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特表2024-541494抗菌剤に対する微生物の感受性を決定する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】抗菌剤に対する微生物の感受性を決定する方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/06 20060101AFI20241031BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C12Q1/06
C12M1/34 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531148
(86)(22)【出願日】2022-11-24
(85)【翻訳文提出日】2024-05-23
(86)【国際出願番号】 FR2022052171
(87)【国際公開番号】W WO2023094775
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】2112454
(32)【優先日】2021-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】304043936
【氏名又は名称】ビオメリュー
【氏名又は名称原語表記】BIOMERIEUX
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100229448
【弁理士】
【氏名又は名称】中槇 利明
(72)【発明者】
【氏名】テタール,ブルーノ
(72)【発明者】
【氏名】フォーレ,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ルルー,デニス
(72)【発明者】
【氏名】ロシュ,ジャン‐マルク
(72)【発明者】
【氏名】ラルマン,ジョルダンヌ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB01
4B029BB02
4B029CC02
4B029FA11
4B029FA15
4B029GB06
4B029HA04
4B063QA01
4B063QA06
4B063QA18
4B063QR74
4B063QR84
4B063QS39
4B063QX01
(57)【要約】
本発明は、抗菌剤に対する微生物株の感受性を予測する方法に関し、当該方法は、クライアントデバイス(2)のデータ処理手段(4)が:(a)抗菌剤を欠いている試料(22)における上記の株の少なくとも1つのコロニーを表す390nmから900nmのハイパースペクトル画像を得るステップ;(b)上記のコロニーに対応する上記のハイパースペクトル画像のピクセルに基づきコロニーのスペクトル(以下、「テストスペクトル」と呼ぶ)を決定するステップ;(c)上記のテストスペクトルを、所定のデータのデータベースの微生物クラス(以下、「参照微生物クラス」と呼ぶ)と比較するステップであり、上記のクラスは、種よりも低い分類学的レベルに対応し、微生物株の少なくとも1つのハイパースペクトルのスペクトルを使用して学習され、データベースは、各参照微生物クラスに対して、参照微生物クラスの抗菌剤に対する感受性を有する、ステップ;(d)抗菌剤に対する微生物株の感受性を、テストハイパースペクトルのスペクトルに最も近い参照微生物クラスに関連する感受性として決定するステップ;を実施することを含むのを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌剤に対する微生物株の感受性を予測する方法であって、クライアントデバイスのデータ処理手段が、
(a) 抗菌剤を欠いている試料における前記株の少なくとも1つのコロニーを表す390nmから900nmのハイパースペクトル画像を得るステップと、
(b) 前記コロニーに対応する前記ハイパースペクトル画像のピクセルから前記コロニーのスペクトル(以下、「テストスペクトル」と呼ぶ)を決定するステップと、
(c) 前記テストスペクトルを、所定のデータベースの微生物クラス(以下、「参照微生物クラス」と呼ぶ)と比較するステップであり、前記クラスは、種よりも低い分類学的レベルに対応し、微生物株の少なくとも1つのハイパースペクトルのスペクトルで学習され、前記データベースは、各参照微生物クラスに対して、前記参照微生物クラスの抗菌剤に対する感受性を含む、ステップと、
(d) 前記抗菌剤に対する微生物株の感受性を、ハイパースペクトルのテストスペクトルに最も近い参照微生物クラスに関連するものとして決定するステップと、
を実施することを含むのを特徴とする方法。
【請求項2】
前記比較するステップ及び前記決定するステップは、参照微生物クラスとして前記データベースの微生物株の同一性を有する監視された分類に基づく予測因子によって実行され、前記分類を訓練する段階は、
(c1) 前記データベースの微生物株ごとに様々なコロニーのハイパースペクトルのスペクトルを取得するステップと、
(c2) 前記様々なコロニーのハイパースペクトルのスペクトルで前記分類を訓練するステップと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記予測因子は、畳み込み人工ニューラルネットワークである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(b)は、前記試料における前記コロニーを検出するように前記ハイパースペクトル画像をセグメント化することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(b)は、前記コロニーの前記スペクトルを平滑化及び/又は正規化することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(a)は、前記クライアントデバイスに接続された観察装置によって前記ハイパースペクトル画像を取得することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
