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特表2024-541533アミノヘテロアリールキナーゼ阻害薬
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】アミノヘテロアリールキナーゼ阻害薬
(51)【国際特許分類】
   C07D 405/12 20060101AFI20241031BHJP
   C07D 239/47 20060101ALI20241031BHJP
   C07D 401/12 20060101ALI20241031BHJP
   C07D 401/14 20060101ALI20241031BHJP
   C07D 405/14 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 31/505 20060101ALI20241031BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C07D405/12 CSP
C07D239/47 Z
C07D401/12
C07D401/14
C07D405/14
A61K31/506
A61K31/505
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531423
(86)(22)【出願日】2022-11-23
(85)【翻訳文提出日】2024-07-22
(86)【国際出願番号】 CN2022133770
(87)【国際公開番号】W WO2023093769
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/133429
(32)【優先日】2021-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524197574
【氏名又は名称】アロリオン セラピューティクス インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100131990
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 玲恵
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ダイ
(72)【発明者】
【氏名】ディン,チヤン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,タオ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC42
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC20
4C086ZC41
(57)【要約】
本明細書では、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)に関係する新規化合物、医薬組成物及び使用方法が提供される。本明細書における化合物は、典型的には、癌などの種々の疾患又は障害の治療に使用され得るCDK2阻害薬である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書の表1に示される化合物から選択される化合物、その立体異性体、その重水素化アナログ又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項2】
以下:
【化1】

から選択される、実施例E1~E7から選択される化合物、その立体異性体、その重水素化アナログ又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項3】
該当する場合、90%ee(鏡像体過剰率)以上、好ましくは98%ee以上のエナンチオマー純度を有するか、又は検出可能な量の他のエナンチオマーを有しないか若しくは100%eeを有する、請求項1若しくは2に記載の化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項4】
4-((4-(((3S,4R)-3-ヒドロキシテトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-N-(メチル-d3)ベンゼンスルホンアミド。
【請求項5】
4-((4-(((3R,4R)-3-ヒドロキシテトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-N-(メチル-d3)ベンゼンスルホンアミド。
【請求項6】
4-((4-(((3S,4R)-3-ヒドロキシテトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-N-メチルベンゼンスルホンアミド。
【請求項7】
N-エチル-4-((4-(((3S,4R)-3-ヒドロキシテトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イル)アミノ)ベンゼンスルホンアミド。
【請求項8】
4-((4-(((3S,4R)-3-ヒドロキシテトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イル)アミノ)ベンゼンスルホンアミド。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項10】
癌の治療を、それを必要としている対象において行う方法であって、前記対象に、治療有効量の、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物若しくはその薬学的に許容可能な塩又は請求項9に記載の医薬組成物を投与することを含む方法。
【請求項11】
前記癌は、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、子宮癌、前立腺癌、肺癌(NSCLC、SCLC、扁平上皮細胞癌又は腺癌を含む)、食道癌、頭頸部癌、結腸直腸癌、腎癌(RCCを含む)、肝癌(HCCを含む)、膵癌、胃癌(即ち胃癌)及び/又は甲状腺癌である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記癌は、ER陽性/HR陽性、HER2陰性乳癌;ER陽性/HR陽性、HER2陽性乳癌;トリプルネガティブ乳癌(TNBC);及び炎症性乳癌から選択される乳癌である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記癌は、内分泌抵抗性乳癌、トラスツズマブ抵抗性乳癌又はCDK4/CDK6阻害に対して一次又は獲得抵抗性を示す乳癌から選択される乳癌である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記癌は、進行又は転移性乳癌である、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記癌は、卵巣癌である、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記癌は、サイクリンE1及び/又はサイクリンE2の増幅又は過剰発現によって特徴付けられる、請求項10~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
4-((4-(((3S,4R)-3-((4-メトキシベンジル)オキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イル)アミノ)ベンゼンスルホンアミド;
4-((4-(((3S,4R)-3-((4-メトキシベンジル)オキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-N-メチルベンゼンスルホンアミド;
N-エチル-4-((4-(((3S,4R)-3-((4-メトキシベンジル)オキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イル)アミノ)ベンゼンスルホンアミド;
4-((4-(((3S,4R)-3-((4-メトキシベンジル)オキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-N-(メチル-d3)ベンゼンスルホンアミド;
4-((4-(((3R,4R)-3-((4-メトキシベンジル)オキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-N-(メチル-d3)ベンゼンスルホンアミド;
4-((4-(((3S,4S)-3-((4-メトキシベンジル)オキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-N-(メチル-d3)ベンゼンスルホンアミド;及び
4-((4-(((3R,4S)-3-((4-メトキシベンジル)オキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-N-(メチル-d3)ベンゼンスルホンアミド
から選択される化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年11月26日に出願されたPCT/CN2021/133429号明細書の優先権を主張し、その内容は、あらゆる目的のために全体として参照により本明細書に援用される。
