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特表2024-541542プラスチック材料、及びプラスチック材料を加工するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】プラスチック材料、及びプラスチック材料を加工するための方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 7/00 20060101AFI20241031BHJP
   G02C 7/04 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C08J7/00 304
C08J7/00 CER
C08J7/00 CEZ
C08J7/00 305
G02C7/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531449
(86)(22)【出願日】2022-08-16
(85)【翻訳文提出日】2024-06-26
(86)【国際出願番号】 DE2022000093
(87)【国際公開番号】W WO2023093926
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】102021005859.3
(32)【優先日】2021-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102022000647.2
(32)【優先日】2022-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524197781
【氏名又は名称】エーアイエックスレンズ ゲーエムべーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ポップラウ,ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】ヴォン ウォールフェルド,アクセル
(72)【発明者】
【氏名】クラッセン,ウーヴェ
【テーマコード(参考)】
2H006
4F073
【Fターム(参考)】
2H006BA01
2H006BB06
4F073AA05
4F073AA06
4F073AA32
4F073BA18
4F073BB02
4F073BB08
4F073CA42
4F073CA46
(57)【要約】
本発明はプラスチック材料を加工するための方法に関し、プラスチック材料は、レーザーで加工され、ひいては、改質又は脱架橋される。次に、少なくとも部分的にプラスチック材料を再架橋するために、プラスチック材料を照射する。本発明は、また、プラスチック材料、具体的には眼内インプラント又は眼内レンズに関し、これは、プラスチック材料がレーザーで蒸発されている少なくとも1つの領域を有し、プラスチック材料を再架橋するために、この領域を再処理している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック物質のプラスチック材料を加工するための方法であって、前記プラスチック材料は、レーザーで加工され、少なくとも部分的に改質され、前記プラスチック材料は脱架橋され、その後、少なくとも部分的に前記プラスチック材料の架橋を回復するために照射され、前記レーザーを用いた前記プラスチック材料の加工中、プラスチック材料は、加工領域でアブレーションされ、同時に、又は続いて、前記加工領域は、前記レーザー又は別のレーザーで研磨され、前記プラスチック材料は、研磨されたこの加工領域で照射されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記加工領域は前記プラスチック物質の外面上にあることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プラスチック材料は熱可塑性プラスチック又は熱硬化性樹脂であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記プラスチック材料は、アクリレート、好ましくはメタクリレートであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記プラスチック材料は眼内インプラントであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記プラスチック材料は、具体的には眼内レンズ又はコンタクトレンズ等の視覚補助具であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記プラスチック材料はUSPレーザーであることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