サーバのデータ処理手段が、ハイパースペクトル画像又は既に分類されたコロニーのスペクトルの訓練データベースから自動分類モデルのパラメータを学習するステップ(a0)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記微生物株は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)株であり、前記抗菌剤はメチシリンである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
抗菌剤に対する微生物の感受性を決定するためのシステムであって、データ処理手段を含む少なくとも1つのクライアントデバイスを含み、前記データ処理手段は、
- 試料における前記微生物の少なくとも1つのコロニーを表すハイパースペクトル画像を得ること、
- 前記コロニーに対応する前記ハイパースペクトル画像のピクセルから前記コロニーのスペクトル(以下、「テストスペクトル」と呼ぶ)を決定すること、
- 前記テストスペクトルを、所定のデータベースの微生物クラス(以下、「参照微生物クラス」と呼ぶ)と比較することであり、前記クラスは、種よりも低い分類学的レベルに対応し、微生物株の少なくとも1つのハイパースペクトルのスペクトルで学習され、前記データベースは、各参照微生物クラスに対して、前記参照微生物クラスの抗菌剤に対する感受性を含むこと、
- 前記抗菌剤に対する微生物株の感受性を、ハイパースペクトルのテストスペクトルに最も近い参照微生物クラスに関連するものとして決定すること、
を実施するように構成されることを特徴とするシステム。
【請求項10】
前記ハイパースペクトル画像を取得するための観察装置をさらに含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
コンピュータプログラムであって、前記プログラムがコンピュータ上で実行されるときに、抗菌剤に対する微生物の感受性を決定するために請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法を実行するためのコード命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項12】
抗菌剤に対する微生物の感受性を決定するために請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法を実行するためのコード命令を含むコンピュータプログラムを格納するコンピュータ装置により読み取り可能な記憶手段。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物学的分析の分野に関し、特に、微生物の特徴付け、とりわけ、抗菌剤に対する酵母、カビ、及び細菌の感受性又は耐性の性質の予測に関する。
【0002】
有利に、本発明は、観察可能な培地において増殖した細菌、カビ、又は酵母の1つ以上のコロニーのハイパースペクトル画像の分析に適用される。
【背景技術】
【0003】
微生物、特に病原菌のin vitro診断の分野において、微生物の特徴付けは、好ましくは、この微生物に感染した患者に対する治療を決定するために、その種及び抗菌剤に対するその感受性(「アンチバイオグラム」)を特定することを含む。この目的のために、複雑な微生物学的プロセスが、通常、実験室で実施され、このプロセスは、微生物の他の特性、特にその界(例えば、酵母又は細菌等)、及び細菌に関しては、そのグラム型又はその発酵性又は非発酵性についての事前の知識を最も頻繁に必要とする。実際、この情報は、特に、最終的にその種又はそのアンチバイオグラムを決定するために、微生物に適応する培地又は抗菌剤のタイプが選択されるのを可能にする。例えば、本出願人によって販売されているAPI(登録商標)微生物同定ギャラリーの選択は、同定されることになる微生物の界(例えば、酵母対細菌等)又は細菌株のグラム型の知識に基づく。同様に、本出願人によって販売されているVitek(登録商標)2のシステムを使用した細菌株のアンチバイオグラムの決定は、当該株のグラム型及び発酵性又は非発酵性の機能としてのカードの選択に基づく。また、同定されることになる微生物が酵母又は細菌であるかに応じて異なるマトリックスを使用するMALDI-TOF質量分析による同定を引用することも可能である。従って、この情報を可能な限り早く知ることによって、微生物学的プロセスは最適化され、特にそのプロセスを加速することによって、又は使用される消耗品の量を減らすことによって、微生物学的プロセスは最適化される。
【0004】
歴史的に、これらの特性の各々は、かなりの数の手動ステップ(付着、染色、媒染、洗浄、過染色等)を含む技術を使用して決定され、従って、実施するのに時間がかかる。
【0005】
特許文献1は、細菌株のグラム型及び発酵性を決定する方法を記載しており、この方法は自動的であり、これらの特徴を決定するために細菌又はその培地を標識又は染色することを必要としない。この目的のために、マルチスペクトルイメージングシステム又はハイパースペクトルイメージングシステムとさえ呼ばれるイメージングシステムが使用される。これは、高いスペクトル分解能を有するシステムであり、かなりの数のチャンネルを有するペトリ皿によって反射されるか又はそれを透過する光のデジタル画像の生成を可能にする。標準的なRGB画像は3つのチャンネルを有するけれども、HSI(「ハイパースペクトルイメージング(Hyper Spectral Imaging)」)画像は、(数ナノメートルのスペクトル分解能である)390から900nmの波長範囲にわたって数百のスペクトルチャンネルを有し得るデータキューブを形成する。次に、適した分類アルゴリズムがHSI画像に適用されることによって、示された菌株のグラムのタイプ及び発酵性又は非発酵性が決定されるのが可能になる。次に、微生物に適した培地又は抗菌剤のタイプを選択して、培地の試料における微生物の増殖の関数として、抗菌薬に対する微生物の感受性を最終的に決定することができる。
