(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】潤滑グリース
(51)【国際特許分類】
C10M 169/02 20060101AFI20241031BHJP
C10M 119/30 20060101ALN20241031BHJP
C10M 119/26 20060101ALN20241031BHJP
C10M 119/24 20060101ALN20241031BHJP
C10M 119/04 20060101ALN20241031BHJP
C10M 113/10 20060101ALN20241031BHJP
C10M 113/12 20060101ALN20241031BHJP
C10M 115/12 20060101ALN20241031BHJP
C10M 119/06 20060101ALN20241031BHJP
C10M 119/14 20060101ALN20241031BHJP
C10M 105/38 20060101ALN20241031BHJP
C10M 105/36 20060101ALN20241031BHJP
C10M 105/18 20060101ALN20241031BHJP
C10M 105/54 20060101ALN20241031BHJP
C10M 105/04 20060101ALN20241031BHJP
C10M 107/50 20060101ALN20241031BHJP
C10M 101/02 20060101ALN20241031BHJP
C10M 101/04 20060101ALN20241031BHJP
C10M 119/00 20060101ALN20241031BHJP
C10M 107/34 20060101ALN20241031BHJP
C10M 119/02 20060101ALN20241031BHJP
C10N 50/10 20060101ALN20241031BHJP
C10N 10/04 20060101ALN20241031BHJP
C10N 10/08 20060101ALN20241031BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20241031BHJP
C10N 40/02 20060101ALN20241031BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20241031BHJP
C10N 40/32 20060101ALN20241031BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20241031BHJP
C10N 20/04 20060101ALN20241031BHJP
【FI】
C10M169/02
C10M119/30
C10M119/26
C10M119/24
C10M119/04
C10M113/10
C10M113/12
C10M115/12
C10M119/06
C10M119/14
C10M105/38
C10M105/36
C10M105/18
C10M105/54
C10M105/04
C10M107/50
C10M101/02
C10M101/04
C10M119/00
C10M107/34
C10M119/02
C10N50:10
C10N10:04
C10N10:08
C10N30:06
C10N40:02
C10N40:04
C10N40:32
C10N30:00 Z
C10N20:04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531189
(86)(22)【出願日】2022-11-21
(85)【翻訳文提出日】2024-05-23
(86)【国際出願番号】 EP2022082624
(87)【国際公開番号】W WO2023094322
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】102021130746.5
(32)【優先日】2021-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(32)【優先日】2021-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509350664
【氏名又は名称】クリューバー リュブリケーション ミュンヘン ゲー・エム・ベー・ハー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Klueber Lubrication Muenchen GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Geisenhausenerstrasse 7, D-81379 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マーティン シュヴァイクコーフラー
(72)【発明者】
【氏名】マーティン シュミット-アメルンクセン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス キルタウ
(72)【発明者】
【氏名】カール エーガースデアファー
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル チャル
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ シュミッツ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ローレンツ
(72)【発明者】
【氏名】ペトラ ザイベル
(72)【発明者】
【氏名】ティルマン クラウホ
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104AA20B
4H104AA22B
4H104AA24B
4H104BA02A
4H104BA07A
4H104BB08A
4H104BB33A
4H104BB34A
4H104BB41A
4H104BE28B
4H104BG08B
4H104CB11B
4H104CB14A
4H104CB20B
4H104CD02B
4H104CD04A
4H104CE13B
4H104CG03B
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4H104EA03B
4H104FA02
4H104FA04
4H104LA03
4H104LA20
4H104PA01
4H104PA02
4H104PA03
4H104PA37
4H104QA18
(57)【要約】
潤滑グリースであって、潤滑グリースは、(A)潤滑グリースの総重量に対して20~88重量%の基油と、(B)潤滑グリースの総重量に対して1~55重量%のフッ素不含材料であって、フッ素不含材料は、2020年1月版ISO 13320-1に準拠して測定された80μm未満の平均粒子径(D50)を有し、かつ以下:(B1)芳香族、複素芳香族および/または複素環式基を有し、かつ2008年4月版DIN EN ISO 11357-1に準拠して測定された200℃より高い融点または分解点を有するフッ素不含ポリマー、フッ素不含フタロシアニンおよびこれらの混合物;(B2)シリコーン樹脂、リグニンおよびこれらの混合物;(B3)無機層状ケイ酸塩、好ましくはタルク、ベントナイト、マイカ、ヒュームドシリカ、有機基で官能化されたヒュームドシリカおよびこれらの混合物;(B4)有機基で官能化されたナノ粒子状シリカ;(B5)リン化合物、特にピロリン酸亜鉛、(ピロ)リン酸カルシウムおよびリン酸水素ジルコニウムならびにこれらの混合物;(B6)メラミン誘導体、特にシアヌル酸メラミン、リン酸メラミンおよび/または1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリチオン;(B7)群B1、B2、B3、B4、B5および/またはB6のうちの2つ以上から選択されるフッ素不含材料;からなる群から選択されるものとする、フッ素不含材料とを含み、ここで、潤滑グリースは、ポリテトラフルオロエチレンを含まず、かつ/またはポリテトラフルオロエチレンを、潤滑グリースの総重量に対して4重量%未満の割合で含む、潤滑グリース。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑グリースであって、前記潤滑グリースは、
(A)前記潤滑グリースの総重量に対して20~88重量%の基油と、
(B)前記潤滑グリースの総重量に対して1~55重量%のフッ素不含材料であって、前記フッ素不含材料は、2020年1月版ISO 13320-1に準拠して測定された80μm未満の平均粒子径(D50)を有し、かつ以下:
(B1)芳香族、複素芳香族および/または複素環式基を有し、かつ2008年4月版DIN EN ISO 11357-1に準拠して測定された200℃より高い融点または分解点を有するフッ素不含ポリマー、フッ素不含フタロシアニンおよびこれらの混合物;
(B2)シリコーン樹脂、リグニンおよびこれらの混合物;
(B3)無機層状ケイ酸塩、好ましくはタルク、ベントナイト、マイカ、ヒュームドシリカ、有機基で官能化されたヒュームドシリカおよびこれらの混合物;
(B4)有機基で官能化されたナノ粒子状シリカ;
(B5)リン化合物、特にピロリン酸亜鉛、(ピロ)リン酸カルシウムおよびリン酸水素ジルコニウムならびにこれらの混合物;
(B6)メラミン誘導体、特にシアヌル酸メラミン、リン酸メラミンおよび/または1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリチオン;
(B7)前記群B1、B2、B3、B4、B5および/またはB6のうちの2つ以上から選択されるフッ素不含材料;
からなる群から選択されるものとする、フッ素不含材料と
を含み、ここで、前記潤滑グリースは、ポリテトラフルオロエチレンを含まず、かつ/またはポリテトラフルオロエチレンを、前記潤滑グリースの総重量に対して4重量%未満の割合で含む、潤滑グリース。
【請求項2】
前記フッ素不含材料が、選択肢B1によるフッ素不含ポリマーであり、前記フッ素不含ポリマーにおいて、芳香族炭素原子および/または複素芳香族構造に含まれる炭素原子の数値割合が、それぞれ前記フッ素不含ポリマー中の炭素原子の総数に対して少なくとも20%であることを特徴とする、請求項1記載の潤滑グリース。
【請求項3】
前記フッ素不含材料が、選択肢B1によるフッ素不含ポリマーであり、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、好ましくはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、なおもより好ましくは架橋PAEK、特に架橋PEEK、ポリフェニルスルフィド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリ(アミド)イミド(PAI)、ペリレンイミド、ポリカーボネート(PC)、ポリキノリン、ポリキノキサリン、モルホリン、特にフタロシアニン、メラミン樹脂およびこれらのブレンドからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1または2記載の潤滑グリース。
【請求項4】
前記フッ素不含材料が、架橋PAEK、特に架橋PEEKであることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の潤滑グリース。
【請求項5】
前記フッ素不含材料が、
- 前記群B3の前記フッ素不含材料のうちの2つ以上の組み合わせを含み、特に、タルクと有機基で官能化されたヒュームドシリカとの組み合わせを含み、かつ/または
- 前記群B3から選択される少なくとも1つのフッ素不含材料と、前記群B6から選択される少なくとも1つのフッ素不含材料との組み合わせを含み、特に、有機基で官能化されたヒュームドシリカとシアヌル酸メラミンとの組み合わせを含み、かつ/または
- 前記群B3から選択される少なくとも1つのフッ素不含材料と、前記群B6から選択される少なくとも1つのフッ素不含材料との組み合わせ、および六方晶窒化ホウ素との組み合わせを含み、かつ/または
- 前記群B3から選択される少なくとも1つのフッ素不含材料と六方晶窒化ホウ素との組み合わせを含む
ことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の潤滑グリース。
【請求項6】
前記フッ素不含材料が、有機基で官能化されたヒュームドシリカと、シアヌル酸メラミンとの組み合わせ、および六方晶窒化ホウ素との組み合わせを含むことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の潤滑グリース。
【請求項7】
前記フッ素不含材料が、有機基で官能化されたヒュームドシリカと、六方晶窒化ホウ素との組み合わせを含むことを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の潤滑グリース。
【請求項8】
前記フッ素不含材料および/または前記潤滑グリースが、NSF/H1に適合していることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の潤滑グリース。
【請求項9】
前記フッ素不含材料が、増ちょう剤として機能し、前記潤滑グリースの総重量に対する前記フッ素不含材料の割合が、10~55重量%であることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の潤滑グリース。
【請求項10】
前記潤滑グリースが、前記フッ素不含材料とは異なるさらなる増ちょう剤を、有利には前記潤滑グリースの総重量に対して3~30重量%の割合で含むことを特徴とする、請求項9記載の潤滑グリース。
【請求項11】
前記フッ素不含材料が、摩擦値を低下させる添加剤として機能し、前記フッ素不含材料の割合が、前記潤滑グリースの総重量に対して1~10重量%であることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の潤滑グリース。
【請求項12】
前記潤滑グリースが、前記フッ素不含材料とは異なる増ちょう剤を、有利には前記潤滑グリースの総重量に対して3~40重量%の割合で含むことを特徴とする、請求項11記載の潤滑グリース。
【請求項13】
前記基油が、エステル、好ましくはジペンタエリトリットエステル、トリメリット酸エステル、ヘミメリット酸エステル、ピロメリット酸エステル、エストリド、ペンタエリトリットエステル、ダイマー酸エステル、トリマー酸エステル、トリメチロールプロパンエステル(TMPエステル);エーテル、好ましくはポリフェニルエーテル、ジアリールエーテル、トリアリールエーテル、ポリグリコール、直鎖状または分岐状のパーフルオロポリエーテル油(PFPE油);合成炭化水素、好ましくはアルキル化ナフタレン、ポリアルファオレフィン(PAOs)、メタロセンポリアルファオレフィン(mPAOs);未処理のおよび化学修飾された植物油、グループIIIの油、ガス・ツー・リキッド(GTL)油;ジメチルシリコーン油;アリール化シリコーン油、好ましくはアルキルアリールシリコーン油、特にメチル/アリールシリコーン油および完全にアリール化されたシリコーン油からなる群から選択され、これらを、単独で使用することも組み合わせて使用することも可能であることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の潤滑グリース。
【請求項14】
前記フッ素不含材料が、無機層状ケイ酸塩、好ましくはタルク、ベントナイト、マイカ、ヒュームドシリカ、有機基で官能化されたヒュームドシリカおよび/またはこれらの混合物と、無機層状ケイ酸塩ではない層状固体潤滑物質との組み合わせであることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載の潤滑グリース。
【請求項15】
