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特表2024-541538ナフサの製造に特化したゼオライトYを含んでいる水素化分解触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】ナフサの製造に特化したゼオライトYを含んでいる水素化分解触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/14 20060101AFI20241031BHJP
   C10G 47/20 20060101ALI20241031BHJP
   B01J 29/76 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B01J29/14 M
C10G47/20
B01J29/76 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531445
(86)(22)【出願日】2022-11-21
(85)【翻訳文提出日】2024-07-26
(86)【国際出願番号】 EP2022082617
(87)【国際公開番号】W WO2023094319
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】2112646
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100228175
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 充紀
(72)【発明者】
【氏名】ドダン マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ドーダン アントワーヌ
(72)【発明者】
【氏名】リヴァラン ミカエル
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BB02A
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BC59A
4G169BC59B
4G169BC60A
4G169BC66A
4G169BC67A
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169CC05
4G169DA06
4G169EA02Y
4G169EC04Y
4G169EC06Y
4G169EC27
4G169FA01
4G169FA02
4G169FB14
4G169FB67
4G169FC05
4G169ZA04A
4G169ZA05B
4G169ZA19B
4G169ZC03
4G169ZC04
4G169ZC08
4G169ZD03
4G169ZF07B
4H129AA02
4H129CA07
4H129CA09
4H129DA21
4H129KA12
4H129KB03
4H129KB09
4H129KC14X
4H129KC15X
4H129KC15Y
4H129KC17X
4H129KC17Y
4H129KD13X
4H129KD15X
4H129KD15Y
4H129KD16X
4H129KD18X
4H129KD19X
4H129KD22X
4H129KD24X
4H129KD24Y
4H129NA22
(57)【要約】
本発明は、ナフサ留分に関して選択的な水素化分解触媒について説明し、さらに、前記触媒を用いる水素化分解方法について説明する。本触媒は、周期律表のVIB族および非貴金属VIII族の元素からなる群から選択され、単独でまたは混合物として利用される少なくとも1種の水素化脱水素元素と、少なくとも1種の多孔質鉱物マトリクス、初期結晶格子定数a0が24.42Aを超えるガンマゼオライト、およびベータゼオライトを含む担体とを含み、触媒中の前記ガンマゼオライト対前記ベータゼオライトの重量比は、厳密に12より大きい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の水素化脱水素元素と、担体とを含んでいる水素化分解触媒であって、該水素化脱水素元素は、周期律表の第VIB族の元素および第VIII族の非貴金属元素によって形成される群から選ばれ、単独でまたは混合物として利用され、該担体は、少なくとも1種の多孔質鉱物マトリクス、ゼオライトYを含み、ゼオライトYの単位格子の初期格子定数aは、厳密に24.40Å未満であり、BET比表面積は、700~1000m/gであり、ミクロ細孔容積は、窒素吸着によって決定されて、0.28mL/g超であり、ブレンステッド酸度は、300micromol/g超である、触媒。
【請求項2】
第VIII族元素は、鉄、コバルト、ニッケルから選ばれ、これらは、単独でまたは混合物として利用され、好ましくは、ニッケルおよびコバルトから選ばれ、第VIII族元素の含有率は、前記触媒の全重量に相対して、酸化物の重量で0.5重量%~8重量%、好ましくは酸化物の重量で0.5重量%~6重量%、大いに好ましくは酸化物の重量で1.0重量%~4重量%である、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
第VIB族元素は、タングステンおよびモリブデンから選ばれ、これらは、単独でまたは混合物として利用され、第VIB族元素の含有率は、前記触媒の全重量に相対して、酸化物の重量で1重量%~30重量%、好ましくは酸化物の重量で2重量%~25重量%、大いに好ましくは酸化物の重量で5重量%~20重量%、一層より好ましくは酸化物の重量で5重量%~16重量%である、請求項1または2に記載の触媒。
【請求項4】
前記ゼオライトYのブレンステッド酸度は、300micromol/g超、好ましくは320~500micromol/g、好ましくは325~425micromol/gである、請求項1~3のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項5】
ゼオライトYの単位格子の初期格子定数aは、24.30~24.39Å、好ましくは24.32~24.39Å、好ましくは24.32~24.38Å、大いに好ましくは24.34~24.38Åである、請求項1~4のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項6】
担体は、ゼオライトベータも含み、触媒中の前記ゼオライトY対前記ゼオライトベータの重量比は、1~40である、請求項1~5のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項7】
触媒のゼオライトYの含有率は、前記触媒の全重量に相対して7~78重量%である、請求項1~6のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項8】
ゼオライトベータが触媒配合物中に存在するケースにおいて、前記触媒のゼオライトベータの含有率は、前記触媒の全重量に相対して2~39重量%である、請求項1~7のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項9】
前記触媒の少なくとも1種の多孔質鉱物マトリクスの含有率は、前記触媒の全重量に相対して4~81重量%である、請求項1~8のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項10】
少なくとも1種の炭化水素供給原料の水素化分解のための方法であって、該炭化水素供給原料の化合物の最低50重量%の初期沸点は、300℃超であり、最終沸点は、650℃未満であり、該水素化分解を、請求項1~9のいずれか1つに記載の触媒の存在中で行い、その際の温度は、200℃~480℃であり、その際の全圧は、1MPa~25MPaであり、それに伴う水素の容積対炭化水素供給原料容積の比は、80~5000リットル/リットルであり、その際の毎時空間速度(HSV)は、炭化水素供給原料の容積流量対反応器に充填された触媒の容積の比によって定義されて、0.1~50h-1である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼオライトUSYをベースとする水素化分解触媒に関し、減圧蒸留物およびガスオイルのタイプの石油留分の水素化分解によるナフサの製造のためのその使用にも関する。このタイプの方法は、とりわけ、石油化学中間物およびガソリン燃料の製造のために炭化水素供給原料の転化に向けられた計画において用いられる。
【背景技術】
【0002】
水素化分解触媒は、一般に、それらの酸機能基の性質に基づいて分類され、特に、シリカ-アルミナタイプの無定形酸機能基を含んでいる触媒およびゼオライト性の分解機能基、例えば、ゼオライトYまたはゼオライトベータを含んでいる触媒がある。
【0003】
水素化分解触媒は、水素化分解法においてそれらが用いられる場合に得られる主生成物に従っても分類され、2つの主生成物は、中間蒸留物およびナフサである。
【0004】
ナフサまたはナフサ留分は、沸点が中間蒸留物留分より低い石油フラクションを意味するように理解される。中間蒸留物留分は、一般に、150℃~370℃のカットポイントを有し、ケロセンおよびガスオイルの製造を最大にするようにする。ただし、例えばナフサの製造に特に標的とされる方法のケースにおいて、中間蒸留物留分の下限カットポイントは、ナフサの収率を増大させるように増大させられ得る。