【0006】
非特許文献1は、HSI画像から微生物の種を直接決定することさえ提案している。説明したように、この情報は興味深いものであるが、微生物が抗菌剤に耐性であるかどうかを決定するにはそれだけでは十分ではなく、依然としてアンチバイオグラムを生成する必要がある。実際、黄色ブドウ球菌(S. aureus)等の同じ種でも、一部の株は耐性があり、他の株は耐性がない。例えば、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin-resistant Staphylococcus aureus))及びMSSA(メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(Methicillin-sensitive Staphylococcus aureus))は、すなわち、それぞれメチシリン抗菌薬に対して耐性又は非耐性の黄色ブドウ球菌の株と呼ばれる。
【0007】
非特許文献2は、種よりも低い分類学で微生物を分類するための解決策を提案しているが、複雑な取り扱い及び材料にとっては不利益である。実際、コロニーを単離する必要があり、次に、このコロニーのHSI画像を、「HMI」顕微鏡を使用して明確に取得する必要がある。次に、アルゴリズムが個々のスケールで1つずつ細胞を観察し、この個々の観察は分類のために使用される。
【0008】
従って、抗菌剤に対する微生物の感受性、すなわち耐性又は感度を決定するための迅速且つ効率的な解決策を有することができるということが依然として望ましい。そのような解決策は、例えば、病原微生物に感染している可能性のある患者から試料を採取すること、本発明の溶液を使用して分析用に試料を調製すること、本発明の溶液を適用すること、溶液によって提供された感受性結果の関数として抗菌剤を選択すること、次に、選択した抗菌剤を患者に適用することを含む臨床プロセスに統合される。有利に、本発明は、細菌、カビ、又は酵母の1つ以上のコロニーのハイパースペクトル画像の分析に適用可能であり、それらの細菌、カビ、又は酵母の1つ以上のコロニーは、培地において増殖するものであり、さらに、マーカー若しくは染色を使用することなく、個々のスケールで細胞を観察することなく、又は顕微鏡等の高倍率の光学系を使用することなく、且つ、細菌若しくはコロニーを破壊する必要なく観察することができるものである。
【0009】
有利に、本発明は、取得されたハイパースペクトル画像内の一部のピクセルを、特に10を超えるピクセルをコロニーが占めるとすぐに適用可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO2019/122732
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Arrigoni, Turra and Signoroni, entitled, “Hyperspectral image analysis for rapid and accurate discrimination of bacterial infections: A benchmark study”
【非特許文献2】Park et al., entitled, “Classification of Salmonella Serotypes with Hyperspectral Microscope Imagery”
【非特許文献3】“MLST revisited: the gene-by-gene approach to bacterial genomics”, by Martin C.J. Maiden, Nature Reviews Microbiology, 2013
【発明の概要】
【0012】
本発明の目的は、抗菌剤の存在なしに培地上で増殖した微生物コロニーのハイパースペクトルイメージングを使用して、上記の抗菌剤に対する微生物の感受性を予測することである。
【0013】
この目的のために、本発明の目的は、抗菌剤に対する微生物株の感受性を予測する方法であり、当該方法は、クライアントデバイスのデータ処理手段が:
(a) 抗菌剤を欠いている試料における上記の株の少なくとも1つのコロニーを表す390nmから900nmのハイパースペクトル画像を得るステップ;
(b) 上記のコロニーに対応する上記のハイパースペクトル画像のピクセルからコロニーのスペクトル(以下、「テストスペクトル」と呼ぶ)を決定するステップ;
(c) 上記のテストスペクトルを、所定のデータベースの微生物クラス(以下、「参照微生物クラス」と呼ぶ)と比較するステップであり、上記のクラスは、種よりも低い分類学的レベルに対応し、微生物株の少なくとも1つのハイパースペクトルのスペクトルで学習され、データベースは、各参照微生物クラスに対して、参照微生物クラスの抗菌剤に対する感受性を含む、ステップ;
(d) 抗菌剤に対する微生物株の感受性を、ハイパースペクトルのテストスペクトルに最も近い参照微生物クラスに関連するものとして決定するステップ;
を実施することを含むのを特徴とする。
【0014】
言い換えると、390nmから900nmのハイパースペクトルイメージングは、2つの微生物株がクローンであるか又は同じ株に由来し、従って抗菌剤に対して同じ感受性を共有することを予測するのに十分な情報を有するということを本発明者等は発見した。あるクラスの感受性を知ることによって、新しい微生物がそのクラスに属することを予測することにより、新しい微生物はそのクラスの感受性を予測することができる。
【0015】
「微生物クラス」という用語は、本明細書において、種よりも低い分類学的レベルで、特に株レベルで微生物の同一性を特徴付ける任意のデジタルオブジェクトを意味すると理解され、そのオブジェクトを用いて、コロニーのハイパースペクトルのスペクトルを、適した測定基準を使用して比較して、そのコロニーが上記のクラスに属するかどうかを決定することができる。微生物クラスは、例えば、監視される機械学習アルゴリズム若しくは監視されない機械学習アルゴリズムによって、又は参照ハイパースペクトルのスペクトルによって学習されるクラスであり得る。
