(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】熱可塑性物質とともに使用するための組み合わされた難燃剤及び共力剤
(51)【国際特許分類】
C09K 21/12 20060101AFI20241031BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20241031BHJP
C08L 77/00 20060101ALI20241031BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20241031BHJP
C08K 5/5317 20060101ALI20241031BHJP
C08K 3/32 20060101ALI20241031BHJP
C09K 21/04 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C09K21/12
C08L67/00
C08L77/00
C08L101/00
C08K5/5317
C08K3/32
C09K21/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531358
(86)(22)【出願日】2022-11-16
(85)【翻訳文提出日】2024-07-24
(86)【国際出願番号】 US2022050062
(87)【国際公開番号】W WO2023096795
(87)【国際公開日】2023-06-01
(32)【優先日】2021-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505006666
【氏名又は名称】ランクセス・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】チンリアン・ヘ
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・ヤーコプス
【テーマコード(参考)】
4H028
4J002
【Fターム(参考)】
4H028AA07
4H028AA08
4H028AA12
4H028AA34
4H028BA06
4J002CF001
4J002CF051
4J002CL001
4J002CL011
4J002CL031
4J002DH037
4J002EW126
4J002FD136
4J002FD137
(57)【要約】
本開示は、本明細書で説明されるような、少なくとも1種のリン含有難燃剤及び少なくとも1種の次亜リン酸金属塩を含む新規の難燃剤及び共力剤添加剤組成物を提供する。ここで開示される添加剤の組み合わせは、熱可塑性ポリマーにおいて優れた難燃性能を示しながら、優れた加工安定性及び機械的特性ももたらす。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)実験式(I)
【化1】
[式中、Rは、H、アルキル、アリール、アルキルアリール、又はアリールアルキル基であり、M
(+)yが金属カチオンであり、ここで(+)yが、前記カチオンに形式上割り当てられた電荷を表すように、Mは金属であり、yは2又は3であり、a、b、及びcは、化合物において互いに対して対応する成分の比を表し、電荷平衡方程式2(a)+c=b(y)を満たし、cはゼロではない]
の少なくとも1種のリン含有難燃剤と、
(B)化学式
Me
(+)n(H
2PO
2)
n[式中、Meは金属カチオンであり、(+)nは、金属カチオンの酸化状態を表し、nは2又は3である]
の少なくとも1種の次亜リン酸金属塩と
を含む難燃剤及び共力剤添加剤組成物。
【請求項2】
実験式(I)において、aが0、1、又は2であり、bが1から4までであり、cが1又は2である、請求項1に記載の難燃剤及び共力剤添加剤組成物。
【請求項3】
yが3であり、aが1であり、bが1であり、cが1である、請求項1に記載の難燃剤及び共力剤添加剤組成物。
【請求項4】
Mが、Al、Ga、Sb、Fe、Co、B、及びBiから選ばれる、請求項3に記載の難燃剤及び共力剤添加剤組成物。
【請求項5】
Mが、Al又はFeである、請求項4に記載の難燃剤及び共力剤添加剤組成物。
【請求項6】
実験式(I)において、Rが、H、C
1~12アルキル、C
6~10アリール、C
7~18アルキルアリール、又はC
7~18アリールアルキルであり、前記アルキル、アリール、アルキルアリール、又はアリールアルキルは、非置換であるか、又はハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、C
1~4アルキルアミノ、ジC
1~4アルキルアミノ、C
1~4アルコキシ、カルボキシ、若しくはC
2~5アルコキシカルボニルによって置換されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の難燃剤及び共力剤添加剤組成物。
【請求項7】
Rが、非置換のC
1~12アルキル、C
6アリール、C
7~10アルキルアリール、又はC
7~10アリールアルキルである、請求項6に記載の難燃剤及び共力剤添加剤組成物。
【請求項8】
Rが、非置換のC
1~6アルキルである、請求項6に記載の難燃剤及び共力剤添加剤組成物。
【請求項9】
Rが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、及びt-ブチルから選ばれる、請求項8に記載の難燃剤及び共力剤添加剤組成物。
【請求項10】
MがAlであり、yが3であり、aが1であり、bが1であり、cが1である、請求項1から9のいずれか一項に記載の難燃剤及び共力剤添加剤組成物。
【請求項11】
前記次亜リン酸金属塩に対して、前記式中のnが2である、請求項1から10のいずれか一項に記載の難燃剤及び共力剤添加剤組成物。
【請求項12】
前記次亜リン酸金属塩が次亜リン酸カルシウムである、請求項11に記載の難燃剤及び共力剤添加剤組成物。
【請求項13】
前記次亜リン酸金属塩に対して、前記式中のnが3である、請求項1から10のいずれか一項に記載の難燃剤及び共力剤添加剤組成物。
【請求項14】
前記次亜リン酸金属塩が次亜リン酸アルミニウムである、請求項13に記載の難燃剤及び共力剤添加剤組成物。
【請求項15】
少なくとも1種の熱可塑性ポリマー、及び請求項1から15のいずれか一項に記載の難燃剤及び共力剤添加剤組成物を含む難燃性熱可塑性組成物。
【請求項16】
前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマーが、熱可塑性ポリエステル又は熱可塑性ポリアミドである、請求項15に記載の難燃性熱可塑性組成物。
【請求項17】
前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマーが、ポリアミド-4,6、ポリアミド-6、ポリアミド-6,6、ポリアミド-6,10、ポリアミド-6,12、ポリアミド-11、ポリアミド-12、ポリアミド-4,T、ポリアミド-MXD,6、ポリアミド-12,T、ポリアミド-10,T、ポリアミド-9,T、ポリアミド-6,T/6,6、ポリアミド-6,T/D,T、ポリアミド-6,6/6,T/6,I、ポリアミド-6/6,T、ポリアミド-6,T/6,I、及びそれらの混合物から選ばれる熱可塑性ポリアミドである、請求項16に記載の難燃性熱可塑性組成物。
【請求項18】
前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマーが、ポリアルキレンテレフタラートから選ばれる熱可塑性ポリエステルである、請求項16に記載の難燃性熱可塑性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱可塑性ポリマーのための難燃剤及び共力剤添加剤組成物、並びに難燃剤及び共力剤を含む難燃性熱可塑性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2020/132075号及び国際公開第2021/076169号は、様々な熱可塑性物質の用途における使用のための、高い熱安定性を有するある特定のリン含有難燃剤を開示している。
【0003】
本開示に従えば、ある特定の次亜リン酸金属塩と組み合わされた、国際公開第2020/132075号及び国際公開第2021/076169号において開示されているある特定のリン含有難燃剤は、熱可塑性ポリマーにおいて優れた難燃性能を示しながら、優れた加工安定性及び機械的特性ももたらすことが見出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2020/132075号
【特許文献2】国際公開第2021/076169号
【特許文献3】米国特許第9,745,449号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様において、本開示は、
(A)実験式(I)
【0006】
【0007】
[式中、Rは、H、アルキル、アリール、アルキルアリール、又はアリールアルキル基であり、M(+)yが金属カチオンであり、ここで(+)yが、カチオンに形式上割り当てられた電荷を表すように、Mは金属であり、yは2又は3であり、a、b、及びcは、化合物において互いに対して対応する成分の比を表し、電荷平衡方程式2(a)+c=b(y)を満たし、cはゼロではない]
の少なくとも1種のリン含有難燃剤と、
(B)化学式
Me(+)n(H2PO2)n
[式中、Meは金属カチオンであり、(+)nは、金属カチオンの酸化状態を表し、nは2又は3である]
の少なくとも1種の次亜リン酸金属塩と
を含む難燃剤及び共力剤添加剤組成物を提供する。
【0008】
難燃剤及び共力剤添加剤組成物は、(C)少なくとも1種の熱安定剤を更に含んでもよい。添加剤組成物は、(D)1種又は複数の追加の共力剤及び/又は1種又は複数の追加の難燃剤を追加的に含んでもよい。
【0009】
更なる態様において、本開示は、
(i)少なくとも1種の熱可塑性ポリマーと、
(ii)少なくとも1種の、上述の実験式(I)のリン含有難燃剤と、
(iii)上述のとおりの少なくとも1種の次亜リン酸金属塩と
を含む難燃性熱可塑性組成物を提供する。難燃性熱可塑性組成物は、以下、(iv)少なくとも1種の無機充填剤(例えば、ガラス繊維)、(v)少なくとも1種の熱安定剤、(vi)少なくとも1種の追加の共力剤及び/又は追加の難燃剤、及び(vii)熱可塑性組成物の特性を高めるための1種又は複数の更なる添加剤のうちの1つ又は複数を更に含んでもよい。
【0010】
前述の一般的な記載及び以下の詳細な記載はともに、例示のため、説明のためであるにすぎず、特許請求されるように本発明を制限するものではないことが理解されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
別段の指定がない限り、本願における「a」又は「an」という単語は、「1、又は1より多い」を意味する。
【0012】
本願における「アルキル」という用語は、文脈上別段の指示がない限り、「アリールアルキル」を含む。
【0013】
本願における「アリール」という用語は、文脈上別段の指示がない限り、「アルキルアリール」を含む。
【0014】
本明細書で使用される「ホスホン酸」という用語は、文脈上別段の指示がない限り、非置換の、又はアルキル若しくはアリール置換された、ホスホン酸を指す。
【0015】
本明細書で使用される「ピロホスホン酸」という用語は、文脈上別段の指示がない限り、非置換の、又はアルキル若しくはアリール置換された、ピロホスホン酸を指す。
【0016】
本開示の少なくとも1種のリン含有難燃剤(成分(A))は、以下の実験式
【0017】
【0018】
[式中、Rは、H、アルキル、アリール、アルキルアリール、又はアリールアルキル基であり、M(+)yが金属カチオンであり、ここで(+)yが、カチオンに形式上割り当てられた電荷を表すように、Mは金属であり、yは2又は3であり、a、b、及びcは、化合物において互いに対して対応する成分の比を表し、電荷平衡方程式2(a)+c=b(y)を満たし、cはゼロではない]を有する。多くの場合、aは0、1、又は2(例えば、0又は1)であり、bは1から4まで、例えば、1又は2であり、cは1又は2であり、生成物は平衡状態に荷電されている。好適な金属(M)の例としては、Al、Ga、Sb、Fe、Co、B、Bi、Mg、Ca、及びZnが挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
配位化合物では普通であるように、式(I)は、化合物が、配位ポリマー、錯塩、ある特定の原子価が共有されている塩等であってもよいように、実験的であるか、又は理想化されている。多くの実施形態において、実験式(I)は、配位ポリマーのモノマー単位(即ち、配位主体)を表し、それにより、伸張された配位ポリマー構造は、本開示のリン含有難燃剤を形成する。
【0020】
ある特定の実施形態において、式(I)におけるyは2であり(即ち、M(+)yはジカチオン性金属である)、aは0であり、bは1であり、cは2である。多くの場合、ジカチオン性金属Mは、Mg、Ca、又はZnである。他の実施形態において、式(I)におけるyは3であり(即ち、M(+)yはトリカチオン性金属である)、aは1であり、bは1であり、cは1である。トリカチオン性金属Mは、例えば、Al、Ga、Sb、Fe、Co、B、及びBiから選ばれてもよい。多くの場合、トリカチオン性金属Mは、Al、Fe、Ga、Sb、又はBである。
【0021】
好ましくは、実験式(I)のリン含有難燃剤が、以下の実験式:
【0022】
【0023】
を有するように、式(I)におけるMはAlであり、yは3である。
【0024】