【0002】
様々な実施形態では、本開示は、概して、例えばサイクリン依存性キナーゼを阻害し、且つ/又は本明細書に記載される様々な疾患若しくは障害を治療若しくは予防するための新規ヘテロアリール化合物、それを含む組成物、その調製方法及び使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
サイクリン依存性キナーゼ(CDK)は、細胞周期進行を調節するセリン/トレオニンプロテインキナーゼのファミリーである。CDKの中でも特に、CDK2は、細胞がG1期後期からS期及びG2期に移行するのに必須のドライバーである。G1期後期中、サイクリンEの結合に伴ってCDK2が活性化される。このサイクリンE/CDK2複合体がRBを高リン酸化型に変えることにより、RbからE2Fが遊離し、G1/S移行に必要な遺伝子の転写が惹起される。続いて、CDK2は、サイクリンAと複合体を形成し、DNA複製ライセンス化タンパク質(CDC6)及び中心体タンパク質CP110など、DNA複製及び中心体複製に重要なタンパク質を活性化させることによってS期進行を調節する(Tadesse et al.Targeting CDK2 in cancer:challenges and opportunities for therapy,Drug Discovery Today.2019;25(2):406-413)。
【0004】
サイクリンE1は、ヒト癌で高頻度に増幅及び/又は過剰発現される。高悪性度漿液性卵巣癌では、約20%の患者にサイクリンE1増幅が検出され、これは、化学療法抵抗性/難治性と関連性がある(TCGA,Integrated genomic analyses of ovarian carcinoma,Nature.2011;474:609-615;Nakayama et al;Gene amplification CCNE1 is related to poor survival and potential therapeutic target in ovarian cancer,Cancer(2010)116:2621-34)。サイクリンE1増幅型の卵巣癌細胞株は、CDK2活性を阻害する試薬又は細胞CDK2タンパク質レベルを低下させる試薬のいずれかに対して高感受性であり、これらのサイクリンE1増幅型の細胞におけるCDK2依存性が示唆される(Au-Yeung et al.Selective targeting of cyclin E1 amplified high grade serous ovarian cancer by clin-dependent kinase 2 and AKT inhibition,Clin.Cancer Res.2017;23(7):1862-1874)。子宮内膜癌、胃癌、乳癌及び他の癌でも、アウトカムの不良及び薬物抵抗性は、サイクリンE1高発現と関連性があった(Noske et al.,Detection of CCNE1/URI(19q12)amplification by in situ hybridization is common in high grade and type II endometrial cancer,Oncotarget(2017)8:14794-14805;Ooi et al.,Gene amplification of CCNE1,CCND1 and CDK6 in gastric cancers detected by multiplex ligation-dependent probe amplification and fluorescence in situ hybridization,Hum Pathol.(2017)61:58-67;Keyomarsi et al.,Cyclin E and survival in patients with breast cancer.N Engl J Med.(2002)347:1566-75)。CDK4/6阻害薬パルボシクリブに対して獲得抵抗性を示すエストロゲン受容体(ER)陽性乳癌細胞株では、サイクリンE1発現の上昇が見られ、CDK2をノックダウンすると、再感作させることができる(Herrera-Abreu et al.,Early adaptation and acquired resistance to CDK4/6 inhibition in estrogen receptor-positive breast cancer,Cancer Res.(2016)76:2301-2313)。サイクリンE1高値は、ER+BCにおけるパルボシクリブ+フルベストラント併用療法に対する反応不良と関連性があることも報告されており(CCNE1高値対CCNE1低値:PFS中央値は、パルボシクリブ+フルベストラントアームで7.6対14.1ヵ月;プラセボ+フルベストラントアームで4.0対4.8ヵ月)、CDK4/6阻害薬に対する抵抗性の媒介におけるCDK2活性の重要性が更に強調される(Turner et al.,Cyclin E1 expression and Palbociclib efficacy in previously treated hormone receptor positive metastatic breast cancer Clin Oncol.(2019)37(14):1169-1178)。
【0005】
サイクリンE2(CCNE2)の過剰発現は、乳癌細胞における内分泌抵抗性と関連性があると報告されており、CDK2阻害により、タモキシフェン抵抗性のCCNE2過剰発現細胞でタモキシフェン又はCDK4阻害薬に対する感受性が回復することが報告されている(Caldon et al.,Cyclin E2 overexpression is associated with endocrine resistance but not insensitivity to CDK2 inhibition in human breast cancer cells.Mol Cancer Ther.(2012)11:1488-99;Herrera-Abreu et al.,Early Adaptation and Acquired Resistance to CDK4/6 Inhibition in Estrogen Receptor-Positive Breast Cancer,Cancer Res.(2016)76:2301-2313)。加えて、サイクリンE増幅は、HER2+乳癌におけるトラスツズマブ抵抗性にも寄与すると報告されている(Scaltriti et al.Cyclin E amplification/overexpression is a mechanism of trastuzumab resistance in HER2+ breast cancer patients,Proc Natl Acad Sci.(2011)108:3761-6)。更に、サイクリンE過剰発現は、基底細胞様及びトリプルネガティブ乳癌(TNBC)並びに炎症性乳癌で役割を果たすことが報告された(Elsawaf&Sinn,Triple Negative Breast Cancer:Clinical and Histological Correlations,Breast Care(2011)6:273-278;Alexander et al.,Cyclin E overexpression as a biomarker for combination treatment strategies in inflammatory breast cancer,Oncotarget(2017)8:14897-14911)。
【発明の概要】
【0006】
増殖経路におけるCDK2の重要性及び腫瘍でCDK2/サイクリンE1活性が変化する頻度の高さから、CDK2が癌治療の標的として浮かび上がる。CDK2ノックアウトマウスは、最小限の欠陥で生存能力を示すため、CDK2は、正常な細胞増殖に必須でないことが示唆される(Berthet et al.,CDK2 knock out mice are viable.Curr Biol.(2003)13(20):1775-85)。加えて、選択的CDK2阻害薬は、腫瘍サイクリンE1及び/又はE2高発現の患者の治療に活性を示す一方、臨床毒性を最小限に抑えることができる。しかしながら、一部の実施形態では、CDK2及び他のCDKの阻害も臨床的に有益となり得る。
【0007】
様々な実施形態では、本開示は、例えば、他のCDK及び/又は他のキナーゼと比べて選択的にCDK2を阻害することのできる新規ヘテロアリール化合物に関する。本明細書における化合物及び組成物は、癌、例えばサイクリンE1(CCNE1)及び/又はサイクリンE2(CCNE2)の増幅又は過剰発現を特徴とする癌など、様々な疾患又は障害の治療に有用である。
【0008】
一部の実施形態では、本開示は、本明細書の表1に開示されるとおりの具体的な化合物又はその薬学的に許容可能な塩を提供する。一部の実施形態では、本開示は、本明細書に記載されるとおりのE1~E7に係る具体的な化合物又はその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0009】