【0016】
好ましい実施形態によると、比較するステップ及び決定するステップは、参照微生物クラスとしてデータベースの微生物株の同一性を有する監視された分類に基づく予測因子によって実行され、分類を訓練する段階は:
(c1) データベースの微生物株ごとに様々なコロニーのハイパースペクトルのスペクトルを取得するステップ;
(c2) 様々なコロニーのハイパースペクトルのスペクトルで分類を訓練するステップ;を含む。
【0017】
言い換えると、試験を受けるコロニーのスペクトルと比較されるであろう微生物株を表すスペクトルを決定するのではなく、この実施形態は、微生物株の様々なコロニーから得られたハイパースペクトルのスペクトルからクラスを学習し、これによって、測定誤差、照明の変動性、又は生物学的性質を有するスペクトルの変動性(スペクトルを変更するコロニーの可変厚、可変色等)等、スペクトルの取得におけるいかなる変動も考慮されるのが可能になる。
【0018】
より具体的には、予測因子は、畳み込み人工ニューラルネットワークである。好ましくは、データベースは、まだ列挙されていない新しい株、ハイパースペクトルのスペクトルの株内変動性を考慮するために、又は試料の調製及び異なる照明から生じるデータを組み込むために、頻繁に更新される。そのような予測因子の使用は、それが組み込む前処理(例えば、1つ以上の畳み込み層によって変数のサイズを小さくすることによって特徴を抽出すること等)が先験的に設定されないため、処理の柔軟性を提供する。
【0019】
本発明の実施形態によると:
- ステップ(b)は、試料における上記のコロニーを検出するように上記のハイパースペクトル画像をセグメント化することを含み;
- ステップ(a)は、上記のクライアントデバイスに接続された観察装置によって上記のハイパースペクトル画像を取得することを含み;
- 当該方法は、サーバのデータ処理手段が、ハイパースペクトル画像又は既に分類されたコロニーのスペクトルの訓練データベースから上記の自動分類モデルのパラメータを学習するステップ(a0)を含み;
- 微生物株は黄色ブドウ球菌株であり、抗菌剤はメチシリンである。
【0020】
本発明のさらなる目的は、抗菌剤に対する微生物の感受性を決定するためのシステムであり、当該システムは、データ処理手段を含む少なくとも1つのクライアントデバイスを含み、上記のデータ処理手段は:
- 試料における上記の微生物の少なくとも1つのコロニーを表すハイパースペクトル画像を得ること;
- 上記のコロニーに対応する上記のハイパースペクトル画像のピクセルからコロニーのスペクトルを決定すること;
- 上記のテストスペクトルを、所定のデータベースの微生物クラス(以下、「参照微生物クラス」と呼ぶ)と比較することであり、上記のクラスは、種よりも低い分類学的レベルに対応し、微生物株の少なくとも1つのハイパースペクトルのスペクトルで学習され、データベースは、各参照微生物クラスに対して、参照微生物クラスの抗菌剤に対する感受性を含むこと;
- 抗菌剤に対する微生物株の感受性を、ハイパースペクトルのテストスペクトルに最も近い参照微生物クラスに関連するものとして決定すること;
を実施するように構成されることを特徴とする。
【0021】
一実施形態によると、当該システムは、上記のハイパースペクトル画像を取得するための観察装置をさらに含む。
【0022】
本発明のさらなる目的は、プログラムがコンピュータ上で実行されるときに、抗菌剤に対する微生物の感受性を決定するための上記の方法を実行するためのコード命令を含むコンピュータプログラム製品である。
【0023】
本発明のさらなる目的は、抗菌剤に対する微生物の感受性を決定するための上記の方法を実行するためのコード命令を含むコンピュータプログラム製品を格納するコンピュータ装置により読み取り可能な記憶手段である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明のさらなる特徴及び利点は、以下の好ましい実施形態の説明を読むことによって明らかになる。この説明は、添付の図面を参照して提供される。
図1】本発明による方法を実施するためのアーキテクチャの図である。
図2a】本発明による方法の実施形態で使用される試料における微生物を観察するための装置の第1の実施形態を示した図である。
図2b】本発明による方法の好ましい実施形態で使用される試料における微生物を観察するための装置の第2の実施形態を示した図である。
図3a】抗菌剤に対して耐性を有するクラスのコロニースペクトルの一例を示した図である。
図3b】抗菌剤に対して感受性を有するクラスのコロニースペクトルの一例を示した図である。
図4】本発明による方法の好ましい実施形態のステップを示した図である。
図5】本発明による方法の好ましい実施形態で使用される畳み込みニューラルネットワークアーキテクチャの一例を示した図である。
図6】本発明による畳み込みニューラルネットワークに基づく予測因子の混同行列を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
アーキテクチャ
本発明は、抗菌剤に対する所与の種の微生物の感受性を決定する方法に関する。上記の微生物は、典型的には、細菌、カビ、又は酵母であり(以下の説明では黄色ブドウ球菌の例が使用されているが、これは大腸菌(E. coli)、クロストリディオイデス・デフィシル(C. difficile)等であってもよく)、上記の抗菌剤は、酵母及びカビに関連する抗真菌剤又は抗菌薬である(従って、特にメチシリンは黄色ブドウ球菌に対して一般的に好まれる抗菌薬であったが、例えばバンコマイシンも同様であった)。
【0026】
後述するように、この方法は、機械学習コンポーネント、特に、サポートベクターマシン(SVM)又は畳み込みニューラルネットワーク(CNN)の中から選択される分類モデルを含み得る。
【0027】
