(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】強制振動法(FOT)オシロメトリを用いて呼吸機能を評価するためのシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/08 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
A61B5/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531211
(86)(22)【出願日】2022-11-23
(85)【翻訳文提出日】2024-07-19
(86)【国際出願番号】 US2022080456
(87)【国際公開番号】W WO2023097299
(87)【国際公開日】2023-06-01
(32)【優先日】2021-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524194447
【氏名又は名称】レスピラトリー サイエンシズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】コール,ジェシー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】リヒター,パトリック エー.
(72)【発明者】
【氏名】クヌーセル,ロバート ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー,アンドリュー ティー.
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038SS02
4C038SS04
4C038SU06
4C038SX01
(57)【要約】
強制振動法(FOT)オシロメトリを用いて個人の呼吸機能を評価するためのシステムは、低振幅のオフセット圧力の上にFOT圧力振動を加えるように制御された送風機を含む。コントローラは、患者に供給される呼吸用空気の目標時間変化圧力プロファイルを維持するために、送風機の回転速度を継続的に調整する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
強制振動法オシロメトリを用いて個人の呼吸機能を評価するためのシステムであって、
ケーシングと、前記ケーシング内で回転するために取り付けられた羽根車と、動作中、前記羽根車を回転させるように構成されたモータとを備える送風機と、
換気インタフェースと、
前記送風機および前記換気インタフェースと流体連通する通路を画定する連結部材と、
前記モータに通信可能に結合され、前記送風機が前記通路内で時間変化する圧力波形を生成するように前記羽根車の回転速度設定値のセットを満たすために前記羽根車の回転速度を制御するように構成された制御ユニットであって、前記時間変化する圧力波形は、前記換気インタフェースを介して前記患者の呼吸流量に重畳される正弦波的に変化する圧力変動と、前記システムの動作中に前記通路内で正の空気圧を維持するように選択されたオフセット圧力とを含む、制御ユニットと
を備えるシステム。
【請求項2】
前記制御ユニットは、前記通路での所望の空気圧と、前記羽根車の前記回転速度と前記送風機によって生成される空気圧との間の既知の関係とに基づいて制御入力を生成することによって、前記回転速度設定値のセットを満たすために前記羽根車の前記回転速度を制御するようにさらに構成され、
前記モータは、前記制御入力に応答して前記羽根車の前記回転速度を変化させるように構成される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記制御入力は、単一周波数信号である、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記制御入力は、多重周波数信号である、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記コントローラは、少なくとも第1および第2の信号を結合することによって前記制御入力を生成するようにさらに構成される、請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1の信号の振幅、位相、および波形は、前記第2の信号のそれぞれの振幅、位相、波形と異なる、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記オフセット圧力は、約0.5cmH
2O~約40cmH
2Oである、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記オフセット圧力は実質的に一定である、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記時間変化する圧力波形の最大圧力振幅は、約0.1cmH
2O~約2cmH
2Oである、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記連結部材内の前記通路および前記システムの周りの周囲環境と流体連通する出口ポートをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記出口ポートは、約0~約3インチの長さを有する、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記通路および前記出口ポートは、前記換気インタフェースと前記システムの周りの前記周囲環境との間の空気流経路を形成し、前記システムは、前記出口ポート内に位置し、前記空気流経路からの、および前記周囲環境への空気の通過を部分的に制限するように構成された障害物をさらに備える、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記障害物は、内部に1または複数のオリフィスが形成されたプレート、およびメッシュスクリーンの少なくとも1つである、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記出口ポートは、前記個人の通常の換気呼吸に対する前記システムの全抵抗が約1cmH
