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特表2024-541534酵母タンパク質、その組成物及びその製造方法並びに使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】酵母タンパク質、その組成物及びその製造方法並びに使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/395 20060101AFI20241031BHJP
   A23J 1/18 20060101ALI20241031BHJP
   A23J 3/20 20060101ALI20241031BHJP
   A23L 33/195 20160101ALI20241031BHJP
   C12P 21/06 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C07K14/395
A23J1/18
A23J3/20
A23L33/195
C12P21/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531424
(86)(22)【出願日】2022-11-21
(85)【翻訳文提出日】2024-07-24
(86)【国際出願番号】 CN2022133213
(87)【国際公開番号】W WO2023093672
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】202111418178.4
(32)【優先日】2021-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523000972
【氏名又は名称】安▲チー▼酵母股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】524197633
【氏名又は名称】安▲チー▼紐特股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】陳 智仙
(72)【発明者】
【氏名】熊 涛
(72)【発明者】
【氏名】朱 銀宏
(72)【発明者】
【氏名】張 海波
(72)【発明者】
【氏名】▲ゴン▼ 世禹
(72)【発明者】
【氏名】董 運海
【テーマコード(参考)】
4B018
4B064
4H045
【Fターム(参考)】
4B018LB02
4B018LB10
4B018MD14
4B018MD19
4B018MD29
4B018MD36
4B018MD49
4B018MD53
4B018MD57
4B018MD81
4B018MD90
4B018MD94
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF12
4B064AG01
4B064CA06
4B064CA21
4B064CB06
4B064CC06
4B064CC07
4B064CE16
4B064DA01
4B064DA10
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA53
4H045CA15
4H045EA01
4H045EA20
4H045FA70
(57)【要約】
本発明は、医療の技術分野に関し、具体的には、酵母タンパク質、その組成物及びその製造方法並びに使用に関する。本発明の酵母タンパク質は、外側がザイモサンによって包まれ、球状又は楕円球状を呈し、乾燥重量パーセントに準拠すると、前記酵母タンパク質のタンパク質の含有量が70%以上であり、ザイモサンの含有量が5~30%である。本発明の酵母タンパク質の胃消化率は、大豆タンパク質分離物及びホエータンパク質より明らかに低く、食後の満腹感はホエータンパク質を上回り、緩徐に消化される特徴を有するため、緩徐消化型タンパク質である。また、本発明の酵母タンパク質は、人体に必須な8種類のアミノ酸及び2種類の準必須アミノ酸を含む18種類のアミノ酸を含有し、アミノ酸の種類が揃っているため、完全タンパク質に属する。緩徐消化型タンパク質として、哺乳動物に経腸で投与して食後の血漿アミノ酸レベルを調整する組成物の製造に用いることができる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側がザイモサンによって包まれ、球状又は楕円球状を呈し、ザイモサンの乾燥重量を100%とする場合は、タンパク質の含有量が70%以上であり、ザイモサンの含有量が5~30%であることを特徴とする酵母タンパク質。
【請求項2】
前記タンパク質が、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、トレオニン、システイン、トリプトファン、バリン、アスパラギン酸、アルギニン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、アラニン、セリン及びプロリンを含有することを特徴とする請求項1に記載の酵母タンパク質。
【請求項3】
酵母タンパク質の重量に準拠すると、イソロイシンの含有量が60mg/g以上であり、ロイシンの含有量が90mg/g以上であり、リシンの含有量が96mg/g以上であり、メチオニンの含有量が25mg/g以上であり、フェニルアラニンの含有量が49mg/g以上であり、チロシンの含有量が49mg/g以上であり、トレオニンの含有量が50mg/g以上であり、システインの含有量が14mg/g以上であり、トリプトファンの含有量が13mg/g以上であり、バリンの含有量が55mg/g以上であり、アスパラギン酸の含有量が111mg/g以上であり、アルギニンの含有量が53mg/g以上であり、グルタミン酸の含有量が109mg/g以上であり、グリシンの含有量が47mg/g以上であり、ヒスチジンの含有量が30mg/g以上であり、アラニンの含有量が59mg/g以上であり、セリンの含有量が52mg/g以上であり、プロリンの含有量が27mg/g以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の酵母タンパク質。
【請求項4】
(1)酵母に酵素を加えて酵素分解を行うステップと、
(2)ステップ(1)で得た酵素分解液に対して熱抽出し、遠心分離して重相を取り出して酵母タンパク質を得るステップとを含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の酵母タンパク質の製造方法。
【請求項5】
ステップ(1)に記載の酵素が、α-マンナナーゼ及び/又はβ-グルカナーゼから選ばれ、好ましくは、前記酵素の添加量が、酵母含有量の0.05~0.5wt%であり、0.1~0.3wt%であることが好ましく、より好ましくは、前記酵素分解の温度が、40~70℃であり、50~60℃であることが好ましく、さらに好ましくは、前記酵素分解の時間が、8~24時間であり、14~18時間であることが好ましいことを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
ステップ(1)において酵母を質量濃度5~15%の溶液、好ましくは8~12%の溶液として調製し、好ましくは、前記酵母が、ビール酵母又はサッカロミセス・セレビシエであることを特徴とする請求項4又は5に記載の製造方法。
【請求項7】
ステップ(2)に記載の熱抽出のpHが、7.0~8.0であり、好ましくは7.5~7.7であり、好ましくは、前記熱抽出の温度が、70~90℃であり、好ましくは75~80℃であり、より好ましくは、前記熱抽出の時間が、1~2時間であることを特徴とする請求項4~6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記酵母タンパク質を乾燥させるステップであって、酵母タンパク質を質量濃度5~20%の分散液として調製し、次に乾燥して得るステップをさらに含み、好ましくは、前記分散液の質量濃度が、10~15%であることを特徴とする請求項4~7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
請求項4~8のいずれか一項に記載の製造方法で製造されることを特徴とする酵母タンパク質。
【請求項10】
少なくとも請求項1~3又は請求項9のいずれか一項に記載の酵母タンパク質を含むことを特徴とする酵母タンパク質組成物。
【請求項11】
