実施形態を制限するものとも解釈されるべきではない。
【0090】
(実施例1)
(GAG1の合成)
GAG1、GA1E、およびGA1Zの化学種の合成についての合成スキームを図1に示す。
【0091】
エチル-2-オキソ-エチル-5-ブロモ-サリチレート-2-イル-ブチレート
エチル-5-ブロモ-サリチレート(化合物1、24.5g、100mmol)のアセトン溶液(400mL)に、エチル-2-ブロモブチレート(23.4g、120mmol)および炭酸カリウム(20.7g、150mmol)を添加し、混合物を周囲温度で24時間攪拌した。固形物を濾過により除去し、溶媒を蒸溜により除去して、黄色の油として表題化合物(図1には示さず)を得た。収量=23.2g。
【0092】
5-ブロモ-2-エチル-ベンゾフラン(2H)-3-オン(化合物2)
冷たい(0℃)エチル-2-オキソ-エチル-5-ブロモ サリチレート-2-イル)-ブチレート(23.2g、70.3mmol)の無水トルエン溶液(300mL)に、20%ナトリウムエトキシドエタノール溶液(27g、80mmol)を少量ずつ(5分)添加した。冷却槽を取り除き、反応を周囲温度で12時間攪拌した。反応混合物を水(25mL)および塩水(ブライン)(50mL)で洗った。有機層を乾燥させ、溶媒を真空下で蒸溜により除去した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(10%酢酸エチルのヘキサン溶液)により精製し、白色固体として表題化合物(化合物2)を得た。収量=16.5g。
【0093】
HNMR(CDCl):d1.09(triplet,3H),1.80-1.95(m,1H),2.05-2.20(m,1H),4.61(t,2),7.12(d,1H),7.70(dd,1H),7.83(d,1H).
【0094】
5-ブロモ-3-t-ブチル-2-エチル-ベンゾフラン(化合物3)
冷たい(-78℃)塩化セリウム(25.41g、103mmol)のTHF(250mL)懸濁液に、t-BuMgClのエーテル溶液(2M、41.2mL、82.4mmol)を添加し、結果として得られた混合物を30分間攪拌した。その後、5-ブロモ-2-エチル-ベンゾフラン(2H)-3-オン(化合物2)(16.5g、68.66mmol)のTHF(100mL)溶液を添加し、混合物を周囲温度で30分間攪拌した。MeOH(-78℃)を添加することにより反応をクエンチし、酢酸エチル(100mL)で希釈し、NHCl水溶液、水、および塩水(各20mL)で洗った。有機層を乾燥させ、溶媒を蒸溜により除去した。結果として得られた残渣は第三級アルコールと未反応の化合物2との混合物であり、当該混合物を更なる精製を行うことなく次の工程で用いた。
【0095】
粗第三級アルコールの混合物(上で得られたもの)、ジクロロメタン(300mL)、およびp-TSA(200mg)を周囲温度で12時間攪拌した。混合物を、NaHCO水溶液、水、および塩水(各100mL)で洗った。有機層を乾燥させ、溶媒を蒸溜により除去した。残渣粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(3%酢酸エチル/ヘキサン)により精製し、無色の油として表題化合物(化合物3)を得た。収量=2.8g。
【0096】
HNMR(CDCl):d1.35(triplet,3H),1.54(s,9H),2.97(q,2H),7.28(d,1H),7.33(dd,1H),7.88(d,1H).
【0097】
1-(3-tert-ブチル-2-エチル-ベンゾフラン-5-イル)-エタノン(化合物4)
冷たい(-78℃)5-ブロモ-3-t-ブチル-2-エチルベンゾフラン(化合物3)(2.8g、10mmol)のTHF(60mL)溶液に、n-BuLiヘキサン溶液(2.5M溶液、4.8mL、12mmol)を添加した。混合物を50分にわたり約10℃まで徐々に温め、その後、-78℃まで再び冷やし、N-メトキシル-N-メチルアセトアミド(1.23g、12mmol)をシリンジ(きっちりとしたもの)で添加した。冷却を取り除き、反応を周囲温度で12時間攪拌した。NHCl水溶液を添加することにより反応をクエンチし、混合物を15分間攪拌した。混合物を酢酸エチル(60mL)で希釈し、水および塩水(各10mL)で洗った。有機層を乾燥させ、溶媒を蒸溜により除去した。生成物(化合物4)をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(7%酢酸エチルのヘキサン溶液)により精製した。収量=2.1g。
【0098】
HNMR(CDCl):d1.33(triplet,3H),1.55(s,9H),2.68(s,3H),2.97(q,2H),7.87(d,1H),8.41(d,2H).
【0099】
4-[(E)-3-(3-tert-ブチル-2-エチル-ベンゾフラン-5-イル)-3-オキソ-プロプ-1-エニル]-3-フルオロ-安息香酸(化合物5)
3-フルオロ-4-ホルミル安息香酸メチル(1.56g、8.6mmol)を、10mLの1N水酸化ナトリウムおよび20mLのメタノールに溶かした1-(3-tert-ブチル-2-エチル-ベンゾフラン-5-イル)-エタノン(化合物4)(2.1g、8.6mmol)の溶液に添加した。室温で18時間攪拌した後に、反応混合物を1N HClで酸性化し、酢酸エチル(3×10mL)で抽出した。まとめた有機層を塩水(1×10mL)で洗い、乾燥させ(MgSO)、減圧下で濃縮した。生成物(化合物5)をシリカゲルクロマトグラフィー(50%酢酸エチルのヘキサン溶液)により精製した。収量1.6グラム。
【0100】
HNMR(CDCl):d1.39(triplet,3H),1.60(s,9H),3.02(q,2H),7.32(s,1H),7.51(d,1H),7.83(t,1H),7.85(d,1H),7.92(d,1H),7.99(d,1H),8.03(d,1H),8.52(d,1H)。
【0101】
4-[(E,3E)-3-(3-tert-ブチル-2-エチル-ベンゾフラン-5-イル)-3-ヒドロキシイミノ-プロプ-1-エニル]-3-フルオロ安息香酸(GA1E)
4-[(E)-3-(3-tert-ブチル-2-エチル-ベンゾフラン-5-イル)-3-オキソ-プロプ-1-エニル]-3-フルオロ-安息香酸(化合物5)の10mLエタノール溶液に、塩酸ヒドロキシルアミン(653mg、9.40mmol)およびピリジン(1.86g、23.5mmol)を添加した。反応混合物を次に還流しながら6時間加熱した。室温まで冷却した後、溶媒を真空で除去し、残渣を水中に取り分けた。水層を1N HClでpH4-5に調節し、生成物を濾過により単離した。シリカゲルクロマトグラフィー(10%メタノール/1%トリエチルアミン/ジクロロメタン)によりさらなる精製を行った。収量=不完全な分離のため98mgの不純なZ異性体(GA1Z)および660mgの純粋なE異性体(GA1E)
【0102】
GA1E:HNMR(DMSO-D6):d1.31(triplet,3H),1.50(s,9H),2.97(q,2H),6.95(d,1H),7.38(d,1H),7.57(d,1H),7.71(d,1H),7.82(d,1H),7.86(s,1H),7.90(d,1H),7.97(t,1H).
