(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】ゼオライトYおよびゼオライトベータを厳密に12より高いY/ベータ比で含んでいるナフサ製造のための水素化分解触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 29/76 20060101AFI20241031BHJP
C10G 47/20 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B01J29/76 M
C10G47/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531443
(86)(22)【出願日】2022-11-22
(85)【翻訳文提出日】2024-07-26
(86)【国際出願番号】 EP2022082852
(87)【国際公開番号】W WO2023094396
(87)【国際公開日】2023-06-01
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【氏名又は名称】玉井 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100228175
【氏名又は名称】近藤 充紀
(72)【発明者】
【氏名】ドダン マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ドーダン アントワーヌ
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169BA07A
4G169BA07B
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4H129KD24X
4H129KD24Y
4H129KD32X
4H129NA22
4H129NA37
(57)【要約】
本発明は、ナフサ留分の方に選択的な水素化分解触媒、および前記触媒を利用する水素化分解法を記載しており、前記触媒は、周期表のVIB族および非貴金属VIII族の元素からなる群から単独でまたは混合物として選択される少なくとも1種の水素化脱水素元素と、少なくとも1種の多孔質鉱物マトリクス、単位格子の初期格子定数a0が24.42A超であるゼオライトY、およびゼオライトベータを含む担体とを含み、触媒中の前記ゼオライトY対前記ゼオライトベータの重量比は、厳密に12より大きい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の水素化脱水素元素と、担体とを含んでいる水素化分解触媒であって、該水素化脱水素元素は、周期律表の第VIB族の元素および第VIII族の非貴金属元素によって形成される群から選ばれ、これらは単独でまたは混合物として利用され、該担体は、少なくとも1種の多孔質鉱物マトリクス、単位格子の初期格子定数a
0が24.42Å超であるゼオライトYと、ゼオライトベータとを含んでおり、触媒中の前記ゼオライトY対前記ゼオライトベータの重量比は、厳密に12超である、水素化分解触媒。
【請求項2】
第VIII族元素は、単独でまたは混合物として利用される鉄、コバルト、ニッケルから、好ましくは、ニッケルおよびコバルトから選ばれ、第VIII族元素の含有率は、前記触媒の全重量に相対して、酸化物の重量で0.5重量%~8重量%、好ましくは酸化物の重量で0.5重量%~6重量%、大いに好ましくは酸化物の重量で1.0重量%~4重量%である、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
第VIB族元素は、タングステンおよびモリブデンから選ばれ、これらは、単独でまたは混合物として利用され、第VIB族元素の含有率は、前記触媒の全重量に相対して、酸化物の重量で1重量%~30重量%、好ましくは酸化物の重量で2重量%~25重量%、大いに好ましくは酸化物の重量で5重量%~20重量%、一層より好ましくは酸化物の重量で5重量%~16重量%である、請求項1または2に記載の触媒。
【請求項4】
触媒は、リンを含有し、リン含有率は、前記触媒の全重量に相対して、P
2O
5酸化物の重量で0.5重量%~10重量%、好ましくはP
2O
5酸化物の重量で1.0重量%~6重量%、より好ましくはP
2O
5酸化物の重量で1.0重量%~4重量%である、請求項1~3のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項5】
ゼオライトYの単位格子の初期格子定数a
0は、24.42Å~24.70Å、好ましくは24.45Å超かつ24.70Å未満、好ましくは24.50Å超かつ24.70Å未満、好ましくは24.52Å~24.70Å、好ましくは24.52Å~24.65Å、好ましくは24.52Å~24.60Å、大いに好ましくは24.52Å~24.58Åである、請求項1~4のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項6】
触媒のゼオライトYの含有率は、前記触媒の全重量に相対して26重量%~79重量%である、請求項1~5のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項7】
前記触媒のゼオライトベータの含有率は、重量触媒の全重量に相対して、1重量%~6重量%である、請求項1~6のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項8】
前記触媒の少なくとも1種の多孔質鉱物マトリクスの含有率は、前記触媒の全重量に相対して7重量%~47重量%である、請求項1~7のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項9】
触媒中の前記ゼオライトY対前記ゼオライトベータの重量比は、13~40、好ましくは13~30、好ましくは14~20、一層より好ましくは14~18である、請求項1~8のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項10】
少なくとも1種の炭化水素供給原料を、請求項1~9のいずれか1つに記載の触媒の存在中で水素化分解するための方法であって、該供給原料の化合物の最低50重量%の初期沸点は、300℃超であり、最終沸点は、650℃未満であり、水素化分解の際の温度は、200℃~480℃であり、その際の全圧は、1MPa~25MPaであり、炭化水素供給原料の容積当たりの水素の容積の比は、80~5000リットル/リットルであり、その際の毎時空間速度(HSV)は、反応器に充填された触媒の容積当たりの炭化水素供給原料の容積流量の比によって定義されて、0.1~50h
-1である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼオライトのYおよびベータをベースとする水素化分解触媒およびまた減圧蒸留物またはガスオイルのタイプの石油留分の水素化分解によるナフサの製造のためのその使用に関する。このタイプの方法は、とりわけ、石油化学中間体およびガソリン燃料の製造のための炭化水素供給原料の転化を目的としたスキームにおいて用いられる。
【背景技術】
【0002】
水素化分解触媒は、一般に、それらの酸機能の性質に基づいて分類され、特に、シリカ-アルミナタイプの無定形の酸機能基を含んでいる触媒およびゼオライト性の分解機能基、例えば、ゼオライトYまたはゼオライトベータを含んでいる触媒がある。
