(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】半導体パワーモジュールのための金属基板構造および金属基板構造に端子を取り付ける方法ならびに半導体パワーモジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 23/12 20060101AFI20241031BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H01L23/12 K
H01L25/04 C
H01L23/12 Q
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531301
(86)(22)【出願日】2022-10-27
(85)【翻訳文提出日】2024-06-26
(86)【国際出願番号】 EP2022080077
(87)【国際公開番号】W WO2023094108
(87)【国際公開日】2023-06-01
(32)【優先日】2021-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523380173
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギヨン,ダビド
(72)【発明者】
【氏名】バイヤー,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】レシュ,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】サルバトーレ,ジョバンニ
(57)【要約】
半導体パワーモジュール(10)のための金属基板構造(3)に端子(4)を取り付けるための方法は、少なくとも1つの端子(4)を設けることと、金属基板構造(3)に、金属最上層(17)と、金属最下層(19)と、金属最上層(17)と金属最下層(19)との間に配置された絶縁樹脂層(18)とを設けることとを含む。方法は、レーザビーム(6)を用いたレーザ溶接によって少なくとも1つの端子(4)を金属基板構造(3)の金属最上層(17)に結合することをさらに含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体パワーモジュール(10)のための金属基板構造(3)に端子(4)を取り付けるための方法であって、
少なくとも1つの端子(4)を設けることと、
前記金属基板構造(3)に、金属最上層(17)と、金属最下層(19)と、前記金属最上層(17)と前記金属最下層(19)との間に配置された絶縁樹脂層(18)とを設けることであって、前記金属最上層(17)は、前記金属最上層(17)の隣接領域よりも0.5mmから最大2.0mm厚い所与の局所的に増強された厚さを有する少なくとも1つの突出部を有する一体部品から作製され、前記突出部は、前記少なくとも1つの端子(4)に結合されるように構成された前記金属最上層(17)の上面(171)上の位置に形成される、設けることと、
レーザビーム(6)を用いたレーザ溶接によって前記少なくとも1つの端子(4)を前記金属基板構造(3)の前記金属最上層(17)の前記突出部に結合することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記金属基板構造(3)および前記少なくとも1つの端子(4)のうちの少なくとも1つには、薄肉領域、スロット、溝(20)、孔、コーティング(5、8、9)、開口部および凹部(15)のうちの少なくとも1つを有するレーザ溶接のために用意された構造が設けられることにより、レーザ溶接によって前記金属基板構造(3)の前記金属最上層(17)に前記少なくとも1つの端子(4)を結合することは、少なくとも1つの溶接接合部(16)を形成するように、および、前記絶縁樹脂層(18)に対する熱衝撃を最小化するように制御される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの端子(4)を設けることは、
レーザ溶接中に衝突するレーザビーム(6)に面するように構成された上面(41)上の反射防止コーティング(5)と、レーザ溶接中に前記金属基板構造(3)の前記金属最上層(17)に面するように構成された下面(42)上のコーティング(9)とのうちの少なくとも1つを前記少なくとも1つの端子(4)に設けることを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
レーザ溶接によって前記少なくとも1つの端子(4)を前記金属基板構造(3)に結合することは、
前記金属最上層(17)の上面(171)が互いに対向する前記端子(4)の下面(42)に接触するように、前記端子(4)と前記金属基板構造(3)とを互いに対して位置合わせすることと、
前記端子(4)と前記金属基板構造(3)との溶接接合部(16)が形成され、前記少なくとも1つの端子(4)と前記金属最上層(17)とがしっかりとボンディングされるように、前記端子(4)を前記レーザビーム(6)でレーザ溶接することと
を含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
レーザ溶接によって前記少なくとも1つの端子(4)を前記金属基板構造(3)に結合することは、
互いに対向する前記金属最上層(17)の上面(171)と前記端子(4)の下面(42)との間に最大500μmのギャップを画定する所定の距離を間において、前記端子(4)と前記金属基板構造(3)とを互いに対して位置合わせすることと、
前記端子(4)が局所的に溶融し、溶融した端子材料の落下もしくは走行または変形によって前記端子(4)と前記金属基板構造(3)との間の溶接接合部(16)が形成され、前記少なくとも1つの端子(4)と前記金属最上層(17)とがしっかりとボンディングされるように、前記端子(4)を前記レーザビームでレーザ溶接することと
