(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】車両に設置されるように構成された少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するためのシステム、およびブレーキシステム
(51)【国際特許分類】
F16D 66/02 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
F16D66/02 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531389
(86)(22)【出願日】2022-11-24
(85)【翻訳文提出日】2024-07-17
(86)【国際出願番号】 IB2022061374
(87)【国際公開番号】W WO2023095045
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】102021000029702
(32)【優先日】2021-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516351289
【氏名又は名称】フェヴレ・トランスポール・イタリア・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】FAIVELEY TRANSPORT ITALIA S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マッテオ フレア
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058BA60
3J058CC04
3J058DB02
3J058DB20
3J058DB21
3J058FA21
(57)【要約】
車両に設置されるように構成されている少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するためのシステム、およびブレーキシステム
車両(104)、特に鉄道車両に設置されるように構成されている少なくとも1つの部品(102)の残存寿命を特定するためのシステム(100)が記載されており、このシステムは、少なくとも1つの部品(102)が車両(104)に設置されたときから、少なくとも1つの部品(102)の使用データを測定し、部品(102)の予想寿命末期を示す所定の寿命末期データを受信しまたは含み、所定の寿命末期データと測定された使用データとの差に基づいて、部品(102)の残存寿命値を特定するように構成されている制御手段(106)を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(104)、特に鉄道車両に設置されるように構成されている少なくとも1つの部品(102)の残存寿命を特定するためのシステム(100)であって、
制御手段(106)を備え、
前記制御手段は、
少なくとも1つの前記部品(102)が前記車両(104)に設置されたときから、少なくとも1つの前記部品(102)の使用データを測定し、
前記部品(102)の予想寿命末期を示す所定の寿命末期データを受信しまたは含み、
所定の前記寿命末期データと測定された前記使用データとの差に基づいて、前記部品(102)の残存寿命値を特定するように構成されている、少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するためのシステム。
【請求項2】
所定の前記寿命末期データは、
前記部品(102)の製造者によって提供されるデータシート、
前記部品(102)の製造者または前記車両(104)の製造者によって、または、この部品を含むシステムのインテグレータによって提供される体験リターン(REX)、
前記車両(104)の前記製造者または前記部品(102)の前記製造者によって、または、この部品を含むシステムのインテグレータによって実施される部品寿命継続時間検証テスト、及び、
前記車両(104)の製造者または前記部品(102)の前記製造者によって、またはこの部品を含むシステムのインテグレータによって実施される加速寿命試験、
のうちの少なくとも1つから導出されるように構成されている、請求項1に記載の少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するためのシステム。
【請求項3】
前記制御手段(106)は、通信手段(200)を含むか、または通信手段(200’)と関連するように構成されている、請求項1または2に記載の少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するためのシステム。
【請求項4】
前記制御手段(106)は、前記通信手段(200、200’)を介して、測定された前記使用データおよび/または特定された前記残存寿命値を、地上局(202)、クラウド(204)、前記車両(104)に設置されている別の制御ユニット(206)のうちの少なくとも1つへ送信するように構成されている、請求項3に記載の少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するためのシステム。
【請求項5】
前記制御手段(106)は、前記通信手段(200、200’)を介して、1つまたは複数の所定の寿命末期データを含むデータベースから所定の前記寿命末期データを受信するように構成されており、
前記データベースに含まれる前記寿命末期データの各々は、対応する部品に関連付けられている、請求項3または4に記載の少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するためのシステム。
