(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】レーダーセンサー及びライダーセンサーを備えた車両の塗装における、金属効果顔料を含有する塗料配合物の使用
(51)【国際特許分類】
C09C 3/06 20060101AFI20241031BHJP
C09C 1/64 20060101ALI20241031BHJP
C09D 17/00 20060101ALI20241031BHJP
C09D 5/36 20060101ALI20241031BHJP
C09D 5/29 20060101ALI20241031BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20241031BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C09C3/06
C09C1/64
C09D17/00
C09D5/36
C09D5/29
C09D7/61
C09D201/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531168
(86)(22)【出願日】2022-10-13
(85)【翻訳文提出日】2024-05-23
(86)【国際出願番号】 EP2022078498
(87)【国際公開番号】W WO2023094070
(87)【国際公開日】2023-06-01
(32)【優先日】2021-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516030812
【氏名又は名称】シュレンク メタリック ピグメンツ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フーバー アーダルベルト
(72)【発明者】
【氏名】シュトーター マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ウェブラー ラルフ
【テーマコード(参考)】
4J037
4J038
【Fターム(参考)】
4J037AA24
4J037CA09
4J037EE03
4J037EE11
4J037EE21
4J037FF02
4J038KA08
4J038KA15
4J038KA20
4J038NA01
4J038NA19
4J038PB07
4J038PC02
4J038PC08
(57)【要約】
本発明は、レーダーセンサー及びライダーセンサーを備えた車両の塗装における、金属効果顔料を含有する塗料配合物の使用であって、金属効果顔料が、任意に不動態化され、少なくとも1つの誘電体層で被覆された金属基材を含み、金属効果顔料が、20nm~2000nmの平均顔料厚さを有し、該平均顔料厚さの相対標準偏差が最大でも40%である、使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダーセンサー及びライダーセンサーを備えた車両の塗装における、金属効果顔料を含有する塗料配合物の使用であって、前記金属効果顔料が、任意に不動態化され、少なくとも1つの誘電体層で被覆された金属基材を含み、前記金属効果顔料が、20nm~2000nmの平均顔料厚さを有し、該平均顔料厚さの相対標準偏差が最大でも40%である、使用。
【請求項2】
前記金属基材がアルミニウムから作製される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記少なくとも1つの誘電体層が二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化鉄(III)、酸化チタン(IV)、酸化スズ(IV)、酸化クロム(III)及び酸化コバルト(III)から選択される誘電体のものである、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記金属効果顔料が干渉顔料である、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記金属効果顔料が表面コーティングを備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記平均顔料厚さの相対標準偏差が最大でも10%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記金属効果顔料が3μm~100μmの範囲の顔料直径d
50を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記金属基材が真空メタライゼーションによって得られる金属基材である、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記塗料配合物が2つ以上の前記金属効果顔料の混合物を含有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記塗料配合物が前記金属効果顔料に加えて少なくとも1つの更なる顔料を含有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
前記塗料配合物がカーボンブラックを全く含有しない、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記塗料配合物から得られる車両塗料の層厚が14μmであり、前記塗料配合物中の前記金属効果顔料の顔料質量濃度が1質量%~15質量%の範囲である場合、色距離ΔE110°が最大でも1.5である、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
前記塗料配合物から得られる車両塗装が、25~50の範囲の色相H