【0103】
(実施例2)
(GA1EおよびGA2Eの結合および活性の特異性)
RARαおよびRARγについてGA1EおよびGA2Eの結合活性の特異性を試験するために転写活性化アッセイを行った。レチノイン酸受容体転写活性化活性および結合効率は本質的に米国特許第5,298,429号明細書および米国特許第5,071,773号明細書に記載の通り決定されたが、転写活性化アッセイについてこれらの特許文献の教示の全てを本明細書で援用する。転写活性化アッセイはRARαおよびRARγの全長受容体をコードする発現プラスミドを用いた。ヘルペスウイルスチミジンキナーゼプロモーターおよび適切なレチノイン酸受容体応答エレメント(retinoic acid response element、RARE)を含む受容体プラスミドをホタルルシフェラーゼをコードするオープンコーディングリージョンの上流に位置させた。
【0104】
GA1EおよびGA2Eが転写活性化アッセイにおいてRARαおよびRARγを活性化する能力を、0.5から625nM(GA2E)または0.05から3320nM(GA1E)の濃度範囲にわたり試験した。GA1Eは、全濃度範囲にわたりRARαについて10%未満の転写活性化を誘導したが、RARγについて、≧25nMの濃度では50%超の転写活性化を誘導し、≧125nMの濃度では70%超の転写活性化を誘導した(図3A)。GA2Eは、全ての試験濃度で85%超の転写活性化を誘導し、≦25nMの濃度ではRARαの10%未満の転写活性化を誘導した(図3B)。
【0105】
(実施例3)
(RARγアゴニストによるマウスでの三種陰性乳がんの治療)
RARγアゴニストであるタザロテン酸およびGA2EをEMT6同系マウス乳がんモデルで評価した。5×10個のEMT6細胞を免疫適格性の雌のBalb/cマウスの乳腺脂肪体に注射した。腫瘍が50-150mmの平均体積に到達したときに、マウスを腫瘍サイズで合わせて対照群または投与群とした(n=10-11)。
【0106】
マウスは、0日目を起点に、1mg/mlのタザロテン酸またはGA2Eの10mg/kgでの21回にわたる毎日の投与またはビークル対照により処置された。0、1、3、6、8、10、13、15、17、20、および21日目に、腫瘍体積を計測し、マウスの体重を量った。
【0107】
タザロテン酸およびGA2Eの両方が腫瘍成長を阻害したが、GA2Eがより高い効能を有していた(図4A)。腫瘍成長の阻害は投与開始から10日を超えるまでは目立たなかった。研究の終了時点で、タザロテン酸は腫瘍成長を44%阻害し、GA2Eは63%阻害した。ビークル対照群は僅かな体重増加を示す一方で、両投与群は15%から20%の間の互いに似た緩やかな体重減少を経験したが(図4B)、これはがん治療薬として許容可能な良好な忍容性を薬が有することを示す。
【0108】
(実施例4)
(RARγ選択的アゴニストによるマウスでの三種陰性乳がん由来腫瘍におけるTILの増加)
実施例3の試験の終了始点で、腫瘍を切り取り、プロテアーゼの使用によらず細胞を脱凝集させ分散させ、種々の剤で染色し、フローサイトメトリーに掛けた。図5A-Bは、腫瘍に対する細胞の百分率および細胞の数の両方でフローサイトメトリーの結果を示す。全体的に、浸透して壊死細胞を染色するFVS700染料での染色により明らかなように、腫瘍内の細胞の少数のみが生存していた(図5A、『Live』パネル)。これらの生細胞のうち、かなりの部分が白血球であった(図5A、『CD45』パネル)。抗CD3による染色(図5A、『Tot T』パネル)から、ビークル投与マウスおよびタザロテン酸投与マウスについて、それぞれ、平均して白血球のほんの約5%および10%がT細胞であったが、GA2E投与マウスに由来の腫瘍では、平均して白血球の約30%がT細胞であり、統計的有意差があったことが明らかとなった。T細胞の大部分はCD4であり(図5A、『CD4』パネル)、大部分がヘルパー細胞であると期待された。CD4細胞のうち、わずかな部分のみが、Tメモリー細胞(IFNγについての細胞内染色に基づく、大部分がTH1メモリー細胞であると期待される)(図5B、『TH IFGγ』パネル)、TH17細胞(IL-17についての細胞内染色に基づく)(図5B、『TH IL17』パネル)、またはTreg細胞(CD25およびFoxP3についての染色に基づく)(図5B、『Treg』パネル)であった。T細胞の約25-30%がCD8であり(図5B、『CD8 T』パネル)、大部分が細胞障害性細胞であると期待された。IFNγについての細胞内染色に基づくとメモリー細胞であるCD8T細胞の部分(図5B、『TC IFNγ』パネル)が、タザロテン酸およびGA2E投与マウス由来の腫瘍では数値上増加したが、ビークル対照動物からの差は統計的に有意ではなかった。したがって、GA2E投与はTILの数を増加させた。
【0109】
(実施例5)
(種々の投与量のRARγアゴニストによるマウスでの三種陰性乳がんの治療)
基本的には上記どおりのEMT6三種陰性乳がんモデルを用いて、GA2Eの用量を増加させたときの効果を評価した。マウスに、10mg/kg(n=10)、25mg/kg(n=10)、もしくは50mg/kg(n=11)のGA2E、または、ビークル対照(n=10)を、17日間毎日、経口投与した。ただし、過剰な体重減少のため遅くとも12日目までに50mg/kg群の全マウスを屠殺し、同様に、25mg/ml群では1匹のマウスを屠殺した。ビークル対照群の2匹のマウスを腫瘍>1500mmである12日目に屠殺した。
【0110】
全体として、10mg/kg群および25mg/kg群は、25mg/kgの投与量について10%超の体重減少への短期の逸脱があるのみで、がん治療薬について許容可能な良好な忍容性を示した(図6A-B)。25mg/kgの投与量は、10mg/kgの投与量よりも、腫瘍成長の阻害について幾分効果的であった。50mg/kgの投与量による腫瘍阻害は、当該群の動物が本試験に服していた限られた時間では、他の投与量と明らかには異なっていなかった(図7)。体表面積に基づきヒトに合わせると、マウスの10mg/kgおよび25mg/kgは、それぞれ、ヒトの約0.8mg/kgおよび2.0mg/kgに対応する。
【0111】
(実施例6)
(RARγ選択的アゴニストがCD8+メモリーT細胞の活性および細胞増殖を促進する)
