(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】円形外科用ステープラ用の組織安定化機構
(51)【国際特許分類】
A61B 17/115 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
A61B17/115
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531092
(86)(22)【出願日】2022-11-21
(85)【翻訳文提出日】2024-05-23
(86)【国際出願番号】 IB2022061217
(87)【国際公開番号】W WO2023094964
(87)【国際公開日】2023-06-01
(32)【優先日】2021-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506157570
【氏名又は名称】シラグ・ゲーエムベーハー・インターナショナル
【氏名又は名称原語表記】Cilag GMBH International
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ローラン・ライアン・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】アーノルド・ブラッドレー・エイ
(72)【発明者】
【氏名】アロンホルト・テイラー・ダブリュ
(72)【発明者】
【氏名】スターレット・ショーン・エム
(72)【発明者】
【氏名】ローズ・ローガン・アール
(72)【発明者】
【氏名】グエン・アンソニー
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160CC02
4C160CC07
4C160CC09
4C160CC37
4C160CC40
(57)【要約】
外科用器具は、ステープル留めアセンブリと、協働して組織を圧縮し、ステープル留めし、切断するように構成されたアンビルとを含む。ステープル留めアセンブリは、遠位側に面し、複数のステープルを受容するように構成された複数のステープル開口部を含むデッキ表面を有するデッキ部材と、切断縁部を画定する遠位端部を有するナイフ部材とを含む。アンビルは、ステープルを成形するように構成された複数のステープル成形ポケットを有するアンビル表面と、アンビル表面に隣接して配置され、近位面を有するワッシャとを含む。ナイフ部材の切断縁部は、外科用器具が発射されたときに組織及び近位面を切断するように構成されている。近位面は、発射中に組織を安定させ、組織がワッシャ及びアンビル表面を横切って並進するのを阻止するように構成された組織把持特徴部を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用器具であって、
(a)ステープル留めアセンブリであって、
(i)遠位側に面し、複数のステープルを受容するように構成された複数のステープル開口部を含むデッキ表面を有するデッキ部材、及び
(ii)切断縁部を画定する遠位端部を有するナイフ部材、を含むステープル留めアセンブリと、
(b)前記ステープル留めアセンブリと協働して、組織を圧縮し、ステープル留めし、切断するように構成されたアンビルであって、
(i)前記ステープルを成形するように構成された複数のステープル成形ポケットを有するアンビル表面、及び
(ii)前記アンビル表面に隣接して配置され、近位面を有するワッシャであって、前記ナイフ部材の前記切断縁部は、前記外科用器具が発射されたときに前記組織及び前記近位面を切断するように構成されている、ワッシャ、を含むアンビルと、
を備え、
前記近位面は、発射中に前記組織を安定させ、前記組織が前記ワッシャ及び前記アンビル表面を横切って並進するのを阻止するように構成された組織把持特徴部を含む、
外科用器具。
【請求項2】
前記組織把持特徴部は、前記ワッシャの前記近位面から近位方向に延在する少なくとも1つの突出部を備える、請求項1に記載の外科用器具。
【請求項3】
前記組織把持特徴部が、粗い表面、環状隆起部、又は複数の節のうちの少なくとも1つを含む、請求項1又は2に記載の外科用器具。
【請求項4】
前記ワッシャは、前記近位面を提供する近位壁を含み、前記近位壁の中央部分は、アーチ状部分、ピーク状部分、テーパ状部分、又は溝状部分のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の外科用器具。
【請求項5】
前記近位壁の前記中央部分は、前記近位壁の隣接する外側部分よりも小さい厚さを有する、請求項4に記載の外科用器具。
【請求項6】
前記ワッシャは、前記近位面の遠位側に環状突出部を含む、請求項1に記載の外科用器具。
【請求項7】
前記ワッシャは、前記近位面を提供する近位壁を含み、前記近位壁は、前記近位壁の近位側又は遠位側にコーティングを有する、請求項1に記載の外科用器具。
【請求項8】
前記組織把持特徴部は、前記近位面の第1の部分に沿って配置された第1の組織把持特徴部と、前記近位面の第2の部分に沿って配置された第2の組織把持特徴部とを含み、前記第1の組織把持特徴部及び前記第2の組織把持特徴部は、前記外科用器具の長手方向軸線を横断する方向に互いに離間している、請求項1に記載の外科用器具。
【請求項9】
前記ワッシャは、前記近位面に沿って配置された複数のワッシャ突出部を含み、前記デッキ部材は、前記デッキ表面に沿って配置された複数のデッキ突出部を含み、前記複数のワッシャ突出部及び前記複数のデッキ突出部が、前記外科用器具の発射中に協働して組織を把持し安定させるように構成されている、請求項1に記載の外科用器具。
【請求項10】
前記ワッシャは、環状であり、前記近位面を提供する近位壁を含み、前記ワッシャは、互いに離間し、前記近位壁によって相互接続される半径方向内壁及び半径方向外壁を更に含み、前記近位壁の少なくとも一部は、前記半径方向内壁及び前記半径方向外壁のそれぞれの厚さよりも小さい厚さを有し、前記ナイフ部材による前記近位壁の切断を促進する、請求項1に記載の外科用器具。
【請求項11】
前記ステープル留めアセンブリは、前記ナイフ部材に隣接して配置された補助的な組織圧縮部材を更に含み、前記補助的な組織圧縮部材は、前記外科用器具が発射されるときに、前記ワッシャの前記近位面に対して組織を遠位方向に圧縮し、それによって、発射中に前記組織を安定させ、前記ワッシャ及び前記アンビル表面を横切って前記組織が並進することを阻止するように構成されている、請求項1に記載の外科用器具。
【請求項12】
前記ナイフ部材及び前記補助的な組織圧縮部材の各々は円筒形であり、前記補助的な組織圧縮部材は、前記ナイフ部材の内径よりも小さい最大外径を有する、請求項11に記載の外科用器具。
【請求項13】
前記補助的な組織圧縮部材の少なくとも遠位端部は、前記ナイフ部材が遠位方向に前進して組織を切断するときに、前記ナイフ部材に対して近位方向に並進可能である、請求項11又は12に記載の外科用器具。
【請求項14】
前記補助的な組織圧縮部材が、並進可能部材又は弾性的に圧縮可能な部材のうちの少なくとも1つを含む、請求項11に記載の外科用器具。
【請求項15】
前記デッキ部材は、環状であり、前記ステープル開口部は、前記デッキ表面上に複数の環状アレイ状に配置され、前記アンビル表面は、環状であり、前記ステーブル成形ポケットは、前記アンビル表面上に複数の環状アレイ状に配置され、前記ワッシャは、環状であり、前記アンビル表面の半径方向内側に配置されている、請求項1に記載の外科用器具。
【請求項16】
外科用器具であって、
(a)ステープル留めアセンブリであって、
(i)中心軸に沿って遠位方向に延在するハウジング、
(ii)複数のステープルを受容するように構成されたステープル開口部の環状アレイを有するデッキ表面を含むデッキ部材、及び
(iii)前記ハウジング内に配設されたナイフ部材であって、前記ナイフ部材の遠位端部が切断縁部を含む、ナイフ部材、
を含むステープル留めアセンブリと、
(b)前記ステープル留めアセンブリと選択的に連結して、組織を圧縮し、ステープル留めし、切断するように構成されたアンビルであって、
(i)前記ステープルを成形するように構成された複数のステープル成形ポケットを含むアンビル表面、
(ii)前記アンビル表面の半径方向内側に配置された環状凹部、及び
(iii)前記環状凹部内に配置され、近位面を有する破壊可能部材、
を含むアンビルと、
を備え、
前記ナイフ部材の前記切断縁部は、前記外科用器具が発射されると、前記組織及び前記近位面を切断するように構成され、
前記近位面は、前記デッキ表面に向かって延在し、発射中に前記アンビルの半径方向に前記組織を安定させるように構成された組織把持特徴部を含む、外科用器具。
【請求項17】
外科用器具であって、
(a)ステープル留めアセンブリであって、
(i)複数のステープルを受容するように構成された複数のステープル開口部を含むデッキ表面、
(ii)切断縁部を画定する遠位端部を有するナイフ部材、及び
(iii)前記ナイフ部材に隣接して、かつ前記デッキ表面から離れて配置された補助的な組織圧縮部材、
を備えるステープル留めアセンブリと、
(b)前記ステープル留めアセンブリと動作可能に連結されたアンビルであって、
(i)複数のステープル成形ポケットを含むアンビル表面であって、前記デッキ表面と位置揃えされて協働して、組織を圧縮しステープル留めするように構成されているアンビル表面、及び
(ii)前記アンビル表面に隣接して配置されたワッシャ、
を備えるアンビルと、
を備え、
前記ナイフ部材の前記切断縁部は、前記外科用器具が発射されたときに前記組織及び前記ワッシャの近位面を切断するように構成され、
前記補助的な組織圧縮部材の遠位端部は、前記アンビル表面又は前記ワッシャの前記近位面のうちの少なくとも1つに対して組織を遠位方向に圧縮し、それによって、発射中に前記組織を安定させ、前記ワッシャ及び前記アンビル表面を横切って前記組織が並進することを阻止するように構成されている、外科用器具。
【請求項18】
前記補助的な組織圧縮部材の少なくとも前記遠位端部は、前記切断縁部が前記組織及び前記ワッシャの前記近位面を通して遠位方向に駆動されるとき、前記ナイフ部材に対して近位方向に移動可能である、請求項17に記載の外科用器具。
【請求項19】
前記補助的な組織圧縮部材は、
(A)前記外科用器具が組織上で閉じられたときに近位方向に圧縮されて、遠位方向の圧縮力を前記ナイフ部材に隣接する位置で組織に送達するように構成された弾性スプラインを有する弾性的に圧縮可能な部材、又は
(B)発射中に前記ナイフ部材と共に遠位方向に並進し、前記ナイフ部材に隣接する位置で組織に遠位方向の圧縮力を送達するように構成された並進可能部材、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項17又は18に記載の外科用器具。
【請求項20】
前記ナイフ部材及び前記補助的な組織圧縮部材の各々は、円筒形であり、前記補助的な組織圧縮部材は、前記ナイフ部材の半径方向内側に配置されている、請求項17に記載の外科用器具。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
円形外科用ステープラは、患者の消化管の2つの器官部分の間に吻合を形成するために使用され得る。円形外科用ステープラの例が、1994年3月8日に発行された米国特許第5,292,053号、発明の名称「Surgical Anastomosis Stapling Instrument」、1994年8月2日に発行された米国特許第5,333,773号、発明の名称「Surgical Anastomosis Stapling Instrument」、1994年9月27日に発行された米国特許第5,350,104号、発明の名称「Surgical Anastomosis Stapling Instrument」、1996年7月9日に発行された米国特許第5,533,661号、発明の名称「Surgical Anastomosis Stapling Instrument」、及び2014年12月16日に発行された米国特許第8,910,847号、発明の名称「Low Cost Anvil Assembly for a Circular Stapler」に記載されている。上に引用した米国特許の各々の開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
一部の円形ステープラは、電動作動機構を含み得る。電動作動機構を備えた円形ステープラの例は、2015年3月26日に公開され、現在は放棄されている米国特許出願公開第2015/0083772号、発明の名称「Surgical Stapler with Rotary Cam Drive and Return」、2018年4月10日に発行された米国特許第9,936,949号、発明の名称「Surgical Stapling Instrument with Drive Assembly Having Toggle Features」、2018年3月6日に発行された米国特許第9,907,552号、発明の名称「Control Features for Motorized Surgical Instrument」、2017年7月25日に発行された米国特許第9,713,469号、発明の名称「Surgical Stapler with Rotary Cam Drive」、及び2018年5月17日に公開された米国特許出願公開第2018/0132849号、発明の名称「Staple Forming Pocket Configurations for Circular Surgical Stapler Anvil」、及び2020年7月14日に発行された米国特許第10,709,452号、発明の名称「Methods and Systems for Performing Circular Stapling」に記載されている。上に引用した米国特許出願公開、及び米国特許の各々の開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
様々な種類の外科用ステープル留め器具及び関連構成要素が、製造及び使用されてきたが、本発明者ら以前の誰も、添付の特許請求の範囲に記載されている発明を製造又は使用したことがないと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0004】
本明細書に組み込まれ、かつその一部をなす添付の図面は、本発明の実施形態を例解するものであり、上記の本発明の全般的な説明、及び以下の実施形態の詳細な説明と共に、本発明の原理を解説する役割を果たすものである。
【
図1】ハンドルアセンブリと、シャフトアセンブリと、ステープル留めヘッドアセンブリ及びアンビルを有するエンドエフェクタとを含む例示的な円形外科用ステープラの斜視図である。
【
図2】電池パックがハンドルアセンブリから取り外され、アンビルがステープル留めヘッドアセンブリから分離された状態での、
図1の円形ステープラの斜視図である。
【
図3】
図1の円形ステープラのアンビルの斜視図である。
【
図4】
図1の円形ステープラのステープル留めヘッドアセンブリの斜視図である。
【
図5】
図4のステープル留めヘッドアセンブリの分解斜視図である。
【
図6】シャフトアセンブリの各部分が互いに分離して示されている、