本明細書において示されるように、実験式において下付き文字a、b、及びcが存在しないことは、下付き文字がそれぞれ1であり、ジアニオン性ピロホスホン酸配位子、金属原子、モノアニオン性ピロホスホン酸配位子の比1:1:1を意味することを示す。多くの実施形態において、実験式(II)は、配位ポリマーの繰り返しモノマー単位(即ち、配位主体)を表し、それにより、伸張された配位ポリマー構造は、本開示のリン含有難燃剤を形成する。
【0025】
多くの場合、Rは、H、C1~12アルキル、C6~10アリール、C7~18アルキルアリール、又はC7~18アリールアルキルであり、前記アルキル、アリール、アルキルアリール、又はアリールアルキルは、非置換であるか、又はハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、C1~4アルキルアミノ、ジC1~4アルキルアミノ、C1~4アルコキシ、カルボキシ、若しくはC2~5アルコキシカルボニルによって置換されている。いくつかの実施形態において、前記アルキル、アリール、アルキルアリール、又はアリールアルキルは、非置換のC1~12アルキル、C6アリール、C7~10アルキルアリール、又はC7~10アリールアルキル、例えば、C1~6アルキル、フェニル、又はC7~9アルキルアリールである。いくつかの実施形態において、Rは、置換された、又は非置換の、C1~6アルキル、C6アリール、C7~10アルキルアリール、又はC7~12アリールアルキル、例えば、C1~4アルキル、C6アリール、C7~9アルキルアリール、又はC7~10アリールアルキルである。多くの実施形態において、Rは、非置換のC1~12アルキル、例えば、C1~6アルキルである。
【0026】
アルキルとしてのRは、指定された数の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基であってもよく、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル等の非分岐アルキル、及びイソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、エチルヘキシル、及びt-オクチル等の分岐アルキル等を含む。例えば、アルキルとしてのRは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、及びt-ブチルから選ばれもよい。多くの実施形態において、Rは、メチル、エチル、プロピル、又はイソプロピル、例えば、メチル又はエチルである。
【0027】
多くの場合、Rがアリールである場合、それはフェニルである。アルキルアリールとしてのRの例としては、1個又は複数のアルキル基によって置換されたフェニル、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、及びt-ブチル等から選択される基が挙げられる。アリールアルキルとしてのRの例としては、例えば、ベンジル、フェネチル、スチリル、クミル、及びフェンプロピル等が挙げられる。
【0028】
多くの実施形態において、Rは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、フェニル、及びベンジルから選ばれる。ある特定の実施形態において、Rは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、又はブチルであり、M、はAl、Fe、Zn、又はCaである。
【0029】
本開示のリン含有難燃剤は、実験式(I)の化合物の混合物とすることができる。
【0030】
国際公開第2020/132075号及び国際公開第2021/076169号において説明されているように、本開示のリン含有難燃剤は、当技術分野で説明されているリン含有難燃剤と比較して、高いリン含有量(即ち、リン原子の金属原子に対する(PのMに対する)、より高い比)を有する。例えば、トリカチオン性金属(例えば、アルミニウム)及びジカチオン性金属(例えば、亜鉛)はそれぞれ、トリ置換された、及びジ置換された、電荷平衡化合物を形成することが公知である。当技術分野で見られるように、リンのアルミニウムに対する比3:1を有するトリス-ホスホン酸アルミニウム塩、及びリンの亜鉛に対する比2:1を有するジホスホン酸亜鉛塩は、難燃剤として公知である。しかしながら、本開示のリン含有難燃剤の、ピロホスホン酸配位子形成に従えば、難燃性生成物におけるリンの金属に対する比はより大きい。例えば、国際公開第2020/132075号及び国際公開第2021/076169号において開示されている実施例において実証されているように、リンのアルミニウムに対する比、又はリンの鉄に対する比は、得られた難燃性生成物において4:1であった。
【0031】
少なくとも1種の次亜リン酸金属塩(成分(B))は、化学式Me(+)n(H2PO2)nのものであり、式中、Meは金属カチオンであり、(+)nは、金属カチオンの酸化状態を表し、nは2又は3である。好適な+2酸化状態の金属カチオンの例としては、カルシウム、亜鉛、マグネシウム、バリウム、マンガン、鉄(II)、及び銅(II)が挙げられる。多くの実施形態において、+2酸化状態の金属カチオンは、IIA族金属(即ち、アルカリ土類金属)、例えば、カルシウムであるか、又は金属カチオンは亜鉛である。
【0032】
好適な+3酸化状態の金属カチオンの例としては、アルミニウム及び鉄(III)が挙げられる。
【0033】
多くの場合、次亜リン酸金属塩は、次亜リン酸カルシウム(Ca(H2PO2)2)及び次亜リン酸アルミニウム(Al(H2PO2)3)から選ばれる。例えば、いくつかの実施形態において、次亜リン酸金属塩は次亜リン酸カルシウムである。いくつかの実施形態において、次亜リン酸金属塩は次亜リン酸アルミニウムである。
【0034】
本開示の次亜リン酸金属塩は、当技術分野で公知である、且つ/又は公知の方法によって生成されてもよい。多くの好適な次亜リン酸金属塩は、Phoslite(登録商標)ブランド名でItalmatch Chemicals社等から市販されている。
【0035】
添加剤組成物は、1種又は複数の熱安定剤(成分(C))を追加的に含んでもよい。好適な熱安定剤の例としては、金属水酸化物、酸化物、酸化物水和物、ホウ酸塩、モリブデン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩、シロキサン、スズ酸塩、混合された酸化物-水酸化物、酸化物-水酸化物-炭酸塩、水酸化物-ケイ酸塩、水酸化物-ホウ酸塩が挙げられ、好ましくは、金属が、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、又はマンガン、多くの場合、亜鉛である。例えば、1種又は複数の熱安定剤は、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛複合体(例えば、Kemgard(登録商標)911B)、モリブデン酸亜鉛/水酸化マグネシウム複合体(例えば、Kemgard(登録商標)MZM)、モリブデン酸亜鉛/ケイ酸マグネシウム複合体(例えば、Kemgard(登録商標)911C)、モリブデン酸カルシウム/亜鉛複合体(例えば、Kemgard(登録商標)911A)、及びリン酸亜鉛複合体(例えば、Kemgard(登録商標)981)、モンモリロナイト、カオリナイト、ハロイサイト、及びハイドロタルサイトから選ばれてもよい。
【0036】
難燃剤及び共力剤添加剤組成物は、1種又は複数の追加の共力剤、及び/又は1種又は複数の追加の難燃剤(成分(D))を更に含んでもよい。追加の難燃剤共力剤の例としては、メラミンの縮合生成物(例えば、メラム、メレム、メロン)、シアヌル酸メラミン、メラミンとポリリン酸の反応生成物(例えば、ピロリン酸ジメラミン、ポリリン酸メラミン)、メラミンの縮合生成物とポリリン酸の反応生成物(例えば、ポリリン酸メレム、ポリリン酸メラム、ポリリン酸メロン)、メラミン‐ポリ(リン酸金属塩)(例えば、メラミン-ポリ(リン酸亜鉛)、トリクロロトリアジン、ピペラジン、及びモルホリンの反応生成物等のトリアジン系化合物、例えば、ポリ[2,4-(ピペラジン-1,4-イル)-6-(モルホリン-4-イル)-1,3,5-トリアジン]/ピペラジン(例えば、MCA(登録商標)PPM Triazine HF)、ジアルキルホスフィン酸アルミニウム、例えば、ジエチルホスフィン酸アルミニウム(Exolit(登録商標)OP)等の有機ホスフィナート、及び亜リン酸水素アルミニウム(Al2(HPO3)3)が挙げられる。
【0037】
いくつかの実施形態において、追加の共力剤は、窒素含有共力剤である。好適な窒素含有共力剤は、例えば、メラミン及びその縮合生成物(メラム、メレム、メロン、又はより高い縮合レベルを有する類似の化合物)等のメラミン誘導体、シアヌル酸メラミン、並びにリン酸ジメラミン、ピロリン酸ジメラミン、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸メロン、及びポリリン酸メレム等のリン/窒素化合物、並びにそれらの混合されたポリ塩から選ばれてもよい。
【0038】
本発明の難燃剤及び共力剤添加剤組成物に好適な追加の難燃剤の例としては、ハロゲン化難燃剤、アルキル又はアリールホスフィンオキシド難燃剤、アルキル又はアリールリン酸塩難燃剤、アルキル又はアリールホスホナート、アルキル又はアリールホスフィナート、及びアルキル又はアリールホスフィン酸の塩が挙げられる。多くの場合、追加の難燃剤は、アルキル又はアリールリン酸塩(例えば、トリフェニルリン酸塩、ビスフェノール-Aビス(ジフェニルリン酸塩)、レゾルシノールビス(ジフェニルリン酸塩)、又はレゾルシノールビス(ジキシレニルリン酸塩)である。
【0039】
本明細書において実証されるように、本開示のリン含有難燃剤と次亜リン酸金属塩の組み合わせを使用する場合、熱可塑性ポリマー用途における優れた難燃性能及び加工安定性を得るために窒素含有共力剤又は窒素含有難燃剤の使用は必要ではない。従って、いくつかの実施形態において、本開示の難燃剤及び共力剤添加剤組成物は、窒素含有共力剤又は窒素含有難燃剤を含まない。
【0040】
難燃剤及び共力剤添加剤組成物は、酸化防止剤、酸捕捉剤、ホスフィン抑制剤、UV安定剤、加工剤、及び難燃剤組成物における使用に好適な当技術分野で公知の他の添加剤等の、他の混合物成分又は添加剤(E)を更に含んでもよい。
【0041】
難燃剤及び共力剤添加剤組成物は、成分(A)及び(B)、並びに任意選択で成分(C)、(D)、及び(E)のうちのいずれか1つ又は組み合わせから本質的になっても、それらからなってもよい。
【0042】
難燃剤及び共力剤添加剤組成物における、成分(A)及び(B)、並びに任意選択の成分(C)、(D)、及び(E)の割合は、変動してもよく、一般に、例えば、意図される用途、加工条件等に依存してもよい。多くの実施形態において、難燃剤及び共力剤添加剤組成物は、添加剤組成物の総質量に対して、30から90wt%まで、40から90wt%まで、50から80wt%まで、又は60から70wt%まで等の、20から95wt%までの少なくとも1種のリン含有難燃剤(A)、添加剤組成物の総質量に対して、10から70wt%まで、10から60wt%まで、20から50wt%まで、又は30から40wt%まで等の、5から80wt%までの少なくとも1種の次亜リン酸金属塩(B)、添加剤組成物の総質量に対して、0から15wt%まで、1から15wt%まで、又は1から10wt%まで等の、0から20wt%までの少なくとも1種の熱安定剤(C)、及び添加剤組成物の総質量に対して、0から15wt%まで、2から12wt%まで、又は5から10wt%まで等の、0から20wt%までの少なくとも1種の追加の共力剤及び/又は追加の難燃剤(D)を含む。任意選択の添加剤(E)は、難燃剤及び共力剤組成物中に、難燃剤及び共力剤添加剤組成物の総質量に対して、典型的に、30質量パーセント未満、例えば、多くの場合、20wt%未満、15wt%未満、10wt%未満、又は8wt%未満の量で存在してもよい。典型的に、本明細書で説明されるような、成分(A)及び(B)、並びに任意選択で成分(C)、(D)及び(E)のうちのいずれか1つ又は組み合わせは、難燃剤及び共力剤添加剤組成物の100質量%を占める。
【0043】
本開示は、
(i)少なくとも1種の熱可塑性ポリマー、
(ii)少なくとも1種の上述の実験式(I)のリン含有難燃剤と、
(iii)上述のとおりの少なくとも1種の次亜リン酸金属塩と
を含む難燃性熱可塑性組成物を更に提供する。難燃性熱可塑性組成物は、以下、(iv)少なくとも1種の無機充填剤(例えば、ガラス繊維)、(v)少なくとも1種の熱安定剤、(vi)少なくとも1種の追加の共力剤及び/又は追加の難燃剤、及び(vii)熱可塑性組成物の特性を高めるための1種又は複数の更なる添加剤のうちの1つ又は複数を更に含んでもよい。
【0044】
少なくとも1種の熱可塑性ポリマー(i)は、多くの場合、難燃性熱可塑性組成物中に、難燃性熱可塑性組成物の総質量に対して、40から90wt%まで、又は50から90wt%まで等の、30から95wt%までの量で存在する。少なくとも1種の熱可塑性ポリマーは、高衝撃ポリスチレン(HIPS)、ポリオレフィン、ポリカルボナート、ポリウレタン、ポリフェニレンエーテル、又は他の熱可塑性ポリマーを含む、熱可塑性ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレンであってもよい。多くの実施形態において、熱可塑性ポリマーは、ポリエステル(例えば、ポリアルキレンテレフタラート)又はポリアミドを含む。多くの実施形態において、熱可塑性ポリマーはポリアミドを含む。ポリフェニレンエーテル/スチレン系樹脂ブレンド、ポリ塩化ビニル/アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、又はメタクリロニトリル及びα-メチルスチレン含有ABS、並びにポリエステル/ABS又はポリカルボナート/ABS等の他の衝撃改質ポリマー等の、1種より多い熱可塑性ポリマー(熱可塑性ポリマーブレンド)を使用することができる。熱可塑性ポリマーは、非強化であっても、強化されていても、例えば、ガラス入りポリエステル(例えば、ガラス入りポリアルキレンテレフタラート)又はガラス入りポリアミド等、ガラスで強化されていてもよい。