サイトメガロウイルス(CMV)陽性ドナー由来の末梢血単核細胞(peripheral blood mononuclear cell、PBMC)を、カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(carboxyfluorescein succinimidyl ester、CFSE)で標識し、1mg/mlのCMVリコール抗原で刺激した。PBMCに、その後、3種の異なるRARγ選択的アゴニストのうち1種またはビークル(DMSO)対照を投与し、37℃、5%COで、4日間インキュベートした。培養上清を回収し、IFNγ産生について測定し、また、PBMCをCFSE希釈についてのフローサイトメトリーにより細胞増殖について評価した。
【0112】
CFSEは蛍光反応性細胞膜浸透性染料である。CFSEは、取り込まれた後に、タンパク質を共有結合的に修飾し、長期にわたり細胞内に留まる。CFSE修飾タンパク質は、一般的に、細胞分裂毎に娘細胞の間で均等に分けられるので、細胞の蛍光強度は細胞分裂毎に半分に落ちる。したがって、染料の蛍光シグナルの減少は細胞増殖の評価基準として用いることができる。
【0113】
RARγ選択的アゴニストの投与は、GA2E、GA3Ep、およびタザロテン酸のそれぞれで、0.1から1000nMの濃度において、IFNγ産生を、ビークル対照群に対して、大幅に増加させた(図8A-C)。CD8細胞の細胞増殖も増加した(図9A-C)。細胞増殖のバックグラウンドレベルに対する増加は小さいものの、CD8細胞のわずかな部分のみがCMVに特異的であると期待されると考えられるので、この増加は依然非常に有意義である。
【0114】
(実施例7)
(RARγ選択的アゴニストはヒトCD8エフェクターTILの生成および腫瘍収縮(NSG-B2mモデル)を促進する)
NSG-B2Mマウスモデルは、重度の免疫無防備状態の動物であり、病変として非肥満糖尿病(NOD)、重症複合免疫不全(SCID)、IL-2受容体γ欠損、およびβ2ミクログロブリン欠損を併発する。ヒト腫瘍細胞は容易にこのモデルに正着し、がん免疫療法の種々の態様を研究するためにヒト免疫系由来の細胞も正着させることができる。したがって、この系においてヒト腫瘍に対するヒト免疫応答をモデル化することができる。雌のNSG-B2Mの乳腺脂肪体に、等量のマトリゲル(登録商標)をともなう0.1mLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に懸濁した5×10個のJIMT-1細胞(ヒト乳がん細胞株)を注射した。ひとたび腫瘍が100-200mmの体積に到達したら、マウスの右腹に皮下注射で1×10個のヒトPBMCを移植した(前無作為化)。PBMCは、2名のドナーから得られたものであり、群間で均等に分配した。腫瘍が200-250mmの平均腫瘍体積に到達したとき(PBMC注射後約3日)に、動物を腫瘍体積で合わせて投与群および対照群とし、投与を開始した。この投与初日を0日目と定義した。マウスに、ビークル対照群では、10%ジメチルスルホキシド(DMSO)を含むPBS溶液を、10mL/kgで、毎日経口投与し、投与群では、10%DMSOを含むPBS溶液に溶かしたGA2Eを、10mg/kgで、毎日経口投与した。
【0115】
腫瘍体積を週2回測定し、研究のエンドポイントに到達した日にも測定した。マウスの体重も週2回測定し、研究のエンドポイントに到達した日にも測定した。0日目から>10%の体重減少を示した動物に、自由に食べられる環境で栄養補助食品を与えた。任意の7日の期間で>20%の体重減少または0日目から>30%の体重減少を示した動物は、瀕死と判断し、安楽死させた。
【0116】
研究のエンドポイントの定義は、対照群の平均腫瘍体積(打ち切りなし)が1500mmに到達した時点である。これが28日目より前に生じる場合、投与群および個々のマウスに投与を続けることを許容し、28日目まで測定した。28日目までに対照群の平均腫瘍体積(打ち切りなし)が1500mmに到達しなかった場合、全ての動物についてのエンドポイントは、最大で60日目までに対照群の平均腫瘍体積(打ち切りなし)が1500mmに到達した日とした。
【0117】
GA2E投与マウスは研究の12日目に>10%と大幅に体重を減少させた(図10A-B)ので、当該動物を13日目から研究の終了時点まで休薬日においた。マウスがGA2Eを受けている最中に腫瘍成長への影響は観察されなかったが、研究の19日目以降は腫瘍収縮があり(図11)、数匹のマウスは17日目以降から腫瘍収縮を示した(データは図示せず)。これらのデータは、RARγアゴニストの抗腫瘍作用が腫瘍細胞自体への直接的作用ではなく、RARγアゴニストが抗腫瘍免疫を促進するということと平仄が合う。
【0118】
マウスを研究の26日目に屠殺し、腫瘍を集め、フローサイトメトリーで分析した。統計分析は、群間の有意差比較についてTukey検定による通常の一元配置分散分析を用いて行った。ゲートを、前方向光散乱により単一細胞を同定し、側方散乱および生体内染色用Fixable Viability Dye eFluor(商標)780による染色に基づき単一細胞として生細胞を同定し、側方散乱および抗CD45染色に基づき生細胞から白血球細胞を同定し、側方および前方向光散乱に基づき白血球細胞からリンパ球を同定し、側方散乱および抗CD3染色に基づきリンパ球から全Tリンパ球(tot T)を同定するよう設定した。全Tリンパ球は、抗CD4抗体および抗CD8抗体による染色に基づきCD4(TH)およびCD8(TC)リンパ球に分け、サブセットを評価した。以下の観察結果は腫瘍組織1mg当たりを基準に行われた。
【0119】