2O/L/s以下であるように構成される、請求項10に記載のシステム。
【請求項15】
前記制御ユニットは、前記通路内で疑似ランダムノイズを生成するために前記羽根車の前記回転速度を制御するようにさらに構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記制御ユニットは、前記通路内の前記空気の測定された圧力および測定された体積流量に基づいて、前記個人の呼吸器系のインピーダンスを計算するようにさらに構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記換気インタフェースは、マウスピース、フェイスマスク、気管内チューブ、気管チューブ、気管切開アダプタ、チューブアダプタ、および標準的な換気インタフェースへの連結部の少なくとも1つを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記制御ユニットは、マイクロコントローラを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記マイクロコントローラは、モータコントローラを備え、
前記制御ユニットは、前記モータコントローラに通信可能に結合されたゲートドライバと、前記ゲートドライバに通信可能に結合され、前記送風機の前記モータに電流を供給するように構成された1または複数の電界効果トランジスタとをさらに備える、
請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記制御ユニットは、前記羽根車の前記回転速度設定値のセットを満たすよう前記羽根車の前記回転速度を制御するために、第1のフィードバックループを実施するようにさらに構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項21】
前記制御ユニットは、前記通路内の空気に関する目標圧力を達成するよう前記1または複数の回転速度設定値を更新するために、第2のフィードバックループを実施するようにさらに構成される、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記制御ユニットは、前記1または複数の回転速度設定値を前記一連の回転速度設定値における次の値に更新すること、および前記個人の呼吸による前記通路内の前記空気の実際の圧力の変化を補償することの少なくとも1つのために、前記第2のフィードバックループを実施するようにさらに構成される、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記制御ユニットは、前記通路内の前記空気に関する前記目標圧力と、前記通路内の前記空気の実際の圧力の測定値との差に基づいて、前記第2のフィードバックループを更新するようにさらに構成される、請求項21に記載のシステム。
【請求項24】
前記第1のフィードバックループの更新頻度は、前記第2のフィードバックループの更新頻度よりも高い、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記第2のフィードバックループの前記更新頻度は、前記羽根車が前記設定値の各々で安定することが可能であるために十分である、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
強制振動法オシロメトリを用いて個人の呼吸機能を評価するための方法であって、
前記個人との間で呼吸用空気を方向付けるように構成された換気インタフェースを提供することと、
前記換気インタフェースと流体連通する通路を画定する連結部材を提供することと、
前記通路内に実質的に一定の圧力オフセットを生成することと、
前記通路内の前記実質的に一定の圧力オフセットの生成と同時に、前記通路内に時間変化する圧力波形をさらに生成することと
を備える方法。
【請求項27】
前記時間変化する圧力波形は、強制振動法波形である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記連結部材の前記通路と流体連通する送風機を提供することと、
前記通路内に前記圧力オフセットおよび前記時間変化する圧力波形を生成するために前記送風機の羽根車の速度を制御することと
をさらに備える、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、35U.S.C.119(e)の下で、参照によってその内容の全体が本明細書に組み込まれる2021年11月23日に出願された米国仮特許出願第63/282,409号の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
強制振動法(FOT)オシロメトリは、肺および気道の力学特性を測定するための呼吸オシロメトリの方法である。FOTは、喘息、COPD、およびその他の呼吸器疾患を診断するために使用されることが多い。FOTは、患者の通常の換気呼吸に、正弦波的に変化する圧力波形の形態で刺激を重畳することを含む。FOT圧力波形に対する患者の呼吸器系の反応は、患者の換気呼吸の際に生じる空気流量および圧力波形の変化を測定することによって決定される。これらの測定値に基づいて、呼吸器系のインピーダンスを計算することができ、医師および他の臨床医が肺機能を評価し呼吸器疾患を診断する際に助けとなり得る。
【0003】
FOT圧力波形は、典型的には、低周波数かつ低振幅の正弦波的に変化する圧力変動である。たとえば、典型的なFOT圧力波形は、約5Hz~約50Hzの周波数および約0.1cmH2O~約2cmH2Oのピーク対ピーク振幅を有し得る。これらの特徴を有する圧力波形は、そのような低周波数、低振幅の圧力変動を確実に生成するために必要な精度および安定性を有する送風機の回転質量を制御する難しさにより、たとえば送風機などの回転機械を用いて生成することが困難である。したがって、FOT診断を行うために使用されるシステムおよびデバイスは、通常、スピーカまたは振動メッシュを利用してFOT圧力波形を生成する。
【発明の概要】
【0004】
