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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】バッフルを備えるバイオリアクター
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/00 20060101AFI20241031BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20241031BHJP
   C12M 1/02 20060101ALI20241031BHJP
   C12M 1/12 20060101ALI20241031BHJP
   C12M 3/06 20060101ALI20241031BHJP
   C12M 3/02 20060101ALI20241031BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20241031BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20241031BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20241031BHJP
【FI】
C12M3/00 Z
C12M1/00 C
C12M1/02 A
C12M1/12
C12M3/06
C12M3/02
C12N1/00 B
C12N5/071
C12N5/0783
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531359
(86)(22)【出願日】2022-11-10
(85)【翻訳文提出日】2024-07-23
(86)【国際出願番号】 GB2022052856
(87)【国際公開番号】W WO2023094794
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】2117018.8
(32)【優先日】2021-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519167379
【氏名又は名称】オリバイオテク・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ファーラン・ヴェライチ
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・ライムズ
(72)【発明者】
【氏名】シャウン・マンスフィールド
(72)【発明者】
【氏名】マーティン・フール
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス・ハーディング
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン・パーマー
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB11
4B029CC01
4B029DB19
4B029DF08
4B065AA92X
4B065AA94X
4B065AC12
4B065BC08
4B065CA44
(57)【要約】
本出願は、細胞培養のためのバイオリアクター(4)を提供する。バイオリアクターは、内部容積を画成するベース(15)と側壁(16)とを有する容器(12)を備える。バイオリアクターは、容器の内部容積を閉じる蓋(13)も有する。ベースは、蓋の方へ、および蓋から離れる方向に移動可能である。バイオリアクターは、バッフル部材(24)であって、蓋に装着され、ベースが蓋に対して移動されるときにバッフル部材がバイオリアクターの内容物(29)を混合するように配置構成されている容器の内部容積内に位置決めされたバッフル部材(24)も備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞培養のためのバイオリアクターであって、
内部容積を画成するベースおよび側壁と、前記内部容積を閉鎖する蓋と、を有する容器であって、前記ベースは前記蓋に向かって、および前記蓋から離れる方向に移動可能である、容器と、
前記蓋に装着されるバッフル部材であって、前記ベースが前記蓋に対して移動されるときに前記バッフル部材が前記バイオリアクターの内容物を混合するように配置構成されている前記容器の前記内部容積内に位置決めされたバッフル部材と、
を備えるバイオリアクター。
【請求項2】
前記バッフル部材は、前記容器の内部容積にわたって延在する略平面状の部材を含む請求項1に記載のバイオリアクター。
【請求項3】
前記バッフル部材は、前記蓋に略平行になるように延在する請求項1または請求項2に記載のバイオリアクター。
【請求項4】
前記バッフル部材は、前記容器の前記ベースに面する略平面状の表面を含む請求項1または請求項2に記載のバイオリアクター。
【請求項5】
前記略平面状の表面は、前記蓋に対して非平行である請求項4に記載のバイオリアクター。
【請求項6】
前記バッフル部材は、前記蓋に面するように配置構成された傾斜表面、たとえば円錐表面を含む請求項1から5のいずれか一項に記載のバイオリアクター。
【請求項7】
前記バッフル部材は、前記ベースが前記蓋に対して移動されるときに前記バッフル部材を通る流体の通過のための1つ以上の穴または開口部を備える請求項1から6のいずれか一項に記載のバイオリアクター。
【請求項8】
前記穴または開口部の1つ以上は、螺旋状または角度を付けた表面を備える請求項7に記載のバイオリアクター。
【請求項9】
前記バッフル部材は、1つ以上のリブを含む請求項1から8のいずれか一項に記載のバイオリアクター。
【請求項10】
前記バッフル部材の外縁は略円形である請求項1から9のいずれか一項に記載のバイオリアクター。
【請求項11】
前記容器の前記側壁は、圧縮可能である請求項1から10のいずれか一項に記載のバイオリアクター。
【請求項12】
前記バッフル部材は、前記蓋に移動可能に装着される請求項1から11のいずれか一項に記載のバイオリアクター。
【請求項13】
前記バッフル部材は、前記容器内での前記バッフル部材の往復移動のために前記蓋に摺動可能に装着される請求項12に記載のバイオリアクター。
【請求項14】
前記バッフル部材は、前記蓋に回転可能に装着される請求項12または請求項13に記載のバイオリアクター。
【請求項15】
前記蓋に装着された第2のバッフル部材をさらに含む請求項1から14のいずれか一項に記載のバイオリアクター。
【請求項16】
前記第2のバッフル部材は、前記バッフル部材に対して非平行である請求項15に記載のバイオリアクター。
【請求項17】
前記バッフル部材は、流体を前記容器内におよび/または前記容器外に搬送するための流体経路を備える請求項1から16のいずれか一項に記載のバイオリアクター。
【請求項18】
前記バッフル部材は、前記流体経路を通過する流体を濾過するように配置構成されたフィルタ部材をさらに備える請求項17に記載のバイオリアクター。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか一項に記載のバイオリアクターと、使用時に前記バッフル部材が前記バイオリアクターの内容物を混合するように前記バイオリアクターの前記ベースを移動するよう配置構成された撹拌機と、を備えるバイオリアクターシステム。
【請求項20】
前記撹拌機は、
前記ベースを、前記バッフル部材が前記容器内の流体中に沈められように位置決めし、
前記ベースを往復運動させて前記バッフル部材および前記流体の相対運動を発生するように構成される請求項19に記載のバイオリアクターシステム。
【請求項21】
前記撹拌機は、前記ベースを往復運動させて前記バッフル部材が前記流体中に沈められたままとなるように構成される請求項20に記載のバイオリアクターシステム。
【請求項22】
前記撹拌機は、最大約50ミリメートル、たとえば約20ミリメートルのストローク長で前記ベースを往復運動させるように構成される請求項19から21のいずれか一項に記載のバイオリアクターシステム。
【請求項23】
前記撹拌機は、最大毎分約80ストローク、たとえば毎分約10ストロークから毎分約80ストロークの間、たとえば毎分約20ストロークから毎分約60ストロークの間の頻度で前記ベースを往復運動させるように構成される請求項19から22のいずれか一項に記載のバイオリアクターシステム。
【請求項24】
前記撹拌機は、前記バッフル部材に対して前記ベースの角度を変更するように構成される請求項19から23のいずれか一項に記載のバイオリアクターシステム。
【請求項25】
細胞培養の方法であって、請求項19から24のいずれか一項に記載の前記バイオリアクターシステムを提供するステップと、前記バイオリアクターの前記容器内に細胞懸濁液を提供するステップと、前記バッフル部材が前記細胞懸濁液を撹拌するように前記バイオリアクターの前記ベースを移動するステップとを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッフルを備えるバイオリアクターに関するものである。バイオリアクターは、細胞培養用であってもよく、バッフルは、バイオリアクターの流体内容物を混合するために設けられ得る。