全CD8リンパ球の濃度は対照群と比べてGA2投与腫瘍で増加した(図12A、P<0.001)。腫瘍における、CD8細胞の、ナイーブ(CCR7 CD45ARとして定義される)、Tセントラルメモリー(CCR7 CD45AR)、またはTエフェクターメモリー(CCR7 CD45AR)のサブセットの濃度に有意な変化はなかった(それぞれ、図12B、C、およびD)。しかし、CCR7 CD45ARとして定義される最終分化CD8Tエフェクター細胞の濃度には大幅な増加があった(図12E、P<0.0001)。CCR7はリンパ節への回遊を促進し、したがって、末梢でみられるエフェクター細胞はCCR7である。最終分化CD8Tエフェクター細胞は、細胞溶解性と期待されるが、収縮する腫瘍内のTILでとりわけ増加し、GA2EなどのRARγアゴニストの抗がん活性が直接的作用というよりむしろ免疫機構を介して生じるという解釈と平仄が合う。T細胞マーカーであるPD-1、CD18β、およびCD54を発現するCD8TILの濃度も対照群と比べてGA2E投与腫瘍で増加した(それぞれ、図13A、P<0.0001;図13B、P<0.001;および、図13C、P<0.01)。CD18およびCD54は、両方とも、細胞間接着および免疫監視に関与する。TILでのこれらの増加は、CD8Tエフェクター細胞による抗原認識および免疫学的シナプスの形成の効率の改善を示唆する。PD-1は、免疫恒常性に関与し、免疫応答の下方制御を、例えば、PD-1を発現するエフェクター細胞のアポトーシスを介して、促進する。PD-1細胞の増加は上方制御応答を反映する。したがって、抗PD-1抗体および抗PD-L1抗体などのPD-1/PD-L軸のアンタゴニスト(免疫チェックポイント阻害剤)は、GA2EなどのRARγアゴニストにより促進された免疫応答をさらに増強する可能性がある。
【0120】
全CD4リンパ球の濃度は減少し(図14A、P<0.05)、検査したサブセットの全て、ナイーブ(CCR7 CD45ARとして定義される)、Tセントラルメモリー(CCR7 CD45AR)、Tエフェクターメモリー(CCR7 CD45AR)、最終分化CD4Tエフェクター細胞(CCR7 CD45AR)も同様であった(それぞれ、図14B、C、およびD、いずれもP<0.05、ならびに、図14D、P>0.05)。T細胞マーカーであるPD1、CD18β、CD54、およびFoxP3を発現するCD4TILの濃度も対照群と比べてGA2投与腫瘍で増加した(それぞれ、図15A、P<0.05;図15B、P<0.05;図15C、P<0.05、および図15D、P>0.05)。
【0121】
このヒト抗腫瘍免疫応答モデルにおけるRARγアゴニストであるGA2Eの投与の作用は、腫瘍でCD8TILの濃度を、特に、最終分化エフェクター細胞の濃度を大幅に増加させることであった。対照的に、腫瘍内のCD4TILの濃度は減少した。同様に、PD-1、CD8β、およびCD54CD8のTILの濃度は増加する一方で、CD4TILの濃度は減少した。これらのデータの全てが、CD4応答の減少をともなうCD8エフェクター細胞に基づくTILの抗腫瘍応答の促進と平仄が合う。出願人が知る限り、TIL集団においてCD8エフェクター細胞を特異的に増加させる他種の小分子剤は存在しない。がん治療についてのこうした作用の要望が叶ったのである。
【0122】
PD-L1、CD18β、CD58(LFA-3)、およびHer2の発現についてフローサイトメトリーにより腫瘍細胞も評価した。GA2Eの投与は、これらのマーカーを発現する細胞の割合を有意に変化させなかったが、これはRARγアゴニストが腫瘍細胞への直接的な作用を有しないことと平仄が合う。
【0123】
(実施例8)
(三種陰性乳がん細胞株のインビトロ培養へのRARγアゴニストの作用)
EMT6細胞を、RARγアゴニストであるGA1E、GA2E、およびGA3Epの複数の濃度下で、5日にわたりインビトロで培養し、Cell Titer Glo assay(登録商標)(Promega)により生存率を評価した。これら化合物は、1μM以下の濃度では作用がなかったが、濃度が10μMを超えると急激に毒性を示した(図16)。GA1E、GA2E、およびGA3EpのIC50は、GA1E、GA2E、およびGA3Epについて、それぞれ、52μM、19μM、および101μMであった。これらのデータは、インビボで観察されたRARγアゴニストの抗がん作用が、腫瘍細胞への直接作用ではなく、最も高い可能性として、TILに基づく抗腫瘍免疫応答の促進から生じることを確認するものである。すなわち、用いた濃度でRARγアゴニストは腫瘍成長を直接的に阻害しなかったことから、腫瘍阻害作用はそれらのTIL促進から生じるといえる。
【0124】
(実施例9)
(ルイス肺がん細胞株のインビトロ培養へのRARγアゴニストの作用)
ルイス肺がん(LCC)細胞を、RARγアゴニストであるGA1E、GA2E、およびGA3Epの複数の濃度下で、インビトロで培養し、Cell Titer Glo assay(登録商標)により生存率を評価した。これら化合物は、1μM以下の濃度では作用がなかったが、濃度が10μMを超えると急激に毒性を示した(図17)。GA1E、GA2E、およびGA3EpのIC50は、GA1E、GA2E、およびGA3Epについて、それぞれ、96μM、46μM、および45μMであった。これらのデータは、インビボで観察されたRARγアゴニストの抗がん作用が、腫瘍細胞への直接作用ではなく、最も高い可能性として、TILに基づく抗腫瘍免疫応答の促進から生じることを確認するものである。すなわち、用いた濃度でRARγアゴニストは腫瘍成長を直接的に阻害しなかったことから、腫瘍阻害作用はそれらのTIL促進から生じるといえる。
【0125】
(実施例10)
(RARγ選択的アゴニストはヒトCD8エフェクターTILの生成および腫瘍収縮(LLCモデル)を促進する)
LLCモデルは、70年ほど前にC57BL/6マウスで自然に発生した肺の類表皮がんに基づいている。同系モデルが臨床的有用性を予測するのに役立ってきた。6-8週齢のC57BL/6マウスの左腹に3×10個のLLC細胞を含む0.1mLを皮下注射した。腫瘍が50-150mm3の平均腫瘍体積に到達したときに、マウスを腫瘍サイズで合わせて分類し対照群および投与群とし、投与を開始した(0日目)。各10匹のマウスからなる3つの群、ビークル対照、10mg/kg GA2E、および25mg/kg GA2Eを確立した。マウスは、13日にわたり1日1回の経口投与を受けた。腫瘍体積および体重を、0、2、4、6、9、11、および13日目に、測定した。平均腫瘍体積が>1500mmだったので、本研究を13日目に終了し、腫瘍をフローサイトメトリーにより分析した。腫瘍の潰瘍化のため10mg/kg群の2匹の動物および25mg/kg群の1匹の動物を早期に屠殺した。
【0126】
GA2Eの10mg/kgの投与量は良好な忍容性であり、本研究の過程にわたり最小の体重減少であった。GA2Eの25mg/kgの投与量はより低い良好な忍容性であり、本研究の過程にわたり着実な体重減少をともない、体重減少は10日目のあたりで10%を超えた(図18A-B)。両方の投与量の薬が腫瘍成長を阻害したが、2種の投与量の作用の腫瘍阻害には有意な差はなかった(図19)。