を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの端子(4)のための突出部を形成するように構成された金属スペーサ要素(7)を設けることと、
前記金属スペーサ要素(7)を前記金属基板構造(3)の前記金属最上層(17)に結合することと、
前記端子(4)と前記金属スペーサ要素(7)との間の溶接接合部(16)が形成され、前記少なくとも1つの端子(4)と前記金属スペーサ要素(7)とがしっかりとボンディングされるように、レーザビーム(6)を用いたレーザ溶接によって前記少なくとも1つの端子(4)を前記金属スペーサ要素(7)に結合することと
を含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記金属スペーサ要素(7)を設けることは、
レーザ溶接中に前記少なくとも1つの端子(4)の下面(42)に面するように構成された上面(71)上のコーティング層(8)、および/または、レーザ溶接中に前記金属最上層(17)の上面(171)に面するように構成された下面上のコーティング層を、前記金属スペーサ要素(7)に設けることを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記金属スペーサ要素(7)は、前記金属基板構造(3)および前記少なくとも1つの端子(4)の積層方向(A)に関して0.5mmから2.0mmまでの厚さを有するブロックおよびばねのうちの1つの形態で設けられる、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記金属スペーサ要素(7)は、はんだ付け、焼結および接着のうちの少なくとも1つによって、前記金属最上層(17)に結合される、請求項6~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの端子(4)を設けることは、
前記金属最上層(17)と結合されるように構成された端子基部(12)を前記少なくとも1つの端子(4)に設けることであって、前記端子基部(12)は、薄肉領域、スリット、溝(20)、孔、開口部および凹部(15)のうちの少なくとも1つを有するレーザ溶接のために用意された構造を備える、請求項6~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記レーザ溶接は、前記薄肉領域において、および/または、前記溝(20)において、および/または、前記凹部(15)において、および/または、前記孔の縁部上で、および/または、前記スリットの縁部上で行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
半導体パワーモジュール(10)であって、
金属最上層(17)と、金属最下層(19)と、前記金属最上層(17)と前記金属最下層(19)との両方に間で結合された絶縁樹脂層(18)とを有する金属基板構造(3)であって、前記金属最上層(17)は、前記金属最上層(17)の隣接領域よりも0.5mmから最大2.0mm厚い所与の局所的に増強された厚さを有する少なくとも1つの突出部を有する一体部品から作製され、前記突出部は、前記金属最上層(17)の上面(171)上の位置に形成される、金属基板構造(3)と、
レーザ溶接によって前記金属最上層(17)の前記突出部に結合された少なくとも1つの端子(4)と
を備える、半導体パワーモジュール(10)。
【請求項13】
前記少なくとも1つの端子(4)は、レーザ溶接中に衝突するレーザビーム(6)に面するように構成された上面(41)上の反射防止コーティング(5)と、レーザ溶接中に前記金属基板構造(3)の前記金属最上層(17)に面するように構成された下面(42)上のコーティング(9)とのうちの少なくとも1つを備える、請求項12に記載の半導体パワーモジュール(10)。
【請求項14】
前記少なくとも1つの端子(4)のための突出部を形成するように構成され、前記金属最上層(17)に結合された金属スペーサ要素(7)であって、前記端子(4)と前記金属スペーサ要素(7)との間に溶接接合部(16)が形成され、前記少なくとも1つの端子(4)と前記金属スペーサ要素(7)とがしっかりとボンディングされるように、レーザビーム(6)を用いたレーザ溶接によって前記少なくとも1つの端子(4)に結合された、金属スペーサ要素(7)を備える、請求項12または13に記載の半導体パワーモジュール(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、絶縁樹脂シート付き半導体パワーモジュールの金属基板構造に端子を取り付けるための方法に関する。本開示はさらに、半導体デバイスのための半導体パワーモジュールに関する。本開示はさらに、対応する金属基板構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の絶縁金属基板は、低絶縁要件および低耐熱要件を同時に有する低および中電力半導体パッケージのための技術を形成する。端子は絶縁金属基板上に用意され、絶縁金属基板上の端子の確実な接続が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示の実施形態は、高電圧パワーモジュール用途であっても確実に機能させることができる半導体パワーモジュールのための低コストの金属基板構造に寄与することができる、金属基板構造に端子を取り付けるための方法に関する。本開示のさらなる実施形態は、半導体デバイスのための対応する金属基板構造および半導体パワーモジュールに関する。
【0004】
一実施形態によれば、半導体パワーモジュールのための金属基板構造に端子を取り付けるための方法は、少なくとも1つの端子を設けることと、金属基板構造に、金属最上層と、金属最下層と、金属最上層と金属最下層との間に配置された絶縁樹脂層とを設けることとを含む。金属最上層は、金属最上層の隣接領域よりも最大2.0mm厚い所与の局所的に増強された厚さを有する少なくとも1つの突出部を有する一体部品から設けられ作製される。突出部は、少なくとも1つの端子に結合されるように構成された金属最上層の上面上の位置に形成される。方法は、レーザビームを用いたレーザ溶接によって少なくとも1つの端子を金属基板構造の金属最上層の突出部に結合することをさらに含む。