開示される技術の一態様において、強制振動法オシロメトリを用いて個人の呼吸機能を評価するためのシステムは、ケーシングと、ケーシング内で回転するために取り付けられた羽根車と、動作中、羽根車を回転させるように構成されたモータとを有する送風機を含む。またシステムはまた、換気インタフェースと、送風機および換気インタフェースと流体連通する通路を画定する連結部材も含む。
【0005】
システムは、モータに通信可能に結合され、送風機が通路内で時間変化する圧力波形を生成するように羽根車の回転速度設定値のセットを満たすために羽根車の回転速度を制御するように構成された制御ユニットをさらに含み、時間変化する圧力波形は、換気インタフェースを介して患者の呼吸流量に重畳される正弦波的に変化する圧力変動と、システムの動作中に通路内で正の空気圧を維持するように選択されたオフセット圧力とを含む。
【0006】
開示される技術の別の態様において、制御ユニットは、通路での所望の空気圧と、羽根車の回転速度と送風機によって生成される空気圧との間の既知の関係とに基づいて制御入力を生成することによって、回転速度設定値のセットを満たすために羽根車の回転速度を制御するようにさらに構成される。モータは、制御入力に応答して羽根車の回転速度を変化させるように構成される。
【0007】
開示される技術の別の態様において、制御入力は、単一周波数信号である。
【0008】
開示される技術の別の態様において、制御入力は、多重周波数信号である。
【0009】
開示される技術の別の態様において、コントローラは、少なくとも第1および第2の信号を結合することによって制御入力を生成するようにさらに構成される。
【0010】
開示される技術の別の態様において、第1の信号の振幅、位相、および波形は、第2の信号のそれぞれの振幅、位相、波形と異なる。
【0011】
開示される技術の別の態様において、オフセット圧力は、約0.5cmH2O~約40cmH2Oである。
【0012】
開示される技術の別の態様において、オフセット圧力は実質的に一定である。
【0013】
開示される技術の別の態様において、時間変化する圧力波形の最大圧力振幅は、約0.1cmH2O~約2cmH2Oである。
【0014】
開示される技術の別の態様において、システムは、連結部材内の通路およびシステムの周りの周囲環境と流体連通する出口ポートをさらに含む。
【0015】
開示される技術の別の態様において、出口ポートは、約0~約3インチの長さを有する。
【0016】
開示される技術の別の態様において、通路および出口ポートは、換気インタフェースとシステムの周りの周囲環境との間の空気流経路を形成し、システムは、出口ポート内に位置し、空気流経路からの、および周囲環境への空気の通過を部分的に制限するように構成された障害物をさらに含む。
【0017】
開示される技術の別の態様において、障害物は、内部に1または複数のオリフィスが形成されたプレート、およびメッシュスクリーンの少なくとも1つである。
【0018】
開示される技術の別の態様において、出口ポートは、個人の通常の換気呼吸に対するシステムの全抵抗が約1cmH2O/L/s以下であるように構成される。
【0019】
開示される技術の別の態様において、制御ユニットは、通路内で疑似ランダムノイズを生成するために羽根車の回転速度を制御するようにさらに構成される。
【0020】
開示される技術の別の態様において、制御ユニットは、通路内の空気の測定された圧力および測定された体積流量に基づいて、個人の呼吸器系のインピーダンスを計算するようにさらに構成される。
【0021】
開示される技術の別の態様において、換気インタフェースは、マウスピース、フェイスマスク、気管内チューブ、気管チューブ、気管切開アダプタ、チューブアダプタ、および標準的な換気インタフェースへの連結部の少なくとも1つを含む。
【0022】
開示される技術の別の態様において、制御ユニットは、マイクロコントローラを含む。
【0023】
開示される技術の別の態様において、マイクロコントローラは、モータコントローラを備え、制御ユニットは、モータコントローラに通信可能に結合されたゲートドライバと、ゲートドライバに通信可能に結合され、送風機のモータに電流を供給するように構成された1または複数の電界効果トランジスタとをさらに備える。
【0024】
開示される技術の別の態様において、制御ユニットは、羽根車の回転速度設定値のセットを満たすために羽根車の回転速度を制御するために、第1のフィードバックループを実施するようにさらに構成される。
【0025】
開示される技術の別の態様において、制御ユニットは、通路内の空気に関する目標圧力を達成するために1または複数の回転速度設定値を更新するために、第2のフィードバックループを実施するようにさらに構成される。
【0026】
開示される技術の別の態様において、制御ユニットは、1または複数の回転速度設定値を一連の回転速度設定値における次の値に更新すること、および個人の呼吸による通路内の空気の実際の圧力の変化を補償することの少なくとも1つのために、第2のフィードバックループを実施するようにさらに構成される。
【0027】
開示される技術の別の態様において、制御ユニットは、通路内の空気に関する目標圧力と、通路内の空気の実際の圧力の測定値との差に基づいて、第2のフィードバックループを更新するようにさらに構成される。
【0028】
開示される技術の別の態様において、第1のフィードバックループの更新頻度は、第2のフィードバックループの更新頻度よりも高い。
【0029】
開示される技術の別の態様において、第2のフィードバックループの更新頻度は、羽根車が設定値の各々で安定することが可能であるために十分である。
【0030】
開示される技術の別の態様において、強制振動法オシロメトリを用いて個人の呼吸機能を評価するための方法は、個人との間で呼吸用空気を方向付けるように構成された換気インタフェースを提供することと、換気インタフェースと流体連通する通路を画定する連結部材を提供することとを含む。方法は、通路内に実質的に一定の圧力オフセットを生成することと、通路内の実質的に一定の圧力オフセットの生成と同時に、通路内に時間変化する圧力波形をさらに生成することとをさらに含む。
【0031】
開示される技術の別の態様において、時間変化する圧力波形は、強制振動法波形である。
【0032】
開示される技術の別の態様において、方法は、連結部材の通路と流体連通する送風機を提供することと、通路内に圧力オフセットおよび時間変化する圧力波形を生成するために送風機の羽根車の速度を制御することとをさらに含む。