【0003】
水素化分解触媒は、それらが水素化分解法において用いられる場合に得られる主要な生成物によっても分類され、2種の主要な生成物は、中間蒸留物とナフサである。
【0004】
ナフサまたはナフサ留分は、沸点が中間蒸留物留分より低い石油フラクションを意味するように理解される。中間蒸留物留分は、一般に、150℃~370℃のカットポイントを有し、ケロセンおよびガスオイルの生成を最大にする。ただし、例えばナフサの製造に特に標的を置かれる方法のケースにおいて、ナフサの収率を向上させるように、中間蒸留物留分のより低いカットポイントは、上げられ得る。
【0005】
この目的のために、ナフサ留分は、分子当たり6個の炭素原子を有する炭化水素化合物の沸点(または68℃沸点)から216℃までの間の沸点を有することができ、ガソリン留分を含む。
【0006】
ガソリンおよびナフサの留分に高い需要がある。これが、精製業者が数年にわたってナフサ留分の方に選択的である水素化分解触媒に焦点を当てている理由である。
【0007】
FAUタイプのゼオライトをベースとする触媒を用いてナフサ留分を製造することが知られている。
【0008】
特許文献1(Shell)には、FAUタイプのゼオライトY、前記ゼオライトを含んでいる触媒、その調製および水素化分解法におけるその使用が記載されている。特に、FAUゼオライトの格子定数は、24.40~24.50オングストローム(Å)であり、シリカ対アルミナのモル比(silica to alumina molar ratio:SAR)は、5~10であり、アルカリ金属含有率は、0.15重量%未満である。このようなゼオライトは、水素化分解法においてそれらが用いられる場合に、ナフサ留分の方への高い選択性、特に、重質ナフサ留分の方への高い選択性を有することが実証されている。
【0009】
ゼオライトYおよびゼオライトベータをベースとする他の触媒も用いられ得る。
【0010】
特許文献2(UOP)には、ゼオライトベータおよびゼオライトYを含有している水素化分解触媒が記載されており、ゼオライトYの格子定数は、24.38~24.50オングストローム(Å)であり、触媒は、Y/ベータの重量比が5~12であることによって特徴付けられる。この触媒のゼオライトYの割合は、ゼオライトベータの割合と比べて比較的高い。これらの触媒は、従来の市販触媒と比べて改善された選択性および活性を有することが実証されている。同じく開示されているのは、高温高圧で前記触媒を用いる水素化分解法であり、炭化水素供給原料をより低い沸点およびより低い分子量を有している生成物に転化する。特に、得られた生成物は、ナフサ留分の温度範囲(C6-216℃)において沸騰する成分の大部分を含む。
【0011】
ナフサ留分の方に選択的である新しい水素化分解触媒を開発しようと試みているうちに、本出願人は、驚くべきことに、周期律表の第VIB族の元素および第VIII族の非貴金属元素によって形成される群から選ばれる少なくとも1種の水素化脱水素元素と、少なくとも1種の多孔質鉱物マトリクス、単位格子の初期格子定数a0が24.42Å超であるゼオライトY、およびゼオライトベータを含んでいる担体とを含んでおり、前記ゼオライトY対前記ゼオライトベータの重量比は、厳密に12超である、触媒により、ナフサ留分の方への、とりわけ、従来技術の触媒と比べて改善された選択性を得ることが可能となることを発見した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第7611689号明細書
【特許文献2】米国特許第7510645号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の主題)
より具体的には、本発明は、ナフサ留分の方に選択的である水素化分解触媒に関し、当該触媒は、周期律表の第VIB族の元素および第VIII族の非貴金属元素によって形成される群から選ばれ、単独でまたは混合物として利用される少なくとも1種の水素化脱水素元素と、少なくとも1種の多孔質鉱物マトリクス、単位格子の初期格子定数a0が24.42Å超であるゼオライトY、およびゼオライトベータを含んでおり、触媒中の前記ゼオライトY対前記のゼオライトベータの重量比が厳密に12超である担体とを含んでいる。
【0014】
本発明は、有利には、周期律表の第VIB族の元素および第VIII族の非貴金属元素によって形成される群から選ばれ、単独でまたは混合物として利用される少なくとも1種の水素化脱水素元素と、少なくとも1種の多孔質鉱物マトリクス、単位格子の初期格子定数a0が24.42Å超であるゼオライトY、およびゼオライトベータを含んでおり、触媒中の前記ゼオライトY対前記ゼオライトベータの重量比が12超である、担体とを含んでいる水素化分解触媒に関する。
【0015】
本発明は、有利には、周期律表の第VIB族の元素および第VIII族の非貴金属元素によって形成される群から選ばれ、単独でまたは混合物として利用される少なくとも1種の水素化脱水素元素と、少なくとも1種の多孔質鉱物マトリクス、単位格子の初期格子定数a0が24.42Å超であるゼオライトY、およびゼオライトベータを含んでいる担体とを含んでいる水素化分解触媒に関し、触媒中の前記ゼオライトY対前記ゼオライトベータの重量比は、12超である。
【0016】
本発明は、有利には、周期律表の第VIB族の元素および第VIII族の非貴金属元素によって形成される群から選ばれ、単独でまたは混合物として利用される少なくとも1種の水素化脱水素元素と、少なくとも1種の多孔質鉱物マトリクス、ゼオライトYおよびゼオライトベータを含んでいる担体とを含んでいる水素化分解触媒に関し、触媒中の前記ゼオライトY対前記ゼオライトベータの重量比は、12超である。
【0017】
この重量比は、ゼオライトの乾燥重量、すなわち、1000℃における強熱減量を測定することによって決定されるそれらの水含有率について補正されたゼオライトの重量(乾燥重量)から計算される。
【0018】
本発明の別の主題は、前記触媒の存在中で炭化水素供給原料を水素化分解するための方法にある。
【0019】
本発明の1つの利点は、本発明による水素化分解法において前記触媒が用いられた場合に、従来技術からの触媒と比べてナフサ留分の方への改善された選択性を得るための水素化分解触媒を提供するという利点にある。
【0020】
本発明において、ナフサ製造のための水素化分解触媒の選択性は、触媒テストの間に決定され、ナフサ留分、すなわち、分子当たり6個の炭素原子を有している炭化水素化合物の沸騰温度(または68℃沸点)から最高216℃までの間の範囲において沸騰する生成物の、本方法を離れる生成物の全重量に相対する重量百分率としての割合に対応する。
【0021】
本発明の目的のために、提示される種々の実施形態は、単独でまたは互いとの組み合わせで用いられてよく、組み合わせに対する一切の制限はない。
【0022】
本発明の目的のために、所与の工程のためのパラメータの種々の範囲、例えば、圧力範囲および温度範囲は、単独でまたは組み合わせで用いられてよい。例えば、本発明の目的のために、圧力値の好適な範囲は、より好適な温度値の範囲と組み合わされ得る。
【0023】
以下の本文において、化学元素の族は、CAS分類に従って与えられる(CRC Handbook of Chemistry and Physics、出版元CRC Press、編集長D. R. Lide、第81版、2000-2001)。例えば、CAS分類による第VIII族は、新IUPAC分類による8、9および10列からの金属に対応し、第VIB族は、6列からの金属に対応する。