図1の円形ステープラの分解斜視図である。
【
図7A】消化管の第1の区域内に配置された
図3のアンビルと、消化管の別の第2の区域内に配置された
図4のステープル留めヘッドアセンブリとを、アンビルがステープル留めヘッドアセンブリから分離された状態で描いた断面側面図である。
【
図7B】消化管の第1の区域内に配置された
図3のアンビルと、消化管の別の第2の区域内に配置された
図4のステープル留めヘッドアセンブリとを、アンビルがステープル留めヘッドアセンブリに固定された状態で描いた断面側面図である。
【
図7C】消化管の第1の区域内に配置された
図3のアンビルと、消化管の別の第2の区域内に配置された
図4のステープル留めヘッドアセンブリとを、アンビルがステープル留めヘッドアセンブリに向かって後退し、それにより、アンビルとステープル留めヘッドアセンブリとの間に組織をクランプした状態で描いた断面側面図である。
【
図7D】消化管の第1の区域内に配置された
図3のアンビルと、消化管の第2の区域内に配置された
図4のステープル留めヘッドアセンブリとを、ステープル留めヘッドアセンブリがクランプされた組織を切断してステープル留めし、それによって消化管の第1の区域と第2の区域とを接合するように作動された状態で描いた断面側面図である。
【
図7E】
図1の円形ステープラで形成された端々吻合で接合された、
図7Aの消化管の第1の区域と第2の区域とを示す断面側面図である。
【
図8】
図1の円形ステープラと共に使用するための、別の例示的なアンビルの一部の拡大斜視図である。
【
図9】
図8のアンビルの例示的ワッシャであって、粗い表面の形態の組織把持特徴部を有するワッシャを示す斜視図である。
【
図10】
図9のワッシャの遠位側を示す平面図である。
【
図11】
図9のワッシャの近位側を示す平面図である。
【
図12】
図9のワッシャの近位面を示す拡大斜視図である。
【
図13A】ナイフ部材が近位側発射前位置にあり、対応するエンドエフェクタの他の詳細が省略されている、
図11の線13A-13Aに沿った、
図9のワッシャの部分断面側面図である。
【
図13B】ナイフ部材がワッシャ及び組織を横切した後、遠位側発射位置にある、
図11の線13A-13Aに沿って切り取られた、
図9のワッシャの別の部分断面側面図である。
【
図14】
図8のアンビルと共に使用するための別の例示的ワッシャであって、複数の隆起した節の形態の組織把持特徴部を有するワッシャを示す斜視図である。
【
図15A】ナイフ部材が近位側発射前位置にあり、対応するエンドエフェクタの他の特徴が省略されている、
図14の線15A-15Aに沿って切り取られた、
図13のワッシャの部分断面側面図である。
【
図15B】ナイフ部材がワッシャ及び組織を横切した後、遠位側発射位置にある、
図14の線15A-15Aに沿って切り取られた、
図13のワッシャの別の部分断面側面図である。
【
図16】
図8のアンビルと共に使用するための更に別の例示的ワッシャであって、複数の環状リッジの形態の組織把持特徴部を有するワッシャを示す斜視図である。
【
図17A】ナイフ部材が近位側発射前位置にあり、対応するエンドエフェクタの他の特徴が省略されている、
図16の線17A-17Aに沿って切り取られた、
図16のワッシャの部分断面側面図である。
【
図17B】ナイフ部材がワッシャ及び組織を横切した後、遠位側発射位置にある、
図16の線17A-17Aに沿って切り取られた、
図16のワッシャの別の部分断面側面図である。
【
図18】
図8のアンビルと共に使用するための更に別の例示的ワッシャであって、その断面形状が、アーチ状中央部分を有するワッシャを示す部分断面側面図である。
【
図19】
図8のアンビルと共に使用するための更に別の例示的ワッシャであって、その断面形状が、ピーク状中央部分を有するワッシャを示す部分断面側面図である。
【
図20】
図8のアンビルと共に使用するための更に別の例示的ワッシャであって、その断面形状が、テーパ状中央部分を有するワッシャを示す部分断面側面図である。
【
図21】
図8のアンビルと共に使用するための更に別の例示的ワッシャであって、その断面形状が、溝を有する中央部分を有するワッシャを示す部分断面側面図である。
【
図22】
図8のアンビルと共に使用するための更に別の例示的ワッシャであって、多層構造を有するワッシャを示す部分断面側面図である。
【
図23】
図8のアンビルと共に使用するための更に別の例示的ワッシャであって、その近位側がコーティングを含むワッシャを示す部分断面側面図である。
【
図24】
図8のアンビルと共に使用するための更に別の例示的ワッシャであって、その遠位側がコーティングを含むワッシャを示す部分断面側面図である。
【
図25】円形外科用ステープラのエンドエフェクタと共に使用するための、例示的な圧縮可能な補助的な組織圧縮部材を示す斜視図である。
【
図26A】
図3のアンビルと、
図25の補助的な組織圧縮部材を有する
図4のステープル留めヘッドアセンブリとを含む例示的なエンドエフェクタであって、エンドエフェクタは、そのアンビル表面がそのデッキ表面から離間されるように開いた状態にあり、補助的な組織圧縮部材は、軸方向に圧縮されていない状態にあるエンドエフェクタを示す断面図である。
【
図26B】
図26Aのエンドエフェクタであって、アンビルが、エンドエフェクタの閉鎖状態において組織をクランプするためにステープル留めヘッドアセンブリに向かって近位方向に後退しており、補助的な組織圧縮部材が、組織及びアンビルワッシャに遠位方向の圧縮力を及ぼす第1の軸方向圧縮状態にあるエンドエフェクタの別の断面図を示す。
【
図26C】
図26Aのエンドエフェクタであって、ナイフ部材が遠位方向に前進して組織を切断し、補助的な組織圧縮部材が組織及びアンビルワッシャに遠位方向の圧縮力を及ぼす第2の軸方向圧縮状態にあるエンドエフェクタの別の断面図である。
【
図27】円形外科用ステープラのエンドエフェクタと共に使用するための、並進可能な例示的補助的な組織圧縮部材の斜視図を示す。
【
図28A】
図3のアンビルと、
図27の補助的な組織圧縮部材を有する
図4のステープル留めヘッドアセンブリとを含む例示的なエンドエフェクタであって、エンドエフェクタは、そのアンビル表面がそのデッキ表面から離間されるように開いた状態にあり、補助的な組織圧縮部材は、ナイフ部材の切断縁部に対して遠位側の第1の位置に配置されている、エンドエフェクタの断面図である。
【
図28B】
図28Aのエンドエフェクタであって、アンビルが、エンドエフェクタの閉鎖状態において組織をクランプするためにステープル留めヘッドアセンブリに向かって近位方向に後退させられ、上記の並進可能な部材は、ナイフ部材の切断縁部に対して遠位側の第1の位置に配置されている、エンドエフェクタの別の断面図である。
【
図28C】
図28Aのエンドエフェクタであって、ナイフ部材が遠位方向に前進して組織を切断し、補助的な組織圧縮部材が近位方向に並進して、上記の並進可能な部材は、ナイフ部材の切断縁部に対して近位側の第2の位置に配置されている、エンドエフェクタの別の断面図である。
【
図29】
図4のステープル留めヘッドアセンブリと共に使用するように構成された別の例示的なデッキ部材であって、デッキ表面上に隆起形状部を含むデッキ部材の斜視図を示す。
【
図30】更に別の例示的なエンドエフェクタであって、エンドエフェクタが閉じた状態にあり、
図3のアンビルと、
図29のデッキ部材を有する別のステープル留めヘッドアセンブリとを含むエンドエフェクタの斜視側面図である。
【
図31】外科用ステープラエンドエフェクタと共に使用するための隆起形状部を有する更に別の例示的なワッシャの斜視図を示す。
【
図32】円形ステープラエンドエフェクタと共に使用するように構成された別の例示的ワッシャ及び別の例示的デッキ部材であって、ワッシャ及びデッキ部材のそれぞれが、組織把持特徴部を有するワッシャ及びデッキ部材を示す複合斜視図である。
【
図33A】
図32のワッシャを有するアンビルと、
図32のデッキ部材を有するステープル留めヘッドアセンブリとを含む別の例示的なエンドエフェクタであって、アンビルが、エンドエフェクタの開状態においてステープル留めヘッドアセンブリから離間されている、エンドエフェクタの断面図である。
【
図33B】ワッシャの把持特徴部がデッキ表面の把持特徴部内に入れ子になるように閉じた状態にある、
図33Aのエンドエフェクタの別の断面図である。
【0005】
図面は、いかなる方式でも限定することを意図しておらず、本技術の様々な実施形態は、図面に必ずしも示されていないものを含め、様々なその他の方式で実施され得ることが想到される。本明細書に組み込まれ、本明細書の一部をなす添付の図面は、本技術のいくつかの態様を示しており、その説明と共に本技術の原理を説明するのに役立つものであるが、本技術は、示される厳密な配置に限定されないことが理解される。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本技術の特定の実施例の以下の説明は、その範囲を限定する目的で使用されるべきではない。本技術のその他の実施例、特徴、態様、実施形態、及び利点が、実例として、本技術を実施する上で想到される最良の態様の1つである以下の説明により、当業者に明らかになるであろう。理解されるように、本明細書に記載される技術は、いずれもその技術から逸脱することなく、その他の異なる、かつ明らかな態様が可能である。したがって、図面及び説明は、限定的なものではなく、本質的に例示的なものとして、みなされるべきである。
【0007】
本開示を明確にするために、本明細書において、「近位」及び「遠位」という用語は、遠位外科用エンドエフェクタを有する外科用器具を握持する外科医又は他の操作者に対して定義される。「近位」という用語は、外科医のより近くに配置された要素の位置を指し、「遠位」という用語は、外科用器具の外科用エンドエフェクタのより近くにかつ外科医からより遠くに配置された要素の位置を指す。また、図面を参照して「頂」、「底」、「上部」、「下部」、「垂直」、「水平」などの空間的用語が本明細書で使用される限り、そのような用語は例示的な記述目的にのみ使用されて、限定することも絶対であることも意図していないことが理解されるであろう。その点において、本明細書に開示されるものなどの外科用器具を、本明細書で図示及び記載するものに限定されない様々な向き及び位置で使用してもよいことが理解されよう。
【0008】
更に、任意の数値、又は数値の範囲に関連して本明細書で使用される「約」、「ほぼ」などの用語は、参照される正確な値、並びに参照される特徴、又は特徴の組み合わせが、本明細書に記載されている意図された目的のために機能することができる好適な許容誤差を包含することが意図されている。
【0009】
I.例示的な円形外科用ステープル留め器具の概要
図1~
図2は、患者の消化管の一部位のような解剖学的管腔の2つの断面どうしの間で、端々吻合、側々吻合、又は端側吻合を提供するために用いられ得る、例示的な円形外科用ステープル留め器具(10)を示す。この例の器具(10)は、ハンドルアセンブリ(100)の形態の本体アセンブリと、ハンドルアセンブリ(100)から遠位に延びるシャフトアセンブリ(200)と、シャフトアセンブリ(200)の遠位端部にあるステープル留めヘッドアセンブリ(300)と、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)に解放可能に連結し、かつそれと協働して組織をクランプ、ステープル留め、及び切断するように構成されたアンビル(400)と、を含む。器具(10)は、以下でより詳細に説明するように、ハンドルアセンブリ(100)内に収容されたモータ(160)に電力供給するように動作可能な取り外し式バッテリパック(120)を更に含む。
【0010】
図1~
図2に示すように、また、後でより詳しく説明するように、アンビル(400)は、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)に隣接して、シャフトアセンブリ(200)と取り外し可能に連結するように構成される。また、後でより詳しく説明するように、アンビル(400)及びステープル留めヘッドアセンブリ(300)は、協働して、組織をクランプすること、組織を切断すること、及び組織をステープル留めすることを含む3とおりに組織を操作するように構成されている。ハンドルアセンブリ(100)の近位端部に設けられた回転可能なノブ(130)は、回転可能であり、アンビル(400)とステープル留めヘッドアセンブリ(300)との間で、組織を正確にクランプするようになっている。ハンドルアセンブリ(100)の安全トリガ(140)が、ハンドルアセンブリ(100)の発射トリガ(150)から遠ざかるように枢動すると、発射トリガ(150)は、クランプされた組織が切断されステープル留めされるように作動され得る。
【0011】
A.例示的なアンビル
図3で最も良く分かるように、本実施例のアンビル(400)は、ヘッド(410)と、シャンク(420)の形態の連結機能部とを備えている。ヘッド(410)は、複数のステープル成形ポケット(414)を画定する近位側ステープル留め表面(412)を含む。ステープル成形ポケット(414)は、本実施例では2列の同心環状アレイに配置される。ステープル成形ポケット(414)は、ステープルがステープル成形ポケット(414)内に打ち込まれると、ステープルを変形させるように構成されている。近位側ステープル留め表面(412)は内側縁部(416)で終端し、それによってシャンク(420)の周りを囲む環状凹部(418)の外側の境界線が画定される。破断可能なワッシャ(417)は、近位側ステープル留め表面(412)の半径方向内側に隣接して環状凹部(418)内に配置され、以下でより詳細に説明されるように、カッティングボードとしての役割を果たすことに加えて、遠位方向への発射ストロークが完了したことの触覚的及び聴覚的インジケーションをユーザに提供するように構成されている。
【0012】
シャンク(420)は穴(422)を画定し、一対の枢動ラッチ部材(430)を含む。ラッチ部材(430)は、遠位端部(434)が、シャンク(420)の側壁を貫通して成形される横方向開口部(424)の近位端部に配置されるように孔(422)内に配置されている。このようにしてラッチ部材(430)は、保持クリップとしての役割を果たす。これによって、アンビル(400)は、後でより詳しく説明されるように、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)のトロカール(330)の形態で、作動可能な閉鎖部材に取り外し可能に固定されることが可能となる。したがって、アンビル(400)のシャンク(420)と、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)のトロカール(330)とは、連結部材として互いに協働する。
【0013】
B.例示的なステープル留めヘッドアセンブリ
図4及び
図5に最もよく示されるように、本実施例のステープル留めヘッドアセンブリ(300)は、シャフトアセンブリ(200)の遠位端部に連結されるものであり、管状の本体部材(310)と、その中に摺動可能に収容されたステープルドライバ部材(350)と、を備える。本体部材(310)は、内部に同軸的に配置され、遠位方向に延在する円筒状内側芯部材(312)を含む。本体部材(310)は、シャフトアセンブリ(200)の外側シース(210)に不動に固定されており、したがって、本体部材(310)と外側シース(210)は、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)のためのメカニカルグラウンドとして一緒に機能する。
