(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】重複システムの一方の欠陥後又は極度な負荷もしくは短期間の性能要求の場合のアクチュエータモーターへの供給電圧の増加で自動車のステアリングシステムを制御する方法
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20241031BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D5/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531579
(86)(22)【出願日】2021-11-30
(85)【翻訳文提出日】2024-05-28
(86)【国際出願番号】 EP2021083484
(87)【国際公開番号】W WO2023098969
(87)【国際公開日】2023-06-08
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500024274
【氏名又は名称】ティッセンクルップ・プレスタ・アクチエンゲゼルシヤフト
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】カカス, ピーター
(72)【発明者】
【氏名】セペッシー, イムレ
(72)【発明者】
【氏名】判治 宗嗣
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 洋介
【テーマコード(参考)】
3D232
3D333
【Fターム(参考)】
3D232CC34
3D232CC37
3D232DA65
3D232DC33
3D232DC34
3D232DD03
3D232EA01
3D232EB11
3D232EC24
3D232EC37
3D232GG01
3D333CB02
3D333CB31
3D333CB46
3D333CD59
3D333CE38
(57)【要約】
本発明は、道路車両のステアリングシステム(1)を制御する方法に関し、ステアリングシステム(1)は、少なくとも二つの重複パワーパックをそれぞれ有するアクチュエータ(5)を含み、この方法は、以下の工程を含む:
a)アクチュエータのパワーパック中の又はパワーパックの欠陥及び/又は劣化を検出し(9)、及び/又は機能不全のパワーパックをスイッチオフするか、又は極度な負荷又は短期間の性能要求を検出し;
b)アクチュエータの少なくとも一つの機能するパワーパックの供給電圧を通常条件下の供給電圧より高い値に増加させ、通常条件下のパワーより高いアクチュエータのパワー出力(11)を与える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路車両のステアリングシステム(1)を制御する方法であって、前記ステアリングシステム(1)が、少なくとも二つの重複パワーパックをそれぞれ有するアクチュエータ(5)を含み、前記方法が、以下の工程を含むことを特徴とする方法:
a)前記アクチュエータのパワーパック中の又はパワーパックの欠陥及び/又は劣化を検出し(9)、及び/又は機能不全のパワーパックをスイッチオフするか、又は極度な負荷又は短期間の性能要求を検出し;
b)前記アクチュエータの少なくとも一つの機能するパワーパックの供給電圧を通常条件下の供給電圧より高い値に増加させ、通常条件下のパワーより高いアクチュエータのパワー出力(11)を与える。
【請求項2】
前記アクチュエータが、ステアバイワイヤーステアリングシステムのロードホイールアクチュエータ(5)もしくはフィードバックアクチュエータ(8)、又は補助トルクを与える電動パワーステアリングシステムのアクチュエータであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記道路車両が、電気自動車であり、前記工程b)において電圧変換機が、供給電圧を増加させるために使用されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記道路車両が、内燃機関を有し、前記工程b)において前記供給電圧の増加が、発電機によって制御されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の方法を実施するように設計された道路車両のための前記ステアリングシステム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提文に記載の自動車のステアリングシステムを制御する方法、及びその方法を実施するように設計されたステアリングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車では、ステアリングシステムのフェイルファンクションのアーキテクチャーを実施することが知られている。これらは、別個の独立したコントローラーとモーターを含む少なくとも二つのパワーパックを含む。重複システムの一方の欠陥後又は極度な負荷もしくは短期間の性能要求の場合、自動運転モードを有する電動パワーステアリングシステム(EPAS)又はステアバイワイヤステアリングシステムでは、利用可能なパワーは、全ての運転状況においてステアリング機能に対して十分でないかもしれない。それゆえ、ステアリングシステムの性能を少なくとも一時的に高めることが望ましいことがありうる。