本発明による潤滑グリースの製造方法であって、前記方法は、以下の成分:
(A)前記潤滑グリースの総重量に対して20~88重量%の基油と、
(B)前記潤滑グリースの総重量に対して1~55重量%のフッ素不含材料であって、前記フッ素不含材料は、2020年1月版ISO 13320-1に準拠して測定された80μm未満の平均粒子径D50を有し、かつ以下:
(B1)芳香族、複素芳香族および/または複素環式基を有し、かつ2008年4月版DIN EN ISO 11357-1に準拠して測定された200℃より高い融点または分解点を有するフッ素不含ポリマー;フッ素不含フタロシアニンおよびこれらの混合物;
(B2)シリコーン樹脂、リグニンおよびこれらの混合物;
(B3)無機層状ケイ酸塩、好ましくはタルク、ベントナイト、マイカ、ヒュームドシリカおよびこれらの混合物;
(B4)有機基で官能化されたナノ粒子状シリカ;
(B5)リン化合物、特にピロリン酸亜鉛、(ピロ)リン酸カルシウムおよびリン酸水素ジルコニウムならびにこれらの混合物;
(B6)メラミン誘導体、特にシアヌル酸メラミン、リン酸メラミンおよび/または1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリチオン;
(B7)前記群B1、B2、B3、B4、B5および/またはB6のうちの2つ以上から選択されるフッ素不含材料;
からなる群から選択されるものとする、フッ素不含材料と
を混合する工程を含み、ここで、前記潤滑グリースは、ポリテトラフルオロエチレンを含まず、かつ/またはポリテトラフルオロエチレンを、前記潤滑グリースの総重量に対してそれぞれ6重量%未満、なおもより好ましくは4重量%未満、なおもより好ましくは2重量%未満、なおもより好ましくは1重量%未満、なおもより好ましくは0.1重量%未満の割合で含む、方法。
【請求項16】
トライボロジーシステム、特に、有利には160℃を超える、なおもより好ましくは180℃を超える、特に200℃を超える高い上限使用温度が必要とされる用途でのトライボロジーシステムを潤滑するための、および/または-40℃~160℃の温度範囲での様々な使用が必要とされるトライボロジーシステムを潤滑するための、請求項1から14までのいずれか1項記載の潤滑グリースの使用。
【請求項17】
食品および/もしくは飲料水に接触するトライボロジーシステム、特に食品加工における作業用器具ならびに/またはガスおよび(飲料)水用継手を潤滑するための、請求項1から14までのいずれか1項記載の潤滑グリースの使用。
【請求項18】
前記フッ素不含材料が、シリコーン樹脂、リグニンおよびこれらの混合物(選択肢B2)であり、前記潤滑グリースを、食品加工における作業用器具ならびに/またはガスおよび(飲料)水用継手の潤滑に使用することを特徴とする、請求項17記載の使用。
【請求項19】
トライボロジーシステム、有利には、食品および/もしくは飲料水に接触するトライボロジーシステム、例えば食品加工における作業用器具、例えば、冷凍トンネル内の輸送用チェーンおよびコンベヤベルト、歯車、転がり軸受および滑り軸受、空気圧シリンダ、シール、組付けペースト、ガスおよび(飲料)水継手用のバルブおよび取付部品を潤滑するための;ならびに/または自動車分野の部品、例えば、自動車ステアリング用途のボールねじ、アクチュエータ;ギアボックス、プラスチックギア、シール、サンルーフのシール、ブレーキブースターおよび/もしくは転がり軸受、滑り軸受および/もしくはリニアガイドを潤滑するための、請求項1から14までのいずれか1項記載の潤滑グリースの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択されたフッ素不含材料を有する潤滑グリースに関する。本発明はさらに、該潤滑グリースの製造方法、ならびにトライボロジーシステム、特に低温もしくは高温でもエネルギー効率の点で高い要求が課されているトライボロジーシステム、ならびに/または食品および/もしくは飲料水に接触するトライボロジーシステムを潤滑するための該潤滑グリースの使用に関する。
【0002】
例えば自動車分野において低温または高温でもエネルギー効率の点で高い要求が課されているトライボロジーシステムの潤滑には、非常に低い摩擦レベルを達成することができることから、実地ではPTFEマイクロ粉末が使用されることが多い。
【0003】
PTFEマイクロ粉末は、非常に高い耐熱性をも有するため、高い上限使用温度で、例えば160℃を超える運転温度で連続的な再潤滑が不可能であるトライボロジーシステムの潤滑時に増ちょう剤や添加剤として使用されることが多い。同様に、通常は、例えばポリフルオロポリエーテルや(フッ素化)シリコーン油のようなパーフルオロまたはポリフルオロ製品が基油として使用される。
【0004】
PTFEマイクロ粉末は、化学的不活性ゆえに毒性作用が低いことから、実地では食品や飲料水に接触する用途にもしばしば使用される。原則として、食品グレードの潤滑剤は、NSF/H1やNSF/H2による認証などの法的規制の対象となる。「H1」という分類は、「偶発的な食品との接触」、すなわち、食品との技術的に避けられない接触が時折ある潤滑油によって達成される。しかし、「H1」の潤滑剤を使用した場合にも、意図的または持続的な接触を排除しなければならない。無毒性で発がん性のない潤滑剤は、「H2」分類を達成することができる。それでもやはり、「H2」の潤滑剤を使用する際には、食品とのいかなる接触も排除しなければならない。
【0005】
PTFE粉末は、使用時に、粘稠性の潤滑剤の増ちょう剤としても添加剤としても使用することができる。
【0006】
PTFEは、高荷重下でも摩擦値が非常に低く一定しているため、優れた潤滑効果を発揮することが知られており、スティックスリップを効果的に防止でき、高いせん断応力下で使用した場合でも良好な安定性を示す。さらに、PTFEは、酸素に対する化学的不活性が良好である。これにより、潤滑グリースで頻繁に発生する、増ちょう剤と大気中酸素との反応による酸化に起因する堆積物が防止され、均一で持続的な潤滑効果を達成することができる。また、PTFEは、良好な耐薬品性や耐熱性により毒性学的特性が非常に優れていることから、潤滑物質の取扱いの安全性が高く、食品との接触が避けられない用途でも使用することができる。
【0007】
パーフルオロまたはポリフルオロ製品を使用することの欠点は、環境保護上の理由から問題があることである。
【0008】
本発明の課題は、増ちょう剤や添加剤としてのPTFEの使用を省くことができるにもかかわらず低い摩擦値を有する潤滑グリースを提供することである。さらに、この潤滑グリースは、例えば自動車分野において広い温度範囲でエネルギー効率の点で高い要求が課されているトライボロジーシステムの潤滑に使用でき、さらにNSF/H1に適合するように製造できることが望ましい。
【0009】
この課題は、潤滑グリースであって、該潤滑グリースは、
(A)潤滑グリースの総重量に対して20~88重量%、有利には30~88重量%、なおもより好ましくは50~88重量%、特に60~88重量%の基油と、
(B)潤滑グリースの総重量に対して1~55重量%のフッ素不含材料であって、該フッ素不含材料は、それぞれ2020年1月版ISO 13320-1に準拠して測定された80μm未満、例えば1~80μm、なおもより好ましくは1~50μm、なおもより好ましくは1~20μm、特に1~15μmの平均粒子径(D50)を有し、かつ以下:
(B1)芳香族、複素芳香族および/または複素環式基を有し、かつ2008年4月版DIN EN ISO 11357-1に準拠して測定された200℃より高い融点または分解点を有するフッ素不含ポリマー;フッ素不含フタロシアニンおよびこれらの混合物;
(B2)シリコーン樹脂、リグニンおよびこれらの混合物;
(B3)無機層状ケイ酸塩、好ましくはタルク、ベントナイト、マイカ、ヒュームドシリカ、有機基で官能化されたヒュームドシリカおよびこれらの混合物;
(B4)有機基で官能化されたナノ粒子状シリカ;
(B5)リン化合物、特にピロリン酸亜鉛、(ピロ)リン酸カルシウムおよびリン酸水素ジルコニウムならびにこれらの混合物;
(B6)メラミン誘導体、特にシアヌル酸メラミン、リン酸メラミンおよび/または1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリチオン;
(B7)群B1、B2、B3、B4、B5および/またはB6のうちの2つ以上から選択されるフッ素不含材料;
からなる群から選択されるものとする、フッ素不含材料と
を含み、ここで、該潤滑グリースは、ポリテトラフルオロエチレンを含まず、かつ/またはポリテトラフルオロエチレンを、潤滑グリースの総重量に対してそれぞれ4重量%未満、なおもより好ましくは2重量%未満、なおもより好ましくは1重量%未満、なおもより好ましくは0.5重量%未満、なおもより好ましくは0.1重量%未満の割合で含む、潤滑グリースによって解決される。
【0010】
潤滑グリース中のポリテトラフルオロエチレンの含有量は、有利には、2008年4月版DIN EN ISO 11357-1規格を用いてPTFEの融解エンタルピーに基づいて決定される。測定は、適切には以下のように行われる:添加剤の可溶分を含む潤滑グリースの油相から、適切な溶媒での抽出により固体の不溶性成分(例えば、増ちょう剤、不溶性添加剤および/または固体潤滑剤)を分離する。なぜならば、これにより測定精度が向上するためである。ポリテトラフルオロエチレンは、不溶性成分の一部である。使用する基油にもよるが、特殊ベンジン80/110、エタノールおよび/またはメチルパーフルオロブチルエーテルが溶媒として特に適している。特殊ベンジン80/110は、基油が鉱油、PAO、アルキル化芳香族化合物、フェニルエーテル、エステル、シリコーン油、エチレンオキシドを含まないか含有量の少ないポリグリコールおよびこれらの混合物を含む潤滑グリースに特に適している。エタノールは、エチレンオキシド含有量の高いポリグリコールから構成される基油を含む潤滑グリースに特に適している。メチルパーフルオロブチルエーテルは、パーフルオロポリエーテルを基油として含む潤滑グリースに特に適している。2つの非混和性油を含む潤滑グリースは、有利には2回の抽出に供される。このようなグリースは、通常はハイブリッドグリースと呼ばれる。例えば、そのようなハイブリッドグリースは、パーフルオロポリエーテルと好ましくはエステルとの双方を含むことができる。そのようなハイブリッドグリースを、有利には特殊ベンジン80/110とメチルパーフルオロブチルエーテルとの双方で抽出することにより、双方の油およびそれに可溶な添加剤を分離する。得られた残渣から、溶媒残渣が除去される。これにより得られた乾燥残渣を、潤滑グリースの使用量と関連づける。残渣の割合が、重量%で得られる。乾燥残渣20mgを容量25μlのアルミニウムDSCるつぼにはかり入れ、10K/分の昇温速度で600℃に加熱する。300~450℃の吸熱シグナルを積分するが、その際、ピークの面積(試料エンタルピー)は、残渣中のPTFE量に比例する。較正のため、純粋なPTFEマイクロ粉末(ASTM D4894による粒度D50=5μm、ASTM D1238による372℃/2.16kg/2,095mmでのメルトフローインデックス=0.5g/10分)を同様に測定する(参照エンタルピー)。潤滑グリース中のPTFE含有量は、次式により得られる:(試料エンタルピー)/(参照エンタルピー)×残渣の割合(重量%)=PTFE含有量(重量%)。
【0011】
本発明によれば、「フッ素不含材料」という用語は、通常の意味で理解される。したがって、フッ素不含材料とは、その化学組成中にフッ素原子を含まない材料を意味すると理解される。
【0012】
本発明によれば、「フッ素不含ポリマー」という用語は、通常の意味で理解される。したがって、フッ素不含ポリマーとは、その化学組成中にフッ素原子を含まないモノマーから構成されたポリマーを意味すると理解される。
【0013】
本発明によれば、「潤滑グリース」という用語は、通常の意味で理解される。したがって、潤滑グリースとは、液体潤滑物質に増粘剤を分散させることによって製造できる固体ないし半液体の物質を意味すると理解される。潤滑グリースは、増粘剤に加えて、潤滑グリースに特別な性質を付与する他の添加剤も含むことができる。潤滑グリースについては、2021年7月版のASTM D217-21規格で説明されている。
【0014】
驚くべきことに、本発明による潤滑グリースにより、増ちょう剤や添加剤としてのPTFEの使用を十分にまたはさらには完全に省くことができるにもかかわらず、潤滑グリースが非常に低い摩擦値を有し、例えば自動車分野において広い温度範囲でエネルギー効率の点で高い要求が課されているトライボロジーシステムの潤滑にも使用できることが見出された。さらに、この潤滑グリースは、NS/H1に適合するように製造することができる。
【0015】
特に、本発明により使用されるフッ素不含材料により、PTFEと同等の、また場合によってはそれを凌ぐ性能さえも達成できることが実用試験で判明した。実用試験では、PTFEに匹敵する増ちょう効果、また場合によってはPTFEよりも大幅に低い摩擦値およびせん断粘度さえも達成することができ、これによってさらに高いエネルギー効率が可能となる。
【0016】
本発明によれば、好ましくは、潤滑グリースは、少なくとも1つのフッ素不含材料を有する。
【0017】
本発明の一実施形態では、フッ素不含材料は、芳香族、複素芳香族および/または複素環式基を有し、かつ2008年4月版DIN EN ISO 11357-1に準拠して測定された200℃より高い融点または分解点を有するフッ素不含ポリマーである(選択肢B1)。フッ素不含ポリマーは、一般に理解されているように、単一物質として存在することも、各種物質の混合物として存在することもできる。
【0018】
これらの材料を使用することの利点は、その良好な潤滑効果に加え、これらの材料により、潤滑グリースをすでに低温(-40℃)ないし高温潤滑(>160℃)の領域まで幅広い用途で使用できることである。
【0019】
さらに、フッ素不含ポリマーにより、PTFEと同等の、また場合によってはそれを凌ぐ性能さえも達成できることが判明した。実用試験では、PTFEに匹敵する増ちょう効果、また場合によってはPTFEよりも大幅に低い摩擦値さえも達成することができ、これによってさらに高いエネルギー効率が可能となる。
【0020】
また、160℃を超える温度でも、PTFEと同等か、それよりも大幅に低い油分離値を達成できることが判明した。粘稠性の潤滑油のこの重要なパラメータは、本発明により使用される特定のフッ素不含ポリマーにより、高温でさえもPTFEと比較してより長期間の潤滑効果を達成できることを示している。
【0021】
さらに有利には、本発明による潤滑グリースは、NS/H1に適合するように製造することができる。
【0022】
特に好ましくは、選択肢B1によるフッ素不含ポリマーにおいて、芳香族炭素原子および/または複素芳香族構造に含まれる炭素原子の数値割合は、それぞれフッ素不含ポリマー中の炭素原子の総数に対して少なくとも20%、例えば20%~100%、なおもより好ましくは少なくとも50%、例えば50%~100%、特に少なくとも70%、例えば70%~100%である。芳香族炭素原子および/または複素芳香族構造に含まれる炭素原子の割合が高いと、潤滑グリースの高温安定性に好影響を与える。
【0023】
同様に特に好ましくは、フッ素不含ポリマーにおいて、芳香族炭素原子および/または複素芳香族構造に含まれる炭素原子と脂肪族炭素原子との数値比は、少なくとも1:5、なおもより好ましくは少なくとも1:1、特に少なくとも5:1である。
【0024】
好ましい複素芳香族および/または複素環式基は、互いに独立して、窒素、酸素および/または硫黄を含む。
【0025】
本発明によれば特に好ましくは、フッ素不含ポリマーは、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、好ましくはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、なおもより好ましくは架橋PAEK、特に架橋PEEK、ポリフェニルスルフィド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリ(アミド)イミド(PAI)、ペリレンイミド、ポリカーボネート(PC)、ポリキノリン、ポリキノキサリン、モルホリン、フタロシアニン、メラミン樹脂およびこれらのブレンドからなる群から選択される。前述の群のコポリマーも同様に考えられる。