【0014】
トロカール(330)は、本体部材(310)の内側芯部材(312)内に同軸的に配置されている。後でより詳しく説明するように、トロカール(330)は、ノブ(130)がハンドルアセンブリ(100)のケーシング(110)に対して回転するのに応答して本体部材(310)に対して遠位に及び近位に並進するよう動作可能である。トロカール(330)は、シャフト(332)と、ヘッド(334)とを備える。ヘッド(334)は、尖形状の先端部(336)と、半径方向内向きに延在する近位面(338)とを含む。ヘッド(334)、及びシャフト(332)の遠位部分は、アンビル(400)の穴(422)の中に挿入されるように構成されている。近位面(338)とラッチシェルフ(436)とは、アンビル(400)のシャンク(420)がトロカール(330)上に完全に着座した場合に、ラッチシェルフ(436)が近位面(338)に係合するような、相補的な位置及び構成を有する。したがって、アンビル(400)は、ラッチ部材(430)によってもたらされるスナップ嵌めを介してトロカール(330)に固定される。
【0015】
ステープルドライバ部材(350)は、後でより詳しく説明するように、モータ(160)の起動に応答して、本体部材(310)内で長手方向に作動するよう動作可能である。
図5に最も良く示されているように、本実施例のステープルドライバ部材(350)は、遠位方向に向けられた2列の同心環状アレイであるステープルドライバ(352)を含む。ステープルドライバ(352)は、アンビル(400)のステープル成形ポケット(414)の配置に対応するように配置されている。したがって、各ステープルドライバ(352)は、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)が作動(又は「発射」)されると、対応するステープルを遠位方向に、対応するステープル成形ポケット(414)の中に駆動するように構成されている。ステープルドライバ部材(350)はまた、本体部材(310)の芯部材(312)を同軸的かつ摺動可能に受け入れるように構成されている穴(354)を画定する。スタッド(356)の環状アレイが、穴(354)を取り囲む遠位方向に向けられた表面から遠位方向に突き出している。
【0016】
円筒状ナイフ部材(340)は、孔(354)と連通するステープルドライバ部材(350)の、遠位方向に開口する中央凹部内に同軸的に配置される。ナイフ部材(340)は、遠位方向に向けられた、鋭利な円形の切断縁部(342)を含む。ナイフ部材(340)は、ステープルドライバ(352)の内側環状アレイの半径方向最内側表面により画定される直径よりもちょうど小さい外径を、ナイフ部材(340)が画定するようにサイズ決めされている。ナイフ部材(340)はまた、本体部材(310)の芯部材(312)を同軸的に受け入れるように構成されている中央開口部を画定する。ナイフ部材(340)に形成された開口部(346)の環状アレイは、ステープルドライバ部材(350)のスタッド(356)の環状アレイと噛み合うように構成され、ナイフ部材(340)が、スタッド(356)と開口部(346)とを介してステープルドライバ部材(350)に不動に固定される。
【0017】
環状のデッキ部材(320)が、本体部材(310)の遠位端部に不動に固定されている。デッキ部材(320)は、ステープル開口部(324)の2列の同心環状アレイを有する、デッキ表面(322)の形態の遠位方向に向けられたステープル留め表面を含む。ステープル開口部(324)は、上述のステープルドライバ部材(350)のステープルドライバ(352)及びアンビル(400)のステープル成形ポケット(414)の配置に位置揃えするように配置されている。各ステープル開口部(324)は、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)が作動されたときに、対応するステープルドライバ(352)が対応するステープルを摺動可能に受容し、デッキ部材(320)を遠位方向に貫通させて、対応するステープル成形ポケット(414)の中に駆動する経路を提供するように構成されている。
図4に最もよく示されるように、デッキ部材(320)は、ナイフ部材(340)が画定する外径よりも、ほんのわずかに大きい内径を画定する中央開口部を有する。したがって、デッキ部材(320)は、ナイフ部材(340)が、ステープルドライバ部材(350)の長手方向の並進と同時に、中央開口部を通って長手方向に並進することを可能にするように構成されている。具体的には、ナイフ部材(340)は、近位側後退位置と遠位側伸長位置との間でデッキ部材(320)に対して作動するように構成されており、切断縁部(342)は、近位側後退位置ではデッキ表面(322)の近位側にあり、遠位側伸長位置ではデッキ表面(322)の遠位側にある。
【0018】
C.代表的なシャフトアセンブリ
図6は、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)の構成要素を、ハンドルアセンブリ(100)の構成要素に動作可能に連結するシャフトアセンブリ(200)の、様々な構成要素を示す。特に、かつ上に記したように、シャフトアセンブリ(200)は、ハンドルアセンブリ(100)と本体部材(310)との間に延在する外部シース(210)を含み、かつ湾曲した経路に沿って延在する中間部分を含む。
【0019】
シャフトアセンブリ(200)は、回転可能なノブ(130)に動作可能に連結された近位端部と、可撓性トロカール作動バンドアセンブリ(230)に連結された遠位端部とを有するトロカール作動ロッド(220)を更に含み、それらのアセンブリは、外部シース(210)内に摺動可能に収容される。トロカール作動バンドアセンブリ(230)の遠位端部は、トロカールシャフト(332)の近位端部に不動に固定されているので、回転可能なノブ(130)の回転に応じて起こる、外部シース(210)に対するトロカール作動バンドアセンブリ(230)及びトロカール作動ロッド(220)の移動に応じて、トロカール(330)は外部シース(210)に対して長手方向に移動する。クリップ(222)は、トロカール作動ロッド(220)に不動に固定されており、かつ、クリップ(222)は、トロカール作動ロッド(220)がハンドルアセンブリ(100)内で長手方向に並進できるようにしている一方で、ハンドルアセンブリ(100)内の補完的特徴部と協働して、トロカール作動ロッド(220)がハンドルアセンブリ(100)内で回転するのを防止するように構成されている。トロカール作動ロッド(220)は、以下でより詳細に説明するように、トロカール作動ロッド(220)の長手方向前進速度を制御するように構成されている、粗螺旋螺合部のセクション(224)と、並目螺旋螺合部のセクション(224)の近位側にある細目螺合部のセクション(226)とを更に含む。
【0020】
シャフトアセンブリ(200)は、外側シース(210)内、かつトロカール作動ロッド(220)とトロカール作動バンドアセンブリ(230)との組み合わせの周りに、摺動可能に収容される、ステープル留めヘッドアセンブリドライバ(240)を更に含む。ステープル留めヘッドアセンブリドライバ(240)は、ステープルドライバ部材(350)の近位端部に不動に固定された遠位端部と、ピン(242)を介して駆動ブラケット(250)に固定された近位端部と、それらの間に配設された可撓性セクションとを含む。したがって、ステープル留めヘッドアセンブリドライバ(240)と駆動ブラケット(250)とが外部シース(210)に対して並進するのに応答して、ステープルドライバ部材(350)が長手方向に、外部シース(210)に対して並進するということを理解されたい。
【0021】
D.例示的なハンドルアセンブリ及びユーザ入力機構
図1に示されるように、ハンドルアセンブリ(100)はケーシング(110)を含み、ケーシングは、以下で更に詳細に示されるように、斜めに向けられたピストルグリップ(112)を画定する下部分と、ユーザインタフェース機構部(114)を支持し、バッテリパック(120)を解放可能に受容する上部分と、を有する。ハンドルアセンブリ(100)は、アンビル(400)とステープル留めヘッドアセンブリ(300)とを作動させるように動作可能な、いくつかの機構を更に含む。具体的には、ハンドルアセンブリ(100)は、回転可能なノブ(130)と、安全トリガ(140)と、発射トリガ(150)と、モータ(160)と、モータ起動モジュール(180)とを含む。ノブ(130)はナット(不図示)を介してトロカール作動ロッド(220)に連結されており、並目螺旋状螺合部(224)はナットの内側のねじ係合機構部と選択的に係合し、細目螺旋状螺合部(226)はノブ(130)の内側のねじ係合機構部と選択的に係合する。これらの相補的構造は、トロカール作動ロッド(220)が最初に比較的遅い速度で近位方向に並進し、その後、ノブ(130)の回転に応じて比較的速い速度で近位方向に並進するように構成されている。
【0022】
アンビル(400)がトロカール(330)に連結されているときに、ノブ(130)が回転すると、それに対応して、アンビル(400)がステープル留めヘッドアセンブリ(300)に対して並進することを理解されたい。ノブ(130)を第1の角度方向(例えば、時計回り)に回転させて、アンビル(400)をステープル留めヘッドアセンブリ(300)に向けて近位方向に後退させたり、また、第2の角度方向(例えば、反時計回り)に回転させて、アンビル(400)をステープル留めヘッドアセンブリ(300)から離れて遠位方向に延長させたりすることができるということも理解されたい。したがって、ノブ(130)は、例えば、以下に記載される
図7Cに示されるように、アンビル(400)とステープル留めヘッドアセンブリ(300)との、互いに対向するステープル留め表面(412、322)どうしの間の間隙距離(d)を、好適な間隙距離(d)が達成されるまで調整するために用いられ得る。
【0023】
発射トリガ(150)は、モータ(160)を起動させ、それによって、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)を作動させて、アンビル(400)とステープル留めヘッドアセンブリ(300)との間にクランプされた組織をステープル留め及び切断するように動作可能である。安全トリガ(140)は、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)に対するアンビル(400)の長手方向位置に基づいて、発射トリガ(150)の作動を選択的に阻止するように動作可能である。ハンドルアセンブリ(100)はまた、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)に対するアンビル(400)の位置に基づいて、トリガ(140、150)の両方を選択的にロックアウトするように動作可能な構成要素を含む。例えば、安全トリガ(140)は、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)に対するアンビル(400)の位置が事前に定義された範囲に含まれるまで、係合位置から係合解除位置へと回転することを阻止され得る。したがって、アンビル位置が事前に定義された範囲内に含まれるまで、発射トリガ(150)の作動が安全トリガ(140)によって阻止され、それによってステープル留めヘッドアセンブリ(300)の発射が抑止される。
【0024】
発射トリガ(150)が、近位方向に発射後位置まで枢動したときに、発射トリガ(150)は、モータ起動モジュール(180)(
図1)のスイッチを作動させるように動作可能である。モータ起動モジュール(180)は、バッテリパック(120)及びモータ(160)と連通しているので、モータ起動モジュール(180)は、発射トリガ(150)がモータ起動モジュール(180)のスイッチを作動させるのに応じて、バッテリパック(120)からの電力で、モータ(160)を起動させるように構成されている。このように、モータ(160)は、発射トリガ(150)が枢動したときに起動される。後でより詳しく説明するように、このモータ(160)の起動により、駆動ブラケット(250)を介してステープル留めヘッドアセンブリ(300)が作動される。
【0025】
E.円形ステープル留め器具を用いた例示的な吻合手順
図7A~
図7Eは、2つの管状解剖学的構造(20、40)どうしの間の吻合(70)を形成するために用いられている器具(10)を図示している。あくまで一例として、管状解剖学的構造(20、40)は、患者の食道の区域、結腸、若しくは患者の消化管の他の部分、又は他の任意の管状の解剖学的構造を含み得る。
【0026】
図7Aに示すように、アンビル(400)は、一方の管状解剖学的構造(20)内に配置され、かつステープル留めヘッドアセンブリ(300)は、もう一方の管状解剖学的構造(40)内に配置される。アンビル(400)は、シャンク(420)が管状解剖学的構造(20)の開放切断端(22)から突き出すように管状解剖学的構造(20)内に配置される。本実施例では、巾着縫合糸(30)が、シャンク(420)の中央領域の周りに提供され、管状解剖学的構造(20)内でのアンビル(400)の位置を大まかに確保する。ステープル留めヘッドアセンブリ(300)は、トロカール(330)が管状解剖学的構造(20)の開放切断端(42)から突き出すように、管状解剖学的構造(40)内に配置される。管状解剖学的構造(40)内でのステープル留めヘッドアセンブリ(300)の位置を概ね固定するために、巾着縫合糸(50)が、シャフト(332)の中央領域周りに提供される。ステープル留めヘッドアセンブリ(300)は、次いで、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)が管状解剖学的構造(40)の遠位端部に完全に着座することを確実にするために遠位方向に付勢される。
【0027】
次に、
図7Bに示すように、トロカール(330)を穴(422)に挿入することによって、アンビル(400)が、トロカール(330)に固定される。アンビル(400)のラッチ部材(430)が、トロカール(330)のヘッド(334)に係合し、それによって、アンビル(400)とトロカール(330)との間のしっかりとした嵌合を提供する。次いで、操作者は、ピストルグリップ(112)を介して、ケーシング(110)を静止状態に保ちつつ、ノブ(130)を回転させる。このノブ(130)の回転により、トロカール(330)とアンビル(400)とが近位方向に後退する。