【0005】
記載された方法により、高電圧パワーモジュール用途であっても半導体パワーモジュールの安定した信頼性の高い機能に寄与することができる、絶縁金属基板上のレーザ溶接接合接続の実現が可能である。方法は、レーザ溶接によって絶縁金属基板上に端子を確実に取り付けることに寄与する。意図的に形成された突出部は、熱衝撃に対する樹脂層の保護を可能にし、端子基部の位置で局所的により大きな厚さを有する回路メタライゼーションと一体に形成されてもよい。突出部は、溶接位置と樹脂層との間のより長い熱経路、および基板メタライゼーションにおけるより強い横方向熱拡散を提供するが、基板の機械的強化においても同様である。
【0006】
本開示に関連して、従来の絶縁金属基板は、低絶縁要件および低耐熱要件を同時に有する低および中電力半導体パッケージのための技術を実現することが認識されている。信頼性の要件が低い場合、端子は、例えば、基板上にはんだ付けまたは接着することができる。通常、溶接はより良好な信頼性を提供するが、溶接プロセスは基板構造にとって重大であり得る。そのような絶縁金属基板の従来の構成を考慮して、対応する端子は、基板上の安定したプロセスおよびメタライゼーションの下の樹脂隔離シートに関して重大であり得る典型的には接合接続を提供するために、溶接技術を使用して上部メタライゼーションに接続される。溶接プロセスは、基板構造の損傷につながる可能性があり、特に超音波溶接は、端子基部と基板との間の摩擦および圧力に起因して、基板構造上の熱と組み合わされた熱的および機械的応力の強い影響を与える。ここで、樹脂シートは、変形および亀裂形成によって強く危険にさらされる。絶縁金属基板の回路メタライゼーションに端子基部の超音波溶接を適用する場合、対応する故障モードを考慮しなければならない。
【0007】
金属基板構造を製造するための記載された方法を使用することによって、レーザ溶接プロセスに起因する前述の悪影響を打ち消すことが可能である。また、樹脂層にクラックやダメージが発生するリスクを低減することができ、例えば0.5kVから10.0kVまでの高電圧のパワーモジュール用途であっても、確実に機能する安定した半導体パワーモジュールが実現できる。1つまたは複数の端子は、例えば、銅と銅との直接接触を形成するために金属最上層に直接溶接することができる。直接接触の代わりに、追加のスペーサ要素を、互いに対向する端子の下面と、金属最上層の上側の面または上面との間に配置することができる。
【0008】
樹脂層は誘電体層を形成し、金属最上層および金属最下層を形成する上下の2つの金属板の間に組み立てられるプリプレグシートとして実現することができる。このようなメタライゼーションシートまたはプレートは、例えば、ラミネーションプロセスによって誘電体樹脂層の絶縁体にボンディングされる。次いで、金属最上層の必要なメタライゼーション構造は、導電性金属を局所的に除去するためのマスキングおよびエッチングプロセスの後続のステップによって行われ、最終メタライゼーション構造を作成することができる。あるいは、上部メタライゼーション構造は、例えば完成した金属基板構造の形成前に、切断またはスタンピングによって形成することができる。
【0009】
あるいは、樹脂層は、成形により形成することができる。このような成形誘電体層に対して、成形物質が、所定の材料特性を有する圧送可能物質を実現する。圧送可能物質は、形成される樹脂層の液体または粘性のある原料である。例えば、成形物質はエポキシおよび/またはセラミック系液体である。代替的または追加的に、誘電体層の原料は、ポリアミド、PBT、PETなどの熱硬化性または熱可塑性樹脂材料であってもよい。代替的または追加的に、誘電体層の原料は、金属最上層および/または金属最下層に対する改善された熱伝導率および/またはCTE調整のための無機フィラーを含んでもよい。例えば、成形誘電体層は、セラミック充填材料、例えばAl2O3、AlN、BN、Si3N4またはSiO2を有する樹脂系誘電体材料を含む。例えば、誘電体層は、フィラーを含むエポキシである。誘電体層はまた、転写、射出もしくは圧縮成形、またはビスマレイミド、シアネートエステル、ポリイミドおよび/もしくはシリコーンなどの他の適用可能な成形技術に適した他の材料に基づくことができる。代替的または追加的に、誘電体層は、セラミック材料および/またはハイドロセット材料、または前述の成分のうちの2つ以上の材料の組合せを含むことができる。
【0010】
間に所定の距離を置いて金属最上層と金属最下層とを互いに対して位置合わせすることにより、成形誘電体層の後の厚さが実質的に予め決定される。例えば、厚さは、z方向を呈し得る金属基板構造の積層方向に沿って規定される。しかしながら、例えば、x方向およびy方向に対する金属パターンの適切な位置決めのために、垂直なx方向およびy方向に位置合わせを行うこともできる。例えば、位置合わせは、金属最上層を剥離フィルムもしくはライナー上に配置すること、または例えば成形ツールのモールドチェース内の他の固定によって実現することができる。これは、金属最上層の提供されたメタライゼーション構造を金属最下層に対して正確に位置決めすることを可能にし、例えば、異なる動作電位に起因して金属最上層が別個の金属パッドを含む場合に有用であり得る。ラミネーションの場合、樹脂層の厚さは、ラミネートされた層の厚さおよび挙動によって与えられる。
【0011】
本方法の一実施形態によれば、少なくとも1つの端子には、それぞれの端子の所定の表面を部分的にまたは完全に覆う1つまたは複数のコーティングが設けられる。端子は、レーザ溶接中に衝突するレーザビームに面するように構成された上面に反射防止コーティングを備えることができる。レーザビームの照射効率は、例えば、端子基部の上側に配置された反射防止コーティングによって改善することができる。代替的または追加的に、端子は、例えば酸化の防止または改善されたレーザ溶接プロセスのために、レーザ溶接中に金属基板構造の金属最上層に面するように構成された下面上に、例えば銀または金などの貴金属から作製されたコーティングを含むことができる。