uv15°、少なくとも100の明度L
*15°、少なくとも150の彩度C
uv15°及び少なくとも20のアルマンフロップ指数FIを有する、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記塗料配合物から得られる車両塗装が、76GHz~81GHzの周波数範囲で最大でも30の誘電率ε及び905nmの波長で少なくとも50%の反射率Rを有する、請求項12又は13に記載の使用。
【請求項15】
前記車両が自動車、特に自走式自動車である、請求項1~14のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダーセンサー及びライダーセンサーを備えた車両の塗装における、金属効果顔料を含有する塗料配合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の車両、特に自動車は、車両の制御を容易にすると同時に乗員の安全性を高めるために多数のセンサーを備える。かかるセンサーは、多くの研究が行われている自動運転車にとって不可欠である。従来の方法で車両の周囲を記録するカメラに加えて、これらは主にレーダーセンサー及びライダーセンサーである。
【0003】
レーダーセンサーは、他の車両又は歩行者等の環境内の物体を検出し、それらの車両からの距離及びそれらの相対速度を測定するために使用される。レーダーは、「radio detection and ranging」の略称であり、無線による検出及び距離測定を意味する。したがって、レーダーセンサーは、電磁放射に基づくセンサーである。電波が放射線源によって放出され、周囲の物体から反射された電波がレーダーセンサーに登録される。ここで測定された値は、電気信号に変換され、最終的に特別な制御装置において評価される。レーダーセンサーは、主に76GHz~81GHzの周波数範囲で動作するが、原理上は他の周波数範囲も可能である。
【0004】
対照的に、ライダーセンサーは、電磁放射に基づくセンサーであり、光波を用いて距離及び速度を測定する。ライダーは、「light detection and ranging」の略称であり、光による検出及び距離測定を意味する。放射線源によって放出された光波は、視野内の物体によって反射される。距離は、いわゆる飛行時間、すなわち光が或る特定の距離を伝播するのにかかる時間から算出される。レーダーセンサーと同様に、測定された値は、電気信号に変換され、最終的に特別な制御装置において評価される。ライダーセンサーは、主に波長905nmの近赤外線で作動するが、原理上は他の波長も可能である。
【0005】
ライダーセンサーと比較して、レーダーセンサーは雨、降雪又は霧等の天候の影響を受けにくい。しかしながら、斜めの反射面が測定結果に影響を及ぼす可能性がある。したがって、現代の車両は、両方のセンサータイプの利点を活かすために、レーダーセンサー及びライダーセンサーの両方が取り付けられていることが多い。ライダーセンサーは、外側に露出していなければならず、通常はバンパーに搭載される。その理由は、車両塗装が光線を吸収又は反射するが、透過させないためである。結果として、通例プラスチック製であり、車両塗装が施された車両のパネルの裏にライダーセンサーを搭載することはできない。しかしながら、無線ビームは、プラスチック等の非導電性材料を透過することができる。審美的理由から、レーダーセンサーは、通常はそのような車両のパネルの裏側に搭載される。しかしながら、かかるパネルは、その上の車両塗装も含めて、無線放射を過度に減衰させるものであってはならない。
【0006】
したがって、可能な限り最も正確な検出及び距離測定のためには、レーダーセンサー及びライダーセンサーを備えた車両を塗装するための配合物は、十分に高い電波透過率と同時に十分に高い光波反射率を有する必要がある。
【0007】
さらに、対応する塗料配合物は、色特性(coloristics)としても知られる特定の色も有する必要がある。多くの顧客が、明るいと同時にカラフルに見える指定の色の車両塗装を望んでいる。指定の色に加えて、車両塗装は、十分に高い明度及び十分に高い彩度も有していなければならない。さらに、塗料配合物に含まれる顔料が金属効果をもたらす車両塗装は、特に魅力的と受け取られる。言い換えると、明度フロップも十分に高くなければならない。さらに、車両塗装は、十分に高い被覆力を必要とする。被覆力が十分に高くない場合、塗料配合物を相応して大きな層厚で車両に塗布する必要があり、これは、塗装コストの上昇に加えて、車両の重量の増加にもつながる。
【0008】
特許文献1には、粉体塗料及び粉体塗料を製造する方法が記載されている。特許文献2には、67°~78°の範囲の色相及び90以上の彩度を有する金色効果顔料が記載されている。特許文献3には、コーティング系及び着色効果顔料を含有する粉体コーティング組成物で基材をコーティングする方法が記載されている。特許文献4には、レーダー周波数-透明効果顔料混合物、並びにその配合物及びコーティングが記載されている。
【0009】
従来技術においては、塗料配合物の被覆力を高めるためにカーボンブラックが添加されることが多い。しかしながら、これには明度の損失が伴う。これはまた、光波に対する反射率を低下させ、ライダーセンサーの測定精度に不利な影響を与える。十分に高い被覆力を達成するために、金属効果に関与する、塗料配合物に含まれる顔料の割合を高めることもできる。しかしながら、これは電波透過率を低下させ、レーダーセンサーの測定精度に悪影響を及ぼす。その理由は、金属効果に関与する、塗料配合物に含まれる顔料が金属核を有するためである。電場内の金属の比較的高い分極能力のため、その割合が高まると電波の減衰が起こる。金属核を有しないため、誘電体である顔料も塗料配合物に使用され得る。ここでは例として真珠光沢顔料が挙げられ、これは一般にマイカ又はガラス基材を含む。しかしながら、かかる顔料の使用は金属効果と相反する。さらに、真珠光沢顔料によって十分に高い被覆力を達成することは不可能である。したがって、カーボンブラックを対応する塗料配合物に添加する必要がある。冒頭で述べたように、これは明度の損失につながり、また光波反射率を低下させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2018/258293号
