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特表2024-541510貯蔵安定な陰極堆積材料、その製造方法ならびに燃料としてのその使用
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  • 特表-貯蔵安定な陰極堆積材料、その製造方法ならびに燃料としてのその使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】貯蔵安定な陰極堆積材料、その製造方法ならびに燃料としてのその使用
(51)【国際特許分類】
   C10L 5/14 20060101AFI20241031BHJP
   C10L 5/36 20060101ALI20241031BHJP
   C10L 5/48 20060101ALI20241031BHJP
   C10L 9/10 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C10L5/14
C10L5/36
C10L5/48
C10L9/10
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024531306
(86)(22)【出願日】2022-11-25
(85)【翻訳文提出日】2024-07-22
(86)【国際出願番号】 EP2022083258
(87)【国際公開番号】W WO2023094584
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】21210576.1
(32)【優先日】2021-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513100910
【氏名又は名称】スペイラ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Speira GmbH
【住所又は居所原語表記】Aluminiumstrasse 1, 41515 Grevenbroich, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ レムケ
(72)【発明者】
【氏名】オラフ グェスゲン
(72)【発明者】
【氏名】カトリーン エックハルト
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム へフラー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ベールマン
(72)【発明者】
【氏名】トシュテン ケンシー
【テーマコード(参考)】
4H015
【Fターム(参考)】
4H015AA01
4H015AB01
4H015BA06
4H015BA07
4H015BB03
4H015CA03
4H015CB01
(57)【要約】
本発明は、特にアルミニウム電解槽の陰極堆積物と、少なくとも1つの疎水結合剤とを含む陰極堆積材料に関し、疎水結合剤は、ロウ、ロウ状化合物またはそれらの混合物から選択される。本発明のさらなる対象は、陰極堆積材料の製造方法であり、以下のステップ、(a)特にアルミニウム電解槽の陰極堆積物を準備するステップと、(b)少なくとも1つの粉砕装置内で陰極堆積物を粉砕するステップと、(c)陰極堆積物を、分離装置によって分別するステップと、(d)陰極堆積物を、混合装置内でロウ、ロウ状化合物またはそれらの混合物から選択された少なくとも1つの疎水結合剤と混合するステップと、(e)ステップ(d)で得られた混合物を分割するステップと、(f)陰極堆積材料を取り出すステップと、を含み、ステップ(b)~(d)は不活性ガス雰囲気下で行われる。さらに本発明は、陰極堆積材料の、好ましくは発電機内での、ならびにロックウール、セメントおよび鋼鉄製造の際の、燃料としての使用に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特にアルミニウム電解槽の陰極堆積物と、少なくとも1つの疎水結合剤とを含む陰極堆積材料であって、前記疎水結合剤が、ロウ、ロウ状化合物またはそれらの混合物から選択されることを特徴とする陰極堆積材料。
【請求項2】
前記陰極堆積材料の総重量に対して、30~90重量%の陰極堆積物と10~70重量%の疎水結合剤とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の陰極堆積材料。
【請求項3】
前記陰極堆積物が、50mm未満の粒度を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の陰極堆積材料。
【請求項4】
前記陰極堆積物が、第1フラクションもしくは第2フラクションまたは前記第1フラクションおよび前記第2フラクションの混合物から構成されることを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載の陰極堆積材料。
【請求項5】
前記疎水結合剤が、DIN ISO 2176による35℃~75℃の滴点を有することを特徴とする、請求項1~4の何れか一項に記載の陰極堆積材料。
【請求項6】
前記ロウが、天然ロウ、部分合成ロウまたは合成ロウおよびそれらの混合物、好ましくはポリオレフィンワックス、特にポリエチレンワックス、またはパラフィンワックスから選択されることを特徴とする、請求項1~5の何れか一項に記載の陰極堆積材料。
【請求項7】
前記ロウ状化合物が、グリセリンと、好ましくは4~26、通常12~22の炭素原子を含む直鎖炭素から成る脂肪酸とのエステル、脂肪酸、特に13~21の炭素原子を含む直鎖脂肪族モノカルボン酸、およびその混合物から選択され、好ましくは前記ロウ状化合物がステアリンであることを特徴とする、請求項1~6の何れか一項に記載の陰極堆積材料。
【請求項8】
前記陰極堆積材料が、ペレット、繭、鋳物、ブリケットまたは押し出し成形物の形状で存在することを特徴とする、請求項1~7の何れか一項に記載の陰極堆積材料。
【請求項9】
前記陰極材料が、二次的燃料連邦品質保証協会のRAL-GZ724方法により決定される10500~31000kJ/kgの真発熱量を有することを特徴とする、請求項1~8の何れか一項に記載の陰極堆積材料。
【請求項10】
以下のステップ、