【発明の概要】
【0003】
本発明の目的は、アクチュエータの欠陥後であっても、運転者が通常条件下で与えられるような完全なステアリング機能でいつでも自動車を操舵することを可能にする自動車のステアリングシステムを制御する方法を提供することである。
【0004】
この目的は、請求項1の特徴を有する自動車のステアリングシステムを制御する方法、及びその方法を実施するように設計されたステアリングシステムによって達成される。
【0005】
従って、道路車両のステアリングシステムを制御する方法が提供され、ステアリングシステムは、少なくとも二つの重複パワーパックをそれぞれ有するアクチュエータを含み、この方法は、以下の工程を含む:
a)アクチュエータのパワーパック中の又はパワーパックの欠陥及び/又は劣化を検出し、及び/又は機能不全のパワーパックをスイッチオフするか、又は極度な負荷又は短期間の性能要求を検出し;
b)アクチュエータの少なくとも一つの機能するパワーパックの供給電圧を通常条件下の供給電圧より高い値に増加させ、通常条件下のパワーより高いアクチュエータのパワー出力を与える。
【0006】
この方法は、一方で一つのパワーパックの欠陥又は劣化を、他方で極度の負荷又は短期間の性能要求の場合に、通常条件と比較したパワーの増加を部分的に補償して完全なステアリング機能を与えることを可能にする。好ましくは、アクチュエータは、ステアバイワイヤーステアリングシステムのアクチュエータ、又は補助トルクを与える電動パワーステアリングシステムのアクチュエータである。ステアバイワイヤーステアリングシステムでは、アクチュエータは、ロードホイールアクチュエータであることができる。その場合において、供給電圧は、ロードホイールアクチュエータのターゲットラック位置と実際のラック位置の間の差に基づいて増加されることが好ましい。供給電圧は、少なくとも一時的に増加される。好ましくは、ロードホイールアクチュエータのターゲットラック位置と実際のラック位置の間の差が小さくなるまで、即ち規定されたしきい値の下になるまで、供給電圧は増加される。しかしながら、アクチュエータはまた、フィードバックアクチュエータであることができる。その場合において、供給電圧は、フィードバックアクチュエータのターゲットフィードバックトルクと実際のフィードバックトルクの差に基づいて増加されることが好ましい。供給電圧は、少なくとも一時的に増加される。好ましくは、フィードバックアクチュエータのターゲットフィードバックトルクと実際のフィードバックトルクの差が小さくなるまで、即ち規定されたしきい値の下になるまで、供給電圧は増加される。
【0007】
もし道路車両が電気自動車であるなら、工程b)において電圧変換機が供給電圧を増加させるために使用されることが好ましい。もし道路車両が内燃機関を有するなら、工程b)において前記供給電圧の増加が、発電機によって制御されることが好ましい。
【0008】
さらに、上記の方法を実施するように設計された道路車両のためのステアリングシステムが提供される。このステアリングシステムは、ステアバイワイヤーシステム又は電動パワーステアリングシステムであることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明の好ましい実施形態は、図面を参照して記載されるだろう。
【
図1】
図1は、自動車のステアバイワイヤーステアリングシステムの概略図である。
【
図2】
図2は、ステアバイワイヤーステアリングシステムのロードホイールアクチュエータの欠陥又は劣化を取り扱う方法のブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、ステアリングホイール3に接続されたステアリングシャフト2を有するステアバイワイヤーステアリングシステム1の概略図である。ステアリングホイール3とロードホイール4の間に機械的接続は全くない。ロードホイールアクチュエータ5は、ラックアンドピニオンギヤ7によってギヤラック6を作動させる。
【0011】
