(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】3つのレンズを備えた光学投射装置
(51)【国際特許分類】
G02B 13/00 20060101AFI20241031BHJP
F21S 41/143 20180101ALI20241031BHJP
F21S 41/151 20180101ALI20241031BHJP
F21S 41/25 20180101ALI20241031BHJP
F21V 5/04 20060101ALI20241031BHJP
F21V 13/04 20060101ALI20241031BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20241031BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20241031BHJP
F21W 102/13 20180101ALN20241031BHJP
【FI】
G02B13/00
F21S41/143
F21S41/151
F21S41/25
F21V5/04 400
F21V5/04 450
F21V13/04 300
F21S2/00 330
F21S2/00 340
F21Y115:10
F21W102:13
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531401
(86)(22)【出願日】2022-11-21
(85)【翻訳文提出日】2024-07-17
(86)【国際出願番号】 EP2022082674
(87)【国際公開番号】W WO2023094332
(87)【国際公開日】2023-06-01
(32)【優先日】2021-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391011607
【氏名又は名称】ヴァレオ ビジョン
【氏名又は名称原語表記】VALEO VISION
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】バティスト、ポール
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA29
2H087LA24
2H087PA03
2H087PA17
2H087PB03
2H087QA03
2H087QA07
2H087QA12
2H087QA22
2H087QA25
2H087QA32
2H087QA42
2H087QA45
2H087RA32
2H087RA44
(57)【要約】
本発明は、選択的に作動可能な複数の発光素子(1)を備えたピクセル化光源と協働することのできる、光ビームを投射するための光学装置に関するものである。その装置は、光源からの光線(11)の経路に沿って順次配置された次の構成要素、収束性の第1レンズ(2)、発散性ないし中性の第2レンズ(3)、瞳(4)、および収束性の第3レンズ(5)から成っていることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択的に作動可能な複数の発光素子(1)を備えたピクセル化光源と相互作用することのできる、光ビームを投射するための光学装置において、
前記光源によって生成される光線(11)の経路の方向に順次、収束性の第1レンズ(2)と、発散性ないし中性の第2レンズ(3)と、瞳(4)と、収束性の第3レンズ(5)とから成っている、ことを特徴とする光学装置。
【請求項2】
前記第1レンズ(2)はメニスカスレンズである、前記請求項に記載の装置。
【請求項3】
前記第2レンズ(3)はメニスカスレンズである、請求項1または請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第3レンズ(5)は均一な屈折率のレンズである、前記請求項のうちいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記第2レンズ(3)は、当該装置の光軸上に位置した中心を持つ出射面(32)を有し、前記第3レンズ(5)は 当該装置の光軸上に位置した中心を持つ入射面(51)を有し、前記瞳(4)は、前記第2レンズ(3)の前記出射面(32)および前記第3レンズ(5)の前記入射面(51)とは接触しないように配置されている、前記請求項のうちいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記瞳(4)は、前記第2レンズ(3)における前記出射面(32)の中心から、ある距離の所に配置されており、その距離は、前記出射面(32)の中心と、前記第3レンズ(5)における前記入射面(51)の中心との間の距離の25%から75%の間に含まれている、前記請求項に記載の装置。