【0024】
以下の本文において、表現「AとBとの間の、またはA~Bの(of between A and B)」および「AとBとの間、またはA~B(between A and B)」は、同等であり、間隔の両限界値(A、B)は、両値の記載された範囲に含まれることを意味する。もしそのようになっていなかったならばおよび両限界値が記載された範囲に含まれなかったならば、そのような説明が本発明によって与えられることになる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(発明の詳細な説明)
(水素化/脱水素機能)
本発明によれば、触媒は、周期律表の第VIB族の元素および第VIII族の非貴金属元素によって形成される群から選ばれる少なくとも1種の水素化脱水素元素を含み、単独でまたは混合物として利用される。
【0026】
好ましくは、本発明による触媒が含む活性相は、少なくとも1種の第VIB族金属および少なくとも1種の第VIII族金属を含んでおり、好ましくは、それらからなる。
【0027】
好ましくは、第VIII族元素は、鉄、コバルトおよびニッケルから選ばれ、これらは、単独でまたは混合物として利用され、好ましくは、ニッケルおよびコバルトから選ばれる。好ましくは、第VIB族元素は、タングステンおよびモリブデンから選ばれ、これらは、単独でまたは混合物として利用される。金属の以下の組み合わせが好適である:ニッケル-モリブデン、コバルト-モリブデン、ニッケル-タングステン、コバルト-タングステン、大いに好ましくは:ニッケル-モリブデン、ニッケル-タングステン。3種の金属の組み合わせを用いることも可能であり、例えば、ニッケル-コバルト-モリブデンがある。
【0028】
触媒中の第VIII族元素の含有率は、有利には、前記触媒の全重量に相対する酸化物の重量で0.5重量%~8重量%、好ましくは酸化物の重量で0.5重量%~6重量%、大いに好ましくは酸化物の重量で1.0重量%~4重量%である。触媒中の第VIB族金属の含有率は、前記触媒の全重量に相対する酸化物の重量で有利には1重量%~30重量%、好ましくは酸化物の重量で2重量%~25重量%、大いに好ましくは酸化物の重量で5重量%~20重量%、一層より好ましくは酸化物の重量で5重量%~16重量%である。
【0029】
好ましくは、本発明により用いられる触媒は、リン、ホウ素、ケイ素、大いに好ましくはリンから選ばれるプロモータ元素を含有することもできる。触媒がリンを含有する場合、リン含有率は、前記触媒の全重量に相対するP2O5酸化物の重量で有利には0.5重量%~10重量%、前記触媒の全重量に相対するP2O5酸化物の重量で好ましくは1重量%~6重量%、P2O5酸化物の重量でより好ましくは1重量%~4重量%である。
【0030】
(担体)
本発明による触媒が含む担体は、少なくとも1種の多孔質鉱物マトリクス、単位格子の初期格子定数a0が24.42Å超であるゼオライトY、およびゼオライトベータを含み、好ましくは、それらからなる。
【0031】
触媒の担体において用いられる多孔質鉱物マトリクスは、バインダとも呼ばれ、有利には、少なくとも1種の耐火性酸化物からなり、好ましくは、アルミナ、シリカ-アルミナ、粘土、チタン酸化物、ホウ素酸化物およびジルコニアによって形成される群から選ばれ、単独でまたは混合物として利用される。好ましくは、多孔質鉱物マトリクスは、アルミナおよびシリカ-アルミナから選ばれ、単独でまたは混合物として利用される。より好ましくは、多孔質鉱物マトリクスは、アルミナである。アルミナは、有利には、当業者に知られているそれの形態のいずれかにあることができる。大いに好ましくは、アルミナは、ガンマアルミナ、例えば、ベーマイトである。
【0032】
好ましくは、前記担体は、前記担体の全重量に相対して、14重量%~48重量%、好ましくは15重量%~40重量%、大いに好ましくは20重量%~40重量%のバインダを含む。
【0033】
本発明によると、担体は、単位格子の初期格子定数a0が24.42Å超であるゼオライトYを含む。
【0034】
好ましくは、用いられるゼオライトYの単位格子の初期格子定数a0は、24.42Å~24.70Å、好ましくは24.45Å超かつ24.70Å未満、好ましくは24.50Å超かつ24.70Å未満、好ましくは24.52Å~24.70Å、好ましくは24.52Å~24.65Å、好ましくは24.52Å~24.60Å、大いに好ましくは24.52Å~24.58Åである。
【0035】
与えられたゼオライトYの単位格子の初期格子定数a0は、本発明による触媒の合成において用いられたゼオライトYの初期格子定数a0の値である。
【0036】
ゼオライトYの単位格子の初期格子定数a0は、規格ASTM 03942-80によるX線回折によって測定される。
【0037】
好ましくは、前記担体のゼオライトYの全含有率は、前記担体の全重量に相対して50重量%~80重量%、好ましくは50重量%~70重量%、好ましくは55重量%~65重量%である。
【0038】
前記ゼオライトは、有利には、分類"Atlas of Zeolite Framework Types", 6th Revised Edition", Ch. Baerlocher, L. B. McCusker, D.H. Olson, 6th Edition, Elsevier, 2007, Elsevierにおいて定義されている。
【0039】
本発明の好適な実施形態によると、本発明による方法において用いられる触媒担体の使用のために適切な上記定義の特定の特徴を有しているゼオライトYは、有利には、FAU構造型のゼオライトY、好ましくは、合成後の全体的Si/Al原子比が2.3~2.8であり、有利には、合成後にNaY型であるものから調製される。FAU構造型の前記ゼオライトYは、有利には、脱アルミニウム工程を経る前に1回または複数回のイオン交換の工程を経る。1回または複数回のイオン交換により、部分的にまたは完全に、FAU構造型の粗合成ゼオライトY中のカチオン位置に存在する周期律表の第IA族および第IIA族に属するアルカリカチオンをNH4
+カチオンと、好ましくはNa+カチオンをNH4
+カチオンと置換することが可能となる。
【0040】
アルカリカチオンのNH4
+カチオンとの部分的なまたは完全な交換は、前記アルカリカチオンの80%から100%までの、好ましくは85%から99.5%までの、より好ましくは88%から99%までのNH4
+カチオンとの交換を意味するように理解される。1回または複数回のイオン交換工程の終わりに、ゼオライトY中のアルカリカチオンの残存量、好ましくはNa+カチオンの残存量は、ゼオライトY中に初期に存在するアルカリカチオン、好ましくはNa+カチオンの量に相対して、有利には0%~20%、好ましくは0.5%~15%、好ましくは1.0%~12%である。
【0041】
好ましくは、この工程は、アンモニウムの塩素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩または酢酸塩から選ばれる少なくとも1種のアンモニウム塩を含有している溶液による複数回のイオン交換を実施し、ゼオライト中に存在するアルカリカチオン、好ましくは、Na+カチオンを少なくとも部分的に取り除くようにする。好ましくは、アンモニウム塩は、硝酸アンモニウムNH4NO3である。
【0042】