【0005】
この目的のために、ナフサ留分は、分子当たり6個の炭素原子を有している炭化水素化合物の沸点(または68℃沸点)と最高216℃までの間の沸点を有することができ、ガソリン留分を含む。
【0006】
ガソリンおよびナフサの留分に高い需要がある。これは、精製業者が幾年にわたってナフサ留分の方に選択的である水素化分解触媒に焦点を当ててきた理由である。
【0007】
ナフサ留分を生じさせるためにFAUタイプのゼオライトをベースとする触媒を用いることが知られている。
【0008】
特許文献1(Shell)には、FAUタイプのゼオライトY、前記ゼオライトを含んでいる触媒、その調製および水素化分解法におけるその使用が記載されている。特に、FAUゼオライトの格子定数は、24.40~24.50オングストローム(Å)であり、シリカ-アルミナのモル比(silica-alumina mole ratio:SAR)は、5~10であり、アルカリ金属含有率は、0.15重量%未満である。そのようなゼオライトは、水素化分解法においてそれらが用いられる場合に、ナフサ留分の方への高い選択性、特に、重質ナフサ留分の方への高い選択性を有することが実証されている。
【0009】
特許出願(特許文献2)(Shell)には、格子定数が24.42~24.52オングストローム(Å)であり、シリカ-アルミナのモル比(SAR)が10~15であり、表面積が910~1020m/gであるFAUゼオライトの調製が記載されている。この系統は、このゼオライトを含んでいる触媒がナフサ留分の方に特に選択的であるのは、炭化水素留分を転化するための方法において用いられる場合であることを教示する。
【0010】
特許出願(特許文献3)(Shell)には、低格子定数が24.10~24.40オングストローム(Å)であり、シリカ-アルミナのモル比(SAR)が12超、好ましくは20~100であり、BET比表面積が850m/g超であり、ミクロ細孔容積が0.28mL/g超であるゼオライトYを含んでいる触媒を用いる水素化分解法が記載されている。特許文献3には、低格子定数を有するゼオライトは、中間蒸留物の方に選択的であるが、より高い格子定数を有するゼオライトより活性に乏しいことが知られていることが教示されている。特許文献3の発明による低格子定数を有するゼオライトを含んでいる触媒は、それにもかかわらず、中間蒸留物の方への良好な選択性と組み合わされて高い活性を与える。
【0011】
ゼオライトYおよびゼオライトベータをベースとする他の触媒も用いられ得る。
【0012】
特許(特許文献4)(UOP)には、ゼオライトベータおよびゼオライトYを含有している水素化分解触媒が記載されており、ゼオライトYの格子定数は、24.38~24.50オングストローム(Å)であり、触媒は、Y/ベータの重量比5~12によって特徴付けられる。この触媒は、ゼオライトベータの割合と比べて比較的高い割合のゼオライトYを有している。これらの触媒は、従来の市販触媒と比べて改善された選択性および活性を有することが実証されている。同じく開示されているのは、炭化水素供給原料をより低い沸点およびより低い分子量を有している生成物に転化するために高温高圧で前記触媒を用いる水素化分解法である。特に、得られた生成物は、ナフサ留分の温度範囲(C6-216℃)において沸騰する大部分の成分を含む。
【0013】
ナフサ留分の方に選択的である新しい水素化分解触媒を開発しようと試みているうちに、本出願人は、驚くべきことに、周期律表の第VIB族の元素および第VIII族の非貴金属元素によって形成される群から選ばれる少なくとも1種の水素化脱水素元素と、少なくとも1種の多孔質鉱物マトリクス、単位格子の初期格子定数aが厳密に24.40Å未満であり、BET比表面積が700~1000m/gであり、ミクロ細孔容積は、窒素吸着によって決定されて,0.28mL/g超であり、ブレンステッド酸度は、300micromol/g超であるゼオライトYを含んでいる担体とを含んでいる触媒により、とりわけ、従来技術の触媒と比べてナフサ留分の方への改善された選択性を得ることが可能となることを発見した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第7611689号明細書
【特許文献2】国際公開第11/067258号
【特許文献3】国際公開第04/0487988号
【特許文献4】米国特許第7510645号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
(発明の主題)
より具体的には、本発明は、ナフサ留分の方に選択的であり、周期律表の第VIB族の元素および第VIII族の非貴金属元素によって形成される群から選ばれ、単独でまたは混合物として利用される少なくとも1種の水素化脱水素元素と、少なくとも1種の多孔質鉱物マトリクス、単位格子の初期格子定数aが厳密に24.40Å未満であり、BET比表面積が700~1000m/gであり、ミクロ細孔容積が窒素吸着によって決定されて0.28mL/g超であり、ブレンステッド酸度が厳密に300micromol/g超であるゼオライトYを含んでいる担体とを含んでいる水素化分解触媒に関する。
【0016】
本発明は、有利には、周期律表の第VIB族の元素および第VIII族の非貴金属元素によって形成される群から選ばれ、単独でまたは混合物として利用される少なくとも1種の水素化脱水素元素と、少なくとも1種の多孔質鉱物マトリクス、単位格子の初期格子定数aが24.40Å未満であり、BET比表面積が700~1000m/gであり、ミクロ細孔容積が窒素吸着によって決定されて0.28mL/g超であり、ブレンステッド酸度が300micromol/g超であるゼオライトYを含んでいる担体とを含んでいる水素化分解触媒に関する。
【0017】
本発明の別の主題は、前記触媒の存在中で炭化水素供給原料を水素化分解するための方法にある。
【0018】
本発明の1つの利点は、本発明による水素化分解法において用いられる場合に、従来技術からの触媒と比べてナフサ留分の方への改善された選択性を得るための水素化分解触媒を提供するということにある。
【0019】
本発明において、ナフサ製造のための水素化分解触媒の選択性は、触媒テストの間に決定され、ナフサ留分、すなわち、分子当たり6個の炭素原子を含有している炭化水素化合物の沸騰温度(または68℃沸点)から最高216℃までの間の範囲において沸騰する生成物の、本方法を離れる生成物の全質量に相対する重量百分率としての割合に対応する。
【0020】
有利な実施形態によると、本発明による触媒は、ベータのゼオライトも含む。
【0021】
本発明の有利な実施形態の利点は、特許請求される特有の特徴を有している前記ゼオライトYおよびベータのゼオライトを特有のY/ベータの質量比で含んでおり、従来技術の触媒と比較して、本発明による水素化分解法において前記触媒が用いられる場合に得られるべきナフサ留分の方への改善された選択性だけではなく、改善された活性も可能にする水素化分解触媒をそれが提供することにある。
【0022】
本発明において、ナフサ製造についての水素化分解触媒の転化活性は、触媒テストの間に、沸点が216℃未満である生成物を触媒が最低65重量%生じさせるために用いられなければならない温度を比較することによって決定される。要求される温度がより低いほど、触媒は、より活性である。この温度低下により、例えば、加工処理のエネルギー消費量を制限することおよび触媒を用いるためのサイクル時間を増大させること、さらには、処理の容量およびスキームを改変することなく活性に乏しい供給原料を処理することが可能となる。
【0023】
以降の本文の全体を通じて、用語「比表面積」は、雑誌The Journal of the American Chemical Society, 60, 309 (1938)に記載されたBrunauer-Emmett-Teller法から確立された規格ASTM 4365-19に従う窒素吸着によって決定されるBET比表面積(SBET)を意味する。窒素吸着によるテクスチャ解析も、ミクロ細孔容積、すなわち、開口部が2nm未満である細孔の容積が決定されることを可能にする。分析の前に、ゼオライト粉体は、500℃で5時間にわたって活性にされる。
【0024】
同様に、メソ細孔容積は、窒素吸着によって決定される。以下の本文の全体を通して、用語「ミクロ細孔」は、開口部が2nm未満である細孔を意味し、「メソ細孔」は、開口部が2nm超である細孔を意味する。
【0025】
以下の本文の全体を通して、ゼオライトYのブレンステッド酸度は、ピリジンの吸着とその後の熱脱着およびその後の赤外分光法(FTIR)によって測定される。この方法は、journal C.A. Emeis, Journal of Catalysis, 141, 347 (1993)に記載されているように、酸性固体、例えば、Yゼオライトを特徴付けるために従来から用いられている。分析の前に、ゼオライト粉体は、16mm径のペレットの形態に圧縮され、二次真空下に450℃で活性にされる。活性化ペレットと接触させる気相でのピリジンの導入と、熱脱着の工程は、150℃で実行される。150℃での熱脱着の後にFTIRによって検出されるピリジニウムイオンの濃度は、ゼオライトのブレンステッド酸度に対応し、micromol/gで表現される。