【請求項7】
前記瞳(4)は、前記第2レンズ(3)における前記出射面(32)の中心から、ある距離の所に配置されており、その距離は、前記出射面(32)の中心と、前記第3レンズ(5)における前記入射面(51)の中心との間の距離の45%から55%の間に含まれている、前記請求項に記載の装置。
【請求項8】
前記瞳は、前記第2レンズ(3)における前記出射面(32)の縁部と接触している、請求項6または7に記載の装置。
【請求項9】
前記請求項のうちいずれか一項に記載の装置と、選択的に作動可能な複数の発光素子(1)を装備してセグメント化された光ビームを放出するように構成されたピクセル化光源とを備えたモジュール。
【請求項10】
前記第1レンズ(2)は、前記ピクセル化光源からの光を直接受ける入射面を備えている、前記請求項に記載のモジュール。
【請求項11】
前記第3レンズ(5)は、車両の前方への前記セグメント化された光ビームの投射を生じさせるように構成されている、前記2つの請求項のうちいずれか一項に記載のモジュール。
【請求項12】
前記発光素子それぞれの作動を統御するためのユニットであって、隣り合う発光素子同士の集団の作動を停止させることによって投射ビーム内に少なくとも1つの暗域を作り出すように構成されたユニットを備え、当該統御ユニットは、前記発光素子の幅方向の寸法に応じて、前記暗域に対応した前記隣り合う発光素子同士の集団における発光素子の数を決定するように構成されている、前記3つの請求項のうちいずれか一項に記載のモジュール。
【請求項13】
前記光ビームは、全体的なハイビームの少なくとも一部を形成する、前記4つの請求項のうちいずれか一項に記載のモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明および/または合図の分野、並びに、それに貢献するユニット、特に光学ユニットに関するものである。それは特に、自動車両の分野へ有利に適用可能なものである。
【背景技術】
【0002】
自動車部門において、一般的に規制に従った光ビーム(照明および/または合図機能とも称される)を発することのできる装置が知られている。
【0003】
近年、先進的な照明機能を遂行するために、セグメント化されたビーム(ピクセル化ビームとも称される)を生じさせることを可能とする技術が開発されてきている。これは、特に「補足的ハイビーム」照明機能についてそうである。その照明機能は一般的には、それぞれが1つの(個別に統御され得る)発光ダイオードを備える複数の発光ユニットに基づくものである。このビームは特に、総合的なハイビームを形成するために、ロービームによってもたらされる照明を補足するのに役立ち得る。
【0004】
それぞれのダイオードによって生成される種々のビームセグメントから結果として得られるビームが、複数のレンズを備えた投射光学系によって投射される。例えば、基本ビームと結び付けられる補足ビームを作り出すことが可能であるが、その基本ビームは全体的に、或いは少なくとも部分的に、ロービーム機能のために用いられる型式の水平なカットオフラインより下へ投射されるものである。カットオフラインより上で、基本ビームを完全なものとするように、そのビームに補足ビームが付加されるのである。この補足ビームは、アダプティブ(配光可変)なものであり、即ち、投射された全体的なビームのうち一定の部分が(例えば、防眩機能のために)点灯されたり消灯されたりし得る。この型式の機能に対して、(アダプティブ・ドライビング・ビームについての)頭字語ADBが用いられている。
【0005】
本明細書においては、ビームセグメント同士で構成される像であって各セグメントを独立して点灯させることのできる像を、その投射によって形成するビームを、セグメント化された光ビームと呼んでいる。これらのセグメントを形成するのに、ピクセル化光源が採用され得る。そのような光源は、選択的に作動可能な複数の発光素子を備えている。発光素子は典型的には、保持体上へ互いに一定間隔で並べて配置される。
【0006】
発光素子によって生成される光を十分な質で投射するためには、目下のところレンズ列が用いられている。そのレンズ列は、可能な限り最高の効率と十分な鮮明性とを獲得しつつ、無光ピクセル群の縁部における色収差の影響を低減させることを可能とするものである。
【0007】