【請求項6】
前記制御手段(106)は、記憶手段(300)を含むか、または記憶手段(300’)と関連するように構成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するためのシステム。
【請求項7】
前記記憶手段(300、300’)は、所定の前記寿命末期データを格納するように構成されている、請求項6に記載の少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するためのシステム。
【請求項8】
前記制御手段(106)は、測定された前記使用データを前記記憶手段(300、300’)に記憶するように構成されている、請求項6または7に記載の少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するためのシステム。
【請求項9】
前記制御手段(106)は、前記車両(104)の電源が切られるたび、および/または、所定の周期で、および/または、少なくとも1つの所定のイベントの発生時に、前記記憶手段(300、300’)に記憶されている前記使用データを更新するように構成されている、請求項8に記載の少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するためのシステム。
【請求項10】
前記車両のバッテリに接続された電力線の電圧値を測定するように構成されている電圧測定手段であって、前記制御手段は、測定された前記電圧値が所定の電圧閾値未満である場合に、前記車両の電源が切られたと判断するように構成されている、電圧測定手段を備えるか、または、
前記車両のバッテリに接続された電力線の電流値を測定するように構成されている電流測定手段であって、前記制御手段は、測定された前記電流値が所定の電流閾値未満である場合に、前記車両の電源が切られたと判断するように構成されている、電流測定手段を備える、請求項9に記載の少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するためのシステム。
【請求項11】
前記車両のブレーキパイプ内を流れる流体の圧力値を測定するように構成されている圧力測定手段を備え、
前記制御手段は、測定された前記圧力値が所定の圧力閾値未満である場合に、前記車両の電源が切られたと判断するように構成されている、請求項9に記載の少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するためのシステム。
【請求項12】
前記制御手段は、前記車両がある目的地に到着したと判断する場合に、前記記憶手段(300)に記憶されている前記使用データを更新するように構成されている、請求項9から11のいずれか一項に記載の少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するためのシステム。
【請求項13】
ルートに沿った前記車両の位置を検出するように構成されている位置特定手段を備え、
前記制御手段は、検出された前記位置が特定の目標位置と一致する場合に、前記車両が前記目的地に到着したと判断するように構成されている、請求項12に記載の少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するためのシステム。
【請求項14】
少なくとも1つの所定の前記イベントは前記車両の停止である、請求項9から13のいずれか一項に記載の少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するためのシステム。
【請求項15】
速度センサ手段を備え、
前記速度センサ手段は、前記車両の直線移動速度の値を測定するように構成されており、前記制御手段は、前記直線移動速度の値がゼロである場合に、前記車両の停止が起こったと判断するように構成されている、または、
前記速度センサ手段は、前記車両の車輪の角速度の値を測定するように構成されており、前記制御手段は、前記角速度の値がゼロである場合に、前記車両の停止が起こったと判断するように構成されている、請求項14に記載の少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するためのシステム。
【請求項16】
前記制御手段(106)は、前記車両の電源が入れられるたびに、前記記憶手段(300)に記憶されている前記使用データを読み出すように構成されている、請求項8から15のいずれか一項に記載の少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するためのシステム。
【請求項17】
前記車両のバッテリに接続された電力線の電圧値を測定するように構成されている電圧測定手段を備え、前記制御手段は、測定された前記電圧値が所定の電圧閾値を超える場合に、前記車両の電源が入れられたと判断するように構成されている、または、
前記車両のバッテリに接続された電力線の電流値を測定するように構成されている電流測定手段を備え、前記制御手段は、測定された前記電流値が所定の電流閾値よりも大きい場合に、前記車両の電源が入れられたと判断するように構成されている、請求項16に記載の少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するためのシステム。
【請求項18】
前記車両のブレーキパイプ内を流れる流体の圧力値を測定するように構成されている圧力測定手段を備え、
