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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】アーク抑制電極
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20241031BHJP
   A61B 18/12 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
A61B18/14
A61B18/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531492
(86)(22)【出願日】2022-11-23
(85)【翻訳文提出日】2024-05-27
(86)【国際出願番号】 US2022050972
(87)【国際公開番号】W WO2023101885
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】63/284,626
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518241986
【氏名又は名称】パルス バイオサイエンシズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Pulse Biosciences,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ヒンマン,キャメロン,ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ダニッツ,デヴィッド,ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】モス,ケビン,エル.
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK04
4C160KK19
4C160KK37
4C160MM32
4C160NN01
4C160NN11
(57)【要約】
サブマイクロ秒パルス電気エネルギーを含む、標的組織に電気エネルギーを印加するための方法および装置である。これらの方法および装置は、アーク放電を防止または抑制し、および/またはアーク放電を最小限に抑えながら、治療中に十分な接触を維持することができる。例えば、アーク抑制層で覆われた表面を持つ電極が記載されている。アーク抑制層は、ギャップ領域(例えば、エアギャップ)によって電極表面から分離され得る。
【選択図】図10A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーク放電を制限するように構成された電極装置であって、
第1の電気絶縁性支持体と、
当該第1の電気絶縁性支持体によって支持され、第1の電極表面を含む、第1の電極と、
前記第1の電気絶縁性支持体または第2の電気絶縁性支持体によって支持され、第2の電極表面を含む、第2の電極とを具え、
前記第1の電極および第2の電極は、その間に少なくとも0.1kVの大きさを有する電気パルスを通過させるように構成され、
前記第1の電極表面は第1のアーク抑制層によって覆われ、前記第2の電極表面は第2のアーク抑制層によって覆われており、電気パルスを通過させる際に前記第1の電極と前記第2の電極との間のアーク放電を低減または排除するように構成されている、電極装置。
【請求項2】
アーク放電を制限するように構成された電極装置であって、
第1の電気絶縁性支持体と、
当該第1の電気絶縁性支持体によって支持され、第1の電極表面を含む、第1の電極と、
前記第1の電気絶縁性支持体または第2の電気絶縁性支持体によって支持され、第2の電極表面を含む、第2の電極とを具え、
前記第1の電極および第2の電極は、間に少なくとも0.1kVの大きさを有する電気パルスを通過させるように構成され、
前記前記第1の電極は、前記第1の電極表面上またはその周囲に第1の丸みを帯びたエッジを含み、前記第2の電極は、前記第2の電極表面上またはその周囲に第2の丸みを帯びたエッジを含み、前記第1および第2の丸みを帯びたエッジは、電気パルスを通過させる際に前記第1の電極と前記第2の電極との間のアーク放電を低減または排除するように構成されている、電極装置。
【請求項3】
前記第1の電極はアプリケータの第1のジョーにあり、前記第2の電極は前記アプリケータの第2のジョーにあり、さらに前記第1および第2のジョーは互いに対して開閉するように構成されている、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1の電極および第2の電極は、表面電極または板状電極である、請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記第1の電極が前記第1のジョーの側方側にあり、前記第2の電極が前記第2のジョーの側方側にあり、前記第1のジョーの側方側は前記第2のジョーの側方側と同一平面上にある、請求項3または4に記載の装置。
【請求項6】
前記第1の電極が前記第1のジョーの第1の側にあり、前記第2の電極が前記第2のジョーの第2の側にあり、前記第1のジョーの第1の側と前記第2のジョーの第2の側とが、その間に処置対象の組織を固定するように構成されている、請求項3または4に記載の装置。
【請求項7】
さらに細長いシャフトを含み、前記第1のジョーおよび第2のジョーが、前記シャフトに対して角度をつけて配置され、湾曲するか曲がった構成を有する、請求項3~6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記第1の電極が前記第1のジョーの側方側にあり、第3の電極が前記第1のジョーの第2の側にあり、前記第2の電極が前記第2のジョーの側方側にあり、第4の電極が前記第2のジョーの第2の側にあり、さらに、第1のジョーの側方側が前記第2のジョーの側方側と同一平面にあり、前記第1のジョーの第1の側方側と前記第2のジョーの第2の側とが、その間に処置対象の組織を固定するように構成され、前記装置が、前記第1の電極と第3の電極との間と、前記第2の電極と第4の電極との間で選択するように構成されている、請求項3~7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記第1のジョーおよび前記第2のジョーは、前記第1の電極および前記第2の電極が互いに平行を保つように開閉するように構成されている、請求項3~8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記第1のジョーと前記第2のジョーとが、互いに軸方向に相対移動するように構成されている、請求項3~9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記第1の電極と前記第2の電極とが一定の距離だけ離れている、請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記第1の電極表面が第1のアーク抑制層で覆われ、前記第2の電極表面は、前記電気パルスを通過させる際に前記第1の電極と前記第2の電極との間のアーク放電を低減または排除するように構成された第2のアーク抑制層によって覆われている、請求項2に記載の装置。
【請求項13】
さらに、非作動状態において前記第1のアーク抑制層と前記第1の電極表面との間の第1のギャップ領域と、前記非作動状態において前記第2のアーク抑制層と前記第2の電極表面との間の第2のギャップ領域とをさらに含む、請求項1または12に記載の装置。
【請求項14】
前記第1のギャップ領域および前記第2のギャップ領域がエアギャップを含む、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記第1のアーク抑制層に対して力が加えられると、前記第1のアーク抑制層が前記第1の電極表面に対して偏向するように構成されている、請求項1および12~14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
前記第1のギャップ領域および前記第2のギャップ領域がそれぞれ0.5mm以上である、請求項13~15のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
前記第1の電極および前記第2の電極がそれぞれ丸みを帯びたエッジを具える、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
前記第1の電極および前記第2の電極がそれぞれ5mmを超える長さを有する、請求項1~17のいずれか1項に記載の装置。
【請求項19】
前記第1のアーク抑制層および前記第2のアーク抑制層がそれぞれ可撓性膜を具える、請求項1および12~16のいずれか1項に記載の装置。
【請求項20】
前記第1のアーク抑制層および前記第2のアーク抑制層はそれぞれ、0.01S/m~10S/mの導電率を有する、請求項1および12~16のいずれか1項に記載の装置。
【請求項21】
前記第1のアーク抑制層および前記第2のアーク抑制層が、導電性フィラーを含むシリコーンポリマーを含む、請求項1および12~16のいずれか1項に記載の装置。
【請求項22】
前記第1の電極および前記第2の電極の少なくとも一方または両方に対して組織を吸引するために吸引を加えるように構成された1つまたは複数の吸引ポートをさらに具える、請求項1~21のいずれか1項に記載の装置。
【請求項23】
パルス電界エネルギーを標的組織に印加する方法であって、
第1の電極表面の少なくとも一部を覆う第1のアーク抑制層が前記第1の電極表面に対して駆動されるように、第1の表面電極を標的組織に押し付けるステップと、
第2の電極表面の少なくとも一部を覆う第2のアーク抑制層が前記第2の電極表面に対して駆動されるように、標的組織に対して第2の表面電極を押し付けるステップと、
前記第1の電極表面と前記第2の電極表面との間のアーク放電を抑制または防止しながら標的組織を処置するために、前記第1の表面電極と前記第2の表面電極との間に、0.1kVを超える大きさを有する複数の電気パルスを印加するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項24】
前記複数の電気パルスは、持続時間が1000ナノ秒未満のパルスである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第1および第2の表面電極は、前記標的組織をその間に圧縮することによって前記標的組織に押し付けられる、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記第1および第2の表面電極を前記標的組織に対して固定するために、前記第1および第2の表面電極を保持するアプリケータから吸引を加えることによって、前記第1および第2の表面電極を前記標的組織に押し付けられる、請求項23~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記第1のアーク抑制層が、前記第1のアーク抑制層と前記第1の電極表面との間の第1のエアギャップを変位させるように、前記第1の表面電極が前記標的組織に押し付けられる、請求項23~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記第1のアーク抑制層が、前記第1の電極表面の導電率よりも小さい導電率を有する、請求項23~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記アーク放電を抑制または防止しながら標的組織を処置することは、前記第1の電極表面の組織に接触しない部分と前記第2の電極表面との間のアーク放電を抑制または防止することを含む、請求項23~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記第1の表面電極を標的組織に押し付けることが、子宮内膜症に罹患した組織に前記第1の表面電極を押し付けることを含む、請求項23~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記第1の表面電極を標的組織に押し付けることが、前記第1の表面電極を声帯組織に押し付けることを含む、請求項23~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記第1の表面電極を標的組織に押し付けることが、前記第1の表面電極を心臓組織または肺静脈の心房に押し付けることを含む、請求項23~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
装置であって、
細長い本体と、
当該細長い本体から遠位側に延びるパドル領域であって、側方側と、該側方側に沿って平行に延びる2以上の表面電極とを含む、パドル領域と、
前記細長い本体を前記パドル領域に結合する関節領域であって、前記細長い本体を通って延びる平面内で前記パドル領域を関節運動させるように構成された、関節運動領域と、
遠位パドルを180度以上関節運動させるように構成された制御部を含む近位端のハンドルと、を具えることを特徴とする装置。
【請求項34】
2以上の表面電極を組織表面に固定するために吸引を加えるように構成された1以上の吸引ポートを前記側方側にさらに具える、請求項33に記載の装置。
【請求項35】
前記側方側とは反対側である前記パドル領域の背面に電気絶縁体をさらに具える、請求項33または34に記載の装置。
【請求項36】
前記側方側とは反対側である前記パドル領域の背面上のさらなる2以上の表面電極と、前記側方側の2以上の表面電極または前記パドル領域の背面上のさらなる2以上の表面電極のいずれかを作動させるように構成された制御部とをさらに含む、請求項33~35のいずれか1項に記載の装置。
【請求項37】
前記パドル領域は、前記2以上の表面電極間の空間を広げるように前記側方側が横方向に広がるように幅が広がるように構成されている、請求項33~36のいずれか1項に記載の装置。
【請求項38】
前記2以上の表面電極間の間隔を増減するように構成されたハンドル上の拡張制御部をさらに含む、請求項37に記載の装置。
【請求項39】
前記2以上の表面電極はそれぞれ、電極表面と、それぞれの電極表面を覆うアーク抑制層とを有する表面電極を具える、請求項33~38のいずれか1項に記載の装置。
【請求項40】
前記2以上の表面電極の各々が丸みを帯びたエッジを有する、請求項33~38のいずれか1項に記載の装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2021年11月30日に出願された「ELECTRODES WITH ARC MITIGATION」と題する米国仮特許出願第63/284,626号の優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