【0127】
マウスを研究の13日目に屠殺し、腫瘍を集め、フローサイトメトリーで分析した。統計分析は、群間の有意差比較についてTukey検定による通常の一元配置分散分析を用いて行った。ゲートを、前方向光散乱により単一細胞を同定し、側方散乱および生体内染色用Fixable Viability Dye eFluor(商標)780による染色に基づき単一細胞として生細胞を同定し、側方散乱および抗CD45染色に基づき生細胞から白血球細胞を同定し、側方および前方向光散乱に基づき白血球細胞からリンパ球を同定し、側方散乱および抗CD3染色に基づきリンパ球から全Tリンパ球(tot T)を同定するよう設定した。全Tリンパ球は、抗CD4抗体および抗CD8抗体による染色に基づきCD4(TH)およびCD8(TC)リンパ球に分け、サブセットを評価した(図20)。以下の観察結果は腫瘍組織1mg当たりを基準に行われた。
【0128】
全CD8リンパ球の濃度は対照群と比較してGA2E投与腫瘍で増加した(図22、パネルCD8+、25mg/kgの投与量についてP<0.05)。細胞障害性細胞の濃度も増加し(図22、パネルCytotoxic CD8、25mg/kgの投与量についてP<0.05)、腫瘍内のエフェクターメモリーCD8T細胞の濃度も同様であった(図22、パネルCD8 Tem、25mg/kgの投与量についてP<0.01)。腫瘍内のナイーブおよびセントラルメモリーCD8T細胞の濃度は投与により有意に変化はしなかった(図22、それぞれ、パネルCD8ナイーブおよびCD8 Tem)。腫瘍内の全CD4+T細胞、Tヘルパー細胞、および制御性T細胞の濃度は投与により有意に変化はしなかった(図21)。しかし、全T細胞の百分率として、Treg細胞の割合は有意に減少した(図21、パネルTregs、P<0.001)。したがって、GA2Eの投与の際に、腫瘍細胞を死滅させるのにより有効であるはずのフェノタイプを有する、腫瘍内のTILの数は、拡大した。
【0129】
実施例は、RARγアゴニストが、乳がん(Her2乳がんおよび三種陰性乳がん)および肺がんの細胞株を含む複数のがんモデルにおいて腫瘍成長を阻害し、ヒトおよびマウスリンパ球を有するTILを促進することを示す。RARγアゴニストはインビトロでは腫瘍成長阻害作用を有しないようにみえたが、インビボで観察された腫瘍成長阻害作用がTILの産生および抗腫瘍活性促進を増加させることによるものであることは明らかである。
【0130】
(実施例11)
(RARγアゴニストを用いたRARγシグナル伝達の薬理学的活性化はB16黒色腫細胞の拒絶において免疫チェックポイント阻害剤抗体と共同的作用を有する)
10nMの本明細書に開示のRARγアゴニストと組み合わせた免疫チェックポイント阻害剤抗体(抗CTLA-4抗体など)投与の抗腫瘍作用がB16F10腫瘍細胞を生着させたC57BL/6マウスで調べられる。ビークルのみを投与したマウスは未投与対照マウスに対して生存優位性を示さない。免疫チェックポイント阻害剤抗体およびRARγアゴニストの両方を投与したマウスは50日で改善された生存率を有し、このことはこれら2つの剤が共同してB16黒色腫細胞を排除することを示す。組み合わせ投与を受けた生存マウスは生腫瘍細胞のリチャレンジに耐性であり、このことはB16特異的メモリー細胞の有効な形成を示す。重要なことに、抗黒色腫作用が薬のこの組み合わせで急性毒性の兆候も遅延毒性の兆候もなく得られる。
【0131】
締め括りとして、本明細書の態様は特定の実施形態を参照して強調されているが、当業者であればこれらの本開示の実施形態が本明細書に開示の主題の原理を例示するものにすぎないことを容易に理解するはずであることを理解されたい。したがって、本開示の主題は、本明細書に記載の、特定の方法、手順、および/または、試薬などに、決して限られるわけではないことを理解されたい。そのため、開示の主題への種々の修正もしくは変更またはその代替的構成が本明細書の教示に従って本明細書の趣旨から逸脱することなく可能である。最後に、本明細書で用いた用語は、特定の実施形態を記載することを目的とするにすぎず、本発明の範囲を制限することを意図するわけではなく、本発明の範囲は請求項によってのみ定められる。したがって、本発明は正確に図示および記載したとおりのものに限られるわけではない。
【0132】
発明を実施するための発明者が知る限り最良の方法をはじめとした本発明の特定の実施形態が本明細書に記載される。当然ながら、これらの記載した実施形態についての変形例も前述の記載に触れた当業者にとって明らかなはずである。発明者等は、当業者であればこうした変形例を適切に採用するものと期待し、本明細書に具体的に開示したものとは異なるやり方で本発明が実戦可能であることを意図している。したがって、本発明は適用法により許されるとおり本明細書に添付の請求項に記載の主題の全ての修正例および均等物も包含する。さらに、特記がなく文脈に明白に矛盾しない限り全ての可能な変形例での上述の実施形態の任意の組み合わせが本発明に包含される。
【0133】
本発明の、選択可能な実施形態、構成要素、または工程の集合は、限定と解釈されるべきではない。各集合要素は、個別に参照され特許請求の範囲に記載され、また、本明細書の開示の他の集合要素と任意に組み合わされてもよい。便宜性および/または特許性を理由として、ある集合の1つ以上の要素が、ある集合に加入されてもよいし、ある集合から削除されてもよい。こうした加入または削除が生じた場合、本明細書は、そのように修正された集合を含むものとみなされ、したがって、特許請求の範囲に記載の全マーカッシュグループの記載要件を満たす。
【0134】
