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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】油中水型化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/06 20060101AFI20241031BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 8/894 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
A61K8/06
A61Q1/00
A61K8/73
A61K8/19
A61K8/894
A61K8/31
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531399
(86)(22)【出願日】2021-11-29
(85)【翻訳文提出日】2024-05-24
(86)【国際出願番号】 IB2021000832
(87)【国際公開番号】W WO2023094847
(87)【国際公開日】2023-06-01
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502189579
【氏名又は名称】エルブイエムエイチ レシェルシェ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 健太
(72)【発明者】
【氏名】郷原 英志
(72)【発明者】
【氏名】端 晃一
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB221
4C083AB222
4C083AB231
4C083AB232
4C083AB241
4C083AB242
4C083AB332
4C083AB441
4C083AB442
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC021
4C083AC022
4C083AC111
4C083AC112
4C083AC331
4C083AC332
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD161
4C083AD162
4C083AD241
4C083AD242
4C083BB04
4C083BB11
4C083BB25
4C083CC03
4C083CC05
4C083CC12
4C083CC19
4C083DD32
4C083EE06
(57)【要約】
油中水型化粧料であって、上記油中水型化粧料は(A)炭素原子数16~22の分岐脂肪酸でエステル化されたデキストリンで処理された無機顔料を含む疎水化処理顔料、(B)1種以上の油、(C)少なくとも1種の(B)成分のゲルを形成するデキストリン脂肪酸エステル、(D)HLBが8未満のシリコーン系界面活性剤、(E)有機変性粘土鉱物、及び(F)水を含有し、(F)成分の含有量は上記化粧料の全質量基準で40質量%以上である、油中水型化粧料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油中水型化粧料であって、前記油中水型化粧料は(A)炭素原子数16~22の分岐脂肪酸でエステル化されたデキストリンで処理された無機顔料を含む疎水化処理顔料、(B)1種以上の油、(C)少なくとも1種の(B)成分のゲルを形成するデキストリン脂肪酸エステル、(D)HLBが8未満のシリコーン系界面活性剤、(E)有機変性粘土鉱物、及び(F)水を含有し、
(F)成分の含有量は前記化粧料の全質量基準で40質量%以上である、油中水型化粧料。
【請求項2】
(C)成分の含有量は前記化粧料の全質量基準で0.4~4質量%である、請求項1に記載の油中水型化粧料。
【請求項3】
(E)成分の含有量は前記化粧料の全質量基準で0.04~0.4質量%である、請求項1又は2に記載の油中水型化粧料。
【請求項4】
(E)成分の質量に対する(C)成分の質量の比は1~50である、請求項1~3のいずれか一項に記載の油中水型化粧料。
【請求項5】
(D)成分が、下記一般式(I)で表される化合物を、前記化粧料の全質量基準で1質量%以上含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の油中水型化粧料。
【化1】

(式中、Rは水素原子又は炭素原子数1~5のアルキル基、xは1~100の整数、yは1~40の整数、zは1~200の整数、pは2~20の整数、qは1~5の整数、rは2~20の整数、sは0~20の整数を表す。)
【請求項6】
(B)成分が、揮発性シリコーン油及び/又は揮発性炭化水素油を含み、前記揮発性シリコーン油及び前記揮発性炭化水素油の含有量はいずれも、前記化粧料の全質量基準で0.1~25質量%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の油中水型化粧料。
【請求項7】
前記揮発性炭化水素油の質量に対する前記揮発性シリコーン油の質量の比が0.1~10である、請求項6に記載の油中水型化粧料。
【請求項8】
環状シリコーンを実質的に含有しない、請求項1~7のいずれか一項に記載の油中水型化粧料。
【請求項9】
炭素原子数2~8のポリオールを更に含有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の油中水型化粧料。
【請求項10】
(C)成分が、炭素原子数6~22の直鎖脂肪酸でエステル化されたデキストリンである、請求項1~9のいずれか一項に記載の油中水型化粧料。
【請求項11】
(C)成分が、パルミチン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、パルミチン酸デキストリン/エチルヘキサン酸デキストリン及びパルミチン酸デキストリン/ヘキシルデカン酸デキストリンを含む、請求項10に記載の油中水型化粧料。
【請求項12】
ケラチン質のケア及び/又はメイクアップのための化粧方法であって、請求項1~11のいずれか一項に記載の油中水型化粧料を、ケラチン質、特に肌に適用することを含む、化粧方法。
【請求項13】