前記制御手段は、測定された前記圧力値が所定の圧力閾値を超える場合に、前記車両の電源が入れられたと判断するように構成されている、請求項16に記載の少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するためのシステム。
【請求項19】
前記制御手段(106)は、特定された前記残存寿命値が第1の所定の閾値未満である場合に、前記部品が第1の摩耗レベルに達したと判断するように構成されている、請求項1から18のいずれか一項に記載の少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するためのシステム。
【請求項20】
前記制御手段(106)は、前記部品が前記第1の摩耗レベルに達したと判断する場合に、第1のアラーム信号を発生させるように構成されている、請求項19に記載の少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するためのシステム。
【請求項21】
前記制御手段は、特定された前記残存寿命値が前記第1の所定の閾値よりも低い第2の所定の閾値未満である場合に、前記部品が前記第1の摩耗レベルよりも大きい第2の摩耗レベルに達したと判断するように構成されている、請求項19または20に記載の少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するためのシステム。
【請求項22】
前記制御手段は、前記部品が前記第2の摩耗レベルに達したと判断する場合に、第2のアラーム信号を発生させるように構成されている、請求項21に記載の少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するためのシステム。
【請求項23】
前記制御手段は、特定された前記残存寿命値がゼロである場合に、前記部品が寿命末期に達したと判断するように構成されている、請求項1から22のいずれか一項に記載の少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するためのシステム。
【請求項24】
前記制御手段は、前記部品が前記寿命末期に達したと判断する場合に、寿命末期信号を発生させるように構成されている、請求項23に記載の少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するためのシステム。
【請求項25】
前記使用データは、少なくとも1つの前記部品の作動回数を示すものである、請求項1から24のいずれか一項に記載の少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するためのシステム。
【請求項26】
前記使用データは、少なくとも1つの前記部品(102)の作動時間を示すものである、請求項1から24のいずれか一項に記載の少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するためのシステム。
【請求項27】
少なくとも1つの前記部品の作動を許可するように適合された第1の状態と、少なくとも1つの前記部品の作動を防止するように適合された第2の状態とを選択的にとるように構成されている作動防止手段(400)を備え、
前記制御手段(106)は、前記部品が寿命末期に達したと判断する場合に、前記作動防止手段を前記第2の状態にするまたは維持するように構成されている、請求項1から26のいずれか一項に記載の少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するためのシステム。
【請求項28】
前記作動防止手段(400)は、前記制御手段から前記寿命末期信号を受信する場合に、前記第2の状態をとるまたは維持するように構成されている、請求項24に従属する請求項27に記載の少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するためのシステム。
【請求項29】
前記制御手段によって測定されるように構成されている前記使用データは、少なくとも1つの前記部品(102)が前記車両(104)に設置されたときから少なくとも1つの前記部品(102)によって受信されたまたは作成された流体量データである、請求項1から28のいずれか一項に記載の少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するためのシステム。
【請求項30】
前記制御手段が、少なくとも1つの前記部品(102)の流体入口ポートに連結され、少なくとも1つの前記部品(102)によって受けられた流体の量を測定するように構成されている流体測定手段を備えるか、若しくはそれと関連している、または、
前記制御手段が、少なくとも1つの前記部品(102)の流体出口ポートに連結され、少なくとも1つの前記部品(102)によって発生された流体の量を測定するように構成されている流体測定手段を備えるか、若しくはそれと関連している、請求項29に記載の少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するためのシステム。
【請求項31】
車両のためのブレーキシステム(500)であって、
前記車両を減速させるための制動力を発生させるように構成されているブレーキ手段(502)と、
前記車両に設置されており、その作動が前記ブレーキ手段(502)によって発生される前記制動力に影響を及ぼすように構成されている少なくとも1つの部品(102)と、
請求項1から30のいずれか一項に記載の少なくとも1つの前記部品の残存寿命を特定するためのシステムと、を備えるブレーキシステム。
【請求項32】