前記酵母タンパク質組成物が、炭水化物、脂質及び遊離アミノ酸から選ばれる1種又は2種以上をさらに含み、好ましくは、前記炭水化物が、コーンシロップ、マルトデキストリン、スクロース、オーツ麦粉、トウモロコシ粉、デーツパウダー、アズキパウダー、葛粉、かぼちゃパウダー、チアシード及び乳糖のうちの1種又は2種以上であり、より好ましくは、前記脂質が、ヤシ油、アブラナ油、コーン油及び大豆レシチンのうちの1種又は2種以上であり、さらに好ましくは、前記遊離アミノ酸が、アルギニン、L-シスチン、L-グルタミン、L-グリシン、L-ヒスチジン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リシン、L-メチオニン、L-プロリン、L-トリプトファン、L-チロシン及びL-バリンのうちの1種又は2種以上であることを特徴とする請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
哺乳動物に経腸で投与して食後の血漿アミノ酸レベルを調整する組成物の製造における請求項1~3若しくは請求項9のいずれか一項に記載の酵母タンパク質又は請求項10若しくは11に記載の組成物の使用。
【請求項13】
前記酵母タンパク質又は酵母タンパク質組成物が、食後のタンパク質の獲得を増加させる組成物を製造するために用いられることを特徴とする請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記酵母タンパク質又は酵母タンパク質組成物が、特定の器官及び/又は特定の酵素の代謝の過負荷を軽減させる組成物を製造するために用いられることを特徴とする請求項12に記載の使用。
【請求項15】
前記酵母タンパク質又は酵母タンパク質組成物が、毎日の食物摂取量を制限する組成物を製造するために用いられることを特徴とする請求項12に記載の使用。
【請求項16】
前記酵母タンパク質又は酵母タンパク質組成物が、アミノ酸の代謝における特定の機能障害を埋める組成物を製造するために用いられることを特徴とする請求項12に記載の使用。
【請求項17】
前記酵母タンパク質又は酵母タンパク質組成物が、組織の再生を向上させる組成物を製造するために用いられることを特徴とする請求項12に記載の使用。
【請求項18】
重量百分率で表示すると、成分として、請求項1~3又は請求項9のいずれか一項に記載の酵母タンパク質1~10%、炭水化物20~30%、脂質化合物5~15%を含み、残りは水であることを特徴とする腎機能障害患者用の食品。
【請求項19】
重量部で表示すると、成分として、請求項1~3又は請求項9のいずれか一項に記載の酵母タンパク質5~20部、オーツ麦粉5~20部、トウモロコシ粉5~25部、デーツパウダー5~20部、アズキパウダー5~10部、葛粉5~10部、かぼちゃパウダー5~10部、チアシード10~30部を含むことを特徴とする食事置き換えパウダー。
【請求項20】
重量百分率で表示すると、成分として、請求項1~3又は請求項9のいずれか一項に記載の酵母タンパク質1~5%、遊離アミノ酸1~5%、炭水化物10~20%、脂質化合物1~5%を含み、残りは水であることを特徴とするフェニルケトン尿症患者用の食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療の技術分野に関し、具体的には、酵母タンパク質、その組成物及びその製造方法並びに使用に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質は、生命活動に欠かせない1種の物質であり、細胞を構成する基本的な有機物である。人体は、タンパク質を摂取し続けることで体のタンパク質の更新を維持する必要がある。摂取されたタンパク質は、体内で消化によってアミノ酸に加水分解されて吸収された後、人体に必要なタンパク質が合成されると同時に、新しいタンパク質は代謝及び分解され続けることで、常に動的バランスがとれている。現代社会の発展に伴い、人間の生活におけるニーズはますます多様化している。より健康的なライフスタイルに対応するために、また、異なる職業、異なる年齢、異なるニーズの集団に対応するために、体のタンパク質のバランスを長時間に維持する食品は注目の的になりつつある。緩徐消化型タンパク質は、このようなタンパク質として、食後のタンパク質の獲得を増加させ、特定の器官又は特定の酵素代謝の過負荷を軽減させ、毎日の食物摂取量を制限し、組織の再生を向上させ、アミノ酸の代謝における特定の機能障害を埋めるなどの効果を持っている。緩徐消化機能を持つタンパク質を見つけることは急務となっている。
【0003】
特許文献1にはプロテインペプチド-緩徐消化型デンプン顆粒の製造方法が提供され、米由来デンプン、プロテインペプチド及び水を混合した後に均質化することにより、プロテインペプチド-緩徐消化型デンプン複合体が得られ、複合体を噴霧乾燥してプロテインペプチド-緩徐消化型デンプン顆粒が得られる。
【0004】
特許文献2には乳児用食品の組成物が開示され、緩徐消化型タンパク質が含有され、そのうち、もともと消化の速度が遅いカゼインが含まれており、消化の速度を遅らせるために、前記タンパク質が予め変性されている。
【0005】
酵母タンパク質は、天然の酵母に存在する良質な完全タンパク質である。酵母タンパク質には完全なアミノ酸群が含有され、人体に必須な8種類のアミノ酸が含まれており、特に、穀物由来タンパク質における含有量が少ないリシンは、酵母における含有量が高い。また、酵母は、アミノ酸の比率が国連食糧農業機関(FAO)が推奨する理想的なアミノ酸組成に近いため、その栄養価が高い。現在、酵母タンパク質は、主に食品及び飼料の分野に使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】中国特許出願公開第107802001号明細書
【特許文献2】国際公開第1997005785号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする技術的課題は、従来技術には緩徐消化型の酵母タンパク質が欠如していることである。
【0008】
従来技術に存在する欠点に対し、本発明の目的その1は、外側がザイモサンによって包まれ、球状又は楕円球状を呈し、乾燥重量を100%とする場合は、タンパク質の含有量が70%以上であり、ザイモサンの含有量が5~30%であり、且つ胃消化率が大豆タンパク質分離物及びホエータンパク質より明らかに低い、酵母タンパク質を提供することであり、本発明の目的その2は、上記の酵母の製造方法を提供することであり、本発明の目的その3は、上記の酵母の組成物を提供することであり、本発明の目的その4は、哺乳動物に経腸で投与して食後の血漿アミノ酸レベルを調整する組成物の製造に用いることができる、上記の酵母タンパク質及びその組成物の緩徐消化型タンパク質としての使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の技術的解決手段は、次のとおりである。
本発明は、外側がザイモサンによって包まれ、球状又は楕円球状を呈し、乾燥重量を100%とする場合は、タンパク質の含有量が70%以上であり、ザイモサンの含有量が5~30%である、酵母タンパク質を提供する。
【0010】
好ましくは、前記タンパク質が、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、トレオニン、システイン、トリプトファン、バリン、アスパラギン酸、アルギニン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、アラニン、セリン及びプロリンを含有する。
【0011】
好ましくは、酵母タンパク質の重量に準拠すると、前記イソロイシンの含有量が60mg/g以上であり、前記ロイシンの含有量が90mg/g以上であり、前記リシンの含有量が96mg/g以上であり、前記メチオニンの含有量が25mg/g以上であり、前記フェニルアラニンの含有量が49mg/g以上であり、前記チロシンの含有量が49mg/g以上であり、前記トレオニンの含有量が50mg/g以上であり、前記システインの含有量が14mg/g以上であり、前記トリプトファンの含有量が13mg/g以上であり、前記バリンの含有量が55mg/g以上であり、前記アスパラギン酸の含有量が111mg/g以上であり、前記アルギニンの含有量が53mg/g以上であり、前記グルタミン酸の含有量が109mg/g以上であり、前記グリシンの含有量が47mg/g以上であり、前記ヒスチジンの含有量が30mg/g以上であり、前記アラニンの含有量が59mg/g以上であり、前記セリンの含有量が52mg/g以上であり、前記プロリンの含有量が27mg/g以上である。