前記油中水型化粧料が、該化粧料が適用されるケラチン質に、快適な仕上がり、高い隠蔽効果、長い持続性、強固な安定性、及び低い粉感を与える、請求項12に記載の化粧方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油中水型化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
ファンデーションは、肌の凹凸や毛穴を目立たないようにして、肌を美しく見せるために用いられる化粧品である。ファンデーションには、着色、紫外線防御等を目的として、無機粉体が配合されることが多い。無機粉体は、それ単体では油剤成分への分散性が十分でなく、製品の安定性(特に、乳化状態の安定性)に問題を生じさせることがあるため、その表面を疎水化剤で処理する技術が知られている。疎水化剤としては様々なものが使用されており、例えば特開2011-213662号には、平均重合度が3~150の範囲のデキストリンと、分岐脂肪酸を所定量含有する炭素原子数12~22の脂肪酸からなり、グルコース単位当たりの脂肪酸の置換度が1.0~3.0であるデキストリン脂肪酸エステルで、粉体の表面を被覆処理した表面処理粉体が開示されている。特開2012-116822号公報には、デキストリンと脂肪酸とのエステル化物が開示されている。本発明のデキストリンと脂肪酸とのエステル化物は、平均グルコース重合度が3~150であり、炭素原子数4~26の分枝飽和脂肪酸を、全脂肪酸に対して50モル%超100モル%以下、炭素原子数2~22の直鎖飽和脂肪酸、炭素原子数6~30の直鎖または分枝不飽和脂肪酸および炭素原子数6~30の環状飽和または不飽和脂肪酸からなる群から選択される1、2以上を全脂肪酸に対して0モル%以上50モル%未満含有し、グルコース単位あたりの置換度が1.0~3.0である。
【0003】
理想的なファンデーションに求められるのは、このような安定性を有していることだけではなく、隠蔽性や持続性といったメイクアップ効果に優れていることや、ケアリングテクスチャ、快適な仕上がり、粉感の抑制等を実現するという使用感に関する効果にも優れていることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したようなメイクアップ効果と使用感に関する効果とはトレードオフの関係にあることが多く、両者をともに向上させるのは困難であった。
【0005】
本発明は、強固な安定性を有し、隠蔽性及び持続性に優れるのみならず、優れたケアリングテクスチャ、快適な仕上がり及び粉感の抑制を実現できる化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、油中水型化粧料であって、上記油中水型化粧料は(A)炭素原子数16~22の分岐脂肪酸でエステル化されたデキストリンで処理された無機顔料を含む疎水化処理顔料、(B)1種以上の油、(C)少なくとも1種の(B)成分のゲルを形成するデキストリン脂肪酸エステル、(D)HLBが8未満のシリコーン系界面活性剤、(E)有機修飾粘土鉱物、及び(F)水を含有し、(F)成分の含有量は上記化粧料の全質量基準で40質量%以上である、油中水型化粧料を提供する。
【0007】
このような化粧料は、強固な安定性を有し、隠蔽性及び持続性に優れるのみならず、優れたケアリングテクスチャ、快適な仕上がり及び粉感の抑制を実現することができる。なお、本明細書において、単に「安定性」という場合、「粉体の分散安定性または乳化状態の安定性」を意味する。
【0008】
(A)成分は、炭素原子数16~22の分岐脂肪酸でエステル化されたデキストリンで処理された無機顔料を含む。本明細書において、“処理する”とは、無機顔料の表面処理を行うことをいい、疎水化処理が含まれる。無機顔料の表面が疎水化されていることで、油への分散性が高まり、安定性が向上する。本明細書において、「表面が疎水化されている」及び「表面処理されている」とは、炭素原子数16~22の分岐脂肪酸でエステル化されたデキストリンといった疎水化剤が、無機顔料等の顔料の表面を被覆している態様を含む。「顔料の表面」とは、通常、顔料の最表面を意味するが、顔料が多孔質体である場合、顔料の最表面及び/又はその内部を意味する。
【0009】
本発明において、隠蔽性及び持続性を向上させながら、仕上がりの快適さを向上させ、且つ、粉感も抑制できるという新規知見が得られた。炭素原子数16~22の分岐脂肪酸でエステル化されたデキストリンは、ただ単に無機顔料と化粧料中に共存していればよいのではなく、無機顔料の表面処理に用いられ、例えば、無機顔料の表面の少なくとも一部を被覆した状態で、化粧料中に存在しなければならない。隠蔽性が向上するのは、上述した特定のデキストリン脂肪酸エステルを用いるためであると考えられる。また、上述した特定のデキストリン脂肪酸エステルは、ポリマー骨格中に分岐構造を有しているため、良好な柔軟性を発揮できると考えられる。その結果、上述した特定のデキストリン脂肪酸エステルは、無機顔料の表面の被覆度を向上できるため、無機物に由来する粉感を抑制することができると考えられる。上述した特定のデキストリン脂肪酸エステル以外にも、ポリマー骨格を有するデキストリン脂肪酸エステルは存在するが、炭素原子数16~22の分岐脂肪酸でエステル化されたデキストリンを用いた場合に特異的に、他のデキストリン脂肪酸エステルを用いた場合に比べて、このような粉感の抑制が顕著に発現する。
【0010】
本発明の化粧料は、(C)成分を含むことで、(B)成分中の少なくとも一種の油をゲル化することができるため、十分な粘度の化粧料を得ることができ、安定性の向上につながる。本発明の化粧料は、(C)成分を含むことで、持続性がより良好になるのみならず、より優れたケアリングテクスチャ及びより快適な仕上がりが得られる。
【0011】
本発明の化粧料は、(E)成分を含むことで、十分な顔料分散安定性が得られるため、安定性がより向上する。
【0012】
(F)成分の含有量が、化粧料全質量基準で40質量%以上であることで、みずみずしさが増し、より優れたケアリングテクスチャが得られる。加えて、(F)成分の含有量がこの範囲にあることで、十分な粘度が得られ、塗布時に肌の上で流れにくくなるために隠蔽性がより向上し、且つ、安定性もより向上する。
【0013】
