(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】CD95ポリペプチド
(51)【国際特許分類】
C07K 14/705 20060101AFI20241031BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20241031BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241031BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241031BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241031BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241031BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20241031BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20241031BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20241031BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20241031BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20241031BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241031BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C07K14/705 ZNA
C12N15/12
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K38/16
A61K48/00
A61K31/7088
A61K35/12
A61P31/10
A61P29/00
A61P25/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531209
(86)(22)【出願日】2022-11-24
(85)【翻訳文提出日】2024-07-22
(86)【国際出願番号】 EP2022083143
(87)【国際公開番号】W WO2023094527
(87)【国際公開日】2023-06-01
(32)【優先日】2021-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502227745
【氏名又は名称】ドイチェス クレブスフォルシュンクスツェントルム スチフトゥング デス エッフェントリヒェン レヒツ
(71)【出願人】
【識別番号】509223977
【氏名又は名称】ウニベルジテート ハイデルベルク
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルティン-ヴィラルバ,アナ
(72)【発明者】
【氏名】ブルーガー,ブリッタ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァトゥライネン,イルポ
(72)【発明者】
【氏名】ロリケート,ファビオ
(72)【発明者】
【氏名】グルキュラー,グルセ シラ
(72)【発明者】
【氏名】クレバー,ズザンネ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA18
4C084BA23
4C084CA53
4C084DC50
4C084NA14
4C084ZA02
4C084ZB11
4C084ZB26
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZB11
4C086ZB26
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB65
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZB11
4C087ZB26
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA17
4H045CA40
4H045DA50
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、(i)アミノ酸配列RSNLGWLCLLLLPIPLIVWVKRK(配列番号1)と少なくとも70%同一なアミノ酸配列;および(ii)(i)のアミノ酸配列の1位、2位、3位、19位、22位、および23位からなる一群から選択される少なくとも1つの位置における、非同一アミノ酸へのアミノ酸置換;を含むエフェクターポリペプチドに関する。本発明はまた、前記のエフェクターポリペプチドをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチド、ならびに関連する宿主細胞、医薬組成物、および使用に関するものであり、さらに医学分野、特にがん、炎症性疾患、または急性もしくは慢性の神経変性疾患の治療および/または予防における関連した使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)アミノ酸配列RSNLGWLCLLLLPIPLIVWVKRK(配列番号1)と少なくとも70%同一なアミノ酸配列;および
(ii)(i)のアミノ酸配列の1位、2位、3位、19位、22位および23位からなる一群から選択される少なくとも1つの位置における、アミノ酸の非同一アミノ酸への置換
を含むエフェクターポリペプチド。
【請求項2】
前記アミノ酸置換が、R1E、R1Q、R1A、S2A、N3A、R1E/N3A、R1A/N3A、W19A、R22A、R22E、K23A、K23E、R22A/K23A、R22E/K23E、W19A/R22A/K23A、W19A/R22E/K23E、およびそれらの任意の組み合わせからなる一群から選択される、請求項1に記載のエフェクターポリペプチド。
【請求項3】
前記アミノ酸置換が、R1E、R1Q、またはR1Aである、請求項1または2に記載のエフェクターポリペプチド。
【請求項4】
少なくとも2つ、実施形態によっては少なくとも3つのアミノ酸置換を含む、請求項1~3のいずれか1つに記載のエフェクターポリペプチド。
【請求項5】
前記アミノ酸置換が、R1E、R22E、およびK23Eからなる一群から選択される、請求項1~4のいずれか1つに記載のエフェクターポリペプチド。
【請求項6】
前記エフェクターポリペプチドが、アミノ酸配列X
1X
2X
3LGWLCLLLLPIPLIVX
4VKX
5X
6(配列番号2)を含み、ここで
X
1はE、Q、A、N、G、V、L、I、S、T、DおよびMから選択されるが、好ましくは、EまたはQである;
X
2は、A、G、V、LおよびIから選択される;
X
3は、A、G、V、L、I、Q、N、D、E、S、T、M、H、K、およびRから選択される;
および/または
X
4~X
6は、独立して、E、A、G、V、L、I、Q、N、D、S、T、およびMから選択される
請求項1~5のいずれか1つに記載のエフェクターポリペプチド。
【請求項7】
前記のアミノ酸置換が、R1E、R22E、およびK23Eである、請求項1~6のいずれか1つに記載のエフェクターポリペプチド。
【請求項8】
前記エフェクターポリペプチドが、アミノ酸配列RSNLGWLCLLLLPIPLIVWVKEE(配列番号33)を含む、請求項1~6のいずれか1つに記載のエフェクターポリペプチド。
【請求項9】
前記エフェクターポリペプチドが、アミノ酸配列ESNLGWLCLLLLPIPLIVWVKEE(配列番号34)を含む、請求項1~7のいずれか1つに記載のエフェクターポリペプチド。
【請求項10】
前記エフェクターポリペプチドが、アミノ酸配列ESNLGWLCLLLLPIPLIVWVKRK(配列番号3)、アミノ酸配列QSNLGWLCLLLLPIPLIVWVKRK(配列番号4)、またはアミノ酸配列ASNLGWLCLLLLPIPLIVWVKRK(配列番号5)を含む、請求項1~3のいずれか1つに記載のエフェクターポリペプチド。
【請求項11】
前記エフェクターポリペプチドが、N末端配列として配列番号6~10のアミノ酸配列のうち少なくとも1つ;および/またはC末端配列として配列番号11~13のアミノ酸配列のうち少なくとも1つをさらに含む、請求項1~10のいずれか1つに記載のエフェクターポリペプチド。
【請求項12】
前記エフェクターポリペプチドが、配列番号32、配列番号31、配列番号30、配列番号14、または配列番号15のアミノ酸を含み、好ましくは配列番号32、配列番号31、配列番号30、配列番号14、または配列番号15のアミノ酸からなる、請求項1~11のいずれか1つに記載のエフェクターポリペプチド。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1つに記載のエフェクターポリペプチドをコードする核酸配列を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか1つに記載のエフェクターポリペプチド、および/または請求項13に記載のポリヌクレオチドを含む、宿主細胞。
【請求項15】
(A)請求項1~12のいずれか1つに記載のエフェクターポリペプチド、請求項13に記載のポリヌクレオチド、および/または請求項14に記載の宿主細胞からなる一群から選択される活性薬剤、および(B)賦形剤、を含む、医薬組成物。
【請求項16】
前記賦形剤が、ウイルス粒子および/または脂質ベシクルである、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
医薬に使用するための、請求項1~12のいずれか1つに記載のエフェクターポリペプチド、請求項13に記載のポリヌクレオチド、請求項14に記載の宿主細胞、および/または請求項15もしくは16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
がん、炎症性疾患、または急性もしくは慢性の神経変性疾患の治療および/または予防に使用するための、請求項1~12のいずれか1つに記載のエフェクターポリペプチド、請求項13に記載のポリヌクレオチド、請求項14に記載の宿主細胞、および/または請求項15もしくは16に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記がんが、CD95を発現するがん、および/または高度の免疫浸潤を示すがんであり、好ましくは脳腫瘍、より好ましくは膠芽腫、または膵がん、好ましくは膵管腺がん(PDAC)である、請求項18に記載の使用のためのエフェクターポリペプチド。
【請求項20】
宿主細胞においてアポトーシスを誘導するための、請求項1~12のいずれか1つに記載のエフェクターポリペプチド、請求項13に記載のポリヌクレオチド、請求項14に記載の宿主細胞、および/または請求項15もしくは16に記載の医薬組成物の使用であって、好ましくはin vitroでの前記使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(i)アミノ酸配列RSNLGWLCLLLLPIPLIVWVKRK(配列番号1)と少なくとも70%同一なアミノ酸配列;および(ii)(i)のアミノ酸配列の1位、2位、3位、19位、22位、および23位からなる一群から選択される少なくとも1つの位置における、非同一アミノ酸へのアミノ酸置換;を含むエフェクターポリペプチドに関する。本発明はまた、前記のエフェクターポリペプチドをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチド、ならびに関連する宿主細胞、医薬組成物、および使用に関するものであり、さらに医学分野、特にがん、炎症性疾患、または急性もしくは慢性の神経変性疾患の治療および/または予防における関連した使用に関する。
【背景技術】
【0002】
CD95は、Fas受容体またはAPO-1としても知られているが、発生および変性疾患において細胞の除去に関与する膜貫通受容体であって、CD95を介したキナーゼ活性は、炎症およびがんの進行に関与する。がん細胞上のCD95は、遊走、浸潤、増殖、およびがん転移を活性化する。免疫細胞上のCD95は、たとえばがん細胞に対する免疫反応を調節する。したがって、CD95Lに結合することで、CD95Lと内在性CD95との結合を阻止する、可溶性CD95-Fc融合タンパク質であるAsunerceptが、活性化T細胞および、たとえば多形性膠芽腫もしくは膵管腺がんなどのがん細胞での、CD95を介したシグナル伝達の誘導を阻止するために開発された。
【0003】
細胞レベルでは、CD95とそのリガンド(CD95L)との結合は、アポトーシスまたは細胞生存のいずれかを誘導することができる(Martin-Villalba et al. (2013), Trends Mol Med 19(6):329)。アポトーシスは、CD95の細胞内デスドメインでの相互作用を通じて、細胞死誘導性シグナル伝達複合体におけるカスパーゼの活性化によって開始される。このドメイン内のチロシンがリン酸化されると、キナーゼ活性を有する別の複合体がリクルートされ、細胞死誘導複合体を排除する(Sancho-Martinez & Martin-Villalba (2009); Cell Cycle. 8:838)。SH2ドメインを含有するタンパク質はリン酸化されたチロシンに結合し、最終的に細胞型に応じて、PI3KまたはERK活性の上昇をもたらす(Martin-Villalba et al. (2013)、上記)。このように、細胞の運命は、細胞死誘導複合体またはキナーゼ誘導複合体のいずれか一方のCD95への動員を制御する分子スイッチによって支配されている。特に、がん細胞では、CD95に機能喪失型変異はなく、初代細胞でこの遺伝子を欠失させようとすると、いわゆるdeath by neglectが起こる。この特徴は、細胞生存においてCD95Lに依存しないCD95の機能を示唆しており、Asunerceptのターゲティングを回避しうる。
【0004】
CD95の同族リガンドであるCD95Lは2型膜貫通タンパク質であり、隣接する細胞上に提示されるか、または切断されて可溶性リガンドとして提示されうる。シグナル伝達はCD95Lの三量体型を介して行われる;三量体CD95Lの人工模倣体は当技術分野で知られている(たとえば、Kleber et al. (2008), Cancer Cell 13:235-248を参照されたい)。がんにおけるCD95Lの供給源は、がん細胞そのものであることもあるが、内皮細胞および免疫細胞も非常に重要な供給源となる(たとえば、Martin-Villalba et al. (2013)、上記、を参照されたい)。
【0005】
現在、アポトーシスか細胞生存かの決定を支配する分子メカニズムは、ほとんど知られていない;しかしながら、最近、細胞間接触がCD95の活性化機序に影響を与えることが判明した(Guelcueler Balta (2019)、ハイデルベルク大学に提出された博士論文)。細胞間接触の一般的な特徴は、別個のシグナル伝達モジュールの協同性を支持する、膜ドメインの選択的な区画化である(Bethani et al. (2010), EMBO J. 29:2677)。
【発明の概要】
【0006】
以上のような観点から、CD95シグナル伝達がかかわる疾患の治療のための手段および方法を改善する必要性が、当技術分野において、依然として存在する。
【0007】
独立クレームの特徴を有する、エフェクターポリペプチド、ポリヌクレオチド、宿主細胞、組成物、キット、および使用によって、この問題に対処する。単独で、または任意の組み合わせで実現されうる有利な実施形態は、従属クレームに記載される。
【0008】
したがって、本発明は、以下を含むエフェクターポリペプチドに関する:
(i)アミノ酸配列RSNLGWLCLLLLPIPLIVWVKRK(配列番号1)と少なくとも70%同一なアミノ酸配列;および
(ii)(i)のアミノ酸配列の1位、2位、3位、19位、および22位からなる一群から選択される少なくとも1つの位置における、非同一アミノ酸へのアミノ酸の置換。
また、本発明は、以下を含むエフェクターポリペプチドに関する:
(i)アミノ酸配列RSNLGWLCLLLLPIPLIVWVKRK(配列番号1)と少なくとも70%同一なアミノ酸配列;および
(ii)(i)のアミノ酸配列の1位、2位、3位、19位、および22位からなる一群から選択される少なくとも1つの位置における、非同一アミノ酸へのアミノ酸の置換。
【0009】
一般に、本明細書で使用される用語には、当業者にとって通常で慣例的な意味が与えられるものとし、別段の指示がない限り、特別な意味またはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。以下で使用される場合、「有する(have)」、「含む(comprise)」、もしくは「含む(include)」という用語、またはそれらの任意の文法的変化形は、非除外的な意味で使用される。したがって、これらの用語は、その用語によって導き入れられた特徴のほかに、この文脈で説明される実体においてさらに他の特徴が存在しない状況、および、1以上のさらに他の特徴が存在する状況の両者をともに指すことがある。一例として、「AはBを有する(A has B)」、「AはBを含む(A comprises B)」、および「AはBを含む(A includes B)」という表現は、Aの中にBのほかに他の要素が存在しない状況(すなわち、AがもっぱらBのみで構成される状況)、および実体Aの中にBのほかに、1以上の他の要素、たとえば、要素C、要素CおよびD、またはさらに他の要素などが存在する状況の両者を指す場合がある。また、当業者には当然のことながら、「~を含む(comprising a)」および「~を含む(comprising an)」という表現は、好ましくは「1以上の~を含む(omprising one or more)」を指し、すなわち「少なくとも1つの~を含む(comprising at least one)」と同義である。したがって、別段の指示がない限り、多数のうちの1つの事柄に関する表現は、好ましくは、少なくとも1つのそのような事柄に関するものであり、より好ましくは多数のそのような事柄に関する;したがって、たとえば、「細胞(a cell)」を同定することは、少なくとも1つの細胞を同定すること、好ましくは多数の細胞を同定することに関する。