より具体的には、当該方法は、微生物のハイパースペクトル画像と呼ばれる画像を分類する方法であり、入力又は学習データが画像タイプのものであり、試料22における上記の微生物の少なくとも1つのコロニーを表すように分類する方法である(言い換えると、それは、少なくとも1つのコロニー、一般的には複数のコロニーが可視であり、すなわち、検査技師によって肉眼で検出可能であるか、又はそれ自体が知られているセグメンテーションアルゴリズムによって画像内で検出可能である試料の画像を含む。一例として、コロニーは、画像内で10ピクセルを超えるサイズに達するとすぐに検出可能である)。試料22は、任意の培地又は反応培地であり得るけれども、典型的にはペトリ皿に注がれた寒天である上記の微生物の培地に適応する。HSI画像と示されたハイパースペクトル画像の概念が以下で参照される。
【0028】
本方法は、サーバ1及びクライアントデバイス2によって、図1において示されているアーキテクチャ内で実施される。サーバ1は、(学習方法を実施する)学習装置であり、クライアントデバイス2は、(抗菌剤に対する微生物の感受性を決定する方法を実施する)操作装置、例えば、医師、病院、又は微生物学研究所の端末である。
【0029】
2つの装置1、2を統合することは非常に可能であるが、好ましくは、サーバ1は遠隔装置であり、クライアントデバイス2は、消費者向け装置、特にデスクトップコンピュータ、ラップトップ等である。クライアントデバイス2は、有利に、観察装置10に接続されており、これにより、典型的には、上記の入力画像を直接処理するために、入力画像を直接取得することができ;或いは、入力画像は、クライアントデバイス2にロードされることになる。
【0030】
いずれの場合も、各装置1、2は、典型的には、データを交換するために、インターネット等のワイドエリアネットワーク又はローカルネットワークにリンクされた遠隔のコンピューティングデバイスである。各装置は、プロセッサタイプのデータ処理手段3、4と、本発明による方法を実施するためのコンピュータ命令全てを格納する、コンピュータメモリ、特に固定メモリ、例えばフラッシュメモリ又はハードディスク等のデータ記憶手段5、6とを含む。クライアントデバイス2は、典型的には、インタラクションのためのスクリーン等のユーザインタフェース7を含む。
【0031】
サーバ1は、有利に、考慮される種に関するデータベースを格納し、データベースは、その種に属する微生物株のリストを含み、この株の各々に対して:
- 株のコロニーを学習するためのハイパースペクトルのスペクトル、すなわち、既に分類されたオブジェクトのセット;
- 抗菌剤に対する株の感受性又は耐性に関するデータ;
- 任意的に、試験条件に関するデータ;
を含む。
【0032】
取得
説明したように、本方法が、試料22、特に、寒天が注がれ、任意の様式で得られた1つ以上の微生物株を含有する液体試料を広げた後に微生物コロニーの増殖を可能にする栄養培地を形成するペトリ皿における上記の微生物の少なくとも1つのコロニーを表す入力として任意のハイパースペクトル画像を直接得ることができるとしても、本方法は、好ましくは、観察装置10によって供給されたデータから入力画像を得るステップ(a)から開始される。
【0033】
既知の様式で、当業者は、特に特許文献1に記載されているようなハイパースペクトルイメージング技術を使用することができる。
【0034】
ハイパースペクトル画像は、従来の3チャンネルRGB画像と比較して、多数のスペクトルチャンネル、特に少なくとも7の、有利には少なくとも20の、及び潜在的には200を超えるスペクトルチャンネルを含む(223のチャンネルの例が使用される)画像を意味すると理解される。一般に、装置10は、単に試料22のHSI画像を取得することができればよく、従って、その高い倍率が焦点合わせを難しくする顕微鏡を必要としないという点で、特に非特許文献2に記載されているものと比較して「シンプル」である。
【0035】
次に、図2a及び2bに対応する装置10の2つの可能な実施形態が記載される。
【0036】
図2aを参照すると、装置10は、例えば、参照ハイパースペクトルイメージングシステム、すなわち、Resonon, Montana, USAによって販売されている「Pika II」である。この装置は、有利に:
- 例えば[λ最小;λ最大]=[390nm;900nm]の波長範囲において感受性がある、基本センサのアレイを含むデジタルセンサ、例えば、CCD又はCMOS型デジタルセンサ等;及び、センサによって取得されることになる波長を選択するための光分散素子又は分光器;で構成されている「ハイパースペクトル」カメラ18;
- カメラ18のデジタルセンサ上の、ハイパースペクトル画像が取得されることになる試料22の光学画像に焦点を合わせる対物レンズ20;
- 例えば2又は4のランプ等、例えば1つ以上の同種ランプで構成されるフロントライティング24であって、[λ最小;λ最大]の範囲の光を発する、及び、試料22の均一な前方照明を提供することができ、例えば、照明は白色光ランプタイプのものである、フロントライティング24;
- 上記の範囲の試料22の均一な後方照明を提供するために、例えば、白色光LEDのマトリクスで構成されるリアライティング26;
- 試料22を支持し、走査によって完全な画像を得るために試料が対物レンズ20の前を通過するのを可能にするキャリッジ28;
を含む。
【0037】
装置10は、例えば、160マイクロメートルのサンプリングレート(300マイクロメートルと推定される空間分解能)、及び[λ最小;λ最大]の範囲にわたって数ナノメートルのスペクトル分解能で、90ミリメートル×90ミリメートルを測定する領域の画像を取得するように構成される。200のチャンネルは、約500nmの範囲を超えることができる。特に、対物レンズ20の視野及び被写界深度は、1cmまで、好ましくは0.9cmまで、さらにより好ましくは0.5cmの半径で完全なコロニーを含み得る画像を得るように選択される。
【0038】
従って、装置10は、試料22によって反射された光のデジタルHSI画像を生成し、この画像は、実際には3次元であるため、誤って「ハイパーキューブ」と呼ばれる。すなわち、2つの空間次元及び1つのスペクトル次元であり、各ピクセル(又は、HSI画像の3次元的性質のため、正しくはボクセル)は、スペクトルチャンネルについて試料22の一点で測定された放射輝度を表す。