図7Cに示すように、トロカール(330)及びアンビル(400)のこの近位方向への後退によって、管状解剖学的構造(20、40)の組織は、アンビル(400)とステープル留めヘッドアセンブリ(300)との表面(412、322)どうしの間で圧縮される。圧縮が生じると、操作者は、ノブ(130)を回転させながらノブ(130)を介して、組織が圧縮されていることを示す触覚的抵抗又はフィードバックを観察することができる。組織が圧縮されているとき、操作者は、ハンドルアセンブリ(100)のユーザインタフェース機構部(114)内のインジケータ針(不図示)の位置を視覚的に観察して、アンビル(400)及びステープル留めヘッドアセンブリ(300)の互いに対向する表面(412、322)間の間隙距離(d)が適切であるかどうかを判断し、調整が必要な場合にはノブ(130)を介して必要な調整を行うことができる。
【0028】
操作者がノブ(130)を介して間隙距離(d)を適切に設定した後、操作者は、安全トリガ(140)をピストルグリップ(112)に向かって枢動させて、発射トリガ(150)の作動を可能にする。次いで、操作者は、発射トリガ(150)をピストルグリップ(112)に向かって枢動させ、したがって発射トリガ(150)がモータ起動モジュール(180)のスイッチを作動させ、それによってモータを(160)を起動して回転させる。モータ(160)のこの回転は、
図7Dに示されるように、駆動ブラケット(250)を遠位方向に作動させ、それによってナイフ部材(340)及びステープルドライバ部材(350)を一緒に遠位方向に駆動することによって、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)の作動(又は「発射」)を引き起こす。
【0029】
ナイフ部材(340)が遠位方向に並進するにつれて、ナイフ部材(340)の切断縁部(342)が、アンビル(400)の環状凹部(418)内、かつナイフ部材(340)の内部に配置された余分な組織を切断する。その際、切断縁部(342)は、アンビル(400)の環状凹部(418)内に配置された破壊可能なワッシャ(417)の近位面をカッティングボードとして機能させて、そのワッシャ(417)の近位面に対して、組織を切断する。ナイフ部材(340)がその切断ストロークの遠位端部で完全に伸長した状態に達すると、切断縁部(342)はワッシャ(417)の近位面を切断し、それによってワッシャ(417)の環状内側部分を破断し、これは後に切断された余分な組織と共に除去することができる。ナイフ部材(340)によるワッシャ(417)のこの切断は、発射ストロークが完了したことを操作者に示す聴覚的及び触覚的インジケーションを生成する。
【0030】
ステープルドライバ部材(350)が、
図7Cに示されている位置から
図7Dに示されている位置へと遠位方向に並進するにつれて、ステープルドライバ部材(350)は、ステープル(90)を、管状解剖学的構造(20、40)の組織を貫通させて、アンビル(400)のステープル成形ポケット(414)の中に駆動する。ステープル成形ポケット(414)は、例えば、打ち込まれたステープル(90)を「B字」形状又は三次元形状へと変形させ、その結果、成形されたステープル(90)は組織の端部を互いに固定し、それによって、管状解剖学的構造(20)を管状解剖学的構造(40)と連結する。
【0031】
図7Dに示すように、操作者がステープル留めヘッドアセンブリ(300)を作動(又は「発射」)させた後、操作者はノブ(130)を回転させて、アンビル(400)をステープル留めヘッドアセンブリ(300)から離れる方へ遠位に駆動して、それによって間隙距離(d)を増加させ、表面(412、322)どうしの間の組織の解放を容易にする。次いで、操作者は、アンビル(400)がまだトロカール(330)に固定されている状態で、器具(10)を患者から取り外す。器具(10)が取り外されると、管状解剖学的構造(20、40)は、
図7Eに示すように、吻合(70)部にあるステープル(90)の2列の環状配列によって、一緒に固定された状態で残される。吻合(70)の内径は、ナイフ部材(340)によって残された切断された縁部(60)によって画定される。
【0032】
II.組織把持特徴部を有する破断可能ワッシャを有する例示的エンドエフェクタ
上述のように、ナイフ部材(340)が、
図7Cに示されている位置から
図7Dに示されている位置まで、完全に遠位方向の範囲一杯に動いた場合には、このワッシャ(417)は、ナイフ部材(340)によって破壊される。ワッシャ(417)が破断する前に、組織が、ナイフ部材(340)によって完全に離断されることが望ましい場合がある。しかしながら、いくつかの例では、切断縁部(342)が組織及びワッシャ(417)を通って遠位方向に前進する際に、ワッシャ(417)は組織を十分に安定させず、組織のいくつかの部分(「タグ」と呼ばれる)がアンビル表面(412)及びワッシャ(417)の近位面を横切って並進し、ワッシャ(417)の壊れた縁部の間で切断縁部(342)によって遠位方向に押されて引き伸ばされ、切断されないままとなり得る。
【0033】
したがって、いくつかの手技では、ワッシャ(417)の近位面上の組織をより効果的に安定させ、それによって、組織が破損したワッシャ(417)の間隙内に押し込まれる可能性を低減し、組織がナイフ部材(340)によって完全に切断される可能性を増加させることが望ましい場合がある。以下に記載される例示的な構成は、外科用ステープラ(10)による組織の完全な切断を促進し得る、及び/又は他の利点を提供し得る様々な特徴を組み込んでいる。
【0034】
A.粗い表面形状部を有する破断可能なワッシャを有する例示的なアンビル
図8は、外科用器具(10)と共に、アンビル(400)の代わりに使用するように構成された、例示的なアンビル(500)の一部分を示す。アンビル(500)は、別段の記載がある場合を除いて、上述のアンビル(400)と構造及び機能が類似していることが理解されよう。具体的には、以下でより詳細に説明するように、本実施例のアンビル(500)は、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)に連結されたときに、管状解剖学的構造(20、40)どうしの間に吻合を作成するために切断シーケンスを実行するときに、組織を安定させ、組織の完全な切断を促進するように構成されたワッシャ(517)を含む。
【0035】
上述したアンビル(400)と同様に、アンビル(500)は、ヘッド(510)と、ヘッド(510)から近位方向に延在するシャンク(520)とを含む。アンビル(500)は、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)のトロカール(330)と解放可能に連結するように構成されている。ヘッド(510)は、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)の本体部材(310)の外側輪郭と同様の円形形状を有する。円形形状のヘッド(510)は、上述したステープル成形ポケット(414)と同様の複数のステープル成形ポケット(514)を有する、近位側ステープル留め表面(512)を画定する。近位側ステープル留め表面(512)は、デッキ表面(322)と協働して、組織をクランプしてステープル留めするように構成されている。近位側ステープル留め表面(512)は、半径方向内側縁部及び外側縁部(516、515)を含む。近位側ステープル留め表面(512)の内側縁部(516)は、外側縁部(515)を補完し、その結果、近位側ステープル留め表面(512)は環状形状を有することとなる。内側縁部(516)は、近位側ステープル留め表面(512)の半径方向内側に隣接して配置された環状凹部(518)の形状を画定し、その中心において、シャンク(520)が近位方向に延在する。
【0036】
アンビル(500)は、近位側ステープル留め表面(512)の半径方向内側に隣接して、環状凹部(518)内に着座し、上述のワッシャ(417)と同様に環状凹部(518)の形状によって画定される円形形状を有するワッシャ(517)を更に含む。ワッシャ(517)は、ワッシャ(517)が、ステープラ(10)の発射ストロークの切断シーケンス中に、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)のナイフ部材(340)によって切断される際に、組織をより効果的に安定させるように構成されているという点で、ワッシャ(417)とは異なる。いくつかの変形形態では、図示されていないが、ワッシャ(517)は、楕円形などの細長い形状、又は環状凹部の形状によって画定される任意の他の非円形形状を有してもよい。
【0037】
図9で最もよく分かるように、ワッシャ(517)は、中心軸(CA)に沿って近位壁(530)からフランジ状遠位壁(540)まで遠位方向に延在する環状形状を含む。近位壁(530)は、中心軸(CA)に対して横断方向に配置される。近位壁(530)は、近位壁(530)の外側縁部(532)において円筒形外壁(550)の近位部分に不動に固定され、近位壁(530)の内側縁部(534)において円筒形内壁(560)の近位部分に不動に固定される。
【0038】
図10で最もよく分かるように、近位壁(530)、外壁(550)、内壁(560)、及び遠位壁(540)は、単一の構成要素から一体的に形成される。他の変形例では、近位壁(530)、外壁(550)、及び遠位壁(540)は、互いに締結された別個の構成要素であってもよい。
図10及び
図13A~
図13Bに示されるように、近位壁(530)は、近位壁(530)の円周中心線に沿って円周方向に延在し、それによって外壁(550)及び内壁(560)の近位端部を半径方向に相互接続する環状ウェブ(589)を画定する。ウェブ(589)(本明細書においては、近位壁(530)の「中央部分」とも呼ばれる)は、ワッシャ(517)の周囲部分よりも薄く、したがって、発射ストロークの遠位端部で、ナイフ部材(340)の切断縁部(342)によるその切断を促進する。ウェブ(589)は、ウェブ(589)を内壁及び外壁(550、560)に接合するテーパ状移行部(536)によって支持される。近位壁(530)、内壁(560)、及び外壁(550)は、ワッシャ凹部(570)を集合的に画定するそれぞれの内側表面を有する。ワッシャ凹部(570)は環状であり、ナイフ部材(340)と内壁及び外壁(560、550)との間に隙間を提供するために、ナイフ部材(340)よりも半径方向にわずかに大きいサイズである。遠位壁(540)は、内壁(560)の遠位部分に不動に固定され、中心軸(CA)に向かって半径方向内向きに延在し、それにより、内側フランジ様構造を画定する。遠位壁(540)は、環状凹部(518)内でアンビルヘッド(510)の、近位側に向いた面と嵌合して、環状凹部(518)内でワッシャ(517)を安定化させるように構成されている。
【0039】
図11で最もよく分かるように、ワッシャ(517)の外壁(550)は、ワッシャ(517)をアンビル(500)の環状凹部(518)内に保持するように構成された、複数の保持特徴部(552)を有する外側表面(554)を含む。本変形例では3つの保持特徴部(552)が示されているが、他の変形例では、様々な他の数の保持特徴部(552)が設けられてもよい。保持特徴部(552)のそれぞれは、他の保持特徴部(552)から円周方向で等距離に、又は他の保持特徴部(552)から円周方向で等しくない距離に配置されてもよい。各保持特徴部(522)は、ワッシャ(517)を環状凹部(518)内に保持するために、環状凹部(518)の内部の周りに配置された保持凹部(不図示)と嵌合するように構成されている。外壁(550)は、外壁(550)の遠位部分によって画定される一対の外側アーチ道(556)を更に含む。一対の外側アーチ道(556)は、中心軸(CA)を横断して配置される。内壁(560)は、中心軸(CA)を横断して配置された一対の内側アーチ道(562)を含み、一対の内側アーチ道(562)は、一対の外側アーチ道(556)に位置合わせされている。
【0040】
近位壁(530)は、ナイフ部材(340)の切断縁部(342)によって横切開されるように構成された近位面(580)を含む。したがって、アンビル(500)がトロカール(330)に固定されているときに、近位面(580)は、ナイフ部材(340)の方向に面する。近位面(580)は、近位面(580)全体を覆う粗い表面形状部(582)の形態の組織把持特徴部を含む。把持特徴部(582)は、粗い近位側に面する表面を画定するように近位壁(530)と一体的に形成され、近位面(580)全体を覆って剛性材料から形成される。あくまでも一例として、粗い表面形状部(582)は、機械的研削、機械的切断、化学的処理、又は鋳型内での鋳造によって近位面(580)上に形成されてもよい。
【0041】
他の変形例では、把持特徴部(582)は、近位面(580)の一部のみを覆ってもよい。例えば、把持特徴部(582)は、近位面(580)の半径方向外側部分(586)及び近位面(580)の半径方向内側部分(588)を覆ってもよく、半径方向外側部分(586)と内側部分(588)との間のウェブ(589)によって画定される環状中央部分からは省略されてもよい。このような構成は、その環状中央部分(689)に沿って滑らかな表面(690)を有する
図14のワッシャ(617)によって示される。
【0042】
更に他の変形例では、把持特徴部(582)は、近位面(580)に化学的に適用されるか又は機械的に締結された可撓性材料(不図示)から構成されてもよい。可撓性材料は、組織の、広い範囲の厚さが切除され得るように、可撓性を提供するように構成される。
【0043】
図12で最もよく分かるように、粗い表面形状部(582)は、近位面(580)から近位方向に延在する複数の近位方向テーパ状突出部(592)を含む。本変形例では、各突出部(592)は、各突出部(592)が他の突出部(592)に対して設定された距離、又は中心軸(CA)を中心として他の突出部(592)に対して設定された角度配向で離間される、対称パターンで配列される。突出部(592)の様々な他のパターン及び形状が、ワッシャ(517)の他の変形例において提供されてもよい。突出部(592)は、突出部(592)の周りで圧縮された組織の部分を把持するように構成され、それによって、外科用器具(10)が発射されるときに、組織を安定させ、組織が近位面(580)及びアンビル表面(512)(
図8参照)を横切って並進するのを阻止する。
【0044】
図12で最もよく分かるように、粗い表面形状部(582)はまた、近位面(580)から近位方向に(すなわち、ナイフ部材(340)及び組織に向かって)延在する複数の不規則な突出部(598)を有してもよい。各不規則な突出部(598)は、他の不規則な突出部(598)に対して異なる高さ及び角度で、遠位方向に延在する異なる形状を含んでもよい。不規則な突出部(598)は、非対称パターンで配置されてもよく、組織安定性を更に維持するために組織を浅く貫通するように構成された鋭い縁部及び切り子面を含んでもよい。各不規則な突出部(598)は、近位面(580)から最も遠く離間されたピーク(594)と、2つのピーク(594)どうしの間に位置する谷(596)とを有する。谷(596)は、近位面(580)上に位置してもよく、又は近位面(580)から離間されていてもよい。
【0045】
図9~