【0012】
本方法のさらなる実施形態によれば、レーザビームのレーザパラメータは、レーザ溶接に有益な影響を与えるように与えることができる。したがって、レーザ溶接に使用されるレーザビームまたは対応するレーザ源は、300~3000Wの出力を提供するように構成することができる。代替的または追加的に、レーザ溶接用のレーザビームまたはレーザ源は、衝突するレーザビームに面する少なくとも1つの端子の上面に沿って案内される1~200mm/sの移動速度を提供するように構成することができる。したがって、溶接は、1つの限定された点でのみ行われる必要はなく、溶接プロセスを提供するレーザビームのレーザスポットは、画定された領域にわたって接合接続を提供するために前述の速度で移動することができる。
【0013】
レーザビームは、所定の周波数で振動するように構成することもできる。したがって、レーザスポット位置は、溶接プロセスに有益な影響を与えるために最大2kHzの周波数で振動または揺動することができる。
【0014】
方法のさらなる実施形態によれば、レーザ溶接によって少なくとも1つの端子を金属基板構造に結合するステップは、金属最上層の上面が互いに対向する端子の下面に接触するように、端子と金属基板構造とを互いに対して位置合わせすることを含む。方法は、端子と金属基板構造との溶接接合部が形成され、少なくとも1つの端子と金属最上層とがしっかりとボンディングされるように、端子をレーザビームでレーザ溶接することをさらに含む。
【0015】
方法のさらなる実施形態によれば、端子および金属基板構造は、互いに対向する金属最上層の上面と端子の下面との間に最大500μmのギャップを画定する所定の距離を間において互いに対して位置合わせされる。レーザビームによる端子のレーザ溶接は、端子が局所的に溶融し、溶融した金属部分(表面張力によって保持される)の落下もしくは走行または変形によって端子と金属基板構造との間の溶接接合部が形成され、少なくとも1つの端子と金属最上層とがしっかりとボンディングされるように行われる。そのような構成を使用することにより、端子の改善された位置決め、および金属最上層と端子との間に最大数百ミクロンの小さなギャップを形成することによって達成される熱に対する絶縁金属基板構造の保護を実現することができる。端子は、端子本体および端子基部を有するL字形を備えることができ、端子基部は所定の位置に保持することができるが、レーザ溶接接合接続は、端子基部からの溶融材料の液滴または変形部分によって提供される。
【0016】
本開示に関連して、超音波溶接と比較してそれほど重大ではない状況にもかかわらず、金属最上層によって形成された金属基板構造の回路メタライゼーション上の銅端子のレーザ溶接プロセスは、感熱性絶縁樹脂シートまたは樹脂層への熱衝撃を最小限に抑えるための特徴を有益に含むことが認識される。一方では、樹脂層への熱流を低減する保護機能によって、樹脂層への熱衝撃を低減することができる。他方、衝撃は、追加的または代替的に、レーザ溶接された端子ボンディングを実現するために必要な熱的労力を低減する特徴によって低減することができる。
【0017】
さらに、別個のスペーサ要素は、銅箔またはシートまたはブロックなどの金属最上層の表面に所定の突出部を形成することができる。
【0018】
さらなる実施形態によれば、方法は、少なくとも1つの端子のための突出部を形成するように構成された金属スペーサ要素を設けることと、金属スペーサ要素を金属基板構造の金属最上層に結合することとを含む。方法は、端子と金属スペーサ要素との間の溶接接合部が形成され、少なくとも1つの端子と金属スペーサ要素とがしっかりとボンディングされるように、レーザビームを用いたレーザ溶接によって少なくとも1つの端子を金属スペーサ要素に結合することをさらに含む。金属スペーサ要素は、例えば、0.5mmから2.0mmまでの厚さを有する金属ブロックまたはばねの形態で設けることができる。厚さは、金属基板構造および少なくとも1つの端子の積層方向に沿った寸法に関連し、金属最上層の隣接する上面の上に延在する突出部の高さを表すこともできる。
【0019】
端子基部がレーザ溶接によって接合される位置で金属基板構造の上面に追加の金属ブロックまたはばねを実装することは、熱衝撃に対する樹脂層の保護に寄与する。金属ブロックまたはばねは、はんだ付け、接着、焼結、または任意の他の適切な接合方法によって回路メタライゼーションまたは金属最上層に接合することができる。
【0020】
方法のさらなる実施形態によれば、金属スペーサ要素は、レーザ溶接中に少なくとも1つの端子の下面に面するように構成された上面上にコーティング層を備える。金属スペーサ要素は、端子への改善された接合プロセスのために、その上面において銀または金またはニッケルまたは他の金属などの貴金属で完全にまたは部分的にコーティングされてもよい。代替的または追加的に、金属スペーサ要素は、金属最上層への改善された接合プロセスのために、その下面において貴金属で完全にまたは部分的にコーティングされてもよい。
【0021】
方法のさらなる実施形態によれば、少なくとも1つの端子は、金属最上層と結合されるように構成され、改善されたレーザ溶接のために用意された構造を備える端子基部を備える。そのような溶接構造は、端子基部の薄肉領域、スロット、溝および/または凹部によって実現することができる。代替的または追加的に、完全な端子基部は、端子の本体よりも薄く形成されてもよい。例えば、薄くされた端子基部の厚さの範囲は、端子本体の厚さの0.3から0.8倍の間であり得る。
【0022】
そのような特定の端子構造は、レーザ溶接プロセスに有益に影響を及ぼすことができ、端子基部に対するレーザビームによるレーザ照射の加熱パワーまたはエネルギーインパクトの低減に寄与することができる。したがって、1つの選択肢は、端子基部の厚さを部分的または完全に減少させることである。完全な端子基部または端子基部の少なくとも溶接領域は、端子の垂直本体部分などの隣接する部分と比較して薄くすることができる。あるいは、例えば1つまたは複数の溝、凹部、および/またはスロットを端子基部に実装することによって、端子基部を局所的に薄くすることができる。