【背景技術】
【0002】
細胞および遺伝子治療製造処理は、しばしば複雑であり、いくつかのデバイスにまたがる手動または半自動化されたステップを含む。細胞ベース治療製品(cell-based therapeutic product)(CTP)製造の様々なステップ、または単位操作で使用される機器システムは、様々な機能のためのデバイスを含み得る。これらの様々な機能は、たとえば、細胞捕集、細胞単離、細胞選択、細胞増殖、細胞洗浄、減容、細胞貯蔵または輸送であるものとしてよい。単位操作は、ほかにも要因はあるがとりわけ、製造モデル(すなわち、自己由来対同種他家由来)、細胞種類、意図された目的に基づき非常に多様であり得る。それに加えて、細胞は「生きている」実体であり、たとえば細胞移送手順の違いなど、最も単純な操作であっても影響を受けやすい。スケーラビリティおよび再現性を確実にするための細胞製造機器の役割は、細胞および遺伝子治療製造に対して重要な要素である。
【0003】
さらに、細胞ベース治療製品(CTP)は大きな勢いを得ており、様々な細胞製造手順に対する細胞製造機器の改良が必要とされている。これらの製造手順は、たとえば、幹細胞濃縮、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞の作製、および捕集、精製、遺伝子組み換え、インキュベーション、回収、洗浄、患者への注入、または冷凍などの様々な細胞製造プロセスを含む。
【0004】
細胞の培養または処理は、典型的には、細胞を培養するときに、たとえば適切な培養液中に細胞を保持するためのデバイスを使用することを必要とする。知られているデバイスは、振盪フラスコ、ローラーボトル、Tフラスコ、バッグおよび同様のものを含む。そのようなデバイスは、様々な培地が細胞を保持するデバイス内に導入され、またはそこから取り出され得るように、典型的には、容器、インターフェース、または同様のものなどの、他のデバイスに接続される必要がある。典型的には、培地内の細胞は、接続チューブを使用して取り付けられた可撓性バッグからデバイスに加えられ得る。代替的に、細胞は、ピペットまたは注射器で移送され得る。
【0005】
細胞培養または処理の間、バイオリアクターの内容物は混合されるか、または撹拌され得る。バイオリアクターを動かす(たとえば、傾ける、回転させる)ことによって、または振動混合器(vibratory mixer)を使用してバイオリアクターの内容物を撹拌することによってこれを達成されることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】同時係属特許出願第PCT/GB2020/053229号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示により、細胞培養のためのバイオリアクターが提供され、バイオリアクターは
内部容積を画成するベースおよび側壁、ならびに内部容積を閉鎖する蓋を有する容器であって、ベースは蓋に向かって、および蓋から離れる方向に移動可能である、容器と、
バッフル部材であって、蓋に装着され、ベースが蓋に対して移動されるときにバッフル部材がバイオリアクターの内容物を混合する配置を取るように容器の内部容積内に位置決めされたバッフル部材とを備える。
【0008】
ベースが蓋に対して移動されると、容器内の流体レベルが変化し、流体とバッフルとの相対的な移動を引き起こし、バッフルは容器の流体内容物の混合および撹拌を引き起こす。そのような混合および撹拌は、静置もしくは沈降細胞を再懸濁するか、または媒質もしくは溶存ガスを流体に通して循環させ得る。
【0009】
例では、バッフル部材は、容器の内部容積にわたって延在する略平面状の部材を含み得る。特に、バッフル部材は、蓋に対して略平行になるように延在し得る。例では、バッフル部材は、容器のベースに面する略平面状の表面を含み得る。
【0010】
したがって、ベースの移動中、流体はバッフル部材の外側の周りに押し付けられ、それによって混合され、撹拌される。それに加えて、バッフル部材は、バッフル部材の縁の周りを通らない流体の混合を引き起こす圧力差を流体中に生じさせ得る。
【0011】
例では、バッフル部材は、容器の断面積の少なくとも50パーセント、たとえば容器の断面積の少なくとも75パーセントにわたって延在するサイズのものであってよい。
【0012】
いくつかの例では、バッフル部材の略平面状の表面は、蓋に対して非平行である。すなわち、バッフル部材の略平面状の表面は、蓋に関して角度を付けられ得る。バッフル部材の略平面状の表面は、それに加えて、または代替的に、ベースに対して角度を付けられ得る。
【0013】
例では、バッフル部材は、蓋に面するように配置構成された傾斜表面、たとえば円錐表面を含み得る。このような傾斜表面は、使用中にバッフル部材が流体から引き出されるときに流体が容器内に戻るのを助ける可能性がある。
【0014】
例では、バッフル部材は、ベースが蓋に対して移動されるときにバッフル部材を通る流体の通過のための1つ以上の穴または開口部を備え得る。1つ以上の穴または開口部は、円形であるか、またはアーチ形セクタもしくは他の形状であってもよい。1つ以上の穴または開口部は、バッフル部材内の穿孔であってもよい。バッフル部材は、複数の穴または開口部を含んでもよく、複数の穴または開口部は、均一なサイズおよび/もしくは形状、または変化するサイズおよび/もしくは形状を有し得る。
【0015】
例では、穴または開口部の1つ以上は、螺旋状または角度を付けた表面を備え得る。たとえば、穴または開口部の1つ以上は、流体が1つ以上の穴または開口部を通過するときに渦または同様のものが生じ、混合および撹拌を高めるようにバッフル部材に関するベースの移動の方向に関して角度を付けた通路を含み得る。同様に、例では、穴の1つ以上は、バッフルが流体に関して一方向に移動すると穴を覆い、バッフルが流体に関して他方向に移動すると枢動して開くように配置構成されたフラップを有するものとしてよい。このようなフラップは、流体の混合および撹拌を高め得る。
【0016】
例では、バッフル部材は、1つ以上のリブを含み得る。1つ以上のリブは、ベースに面する表面、および/または蓋に面する表面に設けられるものとしてよく、使用中に流体の混合および撹拌を高めるように作用し得る。
【0017】
例では、容器は、略円筒形である。例では、バッフル部材の外縁は、略円形である。他の例では、バッフル部材の外縁は、略非円形であり、たとえば、波状プロファイルを有するか、または正方形もしくは三角形であってもよい。
【0018】
例では、容器の側壁は、圧縮可能または折り畳み可能であり、たとえば蛇腹壁である。したがって、側壁は、ベースが蓋に対して移動されると、圧縮され、かつ伸長する。他の例では、容器の側壁は、可撓性または伸長性を有し、たとえば弾性的に伸長可能であってよく、これにより蓋に関するベースの移動を可能にする。
【0019】
例では、バッフル部材は、蓋に移動可能に装着され得る。たとえば、バッフル部材は、容器内でのバッフル部材の往復移動のために蓋に摺動可能に装着され得る。バッフル部材は、蓋のリニア軸受に受け入れられる装着部分を介して蓋に摺動可能に装着され得る。1つ以上のガイドが、摺動に伴うバッフル部材の回転運動を妨げ得る。
【0020】
他の例では、バッフル部材は、蓋に回転可能に装着され得る。そのような例では、バッフル部材は、蓋内の軸受またはブッシングに受け入れられる装着部分を介して蓋に装着され得る。バッフル部材は、容器内で自由に回転可能であり得るか、またはバッフル部材は、たとえば、使用者によって、または容器の外部に配置されたアクチュエータによって、能動的に回転され得る。
【0021】
例では、バイオリアクターは、蓋に装着された第2のバッフル部材をさらに備え得る。第2のバッフル部材は、バッフル部材および第2のバッフル部材が蓋から異なる量だけ離間されるようにバッフル部材と軸方向に整列され得る。したがって、バッフル部材および第2のバッフル部材は、容器内の流体中において異なるレベルで混合するように作用することができる。いくつかの例では、バッフル部材および第2のバッフル部材は同じであり、他の例では、容器内の流体中において異なるレベルで混合するように作用する。いくつかの例では、バッフル部材および第2のバッフル部材は異なり、たとえば異なるサイズおよび/もしくは形状のものであるか、または異なる穴もしくは開口部を有する。特に、バッフル部材および第2のバッフル部材の一方または両方は、バッフル部材を参照しつつ上で説明されている特徴のいずれかを有し得る。
【0022】