【0010】
さらに、以下で使用される場合、「好ましくは(preferably)」、「より好ましくは(more preferably)」、「もっとも好ましくは(most preferably)」、「特に(particularly)」、「より詳細には(more particularly)」、「具体的には(specifically)」、「より具体的には(more specifically)」という用語、または類似の用語は、さらに他の可能性を制限することなく、任意選択的な特徴とともに使用される。したがって、これらの用語によって導き入れられる特徴は、任意選択的な特徴であり、決して特許請求の範囲を制限することを意図するものではない。本発明は、当業者には明らかなように、代わりとなる特徴を使用することによって実施することができる。同様に、「ある実施形態において」または類似の表現によって導入される特徴は、本発明のさらに他の実施形態について何ら制限することなく、本発明の範囲についても何ら制限することなく、さらに、そのようにして導入された特徴を本発明の他の任意選択的な特徴、または非任意選択的な特徴と組み合わせる可能性についても何ら制限することのない、任意選択的な特徴であることが意図される。
【0011】
本明細書において以下に明記する方法は、好ましくは、in vitro法である。方法ステップは、原則として、当業者によって適切とみなされる任意の順序で実施することができるが、指示された順序で実施することが好ましい;また、前記ステップのうち1つもしくは複数、好ましくはすべてを、自動化された装置が支援し、または実行することができる。さらに、本方法は、上記で明示したステップに加えて、ステップを含んでいてもよい。
【0012】
本明細書で使用される「標準条件」という用語は、特に断りのない場合、IUPAC標準環境温度および圧力(SATP)条件、すなわち、好ましくは、25℃の温度および100kPaの絶対圧力に関する;また、好ましくは、標準条件には、pH 7を含める。さらに、別段の指示のない限り、「約」という用語は、関連分野で一般に認められた技術的精度を有する表示値に関するものであり、好ましくは、表示値±20%、より好ましくは±10%、最も好ましくは±5%に関する。さらに、「基本的に」という用語は、示された結果または使用に影響を与える逸脱がないこと、すなわち、起こりうる逸脱が、示された結果を、±20%、より好ましくは±10%、最も好ましくは±5%を超えて逸脱させないことを示す。したがって、「基本的に~からなる」とは、指定された構成成分を含むが、不純物として存在する材料、構成成分を提供するために使用される工程の結果として存在する不可避の材料、および本発明の技術的効果を達成する以外の目的で添加される構成成分を除いて、他の構成成分は除外することを意味する。たとえば、「基本的に~からなる」という表現を用いて定義される組成物は、任意の公知の許容される添加剤、賦形剤、希釈剤、担体などを包含する。好ましくは、基本的に一連の成分からなる組成物は、重量比で5%未満、より好ましくは3%未満、さらに好ましくは1%未満、もっとも好ましくは0.1%未満の、1以上の指定されない成分を含むことがある。
【0013】
2つの生物学的配列、好ましくはDNA、RNA、またはアミノ酸配列、の間の同一性の程度(たとえば、「同一性%」として表される)は、当技術分野で周知のアルゴリズムによって決定することができる。好ましくは、同一性の程度は、比較ウィンドウにわたって最適にアラインされた2つの配列を比較することによって決定されるが、この比較ウィンドウの中の配列断片は、最適なアラインメントのために、比較される配列と比べて付加または欠失(たとえば、ギャップまたはオーバーハング)を含んでいてもよい。パーセンテージは、好ましくはポリヌクレオチドまたはポリペプチドの全長にわたって、両方の配列中に同一残基が出現する位置の数を特定してマッチする位置の数が得られ、マッチする位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数で割って、その結果に100を乗じて配列同一性のパーセンテージを得ることにより計算される。比較のための最適な配列アラインメントは、SmithおよびWaterman(1981)の局所相同性アルゴリズム、NeedlemanおよびWunsch(1970)の相同性アラインメントアルゴリズム、PearsonおよびLipman(1988)の類似性検索法、これらのアルゴリズムのコンピュータによる実行(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group (GCG), 575 Science Dr., Madison, WIのGAP、BESTFIT、BLAST、PASTA、およびTFASTA)、または目視による検証によって実施することができる。比較のために2つの配列を特定したら、それらの最適アラインメントを決定して同一性の程度を判定するために、GAPおよびBESTFITが使用されることが好ましい。ギャップウェイトには5.00、およびギャップウェイト長には0.30のデフォルト値を使用することが好ましい。本明細書において言及される生物学的配列に関して、「基本的に同一」という用語は、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも98%、もっとも好ましくは少なくとも99%の同一性%を示す。当然のことながら、「基本的に同一」という用語は100%の同一性を含む。前記は「基本的に相補的」という用語に準用する。
【0014】
生体高分子、好ましくはポリヌクレオチドまたはポリペプチドの「断片」という用語は、本明細書において、指定された配列、構造および/または機能を含む、それぞれの生体高分子の任意のサブパート、好ましくはサブドメインについて、広い意味で使用される。したがって、この用語は、生体高分子を実際に断片化することによって作製されたサブパートを含むが、たとえばコンピュータ利用などの理論的な方法でそれぞれの生体高分子から導き出されたサブパートも含む。したがって、本明細書で使用される場合、FcまたはFabフラグメントは免疫グロブリンの断片とみなすことができるが、たとえば一本鎖抗体、二重特異性抗体、およびナノボディもまた免疫グロブリンの断片といえる。
【0015】
本明細書において特に指示のない限り、指定された化合物、具体的にはポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、より大きな構造に含まれていてもよく、たとえば、さらに他の配列、キャリア分子、遅延剤、および他の賦形剤と共有結合または非共有結合で連結されていてもよい。特に、指定されたポリペプチドは、さらに他のペプチドを含む融合ポリペプチドに含まれていてもよく、このペプチドは、たとえば、精製用および/または検出用のタグとして、リンカーとして、または化合物のin vivo半減期を延長するように、機能しうるものである。「検出可能なタグ」という用語は、融合ポリペプチドに付加または導入される一続きのアミノ酸を指す;好ましくは、タグは、融合ポリペプチドのC末端またはN末端に付加される。前記の一続きのアミノ酸は、好ましくは、タグを特異的に認識する抗体によるポリペプチドの検出を可能にする;または、好ましくは、キレート剤のように機能的な立体構造の形成を可能にする;または、好ましくは、蛍光タグの場合のように可視化を可能にする。好ましい検出可能なタグは、Mycタグ、FLAGタグ、6-Hisタグ、HAタグ、GSTタグ、または蛍光タンパク質タグ、たとえばGFPタグである。これらのタグはすべて当技術分野でよく知られている。融合ポリペプチドに含まれることが好ましい他の追加的なペプチドは、さらに他のアミノ酸または他の改変を含んでいるが、それらは分泌のメディエーターとして、血液脳関門通過のメディエーターとして、細胞透過ペプチドとして、および/または免疫賦活薬として機能しうるものである。ポリペプチドが融合しうるさらに他のポリペプチドまたはペプチドは、シグナル配列および/または輸送配列、たとえばIL-2シグナル配列、およびリンカー配列である。
【0016】
本明細書で使用される「ポリペプチド」という用語は、ペプチド結合によって互いに共有結合しているいくつかの、典型的には少なくとも20個のアミノ酸からなる分子を指す。ペプチド結合によって共有結合した20個未満のアミノ酸からなる分子は、通常「ペプチド」と呼ばれる。好ましくは、ポリペプチドは、20から1000個、より好ましくは21から500個、さらに好ましくは22から400個、もっとも好ましくは23から350個のアミノ酸を含む。好ましくは、ポリペプチドは、融合ポリペプチドおよび/またはポリペプチド複合体に含まれる。
【0017】
本明細書で使用される「エフェクターポリペプチド」という用語は、指定のアミノ酸配列を含むポリペプチドに関する;したがって、エフェクターポリペプチドは、(i)アミノ酸配列RSNLGWLCLLLLPIPLIVWVKRK(配列番号1)と少なくとも70%同一なアミノ酸配列;および(ii)(i)のアミノ酸配列の1位、2位、3位、19位、22位、および23位からなる一群から選択される少なくとも1つの位置における、非同一アミノ酸へのアミノ酸の置換;を含む。したがって、エフェクターポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチドの変異タンパク質である。
【0018】
好ましくは、エフェクターポリペプチドは、天然に存在しないポリペプチドであり、特に人工ポリペプチドである;したがって、好ましくは、エフェクターポリペプチドは、天然に存在しないアミノ酸配列を含む。したがって、エフェクターポリペプチドは、1以上の人工アミノ酸を含んでいてもよい。エフェクターポリペプチドは、タンパク質生合成によって合成可能であることが好ましい;したがって、エフェクターポリペプチドは、L-アミノ酸、好ましくはL-αアミノ酸、より好ましくはタンパク質を構成するアミノ酸を含み、好ましくは前記アミノ酸からなる。
【0019】
配列番号1と少なくとも70%同一な配列は、好ましくは配列番号1と少なくとも75%同一であるが、配列番号1に対して、より好ましくは少なくとも80%同一であり、さらに好ましくは少なくとも85%同一であり、さらにより好ましくは少なくとも90%同一であり、もっとも好ましくは少なくとも95%同一である。好ましくは、配列番号1と少なくとも70%同一な配列は、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは2つの、アミノ酸の置換、欠失、および/または挿入を有し、好ましくはアミノ酸置換を有する、配列番号1に相当する。当業者には当然のことながら、アミノ酸配列におけるアミノ酸の「置換」は、非同一アミノ酸によるアミノ酸の置換に関する。好ましくは、アミノ酸の置換は保存的置換であり、すなわち、アミノ酸の、同一アミノ酸官能基を持つ非同一アミノ酸への置換である。したがって、好ましくは、疎水性側鎖を有するアミノ酸(「疎水性アミノ酸」、A、V、L、I、M、F、Y、またはW)は、非同一の疎水性アミノ酸と置換され、また好ましくは、負電荷を持つ側鎖を有するアミノ酸(DまたはE)は、負電荷を持つ側鎖を有する非同一アミノ酸と置換される;また好ましくは、無荷電極性側鎖(S、T、N、またはQ)を有するアミノ酸は、無荷電極性側鎖を有するアミノ酸と置換される;また好ましくは、正電荷を持つ側鎖を有するアミノ酸(R、H、またはK)は、正電荷を持つ側鎖を有する非同一アミノ酸と置換される。また好ましくは、保存的置換においてアミノ酸は、側鎖に同一の官能基または構造的に類似した基、たとえば-OHまたは-SH(S、T、C)、-COOH(D、E)、ヘリックス破壊特性(G、P)などを有する、非同一のアミノ酸と置換される。好ましくは、アミノ酸置換は、R1Q、R1E、R1A、S2A、N3A、R1E/N3A、R1A/N3A、W19A、R22A、R22E、K23A、K23E、R22A/K23A、R22E/K23E、W19A/R22A/K23A、W19A/R22E/K23E、およびそれらの任意の組み合わせからなる一群から選択される;より好ましくは、アミノ酸置換は、R1Q、R1E、またはR1Aであり、さらにより好ましくは、R1EまたはK23Eである。
【0020】
好ましくは、エフェクターポリペプチドは、アミノ酸配列X1X2X3LGWLCLLLIPLIVX4VKX5X6(配列番号2)を含むが、ここで、X1は、E、Q、A、N、G、V、L、I、S、T、D、およびMから選択され、好ましくはEまたはQである;X2は、A、G、V、L、およびIから選択され、X3は、A、G、V、L、I、Q、N、D、E、S、T、M、H、K、およびRから選択される;および/またはX4~X6は、独立して、A、G、V、L、I、Q、N、D、E、S、T、およびMから選択される。より好ましくは、エフェクターポリペプチドは、アミノ酸配列ESNLGWLCLLLLPIPLIVWVKRK(配列番号3)、アミノ酸配列QSNLGWLCLLLLPIPLIVWVKRK(配列番号4)、またはアミノ酸配列ASNLGWLCLLLLPIPLIVWVKRK(配列番号5)を含む。
【0021】
好ましい実施形態において、少なくとも2つ、ある実施形態では少なくとも3つのアミノ酸置換を含む、請求項1~3のいずれか1つに記載のエフェクターポリペプチド。より好ましくは、前記アミノ酸置換は、酸性アミノ酸、好ましくはグルタミン酸(E)への置換である。さらに好ましい実施形態において、アミノ酸置換は、R1E、R22E、およびK23Eからなる一群から選択され、より好ましくは、エフェクターポリペプチドは、R1E、R22E、およびK23Eを含むアミノ酸置換を含む。さらに好ましい実施形態において、エフェクターポリペプチドは、アミノ酸配列RSNLGWLCLLLLPIPLIVWVKEE(配列番号33)を含むか、またはアミノ酸配列ESNLGWLCLLLLPIPLIVWVKEE(配列番号34)を含む。
【0022】
配列番号1のアミノ酸配列は、ヒトCD95(Genbank Acc. No: NP_000034.1)の膜貫通ドメイン、すなわちアミノ酸171~193に相当する。したがって、エフェクターポリペプチドは、本明細書に記載される特性、すなわち本明細書に記載される構造的特性、および好ましくは、本明細書に記載される少なくとも1つの活性を有する、CD95ポリペプチドまたはそのトランケート型とすることができる。したがって、エフェクターポリペプチドは、特に、前記の特性を有するヒトCD95の変異体(CD95変異体)を含みうる。したがって、好ましくは、本明細書で使用される「ヒトCD95の変異体」という用語は、その配列が、少なくとも1つのアミノ酸置換、付加および/または欠失によって、前記の特定のアミノ酸配列から誘導されうることを特徴とするアミノ酸配列を含む変異体に関するものであって、ここで、CD95変異体は、好ましくは、本明細書の別項に記載される活性を有するものとする。好ましくは、CD95変異体は、ヒトCD95のオルソログ、パラログまたは別のホモログである;しかしながら、CD95変異体はまた、好ましくは少なくとも2つの非同一種由来のドメインを含む、キメラCD95であってもよい。さらに、CD95変異体には、ヒトCD95のアミノ酸配列に対して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む変異体が含まれる。したがって、エフェクターポリペプチドは、好ましくは、配列番号6~10のアミノ酸配列の少なくとも1つと基本的に同一な、好ましくは同一なアミノ酸配列;および/または配列番号11~13のアミノ酸配列の少なくとも1つと基本的に同一な、好ましくは同一なアミノ酸配列をさらに含む;より好ましくは、エフェクターポリペプチドは、配列番号6~10のアミノ酸配列の少なくとも1つと基本的に同一な、好ましくは同一なアミノ酸配列をN末端配列として;および/または配列番号11~13のアミノ酸配列の少なくとも1つと基本的に同一な、好ましくは同一なアミノ酸配列をC末端配列として、さらに含むが、ここで、配列番号6は、アミノ酸配列KCKEEGSを有する;配列番号7は、アミノ酸配列CRCKPNFFCNSTVCEHCDPCTKCEHGIIKECTLTSNTを有する;配列番号8は、アミノ酸配列VPCQEGKEYTDKAHFSSKCRRCRLCDEGHGLEVEINCTRTQNTを有する;配列番号9は、アミノ酸配列QNLEGLHHDGQFCHKPCPPGERKARDCTVNGDEPDCを有する;配列番号10は、アミノ酸配列MLGIWTLLPLVLTSVARLSSKSVNAQVTDINSKGLELRKTVTTVETを有する;配列番号11はアミノ酸配列EVQKTCRKHRKENQGSHESPTLNPETVAINLSDVDLを有する;配列番号12はアミノ酸配列SKYITTIAGVMTLSQVKGFVRKNGVNEAKIDEIKNDNVQDTAEQVQLLRNWHQLHGKKEAYDTLI KDLKKANLCTLAEKIQTIILKDIを有する;および配列番号13は、アミノ酸配列TSDSENSNFRNEIQSLVを有する。配列番号6~13の前記配列はヒトCD95に由来するが、配列番号6は内部リンカー配列であり、配列番号7はシステインリッチドメイン3(CRD3)ドメインに対応し、配列番号8はCRD2ドメインに対応し、配列番号9はCRD1ドメインに対応し、配列番号10はシグナルペプチド(SP)およびリンカー領域に対応し、配列番号11は細胞質ドメインに対応し、配列番号12はデスドメインに対応しており、配列番号13はC末端細胞内ドメイン(CID)に対応する。より好ましくは、エフェクターポリペプチドは、N末端からC末端の順に、(I)配列番号1-配列番号11;(II)配列番号1-配列番号11-配列番号12;(iii)配列番号1-配列番号11-配列番号12-配列番号13;(iv)配列番号6-配列番号1-配列番号11-配列番号12;(v)配列番号7-配列番号6-配列番号1-配列番号11-配列番号12;(vi)配列番号8-配列番号7-配列番号6-配列番号1-配列番号11-配列番号12;(vii)配列番号9-配列番号8-配列番号7-配列番号6-配列番号1-配列番号11-配列番号12;もしくは(VIII)配列番号10-配列番号9-配列番号8-配列番号7-配列番号6-配列番号1-配列番号11-配列番号12のアミノ酸配列、または前記配列の1つと基本的に同一な配列を含み、好ましくはその配列からなる。したがって、エフェクターポリペプチドは、特に、本明細書に記載される1以上のアミノ酸置換を含み、N末端細胞外ドメインを欠くCD95ポリペプチドとすることができるが、本明細書に記載される1以上のアミノ酸置換を含むCD95ポリペプチドであってもよい。したがって、好ましくは、エフェクターポリペプチドは、配列番号14または配列番号15のアミノ酸配列を含み、より好ましくはそのアミノ酸配列からなる。また好ましくは、エフェクターポリペプチドは、標準遺伝コードに従って配列番号16、18、21、24、および27からなる一群から選択される核酸配列によりコードされるアミノ酸配列を含み、より好ましくはそのアミノ酸配列からなる。