【特許文献2】国際公開第2019/063372号
【特許文献3】米国特許出願公開第2003/059598号
【特許文献4】国際公開第2020/208134号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この点で、従来技術による塗料配合物で生じる上記の不利点を克服するために新たなアプローチが必要とされている。したがって、本発明の目的は、色特性及び被覆力に不利な影響を与えることなく、レーダーセンサー及びライダーセンサーを備えた車両を塗装するための使用に関して塗料配合物の要件を満たす方策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的は、特許請求の範囲に特徴付けられた本発明の実施形態によって達成される。
【0013】
したがって、本発明によれば、レーダーセンサー及びライダーセンサーを備えた車両を塗装するための金属効果顔料を含有する塗料配合物の使用であって、金属効果顔料が、任意に不動態化され、少なくとも1つの誘電体層で被覆された金属基材を含み、金属効果顔料が、20nm~2000nmの平均顔料厚さを有し、該平均顔料厚さの相対標準偏差が最大でも40%である、使用が提供される。
【0014】
本発明に従って使用される塗料配合物は、レーダーセンサー及びライダーセンサーを備えた車両の費用対効果の高い塗装を可能にし、この塗料配合物から得られる車両塗装は、十分に高い光波反射率及び十分に高い電波透過率を有するだけでなく、十分に高い明度及び十分に高い彩度も特徴とし、十分に高い明度フロップと同時に十分に高い被覆力を有する。これは、特定の幾何学的特性を有する、塗料配合物に含まれる金属効果顔料によるものである。
【0015】
本発明によると、塗料配合物は金属効果顔料を含有する。マイカ又はガラス基材を含む真珠光沢顔料とは対照的に、金属効果顔料は金属基材を含む。したがって、金属効果顔料は金属核を有する。このため、金属効果顔料では、真珠光沢顔料と比較して高い被覆力を達成することができる。必要に応じて、金属基材は不動態化される。例えば、これを自然酸化物層で覆うことができる。
【0016】
材料に関する限りにおいて、金属基材は、ここでは更に限定されない。例えば、金属基材は金属、例えば鉄、アルミニウム、銅、ニッケル、クロム、亜鉛、スズ、銀、金、白金、コバルト、ランタニド及びチタン、並びにスチール、特にステンレススチールを含むそれらの混合物又は合金から作製することができる。好ましい実施の形態においては、金属基材はアルミニウムから作製される。
【0017】
本発明によると、金属基材は少なくとも1つの誘電体層で被覆される。一般に、金属基材の表面の一部のみが少なくとも1つの誘電体層で覆われていれば十分である。例えば、金属基材の2つの主表面の一方のみが少なくとも1つの誘電体層で覆われていてもよい。加えて、金属基材の側表面を省くこともできる。しかしながら、本発明によると、任意に不動態化された金属基材の表面全体が少なくとも1つの誘電体層で覆われるため、ここでは被覆についても述べている。これは色特性の改善に寄与するだけでなく、金属効果顔料の機械的及び化学的耐性も高める。2つ以上の誘電体層が存在する場合、各誘電体層がその下の誘電体層及びその下の金属基材を被覆する。
【0018】
少なくとも1つの誘電体層が誘電体から作製される。原則として、これらは屈折率n≦1.8の低屈折率とみなされる(半)金属酸化物、例えば二酸化ケイ素(SiO2)又は酸化アルミニウム(Al2O3)等のであり、屈折率n>1.8の高屈折率とみなされる(半)金属酸化物、例えば酸化鉄(III)(Fe2O3)、酸化チタン(IV)(TiO2)、酸化スズ(IV)(SnO2)、酸化クロム(III)(Cr2O3)又は酸化コバルト(III)(Co2O3)であるが、これに限定されるものではない。例えば、他の低屈折率及び/又は高屈折率の誘電体も使用することができる。少なくとも1つの誘電体層の誘電体を適切に選択することにより、所望の色相を設定することができ、ここでは誘電体の屈折率に加えて、その層厚も色特性に影響を及ぼす。少なくとも1つの誘電体層の層厚を適切に設定すると、少なくとも1つの誘電体層の界面での入射光の反射により、可視スペクトル領域で干渉が起こる。干渉顔料とも称される、かかる金属効果顔料の場合、少なくとも1つの誘電体層の層厚は通例、少なくとも20nmである。高屈折率誘電体は干渉、ひいては色特性に大きな役割を果たす。
【0019】
所望の色を設定するために、単一の誘電体層を異なる(高屈折率)誘電体から作製することもできる。酸化鉄(III)及び酸化チタン(IV)から作製された誘電体層をここで例として挙げる。これは基本的に混合層と称される。
【0020】
干渉顔料においては、基材表面で起こる反射により金属基材が干渉に寄与し、このことは、マイカ又はガラス基材を含む真珠光沢顔料には当然当てはまらない。
【0021】
少なくとも1つの誘電体層は、必要に応じてその後の焼戻しを伴う、好適な前駆体化合物、例えばオルトケイ酸テトラエチル(Si(OC2H5)4)、塩化鉄(III)(FeCl3)又は硝酸鉄(III)(Fe(NO3)3)の加水分解によって、任意に不動態化された金属基材に適用することができる。少なくとも1つの誘電体層は、好適な前駆体化合物、例えばジ-tert-ブトキシ-ジアセトキシシラン(Si(OC(CH3)3)2(OCOCH3)2)又はペンタカルボニル鉄(Fe(CO)5)の気相分解によって適用することもできる。関連する手順は、従来技術から当業者によく知られている。