【0026】
本発明の目的のために、提示された種々の実施形態は、単独でまたは互いとの組み合わせで用いられてよく、組み合わせに対して何らの制限もない。
【0027】
本発明の目的のために、所与の工程のためのパラメータの種々の範囲、例えば、圧力範囲および温度範囲は、単独でまたは組み合わせで用いられ得る。例えば、本発明の目的のために、圧力値の好適な範囲は、より好適な温度値の範囲と組み合わされ得る。
【0028】
以下の本文において、化学元素の族は、CAS分類に従って与えられる(CRC Handbook of Chemistry and Physics、出版元CRC Press、編集長D. R. Lide、第81版、2000-2001)。例えば、CAS分類による第VIII族は、新IUPAC分類による8、9および10列からの金属に対応し、第VIB族は、6列からの金属に対応する。
【0029】
以下の本文において、表現「AとBとの間の、またはA~Bの(of between A and B)」および「AとBとの間、またはA~B(between A and B)」は、同等であり、間隔の両限界値(A、B)は、記載された値の範囲に含まれることを意味する。そのようになっていなかったならばおよび両限界値が記載された範囲に含まれていなかったならば、そのような説明が本発明によって提供されることになる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(発明の詳細な説明)
(水素化/脱水素機能)
本発明によれば、触媒は、周期律表の第VIB族の元素および第VIII族の非貴金属元素によって形成される群から選ばれる少なくとも1種の水素化脱水素元素を含み、単独でまたは混合物として利用される。
【0031】
好ましくは、第VIII族元素は、鉄、コバルトおよびニッケルから選ばれ、これらは、単独でまたは混合物として利用され、好ましくは、ニッケルおよびコバルトから選ばれる。好ましくは、第VIB族元素は、タングステンおよびモリブデンから選ばれ、単独でまたは混合物として利用される。金属の以下の組み合わせが好適である:ニッケル-モリブデン、コバルト-モリブデン、ニッケル-タングステン、コバルト-タングステン、大いに好ましくは:ニッケル-モリブデン、ニッケル-タングステン。3種の金属の組み合わせを用いることも可能であり、例えば、ニッケル-コバルト-モリブデンがある。
【0032】
第VIII族からの元素の触媒中の含有率は、前記触媒の全重量に相対する酸化物の重量で有利には0.5重量%~8重量%、好ましくは酸化物の重量で0.5重量%~6重量%、大いに好ましくは酸化物の重量で1.0重量%~4重量%である。第VIB族元素の触媒中の含有率は、前記触媒の全重量に相対する酸化物の重量で有利には1重量%~30重量%、好ましくは酸化物の重量で2重量%~25重量%、大いに好ましくは酸化物の重量で5重量%~20重量%、一層より好ましくは酸化物の重量で5重量%~16重量%である。
【0033】
好ましくは、本発明により用いられる触媒は、プロモータ元素を含有することもでき、プロモータ元素は。リン、ホウ素、ケイ素から選ばれ、大いに好ましくはリンである。触媒がリンを含有する場合、リン含有率は、前記触媒の全重量に相対するP酸化物の重量で有利には0.5重量%~10重量%、P酸化物の重量で好ましくは1重量%~6重量%、P酸化物の重量でより好ましくは1重量%~4重量%である。
【0034】
(担体)
本発明による触媒が含む担体は、少なくとも1種の多孔質鉱物マトリクス、ゼオライトY、好ましくは脱アルミニウムゼオライトUSYを含んでおり、好ましくは、それからなり、前記ゼオライトYの単位格子の初期格子定数aは、厳密に24.40Å未満であり、BET比表面積は、700~1000m/gであり、ミクロ細孔容積は、0.28mL/g超であり、ブレンステッド酸度は、300micromol/g超である。
【0035】
触媒の担体において用いられる多孔質鉱物マトリクスは、バインダとも呼ばれ、有利には、少なくとも1種の耐火性酸化物からなり、好ましくは、アルミナ、シリカ-アルミナ、粘土、チタン酸化物、ホウ素酸化物およびジルコニアによって形成される群から選ばれ、単独でまたは混合物として利用される。好ましくは、多孔質鉱物マトリクスは、アルミナおよびシリカ-アルミナから選ばれ、単独でまたは混合物として利用される。より好ましくは、多孔質鉱物マトリクスは、アルミナである。アルミナは、有利には、当業者に知られているその形態のいずれかにあることができる。大いに好ましくは、アルミナは、ガンマアルミナ、例えば、ベーマイトである。
【0036】
好ましくは、前記担体は、前記担体の全重量に相対して、15重量%~55重量%、好ましくは25重量%~50重量%、大いに好ましくは25重量%~40重量%のバインダを含む。
【0037】
本発明によると、担体のゼオライトYの単位格子の初期格子定数aは、厳密に24.40Å未満である。
【0038】
好ましくは、用いられるゼオライトYの単位格子の初期格子定数aは、24.40Å未満、好ましくは24.30~24.39Å、好ましくは24.32~24.39Å、好ましくは24.32~24.38Å、大いに好ましくは24.34~24.38Åである。
【0039】
与えられたゼオライトYの単位格子の初期格子定数aは、本発明による触媒の合成において用いられるゼオライトYの初期格子定数aの値である。
【0040】
ゼオライトYの単位格子の初期格子定数aは、規格ASTM 03942-80によるX線回折によって測定される。
【0041】
本発明によると、前記ゼオライトYの比表面積は、BET法に従う窒素物理吸着によって測定されて、700~1000m/g、好ましくは750~950m/g、好ましくは800~950m/gである。
【0042】
本発明によると、前記ゼオライトYのミクロ細孔容積は、窒素吸着によって決定されて、0.28mL/g超、好ましくは0.285mL/g超、かつ有利には0.34mL/g未満である。
【0043】
本発明によると、前記ゼオライトYのブレンステッド酸度は、300micromol/g超、好ましくは320~500micromol/g、好ましくは325~425micromol/gである。
【0044】
好ましくは、前記ゼオライトYのシリカ-アルミナのモル比(SAR)は、5~50、好ましくは5~20、好ましくは5超かつ12未満である。
【0045】
好ましくは、前記ゼオライトYのメソ細孔容積は、0.12mL/g超、好ましくは0.16mL/g超、好ましくは0.18~0.24mL/gである。
【0046】
好ましくは、前記担体のゼオライトY、好ましくは脱アルミニウムゼオライトUSYの含有率は、前記担体の全重量に相対して15重量%%~80重量%、好ましくは20重量%~75重量%、好ましくは40重量%~70重量%である。
【0047】
前記ゼオライトは、有利には、分類"Atlas of Zeolite Framework Types", 6th Revised Edition", Ch. Baerlocher, L. B. McCusker, D.H. Olson, 6th Edition, Elsevier, 2007, Elsevierにおいて定義されている。
【0048】
本発明の好適な実施形態によると、上記に定義されかつ本発明による方法において用いられる触媒の担体を実施するのに適している特定の特徴を有しているゼオライトY、好ましくは、脱アルミニウムゼオライトUSYは、有利には、FAU構造型のゼオライトYであって、好ましくは合成後の全体的Si/Al原子比が2.3~2.8であり、有利には、合成後にNaY型にあるものから調製される。FAU構造型の前記ゼオライトYは、有利には、1回または複数回のイオン交換の工程を経た後に、脱アルミニウム工程を経る。1回または複数回のイオン交換により、部分的または完全に、FAU構造型の粗合成ゼオライトY中のカチオン位置中に存在する周期律表の第IA族および第IIA族に属しているアルカリカチオンをNH カチオンと置換すること、好ましくはNaカチオンをNH カチオンと置換することが可能になる。
【0049】
アルカリカチオンのNH カチオンとの部分的または完全な交換は、前記アルカリカチオンの80%から100%まで、好ましくは85%から99.5%まで、より好ましくは88%から99%までのNH カチオンとの交換を意味するように理解される。1回または複数回のイオン交換工程の終わりに、ゼオライトY中のアルカリカチオンの残留量、好ましくは、Naカチオンの残留量は、ゼオライトY中に当初から存在するアルカリカチオン、好ましくは Naカチオンの量に相対して、有利には0%~20%、好ましくは0.5%~15%、好ましくは1.0%~12%である。
【0050】
好ましくは、この工程は、アンモニウムの塩素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩または酢酸塩から選ばれる少なくとも1種のアンモニウム塩を含有している溶液により複数回のイオン交換を実施して、ゼオライト中に存在するアルカリカチオン、好ましくはNaカチオンを少なくとも部分的に除去するようにする。好ましくは、アンモニウム塩は、硝酸アンモニウムNHNOである。
【0051】