【0039】
一般的に「光度」と呼ばれるピクセルの放射輝度は、この場合、例えばデジタル写真の分野でそれ自体が知られているように、露光期間を通じてカメラ18のセンサの対応する基本感受性部位の表面における入射光の量に対応する。
【0040】
装置10は、カメラ18によって生成されたHSI画像を処理する、及び/又は、全てをクライアントデバイス2に委ねるように構成されたオンボードデータ処理手段を含み得る。
【0041】
これらの処理手段には、全ての場合において、本発明による方法を実施するためのコンピュータ命令、この実施に有用なパラメータ、及び中間計算及び最終計算の結果を格納するためのパラメータ、装置10によって生成された画像を格納するためのメモリ(RAM、ROM、キャッシュ、マスメモリ等)のセットが提供される。クライアントデバイス2は、説明したように、当該方法の最終結果を表示するための表示スクリーン7を任意的に含む。単一の処理ユニットが記載されているけれども、本発明が、いくつかの処理ユニット(例えば、HSI画像を前処理するためのカメラ18内のオンボードユニット、及び残りの処理を実施するためのクライアントデバイス2のユニット4等)によって実行される処理にも適用されることは明らかである。さらに、クライアントデバイス2のインターフェース7は、例えば、オペレータが利用できるキーボード/マウス及びドロップダウンメニュー、ペトリ皿上に存在し且つ試料22に関する情報を含むバーコード/QRコード(登録商標)を読み取るバーコード/QRコード(登録商標)リーダー等によって、試料22に関するデータ、特に、予測が培地に依存する場合に使用される培地のタイプが入力されるのを可能にし得る。
【0042】
図2bを参照すると、第2の実施形態に従って、装置10は、例えば、対物レンズ20とカメラ32のセンサとの間で対物レンズ20の前に配置されたスペクトルフィルタのセット36に結合されたカメラ34、有利には高空間分解能CMOS又はCCDカメラを代替的に含み得る。フィルタのセット36は、ナンバーNFの別個のバンドパスフィルタで構成され、各々が、50nm以下、好ましくは20nm以下の半値全幅(FWHM)のスペクトル幅で、範囲[λ最小;λ最大]の一部の光のみを透過するように構成されている。セット36は、例えば、典型的には24までの異なるフィルタを収容することができるフィルタホイールであり、このホイールは、データ処理ユニットによって制御され、データ処理ユニットは、上記のフィルタがカメラの前を通過する、及び上記のフィルタの各々について画像キャプチャを制御するようにホイールを作動させる。
【0043】
方法
入力HSI画像の「分類」は、画像を記述するあり得るクラスのセットの中から少なくとも1つのクラスを決定することを含む。本発明の方法は、試験されることになる微生物が既にデータベースに列挙されている株の1つに属するかどうかを決定するために自動分類モデルを使用することを提案するものであり、例えば、抗菌剤に対する微生物の感受性を直接決定するため、又は微生物が特定のステレオタイプに属するかどうかさえも決定するために自動分類モデルを使用することを提案するものではない。
【0044】
特に、それぞれメチシリン耐性の黄色ブドウ球菌(MRSA)及びメチシリン感受性の黄色ブドウ球菌(MSSA)のコロニーに対するスペクトルの複数の例を各々が表している図3a及び3bを参照すると、2つのスペクトルは全く同じ外観を有しているわけではなく、従って、新しい黄色ブドウ球菌のコロニーの感受性又は耐性の性質を直接識別する分類の可能性があるということに留意すべきである。しかし、そのような感受性予測因子の性能は、臨床又は産業微生物学の分野において十分でないことを本発明者等は見出した。例えば、GaussianカーネルSVM予測因子の性能は、BCRにおいて70%でプラトーである。
【0045】
図4を参照すると、当該方法は、ハイパースペクトル画像を得るステップ(a)の後で、コロニーのスペクトルを、上記のコロニーに対応する上記のハイパースペクトル画像のピクセルから決定するステップ(b)を含む。
【0046】
「コロニーのスペクトル」という用語は、周波数の関数としてコロニーのスケールに対して測定された光強度を表す曲線を意味すると理解される。数学的に、これは、HSI画像のチャンネル数に関するサイズベクトル(すなわち、本明細書において提供される例では223)である。
【0047】
好ましくは、このスペクトルは、上記のコロニーに対応する上記のハイパースペクトル画像のピクセル上の平均スペクトルとして決定される。実際、念のために説明すると、HSI画像は、各空間ピクセルに対して複数の対応する強度値を含む。
【0048】
この点において、ステップ(b)は、試料22において上記のコロニーを検出するように上記のハイパースペクトル画像をセグメント化し、次に、セグメント化されたピクセルにわたってチャンネル単位で強度を平均することによって典型的に説明されるように、スペクトルを決定することを有利に含む。例えば、ステップ(b)は、(例えば、画像内の丸いオブジェクトを選択するフィルタを適用すること(例えば、ハフ変換等)によって)コロニーを自動的に検出すること、及び/又は、例えば、検査技師によってコロニーを選択する手動のステップを含む。言い換えると、コロニーのピクセルあたりn=223のサイズベクトルがあり、これらのベクトルの平均がコロニーを表すベクトルにされる。実際に、コロニーは、一般的に、最大サイズ11×11のHSI画像のゾーンにわたって広がっているため、平均は、約百のベクトルに対してのみ提供される必要がある。
【0049】
ハイパースペクトル画像が上記の微生物の複数のコロニーを表す場合、本発明による方法は、各コロニー、又は、例えば、培地内のサイズ又は位置に関する基準に従って選択されたコロニーのセットに適用することができる。
【0050】