(a)特にアルミニウム電解槽の陰極堆積物を準備するステップと、
(b)少なくとも1つの粉砕装置内で前記陰極堆積物を粉砕するステップと、
(c)前記陰極堆積物を、分離装置によって分別するステップと、
(d)前記陰極堆積物を、混合装置内でロウ、ロウ状化合物またはそれらの混合物から選択された少なくとも1つの疎水結合剤と混合するステップと、
(e)ステップ(d)で得られた混合物を分割するステップと、
(f)前記陰極堆積材料を取り出すステップと、
を含み、
前記ステップ(b)~(d)は不活性ガス雰囲気下で行われる、陰極堆積材料の製造方法。
【請求項11】
ステップ(b)の前記少なくとも1つの粉砕装置が粉砕機または破砕機であることを特徴とする、請求項10に記載の陰極堆積材料の製造方法。
【請求項12】
ステップ(c)の前記分離装置が篩であることを特徴とする、請求項10または11に記載の陰極堆積材料の製造方法。
【請求項13】
ステップ(d)で前記少なくとも1つの疎水結合剤が、前記混合装置に液状形で配量されるかまたは前記混合装置内での加熱によって液化されることを特徴とする、請求項10~12の何れか一項に記載の陰極堆積材料の製造方法。
【請求項14】
ステップ(e)の前記分割が、型内鋳造、ブリケット化、押出成形またはペレット化から選択されることを特徴とする、請求項10~13の何れか一項に記載の陰極堆積材料の製造方法。
【請求項15】
請求項1~9の何れか一項に記載の陰極堆積材料の、好ましくは発電機内での、ならびにロックウール、セメントおよび鋼鉄製造の際の、燃料としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陰極堆積材料(独:Kathodenausbruchsmaterial)、その製造方法および、好ましくは発電所での、ならびにロックウール、セメントおよび鋼鉄を製造するときの、燃料としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムの製造は、通常、ホール-エルー法によるアルミニウム電解槽内での溶融塩電解によって行われる。酸化アルミニウムおよび氷晶石から成る溶融混合物の電気分解では、形成したアルミニウムが陰極に析出し、陽極では酸素が陽極の黒鉛と反応して二酸化炭素および一酸化炭素となる。時が経つと黒鉛陽極は消耗するので交換しなければならない。
【0003】
主に同じく黒鉛から構成される陰極ライニングは、アルミニウムに対して不活性である。ところがナトリウムが、溶融浴から陰極ライニングにより吸収され、電解質に対する陰極ライニングの湿潤性能を変える侵入型化合物を形成する。溶融した氷晶石および酸化アルミニウム塩は、容易に細孔および亀裂を通って陰極ライニング内へ侵入し、時が経つとこれを完全に含浸し、そのことから電解槽の生産性ならびにそのエネルギー消費を悪化させる。さらに、アルミニウム中の鉄およびケイ素不純物の含有量が増加する。
【0004】
このことから、工業アルミニウム電解槽内の陰極ライニングの平均操業期間は、通常4~7年である。実際の寿命は、陰極ライニング内の亀裂により陰極ライニングが予定より早く機能停止する場合には、さらに短くなることもある。
【0005】
アルミニウム電解槽の陰極ライニングを交換するために、陰極ライニングは機械的に、例えば空気ハンマを用いてこじ開けられて除去される。そのときに生じる陰極堆積物(独:Kathodenausbruch)は、「使用済みポットライニング(SPL)」とも呼ばれ、工業的には、陰極ライニングの材料を含む「第1フラクション」と、陰極ライニングの材料と耐熱ライニングから成る混合物を含む「第2フラクション」とに分割される。
【0006】
陰極堆積物のさらなる処理に関連して、陰極ライニングの黒鉛から構成される第1フラクションが、陰極ライニングの黒鉛と耐熱ライニングの混合物を表す第2フラクションから分離される。通常、陰極堆積物は、約55%の第1フラクションと45%の第2フラクションから構成される。
【0007】
第1フラクションの陰極堆積物は、主に揮発性成分と硫黄を少量含有する黒鉛から構成される。ただし、アルミニウム電解中に陰極ライニングの表面あるいは内部にシアン化物のような毒性化合物が、例えばシアン化ナトリウムならびにフッ化物の形で蓄積する。これらの毒性化合物は、水および/または空気、特に酸素との反応性が高く、とりわけ発熱、毒性ガスの発生ならびに引火となり得る。したがって陰極堆積物は、ほとんどの国々で、例えば危険物国際道路輸送に関する欧州協定(ADR)の意味において危険な廃棄物および危険物と格付けされている。特に陰極堆積物は、輸送文書内でUN3170廃棄物、アルミニウム製造の副生成物、4.3、III、(E)で表され、クラス4.3の危険物:「水との接触で引火性ガスを発生する物質」と格付けされている。
【0008】
水および/または空気酸素との反応性は、陰極堆積物の活用性を制限し、あるいは手数のかかる貯蔵条件と廃棄処理方法をもたらし、且つそれに結び付くコストを高める。
【0009】
現在、世界的にアルミニウム製造の際に生じる陰極堆積物の大部分が埋立地に廃棄されている。一方で規制が緩い国々では、陰極堆積物が全く再処理されることなく埋立地に廃棄されている。その他の国々では、埋立地に廃棄する前に手数のかかる熱的あるいは湿式処理が必須であり、標準技術であると認識されている。それと同時に、陰極堆積物は炭素の割合が高いことから熱的に非常に注目すべき真発熱量を有するので、考えられ得る廃棄処理方法としては、陰極堆積物の燃料としての使用が望ましい。
【0010】
ただし、危険物として格付けされた陰極堆積物の燃料としての使用は、手数のかかる搬送、貯蔵および加工性によって制限される。さらに、陰極堆積物の燃料としての有用性ならびにその処理コストは、陰極堆積物の破片の大きさに著しく左右される。
【0011】
陰極堆積物の比較的大きい断片は、燃料として使用するために比較的少ないコストで利用者に移送することによって処理することができる一方で、陰極堆積物の比較的小さいグリットのような断片や粉塵は、それらの大きい表面積とそれに結び付く比較的高い反応性のために、しばしばリサイクル工場で燃料としては使用できないので、用途を見つけるのが困難である。陰極堆積物の比較的小さい断片の比較的高い反応性がこのことをより危険にし、それにより搬送および操作をより困難にする。したがって、陰極堆積物のこれらの小さい断片の処理は、相応に手数がかかり、且つコスト高になる。