【0045】
熱可塑性ポリエステルの例としては、酸成分及びジオール成分の重縮合によって得られる、ホモポリエステル及びコポリエステルが挙げられる。例えば、好適なポリエステルは、ポリブチレンテレフタラート及びポリエチレンテレフタラートから選ばれてもよい。
【0046】
ジオール成分は、以下のグリコール:エチレングリコール、トリメチレングリコール、2-メチル-1,3-プロパングリコール、1,4-ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、又はネオペンチレングリコールのうちの1つ又は複数を含有してもよい。酸成分は、以下の酸:テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、4,4'-ジフェニルジカルボン酸、4,4'-ジフェノキシエタンジカルボン酸、p-ヒドロキシベンゾイン酸、セバシン酸、アジピン酸、及びそれらのポリエステル形成誘導体のうちの1つ又は複数を含有してもよい。
【0047】
多くの実施形態において、熱可塑性ポリエステルは、ポリ(エチレンテレフタラート)、ポリ(1,3-トリメチレンテレフタラート)、ポリ(1,4-ブチレンテレフタラート)、及びそれらのブレンドから選ばれる。例えば、熱可塑性ポリエステルブレンドは、約1から約99質量部までの1種のポリエステル、及び約99から約1質量部までの異なるポリエステルを、両方の成分を組み合わせた100質量部に対して、含むことができる。ポリ(1,4-ブチレンテレフタラート)は、少なくとも70mol%、例えば、少なくとも80mol%の1,4-ブチレングリコールで構成されるジオール成分と、少なくとも70mol%、例えば、少なくとも80mol%のテレフタル酸で構成される酸成分及び/又はそれらのポリエステル形成誘導体との重合によって得られるものであってもよい。
【0048】
熱可塑性ポリアミドは、ジアミン及びジカルボン酸に由来するポリアミド、ジアミン及び/又はジカルボン酸との組み合わせの場合を含む、アミノカルボン酸から得られるポリアミド、並びに、ジアミン及び/又はジカルボン酸との組み合わせの場合を含む、ラクタムに由来するポリアミドを含む。好適なポリアミドの例としては、ポリアミド-4,6、ポリアミド-6、ポリアミド-6,6、ポリアミド-6,10、ポリアミド-6,12、ポリアミド-11、及びポリアミド-12等の脂肪族ポリアミド;テレフタル酸及び/又はイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸並びにヘキサメチレンジアミン又はノナメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンから得られるポリアミド;アジピン酸及び/又はアゼライン酸等の脂肪族ジカルボン酸並びにメタ-キシリレンジアミン等の芳香族ジアミンから得られるポリアミド;テレフタル酸及びアジピン酸の両方等の芳香族及び脂肪族ジカルボン酸の両方並びにヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンから得られるポリアミド;アジピン酸、アゼライン酸、及び2,2-ビス-(p-アミノシクロヘキシル)プロパンから得られるポリアミド;並びにテレフタル酸及び4,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタンから得られるポリアミドが挙げられる。前述のポリアミド又はそれらのプレポリマーのうちの2つ以上の混合物及び/又はコポリマーそれぞれも、使用されてもよい。
【0049】
ポリアミドは、アミノ基とカルボン酸基との間に少なくとも2個の炭素原子を有する、モノアミノモノカルボン酸若しくはそれのラクタムの重合、アミノ基とジカルボン酸との間に少なくとも2個の炭素原子を含有する、実質的に等モル割合のジアミンの重合、又は実質的に等モル割合のジアミン及びジカルボン酸と一緒の、上に定義されるモノアミノカルボン酸若しくはそれのラクタムの重合による等の、任意の公知の方法によって製造されてもよい。ジカルボン酸は、それらの官能性誘導体、例えば、塩、エステル、又は酸塩化物の形態で使用されてもよい。
【0050】
少なくとも280℃の融点を有するポリアミドは、例えば、電気及び電子産業のための、高温での優れた寸法安定性を有する成形物品の生産を可能にする成形用組成物を生産するために広く使用されている。このタイプの成形用組成物は、例えば電子産業において、いわゆる表面実装技術SMTに従ってプリント回路基板に搭載される部品を生産するために必要とされる。本願において、これらの部品は、寸法の変化なしに短時間の間、最大270℃までの温度に耐えなければならない。
【0051】
そのような高温ポリアミドは、ポリアミド4,6等の、アルキルジアミン及び二酸から生産されるある特定のポリアミドを含む。更に、多くの高温ポリアミドは、芳香族及び半芳香族ポリアミド、即ち、芳香族基を含有するモノマーに由来する、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、又はより高次のポリマーである。芳香族若しくは半芳香族ポリアミドが用いられてもよい、又は芳香族及び/若しくは半芳香族ポリアミドのブレンドが使用されてもよい。脂肪族ポリアミドとのブレンドも、使用されてもよい。
【0052】
好適な高温芳香族又は半芳香族ポリアミドの例としては、ポリアミド-4,T、ポリ(m-キシリレンアジパミド)(ポリアミド-MXD,6)、ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド-12,T)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド-10,T)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド-9,T)、ヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレンテレフタルアミドコポリアミド(ポリアミド-6,T/6,6)、ヘキサメチレンテレフタルアミド/2-メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリアミド(ポリアミド-6,T/D,T);ヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンイソフタルアミドコポリアミド(ポリアミド-6,6/6,T/6,I);ポリ(カプロラクタム-ヘキサメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド-6/6,T);及びヘキサメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド-6,T/6,I)コポリマー;等が挙げられる。
【0053】
従って、本発明のある特定の実施形態は、高温、例えば、280℃以上、300℃以上、又は320℃以上で融解するポリアミドを含む組成物である。いくつかの実施形態において、ポリアミドは、280から340℃までの融解温度を有し、上述のポリアミド4,6又は芳香族及び半芳香族ポリアミド等である。
【0054】
好ましいポリアミドは、ポリアミド-6、ポリアミド-6,6、ポリアミド-11、ポリアミド-12、ポリアミド-4,T、ポリアミド-6,T/6,6、及びポリアミド-6,6/6,T/6,Iコポリマー等のポリフタルアミド、それらのガラス入りポリアミド、並びにそれらのブレンドである。例えば、熱可塑性ポリアミドブレンドは、約1から99質量部までの1種のポリアミド、及び約99から約1質量部までの異なるポリアミドを、両方の成分を組み合わせた100質量部に対して、含むことができる。
【0055】
いくつかの実施形態において、ポリマーは、熱可塑性エラストマー(例えば、熱可塑性ポリオレフィン又は熱可塑性ポリウレタン)である。いくつかの実施形態において、熱可塑性エラストマーは、熱可塑性ポリウレタンである。
【0056】
少なくとも1種のリン含有難燃剤(ii)は、上述のとおりであり、難燃性有効量で難燃性熱可塑性組成物中に存在する。多くの場合、ここで開示されるリン含有難燃剤は、難燃性熱可塑性組成物の総質量に対して、8から30wt%まで、10から30wt%まで、12から30wt%まで、又は15から30wt%まで等の、5から30wt%までの量で存在する。
【0057】
難燃性熱可塑性組成物中の少なくとも1種の次亜リン酸金属塩(iii)は、上述のとおりであり、多くの場合、難燃性熱可塑性組成物中に、組成物の総質量に対して、1から20wt%まで、2から15wt%まで、2wt%若しくは5wt%から15wt%まで、又は2wt%若しくは5wt%から10wt%まで等の、0.1から20wt%までの量で存在する。
【0058】
少なくとも1種の無機充填剤(iv)は、難燃性熱可塑性組成物中に存在してもよい。当技術分野で公知であるように、無機充填剤は、得られる成形物品の成形収縮係数及び線膨張係数を低減し、高低の熱ショック特性を向上することができる。繊維又は非繊維(例えば、粉末、板)の形態の様々な充填剤が、望ましい物品に応じて使用されてもよい。無機充填剤のタイプである繊維状充填剤のいくつかの実施例は、ガラス繊維、扁平繊維等の非円形断面を有するガラス繊維、炭素繊維、シリカ繊維、シリカアルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素繊維、ホウ素繊維、チタン酸カリウム繊維、及び更に、ステンレス、アルミニウム、チタン、銅、及び真鍮等の金属繊維状物質等のものであってもよい。典型的な繊維状充填剤は、ガラス繊維又は炭素繊維である。代替的に、無機充填剤は、カーボンブラック、グラファイト、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉末、ケイ酸カルシウム、カオリン、タルク、クレイ、珪藻土、ウォラストナイト等のケイ酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、及びアルミナ等の金属酸化物、金属水酸化物、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウム等の炭酸金属塩、硫酸カルシウム及び硫酸バリウム等の硫酸金属塩、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、並びに様々な金属粉末等の、粉末状充填剤であってもよい。無機充填剤の別の例は、マイカ、ガラスフレーク、及び様々な金属ホイル等の板様の充填剤である。これらの無機充填剤は、単独で、又は2種以上の組み合わせで使用することができる。使用に際して、無機充填剤は望ましくは、必要に応じて、サイズ剤又は表面処理剤を用いてあらかじめ処理される。
【0059】
難燃性熱可塑性組成物中の少なくとも1種の無機充填剤の量は、存在する場合、難燃性熱可塑性組成物の総質量に対して、多くの場合、1から50wt%まで、例えば、5から50wt%まで、10から40wt%まで、又は15から30wt%までである。
【0060】
難燃性熱可塑性組成物は、少なくとも1種の熱安定剤(v)を更に含んでもよい。例示的な熱安定剤は上述のとおりである。少なくとも1種の熱安定剤の量は、存在する場合、難燃性熱可塑性組成物の総質量に対して、多くの場合、0.1から5wt%までである。
【0061】
難燃性熱可塑性組成物は、少なくとも1種の追加の共力剤及び/又は追加の難燃剤(vi)を更に含んでもよい。例示的な追加の難燃剤共力剤及び追加の難燃剤は上述されている。少なくとも1種の追加の難燃剤共力剤及び/又は追加の難燃剤(vi)の量は、存在する場合、難燃性熱可塑性組成物の総質量に対して、多くの場合、0.5から10wt%まで等の0.1から10wt%までである。
【0062】
本明細書で説明されるように、本開示のリン含有難燃剤と次亜リン酸金属塩の組み合わせを使用する場合、熱可塑性ポリマー用途における優れた難燃性能を得るために窒素含有共力剤又は窒素含有難燃剤の使用は必要ではない。従って、いくつかの実施形態において、難燃性熱可塑性組成物は、窒素含有共力剤又は窒素含有難燃剤を含まない。
【0063】
他の混合物成分又は添加剤(vii)は、難燃性熱可塑性組成物中に存在してもよく、典型的に、難燃性熱可塑性組成物の10質量パーセント未満、例えば、多くの場合、3wt%以下等の5質量パーセント未満の量で用いられる。非限定的な例としては、酸化防止剤、UV安定剤、滑剤、衝撃改質剤、可塑剤、酸捕捉剤(例えば、カルボジイミド又はエポキシド)、ホスフィン抑制剤、顔料、染料、蛍光増白剤、帯電防止剤、防滴剤、例えば、PTFE、及び樹脂の特性を高めるために使用される他の添加剤が挙げられる。
【0064】
多くの実施形態において、難燃性熱可塑性組成物は、すべて難燃性熱可塑性組成物の総質量に対して、30から95wt%までの量の少なくとも1種の熱可塑性ポリマー(i)、5から30wt%までの量の少なくとも1種のリン含有難燃剤(ii)、0.1から20wt%までの量の少なくとも1種の次亜リン酸金属塩(iii)、0から50wt%までの量の少なくとも1種の無機充填剤(iv)、及び0から5wt%までの量の少なくとも1種の熱安定剤(v)を含む。多くの実施形態において、難燃性熱可塑性組成物は、すべて難燃性熱可塑性組成物の総質量に対して、40から90wt%まで等の30から95wt%までの量の少なくとも1種の熱可塑性ポリマー(i)、8から30wt%まで、10から30wt%まで、又は15から30wt%まで等の、5から30wt%までの量の少なくとも1種のリン含有難燃剤(ii)、1から20wt%まで、2から15wt%まで、2wt%若しくは5wt%から15wt%まで、又は2wt%若しくは5wt%から10wt%まで等の、0.1から20wt%までの量の少なくとも1種の次亜リン酸金属塩(iii)、10から40wt%まで、又は15から30wt%まで等の、0から50wt%までの量の少なくとも1種の無機充填剤(iv)、及び0.01から5wt%まで等の0から5wt%までの量の少なくとも1種の熱安定剤(v)を含む。組成物は、本明細書で説明されるような少なくとも1種の追加の共力剤及び/又は追加の難燃剤(vi)を更に含んでもよい。組成物は、本明細書で説明されるような1種又は複数の他の混合物成分又は添加剤(vii)も含んでもよい。