【0023】
溶接プロセスは、このようなより薄い部分で行われ、その結果、溶融される金属の量が少なくなり、横方向の熱放散の結果が少なくなるため、レーザ溶接接続を実現するのに必要なレーザエネルギーを低減することができる。
【0024】
端子基部への孔またはスロットの実装は、界面の直接照射を可能にすることができ、特に、例えば金属最上層によって形成された基板メタライゼーションと端子基部との間の孔またはスロットの縁部を達成することができ、その結果、レーザ溶接接合接続を実現するためにより少量の金属を溶融すればよい。さらに、端子基部内の横方向の熱の拡散は、孔、スロットまたは溝によって防止または低減され得る。
【0025】
端子基部は、溶接接続部が端子基部上に複数の小さな局所スポットを含むように金属最上層または金属スペーサ要素に溶接されて、単一の溶接スポットの準備の間の冷却のための十分な休止を伴ってレーザ溶接中の熱衝撃を低減することができる。ここで、総熱エネルギーは低減されないかもしれないが、スポット当たりの熱エネルギーおよびプロセスの休止は、十分な放熱を容易にし、その結果、樹脂層の温度上昇を少なくする。さらに、端子基部は、例えば溶接のために用意された孔、スロットおよび/または溝に起因して、複数の溶接位置の形成に有益に影響を及ぼすように特に設計することができる。
【0026】
方法のさらなる実施形態によれば、金属基板構造を設けるステップは、金属最上層を設けることと、金属最下層を設けることと、成形物質の形態の誘電体材料を設けることとを含む。方法は、金属最上層と金属最下層とを間に所定の距離を置いて互いに対して位置合わせすることと、位置合わせされた金属最上層と金属最下層との間に、設けられた成形物質を導入し、それによって、例えば射出成形、圧縮成形および/またはトランスファー成形による成形によって絶縁樹脂層を形成することとをさらに含む。
【0027】
さらに、方法の一実施形態によれば、レーザ溶接によって少なくとも1つの端子を金属最上層に結合するステップは、金属最上層が樹脂層および/または金属最下層に結合される前に行うことができる。したがって、端子と金属最上層とのレーザ溶接接続を行うことができ、次いで、金属最上層が誘電体樹脂層および/または金属最下層と結合される。言い換えれば、金属最上層と樹脂層および/または金属最下層との結合は、溶接によって端子と金属最上層との結合にその後加工される。したがって、端子を結合することによる機械的応力および/またはレーザ溶接による熱応力は、樹脂層から離れて保たれ、樹脂層の亀裂または他の損傷を回避するのに寄与する。
【0028】
記載された製造または取り付け方法を使用することにより、レーザ溶接プロセスを使用することによる悪影響を打ち消すことが可能である。したがって、亀裂または損傷の形成のリスクを低減することができ、半導体パワーモジュールを確実に機能させることができる安定した半導体パワーモジュールが実現可能である。1つまたは複数の端子は、例えば、銅と銅との直接接触を形成するために金属最上層の表面に直接溶接することができる。あるいは、互いに対向する端子の下面と、金属最上層の上側の面または上面との間に配置されたスペーサ要素が存在することができる。
【0029】
最後に、提案されたすべての特徴および方法を単独で使用することができるが、2つ以上の組合せも使用することができることが指摘される。
【0030】
一実施形態によれば、半導体パワーモジュールのための金属基板構造は、金属最上層と、金属最下層と、間に配置された金属最上層および金属最下層の両方に結合された絶縁樹脂層とを備える。金属基板構造は、レーザ溶接によって金属最上層に結合された少なくとも1つの端子をさらに備える。
【0031】
少なくとも1つの端子は、レーザ溶接中に衝突レーザビームに面するように構成された端子基部の上面上の反射防止コーティング、および/またはレーザ溶接中に金属基板構造の金属最上層に面するように構成された端子基部の下面上のコーティングを備えることができる。
【0032】
さらなる実施形態によれば、金属基板構造は、少なくとも1つの端子のための突出部を形成するように構成され、金属最上層に結合される金属スペーサ要素を備える。金属スペーサ要素は、端子と金属スペーサ要素との間に溶接接合部が形成され、少なくとも1つの端子と金属スペーサ要素とがしっかりとボンディングされるように、レーザビームによるレーザ溶接によって少なくとも1つの端子にさらに結合される。そのような突出部は、金属最上層上の別個の要素によって形成することができ、および/または金属最上層と一体に形成されてもよい。
【0033】
一実施形態によれば、半導体デバイス用の半導体パワーモジュールは、記載された金属基板構造の一実施形態を備え、金属基板構造の少なくとも1つの端子と電気的に相互接続される。半導体パワーモジュールは、半導体パワーモジュールの動作中に熱を放散するために金属基板構造の金属最下層と結合されるヒートシンクをさらに備えることができる。したがって、半導体パワーモジュールは、別個のヒートシンクを備えることができる。代替的または追加的に、金属基板構造の金属最下層は、ヒートシンク自体として作用することができ、例えば、有益な放熱を提供するために、積層方向に対して底部側にリブまたは突出部を備えるように構成することができる。金属最下層は、半導体パワーモジュールのベースプレートとしてさらに機能することができる。金属基板構造を含む半導体パワーモジュールは、モールドまたはポッティングによって作製された樹脂または誘電体ゲルによってさらに部分的または完全に封入することができる。端子は、電力端子として、または例えば信号配線に使用される補助端子として機能してもよい。
【0034】