それ故に、1回または複数回のイオン交換工程の終わりにおいてゼオライトY中のアルカリカチオン、好ましくはNaカチオンの残留含有率は、好ましくは、アルカリカチオン/アルミニウムのモル比、好ましくはNa/Alモル比が0:1~0:1、好ましくは0:1~0.005:1、より好ましくは0:1~0.008:1になるようにされる。
【0052】
望みのアルカリカチオン/アルミニウム、好ましくはNa/Alの比は、イオン交換溶液のNH 濃度、イオン交換温度およびイオン交換の回数を調節することによって得られる。イオン交換溶液のNH 濃度は、有利には、0.01mol・L-1と12mol・L-1との間、好ましくは1.00mol・L-1と10mol・L-1との間で変動する。イオン交換工程の温度は、有利には20℃~100℃、好ましくは60℃~95℃、好ましくは60℃~90℃、より好ましくは60℃~85℃、よりなおさら好ましくは60℃~80℃である。イオン交換の回数は、有利には1回と10回、好ましくは1回と4回との間で変動する。
【0053】
得られた前記ゼオライトY、好ましくはFAU構造型のものは、次いで、脱アルミニウム処理工程を経ることができる。前記脱アルミニウム工程は、有利には、当業者に知られている任意の方法によって行われてよい。好ましくは、脱アルミニウムは、任意選択に水蒸気の存在中での熱処理(または「スチーミング」)および/または1回または複数回の酸攻撃によって行われる。酸攻撃は、有利には、水性の無機または有機の酸溶液による処理によって行われる。
【0054】
好ましくは、脱アルミニウム工程は、熱処理とその後の1回または複数回の酸攻撃、または、1回または複数回の酸攻撃のみを実施する。
【0055】
好ましくは、任意選択に水蒸気の存在中での熱処理にゼオライトYが供され、この熱処理が行われる際の温度は、200℃~900℃、好ましくは300℃~900℃、よりなおさら好ましくは400℃~750℃である。前記熱処理の継続期間は、有利には0.5時間以上、好ましくは0.5時間~24時間、大いに好ましくは1時間~12時間である。水の存在中で熱処理が行われるケースにおいて、熱処理の間の水蒸気の容積百分率は、有利には5%~100%、好ましくは20%~100%、大いに好ましくは40%~100%である。水蒸気ではなく存在する任意の容積部分は、空気から形成される。水蒸気および場合による空気から形成されたガスの流量は、有利には0.2L・h-1・g-1~10L・h-1・g-1(ゼオライトY)である。
【0056】
熱処理は、ゼオライトYの構造からのアルミニウム原子の抽出を可能にする一方で、処理されるゼオライトの全体的なSi/Al原子比を未変化に維持する。
【0057】
水蒸気の存在中での熱処理の工程は、有利には、本発明による方法において用いられる触媒の担体を実装するのに適しかつ単位格子の格子定数aが厳密に24.40Å未満である脱アルミニウム済みゼオライトUSYを得るのに必要なだけ多くの回数繰り返されてよい。
【0058】
任意選択に水蒸気の存在中での熱処理の工程の後に、有利には、酸攻撃工程が行われる。前記酸攻撃により、水蒸気の存在中での熱処理の工程から生じかつ脱アルミニウム済みゼオライトの多孔度部を部分的に阻害するアルミニウムデブリを部分的または完全に除去することが可能となる;酸攻撃により、脱アルミニウム済みゼオライトの多孔度部をブロックから解除することがこうして可能となる。
【0059】
酸攻撃は、有利には、ゼオライトY(場合によっては、事前に熱処理を経たもの)を、無機または有機の酸を含有している水溶液中に懸濁させることによって行われてよい。無機酸は、硝酸、硫酸、塩酸、リン酸またはホウ酸であってよい。有機酸は、ギ酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、マロン酸、リンゴ酸、乳酸、または任意の他の水溶性有機酸であってよい。溶液中の無機または有機の酸の濃度は、有利には、0.01mol・L-1と2.0mol・L-1との間、好ましくは0.5mol・L-1と1.0mol・L-1との間で変動する。酸攻撃工程の温度は、有利には20℃~100℃、好ましくは60℃~95℃、好ましくは60℃~90℃、より好ましくは60℃~80℃である。酸攻撃の継続期間は、有利には5分~8時間、好ましくは30分~4時間、好ましくは1時間~2時間である。
【0060】
任意選択に水蒸気の存在中での熱処理の1回または複数回の工程および場合による酸攻撃工程の終結の際に、前記ゼオライトYを改変するための方法は、有利には、ゼオライトYにおけるカチオン位置中に依然として存在するアルカリカチオン、好ましくはNaカチオンの少なくとも部分的または完全な交換の工程を含む。イオン交換工程は、上記のイオン交換工程と同様の方法で行われる。
【0061】
任意選択に水蒸気の存在中での熱処理の1回または複数回の工程および場合による酸攻撃工程および場合によるアルカリカチオン、好ましくはNaカチオンの部分的または完全な交換の工程の終結の際に、前記ゼオライトYを改変するための方法は、焼成工程を含んでよい。前記焼成により、ゼオライトの多孔度部内に存在する有機化学種、例えば、酸攻撃工程またはアルカリカチオンの部分的または完全な交換の工程によって提供されたものを除去することが可能となる。加えて、前記焼成工程により、ゼオライトYのプロトン型を生じさせることおよびその適用の目的のために酸度をそれの上に付与することが可能となる。
【0062】
焼成は、有利には、マッフル炉または管状炉において、乾燥空気下または不活性雰囲気下に、掃引床または横断床で行われてよい。焼成温度は、有利には200℃~800℃、好ましくは450℃~600℃、好ましくは500℃~550℃である。保持される焼成の継続期間は、有利には1~20時間、好ましくは6~15時間、好ましくは8~12時間である。
【0063】
それ故に、得られた前記ゼオライトY、好ましくは前記脱アルミニウム済みゼオライトUSYの単位格子の初期格子定数aは、厳密に24.40Å未満であり、比表面積は、BET法を用いる窒素物理吸着によって測定されて、700~1000m/gであり、ミクロ細孔容積は、窒素吸着によって決定されて、0.28mL/g超であり、ブレンステッド酸度は、300micromol/g超である。
【0064】
好適な実施形態において、担体は、ゼオライトベータも含む。
【0065】
ゼオライトベータは、一般に、構造化剤を含有している反応混合物から合成される。構造化剤の使用は、当業者に周知である:例えば、特許US 3 308 069には、テトラエチルアンモニウム水酸化物の使用が記載され、特許US 5 139 759には、テトラエチルアンモニウムハリド化合物に由来するテトラエチルアンモニウムカチオンの使用が記載されている。ゼオライトベータを調製するための別の標準的な方法は、書籍“Verified Synthesis of Zeolitic Materials”に与えられる。
【0066】
本発明による担体において用いられるゼオライトベータが好ましく有する全体的SAR原子比は、10~100、優先的には20~50、より好ましくは20~30である。本発明による担体において用いられるゼオライトベータが有利に有する比表面積は、BET法による窒素物理吸着によって測定されて、400~800m/g、好ましくは500~750m/g、好ましくは550~700m/gである。
【0067】
担体がゼオライトベータを含むケースにおいて、担体が有利に有するゼオライトベータ含有率は、前記担体の全重量に相対して2重量%~40重量%、好ましくは5重量%~35重量%、好ましくは10重量%~35重量%である。
【0068】
担体がゼオライトベータを含むケースにおいて、触媒中の前記ゼオライトY対前記ゼオライトベータの重量比は、1~40である。
【0069】
好ましくは、触媒中の前記ゼオライトY対前記ゼオライトベータの重量比は、1~20、好ましくは1.2~15、より好ましくは1.2~8である。
【0070】
この重量比は、ゼオライトの乾燥質量、すなわち、1000℃での強熱減量を測定することによって決定されるそれらの水含有率について較正されたゼオライトの質量(乾燥質量)から計算される。
【0071】
担体がゼオライトUSYのみを含む(ゼオライトベータを有しない)ケースにおいて、それは、好ましくは、以下からなる:
- ゼオライトY、好ましくは脱アルミニウム済みゼオライトUSY;単位格子の初期格子定数aは、厳密に24.40Å未満である;前記担体の全重量に相対して、15重量%~80重量%、好ましくは20重量%~70重量%、好ましくは40重量%~70重量%;
- 少なくとも1種の多孔質鉱物マトリクス;前記担体の全重量に相対して20重量%~85重量%、好ましくは20重量%~60重量%、大いに好ましくは20重量%~50重量%。
【0072】
担体がゼオライトUSYおよびゼオライトベータを含むケースにおいて、それは、好ましくは、以下のものからなる:
- ゼオライトY、好ましくは脱アルミニウム済みゼオライトUSY;単位格子の初期格子定数aは、厳密に、24.40Å未満である;前記担体の全重量に相対して、15重量%~80重量%、好ましくは20重量%~70重量%、好ましくは40重量%~70重量%;
- ゼオライトベータ;前記担体の全重量に相対して2重量%~40重量%、好ましくは5重量%~35重量%、または10重量%~35重量%;および