【0022】
欧州特許第1114103号においては、例えば、ケイ酸ナトリウムを用いて二酸化ケイ素から作製される誘電体層が、初めにアルミニウムから作製された金属基材に適用される。続いて、塩化鉄(III)を用いた酸化鉄(III)による湿式化学コーティングを行う。さらに、酸化チタン(IV)及び酸化スズ(IV)によるコーティングが欧州特許第1114103号に記載されている。欧州特許第0708154号から、誘電体層を適用するために加水分解と気相分解との組合せを用いる製造方法が知られている。初めに、アルミニウムから作製された金属基材に、塩基としてアンモニアを用い、オルトケイ酸テトラエチルを前駆体化合物として二酸化ケイ素を湿式化学コーティングする。このようにしてコーティングされた金属基材を乾燥させた後、ペンタカルボニル鉄を前駆体化合物として、流動床反応器内で酸化鉄(III)によるコーティングを行う。代替的には、両方の誘電体層を流動床反応器内で適用することもでき、その場合、ペンタカルボニル鉄に加えて、ジ-tert-ブトキシ-ジアセトキシシランを前駆体化合物とする。最後に、国際公開第2013/175339号から、硝酸鉄(III)を用いた酸化鉄(III)によるアルミニウムから作製された金属基材のコーティングのための純粋な湿式化学プロセスが知られている。純粋な湿式化学プロセスは、国際公開第2015/014484号及び国際公開第2020/038684号にも記載されている。
【0023】
具体的な実施の形態において、金属効果顔料は、アルミニウムから作製され、任意に不動態化された金属基材を含み、この金属基材は二酸化ケイ素の誘電体層及び酸化鉄(III)の誘電体層でこの順にコーティングされる。酸化鉄(III)から作製される誘電体層の代わりに、酸化鉄(III)及び酸化チタン(IV)から作製される誘電体層、すなわち混合層を、二酸化ケイ素から作製される誘電体層に適用することもできる。加えて、対応する低屈折率及び高屈折率の誘電体層を金属基材に交互に適用することもできる。
【0024】
必要に応じて、金属効果顔料に表面コーティングを施すことができる。限定されるものではないが、表面コーティングは有機ポリマー、シラン又はシロキサンから作製されていてもよい。かかる表面コーティングを少なくとも1つの誘電体層に適用することにより(これは表面機能化とも称される)、金属効果顔料の機械的及び化学的耐性を更に高めることができる。それぞれの手順は、特に国際公開第2015/044188号及び欧州特許第2318463号に詳細に記載されている。
【0025】
本発明によると、金属効果顔料は20nm~2000nm、好ましくは50nm~1700nm、更に好ましくは200nm~1500nmの平均顔料厚さを有する。この場合、「顔料厚さ」という用語は、金属効果顔料全体、すなわち少なくとも1つの誘電体層の厚さ及びそれに適用され得る表面コーティングの厚さを含む厚さを意味する。
【0026】
平均顔料厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)画像に基づいて測定することで決定される。手順は以下の通りである:粉末状の金属効果顔料をニトロセルロース系塗料に分散させ、アルミニウム箔に塗布する。液体系における粉末と塗料との混合比は1:10である。このようにして塗装した1cm2のアルミニウム箔の切片を、ブロードビームイオン源を用いて高エネルギーArイオンを照射して切り出し、断面を作成する。十分な導電性を確保するために、切り出した断面に5nmの薄い炭素層をスパッタリングする。次いで、走査型電子顕微鏡を用いて10000倍~30000倍の範囲の倍率で金属効果顔料の断面を画像化する。顔料厚さは、少なくとも500種の異なる金属効果顔料から決定される。次いで、平均顔料厚さは、決定された顔料厚さの算術数平均を表す。
【0027】
本発明による平均顔料厚さの相対標準偏差は、最大でも40%、好ましくは最大でも20%、更に好ましくは最大でも10%である。相対標準偏差は、変動係数としても知られ、絶対標準偏差を少なくとも500種の異なる金属効果顔料から決定された平均顔料厚さと関連付ける。したがって、平均顔料厚さの相対標準偏差は、金属効果顔料の厚さのばらつきの尺度である。相対標準偏差が小さいほど、金属効果顔料の厚さのばらつきは小さい。
【0028】
金属効果顔料のサイズ、すなわち顔料直径に関する限りにおいて、本発明は更に制限されない。通例、金属効果顔料は、3μm~100μmの範囲、例えば5μm~50μmの範囲、又は10μm~30μmの範囲の顔料直径d50を有する。この場合の顔料直径は、いわゆるd50である。d50は、サンプルの金属効果顔料の50%が指定の値よりも小さい値を示す。ここでも、少なくとも500種の異なる金属効果顔料がサンプルとなる。
【0029】
顔料直径d50は、Sympatec GmbH社(ドイツ、クラウスタール=ツェラーフェルト)から市販されている粒径分析装置を用い、DIN ISO 13320:2020-01に従うレーザー光回折に基づいて測定することによって決定される。
【0030】
金属効果顔料のアスペクト比は、最終的に平均顔料厚さ及び顔料直径d50から決定することができる。アスペクト比、すなわち顔料直径d50と平均顔料厚さとの比率は、好ましくは少なくとも3:1、例えば少なくとも4:1又は少なくとも5:1である。大きなアスペクト比は、車両の表面への塗料配合物の塗布時に金属効果顔料の整列を促進し、これは塗料配合物から得られる車両塗装の被覆力に対して特に有利な効果を有する。
