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特表2024-541543多層紙から成形製品を製造するための方法、紙で作られた成形製品、及びその製造のためのデバイス
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  • 特表-多層紙から成形製品を製造するための方法、紙で作られた成形製品、及びその製造のためのデバイス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】多層紙から成形製品を製造するための方法、紙で作られた成形製品、及びその製造のためのデバイス
(51)【国際特許分類】
   B31B 50/59 20170101AFI20241031BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B31B50/59
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531453
(86)(22)【出願日】2022-10-19
(85)【翻訳文提出日】2024-07-12
(86)【国際出願番号】 IB2022060038
(87)【国際公開番号】W WO2023094910
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】21020601.7
(32)【優先日】2021-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524197828
【氏名又は名称】スカファ サーモフォーミング ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スカファルティ、イェンス
【テーマコード(参考)】
3E075
3E086
【Fターム(参考)】
3E075BA95
3E075BB01
3E075CA02
3E075DA33
3E075DC18
3E075DC33
3E075DC43
3E075GA03
3E086AD05
3E086BA14
3E086DA08
(57)【要約】
本発明は、後の乾燥ステップを省き、その形状に関して平坦な領域の間においてフラットな角度のみに限定されない、完全堆肥化可能である成形製品を製造するのも可能にする、多層紙から成形製品を製造するための方法に関連する。本発明はさらに、紙で作られる対応する成形製品、及び本方法を実行するためのデバイスに関連する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層紙から成形製品を製造するための方法であって、
i)押圧表面を有する押圧ツールのポジティブ・モールドと相補的なネガティブ・モールドの間で、上下に配置構成された複数の紙層を送給するステップであって、前記複数の紙層の各々が、その表面の上に複数の自由繊維端を有する、ステップと、
ii)好適には周囲空気であるガス又はガス混合物を吸引又は供給することにより前記紙層の頂部側又は底部側に対して横向きである前記自由繊維端を位置合わせするステップであって、前記ガス又はガス混合物の流れ方向が所望のアライメントに対応する、ステップと、
iii)前記押圧ツールにより、前記ポジティブ・モールド及び前記ネガティブ・モールドに対応する成形製品を形成するように前記紙層を押圧するステップと、
を特徴とする、方法。
【請求項2】
少なくとも1つの押圧表面が少なくともいくつかの領域においてガス透過性であるか又は多孔質であり、ステップii)に従って吸引又は供給することが少なくとも1つの押圧表面を通して行われる、
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記紙が、少なくとも部分的な領域において、20%以上で、また好適には50%以上で伸縮可能であるクレープ加工されたセルロース含有組織紙である、
ことを特徴とする、請求項1から2までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
ステップii)において前記ガス又はガス混合物を吸引することが、前記ポジティブ・モールドと前記ネガティブ・モールドとの間で前記周囲圧力に対しての陰圧を少なくとも短時間の間作り出す、
ことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記紙層が少なくともステップii)において溶媒又は溶媒混合物を有する、
ことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記溶媒又は溶媒混合物が、ステップii)において前記ガス又はガス混合物を吸引又は供給することの結果として、非常に高い速度で蒸発する、
ことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ステップii)及びiii)における前記溶媒又は溶媒混合物の含有量が、初期含有量の5%未満まで低減されるか、或いは、前記溶媒を水とする場合、前記成形製品と、20℃、50%の相対湿度、及び1000hPaの周期空気圧での周囲空気と、の間での水分平衡未満であるか又はこの水分平衡に等しい前記成形製品の水分含有量まで低減される、