生体組織や細胞の電気マニピュレーションには、非常に短く高電界強度の電気パルスが使用される。例えば、電気パルスは、良性および悪性の腫瘍、病変、その他の状態を含む組織の治療に使用することができる。高い電界強度や短い電気パルスなどの電気パルスによる治療は、核やミトコンドリアなどの細胞内構造の操作に有用であり得る。例えば、サブマイクロ秒(ナノ秒など)の高電圧パルス発生器や治療アプリケータが、生物学的、医療的、美容的用途に提案されている。しかし、このような高いピーク電界は、電極間でアーク放電が発生しやすい。
【0003】
非常に高い治療電圧と非常に速いパルス時間のため、サブマイクロ秒の電界を供給するアプリケータは、エネルギーを印加する電極間のアーク放電を防止するように構成するのが理想的である。電極が表面電極で、標的組織に均一に接触しない場合や、電極表面と組織との間に隙間がある場合、アーク放電を防止することは極めて困難であり、この問題は特に大きな電極を使用する場合に顕著である。本明細書では、このような問題に対処し、一般にサブマイクロ秒のパルスエネルギーを使用する組織の治療を強化する方法および装置を説明する。
【発明の概要】
【0004】
本明細書には、電気エネルギーを標的組織に適用するための方法および装置(例えば、電気エネルギーを印加するためのアプリケータを含む装置、システムなど)が記載される。特に、本明細書には、アーク放電を防止または制限し、および/またはアーク放電を最小限に抑えながら治療中に適切な接触を維持する、サブマイクロ秒パルス電気エネルギーを標的組織に印加するための方法および装置が記載される。例えば、本明細書に記載されるのは、アーク抑制層、例えば、電極表面よりも低い導電率を有する材料で形成された層で覆われた電極表面を含む電極(例えば、表面電極)である。アーク抑制層は可撓性であり、および/またはギャップ領域によって電極表面から分離されてもよい。ギャップ領域は、いくつかの例では、エアギャップであり得る。これらの電極は、長さ5mm以上、7mm以上、10mm以上、12mm以上、15mm以上などの長さの導電性表面を有し得る。標的組織との均一な接触を維持することが困難な、このような非常に長い電極であっても、本明細書に記載されているようなアーク抑制カバーを使用することで、高電界強度でサブマイクロ秒のパルスを印加する際に生じ得るアーク放電を防ぐことができる。本明細書において便宜上、電極表面を導電性表面と呼ぶこともある。
【0005】
本明細書に記載される方法および装置は、電極間に組織を挟むように構成された2以上の電極を有するアプリケータを含み得る。また、本明細書で説明されるのは、標的組織に押し付けられるように容易かつ効果的に関節運動され得るパドル領域上にある、標的組織に押し付けられるように構成された電極の2以上のセットを含むアプリケータである。本明細書に記載されるアプリケータはいずれも、アーク抑制層で覆われた導電性表面を有することができ、この導電性表面は、ギャップ領域(例えば、エアギャップ)によって導電性表面から隔てられるか、いくつかの構成では導電性表面と直接接触してもよい。代替的または追加的に、本明細書に記載される導電性表面のいずれかは、電荷の蓄積を防止する丸みを帯びたエッジ(フィレット)を含み得る。
【0006】
例えば、本明細書には、アーク放電を制限する電極装置が記載されており、この電極装置は、第1の電気絶縁性支持体と、当該第1の電気絶縁性支持体によって支持され、第1の電極表面を含む、第1の電極と、前記第1の電極表面を覆う第1のアーク抑制層と、前記第1の電気絶縁性支持体または第2の電気絶縁性支持体によって支持され、第2の電極表面を含む、第2の電極と、前記第2の電極を覆う第2のアーク抑制層とを具え、前記第1および第2の電極は、少なくとも0.1kVの大きさと1000ナノ秒未満の継続時間を有する電気パルスを、アーク放電することなく通過させるように構成されている。
【0007】
また、本明細書では、電極装置(例えば、アーク放電を制限するように構成されたもの)が記載されており、この電極装置は、第1の電気絶縁性支持体と、当該第1の電気絶縁性支持体によって支持され、第1の電極表面を含む、第1の電極と、前記第1の電気絶縁性支持体または第2の電気絶縁性支持体によって支持され第2の電極表面を含む、第2の電極とを具え、前記第1の電極および第2の電極は、間に少なくとも0.1kVの大きさを有する電気パルスを通過させるように構成され、前記第1の電極は、前記第1の電極表面上またはその周囲に第1の丸みを帯びたエッジを含み、前記第2の電極は、前記第2の電極表面上またはその周囲に第2の丸みを帯びたエッジを含み、前記第1および第2の丸みを帯びたエッジは、電気パルスを通過させる際に前記第1の電極と前記第2の電極との間のアーク放電を低減または排除するように構成されている。前記第1の電極表面は組織対向面または組織接触面であり、前記第2の電極表面は組織対向面または組織接触面であり得る。前記第1の丸みを帯びたエッジは、第1の組織接触面上またはその周囲だけでなく、第1の非組織接触面上またはその周囲にあってもよく、前記第2の丸みを帯びたエッジは、第2の組織接触面上だけでなく、第2の非組織接触面上またはその周囲にあってもよい。いくつかの例では、前記丸みを帯びたエッジ/フィレットは、ピーク電界を例えば最大約30%減少させるように構成される。いくつかの例では、前記電極装置は細長いシャフトを具え、第1のジョーと第2のジョーが当該シャフトに対して角度をつけて(例えば、垂直に)配置され、湾曲または屈曲した構成を有してもよい。前記第1および第2のジョーは互いに軸方向に移動可能であり得る。いくつかの例では、任意で、前記第1の電極表面は第1のアーク抑制層によって覆われ、前記第2の電極表面は第2のアーク抑制層によって覆われてもよい。
【0008】
これらの電極装置はいずれも、アーク放電を制限するように構成することができ、第1の電気絶縁性支持体と、当該第1の電気絶縁性支持体によって支持され、第1の電極表面を含む、第1の表面電極と、前記第1の電気絶縁性支持体または第2の電気絶縁性支持体によって支持され、第2の電極表面を含む、第2の表面電極とを具え、前記第1および第2の表面電極は、その間に少なくとも0.1kVの大きさを有する電気パルスを通過させるように構成され、前記第1の電極表面は第1のアーク抑制層によって覆われ、前記第2の電極表面は第2のアーク抑制層によって覆われており、電気パルスを通過させる際に前記第1および第2の表面電極の間のアーク放電を低減または排除するように構成されている。
【0009】
これらの電極装置はいずれも、本明細書に記載されるような電気エネルギーを印加するためのアプリケータを含み得る。本明細書に記載の電極装置は、3つ以上、4つ以上、5つ以上など、2つ以上の電極(例えば、表面電極)を含み得る。前記電極装置は手持ち式、ロボット式、あるいはその両方であり得る。前記電極装置は、細長い本体および/またはハンドル領域を含み得る。前記電極装置は、再使用可能なアプリケータハンドルに(機械的および/または電気的に)結合された先端部または先端領域として構成され得る。いくつかの例では、前記電極装置は使い捨てであってもよいし、使用制限(1回の治療セッションで使用する、または1人の患者に使用するなど)があってもよい。いくつかの例では、前記電極装置は再使用可能であり、例えば滅菌可能であり得る。
【0010】
これらの装置はいずれも、1以上の電気絶縁性支持体を含み得る。前記電気絶縁性支持体は、電極が上または内部に保持および/または形成される電気絶縁性材料で形成され得る。ポリマー材料などの適切な電気絶縁性支持材料を使用することができる。例えば、前記電気絶縁性支持体は、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)などで形成され得る。前記電気絶縁性支持体は、処置される組織との接触を補助するために、平坦または曲面のようなアプリケータ表面に形成され得る。いくつかの例では、電気絶縁性支持体は、電極を保持し支持するパドル、ジョーアーム、または他の構造に形成され得る。いくつかの例では、装置(例えば、アプリケータ装置)は、各々が電極の1つ以上(例えば、アレイ)を支持する2以上の別個の電気絶縁性支持体を含み得る。
【0011】
本明細書に記載されている電極は、組織の表面にサブマイクロ秒(例えばナノ秒)のエネルギーを印加するように構成されたプレート電極または表面電極を含み得る。本明細書に記載される装置のいずれにおいても、前記表面電極は、処置される組織に対して(例えば、組織の標的領域に対して)保持されるように構成され得る。前記表面電極は実質的に平坦であってもよいし、平坦な組織接触面を含んでもよい。本明細書で説明する表面電極は、円形、楕円形、六角形、正方形、長方形などの任意の適切な形状を有し得る。いくつかの例では、本明細書に記載の表面電極は細長く、幅よりも長さが大きい。いくつかの例では、本明細書に記載の電極は、幅の2倍以上(2.5倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上など)の長さを有する。例えば電極の長さは、2mm以上、3mm以上、4mm以上、5mm以上、6mm以上、7mm以上、8mm以上、9mm以上、10mm以上、11mm以上、12mm以上、13mm以上、14mm以上、15mm以上などであり得る。
【0012】
本明細書に記載された装置のいずれにおいても、電極は電極表面を含み得る。前記電極表面は、組織に接するように構成された電極の面であり得る。前記電極表面は、実質的に平坦であってもよいし、湾曲していてもよいし、(例えば、わずかに)曲がっていてもよいし、その他の態様で標的組織表面に対して保持されるように構成され得る。いくつかの例では、前記電極表面は導電性金属(銀、ステンレス鋼など)のような導電体で形成される。いくつかの例では、前記電極表面は導電性ポリマーで形成される。いくつかの例では、前記電極表面はワイヤで形成される。
【0013】
本明細書に記載の電極はいずれも、前記電極表面を覆うアーク抑制層を含み得る。いくつかの例では、前記アーク抑制層は硬質であり、他の例では、アーク抑制層は膜、コーティングなどの柔軟材料で形成され得る。前記アーク抑制層の材料の導電率(例えば、20℃でのS/m)は、前記電極表面の導電率より低く、かつ標的組織の導電率よりわずかに小さいか、ほぼ等しいか、大きくあり得る。例えば、前記アーク抑制層の導電率は、約0.001S/m~約20S/m(例えば、約0.01S/m~約10S/m、約0.1S/m~約8S/m、約0.1S/m~約5S/m、約0.1S/m~約10S/m、約0.1S/m~約4S/m、約0.1S/m~約3S/m、約0.1S/m~約2S/m、約0.1S/m~約1S/m、約0.01S/m~約5S/mの間、約0.01S/m~約3S/mなど)であり得る。例えば、前記アーク抑制層は、目標範囲内(例えば、約0.001S/m~約5S/m)の導電率を有するようにドープまたはその他の処理が施された高分子材料で形成され得る。前記高分子材料は、限定しないが、シリコーンなどの可撓性高分子材料であり得る。ドーピング材料(本明細書では充填材またはフィラーとも呼ばれる)は、例えば炭素(例えばカーボンナノチューブ)などの導電性材料であり得る。例えば、前記アーク抑制層は、導電性フィラー(例えば、カーボンナノチューブ)を含むシリコーンポリマーを含み得る。
【0014】
一般に、前記アーク抑制層は電極表面を覆っていてもよい。いくつかの例では、前記アーク抑制層は電極表面に直接積層される。代替的または追加的に、前記アーク抑制層は導電層の上にギャップや空間を空けて取り付けてもよい。前記ギャップや空間はエアギャップであってもよいし、非導電性流体(空気、純水、油など)で形成された隙間であってもよい。前記非導電性流体は圧縮性であり得る。前記非導電性流体は、前記アーク抑制層と前記電極表面との間のギャップ領域と流体連通する電極の別の部分に置換するように構成されてもよい。いくつかの例では、前記非導電性流体(例えば、空気)は、前記アーク抑制層の開口部を通して排出することができる。前記アーク抑制層は、ギャップ領域によって前記アーク抑制層が導電性電極表面から分離された弛緩構成を有するように構成され、標的組織を保持または駆動するために電極に対して力(例えば、圧力、圧縮、真空など)が加えられると、前記アーク抑制層が電極表面に対して駆動され、電気エネルギー(例えば、サブマイクロ秒パルス電気エネルギー)が印加されるようにすることができる。
【0015】
例えば、これらの装置はいずれも、非作動状態(導電性表面に対してアーク抑制層を駆動するために力が加えられていない状態)において、前記アーク抑制層と前記電極表面との間にギャップ領域を含み得る。前記表面電極に対して(例えば、アーク抑制層に対して)力が加わると、前記アーク抑制層は前記導電性表面の方へ駆動され、ギャップ領域がつぶされる。前述したように、ギャップ領域は例えばエアギャップであり得る。したがって、前記アーク抑制層は、前記アーク抑制層に対して力が加えられると、前記導電性表面に対してたわむように構成され得る。
【0016】
前記ギャップ領域は、任意の適切な間隔にすることができる。例えば、前記ギャップ領域は、前記アーク抑制層と前記電極表面を隔てる幅が約0.1mm以上、約0.2mm以上、約0.3mm以上、約0.4mm以上、約0.5mm以上、約0.1mm~5mm、約0.2mm~5mm、約0.3mm~5mm、約0.4mm~5mm、約0.5mm~5mmなどであり得る。
【0017】
本明細書で説明する装置はいずれも、それぞれが独自の電極(例えば、表面電極)およびアーク抑制層を含む2以上の電極を含み得る。実際には、同じアーク抑制層を用いて複数の電極を形成することができるが、互いに電気的に絶縁される必要がある(したがって、本明細書では、第1アーク抑制層、第2アーク抑制層など、異なるアーク抑制層と呼ばれ得る)。いくつかの例では、前記アーク抑制層は絶縁支持体に固定され得る。例えば、前記アーク抑制層は、前記絶縁支持体に接着固定したり、前記絶縁支持体にタック留めしたり、溶接したりすることができる。本明細書で説明するアーク抑制層は、いくつかの例ではアーク抑制膜と呼ばれることもある。本明細書で説明するアーク抑制層は、下層の電極表面を完全に覆ってもよい。
【0018】