一般に、セグメント化は、フィラメント又はダスト等のアーチファクトを除去することによって、関心のあるコロニー全てが検出されるのを可能にする。セグメント化は、任意の既知の様式で実施することができる。
【0051】
ステップ(b)は、有利に、スペクトルの処理、特にスペクトルの平滑化及び/又は正規化を含む:
- 平滑化は、例えば、移動平均を決定することによって、おそらくアーチファクトであるピークを除去することを含む;
- 正規化は、スペクトルを比較可能にすることを目的とし、特に、スペクトルから平均を減算し、それをその標準偏差で除算することを含む標準正規化(SNV)技術を使用する。
【0052】
学習データベースが参照スペクトルを直接格納する場合、それらは、好ましくは、必要に応じて同じ平滑化及び/又は正規化を受けたに違いないということに留意するべきである。
【0053】
分類
ステップ(c)では、(必要に応じて平滑化及び/又は正規化された)上記のコロニーのスペクトルは、説明したように、自動分類モデルによって、データベースにおいて列挙された株の同一性で構成された微生物クラスの中から直接分類される。複数のスペクトルが決定された場合、各スペクトルを分類することができ、結果を集計することができる。
【0054】
自動分類モデルは、説明したように、サポートベクターマシン(SVM)又は畳み込みニューラルネットワーク(CNN)であり得る。SVMの場合、例えば、RBE(放射基底関数)カーネルSVMが選択される。
【0055】
CNNの場合、例えば、図5において示されているタイプのアーキテクチャが選択され、これは、本方法を実施するのに特に適している。従来、このアーキテクチャは、(入力が画像ではなくスペクトル、すなわち1次元のオブジェクトであるため)1つ以上の1D畳み込み層、特徴マップの深さを増加させるための活性化層(例えば、ReLU関数等)、及び特徴マップのサイズが(一般的に2分の1に)縮小されるのを可能にする1Dプーリング層(この場合、最大値プーリング)で構成された一連の「畳み込みブロック」を有利に含む。2つの畳み込みブロックで十分であり得るため、非常に好ましくは、本CNNは2つの畳み込みブロックのみを含むということは注目に値する。
【0056】
従って、図5の例において、CNNは、説明したように、3つのブロックに分布された12の層を用いて開始される。最初のブロックは、入力としてスペクトルを受け取り(従って、223サイズのオブジェクトを形成し)、深度を16に増加させる二重畳み込み+活性化シーケンス、次に、最大値プーリング層(全体的な平均プーリングを使用することも可能である)を含み、出力として111×16サイズの特徴マップを有する(サイズはスペクトル次元に従って2で除算される)。
【0057】
2番目のブロックは、最初のブロックと同一のアーキテクチャを有し、新しい二重畳み込み+活性化からの出力として、111×32サイズの特徴マップ(深度は倍になる)を生成し、最大値プーリング層からの出力として、55×32サイズの特徴マップを生成する(スペクトルサイズは新たに2分の1に減少する)。
【0058】
3番目のブロックは、最初の2つのブロックと同一のアーキテクチャを有し、新しい二重畳み込み+活性化からの出力として、55×32サイズの特徴マップ(深さは変更されない)を生成し、最大値プーリング層からの出力として、27×32サイズの特徴マップを生成する(スペクトルサイズは新たに2分の1に減少する)。
【0059】
最後の畳み込みブロック(この場合は3番目のブロック)の出力において、CNNは、このブロックからの(最も「詳細な」情報を有する)最終的な特徴マップ出力をベクトル(1次元オブジェクト)に変換する「平坦化(flattening)」層を有利に含む。従って、例えば、27×32サイズの特徴マップは、27*32=864であるベクトルに切り替わる。どのレベルでもマップ/フィルタのサイズに制限はないこと、及び、上述のサイズは単なる例であることを理解されたい。
【0060】
最後に、従来通り、これは、1つ以上の全結合層(図5において示されているFC又は「dense」層)及び任意的に最後の活性化(activation)層、例えば、ソフトマックス層等をもたらす。示されている例では、第1のdense層は、864サイズのベクトルをより小さい256サイズのベクトルに変換し(これには、(864+l)*256=22,1440のパラメータが必要であり、これは、CNNのパラメータ全ての90%であり)、さらに、第2のFC層は、864サイズのベクトルをサイズCの最終ベクトルに変換し、Cはクラスの所望の総数であり、上述の例では2、5、又は11である(これには(256+1)*Cのパラメータが必要である)。
【0061】
好ましくは、CNNは、畳み込みブロックのシーケンス、次に平坦化層、最後に1つ以上の全結合層で構成される(すなわち、正確にそれらを含む)。
【0062】
従って、パラメータの総数は200,000ほどであり、(一般的に数千万のパラメータがある)CNNとしては著しく少ないことが分かる。従って、本CNNは、適度なコンピューティングリソースを有するクライアントデバイスを含む多くのクライアントデバイス2によって使用することができる。
【0063】
ここでも、「直接分類」又は「エンドツーエンド」という用語は、上記のコロニーの少なくとも1つの特徴マップの事前分類又は個別抽出を行わないことを意味すると理解されることに留意するべきであり:CNNは、特徴マップの形で内部状態を自然に有するが、これらのマップは決してCNNの外部に戻されず、CNNは出力として分類の結果のみを有することが理解される。
【0064】
学習
好ましくは、当該方法は、サーバ1のデータ処理手段3によって、学習データベースからの自動分類モデルのパラメータを学習するステップ(a0)を含み得る。実際、このステップは、典型的には、特にリモートサーバ1によってかなり上流で実施される。説明したように、学習データベースは、それらのクラス(すなわち、微生物株の同定)に関連する全ての場合において、特定の量の学習データ、特にコロニーのハイパースペクトル画像を含んでもよく、或いはスペクトルから直接得てもよい。
【0065】