【0023】
好ましい実施形態において、エフェクターポリペプチドは、配列番号30のアミノ酸配列を含み、より好ましくはその配列からなるが、すなわち好ましくはR171E置換を含む。さらに好ましい実施形態において、エフェクターポリペプチドは、CD95ポリペプチドの少なくとも192位および193位にアミノ酸置換を含む;特に、エフェクターポリペプチドは、配列番号31のアミノ酸配列を含んでいてもよく、より好ましくはその配列で構成されうるが、すなわち好ましくは、R192EおよびK193E置換を含む。さらにより好ましい実施形態において、エフェクターポリペプチドは、CD95ポリペプチドの少なくとも171位、192位および193位にアミノ酸置換を含む;特に、エフェクターポリペプチドは、配列番号32のアミノ酸配列を含んでいてもよく、より好ましくはその配列で構成されうるが、すなわちより好ましくは、R171E、R192EおよびK193E置換を含む。
【0024】
好ましくは、エフェクターポリペプチドは、生体膜、好ましくは哺乳動物細胞の生体膜、より好ましくは本明細書の別項に記載されるような宿主細胞の生体膜への組み込み活性を有する。好ましくは、前記の膜組み込みは自発的であり、すなわち、生体膜と接触すると、エフェクターポリペプチドは、追加の因子を必要とすることなく、前記生体膜に組み込まれる。また、好ましくは、エフェクターポリペプチドは、生物学的細胞内輸送経路によって生体膜に組み込まれる;当然のことながら、この場合、エフェクターポリペプチドは、好ましくはシグナルペプチドを含む。適当なシグナルペプチドは当技術分野で知られている;好ましくは、前記シグナルペプチドは、配列番号10のアミノ酸配列を含む。また好ましくは、エフェクターポリペプチドは膜挿入ペプチドを含む;対応するペプチドは当技術分野において、たとえば、Svoronos et al. (2020), Mol Pharmaceutics 17:461から知られている。好ましくは、所定量のエフェクターポリペプチドの少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、さらにより好ましくは少なくとも50%が、接触した時点で生体膜に組み込まれる。好ましくは、エフェクターポリペプチドは、CD95の野生型膜貫通ドメインと比較して、スフィンゴ糖脂質、好ましくはガングリオシドGM2(CAS番号19600-01-2)および/またはガングリオシドGM3(CAS番号54827-14-4)、および/またはホスホイノシチド、好ましくはホスファチジルイノシトール4,5-二リン酸(PI(4,5)P2、(CAS番号245126-95-8))および/またはホスファチジルイノシトール3,4,5-三リン酸(PI(3,4,5)P3に対する結合親和性が低下している;好ましくは、前記の親和性低下は、エフェクターポリペプチドが生体膜に組み込まれたときに生じ、および/または測定可能となる。前記結合活性の低下を予想し、および/または決定するための好ましい手段および方法は、本明細書の実施例において示される。また好ましくは、エフェクターポリペプチドは、がん細胞において、好ましくはCD95陽性がん細胞において、腫瘍形成促進性のシグナル伝達を減少させる活性を有する。また好ましくは、エフェクターポリペプチドは、がん細胞または活性化免疫細胞、好ましくは活性化T細胞、または活性化末梢血単球、または活性化組織マクロファージにおいて、アポトーシスを誘導する活性を有する。T細胞の活性化マーカーは当業者に知られており、特にCD69、CD25、および/またはHLA-DRが挙げられる。細胞、特にがん細胞および活性化免疫細胞におけるアポトーシスの誘導を測定する方法は当業者に公知であり、特に本明細書の実施例に記載されている方法が挙げられる。好ましくは、アポトーシスの誘導は、細胞集団におけるアポトーシス細胞の割合が、エフェクターポリペプチドで処理されていない対照細胞集団と比較して、少なくとも10%、より好ましくは少なくとも25%、さらにより好ましくは少なくとも50%増加することを含む。
【0025】
好ましい実施形態において、エフェクターポリペプチドはさらに、宿主細胞の脂質組成の変化を引き起こす活性を有するが、これは好ましくは、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスホイノシチド、スフィンゴミエリン、セラミドおよび/またはスフィンゴ糖脂質の含量の変化である。さらに好ましい実施形態において、エフェクターポリペプチドはさらに、宿主細胞における細胞周期停止、好ましくはG1期停止を引き起こす活性を有する。さらに他の実施形態において、エフェクターポリペプチドはさらに、リン酸化タンパク質キナーゼB(pAkt)を介したシグナル伝達を減少させる活性、および/またはリン酸化上皮成長因子受容体(pEGFR)を介したシグナル伝達を増加させる活性を有する。さらに好ましい実施形態において、エフェクターポリペプチドはさらに、宿主細胞のエンドサイトーシス速度を低下させる活性を有するが、これは、たとえば経時的なトランスフェリンの取り込みとして測定することができる。そのうえ、好ましい実施形態において、エフェクターポリペプチドはさらに、宿主細胞の細胞サイズを減少させる活性を有するが、これは、たとえばその顕微鏡写真における細胞の面積として測定することができる。好ましくは、前記の減少は、対照処理された宿主細胞と比較して、少なくとも10%、より好ましくは少なくとも25%、さらにより好ましくは少なくとも50%である。さらに好ましい実施形態において、エフェクターポリペプチドはさらに、細胞死を増加させる活性を有する。好ましくは、前記の増加は、対照処理された宿主細胞と比較して、少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、さらにより好ましくは少なくとも60%である。なお、好ましい実施形態において、エフェクターポリペプチドはさらに、好ましくは上記のように、より好ましくはEGF曝露後のカスパーゼ-8切断によって評価されるように、アポトーシスを誘導する活性を有する。
【0026】
本明細書で使用される「対象」という用語は、動物、好ましくは脊椎動物、より好ましくは哺乳動物、特にウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、およびヤギのような家畜、イヌもしくはネコなどのコンパニオンアニマル、またはラット、マウス、およびモルモットのような実験動物に関する。もっとも好ましくは、対象はヒトである。好ましくは、対象は、がん、炎症性疾患、および/または神経変性疾患に罹患しており、より好ましくは、がん、炎症性疾患、および/または神経変性疾患の治療および/または予防を必要としているが、これらはすべて、本明細書の別項に記載されるとおりである。好ましくは、対象は、前記疾患の1つもしくは複数を発症するリスクが増大している。より好ましくは、対象は、前記疾患の1つもしくは複数に罹患していることが判明しており、および/またはそれらの治療中である。
【0027】
本明細書で使用される「がん」という用語は、体細胞の一群(「がん細胞」)による制御されない増殖を特徴とする、対象の疾患に関する。この制御されない増殖は腫瘍形成をもたらす可能性があり、周辺組織への侵入および破壊(浸潤)、ならびに場合によっては体内の他の場所へのがん細胞の拡散(転移)を伴うことがある。好ましくは、がんという用語には再発も含まれる。したがって、好ましくは、がんは、非固形がん、固形がん、転移、および/またはそれらの再発である。また好ましくは、がん治療はさらに、外科手術、化学療法、放射線療法、および免疫療法のうち少なくとも1つ、特に細胞ベースの免疫療法を含む。好ましくは、がんはCD95を発現するがんであり、および/または高度の免疫浸潤を示すがんである。また好ましくは、がんは、対照組織、好ましくは前記のがんに隣接する組織と比較してRTK活性が増加しているがんである。より好ましくは、がんは、受容体チロシンキナーゼ(RTK)および/またはインテグリン依存性のがんであり、より好ましくはEGFR依存性のがんである。したがって、好ましくは、がんは、その細胞の増殖がRTK阻害薬によって阻害されるがんである。好ましくは、RTKは上皮成長因子受容体(EGFR)であり、したがって、RTK阻害薬は、好ましくは、エルロチニブ、アファチニブ、ダコミチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、ネラチニブ、オシメルチニブ、および/またはバンデタニブを含み、より好ましくは、エルロチニブ、アファチニブ、ダコミチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、ネラチニブ、オシメルチニブ、および/またはバンデタニブである。好ましくは、がんは脳腫瘍、より好ましくは膠芽腫、または膵がん、好ましくは膵管腺がん(PDAC)である。
【0028】
「炎症性疾患」という用語は、不適当な免疫活性化を特徴とするあらゆる疾患に関する;したがって、この用語は、免疫活性化が疾患の症状を引き起こす、対象のあらゆる生理的状態であって、好ましくは長期間、より好ましくは少なくとも2週間、なおより好ましくは少なくとも4週間、さらにより好ましくは少なくとも2ヶ月、もっとも好ましくは少なくとも6ヶ月の前記状態を含む。好ましくは、炎症性疾患は、同じ生理的状況にある患者では通常起こらない、ある程度までの、および/または1以上の抗原に向けられた、免疫系の活性化を含んでいる;したがって、炎症性疾患は、たとえば、対象の免疫活性化を、対象の基準集団の免疫活性化と比較することによって確認することができる。このような比較のための適当な方法、たとえば統計的方法は当業者に知られている。好ましくは、炎症性疾患によって引き起こされる症状は、医学的治療を必要とし、より好ましくは、少なくとも生命を脅かす可能性があり、好ましくは、急性および/または慢性である。たとえば、炎症性疾患は特に慢性疾患とすることができる。好ましくは、炎症性疾患はT細胞の不適当な活性化を含む。たとえば、炎症性疾患は、好ましくは、クローン病、潰瘍性大腸炎、関節リウマチ、および/または移植片対宿主病とすることができる。しかしながら、炎症性疾患はまた、特に虚血時および/または虚血後、特に心臓虚血後、たとえば心筋梗塞または心不全における、炎症性成分を伴う組織修復過程であってもよい。
【0029】
「神経変性疾患」という用語は、対象の末梢神経系および/または中枢神経系におけるニューロンの構造および/または機能の進行性の喪失によって引き起こされる疾患に関する。好ましくは、神経変性疾患は、運動ニューロンの神経変性疾患および/または中枢神経系の神経変性疾患である。好ましくは、神経変性疾患は、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、または多発性硬化症である。また好ましくは、神経変性疾患は、パーキンソン病のような炎症性成分を伴う神経変性疾患であるか、または、特に脊髄損傷後もしくは脳卒中後の、急性神経変性である。
【0030】
有利なことに、本発明の基礎となる研究において、本明細書に記載のエフェクターポリペプチドが、改変された脂質相互作用を有するという特性を有し、その結果として改変されたシグナル伝達特性を引き起こすことが判明した。注目すべきことに、野生型のCD95バックグラウンドを有する腫瘍細胞において、クレームされたエフェクターポリペプチドの過剰発現は、野生型CD95の腫瘍形成促進活性を凌駕し、腫瘍細胞の死を誘導するのに十分であることが判明した。したがって、エフェクターポリペプチドによる野生型脂質-CD95相互作用の凌駕は、腫瘍形成活性をアポトーシス活性へと切り替える。
【0031】
上記の定義は、以下に準用される。以下でさらになされる追加の定義および説明もまた、本明細書に記載されるすべての実施形態に準用される。
【0032】
上記の観点から、本発明はまた、アミノ酸配列X1X2X3LGWLCLLLLPIPLIVX4VKX5X6(配列番号2)を含むエフェクターポリペプチドに関するが、ここで、X1は、E、Q、A、N、G、V、L、I、S、T、D、およびMから選択され、好ましくは、EまたはQである;X2は、A、G、V、L、およびIから選択され、X3は、A、G、V、L、I、Q、N、D、E、S、T、M、H、K、およびRから選択される;および/または、X4~X6は、独立して、A、G、V、L、I、Q、N、D、E、S、T、およびMから選択される。前記エフェクターポリペプチドの好ましい実施形態は、本明細書において上記で説明されている。好ましくは、このエフェクターポリペプチドは、配列番号3~4からなる一群から選択されるアミノ酸を含んでおり、好ましくは、そのアミノ酸からなる。
【0033】
本発明はさらに、本発明によるエフェクターポリペプチドをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドに関する。
【0034】
「ポリヌクレオチド」という用語は当業者に公知である。本明細書中で使用される場合、この用語は、本明細書に記載される1つもしくは複数の核酸配列を含むか、またはその核酸配列からなる、核酸分子を含む。本発明のポリヌクレオチドは、好ましくは、単離された(すなわち、天然の背景から分離された)ポリヌクレオチドとして、または遺伝子改変型として、のいずれかで提供されなければならない。ポリヌクレオチドは、好ましくは、cDNAを含むDNAであるか、またはRNAである。この用語は、一本鎖ポリヌクレオチドおよび二本鎖ポリヌクレオチド、ならびに環状に閉じたポリヌクレオチドおよび直鎖ポリヌクレオチドを包含する。好ましくは、ポリヌクレオチドはキメラ分子であり、すなわち、好ましくは、残存核酸配列に対して異種であるか、または人工核酸配列である、好ましくは少なくとも20bp、より好ましくは少なくとも100bpの、少なくとも1つの核酸配列を含む。そのうえ、好ましくは、化学修飾ポリヌクレオチドも含まれ、これには、グリコシル化またはメチル化ポリヌクレオチドなどの天然に存在する修飾ポリヌクレオチド、またはビオチン化ポリヌクレオチドのような人工的な修飾ポリヌクレオチドが含まれる。
【0035】
本明細書で使用される場合、ポリヌクレオチドという用語は、好ましくは、具体的に指示されたポリヌクレオチドの変異体を含む。より好ましくは、ポリヌクレオチドという用語は、指示された特定のポリヌクレオチドに関する。しかしながら、当然のことながら、特定のアミノ酸配列を有するポリペプチドは、遺伝暗号の縮重に起因してさまざまなポリヌクレオチドによってコードされうる。当業者は、特定のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを選択する方法を承知しており、また、必要であれば、前記ポリヌクレオチドを発現させるために使用される生物のコドン使用頻度に応じて、ポリヌクレオチドに使用されるコドンを最適化する方法も承知している。したがって、「ポリヌクレオチド変異体」という用語は、本明細書で使用される場合、その配列が少なくとも1つのヌクレオチド置換、付加および/または欠失によって前記の特定の核酸配列から誘導されうることを特徴とする核酸配列を含む、本明細書に関連するポリヌクレオチドの変異体に関するものであって、ここで、ポリヌクレオチド変異体は、特定のポリヌクレオチドについて明記されるような活性を有していなければならず、すなわち、エフェクターポリペプチドをコードしているものとする。好ましくは、前記ポリヌクレオチド変異体は、特定のポリヌクレオチドのオルソログ、パラログ、または別のホモログである。さらに他の変異体には、具体的に指示された核酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%同一である核酸配列を含むポリヌクレオチドが含まれる。さらに、具体的に指示されたアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドも含まれる。パーセント同一性の値は、好ましくは、本明細書において上記のように計算される。