前記制御手段(106)はさらに、前記ブレーキ手段(502)を制御して、前記車両(104)を減速させるように適合された前記制動力を調整するように構成されている、請求項31に記載のブレーキシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して車両の分野のものであり、特に、本発明は、車両、特に鉄道車両に設置されるように構成された少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するシステム、およびブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に設置されている部品は、それらの部品が設計された作動を実行することによって摩耗する。
【0003】
そのため、車両製造者/運行者にとって、車両に設置されている部品の実際の摩耗状態を監視できるということは不可欠なことである。この監視は、車両全体の安全性に影響を及ぼし得る機能を果たす部品、例えば車両の走行/ブレーキ管理に必要な部品にとって特に重要である。
【0004】
従来技術では、装置の適切な作動を、装置の作動パラメータの1つと車両に設置されている他の類似部品の作動パラメータとの比較に基づいて、確認できるという解決策が存在する。具体的には、これらの解決策は、当該部品の作動パラメータが、車両に設置されている他の類似部品の作動パラメータの値と少なくとも所定の閾値だけ異なる場合に、この部品がすでに正常に作動しておらず、交換されるべきであることを知らせるというものである。
【0005】
不利なことに、これらの解決策では、装置の真の摩耗状態を特定することができない。例えば、寿命末期に近い部品が、車両に設置されており、同様に寿命末期に近い他の類似部品の作動パラメータと同等の作動パラメータを示す可能性がある。この場合、上記の解決策では、部品が寿命末期に近いにもかかわらず、その部品がまだ新しい部品と同等に機能していると評価されてしまう。
【発明の概要】
【0006】
したがって、本発明の1つの目的は、車両に設置されている少なくとも1つの部品の実際の摩耗状態を監視するための解決策を提供することである。
【0007】
さらなる目的は、車両のメンテナンス計画立案を改善する解決策を提供することである。
【0008】
前述および他の目的および利点は、本発明の一態様によれば、請求項1に定義された特徴を有する、車両、特に鉄道車両に設置されるように構成された少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するためのシステムによって、および請求項31に定義された特徴を有するブレーキシステムによって達成される。本発明の好ましい実施形態は従属請求項に定義されており、それらの内容は本明細書に不可欠なものとして理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
以下、本発明による、車両、特に鉄道車両に設置されるように構成された少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するためのシステムおよびブレーキシステムの好ましい実施形態のいくつかの機能的特徴および構造的特徴について説明する。添付図面を参照されたい。
【0010】
【
図1】
図1は、本発明による少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するシステムの第1の実施形態を示す。
【
図2】
図2は、通信手段を含む、少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するシステムの一実施形態を示す。
【
図3】
図3は、記憶手段を含む、少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するシステムの一実施形態を示す。
【
図4】
図4は、作動防止手段を含む、少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するシステムの実施形態を示す。
【
図5】
図5は、本発明によるブレーキシステムの一実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の複数の実施形態を詳細に説明する前に、本発明の用途は、以下の説明に示されるか、または図面に示される部品の設計詳細および構成に限定されないことを明確にしておく。本発明は、他の実施形態を想定してもよく、実際には異なるやり方で実施または構成されてもよい。また、表現および用語は、説明を目的とするものであり、限定的なものとして解釈されるべきではないことを理解されたい。「含む」および「備える」およびこれらの変形を使用することによって、以下に記載される要素およびそれらの等価物、ならびに追加要素およびそれらの等価物を包含することを意図している。
【0012】
まず
図1を参照すると、第1の実施形態では、車両104、特に鉄道車両に設置されるように構成された少なくとも1つの部品102の残存寿命を特定するためのシステム100は、制御手段106を備え、制御手段106は、少なくとも1つの部品が車両に設置されたときから、この少なくとも1つの部品の使用データを測定するように構成されている。
【0013】
例えば、使用データは、部品の使用を示す値であってよい。さらに、「データを測定する」とは、データを直接的に測定すること(例えば、データの値の直接的な測定)、またはデータを間接的に測定すること、すなわち、他の値/パラメータ値の測定からそのデータの値を特定することのいずれを意味してもよい。
【0014】