特記のない限り、本明細書および請求項で用いられる、特性、項目、量、パラメーター、性質、用語などを表現する全ての数字は、全ての場合で、『約』という用語で修飾されるものとして解されるべきである。本明細書では、『約』という用語は、そのように修飾された特性、項目、量、パラメーター、性質、または用語が、記載された、特性、項目、量、パラメーター、性質、または用語の数値の上下プラスまたはマイナス10%の範囲を包含することを意味する。したがって、反対の記載がない限り、本明細書および添付の請求項に記載の数値パラメーターは変動幅がある概算値である。特許請求の範囲への均等論の適用を制限することを試みるわけではないが、最低限、各数字表記は、報告された有効数字の数に照らして、かつ、通常の丸め手法を適用して、解釈されるべきである。本発明の広範な範囲を規定する数値範囲および数値は概算値であるものの、特定の実施例に記載の数値範囲および数値は可能な限り正確に報告されている。ただし、いずれの数値範囲または数値も、それらのそれぞれの試験測定でみられる標準偏差から必然的に生じる誤差を本質的に含む。本明細書の数値の数値範囲の記載は、当該範囲内の個々の数値をそれぞれ個別に参照する簡略化した方法として機能することを意図するに過ぎない。特記のない限り、ある数値範囲の個々数値のそれぞれが、それらを本明細書で個々に記載したかのように、本明細書に組み込まれる。
【0135】
本明細書を記載する文脈で(特に特許請求の範囲で)用いられる単数表記は、本明細書に特記がなく文脈に明白に矛盾しない限り、単数および複数の両方をカバーすると解釈されるべきである。本明細書に記載の全ての方法は、本明細書に特記がなく文脈に明白に矛盾しない限り、任意の適切な順番で行うことができる。本明細書に記載の、あらゆる例示または例示的言語(例えば、『など』)の使用は、本発明をより明瞭にすることを意図するに過ぎず、特許請求の範囲に記載した以外に本発明の範囲に制限を課すものではない。本開示のいかなる記載も、本発明の実施に必須な特許請求の範囲に記載されていない要素を示すと解釈されるべきではない。
【0136】
本明細書に記載の特定の実施形態は、「からなる」または「から本質的になる」という記載を用いて請求項でさらに限定されてもよい。請求項で用いられる場合、出願当初からそうであったか補正により加入されたかによらず、「からなる」という移行句は、請求項で特定されていない、いかなる要素、工程、または成分も排除する。出願当初からそうであったか補正により加入されたかによらず、「から本質的になる」という移行句は、請求項の範囲を、特定された材料または工程と、基本的で新規な(1つまたは複数の)特徴に実質的な影響をあたえないものとに限定する。請求項に記載された本発明の実施形態は、本質的にまたは明示的に本明細書に記載され実施可能である。
【0137】
本明細書で参照され特定された、全ての特許、特許公報、および他の文献は、例えば、本発明に関連して用いられるかもしれない当該文献に記載の組成物および方法を、記載し開示するという目的のために、それらの全体を参照により、本明細書に個別かつ明示的に援用される。これらの文献は、本明細書の出願日より前のそれらの開示のためにのみ提示されたものである。これに関連して、発明者等が先行発明を理由にまたは任意の他の理由でこうした開示に先行する資格を有しないことを自白すると解釈されるべきではない。これらの文書の内容についての表現またはデータについての記載の全ては、出願人に利用可能な情報に基づくものであり、これらの文書の内容またはデータの正確性についていかなる自白を構成するものでもない。
【0138】
[付記]
[付記1]
治療を必要とする患者に有効量の下記の構造を有するRARγ選択的アゴニストまたはその医薬的に許容可能な塩を投与することを含む、がんを治療する方法。
【化37】
(GAG1)
(ただし、Rは、HまたはC1-6アルキルであり、=N-OH基への交差二重結合は立体化学が不特定であることを示し、RからR12は、独立して、C1-6アルキル、水素原子、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシ基、OCF、またはCOR13(ただし、R13は、C1-6アルキルまたはCF)であり、Yは、酸素、硫黄、またはNR14(ただし、R14はC1-6アルキル)であり、R16はHまたはFである。)
【0139】
[付記2]
前記RARγ選択的アゴニストは下記の構造を有する、付記1に記載の方法。
【化38】
(GA1E)
【0140】
[付記3]
前記がんは、固形腫瘍である、付記1または2に記載の方法。
【0141】
[付記4]
前記がんは、乳がんである、付記3に記載の方法。
【0142】
[付記5]
前記乳がんは、三種陰性乳がんである、付記4に記載の方法。
【0143】
[付記6]
前記乳がんは、Her2乳がんである、付記4に記載の方法。
【0144】
[付記7]
前記がんは、肺がんである、付記3に記載の方法。
【0145】
[付記8]
前記有効量は、約1から約100mg/日である、付記1から7のいずれか1つに記載の方法。
【0146】
[付記9]
CAR-T細胞の投与をさらに含む、付記1から8のいずれか1つに記載の方法。
【0147】
[付記10]
免疫チェックポイント阻害剤の投与をさらに含む、付記1から8のいずれか1つに記載の方法。
【0148】
[付記11]
腫瘍浸潤リンパ球(tumor-infiltrating lymphocyte、TIL)をRARγ選択的アゴニストと接触させることにより前記TILを生成するまたは拡大培養する方法。
【0149】
[付記12]
前記接触は、がんを有する対象に前記RARγ選択的アゴニストを投与することを含む、付記11に記載の方法。
【0150】
[付記13]
前記接触は、前記RARγ選択的アゴニストが添加された培地において前記TILをインビトロで培養することを含む、付記11に記載の方法。
【0151】
[付記14]
腫瘍外植体からTILを単離することを含む、付記13に記載の方法。
【0152】
[付記15]
前記RARγ選択的アゴニストが添加された培地において、放射線照射腫瘍細胞の存在下、末梢血単核細胞(peripheral blood mononuclear cell、PBMC)をインビトロで培養することを含む、付記13に記載の方法。
【0153】
[付記16]
前記PBMCおよび前記放射線照射腫瘍細胞は、同じ個体から取得される、付記15に記載の方法。
【0154】
[付記17]
前記培地は、IL-2をさらに添加されている、付記13から16のいずれか1つに記載の方法。
【0155】
[付記18]
抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体を前記培養培地に添加することをさらに含む、付記13から17のいずれか1つに記載の方法。
【0156】
[付記19]