【0012】
本発明は、また、
(1)酵母に酵素を加えて酵素分解を行うステップと、
(2)ステップ(1)で得た酵素分解液に対して熱抽出し、遠心分離して重相を取り出して酵母タンパク質を得るステップとを含む、上記の酵母タンパク質の製造方法を提供する。
【0013】
好ましくは、上記の製造方法で、ステップ(1)に記載の酵素が、α-マンナナーゼ及び/又はβ-グルカナーゼから選ばれ、好ましくは、前記酵素の添加量が、酵母含有量の0.05~0.5wt%であり、0.1~0.3wt%であることが好ましく、より好ましくは、前記酵素分解の温度が、40~70℃であり、50~60℃であることが好ましく、さらに好ましくは、前記酵素分解の時間が、8~24時間であり、14~18時間であることが好ましい。
【0014】
好ましくは、上記の製造方法で、ステップ(1)において酵母を質量濃度5~15%の溶液、好ましくは8~12%の溶液として調製し、好ましくは、前記酵母が、ビール酵母又はサッカロミセス・セレビシエである。
【0015】
好ましくは、上記の製造方法で、ステップ(2)に記載の熱抽出のpHが、7.0~8.0であり、好ましくは7.5~7.7であり、好ましくは、前記熱抽出の温度が、70~90℃であり、好ましくは75~80℃であり、より好ましくは、前記熱抽出の時間が、1~2時間である。
【0016】
好ましくは、上記の製造方法で、前記酵母タンパク質を乾燥させるステップであって、酵母タンパク質を質量濃度5~20%の分散液として調製し、次に乾燥して得るステップをさらに含み、好ましくは、前記分散液の質量濃度が、10~15%である。
【0017】
本発明は、また、上記の製造方法で製造された酵母タンパク質を提供する。
【0018】
本発明は、また、少なくとも上記の酵母タンパク質を含む酵母タンパク質組成物を提供する。
【0019】
好ましくは、前記酵母タンパク質組成物が、炭水化物、脂質及び遊離アミノ酸から選ばれる1種又は2種以上をさらに含み、好ましくは、前記炭水化物が、コーンシロップ、マルトデキストリン、スクロース、オーツ麦粉、トウモロコシ粉、デーツパウダー、アズキパウダー、葛粉、かぼちゃパウダー、チアシード及び乳糖のうちの1種又は2種以上であり、より好ましくは、前記脂質が、ヤシ油、アブラナ油、コーン油及び大豆レシチンのうちの1種又は2種以上であり、さらに好ましくは、前記遊離アミノ酸が、アルギニン、L-シスチン、L-グルタミン、L-グリシン、L-ヒスチジン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リシン、L-メチオニン、L-プロリン、L-トリプトファン、L-チロシン及びL-バリンのうちの1種又は2種以上である。
【0020】
本発明は、また、哺乳動物に経腸で投与して食後の血漿アミノ酸レベルを調整する組成物の製造における上記の酵母タンパク質又は上記の酵母タンパク質組成物の用途を提供する。
【0021】
好ましくは、前記酵母タンパク質又は酵母タンパク質組成物が、食後のタンパク質の獲得を増加させる組成物を製造するために用いられる。
【0022】
好ましくは、前記酵母タンパク質又は酵母タンパク質組成物が、特定の器官及び/又は特定の酵素の代謝の過負荷を軽減させる組成物を製造するために用いられる。
【0023】
好ましくは、前記酵母タンパク質又は酵母タンパク質組成物が、毎日の食物摂取量を制限する組成物を製造するために用いられる。
【0024】
好ましくは、前記酵母タンパク質又は酵母タンパク質組成物が、アミノ酸の代謝における特定の機能障害を埋める組成物を製造するために用いられる。
【0025】
好ましくは、前記酵母タンパク質又は酵母タンパク質組成物が、組織の再生を向上させる組成物を製造するために用いられる。
【0026】
本発明は、また、重量百分率で表示すると、成分として、上記の酵母タンパク質1~10%、炭水化物20~30%、脂質化合物5~15%を含み、残りは水である、腎機能障害患者用の食品を提供する。
【0027】
本発明は、また、重量部で表示すると、成分として、上記の酵母タンパク質5~20部、オーツ麦粉5~20部、トウモロコシ粉5~25部、デーツパウダー5~20部、アズキパウダー5~10部、葛粉5~10部、かぼちゃパウダー5~10部、チアシード10~30部を含む、食事置き換えパウダーを提供する。
【0028】
本発明は、また、重量百分率で表示すると、成分として、上記の酵母タンパク質1~5%、遊離アミノ酸1~5%、炭水化物10~20%、脂質化合物1~5%を含み、残りは水である、フェニルケトン尿症患者用の食品を提供する。
【発明の効果】
【0029】
本発明の有益な効果は、次のとおりである。
本発明は、酵素分解後に熱抽出するプロセスを採用することにより、酵母タンパク質は依然として酵母細胞の構造を有しており、タンパク質の外側が1層のザイモサンによって包まれており、当該ザイモサンの存在により体内の消化酵素の攻撃部位が遮られ、タンパク質の消化が遅くなり、また、熱抽出は、酵母中の核酸を除去することができ、酵母タンパク質中の核酸含有量を低減させている。
【0030】
本発明の酵母タンパク質は、外側がザイモサンによって包まれ、球状又は楕円球状を呈し、酵母タンパク質中のタンパク質の含有量が70%以上であり、ザイモサンの含有量が5~30%であり、また、その胃消化率は大豆タンパク質分離物及びホエータンパク質より明らかに低く、食後の満腹感はホエータンパク質を上回り、緩徐に消化される特徴を有するため、緩徐消化型タンパク質である。また、本発明の酵母タンパク質は、人体に必須な8種類のアミノ酸及び2種類の準必須アミノ酸を含む18種類のアミノ酸を含有し、アミノ酸の種類が揃っているため、完全タンパク質に属する。緩徐消化型タンパク質として、哺乳動物に経腸で投与して食後の血漿アミノ酸レベルを調整する組成物の製造に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】異なる検査時点の実施例1で製造された酵母タンパク質、比較例1で製造された酵母タンパク質、大豆タンパク質分離物及びホエータンパク質の消化又は吸収のパーセントである。
図2】試験例2の満腹感試験の飢餓感曲線である。
図3】試験例2の満腹感試験の飢餓曲線である。
図4】試験例2の満腹感試験の満腹感曲線である。
図5】実施例1で製造された酵母タンパク質の走査型電子顕微鏡画像であり、倍率は1000倍である。
図6】実施例1で製造された酵母タンパク質の走査型電子顕微鏡画像であり、倍率は2000倍である。
図7】実施例1で製造された酵母タンパク質の走査型電子顕微鏡画像であり、倍率は10000倍である。
図8】比較例1で製造された酵母タンパク質の走査型電子顕微鏡画像であり、倍率は3000倍である。
図9】大豆タンパク質分離物の走査型電子顕微鏡画像であり、倍率は300倍である。
図10】実施例1の原料のサッカロミセス・セレビシエパウダーの走査型電子顕微鏡画像であり、倍率は2000倍である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の目的、技術的解決手段及び利点が一層明瞭になるよう、以下、本発明の技術的解決手段を詳細に記述する。言うまでもないが、記述される実施例は、本発明の一部の実施例に過ぎず、全ての実施例ではない。当業者が本発明の実施例に基づいて、新規性のある作業をすることなく得ている他の実施形態の全ては、本発明の保護範囲に属する。
【0033】
本発明は、外側がザイモサンによって包まれ、球状又は楕円球状を呈し、乾燥重量を100%とする場合は、タンパク質の含有量が70%以上であり、ザイモサンの含有量が5~30%である、酵母タンパク質を提供する。本発明の酵母タンパク質は、依然として酵母細胞の構造を有しており、タンパク質の外側が1層のザイモサンによって包まれており、当該ザイモサンの存在により体内の消化酵素の攻撃部位が遮られ、タンパク質の消化が遅くなる。当該酵母タンパク質の胃消化率は、大豆タンパク質分離物及びホエータンパク質より明らかに低く、食後の満腹感はホエータンパク質を上回り、緩徐に消化される特徴を有するため、緩徐消化型タンパク質である。
【0034】