つまり、制御手段は、部品の使用データを測定/特定することで、その部品が車両に設置された時からの部品の使用を監視することができる。
【0015】
好ましくは、使用データは、少なくとも1つの部品の作動回数を示してもよいし、または少なくとも1つの部品の作動時間を示してもよい。
【0016】
言い換えれば、部品の使用データは、部品の実際の使用を表すデータであってよい。
【0017】
また、制御手段106は、部品の予想寿命末期を示す所定の寿命末期データを受信するか、または含むように構成されている。
【0018】
さらに、制御手段は、所定の寿命末期データと測定された使用データとの差に基づいて、部品の残存寿命値を特定するように構成されている。
【0019】
好ましくは、制御手段によって測定される使用データは、少なくとも1つの部品102が車両104に設置されたときから少なくとも1つの部品102が受信してきたまたは作成してきた流体量データであってもよい。
【0020】
例えば、少なくとも1つの部品はバルブであってもよく、流体量データは、バルブ入口で受けた流体を示す値であってもよいし、バルブ出口で供給された流体を示す値であってもよい。言い換えれば、流体量データは、車両104に設置されたときから、バルブが扱ってきた流体の量を示す値である。
【0021】
例えば、流体は、車両のメインラインまたはブレーキライン/ブレーキパイプに存在する流体であってもよいし、または圧縮空気を蓄積して制動空気を生成する補助リザーバに存在する流体であってもよい。バルブは、例えば、ブレーキラインまたは補助リザーバから直接流体を受け、車両のブレーキシリンダへの出力を調整するバルブであってもよい。
【0022】
好ましくは、流体量データを測定するために、制御手段は、少なくとも1つの部品102の流体入口ポートに連結され、少なくとも1つの部品102が受けた流体の体積を測定するように構成されている流体測定手段を備えるか、またはそのような流体測定手段と関連していてよい。あるいは、流体量データを測定するために、制御手段は、少なくとも1つの部品102の流体出口ポートに連結され、少なくとも1つの部品102によって発生した流体の体積を測定するように構成されている流体測定手段を備えるか、またはそのような流体測定手段と関連していてよい。
【0023】
代替例では、流体量は、部品の下流および/または上流に配置された少なくとも1つの圧力変換器によって測定される流体圧力値から特定されてよい。
【0024】
例えば、流体測定手段は、流体の流量、すなわち、単位時間にある区間を通過する流体の体積を測定するように構成されている少なくとも1つの圧力変換器または流量センサを備えるか、またはそのような圧力変換器または流量センサであってよい。
【0025】
好ましくは、制御手段は、マイクロプロセッサ、プロセッサ、マイクロコントローラ、コントローラ、PLC、FPGA、制御ユニット、制御システム、または制御装置などのうちの少なくとも1つであるか、またはそれらのうちの少なくとも1つを含んでよい。
【0026】
好ましくは、所定の寿命末期データは、以下の少なくとも1つから導出されてよい。
-部品の製造者によって提供されるデータシート
-部品または車両の製造者によって、または部品を含むシステムのインテグレータによって提供される体験リターン(REX)
-車両または部品の製造者によって、または部品を含むシステムのインテグレータによって実施される部品寿命継続時間検証試験
-車両または部品の製造者によって、または部品を含むシステムのインテグレータによって実施される加速寿命試験
【0027】
第1の実施例では、部品はバルブであってよく、使用データは当該バルブの作動回数を示すものであってよい。このような場合、好ましくは、作動回数を示すデータを測定するために、制御手段は、作動測定手段を備えるか、または作動測定手段と関連していてよい。
【0028】
例えば、作動測定手段は、バルブの作動回路と関連していてよい。例えば、作動測定手段は、作動回数をカウントするように構成されているカウンタを備えるか、またはそのようなカウンタであってよい。
【0029】
第2の実施例では、部品はコンプレッサであってよく、使用データはコンプレッサが作動した合計時間を示すものであってよい。このような場合、好ましくは、コンプレッサが作動した合計時間を示すデータを測定するために、制御手段は、時間測定手段を備えるか、または時間測定手段と関連していてよい。例えば、作動測定手段は、コンプレッサの作動回路と関連していてよい。例えば、時間測定手段は、タイマまたはストップウォッチを備えるか、またはタイマまたはストップウォッチであってよい。
【0030】
好ましくは、
図2に示すように、制御手段106は、通信手段200を含むか、または通信手段200’と関連するように構成されていてよい。
【0031】
好ましくは、通信手段は、有線通信手段および/または無線通信手段であってよい。例えば、通信手段は、有線回線、無線ネットワーク、ブルートゥース(登録商標)、または他の無線技術であってよい。
【0032】
好ましくは、制御手段は、通信手段を介して、測定された使用データ及び/又は特定された残存寿命値を、以下の少なくとも1つへ送信するように構成されていてよい。
-地上局202
-クラウド204
-車両に設置されている別の制御ユニット206
【0033】
上記のいずれか1つに使用データを送信することにより、関係者によって、部品または車両のメンテナンス活動のスケジュールが容易に計画される。
【0034】
好ましくは、制御手段は、通信手段を介して、1つまたは複数の所定の寿命末期データを含むデータベースから所定の寿命末期データを受信するように構成されていてよい。データベースに含まれる各寿命末期データは、対応する部品に関連付けられていてよい。