一般に、本明細書で説明する電極は、アーク放電を起こすことなく、少なくとも0.1kVの大きさと1000ナノ秒未満の持続時間を持つ電気パルスを通過させるように構成されている。例えば、本明細書に記載の装置は、約1kV以上、約2kV以上、約3kV以上、約5kV以上、約6kV以上、約7kV以上、約8kV以上、約9kV以上、約10kV以上、約0.1kV~約100kV、約1kV~約100kV、約3kV~約100kV、約5kV~約100kVなどの大きさを有する電気パルスを通過させるように構成され得る。パルスは、サブマイクロ秒パルス(例えば、約1000ns未満、例えば、約1ns~約1000ns、約1ns~約950ns、約1ns~約900ns、約5ns~約1000ns、約5ns~約950ns、約5ns~約900nsなど)であり得る。
【0019】
これらの装置はいずれも、クランプ式または把持式のアプリケータとして構成され得る。例えば、これらの装置はいずれも第1の電極をアプリケータの第1のジョーに有し、第2の電極をアプリケータの第2のジョーに有する。前記第1のジョーと第2のジョーは、処置される組織を間に固定するために、互いに対して開閉可能に構成され得る。これらのジョーは、第1の表面電極と第2の表面電極が互いに平行を保つように開閉するように構成され得る(例えば、平行開口ジョー)。前記ジョーはハサミ状に開くように構成されていてもよい。前記ジョーは、一方のジョーが他方のジョーに対して相対的に動くように構成され、例えば、第1のジョーが第2のジョーに対して軸方向に動くように構成されていてもよい(またはその逆でもよい)。
【0020】
前記電極は、前記ジョーのクランプ面、例えば互いに対向する面上にあり得る。あるいは、前記電極は前記ジョーの側面(lateral faces)にあり、前記ジョーの開閉によって電極間の間隔が広がったり狭まったりするが、電極間の組織を挟まないようにしてもよい。
【0021】
いくつかの例では、前記電極は対向するジョー上にはなく、同じ支持構造上にある。この支持構造は、ユーザが(またはいくつかの例では自動的に)電極間の間隔を調整できるように伸縮するように構成され得る。いくつかの例では、前記装置は、電極および/またはジョーの間の間隔を検出するように構成され得る。例えば、前記装置はリニアポテンショメータを内蔵し得る。代替的または追加的に、前記第1の電極と第2の電極は一定の距離だけ離れていてもよい。いくつかの例では、前記電極は、組織との良好な接触および/または治療領域の調整を可能にするために関節運動が可能なパドル構造上に配置される。
【0022】
前述のように、第1の表面電極および第2の表面電極はそれぞれ、例えば、幅よりも大きい長さを有する細長い表面電極を含み得る。例えば、前記電極表面は細長く、その幅よりも大きな長さを有し得る。一例では、前記表面電極、例えば、第1の電極および/または第2の表面電極は、長さが5mmより大きくあり得る。アーク抑制層を有する実施例のいずれにおいても、前記アーク抑制層は前記電極表面そのものよりもさらに電極表面上で延在してもよいし、前記電極表面と同じ大きさであってもよい。
【0023】
本明細書に記載された電極は、前記電極表面に丸みを帯びたエッジ/フィレットを具えることができ、これによりアーク放電の可能性がさらに低減され得る。
【0024】
前記電極(例えば、第1の表面電極および第2の表面電極)は、任意の適切な導電性材料で形成され得る。例えば、前記表面電極はステンレス鋼で形成することができる。
【0025】
これらの装置のいずれかにおいて、前記アーク抑制層、例えば、第1および第2のアーク抑制層は、可撓性膜を含み得る。
【0026】
これらの装置はいずれも、絶縁性支持体を貫通する1以上の吸引ポートを具え、吸引力を加えて組織を前記電極に引き寄せるように構成され得る。例えば、前記装置は、限定しないが、前記表面電極の間、前記表面電極の下、前記表面電極の周囲などを含む、前記表面電極に隣接する1以上の吸引ポートを含み得る。したがって、吸引は、組織と前記表面電極の接触を確実にするために、前記アプリケータを通るか前記アプリケータと連通する吸引チャネルを通して、例えば遠位端から適用され得る。いくつかの例では、前記電極表面に対して前記アーク抑制層を押し付けるために吸引を使用してもよい。
【0027】
例えば、本書では、高電圧、サブマイクロ秒パルスで大きな表面電極を使用する場合でも、アーク放電を抑制または防止する電極装置が記載される。この電極装置は、第1の電気絶縁性支持体と、当該第1の電気絶縁性支持体によって支持され、第1の電極表面を含む、第1の表面電極と、当該第1の電極表面を覆う第1の可撓性アーク抑制層であって、第1のギャップ領域によって前記第1の電極表面から分離される、第1の可撓性アーク抑制層と、前記第1の電気絶縁性支持体または第2の電気絶縁性支持体によって支持され。第2の電極表面を含む、第2の表面電極と、前記第2の表面電極を覆う第2の可撓性アーク抑制層であって、第2のギャップ領域によって前記第2の電極表面から分離される、第2の可撓性アーク抑制層とを具え、前記第1および第2の電極は、少なくとも0.1kVの大きさと1000ナノ秒未満の持続時間を有する電気パルスを、アーク放電することなく通過させるように構成されている。
【0028】
また、本明細書には、組織を治療するためにこれらの装置のいずれかを使用する方法も記載される。これらの方法は、限定しないが、子宮内膜症の治療方法、声帯病変(例えば、声帯ポリープ、結節および/または嚢胞)の治療方法、心臓組織の治療方法(例えば、心房細動の治療方法)など、特定の適応症を治療するために特異的な方法であり得る。例えば、パルス電界エネルギーを標的組織に印加する方法は、第1の電極表面の少なくとも一部を覆う第1のアーク抑制層が前記第1の電極表面に対して駆動されるように、前記第1の表面電極を標的組織に押し付けるステップと、第2の電極表面の少なくとも一部を覆う第2のアーク抑制層が前記第2の電極表面に対して駆動されるように、前記第2の表面電極を標的組織に押し付けるステップと、前記第1の電極表面と前記第2の電極表面との間のアーク放電を抑制または防止しながら標的組織を処置するために、前記第1および第2表面電極間に、0.1kVを超える大きさおよび1000ナノ秒未満の持続時間を有する複数の電気パルスを印加するステップとを含み得る。
【0029】
方法のいくつかの例では、第1のアーク抑制層および第2のアーク抑制層の代わりに、丸みを帯びたエッジが第1の電極および第2の電極に使用され、第1の電極と第2の電極との間のアーク放電を抑制または防止しながら組織を治療する。これらの方法はいずれも、標的組織をその間に圧縮することによって標的組織に押し付けられる第1および第2の表面電極を含み得る。例えば、前記第1および第2の表面電極を保持するアプリケータから吸引を加えて前記第1および第2の表面電極を標的組織に押し付け、前記第1および第2の表面電極を標的組織に対して固定することができる。アーク抑制層を用いた例では、第1の表面電極を標的組織に押し付けて、第1のアーク抑制層が当該第1のアーク抑制層と前記第1の電極表面との間の第1のエアギャップを移動させることができる。前記第2の表面電極を標的組織に押し付けて、第2のアーク抑制層が当該第2のアーク抑制層と前記第2の電極表面との間の第2のエアギャップを移動させることができる。
【0030】
第1の表面電極を標的組織に押し付ける工程は、第1の電極表面の丸みを帯びたエッジが標的組織に接触するように第1の電極表面を押し付けることを含み得る。
【0031】
前記第1のアーク抑制層は、本明細書で説明するように、第1の電極表面の導電率よりも小さい導電率を有し得る。
【0032】
アーク放電を抑制または防止しながら組織を処置することは、前記第1の電極表面および前記第2の電極表面の非組織接触部分または領域間のアーク放電を抑制または防止することを含み得る。
【0033】
これらの方法は、前述のように、子宮内膜症を治療する方法であり得る。例えば、ある実施例では、前記第1の表面電極を標的組織に押し付ける工程は、前記第1の表面電極を子宮内膜組織に押し付けることを含み得る。
【0034】
これらの方法は、前述のように、声帯を治療する方法であり得る。例えば、前記第1の表面電極を標的組織に押し付ける工程は、前記第1の表面電極を声帯組織に押し付けることを含み得る。
【0035】
これらの方法は、前述のように、心臓組織を治療する方法であり得る。例えば、前記第1の表面電極を標的組織に押し付ける工程は、前記第1の表面電極を心臓組織に押し付けることを含み得る。例えば、いくつかの実施態様において、心臓組織にパルス電界エネルギーを印加する方法が提供され、この方法は、心臓組織上の第1の場所に対して第1の電極の第1の電極表面を押しつけるステップであって、前記第1の電極は、前記第1の電極表面上またはその周囲に第1の丸みを帯びたエッジを有する、ステップと、心臓組織上の第2の場所に対して第2の電極の第2の電極表面を押しつけるステップであって、前記第2の電極は、前記第2の電極表面上またはその周囲に第2の丸みを帯びたエッジを有する、ステップと、第1のエッジおよび第2の丸みを帯びたエッジ、前記第1の電極と第2の電極との間のアーク放電を抑制または防止しながら心臓組織を処置するために、前記第1および第2の表面電極間に0.1kVを超える大きさおよび1000ナノ秒未満の持続時間を有する複数の電気パルスを印加するステップとを含む。
【0036】
パルス電界エネルギーを標的組織に印加する方法は、標的組織に対して第1の表面電極を押し付けるステップであって、第1の表面電極が、第1のエアギャップによって第1の可撓性アーク抑制層から分離された第1の導電性表面を具え、前記第1のアーク抑制層が、前記第1の導電性表面の少なくとも一領域にわたって前記第1の導電性表面に対して押し付けられる、ステップと、標的組織に対して第2の表面電極を押し付けるステップであって、前記第2の表面電極は、第2のエアギャップによって第2の可撓性アーク抑制層から隔てられた第2の導電性表面を具え、前記第2のアーク抑制層が第2の導電性表面の少なくとも領域にわたって第2の導電性表面に対して押し付けられる、ステップと、前記第1の導電性表面と前記第2の導電性表面との間でアーク放電することなく組織を処置するために、前記第1の表面電極と前記第2の表面電極との間に、0.1kVを超える大きさと1000ナノ秒未満の持続時間とを有する複数の電気パルスを印加するステップとを含む。
【0037】
パルス電界エネルギーを標的組織に印加する方法は、第1の電極表面の少なくとも一部を覆う第1のアーク抑制層が前記第1の電極表面に対して駆動されるように、前記第1の表面電極を標的組織に押し付けるステップと、第2の電極表面の少なくとも一部を覆う第2のアーク抑制層が前記第2の電極表面に対して駆動されるように、前記第2の表面電極を標的組織に押し付けるステップと、前記第1の電極表面と前記第2の電極表面との間のアーク放電を抑制または防止しながら標的組織を処置するために、前記第1および第2表面電極間に、0.1kVを超える大きさを有する複数の電気パルスを印加するステップとを含み得る。
【0038】
本明細書に記載される装置は、特に腹腔鏡の適応症に適している可能性がある。これらの装置は、体腔内の組織表面を治療するために使用され得る。例えば、これらの器具は、腹腔鏡による子宮内膜症(例えば、女性生殖系組織の標的組織、例えば、卵巣、卵管、子宮を支える靭帯(子宮仙骨靭帯)、後盲嚢すなわち子宮と直腸の間の空間、前盲嚢すなわち子宮と膀胱の間の空間、子宮の外表面、骨盤腔の内膜、場合によっては腸、直腸、膀胱、膣、子宮頸部、および/または外陰部)に用いることができる。本明細書に記載の装置は、心臓の治療(例えば、不整脈(心房細動またはAF)の治療に使用されるメイズ処置を実行するため)、および口腔内、食道などの治療に特に適し得る。
【0039】
例えば、本明細書にも記載される装置は、細長い本体と、当該細長い本体から遠位側に延びるパドル領域であって、側方側(lateral side)と、当該側方側に沿って平行に延在する2以上の表面電極とを含む、パドル領域と、前記細長い本体を前記パドル領域に結合する関節領域であって、前記細長い本体を通って延びる平面内で前記パドル領域を関節運動させるように構成された関節領域と、遠位パドルを180度以上(例えば、190度、200度など)可動にするように構成された制御部を含む近位端のハンドルとを具える。
【0040】
これらの装置のいずれもが細長い本体を含み得る。前記細長い本体は硬質であってもよく、直線的であっても湾曲していてもよい。いくつかの例では、前記細長い本体は、身体領域に挿入できるようなサイズである(例えば、約6インチ~24の長さなど)。前記細長い本体は、手で持つように構成されていてもよく、また、イントロデューサーやマウントを通して挿入されていてもよい。
【0041】
遠位のパドル領域は、2以上の表面電極を支持することができ、前記電気絶縁性支持体を含むか、その一部に形成され得る。前記パドル領域は、楕円形状であってもよく、および/または、非外傷性形状の遠位端領域を有し得る。前記パドル領域は、処置される組織(標的組織)の表面に側方側で接触するように構成され得る。前記側方側は、前記装置の遠位端に対して垂直な側であり得る。いくつかの例では、弛緩状態(非関節構成)において、前記パドル領域は細長い部材の長軸と一直線上にあるように構成される。
【0042】
前記関節領域は、前記パドル領域、したがって前記表面電極を単一平面内で移動するように駆動されるように構成され得る。例えば、前記関節領域は、ヒンジ領域またはその領域を形成する一連のヒンジを含み得る。これらのヒンジは、1つまたは複数のピンジョイントを含んでもよいし、リミングヒンジ構成で形成されてもよい。関節領域は、前記関節領域の遠位端(例えば、細長いハウジングに対するパドル領域)前記を関節領域の近位端に対して引っ張ったり押したりするために使用できる1以上の腱(例えば、ワイヤ、紐、コードなど)によって関節化され得る。前記関節領域は、例えば、一方向(「上」または「下」)に優先的に曲がったり、または曲がっていない構成に戻るように、一方向にバイアスされてもよい。前記関節領域は、前記パドル領域が、例えば、±45度、50度、60度、65度、70度、75度、80度、85度、90度、95度、100度、105度、120度などの間で移動するように、単一平面内で曲がるように構成され得る。したがって、前記装置は、遠位パドルを90度、100度、110度、120度、130度、140度、150度、160度、170度、180度、190度、200度、210度以上などで関節運動させるように構成され得る。前記関節領域は、関節ジョイントとして構成され得る。
【0043】
これらの装置はいずれも、前記関節領域の関節運動を含む装置の関節運動を制御する制御部を含み得る。前記制御部はハンドルにあってよい。前記制御部(「関節運動制御部」)は、スライダー、ノブ、プーラー、ダイヤルなどであり得る。前記制御部は、機械式または電気式であり得る。これらの装置はいずれも、選択された関節角度をロックし維持するためのロックおよびロック制御を含み得る。例えば、前記装置は、選択された角度を保持(ロック)するためのロックボタンやノブなどを有する関節制御部を含み得る。前記ロックは機械的なもので、関節領域の関節運動を駆動するように構成された腱または歯車のさらなる動きを防止することができる。いくつかの例では、前記ロックは歯車と爪を含み得る。前記ロックは、関節領域を連結する腱の動きを防止または制限するための摩擦ロックを含み得る。