図1は、車両前方の照射域(斜線部分)の極めて概略的な例示であるが、その照射域内には2つの無光部位が形成されている。それは、これら2つの無光部位6それぞれについての少なくとも1つの発光素子の作動を停止することによるものである。一般的には、光の光学的な処理によって、当該部位6の縁部上における色収差の影響を、回避するか、或いは限定することを可能とせねばならない(さもなければ、照射現場の観察者は、ビームの基準とは相容れないことさえあり得る、望ましくない色付きの縁部に気付いてしまうこととなる)。それと同時に、当該部位6の輪郭61がぼやけて知覚されることのないよう、ピクセルそれぞれの投射は、できるだけ鮮明であるべきである。これらの光学的な要求は、目下のところ比較的複雑なレンズ系を用いることを必要としている。
【発明の概要】
【0008】
本発明の1つの目的は特に、この問題に対しての解決策を提供し、それによって(特にADBビームのために)より複雑ではない装置を用いながら、十分な解像度と色収差の補正とを達成することである。
【0009】
本発明のその他の目的、特徴、および利点は、以下の説明や添付図面を研究することで明らかとなるであろう。その他の諸利点も含まれ得る、ということを理解されたい。
【0010】
この目的を達成するために、一実施形態によれば、選択的に作動可能な複数の発光素子を備えたピクセル化光源と相互作用することのできる、光ビームを投射するための光学装置において、光源によって生成される光線の経路の方向に順次、収束性の第1レンズと、発散性ないし中性の第2レンズと、瞳と、収束性の第3レンズとから成っている、ことを特徴とする光学装置が提供される。
【0011】
かくして、少数の(驚くべきことに3つに限定される)レンズで、投射の鮮明性と無光部位の縁部における色収差の影響の制限とについての十分な光学的な処理条件を獲得しつつ、複数の発光素子によって生成される光の投射に由来するセグメント化されたビームが作り出されるのである。
【0012】
第2レンズと第3レンズとの間に瞳を配置することによって、光学装置は、より多くの光線を投射することが可能となり、従って投射される像が高い光度を有することが可能となる。例として、光学装置は、0.7以下、ないしは0.5未満ですらある開口数Nを有し得るのである。
【0013】
随意に、瞳は第2レンズの出射面から、第3レンズの入射面からと略同じ距離の所に配置される。本質的に、この構成においては、投射の鮮明性が向上するのである。概して、第2レンズと第3レンズとによって形成される組合せが、色収差の影響の少なくとも部分的な補正を確保してくれるという、更なる有利性がある。
【0014】
もう1つの態様は、当該装置と、選択的に作動可能な複数の発光素子を装備してセグメント化された光ビームを放出するように構成されたピクセル化光源とを備えたモジュールに関するものである。
【0015】
もう1つの態様は、少なくとも1つの光学系および/または少なくとも1つの光学装置を装備した自動車両に関するものである。
【0016】
本発明の目的、対象、特徴、および利点は、本発明の一実施形態の詳細な説明から、よりはっきりと明らかになるであろうが、その実施形態は、以下の添付図面によって示されている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一平面内への光ビームの無光部位を伴った投射の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面は、例として与えられており、本発明を限定するものではない。それらの図面は、本発明の理解を容易にするように企図された模式的で概念的な描写であって、必ずしも実際に適用される縮尺で描かれてはいない。
【0019】
ここで、本発明の諸実施形態の詳細な検討を始める前に、選択的に組み合わせて、或いは代替的に用いられ得る任意の諸特徴を説明することとする:
- 第1レンズ2はメニスカスレンズであり;
- 第2レンズ3は、当該装置の光軸上に位置した中心を持つ出射面32を有し、第3レンズ5は 当該装置の光軸上に位置した中心を持つ入射面51を有し、瞳4は、第2レンズ3の出射面32および第3レンズ5の入射面51とは接触しないように配置され;
- 瞳4は、第2レンズ3における出射面32の中心から、ある距離の所に配置されており、その距離は、出射面32の中心と、第3レンズ5における入射面51の中心との間の距離の25%から75%の間に含まれ;
- 瞳4は、第2レンズ3における出射面32の中心から、ある距離の所に配置されており、その距離は、出射面32の中心と、第3レンズ5における入射面51の中心との間の距離の45%から55%の間に含まれ;
- 瞳は、第2レンズ3における出射面32の縁部と接触しており;
- 第1レンズ2は、ピクセル化光源からの光を直接受ける入射面を備え;
- 第2レンズ3はメニスカスレンズであり;
- 第3レンズ5は、車両の前方へのセグメント化された光ビームの投射を生じさせるように構成され;