【0012】
特許文献1は、少なくとも65重量%の炭素量を有する陰極堆積物ならびに燃料としてのその使用を記載している。そこでは高い炭素量が、陰極堆積物の第1フラクションのみを使用し且つ選択的にこれに追加して炭素濃縮化合物を添加することによって生じ、このとき炭素濃縮化合物は、黒鉛陽極の副生成物または黒鉛陰極生成物などの適当な製錬残留物から選択される。そのような副生成物は、特許文献1には詳しく記されていないが、例えば製造スクラップからの粉塵、破片または切りくずと考えられる。このときに生じた炭素濃縮陰極堆積物は、比較的高い真発熱量を有するが、陰極堆積物中に含まれる、水および/または空気酸素と激しく反応するシアン化物やフッ化物のために、引き続き危険物である。
【0013】
特許文献2は、陰極堆積物と石炭コークスの混合物ならびにコークス炉ピッチから構成される、とりわけブリケットでの、ロックウール-キュポラの燃料装入分として使用されるロックウールの製造方法を記載している。これによって炉内の、ロックウールの製造中に生じる望まれないケイ素の沈積が減少される。このとき、ブリケットは、好ましくはおよそ40%の石炭コークス、0.45%の陰極堆積物および15%のコークス炉ピッチを含有する。このブリケットの短所は、これが極めて少ない量の陰極堆積物しか含まず、それにより僅かな分量の陰極堆積物のみ燃料として使用され且つ処理され得ることである。さらに、結合剤として使用したコークス炉ピッチは、これが高温では処理用のぞき窓への粘着性が高く、多環式芳香族炭化水素などの部分的に発がん性の内容物であることから、操作が技術的に困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第2014/026138(A1)号
【特許文献2】国際公開第88/06572(A1)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
この背景から、本発明の目的は、陰極堆積物の小粒状の断片および粉塵の安全な貯蔵および安全な輸送をも保証し、先行技術で挙げられた短所を有さない陰極堆積材料を提供することにある。本発明のさらなる目的は、そのような陰極堆積材料の容易な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的は、特にアルミニウム電解槽の陰極堆積物と、少なくとも1つの疎水結合剤とを含む陰極堆積材料によって実現され、疎水結合剤は、ロウ、ロウ状化合物またはそれらの混合物から選択される。
【0017】
本発明の対象は、さらに、陰極堆積材料の製造方法ならびに本発明の陰極堆積材料の燃料としての使用である。
【0018】
驚くことに、ロウ、ロウ状化合物またはそれらの混合物から選択された疎水結合剤を陰極堆積物に添加することによって、水および/または空気酸素に対してそれほど反応しないのでその貯蔵および輸送安定性が保証される陰極堆積材料が得られることが分かった。陰極堆積物は、本発明にしたがって用意された疎水結合剤を添加することによって、これが危険物として輸送される廃棄物とは見なされないほど完全に不活性化される。特に本発明の陰極堆積材料は、水と接触しても可燃性ガスを発生せず、したがって下位等級4.3の危険物として輸送しなくてもよく、それに応じた輸送文書が添えられている。したがって、本発明の陰極堆積材料は容易に貯蔵および輸送されることができ、このことは、好ましくは発電所内での、ならびにロックウール、セメントおよび鋼鉄製造における、その燃料としての処理をより安価にし、したがって埋め立てより経済的により魅力的にする。燃料としての使用は、環境上の観点からも埋め立てよりも好ましい。
【0019】
本発明による解決法のさらなる長所は、本発明の陰極堆積材料中に、ロウ、ロウ状化合物またはそれらの混合物から選択された疎水結合剤を存在させることによって、陰極堆積物の真発熱量が疎水結合剤の添加量に応じてさらに上昇し、陰極堆積物を燃料として使用する際の異なる装入の間の真発熱量の変動が重要ではなくなることにある。驚くことに、本発明の陰極堆積材料によって、燃焼挙動を大きな自由度で調整し、燃料として使用する際にそれぞれの使用過程に適合させて、対応する再処理方法の要求に正確に適合させられることが分かった。
【0020】
本発明の追加の長所は、その高い表面積のために水および/または空気酸素と激しく反応する陰極堆積物の小さいグリットのような断片や粉塵も、ロウ、ロウ状化合物またはそれらの混合物から選択された疎水結合剤で凝集し、大幅に不活性化させられるので、これまで反応性と大きさに基づいて手数およびコストをかけてのみ処理されてきた陰極堆積物のこれらの成分も、安価に且つ安全に燃料として使用できることにある。したがって、例えばロックウール製造に使用できる陰極堆積物の大きさは、炉の仕込み量の特定の通気性を保証するために、通常50mmより大きい断片に限定される。本発明の方法によって、陰極堆積物の50mm未満の小さい断片も、ロウ、ロウ状化合物またはそれらの混合物から選択された疎水結合剤を用いて、それぞれの再処理方法の設定に適合した陰極堆積材料の大きさに凝集させることができる。
【0021】
本発明の枠内では、陰極堆積物と陰極堆積材料とは異なる。陰極堆積材料は、本発明の意味においては、陰極堆積物が疎水結合剤により凝集形で存在することを表す。凝集するとは、陰極堆積物の個々の粒子が疎水結合剤によって、より大きい構造へ結合することを表す。
【0022】
本発明の陰極堆積材料は、特にアルミニウム電解槽の陰極堆積物を含む。
【0023】
陰極堆積材料と区別するために、本発明にしたがって陰極堆積物は、陰極ライニング、特にアルミニウム電解槽の陰極ライニングを機械的にこじ開けて除去する際に得られる原料と理解される。本発明の意味での陰極堆積物は、使用済みポットライニング(SPL)とも呼ばれる。陰極堆積物は、疎水結合剤を含まない。
【0024】
実際には、アルミニウム電解槽の陰極堆積物の第1フラクションと第2フラクションとは異なる。第1フラクションが電解槽の陰極ライニングの材料からのみ、則ち主に黒鉛から構成されるのに対して、第2フラクションは電解槽の耐熱ライニングの部分をも含む。
【0025】