それ故に、1回または複数回のイオン交換工程の終わりにおけるゼオライトY中のアルカリカチオン、好ましくは、Na+カチオンの残留含有率は、好ましくは、アルカリカチオン/アルミニウムのモル比、好ましくは、Na/Alのモル比が0:1~0:1、好ましくは0:1~0.005:1、より好ましくは0:1~0.008:1になるようにされる。
【0043】
望みのアルカリカチオン/アルミニウム、好ましくはNa/Alの比は、イオン交換溶液のNH4
+濃度、イオン交換温度およびイオン交換の回数を調節するすることによって得られる。溶液中のイオン交換溶液のNH4
+濃度は、有利には、0.01mol・L-1と12mol・L-1との間、好ましくは1.00mol・L-1と10mol・L-1との間で変動する。イオン交換工程の温度は、有利には20℃~100℃、好ましくは60℃~95℃、好ましくは60℃~90℃、より好ましくは60℃~85℃、よりなおさら好ましくは60℃~80℃である。イオン交換の回数は、有利には、1回と10回との間、好ましくは1回と4回との間で変動する。
【0044】
得られた前記ゼオライトY、好ましくはFAU構造型のものは、次いで、脱アルミニウム処理工程を経ることができる。前記脱アルミニウム工程は、有利には、当業者に知られている任意の方法によって行われてよい。好ましくは、脱アルミニウムは、任意選択に水蒸気の存在中での熱処理(または「スチーム処理(steaming)」)および/または1回または複数回の酸攻撃によって行われ、酸攻撃は、有利には、鉱酸または有機酸の水溶液による処理によって行われる。
【0045】
好ましくは、脱アルミニウム工程は、熱処理とこれに続く1回または複数回の酸攻撃、または1回または複数回の酸攻撃のみを実施する。
【0046】
好ましくは、前記ゼオライトYが供される任意選択に水蒸気の存在中での熱処理が行われる際の温度は、200℃~900℃、好ましくは300℃~900℃、よりなおさら好ましくは400℃~750℃である。前記熱処理の継続期間は、有利には、0.5時間以上、好ましくは0.5時間~24時間、大いに好ましくは1時間~12時間である。水の存在中で熱処理が行われるケースにおいて、熱処理中の水蒸気の容積百分率は、有利には5%~100%、好ましくは20%~100%、大いに好ましくは40%~100%である。水蒸気でなく存在する任意の容積部分は、空気から形成される。水蒸気および場合による空気から形成されるガスの流量は、有利には0.2L・h-1・g-1~10L・h-1・g-1(ゼオライトY)である。
【0047】
熱処理により、処理されるゼオライトの全体的なSi/Al原子比を未変化に維持しながらゼオライトYの構造からのアルミニウム原子の抽出が可能となる。
【0048】
水蒸気の存在中での熱処理の工程は、有利には、本発明による方法において用いられる触媒の担体を実施するのに適しておりかつ単位格子の格子定数a0が24.42Å超であるゼオライトYを得るのに必要なだけの回数繰り返されてよい。
【0049】
任意選択に水蒸気の存在中での熱処理の工程の後に、有利には、酸攻撃の工程が行われる。水蒸気の存在中での熱処理の工程から生じたアルミン酸のデブリは、脱アルミニウム済みのゼオライトの多孔度部を部分的にブロックする場合があり、前記酸攻撃により、このようなアルミン酸のデブリを部分的にまたは完全に取り除くことが可能となる;酸攻撃により、脱アルミニウム済みゼオライトの多孔度部のブロックを解除することがこのように可能となる。
【0050】
酸攻撃は、有利には、ゼオライトY(これは、場合によっては、事前に熱処理を経たものである)を、鉱酸または有機酸を含有している水溶液中に懸濁させることによって行われてよい。鉱酸は、硝酸、硫酸、塩酸、リン酸またはホウ酸であってよい。有機酸は、ギ酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、マロン酸、リンゴ酸、乳酸または任意の他の水溶性有機酸であってよい。溶液中の鉱酸または有機酸の濃度は、有利には、0.01mol・L-1と2.0mol・L-1との間、好ましくは0.5mol・L-1と1.0mol・L-1との間で変動する。酸攻撃工程の温度は、有利には20℃~100℃、好ましくは60℃~95℃、好ましくは60℃~90℃、より好ましくは60℃~80℃である。酸攻撃の継続期間は、有利には5分~8時間、好ましくは30分~4時間、好ましくは1時間~2時間である。
【0051】
任意選択に水蒸気の存在中での熱処理の1回または複数回の工程および場合による酸攻撃工程の終結の際に、前記ゼオライトYを改変するための方法は、有利には、ゼオライトY中のカチオン位置に依然として存在するアルカリカチオン、好ましくはNa+カチオンの少なくとも部分的なまたは完全な交換の工程を含む。イオン交換工程は、上記のイオン交換工程と同様の方法で行われる。
【0052】
任意選択に水蒸気の存在中での熱処理の1回または複数回の工程および場合による酸攻撃工程および場合による、アルカリカチオン、好ましくはNa+カチオンの部分的なまたは完全な交換の工程の終結の際に、前記ゼオライトYを改変するための方法は、焼成工程を含んでよい。前記焼成により、ゼオライトの多孔度部内に存在する有機種、例えば、酸攻撃工程またはアルカリカチオンの部分的なまたは完全な交換の工程によって供給されたものを取り除くことが可能となる。加えて、前記焼成工程により、ゼオライトYのプロトン型を発生させることおよびその適用の目的のためにそれに酸性を付与することが可能となる。
【0053】
焼成は、有利には、マッフル炉または管状炉において、乾燥空気下または不活性雰囲気下に、掃引床または横断床で行われてよい。焼成温度は、有利には200℃~800℃、好ましくは450℃~600℃、好ましくは500℃~550℃である。保持される焼成の継続期間は、有利には1~20時間、好ましくは6~15時間、好ましくは8~12時間である。
【0054】
それ故に、得られた前記ゼオライトYの単位格子の初期格子定数a0は、24.42Å超である。
【0055】
得られた前記ゼオライトYが有利に有する比表面積は、BET法に従う窒素物理吸着によって測定されて、550~1000m2/g、好ましくは600~900m2/g、好ましくは650~800m2/gである。
【0056】
本発明によると、担体は、ゼオライトベータも含む。
【0057】
ゼオライトベータは、一般に、構造化剤を含有している反応混合物から合成される。構造化剤の使用は、当業者に周知である:例えば、特許US 3,308,069には、水酸化テトラエチルアンモニウムの使用が記載され、特許US 5,139,759には、塩化テトラエチルアンモニウム化合物に由来するテトラエチルアンモニウムカチオンの使用が記載されている。ゼオライトベータを調製するための別の標準的な方法は、書籍“Verified Synthesis of Zeolitic Materials”に与えられる。
【0058】
本発明による担体において用いられるゼオライトベータが好ましく有する全体的SAR原子比は、10~100、優先的には20~50、より好ましくは20~30である。本発明による担体において用いられるゼオライトベータが有利に有する比表面積は、BET法に従う窒素物理吸着によって測定されて、400~800m2/g、好ましくは500~750m2/g、好ましくは550~700m2/gである。
【0059】
好ましくは、担体のゼオライトベータ含有率は、前記担体の全重量に相対する重量で2%~6%、好ましくは2%~5%、好ましくは3%~5%である。
【0060】