いくつかの例では、第2のバッフル部材は、バッフル部材に平行であり、たとえばバッフル部材に平行でバッフル部材から離間する。これらの例では、バッフル部材および第2のバッフル部材は、蓋に対して平行であってもよい。他の例では、第2のバッフル部材は、バッフル部材と非平行である、たとえばバッフル部材に関して角度を付けられている。このような例では、バッフル部材および第2のバッフル部材のうちの一方は、蓋に対して平行であり、バッフル部材および第2のバッフル部材のうちの他方は、蓋に対して非平行であることがあり得る。代替的に、バッフル部材および第2のバッフル部材の両方が蓋に対して非平行であってもよい。
【0023】
例では、バッフルは、流体を容器内におよび/または容器外に搬送するための流体経路を備え得る。特に、流体経路は、バッフル部材内の開口部から、蓋に取り付けられているバッフルの装着部分を通って、容器の外側の開口部まで延在し得る。例では、バッフル部材は、流体経路を通過する流体を濾過するように配置構成されたフィルタ部材をさらに備え得る。フィルタ部材は、バッフル部材内の開口部を覆うものとしてよい。フィルタ部材は、メンブレンフィルタまたはデプスフィルタであってもよい。例では、フィルタ部材は、流体が流体経路を通って容器から抽出される際に容器内の細胞を保持するように構成され得る。
【0024】
流体経路は、容器の外側から流体経路を通して流体を搬送することによって、流体を容器に加えるために使用され得る。それに加えて、または代替的に、流体経路は、バッフル部材内の開口部を流体中に沈め(たとえば、バッフル部材を流体中に沈め)、次いで負圧を加えて流体経路を通して流体を引き出すことによって、容器から流体を抽出するために使用され得る。
【0025】
例では、蓋は、バッフルの装着部分の開口部と流体的に連通する1つ以上のポートを備え得る。蓋は、それに加えて、1つ以上のポートを封止するための1つ以上のシール、たとえばセプタムシールを備え得る。1つ以上のポートは、容器に流体を追加するために、または容器から流体を取り出すために、消耗品をポートに接続するためのコネクタインターフェースを備え得る。
【0026】
様々な例において、バッフル部材は、装着部分を介して蓋に取り付けられる。装着部分は、バッフル部材と一体成形され得るか、またはバッフル部材に取り付けられていてもよい。装着部分は、概ね円筒形の延長部を備え、バッフル部材は、円筒形の延長部の一端に取り付けられ、他端は蓋に取り付け可能であるものとしてよい。装着部分は、蓋にネジ止めされるかまたは締め付けられ得る、たとえば、蓋は、ネジ付きスピゴットを備え、装着部分は、ネジ付きスピゴットを取り付けるためのネジ穴を備え得る。
【0027】
本発明によれば、上で説明されているようなバイオリアクターと、使用中にバッフル部材がバイオリアクターの内容物を混合するようにバイオリアクターのベースを移動するように配置構成された撹拌機とを備えるバイオリアクターシステムも提供される。
【0028】
例では、撹拌機は、ベースを移動するように配置構成された1つ以上のアクチュエータを備える。撹拌機は、ベースと係合する撹拌機プレートを備え、ベースに取り付けられてもよく、1つ以上のアクチュエータは撹拌機プレートを移動し得る。
【0029】
例では、使用時に、撹拌機は、バッフル部材が容器内の流体中に沈められるようにベースを位置決めし、ベースを往復運動させてバッフル部材と流体との相対運動を発生させるように構成され得る。
【0030】
ベースのこのような往復運動は、バッフル部材と流体との相対運動を発生させ、流体内の混合および撹拌を引き起こす。
【0031】
例では、撹拌機は、ベースを往復運動させてバッフル部材が流体中に沈められたままとなるように構成され得る。そのような配置構成は、バッフル部材と流体の表面との間の衝突を減少させ、実行される細胞培養プロセスにより撹拌および混合のしすぎおよび流体中の細胞へのストレスを引き起こし得る。
【0032】
他の例では、撹拌機は、ベースを往復運動させてバッフル部材が往復運動の一環で流体から浮き上がるように構成され得る。そのような例では、バッフル部材は、流体の表面に連続して衝突することがあり、これは、実行される細胞培養プロセスに応じて有利な混合、撹拌、および/または細胞ストレスをもたらし得る。
【0033】
例では、撹拌機は、最大約50ミリメートル、たとえば約20ミリメートルのストローク長でベースを往復運動させるように構成され得る。例では、撹拌機は、最大毎分約80ストローク、たとえば毎分約10ストロークから毎分約80ストロークの間、たとえば毎分約20ストロークから毎分約60ストロークの間の頻度でベースを往復運動させるように構成され得る。例では、撹拌機は、バッフル部材に対するベースの角度を変更するように構成され得る。たとえば、撹拌機は、ベースを傾けてベースがバッフル部材に対して角度を付けられるように構成され得る。
【0034】
本発明のさらなる態様によれば、細胞培養の方法も提供され、この方法は上で説明されているバイオリアクターシステムを提供することと、バイオリアクターの容器内に細胞懸濁液を提供することと、バッフル部材が細胞懸濁液を撹拌するようにバイオリアクターのベースを移動することとを含む。
【0035】
上で説明されているように、バイオリアクターのベースを移動することは、ベースを蓋に関して往復運動させることを含み得る。例では、ベースは、バッフル部材が容器内の流体中に沈められるように位置決めされてもよく、ベースは、バッフル部材および流体の相対運動を発生するように往復運動させられ得る。
【0036】
例では、ベースは、バッフル部材が流体中に沈められたままとなるように往復運動させられ得る。そのような配置構成は、バッフル部材と流体の表面との間の衝突を減少させ、実行される細胞培養プロセスにより撹拌および混合のしすぎおよび流体中の細胞へのストレスを引き起こし得る。
【0037】
他の例では、ベースは、バッフル部材が往復運動の一環として流体から浮き上がるように往復運動させられ得る。そのような例では、バッフル部材は、流体の表面に連続して衝突することがあり、これは、実行される細胞培養プロセスに応じて有利な混合、撹拌、および/または細胞ストレスをもたらし得る。
【0038】
例では、ベースは、最大約50ミリメートル、たとえば約20ミリメートルのストローク長で往復運動させられ得る。例では、ベースは、最大毎分約80ストローク、たとえば毎分約10ストロークから毎分約80ストロークの間、たとえば毎分約20ストロークから毎分約60ストロークの間の頻度で往復運動させられ得る。例では、バッフル部材に対するベースの角度は、変えられ得る。たとえば、ベースは、バッフル部材に対して角度を付けられるように傾けられ得る。
【0039】
本開示のさらなる態様によれば、容器および蓋を有するバイオリアクター用のバッフルも提供され、バッフルは、バッフル部材と、バッフル部材が容器内に位置決め可能であるようにバイオリアクターの蓋に取り付け可能な装着部分とを備える。
【0040】
そのような例において、バイオリアクターのベースは、上で説明されている例のように、蓋に対して移動可能であり得るか、または容器は、ベースが蓋に関して固定されるように剛体であってもよい。そのような例では、バッフル、特にバッフル部材は、容器内の流体を混合し、撹拌するために蓋に対して移動可能(たとえば、摺動可能および/または回転可能)であり得る。
【0041】
様々な例において、バッフルは、装着部分を介して蓋に取り付け可能である。装着部分は、バッフル部材と一体成形され得るか、またはバッフル部材に取り付けられていてもよい。装着部分は、概ね円筒形の延長部を備え、バッフル部材は、円筒形の延長部の一端に取り付けられ、他端は蓋に取り付け可能であるものとしてよい。装着部分は、蓋にネジ止めされるかまたは締め付けられ得る、たとえば、蓋は、ネジ付きスピゴットを備え、装着部分は、ネジ付きスピゴットへの取り付けのためのネジ穴を備え得る。
【0042】
特に、バッフル部材は、蓋に移動可能に装着可能であり得る。たとえば、バッフル部材は、容器内でのバッフル部材の往復移動のために蓋に摺動可能に装着可能であり得る。バッフル部材は、蓋のリニア軸受に受け入れられる装着部分を介して蓋に摺動可能に装着可能であり得る。1つ以上のガイドが、摺動に伴うバッフル部材の回転運動を妨げ得る。
【0043】
他の例では、バッフル部材は、蓋に回転可能に装着可能であり得る。そのような例では、バッフル部材は、蓋内の軸受またはブッシングに受け入れられる装着部分を介して蓋に装着可能であり得る。バッフル部材は、容器内で自由に回転可能であり得るか、またはバッフル部材は、たとえば、使用者によって、または容器の外部に配置されたアクチュエータによって、能動的に回転され得る。
【0044】
例では、バッフル部材は、容器の内部容積にわたって延在するように配置構成された略平面状の部材を含み得る。特に、バッフル部材は、蓋に対して略平行に延在し得る。例では、バッフル部材は、容器のベースに面するように配置構成された略平面状の表面を含み得る。
【0045】
したがって、ベースに関してバッフル部材が移動しているときに、流体は、バッフル部材の外側の周りに押し付けられ、それによって混合され、撹拌される。それに加えて、バッフル部材は、バッフル部材の縁の周りを通らない流体の混合を引き起こす圧力差を流体中に生じさせ得る。