本発明はまた、(C)成分の含有量が上記化粧料の全質量基準で0.4~4質量%である、油中水型化粧料を提供する。(C)成分の含有量がこの範囲にあることで、安定性がより向上し、より優れたケアリングテクスチャ及びより快適な仕上がりが得られる。
【0014】
本発明はまた、(E)成分の含有量が上記化粧料の全質量基準で0.04~0.4質量%である、油中水型化粧料を提供する。(E)成分の含有量がこの範囲にあることで、安定性がより向上し、より優れたケアリングテクスチャ及びより快適な仕上がりが得られる。
【0015】
本発明はまた、(E)成分の含有量に対する(C)成分の含有量の質量比が1~50である、油中水型化粧料を提供する。(E)成分の質量に対する(C)成分の質量の比がこの範囲にあると、安定性及び隠蔽性がより向上するだけでなく、より優れたケアリングテクスチャ及びより快適な仕上がりが得られる。
【0016】
本発明はまた、(D)成分が、下記一般式(I)で表される化合物を、上記化粧料の全質量基準で1質量%以上含む、油中水型化粧料を提供する。
【化1】

(式中、Rは水素原子又は炭素原子数1~5のアルキル基、xは1~100の整数、yは1~40の整数、zは1~200の整数、pは2~20の整数、qは1~5の整数、rは2~20の整数、sは0~20の整数を表す。)
【0017】
(D)成分が、上記一般式(I)で表される化合物を、化粧料の全質量基準で少なくとも1質量%含むことで、安定性及び隠蔽性がより向上するだけでなく、より優れたケアリングテクスチャ及びより快適な仕上がりが得られる。
【0018】
本発明はまた、(B)成分が、揮発性シリコーン油及び/又は揮発性炭化水素油を含み、上記揮発性シリコーン油及び上記揮発性炭化水素油の含有量はいずれも、上記化粧料の全質量基準で0.1~25質量%である、油中水型化粧料を提供する。
【0019】
揮発性シリコーン油及び揮発性炭化水素油の含有量が、化粧料の全質量基準で、それぞれ0.1~25質量%であることで、より優れたケアリングテクスチャ及びより快適な仕上がりが得られる。
【0020】
本発明はまた、上記揮発性炭化水素油の質量に対する上記揮発性シリコーン油の質量の比が0.1~10である、油中水型化粧料を提供する。揮発性炭化水素油の質量に対する揮発性シリコーン油の質量の比がこの範囲にあることで、より優れたケアリングテクスチャ及びより快適な仕上がりを得つつ強固な安定性が得られる。
【0021】
本発明はまた、環状シリコーンを実質的に含有しない、油中水型化粧料を提供する。化粧料が環状シリコーンを実質的に含まないことで、より快適な仕上がりが得られ、且つ、人体に対してより安全な化粧料となる。
【0022】
本発明はまた、炭素原子数2~8のポリオールを更に含有する、油中水型化粧料を提供する。
【0023】
本発明はまた、(C)成分が、炭素原子数6~22の直鎖脂肪酸でエステル化されたデキストリンである、油中水型化粧料を提供する。
【0024】
本発明はまた、(C)成分が、パルミチン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、パルミチン酸デキストリン/エチルヘキサン酸デキストリン及びパルミチン酸デキストリン/ヘキシルデカン酸デキストリンを含む、油中水型化粧料を提供する。
【0025】
本発明は、ケラチン質のケア及び/又はメイクアップのための化粧方法であって、上記油中水型化粧料を、ケラチン質、特に肌に適用することを含む、化粧方法を提供する。
【0026】
本発明はまた、上記油中水型化粧料が、該化粧料が適用されるケラチン質に、快適な仕上がり、高い隠蔽効果、長い持続性、強固な安定性、及び低い粉感を与える、化粧方法を提供する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、強固な安定性を有し、隠蔽性及び持続性に優れるのみならず、優れたケアリングテクスチャ、快適な仕上がり及び粉感の抑制を実現できる化粧料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0028】
実施形態に係る化粧料は、(A)疎水化処理顔料を含み、(A)成分は、炭素原子数16~22の分岐脂肪酸でエステル化されたデキストリンで処理された無機顔料を含む。
【0029】
無機顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化アルミニウム、ベンガラ、紺青、酸化クロム、水酸化クロム等の金属酸化物、マンガンバイオレット、チタン酸コバルト等の金属錯体、カーボンブラックが挙げられる。二酸化チタンは白色顔料として知られ、酸化鉄は赤色、黄色又は黒色の有色顔料として知られている。これらを適宜組合せることにより、所望の色調に調整することができる。上述した金属酸化物は紫外線散乱剤として知られている。金属酸化物の粒子径が100~500nmであると紫外線散乱効果が高まる。金属酸化物の微粒子粉体(粒子径が100nm以下)を用いることもでき、この微粒子粉体は凝集体又は凝結体を形成していてよい。
【0030】
炭素原子数16~22の分岐脂肪酸でエステル化されたデキストリンとしては、イソパルミチン酸デキストリン、イソステアリン酸デキストリン、イソアラキン酸デキストリン、18-メチルエイコサン酸デキストリン等が例示される。このうち、イソステアリン酸デキストリンが好ましい。炭素原子数16~22の分岐脂肪酸でエステル化されたデキストリンとしては、炭素原子数が16、18、20又は22の分岐脂肪酸でエステル化されたデキストリンが好ましく、(A)成分は、イソステアリン酸デキストリンによって表面処理された二酸化チタンを含むことが特に好ましい。
【0031】
炭素原子数16~22の分岐脂肪酸でエステル化されたデキストリンは例えば、下記一般式(IIa)又は(IIb)で表すことができる。下記一般式中のAは、炭素原子数16~22の脂肪酸からOH基を除いて得られた残基であり、この残基の少なくとも一部又は全部は、炭素原子数16~22の分岐脂肪酸からOH基を除いた残基である。Aの一部は、水素原子であってもよい。なお、*は結合手を示す。
【化2】
【0032】