一部の実施形態では、本開示は、本開示の1つ以上の化合物と、任意選択で、薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。この医薬組成物は、典型的には、経口投与のために製剤化され得る。
【0010】
一部の実施形態では、本開示は、対象又は生体試料におけるCDK2活性などのCDK活性を阻害する方法も提供する。一部の実施形態では、本方法は、対象又は生体試料を、有効量の、本開示の1つ以上の化合物、例えば実施例E1~E7のいずれか若しくは本明細書の表1に開示される具体的な化合物のいずれか又はその薬学的に許容可能な塩或いはそれを含む医薬組成物と接触させることを含む。
【0011】
一部の実施形態では、本開示は、CDK媒介性疾患又は障害の治療又は予防を、それを必要としている対象において行う方法を提供する。一部の実施形態では、本方法は、対象に、有効量の、本開示の1つ以上の化合物又は本明細書の医薬組成物を投与することを含む。一部の実施形態では、本方法は、対象に、有効量の、実施例E1~E7のいずれか若しくは本明細書の表1に開示される具体的な化合物のいずれか又はその薬学的に許容可能な塩或いはそれを含む医薬組成物を投与することを含む。
【0012】
一部の実施形態では、本開示は、癌の治療又は予防を、それを必要としている対象において行う方法であって、対象に、有効量の、本開示の化合物(例えば、実施例E1~E7のいずれか若しくは本明細書の表1に開示される具体的な化合物のいずれか又はその薬学的に許容可能な塩)又は有効量の、本明細書に記載される医薬組成物を投与することを含む方法も提供する。一部の実施形態では、癌は、CCNE1及び/又はCCNE2の増幅又は過剰発現によって特徴付けられる。一部の実施形態では、癌は、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、子宮癌、前立腺癌、肺癌(NSCLC、SCLC、扁平上皮細胞癌又は腺癌を含む)、食道癌、頭頸部癌、結腸直腸癌、腎癌(RCCを含む)、肝癌(HCCを含む)、膵癌、胃癌(stomach cancer)(即ち胃癌(gastric cancer))、甲状腺癌及びこれらの組み合わせから選択される。一部の実施形態では、癌は、ER陽性/HR陽性、HER2陰性乳癌;ER陽性/HR陽性、HER2陽性乳癌;トリプルネガティブ乳癌(TNBC);及び炎症性乳癌から選択される乳癌である。一部の実施形態では、癌は、乳癌である。一部の実施形態では、癌は、内分泌抵抗性乳癌、トラスツズマブ抵抗性乳癌又はCDK4/CDK6阻害に対して一次又は獲得抵抗性を示す乳癌から選択される乳癌である。一部の実施形態では、癌は、進行又は転移性乳癌である。一部の実施形態では、癌は、卵巣癌である。
【0013】
本明細書の方法における投与は、いかなる特定の投与経路にも限定されない。例えば、一部の実施形態では、投与は、経口的に、鼻腔に、経皮的に、肺内に、吸入により、頬側に、舌下に、腹腔内に、皮下に、筋肉内に、静脈内に、直腸に、胸膜内に、髄腔内に及び非経口的に投与することであり得る。一部の実施形態では、投与は、経口的に投与することである。一部の実施形態では、投与は、静脈内注射など、非経口注射である。
【0014】
本開示の化合物は、単剤療法として又は併用療法で使用することができる。本明細書に記載される方法に係る一部の実施形態では、本開示の1つ以上の化合物は、1つ又は複数の単独活性成分として投与され得る。一部の実施形態では、本明細書における方法は、対象に本明細書に記載される追加の抗癌剤など、追加の治療剤を投与することを更に含む。
【0015】
前述の概要及び以下の詳細な説明は、両方とも例示的及び説明的なものに過ぎず、本明細書における本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0016】
様々な実施形態では、本開示は、CDK2などのCDKの阻害及び/又は本明細書に記載される様々な疾患若しくは障害、例えば癌の治療若しくは予防に有用な化合物及び組成物を提供する。
【0017】
本明細書における化合物は、典型的には、CDK2を阻害することができる。一部の実施形態では、本明細書における化合物は、他のCDKと比べてCDK2を選択的に阻害することができる。一部の具体的な実施形態では、本開示は、以下の表1から選択される化合物、その重水素化アナログ、その立体異性体又はその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0018】
表1.化合物リスト
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】
【0019】
表1の化合物は、個別の異性体、該当する場合には個別のエナンチオマー及び/又はジアステレオマー又はラセミ混合物及び1つ以上の立体異性体が濃縮された混合物を含む立体異性体の混合物など、様々な立体異性体形態で存在し得る。一部の実施形態では、該当する場合、表1に示される化合物は、他のエナンチオマーを実質的に含まない(例えば、重量基準、HPLC又はSFC面積基準又は両方で20%未満、10%未満、5%未満、1%未満であるか又は検出不能な量である)単離された個別のエナンチオマーとして存在し得る。一部の実施形態では、該当する場合、表1に示される化合物は、ラセミ混合物など、任意の比率の立体異性体の混合物としても存在し得る。
【0020】
一部の実施形態では、本開示は、4-((4-(((3S,4R)-3-ヒドロキシテトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-N-(メチル-d3)ベンゼンスルホンアミドの化合物を提供する。
【0021】
一部の実施形態では、本開示は、4-((4-(((3R,4R)-3-ヒドロキシテトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-N-(メチル-d3)ベンゼンスルホンアミドの化合物を提供する。
【0022】
一部の実施形態では、本開示は、4-((4-(((3S,4R)-3-ヒドロキシテトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-N-メチルベンゼンスルホンアミドの化合物を提供する。
【0023】
一部の実施形態では、本開示は、N-エチル-4-((4-(((3S,4R)-3-ヒドロキシテトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イル)アミノ)ベンゼンスルホンアミドの化合物を提供する。
【0024】
一部の実施形態では、本開示は、4-((4-(((3S,4R)-3-ヒドロキシテトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イル)アミノ)ベンゼンスルホンアミドの化合物を提供する。
【0025】
本開示の化合物は、当業者が本開示を考慮して容易に合成することができる。例示される合成は、実施例の節にも示される。本明細書に記載される新規の合成中間体も本開示の一態様である。例えば、一部の実施形態では、本開示は、4-((4-(((3S,4R)-3-((4-メトキシベンジル)オキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イル)アミノ)ベンゼンスルホンアミド;4-((4-(((3S,4R)-3-((4-メトキシベンジル)オキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-N-メチルベンゼンスルホンアミド;N-エチル-4-((4-(((3S,4R)-3-((4-メトキシベンジル)オキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イル)アミノ)ベンゼンスルホンアミド;4-((4-(((3S,4R)-3-((4-メトキシベンジル)オキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-N-(メチル-d3)ベンゼンスルホンアミド;4-((4-(((3R,4R)-3-((4-メトキシベンジル)オキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-N-(メチル-d3)ベンゼンスルホンアミド;4-((4-(((3S,4S)-3-((4-メトキシベンジル)オキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-N-(メチル-d3)ベンゼンスルホンアミド;及び4-((4-(((3R,4S)-3-((4-メトキシベンジル)オキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-N-(メチル-d3)ベンゼンスルホンアミドから選択される化合物を提供する。
【0026】
医薬組成物
特定の実施形態は、本開示の1つ以上の化合物を含む医薬組成物に関する。
【0027】