【0026】
本発明によれば同様に特に好ましくは、フッ素不含ポリマーは、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、好ましくはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、なおもより好ましくは架橋PAEK、特に架橋PEEK、ポリフェニルスルフィド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリ(アミド)イミド(PAI)、ペリレンイミド(ここで、ペリレンイミドとは、高分子ペリレンジイミドを意味すると理解されるべきである)、ポリカーボネート(PC)、ポリキノリン、ポリキノキサリン、ポリモルホリン、メラミン樹脂およびこれらのブレンドからなる群から選択される。前述の群のコポリマーも同様に考えられる。
【0027】
特に好ましくは、フッ素不含ポリマーは、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、好ましくはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、なおもより好ましくは架橋PAEK、特に架橋PEEK、ポリフェニルスルフィド(PPS、メラミン樹脂、ポリエーテルスルホン(PES)、ペリレンイミドおよびこれらのブレンドからなる群から選択される。前述の群のコポリマーも同様に考えられる。
【0028】
PAEKは、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)、ポリ(エーテルエーテルエーテルケトン)(PEEEK)、ポリ(エーテルケトンエーテルケトンケトン)(PEKEKK)および/またはポリ(エーテルエーテルケトンケトン)(PEEKK)であってよい。ここで、本発明によれば、PEEKが好ましい。
【0029】
非常に特に好ましくは、フッ素不含ポリマーは、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、好ましくはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、なおもより好ましくは架橋PAEK、特に架橋PEEK、ポリフェニルスルフィド(PPS)、メラミン樹脂およびこれらのブレンドからなる群から選択される。前述の群のコポリマーも同様に考えられる。
【0030】
非常に特に好ましくは、フッ素不含ポリマーは、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、好ましくはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、なおもより好ましくは架橋PAEK、特に架橋PEEK、ポリフェニルスルフィド(PPS)およびこれらのブレンドからなる群から選択される。前述の群のコポリマーも同様に考えられる。
【0031】
特に好ましい実施形態では、フッ素不含ポリマーは、架橋PAEK、特に架橋PEEKである。架橋PAEK、特に架橋PEEKが、そのガラス転移範囲の増大により、柔軟性および温度安定性の点で特に有利な特性を有することが判明した。
【0032】
架橋PAEK、好ましくは架橋PEEKは、有利には、PAEK、好ましくはPEEKを少なくとも1つの架橋剤で架橋することによって得ることができ、該架橋剤は、PAEKおよび/またはPEEKのケト基の熱架橋により架橋剤1分子当たり少なくとも2個のイミン基を生成することができる。ここで、架橋剤は、有利には
a)少なくとも2つのアミド基、または少なくとも1つのアミド基および少なくとも1つの第一級アミノ基、または少なくとも2つのイミド基、または少なくとも1つのイミド基および少なくとも1つの第一級アミノ基を有するオリゴ/ポリマー、
b)少なくとも2つの第一級アミノ基を有する、a)とは異なる飽和脂環式化合物
およびその混合物
から選択される。
【0033】
a)の架橋剤が好ましい。
【0034】
さらに好ましくは、架橋剤は、ポリアミド、ポリイミド、アミノ化ダイマー脂肪酸、アミノ化ダイマー脂肪酸が重合により組み込まれているオリゴ/ポリマー、およびそれらの混合物から選択される。
【0035】
さらに好ましくは、架橋剤は、少なくとも2つのアミド基を有するオリゴ/ポリマーであり、このオリゴ/ポリマーには、非置換または置換芳香族ジカルボン酸、および非置換または置換芳香族ジカルボン酸の誘導体、ならびに脂肪族または脂環式ジアミンから選択されるモノマーが重合により組み込まれた形態で含まれている。
【0036】
芳香族ジカルボン酸は、有利には、それぞれ非置換のまたは置換されたフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸またはジフェニルジカルボン酸、ならびに前述の芳香族ジカルボン酸の誘導体および混合物から選択される。
【0037】
脂肪族または脂環式ジアミンは、有利には、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、2-メチル-1,8-オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、5-メチルノナメチレンジアミン、2,4-ジメチルオクタメチレンジアミン、5-メチルノナンジアミン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)-メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)-プロパン、1,3-ビス(アミノメチル)-シクロヘキサンおよび1,4-ビスアミノメチルシクロヘキサン、5-アミノ-2,2,4-トリメチル-1-シクロペンタンメチルアミン、5-アミノ-1,3,3-トリメチルシクロヘキサンメチルアミン(イソホロンジアミン)、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、[3-(アミノメチル)-2-ビシクロ[2.2.1]ヘプタニル]メタンアミン、アミノ化ダイマー脂肪酸およびそれらの混合物から選択される。
【0038】
特に、架橋剤は、PA 4.T、P 5.T、PA 6.T、PA 9.T、PA8.T、PA 10.T、PA 12.T、PA 6.I、PA 8.I、PA 9.I、PA 10.I、PA 12.I、PA 6.T/6、PA 6.T/10、PA 6.T/12、PA 6.T/6.I、PA6.T/8.T、PA 6.T/9.T、PA 6.T/10T、PA 6.T/12.T、PA 12.T/6.T、PA 6.T/6.I/6、PA 6.T/6.I/12、PA 6. T/6.1/6.10、PA 6.T/6.I/6.12、PA 6. T/6.6、PA 6.T/6.10、PA 6.T/6.12、PA 10.T/6、PA 10.T/1 1 、PA 10.T/12、PA 8.T/6.T、PA 8.T/66、PA 8.T/8.I、PA 8.T/8.6、PA 8.T/6.I、PA 10.T/6.T、PA 10.T/6.6、PA 10.T/10.I、PA 10T/10.I/6.T、PA 10.T/6.I、PA 4.T/4.I/46、PA 4.T/4.I/6.6、PA 5.T/5.I、PA 5.T/5.I/5.6、PA 5.T/5.I/6.6、PA 6.T/6.I/6.6、PA MXDA.6、PA 6.T/IPDA.T、PA 6.T/MACM.T、PA T/PACM.T、PA 6.T/MXDA.T、PA 6.T/6.I/8.T/8.I、PA 6.T/6.1/10.T/10.1、PA 6.T/6.I/IPDA.T/IPDA.I、PA 6.T/6.I/MXDA.T/MXDA.I、PA 6.T/6.I/MACM.T/MACM.I、PA 6.T/6.I/PACM.T/PACM.I、PA 6.T/10.T/IPDA.T、PA 6.T/12.T/IPDA.T、PA 6. T/10.T/PACM.T、PA 6.T/12.T/PACM.T、PA 10.T/IPDA.T、PA 12.T/IPDA.T、PA 4.6、PA 6.6、PA 6.12、PA 6.10、およびそれらのコポリマーおよび混合物から選択される。
【0039】
さらに好ましくは、架橋剤は、少なくとも2つの第一級アミノ基を有する飽和脂環式化合物であり、これは、アミノ化ダイマー脂肪酸、アミノ化ダイマー脂肪酸が重合により組み込まれているオリゴ/ポリマー、およびそれらの混合物から選択され、特に、化合物
【化1】
またはこの化合物が重合により組み込まれているオリゴ/ポリマーから選択される。
【0040】
架橋剤の量は、所望の架橋度を考慮して調整することができる。好ましくは、架橋剤の割合は、それぞれ架橋剤とPAEKとの総重量に対して、特にそれぞれ架橋剤とPEEKの総重量に対して0.5~20重量%、有利には1~10重量%、特に4~10重量%である。このような架橋剤の割合を有する生成物の安定性は、特に有利になり得ることが判明した。特に、架橋剤の量をこの範囲に調整することにより、特に良好な柔軟性および温度安定性を達成することができる。
【0041】
さらなる好ましい実施形態では、架橋剤は、炭素環基を有する脂肪族基を介して2つのアミノフェニル環が互いに結合しているジ(アミノフェニル)化合物である。非常に特に好ましくは、架橋剤は、式
【化2】
の化合物である。
【0042】
芳香族、複素芳香族および/または複素環式基は、ヘテロ原子、特に硫黄および/またはリンで修飾されていてもよい。ここで、ヘテロ原子は、複素芳香族および/または複素環式基の複素芳香族および/または複素環式構造に組み込まれていてよい。しかし、ヘテロ原子はまた、複素芳香族および/もしくは複素環式基を橋かけすることができ、かつ/または置換基として存在することができる。さらに、ヘテロ原子は、芳香族基を橋かけすることができ、かつ/または置換基として存在することができる。
【0043】
本発明によれば、フッ素不含ポリマーにおいて、2008年4月版DIN EN ISO 11357-1に準拠して測定された融点または分解点は200℃より高く、なおもより好ましくは220℃~240℃、特に240~400℃である。
【0044】
選択肢(B1)によるフッ素不含ポリマーを含む本発明による潤滑グリースは、有利には160℃を超える、なおもより好ましくは180℃を超える、特に200℃を超える高い上限使用温度が必要とされる用途でのトライボロジーシステムの潤滑に、例えば、滑り軸受、特にチェーン、転がり軸受の潤滑に、および/または少なくとも一時的にそれぞれ160℃を超える、なおもより好ましくは180℃を超える、特に200℃を超える温度で運転される化学工業の生産プラントの駆動に好適である。
【0045】
好ましい実施形態では、フッ素不含材料は、フッ素不含フタロシアニン(B1)である。ここで、フタロシアニンは、一般に理解されているように、単一物質として存在することも、各種物質の混合物として存在することもできる。
【0046】
さらなる好ましい実施形態(選択肢B2)では、フッ素不含材料は、シリコーン樹脂、リグニンおよび/またはこれらの混合物である。シリコーン樹脂およびリグニンは、一般に理解されているように、単一物質として存在することも、各種物質の混合物として存在することもできる。
【0047】
フッ素不含材料としてシリコーン樹脂またはリグニンを有する本発明による潤滑グリースは、飲料水用継手におけるPTFEを含有するH1に適合した金属石鹸グリースおよびシリコーンベースの生成物の代替に特に適している。ここで有利には、これらの材料の硬度は低く、これは、飲料水用継手において頻繁に存在するセラミック製の相手面との組み合わせにおいて摩耗保護および減衰効果を有する。
【0048】
本発明のさらなる好ましい実施形態では、フッ素不含材料は、無機層状ケイ酸塩、好ましくはタルク、ベントナイト、マイカ、ヒュームドシリカ、有機基で官能化されたヒュームドシリカおよび/またはこれらの混合物である(選択肢B3)。無機層状ケイ酸塩およびヒュームドシリカは、一般に理解されているように、単一物質として存在することも、各種物質の混合物として存在することもできる。これらの材料を使用することの利点は、これらの材料により、高いトライボロジー荷重下でもPTFEと同様の摩擦レベルを達成できることである。PTFE生成物よりもせん断粘度が大幅に低い潤滑コンセプトも実現可能である。これから、卓越したエネルギー効率が推論される。
【0049】
さらなる好ましい実施形態では、フッ素不含材料は、無機層状ケイ酸塩、好ましくはタルク、ベントナイト、マイカ、ヒュームドシリカ、有機基で官能化されたヒュームドシリカおよび/またはこれらの混合物と、無機層状ケイ酸塩ではない層状固体潤滑物質、特に六方晶窒化ホウ素、グラファイト、グラフェン、MoS2および/またはこれらの混合物との組み合わせである。
【0050】
適切なヒュームドシリカは、例えば、テクニカルジャーナルTechnical Overview: Aerosil-Pyrogene Kieselsaeure von Evonic Industries 03-2017に記載されている。このジャーナルには、有機基で官能化された適切なヒュームドシリカも記載されている。
【0051】
特に好ましい実施形態では、フッ素不含材料は、有機基で官能化されたヒュームドシリカを含む。特に好ましくは、官能化ヒュームドシリカは、ISO 9277 2014 01に準拠して測定された0~500m2/g、なおもより好ましくは50~400m2/g、特に50~200m2/gのBET表面積を有する。さらに好ましくは、官能化ヒュームドシリカは、透過型電子顕微鏡で測定された5~50nmの一次粒度を有する。さらに好ましくは、官能化ヒュームドシリカは、ISO 787/11 1995に準拠して測定された50g/l~280g/l、なおもより好ましくは50g/l~200g/lのタップ密度を有する。さらに好ましくは、官能化ヒュームドシリカは、ISO-3262-20 2021に準拠して測定された0.5~8.8重量%、好ましくは0.5~6重量%、特に0.5~2重量%の炭素含有量を有する。
【0052】
ここで、好ましい有機基は、有利には1~20個の炭素を有する分岐状または非分岐状の脂肪族および/または芳香族基である。好ましい芳香族基は、6~10個の炭素を有する。好ましい脂肪族基は、1~10個の炭素を有する。特に好ましい有機基は、メチル、エチル、プロピル、ビニル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルおよび/またはフェニルである。非常に特に好ましい有機基は、メチル基である。これらの材料を使用することの利点は、同様に、高いトライボロジー荷重下でもPTFEと同様の摩擦レベルを達成でき、PTFE生成物よりもせん断粘度が大幅に低い潤滑コンセプトが可能になることである。
【0053】
さらなる好ましい実施形態では、フッ素不含材料は、有機基で官能化されたナノ粒子状シリカである(選択肢B4)。ナノ粒子状シリカは、一般に理解されているように、単一物質として存在することも、各種物質の混合物として存在することもできる。好ましい有機基は、有利には1~20個の炭素を有する分岐状または非分岐状の脂肪族および/または芳香族基である。好ましい芳香族基は、6~10個の炭素を有する。好ましい脂肪族基は、1~10個の炭素を有する。非常に特に好ましい有機基は、メチル、エチル、プロピル、ビニル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルおよび/またはフェニルである。これらの材料を使用することの利点は、同様に、高いトライボロジー荷重下でもPTFEと同様の摩擦レベルを達成でき、PTFE生成物よりもせん断粘度が大幅に低い潤滑コンセプトが可能になることである。
【0054】