さらに、半導体パワーモジュールは、前述の金属基板構造の2つ以上の実施形態を含むことができる。電子機器は、チップ、集積回路、および/または他の個別デバイスを含むことができる。
【0035】
記載された金属基板構造を方法の記載された実施形態によって製造することができる結果として、および記載された半導体パワーモジュールが金属基板構造の実施形態を含む結果として、方法の記載された特徴および特性はまた、金属基板構造および半導体パワーモジュールに関して開示され、逆もまた同様である。したがって、本開示はいくつかの態様を含み、各特徴が特定の態様の文脈で明示的に言及されていない場合であっても、態様のうちの1つに関して説明されたすべての特徴は、他の態様に関しても本明細書に開示される。
【0036】
本開示は、絶縁金属基板または絶縁金属ベースプレート上だけでなく、打ち抜きおよび成形金属基板構造のような代替の金属基板構造技術に基づく基板構造上の電力および補助端子のレーザ溶接に関する。例えば、絶縁金属基板は、例えばアルミニウムおよび/または銅で作られた比較的厚い金属ベースまたは最下層を備える。絶縁金属基板は、樹脂層を形成する樹脂材料に基づく絶縁シートと、金属最上層を形成するアルミニウムおよび/または銅からなる回路メタライゼーションとをさらに備える。絶縁シートに用いられる樹脂材料は、典型的には、熱伝導性無機フィラー材料を含む熱硬化性樹脂である。このフィラー材料は、大部分が、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(Si3N4)、窒化ホウ素(BN)、または酸化アルミニウム(Al2O3)もしくは酸化ケイ素(SiO2)から調製されたセラミック粒子からなる。樹脂絶縁層は100~200μmの厚さを有することができ、金属最上層の回路メタライゼーションは150~500μmの厚さを有してもよい。
【0037】
端子は、銅または銅合金で作られた主端子および/または補助端子を実現することができ、絶縁金属基板の回路メタライゼーションにレーザ溶接される。レーザ溶接により、端子基部の上面からレーザビームが照射され、強い局所加熱がもたらされる。端子基部および基板表面の材料の制御された局所的な溶融が起こり、非常に信頼性の高い接合材料接続が形成される。端子の種類および材料に応じて、端子基部は0.5~2.0mmの厚さを有することができる。改善された溶接プロセスまたは例えば酸化に対する保護のために、基板上面および/または端子基部は、例えばニッケル、銀、および/または金から作製された金属層によってコーティングされてもよい。
【0038】
端子を金属最上層または任意選択の金属スペーサ要素にしっかりとボンディングするためのレーザ溶接を考慮して、絶縁金属基板の回路メタライゼーションに端子を溶接するときには、基本的に熱衝撃を考慮する必要がある。それにもかかわらず、端子基部の局所的な溶融を引き起こすレーザ溶接プロセスの熱衝撃が発生し、追加の対策および/または特徴が、溶接中の樹脂層の損傷を防止または打ち消すために有用であり得る。以下の特徴のうちの1つまたは複数は、樹脂層の保護の改善または総熱量の低減によるレーザ溶接中の熱状況の改善のために使用され得る。
【0039】
・基板を局所的に機械的に補強し、樹脂シートへの熱影響を低減するための、端子基部の位置で局所的により厚い基板メタライゼーション
・基板を局所的に機械的に補強し、樹脂シートへの熱衝撃を低減するために、端子位置で基板表面に取り付けられた追加のプレートレット
・酸化を防止し、ボンディングをより効果的にするための、例えば貴金属またはニッケルのような他の金属による端子および/または基板のコーティング
・レーザの反射を回避し、電力を低減して溶接をより効果的にするための端子の反射防止コーティング
・少ない電力で溶接をより効果的にし、より少量の材料を溶融すればよいように(完全にまたは局所的に)薄い端子基部
・端子基部のスリットまたは孔、および温度を局所的に集中させる(横方向の広がりを回避する)ためのスリットまたは孔の縁部の溶接
・溶接プロセス中の端子基部と基板表面との間のギャップ
・複数の局所レーザ溶接接続部。
【0040】
そのような選択肢は、単独で適用することができるが、これらの選択肢の2つ以上の組合せも可能である。
【0041】
絶縁金属基板上の端子基部のレーザ溶接の提案されたプロセスは、例えば超音波溶接と比較して、樹脂絶縁シートへの機械的影響を大幅に低減する強力な可能性を有する。さらに、提案された特徴のうちの1つまたは複数を適用することによって、レーザ溶接プロセスの熱衝撃を低減することができる。熱および感圧性樹脂層を損傷することなく成功した溶接プロセスが可能であり、この比較的費用対効果の高い基板技術の使用を興味深いものにする。このような金属基板構造の取り付けまたは製造方法は、より高い電圧クラスであっても、大型のパワーモジュールおよびモジュールにとって興味深いものとなり得る。絶縁金属基板によってベースプレートにはんだ付けされるセラミック基板の従来の標準的な構成を置き換える場合、大幅なコスト削減が可能であり得る。一方では、材料コストを低減することができ、他方では、パワーモジュールアセンブリにおける基板とベースプレートとの間の接合プロセスのようないくつかのプロセスステップがプロセスフローから除去される。しかしながら、記載された方法はまた、種々雑多な製品、特に低電圧の工業製品および自動車製品に適用することができる金属基板構造および半導体パワーモジュールを製造することを可能にする。
【0042】
例示的な実施形態は、概略図および参照番号を用いて以下に説明される。
図面の簡単な説明
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】半導体パワーモジュールの金属基板構造に端子を取り付けるための方法の一実施形態の側面図である。
【
図2】プレートレットを使用して半導体パワーモジュールの金属基板構造に端子を取り付けるための方法のさらなる実施形態の側面図である。
【
図3】金属基板構造に取り付けるための端子の実施形態の側面図である。
【
図4】金属基板構造に取り付けるための端子の実施形態の側面図である。