医薬組成物は、任意選択で、薬学的に許容可能な賦形剤を含有し得る。一部の実施形態では、医薬組成物は、本開示の化合物(例えば、実施例E1~E7のいずれか若しくは本明細書の表1に開示される具体的な化合物のいずれか又はその薬学的に許容可能な塩)と、薬学的に許容可能な賦形剤とを含む。薬学的に許容可能な賦形剤は、当技術分野で公知である。非限定的な好適な賦形剤としては、例えば、封入材料又は添加剤、例えば抗酸化剤、結合剤、緩衝液、担体、コーティング剤、着色剤、希釈剤、崩壊剤、乳化剤、増量剤、充填剤、香味剤、保湿剤、滑沢剤、香料、保存剤、噴射剤、離型剤、滅菌剤、甘味料、可溶化剤、湿潤剤及びこれらの混合物などが挙げられる。Remington’s The Science and Practice of Pharmacy,21st Edition,A.R.Gennaro(Lippincott,Williams&Wilkins,Baltimore,Md.,2005;参照により本明細書に援用される)も参照されたく、これは、医薬組成物の製剤化に使用される様々な賦形剤及びその公知の調製技法を開示している。
【0028】
医薬組成物には、本開示の化合物の任意の1つ以上が含まれ得る。例えば、一部の実施形態では、医薬組成物は、実施例E1~E7のいずれか若しくは本明細書の表1に開示される具体的な化合物のいずれか又はその薬学的に許容可能な塩を例えば治療有効量で含む。本明細書に記載される実施形態のいずれでも、医薬組成物は、(例えば、乳癌又は卵巣癌の治療についての)治療有効量の実施例E1~E7のいずれかから選択される化合物若しくは本明細書の表1に開示される具体的な化合物のいずれか又はその薬学的に許容可能な塩を含み得る。一部の好ましい実施形態では、医薬組成物は、国際公開第2022/111621号パンフレットに記載されるとおりの生物学的実施例1のとおりに試験したときCDK2/サイクリンE1 IC50レベルが100nM未満、より好ましくは10nM未満である実施例E1~E7に係る化合物又は本明細書の表1にあるものから選択される化合物を含み得る。
【0029】
本明細書における医薬組成物は、限定されないが、経口的に、鼻腔に、経皮的に、肺内に、吸入により、頬側に、舌下に、腹腔内に、皮下に、筋肉内に、静脈内に、直腸に、胸膜内に、髄腔内に又は非経口的に投与することを含む公知の送達経路のいずれかによる送達のために製剤化され得る。
【0030】
一部の実施形態では、医薬組成物は、経口投与のために製剤化され得る。経口製剤は、カプセル、丸薬、カシェ剤、ロゼンジ若しくは錠剤など、所定量の活性化合物を各々含有する個別的な単位の体裁;散剤若しくは顆粒としての体裁;水性若しくは非水性液体中の溶液若しくは懸濁液としての体裁;又は水中油型若しくは油中水型エマルションとしての体裁を取り得る。経口投与のための組成物を調製するための賦形剤は、当技術分野で公知である。非限定的な好適な賦形剤としては、例えば、寒天、アルギン酸、水酸化アルミニウム、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、1,3-ブチレングリコール、カルボマー、ヒマシ油、セルロース、酢酸セルロース、ココアバター、コーンスターチ、コーン油、綿実油、クロスポビドン、ジグリセリド類、エタノール、エチルセルロース、ラウリン酸エチル、オレイン酸エチル、脂肪酸エステル、ゼラチン、胚芽油、グルコース、グリセロール、落花生油、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、イソプロパノール、等張生理食塩水、ラクトース、水酸化マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、麦芽、マンニトール、モノグリセリド類、オリーブ油、ピーナッツ油、リン酸カリウム塩、ジャガイモデンプン、ポビドン、プロピレングリコール、リンゲル溶液、サフラワー油、ゴマ油、カルボキシメチルセルロースナトリウム、リン酸ナトリウム塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ナトリウムソルビトール、ダイズ油、ステアリン酸、フマル酸ステアリル、スクロース、界面活性剤、タルク、トラガカント、テトラヒドロフルフリルアルコール、トリグリセリド類、水及びこれらの混合物が挙げられる。
【0031】
一部の実施形態では、医薬組成物は、非経口投与のために製剤化される(静脈内注射又は注入、皮下又は筋肉内注射など)。非経口製剤は、例えば、水溶液、懸濁液又はエマルションであり得る。非経口製剤の調製のための賦形剤は、当技術分野で公知である。非限定的な好適な賦形剤としては、例えば、1,3-ブタンジオール、ヒマシ油、コーン油、綿実油、デキストロース、胚芽油、落花生油、リポソーム、オレイン酸、オリーブ油、ピーナッツ油、リンゲル溶液、サフラワー油、ゴマ油、ダイズ油、U.S.P.又は等張食塩液、水及びこれらの混合物が挙げられる。
【0032】
本開示の化合物は、単独で、互いの組み合わせで又は1つ以上の追加の治療剤との組み合わせで、例えば有糸分裂阻害薬、アルキル化剤、代謝拮抗物質、抗腫瘍抗生物質、抗血管新生剤、トポイソメラーゼI及びII阻害薬、植物性アルカロイド、ホルモン作用剤及び拮抗薬、成長因子阻害薬、放射線、プロテインチロシンキナーゼ及び/又はセリン/トレオニンキナーゼ阻害薬などのシグナル伝達阻害薬、細胞周期阻害薬、生物学的反応修飾物質、酵素阻害薬、アンチセンスオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド誘導体、細胞毒性薬、免疫腫瘍学的薬剤など、追加の抗癌治療剤との組み合わせで使用することができる。一部の実施形態では、本開示の1つ以上の化合物は、PI3キナーゼ、mTOR、PARP、IDO、TDO、ALK、ROS、MEK、VEGF、FLT3、AXL、ROR2、EGFR、FGFR、Src/Abl、RTK/Ras、Myc、Raf、PDGF、AKT、c-Kit、erbB、CDK4/CDK6、CDK5、CDK7、CDK9、SMO、CXCR4、HER2、GLS1、EZH2又はHsp90の阻害薬などの1つ以上の標的型薬剤又はPD-1若しくはPD-L1アンタゴニスト、OX40アゴニスト又は4-1BBアゴニストなどの免疫調節剤との組み合わせで使用することができる。一部の実施形態では、本開示の1つ以上の化合物は、タモキシフェン、ドセタキセル、パクリタキセル、シスプラチン、カペシタビン、ゲムシタビン、ビノレルビン、エキセメスタン、レトロゾール、フルベストラント、アナストロゾール又はトラスツズマブなど、標準治療薬剤との組み合わせで使用することができる。好適な追加の抗癌治療剤としては、米国食品医薬品局など、規制機関によって適切な癌のために承認されたものなど、当技術分野で公知のもののいずれかが挙げられる。好適な追加の抗癌治療剤の幾つかの例としては、国際公開第2020/157652号パンフレット、米国特許出願公開第2018/0044344号明細書、国際公開第2008/122767号パンフレット等(これらの各々の内容は、全体として参照により本明細書に援用される)に記載されるものも挙げられる。
【0033】
1つ以上の追加の治療剤との組み合わせで使用されるとき、本開示の化合物又は本明細書の医薬組成物は、対象にかかる追加の治療剤と同時に投与するか又は任意の順序で逐次的に投与するかのいずれでもあり得る。一部の実施形態では、医薬組成物は、本開示の1つ以上の化合物と1つ以上の追加の治療剤とを単一の組成物に含み得る。一部の実施形態では、本開示の1つ以上の化合物を含む医薬組成物は、1つ以上の追加の治療剤を含む別の医薬組成物も含むキット中に含まれることができる。
【0034】
医薬組成物は、使用目的並びに化合物の効力及び選択性など、様々な要因に応じて様々な量の本開示の化合物を含み得る。一部の実施形態では、医薬組成物は、治療有効量の本開示の化合物を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、治療有効量の本開示の化合物と薬学的に許容可能な賦形剤とを含む。本明細書で使用されるとき、本開示の化合物の治療有効量とは、乳癌又は卵巣癌など、本明細書に記載されるとおりの疾患又は障害を治療するのに有効な量であり、治療の被投与者、治療下の障害、病態又は疾患及びその重症度、化合物を含有する組成物、投与時間、投与経路、治療継続期間、化合物の効力、そのクリアランス速度及び別の薬物が共投与されるか否かに依存し得る。
【0035】
治療/使用方法
本開示の化合物には様々な有用性がある。例えば、本開示の化合物は、CDK2媒介性疾患又は障害の治療及び/又は予防のための治療活性物質として使用することができる。従って、本開示の一部の実施形態は、癌の治療を、それを必要としている対象において行うためなど、CDK2媒介性疾患又は障害の治療又は予防を、それを必要としている対象において行うために本開示の1つ以上の化合物又は本明細書の医薬組成物を使用する方法にも関する。
【0036】
一部の実施形態では、本開示は、異常細胞増殖の阻害を、それを必要としている対象において行う方法であって、対象に、治療有効量の、本開示の化合物又は本明細書に記載される医薬組成物を投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、異常細胞増殖は、サイクリンE1(CCNE1)及び/又はサイクリンE2(CCNE2)の増幅又は過剰発現によって特徴付けられる癌である。一部の実施形態では、対象は、CCNE1及び/又はCCNE2の増幅又は過剰発現によって特徴付けられる癌を有すると同定される。
【0037】