一般式(IIa)又は(IIb)において、炭素原子数16~22の分岐脂肪酸以外の脂肪酸は、例えば、酢酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸等の炭素原子数2~22の直鎖飽和脂肪酸;イソ酪酸、イソ吉草酸、2-エチル酪酸、エチルメチル酢酸、イソヘプタン酸、2-エチルヘキサン酸、イソノナン酸、イソデカン酸、イソトリデカン酸、イソミリスチン酸等の炭素原子数4~14の分岐飽和脂肪酸等とすることができる。炭素原子数16~22の分岐脂肪酸以外の脂肪酸は、シス-4-デセン(オブツシル)酸、9-デセン(カプロレイン)酸、シス-4-ドデセン(リンデル)酸、シス-4-テトラデセン(ツズ)酸、シス-5-テトラデセン(フィセテリン)酸、シス-9-テトラデセン(ミリストレイン)酸、シス-6-ヘキサデセン酸、シス-9-ヘキサデセン(パルミトレイン)酸、シス-9-オクタデセン(オレイン)酸、トランス-9-オクタデセン酸(エライジン酸)、シス-11-オクタデセン(アスクレピン)酸、シス-11-エイコセン(ゴンドレイン)酸、シス-17-ヘキサコセン(キシメン)酸、シス-21-トリアコンテン(ルメクエン)酸等のモノエン不飽和脂肪酸;ソルビン酸、リノール酸、ヒラゴ酸、プニカ酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、モロクチ酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、EPA、イワシ酸、DHA、ニシン酸、ステアロール酸、クレペニン酸、キシメニン酸等のポリエン不飽和脂肪酸等の炭素原子数6~30の直鎖又は分岐の不飽和脂肪酸とすることもできる。炭素原子数16~22の分岐脂肪酸以外の脂肪酸は、9,10-メチレン-9-オクタデセン酸、アレプリル酸、アレプリン酸、ゴルリン酸、α-シクロペンチル酸、α-シクロヘキシル酸、α-シクロペンチルエチル酸、α-シクロヘキシルメチル酸、ω-シクロヘキシル酸、5(6)-カルボキシ-4-ヘキシル-2-シクロヘキセン-1-オクタン酸、マルバリン酸、ステルクリン酸、ヒドノカルピン酸、ショールムーグリン酸等の、環状構造を基本骨格の少なくとも一部に有する炭素原子数6~30の飽和又は不飽和脂肪酸とすることもできる。
【0033】
無機顔料は、他の疎水化剤によって更に表面処理されていてよい。他の疎水化剤は、シリコーン化合物、フッ素化合物、油剤、油脂、リン脂質、アミノ酸、高級アルコール、ワックス、高分子及び樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であり得る。
【0034】
なお、疎水化処理顔料を得るに当たり、上記の疎水化剤に加え、表面処理剤として水酸化アルミニウム、アルミナ、シリカ等を使用してもよい。特に無機顔料が二酸化チタン等の触媒活性があるものである場合、水酸化アルミニウムはその触媒活性を封鎖するために有効である。
【0035】
(A)成分は、化粧料の全量基準で、1~20質量%が好ましく、3~15質量%がより好ましく、5~10質量%が更に好ましい。(A)成分の含有量が上記範囲内であると、隠蔽性及び持続性といったメイクアップ効果と、ケアリングテクスチャ、快適な仕上がり、薄い膜の形成といった使用感との両者をより向上することができる。
【0036】
また、(A)成分に関し、疎水化剤に由来する部分の質量が、疎水化処理顔料全体の質量を基準として1~10質量%であると好ましく、2~8質量%であるとより好ましく、3~6質量%であると更に好ましい。疎水化剤の含有量が上記範囲内であると、顔料の分散性がより優れたものとなり、安定性、隠蔽性及び持続性がより高まる。さらに、顔料の油吸収性を抑制するため、化粧料の粘性が高くなりすぎないようにすることができ、より薄い皮膜を形成することができる。また、無機顔料の表面を十分に覆うことができるため、粉感の抑制効果をより高めることができる。
【0037】
実施形態に係る化粧料は、(A)成分以外の疎水化処理顔料を含んでいていてもよい。(A)成分以外の疎水化処理顔料としては、炭素原子数16~22の分岐脂肪酸でエステル化されたデキストリンによって表面処理されておらず、シリコーン化合物、シラン化合物、アミノ酸誘導体、炭素原子数16~22の分岐脂肪酸でエステル化されたデキストリン以外の糖誘導体、有機チタネート、リン脂質、金属石鹸、脂肪酸、油剤及び有機ポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種で表面処理された無機顔料が挙げられる。これらの表面処理剤及び無機顔料としては、上述した「他の疎水化剤」及び無機顔料と同じものを使うことができる。(A)成分以外の疎水化処理顔料としては、例えば、ミリストイルグルタミン酸ナトリウムで表面処理された酸化鉄等を挙げることができる。(A)成分以外の疎水化処理顔料は、例えば無機顔料が二酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物である場合、紫外線散乱剤として機能することができる。
【0038】
実施形態に係る化粧料は、(B)1種以上の油を含む。(B)成分は、揮発性油を含むことができ、揮発性油は、常温及び常圧環境下において液状であり、徐々に気化する油性成分である。揮発性油としては、(B1)揮発性シリコーン油、(B2)揮発性炭化水素油等が挙げられる。
【0039】
(B1)成分としては、例えば、メチルトリメチコン、オクタメチルトリシロキサン、ジメチコン等が挙げられる。(B2)成分としては、例えば、酢酸ブチル;イソドデカン、イソヘキサデカン等の合成炭化水素;(C9-12)アルカン等の植物由来炭化水素;石油揮発物、等が挙げられる。
【0040】
(B1)成分及び(B2)成分の含有量はそれぞれ、化粧料の全量基準で、0.1~25質量%であってよく、0.1~20質量%であることが好ましく、0.1~15質量%であることがより好ましく、0.1~10質量%であることが更に好ましい。(B1)成分及び(B2)成分の含有量がそれぞれ上記範囲であると、隠蔽性及び持続性をより向上させながら、ケアリングテクスチャをより向上させることができ、より薄い被膜を形成することができることから、仕上がりの快適さにもより優れる。また、皮膚に塗った後、乾燥によるつっぱり感や皮膚刺激性又は閉塞感を生じにくく、使用感の点からより好ましい。
【0041】
(B2)成分の質量に対する(B1)成分の質量の比は、0.1~10であってよく、0.5~5が好ましく、0.7~3がより好ましい。(B2)成分の質量に対する(B1)成分の質量の比がこの範囲にあることで、より優れたケアリングテクスチャ及びより快適な仕上がりを得つつ、強固な安定性が得られる。