記プラスチック材料の一部は、前記加工中、前記レーザーで蒸発されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記プラスチック材料の一部は、前記加工中又は加工後、前記レーザーで研磨されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記プラスチック材料は、前記プラスチック材料の前記表面において、前記レーザーで加工されることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記プラスチック材料は、また、前記プラスチック材料の内部において、前記レーザーで加工されることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記プラスチック材料は、粒子ビーム、具体的には電子ビームで照射されることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記プラスチック材料は光子で照射されることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記プラスチック材料はベータ線又はガンマ線で照射されることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
プラスチック材料のブランクは、前記レーザー加工中に改質され、その後、前記プラスチック材料が、再度、前記プラスチック材料のブランクの材料特性を有するように照射することを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
プラスチック材料、具体的には眼内インプラント又は眼内レンズであって、前記プラスチック材料がレーザーで加工され、その後、少なく部分的に改質されている、少なくとも1つの領域を有し、この領域は、再度、前記プラスチック材料を架橋するために後処理されており、この領域内で、前記プラスチック材料は、前記プラスチック材料の一部の蒸発後に研磨されていることを特徴とする、プラスチック材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラスチック材料を加工するための方法に関し、プラスチック材料はレーザーで加工される。
【背景技術】
【0002】
蒸発閾値を上回る材料をアブレーションするとき、又は蒸発閾値を下回る材料の改質中、プラスチック材料のタイプ、及び加工パラメーターに応じて、具体的には、熱硬化性樹脂の場合、プラスチック材料の脱架橋又は脱重合が発生し得、これはプラスチック材料の特性に悪影響を与える。これは、強度、弾性、繰り返し曲げ応力下の疲労強度、不活性、及び溶解度等、機械的特性及び化学的特性に影響を与える。さらに、本発明は、プラスチック材料、具体的には眼内インプラント又は眼内レンズに関し、これは、プラスチック材料がレーザーを使用して蒸発又は改質されている少なくとも1つの領域を有する。
【0003】
材料を除去するために及び/又は表面を研磨するために、レーザーでプラスチック材料を処理することが知られている。プラスチック材料を加工するこのタイプの例は、独国特許発明第102017002986号明細書に示されている。レーザーで材料をアブレーションできる方法と、さらに、表面の研磨をレーザーで実施できる方法も示すために、眼内レンズは例として使用される。
【0004】
米国特許出願公開第2017/0371180号明細書では、コンタクトレンズの内部空洞が水溶性ポリマーで充填されているコンタクトレンズを製造するための方法が説明されている。この目的を達成するために、コンタクトレンズの外側からキャビティまでレーザーで穴を開け、次に、キャビティの水溶性材料は、紫外線により溶解できる。最後に、穴は、再度、閉じられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許発明第102017002986号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2017/0371180号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102017002986号明細書
【発明の概要】
【0006】
しかしながら、本発明は、眼内レンズ、眼内インプラント、メタクリレートプラスチック材料、又は熱可塑性プラスチックの処理だけでなく、プラスチック材料をレーザーで加工するプラスチック材料の処理にも関するものである。
【0007】