ことを特徴とする、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
ステップi)による送給中、前記紙層のうちの少なくとも2つの紙層が互いから離間される、
ことを特徴とする、請求項5から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップi)による前記紙層の送給中、前記溶媒又は溶媒混合物が、互いから離間された前記紙層の間で、噴霧されるか、蒸発されるか、噴霧又は蒸発の両方を行われる、
ことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ステップiii)による押圧中の圧力が少なくとも100kg/cmである、
ことを特徴とする、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップiii)における前記押圧ツールの温度が100℃から350℃である、
ことを特徴とする、請求項1から10までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記紙の組成がエラストマ添加物を含まず、前記成形製品が完全堆肥化可能である、
ことを特徴とする、請求項1から11までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
90°より大きいが150°未満である角度を形成する完全堆肥化可能である直接に隣り合う平坦領域(12、13)であって、紙層が、少なくともいつかの領域において、クレープ加工のみにより、20%以上の、また好適には50%以上の、伸縮性を有する、平坦領域(12、13)
を特徴とする、多層紙から製造される成形製品(11)。
【請求項14】
押圧表面(5a、6a)をそれぞれ呈するポジティブ・モールド(5)及び相補的なネガティブ・モールド(6)を有する押圧ツール(7)に対して紙を送給するためのローラー構成(2)を有する、多層紙から成形製品(8、10)を製造するためのデバイス(1)であって、
前記押圧ツール(7)が100℃から350℃まで加熱可能であり、前記押圧表面(5a、6a)のうちの少なくとも1つの押圧表面が少なくともいくつかの領域においてガス透過性であるか又は多孔質であり、前記押圧表面(5a、6a)を通過させるように好適には周囲空気であるガス又はガス混合物を吸引又は供給するためのコンプレッサー又は真空ポンプに対してホースを介して接続される、
ことを特徴とする、デバイス(1)。
【請求項15】
溶媒又は溶媒混合物を霧化又は蒸発させるように設計された、好適には水である溶媒又は溶媒混合物のための出口(4)が前記押圧ツール(7)の上流に配置構成され、個別の紙層(3)のための移送デバイスが、前記紙層(3)の間に前記出口(4)が配置可能となるように、構成される、
ことを特徴とする、請求項14に記載のデバイス(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後の乾燥ステップを省き、その形状に関して平坦な領域の間においてフラットな角度のみに限定されない、完全堆肥化可能である成形製品を製造するのも可能にする、多層紙から成形製品を製造するための方法に関する。本発明はさらに、紙で作られる対応する成形製品、及び本方法を実行するためのデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
あらゆる種類の商品の国際的な通信販売貿易が増えていることから、梱包材料の需要も増えている。熱可塑性プラスチックから作られた熱成形梱包材に加えて、環境保護のために堆肥化可能である梱包材も重要性が増している。割れやすい鶏卵をその中で移送するための箱は、通常、ボール紙で作られ、堆肥化可能性の基準を満たす。これらの鶏卵箱は繊維鋳造として知られているプロセスを使用して製造され、ここでは、第1のステップが、通常、紙繊維の小さい繊維を除いて(defibrillate)紙繊維を新しい形状にすることの準備を整えることを目的として、水中で段ボール紙から不要な紙を溶解させることを伴う。第2のステップで、第1の成形ツールが繊維パルプを有する容器の中に浸され、余分な水が容器の下方から吸い出され、その結果、紙繊維がツールの成形された頂部側に集められる。次いで、第2の成形ツールが第1の成形ツールの上に堆積する繊維パルプの頂部側を成形し、ここでは、両方のツールが、両方のツールの間にある繊維パルプと共に、上方において容器から取り出される。最終ステップで、予成形された繊維パルプが乾燥オーブンの中に配置され、乾燥オーブンにおいて繊維が一体に密に付着し、したがってグルーを加える必要はない。乾燥ステップ後、成形パートの使用の準備が整う。この方法の欠点は、一方で、この方法の水含有量が高いことでエネルギーが消費されること及び乾燥ステップが必要になることであり、他方で、この方法によって可能となる製造の速度が遅いことである。したがって、このようにして製造される成形製品のエコロジカル・フットプリントは、多くの使用者が思っているよりも大幅に悪い。