【0042】
(B)成分の合計質量を基準とする、(B1)成分と(B2)成分との合計含有量は25~85質量%が好ましく、35~75質量%がより好ましく、45~65質量%が更に好ましい。
【0043】
(B)成分は、不揮発性油を更に含むことができる。不揮発性油とは、常温(すなわち、15~25℃の範囲)及び常圧(すなわち、1気圧)環境で液体の非蒸発性油成分をいう。不揮発性油としては、例えば、環状アルキレンカーボネート(例えば、プロピレンカーボネート)、8~22個の炭素原子の脂肪アルコール(例えば、オクチルドデカノール)、一価又は多価アルコールの脂肪酸エステル(例えば、イソプロピルミリステート、イソノニルイソノナノエート、ペンタエリスリチルテトライソステアレート、ヒマシ油)、安息香酸アルキル、脂肪族炭化水素(例えば、水素化ポリイソブテン)、液体ラノリン、オリーブ油、鉱油、スクアラン、芳香族ポリシロキサン(例えば、フェニルトリメチコン)、植物由来エステル(例えば、(カプリル酸/カプリン酸)ヤシアルキル又はトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル)、紫外線吸収剤(例えば、サリチル酸エチルヘキシル)が挙げられる。
【0044】
不揮発性油の含有量は、化粧料の全量基準で、1~20質量%が好ましく、5~15質量%がより好ましく、8~12質量%が更に好ましい。不揮発性油の含有量が上記範囲内であると、皮膚に塗布した後に、乾燥感や肌のつっぱり感及びべたつき感が生じにくく、より快適な仕上がりが得られる。
【0045】
実施形態に係る化粧料は、(C)少なくとも1種の(B)成分のゲルを形成するデキストリン脂肪酸エステルを含む。(C)成分は、(B)成分中の少なくとも一種の油をゲル化することができればよく、このことにより増粘作用を有する。ゲル化能を有するかどうかは、次の方法で判断する。具体的には、まず、液状油(ASTM D445によって、40℃における動粘度が8mm/sと測定される流動パラフィン)と、デキストリン脂肪酸エステルとを、その合計質量を基準としてデキストリン脂肪酸エステルが5質量%となるように混合する。得られた混合物を加熱して100℃に昇温させる。デキストリン脂肪酸エステルが溶解したのを確認してから加熱をやめ、24時間静置する。その後、Yamco DIGITAL VISCOMATE粘度計VM-100A(振動式)(山一電機社製)を用いて25℃で粘度を測定し、粘度が正常に測定されれば、ゲル化能があると判断する。一方で、粘度がYamco DIGITAL VISCOMATE粘度計VM-100A(振動式)(山一電機社製)の検出限界以下であれば、ゲル化能がないと判断する。なお、上記流動パラフィンをゲル化することができれば、(B)成分中の少なくとも一種の油もゲル化することができると考えられる。
【0046】
(C)成分は、直鎖脂肪酸でエステル化されたデキストリンであってよい。エステル化に用いる脂肪酸の炭素原子数は、6~22であってよく、6~16であることが好ましい。(C)成分としては、例えば、パルミチン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、パルミチン酸デキストリン/エチルヘキサン酸デキストリン、パルミチン酸デキストリン/ヘキシルデカン酸デキストリン等が挙げられる。(C)成分は、パルミチン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン及びパルミチン酸デキストリン/エチルヘキサン酸デキストリンからなる群より選択される少なくとも一種を含むことが好ましく、中でもパルミチン酸デキストリンを含むことがより好ましい。
【0047】
(C)成分は、例えば、上記一般式(IIa)又は(IIb)で表すことができる。但し、Aは、直鎖脂肪酸からOH基を除いた残基を意味する。なお、Aの一部は水素原子であってもよい。(C)成分が、パルミチン酸デキストリンの場合は、Aは、パルミトイル基であり、ミリスチン酸デキストリンの場合は、Aは、ミリストイル基であり、パルミチン酸デキストリン/エチルヘキサン酸デキストリンの場合は、Aはパルミトイル基及びエチルヘキサノイル基である。なお、いずれの場合も、Aの一部は水素原子であってもよい。
【0048】
(C)成分の含有量は、化粧料の全質量を基準として、0.4~4質量%が好ましく、0.7~3.5質量%がより好ましく、1.2~2.5質量%が更に好ましい。(C)成分の含有量がこの範囲にあることで、安定性がより強固なものとなり、ケアリングテクスチャ及び快適な仕上がりがより良好になる。
【0049】
後述する(E)成分の質量に対する(C)成分の質量の比は、1~50であってよく、3~40が好ましく、7~25がより好ましい。(E)成分の質量に対する(C)成分の質量の比がこの範囲にあることで、安定性及び隠蔽性がより向上するだけでなく、より優れたケアリングテクスチャ、及び、より快適な仕上がりを得ることができる。
【0050】
実施形態に係る化粧料は、(D)HLBが8未満のシリコーン系界面活性剤を含む。(D)成分は、ポリシロキサン骨格に親水性基を導入した化学構造を有する。親水性基の種類によって、シリコーン界面活性剤のHLB値は変化する。親水性基としては、例えば、ポリエチレングリコール(以下、「PEG」ともいう。)、ポリプロピレングリコール(以下、「PPG」ともいう。)等のポリエーテル基、ポリグリセリン基が挙げられる。(D)成分は、さらにアルキル基で変性(ポリエーテル・アルキル共変性、ポリグリセリン・アルキル共変性)されていてもよい。また、(D)成分のシリコーン鎖は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。親水性基によって、2つ以上のシリコーン鎖が架橋していてもよい。ポリエチレングリコールにおけるエチレンオキシド単位の数は、特に限定されず、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上又は6以上であってもよい。また、エチレンオキシド単位の数は、25以下、20以下、15以下、11以下、10以下又は9以下であってもよい。ポリプロピレングリコールにおけるプロピレンオキシド単位の数は、特に限定されず、0以上、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上又は6以上であってもよい。また、エチレンオキシド単位の数は、25以下、20以下、15以下、11以下、10以下又は9以下であってもよい。