【0036】
具体的に指示された核酸配列のいずれか断片を含むポリヌクレオチドもまた、本発明の変異体ポリヌクレオチドとして包含される。この断片は、明記された活性を依然として有する本明細書の上記のエフェクターポリペプチドを従前どおりコードするものとする。したがって、コードされるエフェクターポリペプチドは、前記の生物活性を付与する本発明のエフェクターポリペプチドのドメインを含んでいてもよく、またはそのドメインで構成されていてもよい。本明細書で意味する断片は、好ましくは、特定の核酸配列のいずれか1つの、少なくとも69個、より好ましくは少なくとも100個、なおより好ましくは少なくとも250個、もっとも好ましくは少なくとも500個の連続したヌクレオチドを含むか、または特定のアミノ酸配列のいずれか1つの、少なくとも23個、好ましくは少なくとも50個、より好ましくは少なくとも100個、なおより好ましくは少なくとも150個、もっとも好ましくは少なくとも200個の連続したアミノ酸を含むアミノ酸配列をコードする。好ましくは、ポリヌクレオチドは、配列番号16、18、21、24、および27からなる一群から選択される核酸配列を含む。
【0037】
本発明のポリヌクレオチドは、前記核酸配列からなるか、基本的に前記核酸配列からなるか、または前記核酸配列を含む。したがって、それらはさらに他の核酸配列も含みうる。具体的には、本発明のポリヌクレオチドは、融合ポリペプチドの一方のパートナーが上記核酸配列によってコードされるエフェクターポリペプチドであるような、融合ポリペプチドをコードしていてもよい。このような融合タンパク質は、追加部分として、上記のタグおよびリンカーなどのポリペプチドをさらに含むことができる。
【0038】
エフェクターポリペプチドをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドは、当該ポリヌクレオチドの宿主細胞における発現を可能にする発現構築物中に含まれることが好ましい。本明細書で使用される「発現構築物」という用語は、エフェクターポリペプチドをコードする前記ポリヌクレオチドに加えて、エフェクターポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現に必要な核酸配列を含んでなる異種性ポリヌクレオチドを指す。典型的には、そのような追加の核酸配列は、好ましくはエフェクターポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに対して異種性であって、プロモーター配列、制御配列および/またはターミネーターのような転写終結配列とすることができる。好ましくは、発現構築物は真核生物発現構築物、すなわち真核生物宿主細胞における発現、好ましくは誘導性発現に必要なすべてのエレメントを含む発現構築物である。適当な発現調節配列は当技術分野でよく知られており、特にCMVプロモーターが挙げられる。
【0039】
好ましくは、エフェクターポリペプチドをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチド、より好ましくは、エフェクターポリペプチドをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを含んでなる発現構築物は、ベクター中に含まれる。
【0040】
「ベクター」という用語は、本明細書で使用される場合、本明細書に記載される上記のポリヌクレオチドおよび/または発現構築物を宿主細胞中で安定に維持するのに適している任意のポリヌクレオチドに関する。したがって、ベクターという用語は、好ましくは、ファージ、プラスミド、およびウイルスベクター、ならびに細菌もしくは酵母人工染色体のような人工染色体も包含する。好ましくは、ベクターはプラスミドまたはウイルス由来ベクターであり、好ましくは複製不能ウイルスベクターである。さらに、この用語は、宿主細胞のゲノムDNAへのターゲティング構築物のランダムな組込み、または部位特異的な組込みを可能にする、ターゲティング構築物にも関係する。このようなターゲティング構築物は、好ましくは、相同組換えまたは非相同組換えに十分な長さのDNAを含む。本明細書に記載される上記のポリヌクレオチドおよび/または発現構築物を包含するベクターは、好ましくはさらに、宿主細胞の増殖および/または選択のための少なくとも1つの選択可能なマーカーを含む。ベクターは、当技術分野で周知のさまざまな技術によって宿主細胞に取り込むことができる。たとえば、プラスミドベクターは、リン酸カルシウム沈殿物または塩化ルビジウム沈殿物などの沈殿物、または荷電脂質との複合体、またはフラーレンなどの炭素ベースのクラスターとして導入することができる。あるいは、プラスミドベクターは、ヒートショック法もしくはエレクトロポレーション法で導入してもよい。ベクターがウイルスである場合、宿主細胞に適用する前に、適当なパッケージング細胞株を用いてin vitroパッケージングを行ってもよい。好ましくは、ベクターは、脊椎動物ベクター、より好ましくは哺乳動物ベクター、またはシャトルベクターである。好ましくは、ベクターは、発現ベクターおよび/または遺伝子導入ベクターもしくはターゲティングベクターである。当業者に周知の方法を使用して、組換えポリヌクレオチドおよびベクターを構築することができる;たとえば、Sambrook, Molecular Cloning A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1989) N.Y.およびAusubel, Current Protocols in Molecular Biology, Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y. (1994)に記載されている方法を参照されたい。好ましくは、ベクターはAAVベクターであり、好ましくは配列番号17、19、22、25および28からなる一群から選択される核酸配列を含む。また好ましくは、ベクターはレンチウイルスベクターであり、好ましくは配列番号20、23、26および29からなる一群から選択される核酸配列を含む。
【0041】
本発明はまた、本発明のエフェクターポリペプチド、および/または本発明のポリヌクレオチドを含む宿主細胞に関する。
【0042】
本明細書中で使用される場合、「宿主細胞」という用語は、本明細書に記載される上記のポリヌクレオチドおよび/またはエフェクターポリペプチドを受容する能力、および好ましくは維持する能力を有する、任意の細胞に関する。好ましくは、宿主細胞は、本明細書に記載される上記の、発現ポリヌクレオチドおよび/または発現ベクター上にコードされるエフェクターポリペプチドを発現することができる。また好ましくは、宿主細胞は、少なくとも1つの生体膜を含む細胞であり、より好ましくは、本明細書に記載されるように、生体膜にエフェクターポリペプチドが融合し、または組み込まれるような、前記生体膜を含む細胞である。好ましくは、宿主細胞は真核細胞であり、好ましくは動物細胞、たとえば昆虫細胞または哺乳動物細胞である。より好ましくは、宿主細胞は、家畜、コンパニオンアニマル、または実験動物の細胞である。もっとも好ましくは、宿主細胞はヒト細胞である。好ましくは、宿主細胞はCD95を発現する細胞である。好ましくは、宿主細胞は、がん細胞、免疫細胞、好ましくは活性化免疫細胞、好ましくは活性化T細胞、活性化単球、もしくは活性化組織マクロファージであるか、または神経細胞、好ましくはアストロサイトもしくは神経幹細胞である。好ましくは、宿主細胞は、CD95を発現するがん細胞、免疫細胞、または神経細胞である。しかしながら、宿主細胞は、本明細書に記載されるエフェクターポリペプチドおよび/または本明細書に記載されるポリヌクレオチドを含むウイルス粒子および/またはリポソームを生成する宿主細胞であってもよい。宿主細胞は、疾患を引き起こすかまたは疾患の一因となる細胞型であってもよく、この場合、「疾患介在細胞」と称されることもある;したがって、疾患介在細胞は、特に、がんにおいてはがん細胞、炎症性疾患および/または急性もしくは慢性の神経変性疾患においては上記の活性化免疫細胞であってもよい。
【0043】
本発明はさらに、(A)本発明のエフェクターポリペプチド、本発明のポリヌクレオチド、および/または本発明の宿主細胞からなる一群から選択される活性薬剤、および(B)賦形剤を含む医薬組成物に関する。
【0044】
「医薬品」および「医薬組成物」という用語は、本明細書において基本的に意味の区別なく使用され、原則として当業者に知られている。本明細書で言及されるように、この用語は、製薬上活性のある化合物として指定された活性薬剤、および1以上の賦形剤を含む、任意の組成物に関する。製薬上活性のある化合物は、液状または乾燥状態、たとえば凍結乾燥された状態で存在しうる。たとえば、製薬上活性のある化合物は、グリセロールおよび/または安定化剤(たとえば、還元剤、ヒト血清アルブミン)とともに存在してもよい。医薬品は、典型的には、全身的または局所的に、好ましくは経口、吸入、または非経口で、たとえば静脈内投与により投与される;がん治療の場合、局所的投与は、腫瘍内もしくは腫瘍周囲、および/または腫瘍切除部位における局所的投与とすることができる。しかしながら、投与はまた、腫瘍のような、目標とする作用部位への導入性の血管、典型的には動脈への投与であってもよい。しかしながら、医薬品は、製剤の特性および望ましい治療的適用に応じて、他の経路によっても投与されうる。製薬上活性のある化合物は、医薬品の活性薬剤または薬物であり、好ましくは、従来の手順に従って薬物を標準的な医薬担体と組み合わせることによって調製された従来の剤形で投与される。これらの手順には、望ましい製剤を得るために、必要に応じて、混合、造粒、および圧縮、または成分の溶解が含まれる。
【0045】
当然のことながら、製薬上許容される賦形剤、たとえば担体または希釈剤、の形態および特性は、それが配合されることになる有効成分の量、投与経路、および他の周知の不確定要素によって決定される。賦形剤は、製剤の他の成分と適合性があり、かつその投与を受ける者に有害でないという意味で、許容されるものでなければならない。用いられる賦形剤には、固体、ゲル、または液体を含めることができる。固体担体の例としては、乳糖、白土、ショ糖、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアゴム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸などがある。液体担体の例には、リン酸緩衝生理食塩水、生理食塩水、リンゲル液、ブドウ糖液、ハンクス液、シロップ、油、水、エマルション、各種の湿潤剤などがある。同様に、担体または希釈剤には、当技術分野で周知の時間遅延物質、たとえばモノステアリン酸グリセリルもしくはジステアリン酸グリセリル(単独、またはワックスを加える)などを含めることができる。前記の適当な担体は、上記の担体、および当技術分野で周知の他の担体を含むが、たとえば、Remington´s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Pennsylvaniaを参照されたい。賦形剤は、配合されたものの生物活性に影響を与えないように選択される。しかしながら、賦形剤は、標的細胞、特に宿主細胞への活性薬剤の取り込みを改善するように選択することもできる。したがって、賦形剤はまた、ウイルス粒子および/または脂質小胞であってもよく、好ましくは、目的とする標的細胞への侵入および/または標的細胞との融合を仲介することが知られているウイルス粒子および/または脂質小胞であってもよい。したがって、好ましくは、医薬組成物は、ウイルス粒子、好ましくはアデノ随伴ウイルス粒子、レトロウイルス粒子、またはアデノウイルス粒子中に含まれる、本明細書に記載のポリヌクレオチド、より好ましくは本明細書に記載の発現構築物、もっとも好ましくは本明細書に記載の発現ベクターを含む。
【0046】
治療上有効な用量とは、本明細書に記載の疾患または病態に伴う症状を予防、改善または治療する医薬品に使用される、エフェクターポリペプチドまたはそれをコードする発現構築物の量をいう。薬物の治療効果および毒性は、細胞培養物または実験動物における標準的な製薬上の手順、たとえばED50(集団の50%において治療上有効な用量)およびLD50(集団の50%に対して致死的な用量)によって決定することができる。治療効果と毒性作用の用量比は治療指数であって、LD50/ED50の比で表すことができる。投与計画は、主治医および臨床学的要因によって決定される。医学分野ではよく知られているように、各患者に対する投与量は、患者の体格、年齢、投与される個別の医薬製剤、性別、投与時間および投与経路、全身健康状態、ならびに同時に投与される他の薬物など、多くの要因によって決定される。本明細書に記載される医薬品は、好ましくは、少なくとも1回、たとえば急速静注として投与される。しかしながら、この医薬品は2回以上投与してもよく、好ましくは少なくとも2回、たとえば、規定の時間帯の後に持続的または定期的に投与することができる。経過は、定期的な評価によってモニターすることができる。推奨投与量は、考慮されるレシピエントに応じた用量調節を予測するために、処方もしくは使用説明書に示すことができる。
【0047】
本発明の医薬品は、前記の活性薬剤に加えて、さらに他の活性薬剤を含んでいてもよい。好ましくは、本発明の製薬上活性のある化合物は、少なくとも1つのさらに他の薬物とともに適用されるべきであり、したがって、この少なくとも1つの追加の薬物とともに医薬品として製剤することができる。より好ましくは、がんの治療の場合、前記の少なくとも1つの追加の活性薬剤は、化学療法薬または免疫療法薬である;炎症性疾患の治療の場合、前記の少なくとも1つの追加の活性薬剤は、抗炎症薬である;また、神経変性疾患の治療の場合、前記の少なくとも1つの追加の活性薬剤は、神経刺激剤である。医薬品は、三量体CD95Lまたはその人工模倣物のような、CD95アゴニストをさらに含んでいてもよい。また、当然のことながら、医薬組成物の製剤化は、医薬品の品質、医薬安全性、および有効性を確保するために、GMP標準化された条件下などで行われることが好ましい。
【0048】
本発明はまた、医薬に使用するための、本発明のエフェクターポリペプチド、本発明のポリヌクレオチド、本発明の宿主細胞、および/または本発明の医薬組成物に関する。
【0049】
本発明はさらに、がん、炎症性疾患、および/または急性もしくは慢性の神経変性疾患の治療および/または予防に使用するための、本発明のエフェクターポリペプチド、本発明のポリヌクレオチド、本発明の宿主細胞、および/または本発明の医薬組成物に関する。
【0050】
「がん」、「炎症性疾患」および「神経変性疾患」という用語は、本明細書において上記に明記されている。
【0051】
「治療(treating)」および「治療(treatment)」という用語は、本明細書に記載の疾患もしくは障害、またはそれに伴う症状の改善を指す。本明細書で使用される前記の治療には、本明細書に記載の疾患または障害に関する健康の完全な回復、ならびに疾患もしくは障害または前記の少なくとも1つの症状の悪化防止が含まれる。したがって、疾患の進行またはそれに関連する少なくとも1つの症状の悪化を防止する場合、または疾患もしくはそれに関連する少なくとも1つの症状の改善または治癒が認められる場合には、治療は有効であるとみなされるものとする。当然のことながら、すべての対象において治療が有効であるとは限らない。しかしながら、本発明によれば、治療は、好ましくは、治療される対象の少なくとも統計学的に有意な部分において有効であることが想定される。有効に治療することができる対象の統計学的に有意な部分を決定する方法は、当業者によく知られている。ある部分が統計学的に有意であるかどうかは、当業者であればすぐに、よく知られたさまざまな統計学的評価ツール、たとえば、信頼区間の決定、p値の決定、スチューデントt検定、マン・ホイットニー検定などを用いて決定することができる。詳細はDowdy and Wearden, Statistics for Research, John Wiley & Sons, New York 1983に記載されている。好ましい信頼区間は、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%である。p値は、好ましくは、0.1、0.05、0.01、0.005、または0.0001である。好ましくは、本発明が想定する確率は、有効な治療の所見が、所与のコホートまたは集団の対象の、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%について正しいことを認めるものである。好ましくは、治療の有効性は、所与のコホートまたは集団の治療された対象の生存を測定することによって判定されるが、好ましくは、無病生存率、無増悪生存率、および/または全生存率を決定することによって判定される。しかしながら、対照コホートと比較した生存期間の増加など他のパラメーターを決定してもよい。
【0052】
好ましくは、治療は、追加の治療ステップ、たとえば、本明細書の別項に記載される治療ステップ、特に、三量体CD95Lまたはその人工模倣物などのCD95アゴニストの同時投与を含む。また好ましくは、治療は、受容体チロシンキナーゼ(RTK)の少なくとも1つの阻害薬の投与を、さらに含む。RTKは当技術分野で公知である;好ましくは、RTKは上皮成長因子受容体(EGFR)ファミリーのメンバーであり、より好ましくはEGFRであり、もっとも好ましくは、Her1としても知られるヒトEGFR、たとえばGenbank Acc No. NP_005219.2、またはそれとは別のアイソフォームである。したがって、受容体チロシンキナーゼの阻害薬は、EGFR阻害薬を含み、好ましくはEGFR阻害剤であって、好ましくは、エルロチニブ(CAS NO. 183321-74-6)、アファチニブ(CAS NO. 850140-72-6)、ダコミチニブ(CAS No. 1110813-31-4)、ゲフィチニブ(184475-35-2)、ラパチニブ(CAS No. 231277-92-2)、ネラチニブ(CAS No. 698387-09-6)、オシメルチニブ(CAS No. 1421373-65-0)、および/またはバンデタニブ(CAS No. 443913-73-3)である。