【0033】
以下の図面は、本開示の特定の実施形態を例示するものであり、本開示の範囲を限定するものではない。図面は、一定の縮尺ではなく、以下に示す詳細な説明における記載と併せて使用することが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】強制振動法オシロメトリを用いて患者の呼吸機能を評価するためのポータブルハンドヘルドシステムの側面図である。
【
図3】
図1および
図2に示すシステムの様々な電気部品および電子部品のブロック図である。
【
図4】
図1~4に示すシステムの送風機の斜視図である。
【
図6A】
図1~5に示すシステムによって生成され得る単一周波数圧力波形を示す。
【
図6B】
図1~5に示すシステムによって生成され得る多重周波数圧力波形を示す。
【
図6C】
図1~5に示すシステムによって生成され得る疑似ランダムノイズ波形を示す。
【
図7】
図6Cに示す疑似ランダムノイズ波形を生成するための送風機速度設定値の波形を生成するためのプロセスを示すフロー図である。
【
図8】
図1~5に示すシステムの様々な電気部品および電子部品のブロック図である。
【
図9】
図1~5および
図8に示すシステムの概略図であり、システムによって実施される2つのフィードバックループを示す。
【
図10】FOT波形を生成するための第1および第2のフィードバックループを実施する、
図1~5、
図8、および
図9に示すシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下の説明は、本開示の特定の実施形態を例示するものであり、本開示の範囲を限定するものではない。図面は、一定の縮尺ではなく、本明細書において提供される説明と併せて使用することが意図されている。以下、本開示の実施形態が、添付図面と併せて説明される。
【0036】
本文書で使用される場合、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈が別段の明示をしない限り、複数形の言及を含む。別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本文書で使用される場合、「備えている」(または「備える」)という用語は、「含んでいる(または含む)が、それに限定されない」ことを意味する。本文書で使用される場合、「典型的な」および「たとえば」という用語は、「例として」を意味することが意図されており、特定の典型的な事項が好適または必要であることを示すことは意図されていない。
【0037】
図1~5は、強制振動法(FOT)オシロメトリを用いて呼吸機能を評価するためのポータブルハンドヘルドシステム10を示す。システム10は、送風機11と、制御ユニット12とを備える。送風機11は、
図1、
図2、
図4、および
図5に示され、制御ユニット12は、
図3および
図8~10に示される。送風機11は、肺の太い気道および末梢気道を通る患者または他の個人の通常の換気呼吸に、正弦波的に変化する圧力変動を重畳する空気加振源として機能する。制御ユニット12は、送風機11が所望の時間変動圧力プロファイルまたはFOT圧力波形を生成するように、送風機11の速度を制御するように構成される。
【0038】
一般に、FOT圧力波形は、少なくとも1つの周波数を有することが必要であり、少なくとも1つの正弦波信号から生成される必要がある。複数の周波数を含み複数の正弦波信号に基づく、より高度なFOT圧力波形は、同じ呼吸における呼吸器系の挙動を評価するために使用され得る。本明細書で使用される場合、「圧力波形」という用語は、送風機11、または正弦波的に変化する圧力振動を生成することが可能な他の装置によって生成される、経時的な圧力変動を意味することが意図される。波形は、単一の制御入力として送風機11に提供された1つの信号に基づいて、または単一の制御入力として送風機11に提供された、各信号が周期的または非周期的であってよく1または複数の周波数で周波数コンテンツを提供し得る2つ以上の信号の組み合わせまたは合算に基づいて、送風機11または他の装置によって生成され得る。
【0039】
制御ユニット12は、患者の通常の換気呼吸にFOT圧力波形が重畳された場合の患者によって吸入および吐出される空気の圧力および体積流量の測定値によって示される、FOT圧力波形に対する患者の肺の応答を処理するようにさらに構成される。具体的には、制御ユニット12は、これらの測定値に基づいて、患者の呼吸器系の機械インピーダンスを決定する。患者の呼吸器系の機械インピーダンスを知ることは、たとえば喘息およびCOPDなどの症状を診断および治療する際に臨床医を支援し得る。後述するように、システム10の代替実施形態において、患者の呼吸器系の機械インピーダンスの計算は、システム10から遠隔に位置する、制御ユニット12以外の制御ユニットによって行われ得る。
【0040】
図1および
図2を参照すると、システム10は、マウスピース14の形態の換気インタフェースと、連結部材16とをさらに備える。連結部材16は、送風機11およびマウスピース14に物理的に結合され、送風機11をマウスピース14と流体連通させる内部通路17を画定する。連結部材16は、送風機11によって生成されたFOT圧力波形をマウスピース104に向け、それによってFOT圧力波形は、吸気および呼気における患者の正常な呼吸流量に重畳され得る。
【0041】
マウスピース14は、診断プロセス中に患者の口内に載置され、患者は、連結部材16を介してマウスピース14に送達される空気を吸入し、マウスピース14を介して連結部材16内に吐出する。マウスピース14は、マウスピース14と患者の口唇との間に気密シールを形成するように構成されるので、患者の口を介して吸入および吐出される空気の実質的に全てが、マウスピース14を通過して連結部材16内に入る。(診断プロセス中、患者の鼻呼吸は通常遮断され、患者によって吸入および吐出される空気の実質的に全てが、マウスピース14および連結部材16を通過する。)マウスピース14は、ウイルス/細菌フィルタ(不図示)を備えてよい。
【0042】