さらなる好ましい実施形態では、フッ素不含材料は、リン化合物、特にピロリン酸亜鉛、(ピロ)リン酸カルシウムおよびリン酸水素ジルコニウムならびに/またはこれらの混合物である(選択肢B5)。リン化合物は、一般に理解されているように、単一物質として存在することも、各種物質の混合物として存在することもできる。これらのフッ素不含材料を含む潤滑グリースは、非常に優れた摩擦値レベルを示し、少なくとも部分的に(特にリン酸水素ジルコニウムは)PTFEと比較してさらに改善された摩耗防止特性を示す。
【0055】
さらなる好ましい実施形態(選択肢B6)では、フッ素不含材料は、メラミン誘導体、有利にはシアヌル酸メラミン、リン酸メラミン、特にモノリン酸メラミンおよび/または1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリチオンである。一実施形態では、フッ素不含材料は、リン酸メラミン、特にモノリン酸メラミンおよび/または1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリチオンである。好ましいのは、シアヌル酸メラミンである。メラミン誘導体および1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリチオンは、一般に理解されているように、単一物質として存在することも、各種物質の混合物として存在することもできる。
【0056】
これらのフッ素不含材料を含む潤滑グリースは、非常に優れた摩擦値レベルを示し、少なくとも部分的に(特にリン酸メラミンは)PTFEと比較してさらに改善された摩耗防止特性を示す。特に、潤滑物質にリン酸メラミンを使用すると、PTFEよりもせん断粘度が低下し、それに伴ってエネルギー効率が向上する。
【0057】
本発明による潤滑グリースは、群B1、B2、B3、B4、B5および/またはB6の1つ以上から選択されるフッ素不含材料を含むことができる。例えば、本発明による潤滑グリースは、成分B1、B2、B3、B4、B5またはB6のうちの1つのみを含むことができる。しかし、本発明による潤滑グリースは、選択肢B1、B2、B3、B4、B5および/またはB6によるフッ素不含材料のうちの2つ以上を有する混合物を含むこともできる。
【0058】
本発明の好ましい実施形態では、潤滑グリースは、群B3のフッ素不含材料のうちの2つ以上の組み合わせを含み、特に、タルクと有機基で官能化されたヒュームドシリカとの組み合わせを含む。好ましくは、基油としてシリコーン油が使用される。シリコーン油は、有利にはアルキル化された、なおもより好ましくはメチル化されたシリコーン油、特にジメチルシリコーン油である。ジメチルシリコーン油は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)とも称される。シリコーン油は、有利には、2008年9月版DIN 53019に準拠して測定された、20mm2/sec~2000000mm2/sec、なおもより好ましくは50mm2/sec~10000mm2/sec、なおもより好ましくは100~5000mm2/sec、なおもより好ましくは500~3000mm2/secの、25℃での動粘度を有する。
【0059】
したがって、本発明による特に好ましい本発明の実施形態(実施形態I)は、潤滑グリースであって、該潤滑グリースは、
(A)潤滑グリースの総重量に対して20~88重量%の基油、特にシリコーン油と、
(B)潤滑グリースの総重量に対して1~55重量%のフッ素不含材料であって、該フッ素不含材料は、2020年1月版ISO 13320-1に準拠して測定された80μm未満の平均粒子径(D50)を有し、かつ該フッ素不含材料は、無機層状ケイ酸塩、好ましくはタルク、ベントナイト、マイカ、ヒュームドシリカ、有機基で官能化されたヒュームドシリカからなる群から選択される2つ以上のフッ素不含材料の組み合わせ、特にタルクと、有機基で官能化されたヒュームドシリカとの組み合わせを含むものとする、フッ素不含材料と
を含む、潤滑グリースを含む。
【0060】
実施形態Iの好ましい実施形態は、本発明により記載されるものに加えて、特に以下のものを含む:特に好ましい官能化ヒュームドシリカは、アルキル化された、特にメチル化されたヒュームドシリカ、非常に特に好ましくはジメチルジクロロシラン変性ヒュームドシリカである。官能化ヒュームドシリカは、有利には、ISO 9277 2014 01に準拠して測定された50~400m2/gのBET表面積を有する。有機基で官能化されたヒュームドシリカの割合は、潤滑グリースの総重量に対して有利には0.5~20重量%、なおもより好ましくは1~10重量%、特に2~10重量%である。タルクは、有利には、ISO 13320-1(1999)に準拠して測定された1~30μm、有利には2~15μmの平均粒度D50を有する。タルクの割合は、潤滑グリースの総重量に対して有利には1~54重量%、なおもより好ましくは4~54重量%、特に10~54重量%である。潤滑グリースの総重量に対するフッ素不含材料の合計の割合は、有利には1~10重量%、なおもより好ましくは5~7重量%、特に1~5重量%または10~55重量%、なおもより好ましくは20~50重量%、特に30~50重量%である。潤滑グリースの総重量に対する基油の割合は、有利には30~88重量%、なおもより好ましくは50~88重量%である。好ましくは、基油としてシリコーン油が使用される。シリコーン油は、有利にはアルキル化された、なおもより好ましくはメチル化されたシリコーン油、特にジメチルシリコーン油である。シリコーン油は、有利には、2008年9月版DIN 53019に準拠して測定された、20mm2/sec~2000000mm2/sec、なおもより好ましくは50mm2/sec~10000mm2/sec、なおもより好ましくは100~5000mm2/sec、なおもより好ましくは500~3000mm2/secの、25℃での動粘度を有する。
【0061】
好ましい実施形態では、本発明による潤滑グリースは、群B1、B2、B3、B4、B5および/またはB6のうちの2つ以上から選択されるフッ素不含材料(選択肢B7)を有する。
【0062】
例えば、フッ素不含材料は、好ましい実施形態では、群B3から選択される少なくとも1つのフッ素不含材料と、群B6から選択される少なくとも1つのフッ素不含材料との組み合わせを含む。好ましくは、基油としてシリコーン油が使用される。シリコーン油は、有利にはアルキル化された、なおもより好ましくはメチル化されたシリコーン油、特にジメチルシリコーン油である。シリコーン油は、有利には、2008年9月版DIN 53019に準拠して測定された、20mm2/sec~2000000mm2/sec、なおもより好ましくは50mm2/sec~10000mm2/sec、なおもより好ましくは100~5000mm2/sec、なおもより好ましくは500~3000mm2/secの、25℃での動粘度を有する。
【0063】
さらに、フッ素不含材料は、好ましくは、a)メラミン誘導体、特にシアヌル酸メラミン、リン酸メラミンおよび/または1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリチオンと、b)無機層状ケイ酸塩、好ましくはタルク、ベントナイト、マイカ、ヒュームドシリカ、有機基で官能化されたヒュームドシリカおよび/またはこれらの混合物との組み合わせを含む。ここで、シアヌル酸メラミンと、有機基で官能化されたヒュームドシリカとの組み合わせが特に好ましい。
【0064】
本発明のさらなる好ましい実施形態では、フッ素不含材料は、a)メラミン誘導体、特にシアヌル酸メラミン、リン酸メラミンおよび/または1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリチオンと、b)無機層状ケイ酸塩、好ましくはタルク、ベントナイト、マイカ、ヒュームドシリカ、有機基で官能化されたヒュームドシリカおよび/またはこれらの混合物との組み合わせ、およびc)六方晶窒化ホウ素との組み合わせを含む。
【0065】
本発明による特に好ましい本発明の実施形態(実施形態II)は、潤滑グリースであって、該潤滑グリースは、
(A)潤滑グリースの総重量に対して20~88重量%の基油、特にシリコーン油と、
(B)潤滑グリースの総重量に対して1~55重量%のフッ素不含材料であって、該フッ素不含材料は、2020年1月版ISO 13320-1に準拠して測定された80μm未満の平均粒子径(D50)を有し、かつ該フッ素不含材料は、a)メラミン誘導体、特にシアヌル酸メラミン、リン酸メラミンおよび/または1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリチオンと、b)無機層状ケイ酸塩、好ましくはタルク、ベントナイト、マイカ、ヒュームドシリカ、有機基で官能化されたヒュームドシリカおよび/またはこれらの混合物との組み合わせを含むものとする、フッ素不含材料と
を含む、潤滑グリースを含む。
【0066】
本発明によるさらなる特に好ましい本発明の実施形態(実施形態III)は、潤滑グリースであって、該潤滑グリースは、
(A)潤滑グリースの総重量に対して20~88重量%の基油、特にシリコーン油と、
(B)潤滑グリースの総重量に対して1~55重量%のフッ素不含材料であって、該フッ素不含材料は、2020年1月版ISO 13320-1に準拠して測定された80μm未満の平均粒子径(D50)を有し、かつ該フッ素不含材料は、a)メラミン誘導体、特にシアヌル酸メラミン、リン酸メラミンおよび/または1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリチオンと、b)無機層状ケイ酸塩、好ましくはタルク、ベントナイト、マイカ、ヒュームドシリカ、有機基で官能化されたヒュームドシリカおよび/またはこれらの混合物との組み合わせ、およびc)六方晶窒化ホウ素との組み合わせを含むものとする、フッ素不含材料と
を含む、潤滑グリースを含む。
【0067】
実施形態IIおよびIIIの好ましい実施形態は、本発明により記載されるものに加えて、特に以下のものを含む:フッ素不含材料であるシアヌル酸メラミン、リン酸メラミンおよび/または1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリチオン(B6)のうち、シアヌル酸メラミンが特に好ましい。シアヌル酸メラミン、リン酸メラミンおよび/または1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリチオン(B6)は、有利には、ISO 13320-1(1999)による1~15μm、特に1~5μmの平均粒度D50を有する。無機層状ケイ酸塩のうち、有機基で官能化されたヒュームドシリカが特に好ましい。特に好ましい官能化ヒュームドシリカは、アルキル化された、特にメチル化されたヒュームドシリカ、非常に特に好ましくはジメチルジクロロシラン変性ヒュームドシリカである。官能化ヒュームドシリカは、有利には、ISO 9277 2014 01に準拠して測定された50~400m2/gのBET表面積を有する。無機層状ケイ酸塩、特に有機基で官能化されたヒュームドシリカの割合は、潤滑グリースの総重量に対して有利には0.5~20重量%、なおもより好ましくは1~10重量%、特に2~10重量%である。潤滑グリースの総重量に対するシアヌル酸メラミン、リン酸メラミンおよび/または1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリチオンの割合は、有利には1~54重量%、なおもより好ましくは4~30重量%、特に10~30重量%である。潤滑グリースの総重量に対するフッ素不含材料の合計の割合は、有利には1.5~55重量%、なおもより好ましくは4~40重量%、特に10~30重量%である。潤滑グリースの総重量に対する基油の割合は、有利には30~88重量%、なおもより好ましくは50~88重量%である。好ましくは、基油としてシリコーン油が使用される。シリコーン油は、有利にはアルキル化された、なおもより好ましくはメチル化されたシリコーン油、特にジメチルシリコーン油である。シリコーン油は、有利には、2008年9月版DIN 53019に準拠して測定された、20mm2/sec~2000000mm2/sec、なおもより好ましくは50mm2/sec~10000mm2/sec、なおもより好ましくは100~5000mm2/sec、なおもより好ましくは500~3000mm2/secの、25℃での動粘度を有する。
【0068】
実施形態IIIのさらなる好ましい実施形態では、六方晶窒化ホウ素は、ISO 13320-1(1999)に準拠して測定された0.2~30μm、有利には0.5~20μmの平均粒度D50を有する。潤滑グリースの総重量に対する六方晶窒化ホウ素の割合は、有利には10~30重量%、有利には15~30重量%である。
【0069】
本発明のさらなる好ましい実施形態では、フッ素不含材料は、群B3から選択される少なくとも1つのフッ素不含材料と、六方晶窒化ホウ素との組み合わせを含む。好ましくは、基油としてシリコーン油が使用される。シリコーン油は、有利にはアルキル化された、なおもより好ましくはメチル化されたシリコーン油、特にジメチルシリコーン油である。シリコーン油は、有利には、2008年9月版DIN 53019に準拠して測定された、20mm2/sec~2000000mm2/sec、なおもより好ましくは50mm2/sec~10000mm2/sec、なおもより好ましくは100~5000mm2/sec、なおもより好ましくは500~3000mm2/secの、25℃での動粘度を有する。
【0070】
本発明によるさらなる特に好ましい本発明の実施形態(実施形態IV)は、潤滑グリースであって、該潤滑グリースは、
(A)潤滑グリースの総重量に対して20~88重量%の基油、特にシリコーン油と、
(B)潤滑グリースの総重量に対して1~55重量%のフッ素不含材料であって、該フッ素不含材料は、2020年1月版ISO 13320-1に準拠して測定された80μm未満の平均粒子径(D50)を有し、かつ該フッ素不含材料は、a)無機層状ケイ酸塩、好ましくはタルク、ベントナイト、マイカ、ヒュームドシリカ、有機基で官能化されたヒュームドシリカおよび/またはこれらの混合物と、b)六方晶窒化ホウ素との組み合わせを含むものとする、フッ素不含材料と
を含む、潤滑グリースを含む。
【0071】
実施形態IVの好ましい実施形態は、本発明により記載されるものに加えて、特に以下のものを含む:無機層状ケイ酸塩のうち、有機基で官能化されたヒュームドシリカが特に好ましい。特に好ましい官能化ヒュームドシリカは、アルキル化された、特にメチル化されたヒュームドシリカ、非常に特に好ましくはジメチルジクロロシラン変性ヒュームドシリカである。官能化ヒュームドシリカは、有利には、ISO 9277 2014 01に準拠して測定された50~400m2/gのBET表面積を有する。無機層状ケイ酸塩、特に有機基で官能化されたヒュームドシリカの割合は、潤滑グリースの総重量に対して有利には0.5~20重量%、なおもより好ましくは1~10重量%、特に2~10重量%である。潤滑グリースの総重量に対するフッ素不含材料の合計の割合は、有利には1~10重量%、なおもより好ましくは5~7重量%、特に1~5重量%または10~55重量%、なおもより好ましくは20~50重量%、特に30~50重量%である。潤滑グリースの総重量に対する基油の割合は、有利には30~88重量%、なおもより好ましくは50~88重量%である。好ましくは、基油としてシリコーン油が使用される。シリコーン油は、有利にはアルキル化された、なおもより好ましくはメチル化されたシリコーン油、特にジメチルシリコーン油である。シリコーン油は、有利には、2008年9月版DIN 53019に準拠して測定された、20mm2/sec~2000000mm2/sec、なおもより好ましくは50mm2/sec~10000mm2/sec、なおもより好ましくは100~5000mm2/sec、なおもより好ましくは500~3000mm2/secの、25℃での動粘度を有する。
【0072】