- 第3レンズ5は均一な屈折率のレンズであり;
- モジュールは、発光素子それぞれの作動を統御するためのユニットであって、隣り合う発光素子同士の集団の作動を停止させることによって投射ビーム内に少なくとも1つの暗域を作り出すように構成されたユニットを備え、当該統御ユニットは、発光素子の幅方向の寸法に応じて、暗域に対応した隣り合う発光素子同士の集団における発光素子の数を決定するように構成され;
- 光ビームは、全体的なハイビームの少なくとも一部を形成し;
- 第2レンズ3はフリントガラス製であり;
- 第3レンズ5はクラウンガラス製であり;
- 第1レンズ2はクラウンガラス製であり;
- 複数の発光素子1同士が矩形アレイを形成し、矩形アレイの長手寸法が、ビームの横向き寸法(幅)の方向に向けられており、横向き寸法は水平線と向きが合わされていることが好ましい。
【0020】
本発明によるシステムは、発光素子それぞれの作動を統御するためのユニットであって、隣り合う発光素子同士の集団の作動を停止させることによって投射ビーム内にトンネルを形成する少なくとも1つの暗域を作り出すように構成されたユニットを備え、当該統御ユニットは、発光素子の幅方向の寸法に応じて、暗域に対応した隣り合う発光素子同士の集団における発光素子の数を決定するように構成されていてもよい。
【0021】
統御ユニットは、(好適には、非一時メモリ内に記憶された)コンピュータープログラム製品を備えていてよい。コンピュータープログラム製品は、(プロセッサによって実行されたとき)作動されるべき発光素子を決定することを可能とする命令を備えている。それは特に、発光素子の像の変化し得る面積を考慮して、少なくとも1つの定められた面積の暗域(その域内では発光素子が作動されていないもの)を得るようにである。
【0022】
下記で説明する諸特徴において、鉛直状態、水平状態、および横断状態(或いは、横方向までも)、ないしは、それらと均等のものは、照明システムが車両内に取り付けられるように企図された姿勢に対するものと理解されたい。用語「鉛直(方向)」および「水平(方向)」は本明細書において、用語「鉛直(方向)」に関しては水平面に垂直な(システムの高さに対応した)向きの方向を、用語「水平(方向)」に関しては水平面と平行な向きの方向を示している。それらは、車両内での装置の作動条件下において考えられるべきものである。これらの言葉の使用は、鉛直および水平方向についての僅かな変動が本発明から除外されることを意味するものではない。例えば、これらの方向に対する+ないし-10°程度の傾きはこの場合、抜擢された2つの方向についての重大ではない変動であると考えられる。水平面に対しては、傾きが原則として-5°から4°の間、横方向には-6°から7.5°の間である。
【0023】
自動車両のヘッドランプには、外側レンズによって閉鎖されるハウジング内に配置される1つないし複数の発光モジュールが装備され得る。それは、ヘッドランプの出力として、1つないし複数の照明および/または合図用のビームを得るようにである。車両には本発明のモジュールが装備され得るが、当該車両には、少なくとも1つの別のビームを投射するための少なくとも1つの別のモジュールも装備されることが好ましい。ヘッドランプは、複雑なものであって、更には随意に構成要素を共用し得る複数のモジュールを備えていてもよい。
【0024】
本発明は、ハイビーム機能に貢献し得るが、その機能の目的は、車両前方の現場の広い範囲ではあるが、相当(典型的には約200メートル)離れた距離までも照らすことである。この光ビームは、その照明機能ゆえに、主に水平線より上に位置している。そのビームは例えば、僅かに上向きに傾斜した照明用の光軸を有していてよい。そのビームは、特に「補足的ビーム」照明機能を生じさせるのに用いられ得る。それは、近距離場ビームによって作り出されるものに対して補足的なハイビームの部分を形成する。近距離場ビーム(これは、ロービームに特有の諸特徴を有し得るものである)が、全体的に、或いは少なくとも主として水平線の下を照らそうとするのに対して、補足的ハイビームは全体的に、或いは少なくとも主として水平線より上を照らそうとするものである。
【0025】
当該装置は、アダプティブ・ビームに関して上記で説明した諸機能を通じて、或いは、それらの機能とは別個に、他の照明機能を成すのに役立つこともあり得る。
【0026】