【0031】
金属効果顔料の上記の特定の幾何学的特性のために、塗料配合物から得られる車両塗装は、十分に高い光波反射率及び十分に高い電波透過率に加えて、十分に高い明度及び十分に高い彩度も有し、十分に高い明度フロップと同時に十分に高い被覆力を有する。本発明者らが驚くべきことに発見したように、これは特に、最大でも40%、好ましくは最大でも20%、更に好ましくは最大でも10%の平均顔料厚さの相対標準偏差によって表される、塗料配合物に含まれる金属効果顔料の厚さのばらつきの小ささによるものである。
【0032】
少なくとも1つの誘電体層を、その層厚に関して高い精度で金属基材に適用することができるため、金属効果顔料の厚さのばらつきは、主にその製造に使用される金属基材の厚さのばらつきに依存する。厚さのばらつきが小さい金属基材の場合、少なくとも1つの誘電体層を適用した後にも厚さのばらつきが小さい金属効果顔料が結果として得られる。これは別の表面コーティングを少なくとも1つの誘電体層に適用した場合にも当てはまる。逆に、厚さのばらつきが大きい金属基材は、厚さのばらつきが大きい金属効果顔料をもたらす。金属基材の厚さの差は、或る程度まで、それに適用される少なくとも1つの誘電体層と、任意にそれに適用される表面コーティングとに反映される。
【0033】
したがって、最大でも40%、好ましくは最大でも20%、更に好ましくは最大でも10%の平均顔料厚さの相対標準偏差を満たすためには、金属効果顔料の製造において、厚さのばらつきが可能な限り小さい金属基材を使用する必要がある。
【0034】
厚さのばらつきが可能な限り小さい金属基材は、例えば真空メタライゼーションによって得ることができる。真空メタライゼーションは、PVDと略される物理蒸着の特殊な形態である。この目的のために、キャリアフィルムにアルミニウム等の金属を高真空で蒸着させ、キャリアフィルム上にナノメートル範囲の厚さの薄い金属層を生成する。次いで、溶媒を用いて金属層をキャリアフィルムから取り外し、発生する剪断力によってプレートレットに粉砕する。剥離を容易にするために、蒸着前にキャリアフィルムに離型コーティングを適用することができる。真空メタライゼーションによって得られる金属基材は、特に小さな厚さを特徴とする。したがって、その厚さのばらつきも特に小さく、そのため、これから製造される金属効果顔料は、最大でも40%、好ましくは最大でも20%、更に好ましくは最大でも10%の平均顔料厚さの相対標準偏差を満たす。
【0035】
対照的に、湿式研削によって得られる金属基材は、厚さの大幅に顕著なばらつきを有し、結果として平均顔料厚さの相対標準偏差が顕著に大きくなる。湿式研削によって得られる金属基材は、その外観により、「コーンフレーク」又は「シルバーダラー」とも称される。ラメラ型とも称される「コーンフレーク」型の金属基材は、側縁が不規則でギザギザであるのに対し、レンチキュラー型とも称される「シルバーダラー」型の金属基材では、通常は丸みを帯びている。VMPと略される「真空メタライゼーション顔料」とも称される、真空メタライゼーションによって得られる金属基材は、側縁が真っ直ぐな多角形である。これらは厚さのばらつきが特に小さいことに加え、「コーンフレーク」型及び「シルバーダラー」型の金属基材と比較して顕著に滑らかな表面も有する。好ましい実施の形態において、金属基材は、真空メタライゼーションによって得られる金属基材である。
【0036】
レーダーセンサー及びライダーセンサーを備えた車両を塗装するために本発明に従って使用される塗料配合物は、2つ以上の金属効果顔料の混合物を含有していてもよい。この場合において金属効果顔料が言及される場合、上記の特定の幾何学的特性を有する、特に厚さのばらつきが小さいものが意図される。2つ以上の金属効果顔料の混合物を使用することにより、単一の金属効果顔料を使用するだけでは容易に得ることができない色相を達成することもできる。この目的のために、塗料配合物は、金属効果顔料に加えて、マイカ又はガラスベースの真珠光沢顔料を含む、少なくとも1つの他の顔料を含有していてもよい。しかしながら、塗料配合物に含まれる顔料は、金属効果顔料に限定することもでき、すなわち塗料配合物は、この場合、金属効果顔料に加えて他の顔料を含有しない。特に、塗料配合物は、好ましくはカーボンブラック等の有機又は無機吸収顔料を含有しないか、又は最大でもその割合が小さい。冒頭で既に述べたように、カーボンブラックの添加は、明度の損失を伴う。光波反射率も低下し、これはライダーセンサーの測定精度に悪影響を及ぼす。その十分に高い被覆力のために、以下により詳細に論考されるように、本発明に従って使用される塗料配合物へのカーボンブラック等の添加は、必要とされないか、又は最大でも僅かな程度でしかない。
【0037】
塗料配合物は、顔料とは別に結合剤及び溶媒を含有し、充填剤及び/又は助剤等の他の成分が塗料配合物に含まれていてもよい。典型的な結合剤及び溶媒、並びにあらゆる種類の充填剤及び助剤が当業者に知られている。炭酸カルシウム(CaCO3)から作製されるプレートレットが、例示的な充填剤としてここで言及される。助剤の例としては、消泡剤、湿潤剤、光安定剤及びレベリング剤が挙げられる。
【0038】
塗料配合物を車両の表面に塗布した後、溶媒を蒸発させることで、車両塗装を最終的に塗料配合物から作り出す。塗料配合物の塗布は、特定の方法に限定されない。これは吹付け又は圧力噴霧器による吹付けによって好都合に行われ、ここで、塗料配合物から得られる車両塗装の層厚は、塗布時間によって調整することができる。塗料配合物が十分に高い被覆力をもたらすため、車両塗装には比較的小さな層厚で十分である。典型的な層厚は、10μm~30μmの範囲であるが、被覆力が十分に高い限りにおいて、より小さな層厚も可能である。14μmの層厚がここでは一例として挙げられる。ここでの層厚は、常に車両塗装の層厚を意味し、塗料配合物に含まれる溶媒を乾燥させ、任意にフィルム化することによって、塗料配合物の層厚と比較して減少する。