図11で最もよく分かるように、内壁(560)は第1の厚さ(564)を含み、外壁は第2の厚さ(558)を含み、遠位壁(540)は第3の厚さ(542)を含み、近位壁(530)のウェブ(589)は第4の厚さ(538)を含む。第1の厚さ(564)は第2の厚さ(558)よりも大きく、第2の厚さは第3の厚さ(542)よりも大きく、第3の厚さ(542)は第4の厚さ(538)よりも大きい。第4の厚さ(538)は、切断縁部(342)によって容易に切断されるように構成され、したがって、他の厚さ(564、558、542)よりも小さいことが望ましい。容易に切断される近位壁(530)は、発射に要する力を最小限にする。第1の厚さ(564)及び第2の厚さは、近位壁(530)に剛性を提供するように構成された任意のサイズであってもよく、その結果、内壁及び外壁(560、550)は、切断縁部(342)によって係合されたときに偏向又は破損しない。近位壁(530)、遠位壁(540)、内壁(560)、及び外壁(550)の厚さは、単に例示的な例であり、ナイフ部材(340)を用いて組織を通してきれいに切断できるように、ワッシャ(571)を最小限の撓みで安定させることが可能な任意の厚さであってもよいということに留意されたい。
【0046】
図13Aは、アンビル(500)と連結されたステープル留めヘッドアセンブリ(300)を概略的に示しており、明確にするために一部が省略されている。ナイフ部材(340)は、切断縁部(342)がウェブ(589)と同心状に整列した状態で、ワッシャ(517)に対して近位位置に位置している。上記の近位位置において、デッキ部材(322)及び近位側ステープル留め表面(512)は、それらの間に圧縮された組織を有し、組織上にいくらかの遠位方向の圧力を提供する(
図7C参照)。粗い表面形状部(582)が組織に軽く係合して、近位面(580)上で組織を安定させてから、ナイフ部材(340)が遠位方向に並進する。
【0047】
ナイフ部材(340)は、切断縁部(342)が組織に係合するまで遠位方向に並進され、切断縁部(342)とウェブ(589)との間の組織に遠位方向の圧力を提供する。加えて、近位側ステープル留め表面(512)及び粗い表面形状部(582)は、組織に更に係合して、突出部(598)が組織に「食い込む」ことによって、組織が横方向に伸張又は移動しないように安定化させる。切断縁部(342)が組織に係合すると、ワッシャ(517)は、切断縁部(342)がウェブ(589)の周方向中心線に沿って組織を切断する急激なギロチン型の切断動作で組織を切断する間、カッティングボードとして機能する。
【0048】
図13Bは、ナイフ部材(340)が遠位位置にある、
図13Aのステープル留めヘッドアセンブリ(300)及びアンビル(500)を概略的に示す。上記の遠位位置では、ナイフ部材(340)は遠位方向に並進したところであり、ワッシャ(517)のウェブ(589)を横切開したところであり、ウェブ(589)に間隙(581)を形成している。ワッシャ(517)が破断し、組織切断及びステープル留めの完了を示す聴覚的及び/又は触覚的フィードバックを、ユーザに対して生成する。ナイフ部材(340)が内壁(560)と外壁(550)との間でウェブ(589)を越えて遠位方向に並進し続けると、粗い表面形状部(582)は、ワッシャ(517)の半径方向において組織に係合して安定化させ続け、これにより、切断縁部(342)が間隙(581)を通って、組織を遠位方向に伸張させるかつ/又は引きずることを阻止し、組織が完全に切断されることを確実にする。
【0049】
B.隆起した節を有する破断可能なワッシャを有する例示的なアンビル
図14は、外科用器具(10)に組み込まれるアンビル(500)と共に使用するための別の例示的なワッシャ(617)を示す。ワッシャ(617)は、別段の記載がある場合を除いて、上述のワッシャ(517)と構造及び機能が類似していることが理解されよう。特に、以下でより詳細に説明するように、本実施例のワッシャ(617)は、近位面(680)上の複数の隆起した節(682)の形態の組織把持特徴部を含む。ワッシャ(617)を組み込んだアンビル(500)の変形例がトロカール(330)に固定されているときに、近位面(680)は、ナイフ部材(340)の方向に面する。
【0050】
隆起した節(682)のそれぞれは、切頭ピラミッドの形状を有する。隆起した節(682)は、例えば、ピラミッド、円錐、円錐台、円筒、正方形、長方形、部分球、部分楕円、又は組織を把持するための当技術分野で公知の任意の形状などの、他の好適な形状であってもよい。複数の隆起した節(682)は、内側列及び外側列(622、624)に、対称なパターンで配置される。内側列(622)は、ワッシャ(617)の中心軸(CA)から第1の半径方向距離だけ離間され、近位面(680)の半径方向内側環状部分(688)に沿って配置される。外側列(624)は、中心軸(CA)から第2の半径方向距離だけ離間しており、近位面(680)の半径方向外側環状部分(686)に沿って配置されている。第2の距離は、第1の距離よりも長い。内側列(622)の隆起した節(682)のそれぞれは、ワッシャ(617)の中心軸(CA)に対してある角度で外側列(624)の隆起した節(682)のうちの1つと位置揃えされる。近位面(680)は、半径方向外側部分(686)と半径方向内側部分(688)との間の中央部分(689)上に位置する平滑面(690)を更に含む。滑らかな表面(690)は、ナイフ部材(340)の切断縁部(342)が、中央部分(689)の円周方向中心線に沿って組織に均一に係合することを可能にするように構成されている。
【0051】
図15Aは、ワッシャ(617)を含むアンビル(500)と連結されたステープル留めヘッドアセンブリ(300)を概略的に示しており、明確にするために一部が省略されている。ナイフ部材(340)は、切断縁部(342)が中央部分(689)と同心状に整列した状態で、ワッシャ(617)に対して近位位置に位置している。デッキ部材(322)及び近位側ステープル留め表面(512)は、それらの間に圧縮された組織を有し、組織上にいくらかの遠位方向の圧力を提供する(
図7C参照)。複数の隆起した節(682)は、組織に軽く係合して、近位面(680)上で組織を安定化させてから、ナイフ部材(340)が遠位方向に並進する。
【0052】
ナイフ部材(340)は、切断縁部(342)が組織に係合するまで遠位方向に並進され、切断縁部(342)と中央部分(689)との間の組織に遠位方向の追加の圧力を提供する。遠位方向の圧力は、複数の隆起した節(682)の周りの組織に力を加え、これらは、組織に更に係合して、組織が横方向に伸張又は移動しないように安定化させる。切断縁部(342)が組織に係合すると、ワッシャ(717)は、切断縁部(342)が急激なギロチン型の切断動作で組織を切断し、切断縁部(342)の周囲の組織を切断する間、カッティングボードとして機能する。
【0053】
図15Bは、
図15Aのステープル留めヘッドアセンブリ(300)及びアンビル(500)を概略的に示す。ナイフ部材(340)は、近位位置から遠位位置へと遠位方向に並進したところであり、中央部分(689)を横切開したところであり、中央部分(689)に間隙(681)を作り出している。ワッシャ(617)が破断し、組織切断及びステープル留めの完了を示す聴覚的及び/又は触覚的フィードバックを、ユーザに対して生成する。ナイフ部材(340)が内壁(660)と外壁(650)との間の近位壁を越えて遠位方向に並進し続けると、隆起した節(682)は、ワッシャ(617)の半径方向において組織に係合して安定させ続け、これにより、切断縁部(342)が、アンビル表面(512)(
図8参照)及びワッシャ(617)を横切って、かつ間隙(681)を通って、組織を遠位方向に伸張させるかつ/又は引きずることを阻止し、組織が完全に切断されることを確実にする。
【0054】
C.同心状の環状隆起部を有する破断可能なワッシャを有する例示的なアンビル
図16は、外科用器具(10)に組み込まれたアンビル(500)と共に使用するための別の例示的なワッシャ(717)を示す。ワッシャ(717)は、別段の記載がある場合を除いて、上述のワッシャ(517)と構造及び機能が類似していることが理解されよう。特に、以下でより詳細に説明するように、本実施例のワッシャ(717)は、近位面(780)上の複数の同心状の環状隆起部(782)の形態の組織把持特徴部を含む。ワッシャ(717)を組み込んだアンビル(500)の変形例がトロカール(330)に固定されているときに、近位面(780)は、ナイフ部材(340)の方向に面する。
【0055】
各環状隆起部(782)は、近位面(780)から延在する弓形形状を有する。環状隆起部(782)は、近位面(780)の中央部分(789)から離れて第1の角度で近位方向に延在し、環状隆起部(782)の丸みを帯びた上部に到達し、環状隆起部(782)の谷に向かってより鋭い角度で遠位方向に曲がる。環状隆起部(782)の谷は、近位面(580)よりも近位側に位置し、弓状の形状を有する。第2の環状隆起部(782)は、谷部から頂部まで第1の角度で近位方向に延在する。第2の環状隆起部(782)もまた、第1の角度よりも鋭い角度で遠位方向に曲がる。より鋭い角度は、外壁(750)の外側表面(754)と位置揃えされる。環状隆起部(782)は、ピラミッド、円錐、円錐台、円筒、正方形、三角形、長方形、部分球、部分楕円、又は組織を把持するための把持面を提供する当技術分野で公知の任意の形状など、様々な他の好適な形状であってもよい。加えて、環状隆起部(782)は、組織を更に把持して安定させるための返し(不図示)を含んでもよい。複数の環状隆起部(782)は、近位面(780)の周りで半径方向内側列及び外側列(792、794)に、対称的に配置される。内側列(722)は、ワッシャ(717)の中心軸(CA)から第1の半径方向距離だけ離間され、近位面(780)の半径方向内側部分(788)に沿って配置される。内側列(792)は、2つの環状隆起部(782)を含むが、より多い又はより少ない環状隆起部(782)を含んでもよい。
【0056】
外側列(794)は、ワッシャ(717)の中心軸(CA)から第1の半径方向距離よりも大きい第2の半径方向距離だけ離間しており、近位面(780)の半径方向外側部分(786)に沿って配置されている。外側列(794)は、内側列(722)と同様に、2つの環状隆起部(782)を含むが、より多くの又はより少ない環状隆起部(782)を含んでもよい。外側列(794)の環状隆起部(782)の数は、内側列(722)の同心状リングの数と異なっていてもよく、又はリングの数は同じであってもよい。近位面(780)は、外側部分(586)と内側部分(588)との間の中央部分(789)上に位置する平滑面(790)を更に含む。滑らかな表面(790)は、ナイフ部材(340)が遠位方向に並進する際に、ナイフ部材(340)の切断縁部(342)が組織に均一に係合することを可能にするように構成されている。
【0057】
図17Aは、アンビル(500)と連結されたステープル留めヘッドアセンブリ(300)を概略的に示しており、明確にするために一部が省略されている。ナイフ部材(340)は、切断縁部(342)が中央部分(789)と同心状に整列した状態で、ワッシャ(717)に対して近位位置に位置している。上記の近位位置において、デッキ部材(322)及び近位側ステープル留め表面(512)は、それらの間に圧縮された組織を有し、組織上にいくらかの遠位方向の圧力を提供する(
図7C参照)。この圧力に応答して、複数の環状隆起部(782)が組織に軽く係合して組織を近位面(780)上で安定させてから、ナイフ部材(340)が遠位方向に並進する。
【0058】
ナイフ部材(340)は、切断縁部(342)が組織に係合するまで、遠位方向に並進され、切断縁部(342)と中央部分(789)との間の組織に遠位方向の圧力を加える。組織は、複数の環状隆起部(782)の周囲の形状に適合し、これは更に、組織に係合し、組織が伸張又は移動しないように安定させることになる。切断縁部(342)が急激なギロチン型の切断動作で組織を切断し、切断縁部(342)の周囲の組織を切断する間、ワッシャ(717)はカッティングボードとして機能する。
【0059】
図17Bは、
図17Aのステープル留めヘッドアセンブリ(300)及びアンビル(500)を概略的に示す。ナイフ部材(340)は、近位位置から遠位位置へと遠位方向に並進したところであり、中央部分(789)を横切開したところで、中央部分(789)に間隙(781)を作り出している。ワッシャ(717)が破断し、組織切断及びステープル留めの完了を示す聴覚的及び/又は触覚的フィードバックを、ユーザに対して生成する。ナイフ部材(340)が、内壁(760)と外壁(750)との間でワッシャ(717)の近位壁を越えて遠位方向に並進し続けると、複数の環状隆起部(782)は、ワッシャ(717)の半径方向において組織に係合し、組織を安定させ続け、これにより、切断縁部(342)が、アンビル表面(512)(
図8参照)及びワッシャ(717)を横切って、かつ間隙(781)を通って遠位方向に組織を伸張及び/又は引きずることを阻止し、組織が完全に切断されることを確実にする。
【0060】
III.垂直方向の力を強化する機構を有する例示的なワッシャ
上述のように、ナイフ部材(340)が、
図7Cに示されている位置から
図7Dに示されている位置まで、完全に遠位方向の範囲一杯に動いた場合には、このワッシャ(417)は、ナイフ部材(340)によって破壊される。いくつかの手技では、例えば、ワッシャ(417)の近位壁に増加した厚さを提供し、それによって、ワッシャ(417)の構造的剛性を増加させることによって、ナイフ部材(340)が、ワッシャ(417)の最初の破砕後、破壊された縁部の間で遠位方向に貫通し続けるにつれて、ナイフ部材(340)の側面上に、ワッシャ(417)の対向する破壊された縁部によって及ぼされる垂直方向の力を増加させることが望ましい場合があり得る。垂直方向の力のこの増加は、結果として、ワッシャ(417)によって組織に及ぼされる摩擦力の増加をもたらし、したがって、組織をより効果的に安定させ、ナイフ部材(340)がワッシャ(417)に対して遠位方向に前進するときに、ナイフ部材(340)による組織の完全な切断を更に促進する。ワッシャの近位壁の増加した構造的剛性を介して、上述の機能的利点及び/又は他の利点を提供し得る特徴の例示的変形例は、以下でより詳細に説明される。
【0061】
A.アーチ状の近位壁を有する例示的なワッシャ
図18は、外科用器具(10)のアンビル(500)と共に、ワッシャ(517)の代わりに使用するように構成された、別の例示的なワッシャ(817)を概略的に示す。ワッシャ(817)は、別段の記載がある場合を除いて、上述のワッシャ(517)と構造及び機能が類似していることが理解されよう。特に、ワッシャ(517)は、ワッシャ(417、517)に対して増大した構造的剛性を呈し、それによって、切断シーケンス中にワッシャ(817)の破断縁部とナイフ(340)との間に増大した垂直方向の力を及ぼすように、好適に構成される。
【0062】
ワッシャ(817)は、ワッシャ(817)が近位壁(830)から遠位壁(840)まで中心軸に沿って遠位方向に延在する環状形状を含むという点で、ワッシャ(517)と同様である。近位壁(830)は、中心軸に対して横断方向に配置される。ワッシャ(817)を組み込んだアンビル(500)の変形例がトロカール(330)に固定されているときに、近位壁(830)は、ナイフ部材(340)の方向に面する。近位壁(830)は、近位壁(830)の外側縁部(832)において外壁(850)の近位部分に不動に固定され、近位壁(830)の内側縁部(834)において内壁(860)の近位部分に不動に固定される。ワッシャ(817)は、ワッシャ(817)の近位壁(830)がアーチ状であり、ワッシャ(517)の近位壁よりも大きい厚さを有してもよく、それによって、ナイフ(340)とワッシャ(817)の破断縁部との間に増大した垂直方向の力を及ぼすための増大した構造剛性をワッシャ(817)に提供するという点で、ワッシャ(517)とは異なる。いくつかの変形例では、ワッシャ(817)はまた、組織把持特徴部(582)と類似の組織把持特徴部(不図示)を含んでもよい。