好ましくは、担体は、以下のものを含み、好ましくは、それらからなる:
- 単位格子の初期格子定数a0が厳密に24.50Å超であるゼオライトY:前記担体の全重量に相対する重量で、50%~80%、好ましくは50%~70%、好ましくは55%~65%;
- ゼオライトベータ:前記担体の全重量に相対する重量で2%~6%、好ましくは2%~5%、または3%~5%;および
- 少なくとも1種の多孔質鉱物マトリクス:前記担体の全重量に相対する重量で、14重量%~48重量%、好ましくは15重量%~40重量%、大いに好ましくは20重量%~40重量%。
【0061】
本発明によれば、触媒中の前記ゼオライトY対前記ゼオライトベータの重量比は、厳密に12超である。
【0062】
好ましくは、触媒中の前記ゼオライトY対前記ゼオライトベータの重量比は、13~40、好ましくは13~30、好ましくは14~20、一層より好ましくは14~18である。
【0063】
好ましくは、触媒のゼオライトYの含有率は、前記触媒の全重量に相対して26重量%~79重量%である。
【0064】
好ましくは、前記触媒のゼオライトベータの含有率は、前記触媒の全重量に相対して1重量%~6重量%である。
【0065】
好ましくは、前記触媒の少なくとも1種の多孔質鉱物マトリクスの含有率は、前記触媒の全重量に相対して7重量%~47重量%である。
【0066】
本発明による水素化分解触媒のこれらの範囲内のY/ベータ比により、前記触媒が本発明による水素化分解法において用いられる場合に、従来技術からの触媒と比較してナフサ留分の方への改善された選択性を得ることが可能となる。
【0067】
(触媒の調製)
触媒は、有利には、従来技術において用いられる従来の方法により調製される。
【0068】
特に、触媒は、以下の工程を含んでいる調製方法により調製される:
- 担体を調製する工程;以下を含む:
・少なくとも1種の多孔質鉱物マトリクスを、単位格子の初期格子定数a0が24.42Å超であるゼオライトYおよびゼオライトベータと混合する工程;触媒中の前記ゼオライトY対前記ゼオライトベータの重量比は、厳密に12超、好ましくは13~40、好ましくは13~30、好ましくは14~20、一層より好ましくは14~18である、および
・前記混合物を成形する工程;
- 周期律表の第VIB族の元素、好ましくは、ニッケルおよびコバルト、周期律表の第VIII族の非貴金属元素、好ましくは、鉄、コバルト、ニッケル、およびそれらの混合物、好ましくはニッケルおよびコバルト、およびその混合物によって形成される群から選ばれる少なくとも1種の水素化脱水素元素を、担体上に導入する工程;以下によって行う:
・成形の間に前記元素の少なくとも1種の前駆体を添加して、前記元素の少なくとも一部を導入するようにする工程、
・前記元素の少なくとも1種の前駆体を担体に含浸させる工程、
- 場合による、担体の調製の終わりに乾燥させおよび/または焼成する工程および/または少なくとも1種の水素化脱水素元素を導入する工程。
【0069】
より具体的には、触媒は、以下の工程を含んでいる調製方法に従って調製される:
a) 上記の方法により特許請求された特定の結晶学的特徴を有しているゼオライトYを調製する工程、
b) ゼオライトベータを調製する工程、
c) 多孔質鉱物マトリクスと混合し、成形して、担体を得る工程、
d) 少なくとも1種の水素化脱水素元素を担体上に以下の方法の少なくとも1つによって導入する工程:
・成形の間に前記元素の少なくとも1種の前駆体を加えて、前記元素の少なくとも一部を導入する工程、
・前記水素化脱水素元素の少なくとも1種の前駆体を担体に含浸させる工程、
場合によっては、調製の工程a)またはb)またはc)またはd)のそれぞれの終わりに得られた生成物の乾燥および/または焼成を行う。
【0070】
担体は、有利には、当業者に知られている任意の技術によって成形されてよい。成形は、例えば、押出成形、ペレット化、液滴凝固(油滴)法、回転板上での造粒または当業者に周知である任意の他の方法によって行われてよい。
【0071】
担体は、好ましくは、種々の形状およびサイズの粒体の形態に成形される。それらは、一般に、直線状またはねじれた形状の円筒状押出成形物または多葉状押出成形物、例えば、三葉状、四葉状または多葉状の押出成形物の形態で用いられるが、場合によっては、粉砕粉末、トローチ、リング、ビーズまたはホイールの形態で製造・使用され得る。しかしながら、触媒は、径が0.5~5mm、より具体的には0.7~3mm、一層より具体的には1.0~2.5mmである押出成形物の形態にあることが有利である。形状は、円筒形(中空であってもなくてもよい)、ねじれた円筒形、多葉形(例えば、2、3、4または5葉)または環状である。任意の他の形状が用いられてよい。
【0072】
好適な成形方法の1つは、前記両ゼオライトをバインダ、好ましくはアルミナと湿潤ゲルの形態で、数十分、好ましくは10~40分にわたって共混練すること、次いで、このようにして得られたペーストをダイに通して、径が好ましくは0.5~5mmである押出成形物を形成することからなる。
【0073】
好適な成形方法の別の方によると、前記両ゼオライトは、多孔質鉱物マトリクスの合成の間に導入され得る。例えば、本発明のこの好適な実施形態によると、前記ゼオライトのYおよびベータは、多孔質鉱物マトリクス、例えば、シリコアルミン酸マトリクス等の合成の間に加えられる:このケースにおいて、前記両ゼオライトは、有利には、酸媒体中のアルミナ化合物と、完全に可溶なシリカ化合物とからなる混合物に加えられ得る。
【0074】
第VIB族および/または第VIII族の元素は、場合によっては、成形工程の間に、前記元素の少なくとも1種の化合物を加えることによって導入されて、前記元素の少なくとも一部分を導入するようにしてよい。
【0075】
少なくとも1種の水素化脱水素元素の導入は、有利には、リン、ホウ素、ケイ素、好ましくはリンから選ばれる少なくとも1種のプロモータ元素の導入によって伴われ得、場合によっては、第VIIA族および/または第VB族の元素の導入によって伴われる。成形された固体は、場合によっては、60℃~250℃の温度で乾燥させられ、場合によっては、250℃~800℃の温度で30分~6時間の期間にわたって焼成される。
【0076】
少なくとも1種の水素化脱水素元素を導入する工程は、有利には、当業者に周知な方法によって、特に、成形済みかつ焼成済みまたは乾燥済みの、好ましくは、焼成済みの担体に、第VIB族および/または第VIII族の元素の前駆体、場合による、少なくとも1種のプロモータ元素の前駆体および場合による少なくとも1種の第VIIA族および/または第VB族の元素の前駆体を含有している溶液を含浸させる1回または複数回の操作によって行われる。
【0077】
好ましくは、前記工程d)は、水素化/脱水素機能基、すなわち、第VIB族および/または第VIII族の元素の前駆体を含有している溶液の乾式含浸の方法によって行われ、場合によっては、次いで、乾燥工程が行われ、好ましくは、焼成工程は行われない。
【0078】
本発明の触媒が第VIII族非貴金属を含有するケースにおいて、第VIII族金属は、好ましくは、第VIB族の操作の後にまたはこのものと同時に、成形かつ焼成済みの担体の含浸の1回または複数回の操作によって導入される。
【0079】
少なくとも1種の水素化脱水素元素の導入に次いで、場合によっては、60℃~250℃の温度での乾燥、および任意選択に、250℃~800℃の温度での焼成を行うことができる。
【0080】