運転者がステアリングホイール3を操作するとき、ステアリングシャフト2が回転され、それは、シャフトセンサー(図には示されず)によって検出される。制御ユニットは、シャフトセンサーによって検出された信号からロードホイールアクチュエータ5のための作動信号を計算する。作動信号でギヤラック6を作動させることによって、ロードホイール4は、方向転換される。同時に、ロードホイール4からギヤラック6に導入された力は、別のセンサー(図には示されず)によって認識され、フィードバック信号が計算され、それは、フィードバックアクチュエータとも称されるステアリングホイールアクチュエータ8によってステアリングシャフト2に付与され、従って運転者は、ステアリングホイール3においてフィードバックを認識することができる。
【0012】
ロードホイールアクチュエータ5は、少なくとも二つの重複パワーパック、好ましくは二つの重複パワーパック(図示せず)を有する重複パワーパックシステムを有する。
【0013】
図2は、ステアバイワイヤーステアリングシステム1の制御方法を概略的に示す。
【0014】
もしアクチュエータ5,8の一つの欠陥(それは、重複システムの一つの側の欠陥又は何らかの劣化であることができる)が検出9されるなら、対応するパワーパックは、スイッチオフされ、ロードホイールアクチュエータの性能は、残りの機能するパワーパックに依存させられる。
【0015】
しかしながら、通常条件下の一つのパワーパックのパワーは、全ての運転状況のステアリング機能のために十分でない。それゆえ、欠陥の検出後、少なくとも一つの残りのパワーパックの供給電圧は、改良されたステアリング機能を可能にするためにパワーを増加するために増加される。
【0016】
別の状況は、アクチュエータ5,8の一つの劣化が起こることであることができ、それは、重複システムの一つ以上の側の劣化であることができ、それは、残りのパワーを減少させるかもしれない。劣化がパワーの減少に導く場合には、残りのパワーは、全ての運転状況のステアリング機能に対して十分でないかもしれない。それゆえ、劣化の検出後、少なくとも一つの劣化していないパワーパック及び/又は少なくとも一つの完全な機能のパワーパックの供給電圧は、改良されたステアリング機能を可能にするためにパワーを増加するために増加される。
【0017】
第三の状況では、アクチュエータ5,8は、極度の負荷又は短期間の性能要求を受けるかもしれない。要求を満たすため、少なくとも一つのパワーパックの供給電圧は、改良されたステアリング機能を可能にするためにパワーを増加するために増加される。
【0018】
一般に、アクチュエータは、ロードホイールアクチュエータであることができる。その場合において、供給電圧は、ロードホイールアクチュエータのターゲットラック位置と実際のラック位置の間の差に基づいて増加されることが好ましい。供給電圧は、少なくとも一時的に増加される。好ましくは、ロードホイールアクチュエータのターゲットラック位置と実際のラック位置の間の差が小さくなるまで、即ち規定されたしきい値以下になるまで、供給電圧は増加される。しかしながら、アクチュエータはまた、フィードバックアクチュエータであることができる。その場合において、供給電圧は、フィードバックアクチュエータのターゲットフィードバックトルクと実際のフィードバックトルクの差に基づいて増加されることが好ましい。供給電圧は、少なくとも一時的に増加される。好ましくは、フィードバックアクチュエータのターゲットフィードバックトルクと実際のフィードバックトルクの差が小さくなるまで、即ち規定されたしきい値の下になるまで、供給電圧は増加される。
【0019】
一般に、供給電圧の増加は、パワー供給プロバイダー10によって与えられる。内燃機関の場合には、電圧増加は、電圧制御モードで発電機で制御される。これは、電圧を測定し、測定値を基準値と比較し、発電装置から流れる無効電力を増加/減少することを要求する。電気自動車の場合には、電圧変換器が供給電圧を増加するために使用される。パワー供給プロバイダー10は、それぞれのアクチュエータ5,8に増加した供給電圧を与え、それは、応じて増加した出力パワー11を有する。
【0020】
本発明の別の実施形態では、ステアリングシステムは、アクチュエータを有する電動パワーステアリングシステムである。アクチュエータは、同じ向きの補助トルクを付与することによって、トルクをステアリング機構に付与する際に運転者を補助し、ステアリングホイールを回転することを容易にするために使用される。従って、アクチュエータの操作は、ステアリングコラムシャフトを回転したり、又はステアリングラック機構の一部を動かすことを補助することができる。もちろん、アクチュエータは、それが運転者がステアリングホイールを回転するのを助けるために補助トルクを与えることができる限り、いかなる一般的なステアリング機構のいかなる部分にも接続されることができる。上述と同様に、アクチュエータは、少なくとも二つのパワーパックを重複して有するように設計される。重複システムの一つの側の欠陥もしくは劣化の場合には、又は極度の負荷もしくは短期間の性能要求の場合には、上記の方法がまた、適用される。
【国際調査報告】