【0063】
B.ピーク状の近位壁を有する例示的なワッシャ
図19は、別段の記載がある場合を除いて、ワッシャ(817)に類似している更に別の例示的ワッシャ(917)を概略的に示す。ワッシャ(917)は、ワッシャ(917)がワッシャ(417、517)に対して増加した構造的剛性を呈するように好適に構成され、それによって、切断シーケンス中にワッシャ(917)の破断縁部とナイフ部材(340)との間に増加した垂直方向の力を及ぼすという点で、ワッシャ(817)と同様である。
【0064】
ワッシャ(917)は、環状の遠位縁部を画定する中央部分(989)において、ナイフ部材(340)に対向するように構成された、ピーク状の近位壁(930)を含む。ピーク状の近位壁(930)は、中央部分(989)に向かって近位方向に先細になっており、したがって、近位方向に面し、互いに対向する一対の角度面を画定する。ピーク状の近位壁(9300は、ワッシャ(517)の近位壁よりも大きい厚さを有してもよい。いくつかの変形例では、ワッシャ(917)はまた、把持特徴部(582)と類似の把持特徴部(不図示)を含んでもよい。更に他の変形例では、ピーク状の近位壁(930)は、ナイフ部材(340)とワッシャ(917)との係合を容易にして、ピーク状の近位壁(930)又はナイフ部材(340)の切断縁部(342)が、互いに対して横方向に偏向するのを防止するように、中央部分(989)に丸みを帯びた面又は面取りされた面(不図示)を含んでもよい。
【0065】
C.二重テーパ状近位壁を有する例示的ワッシャ
図20は、別段の記載がある場合を除いて、ワッシャ(817)に類似している更に別の例示的ワッシャ(1017)を概略的に示す。ワッシャ(1017)は、ワッシャ(1017)がワッシャ(417、517)に対して増加した構造的剛性を呈するように好適に構成され、それによって、切断シーケンス中にワッシャ(1017)の破断縁部とナイフ部材(340)との間に増加した垂直方向の力を及ぼすという点で、ワッシャ(817)と同様である。
【0066】
ワッシャ(1017)は、外側縁部(1032)及び内側縁部(1034)のそれぞれにおける第1のより大きい厚さと、中央部分(1089)における第2のより小さい厚さとを有する二重テーパ状近位壁(1030)を含み、それらは、ワッシャ(517)の近位壁の厚さより大きい平均厚さを画定する。より具体的には、近位壁(1030)は、外側縁部(1032)及び内側縁部(1034)のそれぞれから、中央部分(1089)の円周方向中心線に向かう方向に、厚さが半径方向に先細になっている。ワッシャ(1017)を組み込んだアンビル(500)の変形例がトロカール(330)に固定されているときに、近位壁(1030)は、ナイフ部材(340)の方向に面する。近位壁(1030)は、近位壁(1030)の近位側及び/又は近位壁(1030)の遠位側にテーパを含んでもよい。中央部分(1089)におけるこのより小さい厚さ、並びに内側縁部及び外側縁部(1034、1032)におけるより大きい厚さは、中央部分(1089)がナイフ部材(340)で容易に切断/破断することを可能にしながら、近位壁(1030)の剛性の増加、したがって垂直方向の力の増加を可能にする。いくつかの変形例では、ワッシャ(1017)はまた、組織把持特徴部(582)と類似の組織把持特徴部(不図示)を含んでもよい。
【0067】
D.溝付き近位壁を有する例示的なワッシャ
図21は、別段の記載がある場合を除いて、ワッシャ(1017)に類似している更に別の例示的ワッシャ(1117)を概略的に示す。ワッシャ(1117)は、ワッシャ(1117)がワッシャ(417、517)に対して増加した構造的剛性を呈するように好適に構成され、それによって、切断中にワッシャ(1117)の破断縁部とナイフ部材(340)との間に増加した垂直方向の力を及ぼすという点で、ワッシャ(1017)と同様である。
【0068】
ワッシャ(1117)は、半径方向外側縁部及び半径方向内側縁部の各々における、ワッシャ(417)の近位壁の厚さよりも大きい第1のより大きい厚さと、中央部分(1189)における第2のより小さい厚さとを有する近位壁(1130)を含む。本実施例では、中央部分(1189)のこのより小さい厚さは、近位壁(1130)の遠位側の環状溝(1132)によって画定される。他の変形例では、図示されていないが、環状溝(1132)は、近位側に設けられる代わりに、又は近位側に設けられることに加えて、近位壁(1130)の近位側に設けられてもよい。半径方向内側縁部及び外側縁部における拡大された厚さは、近位壁(1130)の剛性の増加、したがって垂直方向の力の増加を可能にし、一方、中央部分(1189)のより薄い厚さは、近位壁(1130)がナイフ部材(340)によって容易に切断されることを可能にする。いくつかの変形例では、ワッシャ(1117)はまた、組織把持特徴部(582)と類似の組織把持特徴部(不図示)を含んでもよい。
【0069】
E.多層壁を有する例示的なワッシャ
図22は、更に別の例示的なワッシャ(1217)を概略的に示しており、このワッシャは、別段の記載がある場合を除いて、ワッシャ(517)と同様であり、ワッシャ(417、517)に対して増大した構造的剛性を示し、それによって、切断シーケンス中にワッシャ(1217)の破断縁部とナイフ部材(340)との間に増大した垂直方向の力を及ぼすように好適に構成されている。ワッシャ(1217)の近位壁(1230)は、近位壁(1230)の外側縁部(1232)において外壁(1250)の近位部分に不動に固定され、近位壁(1230)の内側縁部(1234)において内壁(1260)の近位部分に不動に固定される。ワッシャ(1217)を組み込んだアンビル(500)の変形例がトロカール(330)に固定されているときに、近位壁(1230)は、ナイフ部材(340)の方向に面する。
【0070】
ワッシャ(1217)は、第1及び第2の環状突出部(1220、1222)を更に含む。第1の環状突出部(1220)は、内壁(1260)の内側部分に不動に固定され、内壁(1260)から、近位壁(1230)に平行な外壁(1250)に向かって半径方向外向きに延在する。第1の環状突出部(1220)は、中央部分(1289)の半径方向手前で終端する。第2の環状突出部(1222)は、外壁(1250)から内壁(1260)に向かって半径方向内向きに延在する。第2の環状突出部(1222)は、外壁(1250)の内側部分に不動に固定され、近位壁(1230)に平行に延在し、中心部分(1289)の前で半径方向に終端する。したがって、第1及び第2の環状突出部(1220、1222)は、半径方向に互いに対向して離間する自由縁を有し、したがって、それらの対向する自由縁どうしの間に環状の間隙を画定する。いくつかの変形形態では、図示されていないが、第1及び第2の環状突出部(1120、1122)は、中央部分(1289)内にまで延在し、互いに不動に固定される。いくつかの変形例では、近位壁(1230)は、代替的に、ワッシャ(817、917、1017、1117)と同様に成形されてもよい。更に他の変形例では、ワッシャ(1217)はまた、組織把持特徴部(582)と類似の組織把持特徴部(不図示)を含んでもよい。
【0071】
F.二重密度近位壁を有する例示的なワッシャ
図23は、更に別の例示的なワッシャ(1317)を概略的に示しており、このワッシャは、別段の記載がある場合を除いて、ワッシャ(517)と同様であり、ワッシャ(417、517)に対して増大した構造的剛性を示し、それによって、切断シーケンス中にワッシャ(1317)の破断縁部とナイフ部材(340)との間に増大した垂直方向の力を及ぼすように好適に構成されている。ワッシャ(1317)は、中心軸に沿って、近位壁(1330)から遠位壁(1340)まで遠位方向に延在する環状形状を含む。近位壁(1330)は、中心軸に対して横断方向に配置される。近位壁(1330)は、ワッシャ(1317)を組み込んだアンビル(500)の変形例がトロカール(330)に固定されているときに、ナイフ部材(340)の方向に面する。近位壁(1330)は、近位壁(1330)の外側縁部(1332)において外壁(1350)の近位部分に不動に固定され、近位壁(1330)の内側縁部(1334)において内壁(1360)の近位部分に不動に固定される。
【0072】
ワッシャ(1317)は、ワッシャ(1317)が別個の層に配置された2つ以上の材料から構成された多層近位壁(1330)を含むという点で、ワッシャ(517)とは異なる。近位壁(1330)は、近位壁(1330)の近位側で、内側縁部(1334)から外側縁部(1332)まで、半径方向に延在するコーティング(1320)を更に含む。本変形例では、コーティング(1320)は、ワッシャ(1317)の剛性、したがってワッシャ(1317)とナイフ部材(340)との間の垂直方向の力を増加させる一方で、中央部分(1389)がナイフ部材(340)によって容易に切断/破断することを可能にする、軟質ポリマーを含む。いくつかの変形例では、近位壁(1330)は、ワッシャ(817、917、1017、1117)と同様の他の特徴を含んでもよい。更に他の変形例では、ワッシャ(1317)はまた、組織把持特徴部(582)と類似の組織把持特徴部(不図示)を含んでもよい。
【0073】
図24は、更に別の例示的なワッシャ(1417)を概略的に示しており、このワッシャは、別段の記載がある場合を除いて、ワッシャ(517)と同様であり、ワッシャ(417、517)に対して増大した構造的剛性を示し、それによって、切断シーケンス中にワッシャ(1417)の破断縁部とナイフ部材(340)との間に増大した垂直方向の力を及ぼすように好適に構成されている。ワッシャ(1417)はワッシャ(1317)と同様であるが、コーティング(1420)が、ワッシャ(1317)のように近位壁(1330)の近位側ではなく、近位壁(1430)の遠位側にあるという点で異なる。コーティング(1420)は、内壁(1460)から外壁(1450)まで半径方向に延在する。コーティング(1420)は、ワッシャ(1317)のコーティング(1320)と、構造及び機能が類似している。いくつかの変形例では、近位壁(1430)は、ワッシャ(817、917、1017、1117)と同様の他の特徴を含んでもよい。更に他の変形例では、ワッシャ(1417)はまた、組織把持特徴部(582)と類似の組織把持特徴部(不図示)を含んでもよい。
【0074】
IV.補助的な組織圧縮部材を有する例示的なエンドエフェクタ
場合によっては、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)内に、エンドエフェクタ(300)のステープル留め表面とは別に、ナイフ部材(340)の半径方向内側に沿って組織をクランプするのを助ける補助的な組織圧縮部材を含み、組織を半径方向により効果的に安定させ、それによってナイフ部材(340)が組織を完全に切断することを可能にすることが望ましい場合がある。そのような特徴の例示的変形例を以下でより詳細に説明する。以下に説明する例示的な補助的な組織圧縮部材のいずれかを、上述した例示的なワッシャのいずれかと組み合わせることができるということが理解されよう。
【0075】
A.弾性的に圧縮可能な組織圧縮部材を有するエンドエフェクタ
図25~
図26Cは、アンビル(400)と、ナイフ部材(340)の半径方向内側に隣接して配置された弾性的に圧縮可能な部材(1660)の形態の補助的な組織圧縮部材を含むステープル留めヘッドアセンブリ(300)と、を含むエンドエフェクタ(1500)を示す。
【0076】
図25に示すように、弾性的に圧縮可能な部材(1660)は、近位面(1666)を有する近位側リング(1662)と、遠位面(1668)を有する遠位側リング(1664)と、近位側及び遠位側リング(1662、1664)を相互接続する格子を集合的に画定する複数の弾性スプライン(1670)と、を含む。弾性スプライン(1670)は、弾性的に圧縮可能な部材(1660)が軸方向に圧縮されることを可能にする弾性特性を、圧縮部材(1660)に与える。弾性的に圧縮可能な部材(1660)は、ナイフ部材(340)の内径によって画定される直径よりもわずかに小さい外径(OD)を画定する円筒形状を有する。圧縮部材はまた、内径(ID)内に本体部材(310)の芯部材(312)を受容するように構成された内径(ID)を画定する。近位リング(1662)の近位面(1666)は、弾性的に圧縮可能な部材(1660)が圧縮されたときに弾性的に圧縮可能な部材(1660)の遠位端部のみがナイフ部材(340)に対して移動可能であるように、ナイフ部材(340)の近位ハブ又はステープルドライバ部材(350)の近位部分に固定されるように構成されている。弾性的に圧縮可能な部材(1660)は、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)に対するいかなる修正又は構造的変更もなしに、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)内に設置され得るということに留意されたい。弾性的に圧縮可能な部材(1660)の遠位リング(1664)は、遠位リング(1664)の遠位面(1668)がワッシャ(417)の近位面の半径方向内側部分に対して組織をクランプするように構成されるように、ワッシャ(417)の近位面と位置揃えされ、それによって、以下に説明するように、エンドエフェクタ(1500)が閉じられて組織上で発射されるときに、組織を半径方向に安定させる。
【0077】
図26Aは、デッキ表面(322)、弾性的に圧縮可能な部材(1660)、及び組織から離間されたアンビル(400)を示す。エンドエフェクタ(1500)は、弾性的に圧縮可能な部材(1660)の遠位面(1668)がデッキ表面(522)を越えて遠位方向に延在し、ナイフ縁部(342)の遠位側にあり、中立の軸方向に拡張された状態にある弾性的に圧縮可能な部材(1660)で組織をクランプする前の状態で示されている。遠位面(1668)は、ナイフ縁部(342)の前に組織に係合し、アンビル(400)が近位方向に後退するときに組織に係合するように構成されている。
【0078】
図26Bは、デッキ表面(322)に対して組織をクランプするために、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)に向かって近位方向に後退したアンビル(400)を示す。アンビル(400)のこの近位方向の後退に応答して、弾性的に圧縮可能な部材(1660)は、遠位面(1668)がデッキ表面(322)とほぼ同一平面上にあり、ワッシャ(417)の近位面(480)に対して組織を遠位方向に圧縮している第1の軸方向圧縮状態まで近位方向に圧縮する。この第1の圧縮状態では、遠位面(1668)は、ワッシャ(417)の近位面の上にある組織に遠位方向のばね圧縮力を及ぼし、それによって、ナイフ部材(340)の内径に沿って、ナイフ部材(340)の半径方向内側に隣接する位置で、半径方向に組織を拘束する。