一部の実施形態では、本開示は、対象又は生体試料のCDK活性を阻害する方法も提供する。一部の実施形態では、本開示は、対象又は生体試料のCDK2活性を阻害する方法であって、対象又は生体試料を、有効量の、本開示の化合物(例えば、実施例E1~E7のいずれか若しくは本明細書の表1に開示される具体的な化合物のいずれか又はその薬学的に許容可能な塩)又は本明細書に記載される医薬組成物と接触させることを含む方法を提供する。
【0038】
一部の実施形態では、本開示は、CDK媒介性、詳細にはCDK2媒介性疾患又は障害の治療又は予防を、それを必要としている対象において行う方法を提供する。一部の実施形態では、本方法は、対象に、有効量の、本開示の化合物(例えば、実施例E1~E7のいずれか若しくは本明細書の表1に開示される具体的な化合物のいずれか又はその薬学的に許容可能な塩)又は有効量の、本明細書に記載される医薬組成物を投与することを含む。一部の実施形態では、CDK2媒介性疾患又は障害は、癌である。一部の実施形態では、癌は、CCNE1及び/又はCCNE2の増幅又は過剰発現によって特徴付けられる。
【0039】
一部の実施形態では、本開示は、癌の治療又は予防を、それを必要としている対象において行う方法であって、対象に、有効量の、本開示の化合物(例えば、実施例E1~E7のいずれか若しくは本明細書の表1に開示される具体的な化合物のいずれか又はその薬学的に許容可能な塩)又は有効量の、本明細書に記載される医薬組成物を投与することを含む方法も提供する。一部の実施形態では、癌は、CCNE1及び/又はCCNE2の増幅又は過剰発現によって特徴付けられる。一部の実施形態では、対象は、CCNE1及び/又はCCNE2の増幅又は過剰発現によって特徴付けられる癌を有すると同定される。一部の実施形態では、癌は、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、子宮癌、前立腺癌、肺癌(NSCLC、SCLC、扁平上皮細胞癌又は腺癌を含む)、食道癌、頭頸部癌、結腸直腸癌、腎癌(RCCを含む)、肝癌(HCCを含む)、膵癌、胃癌(stomach cancer)(即ち胃癌(gastric cancer))、甲状腺癌及びこれらの組み合わせから選択される。本明細書の方法の一部の実施形態では、癌は、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、子宮癌、前立腺癌、肺癌、食道癌、肝癌、膵癌及び/又は胃癌である。
【0040】
本明細書の方法の一部の実施形態では、癌は、ER陽性/HR陽性、HER2陰性乳癌;ER陽性/HR陽性、HER2陽性乳癌;トリプルネガティブ乳癌(TNBC);又は炎症性乳癌など、乳癌である。一部の実施形態では、乳癌は、内分泌抵抗性乳癌、トラスツズマブ抵抗性乳癌又はCDK4/CDK6阻害に対して一次又は獲得抵抗性を示す乳癌であり得る。一部の実施形態では、乳癌は、進行又は転移性乳癌であり得る。一部の実施形態では、本明細書に記載される乳癌は、CCNE1及び/又はCCNE2の増幅又は過剰発現によって特徴付けられる。
【0041】
本明細書の方法の一部の実施形態では、癌は、卵巣癌である。一部の実施形態では、卵巣癌は、CCNE1及び/又はCCNE2の増幅又は過剰発現によって特徴付けられる。
【0042】
本明細書の方法の一部の実施形態では、癌は、白血病など、血液癌である。本明細書の方法の一部の実施形態では、癌は、再発又は難治性慢性リンパ球性白血病(CLL)など、慢性リンパ球性白血病である。
【0043】
本明細書の方法の一部の実施形態では、癌は、急性骨髄性白血病である。本明細書の方法の一部の実施形態では、癌は、再発又は難治性急性骨髄性白血病又は骨髄異形成症候群である。
【0044】
本明細書に記載される任意の実施形態では、特に指定されない限り又は矛盾がない限り、本明細書における癌は、CCNE1及び/又はCCNE2の増幅又は過剰発現によって特徴付けられるものであり得る。
【0045】
一部の実施形態では、本開示は、乳癌の治療を、それを必要としている対象において行う方法であって、対象に、治療有効量の、本開示の化合物(例えば、実施例E1~E7のいずれか若しくは本明細書の表1に開示される具体的な化合物のいずれか又はその薬学的に許容可能な塩)又は有効量の、本明細書に記載される医薬組成物を投与することを含む方法も提供する。一部の実施形態では、乳癌は、ER陽性/HR陽性、HER2陰性乳癌;ER陽性/HR陽性、HER2陽性乳癌;トリプルネガティブ乳癌(TNBC);及び炎症性乳癌から選択される。一部の実施形態では、乳癌は、内分泌抵抗性乳癌、トラスツズマブ抵抗性乳癌又はCDK4/CDK6阻害に対して一次又は獲得抵抗性を示す乳癌から選択される。一部の実施形態では、乳癌は、進行又は転移性乳癌である。一部の実施形態では、乳癌は、CCNE1及び/又はCCNE2の増幅又は過剰発現によって特徴付けられる。
【0046】
一部の実施形態では、本開示は、卵巣癌の治療を、それを必要としている対象において行う方法であって、対象に、治療有効量の、本開示の化合物(例えば、実施例E1~E7のいずれか若しくは本明細書の表1に開示される具体的な化合物のいずれか又はその薬学的に許容可能な塩)又は有効量の、本明細書に記載される医薬組成物を投与することを含む方法も提供する。一部の実施形態では、卵巣癌は、CCNE1及び/又はCCNE2の増幅又は過剰発現によって特徴付けられる。
【0047】
一部の実施形態では、本開示は、白血病の治療を、それを必要としている対象において行う方法であって、対象に、治療有効量の、本開示の化合物(例えば、実施例E1~E7のいずれか若しくは本明細書の表1に開示される具体的な化合物のいずれか又はその薬学的に許容可能な塩)又は有効量の、本明細書に記載される医薬組成物を投与することを含む方法も提供する。一部の実施形態では、白血病は、CCNE1及び/又はCCNE2の増幅又は過剰発現によって特徴付けられる。
【0048】
一部の実施形態では、本開示は、再発又は難治性慢性リンパ球性白血病(CLL)など、慢性リンパ球性白血病の治療を、それを必要としている対象において行う方法であって、対象に、治療有効量の、本開示の化合物(例えば、実施例E1~E7のいずれか若しくは本明細書の表1に開示される具体的な化合物のいずれか又はその薬学的に許容可能な塩)又は有効量の、本明細書に記載される医薬組成物を投与することを含む方法も提供する。
【0049】
一部の実施形態では、本開示は、再発又は難治性急性骨髄性白血病など、急性骨髄性白血病の治療を、それを必要としている対象において行う方法であって、対象に、治療有効量の、本開示の化合物(例えば、実施例E1~E7のいずれか若しくは本明細書の表1に開示される具体的な化合物のいずれか又はその薬学的に許容可能な塩)又は有効量の、本明細書に記載される医薬組成物を投与することを含む方法も提供する。
【0050】
一部の実施形態では、本開示は、骨髄異形成症候群の治療を、それを必要としている対象において行う方法であって、対象に、治療有効量の、本開示の化合物(例えば、実施例E1~E7のいずれか若しくは本明細書の表1に開示される具体的な化合物のいずれか又はその薬学的に許容可能な塩)又は有効量の、本明細書に記載される医薬組成物を投与することを含む方法も提供する。
【0051】
一部の好ましい実施形態では、本明細書にある方法のための本開示の化合物は、国際公開第2022/111621号パンフレットに記載されるとおりの生物学的実施例1により測定/計算したCDK2/サイクリンE1 IC50が100nM未満、より好ましくは10nM未満である。
【0052】
本明細書の方法における投与は、いかなる特定の投与経路にも限定されない。例えば、一部の実施形態では、投与は、経口的に、鼻腔に、経皮的に、肺内に、吸入により、頬側に、舌下に、腹腔内に、皮下に、筋肉内に、静脈内に、直腸に、胸膜内に、髄腔内に及び非経口的に投与することであり得る。一部の実施形態では、投与は、経口的に投与することである。一部の実施形態では、投与は、静脈内注射など、非経口注射である。
【0053】
本開示の化合物は、単剤療法として又は併用療法で使用することができる。本明細書に記載される方法に係る一部の実施形態では、本開示の1つ以上の化合物は、1つ又は複数の単独活性成分として投与され得る。本明細書に記載される方法に係る一部の実施形態では、本開示の1つ以上の化合物は、それを必要としている対象に追加の治療剤と同時に共投与するか又は任意の順序で逐次的に共投与することもできる。追加の治療剤は、典型的には、追加の抗癌治療剤、例えば有糸分裂阻害薬、アルキル化剤、代謝拮抗物質、抗腫瘍抗生物質、抗血管新生剤、トポイソメラーゼI及びII阻害薬、植物性アルカロイド、ホルモン作用剤及び拮抗薬、成長因子阻害薬、放射線、プロテインチロシンキナーゼ及び/又はセリン/トレオニンキナーゼ阻害薬などのシグナル伝達阻害薬、細胞周期阻害薬、生物学的反応修飾物質、酵素阻害薬、アンチセンスオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド誘導体、細胞毒性薬、免疫腫瘍学的薬剤などであり得る。一部の実施形態では、追加の抗癌剤は、アロマターゼ阻害薬、SERD又はSERMなど、内分泌剤である。一部の実施形態では、本開示の1つ以上の化合物は、PI3キナーゼ、mTOR、PARP、IDO、TDO、ALK、ROS、MEK、VEGF、FLT3、AXL、ROR2、EGFR、FGFR、Src/Abl、RTK/Ras、Myc、Raf、PDGF、AKT、c-Kit、erbB、CDK4/CDK6、CDK5、CDK7、CDK9、SMO、CXCR4、HER2、GLS1、EZH2又はHsp90の阻害薬又はPD-1又はPD-L1アンタゴニスト、OX40アゴニスト又は4-1BBアゴニストなどの免疫調節剤など、1つ以上の標的型薬剤と組み合わせて投与することができる。一部の実施形態では、本開示の1つ以上の化合物は、タモキシフェン、ドセタキセル、パクリタキセル、シスプラチン、カペシタビン、ゲムシタビン、ビノレルビン、エキセメスタン、レトロゾール、フルベストラント、アナストロゾール又はトラスツズマブなど、標準治療薬剤と組み合わせて投与することができる。好適な追加の抗癌治療剤としては、米国食品医薬品局などの規制機関によって適切な癌のために承認されたものなど、当技術分野で公知のもののいずれかが挙げられる。好適な追加の抗癌治療剤の幾つかの例としては、国際公開第2020/157652号パンフレット、米国特許出願公開第2018/0044344号明細書、国際公開第2008/122767号パンフレット等(その各々の内容は全体として参照により本明細書に援用される)に記載されるものも挙げられる。