本発明の陰極堆積材料中の陰極堆積物は、第1フラクションもしくは第2フラクションまたは第1フラクションと第2フラクションの混合物から構成できる。したがって、それぞれの再処理方法の設定に適合した陰極堆積材料の作成が可能である。例えばセメント製造で陰極堆積物を燃料として使用する場合には、通常第1フラクションおよび第2フラクションが投入される一方で、ロックウール製造の場合には、通常第1フラクションのみが投入される。
【0026】
陰極堆積物の第1フラクションは、通常40~75重量%の炭素、10~20重量%のフッ化物、8~17重量%のナトリウム、10重量%までの酸化アルミニウム、5重量%までのアルミニウム(金属)、0.01~0.5重量%のシアン化物、6重量%までの二酸化ケイ素、1~6重量%の酸化カルシウム、0.1~0.3重量%の硫黄ならびに300ppmまでの多環式芳香族炭化水素を含む。
【0027】
陰極堆積物の第2フラクションは、通常0~20重量%の炭素、4~10重量%のフッ化物、6~14重量%のナトリウム、10~50重量%の酸化アルミニウム、10~50重量%の二酸化ケイ素、1~8重量%のカルシウムならびに0.1~0.3重量%の硫黄を含む。
【0028】
陰極堆積物の第1フラクションの組成は、陰極ライニングのその停止までの操業期間に応じて変化する。耐熱ライニングと少量の陰極ライニングから構成される第2フラクションの組成は、陰極ライニングの操業期間にはあまり左右されない。しかしながらその組成は、停止の際の耐熱ライニングと陰極ライニングの割合の異なる比率によって同じく変化し得る。
【0029】
陰極堆積物の第1フラクションおよび第2フラクションの混合物は、通常25~35重量%の炭素、12~18重量%のフッ化物、12~18重量%のナトリウム、12~18重量%のアルミニウム、0.28重量%までのシアン化物、3.5重量%までの二酸化ケイ素、3.5重量%までの酸化カルシウム、0.1~0.3重量%の硫黄ならびに165ppmまでの多環式芳香族炭化水素を含む。
【0030】
好ましくは、陰極堆積物の第1フラクションおよび第2フラクションの混合物は、50~60重量%の第1フラクションと40~50重量%の第2フラクションとを有する。
【0031】
本発明の陰極堆積材料に含まれる陰極堆積物は、それぞれ根本的に疎水結合剤との凝集に適した形状および大きさで存在することができる。ところがペレット、鋳物、ブリケットまたは押し出し成形物の製造に関しては、陰極堆積物が可能な限り均一な粒度で存在する場合にプロセス技術的に有利であると証明された。陰極堆積物の可能な限り均一な粒度を使用することによって、それにより製造されたペレット、鋳物、ブリケットまたは押し出し成形物はより安定になり、個々のペレット、鋳物、ブリケットまたは押し出し成形物から次の個々のペレット、鋳物、ブリケットまたは押し出し成形物への総発熱量などの性質に関して安定した品質が保証される。
【0032】
好ましくは、したがって陰極堆積物が50mm未満、特に30mm未満、とりわけ好ましくは0.2mm未満の粒度を有する。陰極堆積物は、適当な粉砕機により目標の細かさへ粉砕できる。個々の細かさは、篩法による分粒によって適当な断片へ分けられる。それぞれ所望の最終製品(ペレット、鋳物、ブリケットまたは押し出し成形物)毎に異なる粒度が有利となり得る。したがって、例えばペレットと押し出し成形物の製造に関しては可能な限り小さく均一な粒度が有利である一方で、鋳物とブリケットの製造に関しては比較的大きい粒度およびあまり均一でない粒度分布も使用できる。
【0033】
本発明の陰極堆積材料は、ロウ、ロウ状化合物またはそれらの混合物から選択された少なくとも1つの疎水結合剤を含む。
【0034】
本発明の意味での疎水結合剤は、水と混合しない結合剤と理解される。水中の疎水結合剤がほぼ不溶である一方で、これらは有機の無極性媒体に溶解する。
【0035】
ロウは、通常、20℃で捏和でき、硬質から脆性硬質であり、粗い構造から微細結晶構造まで有し、色彩は半透明から不透明であるが透明ではなく、40℃を超えると分解せずに溶融し、ならびに融点をわずかに超えるとすでに流動的になるかあるいは低粘性を有し、温度に強く依存する粘稠性および溶解度を有し、ならびに軽い圧力下でつや出しできる物質あるいは物質混合物として定義される。
【0036】
ロウ状化合物は、ロウと類似の物理的挙動を有する化合物と理解される。
【0037】
本発明によると、当業者に周知の全ての天然ロウ、部分合成ロウおよび合成ロウが疎水結合剤として考慮の対象となる。
【0038】
天然ロウの例は、羊毛ロウ、シナロウ、蜜ロウ、尾腺脂、タルク、サトウキビロウ、カルナバロウ、キャンデリラロウ、コルクロウ、グルマロウ、オリキュリーロウ、キューバ-ヤシロウ、ハネガヤロウ、木綿ロウ、米ぬかロウ、亜麻ロウ、泥炭ロウ、ローズロウ、ジャスミンロウ、ピーサロウ、ギンバイカロウ、イチジクロウ、石油ロウ、オゾケライト、ラシャロウ、穀物ロウ、モンタンワックス、石油ロウならびにパラフィンワックスである。
【0039】
部分合成ロウの例は、長鎖ロウ酸と一価の脂肪またはロウアルコールとから成るエステルロウ、脂肪およびロウ酸のアミド、ジステアリルエチレンジアミド、エチレンジステアルミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、大豆ロウ、リチヌスロウ、菜種ロウ、フタルアミドロウなどの脂肪酸ベースのアミドロウ、ならびに脂肪およびロウ酸のアシル化アミドである。
【0040】
合成ロウの例は、炭化水素ロウ、ポリエチレンワックス、EVAワックスおよびポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックス、ポリエステルワックスならびにフィッシャートロプシュワックスである。
【0041】
好ましくは、ロウはポリオレフィンワックス、特にポリエチレンワックス、またはパラフィンワックスから選択される。
【0042】
通常当業者に周知のロウ状化合物の使用も、本発明によると基本的に可能である。
【0043】
好ましくは、ロウ状化合物は、グリセリンと、好ましくは4~26、通常12~22の炭素原子を含む直鎖炭素から成る脂肪酸とのエステル、脂肪酸、特に13~21の炭素原子を含む直鎖脂肪族モノカルボン酸、およびその混合物、好ましくはステアリンから選択される。
【0044】
ロウ、ロウ状化合物またはそれらの混合物から選択された、DIN ISO 2176による35℃~75℃の滴点を有する少なくとも1つの疎水結合剤の使用がとりわけ実際に即していると判明した。