【0044】
これらの装置のいずれもが、前記側方側に1以上の吸引ポートを含み、2以上の表面電極を組織表面に固定するために吸引を加えるように構成され得る。
いくつかの例では、前記パドル領域は比較的平坦であり、片側に平坦または湾曲した側面を有し、幅を隔てて反対側も平坦または湾曲していてもよい。この幅は比較的細くあり得る(例えば、1mm~10mm、1mm~7mm、1mm~6mmなど)。前記側面(lateral surface)の反対側(裏側)は、パドル領域の裏面とも呼ばれる。いくつかの例では、前記パドル領域の裏面は電気絶縁体を具え得る。いくつかの例では、この裏面は第2の表面電極のセットを含み得る。前記装置は、前記パドル領域の側方側の表面電極のセットからエネルギーを印加するか、または前記裏面の電極のセットからエネルギーを印加するかを、ユーザ(またはロボットコントローラなどのコントローラ)が選択できるように構成され得る。したがって、前記装置は、前記側面の表面電極の第1のセットと前記裏面の表面電極の第2のセットとの間を多重化するように構成され得る。例えば、前記ハンドル領域は、電極のセット間を切り替えるための制御部(例えば、スイッチ)を含み得る。したがって、これらの装置はいずれも、前記側面とは反対側のパドル領域の裏面上の2以上の表面電極の第2のセットと、前記側面上の2以上の表面電極か、前記パドル領域の裏面上の2以上の表面電極の第2のセットかのいずれかを作動させるように構成された制御とを含み得る。
【0045】
いくつかの例では、前記側方側(lateral side)は平らな側面(lateral surface)である。あるいは、前記側方側は湾曲しており、例えばわずかに湾曲していてもよいし(例えば、10mmより大きい曲率半径を有する)、前記側方側は長軸(近位-遠位軸)に対して垂直な軸で湾曲していてもよい。あるいは、いくつかの例では、前記パドル領域、特にパドル領域は長軸方向に湾曲していてもよい。
【0046】
これらの装置(図3~9に示すものを含む)はいずれも、前記表面電極の互いの間隔を調整できるように構成され得る。いくつかの実施例では、前記パドル領域は、前記パドル領域(およびいくつかの実施例では前記パドル領域の側方側)が前記2以上の表面電極間の間隔を広げるように側方に広がるように、(例えば、長軸に垂直な方向に)幅が広がるように構成され得る。前記装置は、前記2以上の表面電極間の間隔を増減させるように構成された制御部、例えば前記ハンドル上の拡張制御部を含み得る。この拡張は、健(ワイヤ、コードなど)によって駆動することができ、拡張構成または非拡張構成にバイアスされていてもよい。前記装置はまた、選択された拡張状態で前記パドル領域を固定するように構成された拡張ロックを含み得る。
【0047】
一般に、前記2以上の表面電極は3以上の表面電極を含み得る。前記表面電極は、上述したものと同様であってよく、例えば、前記表面電極はそれぞれ、電極表面と、当該電極表面を覆うアーク抑制層(例えば、可撓性アーク抑制層)とを含み得る。いくつかの例では、前記可撓性アーク抑制層は、ギャップ領域(例えば、エアギャップ)によって前記電極表面から分離され得る。前記2以上の表面電極は丸みを帯びたエッジを有し得る。
【0048】
前記表面電極は、前記側面の遠位から近位の長さに沿って、例えば5mm以上(例えば、6mm以上、7mm以上、8mm以上、9mm以上、10mm以上など)にわたって平行に延在し得る。
【0049】
いくつかの例では、装置は、細長い本体と、当該細長い本体から遠位側に延びるパドル領域であって、側方側と、当該側方側に沿って平行に延在する2以上の細長い表面電極とを含む、パドル領域と、前記細長い本体を前記パドル領域に結合する関節領域であって、前記細長い本体を通って延びる平面内で前記パドル領域を関節運動させるように構成された関節領域と、遠位パドルを200度以上可動にするように構成された制御部を含む近位端のハンドルとを具え得る。
【0050】
また、本明細書では、腹腔鏡手術にこれらの装置を使用する方法を含む(ただし、これらに限定されない)、これらの装置を使用する方法についても説明する。例えば、上述したように、これらの方法は、子宮内膜症、呼吸器(例えば、気管支)適応症、心臓組織および/または口腔/鼻腔適応症(例えば、声帯/声帯襞)などの治療に使用することができる。例えば、組織を治療する方法は、細長い本体を含む装置を被験者の体内に挿入するステップと、前記細長い本体の遠位端にある関節領域を曲げて、前記関節領域の遠位端にあるパドル領域が前記細長い本体を通って延びる平面内で移動するようにするステップと、前記パドル領域の側面を標的組織領域に当てて、前記側方側に沿って平行に延びる2以上の表面電極が標的組織に接触するようにするステップと、0.1kVを超える大きさと1000ナノ秒未満の持続時間を有する複数の電気パルスを前記2以上の表面電極間に印加して標的組織を治療するステップを含み得る。前記パドル領域は、前記細長い本体を通る平面内で180度以上移動することができる。
【0051】
これらの方法はいずれも、標的組織の別の領域に対して前記装置を再配置し、第2の複数の電気パルスを印加するステップを含んでもよい。前記パドル領域の側方側を標的組織に対して配置するステップは、各表面電極がアーク抑制層によって覆われた導電性表面からなる表面電極を、各表面電極のアーク抑制層が各表面電極の導電性表面に対して駆動されるように標的組織に対して押し付けるステップを含み得る。
【0052】
各表面電極の導電性表面に対して各表面電極のアーク抑制層(可撓性層であってもよい)を駆動するステップは、各表面電極の可撓性アーク抑制層と各表面電極の導電性表面との間のギャップ領域を変位させるステップを含み得る。前記ギャップ領域は、エアギャップを含み得る。
【0053】
前記パドル領域の側方側を標的組織に当てるステップは、前記パドル領域の側方側を子宮内膜組織に押し付けることを含み得る。前記パドル領域の側方側を標的組織に当てるステップは、前記パドル領域の側方側を声帯組織に押し付けることを含み得る。前記パドル領域の側方側を標的組織に当てるステップは、前記パドル領域の側方側を心臓組織に押し付けることを含み得る。
【0054】
一般に、本明細書に記載の技術および特徴(例えば、電極および装置を含む)は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2021年6月1日に出願された「HIGH-VOLTAGE MINIMALLY INVASIVE APPLICATOR DEVICES FOR SUB-MICROSECOND PULSING」と題されたPCT出願PCTUS2021035146に記載される装置および方法のいずれかに適用するかそれらと共に使用するために適合され得る。
【0055】
本明細書に記載の装置は、サブマイクロ秒(例えばナノ秒)の高電圧パルス発生用に構成されたパルス発生器を含む任意のパルス発生器と共に使用することができる。生物学的および医療用途に適したサブマイクロ秒(例えば、ナノ秒)の高電圧パルス発生器には、米国特許出願第2008/0231337号、米国特許出願第2010/0038971号、および米国特許出願第2021/0187292号が含まれる。これらの公報の内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0056】
本明細書に記載された方法および装置はすべて、開示された様々な特徴の任意の組み合わせで本明細書で企図されており、本明細書に記載される利点を達成するために使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
この特許または出願には、1以上のカラー図面が含まれている。この特許または特許出願公開のカラー図面の写しは、請求および必要な手数料の支払に基づき特許庁により提供される。
【0058】
本明細書に記載の方法および装置の特徴および利点のよりよい理解は、例示的な実施形態を示す以下の詳細な説明および添付の図面を参照することによって得られるであろう。
図1図1は、パルス発生器を含む、本書に記載のシステムの一例を示す。
図2図2A~2Bは、本書に記載の接触電極の一例の上面図と斜視図(断面図)をそれぞれ示す。図2C~2Dは、本書に記載のアーク抑制層を含む接触電極の一例の上面図と斜視図(断面図)をそれぞれ示す。図2E~2Fは、本書に記載のアーク抑制層を含む接触電極の別の例の上面図と斜視図(断面図)をそれぞれ示す。図2Gおよび2Hは、組織と接触する前(図2G)および接触した後(図2H)の、電極表面とアーク抑制層との間にエアギャップを含む接触電極の使用を示す。
図3図3A~3Eは、本書に記載のパドル領域を含むアプリケータ装置の一例を示す。
図4図4A~4Fは、本書に記載の拡張可能なパドル領域を含むアプリケータ装置の一例を示す。
図5図5A~5Cは、図4A~4Fに示す装置と同様の装置の別の例の側面図(図5Aおよび5B)および斜視図(図5C)を示す。
図6図6は、横に向いた電極を具える拡張可能なジョーを有する装置の例である。
図7図7Aおよび7Bは、拡張可能なジョーを有する装置の代替ジョー形状の実施例を示す。
図8図8A~8Dは、一対のクランプジョーを有するアプリケータ装置の別の実施例を示す。
図9図9A~9Bは、拡張可能なジョーを有する器具のさらなる実施例を示す。
図10図10Aは、例えば、図9Aに示すものと同様のクランプアプリケータに使用できる接触電極の断面の例を示す。図10B~10Eは、本書に記載の代替の接触電極構成を示す。
図11図11は、アーク抑制カバー層を有する接触電極を含むクランプ装置のモデルの一例を示す。
図12図12A~12Bは、図11に示すモデルを用いた電界強度のシミュレーション結果を示す。
図13図13A~13Bは、図11に示すモデルを使用した電界強度の別のシミュレーション結果を示す。
図14図14A~14Bは、図11に示すモデルを用いた電界強度のさらなるシミュレーションの結果を示す。
図15図15は、アーク抑制カバー層を有する接触電極を含むクランプ装置のモデルの他の例を示す。
図16図16A~16Bは、図15に示すモデルを用いた電界強度のシミュレーション結果を示す。
図17図17A~17Bは、図15に示すモデルを使用した電界強度の別のシミュレーション結果を示す。
図18図18A~18Bは、図15に示すモデルを用いた電界強度のさらなるシミュレーションの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本明細書に記載されるのは、組織に電気エネルギーを印加するための方法および装置(例えば、デバイス、システムなど)である。特に、これらの方法および装置は、サブマイクロ秒パルス(例えばナノ秒パルス)のような高電界の印加に特に適し得る。高電界パルスを印加すると、特に標的組織と均一に接触していない電極間にエネルギーを印加する場合、望ましくないアーク放電を引き起こす場合がある。これにより電極の大きさが制限され、より短くて小さな電極が有利になる可能性があるが、より大きな組織領域を治療するには追加の治療ステップが必要になる。本書に記載される方法および装置は、より大きな表面電極(例えば、長さが4mm以上、5mm以上、6mm以上、7mm以上、8mm以上、9mm以上、10mm以上など)で使用される場合、および/または不均一な組織領域で使用される場合でも、アーク放電を防止または最小化/制限するように構成される。さらに、本書に記載される方法および装置により、処置される組織の所望の長さ全体にわたって経壁病変(transmural lesions)を得ることができる。
【0060】
また、本書には、サブマイクロ秒パルスのような高電界を使用して治療を提供するために、組織にクランプし得る表面電極を含むアプリケータが記載される。本書に記載されるアプリケータのいくつかの例は、表面電極を含むパドル領域を使用して組織表面に対してエネルギーを印加するように構成される。これらの装置はいずれも、腹腔鏡的あるいは他の低侵襲性の用途や処置に使用されるように構成され得る。これらの装置はまた、表面電極の一部が血液や空気にさらされている(例えば、組織にクランプされていない、または組織に押し付けられていない)場合でも、異なるジョーの表面電極を含む表面電極間のアーク放電を防止するように構成され得る。
【0061】
本書に記載の実施例の多くは、高電界強度のサブマイクロ秒パルスの使用について説明されているが、これらの装置および方法はいずれも、他の形態の電気エネルギーで使用するために適合されてもよい。
【0062】
本書には、腹腔鏡装置、カテーテル等として構成され得る、または腹腔鏡装置、内視鏡もしくはカテーテルの管腔を通して導入もしくは使用されるように構成され得る、装置およびデバイス、アプリケータ、アプリケータツール、アプリケータ用チップ等を含む装置が記載される。また、本書では、これらの装置のいずれかを使用して、短い高電界強度の電気パルスを含むがこれに限定されない治療用エネルギーを効果的に印加しながら、アーク放電などの組織への損傷のリスクを最小化または回避することができる患者の治療方法についても説明される。これらのアプリケータは、低侵襲処置に使用することができ、例えば、以下により詳細に述べるように、様々な病変、状態、障害および疾患の処置に特に適し得る。このようなアプリケーションは、ロボットシステムなど、完全自動化および部分自動化されたさまざまなシステムでの使用に特に適している。特に、本書に記載の装置は、本書でさらに詳細に説明されるように、様々な異なる発電機システムで使用できる装置(例えば、腹腔鏡装置)として構成され得る。
【0063】
したがって、本書に記載の装置は、手動または自動(例えば、ロボット支援)制御用に構成され得る。いくつかの例では、これらの装置は、ロボット治療システムまたはロボット手術システムなどのロボットシステムの可動(例えば、ロボット)アームに取り付けたり連結されるように構成されたシステムに統合することができる。このような手術システムは、あらゆるロボット治療システム(美容用途を含む)をカバーすることを意図しており、ガイダンス機能を有するロボットシステムを含み得ることを理解されたい。いくつかの例では、外科手術中にロボットシステムによって器具が誘導・制御され得る。例えば、本書に記載の装置は、ロボットシステムの1つまたは複数の操作チャネルを通して使用することができる。
【0064】