【0003】
多くの種類の梱包材では、例えば特許明細書DE102013103743B4で示されるように、環境保護の要求を満たしているという印象を与えることのみが意図される。熱成形法を使用して製造されるプラスチック梱包材の欠点のうちの1つの欠点は、このような梱包材は一目でプラスチックで作られることが分かってしまうことであり、これは、現在、多くの用途において望ましいことではなく、その理由は、例えば、このような梱包材内に収容される製品が環境保護の側面を有していたり、又は、他の目的のために梱包材が環境に優しい印象を少なくとも与えなければならなかったりするからである。この特許文献では、形状を自由に定義できないことによる、代替物としてのボール紙梱包材の制約にも言及している。そこで提示される発明の目的は、一方で、熱成形プラスチック・ボディから構成され、他方で、グルーを用いない梱包材の一体部分であって使用後に問題なくプラスチック・ボディから分離されるのを可能にする、紙材料などの別の材料で作られた挿入物から構成される、熱成形梱包材を作り出すことである。これは、紙材料で作られた梱包材の見た目を与えるために紙繊維を用いて後でフロック加工される熱成形プラスチック梱包材のさらなる進歩であるが、不都合なことに、廃棄中に適度な労力で構成要素を分離することを可能としない。
【0004】
実用新案DE202018104061U1も梱包材料の環境保護の側面に対処している。この実用新案によると、プラスチック又は漂白紙/ボール紙で構成され、紙に似たものとするために印刷を施される、利用可能である多数の種類の梱包材が存在する。特別なワニスを使用することによりいくつかの場合では非常に紙に似たものである感触を与えることできる。その狙いは、消費者が期待するような「紙の見た目及び紙の触感」の自然さを消費者に提供することであるが、これは実際には持続可能性的ではない。この実用新案明細書で説明される目的は冷凍食品のための折り畳みの箱を提供することであり、この箱は、油脂加工され得るか或いはワックス又はシリコーンで被覆され得る。ここではいわゆるクラフト紙が使用される。これの欠点は、同様に、形状に制約があることであり、主として、折り畳みのボックスを提供することしか可能とならない。
【0005】
プレートの縁部に一般的な波形を有する紙プレートなどの多層紙を単純に押圧して成形製品にすることは、紙の伸縮性が不十分であること及び平坦な領域又は浅い波形状の間の角度が非常にフラットなものにすることしかできないことを理由として、成形において制約を受ける。このような製品は、さらに、個別の紙層の間の密な付着を確実なものとするためにグルーを加えることを必要とする。しかし、これは完全な堆肥化可能性の妨げとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】DE102013103743B4
【特許文献2】DE202018104061U1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、グルーの使用を必要とする、繊維鋳造以外の方法によって製造される成形製品と比較してその成形に関して受けることになる制約を少なくするがそれでも通常の繊維鋳造法と比較してより迅速でありより省エネルギーである方法により製造され得る、紙で作られる、完全堆肥化可能であってエラストマ及びグルーなしで成形される製品を提供することである。同時に、紙で作られるこのような成形製品のための製造方法が提示され、さらには、このような方法を実行するためのデバイスが提供される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
言及した問題は、請求項1による方法、請求項13による成形製品、及び請求項14によるデバイスによって解決され、ここでは、それぞれの下位クレームから有利な実施例が得られる。
【0009】
請求項1によると、本発明は、多層紙から成形製品を製造するための方法に関連し、ここでは、各々の紙層がその表面上に複数の自由繊維端をそれぞれ有する。これらの繊維端は、紙層が押圧されて所望の成形製品になる間においても互いに対しての密な付着を実現するように紙層に対して横方向に方向付けられることを理由として、本方法において重要である。したがって、本方法は、上下に配置構成された複数の紙層が押圧ツールのポジティブ・モールドとポジティブ・モールドに対して相補的であるネガティブ・モールドとの間に送給される第1のステップを含む。第2のステップで、紙層に対して横向きである自由繊維端の位置合わせが行われ、ここでは、好適には周囲空気であるガス又はガス混合物が紙層を通って流れるか又は逆に紙層を通過するように且つ紙層から吸引され、ここでは、ガス又はガス混合物の流れ方向が繊維端の所望のアライメントに対応し、理想的には紙層の頂部側及び底部側に対して横向きである。繊維端は押圧ツールの上流で又は好適には押圧ツール内でつまり押圧ツールのポジティブ・モールドとネガティブ・モールドとの間で位置合わせされる。第3のステップで、個別の紙層が、ポジティブ・モールド及びネガティブ・モールドに対応する成形製品を形成するように押圧されて、第1の方法ステップでの連続的な紙層の好適な送給中の分離切断とは別に、エネルギー集約的な乾燥ステップなどの他のステップを一切必要とすることなく、押圧ツールから取り出される。