【0079】
図26Cは、組織が弾性的に圧縮可能な部材(1660)の遠位面(1668)とワッシャ(417)の近位面(480)との間にクランプされたままである間に、ナイフ部材(340)が遠位方向に前進して組織を切断したところで、弾性的に圧縮可能な部材(1660)が第2の完全に軸方向に圧縮された状態まで軸方向に更に圧縮されている状態を示す。弾性的に圧縮可能な部材(1660)の更なる軸方向圧縮は、ナイフ部材(340)の内径に沿って組織に及ぼされる遠位方向のばね力を増加させ、それによって、ナイフ縁部(342)が組織及びワッシャ(417)を遠位方向に通過する際に、ワッシャ(417)に対して組織のその領域をより確実にクランプし、したがってナイフ部材(340)が組織を完全に切断することを可能にし得る。
【0080】
B.並進可能な組織圧縮部材を有するエンドエフェクタ
図27は、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)のナイフ部材(340)の半径方向内向きに隣接して設置され得る並進可能部材(1760)の形態の、別の例示的な補助的な組織圧縮部材を示す。並進可能部材(1760)は、近位面(1766)から遠位面(1768)まで長手方向に延在する円筒形本体(1764)と、本体(1764)の外側表面(1772)の周りに対称的に円周方向に配置された複数の干渉バンプ(1762)とを含む。本変形例の並進可能部材(1760)は、ナイフ部材(340)の内径よりもわずかに大きい、干渉バンプ(1762)によって画定される最大外径(OD)を有する。したがって、干渉バンプ(1762)は、ナイフ部材(340)の半径方向内側表面に直接接触してわずかに変形するように構成され、したがって、外力に応答して、ナイフ部材(340)に対して依然として摺動可能でありながら、並進可能部材(1760)がナイフ部材(340)に対して長手方向位置を解放可能に維持することを可能にする適切な程度の摩擦力で、並進可能部材(1760)とナイフ部材(340)との間に締まり嵌めを提供する。いくつかの他の変形例では、外側表面(1772)は、ナイフ部材(340)の内径に更に係合する。並進可能部材(1760)はまた、内径(ID)内に本体部材(310)の芯部材(312)を受容するように構成された内径(ID)を画定する。並進可能部材(1760)は、発泡体、ゴム、又はプラスチックなどの弾性材料で構成されてもよい。本体(1764)は、本体(1764)がナイフ部材(340)の内径内で半径方向に拡張して、本体(1764)をナイフ部材(340)内で保持することを可能にする弾性特性を有する。干渉バンプ(1762)は、ナイフ部材(340)の内径内で追加の摩擦力を提供するように構成されている。干渉バンプ(1762)は、比較的小さい近位部分よりも大きい遠位部分を有する、軸方向に延在するテーパ面を含む。
【0081】
上述の弾性的に圧縮可能な部材(1660)と同様に、並進可能部材(1760)の遠位面(1768)は、遠位面(1768)が近位面(480)の半径方向内側部分に対して組織をクランプするように構成されるように、ワッシャ(417)の近位面(480)と位置揃えされ、それによって、以下に説明するように、エンドエフェクタ(1500)が閉じられて組織上で発射されるときに、組織を半径方向に安定させる。
【0082】
図28Aは、組織をクランプする前の、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)及び組織から遠位方向に離間されたアンビル(400)を示す。並進可能部材(1760)は、遠位面(1768)がデッキ表面(322)及びナイフ縁部(342)に対して遠位側に位置する状態で配置される。近位面(1766)は、ハブ及びステープルドライバ部材(350)の近位部分から離間している。干渉バンプ(1762)は、遠位位置において、ナイフ部材(340)の内径内で、並進部材(1760)を長手方向に保持している。遠位面(1768)は、アンビル(400)が近位方向に後退するときに、ナイフ縁部(342)の前に組織に係合するように構成されている。
【0083】
図28Bは、アンビル(400)が近位方向に後退して、デッキ表面(322)及び並進部材(1760)の遠位面(1768)に対して組織をクランプする様子を示す。アンビル(400)が近位方向に後退して組織をステープル留めヘッドアセンブリ(300)に対してクランプすると、アンビルワッシャ(417)の近位面は、ナイフ部材(340)の半径方向内側の位置で組織に接触し、組織を通して並進可能部材(1760)の遠位面(1768)に対して近位方向の力を加え、それによって並進可能部材(1760)を組織及びワッシャ(417)に対して遠位方向に固定する。クランプされた組織を通してワッシャ(417)によって並進可能部材(1760)に付与される近位方向の力は、並進可能部材(1760)の変形した干渉バンプ(1762)とナイフ部材(340)の半径方向内側表面との間に及ぼされる摩擦力に打ち勝ち、したがって、アンビル(400)がステープル留めヘッドアセンブリ(300)に向かって近位方向に後退するにつれて、並進可能部材(1760)をナイフ部材(340)に対して近位方向に並進させる。アンビル(400)がステープル留めヘッドアセンブリ(300)に対して好適な近位位置に到達すると、並進可能部材(1760)は、変形した干渉バンプ(1762)とナイフ部材(340)との間の摩擦力によって、ナイフ部材(340)に対してその長手方向位置を維持する。したがって、アンビル(400)の閉鎖位置において、並進可能部材(1760)の遠位面(1768)は、ワッシャ(417)の近位面に対して組織を圧縮する遠位方向の力を及ぼし、それによって、ナイフ部材(340)の半径方向内側の位置で組織を半径方向に拘束する。
【0084】
図28Cは、組織が並進部材(1760)の遠位面(1768)とワッシャ(417)の近位面(480)との間にクランプされたままである間に、組織を切断するためにステープラ(10)の発射ストローク中に遠位方向に前進されたところのナイフ部材(340)を示す。上述したように、並進可能部材(1760)の遠位面(1768)が組織及びワッシャ(417)の近位面(480)に対して遠位方向に固定されているので、ナイフ部材(340)は、発射ストローク中に並進可能部材(1760)に対して遠位方向に前進する。これは、並進可能部材(1760)をナイフ部材(340)に対して最も近位位置に配置し、この位置では、並進可能部材(1760)の近位面(1766)は、ナイフ部材(340)の近位ハブから離間され得るか、又はナイフ部材(340)の近位ハブに直接接触し得る。ナイフ部材(340)の近位ハブは、ステープルドライバ部材(350)の内側基部表面に取り付けられる。いずれの場合も、並進可能部材(1760)がナイフ部材(340)に対してその最も近位位置にあるとき、遠位面(1768)は、ワッシャ(417)の近位面(480)に対して組織を遠位に圧縮し続け、それによって、ナイフ部材(340)が組織及びワッシャ(417)の近位面(480)を通って遠位方向に切断するときに、組織を半径方向に拘束する。
【0085】
いくつかの変形例では、ステープラ(10)が完全に発射されるとき、並進可能部材(1760)の近位面(1766)は、ナイフ部材(340)の近位ハブ又はステープルドライバ部材(350)のいかなる部分にも係合せず、並進可能部材(1760)によって組織及びワッシャ(417)に対して及ぼされる遠位方向の圧縮力が、ナイフ部材(340)の内径に作用する干渉バンプ(1762)及び/又は本体(1764)の外側表面の間の摩擦の積であるようになっている。干渉バンプ(1762)の締まり嵌めによって生成される摩擦力は、発射力を有意には増加させないということに留意されたい。他の変形例では、ナイフ部材(340)に対してその最も近位位置にある並進可能部材(1760)は、近位ハブ又はステープルドライバ部材(350)の近位部分に係合し、わずかに近位方向に圧縮して、並進可能部材(1760)によって組織及びワッシャ(417)に対して加えられる追加のばね力を提供することができる。更に他の変形例では、図示されていないが、ナイフ部材(340)の半径方向内側表面は、並進可能部材(1760)が組立中にナイフ部材(340)の内径内の特定の長手方向距離に設置され得るように、干渉バンプ(1762)を保持するように構成されたポケットを含んでもよく、干渉バンプ(1762)は、ポケット内に配置されていないときに、摩擦抵抗を提供してもよい。
【0086】
他の変形例では、外科用器具(10)には、ナイフ部材(340)の半径方向外側に隣接して配置された補助的な組織圧縮部材が設けられてもよく、それにより、補助的な組織圧縮部材の遠位端部は、ナイフ部材(340)の半径方向外側の位置で、ワッシャの近位面に対して、及び/又はアンビルステープル留め表面に対してなど、組織に直接接触して遠位方向に圧縮するように構成される。例えば、いくつかのそのような変形例は、上述の弾性的に圧縮可能な部材(1660)又は並進可能な部材(1760)の変形例を採用してもよい。
【0087】
V.アンビルの間隙を低減する特徴を伴う例示的エンドエフェクタ
上述したように、ノブ(130)(
図6参照)は、アンビル(400)のステープル留め表面(412)とステープル留めヘッドアセンブリ(300)のデッキ表面(322)との間の間隙距離(d)を、ステープル留め表面(412)とデッキ表面(1822)との間に最小限の間隙距離が存在するまで調節する。しかしながら、ほぼこの間隙のサイズの組織は、組織の未切断部分が壊れたワッシャ(417)の切断された縁部間で遠位方向に押されることなく組織の完全な切断を可能にするのに、十分に安定させることが困難な場合がある。したがって、いくつかの手順では、組織が完全に切断されることを確実にするために、ナイフ部材(340)の内周に沿って薄い組織をよりしっかりと安定させるように構成された1つ以上の剛性機構をエンドエフェクタ(300)に提供することが望ましい場合がある。そのような特徴の例示的変形例を以下でより詳細に説明する。
【0088】
A.隆起環状リブを有するデッキ部材
図29~
図30は、例示的な代替デッキ部材(1820)を有するステープル留めヘッドアセンブリ(1810)を示す。ステープル留めヘッドアセンブリ(1810)及びデッキ部材(1820)は、以下に詳述される点を除いて、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)及びデッキ部材(320)と構造及び機能が類似している。デッキ部材(1820)は、デッキ表面(1822)の半径方向内側部分に配置された環状リブの形態の、隆起形状部(1826)を有するデッキ表面(1822)を含む。隆起形状部(1826)は、環状形状を有し、デッキ表面(1822)の半径方向内側部分から遠位方向に延在する。本実施例の隆起形状部(1826)は、デッキ部材(1820)と一体的に形成され得る剛性形状部である。以下に説明するように、隆起形状部(1826)は、アンビル(400)のワッシャ(417)に対して組織を遠位方向に圧縮するように構成されており、それによって、ナイフ部材(340)の半径方向内側の位置で組織を半径方向により確実に安定させて、ステープラ(10)が発射されたときに組織を完全に切断することを可能にする。
【0089】
隆起形状部(1826)は、隆起形状部(1826)の遠位端部からデッキ表面(1822)までの距離として定義される隆起形状部高さ(RFH)を含む。隆起形状部高さ(RFH)は、閉鎖状態にあるエンドエフェクタによって達成可能な最小間隙距離(MGD)とほぼ同じ距離である。したがって、隆起形状部(1826)の遠位端部は、薄い組織であっても、ワッシャ(417)の近位面(480)の半径方向内側部分に対して遠位方向に圧縮するように構成され、その結果、ナイフ部材(340)の半径方向内側の位置において、組織とアンビル(400)又はステープル留めヘッドアセンブリ(1810)のいずれかとの間に、そうでなければステープラ(10)の発射シーケンス中に薄い組織が摺動又は伸張することを可能にし得る軸方向間隙が残存しない。薄い組織は、一般に、最小間隙距離(MGD)よりもわずかに小さい、同じ、又はわずかに大きい厚さを有する組織として定義される。
【0090】
B.隆起環状リブを有するワッシャ
場合によっては、上述したデッキ部材(1820)の隆起形状部(1826)を、アンビル(400)のワッシャ(417)の近位面上に再配置して、上述したものと同様の機能的利点を達成することが望ましい場合がある。
図31は、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)と共に使用するための、アンビル(400)に組み込むための例示的なワッシャ(1917)を示す。ワッシャ(1917)は、以下に詳述する点を除いて、アンビル(400)のワッシャ(417)と構造及び機能が類似している。ワッシャ(1917)は、ワッシャ(1917)が隆起形状部(1826)と同様の隆起形状部(1926)を含むという点でワッシャ(417)と異なる。隆起形状部(1926)は、近位面(1980)の半径方向内側部分上に配置された環状リブの形態で示される。
【0091】
ワッシャ(1917)がアンビル(400)内に設置されると、隆起形状部(1826)は、近位面(1980)の半径方向内側部分からデッキ表面(1822)に向かって隆起形状部高さ(RFH)まで近位方向に延在する。隆起形状部高さ(RFH)は、隆起形状部(1826)の近位端部から近位面(1980)までの距離である。隆起形状部高さ(RFH)は、最小ギャップ距離(MGD)とほぼ同じ距離である。したがって、隆起形状部(1826)の近位端部は、薄い組織であっても、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)の対応する形状部に対して近位方向に圧縮するように構成されており、その結果、ナイフ部材(340)の半径方向内側の位置において、組織とアンビル(400)又はステープル留めヘッドアセンブリ(300)のいずれかとの間に、そうでなければステープラ(10)の発射シーケンス中に薄い組織が摺動又は伸張することを可能にする軸方向間隙が残存しない。他の変形例では、図示されていないが、第1の隆起形状部がワッシャ(418)上に設けられてもよく、第2の隆起形状部がデッキ表面(322)上に設けられてもよく、第1及び第2の隆起形状部は、最小間隙距離(MGD)に等しい組み合わされた隆起形状部高さ(RFH)を画定する。
【0092】
C.入れ子式組織把持特徴部を有するワッシャ及びデッキ部材
図32~
図33Bは、例示的な代替的アンビル(2000)及びステープル留めヘッドアセンブリ(2100)を示しており、これらは、以下に別途記載される場合を除いて、上述のアンビル(400)及びステープル留めヘッドアセンブリ(300)と同様のものである。