換気インタフェースは、患者の連結部材16への呼気および連結部材16からの吸気を可能にするために適した任意の種類のデバイスであってよく、システム10の代替実施形態は、マウスピース14以外の換気インタフェースを含み得る。たとえば、換気インタフェースは、フェイスマスク、気管内チューブ、気管チューブ、気管切開アダプタ、チューブアダプタなどであってよい。別の例として、換気インタフェースは、ISO5637規格または他の規格に基づく標準的な換気インタフェースへの連結部であってよい。
【0043】
連結部材16は、剛性ポリマー材料から形成され得る。連結部材16内の内部通路17は、たとえば円形、楕円形、または長方形の断面を有してよい。通路17は、システム10の正常動作中、通路17内の気流が層流に維持され、通路17内のデッドスペースおよび流れの障害物が最小限であるか、存在しないように構成され得る。連結部材16の代替実施形態は、連結部材16とは異なる形状、サイズ、相対的比率などを有してよく、半剛性および非剛性材料から形成されてよい。また、連結部材16は、他の代替実施形態において、換気インタフェースまたは送風機11と一体的に形成され、または他の方法で換気インタフェースまたは送風機11の一部を成してよい。
【0044】
連結部材16は、
図1および
図2に示すように、インピーダンスポートまたは出口ポート18を含む。出口ポート18は、連結部材16内の内部通路17と、システム10の周囲環境との間の経路を提供する。出口ポート18によって提供された経路は、患者が連結部材16およびマウスピース14を介して呼吸することを可能にする。出口ポート18は、送風機11によって生成されるFOT圧力波形の散逸を最小限にしながら、患者が正常に呼吸できるようにサイズ決定、配置、および構成される。
【0045】
出口ポート18は、インピーダンスポートとして設計および構成される。「インピーダンスポート」という用語は、本明細書で使用される場合、「イナータンスポート」とは異なる。イナータンスポートは、一般に、FOT源からの高周波数振動流がユーザに通過することを可能にしながら、呼吸流の呼吸頻度での周囲環境への通過を可能にするローパスフィルタとして、ラウドスピーカベースのFOTシステム内で使用される。イナータンスポートは通常、所望のイナータンス負荷を生成するために十分な空気量を供給するために、長いチューブとして構成される。
【0046】
出口ポート18は、主に抵抗性、すなわち反応性よりも抵抗性が高いインピーダンスを有する。この抵抗により、出口ポート18は、ローパスフィルタとして作用することなく、システム10内の振動流および呼吸流の減衰要素として機能する。振動流の供給源として、たとえば送風機11などの送風機を使用することは、ローパスフィルタを使用することなく十分なレベルの振動流がユーザに送達され得ることを確実にするために役立つ。システム10の圧力センサ20によって測定されるように、ユーザに送達される所望の最大空気圧を設定する際、送風機11の動作設定は、出口ポート18を通って失われ得る振動流を補償するように調整され得る。
【0047】
高いイナータンスは、インピーダンスポート、すなわち出口ポート18にとって必要な特徴ではない。したがって、出口ポート18は、典型的なイナータンスポートで使用されるチューブよりも実質的に短くてよい。たとえば、出口ポート18の長さは、0~3インチの短さであってよく、システム10のためのハンドヘルド形状因子を助長するために役立ち得る。特定の用途のために最適または所望のインピーダンスは、システム10のインピーダンスを変化させるために、出口ポート18の直径を調整すること、および/または出口ポート18内に障害物または閉塞要素19を配置することによって達成され得る。閉塞要素19は、
図1において目視できる。
【0048】
ユーザと周囲環境との間の呼吸経路に低い抵抗をもたらすことによって、ユーザがシステム10を介して呼吸するために必要な作業を低減することが望ましい。この抵抗は、システム10の空気流センサ22およびウイルス/細菌フィルタ(装備されている場合)による直列抵抗と、送風機11および出口ポート18の並列抵抗とを含む。送風機11の抵抗は、送風機11が製造されると調整することが困難であり得るが、出口ポート18の抵抗は、より容易に調整され得る。したがって、出口ポート18のインピーダンスは、患者の通常の換気呼吸に対するシステム10の全抵抗が低くなるように、たとえば約1cmH2O/L/s未満であるように設定され得る。
【0049】
インピーダンスポート、すなわち出口ポート18のインピーダンスは、システム10内の空気流経路によって周囲環境への空気の通過を制限するために、出口ポート18内に閉塞要素19を配置することによって設定され得る。たとえば、閉塞要素19は、たとえばテネシー州スパータのComponent Supply Company of Sparta、ノースカロライナ州カーナーズビルのTex Tech Industries,Inc.、およびイタリア国アッピアーノ・ジェンティーレのSaati S.p.A.から入手可能な織製ナイロンまたはステンレス鋼スクリーンの形状のメッシュであってよい。あるいは、閉塞要素19は、たとえばコネチカット州モンローのO‘Keefe Controls Co.、ニューハンプシャー州ナシュアのPfeiffer Vacuum Inc.、Werner Solkenから入手可能な、1または複数の小さな固定直径の開口部が空気流経路内に配置されたオリフィスプレートであってよい。
【0050】
圧力センサ20および空気流センサ22は、制御ユニットに通信可能に結合される。圧力センサ20および空気流センサ22は、
図1~3に示される。圧力センサ20および空気流センサ22は、連結部材16内の内部通路17と流体連通しており、圧力センサ20および空気流センサ22は、患者によって吸入および吐出される空気のそれぞれの圧力および体積流量を感知することができる。より具体的には、圧力センサ20および空気流センサ22は、送風機11によって空気流に導入されるFOT圧力波形に応答する空気流の圧力および体積流量の変化を測定することができる。
【0051】
圧力センサ20は、差圧センサである。圧力センサ20は、連結部材16に取り付けられ得る。あるいは、圧力センサ20は、
図1に示すようにチューブまたは配管によって連結部材16に連結され得る。圧力センサ20と連結部材16の内部通路17との間の流体連通を容易にする連結部材16の開口部は、