【
図9】端子の一実施形態を金属基板構造に取り付ける方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
添付の図面は、さらなる理解を提供するために含まれる。図に示される実施形態は例示的な表現であり、必ずしも一定の縮尺で描かれていないことを理解されたい。同一の参照番号は、同一の機能を有する要素または構成要素を示す。要素または構成要素が異なる図におけるそれらの機能に関して互いに対応する限り、以下の図の各々についてその説明は繰り返さない。明確にするために、要素は、場合によってはすべての図に対応する参照符号で表示されない場合がある。
【0045】
図1は、半導体デバイスのための半導体パワーモジュール10の金属基板構造3に端子4を取り付けるための方法ステップの一実施形態の側面図を示す。半導体パワーモジュール10は、金属最上層17と、金属最下層19と、金属最上層17と金属最下層19との間に配置された絶縁樹脂層18とを有する金属基板構造3を備える。電子機器は、例えば、チップおよびパワー半導体デバイスを含むことができる。
【0046】
半導体パワーモジュール10は、ボンディング層2および/または熱界面材料の層によって金属基板構造3と結合されたリブ構造を有するヒートシンク1をさらに備える。図示されている積層方向Aに関して、端子4は金属最上層17に結合されるべきであり、ヒートシンク1の下ではボンディング層2を介して金属最下層19に結合される。
【0047】
この点において、「上(above)」、「下(under)」、「最上(top)」、「上側(upper)」および「最下(bottom)」のような用語は、図に示され、かつ積層方向Aに対して示されるような向きまたは方向を指す。したがって、記載された要素の高さまたは厚さは積層方向Aに関連し、横方向BおよびCは積層方向Aに対して垂直に配向される(
図1~
図8を参照)。
【0048】
絶縁樹脂層18の厚さは、例えば、100~200μmとすることができる。金属最上層17によって形成される回路メタライゼーションの厚さは、150~500μmであり得る。ベースプレートを実現することができる金属最下層19の厚さは、2~3mmとすることができ、金属基板構造3および半導体パワーモジュール10から熱を放散するように構成されてもよい。樹脂層18は、エポキシ樹脂材料を含むことができるが、熱硬化性または熱可塑性樹脂のような他のタイプの樹脂も可能である。樹脂層18は、樹脂シートとして形成されてもよいし、2つの金属層17、19の間に組み付けられたりラミネートされたりするプリプレグシートとして形成されてもよい。代替的または追加的に、金属基板構造3は、成形によって、例えば射出、転写または圧縮成形によって形成された樹脂層18を備える。樹脂層の樹脂は、無機フィラー、AlN、Si3N4、BN、Al2O3またはSiO2などのセラミック材料を含むことができる。金属最下層19は、銅および/またはアルミニウムおよび/または対応する合金で作製されるか、またはそれらを含むことができる。金属最上層17によって形成された回路メタライゼーションは、銅および/またはアルミニウムおよび/または対応する合金で作製されるか、またはそれらを含むことができる。さらに、金属最上層17は、部分的または完全にコーティングされてもよく、回路メタライゼーションの対応するコーティングは、ニッケルおよび/または金および/または銀および/または他の金属で作製されるか、またはそれらを含むことができる。
【0049】
端子4を金属基板構造3に取り付けるための方法のステップは、
図9に示すフローチャートに従うことができる。したがって、
図1に示す実施形態によれば、ステップS1で、少なくとも1つの端子4が設けられる。端子4は、その上面41上に反射防止コーティング5を備えるように設けられる。
【0050】
ステップS2で、金属基板構造3には、金属最上層17、金属最下層19、およびそれらの間に配置された絶縁樹脂層18が設けられる。
【0051】
任意選択のステップS3で、追加の金属スペーサ要素7を設けて、金属最上層17の上面171に端子4のための突出部を形成することができる(
図2参照)。スペーサ要素7は、端子位置で上部メタライゼーションに接合される。
【0052】
さらなるステップS4で、端子4は、端子4と金属最上層17との間の溶接接合部16が形成され、端子4と金属最上層17とがしっかりとボンディングされるように、レーザビーム6を用いたレーザ溶接によって金属基板構造3の金属最上層17に結合される。反射防止コーティング5は、衝突するレーザビーム6に面する端子4の上面41を部分的にまたは完全に覆い、レーザ溶接プロセスを改善する。
【0053】
端子4は、
図3および
図4に示すように、側面視でL字形状を備えるように設けることができる。したがって、端子4は、端子本体13と、一体または別個の部品を形成して作られた端子基部12とを備える。端子基部12は、金属最上層17と結合されるように構成され、薄肉領域(
図3参照)および/またはスロット、溝20および/または凹部15(
図4~
図8参照)のうちの1つまたは複数を有するレーザ溶接のために用意された構造を備えるように設けることができる。そのような構造は、実際の開口部または凹部および/または薄肉部のみであり得る。
【0054】
端子基部12のこのような修正は、改善されたレーザ溶接プロセスおよび金属基板構造3への端子の取り付けに寄与することができる。また、樹脂層18に影響を与える熱応力が低減される。端子基部12は、完全に低減された厚さ、または端子4の垂直端子本体13の厚さよりも薄い低減された厚さを有する溶接領域を備えることができる。代替的または追加的に、1つまたは複数の溝20または他の局所的な凹部15は、そのような凹部開口部(
図4~
図8を参照)の最下部で実行されるレーザ溶接プロセスに有利に影響を及ぼすことができる。これは、孔またはスロットの実装にも当てはまり、レーザ溶接は、そのような孔またはスロット20の縁部で、例えば、端子基部12とメタライゼーションとの間の界面で直接行うことができる。レーザ溶接プロセスはまた、