複数の発光素子は、選択的に作動するように制御され得る、ということに留意されたい。これは、必ずしも全ての発光素子が同時に作動する(即ち、光を放出する)わけではない、ということを意味する。この機能によって、生成されるビームの形状を調節することが可能となる。ある1つの発光素子が作動されない場合には、その(例えば、光学装置によって投射される)像が欠けていることとなる。そして、それにより、結果として得られる全体的なビーム内に照明の空所が形成される。この空所は、光源結合効果や光学機器類からの迷光の影響についてのものでなかったなら、完全なものなのであるが。
【0027】
光源は、支持体を備えていることが好ましい。その支持体の一方の側が、選択的に点灯可能な発光素子1(例えば、下記で詳細に説明されるようにLED技術に基づくもの)を支えている。
【0028】
光源は、それに続く(ここでは、3つのレンズ同士の集まりによって代表される)光学装置の光軸上に中心があって、その光軸と直角を成す、発光素子1同士のアレイであることが有利である。光軸は、略水平方向を向いていてよい。
【0029】
光源は特に、発光素子同士のアレイであって、発光素子のうち任意の1つを点灯させたり消灯させたりするよう個別に作動され得るアレイの形態をとっていてよい。結果として得られるビームの形状は、かくして非常に高度な順応性で変化し得るのである。
【0030】
それ自体知られているように、本発明は光源として発光ダイオード(一般的にはLEDとも称される)を用いてよい。これらは、1つないし複数の有機LEDであってもよいかもしれない。これらのLEDは特に、光を発することのできる少なくとも1つの半導体チップを備えていてよい。更に、光源という表現はこの場合、本発明のモジュールから少なくとも1つの光ビームを出力させる光束を作り出すことのできる、少なくとも1つのLEDなどの基本光源の組を意味するものと理解されたい。有利な一実施形態においては、光源の出光面が矩形断面のものであり、これがLEDチップについては典型的なものである。
【0031】
電界発光源は、少なくとも1つの、電界発光素子のモノリシックアレイ(モノリシックマトリックスアレイとも称される)を備えていることが好ましい。モノリシックアレイにおいては、各電界発光素子が、共通基板から成長させられるか、ないしは共通基板上に移載されており、個別に、或いは電界発光素子同士のサブセット(小集団)毎に選択的に作動可能となるよう、電気的に接続されている。基板は、主として半導体材料で作られていてよい。基板は、1つないし複数の他の材料(例えば、非半導体)を含んで成っていてもよい。各電界発光素子または電界発光素子の集団が、かくして1つの発光ピクセルを形成し得ると共に、その(それらの)素子の材料へ電力が供給されたときに光を放出することができるのである。そのようなモノリシックアレイの構成によって、プリント回路基板上に半田付けされるよう企図された従来の発光ダイオード群と比べて、選択的に作動可能なピクセル同士を互いにかなり近接させて配置することが可能となる。本発明の趣旨において、モノリシックアレイは、共通基板に対して自らの延長の主寸法(即ち、高さ)が略垂直である電界発光素子を備えており、この高さが多くとも1ミクロンとなっている。
【0032】
光線を放出することのできる1つないし複数のモノリシックアレイは、ピクセル化光源の発光を制御するための制御ユニットに対して結合されていてよい。かくして制御ユニットは、発光装置によるピクセル化された光ビームの生成および/または投射を制御(ないしは統御)し得る。制御ユニットは、発光装置へと統合されていてもよい。制御ユニットが1つないし複数のアレイ上に搭載され、かくして当該組立体が発光モジュールを形成していてもよいのである。制御ユニットは、コンピュータープログラムを格納するメモリと結合された中央処理装置を備えていてよい。そのプログラムは、光源を制御することを可能とする信号類を生成する各段階をプロセッサが遂行できるようにする諸命令を備えている。かくして制御ユニットは、例えばアレイにおける各ピクセルの発光を個別に制御し得る。さらに、複数の電界発光素子によって得られる輝度は、最低60Cd/mm2であり、少なくとも80Cd/mm2であることが好ましい。
【0033】
制御ユニットは、各電界発光素子を制御することのできる電子的装置を形成し得る。制御ユニットは、集積回路であってよい。集積回路(電子チップとも呼ばれる)は、1つないし複数の電子的機能を再現する電子的構成要素であり、例えば限られた容積内(即ち、ウエハ上)に幾つかの型式の基本的な電子的構成要素を統合できるものである。これにより、回路を実施することが容易となる。集積回路は、例えばASICやASSPであってよい。ASIC(「特定用途向け集積回路」の頭字語)は、少なくとも1つの特定用途のため(即ち、一顧客のため)に開発された集積回路である。従ってASICは、専用の(マイクロエレクトロニクスの)集積回路である。一般的には、それは多数の独自な、即ち誂えられた機能を一緒に纏めている。ASSP(「特定用途向け標準製品」の頭字語)は、広く標準化された用途の要求を満たすために多数の機能を遂行する、集積された(マイクロエレクトロニクスの)電子回路である。ASICは、ASSPよりも、もっと特定の(具体的な)ニーズのために設計されているのである。モノリシックアレイは電子的装置を通じて電力を供給されるが、その電子的装置自体は、例えば自らを電源へ接続する少なくとも1つのコネクタを用いて電力を供給される。電源は、本発明による装置の内部にあっても外部にあってもよい。電子的装置が光源へ電力を供給するのである。かくして電子的装置は光源を制御することができる。