【0046】
例では、バッフル部材は、容器の断面積の少なくとも50パーセント、たとえば容器の断面積の少なくとも75パーセントにわたって延在するサイズのものであってよい。
【0047】
いくつかの例では、バッフル部材の略平面状の表面は、蓋に対して非平行である。すなわち、バッフル部材の略平面状の表面は、蓋に関して角度を付けられ得る。バッフル部材の略平面状の表面は、それに加えて、または代替的に、ベースに対して角度を付けられ得る。
【0048】
例では、バッフル部材は、蓋に面するように配置構成された傾斜表面、たとえば円錐表面を含み得る。このような傾斜表面は、使用中にバッフル部材が流体から引き出されるときに流体が容器内に戻るのを助ける可能性がある。
【0049】
例では、バッフル部材は、ベースが蓋に対して移動されるときにバッフル部材を通る流体の通過のための1つ以上の穴または開口部を備え得る。1つ以上の穴または開口部は、円形であるか、またはアーチ形セクタもしくは他の形状であってもよい。1つ以上の穴または開口部は、バッフル部材内の穿孔であってもよい。バッフル部材は、複数の穴または開口部を含んでもよく、複数の穴または開口部は、均一なサイズおよび/もしくは形状、または変化するサイズおよび/もしくは形状を有し得る。
【0050】
例では、穴または開口部の1つ以上は、螺旋状または角度を付けた表面を備え得る。たとえば、穴または開口部の1つ以上は、流体が1つ以上の穴または開口部を通過するときに渦または同様のものが生じ、混合および撹拌を高めるようにバッフル部材に関するベースの移動の方向に関して角度を付けた通路を含み得る。同様に、例では、穴の1つ以上は、バッフルが流体に関して一方向に移動すると穴を覆い、バッフルが流体に関して他方向に移動すると枢動して開くように配置構成されたフラップを有するものとしてよい。このようなフラップは、流体の混合および撹拌を高め得る。
【0051】
例では、バッフル部材は、1つ以上のリブを含み得る。1つ以上のリブは、ベースに面する表面、および/または蓋に面する表面に設けられるものとしてよく、使用中に流体の混合および撹拌を高めるように作用し得る。
【0052】
例では、容器は、略円筒形である。例では、バッフル部材の外縁は、略円形である。他の例では、バッフル部材の外縁は、略非円形であり、たとえば、波状プロファイルを有するか、または正方形もしくは三角形であってもよい。
【0053】
例では、バッフルは、蓋に装着された第2のバッフル部材をさらに含み得る。第2のバッフル部材は、装着部分に取り付けられ得る。第2のバッフル部材は、バッフル部材および第2のバッフル部材が蓋から異なる量だけ離間されるようにバッフル部材と軸方向に整列され得る。したがって、使用時に、バッフル部材および第2のバッフル部材は、容器内の流体中において異なるレベルで混合するように作用する。いくつかの例では、バッフル部材および第2のバッフル部材は同じであり、他の例では、部材は容器内の流体中において異なるレベルで混合するように作用する。いくつかの例では、バッフル部材および第2のバッフル部材は異なり、たとえば異なるサイズおよび/もしくは形状のものであるか、または異なる穴もしくは開口部を有する。特に、バッフル部材および第2のバッフル部材の一方または両方は、バッフル部材を参照しつつ上で説明されている特徴のいずれかを有し得る。
【0054】
いくつかの例では、第2のバッフル部材は、バッフル部材に平行であり、たとえばバッフル部材に平行でバッフル部材から離間する。これらの例では、バッフル部材および第2のバッフル部材は、蓋に対して平行であってもよい。他の例では、第2のバッフル部材は、バッフル部材と非平行である、たとえばバッフル部材に関して角度を付けられている。このような例では、バッフル部材および第2のバッフル部材のうちの一方は、蓋に対して平行であり、バッフル部材および第2のバッフル部材のうちの他方は、蓋に対して非平行であることがあり得る。代替的に、バッフル部材と第2のバッフル部材の両方が蓋に対して非平行であってもよい。
【0055】
例では、バッフルは、流体を容器内におよび/または容器外に搬送するための流体経路を備え得る。特に、流体経路は、バッフル部材内の開口部から、蓋に取り付けられているバッフルの装着部分を通って、容器の外側の開口部まで延在し得る。例では、バッフル部材は、流体経路を通過する流体を濾過するように配置構成されたフィルタ部材をさらに備え得る。フィルタ部材は、バッフル部材内の開口部を覆うものとしてよい。フィルタ部材は、メンブレンフィルタまたはデプスフィルタであってもよい。例では、フィルタ部材は、流体が流体経路を通って容器から抽出される際に容器内の細胞を保持するように構成され得る。
【0056】
流体経路は、容器の外側から流体経路を通して流体を搬送することによって、流体を容器に加えるために使用され得る。それに加えて、または代替的に、流体経路は、バッフル部材内の開口部を流体中に沈め(たとえば、バッフル部材を流体中に沈め)、次いで負圧を加えて流体経路を通して流体を引き出すことによって、容器から流体を抽出するために使用され得る。
【0057】
例では、蓋は、バッフルの装着部分の開口部と流体的に連通する1つ以上のポートを備え得る。蓋は、それに加えて、1つ以上のポートを封止するための1つ以上のシール、たとえばセプタムシールを備え得る。1つ以上のポートは、容器に流体を追加するために、または容器から流体を取り出すために、消耗品をポートに接続するためのコネクタインターフェースを備え得る。
【0058】
本開示のさらなる態様によれば、上で説明されているバッフルを備えるバイオリアクター、およびバイオリアクターを含むバイオリアクターシステムも提供される。
【0059】
本発明の実施形態は、添付図面を参照しつつ、本明細書においてさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】バイオリアクターを含む細胞処理システムを示す図である。
図2】細胞培養プロセスを例示する概略図である。
図3】バイオリアクターを例示する図である。
図4】バッフルを示す、バイオリアクターの断面図である。
図5A図4のバイオリアクターの例示的なバッフルを例示する図である。
図5B図4のバイオリアクターの例示的なバッフルを例示する図である。
図5C図4のバイオリアクターの例示的なバッフルを例示する図である。
図6図4のバイオリアクターのさらなる例示的なバッフルを例示する図である。
図7図4のバイオリアクターのさらなる例示的なバッフルを例示する図である。
図8図4のバイオリアクターのさらなる例示的なバッフルを例示する図である。
図9図4のバイオリアクターのさらなる例示的なバッフルを例示する図である。
図10図4のバイオリアクターのさらなる例示的なバッフルを例示する図である。
図11A】バッフルを使用してバイオリアクターの内容物を混合する方法を例示する図である。
図11B】バッフルを使用してバイオリアクターの内容物を混合する方法を例示する図である。
図12】バッフルを使用してバイオリアクターの内容物を混合するさらなる方法を例示する図である。
図13】バイオリアクターのベースに関して角度を付けられた例示的なバッフルを例示する図である。
図14】2つのバッフル部材を有するバッフルを例示する図である。
図15】バイオリアクターのベースに関して角度を付けられた2つのバッフル部材を有するバッフルを例示する図である。
図16】容器内のバッフルの往復運動を例示する図である。
図17】容器内の2つのバッフル部材の往復運動を例示する図である。
図18】バイオリアクターのベースを移動するための撹拌機を例示する図である。
図19】流体経路とともにバッフルを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
図1は、細胞処理ハウジング2、細胞処理プラットフォーム3、バイオリアクター4、および様々な付属品、たとえば「消耗品」5a~5fを備える細胞処理システム1を示している。
【0062】
細胞処理ハウジング2は、細胞処理プラットフォーム3のための閉鎖環境を提供し、以下に説明されているように、これは電源、接続機能および細胞処理に必要な他のユーティリティが装備する。細胞処理プラットフォーム3は、バイオリアクター4を受け入れ、細胞処理ハウジング2内でバイオリアクター4を支持するように適合されている。細胞処理プラットフォーム3は、バイオリアクター4および/または消耗品5a~5fとインタラクティブにやり取りする様々なコンポーネントおよびシステムを含み得る。たとえば、細胞処理プラットフォーム3は、バイオリアクター4内に提供される細胞懸濁液を撹拌するようにバイオリアクター4を撹拌するように作用する撹拌機を備え得る。他の例では、細胞処理プラットフォーム3は、1つ以上の消耗品5a~5fを保持するように適合された付属品支持アームを含んでもよい。例では、細胞処理プラットフォーム3は、1つ以上の消耗品5a~5fを作動させるように動作可能なアクチュエータを備え得る。細胞処理プラットフォーム3は、細胞処理システム1の自動化操作を行うように構成され得るか、または手動操作を許容し得る。