図5および
図6に示すように、端子基部12上の複数の小さな局所スポットに対して実行することができる。これはまた、複数の局所溶接スポットが形成されるように薄くされた端子基部12にも適用することができる。
【0055】
端子4は、銅および/または銅合金で作ることができ、または銅および/または銅合金を含むことができ、半導体パワーモジュール10の電子機器に電気的に接続するための主端子または補助端子を実現することができる。端子基部12は、1mm、1.5mmまたは2mmの積層方向Aに関する厚さを備えることができる。端子基部12は、0.5mm以下の厚さを備えるように、部分的または完全に薄くすることができる。したがって、端子基部12は、0.5~2mmの厚さを備えることができる。局所的に薄くなった部分がある場合、この部分は少なくとも0.25mmの厚さを有してもよい。さらに、端子4は、端子基部12の下面42を部分的または完全に覆う端子コーティング層9を備えることができる。端子コーティング層9は、レーザ溶接プロセスに有益な影響を及ぼすことができ、ニッケル、金、銀、および/または他の金属から作製されるか、またはそれらを含んでもよい。このようなコーティングは、追加の金属スペーサ要素7(
図2を参照)と組み合わせて端子4を取り付けるのにも有用であり得る。
【0056】
そのような追加のスペーサが設けられる場合、端子4を取り付けるための方法は、金属スペーサ要素7を金属基板構造3の金属最上層17に結合することと、端子4と金属スペーサ要素7との間の溶接接合部16が形成され、端子4と金属スペーサ要素7とがしっかりとボンディングされるように、レーザビーム6を用いたレーザ溶接によって端子4を金属スペーサ要素7に結合することとを含む。
【0057】
金属スペーサ要素7を、例えば金属ブロックまたはばね構造の形態で、金属最上層17と端子4との回路メタライゼーションの間に配置することにより、レーザ溶接プロセスの改善および樹脂層18の保護も可能になる。金属スペーサ要素7は、0.5mmから2.0mmまでの厚さを有してもよい。金属スペーサ要素7は、例えば、スタンピングツールを介して製造することができる。別個の金属スペーサ要素7の代わりにまたはそれに加えて、金属最上層17の回路メタライゼーションは、積層方向Aおよび金属最上層17の隣接領域に対して最大2.0mmの高さで意図的に形成される局所的に増強された厚さ自体を備えることができる。このような突出部は、端子4が取り付けられる予定の金属最上層17の位置に形成される。
【0058】
金属スペーサ要素7は、銅および/または銅合金で作製されるか、またはそれを含むことができる。スペーサコーティング層8は、上面71を部分的にまたは完全に覆う金属スペーサ要素7の上側の面または上面71に配置することができる。代替的または追加的に、スペーサ要素7の下面にコーティングが存在してもよい。
【0059】
スペーサコーティング層は、ニッケル、金、銀および/または他の金属から作製されるか、またはそれらを含むことができる。金属スペーサ要素7は、はんだ付け、焼結、接着、および/または他の適用可能な接合方法によって、金属最上層17の上面171に接続することができる。
【0060】
さらに、レーザ溶接プロセスは、特定のパラメータを提供して、1つまたは複数の溶接接合部16の形成に有益に影響を及ぼすように構成することができる。したがって、レーザビーム6のレーザ出力は、300~3000Wとすることができる。端子4の上面41上のレーザビーム6のレーザスポットの速度は、1~200mm/sとすることができる。揺動を提供するためのレーザスポットの振動周波数は、2kHz以下とすることができる。そのような揺動は、過度に強い局所加熱を防止するために照射点の位置の振動を提示する可能性があり、上述のレーザ移動に加えて発生する可能性がある。
【0061】
さらに、端子4を金属基板構造3に取り付けるための構成は、端子4と金属最上層17または金属スペーサ要素7との間の直接接触を準備するように構成することができる。あるいは、上述した接合相手どうしを接合する間に、積層方向に対して500μmまでの所定のギャップを設定することができる。後者は、端子4の改善された位置決めおよび熱に対する絶縁金属基板構造3の保護のためのさらなる有益な構成を実現することができる。端子基部12は所定位置に保持されるが、端子基部12からの溶融材料の落下および/または変形によってレーザ溶接接合接続が提供される。
【0062】
1つまたは複数の端子4が取り付けられた金属基板構造3を取り付ける、および/または製造するための方法の記載された実施形態は、樹脂層における亀裂または損傷の形成のリスクを低減することを可能にする。したがって、この方法により、例えば0.5kVから10.0kVまでの電圧範囲の高電圧パワーモジュール用途であっても信頼性の高い機能を可能にする安定した半導体パワーモジュール10が実現可能である。
【0063】
上述の
図1~
図9に示す実施形態は、改良された金属基板構造3、半導体パワーモジュール10、および製造方法を表し、したがって、それらはすべての実施形態の完全なリストを構成するものではない。実際の配置および方法は、例えば、金属基板構造3および半導体パワーモジュール10に関して示された実施形態とは異なり得る。
【符号の説明】
【0064】
参照符号
1 ヒートシンク
2 ボンディング層
3 金属基板構造
4 端子
41 端子の上面
42 端子の下面
5 反射防止コーティング
6 レーザビーム
7 金属スペーサ要素
71 金属スペーサ要素の上面
8 スペーサコーティング層
9 端子コーティング層
10 半導体パワーモジュール
11 接合層
12 端子基部
13 端子本体
14 基部構造
15 凹部
16 溶接接合部
17 金属最上層
171 金属最上層の上面
18 樹脂層
19 金属最下層
20 スロット/溝
A 積層方向
B 横方向
C 横方向
S(i) 半導体パワーモジュールのための金属基板構造を製造するための方法のステップ
【国際調査報告】