【0010】
第2の方法ステップが押圧ツールのポジティブ・モールドとネガティブ・モールドとの間で行われることが有利である。好適には、少なくともいくつかの領域においてガス透過性であるか又は多孔質である少なくとも1つの押圧表面を有する押圧ツールが使用され、その結果、繊維端を位置合わせするためにガス又はガス混合物を吸引又は供給することが1つ又は複数のこのような押圧表面を通して行われる。このようにして、流れ方向が、所望の形状に対して横向きに方向付けられたベクトルに対応するようになる。
【0011】
本方法により意図される形成パートを成形するために、少なくとも部分的な領域において20%以上で伸縮可能であるクレープ加工されたセルロース含有組織紙(cellulose-containing tissue paper)を使用することが有利である。モールド内での方向の変化時に外側紙層が内側紙層より大きく伸縮することから、例えば成形パートの2つの平坦領域がほぼ90度の角度を成形する場合などでは、使用される紙をクレープ加工することにより紙を少なくとも部分的な領域において50%以上で伸縮させることが可能となることが有利である。例えば20%の伸縮性は、例えば長さ100cmの紙層が裂けることなく120cmの長さまで伸縮することができることを意味する。
【0012】
好適には、第2の方法ステップでガス又はガス混合物を吸引することにより、周囲圧力に対しての陰圧が少なくとも短時間の間作り出され、その理由はこの場合では繊維端が非常に良好に位置合わせされていることであり、このことは、第3の方法ステップの後で個別の紙層を互いに付着させることに有利になる。さらに、少し手前の段階で噴霧するか又は蒸発させることにより或いはその両方を同時に行うことにより具体的には水などの溶媒又は溶媒混合物を紙層の表面の大部分に局在させて個別の紙層の深くまでは浸透させないことが有利であり、その理由は、同じ溶媒又は溶媒混合物量を個別の紙層に一様に且つ完全に浸透させるような場合と比較して、溶媒又は溶媒混合物が、第2のステップで作用するガス又はガス混合物を吸引するか又は供給することの結果としてより迅速に蒸発し得るからである。加速された蒸発中において繊維端が所望の手法で紙層の表面に対しての横方向において真っ直ぐにされる。
【0013】
本方法の好適な実装形態では、ガス又はガス混合物を吸引することにより、及び、溶媒又は溶媒混合物が水ではない限りにおいては、押圧ツールを100℃~350℃まで加熱することによって達成され得ることとして周囲温度を上げることにより、溶媒又は溶媒混合物の含有量は初期含有量の5%未満まで低減される。本方法の安全性においては有利である水が使用される場合、20℃、50%の相対湿度、及び1000hPaの周期空気圧での周囲空気に対しての水分含有量は、第2及び第3の方法ステップにおいては、少なくとも平衡化されるか又はそれを超えて低減され、その理由は、記載される条件下ではつまり実際においても原理的には紙が水を結び付け、完全には水を排除しない、からである。平衡化は周囲空気及び成形パートが等しい水含有量を有することを意味するものではなく、それぞれの吸収能力に応じた平衡化が達成されることを意味するものである。溶媒としての水の代替物は、例えば、共沸エタノール/水の混合物、イソプロパノール/水の混合物、又はイソプロパノールなどの、水よりも迅速に蒸発する溶媒混合物を含む。
【0014】
既に言及したように、個別の紙層に対して溶媒又は溶媒混合物が噴霧されるか又は蒸発されることが有利である。これは互いに離間した少なくとも2つの紙層の間で行われることが有利であり、好適には、上下に配置された紙層の中間で行われることが有利である。押圧処置のために短時間のみ停止される、紙ロールからの紙層の原則として継続的である送給中において、分離装置の補助によりスペーシングが作り出され得、このスペーシングにより紙層の間に噴霧ヘッド又は蒸発ノズルを挿入することが可能となる。しかし、開始時から適切な調整された溶媒又は溶媒混合物の含有量を有する紙層を使用することによりこのような労力を回避することも可能であり、ここでは、完成した成形製品での個別の紙層の間の付着品質に関して妥協が行われる可能性がある。
【0015】
押圧ツールのポジティブ・モールド及びネガティブ・モールドに対応する成形製品を形成することを目的として紙層を押圧するために第3の方法ステップにおいて適用される圧力は、好適には、1平方センチメートル当たり少なくとも100kgである。もちろん、形状に応じて必要である場合にはより高い圧力が適用されてもよい。押圧中、100℃から350℃の温度を有する高温の押圧ツールを用いて加工することが有利であり、その理由は、これにより溶媒又は溶媒混合物の所望の蒸発が促進され、したがって繊維端の位置合わせが促進される、からである。