【0063】
図3を参照しつつより詳細に説明されているバイオリアクター4は、容器12および以下でインターフェースプレート13と呼ばれる蓋を備える。使用中、容器12は、細胞処理が行われる流体を保持する。特に、流体は、液体媒質中に存在する細胞の集団を含む。容器12は、たとえばベローズ壁を有することによって、拡張可能であってもよい。バイオリアクター4は、容器12が充填されかつ空にされると拡張し、かつ収縮できるように、細胞処理ハウジング2に保持される。インターフェースプレート13は、細胞処理プラットフォーム3と係合してよく、バイオリアクター4に関係する様々な機能を提供する。たとえば、インターフェースプレート13は、容器12に流体を移送して入れ、容器12からの流体を移送して出すための1つ以上のコネクタを有し得る。
【0064】
消耗品5a~5fは、細胞培養プロセスのプロセスステップを円滑にするために、バイオリアクター4に、任意選択で細胞処理プラットフォーム3を介して、接続するためのものである。
【0065】
例では、細胞送達用消耗品5aが提供される。細胞送達用消耗品5aは、バイオリアクター4に接続し、バイオリアクター4に細胞懸濁液を送達するように適合されている。特に、細胞送達用消耗品5aは、細胞懸濁液で満たされた容器と、バイオリアクター4に接続する(任意選択で細胞処理プラットフォーム3を介して)コネクタとを有する。細胞送達用消耗品5aは、細胞送達用消耗品5aからバイオリアクター4内に細胞懸濁液を移送するように動作可能である。細胞懸濁液は、「生」細胞および媒質を含んでいてもよい。したがって、細胞送達用消耗品5aは、細胞懸濁液をバイオリアクター4に送達する。
【0066】
細胞の集団は、任意の細胞種類を含み得る。好適には、細胞の集団は、細胞の均質な集団を含み得る。代替的に、細胞の集団は、細胞の混合集団を含み得る。
【0067】
細胞の集団は、任意のヒトまたは動物細胞種類、たとえば、任意の種類の成体幹細胞または初代細胞、T細胞、CAR-T細胞、単球、白血球、赤血球、NK細胞、γδt細胞、腫瘍浸潤t細胞、間充織幹細胞、胚幹細胞、人工多能性幹細胞、脂肪由来幹細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、NS0マウス骨髄腫細胞、HELA細胞、線維芽細胞、HEK細胞、昆虫細胞、オルガノイドなどを含み得る。好適には、細胞の集団は、T細胞を含み得る。
【0068】
代替的には、細胞の集団は、任意の微生物細胞種類、たとえば:細菌、真菌、古細菌、原生動物、藻細胞を含み得る。
【0069】
例では、流体送達用消耗品5bが提供される。流体送達用消耗品5bは、粒子懸濁液、たとえば、磁性粒子の懸濁液を保持し得る。磁性粒子は磁気ビーズであってよい。流体送達用消耗品5bは、粒子懸濁液をバイオリアクター4に送達するように動作可能である。
【0070】
例では、流体送達用消耗品5bは、代替的にまたはそれに加えて、ウイルス懸濁液を保持し、ウイルス懸濁液をバイオリアクター4に送達し得る。
【0071】
例では、媒質送達用消耗品5cが提供され得る。媒質送達用消耗品5cは、1つ以上の媒質、たとえば細胞培地を充填される容器と、バイオリアクター4に接続するコネクタとを備え得る。媒質送達用消耗品5cは、媒質をバイオリアクターに移動するように動作可能である。例では、媒質送達用消耗品5cは、細胞送達用消耗品5aと同様に、折り畳み可能である。媒質は、液体であってもよい。
【0072】
例では、液体媒質は、細胞を維持することができる任意の滅菌済み液体であってよい。液体媒質は、生理食塩水から選択され得るか、または細胞培地であってもよい。液体媒質は、任意の好適な媒質から選択される細胞培地、たとえば、DMEM、XVIVO 15、TexMACSであってよい。液体媒質は、集団内に存在する細胞の種類に適したものであってよい。たとえば、細胞の集団はT細胞を含み、液体媒質はXVIVO 10を含む。
【0073】
例では、液体媒質は、添加物、たとえば、増殖因子、栄養素、緩衝剤、ミネラル、刺激剤、安定剤、また同様のものをさらに含んでいてもよい。
【0074】
例では、液体媒質は、サイトカインおよび/またはケモカインなどの増殖因子を含む。増殖因子は、集団中に存在する細胞の種類および実施されるべき所望のプロセスに対して適切であるものとしてよい。液体媒質は、抗原または抗体などの刺激物を含んでよく、これらは支持体上に装着され得る。好適な刺激剤は、集団中に存在する細胞の種類および実施されるべき所望のプロセスに対して適切であるものとしてよい。たとえば、T細胞を培養するときに、抗体が液体媒質中で刺激剤として提供される。抗体は、たとえばビーズなどの不活性支持体、たとえば、ダイナビーズに装着され得る。
【0075】
添加剤は、有効な濃度で液体媒質中に存在し得る。有効濃度は、当業者によって、細胞の集団と、当技術分野において知られている教示および技術を使用して実施されるべき所望のプロセスとに基づき決定され得る。
【0076】
例では、細胞の集団は、1×104cfu/mlから1×108cfu/mlまでの濃度で液体媒質中に播種される。
【0077】
例では、採取用消耗品5dが提供され得る。採取用消耗品5dは、採取用バイアルを含み得る。例では、採取用消耗品5dは、バキュテナーを含み得る。
【0078】
例では、廃棄物用消耗品5eが提供され得る。廃棄物用消耗品5eは、バイオリアクター4から取り除かれた廃棄物を受け入れるように適合された容器、たとえば拡張可能な容器を含み得る。廃棄物用消耗品5eは、廃棄物成分のみを抽出するようにバイオリアクター内の流体から細胞および/または他の媒質を濾過するように配置構成された濾過器を含み得る。
【0079】
例では、細胞収穫用消耗品5fが提供され得る。細胞収穫用消耗品5fは、細胞培養プロセスの終了時にまたは終了に向かって細胞(および任意選択で細胞媒質)を受け入れるように適合された、容器、たとえば拡張可能な容器を備え得る。細胞収穫用消耗品5fは、細胞および所望の媒質のみを抽出するようにバイオリアクター内の細胞および/または他の媒質から廃棄物成分を濾過するように配置構成された濾過器を含み得る。
【0080】
例では、消耗品5a~5fの各々は、共通のコネクタによってバイオリアクター4に接続可能である。コネクタは、出願人の同時係属特許出願である特許文献1に説明されているものであってもよい。
【0081】
コネクタは、消耗品5a~5fに接続され得るか、または消耗品5a~5fの不可欠な部分であり得る。たとえば、ねじるかまたは摺動することによる、コネクタの操作で、コネクタの各端部の間に流体接続部を形成するように針を移動させる。したがって、コネクタは、各消耗品5a~5fがバイオリアクター4に接続されることを可能にし、次いで、コネクタが作動すると、上記のように材料の移送のために消耗品5a~5fとバイオリアクター4との間に流体接続部を形成する。以下でさらに説明されるように、コネクタは、バイオリアクター4と消耗品5との間に流体接続部を形成しながらバイオリアクター4と消耗品5との滅菌を確実にする。
【0082】
図2は、図1を参照しつつ説明されている細胞処理システム1に基づく細胞培養プロセス6の概略を例示する図である。図2に示されているように、最初に、消耗品5a~5fが準備される7。たとえば、細胞送達用消耗品5aは細胞懸濁液を充填され、ビーズ装填用消耗品5bはビーズを充填され得る。コネクタが、準備前または準備後に、消耗品5a~5fに取り付けられ得る。消耗品5a~5fの準備は、消耗品5a~5fを滅菌済みパッケージから開梱することを含み得る。特定のプロセス、およびプロセスの特定の段階に必要な消耗品5a~5fのみが準備されることは理解されるであろう。たとえば、いくつかのプロセスはビーズを使用せず、したがってビーズ装填用消耗品5bは不要であり、細胞収穫用消耗品5fはプロセス6の最後にのみ必要である。
【0083】
次に、細胞がバイオリアクター4、8内に装填される。特に、細胞送達用消耗品5aは、細胞送達バイオリアクター4に接続され、細胞送達用消耗品5aからバイオリアクター4内に細胞懸濁液を移送するように操作される。細胞送達用消耗品5aは、上で説明されているように、コネクタを介してバイオリアクター4に接続され、細胞送達用消耗品5aとバイオリアクター4との間に流体接続部を形成する。
【0084】
細胞をバイオリアクター4、8に細胞を装填する前または後のいずれかにおいて、バイオリアクター4は、細胞処理ハウジング2、9上に装填される。いくつかの例では、バイオリアクター4は、細胞処理ハウジング2内の細胞処理プラットフォーム3に取り付けられる。
【0085】
細胞処理ハウジング2内で、細胞は、バイオリアクター4内で処理10される。処理10において、バイオリアクター4内の圧力、温度、pHおよび他の環境特性は、条件が細胞処理を可能にすることを確実にするように制御される。細胞処理10は、たとえば、CARコード化ウイルスDNAを使用することによって細胞を再プログラム化することを含み得る。細胞処理10は、細胞培養を含み得る。
【0086】