ただし、前記タンパク質は、イソロイシン(IIe)、ロイシン(Leu)、リシン(Lys)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、チロシン(Tyr)、トレオニン(Thr)、システイン(Cys)、トリプトファン(Trp)、バリン(Val)、アスパラギン酸(Asp)、アルギニン(Arg)、グルタミン酸(Glu)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、アラニン(Ala)、セリン(Ser)及びプロリン(Pro)を含有し、好ましくは、酵母タンパク質の重量に準拠すると、前記イソロイシンの含有量が60mg/g以上であり、前記ロイシンの含有量が90mg/g以上であり、前記リシンの含有量が96mg/g以上であり、前記メチオニンの含有量が25mg/g以上であり、前記フェニルアラニンの含有量が49mg/g以上であり、前記チロシンの含有量が49mg/g以上であり、前記トレオニンの含有量が50mg/g以上であり、前記システインの含有量が14mg/g以上であり、前記トリプトファンの含有量が13mg/g以上であり、前記バリンの含有量が55mg/g以上であり、前記アスパラギン酸の含有量が111mg/g以上であり、前記アルギニンの含有量が53mg/g以上であり、前記グルタミン酸の含有量が109mg/g以上であり、前記グリシンの含有量が47mg/g以上であり、前記ヒスチジンの含有量が30mg/g以上であり、前記アラニンの含有量が59mg/g以上であり、前記セリンの含有量が52mg/g以上であり、前記プロリンの含有量が27mg/g以上である。
【0035】
本発明は、また、
(1)酵母に酵素を加えて酵素分解を行うステップと、
(2)ステップ(1)で得た酵素分解液に対して熱抽出し、遠心分離して重相を取り出して酵母タンパク質を得るステップとを含む、上記の酵母タンパク質の製造方法を提供する。
【0036】
ただし、ステップ(1)に記載の酵素は、α-マンナナーゼ及び/又はβ-グルカナーゼから選ばれ、前記酵素の添加量は、酵母含有量の0.05~0.5wt%であり、0.1~0.3wt%であることが好ましく、前記酵素分解の温度は、40~70℃であり、50~60℃であることが好ましく、前記酵素分解の時間は、8~24時間であり、14~18時間であることが好ましい。
【0037】
ステップ(1)で酵母の酵素分解前には、酵母を質量濃度5~15%の溶液、好ましくは8~12%として調製することをさらに含み、前記酵母は、ビール酵母又はサッカロミセス・セレビシエである。
【0038】
ステップ(2)に記載の熱抽出のpHは、7.0~8.0であり、好ましくは7.5~7.7であり、好ましくは、前記熱抽出の温度が、70~90℃であり、75~80℃であることが好ましく、より好ましくは、前記熱抽出の時間が、1~2時間である。
【0039】
上記の酵母タンパク質の製造方法は、前記酵母タンパク質を乾燥させるステップであって、酵母タンパク質を質量濃度5~20%の分散液として調製し、次に乾燥して得るステップをさらに含み、好ましくは、前記分散液の質量濃度が、10~15%である。
【0040】
本発明は、また、上記の製造方法で製造された酵母タンパク質を提供する。
【0041】
本発明は、また、少なくとも上記の酵母タンパク質を含む酵母タンパク質組成物を提供する。
【0042】
ただし、前記酵母タンパク質組成物は、炭水化物、脂質及び遊離アミノ酸から選ばれる1種又は2種以上をさらに含み、前記炭水化物は、コーンシロップ、マルトデキストリン、スクロース、オーツ麦粉、トウモロコシ粉、デーツパウダー、アズキパウダー、葛粉、かぼちゃパウダー、チアシード及び乳糖のうちの1種又は2種以上であり、前記脂質は、ヤシ油、アブラナ油、コーン油及び大豆レシチンのうちの1種又は2種以上であり、前記遊離アミノ酸は、アルギニン、L-シスチン、L-グルタミン、L-グリシン、L-ヒスチジン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リシン、L-メチオニン、L-プロリン、L-トリプトファン、L-チロシン及びL-バリンのうちの1種又は2種以上である。
【0043】
本発明は、また、哺乳動物に経腸で投与して食後の血漿アミノ酸レベルを調整する組成物の製造における上記の酵母タンパク質又は酵母タンパク質組成物の用途を提供する。これにより、
1)食後のタンパク質の獲得を増加させ、且つ/又は
2)特定の器官及び/又は特定の酵素の代謝の過負荷を避け、且つ/又は
3)これらのタンパク質の満腹効果で毎日の食物摂取量を制限し、且つ/又は
4)アミノ酸の代謝における特定の機能障害を埋め、より具体的に言えば、酵素の欠損を埋め、且つ/又は
5)組織の再生を向上させる。
【0044】
本発明の酵母タンパク質は、緩徐消化型タンパク質として、特定の器官及び/又は特定の酵素の代謝の過負荷を避けることができる。様々な含窒素化合物(タンパク質、ペプチド、アミノ酸)を含有する食事を食べた後、肝臓は、前記食事からの一部のアミノ酸を分解することによりアミノ酸の濃度を生理的限界に維持しようとする。食事からのアミノ酸が適量であることは、病気にかかっている器官の必要以上の運動を低減させ、これによってそれが過剰に機能することを避けることができる。腎障害患者にはタンパク質の摂取を厳しく制限する必要があり、一般的には低タンパク質食事をとって、窒素代謝物の生成を低減させる必要があり、緩徐消化型タンパク質を摂取するのは、腎障害患者には、後に腎臓から排泄する窒素の生成量を低減させ、この生成量を長時間にわたって配分し、このようなタンパク質の満腹効果を向上させ、これによりこのような食事により良い容忍性を得るという効果がある。
【0045】
特定の消化酵素が欠乏している、例えば、トリプシンが欠乏している集団に対して、本発明の酵母タンパク質の摂取は、消化の過程を改善するために役立つ。このような利点は、膵臓の当該タンパク質加水分解酵素が加水分解する基質の量を低減させてより良好な酵素/基質比を得ることで保証される。
【0046】
アミノ酸の代謝に機能障害があり且つより具体的に言えば、これらのアミノ酸分解経路に酵素が欠損している疾患(例えば、フェニルアラニン血症及びフェニルケトン尿症、高チロシン血症、ヒスチジン血症、ホモシスチン尿症、分岐鎖アミノ酸代謝異常症)のうち、これらのアミノ酸又はそれらの1種の分解産物の蓄積で神経学的及び臨床症候群が起きる。このような蓄積を避けるために、食事療法が行われる。それは、当該疾患の発生に関連するアミノ酸を含まず、又は非常に少量を含有する食事からなる。この集団に向けて開発された特定の製品には、遊離アミノ酸が含有されるか、又は高度に加水分解されたタンパク質が含有されている。しかしながら、これらの混合物には快い味がない。また、製品の高い透過性による下痢を避けるために、消費者は少量の食事からこれらの製品を摂取する必要がある。本発明の酵母タンパク質は、消化速度が緩徐でありながら関連アミノ酸のタンパク質を少量に備えるため食事の味が改善され、その忍容性は向上し、これによって下痢のリスクが制限され、血漿中のアミノ酸の変動が避けられ、また、食後のタンパク質の獲得は増加している。
【0047】
本発明の酵母タンパク質は、緩徐消化型タンパク質として、高齢者に用いることも考えられ、若年者と比べて、高齢者では、体内のタンパク質の量が低減しているため、自律性、攻撃耐性(疾患、様々な逆境)及び攻撃を受けた後の回復能力に対する影響が低減するだろうが、緩徐消化型タンパク質は、緩徐に消化されることで体にタンパク質を供給し続けることができる。また、加齢に伴い腎機能は低減する。したがって、前記緩徐消化型タンパク質は、タンパク質の量をより良好に保持することで、腎の過負荷を避けることができる。
【0048】
本発明は、また、重量百分率で表示すると、上記の酵母タンパク質1~10%、炭水化物20~30%、脂質化合物5~15%を含み、残りは水である、腎機能障害患者用の食品を提供する。
【0049】
本発明は、また、重量部で表示すると、成分として、上記の酵母タンパク質5~20部、オーツ麦粉5~20部、トウモロコシ粉5~25部、デーツパウダー5~20部、アズキパウダー5~10部、葛粉5~10部、かぼちゃパウダー5~10部、チアシード10~30部を含む、食事置き換えパウダーを提供する。
【0050】
本発明は、また、重量百分率で表示すると、上記の酵母タンパク質1~5%、遊離アミノ酸1~5%、炭水化物10~20%、脂質化合物1~5%を含み、残りは水である、フェニルケトン尿症患者用の食品を提供する。
【0051】
以下に、具体的な実施例及び試験例を用いて本発明の有益な効果をさらに説明する。
【0052】
本発明の実施例で使用する試薬及び装置の情報は、表1-1及び1-2に示すとおりである。