【0054】
本明細書に記載される方法の用量を含む投与レジメンは、様々に異なり且つ調整され得、それは、治療の被投与者、治療下の障害、病態又は疾患及びその重症度、化合物を含有する組成物、投与時間、投与経路、治療継続期間、化合物の効力、そのクリアランス速度及び別の薬物が共投与されるか否かに依存し得る。
【0055】
定義
全ての部分及びその組み合わせについて、適切な価数が維持されているものと理解されることが意図される。
【0056】
本明細書における可変部分の具体的な実施形態は、同じ識別名を有する別の具体的な実施形態と同じであるか又は異なり得ると理解されることも意図される。
【0057】
記号
【化12】

は、結合として利用されるか、又は結合と垂直に(又は他に交差して)表示されるかにかかわらず、表示されている部分が分子の残りの部分に結び付いている点を示す。当業者であれば理解するであろうとおり、直ちに接してつながる1つ又は複数の基がつながっていることを示すために、記号
【化13】

の向こう側に示されることもあり得る点に留意しなければならない。
【0058】
具体的な官能基及び化学用語の定義について、以下に更に詳細に記載する。化学元素は、Periodic Table of the Elements,CAS version,Handbook of Chemistry and Physics,75th Ed.の内表紙に基づいて特定され、具体的な官能基は、概して、この文献に記載のとおりに定義される。加えて、有機化学の一般原理並びに具体的な官能基部分及び反応性については、Thomas Sorrell,Organic Chemistry,University Science Books,Sausalito,1999;Smith and March,March’s Advanced Organic Chemistry,5th Edition,John Wiley&Sons,Inc.,New York,2001;Larock,Comprehensive Organic Transformations,VCH Publishers,Inc.,New York,1989;及びCarruthers,Some Modern Methods of Organic Synthesis,3rd Edition,Cambridge University Press,Cambridge,1987に記載されている。例示的に挙げられる本明細書に記載の置換基によって本開示が限定されることは、決して意図されない。
【0059】
本明細書に記載される化合物は1つ以上の不斉中心を含み得るため、ひいては様々な立体異性体形態、例えばエナンチオマー及び/又はジアステレオマーで存在し得る。例えば、本明細書に記載される化合物は、個別のエナンチオマー、ジアステレオマー若しくは幾何異性体の形態であり得るか、又はラセミ混合物及び1つ以上の立体異性体が濃縮された混合物を含む立体異性体の混合物の形態であり得る。異性体は、キラル高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、キラル超臨界流体クロマトグラフ(SFC)並びにキラル塩の形成及び結晶化を含む、当業者に公知の方法によって混合物から単離することができか;又は好ましい異性体は、不斉合成によって調製することができる。例えば、Jacques et al.,Enantiomers,Racemates and Resolutions(Wiley Interscience,New York,1981);Wilen et al.,Tetrahedron 33:2725(1977);Eliel,Stereochemistry of Carbon Compounds(McGraw-Hill,NY,1962);及びWilen,Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions p.268(E.L.Eliel,Ed.,Univ.of Notre Dame Press,Notre Dame,IN 1972)を参照されたい。本開示は、加えて、本明細書に記載される化合物を他の異性体を実質的に含まない個別の異性体として包含し、代わりにラセミ混合物を含む様々な異性体の混合物として包含する。立体化学が具体的に図示されるとき、文脈上特に矛盾がない限り、その詳細なキラル中心又はアキシアルキラリティーに関して、化合物は、他の1つ又は複数の立体異性体が重量基準、HPLC又はSFC面積基準又は両方で20%未満、10%未満、5%未満、1%未満であるか又は検出不能な量であるなど、優勢には図示されるとおりの立体異性体として存在し得ることが理解されたい。立体異性体の存在及び/又は量は、キラルHPLC又はキラルSFCを用いることを含めて、当業者が本開示を考慮して決定することができる。当業者が理解するとおり、本明細書で化学構造に「」が示されるとき、文脈上特に矛盾がない限り、それは、他の1つ又は複数の立体異性体が重量基準、HPLC又はSFC面積基準又は両方で20%未満、10%未満、5%未満、1%未満であるか又は検出不能な量であるなど、対応するキラル中心が鏡像異性的に立体配置のいずれか一方に純粋であるか若しくは濃縮されているか、又は鏡像異性的に図示されるとおりの立体配置に純粋であるか若しくは濃縮されていることを示すものとする。立体化学が具体的に図示されていないとき及び化学構造中に「」が使用されないとき、文脈上特に矛盾がない限り、かかる構造には、他の異性体を実質的に含まない個別の異性体及びラセミ混合物を含む様々な異性体の混合物を含む、任意の立体異性体形態の対応する化合物が含まれることも理解されたい。
【0060】
値の範囲が挙げられるとき、その範囲内にある各値及び部分的範囲が包含されることが意図される。例えば、「C1~6」には、C、C、C、C、C、C、C1~6、C1~5、C1~4、C1~3、C1~2、C2~6、C2~5、C2~4、C2~3、C3~6、C3~5、C3~4、C4~6、C4~5及びC5~6が包含されることが意図される。
【0061】
本明細書で使用されるとき、用語「本開示の1つ又は複数の化合物」は、実施例E1~E7のいずれかに係る本明細書に記載される化合物のいずれか又は本明細書の表1に開示される具体的な化合物のいずれか、その同位体で標識された1つ又は複数の化合物(水素原子の1つ以上が、その天然の存在量を上回る存在量で重水素原子によって置換されている重水素化アナログなど、例えば化合物がCH基を有するときのCDアナログ)、その可能な位置異性体、可能な幾何異性体、可能な立体異性体(ジアステレオ異性体、エナンチオマー及びラセミ混合物を含む)、その互変異性体、その配座異性体、その薬学的に許容可能なエステル及び/又はその可能な薬学的に許容可能な塩(例えば、HCl塩などの酸付加塩又はNa塩などの塩基付加塩)を指す。明確に言えば、実施例E1~E7の化合物は、実施例の節において、E1、E2などからE7までの記号Eと、それに続く整数で表記される化合物を指す。本開示の化合物の水和物及び溶媒和物は、本開示の組成物であって、1つ又は複数の化合物がそれぞれ水又は溶媒と結び付いているものと見なされる。
【0062】
本開示の化合物は、自然界で最も豊富に見られる原子質量又は質量数と異なる原子質量又は質量数を有する1つ以上の原子を含有する同位体標識された又は同位体濃縮された形態で存在し得る。同位体は、放射性又は非放射性同位体であり得る。水素、炭素、リン、硫黄、フッ素、塩素及びヨウ素などの原子の同位体としては、限定されないが、H、H、13C、14C、15N、18O、32P、35S、18F、36Cl及び125Iが挙げられる。これら及び/又は他の原子の他の同位体を含有する化合物は、本発明の範囲内にある。
【0063】
本明細書で使用されるとき、化合物の「投与」、化合物を「投与すること」という語句又はこれらの他の変化形は、化合物又は化合物のプロドラッグを、治療を必要としている個体に提供することを意味する。
【0064】
用語「薬学的に許容可能な塩」は、妥当な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激作用、アレルギー反応などなしにヒト及び下等動物の組織と接触させて使用するのに好適であり、且つ妥当なリスク対効果比に見合った塩を指す。薬学的に許容可能な塩は、当技術分野で周知である。