モリブデンおよびタングステンの供給源は、有利には、酸化物および水酸化物、モリブデン酸およびタングステン酸およびそれらの塩、特に、アンモニウム塩、例えば、モリブデン酸アンモニウム、七モリブデン酸アンモニウムおよびタングステン酸アンモニウム、リンモリブデン酸、リンタングステン酸およびそれらの塩、ケイモリブデン酸、ケイタングステン酸およびそれらの塩から選ばれる。使用が好ましくなされるのは、酸化物およびアンモニウム塩、例えば、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸アンモニウム、七モリブデン酸アンモニウムおよびタングステン酸アンモニウムである。
【0081】
用いられ得る非貴金属第VIII族元素の供給源は、当業者に周知である。例えば、非貴金属について、使用がなされることになるのは、硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、リン酸塩、ハロゲン化物、例えば、塩化物、臭化物およびフッ化物、カルボン酸塩、例えば、酢酸塩および炭酸塩である。
【0082】
リンの好適な供給源は、オルトリン酸H3PO4であるが、その塩およびエステル、例えば、リン酸アンモニウムも適している。リンは、例えば、リン酸と窒素を含有している塩基性有機化合物、例えば、アンモニア水、第一級および第二級のアミン、環状アミン、ピリジンおよびキノリンの系統の化合物およびピロールの系統の化合物との混合物の形態で導入されてよい。タングストリン酸またはタングストモリブデン酸が用いられ得る。
【0083】
リン含有率は、溶液中および/または担体上に混合型化合物、例えば、タングステン-リンまたはモリブデン-タングステン-リンを形成するように調節されるが、これは、本発明の範囲を限定するものではない。これらの混合型化合物は、ヘテロポリアニオンであることができる。これらの化合物は、例えば、アンダーソンヘテロポリアニオンであることができる。
【0084】
ホウ素の供給源は、ホウ酸であってよく、好ましくは、オルトホウ酸H3BO3、二ホウ酸アンモニウムまたは五ホウ酸アンモニウム、ホウ素酸化物またはホウ酸エステルである。ホウ素は、例えば、ホウ酸、過酸化水素水溶液および窒素を含有している塩基性有機化合物、例えば、アンモニア水、第一級および第二級のアミン、環状アミン、ピリジンおよびキノリンの系統の化合物およびピロールの系統の化合物の混合物の形態で導入されてよい。ホウ素は、例えば、水/アルコールの混合物中のホウ酸の溶液によって導入されてよい。
【0085】
多くのケイ素供給源が用いられてよい。それ故に、使用がなされてよいのは、オルトケイ酸エチルSi(OEt)4、シロキサン、ポリシロキサン、シリコーン、シリコーンエマルション、ケイ酸ハロゲン化物、例えば、フルオロケイ酸アンモニウム(NH4)2SiF6またはフルオロケイ酸ナトリウムNa2SiF6である。ケイモリブデン酸およびその塩、ケイタングステン酸およびその塩も有利には用いられてよい。ケイ素は、有利には、例えば、水/アルコールの混合物中のケイ酸エチル溶液の含浸によって加えられてよい。ケイ素は、例えば、水に懸濁したシリコーンまたはケイ酸タイプのケイ素化合物の含浸によって加えられてよい。
【0086】
用いられ得る第VB族元素の供給源は、当業者に周知である。例えば、ニオブの供給源の中で、使用がなされてよいのは、酸化物、例えば、五酸化二ニオブNb2O5、ニオブ酸Nb2O5・H2O、水酸化ニオブおよびポリオキソニオブ酸塩、式Nb(OR1)3(式中、R1は、アルキル基である)のニオブアルコキシド、シュウ酸ニオブNbO(HC2O4)5、またはニオブ酸アンモニウムである。使用が好ましくなされるのは、シュウ酸ニオブまたはニオブ酸アンモニウムである。
【0087】
用いられ得る第VIIA族元素の供給源は、当業者に周知である。例えば、フッ化物アニオンが、フッ化水素酸またはその塩の形態で導入され得る。これらの塩は、アルカリ金属、アンモニウムまたは有機化合物により形成される。有機化合物のケースにおいて、塩は、有利には、有機化合物とフッ化水素酸との間の反応によって反応混合物中に形成される。フッ化物アニオンを水中に放出することができる加水分解性化合物、例えば、フルオロケイ酸アンモニウム(NH4)2SiF6、四フッ化ケイ素SiF4、または四フッ化ナトリウムNa2SiF6を用いることも可能である。フッ素は、例えば、フッ化水素酸またはフッ化アンモニウムの水溶液の含浸によって導入され得る。
【0088】
(水素化分解法)
本発明による触媒は、有利には、水素化分解法において、特に、ナフサの製造のために用いられる。水素化分解法、例えば、本発明による方法において用いられる触媒は、有利には、硫化された形態にあることができる。前記触媒の第VIB族金属および/または第VIII族非貴金属は、したがって、硫化された形態で存在する。
【0089】
本発明による方法において用いられる触媒は、有利には、少なくとも一部、金属性の種を硫化された形態に転化するために事前に硫化処理に供された後に、それらは、処理されるべき供給原料と接触させられる。硫化によるこの活性化処理は、当業者に周知であり、文献においてすでに記載された任意の方法によって、現場内(in situ)、すなわち、反応器内、または現場外(ex situ)で行われ得る。
【0090】
当業者に周知な従来の硫化方法は、硫化水素(高純度または例えば水素-硫化水素の混合物の流れ下)の存在中、150℃~800℃、好ましくは250℃~600℃の温度で、一般にフロースルー床反応ゾーンにおいて触媒を加熱することからなる。
【0091】
本発明の別の主題は、少なくとも1種の炭化水素供給原料、好ましくは、液体の形態にあるものを水素化分解するための方法にあり、当該供給原料の化合物の最低50重量%が300℃を超える初沸点および650℃未満の最終沸点を有し、当該水素化分解は、本発明による触媒の存在中でわれ、その際の温度は、200℃~480℃であり、その際の全圧は、1MPa~25MPaであり、その際の炭化水素供給原料の容積当たりの水素の容積比は、80~5000リットル/リットルであり、その際の毎時空間速度(HSV)は、反応器に充填される触媒の容積当たりの炭化水素供給原料(これは、好ましくは液体である)の容積流量の比によって定義されて、0.1~50h-1である。
【0092】
有利には、本発明による触媒は、本発明による水素化分解法において、1種または複数種の水素化処理触媒を含有している前処理セクションの後に用いられ、この水素化処理触媒は。当業者に知られている任意の触媒であってよく、当該触媒により、供給原料(下記参照)中の所定の汚染物質、例えば、窒素、硫黄または金属の含有率を低下させることが可能となる。この前処理セクションの操作条件(HSV、温度、圧力、水素流量、液体、反応構成等)は、当業者の知識によれば多種多様であり得る。
【0093】
(供給原料)
本発明による水素化分解法によって非常に多様な供給原料が処理され得る。本発明による水素化分解法において用いられる供給原料は、炭化水素供給原料であって、その化合物の最低50重量%は、300℃超の初期沸点および650℃未満の最終沸点を有し、好ましくは、その化合物の最低60重量%、好ましくはその化合物の最低75重量%、より好ましくは、その化合物の最低80重量%は、300℃超の初期沸点および650℃未満の最終沸点を有するものである。
【0094】