【0039】
塗料配合物中の金属効果顔料の顔料質量濃度は、通例1質量%~15質量%の範囲であるが、これに限定されない。顔料質量濃度とは、塗料配合物の総乾燥質量に対する金属効果顔料の質量分率を意味する。総乾燥質量には、金属効果顔料の質量に加えて、他の全ての不揮発性成分の質量が含まれる。以下のことが当てはまる:顔料質量濃度が高いほど、同じ層厚の車両塗装での被覆力が高くなる。
【0040】
レーダーセンサー及びライダーセンサーを備えた車両を塗装するために本発明に従って使用される塗料配合物は、十分に高い被覆力を有する。通例、塗料配合物から得られる車両塗装の層厚が14μmであり、塗料配合物中の金属効果顔料の顔料質量濃度が1質量%~15質量%の範囲である場合、色距離ΔE110°は最大でも1.5、好ましくは最大でも1.2、更に好ましくは最大でも1.0である。色距離ΔE110°は、被覆力の尺度であり、色距離が小さいほど、より高い被覆力を意味する。この場合、色距離ΔE110°が最大1.5の塗装は、不透明と表される。
【0041】
被覆力を決定するため、塗料配合物から得られる車両塗装が14μmの層厚を有するように、塗料配合物を白黒パネルに塗布する。次いで、市販の多角度分光光度計を用いて、黒と白との間の色距離をDIN 6175:2019-07に従い、配置45°/110°で測定する。
【0042】
塗料配合物から得られる車両塗装の色相は、主に塗料配合物に含まれる金属効果顔料の色特性に依存するが、マイカ又はガラスベースの真珠光沢顔料、及び有機又は無機吸収顔料等の他の顔料の添加によって影響を受けることもある。このことは、明度及び彩度、並びに明度フロップにも当てはまる。色相角とも称される色相Huv15°の例示的な値は、25~50の範囲であり、これは赤色、橙色又は金色の色調に典型的である。しかしながら、色相は何らこれに限定されるものではない。したがって、色相角は25~50の範囲外にあることもある。明度及び彩度に関する限りにおいて、明度(lightness)L*15°は、通例少なくとも100であり、彩度Cuv15°は、通例少なくとも150である。アルマンフロップ指数(Alman flop index)FIとして表される明度フロップは、通例少なくとも20である。
【0043】
色相、明度、彩度及び明度フロップを決定するために、塗料配合物を黒色の背景に塗布する。次いで、測定面に45°の角度で入射し、D65光源により放射された光線の分光反射を、DIN EN ISO 18314-3:2018-12に従い、市販の多角度分光光度計を用いて、10°の観察者に対して6つの異なる検出角度(-15°、15°、25°、45°、75°及び110°)で測定し、CIELAB及びCIEHLC色空間の対応する変数に変換する。ここで使用される市販の多角度分光光度計は、BYK-Gardner GmbH社(ドイツ、ゲーレッツリート)の装置「BYK-mac i MetallicColour」であり、これは色距離ΔE110°の決定にも使用される。アルマンフロップ指数FIは、A. B. J. Rodrigues, "Metallic flop and its measurement", J. Oil Color Chem. Assoc. 1992, 75(4), 150-153に従って算出される。
【0044】
レーダーセンサー及びライダーセンサーを備えた車両を塗装するために本発明に従って使用される塗料配合物は、十分に高い光波反射率及び十分に高い電波透過率を有する。この場合、誘電率εとも称される誘電定数は、F. Pfeiffer, "Analyse und Optimierung von Radomen fuer automobile Radarsensoren", dissertation, Technical University of Munich, 2009にも記載されているように、電波透過率を特徴付けるために使用される。誘電率εが小さいほど、電波の減衰は小さくなる。通例、塗料配合物から得られる車両塗装は、76GHz~81GHzの周波数範囲において最大でも30、好ましくは最大でも20、更に好ましくは最大でも10の誘電率εを有する。かかる誘電率では、塗料配合物は、レーダーセンサーを備えた車両の塗装に使用するのに特に適している。加えて、塗料配合物から得られる車両塗装は通例、905nmの波長で少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、更に好ましくは少なくとも70%の反射率Rを有する。かかる反射率では、塗料配合物は、ライダーセンサーを備えた車両の塗装に使用するのに特に適している。
【0045】
76GHz~81GHzの周波数範囲における誘電率εは、市販のレドームスキャナー(Radome scanner)を用いて決定される。較正後に、厚さ2mmのポリカーボネート測定プレートを使用し、塗料配合物の塗布の前後に測定する。どちらの場合も、無線ビームを測定プレートの表面に垂直に照射する。誘電率εは、最終的に測定値から決定することができ、この場合に選択された周波数範囲で一定である。ここで使用される市販のレドームスキャナーは、perisens GmbH社(ドイツ、ミュンヘン近郊のフェルトキルヒェン)の装置「Radome Measurement System」である。反射率Rは、光波を測定面に垂直に照射することにより、波長905nmで同様に決定される。
【0046】
塗料配合物は、レーダーセンサー及びライダーセンサーを備えた自動車、特に自走式自動車の塗装に有利に使用することができる。しかしながら、原理上は、本発明に従って使用される塗料配合物を用いて任意の車両を塗装することができる。