【0065】
用語「互変異性体」又は「互変異性の」は、互変異性化から生じる2つ以上の相互変換可能な化合物を指す。互変異性体の厳密な比は、例えば、温度、溶媒及びpHを含む幾つかの要因に依存する。互変異性化は、当業者に公知である。例示的互変異性化としては、ケトからエノール、アミドからイミド、ラクタムからラクチム、エナミンからイミン及びエナミンから(別のエナミン)への互変異性化が挙げられる。
【0066】
用語「対象」(代わりに本明細書では「患者」と称される)は、本明細書で使用されるとき、治療、観察又は実験の対象となった動物、好ましくは哺乳類、最も好ましくはヒトを指す。
【0067】
本明細書で使用されるとき、用語「治療する」、「治療すること」、「治療」などは、疾患又は病態及び/又はそれに関連する症状を消失させること、低減すること又は改善することを指す。除外されるわけではないが、疾患又は病態を治療するというとき、疾患、病態又はそれに関連する症状が完全に消失する必要はない。本明細書で使用されるとき、用語「治療する」、「治療すること」、「治療」などには、「予防的治療」が含まれ得、これは、疾患若しくは病態の再発症又は疾患若しくは病態の再発がまだないものの、そのリスクがあるか又はそれを起こし易い対象において、疾患若しくは病態が再発症する可能性又は以前にコントロールされた疾患若しくは病態が再発する可能性を低減することを指す。用語「治療する」及び同義語は、治療有効量の、本明細書に記載される化合物を、かかる治療を必要としている対象に投与することを企図する。
【0068】
用語「有効量」は、本明細書に記載されるとおりの化合物又は化合物の組み合わせが、限定されないが、疾患の予防又は治療を含む意図される適用を達成するのに十分な量を指す。治療有効量は、意図される適用(インビトロ又はインビボ)又は治療下の対象及び疾患状態(例えば、対象の体重、年齢及び性別)、疾患状態の重症度、投与方法等に応じて異なり得、当業者が容易に決定することができる。この用語は、標的細胞及び/又は組織で特定の反応を引き起こすであろう用量にも適用される。具体的な用量は、選択された詳細な化合物、従うことになる投与レジメン、その化合物が他の化合物と組み合わせて投与されるかどうか、投与タイミング、それが投与される組織及び化合物を載せる物理的送達システムに応じて異なることになる。
【0069】
本明細書で使用されるとき、単数形「ある(a)」、「ある(an)」及び「その」には、それが明示的に述べられない限り又は文脈からそれが意図されないことが曖昧さの余地なく明らかでない限り、複数形への言及が含まれる。
【0070】
用語「及び/又は」は、本明細書で「A及び/又はB」などの語句で用いられるとき、A及びBの両方;A又はB;A(単独);及びB(単独)を含むことが意図される。同様に、用語「及び/又は」は、「A、B及び/又はC」などの語句で用いられるとき、以下の実施形態:A、B及びC;A、B又はC;A又はC;A又はB;B又はC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);及びC(単独)の各々を包含することが意図される。
【0071】
見出し及び小見出しは、便宜上及び/又は形式的対応上使用されるに過ぎず、主題の技術を限定するものではなく、主題の技術の記載についての解釈に関連して参照されるものではない。主題の開示の1つの見出し又は1つの小見出しの下に記載される特徴は、様々な実施形態において、他の見出し又は小見出しの下に記載される特徴と組み合わされ得る。更に、単一の見出し又は単一の小見出しの下にある全ての特徴が実施形態で一緒に使用されるとは限らない。
【実施例
【0072】
本明細書における実施形態の様々な出発材料、中間体及び化合物は、必要に応じて、沈殿、ろ過、結晶化、蒸発、蒸留及びクロマトグラフィーなどの従来技法を用いて単離し、精製することができる。これらの化合物の特徴付けは、融点、質量スペクトル、核磁気共鳴及び様々な他の分光学的分析によるなど、従来方法を用いて実施することができる。本実施例の節で使用される略語は、特に具体的に指示されない限り又は文脈上明白に反しない限り、当技術分野におけるその通常の意味を有すると理解されたい。これらの例は、説明的なものに過ぎず、特許請求される本発明を決して限定しない。
【0073】
本開示の代表的な化合物の合成手順は、2022年6月2日に国際公開第2022/111621号パンフレットとして公開されたPCT/CN2021/133429号明細書(この内容は、全て参照により本明細書に援用される)に詳細に記載された。本明細書では、キラル出発材料/中間体を使用した追加の合成手順を以下に記載する。
【0074】
(3S,4R)-3-((4-メトキシベンジル)オキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-4-オール(中間体I)の合成
【化14】

テトラヒドロフラン(400mL)中の(3R,4S,5S)-テトラヒドロ-2H-ピラン-2,3,4,5-テトラオール(中間体I-A、100g、0.67mol)及び4-ジメチルアミノピリジン(8.18g)の混合物に無水酢酸(328.5g)を窒素雰囲気下において10~20℃で滴下して加え、この反応混合物を20~30℃で20時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、次に酢酸エチル(800mL)及び氷水(800mL)で希釈した。有機相を飽和重炭酸ナトリウム水溶液(5%、800mL)及びブライン(15%、800mL)で洗浄し、次に減圧下で濃縮した。残渣をジクロロメタン(800mL)で溶解し、-5~5℃に冷却した。上記の溶液に臭化水素酸(酢酸中33%、328g)を加え、それを-5~5℃で18時間撹拌した。この反応混合物を10℃未満の氷水(800mL)で希釈し、有機相をブライン(15%、800mL)で洗浄し、減圧下で濃縮して、(3R,4S,5S)-2-ブロモテトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリイル三酢酸塩(中間体I-B、124g、55%)を淡黄色の固体として得た。
【0075】
酢酸(200mL)及びテトラヒドロフラン(200mL)中の酢酸銅(53.6g、0.29mol)の混合物に亜鉛末(115g、1.77mol)を窒素雰囲気下において40~50℃で少量ずつ加えた。次に混合物を0~5℃に冷却し、そこにテトラヒドロフラン(1.30L)、酢酸ナトリウム(24.2g、0.29mol)及び(3R,4S,5S)-2-ブロモテトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリイル三酢酸塩(中間体I-B、100g、0.29mol)を加えた。得られた混合物を窒素雰囲気下において15~20℃で16時間撹拌した。この反応混合物をろ過し、ろ液を飽和炭酸ナトリウム水溶液(2.0L)及び水(500mL)で洗浄した。有機相を減圧下で濃縮して、(3S,4R)-3,4-ジヒドロ-2H-ピラン-3,4-ジイル二酢酸塩(中間体I-C、48.4g、82%)を無色の油として得た。
【0076】
メチルアルコール(3.5L)中の(3S,4R)-3,4-ジヒドロ-2H-ピラン-3,4-ジイル二酢酸塩(中間体I-C、500g、2.50mol)の溶液に窒素雰囲気下でパラジウム(50g、炭素上5%)を加え、次に混合物を水素雰囲気下(1気圧)25℃で26時間撹拌した。反応混合物をろ過し、ろ過ケーキをメチルアルコール(500mL)で洗浄した。ろ液を減圧下で濃縮して、(3S,4R)-テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4-ジイル二酢酸塩(中間体I-D、480g、95%)を無色の油として得た。
【0077】
メチルアルコール(1.0L)中の(3S,4R)-テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4-ジイル二酢酸塩(中間体I-D、100g、0.49mol)の溶液に0~10℃でナトリウムメトキシド(2.70g、0.05mol)を加え、次に混合物を20~25℃で加温し、3時間撹拌した。反応混合物を硫酸水溶液(6mol/L)でpH6~8に調整し、次にろ過した。ろ過ケーキをメチルアルコール(50mL)で洗浄し、ろ液を減圧下で濃縮して、(3S,4R)-テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4-ジオール(中間体I-E、53.7g、92%、粗製)を淡黄色の油として得た。
【0078】