供給原料は、有利には、LCO(Light Cycle Oil(ライトサイクルオイル)、接触分解ユニットから得られる軽質ガスオイル)、常圧留出物、減圧留出物、例えば、原油の直接蒸留から得られるガスオイルまたは転化ユニット、例えば、FCC、コーキングまたはビスブレーキングのユニットから得られるガスオイル、潤滑油基剤からの芳香族化合物の抽出のためのユニットに由来する供給原料または潤滑油基剤の溶媒脱ろうから生じた供給原料、AR(atmospheric residues:常圧残渣)および/またはVR(vacuum residues:減圧残渣)および/または脱れき油の固定床または沸騰床の脱硫または水素化転化のための方法に由来する留出物、および脱れき油、またはフィッシャー・トロプシュ方法から得られたパラフィンから選ばれ、単独でまたは混合物として利用される。言及がなされてよいのは、再生可能な起源の供給原料(例えば、植物油、動物性脂肪、リグノセルロース系バイオマスの水熱転化または熱分解からの油)、およびまたプラスチック熱分解油である。上記リストは、限定するものではない。前記供給原料の沸点T5は、好ましくは、300℃超、好ましくは340℃超であり、すなわち、供給原料中に存在する化合物の95%の沸点は、300℃超、好ましくは340℃超である。
【0095】
本発明による方法において処理される供給原料の窒素含有率は、有利には500重量ppm超、好ましくは500~10,000重量ppm、より好ましくは700~4000重量ppm、よりなおさら好ましくは1000~4000重量ppmである。本発明による方法において処理される供給原料の硫黄含有率は、有利には0.01重量%~5重量%、好ましくは0.2重量%~4重量%、よりなおさら好ましくは0.5重量%~3重量%である。
【0096】
供給原料は、場合によっては、金属を含有する場合がある。本発明による方法において処理される供給原料のニッケルおよびバナジウムの累積含有率は、好ましくは、1重量ppm未満である。
【0097】
供給原料は、場合によっては、アスファルテンを含有する場合がある。アスファルテン含有率は、一般に3000重量ppm未満、好ましくは1000重量ppm未満、一層より好ましくは200重量ppm未満である。
【0098】
有利には、上記の水素化処理セクションの後に本発明による触媒が用いられる場合、本発明による触媒を用いる本発明による方法に注入される液体中の窒素、硫黄、金属またはアスファルテンの含有率は、低下させられる。好ましくは、本発明による水素化分解法において処理された供給原料中の有機性窒素の含有率は、次いで、水素化処理の後に、0~200ppm、好ましくは0~50ppm、一層より好ましくは0~30ppmである。硫黄含有率は、好ましくは、1000ppm未満であり、アスファルテン含有率は、好ましくは200ppmである一方で、金属(NiまたはV)の含有率は、1ppm未満である。
【0099】
本発明による水素化分解法は、供給原料の前処理と、本発明による触媒を用いる1基または複数基の水素化分解反応器との間に分画工程を含む場合がある。前処理と、本発明による触媒を用いる1基または複数基の水素化分解反応器との間に(ガスおよび液体)の分画なしで水素化分解法が行われる好適なケースにおいて、前処理の後に液体から取り除かれる窒素および硫黄は、NH3およびH2Sの形態で、本発明による触媒を含有している1基または複数基の反応器に注入される。
【0100】
本発明によれば、本発明による前記炭化水素供給原料を水素化分解するための方法が行われる際の温度は、200℃~480℃であり、その際の全圧は、1MPa~25MPaであり、炭化水素供給原料の容積当たりの水素の容積の比は、80~5000リットル/リットルであり、その際の毎時空間速度(HSV)は、反応器に充填された触媒の容積当たりの炭化水素供給原料の容積流量の比によって定義されて、0.1~50h-1である。
【0101】
好ましくは、本発明による水素化分解法は、水素の存在中、250℃~480℃、好ましくは320℃~450℃、大いに好ましくは330℃~435℃の温度で、2~25MPa、大いに好ましくは3~20MPaの圧力下に、0.1~20h-1、好ましくは0.1~6h-1、好ましくは0.2~3h-1の空間速度で実行され、導入される水素の量は、水素の容積(リットル)/炭化水素の容積(リットル)の容積比が100~2000L/Lになるようにされる。
【0102】
本方法は、標的とされる供給原料の転化度に応じて1回の工程または2回の工程で行われ得、未転化部分のリサイクルを伴うかまたは伴わない。本発明による触媒は、非限定的な方法で、水素化分解法の1回または2回の工程において、単独でまたは別の水素化分解触媒との組み合わせで用いられ得る。
【0103】
本発明による方法において用いられるこれらの操作条件により、一般に、沸点が340℃未満、よりなおさら良好には370℃未満である生成物への通過当たりの転化率15重量%超、よりなおさら好ましくは20~100重量%を得ることが可能となる。
【0104】
実施例は、本発明を例証するが、本発明の範囲を制限するものではない。
【0105】
(実施例)
(実施例1-比較触媒Aの調製)
触媒Aのための担体の成形による調製を、市販のゼオライトY(ZeolystからのゼオライトCBV712)60重量%および市販のゼオライトベータ(ZeolystからのゼオライトCP814e)10重量%の市販のベーマイト(SASOLからのPural SB3)の存在中での混練-押出によって行う。ゼオライトYの格子定数は、24.35Åであり、SiO2/Al2O3モル比は、12であり、比表面積は、BET法による窒素物理吸着によって測定されて、850m2/gであり、ゼオライトベータのSiO2/Al2O3モル比は、25であり、比表面積は、BET法による窒素物理吸着により測定されて、670m2/gである。得られた押出成形物を、80℃で乾燥させ、次いで、湿潤空気(乾燥空気の重量(kg)当たり水5重量%)中、600℃で焼成する。焼成済み担体は、乾燥基準で、60重量%のゼオライトY、10重量%のゼオライトベータおよび30重量%のアルミナを含み、すなわち、触媒中のY/ベータの重量比=6である。
【0106】
触媒Aの調製を、生じた担体の乾式含浸によって行い、元素Ni、Moを含有している水溶液を用いる。以下の前駆体を水に溶解させることによってこの溶液を得る:硝酸ニッケルおよび七モリブデン酸アンモニウム。溶液中の前駆体の量の調節を、最終触媒上の標的とされる濃度に応じて行う。乾式含浸の後に、触媒を120℃で空気中において乾燥させる。
【0107】
触媒中の重量百分率は、それぞれに乾燥基準で以下の通りである:モリブデン(MoO3の形態)15.1重量%、ニッケル(NiOの形態)3.3重量%。
【0108】
(実施例2-比較例の触媒Bの調製)
触媒Bのための担体の成形による調製を、ゼオライトY 60重量%およびゼオライトベータ(ZeolystからのゼオライトCP814e)10重量%の市販のベーマイト(Pural SB3)の存在中での混練-押出によって行う。ゼオライトYの格子定数は、24.42Åであり、SiO2/Al2O3モル比は、5.2であり、比表面積は、BET法による窒素物理吸着によって測定されて、800m2/gであり、ゼオライトベータのSiO2/Al2O3モル比は、25であり、比表面積は、BET法による窒素物理吸着により測定されて、670m2/gである。得られた押出成形物を、80℃で乾燥させ、次いで、湿潤空気(乾燥空気の重量(kg)当たり水5重量%)中、600℃で焼成する。焼成済み担体は、乾燥基準で、60重量%のゼオライトY、10重量%のゼオライトベータおよび30重量%のアルミナを含み、すなわち、触媒中のY/ベータの重量比=6である。