【0047】
本発明に従って使用される塗料配合物は、レーダーセンサー及びライダーセンサーを備えた車両の費用対効果の高い塗装を可能にし、この塗料配合物から得られる車両塗装は、十分に高い光波反射率及び十分に高い電波透過率を有するだけでなく、十分に高い明度及び十分に高い彩度も特徴とし、十分に高い明度フロップと同時に十分に高い被覆力を有する。したがって、本発明に従って使用される塗料配合物は、色特性及び被覆力に不利な影響を及ぼすことなく、レーダーセンサー及びライダーセンサーを備えた車両の塗装への使用に関する塗料配合物の要件を満たす。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0048】
以下の実施例は、本発明を更に説明するのに役立つが、これに限定されるものではない。
【0049】
表1に挙げる金属効果顔料(顔料a~顔料eと称する、全て市販)を用いた塗料配合物を調製した。
【0050】
顔料a及び顔料bは、Schlenk Metallic Pigments GmbH社(ドイツ、ロート)のものであり、顔料c、顔料d及び顔料eは、BASF Colors & Effects GmbH社(ドイツ、ルートヴィヒスハーフェン)のものである。金属効果顔料を、上述の測定方法に従って決定した平均顔料厚さ及び平均顔料厚さの絶対標準偏差、並びにそれから得られる平均顔料厚さの相対標準偏差とともに表1に挙げる。表1の金属効果顔料は全て、アルミニウムから作製された金属基材を含む。顔料a及び顔料bの場合、アルミニウム金属基材は、真空メタライゼーションによって得られ、顔料c、顔料d及び顔料eの場合、湿式粉砕によって得られる。顔料c及び顔料dにおいては、アルミニウム金属基材は、「コーンフレーク」型であり、顔料eにおいては、「シルバーダラー」型である。
【0051】
【0052】
塗料配合物を調製するために、表1の金属効果顔料を塗料系(セルロースアセトブチレートをベースとする一液型塗料、溶媒を含有する)に分散させた。それぞれの塗料配合物において、使用した金属干渉顔料は、純粋な色相として個々に、又は混合物として、任意に更なる顔料(単数又は複数)としてのカーボンブラックペースト(Helio Beit Pigmentpasten GmbH社(ドイツ、ケルン)のHelio Beit(商標) UN 907)及び/又は赤色顔料ペースト(Clariant AG社(スイス、ムッテンツ)のHostatint(商標) Red A-P2Y 100-ST)とともに存在していた。
【0053】
塗料配合物を調製した後、溶媒を蒸発させた後に層厚14μmの塗料が得られるようにポリカーボネート測定プレートに吹き付けた。次いで、この塗装を、その電波透過率及び光波反射率、並びにその色特性及び被覆力に関してより詳細に調べた。対応する変数を上述の測定方法に従って決定した。
【0054】
実施例1~実施例4:
色相角範囲Huv15°が33~35の橙色の色合いを有する塗装
表2に、それぞれの塗装について、使用した金属効果顔料の顔料質量濃度PMKPigmentに加えて、存在する場合には更なる顔料の顔料質量濃度PMKw.Pigmentも示す。加えて、表2には、それぞれの塗装について、76GHz~81GHzの周波数範囲における誘電率ε、波長905nmでの反射率R、色相Huv15°、明度L*15°、彩度Cuv15°、アルマンフロップ指数FI及び色距離ΔE110°の決定値が含まれる。
【0055】
【0056】
橙色の色合いに相当する33~35の範囲の色相角Huv15°は、ほぼ全面的に使用した金属効果顔料に由来するものであった。
【0057】
顔料aを用いた実施例1においては、層厚14μmで不透明状態を達成するために12質量%のPMKPigmentの顔料質量濃度が必要とされた。
【0058】
顔料c(本発明によるものではない)を用いた実施例2においては、同じ層厚で顔料質量濃度PMKPigmentも12質量%であった。しかしながら、不透明状態は達成されなかった。アルマンフロップ指数FIも低下した。
【0059】
顔料c(本発明によるものではない)を用いた実施例3においては、顔料質量濃度PMKPigmentは、同じ層厚で13.42質量%まで増加したため、不透明状態が達成された。しかしながら、これにより76GHz~81GHzの周波数範囲で誘電率εが30超の値にまで増加した。
【0060】
対照的に、顔料c(本発明によるものではない)を用いた実施例4においては、不透明状態を達成するためにカーボンブラックペーストを添加した。しかしながら、実施例1との比較から分かるように、これは色特性を犠牲にしたものであった。結果として、波長905nmでの反射率Rは、50%未満の値まで低下した。
【0061】
実施例1~実施例4に基づき、顔料aを含有する塗料配合物でのみ、十分に高い光波反射率及び十分に高い電波透過率に加えて、十分に高い明度及び十分に高い彩度も特徴とし、十分に高い明度フロップと同時に十分に高い被覆力を有する車両塗装を得ることができると結論付けることができる。
【0062】
実施例5~実施例8:
色相角範囲Huv15°が33~35の橙色の色合いを有する塗装
表3に、それぞれの塗装について、使用した金属効果顔料の顔料質量濃度PMKPigmentに加えて、存在する場合には更なる顔料の顔料質量濃度PMKw.Pigmentも示す。加えて、それぞれの塗装について、表3には、76GHz~81GHzの周波数範囲における誘電率ε、波長905nmでの反射率R、色相Huv15°、明度L*15°、彩度Cuv15°、アルマンフロップ指数FI及び色距離ΔE110°の決定値が含まれる。
【0063】
【0064】
橙色の色合いに相当する33~35の範囲の色相角Huv15°は、ほぼ全面的に使用した金属効果顔料に由来するものであった。