【0016】
説明される方法は、有利には紙が出発材料として使用され得ること、及び、個別の紙層の互いに対しての付着を強化することなどのために本方法中にグルーを加えることが必要ないこと、を特徴とする。これは、本方法を用いて製造される成形製品が完全堆肥化可能であり、もちろん再生利用可能である、ことを意味する。
【0017】
提示される方法の背景に対して、そのクレープ加工のみにより、少なくともいくつかの領域において20%以上、また好適には50%以上の伸縮性を有し、完全堆肥化可能であり、90°より大きく150°未満である角度を形成する互いに直接に隣り合う平坦領域を有する、多層紙から製造される成形製品を提供することが可能である。さらに、これにより、このような成形製品が、例えば繊維鋳造法を使用して製造された市販の卵パックから明確に区別され得るようになり、その理由は、繊維鋳造法のような場合では紙のクレープ加工に関連しない伸縮性が確定的なものではないからである。
【0018】
最後に、ポジティブ・モールド及び相補的なネガティブ・モールドを有する押圧ツールに対して紙を送給するためのローラー構成を有する、多層紙から成形製品を製造するためのデバイスが簡単に提示され、ここでは、押圧ツールが100℃~350℃まで加熱され得、押圧表面のうちの少なくとも1つの押圧表面が少なくともいくつかの領域においてガス透過性であるか又は多孔質であり、押圧表面を通過させるように好適には周囲空気であるガス又はガス混合物を吸引又は供給するためのコンプレッサー又は真空ポンプに対してホースを介して接続される。
【0019】
溶媒又は溶媒混合物を霧化又は蒸発させるように設計された、好適には水である溶媒又は溶媒混合物のための出口が押圧ツールの上流に配置構成されることが有利であり、ここでは、個別の紙ウェブのための移送デバイスが、例えば、噴霧ヘッド、噴霧マルチヘッド、或いは、蒸発ノズル、又は蒸発マルチノズルとなり得る出口が、紙層の間に配置可能であるように構成される。
【0020】
図面を参照しながら以下で本発明をより詳細に説明するが、本発明は示される実例のみに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、多層紙から成形製品を製造するためのデバイスのスケッチを示す。
図2図2は、多層紙から製造された成形製品の実例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、多層紙から成形製品を製造するためのデバイスのスケッチを示す。必ずしも示されるように押圧ツール(7)の側部に配置構成されるわけではなく例えば紙を送給するときに重力の力を利用するように押圧ツール(7)の上方にも配置構成され得るローラー構成が示される。ここでは溶媒又は溶媒混合物のための出口(4)により単純な手法で互いから離間されて示される個別の紙層(3)が見られ得る。個別の紙層(3)は、出口(4)の上流に配置された追加の分離装置(図示せず)によっても互いから離間され得る。出口の上を送給される多層紙が押圧ツール(7)まで誘導され、押圧ツール(7)のポジティブ・モールド(5)が相補的なネガティブ・モールド(6)内の圧力に係合され、それにより送給される紙の形成を所望のかたちの形成とすることでき、ここでは非常に図式的である成形製品(8)とすることができ、先に形成された成形製品(10)によって概略的に描かれるように、切刃(9)に沿って切断されることにより個別のパートとして分離される。押圧表面(5a、6a)は穿孔(図示せず)を有し、これらの穿孔を通して、この場合では周囲空気であるガス又はガス混合物が押圧プロセス中であっても吸引される。これにより、少なくとも短時間の間、周囲圧力に対しての陰圧が作り出される。これらの穿孔から真空ポンプ(図示せず)まで繋がるホースは、有利には、押圧ツールの描かれるカバーの中を通っている。単純さのために、紙層を湿らせることを意図された溶媒又は溶媒混合物の供給も示されない。
【0023】
図2は、上述の方法により多層紙から製造されたいくらかの程度でより複雑である成形製品の実例を示し、さらに、成形製品(11)の端面で、90°よりわずかに大きいが150°未満である角度を形成する2つの直接に隣り合う平坦領域(12、13)を示し、これは、多層紙からの製造の場合においては、繊維鋳造法による製造とは対照的に、使用される紙がクレープ加工により少なくともいくつかの領域において20%以上(この場合では、50%以上)の伸縮性を有する場合にのみ、エラストマを加えることなく可能となる。
【符号の説明】
【0024】
1 多層紙から成形製品を製造するためのデバイス
2 ローラー構成
3 紙層
4 出口
5 ポジティブ・モールド
5a ポジティブ・モールドの押圧表面
6 ネガティブ・モールド
6a ネガティブ・モールドの押圧表面
7 押圧ツール
8 成形製品(また接続されている)
9 切刃
10 成形製品(分離された)
11 成形製品
12 第1の平坦領域
13 第2の平坦領域
図1
図2
【国際調査報告】