本書に記載の装置は、ジョーを含む実施形態において、ジョーの開閉を調節すること、遠位端領域(例えば、パドル領域)の角度を調節および/または制御すること、および/または遠位端領域における2つ以上の表面電極の間隔を調節することを含む、遠位端領域(先端とも呼ばれる)を関節運動させるために近位に(自動的にまたは手動で)操作され得る細長いアプリケータツールを含み得る。いくつかの例において、本書に記載のアプリケータは、近位ハンドル部分、細長い本体、および2以上の電極を含む遠位端領域を含み得る。近位ハンドルは、細長い本体に対する遠位先端領域の角度、細長い本体に対する遠位先端領域の回転位置などを変更するために遠位先端領域を関節運動させることを含む、アプリケータツールの遠位端領域を操作するための1つ以上の制御部を含み得る。また、1つまたは複数の制御部(自動制御部を含む)によって、電極の対またはセット(例えば、陰極と陽極)または表面電極の対(陰極と陽極)の間の距離を調整してもよい。
【0065】
アプリケータは細長いアプリケータツールとも呼ばれる。細長い本体部分は、剛性、曲げ可能、または可撓性であり得る。いくつかの例では、細長い本体部分はカテーテルまたはカテーテル本体であり得る。
【0066】
一態様によれば、本書に記載の装置は、生来の開口部(例えば、口、肛門など)から、または小さな切開部から導入され、オブチュレータ、カメラ、鉗子、把持器などの付加的なツールを用いて操作され得る、低侵襲処置で使用するための医療機器および器具を構成する。いくつかの例では、本書に記載の装置は、内視鏡の作業チャンネルを通して使用され得る。いくつかの例では、これらの装置はカテーテルとして構成されてもよいし、細長いカテーテル本体を含んでもよい。本書に記載の装置またはシステムのいずれにおいても、細長いアプリケータは腹腔鏡として構成され得る(そして本書において、腹腔鏡、腹腔鏡装置、または腹腔鏡器具とも呼ばれる)。本書で使用する腹腔鏡は、必須ではないが、1以上の可視化コンポーネント(例えば、光ファイバ、カメラ、レンズ、フィルタなど)を含み得る。したがって、本書に記載の装置はいずれもスコープとして構成することができる。これらの装置は、マイクロ秒、ナノ秒、ピコ秒などのパルスを安全かつ確実に供給するように構成することができ、0.1ナノ秒(ns)から1000ナノ秒未満、または1ピコ秒などのより短いパルス幅の電界を含むことができ、これはサブマイクロ秒パルス電界とも呼ばれる。このパルスエネルギーは、0.5~5キロボルト/センチメートル(kV/cm)、10kV/cm、20kV/cm、100kV/cmまたはそれ以上の高いピーク電圧を有し得る。生体細胞の治療では、0.1Hz~10,000Hzの周波数の多数の周期的パルスを使用して、例えば、病変組織や、癌性、前癌性、または良性の腫瘍などの異常増殖において、制御された細胞死を誘発することができる。高電圧のサブマイクロ秒パルスエネルギーによるこのような腫瘍、病変、またはその他の不要な増殖の選択的治療は、その非熱的性質により、周辺組織の正常細胞に実質的な影響を与えることなく、治療された細胞内で制御された細胞死を誘導することができる。対象は、患者(動物を含む、ヒトまたは非ヒト)であり得る。ユーザは、対象に対して本書に記載の装置を操作することができる。ユーザは、医師(医師、外科医など)、医療技術者、看護師、その他のケア提供者であり得る。
【0067】
したがって、高電圧の高速電気パルスの印加は、例えば0.1ナノ秒(ns)~1000ナノ秒のパルス幅を有する電気パルス列の印加を含み得る。高電圧の高速電気パルスの印加は、例えば、1キロボルト/センチメートル(kV/cm)~500kV/cmのピーク電圧を有するサブマイクロ秒電気パルス列の印加を含み得る。高電圧の高速電気パルスを印加するステップには、例えば0.1Hz~10,000Hzの周波数でサブマイクロ秒の電気パルス列を印加することを含み得る。
【0068】
例えば、本書には、組織を治療するための装置が記載される。例えば、治療アプリケータのジョーの間に収まる組織を含む、任意の適切な組織を治療することができる。本開示の装置および方法で処置できる組織のいくつかの例は、1以上の器官(例えば、咽頭、食道、胃、小腸、大腸、肝臓、胆嚢、腸間膜、膵臓、喉頭、気管、気管支、肺、横隔膜、腎臓、膀胱、尿道、卵巣、卵管、子宮、膣、精巣、精巣上体、精管、前立腺、尿道球腺、下垂体、松果体、甲状腺、副腎、心臓、動脈、静脈(肺静脈など)、リンパ節、リンパ管、脾臓、胸腺、皮膚、まぶた、唇、舌、耳、鼻、声帯など)を含む。いくつかの例では、本書に記載の装置および方法は、低侵襲治療の一環として、これらの組織の1つ以上を治療するために使用することができる。いくつかの例では、この治療は、癌、心臓疾患、子宮内膜症などの治療であり得る。いくつかの例では、本書に記載の方法および装置は、癌性、前癌性、良性または非悪性の腫瘍、病変または増殖を含む1以上の腫瘍を治療するために使用され得る。
【0069】
これらの装置はいずれも、パルス発生器とともに使用することができる。例えば、本明細書に記載される組織治療システムは、本明細書に記載されるような細長いアプリケータツール(例えば、細長い本体であって、いくつかの例では関節運動する遠位端領域を有する細長い本体が、その遠位端領域に電極のセットを具える)と、大きさが少なくとも0.1kVで持続時間が1000ナノ秒未満の複数の電気パルスを生成するように構成されたパルス発生器とを具える。システムは、コネクタ、例えば、細長いアプリケータツールをパルス発生器に結合するように適合された高電圧コネクタを含むことができ、パルス発生器は、高電圧コネクタに接続するように構成されたポートを含む。
【0070】
図1は、高電圧、高速パルスの電気エネルギーを供給するためのシステム100(本明細書では、高電圧システムまたはサブマイクロ秒発生システムとも呼ばれる)の一例を示す図であり、これは細長いアプリケータ102(概略的に示す)、パルス発生器107、フットスイッチ103、およびユーザインターフェース104を含み得る。システム100は、1以上の器官(例えば、咽頭、食道、胃、小腸、大腸、肝臓、胆嚢、腸間膜、膵臓、喉頭、気管、気管支、肺、横隔膜、腎臓、膀胱、尿道、卵巣、卵管、子宮、膣、精巣、精巣上体、精管、前立腺、尿道球腺、下垂体、松果体、甲状腺、副腎、心臓、動脈、静脈(肺静脈など)、リンパ節、リンパ管、脾臓、胸腺、皮膚、まぶた、唇、舌、耳、鼻、声帯など)の組織を含む組織を治療するための高電圧電気エネルギーパルスを提供することができる。いくつかの例では、本書に記載の装置および方法は、低侵襲治療の一環として、これらの組織の1つ以上を治療するために使用することができる。上記の通り、いくつかの例では、本書に記載の方法および装置は、癌性、前癌性、良性または非悪性の腫瘍、病変または増殖を含む1以上の腫瘍を治療するために使用され得る。他のいくつかの例では、本書に記載の方法および装置は、任意の実行可能な組織や細胞を治療するために使用され得る。
【0071】
フットスイッチ103は、ケーブルおよびコネクタ106を介してハウジング105(電子部品を収容し得る)に接続される。細長いアプリケータツール102は電極を含み、ケーブル137と高電圧コネクタ112を通してハウジング105とその中の電子部品に接続される。高電圧システム100はまた、ハンドル110および収納引き出し108を含んでもよい。システム100はまた、細長いアプリケータツール102を保持するように構成され得るホルダ(例えば、ホルスタ、キャリアなど)(図示せず)を含んでもよい。システム100は、コントローラ144(図1に概略的に示す)を含み、これがシステム100内のパルス制御要素に信号を送ったり、パルス発生器の動作を制御したりすることができる。コントローラ144は、1つまたは複数のプロセッサを含み、直接または間接的にパルス発生器に結合され得る。コントローラは、1つまたは複数の入力部から入力を受信し、1つまたは複数の出力部(例えば、モニタ/タッチスクリーン/インターフェースなど)に出力を提供し得る。コントローラ144は、マイクロコントローラであり得る。コントローラは制御回路を含み、メモリ、通信(例えば、無線および/または有線)回路などを含むか、またはそれらと結合され得る。
【0072】
人間のオペレータは、例えば、パラメータをインターフェース104のテンキーパッドまたはタッチスクリーンに入力することによって、パルス数、振幅、パルス持続時間、および周波数情報を選択することができる。いくつかの例では、パルス幅を変化させることができる。コントローラ144は、システム100内のパルス制御要素に信号を送信し得る。いくつかの例では光ファイバケーブルが使用され、これが制御信号伝達を可能にするとともに、高電圧回路などのサブマイクロ秒パルス発生システム100を有する金属キャビネットの内容物を外部から電気的に絶縁する。システムをさらに電気的に絶縁するために、システム100はコンセントから給電されるのではなく、バッテリで給電されてもよい。
【0073】
細長いアプリケータツール102は、手で持ってもよく(例えば、ユーザによって)、またはロボットシステムの可動アームに取り付けてもよく、その動作は、少なくとも部分的に自動化されるか完全自動化され、それにはコンピュータ制御が含まれる。
【0074】
図2A~2Hは、本書に記載の装置のいずれかと共に使用できる表面電極またはプレート電極のような非貫通電極の例を示す。例えば、図2A図2Bは、電気絶縁性支持体207を含む表面電極アセンブリ200の例を示す。電気絶縁性支持体は、任意の絶縁材料(例えば、PE、PVC、PPおよび/またはPAなどの高分子材料)で形成され得る。図2Bに示すように、電極205は、鋭利なエッジや急峻なエッジがないように湾曲した露出した(例えば、上部の)電極表面208を含む。本例では、電極表面のすべてのエッジは、図2Aに示すように、例えば約1mm以上の曲率半径を有する丸みを帯びた形状206を有する(例えば、フィレットを含む)。図2Aは上面図、図2Bは断面(B-B’)からの斜視図である。電極205は、任意の適切な導電性材料で形成され、パルス発生器に結合するための電気コネクタ(図2A~2Bでは見えない)に(例えば、支持体207内で)結合され得る。
【0075】
図2Cおよび図2Dは、図2A~2Bに示したものと同様の表面電極アセンブリ200’の別の例を示しており、これは電極205を支持する電気絶縁支持体207を含み、電極205の露出した(例えば上面の)導電性表面を覆うアーク抑制層215も有する。アーク抑制層215は、電極表面の導電率よりも小さく、好ましくは処置される組織の導電率とほぼ同じ(0.1倍~10倍以内の)導電率を有する材料で形成することができる。アーク抑制層は、電極205と絶縁性支持体207の中間の電気伝導性を持つため、中間伝導度層または中間伝導性カバーとも呼ばれる。いくつかの例では、アーク抑制層は、使用時に接触する標的組織の電気伝導率よりも1桁または2桁以上低い電気伝導率を有してもよい。例えば、アーク抑制層の電気伝導率は、それが適用される組織(例えば、皮膚、心臓組織、女性生殖管組織など)の電気伝導率の約0.01倍~20倍(例えば、0.1倍~10倍、0.1倍~5倍など)であり得る。いくつかの例では、アーク抑制層の電気伝導率(σ)は、約0.01ジーメンス/メートル(S/m)~約20S/m(例えば、約0.01S/m~10S/m、約0.01S/m~5S/m、約0.1S/m~20S/m、約0.1S/m~10S/m、約0.1S/m~5S/m、約0.1S/m~1S/mなど)であり得る。
【0076】
アーク抑制層は、例えば、厚さ0.01mm~10mm、厚さ0.01mm~5mm、厚さ約0.01mm~3mm、厚さ約0.1mm~10mm、厚さ約0.1mm~5mm、厚さ約0.1mm~3mmなど、任意の適切な厚さであってよい。アーク抑制層は、生体適合性のある高分子材料で形成され得る。いくつかの例では、特に(限定しないが)電極アセンブリがアーク抑制層と電極表面との間にギャップ領域(例えば、エアギャップ)を含む場合、アーク抑制層は可撓性を有する材料で形成されてもよい。アーク抑制層は、カーボンナノチューブなど、指定範囲内の伝導性を提供する材料を含むようにドープまたは他の方法で処理されたシリコーンなどの高分子材料で形成されてもよい。例えば、いくつかのバリエーションでは、アーク抑制層はカーボンブラックや他の導電性材料を含むシリコーンで形成され、上記範囲内の導電率を持つようにする。いくつかの例では、アーク抑制層は剛性であり、特に電極表面に対して直接カバーとして適用される場合、柔軟性のない高分子材料で形成することができる。
【0077】
図2Cおよび図2Dに示す表面電極アセンブリ200’では、アーク抑制層215が電極205の露出した電極表面208に対して適用されている。いくつかの例では、アーク抑制層は、図2E~2Hに示すように、ギャップ領域によって露出した電極表面から分離されてもよい。図2E~2Hにおいて、アーク抑制層215は、ギャップ領域217により間隔をあけて、電極205の開放または露出した電極表面208上に適用される。ギャップ領域は任意の適切な距離であってよく、一般に絶縁性の流体(例えば空気)を含み得る。
【0078】
使用において、図2Eおよび図2Fに示すプレートまたは表面電極205および電気絶縁性(例えば電気絶縁型)支持体207を有するアセンブリ200’’が組織に適用され、図2Hに示すように、力225がアーク抑制層215にかかり、適用時の力225によって、アーク抑制層215が押されて露出した電極表面にギャップ領域217を超えて接触する。この力を除去すると、図2Gに示すように、アーク抑制層215がギャップ領域217を復元できるようになる。
【0079】
図2A~2B、図2C~2Dおよび図2E~2Hに示す各例は、表面電極が本明細書に記載の装置の一部として使用される場合に、アーク放電を低減または防止することができる。例えば、丸みを帯びたエッジ(例えば、206)を使用すると、アークの発生を防止するか、少なくとも最小限に抑えることができる。アーク抑制層215を適用すると、組織が表面電極に均一に接触していない領域でも、アーク放電を最小化または防止することができる。同様に、図2E~2Fに示す表面電極は、以下にさらに詳しく説明するように、表面電極が装置の一部として使用される場合、アーク放電をさらに制限または防止することができる。
【0080】
図2A~2Hに示す電極表面208の下にある電極205の矩形本体は、電極表面208と同じ導電性材料(例えば、ステンレス鋼などの導電性金属)で形成されてもよいし、別の導体で形成されてもよい。本書に記載の装置はいずれも、図2A~2Hに示され説明される表面電極を含むように構成することができる。
【0081】