【0065】
ある特定の実施形態において、熱可塑性ポリマー(i)は、脂肪族ポリアミド並びに/又は芳香族及び半芳香族高温ポリアミドから選ばれるもの等の熱可塑性ポリアミドであり、次亜リン酸金属塩(iii)は、化学式Me(+)n(H2PO2)nのものであり、式中、Meは金属カチオンであり、(+)nは、金属カチオンの酸化状態を表し、nは2であり、好ましくは次亜リン酸金属塩が次亜リン酸カルシウムである。好ましくは、ポリアミドは、ポリアミド-4,6、ポリアミド-6、ポリアミド-6,6、ポリアミド-6,10、ポリアミド-6,12、ポリアミド-11、ポリアミド-12、ポリアミド-4,T、ポリ(m-キシリレンアジパミド)(ポリアミド-MXD,6)、ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド-12,T)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド-10,T)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド-9,T)、ヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレンテレフタルアミドコポリアミド(ポリアミド-6,T/6,6)、ヘキサメチレンテレフタルアミド/2-メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリアミド(ポリアミド-6,T/D,T);ヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンイソフタルアミドコポリアミド(ポリアミド-6,6/6,T/6,I);ポリ(カプロラクタム-ヘキサメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド-6/6,T);ヘキサメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド-6,T/6,I)コポリマーから選ばれる。より好ましくは、ポリアミドはポリアミド-6及びポリアミド-6,6である。熱可塑性ポリマー組成物中の成分の割合及び量は、それぞれの成分部分に関して、本明細書で説明されるとおりであってもよい。
【0066】
ある特定の実施形態において、熱可塑性ポリマー(i)は、熱可塑性ポリエステル、好ましくは、ポリブチレンテレフタラート及び/又はポリエチレンテレフタラート等のポリアルキレンテレフタラートであり、次亜リン酸金属塩(iii)は、化学式Me(+)n(H2PO2)nのものであり、式中、Meは金属カチオンであり、(+)nは、金属カチオンの酸化状態を表し、nは3であり、好ましくは次亜リン酸金属塩が次亜リン酸アルミニウムである。熱可塑性ポリマー組成物中の成分の割合及び量は、それぞれの成分部分に関して、本明細書で説明されるとおりであってもよい。
【0067】
ある特定の実施形態において、熱可塑性ポリマー(i)は、脂肪族ポリアミド並びに/又は芳香族及び半芳香族高温ポリアミド、好ましくはポリアミド6及びポリアミド6,6等の脂肪族ポリアミドから選ばれるもの等の熱可塑性ポリアミドであり、次亜リン酸金属塩(iii)は、化学式Me(+)n(H2PO2)nのものであり、式中、Meは金属カチオンであり、(+)nは、金属カチオンの酸化状態を表し、nは3であり、好ましくは次亜リン酸金属塩が次亜リン酸アルミニウムである。熱可塑性ポリマー組成物中の成分の割合及び量は、それぞれの成分部分に関して、本明細書で説明されるとおりであってもよい。
【0068】
本開示のリン含有難燃剤は、国際公開第2020/132075号及び国際公開第2021/076169号において開示されている手順に従って調製されてもよい。1つの好適な方法は、本明細書において溶媒法と呼ばれる。別の好適な方法は、本明細書において溶融状態法と呼ばれる。
【0069】
溶媒法によるリン含有難燃剤の調製
本開示のリン含有難燃剤を調製するための好適な方法は、金属又は好適な金属化合物を、非置換の、又はアルキル若しくはアリール置換されたホスホン酸と反応させることを含む。プロセスは、(i)(a)非置換の、又はアルキル若しくはアリール置換されたホスホン酸、(b)ホスホン酸のための溶媒、及び(c)金属又は好適な金属化合物を含む反応混合物を調製すること、並びに(ii)リン含有難燃剤を生産するのに十分な時間、105℃以上の反応温度で反応混合物を加熱すること又は反応させることを含む。反応において、金属は、酸化され、式M(+)yによってその対応するカチオン性形態において表されてもよく、式中、Mは金属であり、(+)yは、金属カチオンの電荷を表し、yは、2又は3である。好適な金属化合物は、式Mp
(+)yXqによって表されてもよく、式中、Mは金属であり、(+)yは、金属カチオンの電荷を表し、yは、2又は3であり、Xはアニオンであり、p及びqの値は、電荷平衡金属化合物を提供する。
【0070】
別の実施形態において、リン含有難燃剤は、金属又は好適な金属化合物を、非置換の、又はアルキル若しくはアリール置換されたピロホスホン酸と反応させることによって調製されてもよい。プロセスは、(i)(a)非置換の、又はアルキル若しくはアリール置換されたピロホスホン酸、(b)ピロホスホン酸のための溶媒、及び(c)上述の金属又は好適な金属化合物を含む反応混合物を調製すること、並びに(ii)リン含有難燃剤を生産するのに十分な時間、20℃以上の反応温度で反応混合物を加熱すること又は反応させることを含む。
【0071】
反応生成物は典型的に、反応混合物から得られるリン含有難燃剤生成物が析出するときに、スラリーとして形成する。反応後に残存するホスホン酸、ピロホスホン酸、及び/又は溶媒は、生じうる副生成物とともに、ろ過及び/又は例えば水による洗浄によって、除去することができる。多くの実施形態において、実質的に純粋な難燃剤材料、例えば、難燃活性を有する本質的に単一の化合物、又は本質的に活性化合物の混合物を含む難燃剤が生産される。金属又は金属化合物に基づいた変換率は典型的に高く、生成物は容易に分離され、望ましい場合、任意選択で更に精製されうる。
【0072】
典型的に、反応混合物中のホスホン酸又はピロホスホン酸の金属又は好適な金属化合物に対するモル比は、約3:1以上、約4:1以上、約5:1以上、約6:1以上、約7:1以上、又は約8:1以上等、2:1より高い。多くの場合、反応混合物において、約10:1以上、約15:1以上、約20:1以上、約25:1以上、約30:1以上、又はそれらの間の任意の範囲等の、ホスホン酸又はピロホスホン酸の、金属又は好適な金属化合物に対するより大きいモル過剰が使用される。ホスホン酸又はピロホスホン酸の、金属又は好適な金属化合物に対する大きいモル過剰が使用されてもよい。例えば、モル比は、最大約50:1まで、最大約100:1まで、最大約300:1まで、最大約500:1まで、又はそれらの間の任意の範囲であってもよい。しかしながら、理解されるように、プロセス効率はある特定の大きいモル過剰で悪化しうる、例えば、反応混合物からの生成物析出が妨げられうる。多くの実施形態において、モル比は、約8:1から、約12:1から、約16:1から、又は約20:1から約50:1まで、又は約40:1まで等の、約4:1から、約5:1から、約6:1から、約8:1から、又は約10:1から、約100:1まで、又は約50:1までの範囲である。
【0073】
反応混合物は、難燃剤生成物を生産するのに十分な時間、反応温度で加熱される。本明細書において使用されるように、「リン含有難燃剤を生産するのに十分な時間、反応温度で反応混合物を加熱する」ステップ等は、反応混合物の成分(b)、即ち、ホスホン酸又はピロホスホン酸のための溶媒のすべて又は実質的にすべてが、反応温度に又は反応温度で反応混合物を加熱する過程の間に、反応混合物から煮沸除去される実施形態を含むが、これらに限定されない。従って、溶媒成分(b)のすべて又は実質的にすべてが、反応温度に又は反応温度で反応混合物を加熱する過程の間に、煮沸除去される場合でさえ、本明細書で説明される「反応混合物」は依然として、反応温度で加熱されると言われることが理解される。
【0074】
溶媒法に従って本開示のリン含有難燃剤を生産するための反応温度は、反応生成物中のピロホスホン酸配位子の形成を促進するように選ばれるべきである。ホスホン酸に関して、105℃以上の反応温度が使用される。特定の理論に束縛されることなく、反応温度は、脱水反応によってピロホスホン酸配位子を生産するように選ばれる。多くの実施形態において、金属又は好適な金属化合物及びホスホン酸は、約115℃以上、約120℃以上、約130℃以上、約140℃以上、約150℃以上、約160℃以上、約170℃以上、約180℃以上、約200℃以上、約220℃以上、約240℃以上、約260℃以上、約280℃以上、又はそれらの間の任意の範囲等の、105℃より高い温度で反応される。反応温度は、最大約350℃まで、最大約400℃まで、又はそれ以上等、上述のものより高くてもよいが、典型的に、ホスホン酸の沸点になることも超えることもない。多くの実施形態において、反応温度は、約110℃から約350℃まで、約115℃から約300℃まで、約125℃から約280℃まで、又は約140℃から約260℃までの範囲である。脱水反応によって水が形成され、これにより、望ましくない逆(加水分解)反応に、場合によってはいたりうる。従って、いくつかの実施形態において、反応系は、反応混合物からの、水の連続的な除去等の除去を促進するように設計される。例えば、反応温度は、少なくとも一部又は望ましい量(例えば、大部分、実質的にすべて、又はすべて)の水を反応から煮沸除去するのに必要な程度に、水の沸点を上回って選ばれてもよい。ガスパージ、真空、及び/又は他の公知の手段等の追加の手段が使用されて、反応系からの水の除去を促進してもよい。
【0075】
ピロホスホン酸に関して、20℃以上の反応温度が使用される。ピロホスホン酸には脱水は不必要であるため、反応温度は、ホスホン酸に関して上述されるものより低くすることができる。多くの実施形態において、金属又は好適な金属化合物、及びピロホスホン酸は、約40℃以上、約60℃以上、約80℃以上、約100℃以上、約140℃以上、約180℃以上、約200℃以上、又はそれらの間の任意の範囲等の、20℃より高い温度で反応される。反応温度は、最大約300℃まで、最大約400℃まで、又はそれ以上等、上述のものより高くてもよいが、典型的に、ピロホスホン酸の沸点になることも超えることもない。多くの実施形態において、反応温度は、約25℃から約350℃まで、約25℃から約280℃まで、約30℃から約260℃まで、約40℃から約260℃まで、又は約60℃から約240℃までの範囲である。例えば、ピロホスホン酸と反応させるために使用される金属化合物に応じて、反応から水が生成されうる。上述のとおり、いくつかの実施形態において、反応系は、反応からの、水の連続的な除去等の除去を促進するように設計される。例えば、反応温度は、少なくとも一部又は望ましい量(例えば、大部分、実質的にすべて、又はすべて)の水を反応から煮沸除去するのに必要な程度に、水の沸点を上回って選ばれてもよい。ガスパージ、真空、及び/又は他の公知の手段等の追加の手段が使用されて、反応系からの水の除去を促進してもよい。
【0076】
反応は、減圧又は真空下行われてもよいが、必要ではない。
【0077】
溶媒法のいくつかの実施形態において、溶媒はプロトン性溶媒(例えば、水)であり、反応系は、反応混合物の加熱中のプロトン性溶媒の連続的な除去等の除去を促進するように設計される。例えば、反応温度は、反応混合物の加熱中に、少なくとも一部又は望ましい量(例えば、大部分、実質的にすべて、又はすべて)のプロトン性溶媒を煮沸除去するのに必要な程度に、プロトン性溶媒の沸点以上で選ばれてもよい。ある特定の実施形態において、溶媒は水であり、反応温度は、上述の例示的な範囲等の、約110℃以上、約115℃以上、約120℃以上、約130℃以上、約140℃以上、約150℃以上、又は約160℃以上である。反応温度はまた、更に本明細書で説明されるもの等の、ホスホン酸又はピロホスホン酸の融解温度以上で選ばれてもよい。
【0078】
典型的に、難燃剤生成物は、反応がそのような析出を達成するのに十分な時間行われるように、反応混合物から析出することになる。一般に、反応混合物中の金属又は好適な金属化合物に基づいて、難燃剤生成物への少なくとも実質的な変換を達成するのに必要とされる時間は、反応温度に依存することになり、一般により高い温度はより短い反応時間をもたらす。多くの場合、加熱又は反応は、約0.2から約36時間まで、約0.5から約30時間まで、約1時間から約24時間まで、例えば、約1時間から約12時間まで、約1時間から約8時間まで、又は約1時間から約5時間まで等の、約0.1から約48時間までの間、反応温度で行われるが、他の継続時間が使用されてもよい。
【0079】