【表1-1】
【表1-2】
【0053】
(実施例1)
10kgのサッカロミセス・セレビシエパウダーを精製水に加えて200kgの溶液を調製し、希塩酸を加えてpHを5.0に調整し、温度を40℃に調整し、5gのα-マンナナーゼを加えて24時間酵素分解させる。水酸化ナトリウムを用いてpHを7.0に調整し、温度を70℃に上げて、1時間保温する。温度を50℃に下げて、5000rpmで20分間遠心分離し、上層の液体を除去し、次に、下層の固体を質量濃度5%の分散液として調製し、噴霧乾燥を行って酵母タンパク質製品を得る。
【0054】
ケルダール法を用いて、実施例で製造した酵母タンパク質中のタンパク質の含有量を測定し、測定結果は表2のとおりである。
【0055】
次に、次の方法で、製造された酵母タンパク質の水分、ザイモサン及び核酸の含有量を測定する。測定結果は表2のとおりである。
【0056】
1.ザイモサンの測定方法
液体クロマトグラフィーを用いるザイモサンの含有量の測定:
(1)サンプルの処理であって、400mg(精度0.1mg)のサンプルを正確に称量して20mLのねじ口付耐熱ガラス小試験管に入れ、6.0mLの塩酸(37%)を加えて、注意深くバイアルの蓋を閉めた後にボルテックスミキサーで混合して、均一な懸濁液を得る。バイアルを30℃の水浴に入れて45分間処理し、15分間ごとにボルテックスミキサーで振盪して1回混合する。次に、懸濁物を定量的に200mLのデュワー瓶に移し、約100~120mLの水を用いて、複数回で小試験管を洗浄し、洗浄液をデュワー瓶に入れる。デュワー瓶をオートクレーブに入れて、121℃で60分間処理する。取り出して冷却し、水酸化ナトリウム溶液を用いて溶液のpHを6~7に調整し、次に200mLに定容する。孔径0.45μmの酢酸セルロース膜を使用して濾過しておく。同時に、200mgのデキストラン標準物質を正確に称量して、サンプルの処理方法に従って同じ処理を行う。
【0057】
(2)クロマトグラフィー条件であって、純水を移動相とし、流速は0.5mL/分であり、カラム温度は80℃であり、装置のベースラインが安定してからロードする。
【0058】
(3)検量線の作成であって、それぞれ、マンノース及びグルコース標準液1mL、2mL、3mL、4mL、5mLを吸い出して10mLのメスフラスコに入れ、高純水で標線に定容して、マンノース、グルコースがそれぞれ200mg/L、400mg/L、600mg/L、800mg/L、1000mg/Lである混合標準物質を得る。上記のクロマトグラフィー条件で20μLを正確にロードして、ピーク面積と標準物質の質量濃度との間の回帰式を得て、検量線を作成する。
【0059】
(4)サンプル及び標準物質の測定であって、同じクロマトグラフィー条件で、処理済みのサンプル、マンノース及びデキストラン標準物質をそれぞれクロマトグラフに注入して、各ピークの保持時間及びピーク面積を記録する。糖標準物質ピークの保持時間で定性し、糖標準物質ピークのピーク面積で定量する。
【0060】
(5)下式でデキストラン又はマンナンオリゴ糖の含有量を計算する。
【数1】
【数2】
ザイモサンの含有量=デキストランの含有量+マンナンオリゴ糖の含有量
式中、Xは、サンプル中のデキストラン又はマンナンオリゴ糖の含有量で、%である。
は、サンプル溶液のピーク面積に基づいて、検量線から特定されたサンプル溶液のグルコース又はマンノースの含有量で、mg/Lである。
は、デキストラン標準物質溶液のピーク面積に基づいて、検量線から特定されたサンプル溶液のグルコースの含有量で、mg/Lである。
は、称量したサンプルの質量で、gである。
は、称量したデキストラン標準物質の質量で、gである。
0.2は、サンプル又はデキストラン標準物質を処理した後に定容した体積で、Lである。
0.9は、グルコース又はマンノースをデキストラン又はマンナンオリゴ糖に換算する係数である。
Fは、サンプルの酸加水分解でグルコース及びマンノースの破壊により結果が低くなることに対する経験的補償係数である。
Pは、デキストラン標準物質の純度である(試薬メーカーから提供される測定報告に準拠する)。
Wは、デキストラン標準物質の水分である(試薬メーカーから提供される測定報告に準拠する)。
【0061】
2.核酸含有量の測定方法
GB/T 6437「飼料中の総リンの測定のための分光光度法」に従って総リンを測定し、式:核酸含有量=総リン×340/32で計算する。具体的な工程は次のとおりである。酵母加水分解物の核酸中のリンを消化した後に水溶性無機リンが生成され、モリブデン酸アンモニウムと反応させてリンモリブデン酸アンモニウムが生成され、酸性条件で、還元剤を用いてモリブデンブルーを生成させ、その色の濃さはPの含有量に正比例し、ランベルト・ベールの法則に従っており、分光光度計で700nmでの吸光度を測定する。
【0062】
3.水分の測定方法
中国国家標準GB/T 23530-2009の6.2の方法を用いて、所定の質量のサンプルを、103℃で恒量になるまで4時間乾燥し、称量して水分の含有量を計算する。
【0063】
(実施例2)
30kgのサッカロミセス・セレビシエパウダーを精製水に加えて200kgの溶液を調製し、希塩酸を加えてpHを5.0に調整し、温度を50℃に調整し、30gのβ-グルカナーゼを加えて18時間酵素分解させる。水酸化ナトリウムを用いてpHを7.5に調整し、温度を80℃に上げて、2時間保温する。温度を50℃に下げて、5000rpmで20分間遠心分離し、上層の液体を除去し、次に、下層の固体を質量濃度10%の分散液として調製し、噴霧乾燥を行って酵母タンパク質製品を得る。
【0064】
実施例1と同じ方法に従って、製造された酵母タンパク質のタンパク質の含有量、ザイモサンの含有量、水分及び核酸の含有量を測定し、結果は表2のとおりである。
【0065】
(実施例3)
16kgのサッカロミセス・セレビシエパウダーを精製水に加えて200kgの溶液を調製し、希塩酸を加えてpHを5.0に調整し、温度を60℃に調整し、24gのα-マンナナーゼ及び24gのβ-グルカナーゼを加えて14時間酵素分解させる。水酸化ナトリウムを用いてpHを7.7に調整し、温度を75℃に上げて、2時間保温する。温度を50℃に下げて、5000rpmで20分間遠心分離し、上層の液体を除去し、次に、下層の固体を質量濃度15%の分散液として調製し、噴霧乾燥を行って酵母タンパク質製品を得る。
【0066】
実施例1と同じ方法に従って、製造された酵母タンパク質のタンパク質の含有量、ザイモサンの含有量、水分及び核酸の含有量を測定し、結果は表2のとおりである。
【0067】
(実施例4)
24kgのサッカロミセス・セレビシエパウダーを精製水に加えて200kgの溶液を調製し、希塩酸を加えてpHを5.0に調整し、温度を70℃に調整し、120gのα-マンナナーゼを加えて8時間酵素分解させる。水酸化ナトリウムを用いてpHを7.7に調整し、温度を90℃に上げて、1.5時間保温する。温度を50℃に下げて、5000rpmで20分間遠心分離し、上層の液体を除去し、次に、下層の固体を質量濃度20%の分散液として調製し、噴霧乾燥を行って酵母タンパク質製品を得る。
【0068】
実施例1と同じ方法に従って、製造された酵母タンパク質のタンパク質の含有量、ザイモサンの含有量、水分及び核酸の含有量を測定し、結果は表2のとおりである。
【0069】
(実施例5)
逆浸透膜で水を浄化し、1Lの水を取り出して70℃に加熱し、50gの実施例1で製造された酵母タンパク質、151gの固体コーンシロップ、93gのマルトデキストリン及び26gのスクロースを加え、次に、40gのヤシ油、24gのアブラナ油、11gのコーン油及び4.8gの大豆レシチンを加え、蒸気を注入して150℃で当該混合物を均質化し、それを75℃に冷却して、0.8gのミネラル及び1.5gの水溶性ビタミンを加え、後に容器の中で無菌包装して、腎機能障害患者用のドリンクを得て、当該ドリンクのエネルギー密度は、200kcal/100mLである。
【0070】
(実施例6)
配合は、実施例1で製造された酵母タンパク質20g、オーツ麦粉5g、トウモロコシ粉10g、デーツパウダー15g、アズキパウダー5g、葛粉5g、かぼちゃパウダー10g、チアシード15gである。
上記の成分をふるい分けした後に直接包装して、食事置き換えパウダーを得る。
【0071】
(実施例7)