【0053】
好ましくは、がんを治療することは、対象における腫瘍組織量を減少させること、および/または転移を予防することである。当業者には当然のことながら、たとえばがんの治療有効性は、たとえばがんの病期およびがんの種類など、さまざまな要因に左右される。好ましくは、治療は、がん細胞にアポトーシスを開始させる。したがって、好ましくは、治療は、腫瘍の増殖を停止させる効果を有し、より好ましくは腫瘍の退縮を引き起こす効果、より好ましくは腫瘍を消散させる効果を有する。本明細書の別項に記載されるように、がんの治療は、外科手術、放射線療法、化学療法、免疫療法などの追加の治療を含んでいてもよい。
【0054】
炎症性疾患を治療することは、好ましくは、対象またはその罹患組織および/もしくは臓器における炎症、ならびに/または前記炎症に関連する症状を改善することを含む。炎症の治療はまた、対象またはその罹患組織および/もしくは臓器における免疫反応を正常レベルまで低下させることを含むこともある。治療は、特に慢性炎症性疾患の場合、疾患の進行、および/またはそれに関連する少なくとも1つの症状の悪化を予防することを含んでいてもよい。
【0055】
神経変性疾患の治療は、好ましくは、対象における神経細胞および/またはその機能の喪失の遅らせ、または予防すること、および/または前記の神経変性に関連する症状の悪化を遅らせ、予防し、または好転させることを含む。好ましくは、神経変性疾患の治療は、慢性変性疾患における疾患の進行、および/またはそれに関連する少なくとも1つの症状の悪化を予防することを含む。
【0056】
本明細書で使用される「予防」という用語は、疾患の発症もしくは疾患に関連する少なくとも1つの症状の発現を回避することを意味する。本明細書でいう予防は、典型的には、薬物が投与されている期間の間に達成されうる。しかしながら、薬物の投与が停止された場合、予防は無制限に持続するのではなく、薬物の適用後、一定の予防的時間範囲の間残存しうる。典型的には、本発明の予防的時間範囲は、少なくとも1日、少なくとも7日、少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6ヶ月、または少なくとも1年とすることができる。しかしながら、予防的時間範囲はまた、薬物の投与量、ならびに投与方法または製剤の種類によっても左右されうる。たとえば、高用量が適用されれば、通常、より長い予防的時間範囲を達成することができる。薬物の徐放性製剤が投与される場合、または薬物が対象内で即座に代謝されない経路で投与される場合も同様である。このような場合、予防的時間範囲は、数週間、数ヶ月、もしくは数年にまで延長されうる。当然のことながら、すべての対象において予防が有効であるとは限らない。しかしながら、本発明によれば、予防は、好ましくは、対象の少なくとも統計学的に有意な部分において有効であることが想定される。有効に予防されうる、被験者の統計学的に有意な部分を決定する方法は、当業者に周知である。ある部分が統計学的に有意であるか否かは、当業者であればすぐに、上記のさまざまな周知の統計学的評価ツールを用いて、決定することができる。疾患の予防は、特に、前記疾患に罹患する素因、たとえば遺伝的素因または生活習慣に関連する傾向を有する対象に適しているといえる。
【0057】
さらに、本発明は、そのような治療を必要とする対象において、がん、炎症性疾患、または急性もしくは慢性の神経変性疾患を治療および/または予防する方法に関するが、その方法は、(a)前記対象を、本発明のエフェクターポリペプチド、本発明のポリヌクレオチド、本発明の宿主細胞、および/または本発明の医薬組成物と接触させるステップ;ならびに(b)それによって、がん、炎症性疾患、または急性もしくは慢性の神経変性疾患を治療するステップ、を含む。
【0058】
本発明の方法は、上記で明示したステップに加えて、ステップを含んでいてもよい。たとえば、追加のステップは、たとえば、ステップ(a)の前に、がん、炎症性疾患、または急性もしくは慢性の神経変性疾患に罹患するリスクを診断または決定すること、および/またはステップ(a)の前、ステップ(a)の間、もしくはステップ(a)の後の、好ましくは本明細書の別項に記載されるような追加の治療に関するものとすることができる。さらに、前記ステップのうち1つもしくは2つ以上が自動化された装置によって補助され、または実行されてもよい。
【0059】
本発明はまた、本発明のエフェクターポリペプチド、本発明のポリヌクレオチド、本発明の宿主細胞、および/または本発明の医薬組成物をケースの中に含むキットに関する。
【0060】
本明細書で使用される「キット」という用語は、前記の化合物、手段または試薬の集合体を指す。キットの構成要素は、別々のバイアルに含まれていてもよいが(すなわち、別々の部分からなるキットとして)、単一のバイアルの中に、たとえば、本明細書に記載された上記の組成物として提供されてもよい。キットのケースは、好ましくは、キットの化合物の移動を可能にし、特に日常的な移動を可能にする;したがって、ケースは、具体的には、すべての指定された構成要素を含む輸送可能な容器とすることができる。さらに、当然のことながら、本発明のキットは、本明細書に記載された上記の方法の少なくとも1つを実施するために使用することができる。上記の方法を実施するために、すべての構成要素がすぐに使用できるように提供されることが想定される。さらに、キットは、好ましくは、前記方法を実施するための説明書、たとえば、投薬量の説明書を含む。この説明書は、書面または電子的形態のユーザーマニュアルによって提供されうる。キットは、好ましくは、さらに他の成分、好ましくは、本明細書に記載される上記の少なくとも1つのさらに他の治療薬、添加剤、および/または投与手段、具体的には注射器および/または注射針、および/または静脈内注入器具を含む。
【0061】
本発明はまた、宿主細胞においてアポトーシスを誘導するための、本発明のエフェクターポリペプチド、本発明のポリヌクレオチド、本発明の宿主細胞、および/または本発明の医薬組成物の使用、好ましくはin vitroでの使用に関する。
【0062】
好ましい実施形態において、本発明はさらに、エフェクターポリペプチドの使用、好ましくはin vitroでの使用であって、宿主細胞の脂質組成の変化を引き起こすための;宿主細胞において細胞周期停止を誘導するための;宿主細胞においてホスホプロテインキナーゼB(pAkt)を介したシグナル伝達を減少させる、および/または宿主細胞のリン酸化上皮成長因子受容体(pEGFR)を介したシグナル伝達を増加させるための;宿主細胞のエンドサイトーシス速度を減少させるための;宿主細胞の細胞サイズを減少させるための;および/または、特にEGF刺激による、細胞死、好ましくはアポトーシスを増加させるための、前記エフェクターポリペプチドの使用、好ましくはin vitroでの使用に関するが、すべて本明細書の上記および実施例に記載されるとおりである。
【0063】
好ましい実施形態において、「脂質組成の変化」という用語は、本明細書で使用される場合、細胞、好ましくは細胞の細胞膜における、脂質クラスの相対的割合の変化、好ましくは有意な変化に関する。好ましくは、脂質組成の変化は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスホイノシチド、スフィンゴミエリン、セラミド、および/またはスフィンゴ糖脂質からなる一群から選択される少なくとも1つの脂質クラスの変化を含む。細胞、および特に細胞膜の脂質組成を決定する方法は、当業者に知られている。
【0064】
好ましい実施形態において、「細胞周期停止」という用語は、当業者に公知であり、より好ましくは、細胞周期のG1期における停止に関する。好ましくは、細胞周期停止を誘導した後、具体的には、宿主細胞を本明細書に記載のエフェクターポリペプチドと接触させた後、集団において宿主細胞の少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも75%がG1期にある。好ましくは、細胞周期は、細胞周期停止を誘導した後、たとえば、本明細書に記載の少なくとも1つのエフェクターポリペプチドの発現を引き起こすウイルス発現ベクターによる前記宿主細胞の形質導入の後、3日から30日後、好ましくは1週間から2週間後に決定される。細胞において細胞周期を決定する方法は当業者に公知である。
【0065】
好ましい実施形態において、「pAktシグナル伝達」および「pEGFRシグナル伝達」という用語は、特に哺乳動物細胞における周知のシグナル伝達経路に関連することが当業者に知られている。前記シグナル伝達経路の活性は、好ましくは、pAktおよび/またはpEGFRをそれぞれ、たとえば当技術分野で公知の免疫学的方法で測定することによって決定される。
【0066】
好ましい実施形態において、「エンドサイトーシス速度」という用語は、細胞外成分の細胞内への取り込み速度、好ましくはクラスリン被覆ピットを介した取り込み速度に関連することが当業者に知られている。エンドサイトーシス速度を測定する方法は当技術分野で知られており、たとえば、実施例にも記載されているように、トランスフェリン取り込みアッセイが挙げられる。
【0067】
好ましい実施形態において、「細胞サイズを減少させる」という表現は当業者に理解され、細胞サイズを測定する適当な方法が当業者に知られているが、その方法は、たとえば、顕微鏡、PACSなどによる。好ましくは、細胞サイズの減少とは、未処理の対照と比較して、少なくとも25%、より好ましくは少なくとも40%、さらに好ましくは少なくとも50%、細胞サイズを減少させることである。
【0068】
好ましい実施形態において、「細胞死」という用語は当業者に理解されており、好ましくは、宿主細胞がその機能の遂行をやめる、好ましくは代謝しなくなる、特にグルコースの代謝および/またはタンパク質の合成をしなくなるあらゆるプロセスに関する。細胞死は、宿主細胞の構造的および形態的変化、特に細胞溶解を伴うことがある。しかしながら、細胞死は、構造的および/または形態的な変化が見られない状態で起こることもある。細胞死を判定する方法は当該技術分野において公知であり、これには特に、好ましくは本明細書の実施例に記載されるように、細胞のトリパンブルー染色が挙げられる。細胞死という用語には、具体的には、アポトーシス、オートファジー、他の形態のプログラム細胞死、ネクローシス、および細胞老化が含まれる。「アポトーシス」、「オートファジー」、「プログラム細胞死」、「ネクローシス」および「細胞老化」という用語は、たとえば標準的な教科書で当業者に知られている。
【0069】
上記の観点から、好ましい実施形態において、本発明はさらに、宿主細胞の脂質組成の変化を引き起こすための方法、宿主細胞において細胞周期停止を誘導するための方法、宿主細胞においてホスホプロテインキナーゼB(pAkt)を介したシグナル伝達を減少させる、および/またはリン酸化上皮成長因子受容体(pEGFR)を介したシグナル伝達を増加させるための方法、宿主細胞のエンドサイトーシス速度を減少させるための方法、宿主細胞の細胞サイズを減少させるための方法、および/または、細胞死を増加させるための方法、特にEGF暴露によりアポトーシスを増加させるための方法に関するが、その方法は、本明細書に記載のエフェクターポリペプチドの投与を含む。前記方法は、たとえば培養細胞で実施されるin vitro法であってもよい。本方法はまた、非ヒト実験動物で実施してもよく、その場合、前記実験動物は好ましくは前記投与後に屠殺される。しかしながら、本方法はまた、本明細書の別項に記載される治療方法に含まれていてもよい;その場合、好ましくは、治療される対象は、哺乳動物、より好ましくはヒトであり、および/または宿主細胞は、本明細書に記載されるように、がん細胞または免疫細胞である。
【0070】
さらに、本発明は、CD95と少なくとも1つの膜脂質との相互作用の阻害薬(相互作用阻害薬)を同定するための方法に関するが、その方法は以下を含む
(a)CD95またはその断片、および少なくとも1つの膜脂質を含む宿主細胞を、阻害薬候補と接触させるステップ;
(b)CD95またはその断片と膜脂質との間の相互作用を測定するステップ;
(c)ステップ(b)で測定された相互作用を対照の相互作用と比較するステップ;および
(d)ステップ(c)の比較に基づいて、相互作用阻害薬を同定するステップ。
【0071】
CD95の相互作用阻害薬を同定する方法は、好ましくは、in vitro法である。本方法が実験動物で実施される場合、本方法は、好ましくは、ステップ(e)実験動物を屠殺するステップを含む。さらに、本方法は、明記されたステップに加えてステップを含んでいてもよく、自動化された装置によって補助または実行されてもよい。
【0072】
本明細書で使用される「膜脂質」という用語は、本明細書に記載される宿主細胞、好ましくは疾患介在細胞の膜に存在する任意の脂質に関する。好ましくは、前記の膜は細胞膜、またはエンドソームもしくはエンドリソソームの膜であり、より好ましくは細胞膜である。好ましくは、膜脂質は、ガングリオシド、好ましくはガングリオシドGM2またはガングリオシドGM3である;または、ホスホイノシチド、好ましくはPI(4,5)PI2(ホスファチジルイノシトール4,5-二リン酸)またはPI(3,4,5)PI3(ホスファチジルイノシトール3,4,5-三リン酸)である。
【0073】
「阻害薬候補」という用語は、本明細書において、広義には、CD95と少なくとも1つの膜脂質との相互作用を阻害すると推測される任意の化合物に関して使用される;したがって、この用語は、好ましくは、CD95と少なくとも1つの膜脂質との相互作用の阻害についてこれまでテストの結果が陰性でなかった任意の化合物に関する。好ましくは、阻害薬候補は、前記膜脂質と前記CD95もしくはその断片との間の相互作用、または対応する読み出し情報が、対照の相互作用と比較して、少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、もっとも好ましくは少なくとも50%変化し、好ましくは減少する場合に、相互作用阻害薬として同定される。
【0074】
CD95またはその断片と膜脂質との間の相互作用の測定は、当業者に知られていて当業者が適当であるとみなす、分子相互作用を測定するための任意の方法によって遂行することができる。測定方法は、好ましくは間接的であり、すなわち細胞における前記相互作用の生理学的な結果、たとえばアポトーシス誘導を測定する。より好ましくは、その方法は分子相互作用を測定する直接的な方法である。該当する方法は当業者に公知であり、具体的には、光学的方法、たとえばNakano et al. (2021), BBA Biomembranes 1863:186323で知られるFRET法、および/または相互作用を判定する顕微鏡的方法が含まれる;このような場合、好ましくは、CD95またはその断片は、第1の検出用化合物、好ましくは第1の蛍光標識によって標識される;および/または、少なくとも1つの膜脂質は、第2の検出用化合物、好ましくは第2の蛍光標識で標識される。「検出用化合物」という用語は、本明細書で使用される場合、前記検出用化合物を含む分子または複合体の存在を検出可能にするのに適した化合物に関する。典型的には、検出用化合物は、検出可能な特性、典型的には光学的特性または/および酵素的特性を有する。しかしながら、前記の検出可能な特性が放射能を放出する特性であることも想定される。また、第一の検出用化合物および第二の検出用化合物が結合して、酵素的に活性なポリペプチドを形成するシステムも当技術分野で知られている。好ましくは、第1および第2の検出用化合物は、光学的手段によって検出可能であって、より好ましくは色素であり、もっとも好ましくは蛍光標識である。当業者には理解されるように、FRETの応用において、第1および第2の検出用化合物は、好ましくは、適切に重なり合う発光/吸収スペクトルを有する蛍光標識である。しかしながら、相互作用は、他の方法で、たとえば、CD95もしくはその断片および/または膜脂質に結合した光活性化架橋基を用いて測定することも想定される;適当な方法は当業者に知られており、たとえば、Haberkant & Holthuis (2014), BBA - Mol Cell Biol Lipids 1841(8):1022に概説されている。
【0075】
ステップ(c)に従って、ステップ(b)で測定された相互作用を対照の相互作用と比較する。前記の対照の相互作用は、阻害薬候補と接触していない宿主細胞、および/または本明細書に記載されたエフェクターポリペプチドを含む宿主細胞において測定される。
【0076】
本発明はまた、医薬用の、好ましくはがん、炎症性疾患、または急性もしくは慢性の神経変性疾患の治療に使用するための、CD95と少なくとも1つの膜脂質との相互作用の阻害薬に関する。
【0077】