細胞処理10では、バイオリアクター4への材料の添加、バイオリアクター4からの試料の抽出、および/またはバイオリアクター4からの廃棄物の抽出のために追加の消耗品5a~5fが使用され得る。たとえば、送達用消耗品5bは、磁気ビーズをバイオリアクターに添加するために使用され得る。例では、送達用消耗品5bは、ウイルス懸濁液または溶液をバイオリアクターに添加するために使用され得る(たとえば、CARコード化ウイルスDNA)。例では、媒質装填用消耗品5cは、バイオリアクター4に1つ以上の媒質を加えるために使用され得る。たとえば、媒質装填用消耗品5cは、平衡塩類溶液または基本培地をバイオリアクター4に加えるために使用され得る。例では、採取用消耗品5dは、試験のためにバイオリアクターから試料を抽出するために使用され得る。例では、細胞処理10の間または処理後に、バイオリアクター4から廃棄物媒質を抽出するために廃棄物媒質用消耗品5eが使用され得る。
【0087】
細胞処理10の後、細胞は収穫11される。細胞収穫11では、最初に廃棄物用消耗品5eを使用して廃棄物成分を抽出し得る。収穫用消耗品5fは、バイオリアクター4から細胞を受け入れるようにバイオリアクター4に取り付けられ得る。細胞は、媒質中に収穫され得る、たとえば細胞懸濁液が収穫され得る。
【0088】
図3に示されているように、バイオリアクター4は、容器12とインターフェースプレート13とを備える。インターフェースプレート13は、外部コンポーネント、たとえば上で説明されている消耗品5a~5fのうちの1つに接続するための少なくとも1つのコネクタインターフェース21を備える。例では、コネクタインターフェース21は、容器12内の封止環境を維持し、また容器12内への流体接続部を形成するために針が通すことを可能にする隔壁シールを含む。
【0089】
容器12は、圧縮可能な容器である。特に、容器12は、インターフェースプレート13に対向して配設された底壁15と、容器12の側壁を画成する圧縮可能な壁16とを有する。圧縮可能な壁16の頂部17は、インターフェースプレート13に取り付けられている。頂部17は、インターフェースプレート13に取り付けるための剛体リングまたは類似のものを備え得る。圧縮可能な壁16は、底壁15がインターフェースプレート13に向かう方向に、およびそこから離れる方向に移動して、容器12の内部容積を変化させ得るように圧縮可能である。
【0090】
圧縮可能な壁23は、折り畳むために圧縮可能な壁23をそれ自体の上に折り畳むことを可能にするコンサーティーナのような配置構成を有する、ベローズ壁であってよい。特に、圧縮可能な壁23は、圧縮可能な壁23がベローズまたはコンサーティーナのように折り畳むことを可能にする一連の交互に配置構成された内向き折り目16aおよび外向き折り目16bを備え得る。内向き折り目16aおよび外向き折り目16bは、圧縮可能な壁23における薄化されたセクションによって形成されてもよく、内向き折り目16aは圧縮可能な壁23の外側表面に配置構成された薄化セクションを備え、外向き折り目16bは圧縮可能な壁23の内側表面に配置構成された薄化セクションを備える。
【0091】
したがって、容器12は、容器12に保持される材料に従って、拡張し、かつ収縮するか、または拡張され、かつ収縮され得る。特に、圧縮可能な容器12は、容器12内の細胞培養物が増殖するにつれて、および/または追加の材料が加えられるにつれて、拡張し得る。細胞処理ハウジング(2、図1参照)は、容器12の容積を変更するために容器12の底壁15および/またはインターフェースプレート13を移動する、たとえば押す、かつ/または引くように適合されたアクチュエータを備え得る。
【0092】
例示されているように、インターフェースプレート13は、拡張容器14も備え、これは別に呼吸容器とも呼ばれる。拡張容器14は、容器12内の圧力を大きく変化させることなく容器12を拡張し、かつ収縮させることを可能にする。代替的またはそれに加えて、拡張容器14は、たとえば、機械的にまたは手動で圧縮されるか、または拡張されることによって、容器12の圧縮可能な壁16を拡張するか、または引っ込め、それによって容器12の容積を変化させるように動作可能であり得る。代替的にまたはそれに加えて、拡張容器14は、たとえば、機械的にまたは手動で圧縮されるか、または拡張されることによって、容器12内の圧力を変えるように動作可能であってもよい。
【0093】
バイオリアクター4の断面を示す、図4に示されているように、バイオリアクター4は、バッフル22を含む。バッフル22は、バッフル22が容器12内に懸架されるようにインターフェースプレート13に装着される。図4およびさらには図5Aから図5Cに示されているように、バッフル22は、インターフェースプレート13に取り付け可能である装着部分27を含む。例では、装着部分27は、ネジ式コネクタ、またはクリップもしくはクランプによってインターフェースプレート13に取り付け可能である。例示されている例では、装着部分27は、バッフル22が容器12内の中心に位置決めされるようにインターフェースプレート13の中心に取り付けられる。しかしながら、バッフル22は、容器12内の中心から外れた位置に位置決めされ得ることは理解されるであろう。装着部分27は、インターフェースプレート13からベース部分15に向かって延在し、バッフル部材24が装着部分27に取り付けられるか、またはそれと一体に形成される。この例では、バッフル部材24は、容器12のベース部分15に面する実質的に平坦な底部表面25を含み得る。バッフル部材24は、また、インターフェースプレート13に面する、円錐形上側表面26を有する。他の例では、上側表面26は、平坦(すなわち、底部表面25と平行)であってもよい。
【0094】
図4から図5Cの例では、バッフル部材24は円形であり、バイオリアクター4の容器12内に嵌るサイズのものである。例では、バッフル部材24は、容器12の圧縮可能壁23から離間するようなサイズを有する。バッフル部材24は、容器12からインターフェースプレート13への流体サンプリング経路を提供するようにサンプリングチューブ28が圧縮可能壁23とバッフル部材24との間を通過することを可能にすることによって容器12の圧縮可能壁23から離間するサイズに決められ得る。例では、バッフル部材24は、圧縮可能壁23から、約5ミリメートルから約20ミリメートルの間の距離だけ離間され得る。
【0095】
以下さらに説明されるように、バッフル22は、使用時にバイオリアクター4の内容物を混合するために設けられる。特に、バイオリアクター4のベース部分15は、バッフル22が容器12内の流体29に接触してそれを混合するようにインターフェースプレート13およびバッフル22に対して移動され得る。例では、ベース部分15は、インターフェースプレート13に関して上下させられ(すなわち、ベース部分15とインターフェースプレート13との間の距離を変える)、および/またはベース部分15は、インターフェースプレート13に関して傾けられ、および/またはベース部分15は、インターフェースプレート13に関して回転され得る。
【0096】
混合した後、バッフル22は、流体から外に移動され、バッフル部材24の円錐形上側表面26は、流体がバッフル22上に保持されず代わりに容器12内に戻ることを確実にし得る。
【0097】
図6から図10は、図4に示されているようにインターフェースプレート13に取り付けることができるバッフル22の代替的な特徴を例示している。
【0098】
図6の例では、バッフル22、特にバッフル部材24は、1つ以上の穴30を備える。穴30は、バッフル部材24を貫通し、下側表面と上側表面26との間に延在する。穴30は、図示されているようにバッフル部材24の周りに規則的に分布し得るか、または不規則に分布し得る。穴30は、均一なサイズまたは様々なサイズを有し得る。
【0099】
図7の例では、バッフル22、特にバッフル部材24は、1つ以上の開口部31を備える。例示されている例では、開口部31は、バッフル部材24のアーチ形セクタである。開口部31は、バッフル部材24を貫通し、下側表面と上側表面26との間に延在する。開口部31は、図示されているようにバッフル部材24の周りに規則的に分布し得るか、または不規則に分布し得る。開口部31は、均一なサイズまたは様々なサイズを有し得る。開口部31は、同じ形状または様々な形状を有し得る。図7のバッフル22は、それに加えて、図6に示されているような1つ以上の穴30を備え得る。
【0100】
図8の例では、バッフル22、特にバッフル部材24は、1つ以上の角度付きのまたは螺旋状の開口部34を備え得る。角度付きのまたは螺旋状の開口部34は、バッフル部材24を貫通し、下側表面と上側表面26との間に延在する。角度付きのまたは螺旋状の開口部34の側壁は、装着部分27の長手方向に関して角度を付けられており、したがって使用中に流体内の乱流の増大を引き起こす。角度付きのまたは螺旋状の開口部35の1つ以上は、バッフル部材24の縁33まで延在し得る。角度付きのまたは螺旋状の開口部34は、図示されているようにバッフル部材24の周りに規則的に分布し得るか、または不規則に分布し得る。角度付きのまたは螺旋状の開口部34は、均一なサイズまたは様々なサイズを有し得る。角度付きのまたは螺旋状の開口部34は、同じ形状または様々な形状を有し得る。図8のバッフル22は、図6に示されるような1つもしくは複数の穴30および/または図7に示されるような開口部31をさらに備え得る。