六方晶窒化ホウ素は、有利には、ISO 13320-1(1999)に準拠して測定された0.2~30μm、有利には0.5~20μmの平均粒度D50を有する。潤滑グリースの総重量に対する六方晶窒化ホウ素の割合は、有利には10~30重量%、有利には15~30重量%である。
【0073】
本発明のさらなる好ましい実施形態では、フッ素不含材料は、
- 群B3のフッ素不含材料のうちの2つ以上の組み合わせ、および/または
- 群B3から選択される少なくとも1つのフッ素不含材料と、群B6から選択される少なくとも1つのフッ素不含材料との組み合わせ、および/または
- 群B3から選択される少なくとも1つのフッ素不含材料と六方晶窒化ホウ素との組み合わせ
を含む。
【0074】
本発明によるさらなる特に好ましい本発明の実施形態(実施形態V)は、潤滑グリースであって、該潤滑グリースは、
(A)潤滑グリースの総重量に対して20~88重量%の基油、特にシリコーン油と、
(B)潤滑グリースの総重量に対して1~55重量%のフッ素不含材料であって、該フッ素不含材料は、2020年1月版ISO 13320-1に準拠して測定された80μm未満の平均粒子径(D50)を有し、かつ該フッ素不含材料は、
- 無機層状ケイ酸塩、好ましくはタルク、ベントナイト、マイカ、ヒュームドシリカ、有機基で官能化されたヒュームドシリカおよびこれらの混合物(B3)からなる群から選択される2つ以上のフッ素不含材料の組み合わせ、および/または
- 無機層状ケイ酸塩、好ましくはタルク、ベントナイト、マイカ、ヒュームドシリカ、有機基で官能化されたヒュームドシリカおよびこれらの混合物(B3)からなる群から選択される少なくとも1つのフッ素不含材料と、メラミン誘導体、特にシアヌル酸メラミン、リン酸メラミンおよび/または1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリチオン(B6)からなる群から選択される少なくとも1つのフッ素不含材料との組み合わせ、および/または
- 無機層状ケイ酸塩、好ましくはタルク、ベントナイト、マイカ、ヒュームドシリカ、有機基で官能化されたヒュームドシリカおよびこれらの混合物(B3)からなる群から選択される少なくとも1つのフッ素不含材料と、六方晶窒化ホウ素との組み合わせ
を含むものとする、フッ素不含材料と
を含む、潤滑グリースを含む。
【0075】
本発明によるさらなる特に好ましい本発明の実施形態(実施形態VI)は、潤滑グリースであって、該潤滑グリースは、
(A)潤滑グリースの総重量に対して20~88重量%の基油、特にシリコーン油と、
(B)潤滑グリースの総重量に対して1~55重量%のフッ素不含材料であって、該フッ素不含材料は、2020年1月版ISO 13320-1に準拠して測定された80μm未満の平均粒子径(D50)を有し、かつ該フッ素不含材料は、
- タルクと、有機基で官能化されたヒュームドシリカとの組み合わせ、および/または
- a)メラミン誘導体、特にシアヌル酸メラミン、リン酸メラミンおよび/または1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリチオンと、b)無機層状ケイ酸塩、好ましくはタルク、ベントナイト、マイカ、ヒュームドシリカ、有機基で官能化されたヒュームドシリカおよび/またはこれらの混合物との組み合わせ、および/または
- a)メラミン誘導体、特にシアヌル酸メラミン、リン酸メラミンおよび/または1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリチオン(B6)と、b)無機層状ケイ酸塩、好ましくはタルク、ベントナイト、マイカ、ヒュームドシリカ、有機基で官能化されたヒュームドシリカおよび/またはこれらの混合物との組み合わせ、およびc)六方晶窒化ホウ素との組み合わせ、および/または
- b)無機層状ケイ酸塩、好ましくはタルク、ベントナイト、マイカ、ヒュームドシリカ、有機基で官能化されたヒュームドシリカおよび/またはこれらの混合物と、c)六方晶窒化ホウ素との組み合わせ
を含むものとする、フッ素不含材料と
を含む、潤滑グリースを含む。
【0076】
実施形態VおよびVIの好ましい実施形態は、本発明により記載された実施形態、特に実施形態I~IVに関連して記載された実施形態を含む。
【0077】
本発明のさらなる好ましい実施形態では、フッ素不含材料は、少なくとも一部が無機である材料であり、有利には、無機層状ケイ酸塩、特にタルク、ベントナイト、マイカ、ヒュームドシリカ、有機基で官能化されたヒュームドシリカおよび/またはこれらの混合物(B3);有機基で官能化されたナノ粒子状シリカ(B4);リン化合物、特にピロリン酸亜鉛、(ピロ)リン酸カルシウム、リン酸水素ジルコニウムおよび/またはこれらの混合物(B5);および/またはこれらの混合物である。
【0078】
本発明のさらなる好ましい実施形態では、フッ素不含材料は、有機材料であり、有利には、芳香族、複素芳香族および/または複素環式基を有し、かつ2008年4月版DIN EN ISO 11357-1に準拠して測定された200℃より高い融点または分解点を有するフッ素不含ポリマー、フッ素不含フタロシアニンおよびこれらの混合物(B1);シリコーン樹脂、リグニンおよびこれらの混合物(B2);メラミン誘導体、特にシアヌル酸メラミン、リン酸メラミンおよび/または1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリチオン(B6);および/またはこれらの混合物である。
【0079】
本発明によれば、フッ素不含材料は、それぞれ2020年1月版ISO 13320-1に準拠して測定された80μm未満、例えば1~80μm、なおもより好ましくは1~50μm、なおもより好ましくは1~20μm、特に1~15μmの平均粒子径D50を有する。有利には、試料は、4バールの試験圧力で、乾燥状態で測定される。適切な測定装置は、例えばMalvern社製Mastersizer 3000である。
【0080】
平均粒子径が80μm未満のフッ素不含材料を使用することの利点は、材料が潤滑グリース中に非常に良好かつ均一に分散でき、その場合には比表面積(BET表面積)が増大するため、増ちょう効果が改善され、摩擦箇所に良好に到達できることである。
【0081】
本発明によれば、潤滑グリースは、ポリテトラフルオロエチレンを含まず、かつ/またはポリテトラフルオロエチレンを、潤滑グリースの総重量に対してそれぞれ4重量%未満、なおもより好ましくは2重量%未満、なおもより好ましくは1重量%未満、なおもより好ましくは0.1重量%未満の割合で含む。これは、環境保護上の理由から有利である。
【0082】
好ましい実施形態では、潤滑グリースはさらに、パーフルオロもしくはポリフルオロ製品を含まず、かつ/またはパーフルオロもしくはポリフルオロ製品を、潤滑グリースの総重量に対してそれぞれ4重量%未満、なおもより好ましくは2重量%未満、なおもより好ましくは1重量%未満、なおもより好ましくは0.5重量%未満、特に0.1重量%未満の割合でしか含まない。
【0083】
本発明のさらなる好ましい実施形態では、フッ素不含材料は、NSF/H1に適合している。したがって、フッ素不含材料は、有利には、食品に接触する潤滑物質としての認可が可能となるように選択される。特に好ましくは、潤滑グリースのすべての原料は、NSF-H1による認可が可能となるように選択される。これにより、本発明による潤滑グリースを食品に接触する用途に使用することが可能となる。これにより、本発明による潤滑グリースは、例えば、食品および/もしくは飲料水に接触するトライボロジーシステム、特に食品加工における作業用器具ならびに/またはガスおよび(飲料)水用継手の潤滑に抜群に適している。
【0084】
潤滑グリースの総重量に対するフッ素不含材料の割合は、本発明によれば1~55重量%である。好ましい実施形態では、フッ素不含材料は増ちょう剤として使用される。この場合、フッ素不含材料はさらに、摩擦値を低下させる添加剤としても機能し得る。本実施形態では、潤滑グリースの総重量に対するフッ素不含材料の割合は、有利には10~55重量%、なおもより好ましくは20~50重量%、特に30~50重量%である。
【0085】
したがって、本発明の一主題は、潤滑グリースであって、該潤滑グリースは、
(A)潤滑グリースの総重量に対して20~88重量%、有利には30~88重量%、なおもより好ましくは50~88重量%、特に60~88重量%の基油と、
(B)潤滑グリースの総重量に対して10~55重量%の、増ちょう剤としてのフッ素不含材料であって、該フッ素不含材料は、それぞれ2020年1月版ISO 13320-1に準拠して測定された80μm未満、例えば1~80μm、なおもより好ましくは1~50μm、なおもより好ましくは1~20μm、特に1~15μmの平均粒子径(D50)を有し、かつ以下:
(B1)芳香族、複素芳香族および/または複素環式基を有し、かつ2008年4月版DIN EN ISO 11357-1に準拠して測定された200℃より高い融点または分解点を有するフッ素不含ポリマー;フッ素不含フタロシアニンおよびこれらの混合物;
(B2)シリコーン樹脂、リグニンおよびこれらの混合物;
(B3)無機層状ケイ酸塩、好ましくはタルク、ベントナイト、マイカ、ヒュームドシリカ、有機基で官能化されたヒュームドシリカおよびこれらの混合物;
(B4)有機基で官能化されたナノ粒子状シリカ;
(B5)リン化合物、特にピロリン酸亜鉛、(ピロ)リン酸カルシウムおよびリン酸水素ジルコニウムならびにこれらの混合物;
(B6)メラミン誘導体、特にシアヌル酸メラミン、リン酸メラミンおよび/または1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリチオン;
(B7)群B1、B2、B3、B4、B5および/またはB6のうちの2つ以上から選択されるフッ素不含材料;
からなる群から選択されるものとする、フッ素不含材料と
を含み、ここで、該潤滑グリースは、ポリテトラフルオロエチレンを含まず、かつ/またはポリテトラフルオロエチレンを、潤滑グリースの総重量に対してそれぞれ4重量%未満、なおもより好ましくは2重量%未満、なおもより好ましくは1重量%未満、なおもより好ましくは0.5重量%未満、なおもより好ましくは0.1重量%未満の割合で含む、潤滑グリースである。
【0086】
ここで、前述の潤滑グリースの好ましい実施形態は、本発明の範囲で記載された好ましい実施形態を準用して含む。
【0087】
さらなる好ましい実施形態では、フッ素不含材料は、摩擦値を低下させる添加剤として使用される。この場合、フッ素不含材料はさらに、増ちょう剤としても機能し得る。本実施形態では、潤滑グリースの総重量に対するフッ素不含材料の割合は、有利には1~10重量%、なおもより好ましくは5~7重量%、特に1~5重量%である。
【0088】
PTFEで通常使用される量と同等であるこれらの割合で、特に粘稠性の潤滑剤を得ることができることが判明した。
【0089】
本発明によれば、潤滑グリースは、潤滑グリースの総重量に対して20~88重量%、有利には30~88重量%、なおもより好ましくは50~88重量%、特に60~88重量%の基油を含む。
【0090】
好ましくは、基油は、エステル、好ましくはジペンタエリトリットエステル、トリメリット酸エステル、ヘミメリット酸エステル、ピロメリット酸エステル、エストリド、ペンタエリトリットエステル、ダイマー酸エステル、トリマー酸エステル、トリメチロールプロパンエステル(TMPエステル)、ジカルボン酸エステル;エーテル、好ましくはポリフェニルエーテル、ジアリールエーテル、トリアリールエーテル、ポリグリコール、好ましくはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシドおよび/またはテトラヒドロフラン(THF)のホモおよび/またはコポリマーであって、有利にはモノアルコール、ジアルコールおよびトリアルコールで開始されたもの、直鎖状または分岐状のパーフルオロポリエーテル油(PFPE油);合成炭化水素、好ましくはアルキル化ナフタレン、ポリアルファオレフィン(PAOs)、メタロセンポリアルファオレフィン(mPAOs);鉱物油、未処理のおよび化学修飾された植物油、グループIIIの油、ガス・ツー・リキッド(GTL)油;リラフィネートおよびリサイクレートであって、好ましくは、鉱物油、グループIIIの油、GTL油および/またはPAOから得られるもの、ジメチルシリコーン油;アリール化シリコーン油、アルキルアリールシリコーン油からなる群から選択され、これらを、単独で使用することも組み合わせて使用することも可能である。ジメチルシリコーン油は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)とも称される。
【0091】
本発明の好ましい実施形態では、基油は、エステル、好ましくはジペンタエリトリットエステル、トリメリット酸エステル、ヘミメリット酸エステル、ピロメリット酸エステル、エストリド、ペンタエリトリットエステル、ダイマー酸エステル、トリマー酸エステル、TMPエステル、ジカルボン酸エステル;エーテル、好ましくはジアリールエーテル、ポリグリコール、好ましくはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシドおよび/またはテトラヒドロフラン(THF)のホモおよび/またはコポリマーであって、有利にはモノアルコール、ジアルコールおよびトリアルコールで開始されたもの、合成炭化水素、好ましくはアルキル化ナフタレン、ポリアルファオレフィン(PAOs)、メタロセンポリアルファオレフィン(mPAOs);鉱物油、未処理のおよび化学修飾された植物油、グループIIIの油;リラフィネートおよびリサイクレートであって、好ましくは、鉱物油、グループIIIの油、GTL油および/またはPAOから得られるもの、ジメチルシリコーン油からなる群から選択され、これらを、単独で使用することも組み合わせて使用することも可能である。
【0092】
本発明のさらなる好ましい実施形態では、基油は、フッ素不含基油であり、有利には、ジペンタエリトリットエステル、トリメリット酸エステル、ヘミメリット酸エステル、ピロメリット酸エステル、エストリド、ペンタエリトリットエステル、ダイマー酸エステル、トリマー酸エステル、ジカルボン酸エステル;ジアリールエーテル;ポリグリコール、好ましくはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシドおよび/またはテトラヒドロフラン(THF)のホモおよび/またはコポリマーであって、有利にはモノアルコール、ジアルコールおよびトリアルコールで開始されたもの、合成炭化水素、好ましくはアルキル化ナフタレン、ポリアルファオレフィン(PAOs)、メタロセンポリアルファオレフィン(mPAOs);鉱物油、未処理のおよび化学修飾された植物油、グループIIIの油、ジメチルシリコーン油からなる群から選択され、これらを、単独で使用することも組み合わせて使用することも可能である。
【0093】
本発明の特に好ましい実施形態では、基油は、ジメチルシリコーン油である。
【0094】
さらなる好ましい実施形態では、基油は、2014年9月版ASTM-D-7042に準拠して測定された、40℃での30mm2/sec~2000mm2/secの、なおもより好ましくは40℃での50mm2/sec~1200mm2/secの、特に40℃での50mm2/sec~400mm2/secの動粘度を有する。
【0095】