図32に最もよく示されるように、アンビル(2000)は、近位面(2080)の半径方向内側部分上に環状アレイ状に配置された第1の複数の組織把持特徴部(2026)を含むワッシャ(2017)を含む。ステープル留めヘッドアセンブリ(2100)は、デッキ表面(2122)の半径方向内側部分上に環状アレイ状に配置された第2の複数の組織把持特徴部(2126)を含むデッキ部材(2120)を含む。ワッシャ(2017)の把持特徴部(2026)は、アンビル(2000)が近位方向に後退して組織をステープル留めヘッドアセンブリ(2100)に対してクランプするときに、デッキ部材(2120)の把持特徴部(2126)内に入れ子になるように構成されている。把持特徴部(2126)は、近位面(2080)からデッキ表面(2122)に向かって近位方向に延在し、把持特徴部(2026)は、デッキ表面(2122)から近位面(2080)に向かって遠位方向に延在する。以下に説明するように、組織把持特徴部(2026)は、アンビル(2000)がステープル留めヘッドアセンブリ(2100)に向かって近位方向に後退するときに、組織把持特徴部(2126)と入れ子になり、それによって組織把持特徴部(2126)と協働して、組織をより確実に把持して安定させ、組織の完全な切断を促進するように構成されている。「入れ子」になることによって、アンビル(2000)がステープル留めヘッドアセンブリ(2100)に対して近位方向に後退した位置にあるとき、組織把持特徴部(2026、2126)は、各組織把持特徴部(2026)が2つの隣接する組織把持特徴部(2126)どうしの間に斜めに配置されるように、かつ各組織把持特徴部(2126)が2つの隣接する組織把持特徴部(2026)どうしの間に斜めに配置されるように、互いに角度をなして離間している。
【0093】
図33Aは、組織把持特徴部(2026)が組織把持特徴部(2126)から遠位方向に離間されるように、組織をクランプする前にデッキ表面(2122)から遠位方向に離間されたアンビル(2000)を示す。
【0094】
図33Bは、ステープル留めヘッドアセンブリ(2100)に向かって閉鎖位置まで接近した後のアンビル(2000)を示す。把持特徴部(2026、2126)は、互いの中に入れ子にされ、それによって、組織の両側に係合して、組織がナイフ部材(340)によって切断されるときに、組織を半径方向により確実に安定させる。把持特徴部(2026)及び把持特徴部(2126)の各々は、発射シーケンス中に組織を半径方向及び円周方向に効果的に把持し、それによって安定させるのに適した様々な方法で、それぞれ寸法決めされ、成形され、かつそれぞれのエンドエフェクタ表面に沿って円周方向に離間され得るということが理解されよう。例えば、把持特徴部(2026、2126)は、各把持特徴部(2026)が、組織への外傷を引き起こすことを回避しながら、組織の効果的な把持を促進するのに好適な距離だけ、円周方向に隣接する把持特徴部(2126)から円周方向に離間されるように配置されてもよい。
【0095】
VI.その他
例示的な特徴が、円形外科用ステープラに関連して本明細書に開示されるが、組織把持特徴部及び補助的な組織圧縮部材を含む、例示的な特徴のうちの1つ以上が、2018年8月14日に発行された「Method of Applying Staples in Lower Anterior Bowel Resection」と題された米国特許第10,045,780号、及び2020年10月29日に公開された「Cartridge Based Lockout Mechanism for Right Angle Surgical Stapler」と題された米国特許出願公開第2020/0337700号に開示されるタイプの外科用ステープラ等の他のタイプの外科用ステープラと共に採用されてもよいことが理解されるであろう。なお、これらの開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0096】
本明細書で述べる教示、表現、実施形態、実施例などのうちいずれか1つ以上は、本明細書で述べる他の教示、表現、実施形態、実施例などのうちいずれか1つ以上と組み合わせることができることもまた理解されたい。したがって、上記の教示、表現、実施形態、実施例等は、互いに対して単独で考慮されるべきではない。本明細書の教示を組み合わせ得る様々な好適な方式が、本明細書の教示を考慮することにより、当業者に容易に明らかとなるであろう。このような修正例及び変形形態は、特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【0097】
上記のデバイスの変形例は、医療専門家によって行われる従来の医療処置及び手術に適用されるだけではなく、ロボット支援医療処置及びロボット支援手術にも適用され得る。ほんの一例として、本明細書の様々な教示は、インテュイティヴ・サージカル社(Intuitive Surgical,Inc.、カリフォルニア州サニーベール(Sunnyvale,California))によるDAVINCI(商標)システムなどのロボット外科用システムに容易に組み込まれ得る。
【0098】
上記の変形形態は、単回使用後に廃棄されるように設計されてよく、又はそれらは複数回使用されるように設計され得る。変形例は、いずれか又は両方の場合においても、少なくとも1回の使用後に再利用のために再調整され得る。再調整は、デバイスの分解工程、それに続く特定の部品の洗浄又は交換工程、及びその後の再組立工程の任意の組み合わせを含み得る。具体的には、デバイスのいくつかの変形例が分解され得、また、デバイスの任意の数の特定の部分又は部品が、任意の組み合わせで、選択的に交換され得る、又は取り外され得る。特定の部品の洗浄及び/又は交換の際、デバイスのいくつかの変形例は、再調整施設において、又は処置の直前にユーザによって、その後の使用のために再組立され得る。当業者には、デバイスの再調整において、分解、洗浄/交換、及び再組立のための様々な技術を利用し得ることが理解されよう。このような技術の使用、及び結果として得られる再調整されたデバイスは、全て本出願の範囲内にある。
【0099】
単に例として、本明細書に記載される変形例は、処置の前及び/又は後に滅菌され得る。1つの滅菌技術では、プラスチック製又はタイベック(TYVEK)製のバックなどの密閉された容器及び封止された容器に、デバイスを入れる。次に、容器及びデバイスは、ガンマ線、X線、又は高エネルギー電子線などの、容器を透過し得る放射線場に置かれ得る。放射線は、デバイス上及び容器内の細菌を、死滅させ得る。次に、滅菌されたデバイスは、後の使用のために、滅菌容器内に保管され得る。デバイスはまた、ベータ線若しくはガンマ線、エチレンオキシド、又は蒸気を含むがこれらに限定されない、当該技術分野で周知の任意のその他の技術を使用して滅菌され得る。
【0100】
本発明の様々な実施形態を示し記載してきたが、当業者による適切な修正により、本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の方法及びシステムの更なる適合化が実現され得る。このような可能な修正のいくつかについて述べたが、その他の修正は当業者には明らかであろう。例えば、上で考察された実施例、実施形態、幾何学的形状、材料、寸法、比率、工程などは例示的なものであり、必須のものではない。したがって、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲に関して考慮されるべきであり、本明細書及び図面に示され記載された構造及び操作の詳細に限定されないことが、理解される。
【0101】
〔実施の態様〕
(1) 外科用器具であって、
(a)ステープル留めアセンブリであって、
(i)遠位側に面し、複数のステープルを受容するように構成された複数のステープル開口部を含むデッキ表面を有するデッキ部材、及び
(ii)切断縁部を画定する遠位端部を有するナイフ部材、を含むステープル留めアセンブリと、
(b)前記ステープル留めアセンブリと協働して、組織を圧縮し、ステープル留めし、切断するように構成されたアンビルであって、
(i)前記ステープルを成形するように構成された複数のステープル成形ポケットを有するアンビル表面、及び
(ii)前記アンビル表面に隣接して配置され、近位面を有するワッシャであって、前記ナイフ部材の前記切断縁部は、前記外科用器具が発射されたときに前記組織及び前記近位面を切断するように構成されている、ワッシャ、を含むアンビルと、
を備え、
前記近位面は、発射中に前記組織を安定させ、前記組織が前記ワッシャ及び前記アンビル表面を横切って並進するのを阻止するように構成された組織把持特徴部を含む、
外科用器具。
(2) 前記組織把持特徴部は、前記ワッシャの前記近位面から近位方向に延在する少なくとも1つの突出部を備える、実施態様1に記載の外科用器具。
(3) 前記組織把持特徴部が、粗い表面、環状隆起部、又は複数の節のうちの少なくとも1つを含む、実施態様1又は2に記載の外科用器具。
(4) 前記ワッシャは、前記近位面を提供する近位壁を含み、前記近位壁の中央部分は、アーチ状部分、ピーク状部分、テーパ状部分、又は溝状部分のうちの少なくとも1つを含む、実施態様1に記載の外科用器具。
(5) 前記近位壁の前記中央部分は、前記近位壁の隣接する外側部分よりも小さい厚さを有する、実施態様4に記載の外科用器具。
【0102】
(6) 前記ワッシャは、前記近位面の遠位側に環状突出部を含む、実施態様1に記載の外科用器具。
(7) 前記ワッシャは、前記近位面を提供する近位壁を含み、前記近位壁は、前記近位壁の近位側又は遠位側にコーティングを有する、実施態様1に記載の外科用器具。
(8) 前記組織把持特徴部は、前記近位面の第1の部分に沿って配置された第1の組織把持特徴部と、前記近位面の第2の部分に沿って配置された第2の組織把持特徴部とを含み、前記第1の組織把持特徴部及び前記第2の組織把持特徴部は、前記外科用器具の長手方向軸線を横断する方向に互いに離間している、実施態様1に記載の外科用器具。
(9) 前記ワッシャは、前記近位面に沿って配置された複数のワッシャ突出部を含み、前記デッキ部材は、前記デッキ表面に沿って配置された複数のデッキ突出部を含み、前記複数のワッシャ突出部及び前記複数のデッキ突出部が、前記外科用器具の発射中に協働して組織を把持し安定させるように構成されている、実施態様1に記載の外科用器具。
(10) 前記ワッシャは、環状であり、前記近位面を提供する近位壁を含み、前記ワッシャは、互いに離間し、前記近位壁によって相互接続される半径方向内壁及び半径方向外壁を更に含み、前記近位壁の少なくとも一部は、前記半径方向内壁及び前記半径方向外壁のそれぞれの厚さよりも小さい厚さを有し、前記ナイフ部材による前記近位壁の切断を促進する、実施態様1に記載の外科用器具。
【0103】
(11) 前記ステープル留めアセンブリは、前記ナイフ部材に隣接して配置された補助的な組織圧縮部材を更に含み、前記補助的な組織圧縮部材は、前記外科用器具が発射されるときに、前記ワッシャの前記近位面に対して組織を遠位方向に圧縮し、それによって、発射中に前記組織を安定させ、前記ワッシャ及び前記アンビル表面を横切って前記組織が並進することを阻止するように構成されている、実施態様1に記載の外科用器具。
(12) 前記ナイフ部材及び前記補助的な組織圧縮部材の各々は円筒形であり、前記補助的な組織圧縮部材は、前記ナイフ部材の内径よりも小さい最大外径を有する、実施態様11に記載の外科用器具。
(13) 前記補助的な組織圧縮部材の少なくとも遠位端部は、前記ナイフ部材が遠位方向に前進して組織を切断するときに、前記ナイフ部材に対して近位方向に並進可能である、実施態様11又は12に記載の外科用器具。
(14) 前記補助的な組織圧縮部材が、並進可能部材又は弾性的に圧縮可能な部材のうちの少なくとも1つを含む、実施態様11に記載の外科用器具。
(15) 前記デッキ部材は、環状であり、前記ステープル開口部は、前記デッキ表面上に複数の環状アレイ状に配置され、前記アンビル表面は、環状であり、前記ステーブル成形ポケットは、前記アンビル表面上に複数の環状アレイ状に配置され、前記ワッシャは、環状であり、前記アンビル表面の半径方向内側に配置されている、実施態様1に記載の外科用器具。
【0104】
(16) 外科用器具であって、
(a)ステープル留めアセンブリであって、
(i)中心軸に沿って遠位方向に延在するハウジング、
(ii)複数のステープルを受容するように構成されたステープル開口部の環状アレイを有するデッキ表面を含むデッキ部材、及び
(iii)前記ハウジング内に配設されたナイフ部材であって、前記ナイフ部材の遠位端部が切断縁部を含む、ナイフ部材、
を含むステープル留めアセンブリと、
(b)前記ステープル留めアセンブリと選択的に連結して、組織を圧縮し、ステープル留めし、切断するように構成されたアンビルであって、
(i)前記ステープルを成形するように構成された複数のステープル成形ポケットを含むアンビル表面、
(ii)前記アンビル表面の半径方向内側に配置された環状凹部、及び
(iii)前記環状凹部内に配置され、近位面を有する破壊可能部材、
を含むアンビルと、
を備え、
前記ナイフ部材の前記切断縁部は、前記外科用器具が発射されると、前記組織及び前記近位面を切断するように構成され、
前記近位面は、前記デッキ表面に向かって延在し、発射中に前記アンビルの半径方向に前記組織を安定させるように構成された組織把持特徴部を含む、外科用器具。
(17) 外科用器具であって、
(a)ステープル留めアセンブリであって、
(i)複数のステープルを受容するように構成された複数のステープル開口部を含むデッキ表面、
(ii)切断縁部を画定する遠位端部を有するナイフ部材、及び
(iii)前記ナイフ部材に隣接して、かつ前記デッキ表面から離れて配置された補助的な組織圧縮部材、
を備えるステープル留めアセンブリと、
(b)前記ステープル留めアセンブリと動作可能に連結されたアンビルであって、
(i)複数のステープル成形ポケットを含むアンビル表面であって、前記デッキ表面と位置揃えされて協働して、組織を圧縮しステープル留めするように構成されているアンビル表面、及び
(ii)前記アンビル表面に隣接して配置されたワッシャ、
を備えるアンビルと、
を備え、
前記ナイフ部材の前記切断縁部は、前記外科用器具が発射されたときに前記組織及び前記ワッシャの近位面を切断するように構成され、
前記補助的な組織圧縮部材の遠位端部は、前記アンビル表面又は前記ワッシャの前記近位面のうちの少なくとも1つに対して組織を遠位方向に圧縮し、それによって、発射中に前記組織を安定させ、前記ワッシャ及び前記アンビル表面を横切って前記組織が並進することを阻止するように構成されている、外科用器具。
(18) 前記補助的な組織圧縮部材の少なくとも前記遠位端部は、前記切断縁部が前記組織及び前記ワッシャの前記近位面を通して遠位方向に駆動されるとき、前記ナイフ部材に対して近位方向に移動可能である、実施態様17に記載の外科用器具。
(19) 前記補助的な組織圧縮部材は、
(A)前記外科用器具が組織上で閉じられたときに近位方向に圧縮されて、遠位方向の圧縮力を前記ナイフ部材に隣接する位置で組織に送達するように構成された弾性スプラインを有する弾性的に圧縮可能な部材、又は
(B)発射中に前記ナイフ部材と共に遠位方向に並進し、前記ナイフ部材に隣接する位置で組織に遠位方向の圧縮力を送達するように構成された並進可能部材、
のうちの少なくとも1つを含む、実施態様17又は18に記載の外科用器具。
(20) 前記ナイフ部材及び前記補助的な組織圧縮部材の各々は、円筒形であり、前記補助的な組織圧縮部材は、前記ナイフ部材の半径方向内側に配置されている、実施態様17に記載の外科用器具。
【国際調査報告】