反応混合物は、(a)非置換の、又はアルキル若しくはアリール置換されたホスホン酸又はピロホスホン酸、(b)ホスホン酸又はピロホスホン酸のための溶媒、及び(c)金属又は好適な金属化合物を、組み合わせる又は混合するのに好適な任意の仕方で、調製することができる。例えば、成分は、同時に、又は異なる時間において、組み合わされてもよい。いくつかの実施形態において、金属又は好適な金属化合物(c)は、ホスホン酸又はピロホスホン酸(a)及び溶媒(b)の、溶液等の混合物に加えられる。金属又は好適な金属化合物(c)は、一括でも分割でも反応混合物に加えることができる。同様に、ホスホン酸若しくはピロホスホン酸(a)、溶媒(b)、又は、ホスホン酸若しくはピロホスホン酸(a)及び溶媒(b)の、溶液等の混合物は、一括でも分割でも反応混合物に加えることができる。
【0080】
反応混合物を調製する際には、ホスホン酸又はピロホスホン酸(a)、溶媒(b)、及び金属又は好適な金属化合物(c)は、反応温度を下回る調製温度で組み合わされてもよい。続いて、反応混合物は反応温度に加熱される。調製温度は、例えば、溶媒(b)へのホスホン酸若しくはピロホスホン酸(a)の溶解を促進するように、又はそうでない場合、ホスホン酸若しくはピロホスホン酸(a)及び溶媒(b)の均質の液体若しくは溶液を形成するように選ばれてもよい。調製温度において、且つ金属化合物(c)に依存して、反応混合物は、均質の、又は実質的に均質の懸濁液又はスラリー等の、溶液、懸濁液、又はスラリーを形成してもよい。より高い調製温度における等のいくつかの実施形態において、反応混合物は、溶液を形成してもよい。多くの場合、反応温度付近又は反応温度において、反応混合物は、溶液として存在する。多くの実施形態において、調製温度は、約0℃以上であるが、多くの場合、125℃を下回る、115℃を下回る、100℃を下回る、85℃を下回る、又は65℃を下回る等、150℃を下回る。例えば、調製温度は、約0℃から約65℃まで、又は約15℃から約40℃までの範囲であってもよい。いくつかの実施形態において、反応混合物は、室温(例えば、約15℃から約25℃まで)において調製される。いくつかの実施形態において、溶媒(b)は、調製温度に予熱され、ホスホン酸又はピロホスホン酸(a)、及び金属又は好適な金属化合物(c)と組み合わされる。いくつかの実施形態において、溶媒(b)の混合物及びホスホン酸又はピロホスホン酸(a)は、調製温度に予熱され、金属又は好適な金属化合物(c)と組み合わされる。
【0081】
反応混合物は、代替的に、反応温度において調製されてもよい。換言すれば、反応混合物は、反応温度において、(a)ホスホン酸又はピロホスホン酸、(b)ホスホン酸又はピロホスホン酸のための溶媒、及び(c)金属又は好適な金属化合物を、組み合わせることによって調製される。例えば、いくつかの実施形態において、反応混合物を調製することは、溶媒(b)及びホスホン酸又はピロホスホン酸(a)の混合物を反応温度に予熱すること、並びに金属又は好適な金属化合物(c)と合わせることを含む。
【0082】
反応温度がホスホン酸又はピロホスホン酸の融解温度より高く、難燃剤生成物への望ましい変換、例えば、完全な、又は実質的に完全な変換が達成された後、残存ホスホン酸又はピロホスホン酸が生成物反応混合物中に存在する、いくつかの実施形態において、生成物反応混合物は、残存ホスホン酸又はピロホスホン酸の融解温度を上回る又はそれ以上の温度に冷却されて、ホスホン酸又はピロホスホン酸が液体形態のままであることが確実にされる。これは、残存する過剰のホスホン酸又はピロホスホン酸が、溶液から出る傾向がより大きくなりうるような、加熱の結果として多量のホスホン酸又はピロホスホン酸のための溶媒(即ち、成分(b))が煮沸除去される実施形態において、特に有用でありうる。過剰のホスホン酸又はピロホスホン酸及び溶媒は、生成物反応混合物中に存在する場合、ろ過/洗浄によって除去し、任意選択で回収することができる。回収された過剰のホスホン酸若しくはピロホスホン酸及び/又は溶媒は、例えば、金属又は好適な金属化合物(c)がホスホン酸又はピロホスホン酸(a)と反応する反応器に戻されて、再利用されてもよい。反応生成物への変換後、溶媒成分(b)と同じであってもよいがその必要はない、ホスホン酸又はピロホスホン酸のための溶媒は、任意選択で加えられて、過剰のホスホン酸又はピロホスホン酸を溶解するか、そうでない場合、それらの除去を助けてもよい。リン含有難燃剤生成物は、多くの場合、ろ過によって、任意選択で追加のワークアップ(例えば、洗浄、乾燥、ふるい分け等)が後に続いて、分離される。得られるリン含有難燃剤生成物は、一般に粉末又は小粒子の形態であり、容易に加工可能である、即ち、使用前の破砕、粉砕、又は他のそのような物理的加工を必要とすることも強制することもない。リン含有難燃剤生成物を、「直接」、粉末又は小粒子として生産することにより、難燃剤生成物を分離すること(例えば、残存する溶媒から難燃剤生成物を分けること)等の、例えば、ろ過、ふるい分け、洗浄、及び乾燥等によって反応生成物を加工することを含みうる、反応生成物のワークアップが可能になることが理解されるべきである。
【0083】
ホスホン酸又はピロホスホン酸のための溶媒は、ホスホン酸又はピロホスホン酸成分を溶解することが可能な任意の溶媒であってもよく、ホスホン酸又はピロホスホン酸と金属又は好適な金属化合物との反応に対して不活性又は実質的に不活性であるべきであり、均質の、又は実質的に均質の反応混合物を調製するために等、他の反応パラメーター、例えば、調製温度及び/若しくは反応温度、又は金属若しくは好適な金属化合物の種類を考慮して、更に選ばれてもよい。いくつかの実施形態において、溶媒は、ホスホン酸又はピロホスホン酸のための溶媒の組み合わせであってもよい。多くの場合、ホスホン酸又はピロホスホン酸は、溶媒に実質的に又は完全に溶解される。例えば、ホスホン酸又はピロホスホン酸及び溶媒は、溶液を形成してもよい。いくつかの実施形態において、ホスホン酸又はピロホスホン酸は、溶媒中に、部分的に溶解され、部分的に懸濁されるか又は分散されてもよい。溶媒の種類、ホスホン酸又はピロホスホン酸に対する溶媒の量、及び混合条件は、溶液中にホスホン酸又はピロホスホン酸を維持しながら混合物中で高濃度のホスホン酸又はピロホスホン酸を得るように等、ホスホン酸の溶解の望ましいレベルを達成するように選ぶことができる。多くの場合、酸の溶媒に対する比は、質量で、約10:1~1:10まで、約5:1~1:5、又は約3:1~1:3の範囲である。酸が、溶媒中に、部分的に溶解され、部分的に懸濁されるか又は分散される、いくつかの実施形態において、調製温度又は反応温度は、溶媒中に懸濁されるか又は分散される酸を液化するように、酸の融解温度以上で選択されてもよい。
【0084】
上述のとおり、反応温度、及びホスホン酸又はピロホスホン酸のための溶媒の沸点に依存して、溶媒の少なくとも一部は、反応温度に又は反応温度で加熱する間に反応混合物から煮沸除去されてもよい。いくつかの実施形態において、すべての、実質的にすべての、又は少なくとも大部分の溶媒は、加熱中に反応混合物から煮沸除去される。溶媒は、高沸点(例えば、スルホラン又はジメチルスルホキシド(DMSO))であっても、低沸点(例えば、クロロホルム又はテトラヒドロフラン(THF))であってもよい。例えば、いくつかの実施形態において、例えば、すべての、実質的にすべての、又は大部分の溶媒が煮沸除去される反応混合物の加熱中、溶媒の少なくとも一部が煮沸除去されるように、溶媒は、反応温度以下の温度で沸騰する。反応温度は、ホスホン酸又はピロホスホン酸の融解温度以上で選択されて、溶媒が煮沸除去されているときにホスホン酸又はピロホスホン酸が液体形態のままであることを確実にしてもよい。このようにして、反応混合物中のより大きい過剰のホスホン酸又はピロホスホン酸の使用により、ホスホン酸又はピロホスホン酸が、反応物及び反応のための溶媒の両方として役目を果たすことを可能にしうる。
【0085】
更に他の実施形態において、溶媒は、反応温度より高い沸点を有し、それが生成物反応混合物中に残り、本明細書で説明されるように、生成物反応混合物から、反応の難燃剤生成物が分離されうることを確実にする。いくつかの実施形態において、反応温度は、ホスホン酸又はピロホスホン酸の融解温度を下回って選択される。
【0086】
好適な溶媒は、有機であっても無機であってもよい。好適なホスホン酸又はピロホスホン酸のための溶媒の例としては、水、スルホン、スルホキシド、ハロゲン化(例えば、塩素化)炭化水素、芳香族炭化水素、及びエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、いくつかの実施形態において、溶媒は、水、スルホラン、ジメチルスルホン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメトキシエタン(DME)、1,4-ジオキサン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、1,2-ジクロロベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素、キシレン、及びメシチレンから選ばれてもよい。いくつかの実施形態において、溶媒は水を含む。いくつかの実施形態において、溶媒は水溶液を含む。いくつかの実施形態において、反応混合物は水性反応混合物である。
【0087】
溶媒は、プロトン性又は非プロトン性であってもよい。多くの実施形態において、ピロホスホン酸のための溶媒は、非プロトン性溶媒である。
【0088】
いくつかの実施形態において、溶媒(b)は、式R1R2SO2のスルホンを含み、式中、R1及びR2は独立して、C1~6炭化水素基、例えば、C1~3炭化水素基から選ばれるか、又はSと一緒にされたR1及びR2は、2、3、4、又は5個の炭素原子を有する環を形成し、環は、非置換であっても、C1~3アルキル置換されていてもよい。いくつかの実施形態において、Sと一緒にされたR1及びR2は、ジ-、トリ-、テトラ-、又はペンタ-メチレン環を形成する。いくつかの実施形態において、R1及びR2は独立して、C1~6アルキルから選ばれる。いくつかの実施形態において、R1又はR2はC1~6アルキルであり、他方はC1~3アルキルである。いくつかの実施形態において、R1及びR2は独立して、C1~3アルキルから選ばれる。アルキル基は、分岐状であっても直鎖状であってもよい。いくつかの実施形態において、R1及びR2は、ともにメチル、ともにエチル、又はともにプロピルである。他の実施形態において、R1又はR2は、メチルであり、他方はエチル又はプロピルである。他の実施形態において、R1又はR2は、エチルであり、他方はプロピルである。いくつかの実施形態において、スルホンはスルホランである。
【0089】
ホスホン酸は、以下の式
【0090】
【0091】
[式中、Rは、H、アルキル、アリール、アルキルアリール、又はアリールアルキルである]によって表されてもよい。多くの実施形態において、Rは、H、C1~12アルキル、C6~10アリール、C7~18アルキルアリール、又はC7~18アリールアルキルであり、前記アルキル、アリール、アルキルアリール、又はアリールアルキルは、非置換であるか、又はハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、C1~4アルキルアミノ、ジC1~4アルキルアミノ、C1~4アルコキシ、カルボキシ、若しくはC2~5アルコキシカルボニルによって置換されている。いくつかの実施形態において、前記アルキル、アリール、アルキルアリール、又はアリールアルキルは、非置換のC1~12アルキル、C6アリール、C7~10アルキルアリール、又はC7~10アリールアルキル、例えば、C1~6アルキル、フェニル、又はC7~9アルキルアリールである。いくつかの実施形態において、Rは、置換された、又は非置換の、C1~6アルキル、C6アリール、C7~10アルキルアリール、又はC7~12アリールアルキル、例えば、C1~4アルキル、C6アリール、C7~9アルキルアリール、又はC7~10アリールアルキルである。多くの実施形態において、Rは、非置換のC1~12アルキル、例えば、C1~6アルキルである。多くの実施形態において、より低次のアルキルホスホン酸、例えば、メチル-、エチル-、プロピル-、イソプロピル-、ブチル-、及びt-ブチル-等が使用される。
【0092】
ピロホスホン酸は、以下の式
【0093】
【0094】
[式中、Rは上述のとおりである]によって表されてもよい。
【0095】
リン含有難燃剤を調製するプロセスでは、1種より多いホスホン酸、1種より多いピロホスホン酸、又はホスホン酸及びピロホスホン酸の組み合わせを用いてもよい。いくつかの実施形態において、ホスホン酸又はピロホスホン酸は、インサイチュで生成される。例えば、反応混合物を調製することは、より高次のオリゴマーホスホン酸及び/又は環状ホスホン酸無水物出発材料の加水分解による等の、ホスホン酸又はピロホスホン酸を調製することを含んでもよい。
【0096】
本明細書において使用されるように、「好適な金属化合物」等は、式Mp
(+)yXqの化合物を指し、式中、Mは、2+又は3+カチオンを形成する金属であり、Xは、金属Mと平衡状態に荷電された化合物を提供する任意のアニオンである。Xのための好適な例は、金属Mと一緒に、酸化物、ハロゲン化物、アルコキシド、水酸化物、炭酸塩、カルボン酸塩、及びホスホナートを形成するアニオンを含むが、これらに限定されない。p及びqの値は、電荷平衡金属化合物、例えば、アルミナAl2O3を提供する。いくつかの実施形態において、非置換の金属Mは、本明細書で説明されるように使用される。好適な金属(M)の例としては、Al、Ga、Sb、Fe、Co、B、Bi、Mg、Ca、及びZnが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、Mは、Al、Fe、Mg、Zn、及びCaから選ばれる。
【0097】