本発明の同様に好ましい実施形態では、基油は、エステル、好ましくはジペンタエリトリットエステル、トリメリット酸エステル、ヘミメリット酸エステル、ピロメリット酸エステル、エストリド、ペンタエリトリットエステル、ダイマー酸エステル、トリメリット酸エステル、TMPエステル、ジカルボン酸エステルであって、それぞれ2014年9月版ASTM-D-7042に準拠して測定された40℃での動粘度が100mm2/sec~1200mm2/secであるもの;エーテル、好ましくはポリフェニルエーテル、ジアリールエーテル、トリアリールエーテル、直鎖状または分岐状パーフルオロポリエーテル油(PFPE油)であって、それぞれ2014年9月版ASTM-D-7042に準拠して測定された40℃での動粘度が20mm2/sec~1200mm2/secであるもの;ポリグリコール、好ましくはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシドおよび/またはテトラヒドロフラン(THF)のホモおよび/またはコポリマーであって、有利にはモノアルコール、ジアルコールおよびトリアルコールで開始され、それぞれ2014年9月版ASTM-D-7042に準拠して測定された40℃での動粘度が20mm2/sec~46000mm2/secであるもの;合成炭化水素、好ましくはアルキル化ナフタレン、ポリアルファオレフィン(PAOs)、メタロセンポリアルファオレフィン(mPAOs)であって、それぞれ2014年9月版ASTM-D-7042に準拠して測定された40℃での動粘度が10mm2/sec~20000mm2/secであるもの;2014年9月版ASTM-D-7042に準拠して測定された40℃での動粘度が10mm2/sec~100mm2/secであるグループIIIの油、ジメチルシリコーン油、アリール化シリコーン油、好ましくはアルキルアリールシリコーン油、特にメチル/アリールシリコーン油および完全にアリール化されたシリコーン油であって、それぞれ2014年9月版ASTM-D-7042に準拠して測定された40℃での動粘度が10mm2/sec~1200mm2/secであり、かつ/またはそれぞれ2008年9月版DIN 53019に準拠して測定された25℃での動粘度が20~2000000mm2/secであるものからなる群から選択され、これらを、単独で使用することも組み合わせて使用することも可能である。
【0096】
上記で説明したように、好ましい実施形態では、フッ素不含材料は、増ちょう剤として使用される。この場合、フッ素不含材料はさらに、摩擦値を低下させる添加剤としても機能し得る。本実施形態では、潤滑グリースは、本発明により使用されるフッ素不含材料とは異なるさらなる増ちょう剤を有することもできる。有利には、さらなる増ちょう剤は、金属石鹸、有利には周期表の第1および第2主族の元素の金属単純石鹸、周期表の第1および第2主族の元素の金属複合石鹸、特にリチウム石鹸、リチウム複合石鹸、アルミニウム複合石鹸、ナトリウム複合石鹸、カルシウム複合石鹸、窒化ホウ素、アルキル化および/またはアリール化(オリゴ)尿素、ワックス、特にポリエチレン(PE)ワックス、ポリプロピレン(PP)ワックス、ポリアミド(PA)ワックス(ここで、このワックスは、2008年4月版DIN EN ISO 11357-1に準拠して測定された100℃より高い融点または分解点を有する);カーボンブラック、グラファイト、スルホン酸金属塩増ちょう剤、特にスルホン酸カルシウム増ちょう剤、金属カルコゲナイド、特に二硫化モリブデン、二硫化タングステン、金属セレン化物からなる群から選択され、これらを、単独で使用することも組み合わせて使用することも可能である。
【0097】
好ましい実施形態では、さらなる増ちょう剤は、(オリゴ)尿素、特にアルキル化および/またはアリール化(オリゴ)尿素である。この場合、(オリゴ)尿素は、ジイソシアネート、有利には2,4-ジイソシアナトトルエン、2,6-ジイソシアナトトルエン、4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン、2,4’-ジイソシアナトフェニルメタン、4,4’-ジイソシアナトジフェニル、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチルフェニル、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチルフェニルメタン(これらを、単独で使用することも組み合わせて使用することも可能である)と、一般式R’2-N-Rのアミン、もしくは一般式R’2-N-R-NR’2のジアミン[式中、Rは、2~22個の炭素原子を有するアリール基、アルキル基またはアルキレン基であり、R’は、同一であるかまたは異なって、水素、アルキル基、アルキレン基またはアリール基である]またはアミンとジアミンとの混合物との反応生成物である。
【0098】
さらなる好ましい実施形態では、さらなる増ちょう剤は、スルホン酸カルシウム増ちょう剤である。スルホン酸カルシウム増ちょう剤は、方解石の形態の結晶性炭酸カルシウム、ならびに酸、特に芳香族スルホン酸、非常に特に好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸、カルボン酸、特にステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、酢酸、ホウ酸およびそれらの混合物のカルシウム塩を含む。
【0099】
さらなる好ましい実施形態では、さらなる増ちょう剤は、金属石鹸、特にリチウム石鹸および/またはリチウム複合石鹸である。ここで、リチウム石鹸とは、単官能性カルボン酸のリチウム塩を意味すると理解される。特に好ましいのは、8~22個の炭素原子、なおもより好ましくは14~20個の炭素原子を有する単官能性カルボン酸のリチウム塩である。特に好ましいリチウム石鹸は、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、モノヒドロキシ安息香酸、特にサリチル酸のリチウム塩および/または前述の酸の混合物のリチウム塩である。リチウム複合石鹸とは、単官能性カルボン酸のリチウム塩と、ジカルボン酸および/またはトリカルボン酸のリチウム塩との混合物であると理解される。
【0100】
好ましくは、リチウム複合石鹸は、8~22個の炭素原子、なおもより好ましくは14~20個の炭素原子を有する単官能性カルボン酸のリチウム塩を有する。特に好ましくは、リチウム複合石鹸は、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、モノヒドロキシ安息香酸、特にサリチル酸のリチウム塩および/または前述の酸の混合物のリチウム塩を有する。同様に特に好ましくは、リチウム複合石鹸は、2~20個の炭素原子、なおもより好ましくは8~12個の炭素原子を有するジカルボン酸のリチウム塩を有する。非常に特に好ましくは、リチウム複合石鹸は、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸のリチウム塩および/または前述の酸の混合物のリチウム塩を有する。さらに、リチウム複合石鹸は、なおもさらなる成分、例えば酢酸や乳酸のような短鎖カルボン酸および/またはリン含有酸および/またはホウ酸のリチウム塩を有することができる。
【0101】
さらなる好ましい実施形態では、さらなる増ちょう剤は、前述のさらなる増ちょう剤の2つ以上の組み合わせである。
【0102】
使用される場合、さらなる増ちょう剤の割合は、潤滑グリースの総重量に対してそれぞれ有利には3~30重量%、なおもより好ましくは3~20重量%、特に3~10重量%である。
【0103】
上記で説明したように、フッ素不含材料を添加剤として使用することもできる。本実施形態では、潤滑グリースは、有利には、本発明により使用されるフッ素不含材料とは異なる増ちょう剤を有する。有利には、本実施形態における増ちょう剤は、金属石鹸、有利には周期表の第1および第2主族の元素の金属単純石鹸、周期表の第1および第2主族の元素の金属複合石鹸、特にリチウム石鹸、リチウム複合石鹸、アルミニウム複合石鹸、ナトリウム複合石鹸、カルシウム複合石鹸、窒化ホウ素、アルキル化および/またはアリール化(オリゴ)尿素、ワックス、特にポリエチレン(PE)ワックス、ポリプロピレン(PP)ワックス、ポリアミド(PA)ワックス(ここで、このワックスは、2008年4月版DIN EN ISO 11357-1に準拠して測定された100℃より高い融点または分解点を有する);カーボンブラック、グラファイト、スルホン酸金属塩増ちょう剤、特にスルホン酸カルシウム増ちょう剤、金属カルコゲナイド、特に二硫化モリブデン、二硫化タングステン、金属セレン化物からなる群から選択され、これらを、単独で使用することも組み合わせて使用することも可能である。
【0104】
好ましい実施形態では、増ちょう剤は、(オリゴ)尿素、特にアルキル化および/またはアリール化(オリゴ)尿素である。この場合、(オリゴ)尿素は、ジイソシアネート、有利には2,4-ジイソシアナトトルエン、2,6-ジイソシアナトトルエン、4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン、2,4’-ジイソシアナトフェニルメタン、4,4’-ジイソシアナトジフェニル、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチルフェニル、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチルフェニルメタン(これらを、単独で使用することも組み合わせて使用することも可能である)と、一般式R’2-N-Rのアミン、もしくは一般式R’2-N-R-NR’2のジアミン[式中、Rは、2~22個の炭素原子を有するアリール基、アルキル基またはアルキレン基であり、R’は、同一であるかまたは異なって、水素、アルキル基、アルキレン基またはアリール基である]またはアミンとジアミンとの混合物との反応生成物である。
【0105】
さらなる好ましい実施形態では、増ちょう剤は、スルホン酸カルシウム増ちょう剤である。スルホン酸カルシウム増ちょう剤は、方解石の形態の結晶性炭酸カルシウム、ならびに酸、特に芳香族スルホン酸、非常に特に好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸、カルボン酸、特にステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、酢酸、ホウ酸およびそれらの混合物のカルシウム塩を含む。
【0106】
さらなる好ましい実施形態では、増ちょう剤は、金属石鹸、特にリチウム石鹸および/またはリチウム複合石鹸である。リチウム石鹸とは、単官能性カルボン酸のリチウム塩を意味すると理解される。特に好ましいのは、8~22個の炭素原子、なおもより好ましくは14~20個の炭素原子を有する単官能性カルボン酸のリチウム塩である。特に好ましいリチウム石鹸は、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、モノヒドロキシ安息香酸、特にサリチル酸のリチウム塩および/または前述の酸の混合物のリチウム塩である。
【0107】
リチウム複合石鹸とは、単官能性カルボン酸のリチウム塩と、ジカルボン酸および/またはトリカルボン酸のリチウム塩との混合物であると理解される。好ましくは、リチウム複合石鹸は、8~22個の炭素原子、なおもより好ましくは14~20個の炭素原子を有する単官能性カルボン酸のリチウム塩を有する。特に好ましくは、リチウム複合石鹸は、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、モノヒドロキシ安息香酸、特にサリチル酸のリチウム塩および/または前述の酸の混合物のリチウム塩を有する。同様に特に好ましくは、リチウム複合石鹸は、2~20個の炭素原子、なおもより好ましくは8~12個の炭素原子を有するジカルボン酸のリチウム塩を有する。非常に特に好ましくは、リチウム複合石鹸は、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸のリチウム塩および/または前述の酸の混合物のリチウム塩を有する。さらに、リチウム複合石鹸は、なおもさらなる成分、例えば酢酸や乳酸のような短鎖カルボン酸および/またはリン含有酸および/またはホウ酸のリチウム塩を有することができる。
【0108】
さらなる好ましい実施形態では、増ちょう剤は、前述のさらなる増ちょう剤の2つ以上の組み合わせである。
【0109】
好ましくは、増ちょう剤は、金属石鹸である。好ましくは、金属石鹸は、さらなる増ちょう剤に関連して上述した金属石鹸である。
【0110】
有利には、増ちょう剤の割合は、潤滑グリースの総重量に対してそれぞれ3~40重量%、なおもより好ましくは6~30重量%、特に8~25重量%である。
【0111】
したがって、本発明の一主題は、潤滑グリースであって、該潤滑グリースは、
(A)潤滑グリースの総重量に対して20~88重量%、有利には30~88重量%、なおもより好ましくは50~88重量%、特に60~88重量%の基油と、
(B)潤滑グリースの総重量に対して1~10重量%の、添加剤としてのフッ素不含材料であって、該フッ素不含材料は、それぞれ2020年1月版ISO 13320-1に準拠して測定された80μm未満、例えば1~80μm、なおもより好ましくは1~50μm、なおもより好ましくは1~20μm、特に1~15μmの平均粒子径(D50)を有し、かつ以下:
(B1)芳香族、複素芳香族および/または複素環式基を有し、かつ2008年4月版DIN EN ISO 11357-1に準拠して測定された200℃より高い融点または分解点を有するフッ素不含ポリマー;フッ素不含フタロシアニンおよびこれらの混合物;
(B2)シリコーン樹脂、リグニンおよびこれらの混合物;
(B3)無機層状ケイ酸塩、好ましくはタルク、ベントナイト、マイカ、ヒュームドシリカ、有機基で官能化されたヒュームドシリカおよびこれらの混合物;
(B4)有機基で官能化されたナノ粒子状シリカ;
(B5)リン化合物、特にピロリン酸亜鉛、(ピロ)リン酸カルシウムおよびリン酸水素ジルコニウムならびにこれらの混合物;
(B6)メラミン誘導体、特にシアヌル酸メラミン、リン酸メラミンおよび/または1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリチオン;
(B7)群B1、B2、B3、B4、B5および/またはB6のうちの2つ以上から選択されるフッ素不含材料;
からなる群から選択されるものとする、フッ素不含材料と、
(C)潤滑グリースの総重量に対してそれぞれ3~40重量%、なおもより好ましくは6~30重量%、特に8~25重量%の、フッ素不含材料とは異なる増ちょう剤と
を含み、ここで、該潤滑グリースは、ポリテトラフルオロエチレンを含まず、かつ/またはポリテトラフルオロエチレンを、潤滑グリースの総重量に対してそれぞれ4重量%未満、なおもより好ましくは2重量%未満、なおもより好ましくは1重量%未満、なおもより好ましくは0.5重量%未満、なおもより好ましくは0.1重量%未満の割合で含む、潤滑グリースである。
【0112】
ここで、前述の潤滑グリースの好ましい実施形態は、本発明の範囲で記載された実施形態を準用して含む。
【0113】
有利には、潤滑グリースは、粘稠性の潤滑グリースである。さらなる好ましい実施形態では、高温用潤滑グリースは、1981.12版DIN 51818によるNLGIクラス1~3、有利には2の潤滑グリースである。さらなる好ましい実施形態では、潤滑グリースは、12/2016版DIN-ISO 2137に準拠して測定された200 1/10mm~400 1/10mm、好ましくは220 1/10mm~340 1/10mm、なおもより好ましくは250~340 1/10mm、特に265 1/10mm~295 1/10mmの混和ちょう度を有する。
【0114】
本発明の好ましい実施形態では、潤滑グリースは、摩耗、酸化、腐食に対する添加剤、ならびに/または摩擦を低減するための添加剤、ならびに/または高圧特性、流動点および/もしくは粘度を改善するための添加剤を含む。
【0115】
使用される場合、添加剤は、有利には、潤滑グリースの総重量に対してそれぞれ1~10重量%、なおもより好ましくは1~8重量%、特に1~5重量%の割合で存在する。
【0116】
酸化防止剤として、特に、芳香族アミン系酸化防止剤、例えばアルキル化フェニル-α-ナフチルアミン、ジアルキルジフェニルアミン、アラルキル化ジフェニルアミン、立体障害フェノール、例えばブチルヒドロキシトルエン(BHT)からなる群から選択される酸化防止剤が使用され、これらを、単独で使用することも組み合わせて使用することも可能である。
【0117】