【0051】
(D)成分のHLB値は8未満であり、2~7、3~7、3~6又は4~6であってもよい。また、(D)成分のHLB値は、1以上、2以上、3以上であってもよい。
【0052】
(D)成分は、下記一般式(I)で表される化合物を、化粧料の全量基準で、少なくとも1質量%含んでいてよい。
【化3】

(式中、Rは水素原子又は炭素原子数1~5のアルキル基、xは1~100の整数、yは1~40の整数、zは1~200の整数、pは2~20の整数、qは1~5の整数、rは2~20の整数、sは0~20の整数を表す。)
【0053】
一般式(I)で表される化合物としては、ABIL(登録商標) EM 90(セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン、HLB=5.0、エボニック ジャパン(株)製)、KF-6048(セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン、HLB=3.5、信越化学工業(株)製)が挙げられ、ABIL(登録商標) EM 90が好ましい。一般式(I)において、pが16であり、qが3であり、rが10であり、sが1であり、Rが水素原子である場合、この化合物をセチルPEG/PPG-10/1ジメチコンという。セチルPEG/PPG-10/1ジメチコンは、セチルジメチコンとジメチコンの共重合体であって、ポリエーテル側鎖を有しており、当該ポリエーテル側鎖は、エチレングリコールとプロピレングリコールが10対1のモル比で形成されている共重合体と言い換えることもできる。
【0054】
(D)成分は、上記一般式(I)で表される化合物以外に、例えば、KF-6028(PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、HLB=4.0、信越化学工業(株)製)、KF-6038(ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、HLB=3.0、信越化学工業(株)製)を含んでいてよい。PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンは、分岐状シロキサン構造をもつシリコーンのメチル基の一部をPEG(約9モル)に置換して得られる重合体である。ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンは、分岐状シロキサン構造をもつシリコーンのメチル基の一部を、PEG(約9モル)及びラウリル基に置換して得られる重合体である。
【0055】
(D)成分の含有量は、化粧料の全量基準で、1~5質量%であることがより好ましい。(D)成分の含有量が上記範囲内であると、乳化状態がより安定化され、隠蔽性及び良好な使用感が更に高まり得る。
【0056】
実施形態に係る化粧料は、(E)有機変性粘土鉱物を含む。(E)成分は、有機分子で疎水性に変性された粘土であり、増粘作用を有する。
【0057】
(E)成分に用いられる粘土としては、例えば、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ドンバッサイト、アンチゴライト、ベルチェリン、パイロフィライト、モンモリロナイト、バイデライト、バーミキュライト、タルク、スチブンサイト、ヘクトライト、サポナイト、クロライト、セピオライトが挙げられ、有機分子で疎水性に変性されている。有機分子としては、例えば、第4級アンモニウム塩が挙げられ、より具体的には、塩化ジステアルジモニウム、塩化ステアラルコニウムが挙げられる。(E)成分としては、例えば、ジステアルジモニウムヘクトライト、ステアラルコニウムヘクトライトがある。
【0058】
(E)成分は、揮発性油及び/又は不揮発性油に分散した状態で取り扱われることがあり、この場合には揮発性油及び/又は不揮発性油とともに利用してもよい。このような揮発性油としては、オクタメチルトリシロキサン、合成炭化水素(例えば、イソドデカン、イソヘキサデカン)、植物由来炭化水素(例えば、(C9-12)アルカン)、石油揮発物、メチルトリメチコン等が挙げられる。なお、揮発性油としてシクロペンタシロキサンを含まないことが好ましいが、シクロペンタシロキサンの使用が完全に禁じられるわけではない。不揮発性油としては、炭酸プロピレン、クランベアビシニカ種子油、ヒマシ油、オリーブ果実油、オクチルドデカノール、ミリスチン酸イソプロピル、液状ラノリン、ミネラルオイル、水素添加ポリイソブテン、フェニルトリメチコン、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル、安息香酸アルキル、植物由来エステル(例えば、(カプリル酸/カプリン酸)ヤシアルキルやトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル)等が挙げられる。(E)成分と共存する揮発性油又は不揮発性油の量はそれぞれ、前述の揮発性油又は不揮発性油の量として加算される。(E)成分としては、BENTONE GEL(登録商標) ISD V、BENTONE GEL(登録商標) GTCC V等のBENTONE GEL(登録商標)シリーズ(商品名、Elementis社製)がある。
【0059】
(E)成分を含むことにより、顔料分散の安定性が向上し、皮膚に塗った後の耐水性及び耐皮脂性にも優れ、皮脂等によるにじみも抑制し得る。(E)成分の含有量は、化粧料の全量基準で、0.04~0.4質量%であってよく、0.04~0.35質量%であることが好ましく、0.04~0.25質量%であることがより好ましい。
【0060】
実施形態に係る化粧料は、(F)水を含み、(F)成分の含有量は、化粧料の全質量を基準として40質量%以上である。(F)成分の含有量は、45質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。(F)成分の含有量がこの範囲にあると、よりみずみずしさが増し、より優れたケアリングテクスチャが得られる。加えて、(F)成分の含有量がこの範囲にあることで、隠蔽性及び安定性がより向上する。