【0034】
本発明によれば、光源が少なくとも1つのモノリシックアレイを備え、そのアレイの各電界発光素子が共通基板から突き出ていることが好ましい。素子同士のこの配置は、当該素子が各々そこから成長させられていたところの基板上での成長から、或いは任意の他の製造方法(例えば、移載技術を用いた各素子の移載)から結果として生じ得るものである。電界発光素子同士の種々の配置が、このモノリシックアレイの定義を満たし得るが、それは次のことを条件としてである。即ち、各電界発光素子が、共通基板に対して略垂直な、自らの延長の主寸法のうちの1つを有していること、および(電気的に一緒に纏められた1つないし複数の電界発光素子によって形成される)ピクセル同士の間の間隔が、既知の、プリント回路基板へ半田付けされる概して平坦な正方形のチップ同士の配置において課される間隔と比べて小さいことである。
【0035】
特に、本発明の一態様による光源は、互いに別個の、基板から個々に成長させられた複数の電界発光素子を備え得る。これらの素子は、選択的に(適切な場合には、内部でロッド同士が同時に作動され得るサブセット毎に)作動させられるよう、電気的に接続されている。
【0036】
図示しない一実施形態によれば、モノリシックアレイは、複数の(サブミリメートル寸法の、或いは10μm未満の寸法ですらある)電界発光素子を備えている。それらの素子は、特に六角形断面のロッド群を形成するように基板から突き出て配列されている。各電界発光ロッドは、光源がケーシング内の所定位置にあるとき、照明モジュールの光軸と平行に伸びている。
【0037】
これらの電界発光ロッド同士は(特に、各組に特有の電気的接続によって)選択的に作動可能な複数の部分へと一緒に纏められている。電界発光ロッドは、基板の第1の側に定着されている。この場合は窒化ガリウム(GaN)を用いて形成された各電界発光ロッドが、基板にから垂直ないし略垂直に突き出ている。この場合、基板はシリコン系のものであるが、本発明の範囲から逸脱することなく、シリコンカーバイドなどの他の材料を用いることができる。例として、電界発光ロッドは、窒化アルミニウムと窒化ガリウムとの合金(AlGaN)や、アルミニウム、インジウム、およびリン化ガリウムの合金(AlInGaP)で作ることができるであろう。各電界発光ロッドは、自らの高さを規定する延長の軸線に沿って伸びており、各ロッドの基部が基板の上側の平面内に配置されている。
【0038】
別の一実施形態(図示せず)によれば、モノリシックアレイは、単一の基板(例えば、シリコンカーバイド製のもの)の上でエピタキシャル成長させられた電界発光素子の各層(特に、n型ドープGaNの第1層およびp型ドープGaNの第2層)を、同じ基板からそれぞれ生じた複数のピクセルを形成するように(研削および/またはアブレーションによって)切り分けたものから形成される電界発光素子群を備えていてよい。そのような設計の結果は、全てが同じ基板から生じて、それぞれを選択的に作動させられるよう電気的に接続された複数の発光ブロックということになる。
【0039】
この別の実施形態による一実施例において、モノリシックアレイの基板は、100μmから800μmの間、特に200μmの厚さを有していてよく、各ブロックは、50μmから500μmの間、好適には100μmから200μmの間にある長さと幅とをそれぞれ有していてよい。一変形例においては、長さと幅とが等しくなっている。各ブロックの高さは500μm未満であるが、300μm未満であることが好ましい。最後に、各ブロックの出光面は、基板を介して、エピタキシャル成長が行われるのとは反対の側に形成され得る。隣り合うピクセル同士の間を隔てる距離は、1μm未満、特に500μm未満であってよいが、200μm未満であることが好ましい。
【0040】