プラスチック材料を蒸発させるためのレーザー加工方法、又はさらにはプラスチック材料を改質若しくは溶解するためだけのレーザー加工方法は、プラスチック材料の分子の架橋を改質する。これは、また、少なくとも、プラスチック材料が加工されている領域内でプラスチック材料の特性を改質する。これは、特に、アブレーションの場合かつ溶解の場合、幾何学形状に関する。しかしながら、溶解及び改質の間、機械的特性及び化学的特性は、また、改質され、特には、プラスチック材料の表面における、又は体積中の屈折率も変化する。
【0008】
本発明に関連して、「プラスチック材料」という用語は、固体物の主要成分が、有機基を伴う合成又は半合成して生成されたポリマーによって形成された固体物を意味するものと理解されたい。合成プラスチック材料は、重合(重付加、重縮合等)によってモノマーから生成される。
【0009】
具体的には、溶解及び蒸発の間等、プラスチック材料の熱処理中、又は実際には、材料の屈折率を変化させるために、架橋の程度は低減する。これにより、硬度、靱性、及び溶融点が低下し、溶解度は増加する。これにより、プラスチック材料の加工が容易になり、これにより、ブランク、例えば、又はレーザーで前処理されているブランクを研磨用レーザーでさらに加工することが可能になる。
【0010】
しかしながら、ブランクを研磨用レーザーで研磨した後、プラスチック材料は、それでも、未処理のブランクよりも低い架橋の程度を有する。これにより、結果として、プラスチック材料の硬質及び頑丈さは、未処理のブランクと同程度ではなくなる。
【0011】
したがって、本発明の基本的な目的は、プラスチック材料の脱架橋と関連付けられた不利点を補償する、又は少なくとも最小にするように、プラスチック材料を加工又は前加工することである。
【0012】
幸運にも、この問題は、特許の請求項1の特徴を伴う方法により解決され得、また、本発明の根本的な問題は、請求項15で特許請求されているプラスチック材料により解決されることが判明している。
【0013】
本発明の基本的概念は、プラスチック材料をアブレーション、溶解、又は改質するための方法を変化させたとしても、1ns未満のパルス持続期間及び0.1μJ~10μJのパルスエネルギーでUSPレーザーを用いても、加工されたプラスチック材料に有害作用を及ぼすことである。加工方法をさらにもっと最適化する代わりに、本発明の基本的概念について、プラスチック材料を少なくとも部分的に再架橋するために、レーザー加工した後、プラスチック材料を照射できることが挙げられる。
【0014】
粒子ビームは照射に適切である。電子ビーム、ガンマ線、又は光子ビーム、具体的にはUV光子ビームは、粒子ビームとして使用され得る。放射線は、電子励起又はイオン化の形態で脱架橋ポリマー鎖部分を活性化し、次に、他のポリマー鎖部分との架橋の増加をもたらす。単位面積あたりの入射電力に対する粒子エネルギー及び粒子ビーム電力を変える試験では、効果があることが確認されている。
【0015】
前述のアプローチと対照的に、次に、本発明に従って、レーザー加工中にプラスチック材料の脱架橋を減らすための新規の方法が提案されているのではなく、むしろ、レーザーを用いる加工中のプラスチック材料の脱架橋を受け入れ、続いて、少なくとも部分的にプラスチック材料を再架橋するために、プラスチック材料を照射することが提案されている。このように、加工されたブランクの脱架橋を減らすことができ、プラスチック材料が加工された後、ブランクの特性を回復でき、さらには、硬度、靱性、及び溶融点を増加させ、溶解度を減らすために、ブランクの架橋の程度と比較して架橋の増加を達成することができる。
【0016】
したがって、プラスチック材料は後続の手順を受け、その手順によって、ポリマー鎖の短縮により、事前の研磨によって発生した粘度の減少は、他の方向に向きを変え、架橋によって上昇し、ひいては、好ましくは、硬度、溶解度、及び靱性に関する材料の元の値を大部分回復する。これは、その表面でレンズの外側で発生し得るが、レンズの材料の内側でも発生する。追加の架橋は、一般に、表面上、具体的には外面における、研磨プロセスと、初期特性の復元とのために適切になり、これは、粒子ビームを用いる特に利点をもたらす方式で実現できる。
【0017】
架橋を増加させるためのプラスチック材料の可能な処理は、架橋剤で処理するだろう。このタイプの架橋剤は、少なくとも2つの反応基によって区別される。2つの同一の反応基との架橋剤はホモ二官能性架橋として説明され、他方では、2つの異なるグループを伴う架橋剤は、ヘテロ二官能性架橋剤として説明される。
【0018】
現存のポリマー鎖の架橋は、硬化するものとして知られ、反応条件の適切な選択肢によってポリマー中に既に存在している官能基を介して、又は多官能性の低分子量物質を使用することによって、のいずれか一方で達成され得る。
【0019】
架橋の程度に応じて、ポリマーの架橋により、最初に、エラストマーを生成し、架橋が増加するにつれて、また、熱硬化性樹脂も生成する。
【0020】