図1および
図2に見られるように、マウスピース14に隣接する連結部材16の端部に近接した位置にある。圧力センサ20は、システム10の通常の動作中に連結部材16内に存在する圧力の範囲内での使用に適した任意の種類の差圧センサであってよい。
【0052】
空気流センサ22は、ダイナミックインピーダンス呼吸気流計であってよく、呼吸気流スクリーン上に結露が形成されることを防ぐための加熱ワイヤを有する。代替実施形態において、他の適切な種類の空気流センサが使用され得る。
【0053】
図3~5および
図10を参照すると、送風機11は、ケーシング24、ケーシング24内で回転するために取り付けられた羽根車26、およびケーシング24に対して羽根車26を回転させるように構成された3相電気モータ28を備える。羽根車26のブレードは、「リスかご」または「遠心」構成を有してよい。送風機11は、たとえばMoog Inc.から入手可能なAIRMAX(登録商標)P28-AC-ID送風機、またはASPINAから入手可能な5kPa CPAP送風機などにおいて、ブラシレスAC(BLAC)3相非同期電気モータを備えてよい。あるいは、送風機11は、たとえばMoog Inc.から入手可能なAIRMAX(登録商標)P45シリーズのファンおよび送風機、またはMicronel AGから入手可能なモデルU71MX-024KX-4小型ラジアル送風機などにおいて、ブラシレスDC(BLDC)電気モータを備えてよい。代替として、これらの製造会社および他の製造会社製の他の種類の送風機が使用され得る。
【0054】
図4および
図5を参照すると、「遠心」送風機11は、送風機11のケーシング24の外側から、ケーシング24に垂直に配向された入口ポート32を通して周囲空気を引き込むように構成される。送風機11の出口ポート33は、送風機11の回転羽根車26中心に配置される。遠心羽根車26は、ドラム形状を有し、羽根車26の外周の周囲に配置された複数のブレードを備える。入口ポート32からの空気は、羽根車26を通って出口ポート33に搬送され、連結部材16の通路17内へ搬送される。遠心送風機11は、運動エネルギを用いて送風機11を通過する空気の速度および圧力を増減させるので、機械エネルギを用いて入口から出口へ空気を物理的に移動させる軸構成の容積式ファンまたは送風機とは異なる。羽根車26の寸法は、送風機11を通る空気の効率的な移動および通路17内への空気速度および圧力の伝達を容易にするために、隣接するケーシング24の内側表面の寸法と緊密に一致するように選択される。
【0055】
送風機11の詳細は、例示のみを目的として提供される。システム10の代替実施形態は、送風機11とは異なる構成を有する送風機を備えてよい。
【0056】
図3および
図8~10を参照すると、制御ユニット12は、モータコントローラIC、または圧力変換器20に通信可能に結合されたモータコントローラ29の形態のマイクロコントローラを備える。また制御ユニット12は、モータコントローラ29に通信可能に結合されたゲートドライバ30、およびゲートドライバ30に通信可能に結合された、たとえばMOSFETなどであるがこれに限定されない上側および下側電界効果トランジスタ(FET)34も備える。FET34は、3相モータ28に電流を供給することができる。
【0057】
ゲートドライバ30は、たとえば、Texas Instruments Incorporatedから入手可能なモデルDRV8301またはDRV8302であってよい。ゲートドライバ30は、モータコントローラ29からのデジタル入力を受信し、FET34に出力を提供するように構成される。これに応答して、FET34は、モータコントローラ29によって決定された回転速度設定値で羽根車26を回転させるために、各相への電流を変化させることによって3相モータ28の各相を制御する。
【0058】
ゲートドライバ30は、後述する、ゲートドライバ30の電流増幅器およびFET34を用いて、羽根車26の回転速度をモータコントローラ29によって決定された設定値に調整することを容易にする第1のフィードバックループを実施する。羽根車26の回転速度は、ゲートドライバ30によって、または代替実施形態において差動電流増幅器を用いる別個のICによって、モータの3相のいずれかまたは全てで監視されたモータ28の逆起電力または逆EMFを用いて監視され得る。ゲートドライバ30は、モータ28およびシステム10の他の構成要素の損傷の防止に役立つ、熱および電流感知機能を有し得る。
【0059】
モータコントローラ29は、圧力センサ20からの圧力データおよび空気流センサ22からの空気流データを継続的に受信し、後述する、連結部材16内の空気流に関して目標圧力を得るために羽根車26の回転速度設定値を更新するために、第2のフィードバックループを実施する。
【0060】
また制御ユニット12は、一般に知られている技術を用いて逆EMFからシステム10の電子部品を保護するための規定も含み得る。
【0061】
制御ユニット12は、モータ28、コントローラ12、およびシステム10の他の電子部品に給電するための電池36をさらに含む。電池36は
図3に示される。電池36は、たとえば、リチウムポリマ電池であってよい。代替実施形態は、電池36の代替または追加として、標準的な120ボルト、60Hzの家庭用電流によって給電されるように構成され得る。
【0062】
送風機11は、患者の通常の換気呼吸に正弦波的に変化する圧力波形を重畳するように制御される。送風機11は、システム10によって実装される、
図9に概略的に示される第1のフィードバックループを用いて制御および安定化される。第1のフィードバックループは、典型的にたとえば約0.1cmH
2O~約2cmH
2Oの範囲の最大圧力振幅と、典型的にたとえば約0.5cmH
2O~約40cmH
2Oの範囲のオフセット圧力とを有するFOT圧力波形を生成するように送風機11を制御する。
【0063】
第1のフィードバックループは、たとえば比例積分微分(PID)制御アルゴリズムを用いて、回転速度設定値のセットを満たすように羽根車26の回転速度を制御する。第1のフィードバックループの更新頻度は比較的速く、たとえば約1ミリ秒(ms)未満である。
【0064】
制御ユニット12は、