【0045】
この範囲の滴点を有する疎水結合剤は、周囲温度での十分な強度と、可能な限りエネルギー効率の良い陰極堆積材料の製造方法との間のバランスが良い。比較的低い滴点に基づいて、陰極堆積材料の製造で疎水結合剤を液化させるために供給すべきエネルギー量は、DIN ISO 2176による75℃を超える滴点を有する疎水結合剤の場合より少ない。
【0046】
疎水結合剤の滴点は、疎水結合剤が周囲温度で十分な強度があることを保証するために、陰極堆積材料が貯蔵および輸送される季節および/または気候地域に応じて有利に選択される。したがって、比較的寒い季節および/または温和な気候地域では、DIN ISO 2176による35℃~45℃の範囲の滴点を有する疎水結合剤で十分である一方で、比較的暖かい季節および/または亜熱帯および熱帯の気候地域では、DIN ISO 2176による45℃~75℃の範囲の滴点を有する疎水結合剤が有利となり得る。
【0047】
さらに、疎水結合剤が可能な限り少ない割合の官能基を含む場合、好ましくは官能基を含まない場合がとりわけ有利である。官能基は、ここでは純粋な炭素-炭素または炭素-水素単結合とは異なる化学基と理解される。そのような疎水結合剤は、本発明の陰極堆積材料と水および/または空気酸素との反応性をさらに明白に減少させるので、その貯蔵および輸送安定性がさらに改善される。さらに、疎水結合剤中の炭素の割合が比較的高いことによって、陰極堆積材料を燃料として使用する場合のその真発熱量も上昇する。
【0048】
本発明のとりわけ好ましい一実施態様によると、陰極堆積材料は、二次的燃料連邦品質保証協会(独:Bundesguetegemeinschaft Sekundaerbrennstoffe)のRAL-GZ724方法により決定される10500~31000kJ/kgの真発熱量を有する。疎水結合剤を添加することによって、通常7500~高々10000kJ/kgの範囲にある陰極堆積物の真発熱量が明白に上昇する。
【0049】
本発明の陰極堆積材料は、再処理方法の要求にそれぞれ適合させることができる。再処理方法にしたがって、陰極堆積材料は、それぞれペレット、繭、鋳物、ブリケットまたは押し出し成形物の形状で有利に存在できる。
【0050】
本発明の好ましい一実施態様によると、陰極堆積材料はペレットまたは押し出し成形物の形状で存在し、陰極堆積材料の総重量に対して75~90重量%の陰極堆積物と10~25重量%の疎水結合剤とを含む。
【0051】
容易に配量可能なペレットまたは押し出し成形物の形状の陰極堆積材料は、例えばロータリキルン内でセメントを製造する場合または発電所の稼動時に、真発熱量調節燃焼で陰極堆積材料を燃料として使用するのに有利である。ここでは目標温度を、既知の総発熱量の均一な燃料を装入することによって確実に予測できる。燃料の供与形(独:Darreichungsform)が小さければ小さいほど達成温度をより細かく調節できる。特定の範囲での目標温度の達成は、製造された製品の品質を維持するために重要である。
【0052】
本発明の代替的な好ましい一実施態様によると、陰極堆積材料はブリケットの形状で存在し、陰極堆積材料の総重量に対して60~80重量%の陰極堆積物と20~40重量%の疎水結合剤とを含む。
【0053】
ブリケットの形状の陰極堆積材料は、例えばロックウール製造で使用されるキュポラ内、およびバッチ炉内、例えば製鋼に使用される電気アーク炉内で、真発熱量粗調節燃焼で陰極堆積材料を燃料として使用するのに有利である。ブリケットでは、ペレットに比べて供与形が比較的粗いために装入の必要な通気性が容易に達せられると同時に、この比較的粗い供与形にもかかわらず、既知の総発熱量の均一な燃料を装入することによって目標温度を確実に調節できる。
【0054】
本発明のさらなる代替的な好ましい一実施態様によると、陰極堆積材料は鋳物の形状で存在し、陰極堆積材料の総重量に対して30~80重量%の陰極堆積物と20~70重量%の疎水結合剤とを含む。
【0055】
鋳物の形状の陰極堆積材料は、例えばロックウール製造で使用されるキュポラ内、ならびにバッチ炉内、例えば電気アーク炉内で、真発熱量粗調節燃焼で陰極堆積材料を燃料として使用するのに有利である。ブリケットを使用する場合と同様に、鋳型は多くの燃料でも通気して工程内へ装入する可能性を与え、それと同時に既知の総発熱量の均一な燃料のために確実に温度調節できるようにする。
【0056】
本発明のさらなる対象は、陰極堆積材料の製造方法であり、これは以下のステップ、
(a)特にアルミニウム電解槽の陰極堆積物を準備するステップと、
(b)少なくとも1つの粉砕装置内で陰極堆積物を粉砕するステップと、
(c)陰極堆積物を、分離装置によって分別するステップと、
(d)陰極堆積物を、混合装置内でロウ、ロウ状化合物またはそれらの混合物から選択された少なくとも1つの疎水結合剤と混合するステップと、
(e)ステップ(d)で得られた混合物を分割するステップと、
(f)陰極堆積材料を取り出すステップと、
を含み、ステップ(b)~(d)は不活性ガス雰囲気下で行われる。
【0057】
本発明の方法は、これが陰極堆積材料の容易且つ安価な、ならびにエネルギー効率の良い製造を保証することを特徴としている。その際、本発明の陰極堆積材料に対する、先の個々の技術的特徴に関する言及は、本発明の方法の一致する技術的特徴に対して相応に適用される。
【0058】
本発明の方法のステップ(a)は、特にアルミニウム電解槽の陰極堆積物を準備することである。ステップ(a)の陰極堆積物の準備は、陰極堆積物のどのような形状および大きさでも行うことができ、陰極堆積物の輸送の技術的可能性によってのみ制限される。したがって、本発明にしたがって、1mの長さを超える陰極堆積物の粗い破片やプレートも、陰極堆積物の非常に細かい粉塵も、ならびに通常陰極ライニングの機械的な破砕で生じるような異なる粒度およびプレートの大きさの混合物もステップ(a)で使用できる。
【0059】
この方法のステップ(b)では、陰極堆積物が少なくとも1つの粉砕装置内で粉砕される。その際、少なくとも1つの粉砕装置としては、基本的に当業者に周知の粉砕装置が使用できる。好ましくは、ステップ(b)の少なくとも1つの粉砕装置は、粉砕機または破砕機である。ここでは、例えばボールミル、衝撃式粉砕機、ハンマミル、垂直ミルまたは圧砕機が使用できる。この少なくとも1つの粉砕装置は、陰極堆積物のプレートの大きさおよび/または粒子の大きさを減少させられる。