治療を必要とする患者に付記11から18のいずれか1つにしたがって生成または拡大培養された前記TILを注入することを含む、がんを治療する方法。
【0157】
[付記20]
治療を必要とする患者にRARγ選択的アゴニストで拡大培養されたTILを提供することを含む、がんを治療する方法。
【0158】
[付記21]
前記RARγ選択的アゴニストが添加された培地においてインビトロで培養されたTILを投与することを含む、付記20に記載の方法。
【0159】
[付記22]
前記提供は、前記患者に前記RARγ選択的アゴニストを投与することを含む、付記20または21に記載の方法。
【0160】
[付記23]
前記がんは、固形腫瘍である、付記20から22のいずれか1つに記載の方法。
【0161】
[付記24]
前記がんは、乳がんである、付記23に記載の方法。
【0162】
[付記25]
前記乳がんは、三種陰性乳がんである、付記24に記載の方法。
【0163】
[付記26]
前記乳がんは、Her2乳がんである、付記24に記載の方法。
【0164】
[付記27]
前記がんは、肺がんである、付記24に記載の方法。
【0165】
[付記28]
前記RARγ選択的アゴニストは、下記の構造の化合物またはその医薬的に許容可能な塩である、付記11から27のいずれか1つに記載の方法。
【化39】
(GAG3p)
(ただし、Rは、HまたはC1-6アルキルであり、RおよびRは、それぞれ、独立して、HまたはC1-6アルキルであり、R、R3’、R、およびR4’は、独立して、HまたはFであり、Xは、O、S、CH、C(R、またはNR(ただし、RおよびRは、それぞれ、独立して、HまたはC1-6アルキル)であり、=N-OH基への交差二重結合は立体化学が不特定であることを示す。)
【0166】
[付記29]
前記RARγ選択的アゴニストは、下記の構造の化合物またはその医薬的に許容可能な塩である、付記28に記載の方法。
【化40】
(GA2E)
【0167】
[付記30]
前記RARγ選択的アゴニストは、下記の構造の化合物またはその医薬的に許容可能な塩である、付記28に記載の方法。
【化41】
(GA3Ep)
【0168】
[付記31]
前記RARγ選択的アゴニストは、下記の構造の化合物またはその医薬的に許容可能な塩である、付記19から30のいずれか1つに記載の方法。
【化42】
(GAG1)
(ただし、Rは、HまたはC1-6アルキルであり、=N-OH基への交差二重結合は立体化学が不特定であることを示し、RからR12は、独立して、C1-6アルキル、水素原子、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシ基、OCF、またはCOR13(ただし、R13は、C1-6アルキルまたはCF)であり、Yは、酸素、硫黄、またはNR14(ただし、R14はC1-6アルキル)であり、R16はHまたはFである。)
【0169】
[付記32]
前記RARγ選択的アゴニストは、下記の構造を有する、付記31に記載の方法。
【化43】
(GA1E)
【0170】
[付記33]
前記方法は、対象に前記RARγ選択的アゴニストを投与することを含み、前記投与は、治療期間全体にわたり定期的に行われる、付記1から10および19から32のいずれか1つに記載の方法。
【0171】
[付記34]
前記方法は、対象に前記RARγ選択的アゴニストを投与することを含み、前記投与は、治療期間全体にわたり反復周期で行われる、付記1から10および19から32のいずれか1つに記載の方法。
【0172】
[付記35]
治療の一周期が、1)第1期間にわたり定期的に前記RARγ選択的アゴニストを投与することと、2)第2期間にわたり前記RARγ選択的アゴニストの投与を中断することとを含み、前記第2期間後に新しい周期が開始されてもよい、付記34に記載の方法。
【0173】
[付記36]
前記第1期間は、10から15日である、または、そのうちの任意の整数の日数である、付記35に記載の方法。
【0174】
[付記37]
前記第2期間は、2週から1ヶ月である、または、そのうちの任意の整数の日数である、付記35または36に記載の方法。
【0175】
[付記38]
定期は、毎日である、付記33から37のいずれか1つに記載の方法。
【0176】
[付記39]
定期は、毎日2回である、付記33から37のいずれか1つに記載の方法。
【0177】
[付記40]
定期は、一日置きである、付記33から37のいずれか1つに記載の方法。
【0178】
[付記41]
前記治療期間は、最初の投与から、完全奏功が達成されるまでにわたる、付記33から40のいずれか1つに記載の方法。
【0179】
[付記42]
前記治療期間は、最初の投与から、安定状態または退縮の後に前記がんが再び進行するまでにわたる、付記33から40のいずれか1つに記載の方法。
【0180】
[付記43]
Treg細胞の阻害剤を投与することをさらに含む、付記から1から10および19から42のいずれか1つに記載の方法。
【0181】
[付記44]
前記Treg細胞の阻害剤は、RARαアンタゴニストを含む、付記43に記載の方法。
【0182】
[付記45]
前記Treg細胞の阻害剤は、Treg除去抗体を含む、付記43に記載の方法。
【0183】
[付記46]
前記Treg除去抗体は、抗CD25抗体、抗GITR抗体、抗FoxP3抗体、抗CCR抗体、または抗葉酸受容体4抗体を含む、付記45に記載の方法。
【0184】
[付記47]
抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体の投与をさらに含む、付記1から8および19から46のいずれか1つに記載の方法。
【0185】
[付記48]
下記の構造を有するRXRアゴニストまたはその医薬的に許容可能な塩を投与することをさらに含む、付記1から10および19から46のいずれか1つに記載の方法。
【化44】
(XAG)
(ただし、Rは、HまたはC1-6アルキルである。)
【0186】
[付記49]
前記RXRアゴニストは、3,7-ジメチル-6(S),7(S)-メタノ,7-[1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフト-7-イル]2(E),4(E)ヘプタジエン酸(IRX4204)である、付記48に記載の方法。
【0187】
[付記50]