【0101】
使用中、バッフル22が容器(12、図4参照)内の流体を通って移動されると、一部の流体は穴30および/または開口部31および/または角度付きのもしくは螺旋状の開口部34、35を通過し、他の流体はバッフル部材24の縁の周りを通過する。穴30および/または開口部31および/または角度付きのもしくは螺旋状の開口部34、35を設けることで、バッフル部材24の縁の周りに押し付けられる流体の体積を減少させ、それによってバッフル部材24の縁における流体の速度を減少させ、細胞に加わるストレスを減少させ得る。
【0102】
図9の例では、バッフル22は、バッフル部材24の上側表面26上に形成された1つ以上のリブ32を含む。リブ32は、装着部材27からバッフル部材24の端に向かって放射状に延在し得るか、または角度を付けられ得る。リブ32は、使用時に、特に、以下でさらに説明されているようにバッフル22が容器内で回転される場合に、容器(12、図4参照)内の流体を混合するのに役立つ。
【0103】
図10の例では、バッフル部材24の外縁33は非円形である。この例では、バッフル部材24の外縁33は、波状であるか、または起伏を有する。バッフル部材24の外縁33の起伏のある形態は、使用中にバッフル部材24の外縁33の上に流体の不均一な流れをもたらし、これは流体の混合を助けることができる。
【0104】
図11Aおよび図11Bは、混合動作におけるバイオリアクター4の動作を例示している。図11Aは、バッフル22が容器12内の流体29と接触しないように容器12のベース部分15がインターフェースプレート13から離間される開始位置を示している。図11Bに示されているように、混合動作を実行するために、ベース部分15は、バッフル22、特にバッフル部材24が流体29中に沈められるまでインターフェースプレート13の方へ持ち上げられる。図11Bに示されている位置では、バッフル部材24は、流体29中に沈められている。この位置から、ベース部分25は、バッフル部材24が流体29を撹拌し混合するように上下に(インターフェースプレート13の方へおよびインターフェースプレート13から離れる方向に)往復運動され得る。
【0105】
ベース部分15は、バッフル部材24が流体29中に完全に沈められることに対応する開始位置の周りで往復運動され得る。往復運動は、好ましくは、バッフル部材24がベース部分15に接触せず、流体29中に沈められたままになるようなストローク長を有する。往復運動全体を通してバッフル部材24を流体29中に沈められたままにしておくことで、バッフル部材24が流体29の表面に衝突し、細胞を損傷し得るのを防ぐ。しかしながら、いくつかの例では、撹拌するかまたは混合するために流体29に衝撃を与えることが有利であり得、この場合、ベース部分15は、バッフル部材24が流体29を出入りし、それによってベース部分15が上に移動するときに流体29の表面に連続的に衝突するように往復動され得る。
【0106】
例では、流体29中のバッフル部材24の開始位置は、流体29の深さのほぼ中間であり得るか、またはベース部分15に近いか、もしくは流体29の頂部に近いものとしてよい。異なる開始位置は、特に細胞がベース部分15上に静置または沈降したときに、異なる混合および撹拌を提供し得る。
【0107】
例では、ベース部分15の往復運動のストローク長は、約5ミリメートルから約50ミリメートルの間、たとえば約20ミリメートルであってよい。例では、ベース部分15の往復運動のストローク速度は、毎分約10ストロークから毎分約80ストロークの間であってよい。例では、ベース部分15の往復運動のストローク速度は、毎秒約50ミリメートルまでであってよい。
【0108】
ベース部分15が往復運動するときに、バッフル部材24および流体29の相対運動は、流体が撹拌され混合されることを引き起こす。特に、流体29は、バッフル部材24の縁33の周りに押し付けられ、流体29内に乱流および流れを発生させ、混合を引き起こす。流体29中の乱流および流れは、静置細胞または沈降細胞を動かして流体29内の細胞の再懸濁を生じさせ、かつ/または溶存ガスまたは流体成分(たとえば、細胞増殖培地)を循環させ得る。
【0109】
混合動作が完了した後、ベース部分15は、バッフル部材24がもはや流体29中に沈められないように図11Aに示されている位置まで下降され得る。バッフル部材24の円錐形上側表面26は、流体がバッフル部材24上に保持されないことを確実にし得る。
【0110】
図12に示されているように、混合動作において、ベース部分15は、インターフェースプレート13に関して角度を付けられ得る。特に、ベース部分15は、インターフェースプレート13に関して傾けられ、したがって、バッフル部材24に関して傾けられ得る。図12に示されている傾斜位置から、ベース部分15は持ち上げられバッフル部材24を流体19中に沈め、次いで往復運動させることができる。ベース部分15とバッフル部材24との相対的角度は、図11Aおよび図11Bを参照しつつ説明されているように異なる混合および撹拌を提供する。
【0111】
いくつかの例では、ベース部分15の傾きの方向は、たとえば周期的に変えられ、バッフル部材24と流体29との相対運動を発生させて流体29を混合し撹拌するものとしてよい。
【0112】
例では、ベース部分15の傾斜角度は変化させられ、バッフル部材24と流体29との相対運動を発生させて流体29を混合し撹拌するものとしてよい。例では、傾斜角度は、水平(インターフェースプレート13と平行)から約15度まで、たとえば約10度まで変化させられ得る。傾斜角度は、毎秒最大約20度の速度で変化されてよく、これは、約10度の最大傾斜角度では、毎分約60回の傾斜に相当する。そのような傾斜動作は、インターフェースプレート13の方へおよびインターフェースプレート13から離れる方向へのベース部分15の往復運動に加えて、またはその代わりに提供され得る。
【0113】
図13の例では、バッフル部材24は、インターフェースプレート13およびベース部分15に関して角度を付けられ得る。特に、図示されているように、バッフル部材24は、装着部分27に関して傾けられ得る。バッフル部材24は、固定角度で装着部分27に固定され得るか、または図12に示されているような水平位置と図13に示されているような傾斜位置との間で移動可能であり得る。後者の場合、バッフル部材24の傾斜の方向および/または角度を変化させて、バッフル部材24と流体29との相対運動を発生し流体29を混合し撹拌し得る。例では、傾斜角度は、水平(インターフェースプレート13と平行)から約15度まで、たとえば約10度まで変化させられ得る。傾斜角度は、毎秒最大約20度の速度で変化されてよく、これは、約10度の最大傾斜角度では、毎分約60回の傾斜に相当する。そのような傾斜動作は、インターフェースプレート13の方へおよびインターフェースプレート13から離れる方向へのベース部分15の往復運動に加えて、またはその代わりに提供され得る。そのような傾斜動作は、インターフェースプレート13の方へおよびインターフェースプレート13から離れる方向へのベース部分15の往復運動に加えて、またはその代わりに提供され得る。
【0114】
図14の例では、バッフル22は、複数のバッフル部材24a、24bを含む。特に、図示されているように、バッフル22は、第2のバッフル部材24bが第1のバッフル部材24aとベース部分15との間に配置されるように装着部分27に取り付けられた第1のバッフル部材24aおよび第2のバッフル部材24bを含み得る。そのようなバッフル22は、第1および第2のバッフル部材24a、24bが流体29内の異なる深さで動作するので大量の液体を混合する上で有利であり得る。図示されているように、第1および第2のバッフル部材24a、24bは、異なるサイズおよび/または構成(たとえば、図6から図10を参照しつつ説明されているような穴30、開口部31、34、起伏のある縁33、リブ32)を有し得る。例示されている例では、第2のバッフル部材24bは第1のバッフル部材24aより小さい。
【0115】
図14の例では、混合動作において、ベース部分15は、バッフル部材24a、24bおよび流体29の相対運動を発生させるために往復運動させられ、および/または傾けられ得る。
【0116】
図15に示されているように、第1および/または第2のバッフル部材24a、14bは、図13を参照しつつ説明されている方式でインターフェースプレート13に関しておよび/または互いに関して傾けられ得る。バッフル部材24a、24bは、同じ方向に同じ角度だけ、または異なる方向におよび/もしくは異なる角度だけ、傾けられ得る。
【0117】