摩耗防止剤は、有利には、アミン中和ホスフェート、アルキル化および非アルキル化トリアリールホスフェート、アルキル化および非アルキル化トリアリールチオホスフェート、亜鉛またはMoまたはWジアルキルジチオホスフェート、カルバメート、チオカルバメート、亜鉛またはMoまたはWジチオカルバメート、ジメルカプトチアジアゾールからなる群から選択され、これらは、単独でまたは組み合わせて使用される。
【0118】
腐食防止剤は、有利には、スルホン酸カルシウム、好ましくは塩基価(TBN)が100~500mgKOH/gの「超塩基性」スルホン酸Ca、アミン中和ホスフェート、アルキル化ナフタレンスルホン酸Ca、オキサゾリン誘導体、イミダゾール誘導体、コハク酸半エステル、N-アルキル化ベンゾトリアゾール、ベンゾトリアゾールをベースとする添加剤からなる群から選択され、これらは、単独でまたは組み合わせて使用される。
【0119】
好ましくは極圧添加剤は、チオホスフェート、硫化化合物、有利には硫化脂肪酸エステル、アルキル化ポリスルフィドからなる群から選択され、これらを、単独で使用することも組み合わせて使用することも可能である。
【0120】
好ましくは、流動点および/または粘度を改善するための添加剤は、直鎖状または分岐状のアルキル化、アクリル化および/または脂肪族ポリマー、コポリマーからなる群から選択され、これらを、単独で使用することも組み合わせて使用することも可能である。
【0121】
本発明は、本発明による潤滑グリースの製造方法であって、該方法は、以下の成分:
(A)潤滑グリースの総重量に対して20~88重量%、有利には30~88重量%、なおもより好ましくは50~88重量%、特に60~88重量%の基油と、
(B)潤滑グリースの総重量に対して1~55重量%のフッ素不含材料であって、該フッ素不含材料は、それぞれ2020年1月版ISO 13320-1に準拠して測定された80μm未満、例えば1~80μm、なおもより好ましくは1~50μm、なおもより好ましくは1~20μm、特に1~15μmの平均粒子径(D50)を有し、かつ以下:
(B1)芳香族、複素芳香族および/または複素環式基を有し、かつ2008年4月版DIN EN ISO 11357-1に準拠して測定された200℃より高い融点または分解点を有するフッ素不含ポリマー;フッ素不含フタロシアニンおよびこれらの混合物;
(B2)シリコーン樹脂、リグニンおよびこれらの混合物;
(B3)無機層状ケイ酸塩、好ましくはタルク、ベントナイト、マイカ、ヒュームドシリカ、有機基で官能化されたヒュームドシリカおよびこれらの混合物;
(B4)有機基で官能化されたナノ粒子状シリカ;
(B5)リン化合物、特にピロリン酸亜鉛、(ピロ)リン酸カルシウムおよびリン酸水素ジルコニウムならびにこれらの混合物;
(B6)メラミン誘導体、特にシアヌル酸メラミン、リン酸メラミンおよび/または1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリチオン;
(B7)群B1、B2、B3、B4、B5および/またはB6のうちの2つ以上から選択されるフッ素不含材料;
からなる群から選択されるものとする、フッ素不含材料と
を混合する工程を含み、ここで、該潤滑グリースは、ポリテトラフルオロエチレンを含まず、かつ/またはポリテトラフルオロエチレンを、潤滑グリースの総重量に対してそれぞれ4重量%未満、なおもより好ましくは2重量%未満、なおもより好ましくは1重量%未満、なおもより好ましくは0.5重量%未満、なおもより好ましくは0.1重量%未満の割合で含む、方法にも関する。
【0122】
本発明による方法の好ましい実施形態は、本発明による潤滑グリースに関連して記載された実施形態を含む。
【0123】
本発明はさらに、トライボロジーシステム、特に、-60℃未満から160℃を超えるまで、および/または-60℃から160℃までの広い使用温度範囲が必要とされる用途でのトライボロジーシステムを潤滑するための、本発明による潤滑グリースの使用に関する。
【0124】
本発明の好ましい実施形態では、本発明による潤滑グリースは、滑り軸受、特にチェーン、バルブ、継手、アクチュエータ、転がり軸受の潤滑に、および/または化学工業の生産プラントの駆動に使用される。
【0125】
本発明の特に好ましい実施形態では、本発明による潤滑グリースは、転がり軸受用途の高温用グリースとして設計されている。ここで、転がり軸受用途の高温用グリースとは、DIN 51825:2004-06に準拠して3000rpm、荷重1500Nおよび設置位置Bにおいて、少なくとも160℃、例えば160℃~240℃および/または160℃~200℃でその上限使用温度に達するグリースを意味すると理解される。上限使用温度に達するのは、軸受集合体(少なくとも5個の試験軸受)の少なくとも50%が、試験温度で少なくとも100時間の運転時間に達したときである。
【0126】
本発明の特に好ましい実施形態では、本発明による潤滑グリースは、転がり軸受用途の潤滑グリースとして設計されている。ここで、転がり軸受用途の潤滑グリースとは、DIN 51825:2004-06に準拠して3000rpm、荷重1500Nおよび設置位置Bにおいて、100℃~160℃および/または120℃~160℃の温度範囲でその上限使用温度に達するグリースを意味すると理解される。上限使用温度に達するのは、軸受集合体(少なくとも5個の試験軸受)の少なくとも50%が、試験温度で少なくとも100時間の運転時間に達したときである。
【0127】
本発明の好ましい実施形態は、滑り軸受、好ましくは継手、特にガス用継手、空気圧シリンダ、シール、バルブ、アクチュエータ、リニアガイド、吸気マニホールドの調整フラップおよび制御フラップ、カップリング、ねじ、ボルト、取付部品、コンベヤベルト、食品産業の冷凍トンネル内の輸送用チェーンを潤滑するための、ならびに/または化学工業の生産プラントを駆動するための本発明による潤滑グリースの使用を含む。ここで、滑り軸受、転がり軸受および/または化学工業の生産プラントは、有利には少なくとも一時的に-60℃~160℃の温度で運転される。
【0128】
本発明による使用の好ましい実施形態は、本発明による潤滑グリースに関連して記載された実施形態を含む。
【0129】
本発明はさらに、食品に接触するトライボロジーシステム、例えば、冷凍トンネル内の輸送用チェーンおよびコンベヤベルト、空気圧シリンダ、シールなどの、歯車、転がり軸受および滑り軸受を備えた食品加工における作業用器具を潤滑するための本発明による潤滑グリースの使用に関する。本発明はさらに、飲料水に接触するトライボロジーシステム、例えば、ガスおよび(飲料)水継手用のバルブおよび取付部品を潤滑するための;ならびに/または-60℃未満から160℃を超える温度範囲での様々な使用が必要とされるトライボロジーシステムを潤滑するための、ならびに/または転がり軸受もしくは滑り軸受を備えた自動車分野の部品、例えば、自動車ステアリング用途のボールねじ、アクチュエータ;ギアボックス、プラスチックギア、シール、サンルーフのシール、ブレーキブースターおよび/またはリニアガイドを潤滑するための、本発明によるグリースの使用に関する。
【0130】
本発明による使用の好ましい実施形態は、本発明による潤滑グリースに関連して記載された実施形態を含む。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【
図1】12-ヒドロキシステアリン酸Li、PAO、ならびにマイカ、リン酸水素ジルコニウム、モノリン酸メラミン、PEEK、PPSおよび1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリチオンから構成されるマイクロ粉末をベースとする本発明による6種の潤滑グリースについて、PTFE含有比較グリースと比較して、Tannert摺動摩擦試験装置で測定し、摩擦値μとして測定した摩擦係数を示す図である。
【
図2】パーフルオロポリエーテル油、およびPPS、PEEKまたは1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリチオンから構成されるマイクロ粉末をベースとする本発明による3種の潤滑グリースについて、PTFE含有比較グリースと比較して、Tannert摺動摩擦試験装置で測定し、摩擦値μとして測定した摩擦係数を示す図である。
【0132】
以下、本発明を限定するものではない試験に基づいて、本発明をより詳細に説明する。1500rpmで10分間の混合は、Hauschild社製DAC 700.1 FVZスピードミキサーを使用して実施する。
【0133】
1.本発明による潤滑グリース1、2、3、4、10、11および比較グリース5の製造
本発明による6種の潤滑グリースを以下のように製造する:
実施例グリース1:槽内で、粘度30mm2/secの51.9gのPAO6中の9.0gの12-ヒドロキシステアリン酸Liを、撹拌しながら40℃で205℃の温度にし、ゆっくり冷却する。0.5gのアミン系酸化防止剤Irganox L 150および2.1gのセバシン酸二ナトリウムを添加した後、この混合物を3本ロールミルで均質化し、平均粒子径D50=15μmの36.5gのマイカを添加し、1500rpmで10分間撹拌する。この混合物を3本ロールミルで再度均質化し、NLGIクラス2(混和ちょう度280 1/10mm)の潤滑グリースを得る。
【0134】
実施例グリース2:槽内で、粘度30cstの52.2gのPAO6中の9.0gのヒドロキシステアリン酸Liを、撹拌しながら40℃で205℃の温度にし、ゆっくり冷却する。0.5gのアミン系酸化防止剤Irganox L 150および2.1gのセバシン酸二ナトリウムを添加した後、この混合物を3本ロールミルで均質化し、平均粒子径D50=1.7μmの36.2gのリン酸水素ジルコニウムを添加し、1500rpmで10分間撹拌する。この混合物を3本ロールミルで再度均質化し、NLGIクラス1(混和ちょう度330 1/10mm)の潤滑グリースを得る。
【0135】
実施例グリース3:槽内で、粘度30cstの45.3gのPAO6中の7.9gのヒドロキシステアリン酸Liを、撹拌しながら40℃で205℃の温度にし、ゆっくり冷却する。0.4gのアミン系酸化防止剤Irganox L 150および1.8gのセバシン酸二ナトリウムを添加した後、この混合物を3本ロールミルで均質化し、平均粒子径D50=10μmの44.6gのモノリン酸メラミンを添加し、1500rpmで10分間撹拌する。この混合物を3本ロールミルで再度均質化し、NLGIクラス1(混和ちょう度330 1/10mm)の潤滑グリースを得る。
【0136】
実施例グリース4:槽内で、粘度30cstの48.0gのPAO6中の8.3gのヒドロキシステアリン酸Liを、撹拌しながら40℃で205℃の温度にし、ゆっくり冷却する。0.5gのアミン系酸化防止剤Irganox L 150および1.9gのセバシン酸二ナトリウムを添加した後、この混合物を3本ロールミルで均質化し、平均粒子径D50=10μmの41.3gの1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリチオンを添加し、1500rpmで10分間撹拌する。この混合物を3本ロールミルで再度均質化し、NLGIクラス2(混和ちょう度280 1/10mm)の潤滑グリースを得る。
【0137】
比較グリース5(比較例):槽内で、粘度30cstの53.3gのPAO6中の9.1gのヒドロキシステアリン酸Liを、撹拌しながら40℃で205℃の温度にし、ゆっくり冷却する。0.7gのアミン系酸化防止剤Irganox L 150および1.9gのセバシン酸二ナトリウムを添加した後、この混合物を3本ロールミルで均質化し、融点330℃、平均粒子径D50=4μmの35.0gのPTFEマイクロ粉末を添加し、1500rpmで10分間撹拌する。この混合物を3本ロールミルで再度均質化し、NLGIクラス2(混和ちょう度290 1/10mm)の潤滑グリースを得る。
【0138】
実施例グリース10:槽内で、粘度30mm2/secの47.6gのPAO6中の8.1gの12-ヒドロキシステアリン酸Liを、撹拌しながら40℃で205℃の温度にし、ゆっくり冷却する。0.6gのアミン系酸化防止剤Irganox L 150および1.7gのセバシン酸二ナトリウムを添加した後、この混合物を3本ロールミルで均質化し、融点280℃、平均粒子径D50=5μmの42.0gのPPSマイクロ粉末を添加し、1500rpmで10分間撹拌する。この混合物を3本ロールミルで再度均質化し、NLGIクラス2(混和ちょう度295 1/10mm)の潤滑グリースを得る。
【0139】
実施例グリース11:槽内で、粘度30cstの46.2gのPAO6中の7.9gのヒドロキシステアリン酸Liを、撹拌しながら40℃で205℃の温度にし、ゆっくり冷却する。0.6gのアミン系酸化防止剤Irganox L 150および1.7gのセバシン酸二ナトリウムを添加した後、この混合物を3本ロールミルで均質化し、融点340℃、平均粒子径D50=10μmの43.6gのPEEKマイクロ粉末を添加し、1500rpmで10分間撹拌する。この混合物を3本ロールミルで再度均質化し、NLGIクラス2(混和ちょう度295 1/10mm)の潤滑グリースを得る。
【0140】
2.トライボロジー特性の測定
実施例1で製造した潤滑グリースのトライボロジー特性を、Tannert摺動摩擦試験装置で試験する。この試験装置は、例えばT. Mang (Editor), Encyclopedia of Lubricants and Lubrication, Springer, Berlin, Heidelberg 2014に記載されている、トライボテクノロジーで一般的に使用される試験装置であり、ゆっくりとした振動運動中の摩擦挙動を調べるために使用される。0.5gのグリースを塗布したST37鋼のスライディングタングを、線形の2つの円筒ころ(100Cr6鋼、直径10mm、長さ10mm)間で、室温で0.243mm/sの速度で往復振動させる。最初のサイクルでは、100Nの法線力を加える。200mmの各運動サイクルの後に法線力を50N増加させ、スティックスリップが発生するかまたは最大荷重1200Nに達するまでこれを行う。同時に、平均摩擦力を各運動サイクルにわたって連続的に求める。試験を、有利には25℃で行う。
【0141】
図1からわかるように、驚くべきことに、本発明による潤滑グリース1、2および11の摩擦係数は、PTFE含有比較グリース5の摩擦係数よりも全荷重範囲にわたって低く、本発明による潤滑グリース3および4は、PTFE含有比較グリース5の摩擦係数よりもほぼ全荷重範囲にわたって低いことが判明した。さらに、本発明による潤滑グリース10の摩擦係数は、PTFE含有比較グリースの摩擦係数よりもわずかに高いだけであることが判明した。PTFE含有比較グリースが荷重300Nでスティックスリップを引き起こすのに対し、本発明による潤滑グリース2、3、4および11は、可能な最大荷重である1200Nまでスティックスリップを全く生じない。本発明による潤滑グリース1は、荷重700Nまでスティックスリップを生じない。
【0142】
3.レオロジー特性の測定
実施例1で製造した潤滑グリースのレオロジー特性を、DIN 53019に準拠してAnton Paar社製MCR 300レオメータを用いて、試験温度25℃、せん断速度300s-1で測定する。90秒の測定時間後に求めたせん断粘度を、PTFE含有比較グリースのせん断粘度と比較する:
以下の表1によると、驚くべきことに、本発明によるリン酸水素ジルコニウム含有潤滑グリース2のせん断粘度は、PTFE含有比較グリース5の約半分しかないことが判明した。本発明によるモノリン酸メラミン含有潤滑グリース3も、PTFE含有比較グリースよりもせん断粘度が大幅に低い。
【0143】
【0144】
4.本発明による潤滑グリース6~8および比較グリース9の製造
本発明による潤滑グリース6~8および比較グリース9を、以下のように製造する:
実施例グリース6:槽内で、40cstで粘度430mm2/secのAflunox 400Vとして入手可能である、モノマーとしてのパーフルオロプロピレンオキシドからなる71.5gのパーフルオロポリエーテル油と、融点280℃、平均粒子径D50=5μmの26.5gのPPSマイクロ粉末と、腐食防止添加剤としての2gのセバシン酸二ナトリウムとを、スピードミキサーにて1000rpmで5分間撹拌し、3本ロールミルで均質化し、NLGIクラス2-3(混和ちょう度250 1/10mm)の潤滑グリースを得る。