逆浸透膜で水を浄化し、1Lの水を取り出して70℃に加熱し、17gの実施例1で製造された酵母タンパク質、1gのアルギニン、1gのL-シスチン、1gのL-グルタミン、1gのL-グリシン、1gのL-ヒスチジン、1.5gのL-イソロイシン、2gのL-ロイシン、2gのL-リシン、1gのL-メチオニン、1gのL-プロリン、1gのL-トリプトファン、2gのL-チロシン、0.5gのL-バリンを加え、130gの乳糖を加え、次に24gのアブラナ油、16gのコーン油、0.5gの大豆レシチン及び0.5gの脂溶性ビタミンを加え、蒸気を注入して80℃で当該混合物を5分間加熱し、それを60℃に冷却して、0.8gのミネラル及び1.5gの水溶性ビタミンを加え、まず10MPa、次に7MPaと2つの段階で均質化し、最後に噴霧乾燥を行って水分含量4%のフェニルケトン尿症患者用の食品を得る。
【0072】
(比較例1)
中国特許出願公開第109198156号明細書の方法に従って酵母タンパク質を製造する。
【0073】
10kgのサッカロミセス・セレビシエパウダーを精製水に加えて200kgの溶液を調製し、希塩酸を加えてpHを5.0に調整し、温度を40℃に調整し、5gのα-マンナナーゼを加えて24時間酵素分解させる。5000rpmで20分間遠心分離し、上層の液体を除去し、次に、沈殿物を60kgの水で分散し、水酸化ナトリウムを用いてpHを7.0に調整し、上記の液体を800barの圧力で、6回均質化し、均質化の流量は1m/時間であり、粗タンパク質を凍結乾燥して酵母タンパク質製品を得る。
【表2】
【0074】
上記の実施例1及び比較例1で製造された酵母タンパク質の特性解析:
1.走査型電子顕微鏡SEM画像
上記の実施例1の原料のサッカロミセス・セレビシエパウダー、大豆タンパク質分離物、実施例1で製造された酵母タンパク質及び比較例1で製造された酵母タンパク質に対して、それぞれ、走査型電子顕微鏡SEM試験を行い、実施例1の原料のサッカロミセス・セレビシエパウダー、大豆タンパク質分離物及び実施例1で製造された酵母タンパク質の走査型電子顕微鏡画像は、図5図7のとおりであり、比較例1で製造された酵母タンパク質の走査型電子顕微鏡画像は、図8のとおりであり、大豆タンパク質分離物の走査型電子顕微鏡画像は、図9のとおりであり、実施例1の原料の酵母パウダーの走査型電子顕微鏡画像は、図10のとおりである。
【0075】
図5図10から分かるように、実施例1で製造された酵母タンパク質は、球状又は楕円球状であり、酵母細胞壁粉末の構造に似ており、タンパク質が細胞壁によって包まれる。大豆タンパク質分離物はタンパク質が露出しているため、不規則な球形を呈する(大豆タンパク質の組成は主にグロブリンである)。比較例1の酵母タンパク質は均質化処理を経て、一部が楕円球状であり、完全な酵母細胞に似ているが、均質化の壁破壊作用で、一部のタンパク質が壁破壊により放出される。
【0076】
(試験例1)
インビトロ模擬消化の方法を用いて、実施例1で製造された酵母タンパク質(YPC)、比較例1で製造された酵母タンパク質(YPT)、大豆タンパク質分離物(SPI)及びホエータンパク質(WPC)の消化吸収を比較し、方法は次のとおりである。
1)胃相(摂食状態):37℃で2時間消化し、同時に撹拌して混合して、S字曲線に従ってpHを低減させる。ヘモグロビン(基準タンパク質)がトリクロロ酢酸(TCA)によって消化された後の可溶性生成物の280nmでの吸光度を測定することにより、正規化されたペプシン活性を提供する。ホスファチジルコリン、SHIME栄養培地、塩化ナトリウム及び塩化カリウムを加える。
【0077】
2)小腸段階(摂食状態):37℃で3時間消化し、同時に撹拌して混合して、pHを7.4に上昇させる。添加されたパンクレアチンは動物膵臓抽出物であり、添加された胆汁酸塩は、0.01mol/Lのウシ胆汁抽出物である(タウリン及びグリココール酸塩については、ウシの胆汁がブタの胆汁よりも人間の胆汁に近い)。また、消化の過程で、胆汁酸塩を希釈して十二指腸、空腸及び回腸で生じることをシミュレートする。消化終了時にはセルロース膜を使用する静的透析(カットオフ=14kDa)で小腸レベルの吸収過程をシミュレートする。透析チューブに小腸懸濁液を導入して、徐々に上部消化管マトリックスから、消化されたアミノ酸などの低分子を除去して、消化条件(pH曲線、消化時間)を最適化することにより体内の消化管の異なる領域をシミュレートし、テストはいずれも3回行う。
【0078】
3)定量的な非タンパク質性窒素(NPN)測定によりタンパク質の加水分解の程度を決定する。NPNは、TCA(トリクロロ酢酸)でサンプルを処理することによって決定してもよく、それがタンパク質を沈殿させた後、濾過する。濾液中のタンパク質は、遊離アミノ酸及びタンパク質の消化時に形成された低分子ペプチドに由来する(また、分光光度計で選択的に検出できる)。初期及びTCAによって沈殿されたサンプルに対する総ケルダール分析によりタンパク質の含有量を測定することで、消化及び未消化のタンパク質画分を区別する。以下の異なる時点のサンプル分析におけるタンパク質の消化率又は吸収率を集計する。(1)初期製品(ST 0)、(2)胃で消化の終わり(ST end)、(3)小腸で30分間の消化後(SI 30)、(4)小腸で消化の終わり(SI end)、(5)1時間、2時間、3時間の時の混合懸濁液の透析(吸収されたタンパク質成分)。結果は、図1に示すとおりである。
消化率=(X-X)/X
吸収率=X/X
式中、Xは、TCAで沈殿させたタンパク質の窒素含有量で、%である。
は、透析液中の総窒素含有量で、%である。
Xは、集計された特定のサンプルの総窒素含有量で、%である。
【0079】
4)バックグラウンドタンパク質の含有量の測定
当該試験で対照群を増設し、ケルダール法により、上部消化管の異なる成分をシミュレートするためのバックグラウンドタンパク質の含有量を測定し、補正する。
【0080】
試験結果は、図1に示すとおりである。図1から分かるように、WPCの末端小腸における消化吸収レベルは、YPC、YPT及びSPIより有意に高いが(P<0.01)、YPC、YPT及びSPIの全体的な消化率には有意差がなく(P>0.05)、4種類のタンパク質原料の吸収率を2つずつ比較すると、いずれも有意差がない(P>0.05)。しかしながら、タンパク質によって胃腔内での消化率は異なる。実施例1で製造された酵母タンパク質YPC(13.4%)及び比較例1で製造された酵母タンパク質YPT(15.6%)と比べて、ホエータンパク質WPC(38.2%)及び大豆タンパク質分離物SPI(25.1%)の方が胃での消化はより明らかであり、酵母タンパク質の消化は、消化管による消化がホエータンパク質及び大豆タンパク質分離物より明らかに遅く、比較例1で製造された酵母タンパク質YPTと比べて、実施例1で製造された酵母タンパク質YPCの消化が遅い。
【0081】
(試験例2)
本発明の実施例1で製造された酵母タンパク質(YPC)、比較例1で製造された酵母タンパク質(YPT)及びホエータンパク質(WPC)に対して下記の方法に従って満腹感試験を行う。
平均年齢が29±3歳で、平均ボディマス指数が22.3±1.7kg/mである15人の治験ボランティアを募集し、2日間にわたる試験を実施し、毎日3種類の食事の1つをとる。これらの被験者は、試験を行う前日にアルコール飲料を一切摂取せず、午後8時までに少量の夕食をとり、試験開始まで絶食した。当該試験では毎日3食摂食する。
1)少なめで標準的な朝食であって、全粒粉スライスブレッド、15gのジャム及び牛乳(150kcal)からなる。午前7時45分に食べ、10~15分間がかかる。
【0082】
2)試験食事であって(表2のように、5人の治験ボランティアが食事1をとり、5人の治験ボランティアが食事2をとり、5人の治験ボランティアが食事3をとる)、午前10時に食べ、約15分間がかかる。
【0083】
3)トマトソースパスタをベースとする食事であって、午後1時に食べる。
【0084】
治験ボランティアは、午前10時から午後1時までの間に30分間の間隔のあるビジュアルアナログスケール(10cm)で彼らの胃の飢餓、飢餓感及び満腹感を記録する。
【0085】
午後1時に食事をとる時に、治験ボランティアは、満腹になるまで、パスタ及びトマトソースを確認して、その摂取量を称量する。これらの被験者は、ノートに当該研究日の残りの時間に食べた食品を記録する。McCanceとWiddowsonによる食品組成表(1991)を用いて、昼食及び当日の残りの時間に食べた様々な食物の量から摂取されたkcal数を推定することができる。
【表3】
【0086】