同じ基板から各々突き出て伸びている発光ロッド(即ち、上述したようなロッド)と、同じ基板上に積層された発光層を切り分けることによって得られる発光ブロックとの両者に適用可能な別の一実施形態(図示せず)によれば、モノリシックアレイは、各電界発光素子が少なくとも部分的に埋め込まれるポリマーの層を更に備えていてよい。かくして、その層が、基板の全範囲に亘って、或いは電界発光素子の所与の群の周囲にだけ広がっていてもよい。ポリマー(これは、特にシリコーン系のものであってよい)は、光線の放散を妨げることなく電界発光素子を保護することを可能とする保護層を作り出す。更に、このポリマーの層内には、波長変換手段(例えば、発光団)を組み込むことが可能である。その波長変換手段は、素子のうちの1つによって放出された光線の少なくとも一部を吸収して、当該吸収された励起光の少なくとも一部を、励起光の波長とは異なる波長を有した放出光へと変換することのできるものである。ポリマーの内部実質内に発光団を埋め込むか、ポリマー層の表面上に発光団を配置するかのいずれかであってよい。また、ポリマー層を伴うことなく、半導体チップ上に蛍燐光体を真空蒸着させることも可能である。光源は更に、ピクセル化光源の出光面の方へと光線を偏向させるために反射性材料の被覆を備えていてもよい。
【0041】
サブミリメートル寸法の電界発光素子同士が、基板と略平行な平面内で所与の出光区域を画成している。この出光区域の形状は、その区域を形成する電界発光素子の数および配置次第である、ということを理解されたい。かくして、略矩形の形状の発光区域を定めることが可能となるが、その形状は変わってもよく、本発明の範囲から逸脱することなく任意の形状であってよい、ということを理解されたい。
【0042】
選択的に作動可能な発光素子1を二次光源とすることは不可能ではない。
【0043】
図1は、本発明のおかげで得ることのできる投射の例であって、十分な鮮明性と、十分に無色な(光源の白色に近い)輪郭61とを伴うものを示している。
【0044】
そのような結果を達成することを可能とする光学モジュールの第1実施形態が、
図2に示されている。光線の(左方から右方への)経路が、(ピクセル同士のアレイを好適に形成する)光源の各発光素子1による光線11の生成で始まっている。
【0045】
例として、光源1のピクセル同士のアレイは、完全に水平方向に配置された細長い矩形の形状を有していてよい。
【0046】
図2は、光学装置の第1レンズ2へ入射面21を通じて入射する光線11を示している。この例において、第1レンズ2は、メニスカスレンズであり、従って同じ湾曲方向の面21,22を有している。この場合、入射面21は凹形で、出射面22は凸形である。第1レンズ2は、本質的に収束性であって、透過させる光線を、第1レンズ2から間隔を置かれた第2レンズ3の方へ差し向けるように構成されている。
【0047】
第2レンズ3は、発散性であることが有利であるが、弱く発散性であったり、光学的に中性ですらあったりしてもよい。
図2の場合、入射面31が凸形で出射面32が凹形である。
【0048】
光線の経路に沿って、第2レンズ3に瞳4が続いている。瞳4は(当該光線に対しての周縁絞りを形成するよう)好適に設定された開口の絞りの役目を果たし、第3レンズ5の方向へ光線を通過させるための開口を画成している。瞳4は、光軸と直角を成す平面内にあることが有利である。図示の例において、瞳4は、第2レンズ3の出射面32と第3レンズ5の入射面51とから距離を置かれている。本質的に、瞳4が鮮明性を向上させるには中間配置が好ましいのである。
【0049】
第3レンズは、それに関する限り、集束レンズである。
図2の場合、その入射面51は凹形で、その出射面52は凸形である。ピクセル化された光ビームから第3レンズ5によって投射される光線は、モジュールから出て、当該モジュールを装備した車両の前方(ないしは後方)の道路現場の一部を照らすことが好ましい。
【0050】
瞳4は、面32と面51との間の中間に配置されていることが好ましい。より特定的には、面32の中心(この面と、光学装置自体の光軸、即ち図の中央部における水平な一点鎖線との交点として定義されるもの)と、面51の中心(面32の中心と同様に定義されるもの)とが、両レンズの向かい合う面の中心においてレンズ同士を隔てる距離を定めていて、瞳4は、この隔てる距離の25から75%の間に含まれる面32からの距離の所に配置されていてよい。随意に、鮮明性を向上させる観点からは、面32の中心までの距離が、隔てる距離の45から50%の間で、瞳4の中央配置の程度がもっと高くなっていてもよい。もっとも、これにより色収差の補正が損われることとはなるが。
【0051】
ここで
図3を参照して、投射モジュールの別の実施形態を説明することとする。
図3は、左方から右方へと、上述した型式のものであり得るが特に発光素子1同士のアレイの形態をとっている光源、第1レンズ2、第2レンズ3、瞳4、および第3レンズ5を示している。
【0052】