本明細書に明記されるように、「CD95と少なくとも1つの膜脂質との相互作用の阻害薬」は、「相互作用阻害薬」とも称され、膜脂質およびCD95もしくはその断片の相互作用、または対応する読み出し情報を、対照相互作用と比較して少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、もっとも好ましくは少なくとも50%阻害する化合物である。好ましくは、相互作用阻害薬は、直接的な相互作用阻害薬、すなわちCD95の膜貫通ドメイン、好ましくは配列番号1に結合するか、または膜脂質もしくはその一部、たとえば膜脂質の頭部に結合する化合物であって、それによってCD95もしくはその断片および膜脂質が相互作用することを妨げる。したがって、直接的な相互作用阻害薬は、好ましくは、本明細書に記載されたエフェクターポリペプチドである。しかしながら、直接的な相互作用阻害薬はまた、好ましくは2kDa未満、より好ましくは1kDa未満の分子量を有する低分子化合物、抗体もしくはその断片、たとえばナノボディ、アプタマー、などであってもよい。低分子阻害薬は、具体的には、CD95と少なくとも1つの膜脂質との相互作用を阻害する活性を有する脂質、たとえばGB3、または、好ましくは可溶性のその誘導体であってもよい;したがって、低分子阻害薬は、特に、CD95と少なくとも1つの膜脂質との相互作用を阻害する活性を有する、GB3の可溶性模倣体であってもよい。しかしながら、直接的な阻害薬は、膜脂質、特にGM2および/またはGM3の頭部に結合し、CD95と少なくとも1つの膜脂質との相互作用を阻害する活性を有する、結合剤であってもよい。好ましくは、前記結合剤は可溶性であり、すなわち水溶液中で、好ましくは標準条件下において、少なくとも1mg/mlの濃度で溶解可能である。したがって、膜脂質の頭部に結合する結合剤は、好ましくは、レクチン、抗体、アプタマー、または特定の活性を有する前記のいずれかの断片である。
【0078】
しかしながら、相互作用阻害薬はまた、間接的な相互作用阻害薬、すなわち、宿主細胞において上記の膜脂質の濃度を変化させる、好ましくは減少させる化合物であってもよい。当業者の理解するところでは、相互作用阻害は、相互作用パートナーの少なくとも1つ、好ましくはGM2の濃度を減少させることによって達成することができるが、競合する拮抗的化合物の濃度を増加させることによっても達成することができる;競合する拮抗的化合物は、好ましくは、脂質、たとえばGB3、または好ましくは可溶性の、その構造類似体であり、前記の相互作用する膜脂質の濃度を減少させることによって、生体膜においてCD95と相互作用する膜脂質の濃度を減少させる活性を有する。たとえばガングリオシド生合成の生化学的経路は、たとえばYu et al. (2011), J Oleo Sci 60(10):537)で知られており、それぞれの酵素の阻害薬も知られている(たとえばWO 01/39804を参照されたい);したがって、相互作用阻害薬は、好ましくは、ツニカマイシン(CAS NO. 11089-65-9)、ガングリオシドGQ1b、GT1a、およびGT1bからなる一群から選択される。また、間接的な相互作用阻害薬は、その活性が阻害されるように、少なくとも1つの膜脂質生合成酵素に結合する、好ましくは以下に記載される高分子化合物であってもよい;適当な化合物は当技術分野で公知であり、たとえば、抗体、アプタマー、DARPINなどが挙げられる。好ましくは、間接的な相互作用阻害薬は、RNAi作用薬、少なくとも1つのgRNA、またはリボザイムであって、宿主細胞の膜抽出物中のガングリオシドGM2および/またはガングリオシドGM2の濃度を、前記間接的相互作用阻害薬で処理しない対照細胞と比較して少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも50%減少させる程度まで、少なくとも1つの膜脂質生合成酵素、好ましくはガングリオシド生合成酵素の発現を減少させる。好ましくは、遺伝子発現が阻害されるのは、GM3合成酵素、好ましくはヒトGM3合成酵素(CMP-シアル酸:ラクトシルセラミドα2-3シアル酸転移酵素、ST-Iとしても知られる)またはGM2合成酵素、好ましくはヒトGM2合成酵素(UDP-N-アセチルガラクトサミン:GM3 β1-4 N-アセチルガラクトサミン転移酵素)である。
【0079】
本明細書で使用される「RNAi作用薬」という用語は、下記のshRNA作用薬、siRNA作用薬、またはmiRNA作用薬を指し、宿主細胞における少なくとも1つの膜脂質生合成酵素の発現を、対照宿主細胞と比較して低下させるものである。RNAi作用薬は、標的RNAと安定した相互作用をするのに十分な長さおよび相補性を有しており、すなわち、標的RNAと相補的な、少なくとも15、少なくとも17、少なくとも19、少なくとも21、少なくとも22個のヌクレオチドを含む。「安定した相互作用をする」とは、たとえば生理的条件下で標的RNA中の相補的ヌクレオチドと水素結合を形成することにより、RNAi作用薬または細胞により産生されたその産物が標的RNAと相互作用することを意味する。当業者に理解されるように、RNAi作用薬はポリヌクレオチドの化学的誘導体、たとえばモルフォリノであってもよい。
【0080】
本明細書で使用される「siRNA作用薬」という用語は、以下を包含する:a)少なくとも15、少なくとも17、少なくとも19、少なくとも21個の連続したヌクレオチドからなり、それらが塩基対をなしている、すなわち相補的なヌクレオチドと水素結合を形成しているdsRNA。b)低分子干渉RNA(siRNA)分子、またはsiRNA分子を含む分子。siRNAは、好ましくは15ヌクレオチド以上の長さを有する一本鎖RNA分子であるが、より好ましくは15~49ヌクレオチド、より好ましくは17~30ヌクレオチド、もっとも好ましくは17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30ヌクレオチドの長さを有する一本鎖RNA分子である。本発明によれば、「siRNA分子を含む分子」という表現には、RNA分子であって、そこからsiRNAが細胞によって、好ましくは哺乳動物細胞によってプロセシングされる、前記RNA分子が含まれる。したがって、siRNA分子を含む分子は、好ましくはshRNAとしても知られる低分子ヘアピン型RNAである。本明細書で使用される「shRNA」という用語は、ステム-ループ構造を形成している、好ましくは人工のRNA分子に関するが、これは、同じmRNA分子上の相補的配列と塩基対をなす、すなわちdsRNAのような、少なくとも10、好ましくは少なくとも15、より好ましくは少なくとも17、もっとも好ましくは少なくとも20個のヌクレオチドを含み(「ステム」)、塩基対を形成していない一続きのヌクレオチド(「ループ」)で区切られている。c) a)またはb)をコードするポリヌクレオチドであって、好ましくは、前記ポリヌクレオチドは発現調節配列に、機能しうるように連結されている。
【0081】
しかしながら、RNAi作用薬はmiRNA作用薬であるとも考えられる。本明細書で使用される「miRNA作用薬」は、以下を包含する:a)プレマイクロRNA、すなわち、同じmRNA分子上の相補的配列と塩基対をなす、すなわちdsRNAのような、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70個のヌクレオチドを含み(「ステム」)、塩基対を形成していない一続きのヌクレオチド(「ループ」)で区切られたmRNA。b) プレマイクロRNA、すなわち、同じRNA分子のヌクレオチドにより形成された、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25塩基対のヌクレオチドを含み(ステム)、ループで区切られた、dsRNA。c) マイクロRNA(mRNA)、すなわち、2本の別々のRNA鎖上に少なくとも15、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも21個のヌクレオチドを含むdsRNA。d) a)またはb)をコードするポリヌクレオチドであって、好ましくは、前記ポリヌクレオチドが発現調節配列に機能しうるように連結されている、前記ポリヌクレオチド。当然のことながら、miRNA作用薬は、天然に存在するmiRNAであってもよい;より好ましくは、miRNA作用薬は人工miRNAである。
【0082】
本明細書で使用される「リボザイム」という用語は、自己のホスホジエステル結合の1つの加水分解(自己切断リボザイム)、または他のRNAの結合の加水分解のいずれかを触媒することを可能にする、明確な三次構造を有する触媒RNA分子を指すが、それらはまた、リボソームのアミノトランスフェラーゼ活性を触媒することも判明している。本発明で想定されるリボザイムは、好ましくは、標的RNAを特異的に加水分解するものである。特に、ハンマーヘッド型リボザイムが本発明に合致して好ましい。このようなリボザイムの作製方法および使用法は、当技術分野でよく知られている(たとえば、Hean & Weinberg (2008), RNA and the Regulation of Gene Expression: A Hidden Layer of Complexity, Chapter 1. Caister Academic Pressを参照されたい)。
【0083】
また好ましくは、間接的な相互作用阻害薬は、本明細書に記載された遺伝子を標的とする、少なくとも1つ、好ましくは2つのgRNA、すなわち好ましくは、CRISPR/Cas標的化オリゴヌクレオチドを含む。CRISPR/Casシステムは、好ましくは染色体遺伝子のノックアウト変異、すなわち欠失を誘導するための簡便なシステムとして数年前から知られている。当業者は、目的のDNA配列の欠失を誘導することができる、好ましくはベクターから発現される、適当なオリゴヌクレオチドを設計する方法を承知している。好ましくは、前記欠失は部分欠失であり、より好ましくは、機能に必須の遺伝子の一部の欠失である;もっとも好ましくは、前記欠失は、少なくとも全コード領域の完全欠失である。
【0084】
本発明はまた、CD95と少なくとも1つの膜脂質との相互作用の阻害薬による治療に感受性である、がん、炎症性疾患、または急性もしくは慢性の神経変性疾患に罹患している対象を特定する方法に関するが、その方法は以下を含む
(A)前記対象の疾患介在細胞の受容体チロシンキナーゼ活性からCD95の発現および/または依存性を判定するステップ、および
(B)ステップ(A)の判定に基づいて、CD95と少なくとも1つの膜脂質との相互作用の阻害薬による治療に感受性を有する対象を特定するステップ。
【0085】
相互作用阻害薬による治療に感受性のある対象を特定する方法は、好ましくは、in vitro法である。さらに、本方法は、特に言及したステップに加えてステップを含んでいてもよく、自動化された装置によって補助または実行されてもよい。好ましくは、本方法において、CD95と少なくとも1つの膜脂質との相互作用の阻害薬による治療に感受性のある対象は、ステップ(A)において、前記疾患関連細胞がCD95を発現し、および/または受容体チロシンキナーゼ活性に依存性であることが判明した場合に特定される。
【0086】
「疾患介在細胞」という用語は、本明細書において上記で明記されている。CD95の発現を測定する方法は当技術分野で知られており、具体的には、CD95をコードする転写物を検出する方法、たとえばPCR法、および/または免疫学的方法、たとえばイムノブロット法、ELISA法などが挙げられる。しかしながら、CD95の発現は、他の方法、たとえば、疾患介在細胞由来のペプチドのMS分析によっても測定することができる。
【0087】
受容体チロシンキナーゼ活性の依存性を判定する方法も当技術分野で知られている。好ましくは、前記方法は、RTK阻害薬、好ましくはEGFR阻害薬を疾患介在細胞に投与し、対照(未処理)細胞と比較して処理細胞の増殖を判定することを含む。対照集団と比較して、たとえば細胞数として測定されるように、少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも50%の増殖低下を示す疾患介在細胞は、好ましくは、受容体チロシンキナーゼ活性に依存性であると確認される。しかしながら、RTK活性の依存性は、たとえば一般的な抗ホスホチロシン抗体を用いて細胞内チロシンリン酸化のレベルを測定することによっても判定可能であり、この抗体は、免疫ブロット、免疫組織化学的応用に適用され、またはたとえばFACSによる単一細胞レベルで適用されうる(Balta et al. (2019), Cell Reports 29(8):2295)。
【0088】
本発明はまた、がん、炎症性疾患、または急性もしくは慢性の神経変性疾患に罹患している対象を、CD95と少なくとも1つの膜脂質との相互作用の阻害薬で治療する方法に関するが、その方法は
相互作用阻害薬による治療に感受性を有する対象を特定する方法のステップ(A)および(B)、ならびに追加のステップ
(C)CD95と少なくとも1つの膜脂質との相互作用の阻害薬を投与することにより、CD95と少なくとも1つの膜脂質との相互作用の阻害薬による治療に感受性であると特定された対象を治療するステップ
を含む。
【0089】
前記の治療方法は、好ましくは、少なくとも部分的にin vivo法である。さらに、本方法は、特に言及したステップに加えてステップを含んでいてもよく、自動化された装置によって補助または実行されてもよい。前記治療に使用される相互作用阻害薬は、本明細書において上記に記載されるもの、および/または、同じく本明細書に記載されるように、CD95と少なくとも1つの膜脂質との相互作用の阻害薬を同定するための方法によって同定されたものである。
【0090】
以上を踏まえて、以下の実施形態が特に想定される:
実施形態1:以下を含むエフェクターポリペプチド
(i)アミノ酸配列RSNLGWLCLLLLPIPLIVWVKRK(配列番号1)と少なくとも70%同一なアミノ酸配列;および
(ii)(i)のアミノ酸配列の1位、2位、3位、19位、22位および23位からなる一群から選択される少なくとも1つの位置における、アミノ酸の非同一アミノ酸への置換。
実施形態2:前記アミノ酸置換が、R1Q、R1E、R1A、S2A、N3A、R1E/N3A、R1A/N3A、W19A、R22A、R22E、K23A、K23E、R22A/K23A、R22E/K23E、W19A/R22A/K23A、W19A/R22E/K23E、およびそれらの任意の組み合わせからなる一群から選択される、実施形態1に記載のエフェクターポリペプチド。
実施形態3:前記アミノ酸置換が、R1Q、R1E、またはR1Aである、実施形態1または2に記載のエフェクターポリペプチド。
実施形態4:少なくとも2つ、ある実施形態では少なくとも3つのアミノ酸置換を含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載のエフェクターポリペプチド。
実施形態5:前記アミノ酸置換が、R1E、R22E、およびK23Eからなる一群から選択される、実施形態1~4のいずれか1つに記載のエフェクターポリペプチド。
実施形態6:前記アミノ酸置換がR1Qである、実施形態1~5のいずれか1つに記載のエフェクターポリペプチド。
実施形態7:前記エフェクターポリペプチドが、アミノ酸配列X1X2X3LGWLCLLLLPIPLIVX4VKX5X6(配列番号2)を含み、ここで
X1はE、Q、A、N、G、V、L、I、S、T、DおよびMから選択されるが、好ましくは、EまたはQである;
X2は、A、G、V、LおよびIから選択される;
X3は、A、G、V、L、I、Q、N、D、E、S、T、M、H、K、およびRから選択される;
および/または
X4~X6は、独立して、A、G、V、L、I、Q、N、D、E、S、T、およびMから選択される
実施形態1~6のいずれか1つに記載のエフェクターポリペプチド。
実施形態8:アミノ酸配列X1X2X3LGWLCLLLLPIPLIVX4VKX5X6(配列番号2)を含むエフェクターポリペプチドであって、ここで
X1は、E、Q、A、N、G、V、L、I、S、T、D、およびMから選択され、好ましくは、EまたはQである;
X2は、A、G、V、LおよびIから選択される;
X3は、A、G、V、L、I、Q、N、D、E、S、T、M、H、K、およびRから選択される;
および/または
X4~X6は、独立して、A、G、V、L、I、Q、N、D、E、S、T、およびMから選択される
前記エフェクターポリペプチド。
実施形態9:前記エフェクターポリペプチドが
アミノ酸配列ESNLGWLCLLLLPIPLIVWVKRK(配列番号3)、アミノ酸配列QSNLGWLCLLLLPIPLIVWVKRK(配列番号4)、アミノ酸配列ASNLGWLCLLLLPIPLIVWVKRK(配列番号5)、アミノ酸配列RSNLGWLCLLLLPIPLIVWVKEE(配列番号33)、またはアミノ酸配列ESNLGWLCLLLLPIPLIVWVKEE(配列番号34)
を含む、実施形態1~8のいずれか1つに記載のエフェクターポリペプチド。
実施形態10:前記エフェクターポリペプチドが、N末端配列として配列番号6~10のアミノ酸配列のうち少なくとも1つ;および/またはC末端配列として配列番号11~13のアミノ酸配列のうち少なくとも1つをさらに含む、実施形態1~9のいずれか1つに記載のエフェクターポリペプチド。
実施形態11:前記エフェクターポリペプチドが、N末端からC末端の順に、
(I) 配列番号1 - 配列番号11;
(II) 配列番号1 - 配列番号11 - 配列番号12;
(III) 配列番号1 - 配列番号11 - 配列番号12 - 配列番号13;
(IV) 配列番号6 - 配列番号1 - 配列番号11 - 配列番号12;
(V) 配列番号7 - 配列番号6 - 配列番号1 - 配列番号11 - 配列番号12;
(VI) 配列番号8 - 配列番号7 - 配列番号6 - 配列番号1 - 配列番号11 - 配列番号12;
(VII) 配列番号9 - 配列番号8 - 配列番号7 - 配列番号6 - 配列番号1 - 配列番号11 - 配列番号12;
(VIII) 配列番号10 - 配列番号9 - 配列番号8 - 配列番号7 - 配列番号6 - 配列番号1 - 配列番号11 - 配列番号12;
(IX) 配列番号33 - 配列番号11;
(X) 配列番号33 - 配列番号11 - 配列番号12;
(XI) 配列番号33 - 配列番号11 - 配列番号12 - 配列番号13;