【0060】
本発明の方法のステップ(c)では、分離装置による陰極堆積物の分別が行われる。本発明にしたがって、陰極堆積材料の均一な粒度を保証する分離装置が使用できる。好ましくは、ステップ(c)の分離装置は篩である。しかし別の分離装置も基本的には考えられ、それによって陰極堆積物の特定の粒度の微細部分が、ステップ(b)で粉砕された陰極堆積物から分離される。その際、ステップ(c)の分別を、好ましくはステップ(b)の粉砕と同時に行うことができる。しかし、分別をステップ(b)の粉砕後に初めて行うことも考えられる。
【0061】
本発明の方法は、ステップ(d)で混合装置内での陰極堆積物と、ロウ、ロウ状化合物またはそれらの混合物から選択された少なくとも1つの疎水結合剤との混合が行われることである。そのような混合装置は、当業者には基本的に周知である。好ましくは、ステップ(d)で少なくとも1つの疎水結合剤が、混合装置に液状形で配量されるかまたは混合装置内での加熱によって液化される。液状形での配量は、例えば疎水結合剤を混合装置の単独の加熱された貯蔵容器から供給することによって達せられる。しかし、混合装置自体を加熱するかまたはロウを混合装置内の混合集合体のエネルギー量によって液化することも考えられる。
【0062】
本発明の方法のステップ(b)~(d)は不活性ガス雰囲気下で行われる。このことは、陰極堆積物、特にステップ(b)で生じたその微細部分が水および/または空気酸素と激しく反応し、その際、冒頭ですでに説明したように、とりわけ発熱、毒ガス発生ならびに引火が起こり得ることから必要である。そのような反応は、安全の観点から絶対に回避されなければならない。不活性ガスとしては、例えばヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトンおよびキセノンなどの希ガス、ならびに窒素が使用できる。環境上の理由から窒素の使用が本発明にしたがって好ましい。
【0063】
本発明の方法のステップ(e)では、ステップ(d)で得られた混合物が分割される。好ましくは、ステップ(e)の分割は、型内鋳造、ブリケット化、押出成形またはペレット化から選択される。
【0064】
さらに、ステップ(d)で得られた混合物を、すでにその前に準備した疎水結合剤の固い繭内に充填することも考えられる。この変態では、あまり均一ではない陰極堆積物も処理できることが有利である。したがって、この実施態様ではステップ(c)の分別が必ずしも必要ではない。疎水結合剤繭は、その際幾何空洞形状、特に中空球または中空円筒であり、中空球が好ましい。ステップ(e)の分割は、中空球繭の実施態様では、ステップ(d)で得られた混合物が疎水結合剤から成る固い中空半球内へ充填され、もう一方の固い中空半球が加熱後およびそれにより中空半球の周りの縁の軟化に続いて陰極堆積物で充填した中空半球上に蓋のように置かれ、そのことから陰極堆積物が疎水結合剤から成る固い繭により完全に包み込まれることで行われる。
【0065】
本発明の方法のステップ(e)のそれぞれ所望の分割方式毎に、ステップ(d)で異なる割合の陰極堆積物と結合剤とが好ましくは混合される。
【0066】
本発明の好ましい一実施態様によると、分割はペレット化または押出成形であり、ステップ(d)では陰極堆積物と疎水結合剤の混合物の総重量に対して75~90重量%の陰極堆積物と10~25重量%の疎水結合剤とが混合される。
【0067】
本発明の代替的な好ましい一実施態様によると、分割はブリケット化であり、ステップ(d)では陰極堆積物と疎水結合剤の混合物の総重量に対して60~80重量%の陰極堆積物と20~40重量%の疎水結合剤とが混合される。
【0068】
本発明のさらなる代替的な好ましい一実施態様によると、分割は型内鋳造であり、ステップ(d)では陰極堆積物と疎水結合剤の混合物の総重量に対して30~80重量%の陰極堆積物と20~70重量%の疎水結合剤とが混合される。
【0069】
本発明の方法は、ステップ(f)で陰極堆積材料を取り出すことである。その際、ステップ(f)で取り出された陰極堆積材料は、好ましくは上述の供与形で存在する。
【0070】
陰極堆積材料は、ステップ(f)で取り出される前に、貯蔵および輸送の際の陰極堆積材料の張り付きを防ぐために分離剤を供与できる。分離剤としては、粉末状の物質が考えられる。分離剤の例は、炭酸カルシウム、滑石またはケイ酸塩である。
【0071】
本発明の方法は、半連続または連続で行うことができる。
【0072】
最後に、本発明は、本発明の陰極堆積材料の、好ましくは発電機内での、ならびにロックウール、セメントおよび鋼鉄製造の際の、燃料としての使用に関する。
【0073】
それぞれ、どの利用工程で陰極堆積材料が最終的に燃料として使用されるかによって、陰極堆積材料の燃焼挙動をそれぞれの利用工程の様々な要求に適合させなければならない。このことは、本発明の陰極堆積材料を用いて、疎水結合剤の選択により、ならびに顆粒、ペレット、ブリケット、繭、押し出し成形物および鋳物などの様々な供与形により、陰極堆積物の疎水結合剤に対する割合を様々に調節することによって達成できる。
【0074】
陰極堆積材料を燃料として使用するために高温でも燃料の高い強度が要求される場合には、本発明の陰極堆積材料は、例えばロックウール製造で使用される形状安定燃料結合形体でも使用できる。
【0075】
その際、そのような燃料結合形体は、陰極堆積材料以外に通常、セメント、特にポートランドセメントなどの水硬性結合剤を含む。本発明の陰極堆積材料の有利な不活性によって、陰極堆積材料と燃料結合形体製造で使用される水とが反応することなく、そのような燃料結合形体が本発明の陰極材料の導入下で製造できる。
【0076】
本発明の陰極堆積材料が、それぞれの利用工程の様々な要求に適合された、さらに考えられ得る燃料結合形体を製造するための出発材料としても適していることは自明である。
【0077】
本発明の陰極堆積材料の技術的特徴およびその態様ならびに製造に関して、先の、本発明の陰極材料に関する、ならびにその製造方法に関する言及が相応に適用される。
【0078】
以下に本発明を例示的実施例に基づいて添付図面に関連付けて詳しく説明する。実施例は、本発明の説明のために用いられているに過ぎず、本発明の保護範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0079】