好適な金属化合物は、金属-酸素結合、金属-窒素結合、金属-ハロゲン結合、金属-水素結合、金属-リン結合、金属硫黄結合、金属ホウ素結合等を有する化合物、例えば、Al、Ga、Sb、Fe、Co、B、Bi、Mg、Ca、及びZnの、酸化物、ハロゲン化物、アルコキシド、水酸化物、カルボン酸塩、炭酸塩、ホスホナート、ホスフィナート、ホスホナイト、リン酸塩、ホスファイト、硝酸塩、亜硝酸塩、ホウ酸塩、水素化物、スルホン酸塩、硫酸塩、硫化物等、例えば、Al、Fe、Mg、Zn、又はCaの、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、又はアルコキシドを含むが、これらに限定されない。
【0098】
いくつかの実施形態において、金属又は好適な金属化合物の金属Mは、アルミニウム又は鉄である。いくつかの実施形態において、好適な金属化合物は、アルミニウムのハロゲン化物、酸化物、水酸化物、アルコキシド、炭酸塩、カルボン酸、及びホスホナートから選ばれる。いくつかの実施形態において、好適な金属化合物は、アルミニウムのハロゲン化物、酸化物、水酸化物、及びアルコキシドから選ばれる。いくつかの実施形態において、好適な金属化合物は、アルミナ、三塩化アルミニウム、三水酸化アルミニウム、アルミニウムイソプロポキシド、炭酸アルミニウム、及び酢酸アルミニウムから選ばれる。他の実施形態において、好適な金属化合物は、鉄のハロゲン化物、酸化物、アルコキシド、炭酸塩、及び酢酸塩から選ばれる。いくつかの実施形態において、好適な金属化合物は、酸化鉄(III)、塩化鉄(III)、鉄(III)イソプロポキシド、及び酢酸鉄(III)から選ばれる。
【0099】
いくつかの実施形態において、好適な金属化合物は金属ホスホナート塩である。金属ホスホナート塩中の金属は、本明細書で説明されるように、金属Mであってもよい。いくつかの実施形態において、金属ホスホナート塩は、初期の金属化合物及びホスホン酸とホスホン酸のための溶媒(例えば、水)との反応から調製される。初期の金属化合物は、本明細書で説明される好適な金属化合物に従う化合物であってもよい。いくつかの実施形態において、初期の金属化合物及びホスホン酸は、室温で若しくはおおよそ室温での温度で、又は約0から約20℃までの範囲の温度で反応される。次いで、得られる金属ホスホナート塩は、好適な金属化合物として使用されてもよい。例えば、ホスホン酸、例えば、上述の1種、又は1種より多いアルキルホスホン酸、及び溶媒(例えば、水)は、撹拌されて均質の溶液を形成してもよい。溶液は、例えば約0から約20℃まで、冷却されてもよく、金属酸化物、ハロゲン化物、アルコキシド、又は水酸化物等の初期の金属化合物が加えられてホスホン酸と反応される。金属ホスホナート塩が形成され、次いで、リン含有難燃剤を調製するための好適な金属化合物として使用される。
【0100】
調製プロセスは、リン含有難燃剤化合物の混合物を生じうるが、多くの実施形態において、プロセスは、金属又は金属化合物に基づいて、少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、98%、又はより高い変換率、又はそれらの間の任意の範囲等の高い変換率で、1種の、又は主として1種の化合物としてリン含有難燃剤生成物を生産し、米国特許第9,745,449号において開示されている等の、金属ホスホナート塩の熱処理を包含する先行技術のプロセスによって得られる化合物の混合物とは対照的である。
【0101】
溶媒法に従う反応は、一般に、示される
【0102】
【0103】
[式中、M(+)yが金属カチオンであり、ここで(+)yがカチオンの電荷を表すように、Mは金属であり、yは2又は3である;Xは、金属に付着されたアニオン性配位子又は配位子(複数)であり、M及びXの化学量論(即ち、p及びq)は、平衡状態に荷電された金属化合物を提供する;Rは、H、アルキル、アリール、アルキルアリール、又はアリールアルキルである(本明細書で説明されるように);a、b、及びcは、反応生成物において互いに対して対応する成分の比を表し、電荷平衡方程式2(a)+c=b(y)を満たし、cはゼロではない]のとおりに進行する。多くの場合、aは0、1、又は2(例えば、0又は1)であり、bは1から4まで、例えば、1又は2であり、cは1又は2であり、化合物は平衡状態に荷電されている。ある特定の実施形態において、本明細書において示されるようなRは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、又はブチルであり、Mは、Al、Fe、Zn、又はCaである。更なる実施形態において、Xは、酸素、ヒドロキシ、アルコキシ、又はハロゲンである。
【0104】
ピロホスホン酸を用いた一般反応スキームは、
【0105】
【0106】
[式中、R、M、X、p、q、y、a、b、及びcは、上述のとおりである]と表すことができる。
【0107】
上で論じられるように、無機配位化合物に関して通常であるように、反応生成物のための式は、生成物が、配位ポリマー、錯塩、ある特定の原子価が共有されている塩等でありうるように、実験的であるか、又は理想化されている。多くの実施形態において、上述の反応生成物は、配位ポリマーのモノマー単位(即ち、配位主体)を表し、それにより、伸張された配位ポリマー構造は、本開示のリン含有難燃剤を形成する。
【0108】
ある特定の実施形態において、yは2であり(即ち、M(+)yはジカチオン性金属である)、aは0であり、bは1であり、cは2である。ある特定の実施形態において、ジカチオン性金属Mは、Mg、Ca、又はZnである。他の実施形態において、yは3であり(即ち、M(+)yはトリカチオン性金属である)、aは1であり、bは1であり、cは1である。ある特定の実施形態において、トリカチオン性金属Mは、Al、Ga、Sb、Fe、Co、B、及びBiから選ばれる。ある特定の実施形態において、トリカチオン性金属Mは、Al、Fe、Ga、Sb、又はBである。ある特定の実施形態において、Mは、アルミニウム(即ち、反応生成物は、アルミニウム、又は本明細書で説明されるもの等の1種又は複数のアルミニウム化合物を使用して生産される)、又は鉄(即ち、反応生成物は、鉄、又は本明細書で説明されるもの等の1種又は複数の鉄化合物を使用して生産される)である。
【0109】
一例において、以下の実験式
【0110】
【0111】
を有するリン含有難燃剤化合物が生産される。
【0112】
本明細書において示されるように、実験式において下付き文字a、b、及びcが存在しないことは、下付き文字がそれぞれ1であり、ジアニオン性ピロホスホン酸配位子、金属原子、モノアニオン性ピロホスホン酸配位子の比1:1:1を意味することを示す。
【0113】
多くの場合、多くの実施形態において、本明細書で説明されるような伸張された配位ポリマーであるリン含有難燃剤化合物は、難燃剤生成物の質量で、少なくとも75%、85%、90%、95%、98%、又はそれより大きい、又はそれらの間の任意の範囲等の、すべての、実質的にすべての、又は少なくとも大部分のリン含有難燃剤生成物を構成する。
【0114】
多くの場合スラリーとして存在する、反応から形成される生成物反応混合物は、追加の溶媒と組み合わされてもよく、追加の溶媒は、反応混合物において使用される溶媒と同じ溶媒であっても異なる溶媒であってもよい。追加の溶媒は、例えば、ホスホン酸又はピロホスホン酸のための溶媒成分に関して本明細書で説明されるものから選ばれてもよい。追加の溶媒/スラリー混合物は、望ましいようにかき混ぜられて、形成している可能性のある凝集が解消されてもよい。固体生成物は、ろ過によって分離され、任意選択で洗浄され、乾燥されて、粉末又は小粒子の形態の生成物が得られてもよい。いくつかの事例において、生成物はふるい分けされて、粒径が精製されてもよい。
【0115】
反応は、任意選択で、播種材料を用いて促進されてもよい。例えば、播種材料の使用は、リン含有難燃剤生成物への変換を達成するための時間を低減してもよく、生成物の物理的特性における一貫性を増大させてもよい。従って、いくつかの実施形態において、反応混合物は、播種材料を更に含む。多くの場合、播種材料は、反応温度に加熱され次第又はその後に、反応混合物に加えられる。多くの実施形態において、播種材料は、難燃剤生成物への変換、及び/又は難燃剤生成物の析出が起こる前に加えられる。いくつかの実施形態において、播種材料は、本明細書で説明される方法に従って生産されるリン含有難燃剤を含む。播種材料は、望ましい粒径を有するように選択されても精製されてもよい。
【0116】
溶媒法のいくつかの実施形態において、好適な金属化合物はアルミナであり、リン含有難燃剤生成物は以下、
【0117】
【0118】
のとおり生産される。
【0119】
一例において、C1~C12アルキルホスホン酸(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、ブチル、又はt-ブチルホスホン酸)等のホスホン酸、水等のホスホン酸のための溶媒、及びアルミナ、三塩化アルミニウム、三水酸化アルミニウム、アルミニウムイソプロポキシド、炭酸アルミニウム、又は酢酸アルミニウム等のAlの酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、アルコキシド、炭酸塩、又はカルボン酸塩を含む反応混合物は、約115℃以上、約125℃以上、約150℃以上、又は約165℃以上等の、本明細書で説明されるような反応温度に加熱される。典型的に、反応が進行するに従いスラリーが形成し、ろ過によって固体リン含有難燃剤生成物が分離されて、粉末又は小粒子の形態の生成物が得られてもよい。過剰のホスホン酸の融点を上回って、又はそれ以上に、生成物反応混合物を冷却すること、及び本明細書で説明されるような追加の溶媒、例えば、水と合わせること等の、生成物反応混合物に対する追加のワークアップは、固体生成物を分離するのに先立って実行されてもよい。追加の溶媒/スラリー混合物は、任意選択で、上述のとおりかき混ぜられてもよい。固体リン含有難燃剤生成物は、ろ過によって分離され、任意選択で、追加の溶媒を用いて洗浄され、乾燥されて、粉末又は小粒子の形態の生成物が得られてもよい。難燃剤生成物は、以下の実験式
【0120】
【0121】
に従って、リンのアルミニウムに対する比4:1で、リン及びアルミニウムを含有する。更なる例において、すぐ上に説明される例は、鉄、又は鉄のハロゲン化物、酸化物、アルコキシド、炭酸塩、若しくは酢酸塩等の好適な鉄化合物、例えば、酸化鉄(III)、塩化鉄(III)、鉄(III)イソプロポキシド、若しくは酢酸鉄(III)を用いて実行される。難燃剤生成物は、以下の実験式
【0122】
【0123】
に従って、リン及び鉄を比4:1で含有する。
【0124】
多くの場合、上述の実験式の化合物(多くの実施形態において、本明細書で説明されるような伸張された配位ポリマーである)は、難燃剤生成物の質量で、少なくとも75%、85%、90%、95%、98%、又はそれより大きい、又はそれらの間の任意の範囲等の、すべての、実質的にすべての、又は少なくとも大部分のリン含有難燃剤生成物を構成する。
【0125】
更なる実施形態において、好適な金属化合物は、以下の式
【0126】
【0127】
[式中、R及びMは上述のとおりであり、M(+)yが金属カチオンであり、ここで(+)yが、カチオンに形式上割り当てられた電荷を表し、金属ホスホナート塩が電荷平衡である(即ち、p=y)ように、pは2又は3であり、yは2又は3である]の金属ホスホナート塩である。金属ホスホナート塩は、当技術分野で公知の方法に従って調製されてもよい。
【0128】
一例において、アルキルホスホン酸(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、ブチル、又はt-ブチルホスホン酸)等のホスホン酸は、水と組み合わされ(例えば、質量で約1:1)、撹拌され、室温より下回って冷却される(例えば、約0℃等の、10℃又はそれより下回って冷却される)。初期の金属化合物は、ホスホン酸及び水の混合物に加えられて金属ホスホナート塩を形成する。次いで、金属ホスホナート塩は、好適な金属化合物として使用されて、粉末又は小粒子の形態のリン含有難燃剤生成物を生産する。好適な金属化合物としてホスホン酸アルミニウム塩を包含する実施形態において、難燃剤生成物は、以下の実験式
【0129】
【0130】
に従って、リンのアルミニウムに対する比4:1で、リン及びアルミニウムを含有する。実験式の化合物(多くの実施形態において、本明細書で説明されるような伸張された配位ポリマーである)は典型的に、難燃剤生成物の質量で、少なくとも75%、85%、90%、95%、98%、又はそれより大きい、又はそれらの間の任意の範囲等の、すべての、実質的にすべての、又は少なくとも大部分の難燃剤生成物を構成する。
【0131】
溶融状態法によるリン含有難燃剤の調製
本開示のリン含有難燃剤を調製するための別の好適な方法は、金属又は好適な金属化合物を、化学量論的過剰の非置換の、又はアルキル若しくはアリール置換されたホスホン酸と反応させることを含む。反応温度は、105℃以上、ホスホン酸は、反応温度において溶融状態であり、反応混合物中のホスホン酸の金属又は好適な金属化合物に対するモル比は、4:1より高い。反応において、金属は、酸化され、式M(+)yによってその対応するカチオン性形態において表されてもよく、式中、Mは金属であり、(+)yは、金属カチオンの電荷を表し、yは、2又は3である。好適な金属化合物は、式Mp
(+)yXqによって表されてもよく、式中、Mは金属であり、(+)yは、金属カチオンの電荷を表し、yは、2又は3であり、Xはアニオンであり、p及びqの値は、電荷平衡金属化合物を提供する。
【0132】
別の実施形態において、実験式(I)のリン含有難燃剤は、金属又は好適な金属化合物を、化学量論的過剰の非置換の、又はアルキル若しくはアリール置換されたピロホスホン酸と反応させることによって調製されてもよい。ピロホスホン酸は、反応温度において溶融状態であり、反応混合物中のピロホスホン酸の金属又は好適な金属化合物に対するモル比は、2:1より高い。