しかしながら、本発明に従って、通常の架橋剤を利用しなく、むしろ、脱架橋に続いて、プラスチック材料を照射する。照射により、次に、レーザービームで処理されているプラスチック材料を、架橋を増加させるために適切な特有の照射によって処理することを可能にする。
【0021】
アブレーション、溶解、研磨、又は改質の場合、レーザーを用いる照射は、プラスチック材料の脱架橋をもたらすが、他のビーム又はパラメーターを用いる照射は、結果として、プラスチック材料の架橋をもたらす。
【0022】
したがって、本発明に従った方法では、プラスチック材料は、照射によって独占的に、ひいては非接触方式で、蒸発又は研磨に至るまで加工して、その後、再度、非接触方式で加工され、その硬度を回復させることができる、又は材料の特性を向上させることができることを意味する。
【0023】
次々に、本方法のこれらのステップを直接的に実施し得る。また、本方法は並行して実施され得、脱架橋は、ブランクの内部領域内及び/又はその表面で集光するレーザーを用いるブランクの加工中に発生し、粒子ビームを用いる照射処理は、この脱架橋プロセスを妨げる。連続プロセスでプラスチック材料部品を加工することを可能にするために、これらの部品は、ブランクの設置、アブレーション、研磨、架橋、最終洗浄、最終検査、パッケージング等、処理台を通る搬送デバイス上で搬送され得る。しかしながら、静止したブランクは、1つのレーザーを用いて加工及び照射され得る。これにより、本方法の時間的順序を変えることが特に容易になる。
【0024】
プロセスを加速させるために、加工中に放射線によって、プラスチック材料部品を加熱し得る。しかしながら、その部品は、具体的には、研磨及び/又は架橋を加速させるために、例えば、別々に導入された赤外線加熱でも加熱され得る。
【0025】
具体的には、熱硬化性樹脂及び熱可塑性プラスチックは、本発明に従った方法に適切である。しかしながら、これらは、エラストマー又は熱硬化性樹脂を形成するように照射によって架橋される場合がある。
【0026】
アクリレート又はメタクリレートは、レーザーで加工し、その後、架橋のために照射するためのプラスチック材料として特に好ましい。
【0027】
また、説明される方法は、インプラントの製造にも特に適切である。レーザー加工は、特殊なインプラント、好ましくは、また、特殊な外科治療が意図されるインプラントもブランクから製造でき、次に、プラスチック材料を架橋させることによって、このインプラントを再度硬化できることを意味する。プラスチック材料の非接触処理は、実際に、インプラントとしての使用に適切であるプラスチック材料を脱架橋して、その後、再架橋できるが、最後に、出発材料の架橋と同様又は同一の架橋をもたらすことを意味する。これにより、インプラントの製造が許可されるプラスチック材料がレーザーによる処理及び関連の脱架橋によって改質されることにより、プラスチック材料は、インプラントとしての使用に適切ではなくなるときに生じ得る問題を回避する。
【0028】
眼内インプラント、具体的には、眼内レンズのための方法を使用して、良好な結果を達成している。
【0029】
超短パルスレーザー(USPレーザー)でプラスチック材料を加工することは、プラスチック材料の本発明に関する加工に特に適切である。この理由として、ここでは、プラスチック材料の特に正確な改質を達成することができ、材料の領域の蒸発による材料特性の部分的改質から、プラスチック材料の表面上で材料を溶解することによる後続の研磨に至るまで広がるためである。
【0030】
機械構成要素又はインプラントとして使用するために、特有のプラスチック物体を製造することを可能にするために、例えば、有利になるように、加工中、プラスチック材料の一部はレーザーで蒸発される、又は屈折率はブランクの内部で改質される。さらに、加工中、プラスチック材料はレーザーで研磨され得、その間、材料の特有の領域をアブレーションする、又はさらに、表面上の微細な構造化を防止するために平滑化を目的として、液化ひいて表面張力効果の増加が達成される。
【0031】
プラスチック材料がプラスチック材料の表面上においてレーザーで加工されるとき、プラスチック材料の単純な加工が達成される。しかしながら、プラスチック材料の表面を加工する場合でさえ、また、必ず、プラスチック材料の内部にある表面の下にあるプラスチック材料の加工領域も生じさせる。
【0032】
表面の近くにおけるこのタイプの加工に加えて、レーザービームは、また、プラスチック材料の内部でプラスチック材料の特有の加工にも使用され得る。これは、具体的には、プラスチック材料の表面から少なくとも0.2mmにあるプラスチック材料の領域を含む。
【0033】
脱架橋がレーザーと調整し、架橋が照射と調整することによって、特有の所定の材料特性は、表面の領域上、又はブランクの体積の領域内で設定され得る。