試験結果は、図2に示すとおりである。図2図4は、胃の「飢餓感」、「飢餓」及び「満腹」曲線を示す。実施例1で製造された酵母タンパク質(YPC)及びホエータンパク質濃縮物(WPC)と比較例1で製造された酵母タンパク質(YPT)の挙動は違う。実施例1で製造された酵母タンパク質をベースとする食事を食べると飢餓と食欲が起こるのは遅く、実施例1で製造された酵母タンパク質に関しては胃の満腹感が長く持続する。
【0087】
ホエータンパク質、比較例1で製造された酵母タンパク質及び実施例1で製造された酵母タンパク質を1回目に食べた後に食事中及び当日の残りの時間の平均カロリー提供を比較する。表3に示し、表3の結果から分かるように、食事が実施例1で製造された酵母タンパク質(即ち、食事2)である場合は、このような提供が低下する。
【0088】
これらの結果は、ホエータンパク質及び比較例1で製造された酵母タンパク質と比べて、実施例1で製造された酵母タンパク質を食べる方が満腹感がより強いということを示す。
【表4】
【0089】
(試験例3)
GB 5009.124-2016「食品安全の国家基準に関する食品中のアミノ酸の測定」方法を参照して、実施例1で製造された酵母タンパク質(YPC)及び比較例1で製造された酵母タンパク質(YPT)のアミノ酸組成を測定する。2回の測定で平均する。1973年にFAO/WHOによって提唱されたアミノ酸スコアパターン及び中国予防医学科学栄養与食品衛生研究所によって提案された全卵タンパク質パターンに準拠してYPCとYPTを比較し、式(1)、式(2)に従ってアミノ酸スコア(AAS)及び化学スコア(CS)を求める。
【数3】
【数4】
【表5】
【0090】
試験結果を表4に示し、表4から分かるように、実施例1で製造された酵母タンパク質YPC及び比較例1で製造された酵母タンパク質YPTは、いずれも18種類のアミノ酸を含有し、人体に必須な8種類のアミノ酸及び2種類の準必須アミノ酸を含み、アミノ酸の種類が揃っているため、完全タンパク質に属する。FAO/WHOによって提案されたアミノ酸パターンによれば、必須アミノ酸の総量はアミノ酸の総量の40%以上に達し、必須アミノ酸の総量と非必須アミノ酸の総量の比は0.6以上であるべきである。特定のタンパク質のアミノ酸組成がFAO/WHOの理想的なパターンに近い場合に、この比が高いほど、タンパク質の栄養価は高い。YPC及びYPTのアミノ酸組成が理想的なパターンに近く、且つ必須アミノ酸と非必須アミノ酸の比率が1.03に達しているのは、実施例1で製造された酵母タンパク質と比較例1で製造された酵母タンパク質は栄養価が同等であるということを示す。
【0091】
上記のことから分かるように、本発明の酵母タンパク質は、外側がザイモサンによって包まれ、球状又は楕円球状を呈し、酵母タンパク質中のタンパク質の含有量が70%以上であり、ザイモサンの含有量が5~30%であり、また、その胃消化率は大豆タンパク質分離物及びホエータンパク質より明らかに低く、食後の満腹感はホエータンパク質を上回り、緩徐に消化される特徴を有するため、緩徐消化型タンパク質である。また、本発明の酵母タンパク質は、人体に必須な8種類のアミノ酸及び2種類の準必須アミノ酸を含む18種類のアミノ酸を含有し、アミノ酸の種類が揃っているため、完全タンパク質に属する。緩徐消化型タンパク質として、哺乳動物に経腸で投与して食後の血漿アミノ酸レベルを調整する組成物の製造に用いることができる。
【0092】
上述したのは、本発明の実施の好ましい実施例に過ぎず、本発明にいかなる形式上の制限を行うものでもなく、本発明の範囲及び趣旨において変更、同等な置き換え及び改良などが行なわれる場合は、そのいずれも本発明の保護範囲に含まれるものとする。
【0093】
(付記)
(付記1)
外側がザイモサンによって包まれ、球状又は楕円球状を呈し、ザイモサンの乾燥重量を100%とする場合は、タンパク質の含有量が70%以上であり、ザイモサンの含有量が5~30%であることを特徴とする酵母タンパク質。
【0094】
(付記2)
前記タンパク質が、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、トレオニン、システイン、トリプトファン、バリン、アスパラギン酸、アルギニン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、アラニン、セリン及びプロリンを含有することを特徴とする付記1に記載の酵母タンパク質。
【0095】
(付記3)
酵母タンパク質の重量に準拠すると、イソロイシンの含有量が60mg/g以上であり、ロイシンの含有量が90mg/g以上であり、リシンの含有量が96mg/g以上であり、メチオニンの含有量が25mg/g以上であり、フェニルアラニンの含有量が49mg/g以上であり、チロシンの含有量が49mg/g以上であり、トレオニンの含有量が50mg/g以上であり、システインの含有量が14mg/g以上であり、トリプトファンの含有量が13mg/g以上であり、バリンの含有量が55mg/g以上であり、アスパラギン酸の含有量が111mg/g以上であり、アルギニンの含有量が53mg/g以上であり、グルタミン酸の含有量が109mg/g以上であり、グリシンの含有量が47mg/g以上であり、ヒスチジンの含有量が30mg/g以上であり、アラニンの含有量が59mg/g以上であり、セリンの含有量が52mg/g以上であり、プロリンの含有量が27mg/g以上であることを特徴とする付記1又は2に記載の酵母タンパク質。
【0096】
(付記4)
(1)酵母に酵素を加えて酵素分解を行うステップと、
(2)ステップ(1)で得た酵素分解液に対して熱抽出し、遠心分離して重相を取り出して酵母タンパク質を得るステップとを含むことを特徴とする付記1~3のいずれか一つに記載の酵母タンパク質の製造方法。
【0097】
(付記5)
ステップ(1)に記載の酵素が、α-マンナナーゼ及び/又はβ-グルカナーゼから選ばれ、好ましくは、前記酵素の添加量が、酵母含有量の0.05~0.5wt%であり、0.1~0.3wt%であることが好ましく、より好ましくは、前記酵素分解の温度が、40~70℃であり、50~60℃であることが好ましく、さらに好ましくは、前記酵素分解の時間が、8~24時間であり、14~18時間であることが好ましいことを特徴とする付記4に記載の製造方法。
【0098】
(付記6)
ステップ(1)において酵母を質量濃度5~15%の溶液、好ましくは8~12%の溶液として調製し、好ましくは、前記酵母が、ビール酵母又はサッカロミセス・セレビシエであることを特徴とする付記4又は5に記載の製造方法。
【0099】
(付記7)
ステップ(2)に記載の熱抽出のpHが、7.0~8.0であり、好ましくは7.5~7.7であり、好ましくは、前記熱抽出の温度が、70~90℃であり、好ましくは75~80℃であり、より好ましくは、前記熱抽出の時間が、1~2時間であることを特徴とする付記4~6のいずれか一つに記載の製造方法。
【0100】
(付記8)
前記酵母タンパク質を乾燥させるステップであって、酵母タンパク質を質量濃度5~20%の分散液として調製し、次に乾燥して得るステップをさらに含み、好ましくは、前記分散液の質量濃度が、10~15%であることを特徴とする付記4~7のいずれか一つに記載の製造方法。
【0101】
(付記9)
付記4~8のいずれか一つに記載の製造方法で製造されることを特徴とする酵母タンパク質。
【0102】
(付記10)
少なくとも付記1~3又は付記9のいずれか一つに記載の酵母タンパク質を含むことを特徴とする酵母タンパク質組成物。
【0103】
(付記11)
前記酵母タンパク質組成物が、炭水化物、脂質及び遊離アミノ酸から選ばれる1種又は2種以上をさらに含み、好ましくは、前記炭水化物が、コーンシロップ、マルトデキストリン、スクロース、オーツ麦粉、トウモロコシ粉、デーツパウダー、アズキパウダー、葛粉、かぼちゃパウダー、チアシード及び乳糖のうちの1種又は2種以上であり、より好ましくは、前記脂質が、ヤシ油、アブラナ油、コーン油及び大豆レシチンのうちの1種又は2種以上であり、さらに好ましくは、前記遊離アミノ酸が、アルギニン、L-シスチン、L-グルタミン、L-グリシン、L-ヒスチジン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リシン、L-メチオニン、L-プロリン、L-トリプトファン、L-チロシン及びL-バリンのうちの1種又は2種以上であることを特徴とする付記10に記載の組成物。
【0104】
(付記12)