(XII) 配列番号6 - 配列番号33 - 配列番号11 - 配列番号12;
(XIII) 配列番号7 - 配列番号6 - 配列番号33 - 配列番号11 - 配列番号12;
(XIV) 配列番号8 - 配列番号7 - 配列番号6 - 配列番号33 - 配列番号11 - 配列番号12;
(XV) 配列番号9 - 配列番号8 - 配列番号7 - 配列番号6 - 配列番号33 - 配列番号11 - 配列番号12;
(XVI) 配列番号10 - 配列番号9 - 配列番号8 - 配列番号7 - 配列番号6 - 配列番号33 - 配列番号11 - 配列番号12;
(XVII) 配列番号34 - 配列番号11;
(XVIII) 配列番号34 - 配列番号11 - 配列番号12;
(IX) 配列番号34 - 配列番号11 - 配列番号12 - 配列番号13;
(XX) 配列番号6 - 配列番号34 - 配列番号11 - 配列番号12;
(XXI) 配列番号7 - 配列番号6 - 配列番号34 - 配列番号11 - 配列番号12;
(XXII) 配列番号8 - 配列番号7 - 配列番号6 - 配列番号34 - 配列番号11 - 配列番号12;
(XXIII) 配列番号9 - 配列番号8 - 配列番号7 - 配列番号6 - 配列番号34 - 配列番号11 - 配列番号12;または
(XXIV) 配列番号10 - 配列番号9 - 配列番号8 - 配列番号7 - 配列番号6 - 配列番号34 - 配列番号11 - 配列番号12
のアミノ酸配列を含み、好ましくはそのアミノ酸配列からなる、実施形態1~10のいずれか1つに記載のエフェクターポリペプチド。
実施形態12:前記エフェクターポリペプチドが、配列番号32、配列番号31、配列番号30、配列番号14、または配列番号15のアミノ酸を含み、好ましくはそのアミノ酸からなる、実施形態1~10のいずれか1つに記載のエフェクターポリペプチド。
実施形態13:前記エフェクターポリペプチドが、スフィンゴ糖脂質、好ましくはガングリオシドGM2(CAS No.19600-01-2)および/またはガングリオシドGM3(CAS No. 54827-14-4)、および/またはホスホイノシチド、好ましくはホスファチジルイノシトール4,5-二リン酸(PI(4,5)P2、CAS No. 245126-95-8)および/またはホスファチジルイノシトール3,4,5-三リン酸(PI(3,4,5)P3)に対する結合親和性の低下を示す、実施形態1~11のいずれか1つに記載のエフェクターポリペプチド。
実施形態14:前記エフェクターポリペプチドが、がん細胞における腫瘍形成促進シグナル伝達を減少させる活性を有する、実施形態1~13のいずれか1つに記載のエフェクターポリペプチド。
実施形態15:前記エフェクターポリペプチドが、がん細胞または活性化免疫細胞においてアポトーシスを誘導する活性を有する、実施形態1~14のいずれか1つに記載のエフェクターポリペプチド。
実施形態16:前記エフェクターポリペプチドが、天然に存在しないポリペプチドである、実施形態1~15のいずれか1つに記載のエフェクターポリペプチド。
実施形態17:前記アミノ酸が、αアミノ酸、好ましくはL-αアミノ酸である、実施形態1~16のいずれか1つに記載のエフェクターポリペプチド。
実施形態18:前記アミノ酸が、タンパク質を構成するアミノ酸である、実施形態1~17のいずれか1つに記載のエフェクターポリペプチド。
実施形態19:実施形態1~18のいずれか1つに記載のエフェクターポリペプチドをコードする核酸配列を含む、ポリヌクレオチド。
実施形態20:前記ポリヌクレオチドが、発現構築物に含まれる、実施形態17に記載のポリヌクレオチド。
実施形態21:前記ポリヌクレオチドが、ベクターに含まれる、実施形態19または20に記載のポリヌクレオチド。
実施形態22:実施形態1~16のいずれか1つに記載のエフェクターポリペプチド、および/または実施形態19~21のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドを含む、宿主細胞。
実施形態23:前記宿主細胞が、実施形態1~18のいずれか1つに記載のエフェクターポリペプチド、および/または実施形態19~21のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドを含む、ウイルス粒子および/またはリポソームを産生する、実施形態22に記載の宿主細胞。
実施形態24:(A)実施形態1~18のいずれか1つに記載のエフェクターポリペプチド、実施形態19~21のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド、および/または実施形態22もしくは23に記載の宿主細胞からなる一群から選択される活性薬剤、および(B)賦形剤、を含む、医薬組成物。
実施形態25:前記賦形剤が、ウイルス粒子および/または脂質ベシクルである、実施形態24に記載の医薬組成物。
実施形態26:前記医薬組成物が、ウイルス粒子に含まれる実施形態19~21のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドを含む、実施形態24または25に記載の医薬組成物。
実施形態27:前記ウイルス粒子が、アデノ随伴ウイルス粒子、レトロウイルス粒子、またはアデノウイルス粒子である、実施形態25または26に記載の医薬組成物。
実施形態28:医薬に使用するための、実施形態1~18のいずれか1つに記載のエフェクターポリペプチド、実施形態19~21のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド、実施形態22もしくは23に記載の宿主細胞、および/または実施形態24~27のいずれか1つに記載の医薬組成物。
実施形態29:がん、炎症性疾患、または急性もしくは慢性の神経変性疾患の治療および/または予防に使用するための、実施形態1~18のいずれか1つに記載のエフェクターポリペプチド、実施形態19~21のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド、実施形態22もしくは23に記載の宿主細胞、および/または実施形態24~27のいずれか1つに記載の医薬組成物。
実施形態30:前記がんが、CD95を発現するがん、および/または高度の免疫浸潤を示すがんであり、好ましくは脳腫瘍、より好ましくは膠芽腫、または膵がん、好ましくは膵管腺がん(PDAC)である、実施形態29に記載の使用のためのエフェクターポリペプチド。
実施形態31:がん、炎症性疾患、または急性もしくは慢性の神経変性疾患を、そのような治療を必要とする対象において治療および/または予防する方法であって、その方法が
(a)前記対象を、実施形態1~18のいずれか1つに記載のエフェクターポリペプチド、実施形態19~21のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド、実施形態22もしくは23に記載の宿主細胞、および/または実施形態24~27のいずれか1つに記載の医薬組成物と接触させるステップ;ならびに
(b)それにより、がん、炎症性疾患、または急性もしくは慢性の神経変性疾患を治療および/または予防するステップ
を含む前記方法。
実施形態32:前記治療および/または予防が、受容体チロシンキナーゼの少なくとも1つの阻害薬の投与をさらに含む、実施形態29~31のいずれか1つに記載の主題。
実施形態33:前記受容体チロシンキナーゼが上皮成長因子受容体(EGFR)である、実施形態32に記載の主題。
実施形態34:前記受容体チロシンキナーゼの阻害薬が、エルロチニブ、アファチニブ、ダコミチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、ネラチニブ、オシメルチニブ、および/またはバンデタニブを含み、好ましくは、それらである、実施形態32または33に記載の主題。
実施形態35:実施形態1~18のいずれか1つに記載のエフェクターポリペプチド、実施形態19~21のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド、実施形態22もしくは23に記載の宿主細胞、および/または実施形態24~27のいずれか1つに記載の医薬組成物をケース内に含むキット。
実施形態36:前記キットが、少なくとも賦形剤および/または投与手段をさらに含む、実施形態35に記載のキット。
実施形態37:宿主細胞においてアポトーシスを誘導するための、実施形態1~18のいずれか1つに記載のエフェクターポリペプチド、実施形態19~21のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド、実施形態22または23に記載の宿主細胞、および/または実施形態24~27のいずれか1つに記載の医薬組成物の使用。
実施形態38:前記使用がin vitroでの使用である、実施形態37に記載の使用。
実施形態39:CD95と少なくとも1つの膜脂質との相互作用の阻害薬(相互作用阻害薬)を同定するための方法であって、
(a)CD95またはその断片および少なくとも1つの膜脂質を含む宿主細胞を、阻害薬の候補と接触させるステップ;
(b)CD95またはその断片と膜脂質との間の相互作用を測定するステップ;
(c)ステップ(b)で測定された相互作用を対照相互作用と比較するステップ;および
(d)ステップ(c)の比較に基づいて、相互作用阻害薬を同定するステップ
を含む、前記方法。
実施形態40:前記CD95またはその断片が、CD95の膜貫通ドメインまたはそのバリアントを含み、好ましくは配列番号1を含む、実施形態39に記載の方法。
実施形態41:前記対照相互作用が、阻害薬候補と接触していない宿主細胞において測定され、および/または前記対照相互作用が、実施形態1~18のいずれか1つに記載のエフェクターポリペプチドを含む宿主細胞において測定される、実施形態39または40に記載の方法。
実施形態42:前記CD95またはその断片が、第1の検出化合物、好ましくは第1の蛍光標識で標識される;および/または前記の少なくとも1つの膜脂質が、第2の検出化合物、好ましくは第2の蛍光標識で標識される、実施形態39~41のいずれか1つに記載の方法。
実施形態43:前記の少なくとも1つの膜脂質が、ガングリオシド、好ましくはガングリオシドGM2および/またはガングリオシドGM3を含んでおり、好ましくは前記ガングリオシドである、実施形態39~42のいずれか1つに記載の方法。
実施形態44:医薬に使用するための、好ましくはがん、炎症性疾患、または急性もしくは慢性の神経変性疾患の治療に使用するための、CD95と少なくとも1つの膜脂質との相互作用の阻害薬。
実施形態45:前記阻害薬が、CD95と少なくとも1つの膜脂質との相互作用の直接的阻害薬であり、好ましくは、実施形態1~18のいずれか1つに記載のエフェクターポリペプチドである、実施形態44の使用のための阻害薬。
実施形態46:前記阻害薬が、CD95と少なくとも1つの膜脂質との相互作用の間接的阻害薬、好ましくはガングリオシド生合成の阻害薬、好ましくはガングリオシドGM2および/またはガングリオシドGM3生合成の阻害薬である、実施形態44または45に記載の使用のための阻害薬。
実施形態47:CD95と少なくとも1つの膜脂質との相互作用の阻害薬による治療に感受性である、がん、炎症性疾患、または急性もしくは慢性の神経変性疾患に罹患している対象を特定する方法であって、その方法が
(A)前記対象の疾患介在細胞の受容体チロシンキナーゼ活性から、CD95発現および/またはCD95依存性を判定するステップ、および
(B)ステップ(A)の判定に基づいて、CD95と少なくとも1つの膜脂質との相互作用の阻害薬による治療に感受性である対象を特定するステップ
を含む、前記方法。
実施形態48:前記ステップ(A)において、前記疾患介在細胞がCD95を発現し、および/または受容体チロシンキナーゼ活性に依存していることが判明した場合に、CD95と少なくとも1つの膜脂質との相互作用の阻害薬による治療に感受性の対象が特定される、実施形態47に記載の方法。
実施形態49:がん、炎症性疾患、または急性もしくは慢性の神経変性疾患に罹患している対象を、CD95と少なくとも1つの膜脂質との相互作用の阻害薬で治療する方法であって、その方法が
実施形態45または48に記載の方法のステップ(A)および(B)、ならびにさらに他のステップ
(C)CD95と少なくとも1つの膜脂質との相互作用の阻害薬を投与することによって、CD95と少なくとも1つの膜脂質との相互作用の阻害薬による治療に感受性であると特定された対象を治療するステップ
を含む、前記方法。
【0091】
本明細書において引用されるすべての参考文献は、その開示内容全体および本明細書で特に言及される開示内容に関して、参照することによって本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【
図1-1】A)特定の脂質種に対するCD95膜貫通ドメインの接触占有率。番号は原子論的シミュレーションに使用されるCD9のTMDの配列におけるアミノ酸位置に対応する;Chol: コレステロール、PSM:パルミトイルスフィンゴミエリン、POPI:1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホイノシトール、PI(4,5)PI
2: ホスファチジルイノシトール4,5-二リン酸、PI(3,5)PI
2:ホスファチジルイノシトール3,5-二リン酸、PI(3,4,5)PI
3:ホスファチジルイノシトール3,4,5-三リン酸、GM1:ガングリオシドGM1、GM2:ガングリオシドGM2、GM3:ガングリオシドGM3、GD3:ガングリオシドGD3、GB3:グロボトリアオシルセラミド、GT1a:ガングリオシドGT1a、GT1b:ガングリオシドGT1b;×印の相互作用は頻度が0から0. 5(低頻度)であり、その他は<0.5から1(高頻度)の範囲である。白は、細胞膜の非対称性脂質会合のため、該当する解析がないことを示す。したがって、
図1では細胞外部はR171の左側、細胞質はT198の右側となる;B)、C)特定の脂質種に対するCD95膜貫通ドメインまたはその変異タンパク質の接触占有率;B)ガングリオシド(GM2およびGM3)、C)ホスファチジルイノシトール(PI(4,5)PI
2)およびPI(3,4,5)PI
3)。
【
図2】CD95KO細胞は、EGF刺激により、pAkt基礎レベルの低下およびEGFRの過剰活性化を示す。図の上部に示す細胞からの抽出物の、右側に示す抗体によるイムノブロット解析。
【
図3】膜貫通ドメイン(TMD)野生型およびTMD変異型CD95過剰発現T98G細胞のアポトーシス解析。TMD変異型CD95はR171Q置換を含む。CD95L:mCD95L被覆膜上での増殖による刺激、DOPC:対照膜上(CD95Lなし)での増殖、wt:CD95 wt過剰発現;mut:CD95 R171Q過剰発現。
【
図4-1】R171E/R192E/K193E三重変異CD95膜貫通領域の脂質相互作用のモデリング。野生型(WT)および三重変異型(3M;R171E、R192E、K193E)のCD95の原子論的(AA)分子動力学シミュレーション(MDS)。シミュレーションに使用されたタンパク質断片は、E168残基からT198残基までであって、128個のリン脂質分子(リーフレットあたり64個の脂質)を含有する非対称性二重層に埋め込まれている。上側のリーフレットには、10 mol%のGM3(10分子)が含まれ、下側のリーフレットには10 mol%のPI(4,5)P
2分子が含まれる。システムは3回繰り返して2マイクロ秒間シミュレーションしたが、最初の1マイクロ秒は平衡化時間とみなし、解析から除外した。A) -C) タンパク質の各アミノ酸に対する、POPC (A))、GM3 (B))、PI(4,5)P
2 (C))の接触占有率を、野生型(上の線)および3M(下の線)として示す;D)は代わりに、シミュレーション時間における各脂質型と全タンパク質との間の平均接触数を示す。
【
図5-1】CD95変異体の存在下での細胞膜の脂質組成の変化。A) 指定の脂質クラスの平均mol%濃度を示す;WT:野生型CD95;KO:CD95ノックアウト;sM:単一変異体(R171E)、dM:二重変異体(R192E/K193E);tM:三重変異体(R171E/R192E/K193E);PC:ホスファチジルコリン;PE:ホスファチジルエタノールアミン;PS:ホスファチジルセリン;PI:ホスファチジルイノシトール;SM:スフィンゴミエリン;CE:コレステリルエステル。"a"Xはアシル-Xに関するが、たとえばaPCはアシル-ホスファチジルコリンである;"e"Xはエーテル-X、または1つの奇数鎖脂肪アシル種を含むXに関する。B) 脂質プロファイルの変化に基づく細胞のクラスター形成、UMAP表示。C) CD95の変異体を発現する細胞の細胞面積としての平均細胞サイズ。
【
図6】細胞周期に対するCD95変異体の影響。エフェクターポリペプチドを過剰発現する細胞においてG2期、S期、またはG1期にある細胞の割合をそれぞれ示す。二重および三重変異の変異体は、細胞の強いG1停止を誘導した。略号は
図5と同じである。
【
図7】細胞シグナル伝達に対するCD95変異体の影響;指定のエフェクターポリペプチドを過剰発現するようにトランスフェクトされた細胞におけるpAktおよびpEGFRの相対含量を示す。略号は
図5と同じである。
【
図8】細胞のエンドサイトーシス活性に対するCD95変異体の影響。経時的な、すなわち10分後、20分後、および30分後の、処理細胞の相対的トランスフェリン取り込みを示す。略号は
図5と同じ。
【
図9】CD95変異体の細胞死への影響。指定された構築物発現後のT36細胞の生細胞(A)および死細胞(B)の割合を示す。
【