図9にも示される第2のフィードバックループを実施するようにさらに構成され得る。第2のフィードバックループは、圧力センサ20によって測定されるように、患者によって吸入および吐出される空気流に関して目標圧力を得るために、回転速度設定値を更新する。第2のフィードバックループは任意選択的であり、すなわち、第2のフィードバックループは、連続的、周期的または間欠的に実施されてよく、または全く実施されなくてもよい。第2のフィードバックループが実施されない場合、回転速度設定値は、FOT試験中にユーザが圧力波形を低減することが可能であるように、事前較正された値または未較正の値のいずれかに設定され得る。
【0065】
第2のフィードバックループの更新頻度は、第1のフィードバックループの更新頻度よりも緩慢である。たとえば、第2の制御ループの更新頻度は、約10ms~20msごとであってよい。
【0066】
目標空気圧は、患者の通常の換気呼吸に重畳される所望の正弦波圧力変動に基づいて、モータコントローラ29によって継続的に更新される。送風機11によって発生する空気圧は、(羽根車26の速度によって反映される)送風機11の速度の2乗に概ね従う。したがって、特定の圧力波形は、送風機11のモータ速度設定値のセットとしてモータコントローラ29のメモリに格納され得る。あるいは、モータ速度設定値は、
図10に示すように、モータコントローラ29内の1または複数の内部信号生成器31によって要求に応じて計算され得る。
【0067】
内部信号生成器(複数も可)31は、特定の圧力波形を生成するために必要なモータ速度設定値のセットに対応する様々な周期信号を生成することができる。これらの周期信号は、たとえば、方形波形、正弦波形、三角波形、鋸歯波形などを有してよい。たとえば周波数および振幅などの信号のパラメータは、送風機11およびその駆動電子機器、すなわちゲートドライバ30の周波数変化挙動を補償し、関心対象の全ての周波数にわたり一貫した振幅の周波数コンテンツを生成するように調整され得る。
図10でも見られるように、内部信号生成器31は、送風機11によって生成された圧力波形に実質的に一定、すなわち静的または非時間変化的なオフセットを課すことができ、送風機11の安定性の確保に役立ち得る。
【0068】
内部信号生成器31は、ゲートドライバ30、FET34、またはモータコントローラ29によって実施される第1もしくは第2のフィードバックループの係数またはパラメータを調整するために使用され得る。この調整を行うために、内部信号生成器31は、周波数構成要素、振幅、オフセット、または信号形状が変動する信号の順次セットを生成するように設定されてよく、その後、測定された圧力および流量データは、システム10の全体応答を評価するために使用され得る。このように1または複数のフィードバックループを調整することにより、特定の圧力レベル間での迅速な遷移が可能であり、周波数にわたり性能が改善され、送風機モータの電子ブレーキ中のエネルギ損失が低減され得る。
【0069】
モータコントローラ29は、
図10に示すように、目標圧力と、圧力センサ20によって測定された連結部材16内の実際の空気圧との差に基づいて、回転速度設定値を更新するように構成される。初期モータ速度推定値は、無負荷または既知の負荷条件の前提に基づく予め特徴化された圧力対モータ速度の表を用いて、モータコントローラ29から供給される。第1のフィードバックループがモータ28を所望の設定値まで迅速に駆動した後、第2のフィードバックループは、正弦波形における次の値にモータ速度設定値を更新するか、あるいは、患者の呼吸器系による負荷を補償するために現在および/または今後の波形におけるモータ速度設定値を調整してよい。モータ速度設定値の調整は、FOTにとって非常に望ましく、FOTでは、流量、圧力、および最終的には経肺インピーダンスデータの信号整合性の確保を促すために、1cmH
2O~4cmH
2Oの範囲の正弦波振幅圧力最大値が必要とされる。
【0070】
設定値の更新または調整は、羽根車26が各設定値で安定することを可能にするために、比較的緩慢な速度で行われる。設定値が更新または調整されると、第1のフィードバックループを実施するモータコントローラ29は、ゲートドライバ30およびFET34を介して羽根車26の回転速度を調整し、羽根車26の回転速度を更新された設定値に維持する。
【0071】
第2のフィードバックループの緩慢な更新頻度は、患者の換気呼吸における所望の正弦波圧力変動を生成するために目標速度が再び調整される前に、各目標回転速度で羽根車26が安定することを可能にするために必要である。このように、回転速度設定値は、送風機11が所望の特徴を有する圧力波形を生成するように第1のフィードバックループを用いて個々に維持される様々な閾値を表す。このアプローチは、スピーカまたは振動メッシュを備える従来のFOTで使用されるアプローチとは異なり、従来のアプローチは、正圧を印加することができないため、常に動いている表面によって圧力波形が生成され、回転質量が存在せず、それに応じて、システム10のように加速および減速時の回転質量の慣性モーメントを考慮する必要性がない。
【0072】
従来のラウドスピーカベースおよびピストンベースのFOTシステムは、周囲圧力に対して正および負の圧力変動を提供するが、送風機ベースのシステム10は、送風機11によって供給される空気中に、周囲圧力に対して実質的に一定のオフセットを提供するように構成され得る。オフセットは、患者の通常の換気呼吸に重畳される正弦波FOT圧力波形における各点に、実質的に一定の値として加えられる。FOT圧力波形に実質的に一定のオフセットを加えることにより、患者が停滞空気を再呼吸することを防ぐため、および/または標高、天候、温度などに依存して場所間で大きく変動し得る局所的な周囲圧力を補償するための小さなバイアス流れが提供され得る。また、圧力オフセットは、正の空気圧、すなわち周囲より高い空気圧が連結部材16の通路17内で維持されることを確実にするために役立ち、それによって、通路17内の低い、または負の空気圧および空気流に起因する患者の気腹の可能性を最小限にし、または実質的に解消するために役立ち得る。
【0073】