【0061】
実施形態に係る化粧料は、(F)成分以外の水相成分を含むことができる。(F)成分以外の水相成分は、例えば、炭素原子数2~8のポリオールを含むことができる。炭素原子数2~8のポリオールとしては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオールが例示できる。炭素原子数2~8のポリオールの含有量は、化粧料の全量基準で、3~25質量%であってよく、5~20質量%であることが好ましく、10~15質量%であることがより好ましい。炭素原子数2~8のポリオールの含有量が上記範囲であると、乳化状態を不安定化することなく、保湿効果をより高めることができる。
【0062】
(F)成分以外の水相成分は、例えば、炭素原子数1~3のモノオールを含むことができる。炭素原子数1~3のモノオールとしては、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール(イソプロパノール)が例示できる。炭素原子数1~3のモノオールの含有量は、化粧料の全量基準で、20質量%以下であってよく、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。炭素原子数1~3のモノオールの含有量が上記範囲内であると、均一な皮膜を形成しやくすなり、隠蔽性と持続性が更に高まり得る。炭素原子数1~3のモノオールの含有量の下限は例えば、1質量%、5質量%又は10質量%であり得る。
【0063】
実施形態に係る化粧料は、分散剤を含んでいてもよい。分散剤としては、ポリヒドロキシステアリン酸が挙げられる。分散剤の含有量は、化粧料の全量基準で、0.05~0.5質量%がより好ましく、0.1~0.2質量%が更に好ましい。
【0064】
実施形態に係る化粧料は、球状粉体を含んでいていてもよい。球状粉体としては、シリカ、セルロース、デンプン及びこれらの混合物が挙げられ、シリカは疎水性シリカが好ましい。球状粉体の含有量は、化粧料の全量基準で、10質量%以下であってよく、5質量%以下であることが好ましい。球状粉体の含有量の下限は例えば、1質量%、又は2質量%であり得る。
【0065】
実施形態に係る化粧料は、塩類等の安定化剤、抗菌剤、酸化防止剤、香料、有効成分等を更に含んでいてもよい。
【0066】
実施形態に係る化粧料は、環状シリコーンを実質的に又は全く含まない化粧料であることができる。化粧料が環状シリコーンを「実質的に含まない」場合、化粧料の全質量基準での環状シリコーンの含有量は、0.01質量%以下、0.001質量%以下又は0.0001質量%以下とすることができる。
【0067】
実施形態に係る化粧料は、25℃における粘度が、1000mPa・s以上が好ましく、3000mPa・s以上がより好ましい。実施形態に係る化粧料は、25℃における粘度が、10000mPa・s以下が好ましく、8000mPa・s以下がより好ましい。化粧料の25℃における粘度は、1000~10000mPa・s、1000~8000mPa・s、3000~10000mPa・s又は3000~8000mPa・sであり得る。粘度の測定は、回転粘度計(例えば、アントンパール(Anton Parr)社製 Rheolab(登録商標) QC)を用い、ST22-4V-40型スピンドルを、内径4.5cmの容器に収容され25℃に保たれ化粧料中に挿入し、回転数100rpmで3分間測定する。
【0068】
実施形態に係る化粧料は、例えば、以下の工程で製造可能である。すなわち、まず、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び(E)成分を混ぜ合わせ混合物を得る。次に、得られた混合物に、(F)成分を混ぜ合わせることで、化粧料を得ることができる。
【0069】
上述した化粧料は、乳化ファンデーション、化粧下地、サンケア化粧料、乳化コンシーラー等に使用することができ、乳化ファンデーション、化粧下地、サンケア化粧料用の場合には、ジャー容器、チューブ容器、ボトル容器等に収容し、乳化コンシーラー用の場合は、筆ペンタイプ容器、チューブ容器、ジャー容器等に収容することができる。但し、本発明は容器形態を限定されるものではない。例えば、この化粧料を含浸体に含浸させて、気密性を備えたコンパクト容器に収容することも可能である。
【実施例
【0070】
以下、実施例により本発明について説明するが、本発明は下記例に制限されない。
【0071】
(実施例1~11及び比較例1~8)
表1,2に記載の組成で、以下の工程1~3に従って、化粧料を作成した。
工程1:(A)顔料(疎水化処理顔料又は非疎水化処理顔料)、(B)一種以上の油、(C)少なくとも一種の油をゲル化するデキストリン脂肪酸エステル、(D)HLB値が8未満のシリコーン系界面活性剤、及び、(E)有機変性粘土鉱物を、室温にて、ホモジナイザーを用いて混合した。比較例4,6では、上記の成分とは別に、イソステアリン酸デキストリンを更に混合した。
工程2:1,3-ブチレングリコール、塩化ナトリウム及び(F)水を、室温にて、ホモジナイザーを用いて混合した。
工程3:工程2で得られた混合物を工程1で得られた混合物に加えて、ホモジナイザーを用いて乳化させた。
【0072】
表1,2中の化合物の表記は以下の通りである。「%」は、疎水化処理顔料の質量を基準とした各成分の含有割合(水酸化アルミニウムで表面処理された無機顔料については、水酸化アルミニウムとの合計含有割合)を意味する。
疎水化処理顔料 1: 二酸化チタン, 水酸化アルミニウム (95%), イソステアリン酸デキストリン (5%)
疎水化処理顔料 2: 酸化鉄(黄), 水酸化アルミニウム (95%), イソステアリン酸デキストリン (5%)
疎水化処理顔料 3: 酸化鉄(赤), 水酸化アルミニウム (95%), イソステアリン酸デキストリン (5%)
疎水化処理顔料 4: 酸化鉄(黒), 水酸化アルミニウム (95%), イソステアリン酸デキストリン (5%)
疎水化処理顔料 5: 酸化鉄(黄), 水酸化アルミニウム (97%), ミリストイルグルタミン酸ナトリウム (3%)
疎水化処理顔料 6: 酸化鉄(赤), 水酸化アルミニウム (97%), ミリストイルグルタミン酸ナトリウム (3%)