今回、瞳4は、第2レンズの面32に近接して置かれており、この面32の周縁部に接触していてさえよい。前述の場合のように、レンズ3はメニスカスレンズである。レンズ2は、
図2の例と同じ型式のものである。第3レンズは今回は、平坦な入射面51と、凸形の出射面とを有している。
【0053】
図4の変形例は、かなり同様なものである。上記のように、瞳4は面32に近接して置かれており、その面に接触していることが有利である。第2レンズ3は、ここでは両凹形である。対照的に、第3レンズ5は両凸形である。第1レンズ2は、依然としてメニスカスレンズである。
【0054】
上述したような光源1の、3つのレンズを備えた光学装置との合同によって、
図1に相当し得るセグメント化された合成ビームが、十分な鮮明性と、殆ど無色の暗トンネル域6の輪郭61とを伴って放出されるのである。システムは更に、発光素子の選択的な作動を統御するためのユニットを備えている。
【0055】
システムは、コンピューター化された処理手段、特にプロセッサと、コンピュータープログラム命令を保存するための不揮発性メモリとを伴ったものを備えていてよい。コンピュータープログラム命令は、形成すべきビームや保つべき暗域に応じて、作動されるべき発光素子と作動を停止されるべき発光素子とを決定する働きを果たすことを可能とするものである。
【0056】
本発明は、上述した諸実施形態に限定されるものではなく、その趣旨に従う如何なる実施形態をも包含するものである。
【手続補正書】
【提出日】2024-10-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択的に作動可能な複数の発光素子(1)を備えたピクセル化光源と相互作用することのできる、光ビームを投射するための光学装置において、
前記光源によって生成される光線(11)の経路の方向に順次
設けられた、収束性の第1レンズ(2)と、発散性ないし中性の第2レンズ(3)と、瞳(4)と、収束性の第3レンズ(5)とから成っている、ことを特徴とする光学装置。
【請求項2】
前記第1レンズ(2)はメニスカスレンズである、
請求項1に記載の
光学装置。
【請求項3】
前記第2レンズ(3)はメニスカスレンズである、請求項
1に記載の
光学装置。
【請求項4】
前記第3レンズ(5)は均一な屈折率のレンズである、
請求項1に記載の
光学装置。
【請求項5】
前記第2レンズ(3)は、当該装置の光軸上に位置した中心を持つ出射面(32)を有し、前記第3レンズ(5)は、当該装置の光軸上に位置した中心を持つ入射面(51)を有し、前記瞳(4)は、前記第2レンズ(3)の前記出射面(32)および前記第3レンズ(5)の前記入射面(51)とは接触しないように配置されている、
請求項1に記載の
光学装置。
【請求項6】
前記瞳(4)は、前記第2レンズ(3)における前記出射面(32)の中心から、ある距離の所に配置されており、その距離は、前記出射面(32)の中心と、前記第3レンズ(5)における前記入射面(51)の中心との間の距離の25%から75%の間に含まれている、
請求項5に記載の
光学装置。
【請求項7】
前記瞳(4)は、前記第2レンズ(3)における前記出射面(32)の中心から、ある距離の所に配置されており、その距離は、前記出射面(32)の中心と、前記第3レンズ(5)における前記入射面(51)の中心との間の距離の45%から55%の間に含まれている、
請求項6に記載の
光学装置。
【請求項8】
前記瞳は、前記第2レンズ(3)における前記出射面(32)の縁部と接触している、請求項
6に記載の
光学装置。
【請求項9】
請求項1に記載の
光学装置と、選択的に作動可能な複数の発光素子(1)を装備してセグメント化された光ビームを放出するように構成されたピクセル化光源とを備えたモジュール。
【請求項10】
前記第1レンズ(2)は、前記ピクセル化光源からの光を直接受ける入射面を備えている、
請求項9に記載のモジュール。
【請求項11】
前記第3レンズ(5)は、車両の前方への前記セグメント化された光ビームの投射を生じさせるように構成されている、
請求項9に記載のモジュール。
【請求項12】
前記発光素子それぞれの作動を統御するためのユニットであって、隣り合う発光素子同士の集団の作動を停止させることによって投射ビーム内に少なくとも1つの暗域を作り出すように構成されたユニットを備え、当該統御ユニットは、前記発光素子の幅方向の寸法に応じて、前記暗域に対応した前記隣り合う発光素子同士の集団における発光素子の数を決定するように構成されている、
請求項9に記載のモジュール。
【請求項13】
前記光ビームは、全体的なハイビームの少なくとも一部を形成する、
請求項9に記載のモジュール。
【国際調査報告】