【0034】
同じ点で、脱架橋の増加は、架橋の増加によって補償され得る、又は、所望の材料特性は、定義された脱架橋及び定義された架橋の組み合わせによって設定される。
【0035】
しかしながら、また、定義された材料特性の組み合わせも使用して、異なる点、表面領域、又は体積領域で異なる程度に脱架橋及び架橋を提供し得る。これは、ブランクは、検討中のブランクの領域に応じて、異なる材料特性が得られることを意味する。
【0036】
例として、ブランクは、照射によって特に硬化されている外面領域と、照射によって集中的に硬化されていない内部領域とを有し得る。
【0037】
このように、例えば、レンズの場合、レンズを通過する光ビームの経路では、1つの領域の屈折率は増加し得、屈折率は、ブランクの加工によって生じた変化を相殺するために、又は特有の屈折率を達成するために、別の領域で減少又は増加し得る。
【0038】
レーザーと同様に、全持続時間、パルス持続期間、及び強度を変えることができ、ひいては、また、これらのパラメーターを使用して、照射領域内の材料の特性に及ぼす照射の効果も変え得る。
【0039】
プラスチック材料の少なくとも部分的な再架橋を達成するための脱架橋後に、プラスチック材料を照射するために、光子を用いる照射が提案される。
【0040】
しかしながら、電子、ベータ線、又はガンマ線を用いるプラスチック材料の照射もまた有利であることが示されている。
【0041】
高いエネルギー電子ビーム、ベータ線、又はガンマ線を用いるプラスチック材料の処理により、利用されるプラスチック材料に、高性能プラスチック材料の熱特性、機械特性、及び化学特性が与えられる。これは、また、本方法で、安価な汎用プラスチックも使用され得ることを意味する。放射線架橋は、ここではプロセス連鎖における最終加工ステップとして、成形に続いて実施され得る。特定の加工、具体的には、それによって得られた表面の硬度は、プラスチック材料部品は、また、パレットかご又は段ボール箱で緩く梱包できることを意味する。放射線の正確な線量が適用されるため、架橋を正確に制御できる。材料特性は、事前に正確に定義され、極めて正確な照射によって実現できる。さらに、遮蔽により、成形部の内側の架橋の程度を変えることが可能になる。このように、プラスチック材料部品は異なる硬度を有し得る。
【0042】
化学架橋プロセスと対照的に、放射線架橋は低温で行われ、これにより、加工を容易にする。
【0043】
具体的には、ポリエチレン(PE)、ポリアミド(PA)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、及びポリ塩化ビニル(PVC)の架橋により、良好な結果を達成している。さらに、本発明に従った方法は、熱可塑性エラストマー(TPE)及びポリプロピレン(PP)に適切であるが、メタクリレート及びポリメタクリル酸等の熱硬化性樹脂にも適切である。
【0044】
したがって、本発明は、また、プラスチック材料、具体的には眼内インプラント又は眼内レンズに関し、これは、プラスチック材料がレーザーで加工されている少なくとも1つの領域を有し、これに関連して、プラスチック材料の脱架橋は、レーザーで発生し、プラスチック材料は、プラスチック材料を再架橋するために、少なくとも1つの領域内で後処理される。レーザーを用いるこのタイプの加工の例として、プラスチック材料の一部の蒸発、又は実際に、プラスチック材料の表面を改質することによるプラスチック材料の研磨が挙げられる。
【0045】
具体的には、好ましいプラスチック材料は、プラスチック材料の一部の蒸発後研磨される、その材料は、再び、プラスチック材料を架橋するために、後処理される。
【0046】
本発明の文脈で使用されるような「プラスチック材料」という用語は、原材料等、成形部品等の任意のプラスチック材料、若しくは機械要素あるいはインプラント等の任意のプラスチック材料部品を意味し、又は実際には、別の構成要素の内側にあるプラスチック材料のプラスチック表面又は領域も意味するものと理解されたい。
【0047】
本発明に従った例示的な実施形態は、眼内レンズの製造を説明している。このレンズは、最初に、材料のアブレーションがアブレーションレーザーを使用して実施されるブランクから製造される。これに関連して、レーザーがブランクに衝突するブランクの領域が蒸発する。0.01~10μm/パルスのこの材料のアブレーションは、0.1μJ~10μJのパルスエネルギーを用いてレーザーで達成される。これに関連して、USPレーザーのパルス持続期間は、1ns未満であり、レーザー波長は、好ましくは、193nm~370nmである。有利に、焦点の直径は5~5μmである。
【0048】
次に、アクリレートから成るブランクは表面の領域の蒸発によって最初に成形され、その結果、ブランクはほとんど規定の最終形状に到達する。次に、ブランクは、研磨用レーザーでさらに加工される。