図15の例では、混合動作において、ベース部分15は、バッフル部材24a、24bおよび流体29の相対運動を発生させるために往復運動させられ、かつ/または傾けられ得る。
【0118】
図16の例では、バッフル22は、インターフェースプレート13に対して移動可能である。特に、例示されているように、装着部分27aの一部がインターフェースプレート13を貫通して延在し、バッフル22、特にバッフル部材24をインターフェースプレート13に対して移動するように(手動またはアクチュエータによって)作動され得る。この方法で、容器12内のバッフル部材24の位置は、調整することができる。移動可能なバッフル22は、圧縮可能壁要素23に加えて設けられるか、または移動可能なバッフル22は、圧縮可能壁要素23の代替として設けられ得る。特に、いくつかの例では、容器12は、剛性のあるまたは非圧縮性の側面を有し、容器12内のバッフル部材24の位置は、図16に示されているようにバッフル22を移動することによって制御される。この例では、混合または撹拌は、インターフェースプレート13に関して装着部材部分27aを往復運動させてバッフル部材24を流体29に対して移動することによって行われ得る。
【0119】
図17の例は、バッフル22が第1のバッフル部材24aおよび第2のバッフル部材24bを含むことを除き、図16の例に類似している。第1および第2のバッフル部材24a、24bは、図16を参照しつつ説明されているように互いに固定され、インターフェースプレート13に対して移動可能であり得る。代替的に、例示されているように、第1および第2のバッフル部材24a,24bは、第1および第2のバッフル部材24a,24b間の間隔が変更できるように互いに対して移動可能であり得る。特に、装着部材は、第1のバッフル部材24aが取り付けられる第1の部分27a、および第2のバッフル部材24bが取り付けられる第2の部分27bを含み得る。第1および第2の部分27a、27bは、独立して移動可能であってもよい。第1および第2の部分27a,27bは伸縮自在に配置構成されてもよい。
【0120】
図16および図17の例では、そのまたは各バッフル部材、24、24a、24bは、それに加えて、または代替的に、インターフェースプレート13に関して回転可能であってもよい。特に、装着部分27、27a、27bは回転され、それにより容器12内でそのまたは各バッフル部材24、24a、24bを回転させ得る。
【0121】
上で説明されている様々な例において、バイオリアクター4のベース部分15は、内容物を混合するかまたは撹拌するためにインターフェースプレート13に対して移動可能である。図18は、ベース部分15を移動するように配置構成された例示的な撹拌機メカニズム36を例示している。図示されているように、撹拌機メカニズム36は、バイオリアクター4、特にベース部分15に係合するように移動可能である撹拌機プレート37を含む。アクチュエータメカニズムは、ベースプレート38上に装着される。ベースプレート38と撹拌機プレート37との間には、撹拌機プレート37およびしたがってベース部分15を昇降するように動作する1つ以上のアクチュエータ39がある。
【0122】
例示されている例では、アクチュエータ39は、ベースプレート38および撹拌機プレート37に回転可能に接続された多関節クランクアーム40を回転させるように配置構成されたモーターであり、多関節クランクアーム40の回転により撹拌機プレート37を移動させる。他の例では、リニアアクチュエータがベースプレート38と撹拌機プレート37との間に直接的に作用するように設けられ得る。
【0123】
支持体およびガイドは、撹拌機プレート37の移動をガイドし得る。
【0124】
アクチュエータメカニズムは、枢動可能なロッド41をさらに備え、これにより撹拌機プレート37は、枢動可能なロッド41の周りで枢動し、ベース部分15を傾け得る。枢動は、一方のリニアアクチュエータ39を異なる量だけ他方のアクチュエータまで上昇させることによって行われ得る。したがって、撹拌機プレート37は、ベース板38に対して移動され、ベース部分15と係合し、バイオリアクター4の内容物を撹拌することができる。
【0125】
様々な例において、本明細書で説明されている例のいずれでもバッフル22は、容器12の内部と外部との間に流体的に連通する流体入口または流体出口を提供し得る。図19は、そのような例を示しており、バッフル22は断面図で示されている。特に、図19に示されているように、流体経路43が、バッフル部材24の底部表面25内の開口部41と、容器12の外部にある、装着部分27内の開口部42との間に設けられる。したがって、流体は、容器12の外部と内部との間を通り、流体経路43を通って搬送され得る。たとえば、流体は、流体経路43を通して容器12に加えられるか、または流体経路43を通して容器12から抽出され得る。流体は、バッフル部材24を少なくとも部分的に沈め、次いで、開口部42のところに負圧を発生させ流体経路43を通して流体を引き込むことによって、流体経路43を通して抽出され得る。例では、フィルタ部材44、たとえばデプスフィルタまたはフィルタ膜が、バッフル部材24内の開口部41を横切って設けられ、流体経路43を通って容器12を出入りする流体を濾過するものとしてよい。
【0126】
例において、容器12内の流体の撹拌は、バッフル部材24を沈め、次いで流体、たとえば媒質またはガスを流体経路43に通し、流体が開口部41から出て、それによって容器12内の流体を撹拌するという形で実現され得る。
【0127】
例では、出口42は、図1を参照しつつ説明されているように外部流体システム、たとえば消耗品(5a~5f)との無菌接続を形成するための1つ以上のポートと連通し得る。図19のバッフル22に設けられる流体経路43は、本明細書において説明されている例示的なバッフル22のいずれにも備えられ得る。バッフル22が2つ以上のバッフル部材24を含む例(たとえば、図14図15図17に示されているような)では、バッフル部材24a、24bの一方または両方のみが、開口部41および任意選択のフィルタ部材44を設けられてよい。好ましくは、ベース部分15により近いバッフル部材24は、開口部41および任意選択のフィルタ部材44を設けられる。
【0128】
本明細書の説明および請求項全体を通して、「含む」、「備える」、およびこれらの活用形は、「限定はしないが・・・を含む」を意味し、他の構成要素、整数、またはステップを除外することを意図していない(除外しない)。本明細書の説明および請求項全体を通して、文脈上他に必要とされない限り、単数形は複数形を包含する。特に、(英語原文中で)不定冠詞が使用される場合、本明細書は、文脈上他に必要とされない限り、複数形さらには単数形を企図するものと理解されるべきである。
【0129】
本発明の特定の態様、実施形態、または例に関して説明されている特徴、整数、特性、またはグループは、不適合でない限り、本明細書で説明されている任意の他の態様、実施形態、または例に適用可能であるものと理解されるべきである。本明細書(任意の付属の請求項、要約、および図面を含む)で開示されている特徴部のすべて、および/またはこうして開示されている任意の方法もしくはプロセスのステップのすべては、そのような特徴部および/またはステップの少なくともいくつかが相互排他的である組合せを除く、任意の組合せに組み合わせることができる。本発明は、任意の前記の実施形態の詳細に制限されない。本発明は、本明細書(任意の付属の請求項、要約、および図面を含む)で開示されている特徴のうち任意の新規性のある特徴、もしくは任意の新規性のある組合せに、またはこうして開示されている任意の方法もしくはプロセスのステップのうちの任意の新規性のあるもの、または任意の新規性のある組合せに拡大適用される。
【符号の説明】
【0130】
1 細胞処理システム
2 細胞処理ハウジング
3 細胞処理プラットフォーム
4 バイオリアクター
5 流体送達用消耗品
5a~5f 消耗品
5a 細胞送達用消耗品
5b 流体送達用消耗品、ビーズ装填用消耗品
5c 媒質送達用消耗品
5d 採取用消耗品
5e 廃棄物用消耗品
5f 細胞収穫用消耗品
7 準備される
10 処理
11 収穫
12 容器
13 インターフェースプレート
14 拡張容器
15 底壁、ベース部分
16 圧縮可能な壁
16a 内向き折り目
16b 外向き折り目
17 頂部
19 コネクタ
21 コネクタインターフェース
22 バッフル
23 圧縮可能な壁、圧縮可能壁要素
24 バッフル部材
24a、24b バッフル部材
25 実質的に平坦な底部表面
26 円錐形上側表面
27 装着部分
27a、27b 第1および第2の部分
29 流体
30 穴
31 開口部
32 リブ
33 外縁
34 開口部
35 開口部
36 撹拌機メカニズム
37 撹拌機プレート
38 ベースプレート
39 リニアアクチュエータ
41 枢動可能なロッド
42 開口部
43 流体経路
44 フィルタ部材
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
【国際調査報告】