図10】AktおよびEGFRの活性化に対するCD95変異体の影響。タンパク質サンプルは、pAKT(ser 473)、pEGFRおよびpERK、ならびに対応する全(pan)抗体についてウェスタンブロットで分析した:(A)は全Akt中のリン酸化Akt(pAkt)の割合を示し、(B)は全EGFR中のリン酸化EGFR(pEGFR)の割合を示す。略号は
図5と同じ。
【
図11】CD95変異体のアポトーシス(カスパーゼ-8切断)への影響。タンパク質ライセートの切断されたカスパーゼ-8および全カスパーゼ-8レベルを分析した。全カスパーゼは60kDaで観察され、次に切断されたカスパーゼプロドメインp44/p43(p18を含む)、さらにp18サブユニットも別々に観察された。棒グラフは左から右へ、それぞれの場合における全カスパーゼ、p44、p43、およびp18の相対発現を示している。
【実施例】
【0093】
以下の実施例は、単に本発明を説明するものである。これらは、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0094】
実施例1:特定の脂質種の接触占有率(
図1)
接触(距離<0.6 nmと定義する)解析は、それぞれの繰り返しの最後の800ナノ秒にわたって行った。この原子論的分子動力学(MD)シミュレーションには、CD95(PDB ID: 2NA7)の残基171~198のトランケート型をその単量体形態として使用した(Fu et al. (2016), Mol Cell 61: 602-613)。MODELLERソフトウェア(Fiser and Sali (2003), Methods in Enzymology 374:461-491)を用いて3残基(168-170)を追加した。MDシミュレーションのためのCD95構造の準備には、CHARMM-GUIウェブサイトへのタンパク質データバンク(PDB)構造の提出が必要であり、そこで、N末端およびC末端基を中性残基として欠失させるモデル化を行った(Lee et al. (2016), J. Chem. Theory Comput. 12(1):405-413)。
【0095】
CD95を、それぞれ10 mol%のGM2およびGM3スフィンゴ糖脂質を含有する2つの異なるPOPCベースの脂質二重層に挿入した。この系を、まず水和し、適当な数の対イオンで中和した後、実験条件を模倣するために150mM塩化カリウムを添加した。タンパク質、脂質、およびイオンについては、CHARMM36m力場を使用し、水は、標準CHARMM36 TIP3Pモデルを用いて表示された(Huangら(2017)、Nat Methods 14(1):71-73)。
【0096】
すべての系は、最急降下アルゴリズムを用いてエネルギー最小化を行った。最小化の後、NpT条件下での平衡化を行った。このステップでは、タンパク質はすべての次元で拘束され、脂質分子はz軸でのみ拘束された。Nose-Hooverサーモスタットを用いて温度を310Kに維持し、時定数は1.0psとした(Evans and Holian (1985), J. Chem. Phys. 83:4069)。1気圧の圧力は、時定数を5.0 psに設定し、等温圧縮率の値を4.5×10-5 bar-1に設定したBerendsen barostatを用いて一定に保持した(B Berendsen et al. (1984), J. Chem. Phys. 81:3684)。半等方圧力結合スキームを使用した。近傍探索には、カットオフ距離を20ステップとしたVerletスキームを用いた。静電相互作用はPME法を用いて計算した(Darden et al. (1993), J. Chem. Phys. 98:10089)。カットオフ長1.2 nmは静電相互作用およびファンデルワールス相互作用の両者に使用した。すべての方向に周期的境界条件を適用した。生成MDの実行では、すべての拘束を取り除き、Parrinello-Rahman barostat(Nose and Klein (1983), Molecular Physics, 50(5):1055-1076, Taylor & Francis)を使用した。生成MDシミュレーションのための他の入力パラメータは、NpT平衡化の下で使用されたものと同じとした。シミュレーションは、1μsに達するまで2fsの積分時間ステップを用いて行った。
【0097】
すべてのシミュレーションは、GROMACS 2020.2シミュレーションパッケージを用いて行った(Abraham et al. (2015), SoftwareX 1-2:19-25)。すべての解析は、標準的なGROMACSツールおよび社内スクリプトを使用して、(特に断りのない限り)シミュレーション軌道の最後の800 nsについて行った。
【0098】
原子論的シミュレーションによって予測されたCD95の膜貫通ドメイン(TMD)上の脂質相互作用部位、および対応する脂質パートナーを、
図1のヒートマップに示す。N末端残基R171およびC末端残基R192/K193は、CD95の脂質-タンパク質相互作用の選択性に不可欠であると予想された。脂質の種類に関して、ガングリオシドGM2およびGM3、ならびにスフィンゴミエリンは外葉においてCD95に結合する。PI(4,5)P
2およびPI(3,4,5)P
3は膜の内葉においてCD95に結合する。
【0099】
実施例2:脂質プロファイル解析
CRISPR/Cas9を用いてCD95KO細胞を作製した。CD95KOおよびその親細胞を用いて全脂質を抽出し、それをさらに定量的な質量分析法による脂質分析に供した。リピドミクス解析の結果、ホスファチジルコリン(PC)、コレステロール(Chol)、ならびにスフィンゴミエリン(SM)およびジヘキソシルセラミド(Hex2Cer)などのスフィンゴ脂質など、特定の脂質種における有意な変化が明らかになった。具体的には、CD95がノックアウトされると、SMのレベルは増加し、Hex2Cerは減少した。これらの観察結果は、他のGBM患者由来の細胞でも確認された。このように、CRISPR/Cas9ターゲティングによるCD95の除去は、グローバルな脂質組成に対するCD95のこれまで知られていなかった制御的影響を明らかにする。
【0100】
実施例3:CD95-KO細胞におけるシグナル伝達経路(
図2)
T98G CD95KO細胞を実施例2に記載したように作製した。T98G CD95KO細胞では、pAKTの基礎レベルはwt細胞より低かった。それにもかかわらず、EGFは、CD95KO細胞においてwt細胞よりも高いpEGFRおよびppERK1/2レベルを生じさせた。総AKT、ERK1/2、およびEGFRシグナルは、wt細胞およびCD95KO細胞間で同等であった。細胞はインターフェロンγ(IFNγ)で17時間処理し、CD95の発現を高めた。未処理の細胞をコントロールとして使用した。ローディングコントロールとしてアクチンを用いた。刺激時間(分)およびリガンドの濃度は図に示した。
【0101】
注目すべきは、CD95KO細胞がより低いAKTリン酸化を示したことである。これは、EGFに反応してEGFRのリン酸化が亢進することによって補われていると思われた。
【0102】
実施例4:(
図3)
グライコミクス(糖鎖の網羅的解析)データにおいて、GM2はCD95KO細胞では消失しており、原子論的シミュレーションからR171残基に優先的に結合する脂質パートナーに相当することが判明した。この部位をグルタミンに変異させた(R171Q、
図3の"mut")。細胞をトランスフェクトして野生型(wt)または変異型CD95を過剰発現させ、アポトーシス誘導についてCD95L支持膜上で解析した。
【0103】
図3に示すように、GM2と相互作用するアミノ酸(
図1A))を相互作用の少ないアミノ酸(
図1B))に置換すると、CD95L刺激後にアポトーシスが大幅に増加した。注目すべきことに、この細胞はそれぞれのCD95変異体を過剰発現する野生型CD95発現細胞であり、すなわち、アポトーシス誘導は、細胞内に野生型(wt)CD95が存在するにもかかわらずR171Q変異タンパク質により増加した。
【0104】
実施例5:三重変異TM領域(3M)の脂質相互作用のモデリング(
図4)
図4C)は、野生型と比較して3M変異体ではPI(4,5)P
2-CD95相互作用が、変異のうち2つ(R192E, K193E)が位置しているレベルにおいて特に、劇的に減少していることを明確に示す。GM3-CD95の場合(
図4B))、WTと3Mの間に有意差はない。
図4D)は総接触数を示し、
図4A)~C)の結果を基本的に裏付けるものである。注目すべきことに、PI(4,5)P
2分子がCD95と相互作用すると、長いアシル鎖(18:0 / 20:4)がタンパク質を取り囲み、もう一方のタンパク質の末端を膜の疎水性コアに押し込む。このことが、R171の周囲の水との接触を減少させ、POPCの負のP原子との接触を増加させるが、それによってR171はGM3の頭部にアクセスしにくくなる。
【0105】
実施例6:細胞の膜組成に対するCD95変異体の影響(
図5)。
リピドミクス・プロファイリングの2週間前に、レンチウイルスベクターを用いて指定の変異体を過剰発現させた。特に二重変異体または三重変異体を発現させた細胞、ならびにCD95変異細胞は、膜脂質組成に明確な変化を示した(
図5A)。注目すべきは、単一変異体および二重変異体は同じようなクラスターを形成したが、三重変は、驚くべきことに、KO細胞と非常に類似したクラスター形成を示した。また、三重変異型CD95を発現している細胞では平均細胞サイズが減少しており、CD95 KO細胞と非常に類似していた。
【0106】
実施例7:細胞周期への影響(
図6)
細胞周期を評価する2週間前に、レンチウイルスベクターを用いて指定の変異体を過剰発現させた。
図6に示すように、二重および三重変異体は細胞にG1停止を引き起こした。
【0107】
実施例8:細胞シグナル伝達への影響(
図7)
処理の2週間前にレンチウイルスベクターを用いて、指定の変異体を過剰発現させた。細胞を未処理のままとするか(co)、または20ng/mlのCD95リガンドもしくは100ng/mlのEGF-Lに10分間曝露し、全AktおよびEGFRの中でのリン酸化割合をウェスタンブロットで測定した。
図7に示すように、三重変異体を過剰発現している細胞は、Aktリン酸化(Ser 473)の減少、およびEGFRリン酸化の増加を示す。
【0108】
実施例9:エンドサイトーシス(
図8)
トランスフェリン取り込みアッセイによりエンドサイトーシス活性を評価する2週間前に、レンチウイルスベクターを用いて、指定の変異体を過剰発現させた。トランスフェリン取り込みは、フローサイトメトリーにより、指定された時点のあとに評価した。CD95 KO細胞だけでなく、単一変異体または三重変異体の過剰発現細胞も、トランスフェリン取り込みの有意な減少を示した。
【0109】
実施例10:CD95変異体の細胞死への影響(
図9)
T36患者由来の膠芽腫細胞を6ウェルプレートに蒔いた。翌日、以下のAAVを用いて細胞に形質導入した(10.000Vg/細胞):CD95-WT(WT)、CD95-単一変異体(SM)、CD95-二重変異体(DM)、CD95-三重変異体(TM)、YFP(モック、AAV導入の内部コントロールとして)。形質導入後72時間経過してから、形質導入された細胞の生存/死滅率をトリパンブルーの取り込みによって決定した。全ての変異体が、死細胞の割合を少なくとも約40%まで増加させた。
【0110】
実施例11:Akt、EGFRおよびアポトーシスの活性化に対するCD95変異体の影響(
図10および11)
T98G細胞を血清飢餓状態にし、コントロール(Co)細胞は未処理のまま、それ以外は100ng/mlのEGF-Lで10分間刺激した。タンパク質サンプルは、pAKT(ser 473)、pEGFRおよびpERK、ならびにタンパク質の全量(pan抗体)について、ウェスタンブロットで分析した。タンパク質の相対発現を計算し、リン酸化タンパク質を総タンパク質に対して標準化した。CD95-KOおよび三重変異体(TM)はAKT活性化レベルの減少を示すが、EGFR活性化は増加することが判明した(
図10)。TMDは指定の1つまたは複数の変異を有するCD95である。タンパク質ライセートは、切断されたカスパーゼおよび総カスパーゼのレベルについても分析した(
図11)。EGFR刺激により、特にTMで顕著なカスパーゼ8の切断が観察された。
【0111】
非標準文献
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【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-07-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)アミノ酸配列RSNLGWLCLLLLPIPLIVWVKRK(配列番号1)と少なくとも70%同一なアミノ酸配列;および
(ii)(i)のアミノ酸配列の1位、2位、3位、19位、22位および23位からなる一群から選択される少なくとも1つの位置における、アミノ酸の非同一アミノ酸への置換
を含むエフェクターポリペプチド。
【請求項2】
前記アミノ酸置換が、R1E、R1Q、R1A、S2A、N3A、R1E/N3A、R1A/N3A、W19A、R22A、R22E、K23A、K23E、R22A/K23A、R22E/K23E、W19A/R22A/K23A、W19A/R22E/K23E、およびそれらの任意の組み合わせからなる一群から選択される、請求項1に記載のエフェクターポリペプチド。
【請求項3】
前記アミノ酸置換が、R1E、R1Q、またはR1Aである、請求項
1に記載のエフェクターポリペプチド。
【請求項4】
少なくとも2つ、実施形態によっては少なくとも3つのアミノ酸置換を含む、請求項
1に記載のエフェクターポリペプチド。
【請求項5】
前記アミノ酸置換が、R1E、R22E、およびK23Eからなる一群から選択される、請求項
1に記載のエフェクターポリペプチド。
【請求項6】
前記エフェクターポリペプチドが、アミノ酸配列X
1X
2X
3LGWLCLLLLPIPLIVX
4VKX
5X
6(配列番号2)を含み、ここで
X
1はE、Q、A、N、G、V、L、I、S、T、DおよびMから選択されるが、好ましくは、EまたはQである;
X
2は、A、G、V、LおよびIから選択される;
X
3は、A、G、V、L、I、Q、N、D、E、S、T、M、H、K、およびRから選択される;
および/または
X
4~X
6は、独立して、E、A、G、V、L、I、Q、N、D、S、T、およびMから選択される
請求項
1に記載のエフェクターポリペプチド。
【請求項7】
前記のアミノ酸置換が、R1E、R22E、およびK23Eである、請求項
1に記載のエフェクターポリペプチド。
【請求項8】
前記エフェクターポリペプチドが、アミノ酸配列RSNLGWLCLLLLPIPLIVWVKEE(配列番号33)を含む、請求項
1に記載のエフェクターポリペプチド。
【請求項9】
前記エフェクターポリペプチドが、アミノ酸配列ESNLGWLCLLLLPIPLIVWVKEE(配列番号34)を含む、請求項
1に記載のエフェクターポリペプチド。
【請求項10】
前記エフェクターポリペプチドが、アミノ酸配列ESNLGWLCLLLLPIPLIVWVKRK(配列番号3)、アミノ酸配列QSNLGWLCLLLLPIPLIVWVKRK(配列番号4)、またはアミノ酸配列ASNLGWLCLLLLPIPLIVWVKRK(配列番号5)を含む、請求項
1に記載のエフェクターポリペプチド。
【請求項11】
前記エフェクターポリペプチドが、N末端配列として配列番号6~10のアミノ酸配列のうち少なくとも1つ;および/またはC末端配列として配列番号11~13のアミノ酸配列のうち少なくとも1つをさらに含む、請求項
1に記載のエフェクターポリペプチド。
【請求項12】
前記エフェクターポリペプチドが、配列番号32、配列番号31、配列番号30、配列番号14、または配列番号15のアミノ酸を含み、好ましくは配列番号32、配列番号31、配列番号30、配列番号14、または配列番号15のアミノ酸からなる、請求項
1に記載のエフェクターポリペプチド。
【請求項13】
請求項
1に記載のエフェクターポリペプチドをコードする核酸配列を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項14】
請求項
1に記載のエフェクターポリペプチド
を含む、宿主細胞。
【請求項15】
請求項13に記載のポリヌクレオチドを含む、宿主細胞。
【請求項16】
(A)請求項1~12のいずれかに記載のエフェクターポリペプチド、請求項13に記載のポリヌクレオチド、および/または請求項
14もしくは15に記載の宿主細胞からなる一群から選択される活性薬剤、および(B)賦形剤、を含む、医薬組成物。
【請求項17】
前記賦形剤が、ウイルス粒子および/または脂質ベシクルである、請求項
16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
がん、炎症性疾患、または急性もしくは慢性の神経変性疾患を治療および/または予防するための
医薬組成物であって、請求項1~12のいずれか1つに記載のエフェクターポリペプチド、請求項13に記載のポリヌクレオチド
、および/または請求項
14もしくは15に記載の宿主細胞
を含む、医薬組成物。
【請求項19】
前記がんが、CD95を発現するがん、および/または高度の免疫浸潤を示すがんであり、好ましくは脳腫瘍、より好ましくは膠芽腫、または膵がん、好ましくは膵管腺がん(PDAC)である、
請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
宿主細胞においてアポトーシスを誘導するための
医薬組成物であって、請求項1~12のいずれか1つに記載のエフェクターポリペプチド、請求項13に記載のポリヌクレオチド、
および/または請求項
14もしくは15に記載の宿主細胞
を含む、医薬組成物。
【国際調査報告】