【0035】
このように、制御される部品の種類に応じて、各制御手段は、その部品の種類に合った正しい寿命末期データを受信することができる。例えば、データベースは、車両に局所的に設置されているデータベースであってもよいし、無線通信を介して車両の様々な制御手段に送信するリモートデータベースであってもよい。
【0036】
好ましくは、
図3に見られるように、制御手段は、記憶手段300を含むか、または記憶手段300’と関連するように構成されていてよい。
【0037】
好ましくは、記憶手段は、所定の寿命末期データを記憶するように構成されていてよい。
【0038】
好ましくは、制御手段は、測定された使用データを記憶手段に記憶するように構成されていてよい。
【0039】
好ましくは、制御手段は、車両の電源が切られるたび、および/または所定の周期で、および/または少なくとも1つの所定のイベントの発生時に、記憶手段に記憶されている使用データの値を更新するように構成されていてよい。
【0040】
例えば、記憶手段は、メモリユニット、例えば不揮発性メモリユニット、すなわち、電力がない状態でもメモリに情報を保持することができるものであってよい。不揮発性メモリユニットの例として、不揮発性ROMおよびRAMメモリ、フラッシュメモリ、磁気メモリユニットの大部分等が挙げられる。
【0041】
好ましくは、少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するための、請求項に係るシステムは、車両のバッテリに接続された電力線の電圧値を測定するように構成されている電圧測定手段を備えてよい。このような場合、制御手段は、測定された電圧値が所定の電圧閾値未満である場合に、車両の電源が切られたと判断するように構成されていてよい。
【0042】
あるいは又は加えて、少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するための、請求項に係るシステムは、車両のバッテリに接続された電力線の電流値を測定するように構成されている電流測定手段を備えてよい。このような場合、制御手段は、測定された電流値が所定の電流閾値未満である場合に、車両の電源が切られたと判断するように構成されていてよい。
【0043】
当業者であれば、電流値を測定し、通常の計算、例えばオームの法則によって、所定の電圧閾値と比較するための電圧値を導出することも考え付くであろう。同様に、同じことが、電圧測定から逆に適用されてもよい。
【0044】
好ましくは、少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するためのシステムは、車両のブレーキパイプ内を流れる流体の圧力値を測定するように構成されている圧力測定手段を備えてよい。制御手段は、測定された圧力値が所定の圧力閾値未満である場合に、車両の電源が切られたと判断するように構成されていてよい。
【0045】
好ましくは、ブレーキパイプは、流体を収容するように構成されている。例えば、流体は、圧縮空気であってよく、車両を減速させるための制動力を伝達するために車両のブレーキシステムによって使用されてよい。発生する制動力の値は、ブレーキパイプ内の流体の圧力値に依存する。
【0046】
好ましくは、制御手段は、車両が特定の目的地に到着したと判断する場合に、記憶手段に記憶されている使用データを更新するように構成されていてよい。
【0047】
例えば、目的地は、車両の運転手/機械オペレータによって設定されてよく、制御手段が遠隔制御ステーションから受信してもよい。
【0048】
そのような場合、少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するためのシステムは、ルートに沿った車両の位置を検出するように構成されている位置特定手段を備えてよい。制御手段は、検出された位置が指定された目標位置と一致する場合に、車両が目的地に到着したと判断するように構成されていてよい。
【0049】
好ましくは、使用データが記憶手段に記憶され得るタイミングである前述の少なくとも1つの所定のイベントは、車両の停止である。少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するためのシステムは、速度センサ手段を備えてよい。
【0050】
速度センサ手段は、車両の直線移動速度を測定するように構成されていてよく、制御手段は、直線移動速度がゼロの場合に、車両の停止が起こったと判断するように構成されていてよい。
【0051】
あるいは、速度センサ手段は、車両の車輪または車軸の角速度を測定するように構成されていてよく、制御手段は、角速度の値がゼロである場合に、車両の停止が起こったと判断するように構成されていてよい。
【0052】
さらなる態様において、制御手段は、車両の電源が入れられるたびに、記憶手段に記憶されている使用データを読み出すように構成されていてよい。これにより、走行のたびに、最後に測定され記憶された使用データから、部品の使用の監視を再開することができる。
【0053】
好ましくは、少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するためのシステムはここでも、車両のバッテリに接続された電力線の電圧値を測定するように構成されている電圧測定手段を備えてよい。このような場合、制御手段は、測定された電圧値が所定の電圧閾値を超える場合に、車両の電源が入ったと判断するように構成されている。
【0054】