- 少なくとも1種の多孔質鉱物マトリクス;前記担体の全重量に相対して、5重量%~83重量%、好ましくは15重量%~40重量%、大いに好ましくは20重量%~40重量%。
【0073】
好ましくは、触媒のゼオライトYの含有率は、前記触媒の全重量に相対して7重量%~78重量%である。
【0074】
好ましくは、触媒配合物中にゼオライトベータが存在するケースにおいて、前記触媒のゼオライトベータの含有率は、前記触媒の全重量に相対して2重量%~39重量%である。
【0075】
好ましくは、前記触媒の少なくとも1種の多孔質鉱物マトリクスの含有率は、前記触媒の全重量に相対して4重量%~81重量%である。
【0076】
水素化分解触媒が有利に有するY/ベータの比は、本発明による水素化分解法において前記触媒が用いられる場合にナフサ留分の方への改善された選択性を得るだけではなく、従来技術の触媒と比べて改善された活性も可能にするこれらの範囲内にある。
【0077】
(触媒の調製)
触媒は、有利には、従来技術において用いられる従来の方法により調製される。
【0078】
特に、触媒は、以下の工程を含んでいる調製方法により調製される:
- 担体を調製する工程:以下を含んでいる:
・ 少なくとも1種の多孔質鉱物マトリクスを、ゼオライトYおよび、ゼオライトベータが存在する有利な実施形態において、ゼオライトベータと混合する工程であって、ゼオライトYの単位格子の初期格子定数aは、厳密に24.40Å未満であり、比表面積は、BET法を用いる窒素物理吸着によって測定されて、700~1000m/gであり、ミクロ細孔容積は、窒素吸着によって決定されて、0.28mL/g超であり、ブレンステッド酸度は、300micromol/g超であり、触媒中の前記ゼオライトY対前記ゼオライトベータの重量比は、1~20である、工程、および
・ 前記混合物を成形する工程;
- 周期律表の第VIB族の元素、好ましくはニッケルおよびコバルト、周期律表の第VIII族の非貴金属元素、好ましくは、鉄、コバルト、ニッケル、およびそれらの混合物、好ましくは、ニッケルおよびコバルトによって形成される群から選ばれる少なくとも1種の水素化脱水素元素を、担体上に、以下の工程によって導入する工程:
・ 成形の間に前記元素の少なくとも1種の前駆体を加えて前記元素の少なくとも一部を導入する工程、
・ 担体に前記元素の少なくとも1種の前駆体を含浸させる工程、
- 場合による、担体の調製の終わりに乾燥させるおよび/または焼成する工程および/または少なくとも1種の水素化脱水素元素を導入する工程。
【0079】
より詳細には、触媒は、以下の工程を含んでいる調製方法により調製される:
a) 上記の方法により特許請求される特定の結晶学的特徴を有するゼオライトY、好ましくは脱アルミニウム済みゼオライトUSYを調製する工程、
b) 本発明による触媒配合物中にゼオライトベータが存在するケースにおいてゼオライトベータを調製する工程、
c) 多孔質鉱物マトリクスと混合し、成形して、担体を得る工程、
d) 少なくとも1種の水素化脱水素元素を担体上に、以下の方法の少なくとも1つによって導入する工程:
・ 成形の間に前記元素の少なくとも1種の前駆体を加えて、前記元素の少なくとも一部を導入する工程、
・ 担体に前記水素化脱水素元素の少なくとも1種の前駆体を含浸させる工程、
場合による、調製工程a)またはb)またはc)またはd)のそれぞれの終わりに得られた生成物の乾燥および/または焼成。
【0080】
担体は、有利には、当業者に知られている任意の技術によって成形されてよい。成形は、例えば、押出、ペレット化、滴下凝固(油滴)法、回転板上での造粒または当業者に周知である任意の他の方法によって実行されてよい。
【0081】
担体は、好ましくは、種々の形状およびサイズの粒体に成形される。それらは、一般に、円筒形ペレットまたは多葉状ペレット、例えば、三葉、四葉または多葉状のペレットの形態で用いられ、直線または捻れた形態のものであるが、場合によっては、粉砕粉末、菱形、リング、ビーズまたはホイールの形態で製造・使用され得る。しかしながら、触媒は、径が0.5~5mm、より特定的には0.7~3mm、一層より特定的には1.0~2.5mmであるペレットの形態にあることが有利である。形状は、円筒形(これは、中空であってもなくてもよい)、捻れ円筒形、多葉(例えば2、3、4または5葉)または環状である。任意の他の形状が用いられてよい。
【0082】
好適な成形方法の1つは、前記ゼオライトをバインダ、好ましくはアルミナと、湿潤ゲルの形態で、数十分、好ましくは10~40分にわたって共混練し、次いで、このようにして得られたペーストをダイ中に通して、径が好ましくは0.5~5mmであるペレットを形成することからなる。
【0083】
好適な成形方法の別例によると、前記ゼオライトは、多孔質鉱物マトリクスの合成の間に導入され得る。例えば、本発明のこの好適な実施形態によると、前記ゼオライトのYおよびベータは、多孔質鉱物マトリクス、例えば、シリコ-アルミックマトリクスの合成の間に加えられる:このケースにおいて、前記ゼオライトは、有利には、酸媒体中のアルミナ化合物と完全に可溶なシリカ化合物とから構成される混合物に加えられ得る。
【0084】
第VIB族および/または第VIII族の元素は、場合によっては、成形工程の間に、前記元素の少なくとも1種の化合物を加えることによって前記元素の少なくとも一部分を導入するように導入されてよい。
【0085】
少なくとも1種の水素化脱水素元素の導入は、有利には、リン、ホウ素、ケイ素、好ましくはリンから選ばれる少なくとも1種のプロモータ元素の導入によって、場合によっては、第VIIA族および/または第VB族の元素の導入によって伴われ得る。成形済みの固体は、場合によっては、60℃~250℃の温度で乾燥させられ、場合によっては、250℃から800℃までの温度で30分~6時間の期間にわたって焼成される。
【0086】
少なくとも1種の水素化脱水素元素を導入する工程は、有利には、当業者に周知な方法によって、特に、成形・焼成または乾燥済みの、好ましくは焼成済みの担体に、第VIB族および/または第VIII族の元素の前駆体、場合によっては、少なくとも1種のプロモータ元素の前駆体および場合による少なくとも1種の第VIIA族および/または第VB族の元素の前駆体を含有している溶液を含浸させる1回または複数回の操作によって実行される。
【0087】
好ましくは、前記工程d)は、水素化/脱水素機能基、すなわち、第VIB族および/または第VIII族の元素の前駆体を含有している溶液による乾式含浸の方法によって実行され、場合によっては、乾燥工程が続けられるが、好ましくは、焼成工程は行われない。
【0088】
本発明の触媒が第VIII族非貴金属を含有するケースにおいて、第VIII族金属は、好ましくは、第VIB族の導入の後にまたは第VIB族の導入と同時に、成形・焼成済みの担体の含浸の1回または複数回の操作によって導入される。
【0089】
少なくとも1種の水素化脱水素元素の導入は、次いで、場合によっては、60℃~250℃の温度での乾燥によっておよび場合によっては250℃~800℃の温度での焼成によって続けられ得る。
【0090】
モリブデンおよびタングステンの供給源は、有利には、酸化物および水酸化物、モリブデン酸およびタングステン酸およびそれらの塩、特に、アンモニウム塩、例えば、モリブデン酸アンモニウム、七モリブデン酸アンモニウムおよびタングステン酸アンモニウム、リンモリブデン酸、リンタングステン酸およびそれらの塩、ケイモリブデン酸、ケイタングステン酸およびそれらの塩から選ばれる。使用が好ましくなされるのは、酸化物およびアンモニウム塩、例えば、モリブデン酸アンモニウム、七モリブデン酸アンモニウムおよびタングステン酸アンモニウムである。
【0091】
用いられ得る非貴金属第VIII族元素の供給源は、当業者に周知である。例えば、非貴金属について、使用がなされることになるのは、硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、リン酸塩、ハロゲン化物(例えば塩化物、臭化物、フッ化物)、カルボン酸塩、例えば酢酸塩、炭酸塩である。
【0092】
リンの好適な供給源は、オルトリン酸HPOであるが、その塩およびエステル、例えば、リン酸アンモニウムも適している。リンは、例えば、リン酸と、窒素を含有している塩基性有機化合物、例えば、アンモニア水、第一級および第二級のアミン、環状アミン、ピリジンおよびキノリンの系統の化合物およびピロールの系統の化合物との混合物の形態で導入されてよい。タングストリン酸またはタングストモリブデン酸が用いられ得る。
【0093】
リン含有率は、本発明の範囲をこれが制限することなく、溶液中および/または担体上の混合された化合物、例えば、タングステン-リンまたはモリブデン-タングステン-リンを形成するようにする調節される。これらの混合された化合物は、ヘテロポリアニオンであり得る。これらの化合物は、例えば、アンダーソンヘテロポリアニオンであり得る。
【0094】
ホウ素の供給源は、ホウ酸、好ましくは、オルトホウ酸HBO、二ホウ酸アンモニウムまたは五ホウ酸アンモニウム、ホウ素酸化物またはホウ酸エステルであってよい。ホウ素は、例えば、ホウ酸、過酸化水素水溶液および窒素を含有している塩基性有機化合物、例えば、アンモニア水、第一級および第二級のアミン、環状アミン、ピリジンおよびキノリンの系統の化合物およびピロールの系統の化合物の混合物の形態で導入されてよい。ホウ素は、例えば、水/アルコールの混合物中のホウ酸の溶液によって導入されてよい。