【0133】
本明細書において使用されるように、金属又は好適な金属化合物に対して、非置換の、又はアルキル若しくはアリール置換されたホスホン酸又はピロホスホン酸の「化学量論的過剰」は、金属又は好適な金属化合物とホスホン酸又はピロホスホン酸との反応に化学量論的に必要とされる量を超える、ホスホン酸又はピロホスホン酸の量を指す。化学量論的過剰は典型的に、本明細書で説明されるような、反応混合物中のホスホン酸又はピロホスホン酸の金属又は好適な金属化合物に対するモル比によって表される。
【0134】
本明細書で説明されるような化学量論的過剰で使用される、非置換の、又はアルキル若しくはアリール置換されたホスホン酸又はピロホスホン酸は、反応のための試薬及び溶媒として作用する。反応生成物は典型的に、反応混合物から得られるリン含有難燃剤生成物が析出するときに、スラリーとして形成する。反応後残存する過剰のホスホン酸又はピロホスホン酸は、生じうる副生成物とともに、ろ過及び/又は例えば水による洗浄によって、除去することができる。多くの実施形態において、実質的に純粋な難燃剤材料、例えば、難燃活性を有する本質的に単一の化合物、又は本質的に活性化合物の混合物を含む難燃剤が生産される。金属又は金属化合物に基づいた変換率は典型的に高く、生成物は容易に分離され、望ましい場合、任意選択で更に精製されうる。
【0135】
典型的に、反応混合物中のホスホン酸の金属又は好適な金属化合物に対するモル比は、約6:1以上、約8:1以上、又は約10:1以上等の、5:1以上である。反応混合物において、約12:1以上、約15:1以上、約20:1以上、約25:1以上、約30:1以上、又はそれらの間の任意の範囲等の、ホスホン酸の、金属又は好適な金属化合物に対するより大きいモル過剰が使用されてもよい。ホスホン酸の、金属又は好適な金属化合物に対する大きいモル過剰が使用されてもよい。例えば、モル比は、最大約50:1まで、最大約100:1まで、最大約300:1まで、最大約500:1まで、又はそれらの間の任意の範囲であってもよい。しかしながら、理解されるように、プロセス効率はある特定の大きいモル過剰で悪化しうる、例えば、反応混合物からの生成物析出が妨げられうる。多くの実施形態において、モル比は、約10:1から、約15:1から、又は約20:1から約50:1まで、又は約40:1まで等の、約8:1から、約10:1から、約12:1から、又は約16:1から約100:1まで、又は約50:1までの範囲である。
【0136】
典型的に、ピロホスホン酸に関して、反応混合物中のピロホスホン酸の金属又は好適な金属化合物に対するモル比は、約4:1以上、約6:1以上、又は約8:1以上等の、3:1以上である。多くの場合、反応混合物において、約10:1以上、約12:1以上、約15:1以上、約18:1以上、約20:1以上、又はそれらの間の任意の範囲等の、ピロホスホン酸の、金属又は好適な金属化合物に対するより大きいモル過剰が使用される。ピロホスホン酸の、金属又は好適な金属化合物に対する大きいモル過剰が使用されてもよい。例えば、モル比は、最大約30:1まで、最大約50:1まで、最大約100:1まで、最大約250:1まで、又はそれらの間の任意の範囲であってもよい。しかしながら、理解されるように、プロセス効率はある特定の大きいモル過剰で悪化しうる、例えば、反応混合物からの生成物析出が妨げられうる。多くの実施形態において、モル比は、約5:1から、約8:1から、又は約10:1から約25:1まで、又は約20:1まで等の、約4:1から、約5:1から、約6:1から、又は約8:1から約50:1まで、又は約25:1までの範囲である。
【0137】
溶融状態法に従ってリン含有難燃剤を生産するための反応温度は、ホスホン酸又はピロホスホン酸が、反応温度において溶融状態であるように選ばれるべきである。例えば、ホスホン酸及びピロホスホン酸(例えば、アルキル置換されたホスホン酸又はピロホスホン酸)は、多くの場合、室温で固体であり(例えば、メチルホスホン酸は約105℃で融解し、エチルホスホン酸は、約62℃で融解する)、従って、ホスホン酸又はピロホスホン酸を加熱して液化した物理的状態(即ち、溶融状態)を得ることは一般に、一貫した反応混合物を形成するのに適切である。当業者に認識されるように、ホスホン酸又はピロホスホン酸が溶融状態である望ましい反応温度は、選ばれる試薬及び熱力学条件に依存して変動してもよい。
【0138】
反応温度はまた、反応生成物中でのピロホスホン酸配位子の形成を促進するように選ばれるべきである。ホスホン酸に関して、105℃以上の反応温度が使用される。特定の理論に束縛されることなく、反応温度は、脱水反応によってピロホスホン酸配位子を生産するように選ばれる。多くの実施形態において、金属又は好適な金属化合物及びホスホン酸は、約115℃以上、約120℃以上、約130℃以上、約140℃以上、約150℃以上、約160℃以上、約170℃以上、約180℃以上、約200℃以上、約220℃以上、約240℃以上、約260℃以上、約280℃以上、又はそれらの間の任意の範囲等の、105℃より高い温度において反応される。反応温度は、最大約350℃まで、最大約400℃まで、又はそれ以上等、上述のものより高くてもよいが、典型的に、ホスホン酸の沸点になることも超えることもない。例えば、反応温度は、約150℃から約280℃まで、約160℃から約260℃まで、又は約160℃から約240℃まで等の、約150℃から約300℃までの範囲であってもよい。多くの実施形態において、反応温度は、約110℃から約350℃まで、約115℃から約300℃まで、約125℃から約280℃まで、又は約140℃から約260℃までの範囲である。脱水反応によって水が形成され、これにより、望ましくない逆(加水分解)反応に、場合によってはいたりうる。従って、いくつかの実施形態において、反応系は、反応からの、水の連続的な除去等の除去を促進するように設計される。例えば、反応温度は、少なくとも一部又は望ましい量(例えば、大部分、実質的にすべて、又はすべて)の水を反応から煮沸除去するのに必要な程度に、水の沸点を上回って選ばれてもよい。ガスパージ、真空、及び/又は他の公知の手段等の追加の手段が使用されて、反応系からの水の除去を促進してもよい。
【0139】
ピロホスホン酸には脱水は不必要であるため、ピロホスホン酸のための反応温度は、ホスホン酸に関して上述されるものより低くてもよい。一般に、ピロホスホン酸を用いる場合の好適な反応温度を選ぶことに対する限定的な基準は、ピロホスホン酸が、反応温度において溶融状態であるという要件である。多くの場合、金属又は好適な金属化合物及びピロホスホン酸は、20℃以上の温度において反応される。多くの実施形態において、金属又は好適な金属化合物、及びピロホスホン酸は、約40℃以上、約60℃以上、約80℃以上、約100℃以上、約140℃以上、約180℃以上、約200℃以上、又はそれらの間の任意の範囲等の、20℃より高い温度で反応される。反応温度は、最大約300℃まで、最大約400℃まで、又はそれ以上等、上述のものより高くてもよいが、典型的に、ピロホスホン酸の沸点になることも超えることもない。多くの実施形態において、反応温度は、約25℃から約350℃まで、約25℃から約280℃まで、約30℃から約260℃まで、約40℃から約260℃まで、約60℃から約260℃まで、約80℃から約240℃まで、約100℃から約240℃まで、約110℃から約240℃まで、又は約120℃から約240℃までの範囲である。例えば、ピロホスホン酸と反応させるために使用される金属化合物に応じて、反応から水が生成されてもよい。上述のとおり、いくつかの実施形態において、反応系は、反応からの、水の連続的な除去等の除去を促進するように設計される。例えば、反応温度は、少なくとも一部又は望ましい量(例えば、大部分、実質的にすべて、又はすべて)の水を反応から煮沸除去するのに必要な程度に、水の沸点を上回って選ばれてもよい。ガスパージ、真空、及び/又は他の公知の手段等の追加の手段が使用されて、反応系からの水の除去を促進してもよい。
【0140】
反応は、減圧又は真空下行われてもよいが、必要ではない。
【0141】
典型的に、反応が進行するに従って、生成物は、生成物反応混合物から得られるリン含有難燃剤生成物が析出するときに、スラリーとして形成する。従って、反応は典型的に、そのような析出を達成するのに十分な時間行われる。一般に、金属又は好適な金属化合物に基づいて、難燃剤生成物への少なくとも実質的な変換を達成するのに必要とされる時間は、反応温度に依存することになり、一般により高い温度はより短い反応時間をもたらす。多くの実施形態において、金属又は好適な金属化合物及びホスホン酸又はピロホスホン酸は、約0.2から約36時間まで、約0.5から約30時間まで、約1時間から約24時間まで、例えば、約1時間から約12時間まで、約1時間から約8時間まで、又は約2時間から約5時間まで等の、約0.1から約48時間までの間、反応温度で加熱されるが、他の継続時間が使用されてもよい。
【0142】
金属又は好適な金属化合物及びモル過剰のホスホン酸又はピロホスホン酸は、反応混合物を形成するのに好適な任意の仕方で組み合わせることができる。例えば、ホスホン酸又はピロホスホン酸及び金属又は金属化合物は、一緒に混合されて(例えば、撹拌されて)、均質の反応混合物を形成等してもよい。いくつかの実施形態において、金属又は好適な金属化合物は、反応温度に予熱されたホスホン酸又はピロホスホン酸に加えられる。いくつかの実施形態において、ホスホン酸又はピロホスホン酸は、窒素雰囲気又は減圧/真空下等、予熱され、融解次第、撹拌される。更に実施形態において、反応の発熱性に起因する反応温度の大きい変化を引き起こすことなく、金属又は金属化合物は、可能な限り迅速に加えられる。いくつかの実施形態において、ホスホン酸を予熱せずに、又はホスホン酸若しくはピロホスホン酸を液化するのに十分な加熱をせずに、ホスホン酸又はピロホスホン酸及び金属又は好適な金属化合物は組み合わされ、続いて、成分が反応温度に加熱される。金属又は好適な金属化合物又はホスホン酸又はピロホスホン酸の全量は、一括でも分割でも反応に加えることができる。モル過剰で使用されるホスホン酸又はピロホスホン酸が試薬及び溶媒として作用するため、追加の溶媒は必要とされないが、望ましい場合、追加の溶媒が使用されてもよい。いくつかの実施形態において、本明細書において開示されるモル比の低い方の境界の、又はその近傍の、ホスホン酸又はピロホスホン酸の金属又は好適な金属化合物に対するモル比を用いる場合、追加の溶媒が使用される。
【0143】
いくつかの実施形態において、難燃剤生成物への望ましい変換、例えば、完全な、又は実質的に完全な変換が達成された後、生成物反応混合物は、過剰のホスホン酸又はピロホスホン酸の融解温度を上回る又はそれ以上の温度に冷却されて、過剰のホスホン酸又はピロホスホン酸は液化状態に保たれる。過剰のホスホン酸又はピロホスホン酸は、ろ過/洗浄によって除去し、任意選択で回収することができる。回収された過剰のホスホン酸又はピロホスホン酸は、例えば、金属又は好適な金属化合物がホスホン酸又はピロホスホン酸と反応する反応器に戻されて、再利用されてもよい。反応生成物への変換後、溶媒、例えば、水、アルコール、及び/又は別の好適な(例えば、極性の)液体は、任意選択で加えられて、過剰のホスホン酸又はピロホスホン酸を溶解するか、そうでない場合、それらの除去を助けてもよい。リン含有難燃剤生成物は、多くの場合、ろ過によって、任意選択で追加のワークアップ(例えば、洗浄、乾燥、ふるい分け等)が後に続いて、分離される。一般に粉末又は小粒子の形態である、得られるリン含有難燃剤生成物は、容易に加工可能である、即ち、使用前の破砕、粉砕、又は他のそのような物理的加工を、必要とすることも強制することもない。難燃剤材料を、「直接」、粉末又は小粒子として生産することにより、難燃剤生成物を分離すること(例えば、過剰のホスホン酸又はピロホスホン酸又は残存する溶媒から難燃剤生成物を分けること)等の、例えば、ろ過、ふるい分け、洗浄、及び乾燥等によって反応生成物を加工することを含みうる、反応生成物のワークアップが可能になることが理解されるべきである。反応後、得られる生成物反応混合物、多くの場合スラリーは、過剰のホスホン酸の融解温度に、又はそれを少し上回って冷却されてもよく、スラリーは、水と組み合わされてもよい。水/スラリー混合物は、必要に応じてかき混ぜられて、形成している可能性のある大きい凝集が解消されてもよい。固体生成物は、ろ過によって分離され、任意選択で水で洗浄され、乾燥されて、粉末又は小粒子の形態の生成物が得られてもよい。いくつかの事例において、生成物はふるい分けされて、粒径が精製されてもよい。
【0144】
リン含有難燃剤を調製するために使用されるホスホン酸又はピロホスホン酸は、上述のとおりのホスホン酸又はピロホスホン酸であってもよい。プロセスでは、1種より多いホスホン酸、1種より多いピロホスホン酸、又はホスホン酸及びピロホスホン酸の組み合わせを用いてもよい。いくつかの実施形態において、ホスホン酸又はピロホスホン酸は、インサイチュで生成される。例えば、反応混合物を調製することは、より高次のオリゴマーホスホン酸及び/又は環状ホスホン酸無水物出発材料の加水分解による等の、ホスホン酸又はピロホスホン酸を調製することを含んでもよい。
【0145】
反応のための好適な金属及び金属化合物は上述のとおりである。
【0146】
調製プロセスは、リン含有難燃剤化合物の混合物を生じうるが、多くの実施形態において、プロセスは、金属又は金属化合物に基づいて、少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、98%、又はより高い変換率、又はそれらの間の任意の範囲等の高い変換率で、1種の、又は主として1種の化合物としてリン含有難燃剤生成物を生産し、米国特許第9,745,449号において開示されている等の、金属ホスホナート塩の熱処理を包含する先行技術のプロセスによって得られる化合物の混合物とは対照的である。