本開示の別の態様によれば、図3A~3Eは、2つの表面電極を有する遠位パドル領域を含む、腹腔鏡使用のために構成された装置の一例を示す。この装置300は、例えばハンドルまたは可動アーム(図示せず)への接続部まで近位方向に延びる細長い本体304を含む。パドル領域311は、細長い本体から遠位方向に延在する。パドル領域は、側方側と、当該側方側に沿って平行に延びる2本の表面電極313、313’を含む。また、細長い本体をパドル領域に連結する関節領域309も図示されている。この例の関節領域は、細長い本体を通って延びる平面(例えば、図3Aの「上」と「下」)内でパドル領域を関節運動させるように構成されている。図3Aでは、パドル領域が上向きに関節運動した状態が示されている。前述のように、装置は、遠位パドルを平面内で関節運動させるように構成された制御部(例えば、関節運動制御部)を含むハンドル(図示せず)を近位端に含み得る。
【0082】
図3Bは、第1の電極313と第2の電極313’を含むパドル領域311の側方側314の一例を示す。上述したように、これらの表面電極は、図2A~2Hに示すように構成することができ、例えば、それぞれが半導電層、丸みを帯びたエッジ、さらにいくつかの例ではアーク抑制層と電極表面との間のエアギャップを含み得る。
【0083】
図3C、3D、3Eは、図3A~3Bの装置の例を、平面(本例では、この平面はシート面)内で約200度関節運動する側面図で示す。図3Cにおいて、装置300は約100度上方に関節運動しており、この構成は、パドル領域の側方側を装置の前方にある組織に対して押し付けるのに使用することができる。図3Dにおいて、装置は真っ直ぐな状態で示されている(例えば、解剖学的構造または組織に挿入するため)。この真っ直ぐな構成において、装置300は標準的なポートから腹腔鏡で挿入することができる。体内に入ると、表面電極を標的組織に対して配置するために、装置を関節で動かしたり回転させたりすることができる。電極は、装置の側面に位置する組織に押し当てることができる。図3Eでは、装置300は約100度下方に関節運動した状態で示されている。この構成は、装置の遠位端より近位側、例えば側方側に向いた組織を治療するために使用することができる。
【0084】
細長い本体は、一般にはカニューレであり、その中に作業チャネル、スコープチャネルなどを含む1以上のチャネルが含まれ得る。細長い本体は、ヒンジジョイントを関節運動させるための関節腱(図示せず)や、電極に連結するための電気配線も固定したり案内してもよい。図3Aー3Eの例では、配線(例えば、表面電極を近位端のコネクタに電気的に結合するもの)は見えず、関節ケーブルおよび/または真空ラインもしくはチューブも見えない。
【0085】
図3A~3Eに示す例は、直径(例えば、長手方向軸に直交方向)が約2mm~約15mmであってよく、図3A~3Eに示す例は直径は約4mmである。図示の装置は、装置の側方側、例えば表面電極に隣接する部分に1つ以上の真空ポートを含んでいてもよく、これを介して吸引力を加えて、電極表面を組織に保持し、および/または電極周囲の空気を除去することができる。あるいは、真空をかけずに、装置を組織に押し当てるだけで使用してもよい。
【0086】
図4A~4Cは、関節領域409を介して細長い本体(例えば、カニューレ404)に結合されたパドル領域411を含む装置400の別の実施例を示す。関節領域(例えば、関節部)は、1本以上の内部ケーブル(図示せず)およびチューブ(図示せず)を含み得る。図4A~4Cに示す例では、装置はパドル領域411に3本の表面電極413、413’、413’’を具える。この構成では、パドル領域は、表面電極間の間隔を広げるために、装置の長軸から離れて横方向外側に拡張するように構成されている。図4Aでは、装置はパドルが拡張されていない(例えば、折り畳まれた)構成で示され、これを10mmのポートを介するなどして体内に送達(例えば、挿入)することができる。表面電極433間の間隔は最小であり、例えば約2.5mmである。図4Bでは、装置は、例えば表面電極のある側方側が標的組織に隣接配置されるように関節領域409を関節運動させることによって、標的組織の近くに配置することができる。配置したら、表面電極が所望の距離433’だけ離間するようにパドル領域を拡開されることができる(例えば、図4Bでは、外側の2本の電極は約11mm離れている)。図4Cは、図4A~4Bの3電極設計を完全に拡張させた構成で示し、表面電極間は最大間隔433’’となる。例えば図4Cでは、各電極間の最大間隔は約10mmで、外側電極間の合計離隔は20mmである。本書に記載の装置のいずれもが、電極の実際の間隔を特定するために装置に統合されたセンサまたはゲージを含んでもよく、これにより正確な電圧または電力の印加および設定が可能になる。いくつかの例では、装置はリニアポテンショメータを内蔵し得る。また、いくつかの実施態様では、電極は、例えば電極の周囲に真空を適用するための吸引ポートを含んでもよい。
【0087】
図4D~4Fは、図4A~4Cの装置の背面(図4Dおよび4F)および側面(図4E)の一例を示し、パドル領域を拡張および収縮させるための1つの機構を示す。例えば、図4Dは、パドル領域411を含む装置の遠位端領域の背面図を示し、図4Dにおいて、パドル領域は、折り畳まれた(拡張されていない)構成で示されている。この構成で、ポートを介して体内に簡単に挿入することができる。パドル領域は、図4Fに示すように、中央部材436が遠位方向に進められると外側に拡張して外面電極を分離できるヒンジ付きフレームを含む。中央部材は、ケーブルまたはロッドによって遠位または近位に駆動され、電極の間隔を調整するためにハンドルに結合されてもよい。図4Eは、図4A~4Dの装置の側面図である。図4Fは、部分的に拡張されたパドル領域の背面図(図4Bに示す正面図と同様)である。
【0088】
図5A~5Cは、図4A~4Fの装置400の異なる図を示し、パドル領域411が3つの非貫通(例えば、表面)電極413、413’、413’’を含み、これらの間隔を調整することができる。図5Aでは、パドル領域411は90度「下」にアーティキュレーションされた状態で示されており、図5Bでは、パドル領域411は90度「上」にアーティキュレーションされた状態で示されている。
【0089】
図6は、本書に記載の装置600の別の例を示し、一対の関節ジョーの各々に1以上の接触電極が配置されている。図6では、装置は図示のように、平行に開閉するように作動するように構成された第1の(例えば、上部)アーム625と第2の(下部)アーム625’を含む。これらのアームは「ジョー」とも呼ばれ得る。図6に示す実施例は、各アームの側方側615、615’に表面電極を設け、これらの電極が側方を向いた電極となるようにしたり、および/または、電極を内側面617、617’に配置して、組織をアームの間に保持し、クランプ型構成で表面電極に押し当てるようにすることができる。
【0090】
図6に示す例では、表面617と617’に電極があり、装置は組織をクランプしてアームまたはジョーの間に組織が保持されるように構成されている。組織がジョーに保持される力により、組織が定位置に固定されるとともに、いくつかの例では、図2Hを参照して説明したように、接触電極のアーク抑制層が電極表面に対して偏向され得る。いくつかの実施態様において、電極は、内側面617、617’およびまた側面615、615’の両方に配置され、使用において、ユーザの好みおよび/または標的組織の構成や位置に応じて、例えば側面の電極間または「クランプ」電極間のいずれかの電気治療を適用するなど、適切な電極セットのみが必要に応じて選択的に活性化されてもよい。したがって、これらのアプリケータのいずれも、アプリケータ上の1以上の電極セット間で多重化を行うスイッチを含むことができる。
【0091】
図7Aおよび図7Bは、本開示の装置と共に使用され得るアームまたはジョーの代替例を示す。図7Aでは、装置は湾曲したまたは曲がったジョー725を含む。図7Bは、図7Aの湾曲したジョーの断面の一例を示し、ここには電極705が丸みを帯びた角/エッジ706(例えば、フィレット)を有する組織接触面745を含み、そして組織に接触しないエッジ/表面にも丸みを帯びたエッジ706’を含み得ることを示している。組織に接触しないまたは/組織に面していない丸みを帯びたエッジ706’も、ピーク電界を低減し、この(例えば、下側の)エッジからのアーク放電を防止することができる。丸みを帯びたエッジ/コーナーを加えることで、組織の種類によるが、例えばピーク電界を15%~30%、20%~25%減少させることができる。丸みを帯びたエッジ(フィレット)の曲率半径は任意のものを用いることができ、例えば電極の厚さがtである場合、曲率半径は約t/8より大きくすることができる(例えば、約t/7より大きい、約t/6より大きい、約t/5より大きい、約t/4より大きい、約t/3より大きい、約t/8から約4tの間、約t/8から約2tの間など)。例えばいくつかの装置では、湾曲したエッジ(フィレット)の曲率半径は、例えば電極の特定の寸法に対して約0.1mm~0.5mmであり得る。この例の電極は、ベースを形成する電気絶縁材料707内に固定されている。
【0092】
図8A~8Dは、クランプアプリケータ装置800の別の実施例を示す。この例では、クランプ装置は、例えば声帯/声帯襞などの組織を治療するように構成されている。装置は、上側(遠位)クランプジョー825と下側(近位)クランプジョー825’とを具える。この例では、上側ジョー825は、装置の長手方向軸(長軸)において矢印840(図8B)で示すように遠位から近位に移動し、組織を保持できるジョー開口部を調整する。異なる実施態様では、遠位ジョーの代わりに、近位ジョーが遠位ジョーに対して移動してもよいし、各ジョーが互いに相対移動可能であってもよい。接触電極813は、処置される標的組織に接触するように、ジョー825、825’の内側面に配置されて図示されている。上側/下側クランプジョーの接触電極813が図8Dに示されている。図8Bおよび図8Cは、開いた状態(図8B)および閉じた状態(図8C)の装置のジョーを示す。実際には、ジョーを組織にクランプして、その間に治療を施すことができる。いくつかの例では、装置は、上述のような関節領域(関節ジョイント)を含んでもよい。細長い本体は、図3A~3Eと4A~4Fを参照して説明したように、カニューレとして構成され得る。いくつかのさらなる例では、図6および/または図7A~7Bの装置の様々な特徴が、図8A~Dの例と組み合わされ、図8A~Dの例に組み込まれてもよい。
【0093】
これらの装置のいずれにおいても、ハンドル850を回転させずに(例えば、細長い本体および/または遠位端クランプまたはパドル領域を回転させるだけで)クランプを回転させることができるように構成されてもよい回転制御部(例えば、回転ノブ)860を含んでもよい。ハンドル850はまた、クランプジョーを作動させ、および/または装置のクランプを制御するための制御部853を含み得る。いくつかの例では、ハンドルは、クランプを作動/制御するためのプランジャおよび/またはラッチを具え得る。図8Aの制御部853はクランプスライドとして示されており、電極間の間隔を特定するセンサまたはゲージを組み込むために使用することができる。一般に、本書に記載の装置のいずれもが、電極間の間隔を特定するように構成されたセンサまたはゲージを含んでもよい。このセンサまたはゲージの出力は、コントローラ(例えば、パルス発生器上またはパルス発生器内の制御部144(例えば、図1参照))に渡され、いくつかの実施態様では、センサの出力により、システムがジョーおよび/または電極間の間隔に基づいて治療パラメータを自動的に設定できるようにしてもよい。いくつかの例では、装置はリニアポテンショメータを内蔵し得る。装置が関節ジョイントを含むバリエーションでは、装置はさらに関節制御部(図示せず)を含んでもよい。
【0094】
図8Bは、装置800のジョーアセンブリの側面図である。この例では、ジョーを開くことができる(例えば、必要に応じて最大25mmまたはそれ以上)。前述のように、本装置は、図3A~3Eに示すものと同様の関節を含んでもよい。本書に記載の実施例は接触電極または表面電極を具え得るが、いくつかの実施態様では、これらの装置は針電極、ワイヤ電極などとともに使用するように構成されてもよい。
【0095】
図9Aは、一対のジョー(上部または遠位ジョー925および下部または近位ジョー925’)を含むクランプ装置900の別の例を示す。この例の装置には、遠位ジョーの内側に第1の接触電極905があり、近位ジョーの反対側に第2の電極がある(図9では見えない)。ジョーの開口径は、例えばハンドルの制御によって、例えば近位ジョーを近位または遠位に移動させるように、あるいは遠位ジョーを近位ジョーに対して軸方向に移動させるように調整することができる。
【0096】
図9Bはクランプ装置900の別の例を示し、これは装置のシャフトに対してある角度(例えば、90度/垂直)に配置された実質的に平行なジョーを有するが、クランプ装置の遠位および近位ジョー925、925’が図7Aの屈曲または湾曲したジョー725と同様の形状を有している。また、図9Bの電極905は、図7Bを参照して説明したように、アーク放電を低減または防止するために、丸みを帯びたエッジ/コーナー906(図7の丸みを帯びたエッジ706、706’と同様)を有する。この例では、すべての電極エッジに丸みを帯びたコーナーがあるが、いくつかの実施態様では、丸みを帯びたコーナー/エッジは、電極の組織接触面またはその周辺だけであもよい。この例の電極905は、間に組織をクランプするように配置されており、図9Bに見られるように、それぞれのジョーの内側に配置され、それぞれのジョー925、925’から内側に(例えば、1mm、2mm、3mm)突出している。図7Bと同様に、電極905は、各ジョーの基部を形成する電気絶縁材料内に固定されてもよい。ジョー間の間隔、したがって電極間の間隔は、例えば近位ジョーを近位または遠位に動かすために、例えばハンドルのコントロールによって調整することができる。例えば、近位ジョーはバネ式であってもよい。他の実施例と同様に、ジョー925、925’は、各ジョーの側方側に表面電極(図示せず)を具え、そのような側方側の電極を側面対向電極とすることができる(図6に示されるものと同様)。このような側面対向電極は、例えば、内側組織クランプ電極905に追加的に設けることができ、装置900はクランプ電極間の間隔の制御に加えて、側面対向電極間の間隔の制御を含んでもよい。また、他の実施例と同様に、装置は電極間の間隔を検出し、パルスの1つ以上のパラメータを調整するために、そのような間隔情報をパルス発生システムの制御に送るように構成されてもよい。図9A~9Bの例は、心臓不整脈、例えば心房細動の治療に特に有用であり得る。例えば、ジョーをわずかに湾曲させたり曲げたりすることで、右肺静脈と左肺静脈を分離したり、心房細動を予防するための他の心房病変を作ったりすることができる。本開示の装置は、心房細動を治療するためのより迅速で、より効果的で、堅牢な処置を提供することができ、そのような処置を単一の装置で実施することができる。
【0097】