【0049】
これにより、加工領域内で脱架橋をもたらし、次に、ブランクは、電子ビームで、ベータ線で、又はガンマ線で、少なくともこれらの領域で処理される。処理期間について、加工された表面が少なくともブランクの架橋の程度を回復するように、又は、さらには、少なくとも部分的に、架橋の程度がより高くなり得るように設定される。
【0050】
これにより、特に硬質であり、耐溶剤性、ひいては生体抵抗性がある表面を伴う、プラスチック材料部品、また、具体的には医療インプラントを製造することが可能になる。
【0051】
レーザーを使用する脱架橋法及び放射線を用いる処理手段による架橋法の組み合わせは、また、異なる密度を伴うプラスチック材料部品が製造できることを意味する。したがって、例えば、本方法によって製造された眼内レンズは、保護の目的のために、内部よりも表面上のプラスチック材料のより硬い層、すなわち、より架橋された層を有し得る。架橋勾配は、プラスチック材料部品を通って断面で達成され得、規定の架橋により、レンズの内部又はさらには内側の屈折率は、特に、変わる可能性がある。
【0052】
これにより、材料特性を用いて、プラスチック物質、具体的にはレンズの表面で成形するだけでなく、プラスチック材料の既定の材料密度によって、具体的には、プラスチック材料の内側の密度勾配によっても、プラスチック物質を通過する光のビームに影響を与えることが可能になる。
【0053】
好ましい例示的な実施形態では、プラスチック材料のブランクは、レーザー加工中に改質され、次に、プラスチック材料が、その後、再び、プラスチック材料のブランクの材料特性を有するように照射する。
【0054】
独国特許出願公開第102017002986号明細書で説明されている方法は、レーザーでプラスチック材料を加工する点で特に利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】加工ユニットの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
例示的な実施形態は、図に示され、下記に説明される。
【0057】
単一の図は、図示的に、加工ユニットの側面図を示す。
【0058】
図1に示されるコンベヤベルトは、複数の加工台を通過してコンベヤレンズ2(単に総称として番号付けされている)を運ぶ。ほんの一例として、レンズ2を加熱するIRエミッター3は、第1の加工台として示される。次の加工台は、レンズの形状を特に変えるレーザー4である。次に、レンズの表面を研磨するレーザー5を伴う加工台が存在する。第4の台は、高いエネルギー電子ビーム、ベータ線、又はガンマ線のためのエミッター6である。最後の台は、レンズ3が滅菌方式でパッケージングされるパッキング台7である。
【0059】
代替案として、レンズは、また、静止位置にもあり得、様々な加工台は、レンズを通過して誘導される。さらに、これらの2つの動作モードの組み合わせは実施され得る。
【0060】
架橋の役割をする照射は、電子ビームで実施され得る。これに関連して、電子エネルギーE=150keV~300keV、限定された場合でも、最大1.5MeVが使用され得る。次に、電子ビームの平均電力は、例えば、P=1~5kWである。
【0061】
好ましい線量は、PD=50~500kGy(キロ-グレイ)であり得る。この線量は、また、連続的に加えられるいくつかの線量で提供され得る。この目的を達成するために、エミッターは、加工品を何回も通り過ぎ得る。その結果、最終的に、所望の架橋を達成するための所望の合計線量が加えられている。
【0062】
実際には、照射表面Aは2×20cmである。これにより、結果として、0.5kW/cm~3kW/cmの強度Iがもたらされた。前述の表面に対する適切な前進速度は、V=3~10cm/sであった。
【0063】
単位面積あたりの適切な強度を達成するために、データをスケールアップ又はスケールダウンすることができた。
【0064】
静止照射の場合、適切な強度、照射期間、及び線量レベルを計算する。
【0065】
独国特許出願公開第102017002986号明細書に説明されている方法について、レーザーでプラスチック材料のブランクを正常に加工するための値が記載されている。これに関連して、脱架橋が発生し、次に、それを補償する必要がある。他方では、脱架橋及び架橋の事前に指定された組み合わせによって、プラスチック材料のブランクの材料特性は、特に、その表面で改質され、随意に、その内部体積でも改質される。
【0066】
また、独国特許発明第102017002986号明細書に説明されている特殊加工について、例示的な実施形態のための脱架橋の加工ステップが説明されている。その加工ステップの後に、本願に説明される架橋の加工ステップが続く。
【図
【国際調査報告】