【0145】
実施例グリース7:槽内で、40cstで粘度430mm2/secのAflunox 400V型の71.7gのパーフルオロポリエーテル油と、融点340℃、平均粒子径D50=10μmの26.3gのPEEKマイクロ粉末と、2gのセバシン酸二ナトリウムとを、スピードミキサーにて1000rpmで5分間撹拌し、3本ロールミルで均質化し、NLGIクラス2(混和ちょう度280 1/10mm)の潤滑グリースを得る。
【0146】
実施例グリース8:槽内で、40cstで粘度430mm2/secのAflunox 400V型の82.4gのパーフルオロポリエーテル油と、平均粒子径D50=10μmの15.6gの1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリチオンと、2gのセバシン酸二ナトリウムとを、スピードミキサーにて1000rpmで5分間撹拌し、3本ロールミルで均質化し、NLGIクラス2(混和ちょう度275 1/10mm)の潤滑グリースを得る。
【0147】
比較グリース9(比較例):槽内で、40cstで粘度430mm2/secのAflunox 400V型の70.0gのパーフルオロポリエーテル油と、融点330℃、平均粒子径D50=4μmの28.0gのPTFEマイクロ粉末と、2gのセバシン酸二ナトリウムとを、スピードミキサーにて1000rpmで5分間撹拌し、3本ロールミルで均質化し、NLGIクラス2(混和ちょう度275 1/10mm)の潤滑グリースを得る。
【0148】
比較グリース12(比較例):槽内で、72.0gのパーフルオロポリエーテル油と、融点330℃、平均粒子径D50=4μmの28.0gのPTFEマイクロ粉末と、2.0gのセバシン酸二ナトリウムとを、1000rpmで5分間撹拌し、3本ロールミルで均質化し、NLGIクラス2(混和ちょう度280 1/10mm)の潤滑グリースを得る。
【0149】
【0150】
表2が示すように、本発明による実施例グリースは、同等の低温挙動(流動圧の結果)で、100℃および200℃において大幅に低い油分離性を示すため、パーフルオロポリエーテル油は、グリース中により良好に保持される。高温寿命試験(FE9)では、実施例グリース6は、L50寿命の大幅な延長を示し、実施例グリース7は、L10寿命の大幅な延長の向上を示す。
【0151】
5.本発明による潤滑グリース13および14(群B6)の製造
実施例グリース13:槽内で、40cstで粘度430mm2/secのAflunox 400Vとして入手可能である、モノマーとしてのパーフルオロプロピレンオキシドからなる72.0gのパーフルオロポリエーテル油と、平均粒子径D50=10μmの26.0gの1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリチオンと、腐食防止添加剤としての2gのセバシン酸二ナトリウムとを、スピードミキサーにて1000rpmで5分間撹拌し、3本ロールミルで均質化し、NLGIクラス2(混和ちょう度259 1/10mm)の潤滑グリースを得る。
【0152】
実施例グリース14:槽内で、40cstで粘度430mm2/secのAflunox 400Vとして入手可能である、モノマーとしてのパーフルオロプロピレンオキシドからなる71.0gのパーフルオロポリエーテル油と、平均粒子径D50=6.7μmの27.0gのリン酸メラミンと、腐食防止添加剤としての2gのセバシン酸二ナトリウムとを、スピードミキサーにて1000rpmで5分間撹拌し、3本ロールミルで均質化し、NLGIクラス2(混和ちょう度271 1/10mm)の潤滑グリースを得る。
【0153】
【0154】
本発明によるグリースは、比較グリースと比較して100℃で油分離性の半減を示し;200℃ではわずかにしか増加しない。低温挙動(流動圧)は、同等であるとみなすことができる。摩擦挙動(Tannert)は、大幅に改善されている。実施例グリース13は、FE9試験で寿命の向上を示している。実施例グリース14も、寿命試験(FE9)での要求を非常に確実に満たす。
【0155】
6.本発明による潤滑グリース15~18(群B3、B6)の製造
群B3のフッ素不含材料と、群B6の部分的にフッ素不含の材料とを含む本発明による潤滑グリース15~18を製造する。以下のとおりに実施する:槽内にシリコーン油を装入し、撹拌しながら120~130℃に加熱する。次に、BET表面積約110m2/gのジメチルジクロロシラン変性Aerosilを加え、この混合物を1時間撹拌する。冷却後、シリコーン油/Aerosilの液体を、表に記載のさらなる配合成分と混合し、1500rpmで10分間撹拌する。この混合物を3本ロールミルで均質化し、表に示す実施例グリースを得る。
【0156】
【0157】
7.トライボロジー特性の測定
実施例4で製造した潤滑グリースのトライボロジー特性を、Tannert摺動摩擦試験装置で試験する。得られた摩擦係数を、PTFE含有グリース(比較グリース9)の摩擦係数と比較する:
図2からわかるように、本発明による潤滑グリース6および7の摩擦係数は、驚くべきことにPTFE含有比較グリース9の摩擦係数よりも低いことが判明した。PTFE含有比較グリースが荷重600Nでスティックスリップを引き起こすのに対し、本発明による高温用潤滑グリース6、7および8は、可能な最大荷重である1200Nまでスティックスリップを全く示さなかった。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑グリースであって、前記潤滑グリースは、
(A)前記潤滑グリースの総重量に対して20~88重量%の基油と、
(B)前記潤滑グリースの総重量に対して1~55重量%のフッ素不含材料であって、前記フッ素不含材料は、2020年1月版ISO 13320-1に準拠して測定された80μm未満の平均粒子径(D50)を有し、かつ以下:
(B1)芳香族、複素芳香族および/または複素環式基を有し、かつ2008年4月版DIN EN ISO 11357-1に準拠して測定された200℃より高い融点または分解点を有するフッ素不含ポリマー、フッ素不含フタロシアニンおよびこれらの混合物;
(B2)シリコーン樹脂、リグニンおよびこれらの混合物;
(B3)無機層状ケイ酸塩、好ましくはタルク、ベントナイト、マイカ、ヒュームドシリカ、有機基で官能化されたヒュームドシリカおよびこれらの混合物;
(B4)有機基で官能化されたナノ粒子状シリカ;
(B5)リン化合物、特にピロリン酸亜鉛、(ピロ)リン酸カルシウムおよびリン酸水素ジルコニウムならびにこれらの混合物;
(B6)メラミン誘導体、特にシアヌル酸メラミン、リン酸メラミンおよび/または1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリチオン;
(B7)前記群B1、B2、B3、B4、B5および/またはB6のうちの2つ以上から選択されるフッ素不含材料;
からなる群から選択されるものとする、フッ素不含材料と
を含み、ここで、前記潤滑グリースは、ポリテトラフルオロエチレンを含まず、かつ/またはポリテトラフルオロエチレンを、前記潤滑グリースの総重量に対して4重量%未満の割合で含む、潤滑グリース。
【請求項2】
前記フッ素不含材料が、選択肢B1によるフッ素不含ポリマーであり、前記フッ素不含ポリマーにおいて、芳香族炭素原子および/または複素芳香族構造に含まれる炭素原子の数値割合が、それぞれ前記フッ素不含ポリマー中の炭素原子の総数に対して少なくとも20%であることを特徴とする、請求項1記載の潤滑グリース。
【請求項3】
前記フッ素不含材料が、選択肢B1によるフッ素不含ポリマーであり、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、好ましくはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、なおもより好ましくは架橋PAEK、特に架橋PEEK、ポリフェニルスルフィド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリ(アミド)イミド(PAI)、ペリレンイミド、ポリカーボネート(PC)、ポリキノリン、ポリキノキサリン、モルホリン、特にフタロシアニン、メラミン樹脂およびこれらのブレンドからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1または2記載の潤滑グリース。
【請求項4】
前記フッ素不含材料が、架橋PAEK、特に架橋PEEKであることを特徴とする、請求項1
または2記載の潤滑グリース。
【請求項5】
前記フッ素不含材料が、
- 前記群B3の前記フッ素不含材料のうちの2つ以上の組み合わせを含み、特に、タルクと有機基で官能化されたヒュームドシリカとの組み合わせを含み、かつ/または
- 前記群B3から選択される少なくとも1つのフッ素不含材料と、前記群B6から選択される少なくとも1つのフッ素不含材料との組み合わせを含み、特に、有機基で官能化されたヒュームドシリカとシアヌル酸メラミンとの組み合わせを含み、かつ/または
- 前記群B3から選択される少なくとも1つのフッ素不含材料と、前記群B6から選択される少なくとも1つのフッ素不含材料との組み合わせ、および六方晶窒化ホウ素との組み合わせを含み、かつ/または
- 前記群B3から選択される少なくとも1つのフッ素不含材料と六方晶窒化ホウ素との組み合わせを含む
ことを特徴とする、請求項1
または2記載の潤滑グリース。
【請求項6】
前記フッ素不含材料が、有機基で官能化されたヒュームドシリカと、シアヌル酸メラミンとの組み合わせ、および六方晶窒化ホウ素との組み合わせを含むことを特徴とする、請求項1
または2記載の潤滑グリース。
【請求項7】
前記フッ素不含材料が、有機基で官能化されたヒュームドシリカと、六方晶窒化ホウ素との組み合わせを含むことを特徴とする、請求項1
または2記載の潤滑グリース。
【請求項8】
前記フッ素不含材料および/または前記潤滑グリースが、NSF/H1に適合していることを特徴とする、請求項1
または2記載の潤滑グリース。
【請求項9】
前記フッ素不含材料が、増ちょう剤として機能し、前記潤滑グリースの総重量に対する前記フッ素不含材料の割合が、10~55重量%であることを特徴とする、請求項1
または2記載の潤滑グリース。
【請求項10】
前記潤滑グリースが、前記フッ素不含材料とは異なるさらなる増ちょう剤を、有利には前記潤滑グリースの総重量に対して3~30重量%の割合で含むことを特徴とする、請求項9記載の潤滑グリース。
【請求項11】
前記フッ素不含材料が、摩擦値を低下させる添加剤として機能し、前記フッ素不含材料の割合が、前記潤滑グリースの総重量に対して1~10重量%であることを特徴とする、請求項1
または2記載の潤滑グリース。
【請求項12】
前記潤滑グリースが、前記フッ素不含材料とは異なる増ちょう剤を、有利には前記潤滑グリースの総重量に対して3~40重量%の割合で含むことを特徴とする、請求項11記載の潤滑グリース。
【請求項13】
前記基油が、エステル、好ましくはジペンタエリトリットエステル、トリメリット酸エステル、ヘミメリット酸エステル、ピロメリット酸エステル、エストリド、ペンタエリトリットエステル、ダイマー酸エステル、トリマー酸エステル、トリメチロールプロパンエステル(TMPエステル);エーテル、好ましくはポリフェニルエーテル、ジアリールエーテル、トリアリールエーテル、ポリグリコール、直鎖状または分岐状のパーフルオロポリエーテル油(PFPE油);合成炭化水素、好ましくはアルキル化ナフタレン、ポリアルファオレフィン(PAOs)、メタロセンポリアルファオレフィン(mPAOs);未処理のおよび化学修飾された植物油、グループIIIの油、ガス・ツー・リキッド(GTL)油;ジメチルシリコーン油;アリール化シリコーン油、好ましくはアルキルアリールシリコーン油、特にメチル/アリールシリコーン油および完全にアリール化されたシリコーン油からなる群から選択され、これらを、単独で使用することも組み合わせて使用することも可能であることを特徴とする、請求項1
または2記載の潤滑グリース。
【請求項14】
前記フッ素不含材料が、無機層状ケイ酸塩、好ましくはタルク、ベントナイト、マイカ、ヒュームドシリカ、有機基で官能化されたヒュームドシリカおよび/またはこれらの混合物と、無機層状ケイ酸塩ではない層状固体潤滑物質との組み合わせであることを特徴とする、請求項1
または2記載の潤滑グリース。
【請求項15】
本発明による潤滑グリースの製造方法であって、前記方法は、以下の成分:
(A)前記潤滑グリースの総重量に対して20~88重量%の基油と、
(B)前記潤滑グリースの総重量に対して1~55重量%のフッ素不含材料であって、前記フッ素不含材料は、2020年1月版ISO 13320-1に準拠して測定された80μm未満の平均粒子径D50を有し、かつ以下:
(B1)芳香族、複素芳香族および/または複素環式基を有し、かつ2008年4月版DIN EN ISO 11357-1に準拠して測定された200℃より高い融点または分解点を有するフッ素不含ポリマー;フッ素不含フタロシアニンおよびこれらの混合物;
(B2)シリコーン樹脂、リグニンおよびこれらの混合物;
(B3)無機層状ケイ酸塩、好ましくはタルク、ベントナイト、マイカ、ヒュームドシリカおよびこれらの混合物;
(B4)有機基で官能化されたナノ粒子状シリカ;
(B5)リン化合物、特にピロリン酸亜鉛、(ピロ)リン酸カルシウムおよびリン酸水素ジルコニウムならびにこれらの混合物;
(B6)メラミン誘導体、特にシアヌル酸メラミン、リン酸メラミンおよび/または1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリチオン;
(B7)前記群B1、B2、B3、B4、B5および/またはB6のうちの2つ以上から選択されるフッ素不含材料;
からなる群から選択されるものとする、フッ素不含材料と
を混合する工程を含み、ここで、前記潤滑グリースは、ポリテトラフルオロエチレンを含まず、かつ/またはポリテトラフルオロエチレンを、前記潤滑グリースの総重量に対してそれぞれ6重量%未満、なおもより好ましくは4重量%未満、なおもより好ましくは2重量%未満、なおもより好ましくは1重量%未満、なおもより好ましくは0.1重量%未満の割合で含む、方法。
【請求項16】
トライボロジーシステム、特に、有利には160℃を超える、なおもより好ましくは180℃を超える、特に200℃を超える高い上限使用温度が必要とされる用途でのトライボロジーシステムを潤滑するための、および/または-40℃~160℃の温度範囲での様々な使用が必要とされるトライボロジーシステムを潤滑するための、請求項1
または2記載の潤滑グリースの使用。
【請求項17】
食品および/もしくは飲料水に接触するトライボロジーシステム、特に食品加工における作業用器具ならびに/またはガスおよび(飲料)水用継手を潤滑するための、請求項1
または2記載の潤滑グリースの使用。
【請求項18】
前記フッ素不含材料が、シリコーン樹脂、リグニンおよびこれらの混合物(選択肢B2)であり、前記潤滑グリースを、食品加工における作業用器具ならびに/またはガスおよび(飲料)水用継手の潤滑に使用することを特徴とする、請求項17記載の使用。
【請求項19】
トライボロジーシステム、有利には、食品および/もしくは飲料水に接触するトライボロジーシステム、例えば食品加工における作業用器具、例えば、冷凍トンネル内の輸送用チェーンおよびコンベヤベルト、歯車、転がり軸受および滑り軸受、空気圧シリンダ、シール、組付けペースト、ガスおよび(飲料)水継手用のバルブおよび取付部品を潤滑するための;ならびに/または自動車分野の部品、例えば、自動車ステアリング用途のボールねじ、アクチュエータ;ギアボックス、プラスチックギア、シール、サンルーフのシール、ブレーキブースターおよび/もしくは転がり軸受、滑り軸受および/もしくはリニアガイドを潤滑するための、請求項1
または2記載の潤滑グリースの使用。
【国際調査報告】