キメラ抗原受容体-T(chimeric antigen receptor-T、CAR-T)細胞を、受けている最中である、受けたことがある、または受ける予定であるがん患者に、有効量の下記の構造を有するRARγ選択的アゴニストまたはその医薬的に許容可能な塩を投与することを含む、CAR-Tがん免疫療法を増強する方法。
【化45】
(GAG1)
(ただし、Rは、HまたはC1-6アルキルであり、=N-OH基への交差二重結合は立体化学が不特定であることを示し、RからR12は、独立して、C1-6アルキル、水素原子、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシ基、OCF、またはCOR13(ただし、R13は、C1-6アルキルまたはCF)であり、Yは、酸素、硫黄、またはNR14(ただし、R14はC1-6アルキル)であり、R16はHまたはFである。)
【0188】
[付記51]
免疫チェックポイント阻害剤を、受けている最中である、受けたことがある、または受ける予定であるがん患者に、有効量の下記の構造を有するRARγ選択的アゴニストまたはその医薬的に許容可能な塩を投与することを含む、免疫チェックポイント阻害剤がん免疫療法を増強する方法。
【化46】
(GAG1)
(ただし、Rは、HまたはC1-6アルキルであり、=N-OH基への交差二重結合は立体化学が不特定であることを示し、RからR12は、独立して、C1-6アルキル、水素原子、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシ基、OCF、またはCOR13(ただし、R13は、C1-6アルキルまたはCF)であり、Yは、酸素、硫黄、またはNR14(ただし、R14はC1-6アルキル)であり、R16はHまたはFである。)
【0189】
[付記52]
下記の構造のRARγ選択的アゴニストまたはその医薬的に許容可能な塩。
【化47】
(GAG1)
(ただし、Rは、HまたはC1-6アルキルであり、RからR12は、独立して、C1-6アルキル、水素原子、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシ基、OCF、またはCOR13(ただし、R13は、C1-6アルキルまたはCF)であり、Yは、酸素、硫黄、またはNR14(ただし、R14はC1-6アルキル)である。)
【0190】
[付記53]
Rは、H、メチル、またはエチルである、付記52に記載のRARγ選択的アゴニスト。
【0191】
[付記54]
Yは、Oである、付記52に記載のRARγ選択的アゴニスト。
【0192】
[付記55]
下記の構造を有する、付記54に記載のRARγ選択的アゴニスト。
【化48】
(GAG1-1)
【0193】
[付記56]
前記=N-OH基は、E配置である、付記52に記載のRARγ選択的アゴニスト。
【0194】
[付記57]
下記の構造を有する、付記56に記載のRARγ選択的アゴニスト。
【化49】
(GAG1-2)
【0195】
[付記58]
前記RARγ選択的アゴニストは、下記の構造を有する4-((1E,3E)-3-(3-(tert-ブチル)-2-エチル-ベンゾフラン-5-イル)-3-(ヒドロキシイミノ)プロプ-1-エン-1-イル)-3-フルオロ安息香酸(GA1E)である、付記52に記載のRARγ選択的アゴニスト。
【化50】
(GA1E)
【0196】
[付記59]
前記RARγ選択的アゴニストは、下記の構造を有する4-((1E,3Z)-3-(3-(tert-ブチル)-2-エチル=ベンゾフラン-5-イル)-3-(ヒドロキシイミノ)プロプ-1-エン-1-イル)-3-フルオロ安息香酸(GA1Z)である、付記52に記載のRARγ選択的アゴニスト。
【化51】
(GA1Z)
【0197】
[付記60]
下記の構造を有するRARγ選択的アゴニストまたはその医薬的に許容可能な塩。
【化52】
GAG2
(ただし、Rは、HまたはC1-6アルキルであり、=N-OH基への交差二重結合は立体化学が不特定であることを示す。)
【0198】
[付記61]
Rは、H、メチル、またはエチルである、付記60に記載のRARγ選択的アゴニスト。
【0199】
[付記62]
前記=N-OH基は、E配置である、付記60に記載のRARγ選択的アゴニスト。
【0200】
[付記63]
前記RARγ選択的アゴニストは、下記の構造を有する3-フルオロ-4-((1E,3E)-3-(ヒドロキシイミノ)-3-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)プロプ-1-エン-1-イル)安息香酸(GA2E)である、付記60に記載のRARγ選択的アゴニスト。
【化53】
(GA2E)
【0201】
[付記64]
前記RARγ選択的アゴニストは、下記の構造を有する3-フルオロ-4-((1E,3Z)-3-(ヒドロキシイミノ)-3-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)プロプ-1-エン-1-イル)安息香酸(GA2Z)である、付記60に記載のRARγ選択的アゴニスト。
【化54】
(GA2Z)
【0202】
[付記65]
下記の構造を有するRARγ選択的アゴニストまたはその医薬的に許容可能な塩。
【化55】
GAG3
(ただし、Rは、HまたはC1-6アルキルであり、RおよびRは、それぞれ、独立して、HまたはC1-6アルキルであり、RおよびR3’は、独立して、Hまたはハロゲンであり、(Rは、RおよびR4’を含み、これらは独立して、H、ハロゲン、C1-6アルキル、またはC1-6アルコキシであり、Xは、O、S、CH、C(R、またはNR(ただし、RおよびRは、それぞれ、独立して、HまたはC1-6アルキル)であり、=N-OH基への交差二重結合は立体化学が不特定であることを示し、COOR基はメタまたはパラ位置にあり、かつ、2つの前記R基が環の残りの位置を占める。)
【0203】
[付記66]
下記の構造のいずれかを有する、付記65に記載のRARγ選択的アゴニスト。
【化56】
GAG3p
【化57】
GAG3m
【化58】
(GAG3Ep)
【0204】
[付記67]
下記の構造のいずれかを有する、付記65に記載のRARγ選択的アゴニスト。
【化59】
GA3Ep
【化60】
GA3Em
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
【国際調査報告】