上述のように、本開示の接触電極を有するアプリケータは、アーク放電を低減または防止するように構成され得る。図10Aは、アーク抑制機能を追加したコンタクト電極の一例を示す。図10Aでは、接触電極1005は電極表面1008(電極の露出面または開放面)を含む。電極1005は、例えば、電極表面1008以外のすべての面が電気絶縁材料1007で支持されている。可撓性のアーク抑制層1015が電極表面1008上に配置されており、アーク抑制層と電極表面との間にギャップ領域1017がある。図10B~10Eは、接触電極の代替構成を示す。図10Bでは、接触電極(例えば、ステンレス鋼電極)1005は、絶縁性支持体1007によって支持されている(そして部分的に囲まれている)。電極1005の外面1008はアーク抑制層1015で覆われている。図10Cは、アーク放電を防止するために、外側または露出した電極表面1008に丸みを帯びたエッジ1006(例えば、フィレット)を有する接触電極1005の例を示している。図10Dは、エアギャップ1017によってアーク抑制層1015から隔てられた電極1005上の電極表面1008を含む、図10Aに示すものと同様の接触電極の断面の例を示す。図10Eは、図10Dの電極の別の断面、例えば縦断面を示し、パルス発生器に電気的に接続するためのワイヤまたは導電性材料に接続できる電気接続部1033を示している。
【0098】
図11は、図9および図10Aに示したものと同様の2つの接触電極を有する平行ジョーのモデルの一例を示す図であり、標的組織1144(例えば、このモデルでは心臓組織)をクランプする際のジョーの例示的な断面を示している。図11に示す形状は、後述するように電界をモデル化するために使用され、得られた電界分布に基づき、アーク放電の可能性が大幅に減少することが示された。図11では、モデルは第1の電極1105と第2の電極1105’を具える。第1の電極1105と第2の電極1105’はそれぞれ、アーク抑制層1115、1115’によって覆われており、通常、アーク抑制層はそれぞれのエアギャップ1117、1117’によって電極表面から離間している。図11では、ジョーがサンプル組織1144をクランプしており、アーク抑制層1115、1115’が組織がクランプされた電極表面に押し付けられ、一方でエアギャップ1117、1117’はクランプされていない領域の上に残っている。図11に示す例では、ジョーが組織上で閉じられ、対向する半導体層1115、1115’(標的組織と接触していない領域を含む)は互いに接触せず、血液または空気1146によって分離されている。
【0099】
図8A図9Bおよび図11に示すようなクランプアプリケータを含む本明細書に記載の装置は、肺静脈のような心臓組織を処置するために使用することができる。例えば、これらの装置は、低侵襲大動脈弁置換術や心房細動を治療するメイズ手術の際に、両側肺静脈隔離術(心房切開なし)の一部として使用され得る。右肺静脈は、例えば図9Bまたは図11に示す装置のようなクランプから、本明細書に記載されるようなサブマイクロ秒パルスを印加することによって焼灼することができる。大動脈下の斜交洞に装置を導入して、左肺静脈を焼灼することもできる。これらの装置は、上記のように心臓の用途において多くの利点をもたらす。さらに、本開示の装置の構成と組み合わせてサブマイクロ秒パルス電界を使用することにより、血管や弁の近くを安全に治療(例えばアブレーション)することができる。
【0100】
図12A~12B、図13A~13Bおよび図14A~14Cは、本開示のアプリケータツールのジョーの間にサブマイクロ秒パルスのような高電圧エネルギーを印加する場合のシミュレートされた電界の例を示す。図12A~12Bにおいて、電界は、ジョー間に空気(図12A)またはジョー間に血液(図12B)がある場合に電界を印加した場合、アーク抑制層の導電率は標的組織(例えば、心臓組織)の導電率の約0.1倍でシミュレートされている。図示のように、結果として生じる電界は、アーク抑制層と組織との間の接触が最も高い領域1208(アーク抑制層がエアギャップを変位させた場所)で最も高くなり、エアギャップが残っている場所1212では急激に低下する。図13A~13Bにおいて、電界は、ジョー間に空気(図13A)またはジョー間に血液(図13B)がある場合、アーク抑制層の導電率は標的組織(例えば、心臓組織)の導電率とほぼ同じにシミュレートされている。シミュレーションでは、どちらの場合も電極と組織のアーク抑制層内部との間の空間1316に高電界の領域が見られるが、この領域はアーク抑制層と電極表面との間のエアギャップ内部にあるため、アーク放電が生じるリスクはない。図13Aでは、アーク抑制層と組織との間の小さな分離1314も、空気中ではより大きな電界を示すが、血液中ではそうではない(図13B)。
【0101】
図14A~14Bにおいて、電界は、ジョー間に空気(図14A)またはジョー間に血液(図14B)がある場合に5kVの電界を印加した場合、アーク抑制層の導電率は標的組織(例えば、心臓組織)の導電率の約10倍でシミュレートされている。シミュレーションでは、ジョー間に(血液でなく)空気がある場合、間に組織を含まないジョー間の領域1416に有意な電界が生じる。本書に記載の装置はいずれも、このギャップ領域、特に組織とアーク抑制層との間のギャップを最小化または排除するように構成され得る。
【0102】
図15は、図11に示すものと同様の2つの接触電極を有する平行ジョーのモデルを示すが、図15では、ジョーが閉じられると、組織と接触していないアーク抑制層が互いに接触する(小さな遷移領域1546を除く)。この装置は、組織がアーク抑制層に完全またはほぼ完全に接触するように、遷移領域1546を最小化または排除するように構成されてもよい。例えば、アーク抑制層は、従順な(例えば、非常に柔軟な)材料で形成されてもよく、および/または、より高度な柔軟性を実現する厚さを有してもよい。ギャップ領域1517は、大きな厚みの組織をその間にクランプできるように、より大きくてもよい(例えば、組織の圧縮されていない厚さの半分以上、55%以上、60%以上、70%以上、80%以上の大きさなど)。
【0103】
図15では、モデルは第1の電極1505と第2の電極1505’を具える。第1の電極1505と第2の電極1505’はそれぞれ、アーク抑制層1515、1515’によって覆われており、通常、アーク抑制層はそれぞれのエアギャップ1517、1517’によって電極表面から離間している。図15では、ジョーがサンプル組織1544をクランプしており、各アーク抑制層1515、1515’が組織がクランプされた電極表面に押し付けられ、一方でエアギャップ1517、1517’はクランプされていない領域の上に残っている。図15に示す例では、ジョーが組織上で閉じられ、標的組織と接触していない領域内の対向する半導体層1515、1515’は、非常に小さな遷移ギャップ1546を除いて互いに接触する。前述のように、装置はこの遷移ギャップ1546を最小化または排除するように構成されてもよい。
【0104】
図16A~16B、図17A~17Bおよび図18A~18Bは、図15のアプリケータ構成に基づく電界のシミュレーション結果を示す。図16A~16Bにおいて、電界は、ジョー間に空気(図16A)またはジョー間に血液(図16B)がある場合、アーク抑制層の導電率は標的組織(例えば、心臓組織)の導電率の約0.1倍でシミュレートされている。図示のように、結果として生じる電界は、接触が最も高い領域1608で最も高くなり、エアギャップが残っている1612では急激に低下する。図17A~17Bにおいて、電界は、ジョー間に空気(図17A)またはジョー間に血液(図17B)がある場合、アーク抑制層の導電率は標的組織(例えば、心臓組織)の導電率とほぼ同じにシミュレートされている。図13A~13Bのように(図11のモデルに関連して)、シミュレーションは、いずれの場合も電極アセンブリのエアギャップ内に高電界の領域1714を示すが、この内部領域でアーク放電は発生しない。
【0105】
図18A~18Bにおいて、電界は、ジョー間に空気(図18A)またはジョー間に血液(図18B)がある場合、アーク抑制層の導電率は標的組織(例えば、心臓組織)の導電率の約10倍でシミュレートされている。シミュレーションでは、ジョーの間に(血液でなく)空気があると、アーク抑制層間の非接触の小さな領域の間に大きな電界1816が発生する。
【0106】
図11~18Bに示すシミュレーションデータは、アーク抑制層(例えば、中間導電層)の導電率を、処置される組織の予想される導電率の1桁以内に収まるように選択することが有益である可能性を示唆している。例えば、これらの装置のいずれかにおいて、アーク抑制層の導電率は、予想される組織の導電率の0.1倍~10倍の導電率を有し得る(例えば、予想される組織の導電率の10倍未満、予想される組織の導電率の5倍未満、予想される組織の導電率の3倍未満、予想される組織の導電率の2倍未満、予想される組織の導電率とほぼ同じ、予想される組織の導電率未満、予想される組織の導電率の0.9倍未満、予想される組織の導電率の0.8倍未満、予想される組織の導電率の0.7倍未満、予想される組織の導電率の0.6倍未満、予想される組織の導電率の0.5倍未満、予想される組織の導電率の0.4倍未満、予想される組織の導電率の0.3倍未満、予想される組織の導電率の0.2倍未満、予想される組織の導電率の0.1倍未満、予想される組織の導電率の0.09倍未満など)。
【0107】
本書に記載のアプリケータ装置を使用した実験では、これらすべての構成で試料組織が確実に処理されることが示された。同様の実験により、アーク抑制層を含まない露出電極で時折発生するアーク放電は、アーク抑制電極と電極表面の間に隙間がある場合とない場合の両方で、アーク抑制電極を使用することで完全に排除されることが示された。
【0108】
治療方法
上述したように、これらの装置はいずれも組織の治療に使用することができ、治療中に電極の少なくとも一部が空気または血液にさらされる可能性がある場合に特に有用である。特に、これらの方法は、組織を治療するための腹腔鏡手術の一部として使用することができる。
【0109】
例えば、本明細書に記載の非貫通型(例えば、表面)電極を有する装置を使用して、女性の泌尿生殖器系または生殖器系の組織(例えば、卵巣、卵管および骨盤の内層組織)に接触させることができる。例えば、装置は、本明細書に記載の電極を含むパドル領域を具え、子宮内膜症の治療に使用され得る。装置は体内に挿入され(いくつかの例では拡張され)、子宮内膜症に罹患した組織に押し当てられる。いくつかの例では、表面電極を標的組織に固定するために吸引が使用され得る。
【0110】
いくつかの例では、本明細書に記載の表面電極は、例えば、声帯襞(例えば、声帯)上の1以上の病変(例えば、結節、ポリープおよび/または嚢胞などの腫瘍)などの様々な状態に接触して治療するために使用され得る。例えば、本明細書に記載の表面電極を含むパドル領域として構成された装置を患者に(例えば、口から、または切開部を介して)挿入して、声帯/声帯襞にアプローチすることができる。いくつかの例では、パドル領域が拡張され、声帯病変を治療するために声帯の組織に押し付けられ得る。いくつかの例では、標的組織(声帯/声帯襞)は、説明したように、2以上の表面電極の間にクランプされ得る。1またはそれ以上の治療を適用することができる。これらの方法は、喉頭乳頭腫やその他の皮膚病変や症状の治療にも使用され得る。
【0111】
本明細書に記載の装置は、心臓組織の治療にも使用することができる。例えば、本明細書に記載されるアプリケータは、血管系を通して挿入され、例えば、多くの心臓疾患のうちの心房細動を治療するために、心臓組織に対してクランプするか、または他の方法で固定するために使用され得る。
【0112】
その他の適応症としては、皮膚病変、臓器の内部腫瘍の治療、血管、管、腸を含む管の治療、眼瞼、口唇、舌、尿管、尿道、胆嚢、管、胆管、リンパ節、直腸、食道、心臓、肝臓、腸、胃、膵臓、肺、子宮、卵管、指、耳、鼻、あらゆる血管、脾臓、腎臓などの治療を含み得る。例えば、本明細書に記載のクランプ装置は、例えば、ジョーの間に収まるあらゆる組織を治療するために使用することができる。
【0113】
特に、これらの装置は、より大きな治療領域が望まれる適応症の治療に特に適している場合があり、本明細書に記載のように、電極が丸みを帯びたエッジ(例えば、フィレット)および/またはアーク抑制層を含むように構成されている場合、表面電極を比較的長くしてもアーク放電を心配することがない。
【0114】
本明細書に記載の方法(ユーザインターフェースを含む)はいずれも、ソフトウェア、ハードウェア、またはファームウェアとして実装することができ、プロセッサ(例えば、コンピュータ、タブレット、スマートフォンなど)によって実行可能な一連の命令を記憶する非一次的なコンピュータ可読記憶媒体として記載されることもあり、この一連の命令がプロセッサによって実行されると、限定しないが、表示、ユーザとの通信、分析、パラメータ(タイミング、周波数、強度などを含む)の変更、決定、警告などを含むステップのいずれかをプロセッサに実行制御させる。
【0115】
前述の概念および以下でさらに詳細に説明する追加の概念のすべての組み合わせ(ただし、これらの概念が相互に矛盾しない限り)は、本明細書で開示される発明の主題の一部であると解され、本明細書に記載の利点を達成するために使用できることを理解されたい。
【0116】
本明細書において、ある特徴または要素が他の特徴または要素の「上にある」と称される場合、それは他の特徴または要素のすぐ上にあってもよいし、介在する特徴および/または要素が存在してもよい。対照的に、ある特徴や要素が他の特徴や要素の「すぐ上にある」と表現された場合、そこには介在する特徴や要素は存在しない。また、ある特徴や要素が他の特徴や要素に「接続されている」、「取り付けられている」、または「結合されている」と称される場合、他の特徴や要素に直接接続、取り付け、または結合されていてもよいし、介在する特徴や要素が存在してもよいことが理解されるであろう。対照的に、ある特徴や要素が他の特徴や要素に「直接接続され」、「直接取り付けられ」、「直接結合され」ていると称される場合、介在する特徴や要素は存在しない。一実施形態に関して説明または図示されているが、このように説明または図示されている特徴および要素は、他の実施形態にも適用することができる。また、他の特徴に「隣接して」配置されている構造または特徴への言及は、隣接する特徴に重なる部分またはその下にある部分を有してもよいことが当業者には理解されるであろう。