【0095】
ケイ素の多くの供給源が用いられてよい。そのため、使用がなされてよいのは、オルトケイ酸エチルSi(OEt)、シロキサン、ポリシロキサン、シリコーン、シリコーンエマルジョン、ケイ酸ハロゲン化物、例えば、フルオロケイ酸アンモニウム(NHSiFまたはフルオロケイ酸ナトリウムNaSiFがある。ケイモリブデン酸およびその塩、ケイタングステン酸およびその塩が、有利には、用いられてもよい。ケイ素は、例えば、水/アルコールの混合物中のケイ酸エチル溶液の含浸によって加えられてよい。ケイ素は、例えば、水中に懸濁したシリコーンまたはケイ酸のタイプのケイ素化合物の含浸によって加えられてよい。
【0096】
用いられ得る第VB族元素の供給源は、当業者に周知である。例えば、ニオブの供給源の中で、使用がなされてよいのは、酸化物、例えば、五酸化二ニオブNb、ニオブ酸Nb・HO、水酸化ニオブおよびポリオキソニオブ酸塩、式Nb(OR1)(式中、R1は、アルキル基である)のニオブアルコキシド、シュウ酸ニオブNbO(HC、またはニオブ酸アンモニウムである。使用が好ましくなされるのは、シュウ酸ニオブまたはニオブ酸アンモニウムである。
【0097】
用いられ得る第VIIA族元素の供給源は、当業者に周知である。例えば、フッ化物アニオンが、フッ化水素酸またはその塩の形態で導入され得る。これらの塩は、アルカリ金属、アンモニウムまたは有機化合物により形成される。後者のケースにおいて、塩は、有利には、有機化合物とフッ化水素酸との間の反応によって反応混合物中に形成される。フッ化物アニオンを水中に放出することができる加水分解可能な化合物、例えば、フルオロケイ酸アンモニウム(NHSiF、四フッ化ケイ素SiFまたはフルオロケイ酸ナトリウムNaSiFを用いることも可能である。フッ素は、例えば、フッ化水素酸またはフッ化アンモニウムの水溶液の含浸によって導入され得る。
【0098】
(水素化分解法)
本発明による触媒は、次いで、有利には、水素化分解法において、特に、ナフサの製造のために用いられる。水素化分解法、例えば、本発明による方法において用いられる触媒は、有利には、硫化物の形態にあることができる。前記触媒の第VIB族金属および/または第VIII族非貴金属は、したがって、硫化物の形態で存在する。
【0099】
本発明による方法において用いられる触媒は、次いで、有利には、少なくとも一部において、金属性種を硫化物の形態に転化するための硫化処理に事前に供された後に、それらは、処理されるべき供給原料と接触させられる。硫化によるこの活性化処理は、当業者に周知であり、文献において既に記載されている任意の方法によって、現場内、すなわち、反応器内、または現場外のいずれかで実行され得る。
【0100】
当業者に周知な従来の硫化方法は、(高純度のまたは例えば、水素-硫化水素混合物の流れ下の)硫化水素の存在中、150℃~800℃、好ましくは250℃~600℃の温度で、一般に、フロースルー床反応ゾーンにおいて触媒を加熱することからなる。
【0101】
本発明の別の主題は、少なくとも1種の炭化水素供給原料、好ましくは、液体の形態にあり、その化合物の最低50重量%が、300℃を超える初期沸点および650℃を下回る最終沸点を有するものを、200℃~480℃の温度、1MPa~25MPaの全圧で、炭化水素供給原料の容積当たりの水素の容積の比80~5000リットル/リットルにより、反応器に充填される触媒の容積当たりの炭化水素供給原料、好ましくは液体の形態にあるものの容積流量の比によって定義される毎時空間速度(HSV)0.1~50h-1で、本発明による触媒の存在中で水素化分解するための方法にある。
【0102】
有利には、本発明による触媒は、1種または複数種の水素化処理触媒を含有している前処理セクションの後に本発明による水素化分解法において用いられ、当該水素化処理触媒は、当業者に知られている任意の触媒であってよく、当該触媒により、供給原料(下記参照)中の所定の汚染物質、例えば、窒素、硫黄または金属の含有率を低減させることが可能となる。この前処理セクションの操作条件(HSV、温度、圧力、水素流量,液体、反応構成等)は、当業者の知識により多様かつ可変であり得る。
【0103】
(供給原料)
非常に多様な供給原料が、本発明による水素化分解法によって処理され得る。本発明による水素化分解法において用いられる供給原料は、炭化水素供給原料であり、その化合物の最低50重量%は、300℃超の初留点および650℃未満の終留点を有し、好ましくは、その化合物の最低60重量%、好ましくは最低75重量%、より好ましくは、最低80重量%は、300℃超の初留点および650℃未満の終留点を有する。
【0104】
供給原料は、有利には、LCO(Light Cycle Oil(ライトサイクルオイル)、接触分解ユニットから得られる軽質ガスオイル)、常圧留出物、減圧留出物、例えば、原油の直接蒸留から得られるガスオイルまたは転化ユニット、例えば、FCC、コーキングまたはビスブレーキングのユニットから得られるガスオイル、潤滑油基剤からの芳香族化合物の抽出のためのユニットに由来する供給原料または潤滑油基剤の溶媒脱ろうから生じた供給原料、AR(atmospheric residues:常圧残渣)および/またはVR(vacuum residues:減圧残渣)および/または脱れき油の固定床または沸騰床の脱硫または水素化転化の方法に由来する留出物、および脱れき油、またはフィッシャー・トロプシュ方法から得られたパラフィンから選ばれ、単独でまたは混合物として利用される。言及がなされてよいのは、再生可能な起源の供給原料(例えば、植物油、動物性脂肪、リグノセルロース系バイオマスの水熱転化または熱分解からの油)、およびまたプラスチック熱分解油である。上記リストは、限定するものではない。前記供給原料が好ましく有する沸点T5は、300℃超、好ましくは340℃超であり、すなわち、供給原料中に存在する化合物の95%の沸点は、300℃超、好適には340℃超である。
【0105】
本発明による方法において処理される供給原料の窒素含有率は、有利には500重量ppm超、好ましくは500~10,000重量ppm、より好ましくは700~4000重量ppm、一層より好ましくは1000~4000重量ppmである。本発明による方法において処理される供給原料の硫黄含有率は、有利には0.01重量%~5重量%、好ましくは0.2重量%~4重量%、一層より好ましくは0.5重量%~3重量%である。
【0106】
供給原料は、場合によっては、金属を含有する場合がある。本発明による方法において処理される供給原料中のニッケルおよびバナジウムの累積含有率は、好ましくは、1重量ppm未満である。
【0107】
供給原料は、場合によっては、アスファルテンを含有する場合がある。アスファルテン含有率は、一般に3000重量ppm未満、好ましくは1000重量ppm未満、よりなおさら好ましくは200重量ppm未満である。
【0108】
有利には、上記の水素化処理セクションの後に本発明による触媒が用いられる場合、本発明による触媒を用いる本発明による方法に注入される液体中の窒素、硫黄、金属またはアスファルテンの含有率は、低下させられる。好ましくは、本発明による水素化分解法において処理される供給原料中の有機性窒素の含有率は、次いで、水素化処理の後に、0~200ppm、好ましくは0~50ppm、一層より好ましくは0~30ppmである。硫黄含有率は、好ましくは、1000ppm未満であり、アスファルテン含有率は、好ましくは200ppm未満である一方で、金属(NiまたはV)の含有率は、1ppm未満である。
【0109】
本発明による水素化分解法は、供給原料の前処理と、本発明による触媒を用いる1基または複数基の水素化分解反応器との間に分画工程を含む場合がある。前処理と、本発明による触媒を用いる1基または複数基の水素化分解反応器との間に(ガスおよび液体)の分画なしで水素化分解法が実行される好適なケースにおいて、前処理の後に液体から取り除かれる窒素および硫黄は、NHおよびHSの形態で、本発明による触媒を含有している1基または複数基の反応器に注入される。
【0110】
本発明によれば、本発明による前記炭化水素供給原料を水素化分解するための方法が実行される際の温度は、200℃~480℃であり、その際の全圧は、1MPa~25MPaであり、炭化水素供給原料の容積当たりの水素の容積の比は、80~5000リットル/リットルであり、その際の毎時空間速度(HSV)は、反応器に充填された触媒の容積当たりの炭化水素供給原料の容積流量の比によって定義されて、0.1~50h-1である。
【0111】
好ましくは、本発明による水素化分解法は、水素の存在中で実行され、その際の温度は、250℃~480℃、好ましくは320℃~450℃、大いに好ましくは330℃~435℃であり、圧力は、2~25MPa、大いに好ましくは3~20MPa下とされ、その際の空間速度は、0.1~20h-1、好ましくは0.1~6h-1、好ましくは0.2~3h-1であり、導入される水素の量は、水素の容積(リットル)/炭化水素の容積(リットル)の容積比が100~2000L/Lになるようにされる。
【0112】