図1】本発明の陰極堆積材料の製造方法の一実施態様の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0080】
図1に、本発明の陰極堆積材料の製造方法の一実施態様を略図で示す。まず初めに、窒素で不活性化した粉砕機に、準備した50mm未満の粒度の陰極堆積物2を振動ホッパー3を介して供給する。粉砕機に提供するのに破片が大き過ぎるかまたは大きさ分布の開きが大き過ぎる場合には、同様に窒素で不活性化した破砕機を前置できる。提供された陰極堆積物2は、その際同時に粉塵分離として用いられる。底近辺にある篩4を使用して、陰極堆積物の微細部分が粉砕機から加熱された混合機5内へ送られる最終的な粒度が決定される。混合機5内では液化ロウが、陰極堆積材料の総重量に対して20~40重量%のロウ濃度になるまで配量ユニット6を介して入れられる。ロウは、予め加熱されたロウ貯蔵容器7内で液化された。混合機5内でロウと陰極堆積物の適切な混合比が達せられると、粉砕機1、場合によって前置された破砕機および配量ユニット6を介したロウ供給は停止される。混合機5内の混合回転方向が変えられ、陰極堆積材料/ロウ混合物がわずかに円錐形の鋳型8内へ流し込まれる。室温に冷却後に、完成した陰極堆積材料が鋳型8から取り出され、それにより鋳物として存在する。
【実施例
【0081】
陰極堆積物1300kgを垂直ミルに供給した。この陰極堆積物は予備選別されており、コランダムまたはアルミニウムなどの不純物は無く、5cmより大きい破片を含んでいなかった。
【0082】
粉砕工程は窒素雰囲気下で行われ、10%>90μmの目標の細かさで実施された。これは、粉砕終了後に陰極堆積物の90%が90μm未満であり、残りの10%がおよそ150~200μmであったことを表す。
【0083】
ペレット製造-変態A-部分ペレット化
粉砕した陰極堆積物1800gをペレット化皿上へ置き、70℃に予備加熱した。10~15重量%のロウの添加によって、外側が固い円形殻を形成し、内側がほぼ乾燥した粉砕物を含むペレットが得られた。
【0084】
ペレット製造-変態B-全ペレット化
さらなる一実施例では、粉砕した陰極堆積物1800gをペレット化皿上へ置き、80℃に予備加熱し、17~21重量%のロウを添加した。全直径上にロウと粉砕物の混合物を含むペレットが得られた。ペレット製造の際のペレット化皿のピッチ角は垂線に対して30°であり、回転数は30rpmであった。
【0085】
ペレット化は、粉砕した陰極堆積物を、(縁を越えて落ちる)ペレット取り出しが質量に比例するように供給する、半連続法で行われた。予備加熱した液化ロウも、対応する比率で配量された(あるいは吹き付けられた)。ペレット製造の際のペレット化皿のピッチ角は垂線に対して30°であり、回転数は30rpmであった。
【0086】
部分ペレット化に対しても全ペレット化に対しても、引き続いてRAL-GZ724による真発熱量および総発熱量解析が行われた。結果を表1にまとめる。
【0087】
【表1】
【0088】
表1に挙げられた「オリジナル物質」は、ペレット化機械から取り出されたペレットと理解される。「乾燥物質」は、ペレット化機械から取り出された後でDIN EN 14346にしたがって乾燥されたペレットと理解される。
【0089】
回転速度を20~40rpmへ、ピッチ角を垂線に対して15°~30°へ変化させることによって、基本的に様々な平均直径d=8~17mmを有するペレットを得ることができる。
【0090】
鋳物の製造
さらなる一実施例では鋳物が製造された。これに関して、陰極堆積物の微細部分から3mm未満の濾過断片が分離され且つ使用された。
【0091】
バッチ法でそれぞれおよそ70~80℃の融点をもつパラフィンおよそ3kgが液化され、およそ100℃に加熱された。100℃における動粘性率は3~10mm/secである。
【0092】
絶えず撹拌しながら、陰極堆積物の微細部分から分離された3mm未満の濾過断片10kgがゆっくり少量で添加された。全てを均一な素地に撹拌後、まず初めに鋳物8kgが注ぎ込まれた。混合機内に残った素地へ、再びパラフィン3kgが添加され、溶融後に新たに陰極堆積物の微細部分から分離された3mm未満の濾過断片の微細部分10kgが撹拌下で添加された。そこから第2の鋳物が作製された。さらなる鋳物は、相応に各ステップを繰り返すことによって作製された。
【0093】
陰極堆積物の微細部分から分離された3mm未満の濾過断片の鋳物は、凝固工程中にいくらか脱均質化する。このことから、鋳物表面近くのロウ濃度が高くなる。
【0094】
陰極堆積物がより細かくなるにしたがって、どの供与形が選択されるかに係わらず、安定的な成形のためにより少ないロウが必要になると考えられる。物理的安定性のために必要なロウよりも多く添加することは、真発熱量を任意に上昇させ、次の使用の要求に適合させるための良好な手段である。
図1
【手続補正書】
【提出日】2023-09-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルミニウム電解槽の陰極堆積物と、少なくとも1つの疎水結合剤とを含み、前記陰極堆積物が前記疎水結合剤により凝集形状で存在する陰極堆積材料であって、前記疎水結合剤が、ロウ、ロウ状化合物またはそれらの混合物から選択され
前記陰極堆積材料が、前記陰極堆積材料の総重量に対して、30~90重量%の陰極堆積物と10~70重量%の疎水結合剤とを含むことを特徴とする陰極堆積材料。
【請求項2】
前記陰極堆積物が、50mm未満の粒度を有することを特徴とする、請求項1に記載の陰極堆積材料。
【請求項3】
前記陰極堆積物が、第1フラクションもしくは第2フラクションまたは前記第1フラクションおよび前記第2フラクションの混合物から構成され、前記第1フラクションは陰極ライニングの黒鉛から構成され、前記第2フラクションは前記陰極ライニングの前記黒鉛と耐熱ライニングとの混合物を表すことを特徴とする、請求項1または2に記載の陰極堆積材料。
【請求項4】
前記疎水結合剤が、DIN ISO 2176による35℃~75℃の滴点を有することを特徴とする、請求項1~の何れか一項に記載の陰極堆積材料。
【請求項5】
前記ロウが、天然ロウ、部分合成ロウまたは合成ロウおよびそれらの混合物、好ましくはポリオレフィンワックス、特にポリエチレンワックス、またはパラフィンワックスから選択されることを特徴とする、請求項1~の何れか一項に記載の陰極堆積材料。