また、送風機11によって供給される空気に課される圧力オフセットは、FOTオシロメトリに必要な比較的小さな正弦波変動空気圧を生成するために必要な公差内で送風機11が制御されることを可能にする。特に、出願者は、低振幅かつ実質的に一定の圧力オフセットの上にFOT圧量振動を重畳することにより、羽根車26の速度が、必要なFOT圧力振動を生成するために十分な加速が困難または不可能になるゼロまたはゼロ付近のレベルまで減衰するのを防ぐことができることを発見した。また、圧力オフセットは、患者の呼吸器系のインピーダンスを計算する際に最終的に使用される空気圧および空気流測定値における信号対雑音比を改善するためにも役立つ。
【0074】
システム10は、以下の段落で説明される従来のFOT圧力波形を生成するように構成され得る。これらの特定の波形は、例示のみを目的として開示される。システム10は、複数の信号を同時に備える波形を含む、他の種類の波形を生成するように構成され得る。たとえば、内部信号生成器31は、たとえば正弦波信号、方形信号、鋸歯信号、三角信号などの2つ以上の同時信号の生成に対応することができ、各信号のパラメータは、他の信号から独立して設定されることが可能である。個々の信号は、時間変化する送風機速度設定値の1つの結合信号、または制御入力に合算される。任意選択的に、波形は、送風機速度設定値の時系列としてシステムにダウンロードされる任意波形またはベースライン波形であってよく、波形は、経時的に反復してもしなくてもよい。ソフトウェア設定可能な再生速度により、信号のいずれかの有効周波数を調整することが可能である。制御入力に含まれる各信号は、任意選択的に、送風機11およびその駆動電子機器、すなわちゲートドライバ30の周波数変化挙動を補償し、関心対象である全ての周波数にわたり一貫した振幅の周波数コンテンツを生成してよい。
【0075】
図6Aは、システム10によって生成され得る従来の単一周波数FOT圧力波形を示す。この特定の例において、波形の周波数は5Hzである。
図6Bは、システム10によって生成され得る従来の多重周波数FOT圧力波形を示す。この特定の例において、波形の周波数は5Hz、11Hz、および19Hzである。
【0076】
図6Cは、システム10によって生成され得る疑似ランダムノイズを示す。疑似ランダムノイズは、診断FOTプロセスの開始時に送風機11が始動すると起こり得る大きな圧力スパイクの除去を可能にする。圧力スパイクは、送風機11が始動することを困難にし、ユーザにとって不快であり得る。疑似ランダムノイズ波形を生成するための送風機設定値の波形を生成するためのプロセスは、
図7に示すフローチャートに示される。
【0077】
FOTオシロメトリにおいて、信号対雑音比は重要な考慮事項である。システム10によって実施される送風機安定化時間は、送風機11によって生成される全ての周波数にわたって適用されるシンクフィルタを表す。単一または複数の周波数波形の場合、関心対象の各周波数は、任意選択的に、信号対雑音比を大きくするためにスケーリングされ得るが、疑似ランダムノイズ波形の場合、より精密なアプローチが有利であり得る。
【0078】
疑似ランダムノイズ波形における送風機11の安定化の影響を補償するために、入力Xの大きさは、周波数領域におけるフラットバンドを生成するために、1/(モータのシンク関数)でスケーリングされ得る。これは、雑音が付加白色ガウス雑音であると仮定した場合、関心対象の周波数範囲にわたって一貫した信号対雑音比を確実にするために役立ち得る。たとえば、
図6Cに示す疑似ランダム波形の周波数変動は、約2Hz~約25Hzの範囲で実質的に平坦である。
【0079】
それぞれの圧力センサ20および空気流センサ22によって捕捉された圧力および空気流の値は、FOT圧力波形が患者の換気呼吸に重畳される際、制御ユニット12に伝達される。制御ユニット12は、FOT圧力波形に応答する圧力および流量の変動を識別するために圧力および空気流測定値をフィルタし、FOTオシロメトリの当業者の間で一般に知られている従来技術を用いて、患者の換気呼吸に関連する圧力および空気流からそれらの変動を抽出および区別するように構成される。その後、制御ユニット12は、経肺インピーダンスの測定のためのアルゴリズムとして当技術分野で一般に知られている従来技術を用いて、FOT圧力波形に応答する圧力および流量の変動に基づいて、患者の呼吸器系のインピーダンスを計算する。そのような技術は、RLSアルゴリズム(EEアルゴリズムと呼ばれることもある、平方方程式誤差を最小限にするための再帰的最小2乗法)、ACOEアルゴリズム(最小2乗の出力誤差に対する調整可能な補償器)、2SLSアルゴリズム(2段階最小2乗)、またはMLRアルゴリズム(多重線形回帰)を含んでよい。時間領域アプローチは、一般に、圧力、流量、およびインピーダンスを関連付ける経肺システムのための運動方程式に基づく。周波数領域アプローチは、狭い周波数窓内で圧力対流量の関係を測定するためのDFT(離散フーリエ変換)、FFT(高速フーリエ変換)、およびIQ/PQ(同相または直交分解)を含む。
【0080】
患者の呼吸器系の計算されたインピーダンス、および基礎となる圧力および空気流データは、制御ユニット12のメモリに格納され、および/または、直ちにまたは後にダウンロードまたは送信され得る。
【0081】
代替実施形態において、圧力および空気流測定値は、たとえばスマートフォン、デスクトップまたはノートブックコンピュータ、サーバ、メインフレームなどの、システム10から遠隔にある制御ユニットに送信されてよく、患者の呼吸器系のインピーダンスを求めるための上述したデータの処理は、遠隔制御ユニットによって行われ得る。
【0082】
システム10は、送風機11によって生成された非常に低い圧力のオフセットの上に圧力振動を適用し、送風機11、出口ポート18、および患者は、連結部材16およびマウスピース14によって流体連通する。一定の流量は、インピーダンスポート18および送風機11の並列経路を通る空気流を継続的にリフレッシュすることによって、送風機11のサイズの低減および空気流経路内のデッドスペースの低減をもたらし得る。
【0083】
上述した特徴および機能ならびに代替例は、多数の他の異なるシステムまたは用途に組み合わせられてよい。当業者によって様々な代替、修正、変形、または改良が行われてよく、それらの各々もまた、開示された実施形態によって包含されることが意図されている。
【国際調査報告】