本方法は、標的とされる供給原料の転化度に応じて1工程または2工程で実行され得、未転化フラクションのリサイクルを伴うかまたは伴わない。本発明による触媒は、非限定的な方法で、水素化分解法の1回または2回の工程において、単独でまたは別の水素化分解触媒との組み合わせで用いられ得る。
【0113】
本発明による方法において用いられるこれらの操作条件により、一般に、沸点が340℃未満、よりなおさら良好には370℃未満である生成物への通過毎の転化率15重量%超、よりなおさら好ましくは20重量%~100重量%を得ることが可能となる。
【0114】
実施例は、本発明を例証するが、本発明の範囲を限定するものではない。
【0115】
(実施例)
(実施例1-比較触媒Aの調製)
触媒Aのための担体の成形による調製を、市販のゼオライトUSY(ZeolystからのゼオライトCBV712)70重量%の市販のベーマイト(Pural SB3、Sasol)の存在中での混練-押出によって行う。ゼオライトUSYの格子定数は、24.32Åであり、SiO/Alモル比は、22.9であり、比表面積は、BET法による窒素物理吸着によって測定されて、910m/gであり、ミクロ細孔容積は、窒素吸着によって決定されて、0.30mL/gであり、ブレンステッド酸度は、200μmol/gである。得られたペレットを、80℃で乾燥させ、次いで、600℃で、湿潤空気(乾燥空気の重量(kg)当たり水5重量%)中において焼成する。焼成済み担体は、乾燥ベースで、70重量%のゼオライトおよび30重量%のアルミナを含む。
【0116】
触媒Aの調製を、生じた担体の乾式含浸によって行い、元素Ni、Moを含有している水溶液を用いる。以下の前駆体を水に溶解させることによってこの溶液を得る:硝酸ニッケルおよび七モリブデン酸アンモニウム。溶液中の前駆体の量の調節を、最終触媒上の標的とされる濃度に応じて行う。乾式含浸の後に、触媒を120℃で空気中において乾燥させる。
【0117】
触媒中の質量百分率は、それぞれに乾燥ベースで以下の通りである:モリブデン(MoOの形態)15.1重量%、ニッケル(NiOの形態)3.3重量%。
【0118】
(実施例2-比較触媒Bの調製)
触媒Bのための担体の成形による調製を、ゼオライトUSY 60重量%および市販のゼオライトベータ(ゼオライトCP814e、Zeolyst)10重量%の市販のベーマイト(Pural SB3、Sasol)の存在中での混練-押出によって行う。ゼオライトUSYの格子定数は、24.35Åであり、SiO/Alモル比は、12であり、比表面積は、BET法に従って、845m/gであり、ミクロ細孔容積は、窒素吸着によって決定されて、0.26mL/gであり、ブレンステッド酸度は、290μmol/gであり、ゼオライトベータのSiO/Alモル比は、25であり、比表面積は、BET法による窒素物理吸着によって測定されて、670m/gである。得られたペレットを、80℃で乾燥させ、次いで、600℃で、湿潤空気(乾燥空気の重量(kg)当たり水5重量%)中において焼成する。焼成済み担体は、乾燥ベースで、60重量%のゼオライトUSY、10重量%のゼオライトベータおよび30重量%のアルミナを含み、すなわち、USY/ベータの重量比は、6である。
【0119】
触媒Bの調製を、生じた担体の乾式含浸によって行い、元素Ni、Moを含有している水溶液を用いる。以下の前駆体を水に溶解させることによってこの溶液を得る:硝酸ニッケルおよび七モリブデン酸アンモニウム。溶液中の前駆体の量の調節を、最終触媒上の標的とされる濃度に応じて行う。乾式含浸の後に、触媒を120℃で空気中において乾燥させる。
【0120】
触媒中の質量百分率は、それぞれに乾燥ベースで以下の通りである:モリブデン(MoOの形態)15.1重量%、ニッケル(NiOの形態)3.3重量%。
【0121】
(実施例3-比較触媒Cの調製)
触媒Cのための担体の成形による調製を、ゼオライトUSY 70重量%の市販のベーマイト(Pural SB3、Sasol)の存在中での混練-押出によって行う。ゼオライトUSYの格子定数は、24.35Åであり、SiO/Al比は、12であり、比表面積は、BET法に従って、845m/gであり、ミクロ細孔容積は、窒素吸着によって決定されて、0.26mL/gであり、ブレンステッド酸度は、290μmol/gである。得られたペレットを、80℃で乾燥させ、次いで、600℃で、湿潤空気(乾燥空気の重量(kg)当たり水5重量%)中において焼成する。焼成済み担体は、乾燥ベースで、70重量%のゼオライトUSYおよび30重量%のアルミナを含む。
【0122】
触媒Cの調製を、生じた担体の乾式含浸によって行い、元素Ni、Moを含有している水溶液を用いる。以下の前駆体を水に溶解させることによってこの溶液を得る:硝酸ニッケルおよび七モリブデン酸アンモニウム。溶液中の前駆体の量の調節を、最終触媒上の標的とされる濃度に応じて行う。乾式含浸の後に、触媒を120℃で空気中において乾燥させる。
【0123】
触媒中の質量百分率は、それぞれに乾燥ベースで以下の通りである:モリブデン(MoOの形態)15.1重量%、ニッケル(NiOの形態)3.3重量%。
【0124】
(実施例4-比較触媒Dの調製)
触媒Dのための担体の成形による調製を、ゼオライトY 60重量%および市販のゼオライトベータ(CP814e、Zeolyst)10重量%の市販のベーマイト(Pural SB3、Sasol)の存在中での混練-押出によって行う。ゼオライトYの格子定数は、24.42Åであり、SiO/Alモル比は、5.2であり、比表面積は、BET法に従う窒素物理吸着によって測定されて、725m/gであり、ミクロ細孔容積は、窒素吸着によって決定されて、0.29mL/gであり、ブレンステッド酸度は、270μmol/gであり、ゼオライトベータのSiO/Alのモル比は、25であり、比表面積は、BET法に従う窒素物理吸着によって測定されて、670m/gである。得られたペレットを、80℃で乾燥させ、次いで、600℃で、湿潤空気(乾燥空気の重量(kg)当たり水5重量%)中において焼成する。焼成済み担体は、乾燥ベースで、60重量%のゼオライトUSY、10重量%のゼオライトベータおよび30重量%のアルミナを含み、すなわち、触媒中のUSY/ベータの重量比は、6である。
【0125】
触媒Dの調製を、生じた担体の乾式含浸によって行い、元素Ni、Moを含有している水溶液を用いる。以下の前駆体を水に溶解させることによってこの溶液を得る:硝酸ニッケルおよび七モリブデン酸アンモニウム。溶液中の前駆体の量の調節を、最終触媒上の標的とされる濃度に応じて行う。乾式含浸の後に、触媒を120℃で空気中において乾燥させる。
【0126】
触媒中の質量百分率は、それぞれに乾燥ベースで以下の通りである:モリブデン(MoOの形態)15.1重量%、ニッケル(NiOの形態)3.3重量%。
【0127】
(実施例5-比較触媒Eの調製)
触媒Eのための担体の成形による調製を、ゼオライトUSY 70重量%の市販のベーマイト(Pural SB3、Sasol)の存在中での混練-押出によって行う。ゼオライトYの格子定数は、24.54Åであり、SiO/Alモル比は、5.4であり、比表面積は、BET法に従う窒素物理吸着によって測定されて、811m/gであり、ミクロ細孔容積は、窒素吸着によって決定されて、0.28mL/gであり、ブレンステッド酸度は、600μmol/gである。得られたペレットを、80℃で乾燥させ、次いで、600℃で、湿潤空気(乾燥空気の重量(kg)当たり水5重量%)中において焼成する。焼成済み担体は、乾燥ベースで、70重量%のゼオライトUSYおよび30重量%のアルミナを含む。
【0128】
触媒Eの調製を、生じた担体の乾式含浸によって行い、元素Ni、Moを含有している水溶液を用いる。以下の前駆体を水に溶解させることによってこの溶液を得る:硝酸ニッケルおよび七モリブデン酸アンモニウム。溶液中の前駆体の量の調節を、最終触媒上の標的とされる濃度に応じて行う。乾式含浸の後に、触媒を120℃で空気中において乾燥させる。
【0129】
触媒中の質量百分率は、それぞれに乾燥ベースで以下の通りである:モリブデン(MoOの形態)15.1重量%、ニッケル(NiOの形態)3.3重量%。
【0130】
(実施例6-本発明に合致する触媒Fの調製)
触媒Fのための担体の成形による調製を、ゼオライトUSY 70重量%の市販のベーマイト(Pural SB3)の存在中での混練-押出によって行う。ゼオライトUSYの格子定数は、24.37Åであり、SiO/Alモル比は、11であり、比表面積は、BET法に従う窒素物理吸着によって測定されて、864m/gであり、ミクロ細孔容積は、窒素吸着によって決定されて、0.29mL/gであり、ブレンステッド酸度は、339μmol/gである。
【0131】
得られたペレットを、80℃で乾燥させ、次いで、600℃で、湿潤空気(乾燥空気の重量(kg)当たり水5重量%)中において焼成する。焼成済み担体は、乾燥ベースで、70重量%のゼオライトUSYおよび30重量%のアルミナを含む。乾式含浸の後に、触媒を120℃で空気中において乾燥させる。
【0132】
触媒Fの調製を、生じた担体の乾式含浸によって行い、元素Ni、Moを含有している水溶液を用いる。以下の前駆体を水に溶解させることによってこの溶液を得る:硝酸ニッケルおよび七モリブデン酸アンモニウム。溶液中の前駆体の量の調節を、最終触媒上の標的とされる濃度に応じて行う。