モデルの学習は、選択されたモデルに適応した、当業者に知られている任意の方法で実行することができる。
【0066】
実施形態全てにおいて、学習されたモデルのパラメータは、必要であれば、分類に使用するためにクライアントデバイス2のデータ記憶手段21に格納することができる。同じモデルを多くのクライアントデバイス2に含めることができるが、1つの学習ステップのみが必要であるということに留意するべきである。
【0067】
好ましくは、考慮される微生物種に対する学習データベースは、以下のように形成される。以下のことは、上記の種の各株に対して実行される:
- いくつかの試料、好ましくは少なくとも3つの試料が生成され、例えば、抗菌剤もマーキング剤又は染色剤も含有しない栄養寒天を注いだいくつかのペトリ皿が生成され、その寒天の上には、上記の株のコロニーが増殖する;
図2において示されているような装置を使用して、各試料の少なくとも1つのコロニー、好ましくは、ペトリ皿あたり、ペトリ皿の中心から異なる距離に配置されたいくつかのコロニーのハイパースペクトルのスペクトルが取得及び格納され、上記のようにこれらのスペクトルは処理される。最初の2つの試料のスペクトルが、株の微生物クラスを学習するために使用され、他の試料(例えば、増殖を行うときの3番目の試料)のスペクトルは、学習の性能を試験するために使用される。任意的に、装置の特徴の違いによって生じるスペクトルの可変性(例えば、装置間の光源の可変性等)を捕捉するために、異なる捕捉装置を使用して、いくつかの試料で取得を実行することもできる;
- 例えば、本出願人により販売されているVitek(登録商標)2、又は、従来技術においてそれ自体はよく知られているeテスト若しくは拡散ディスクの使用、及びその格納によって、抗菌剤に対する株の感受性の表現型測定が行われる;
- 例えば、そのゲノムの完全な配列決定を使用し、さらに、非特許文献3において記載されているようにwgMLSTプロファイルを確立して株のゲノムが特徴付けされ、この特徴付けは格納される。
【0068】
データベース及び予測因子の更新
例えば、本発明による予測因子によって決定されるように、データベースにおいて株が列挙されておらず、これが、事前学習された微生物株クラスにおいて不確実な分類を戻す場合、上記のようにこの株を特徴付けることが有利に実行される。株のゲノムプロファイルは、格納されているゲノムプロファイルと有利に比較されて、それが実際にデータベースに格納されているものとは異なる株であるかどうかが決定される。この場合、その株について収集されたデータはデータベースに格納され、新しい学習が上記のように実行されて、列挙されていない株に対応する新しい微生物クラスが組み込まれる。
【0069】
コンピュータプログラム製品
第2及び第3の態様によると、本発明は、抗菌剤に対する微生物の感受性を決定する方法を(特に、サーバ1及び/又はクライアントデバイス2のデータ処理手段3、5上で)実行するためのコード命令を含むコンピュータプログラム製品、並びに、このコンピュータプログラム製品が存在するコンピュータ装置により読み取り可能な記憶手段(サーバ1及び/又はクライアントデバイス2のメモリ4、6)に関する。
【0070】
本発明の好ましい用途
本発明は、有利に、以下の方法に組み込まれる:
- 所与の地理的ゾーンを定める臨床又は産業環境(例えば、病院の一部門、病院全体、病院のグループ、農業食品工場、飲料水供給施設等)において関心のある株を疫学的に監視する方法であって、データベースが、上記のゾーンからサンプリングされた株で構成されている、方法。従って、本発明は、食品、環境、又は製造基準に従っていない院内疾患又は微生物汚染と戦うための2つの重要な情報アイテム:すなわち、地理的サンプリングゾーンにおいて既に見られる株との新たにサンプリングされた株の同一性又は非同一性、及び抗菌剤に対するその感受性を提供する。サンプリングゾーン(例えば、病室、生産ゾーン等)に関連するこれらのデータは、例えば、これらの病原菌が病院内又は生産工場内でどのように散在しているかに関する調査が行われるのを可能にする。病院の疫学的監視に関連して、培養物全てを知識データベースに供給するために使用することができ、それらは、感受性試験を統合するかどうかにかかわらず、微生物学的診断プロセスに関連して実施され、予防範囲媒体(prevention range media)に関する入院スクリーニングプロセスにおいて実施されるということに留意するべきである。従って、本発明は、病院に存在する様々な耐性クローンの疫学的監視を実行する可能性を提供する;
- 病原菌に感染している疑いのある患者の抗生物質療法の方法。それ自体は知られているように、患者が感染の犠牲者であると疑われる場合、一般的には、感染している株の同一性及びアンチバイオグラムを知る前に、薬効範囲が広い抗生物質の組み合わせが投与され、次に、抗生物質療法は、株のアンチバイオグラムが実行された後に任意的に変更される。微生物株は、通常、ペトリ皿上でコロニーを増殖させるいくつかの連続するステップを経ることによって特徴付けられる。本発明によって、最初の増殖の兆候から、株の同一性及び1つ以上の抗菌剤に対するその感受性の予測が利用可能であるため、臨床医は、アンチバイオグラムの結果を待つことなく治療を適応させることができる。
【0071】
実施例
MRSA及びMSSA株を同定するCNNに基づく予測因子を定めるように、本発明をメチシリンに対する黄色ブドウ球菌の50株の感受性の予測に適用した。以下の表は、学習データベースにおいて列挙されている株の各々について、ハイパースペクトルのスペクトルが取得されたコロニーの数及びメチシリンに対する感受性を特定している。
【0072】
【表1】

図6は、図5のニューラルネットワークによる株の微生物株の予測因子の混同行列を例示している。後者のグローバル精度(global accuracy)は88%であり、クラスあたりの平均精度(「バランス精度(balanced accuracy)」)は87%である。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4
図5
図6
【国際調査報告】