【請求項6】
前記ロウ状化合物が、グリセリンと、好ましくは4~26、通常12~22の炭素原子を含む直鎖炭素から成る脂肪酸とのエステル、脂肪酸、特に13~21の炭素原子を含む直鎖脂肪族モノカルボン酸、およびその混合物から選択され、好ましくは前記ロウ状化合物がステアリンであることを特徴とする、請求項1~の何れか一項に記載の陰極堆積材料。
【請求項7】
前記陰極堆積材料が、ペレット、繭、鋳物、ブリケットまたは押し出し成形物の形状で存在することを特徴とする、請求項1~の何れか一項に記載の陰極堆積材料。
【請求項8】
前記陰極材料が、二次的燃料連邦品質保証協会のRAL-GZ724方法により決定される10500~31000kJ/kgの真発熱量を有することを特徴とする、請求項1~の何れか一項に記載の陰極堆積材料。
【請求項9】
以下のステップ、
(a)ルミニウム電解槽の陰極堆積物を準備するステップと、
(b)少なくとも1つの粉砕装置内で前記陰極堆積物を粉砕するステップと、
(c)前記陰極堆積物を、分離装置によって分別するステップと、
(d)前記陰極堆積物を、混合装置内でロウ、ロウ状化合物またはそれらの混合物から選択された少なくとも1つの疎水結合剤と混合するステップと、
(e)ステップ(d)で得られた混合物を分割するステップと、
(f)前記陰極堆積材料を取り出すステップと、
を含み、
前記ステップ(b)~(d)は不活性ガス雰囲気下で行われる、陰極堆積材料の製造方法。
【請求項10】
ステップ(b)の前記少なくとも1つの粉砕装置が粉砕機または破砕機であることを特徴とする、請求項に記載の陰極堆積材料の製造方法。
【請求項11】
ステップ(c)の前記分離装置が篩であることを特徴とする、請求項または10に記載の陰極堆積材料の製造方法。
【請求項12】
ステップ(d)で前記少なくとも1つの疎水結合剤が、前記混合装置に液状形で配量されるかまたは前記混合装置内での加熱によって液化されることを特徴とする、請求項11の何れか一項に記載の陰極堆積材料の製造方法。
【請求項13】
ステップ(e)の前記分割が、型内鋳造、ブリケット化、押出成形またはペレット化から選択されることを特徴とする、請求項12の何れか一項に記載の陰極堆積材料の製造方法。
【請求項14】
請求項1~の何れか一項に記載の陰極堆積材料の、好ましくは発電機内での、ならびにロックウール、セメントおよび鋼鉄製造の際の、燃料としての使用。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム電解槽の陰極堆積物と、少なくとも1つの疎水結合剤とを含み、前記陰極堆積物が前記疎水結合剤により凝集形状で存在する陰極堆積材料であって、前記疎水結合剤が、ロウ、ロウ状化合物またはそれらの混合物から選択され、
前記陰極堆積材料が、前記陰極堆積材料の総重量に対して、30~90重量%の陰極堆積物と10~70重量%の疎水結合剤とを含むことを特徴とする陰極堆積材料。
【請求項2】
前記陰極堆積物が、50mm未満の粒度を有することを特徴とする、請求項1に記載の陰極堆積材料。
【請求項3】
前記陰極堆積物が、第1フラクションもしくは第2フラクションまたは前記第1フラクションおよび前記第2フラクションの混合物から構成され、前記第1フラクションは陰極ライニングの黒鉛から構成され、前記第2フラクションは前記陰極ライニングの前記黒鉛と耐熱ライニングとの混合物を表すことを特徴とする、請求項1または2に記載の陰極堆積材料。
【請求項4】
前記疎水結合剤が、DIN ISO 2176による35℃~75℃の滴点を有することを特徴とする、請求項1に記載の陰極堆積材料。
【請求項5】
前記ロウが、天然ロウ、部分合成ロウまたは合成ロウおよびそれらの混合物、好ましくはポリオレフィンワックス、特にポリエチレンワックス、またはパラフィンワックスから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の陰極堆積材料。
【請求項6】
前記ロウ状化合物が、グリセリンと、好ましくは4~26、通常12~22の炭素原子を含む直鎖炭素から成る脂肪酸とのエステル、脂肪酸、特に13~21の炭素原子を含む直鎖脂肪族モノカルボン酸、およびその混合物から選択され、好ましくは前記ロウ状化合物がステアリンであることを特徴とする、請求項1に記載の陰極堆積材料。
【請求項7】
前記陰極堆積材料が、ペレット、繭、鋳物、ブリケットまたは押し出し成形物の形状で存在することを特徴とする、請求項1に記載の陰極堆積材料。
【請求項8】
前記陰極材料が、二次的燃料連邦品質保証協会のRAL-GZ724方法により決定される10500~31000kJ/kgの真発熱量を有することを特徴とする、請求項1に記載の陰極堆積材料。
【請求項9】
以下のステップ、
(a)アルミニウム電解槽の陰極堆積物を準備するステップと、
(b)少なくとも1つの粉砕装置内で前記陰極堆積物を粉砕するステップと、
(c)前記陰極堆積物を、分離装置によって分別するステップと、
(d)前記陰極堆積物を、混合装置内でロウ、ロウ状化合物またはそれらの混合物から選択された少なくとも1つの疎水結合剤と混合するステップと、
(e)ステップ(d)で得られた混合物を分割するステップと、
(f)前記陰極堆積材料を取り出すステップと、
を含み、
前記ステップ(b)~(d)は不活性ガス雰囲気下で行われる、陰極堆積材料の製造方法。
【請求項10】
ステップ(b)の前記少なくとも1つの粉砕装置が粉砕機または破砕機であることを特徴とする、請求項9に記載の陰極堆積材料の製造方法。
【請求項11】
ステップ(c)の前記分離装置が篩であることを特徴とする、請求項9または10に記載の陰極堆積材料の製造方法。
【請求項12】
ステップ(d)で前記少なくとも1つの疎水結合剤が、前記混合装置に液状形で配量されるかまたは前記混合装置内での加熱によって液化されることを特徴とする、請求項9に記載の陰極堆積材料の製造方法。
【請求項13】
ステップ(e)の前記分割が、型内鋳造、ブリケット化、押出成形またはペレット化から選択されることを特徴とする、請求項9に記載の陰極堆積材料の製造方法。
【請求項14】
請求項1に記載の陰極堆積材料の、好ましくは発電機内での、ならびにロックウール、セメントおよび鋼鉄製造の際の、燃料としての使用。
【国際調査報告】