【0133】
触媒中の質量百分率は、それぞれに乾燥ベースで以下の通りである:モリブデン(MoOの形態)10重量%、ニッケル(NiOの形態)2.0重量%。
【0134】
(実施例7-本発明に合致する触媒Gの調製)
触媒Gのための担体の成形による調製を、ゼオライトUSY 60重量%および市販のゼオライトベータ(CP814e、Zeolyst)10重量%の市販のベーマイト(Pural SB3、Sasol)の存在中での混練-押出によって行う。ゼオライトUSYの格子定数は、24.37Åであり、SiO/Alモル比は、11であり、比表面積は、BET法に従う窒素物理吸着によって測定されて、864m/gであり、ミクロ細孔容積は、窒素吸着によって決定されて、0.29mL/gであり、ブレンステッド酸度は、339μmol/gであり、ゼオライトベータのSiO/Alモル比は、25であり、比表面積は、BET法に従う窒素物理吸着によって測定されて、670m/gである。
【0135】
得られたペレットを、80℃で乾燥させ、次いで、600℃で、湿潤空気(乾燥空気の重量(kg)当たり水5重量%)中において焼成する。焼成済み担体は、乾燥ベースで、60重量%のゼオライトUSY、10重量%のゼオライトベータおよび30重量%のアルミナを含み、すなわち、触媒中のY/ベータの重量比=6である。乾式含浸の後に、触媒を120℃で空気中において乾燥させる。
【0136】
触媒Gの調製を、生じた担体の乾式含浸によって行い、元素Ni、Moを含有している水溶液を用いる。以下の前駆体を水に溶解させることによってこの溶液を得る:硝酸ニッケルおよび七モリブデン酸アンモニウム。溶液中の前駆体の量の調節を、最終触媒上の標的とされる濃度に応じて行う。
【0137】
触媒中の質量百分率は、それぞれに乾燥ベースで以下の通りである:モリブデン(MoOの形態)10重量%、ニッケル(NiOの形態)2.0重量%。
【0138】
(実施例8-本発明に合致する触媒Hの調製)
触媒Hのための担体の成形による調製を、ゼオライトUSY 50重量%および市販のゼオライトベータ(CP814e、Zeolyst)20重量%の市販のベーマイト(Pural SB3)の存在中での混練-押出によって行う。ゼオライトUSYの格子定数は、24.37Åであり、SiO/Alモル比は、11であり、比表面積は、BET法に従う窒素物理吸着によって測定されて、864m/gであり、ミクロ細孔容積は、窒素吸着によって決定されて、0.29mL/gであり、ブレンステッド酸度は、339μmol/gであり、ゼオライトベータのSiO/Alモル比は、25であり、比表面積は、BET法に従う窒素物理吸着によって測定されて、670m/gである。
【0139】
得られたペレットを、80℃で乾燥させ、次いで、600℃で、湿潤空気(乾燥空気の重量(kg)当たり水5重量%)中において焼成する。焼成済み担体は、乾燥ベースで、50重量%のゼオライトUSY、20重量%のゼオライトベータおよび30重量%のアルミナを含み、すなわち、触媒中のUSY/ベータの重量比=2.5である。乾式含浸の後に、触媒を120℃で空気中において乾燥させる。
【0140】
触媒Hの調製を、生じた担体の乾式含浸によって行い、元素Ni、Moを含有している水溶液を用いる。以下の前駆体を水に溶解させることによってこの溶液を得る:硝酸ニッケルおよび七モリブデン酸アンモニウム。溶液中の前駆体の量の調節を、最終触媒上の標的とされる濃度に応じて行う。
【0141】
触媒中の質量百分率は、それぞれに乾燥ベースで以下の通りである:モリブデン(MoOの形態)10重量%、ニッケル(NiOの形態)2.0重量%。
【0142】
(実施例9-本発明に合致する触媒Iの調製)
触媒Iのための担体の成形による調製を、ゼオライトUSY 40重量%およびゼオライトベータ(CP814e、Zeolyst)30重量%の市販のベーマイト(Pural SB3、Sasol)の存在中での混練-押出によって行う。ゼオライトUSYの格子定数は、24.37Åであり、SiO/Alモル比は、11であり、比表面積は、BET法に従う窒素物理吸着によって測定されて、864m/gであり、ミクロ細孔容積は、窒素吸着によって決定されて、0.29mL/gであり、ブレンステッド酸度は、339μmol/gであり、ゼオライトベータのSiO/Alモル比は、25であり、比表面積は、BET法に従う窒素物理吸着によって測定されて、670m/gである。
【0143】
得られたペレットを、80℃で乾燥させ、次いで、600℃で、湿潤空気(乾燥空気の重量(kg)当たり水5重量%)中において焼成する。焼成済み担体は、乾燥ベースで、40重量%のゼオライトUSY、30重量%のゼオライトベータおよび30重量%のアルミナを含み、すなわち、触媒中のY/ベータの重量比=1.33である。乾式含浸の後に、触媒を120℃で空気中において乾燥させる。
【0144】
触媒Iの調製を、生じた担体の乾式含浸によって行い、元素Ni、Moを含有している水溶液を用いる。以下の前駆体を水に溶解させることによってこの溶液を得る:硝酸ニッケルおよび七モリブデン酸アンモニウム。溶液中の前駆体の量の調節を、最終触媒上の標的とされる濃度に応じて行う。
【0145】
触媒中の質量百分率は、それぞれに乾燥ベースで以下の通りである:モリブデン(MoOの形態)10重量%、ニッケル(NiOの形態)2.0重量%。
【0146】
(実施例10)
上記の触媒の性能の評価を、減圧蒸留物のフラクションおよびガスオイルを含んでいる供給原料の水素化分解において、下向流の構成にある等温テストパイロットユニットを用いる1回の工程で行う。
【0147】
このテストの供給原料は、水素化処理(HDT)を経る。この水素化処理工程の後に、テスト供給原料の15℃における密度は、0.8755g/mLであり、残留窒素含有率は、23重量ppmであり、残留硫黄含有率は、16重量ppmである。水素化処理の後のこのテスト供給原料についての模擬蒸留の初留点は、163.3℃であり、終点は、578.7℃にある。模擬蒸留の50重量%点は、391.7℃にある。本方法のHDT工程によって生じた硫化水素およびアンモニアの分圧をシミュレートするために、テスト供給原料に、DMDSおよびアニリンをそれぞれに添加して、最終の添加済み供給原料中に8820重量ppmの硫黄および1900重量ppmの窒素を得るようにする。
【0148】
各触媒を別個に評価し、水素化分解テストの前に、SRGO(straight run gas oil:直留ガスオイル)供給原料(すなわち、原油の直接蒸留に由来するガスオイルの供給原料)に4重量%のジメチルスルフィド(DMDS)および2重量%のアニリンを添加したものの下に硫化する。硫化を実行する際のHSVは、2h-1であり(HSV=Hourly Space Velocity:毎時空間速度)、H/供給原料の容積比は、1000NL/Lであり、全圧は、140bar(すなわち、14.0MPa)であり、保持温度は、6時間にわたって350℃である。
【0149】
硫化の後に、操作条件を、水素化分解テストのために用いられるものに調節する:HSV1.5h-1、H/供給原料の容積比1000NL/L、全圧140bar(すなわち、14.0MPa)。供給原料による150時間後の216℃+フラクションの純転化率65重量%を標的にするように反応器の温度を調節する。
【0150】
純転化率を、沸点が216℃未満である留分(またはフラクション)の収率からテスト供給原料中に存在する沸点が216℃未満である留分の収率を減算したものとして定義する。
【0151】
触媒の性能を、基準とみなす触媒Dの性能と比較し、表1に報告する。摂氏度(℃)における相対的な活性を、純転化率65%を得るための評価対象の触媒で得られた温度と基準触媒Dで得られた温度との間の差から得る。同様に、68-216℃留分の相対的な収率を、216℃+留分の65重量%の純転化率で得られた収率の間の差として求める。正の値は、より高い活性または収率を指し示す。
【0152】
【表1】
【0153】
表1において報告された結果により、格子定数が24.37Åであり、BET比表面積が864m/gであり、ミクロ細孔容積が0.29mL/gであり、酸度が339μmol/gであるゼオライトUSYからなる、本発明に合致する触媒F、G、H、Iは、比較触媒A、B、C、DおよびEと比較してナフサ留分の方への収率において系統的な利得を示すことが示されている。
【0154】
より具体的には、格子定数が本発明に合致するが、酸度が本発明に合致しない比較触媒Aは、本発明に合致する触媒Fと比較してナフサ留分の方への収率における明確な低減を示すことが見出される。
【0155】
さらに、本発明によるゼオライトUSYへのゼオライトベータの添加により、ナフサ留分の方への高い選択性を大幅に変更することなく転化活性を調整することも可能とり、そのため、従来技術と比べて改善された活性および改善された選択性の両方を有する触媒を得ることが可能となる。例えば、本発明によるゼオライトUSYのゼオライトベータとの組み合わせにより、ナフサ留分の方への高い選択性を依然として保持しながら転化活性を増大させることが可能となる(本発明による触媒FおよびG)。逆に、本発明によらないゼオライトUSYへのこの同一のゼオライトベータの添加により、活性においてこの同一の利得を得ることは可能とならない(比較触媒BおよびC)。
【国際調査報告】