【0147】
溶融状態法に従う反応は、一般に、示される
【0148】
【0149】
[式中、M(+)yが金属カチオンであり、ここで(+)yがカチオンの電荷を表すように、Mは金属であり、yは2又は3である;Xは、金属に付着されたアニオン性配位子又は配位子(複数)であり、M及びXの化学量論(即ち、p及びq)は、平衡状態に荷電された金属化合物を提供する;Rは、H、アルキル、アリール、アルキルアリール、又はアリールアルキルである(本明細書で説明されるように);a、b、及びcは、反応生成物において互いに対して対応する成分の比を表し、電荷平衡方程式2(a)+c=b(y)を満たし、cはゼロではない]のとおりに進行する。多くの場合、aは0、1、又は2(例えば、0又は1)であり、bは1から4まで、例えば、1又は2であり、cは1又は2であり、化合物は平衡状態に荷電されている。ある特定の実施形態において、本明細書において示されるようなRは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、又はブチルであり、Mは、Al、Fe、Zn、又はCaである。更なる実施形態において、Xは、酸素、ヒドロキシ、アルコキシ、又はハロゲンである。
【0150】
ピロホスホン酸を用いた一般反応スキームは、
【0151】
【0152】
[式中、R、M、X、p、q、y、a、b、及びcは、上述のとおりである]と表すことができる。
【0153】
上で論じられるように、無機配位化合物に関して通常であるように、反応生成物のための式は、生成物が、配位ポリマー、錯塩、ある特定の原子価が共有されている塩等でありうるように、実験的であるか、又は理想化されている。多くの実施形態において、上述の反応生成物は、配位ポリマーのモノマー単位(即ち、配位主体)を表し、それにより、伸張された配位ポリマー構造は、本開示のリン含有難燃剤を形成する。
【0154】
ある特定の実施形態において、yは2であり(即ち、M(+)yはジカチオン性金属である)、aは0であり、bは1であり、cは2である。ある特定の実施形態において、ジカチオン性金属Mは、Mg、Ca、又はZnである。他の実施形態において、yは3であり(即ち、M(+)yはトリカチオン性金属である)、aは1であり、bは1であり、cは1である。ある特定の実施形態において、トリカチオン性金属Mは、Al、Ga、Sb、Fe、Co、B、及びBiから選ばれる。ある特定の実施形態において、トリカチオン性金属Mは、Al、Fe、Ga、Sb、又はBである。ある特定の実施形態において、Mは、アルミニウム(即ち、反応生成物は、アルミニウム、又は本明細書で説明されるもの等の1種又は複数のアルミニウム化合物を使用して生産される)、又は鉄(即ち、反応生成物は、鉄、又は本明細書で説明されるもの等の1種又は複数の鉄化合物を使用して生産される)である。
【0155】
一例において、以下の実験式
【0156】
【0157】
を有するリン含有難燃剤化合物が生産される。
【0158】
上述のとおり、実験式において下付き文字a、b、及びcが存在しないことは、下付き文字がそれぞれ1であり、ジアニオン性ピロホスホン酸配位子、金属原子、モノアニオン性ピロホスホン酸配位子の比1:1:1を意味することを示す。
【0159】
多くの場合、多くの実施形態において、本明細書で説明されるような伸張された配位ポリマーであるリン含有難燃剤化合物は、難燃剤生成物の質量で、少なくとも75%、85%、90%、95%、98%、又はそれより大きい、又はそれらの間の任意の範囲等の、すべての、実質的にすべての、又は少なくとも大部分のリン含有難燃剤生成物を構成する。
【0160】
多くの場合スラリーとして存在する、反応から形成される生成物反応混合物は、液体(例えば、水)と組み合わされ、望ましいようにかき混ぜられて、形成している可能性のある凝集が解消されてもよい。固体生成物は、ろ過によって分離され、任意選択で洗浄され、乾燥されて、粉末又は小粒子の形態の生成物が得られてもよい。いくつかの事例において、生成物はふるい分けされて、粒径が精製されてもよい。
【0161】
反応は、任意選択で、播種材料を用いて促進されてもよい。例えば、播種材料の使用は、リン含有難燃剤生成物への変換を達成するための時間を低減してもよく、生成物の物理的特性における一貫性を増大させてもよい。従って、いくつかの実施形態において、反応混合物は、播種材料を更に含む。多くの場合、播種材料は、反応温度に加熱され次第又はその後に、反応混合物に加えられる。いくつかの実施形態において、播種材料は、本明細書で説明される方法に従って生産されるリン含有難燃剤を含む。播種材料は、望ましい粒径を有するように選択されても精製されてもよい。
【0162】
溶融状態法のいくつかの実施形態において、好適な金属化合物はアルミナであり、難燃剤材料は以下
【0163】
【0164】
のとおり生産される。
【0165】
一例において、C1~C12アルキルホスホン酸(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、ブチル、又はt-ブチルホスホン酸)等のホスホン酸は、融解次第、撹拌しながら(例えば、窒素下)、115℃、125℃、140℃、150℃、160℃、180℃、200℃、220℃、又は240℃以上等、その融点105℃に又はそれを上回って加熱される。アルミナ、三塩化アルミニウム、三水酸化アルミニウム、アルミニウムイソプロポキシド、炭酸アルミニウム、又は酢酸アルミニウム等のAlの酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、アルコキシド、炭酸塩、又はカルボン酸塩は、ホスホン酸の本明細書で説明されるような金属化合物に対するモル比、例えば、5:1以上、10:1以上、又は15:1以上において等、化学量論的過剰のホスホン酸において、撹拌しながら加えられる。典型的に、反応が進行するに従いスラリーが形成し、ろ過、洗浄等によって等、固体難燃剤生成物が分離されて、粉末又は小粒子の形態の生成物が得られてもよい。過剰のホスホン酸の融点を上回って、又はそれ以上に、生成物反応混合物を冷却すること、及び液体、例えば水と合わせること、並びに任意選択で上述のとおりかき混ぜること等の、生成物反応混合物に対する追加のワークアップは、固体生成物を分離するのに先立って実行されてもよい。固体難燃剤生成物は、ろ過によって分離され、任意選択で、追加の溶媒を用いて洗浄され、乾燥されて、粉末又は小粒子の形態の生成物が得られてもよい。難燃剤生成物は、以下の実験式
【0166】
【0167】
に従って、リン及びアルミニウムを比4:1で含有する。更なる例において、すぐ上に説明される例は、鉄、又は鉄のハロゲン化物、酸化物、アルコキシド、炭酸塩、若しくは酢酸塩等の好適な鉄化合物、例えば、酸化鉄(III)、塩化鉄(III)、鉄(III)イソプロポキシド、若しくは酢酸鉄(III)を用いて実行される。難燃剤生成物は、以下の実験式
【0168】
【0169】
に従って、リン及び鉄を比4:1で含有する。
【0170】
多くの場合、上述の実験式の化合物(多くの実施形態において、本明細書で説明されるような伸張された配位ポリマーである)は、難燃剤生成物の質量で、少なくとも75%、85%、90%、95%、98%、又はそれより大きい、又はそれらの間の任意の範囲等の、すべての、実質的にすべての、又は少なくとも大部分のリン含有難燃剤生成物を構成する。
【0171】
好適な金属化合物が金属ホスホナート塩である更なる例において、金属ホスホナート塩は、アルキルホスホン酸、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、ブチル、又はt-ブチルホスホン酸等のホスホン酸、及び溶媒(例えば、水)を混合して均質の溶液を形成することによって調製される。例えば、水のホスホン酸に対する任意の好都合な比、例えば、質量で5:1~1:5、又は質量で2:1~1:2等の、質量で10:1~1:10が使用されてもよい。溶液は、例えば約0から約20℃までの範囲に、冷却されてもよく、金属酸化物、ハロゲン化物、アルコキシド、又は水酸化物等の初期の金属化合物が加えられてホスホン酸と反応される。金属ホスホナート塩が形成され、次いで、好適な金属化合物として使用される。例えば、本明細書で説明されるようなモル過剰のホスホン酸(ホスホン酸の金属ホスホナート塩に対するモル比5:1における等)は、溶融状態に予熱され、金属ホスホナート塩と反応されて、リン含有難燃剤生成物を形成する。好適な金属化合物としてホスホン酸アルミニウム塩を包含する実施形態において、難燃剤生成物は、以下の実験式
【0172】
【0173】
に従って、リンのアルミニウムに対する比4:1で、リン及びアルミニウムを含有する。実験式の化合物(多くの実施形態において、本明細書で説明されるような伸張された配位ポリマーである)は典型的に、難燃剤生成物の質量で、少なくとも75%、85%、90%、95%、98%、又はそれより大きい、又はそれらの間の任意の範囲等の、すべての、実質的にすべての、又は少なくとも大部分の難燃剤生成物を構成する。
【0174】
難燃剤及び共力剤添加剤組成物の調製
本発明は、ここで開示される難燃剤及び共力剤添加剤組成物の成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)を混合するいかなる特定の方法によっても限定されない。例えば、少なくとも1種のリン含有難燃剤(A)及び少なくとも1種の次亜リン酸金属塩(B)は、任意選択で、少なくとも1種の熱安定剤(C)、少なくとも1種の追加の共力剤、及び/又は追加の難燃剤(D)、並びに少なくとも1種の追加の添加剤(E)のうちのいずれか1つ又は組み合わせとともに、例えば、転動混合、対流混合、流動床混合、高せん断混合等の従来の混合技法によって、混合/ブレンドされてもよい。従来の加工剤、例えば、分散剤、帯電防止剤、結合剤、カップリング剤等が、使用されてもよい。
【0175】
難燃性熱可塑性組成物の調製
本発明は、ここで開示される難燃性熱可塑性組成物の成分をブレンドするいかなる特定の方法によっても限定されない。当技術分野で公知の好適な配合及びブレンド技法が使用されてもよい。例えば、1つの方法は、粉末又は顆粒形態の熱可塑性ポリマー及び添加剤をブレンドすること、及びブレンドを融解-混合すること(例えば、二軸押出機を使用して)を含む。熱可塑性ポリマー、難燃剤、共力剤、及び他の添加剤は、典型的に、融解-混合前に前乾燥される。押出されるブレンドは、標準的な技法によって顆粒状ペレット又は他の好適な形状に細かく砕かれてもよい。ニーダーミキサー又はボウルミキサー等の他の融解-混合プロセス設備を使用して、難燃剤添加剤及び任意の追加の混合物成分を熱可塑性ポリマーと配合することができる。どちらの事例においても、一般に好適な機器の温度は、選択される熱可塑性物質の特定のタイプに応じて、約200℃から330℃までの範囲であってもよい。
【0176】
難燃性熱可塑性組成物は、そのような目的に好適な任意の設備において、例えば、射出成形機において、成形することができる。ペレット化後、顆粒状ペレットは典型的に、そのような目的に好適な射出成形機において成形される前に再乾燥される。多くの場合、プロセス温度は、特定の熱可塑性ポリマーの成形特性、添加剤及び/又は補強充填剤の充填レベル、並びに成形型のキャビティの厚さ及びゲートサイズ等の他の因子に応じて、約200℃から280℃までの範囲である。当業者は、成形プロセスにおいて、好適な調整を行って組成物又は器具の差異を調節することが可能である。
【0177】
更に非限定的な開示は、以下の実施例において提供される。
【実施例】
【0178】
ここで開示される難燃剤及び次亜リン酸金属塩共力剤の組み合わせを、ポリアミド-6,6熱可塑性組成物(配合物1)において評価し、窒素含有共力剤を用いた2つの比較配合物(配合物2C及び3C)も同様にした。各試料の組成を、下記に列挙し、ブレンドされた成分の比を含めてTable 1(表1)に示す。
熱可塑性ポリマー:
ポリアミド-6,6
無機充填剤:
ガラス繊維
リン含有難燃剤(Phos-FR):
国際公開第2020/132075号の実施例1に従って調製した、実験式
【0179】
【0180】
のリン含有難燃剤材料。
共力剤:
配合物1:次亜リン酸カルシウム(Phoslite(登録商標)B85CX)
配合物2C:メレム
配合物3C:メロン
【0181】
二軸押出機を使用して、Table 1(表1)に示す配合物を265℃で配合する。射出成形機を使用して、260~280℃で、及び80℃での成形型温度で、0.8mm(厚さ)の試料を調製した。UL-94試験下の難燃活性、及び加工安定性に関して、配合物を評価した。
【0182】
【0183】
Table 1(表1)に示すように、ガラス入りポリアミド66(配合物1)におけるPhos-FR及びPhoslite B85CXの組み合わせは、0.8mm厚さにおいてUL-94 V-0を達成した。追加的に、UL-94垂直燃焼試験後に、弱い火炎と褐色の焦げた残留物が観察され、組み合わせによって強い物理的な障壁が形成されて、燃焼から保護することを示した。組み合わせはまた、優れた加工安定性を示した。
【0184】
比較すると、共力剤としてメレムを有する配合物2C、及び共力剤としてメロンを有する配合物3Cは、あまり安定でない射出成形プロセスをもたらした。追加的に、配合物2Cは、0.8mmの厚さにおいてUL-94 V-0を達成しなかった。
【0185】
本発明の特定の実施形態が例証され、説明されてきたが、特許請求される本発明の範囲から逸脱することなく様々な修正及び変更がなされうることは、本明細書の考察及び本開示の実践から当業者には明らかとなろう。従って、本明細書及び例は単に例示的であると考えられ、真の本発明の範囲は以下の請求項及びそれらの同等物によって示されることが意図される。
【国際調査報告】