哺乳動物に経腸で投与して食後の血漿アミノ酸レベルを調整する組成物の製造における付記1~3若しくは付記9のいずれか一つに記載の酵母タンパク質又は付記10若しくは11に記載の組成物の使用。
【0105】
(付記13)
前記酵母タンパク質又は酵母タンパク質組成物が、食後のタンパク質の獲得を増加させる組成物を製造するために用いられることを特徴とする付記12に記載の使用。
【0106】
(付記14)
前記酵母タンパク質又は酵母タンパク質組成物が、特定の器官及び/又は特定の酵素の代謝の過負荷を軽減させる組成物を製造するために用いられることを特徴とする付記12に記載の使用。
【0107】
(付記15)
前記酵母タンパク質又は酵母タンパク質組成物が、毎日の食物摂取量を制限する組成物を製造するために用いられることを特徴とする付記12に記載の使用。
【0108】
(付記16)
前記酵母タンパク質又は酵母タンパク質組成物が、アミノ酸の代謝における特定の機能障害を埋める組成物を製造するために用いられることを特徴とする付記12に記載の使用。
【0109】
(付記17)
前記酵母タンパク質又は酵母タンパク質組成物が、組織の再生を向上させる組成物を製造するために用いられることを特徴とする付記12に記載の使用。
【0110】
(付記18)
重量百分率で表示すると、成分として、付記1~3又は付記9のいずれか一つに記載の酵母タンパク質1~10%、炭水化物20~30%、脂質化合物5~15%を含み、残りは水であることを特徴とする腎機能障害患者用の食品。
【0111】
(付記19)
重量部で表示すると、成分として、付記1~3又は付記9のいずれか一つに記載の酵母タンパク質5~20部、オーツ麦粉5~20部、トウモロコシ粉5~25部、デーツパウダー5~20部、アズキパウダー5~10部、葛粉5~10部、かぼちゃパウダー5~10部、チアシード10~30部を含むことを特徴とする食事置き換えパウダー。
【0112】
(付記20)
重量百分率で表示すると、成分として、付記1~3又は付記9のいずれか一つに記載の酵母タンパク質1~5%、遊離アミノ酸1~5%、炭水化物10~20%、脂質化合物1~5%を含み、残りは水であることを特徴とするフェニルケトン尿症患者用の食品。
【符号の説明】
【0113】
YPC 実施例1で製造された酵母タンパク質
YPT 比較例1で製造された酵母タンパク質
WPC ホエータンパク質
SPI 大豆タンパク質分離物

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2024-07-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側がザイモサンによって包まれ、球状又は楕円球状を呈し、ザイモサンの乾燥重量を100%とする場合は、タンパク質の含有量が70%以上であり、ザイモサンの含有量が5~30%であることを特徴とする酵母タンパク質。
【請求項2】
前記タンパク質が、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、トレオニン、システイン、トリプトファン、バリン、アスパラギン酸、アルギニン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、アラニン、セリン及びプロリンを含有することを特徴とする請求項1に記載の酵母タンパク質。
【請求項3】
酵母タンパク質の重量に準拠すると、イソロイシンの含有量が60mg/g以上であり、ロイシンの含有量が90mg/g以上であり、リシンの含有量が96mg/g以上であり、メチオニンの含有量が25mg/g以上であり、フェニルアラニンの含有量が49mg/g以上であり、チロシンの含有量が49mg/g以上であり、トレオニンの含有量が50mg/g以上であり、システインの含有量が14mg/g以上であり、トリプトファンの含有量が13mg/g以上であり、バリンの含有量が55mg/g以上であり、アスパラギン酸の含有量が111mg/g以上であり、アルギニンの含有量が53mg/g以上であり、グルタミン酸の含有量が109mg/g以上であり、グリシンの含有量が47mg/g以上であり、ヒスチジンの含有量が30mg/g以上であり、アラニンの含有量が59mg/g以上であり、セリンの含有量が52mg/g以上であり、プロリンの含有量が27mg/g以上であることを特徴とする請求項1に記載の酵母タンパク質。
【請求項4】
(1)酵母に酵素を加えて酵素分解を行うステップと、
(2)ステップ(1)で得た酵素分解液に対して熱抽出し、遠心分離して重相を取り出して酵母タンパク質を得るステップとを含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の酵母タンパク質の製造方法。
【請求項5】
ステップ(1)に記載の酵素が、α-マンナナーゼ及び/又はβ-グルカナーゼから選ばれる、ことを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記酵素の添加量が、酵母含有量の0.05~0.5wt%である、ことを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項7】
ステップ(1)における前記酵素分解の温度が、40~70℃であり、ステップ(2)における熱抽出の温度が、70~90℃である、ことを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項8】
ステップ(1)に記載の前記酵素分解の時間が、8~24時間であり、ステップ(2)に記載の熱抽出の時間が、1~2時間である、ことを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項9】
ステップ(1)において酵母を質量濃度5~15%の溶液とすることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項10】
ステップ(2)に記載の熱抽出のpHが、7.0~8.0であることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項11】
前記酵母タンパク質を乾燥させるステップであって、酵母タンパク質を質量濃度5~20%の分散液として調製し、次に乾燥して得るステップをさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項12】
少なくとも請求項1~3のいずれか一項に記載の酵母タンパク質を含むことを特徴とする酵母タンパク質組成物。
【請求項13】
前記酵母タンパク質組成物が、炭水化物、脂質及び遊離アミノ酸から選ばれる1種又は2種以上をさらに含むことを特徴とする請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
哺乳動物に経腸で投与して食後の血漿アミノ酸レベルを調整する組成物の製造における請求項1~3のいずれか一項に記載の酵母タンパク質の使用。
【請求項15】
前記酵母タンパク質が、食後のタンパク質の獲得を増加させる組成物を製造するために用いられ、又は、
前記酵母タンパク質が、特定の器官及び/又は特定の酵素の代謝の過負荷を軽減させる組成物を製造するために用いられ、又は、
前記酵母タンパク質が、毎日の食物摂取量を制限する組成物を製造するために用いられ、又は、
前記酵母タンパク質が、アミノ酸の代謝における特定の機能障害を埋める組成物を製造するために用いられ、又は、
前記酵母タンパク質が、組織の再生を向上させる組成物を製造するために用いられることを特徴とする請求項14に記載の使用。
【請求項16】
重量百分率で表示すると、成分として、請求項1~3のいずれか一項に記載の酵母タンパク質1~10%、炭水化物20~30%、脂質化合物5~15%を含み、残りは水であることを特徴とする腎機能障害患者用の食品。
【請求項17】
重量部で表示すると、成分として、請求項1~3のいずれか一項に記載の酵母タンパク質5~20部、オーツ麦粉5~20部、トウモロコシ粉5~25部、デーツパウダー5~20部、アズキパウダー5~10部、葛粉5~10部、かぼちゃパウダー5~10部、チアシード10~30部を含むことを特徴とする食事置き換えパウダー。
【請求項18】
重量百分率で表示すると、成分として、請求項1~3のいずれか一項に記載の酵母タンパク質1~5%、遊離アミノ酸1~5%、炭水化物10~20%、脂質化合物1~5%を含み、残りは水であることを特徴とするフェニルケトン尿症患者用の食品。
【国際調査報告】