【0065】
顔料aを用いた実施例5においては、層厚14μmで不透明状態を達成するために12質量%のPMKPigmentの顔料質量濃度が必要とされた。実施例5は実施例1と同じである。
【0066】
顔料e(本発明によるものではない)を用いた実施例6においては、同じ層厚で顔料質量濃度PMKPigmentも12質量%であった。しかしながら、不透明状態は達成されなかった。アルマンフロップ指数FIも低下した。
【0067】
顔料e(本発明によるものではない)を用いた実施例7においては、顔料質量濃度PMKPigmentは、同じ層厚で19.03質量%まで増加したため、不透明状態が達成された。しかしながら、これにより76GHz~81GHzの周波数範囲で誘電率εが30超の値にまで増加した。
【0068】
対照的に、顔料e(本発明によるものではない)を用いた実施例8においては、不透明状態を達成するためにカーボンブラックペーストを添加した。しかしながら、実施例5との比較から分かるように、これは色特性を犠牲にしたものであった。結果として、波長905nmでの反射率Rは、50%未満の値まで低下した。
【0069】
実施例5~実施例8に基づき、顔料aを含有する塗料配合物でのみ、十分に高い光波反射率及び十分に高い電波透過率に加えて、十分に高い明度及び十分に高い彩度も特徴とし、十分に高い明度フロップと同時に十分に高い被覆力を有する車両塗装を得ることができると結論付けることができる。
【0070】
実施例9~実施例12:
色相角範囲Huv15°が47~48の金色の色合いを有する塗装
表4に、それぞれの塗装について、使用した金属効果顔料の顔料質量濃度PMKPigmentに加えて、存在する場合には更なる顔料の顔料質量濃度PMKw.Pigmentも示す。加えて、それぞれの塗装について、表4には、76GHz~81GHzの周波数範囲における誘電率ε、色相Huv15°、明度L*15°、彩度Cuv15°、アルマンフロップ指数FI及び色距離ΔE110°の決定値が含まれる。
【0071】
【0072】
金色の色合いに相当する47~48の範囲の色相角Huv15°は、ほぼ全面的に使用した金属効果顔料に由来するものであった。
【0073】
顔料aと顔料bを用いた実施例9においては、層厚14μmで不透明状態を達成するために6.865質量%のPMKPigmentの顔料質量濃度が必要とされた。顔料aと顔料bは、50:50の質量比で存在していた。
【0074】
顔料d(本発明によるものではない)を用いた実施例10においては、同じ層厚で顔料質量濃度PMKPigmentも6.865質量%であった。しかしながら、不透明状態は達成されなかった。アルマンフロップ指数FIも低下した。
【0075】
顔料d(本発明によるものではない)を用いた実施例11においては、顔料質量濃度PMKPigmentは、同じ層厚で11.637質量%まで増加したため、不透明状態が達成された。しかしながら、これにより76GHz~81GHzの周波数範囲で誘電率εが30超の値にまで増加した。
【0076】
対照的に、顔料d(本発明によるものではない)を用いた実施例12においては、不透明状態を達成するためにカーボンブラックペーストを添加した。しかしながら、実施例9との比較から分かるように、これは色特性を犠牲にしたものであった。
【0077】
実施例9~実施例12に基づき、顔料aと顔料bを含有する塗料配合物でのみ、十分に高い光波反射率及び十分に高い電波透過率に加えて、十分に高い明度及び十分に高い彩度も特徴とし、十分に高い明度フロップと同時に十分に高い被覆力を有する車両塗装を得ることができると結論付けることができる。
【0078】
実施例13~実施例16:
色相角範囲Huv15°が27~28の赤色の色合いを有する塗装
表5に、それぞれの塗装について、使用した金属効果顔料の顔料質量濃度PMKPigmentに加えて、存在する場合には更なる顔料(複数の場合もある)の顔料質量濃度PMKw.Pigmentも示す。加えて、それぞれの塗装について、表5には、76GHz~81GHzの周波数範囲における誘電率ε、波長905nmでの反射率R、色相Huv15°、明度L*15°、彩度Cuv15°、アルマンフロップ指数FI及び色距離ΔE110°の決定値が含まれる。
【0079】
【0080】
赤色の色合いに相当する27~28の範囲の色相角Huv15°は、使用した金属効果顔料と赤色顔料ペーストとの組合せに由来するものであった。
【0081】
顔料aを用いた実施例13においては、層厚14μmで不透明状態を達成するために12.052質量%のPMKPigmentの顔料質量濃度が必要とされた。
【0082】
顔料aを用いた実施例14においては、同じ層厚で顔料質量濃度PMKPigmentが減少した。不透明条件を達成するために、カーボンブラックペーストを添加した。しかしながら、実施例13との比較から分かるように、これは色特性を犠牲にしたものであった。結果として、波長905nmでの反射率Rも、50%未満の値まで低下した。
【0083】
顔料e(本発明によるものではない)を用いた実施例15及び顔料c(本発明によるものではない)を用いた実施例16においては、不透明状態を達成するために、同じ層厚ではるかに多くのカーボンブラックペーストを添加する必要があった。しかしながら、実施例13との比較から分かるように、これは色特性を犠牲にしたものであった。結果として、波長905nmでの反射率Rも、50%未満の値まで低下した。
【0084】
実施例13~実施例16に基づき、顔料aを含有する塗料配合物でのみ、十分に高い光波反射率及び十分に高い電波透過率に加えて、十分に高い明度及び十分に高い彩度も特徴とし、十分に高い明度フロップと同時に十分に高い被覆力を有する車両塗装を得ることができると結論付けることができる。
【国際調査報告】