あるいは又は加えて、少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するためのシステムはここでも、車両のバッテリに接続された電力線の電流値を測定するように構成されている電流測定手段を備えてよい。このような場合、制御手段は、測定された電流値が所定の電流閾値よりも大きい場合に、車両の電源が入ったと判断するように構成されていてよい。
【0055】
既に上述したように、この場合も、当業者であれば、電流値を測定し、通常の計算、例えばオームの法則に従って、所定の電圧閾値と比較するための電圧値を導出することができるであろう。同じことが、電圧測定から逆に適用されてもよい。
【0056】
好ましくは、少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するためのシステムはここでも、車両のブレーキパイプ内を流れる流体の圧力値を測定するように構成されている圧力測定手段を備えてよい。このような場合、制御手段は、測定された圧力値が所定の圧力閾値を超える場合に、車両の電源が入ったと判断するように構成されていてよい。
【0057】
上述された記憶手段における/からの使用データの記憶、更新、読み出しは、特定された残存寿命値の記憶、更新、読み出しにも同様に適用されてよい。
【0058】
好ましくは、制御手段は、特定された残存寿命値が第1の所定の閾値未満である場合に、部品が第1の摩耗レベルに達したと判断するように構成されていてよい。このように、部品が第1の摩耗レベルに達したと判断する場合、制御手段は第1のアラーム信号を発生させるように構成されていてよい。
【0059】
好ましくは、制御手段は、特定された残存寿命値が前述の第1の所定の閾値よりも低い第2の所定の閾値未満である場合に、部品が第1の摩耗レベルよりも大きい第2の摩耗レベルに達したと判断するように構成されていてよい。このように、部品が第2の摩耗レベルに達したと判断する場合、制御手段は第2のアラーム信号を発生させるように構成されていてよい。
【0060】
1つまたは複数の摩耗閾値があることによって、部品の寿命が終わりに近づいていることを様々なタイミングで監視することが可能となる。例えば、第1の閾値を部品の耐用年数の半分に設定してよく、第2の閾値を部品の耐用年数の4分の3に設定してよい。
【0061】
好ましくは、制御手段は、特定された残存寿命値がゼロである場合に、部品が寿命末期に達したと判断するように構成されていてよい。このように、部品が寿命末期に達したと判断する場合、制御手段は寿命末期信号を生成するように構成されていてよい。
【0062】
好ましくは、
図4で見られるように、少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するためのシステムは、少なくとも1つの部品の作動を許可するように適合された第1の状態と、少なくとも1つの部品の作動を防止するように適合された第2の状態とを選択的にとるように構成されている作動防止手段400を備えてよい。このような場合、制御手段は、部品が寿命末期に達したと判断する場合に、作動防止手段を第2の状態にする又は維持するように構成されていてよい。
【0063】
好ましくは、作動防止手段は、制御手段から前述の寿命末期信号を受信する場合に、第2の状態をとる又は維持するように構成されていてよい。
【0064】
さらなる態様において、
図5に示すように、本発明はさらに、車両のブレーキシステム500にも関する。このブレーキシステムは、車両を減速させるのに適した制動力を発生させるように構成されているブレーキ手段502と、車両に設置されるように構成され、その作動がブレーキ手段による制動力に影響を与えるように構成されている少なくとも1つの部品と、上述した実施形態のいずれかに係る少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するためのシステムと、を備える。
【0065】
好ましくは、制御手段はさらに、ブレーキ手段を制御して、車両を減速させる制動力を調整するように構成されていてよい。
【0066】
言い換えれば、制御手段は車両ブレーキの管理も担ってよい。
【0067】
好ましくは、ブレーキ手段は、空気ブレーキ、電空ブレーキ、電気機械ブレーキ、電磁ブレーキ、磁気ブレーキ、摩擦ブレーキ、または車両で使用可能な任意の種類のブレーキを含むか、またはそのようなブレーキである。
【0068】
したがって、車両に設置されている少なくとも1つの部品の実際の摩耗状態を監視することができる解決策が提供されることが達成される利点であり、それにより、車両に対して実施されるメンテナンスの立案を改善することができる。
【0069】
上述したように、本発明は、好ましくは、線路レール上を走行する鉄道車両に設置されている少なくとも1つの部品に適用される。例えば、本明細書でいう車両は機関車であってよく、コース/ルートは、機関車の車輪が転がる線路を含んでよい。本明細書で説明する実施形態は、線路上の車両に限定することを意図していない。例えば、車両は、自動車、トラック(例えば、高速道路のセミトレーラトラック、採掘用トラック、木材運搬用トラックなど)、オートバイなどであってもよく、ルートは、道路またはトレイルであってもよい。
【0070】
本発明による少なくとも1つの部品の残存寿命を特定するためのシステムおよび
ブレーキシステムの様々な態様および実施形態について説明した。それぞれの実施形態は、他の任意の実施形態と組み合わせることができることが理解される。さらに、本発明は、記載された実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって定義される範囲内で種々の変更が可能である。
【国際調査報告】