アセトニトリル(300mL)中の(3S,4R)-テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4-ジオール(中間体I-E、30.0g、粗製)、(4-フルオロフェニル)ボロン酸(35.5g、0.02mol)、4-メトキシベンジルクロリド(47.8g、0.30mol)、炭酸カリウム(42.1g、0.30mol)及びヨウ化カリウム(42.1g、0.25mol)の混合物を70~80℃で16時間撹拌した。この反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣を酢酸エチル(300mL)及び水(300mL)で溶解させた。水相を酢酸エチル(150mL)で抽出し、合わせた有機相をブライン(15%、300mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させて、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供して、(3S,4R)-3-((4-メトキシベンジル)オキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-4-オール(中間体I、15.2g)を黄色の油として得た。H NMR(400MHz,CDCl)δ 7.23-7.14(m,2H),6.87-6.75(m,2H),4.58-4.47(m,2H),3.91(dt,J=6.4,3.3Hz,1H),3.77-3.60(m,5H),3.54-3.39(m,3H),2.32(s,1H),1.90-1.83(m,1H),1.78-1.70(m,1H)。
【0079】
実施例1.4-((4-(((3S,4R)-3-ヒドロキシテトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-N-(メチル-d )ベンゼンスルホンアミド(E1)の合成
【化15】

ジクロロメタン(290mL)及びtert-ブタノール(290mL)中の2,4-ジクロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン(72.9g、0.34mol)の溶液に塩化亜鉛の溶液(364mL、テトラヒドロフラン中13%)を窒素雰囲気下において0~10℃で30分かけて滴下して加えた。この混合物を0~10℃で1時間撹拌し、続いて4-アミノ-N-(メチル-d)ベンゼンスルホンアミド(1.1、52.9g、0.28mol)及びジクロロメタン/tert-ブタノール(214mL、v/v=1/1、)中のトリエチルアミン(36.8g、50mL、0.36mol)の溶液を30分かけて滴下して加えた。得られた混合物を窒素雰囲気下において25~30℃で40時間撹拌した。この反応混合物を0~10℃に冷却し、水(800mL)でゆっくりとクエンチした。混合物を10~20℃にまで加温させて、30分間撹拌し、次にそれをろ過した。ろ過ケーキをジクロロメタン(100mL)で洗浄し、真空乾燥させて、4-((4-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-N-(メチル-d)ベンゼンスルホンアミドを黄色の固体として得た(1.2、79.0g、77%)。
【0080】
テトラヒドロフラン(80mL)中の4-((4-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-N-(メチル-d)ベンゼンスルホンアミド(1.2、4.08g、11.0mmol)及び(3S,4R)-3-((4-メトキシベンジル)オキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-4-オール(3.42g、14.3mmol、中間体I)の混合物にリチウムヘキサメチルジシラジド(27.5mL、テトラヒドロフラン中24%)を窒素雰囲気下で滴下して加え、この混合物を55~60℃で16時間撹拌した。反応混合物を0~10℃に冷却し、20%NHCl水溶液(16mL)及び水(16mL)でクエンチした。水相を2-メチルテトラヒドロフラン(30mL×2)で抽出し、合わせた有機相をブライン(30mL)で洗浄し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=4:1~1:1)に供して、4-((4-(((3S,4R)-3-((4-メトキシベンジル)オキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-N-(メチル-d)ベンゼンスルホンアミドを黄色の固体として得た(1.3、4.38g、70%)。
【0081】
ジクロロメタン(70mL)及び水(10mL)中の4-((4-(((3S,4R)-3-((4-メトキシベンジル)オキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-N-(メチル-d)ベンゼンスルホンアミド(1.3、3.50g、6.12mmol)の溶液に2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン(1.81g、7.97mmol)を加え、この混合物を15~20℃で5時間撹拌した。反応混合物を30℃未満で真空濃縮した。残渣を2-メチルテトラヒドロフラン(35mL)で再び溶解させた後、続いて20%チオ硫酸ナトリウム水溶液(35mL)を加え、この混合物を15~20℃で30分間撹拌した。有機相を5%重炭酸ナトリウム水溶液(35mL×2)及びブライン(35mL)で洗浄し、次にそれを減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:酢酸エチル=1:1~1:2)に供して、4-((4-(((3S,4R)-3-ヒドロキシテトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)オキシ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-N-(メチル-d)ベンゼンスルホンアミドを得た(E1、3.36g、83%)。LC-MS(ESI):m/z 452.2 [M+H]H NMR(400MHz,DMSO-d)δ 10.50(s,lH),8.60(s,lH),7.92(d,J=8.8Hz,2H),7.73(d,J=8.7Hz,2H),7.27(s,lH),5.62-5.56(m,lH),5.05(d,J=4.9Hz,lH),3.94-3.85(m,lH),3.69-3.49(m,4H),2.10-1.81(m,2H)。
【0082】
この例示の同様の合成方法論(異なる出発材料、中間体又は立体異性体による)及び経路を用いてキラル出発材料/中間体で調製した追加の例示的化合物についてのLC-MS及びH NMRを以下の表Aに提供する。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
【表3】
【0086】
本開示の代表的な化合物の生物学的活性について、2022年6月2日に国際公開第2022/111621号パンフレットとして公開されたPCT/CN2021/133429号明細書の生物学的実施例1に記載されるものに従い試験した。例示的結果をIC50計算値として提示し、以下の表2に提示する。表2では、「A」は、10nM未満のIC50計算値を表し;「B」は、10nM以上100nM未満のIC50計算値を表し;「C」は、100nM以上1μM未満のIC50計算値を表し;及び「D」は、1μM以上のIC50計算値を表す。
【0087】
【表4】
【0088】
発明の概要及び要約書の節は、1人又は複数の本発明者によって企図されるとおりの1つ以上の、但し全てではない本発明の例示的実施形態を示し得、従って決して本発明及び添付の特許請求の範囲を限定することを意図されない。
【0089】
本発明は、指定される官能基及びそれらの関係の実施を例示する官能性ビルディングブロックを用いて上記で記載されている。それらの官能性ビルディングブロックの境界は、本明細書では、説明に好都合となるよう任意に定義されている。指定される官能基及びそれらの関係が適切に果たされる限り、別の境界を定義することができる。
【0090】
属として記載される本発明の態様に関して、個別の種は、全て個別に本発明の別個の態様と見なされる。本発明の態様がある特徴「を含む」と記載される場合、その特徴「からなる」又はその特徴「から本質的になる」実施形態も企図される。
【0091】
具体的な実施形態についての前述の記載から、本発明の一般的な性質が十分に完全に明らかになるであろうため、他者は、当技術分野の技能の範囲内にある知識を適用することにより、過度の実験を行うことなく、本発明の一般的概念から逸脱せずにかかる具体的な実施形態を様々な適用のために容易に変更及び/又は適合させることができる。従って、かかる適合形態及び変更形態は、本明細書に提供される教示及び指針に基づき、開示される実施形態の均等物の意味及び範囲に含まれることが意図される。本明細書における表現法又は用語法は、限定ではなく、説明を目的とし、そのため、本明細書の用語法又は表現法は、当業者が本教示及び指針を踏まえて解釈すべきであることを理解されたい。
【0092】
本発明の広さ及び範囲は、上記に記載される例示的実施形態によって限定されてはならない。
【0093】
本明細書に記載される様々な態様、実施形態及び選択肢の全ては、あらゆる変形形態に組み合わされ得る。
【0094】
本明細書で言及される全ての刊行物、特許及び特許出願は、各個別の刊行物、特許又は特許出願が参照により援用されることが具体的且つ個別に指示されたものとするのと同程度に参照により本明細書に援用される。本明細書中の用語のいずれかの意味又は定義が、参照により援用される文献中の同じ用語の任意の意味又は定義と矛盾する限り、本明細書中でその用語に割り当てられた意味又は定義が優先するものとする。
【国際調査報告】