【0117】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためだけのものであり、本発明を限定することを意図するものではない。例えば、本明細書で使用される単数形「a」、「an」、「the」は、文脈から明らかにそうでないことが示されない限り、複数形も含むことが意図されている。本明細書で使用される場合、「含む」および/または「具える」という用語は、記載された特徴、ステップ、操作、要素、および/または構成要素の存在を特定するが、1つまたは複数の他の特徴、ステップ、操作、要素、構成要素、および/またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではないことがさらに理解されるであろう。本明細書において、「および/または」という用語は、関連する列挙された項目の1つまたは複数のあらゆる組み合わせを含み、「/」と略記される場合もある。
【0118】
本明細書では、1つの要素または特徴と他の要素または特徴との関係の説明を容易にするために、図示のように「下(under)」、「下(below)」、「下方(lower)」、「上(over)」、「上方(upper)」などの空間的に相対的な用語を使用されることがある。空間的に相対的な用語は、図に描かれた方向に加えて、使用時または動作時の装置のさまざまな方向を包含することを意図していることが理解されるであろう。例えば、図中の装置が反転している場合、他の要素や特徴の「下」または「真下」にあると説明されている要素は、他の要素や特徴の「上」に配置されることになる。したがって、「下(under)」という例示的な用語は、上方と下方の両方の方向を包含し得る。装置は他の向き(90度回転または他の向き)の場合があり、本明細書で使用される空間的に相対的な記載はそれに応じて解釈される。同様に、「上向き」、「下向き」、「垂直」、「水平」などの用語は、特に断りのない限り、本明細書では説明のためだけに使用される。
【0119】
本明細書では、様々な特徴/要素(ステップを含む)を説明するために「第1」および「第2」という用語が使用されることがあるが、文脈から別段の指示がない限り、これらの特徴/要素はこれらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、ある特徴/要素を他の特徴/要素と区別するために使用され得る。したがって、後述する第1の特徴/要素を第2の特徴/要素と呼ぶ場合があり、同様に、本発明の教示から逸脱することなく、後述する第2の特徴/要素を第1の特徴/要素と呼ぶ場合もある。
【0120】
本明細書および続く特許請求の範囲を通じて、文脈上別段の定めがない限り、「具える」という語、および「含む」や「含んでいる」などのバリエーションは、様々な構成要素が、方法および物品(例えば、装置や方法を含む組成物や装置)において共同で使用し得ることを意味する。例えば、「含む」という用語は、記載された要素またはステップを含むが、他の要素またはステップを排除しないことを意味すると理解される。
【0121】
一般に、本明細書に記載の装置および方法は、いずれも包括的であると理解されるべきであるが、構成要素および/またはステップのすべてまたはサブセットは、代替的に排他的であってもよく、様々な構成要素、ステップ、サブ構成要素またはサブステップから「なる」または代替的に「本質的になる」と表現され得る。
【0122】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、実施例で使用される場合を含め、特に明示的に指定されない限り、すべての数値は、その用語が明示的に記載されていなくても、「約」または「およそ」という語が前にあるものとして読み取られ得る。大きさおよび/または位置を記述する際に、記述された値および/または位置が値および/または位置の合理的な予想範囲内であることを示すために、「約」または「およを」という表現を使用してもよい。例えば、数値は、記載された値(または数値範囲)の±0.1%、記載された値(または数値範囲)の±1%、記載された値(または数値範囲)の±2%、記載された値(または数値範囲)の±5%、記載された値(または数値範囲)の±10%などの値を持つ場合がある。本明細書で示される数値は、文脈上そうでない場合を除き、その値のおよその範囲または近似値を含むと理解されるべきである。例えば、「10」という値が開示されていれば、「約10」という値も開示されている。本明細書に記載されている数値範囲は、そこに包含されるすべての下位範囲を含むことを意図している。また、値が開示される場合、当業者が適切に理解するように、「値以下」の値、「値以上」の値、および値の間の可能な範囲も開示されることが理解される。例えば、値「X」が開示されている場合、「X以下」だけでなく、「X以上」(例えば、Xが数値の場合)も開示される。また、本出願全体を通して、データは多くの異なるフォーマットで提供され、このデータは終点と始点、およびデータポイントの任意の組み合わせの範囲を表すことも理解されたい。例えば、特定のデータポイント「10」と特定のデータポイント「15」が開示される場合、10と15の間だけでなく、10より大きい、10より大きいか等しい、10より小さい、10より小さいか等しい、10と15の間が開示されていると見なされることが理解されよう。また、2つの特定のユニット間の各ユニットも開示されていることも理解されたい。例えば、10と15が開示されていれば、11、12、13、14も開示されている。
【0123】
以上、様々な例示的実施形態について説明したが、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲から逸脱することなく、様々な実施形態に多くの変更を加えることができる。例えば、代替実施形態では、様々な説明された方法ステップが実行される順序がしばしば変更されてもよく、他の代替実施形態では、1つ以上の方法ステップが完全にスキップされてもよい。様々な装置およびシステムの実施形態のオプション機能は、ある実施形態には含まれ、他の実施形態には含まれなくてもよい。したがって、前述の説明は主に例示的な目的のために提供されるものであり、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定するように解釈されるべきではない。
【0124】
本明細書に含まれる実施例および図面は、例示であって限定ではなく、主題を実施できる具体的な実施形態を示す。前述のように、他の実施形態が利用され、そこから派生することができ、したがって本開示の範囲から逸脱することなく、構造的および論理的な置換および変更を行うことができる。本発明の主題のこのような実施形態は、本明細書では、単に便宜上、「発明」という用語で個別にまたは集合的に参照されることがあるが、複数の発明が実際に開示されている場合であっても、本出願の範囲を任意の単一の発明または発明概念に自発的に限定する意図はない。このように、本明細書では特定の実施形態を図示し説明しているが、同じ目的を達成するように計算された任意の構成を、図示した特定の実施形態の代わりに使用してもよい。本開示は、様々な実施形態のあらゆる適応または変形をカバーすることを意図している。上記の実施形態の組み合わせ、および本明細書に具体的に記載されていない他の実施形態は、上記の説明を検討すれば当業者には明らかであろう。
【0125】
本明細書で言及されるすべての刊行物および特許出願は、個々の刊行物または特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されている場合と同じ程度まで、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【手続補正書】
【提出日】2024-05-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーク放電を制限するように構成された電極装置であって、
第1の電気絶縁性支持体と、
当該第1の電気絶縁性支持体によって支持され、第1の電極表面を含む、第1の電極と、
前記第1の電気絶縁性支持体または第2の電気絶縁性支持体によって支持され、第2の電極表面を含む、第2の電極とを具え、
前記第1の電極および第2の電極は、その間に少なくとも0.1kVの大きさを有する電気パルスを通過させるように構成され、
この装置がさらに、電気パルスを通過させる際に前記第1の電極と前記第2の電極との間のアーク放電を低減または排除するように構成された第1のアーク抑制層を具え、当該アーク抑制層は、前記第1の電極表面の導電率より低い導電率を有する材料で形成されている、電極装置。
【請求項2】
前記材料の導電率は、標的組織の導電率より低いか、ほぼ等しいか、高い、請求項1に記載の電極装置。
【請求項3】
前記アーク抑制層は、前記第1の電極表面に、固定されるか、上に取り付けられるか、少なくとも一部を被うか、少なくとも一部が離間している、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記第1の電極および第2の電極は、表面電極または板状電極である、請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記第1の電極が第1のジョーの側方側にあり、前記第2の電極が第2のジョーの側方側にあり、前記第1のジョーの側方側は前記第2のジョーの側方側と同一平面上にある、請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記第1の電極が第1のジョーの第1の側にあり、前記第2の電極が第2のジョーの第2の側にあり、前記第1のジョーの第1の側と前記第2のジョーの第2の側とが、その間に処置対象の組織を固定するように構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
さらに細長いシャフトを含み、前記第1のジョーおよび第2のジョーが、前記シャフトに対して角度をつけて配置され、湾曲するか曲がった構成を有する、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記第1の電極が第1のジョーの側方側にあり、第3の電極が前記第1のジョーの第2の側にあり、前記第2の電極が第2のジョーの側方側にあり、第4の電極が前記第2のジョーの第2の側にあり、さらに、第1のジョーの側方側が前記第2のジョーの側方側と同一平面にあり、前記第1のジョーの第1の側方側と前記第2のジョーの第2の側とが、その間に処置対象の組織を固定するように構成され、前記装置が、前記第1の電極と第3の電極との間と、前記第2の電極と第4の電極との間で選択するように構成されている、請求項4に記載の装置。
【請求項9】
前記第1のジョーおよび前記第2のジョーは、前記第1の電極および前記第2の電極が互いに平行を保つように開閉するように構成されている、請求項6に記載の装置。
【請求項10】
前記第1のジョーと前記第2のジョーとが、互いに軸方向に相対移動するように構成されている、請求項6に記載の装置。
【請求項11】
前記第1の電極と前記第2の電極とが一定の距離だけ離れている、請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記アーク抑制層は、目標範囲内の導電率を有するようにドープまたはその他の処理が施された高分子材料で形成される、請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記高分子材料はシリコーンポリマーを含み、ドーピング材料は炭素を含む、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記装置は、非動作時に、前記第1のアーク抑制層と前記第1の電極表面との間にエアギャップを有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
前記第1のアーク抑制層に対して力が加えられると、前記第1のアーク抑制層が前記第1の電極表面に対して偏向するように構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
前記装置は、非動作時に、前記第1のアーク抑制層と前記第1の電極表面との間に第1のギャップ領域を有し、前記第1のギャップ領域0.5mm以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
前記第1の電極および前記第2の電極がそれぞれ丸みを帯びたエッジを具える、請求項1~3に記載の装置。
【請求項18】
前記第1の電極および前記第2の電極がそれぞれ5mmを超える長さを有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項19】
前記第1のアーク抑制層が可撓性膜またはコーティングを具える、請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項20】
前記第1のアーク抑制層は、0.01S/m~10S/mの導電率を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項21】
前記第1の電極および前記第2の電極の少なくとも一方または両方に対して組織を吸引するために吸引を加えるように構成された1つまたは複数の吸引ポートをさらに具える、請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項22】
前記第1のおよび第2の電極は、持続時間が1000ナノ秒未満の電気パルスを通過させるように構成される、請求項1~3のいずれか1項に記載の装置
【請求項23】
前記装置が、細長い本体から遠位に延在するパドル領域を具え、前記第1および第2の電極は前記パドル領域上にある、請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項24】
前記細長い本体を前記パドル領域に連結する関節領域を具え、当該関節領域は前記パドル領域を前記細長い本体を通って延びる平面内で関節運動させるように構成される、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記パドル領域は、幅方向に拡張して前記第1および第2の電極間の間隔を増大させるように構成される、請求項23に記載の装置。
【請求項26】
アーク放電を抑制するように構成された電極装置であって、
治療される組織をその間に固定するために開閉するように構成された第1のジョーおよび第2のジョーと、
前記第1のジョーによって支持された第1の電極と、
前記第2のジョーによって支持された第2の電極とを具え、
前記第1の電極と第2の電極は、少なくとも0.1kVの大きさを有する電気パルスを通過させるように構成され、
この装置がさらに、電気パルスの通過時に前記第1の電極と前記第2の電極との間のアーク放電を低減または排除するように構成された第1のアーク抑制層および第2のアーク抑制層を具え、前記第1および第2のアーク抑制層は、前記第1および第2の電極のそれぞれの導電率よりも低い導電率を有する材料で形成されている、装置。
【国際調査報告】