【0109】
触媒Bの調製を、生じた担体の乾式含浸によって行い、元素Ni、Moを含有している水溶液を用いる。以下の前駆体を水に溶解させることによってこの溶液を得る:硝酸ニッケルおよび七モリブデン酸アンモニウム。溶液中の前駆体の量の調節を、最終触媒上の標的とされる濃度に応じて行う。乾式含浸の後に、触媒を120℃で空気中において乾燥させる。
【0110】
触媒中の重量百分率は、それぞれに乾燥基準で以下の通りである:モリブデン(MoO3の形態)15.1重量%、ニッケル(NiOの形態)3.3重量%。
【0111】
(実施例3-比較例の触媒Cの調製)
触媒Cのための担体の成形による調製を、ゼオライトY 60重量%および市販のゼオライトベータ(CP814e)10重量%の市販のベーマイト(Pural SB3)の存在中での混練-押出によって行う。ゼオライトYの格子定数は、24.54Åであり、SiO2/Al2O3モル比は、5.2であり、比表面積は、BET法による窒素物理吸着によって測定されて、830m2/gであり、ゼオライトベータのSiO2/Al2O3モル比は、25であり、比表面積は、BET法による窒素物理吸着により測定されて、670m2/gである。得られた押出成形物を、80℃で乾燥させ、次いで、湿潤空気(乾燥空気の重量(kg)当たり水5重量%)中、600℃で焼成する。焼成済み担体は、乾燥基準で、60重量%のゼオライトY、10重量%のゼオライトベータおよび30重量%のアルミナを含み、すなわち、触媒中のY/ベータの重量比=6である。
【0112】
触媒Cの調製を、生じた担体の乾式含浸によって行い、元素Ni、Moを含有している水溶液を用いる。以下の前駆体を水に溶解させることによってこの溶液を得る:硝酸ニッケルおよび七モリブデン酸アンモニウム。溶液中の前駆体の量の調節を、最終触媒上の標的とされる濃度に応じて行う。乾式含浸の後に、触媒を120℃で空気中において乾燥させる。
【0113】
触媒中の重量百分率は、それぞれに乾燥基準で以下の通りである:モリブデン(MoO3の形態)15.1重量%、ニッケル(NiOの形態)3.3重量%。
【0114】
(実施例4-本発明に合致する触媒Dの調製)
触媒Dのための担体の成形による調製を、ゼオライトY 63重量%およびゼオライトベータ(CP814e)3.5重量%の市販のベーマイト(Pural SB3)の存在中での混練-押出によって行う。ゼオライトYの格子定数は、24.54Åであり、SiO2/Al2O3モル比は、5.2であり、比表面積は、BET法による窒素物理吸着によって測定されて、830m2/gであり、ゼオライトベータのSiO2/Al2O3モル比は、25であり、比表面積は、BET法による窒素物理吸着により測定されて、670m2/gである。得られた押出成形物を、80℃で乾燥させ、次いで、湿潤空気(乾燥空気の重量(kg)当たり水5重量%)中、600℃で焼成する。焼成済み担体は、乾燥基準で、63重量%のゼオライトY、3.5重量%のゼオライトベータおよび30重量%のアルミナを含み、すなわち、触媒中のY/ベータの重量比=18である。乾式含浸の後に、触媒を、120℃で空気中において乾燥させる。
【0115】
触媒Dの調製を、生じた担体の乾式含浸によって行い、元素Ni、Moを含有している水溶液を用いる。以下の前駆体を水に溶解させることによってこの溶液を得る:硝酸ニッケルおよび七モリブデン酸アンモニウム。溶液中の前駆体の量の調節を、最終触媒上の標的とされる濃度に応じて行う。
【0116】
触媒中の重量百分率は、それぞれに乾燥基準で以下の通りである:モリブデン(MoO3の形態)10重量%、ニッケル(NiOの形態)2.0重量%。
【0117】
(実施例5)
上記の触媒の性能の評価を、減圧蒸留物のフラクションおよびガスオイルを含んでいる供給原料の水素化分解において、下向流の構成にある等温テストパイロットユニットを用いる1回の工程で行う。
【0118】
このテストの供給原料は、水素化処理(HDT)を経る。この水素化処理工程の後に、テスト供給原料の15℃における密度は、0.8755g/mLであり、残留窒素含有率は、23重量ppmであり、残留硫黄含有率は、16重量ppmである。水素化処理の後のこのテスト供給原料についての模擬蒸留の初留点は、163.3℃であり、終点は、578.7℃にある。模擬蒸留の50重量%点は、391.7℃にある。本方法のHDT工程によって生じた硫化水素およびアンモニアの分圧をシミュレートするために、テスト供給原料に、DMDSおよびアニリンをそれぞれに添加して、最終の添加済み供給原料中に8820重量ppmの硫黄および1900重量ppmの窒素を得るようにする。
【0119】
各触媒を別個に評価し、水素化分解テストの前に、4重量%のジメチルスルフィド(DMDS)および2重量%のアニリンを添加したSRGO(straight run gas oil:直留ガスオイル)供給原料(すなわち、原油の直接蒸留に由来するガスオイルの供給原料)下に硫化する。硫化を行う際のHSVは、2h-1であり(HSV=Hourly Space Velocity:毎時空間速度)、H2/供給原料の容積比は、1000NL/Lであり、全圧は、140bar(すなわち、14.0MPa)であり、保持温度は、6時間にわたって350℃である。
【0120】
硫化の後に、操作条件を、水素化分解テストのために用いられるものに調節する:HSV1.5h-1、H2/供給原料の容積比1000NL/L、全圧140bar(すなわち、14.0MPa)。供給原料による150時間後の216℃+フラクションの純転化率65重量%を標的にするように反応器の温度を調節する。
【0121】
純転化率を、沸点が216℃未満である留分(またはフラクション)の収率からテスト供給原料中に存在する沸点が216℃未満である留分の収率を減算したものとして定義する。
【0122】
触媒の性能を、基準とみなされる触媒Bの性能と比較し、表1に報告する。摂氏度(℃)における相対的な活性を、純転化率65%を得る基準触媒Bの温度と評価されるべき触媒で得られた温度との間の差から得る。68-216℃留分の相対的な収率を、両方のケースにおいて、216℃+留分の純転化率65重量%で得られる評価対象触媒の収率と、基準触媒Bの収率との間の差として求める。正の値は、改善された性能、すなわち、より高い活性またはより高い収率をもたらす。
【0123】
【0124】
上記の表において報告された結果により、ゼオライトYおよびゼオライトベータの組み合わせを重量比18で有し、ゼオライトYの格子定数が24.54Åである本発明による触媒Dにより、ゼオライトYを用いるが、格子定数および/またはY/ベータ比がより低い比較の触媒A、BおよびCと比べてナフサ留分の方への選択性における利得を得ることが可能となることが示されている。
【0125】
触媒CおよびDの性能の比較により、ゼオライトYの格子定数を増大させるだけでは、ナフサ留分の方への増大した選択性を得るために十分ではないことが明らかに示されている。これは、ゼオライトYと比べて特定の比でのゼオライトベータの使用と結び付けられなければならない。
【0126】
触媒D(Dの相対的活性=0)は、より低い全ゼオライト含有率で転化活性は触媒AおよびB(Aの相対的活性=-9およびBの相対的活性=0)に少なくとも等しいというさらなる利点を有することも観察される(触媒Dの全ゼオライト含有率=63+3.5=66.5重量%対触媒AおよびB:全ゼオライト含有率=60+10=70重量%)。
【国際調査報告】