疎水化処理顔料 7: 酸化鉄(黒), 水酸化アルミニウム (97%), ミリストイルグルタミン酸ナトリウム (3%)
疎水化処理顔料 8: 二酸化チタン, 水酸化アルミニウム (91%), ジメチコン, ステアロイルグルタミン酸二ナトリウム (9%)
疎水化処理顔料 9: 酸化鉄(黄), 水酸化アルミニウム (91%), ジメチコン, ステアロイルグルタミン酸二ナトリウム (9%)
疎水化処理顔料 10: 酸化鉄(赤), 水酸化アルミニウム (91%), ジメチコン, ステアロイルグルタミン酸二ナトリウム (9%)
疎水化処理顔料 11: 酸化鉄(黒), 水酸化アルミニウム (92%), ジメチコン, ステアロイルグルタミン酸二ナトリウム (8%)
疎水化処理顔料 12: 二酸化チタン (98%), ジメチコン (2%)
疎水化処理顔料 13: 酸化鉄(黄) (98%), ジメチコン (2%)
疎水化処理顔料 14: 酸化鉄(赤) (98%), ジメチコン (2%)
疎水化処理顔料 15: 酸化鉄(黒) (98%), ジメチコン (2%)
疎水化処理顔料 16: 二酸化チタン, 水酸化アルミニウム (98%),トリエトキシカプリリルシラン (2%)
疎水化処理顔料 17: 酸化鉄(黄) (98%),トリエトキシカプリリルシラン(2%)
疎水化処理顔料 18: 酸化鉄(赤) (98%),トリエトキシカプリリルシラン(2%)
疎水化処理顔料 19: 酸化鉄(黒) (98%),トリエトキシカプリリルシラン(2%)
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
実施例及び比較例の化粧料について、以下の方法に従って特性を測定した。
【0076】
[ケアリングテクスチャ(しっとり感及び清涼感)、仕上がりの快適さ、粉感、隠蔽性及び持続性の評価]
化粧品専門評価パネル10人(25~55歳)の顔面の皮膚に、実施例及び比較例の油中水型化粧料を塗布した際の、しっとり感、清涼感、仕上がりの快適さ、粉感、シミと毛穴の隠蔽性及び持続性について、以下の基準にしたがい、評価した。また、持続性については、塗布してから4時間後及び8時間後の状態を、以下の基準にしたがって評価した。「シミ」とは、肌の表面又は皮膚の内部に存在するメラニン等の色素が沈着することにより、周囲と比べて暗色を呈する部分である。この試験では、朝、皮膚に塗布した化粧料について、夕方の時点での状態を評価することを想定した。
【0077】
しっとり感に関する評価基準
A:非常に優れる(例:しっとり感が非常に強く、乾燥を全く感じない。)
B:優れる(例:しっとり感が強く、乾燥をほとんど感じない。)
C:やや優れる(例:しっとり感はあるものの、乾燥を若干感じる。)
D:やや劣る(例:しっとり感はあるものの、乾燥を感じる。)
E:劣る(例:しっとり感がなく、乾燥を感じる。)
F:非常に劣る(例:しっとり感がなく、乾燥を非常に感じる。)
【0078】
清涼感に関する評価基準
A:非常に優れる(例:みずみずしい感触が非常に強く、べたつきを全く感じない。)
B:優れる(例:みずみずしい感触が強く、べたつきをほとんど感じない。)
C:やや優れる(例:みずみずしい感触はあるものの、べたつきを若干感じる。)
D:やや劣る(例:みずみずしい感触はあるものの、べたつきを感じる。)
E:劣る(例:みずみずしい感触がなく、べたつきを感じる。)
F:非常に劣る(例:みずみずしい感触がなく、べたつきを非常に感じる。)
【0079】
仕上がりの快適さに関する評価基準
A:非常に優れる(例:閉塞感がなく、表情の変化に全く抵抗を全く感じない。)
B:優れる(例:閉塞感が若干あるが、表情の変化に抵抗を感じない。)
C:やや優れる(例:閉塞感があるが、表情の変化に抵抗を感じない。)
D:やや劣る(例:閉塞感があり、表情の変化に若干抵抗を感じる。)
E:劣る(例:閉塞感が非常にあり、表情の変化に抵抗を感じる。)
F:非常に劣る(例:閉塞感が非常にあり、表情の変化に非常に抵抗を感じる。)
【0080】
粉感に関する評価基準
A:非常に優れる(例:化粧膜が均一に形成されており、粉浮きが全く視認されない。)
B:優れる(例:化粧膜が不均一に形成された箇所はあるものの、粉浮きは全く視認されない。)
C:やや優れる(例:1~2人は顔の数か所に粉浮きが視認できる。)
D:やや劣る(例:3~5人は顔の数か所に粉浮きが視認できる。)
E:劣る(例:6~10人は顔の数か所に粉浮きが視認できる。)
F:非常に劣る(例:6~10人は顔全体に粉浮きが視認できる。)
【0081】
隠蔽性に関する評価基準
A:非常に優れる(例:シミと毛穴が完全に隠蔽されている。)
B:優れる(例:シミは視認できないが、1~2人は毛穴が視認できる。)
C:やや優れる(例:シミは視認できないが、3~5人は毛穴が視認できる。)
D:やや劣る(例:1~2人はシミ及び毛穴が視認できる。)
E:劣る(例:3~5人はシミ及び毛穴が視認できる。)
F:非常に劣る(例:6~10人はシミ及び毛穴が視認できる。)
【0082】
持続性に関する評価基準
A:非常に優れる(例:8時間経過しても化粧崩れしない。)
B:優れる(例:4時間後には化粧崩れしないが、8時間後には1~2人が化粧崩れする。)
C:やや優れる(例:4時間後には化粧崩れしないが、8時間後には3~5人が化粧崩れする。)
D:やや劣る(例:4時間後には1~2人が化粧崩れする。)
E:劣る(例:4時間後には3~5人が化粧崩れする。)
F:非常に劣る(例:4時間後には6~10人が化粧崩れする。)
【0083】
[安定性の評価]
実施例及び比較例の化粧料を透明容器に収容し、蓋をして密閉したうえで、50℃で1か月間保管した。また、対照には、同様に、室温で1か月間保管した化粧料を使用した。保管後の化粧料の外観を目視で観察し、以下に示す粉体の凝集、粘度の低下のいずれか1つでも観察される場合には「F」と判断し、いずれも観察されない場合には「A」と判断した。
粉体の凝集・・・対照と比較して、顔料が不均一に分散して色むらになること。
粘度の低下・・・化粧料を充填した容器を室温になるまで恒温し、横転した後に10秒以内に流動し始めること。
【0084】
以上の結果をまとめて、以下の表3,4に示す。
【0085】
【表3】
【0086】
【表4】
【国際調査報告】