(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池用多層複合材料及びその調製方法と応用
(51)【国際特許分類】
H01M 4/38 20060101AFI20241031BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20241031BHJP
C01B 32/956 20170101ALI20241031BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 A
H01M4/36 C
C01B32/956
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531617
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(85)【翻訳文提出日】2024-05-28
(86)【国際出願番号】 CN2022100701
(87)【国際公開番号】W WO2023103343
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】202111510520.3
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520464393
【氏名又は名称】▲リー▼陽天目先導電池材料科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】TIANMULAKE EXCELLENT ANODE MATERIALS CO, LTD.
【住所又は居所原語表記】3/F,Office Building 15,No.87 ShangShang Road,Kunlun Street Liyang,Jiangsu 213330 China
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】邵 金
(72)【発明者】
【氏名】羅 飛
【テーマコード(参考)】
4G146
5H050
【Fターム(参考)】
4G146MA14
4G146MB02
4G146MB12
4G146MB18A
4G146MB27
4G146NA01
4G146NA04
4G146NB04
5H050AA02
5H050AA07
5H050BA17
5H050CB11
5H050HA01
5H050HA07
(57)【要約】
【課題】リチウムイオン二次電池用多層複合材料及びその調製方法と応用を提供する。
【解決手段】多層複合材料は、炭素マトリックスと、ナノシリコン系複合材料と、カーボンシェルとを含み、炭素マトリックスは、ナノシリコン系複合材料を堆積させるためのマトリックス材料であり、ナノシリコン系複合材料は、シランと、C、N、B、P元素のいずれかを含むガス状化合物のうちの1種以上とを気相成長法で調製することによりなされ、ナノシリコン系複合材料の粒子サイズは0.1~200nmであり、ナノシリコン系複合材料内の炭素原子が原子スケールで均一に埋め込まれ、炭素原子とシリコン原子が結合して非晶質のSi-C結合を形成し、窒素原子とシリコン原子が結合して非晶質のSi-N結合を形成し、ホウ素ドーピング及び/又はリンドーピングにより、ナノシリコン系複合材料内のシリコン結晶に欠陥を生じさせ、カーボンシェルは、ナノシリコン系複合材料が堆積された炭素マトリックスの外層に被覆される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン二次電池用多層複合材料であって、
前記多層複合材料は、炭素マトリックスと、ナノシリコン系複合材料と、カーボンシェルとを含み、
前記炭素マトリックスは、ナノシリコン系複合材料を堆積させるためのマトリックス材料であり、
前記ナノシリコン系複合材料は、シランと、C、N、B、P元素のいずれかを含むガス状化合物のうちの1種以上とを気相成長法で調製することによりなされ、前記ナノシリコン系複合材料の粒子サイズは0.1~200nmであり、前記ナノシリコン系複合材料内の炭素原子が原子スケールで均一に埋め込まれ、炭素原子とシリコン原子が結合して非晶質のSi-C結合を形成し、窒素原子とシリコン原子が結合して非晶質のSi-N結合を形成し、ホウ素ドーピング及び/又はリンドーピングにより、前記ナノシリコン系複合材料内のシリコン結晶に欠陥を生じさせ、
前記カーボンシェルは、ナノシリコン系複合材料が堆積された炭素マトリックスの外層に被覆される、
ことを特徴とするリチウムイオン二次電池用多層複合材料。
【請求項2】
前記カーボンシェルは、気相被覆、液相被覆又は固相被覆により調製される、
ことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用多層複合材料。
【請求項3】
前記多層複合材料がC元素を含む場合、前記多層複合材料の固体核磁気共鳴のNMRスペクトルでは、ケイ素のピークが-70ppm~-130ppmにある場合、20ppm~-20ppmの間にSi-Cの共鳴ピークが存在することが示され、Si-Cの共鳴ピークとケイ素のピークの面積比は0.1~5.0である、
ことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用多層複合材料。
【請求項4】
前記多層複合材料において、前記ナノシリコン系複合材料の質量は、全体の質量の20%~80%を占め、シリコンと複合する前記C、N、B、P元素のいずれかの質量は前記ナノシリコン系複合材料の質量の0.1%~50%を占め、
前記炭素マトリックスの質量は、全体の質量の20%~70%を占め、
前記カーボンシェルの質量は、全体の質量の0~10%を占める、
ことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用多層複合材料。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用多層複合材料の調製方法であって、
炭素マトリックスが充填された反応容器に、窒素ガス、アルゴンガス、水素ガス又はこれらの任意の混合ガスである保護ガスを1~2L/minの流速で導入することと、
シランと、C、N、B、P元素のいずれかを含むガス状化合物のうちの1種以上を反応容器に導入し、前記炭素マトリックス上に気相堆積を行うことと、
気相被覆、液相被覆、固相被覆のうち少なくとも1つにより、前記堆積後の生成物に炭素被覆を施して、前記リチウムイオン二次電池用多層複合材料を得ることと、
を含み、
ここで、シランのガス流速は0.5~10L/minであり、前記ガス状化合物のガス流速は0.5~10L/min、前記堆積の温度は500~1500℃であり、堆積の時間は1~20時間である、
ことを特徴とする調製方法。
【請求項6】
前記反応容器は、バッチリアクター又は連続型反応装置を含み、具体的に回転炉、管状炉、ベル型炉又は流動床のいずれかを含む、
ことを特徴とする請求項5に記載の調製方法。
【請求項7】
前記シランは、モノシラン、ジシラン、テトラフルオロシラン、クロロシラン、ヘキサメチルジシラン、ジメチルシロキサンのうちの1種以上を含む、
ことを特徴とする請求項5に記載の調製方法。
【請求項8】
C元素を含むガス状化合物は、アセチレン、メタン、プロピレン、エチレン、プロパン及びガス状エタノールのうちの1種以上を含み、
N元素を含むガス状化合物は、窒素、アンモニア、尿素、メラミン及びヒドラジンのうちの1種以上を含み、
B元素を含むガス状化合物は、ジボラン、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリプロピル及び三臭化ホウ素のうちの1種以上を含み、
P元素を含むガス状化合物は、ホスフィン及び/又はオキシ塩化リンを含む、
ことを特徴とする請求項5に記載の調製方法。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用多層複合材料を含む、
ことを特徴とする負極材料。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用多層複合材料を含む、
ことを特徴とするリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[相互参照]
本出願は、2021年12月10日に中国特許庁に提出された出願番号が202111510520.3であり、発明の名称が「リチウムイオン二次電池用多層複合材料及びその調製方法と応用」である中国特許出願の優先権を主張する。
【0002】
[技術分野]
本発明は、材料の技術分野に関し、特に、リチウムイオン二次電池用多層複合材料及びその調製方法と応用に関する。
【背景技術】
【0003】
過去数十年間で、商用化されたリチウムイオン電池は、長いサイクル寿命、高エネルギー密度、環境に優しいという利点を持ち、大成功を収めた。従来のセカンダリリチウムイオン電池は、主に、負極(通常は黒鉛などの炭素質材料)、正極(例えばLiCoO2、LiMn2O2及びLiFePO4など)、及び電解液を含浸させたセパレータで構成され、リチウムイオンは液体電解質を介して2つの電極間を往復し、電荷は外部回路を介して転送される。
【0004】
しかしながら、従来の黒鉛負極材料の理論容量は、372mAh/gと限られ、ますます高まる高性能なストレージ容量の要件を満たすことはできなくなっている。携帯型電子機器、電気自動車、及び再生可能エネルギーの利用のニーズがますます高まるにつれ、優れた電気化学的性能を持つ高容量負極材料の開発が、リチウムイオンの貯蔵を実現し、全体のエネルギー密度を向上させるための重要な解決手段であることが証明された。
【0005】
シリコンは、その天然存在比、環境にやさしい性質、低放電電位、高い理論容量(4200mAh/g)により、リチウムイオン電池の黒鉛負極の有望な代替品となる。しかしながら、シリコンの体積変化が大きい(300%~400%)ため、シリコン系負極の実用化が妨げられている。
【0006】
研究により、シリコンと炭素材料の結合は、シリコン負極の欠点を効果的に改善できることが判明した。特許文献1では、ナノシリコンおよびナノ黒鉛シートを水に均一に分散させ、次に有機炭素溶液を加えて噴霧乾燥し、得られた粉末を焼成してシリコン-炭素複合材料を得る。当該材料は、シリコンの導電性やサイクル安定性が悪い問題をある程度改善し、しかしながら、当該調製方法は、物理的混合により炭素材料と複合し、シリコンと炭素材料を均一に分散させることが困難であり、その電気化学的性能に影響を及ぼす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】中国特許第108598389号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の実施例は、リチウムイオン二次電池用多層複合材料及びその調製方法と応用を提供する。本発明のリチウムイオン二次電池用多層複合材料は、安定な構造を有し、従来のシリコン系材料に比べて、多層構造と複合材料との間の相互作用により、この材料に体膨脹が小さく、サイクル特性とレート特性がより優れるという特長を持たせる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様において、本発明の実施例は、リチウムイオン二次電池用多層複合材料を提供し、前記多層複合材料は、炭素マトリックスと、ナノシリコン系複合材料と、カーボンシェルとを含み、
前記炭素マトリックスは、ナノシリコン系複合材料を堆積させるためのマトリックス材料であり、
前記ナノシリコン系複合材料は、シランと、C、N、B、P元素のいずれかを含むガス状化合物のうちの1種以上とを気相成長法で調製することによりなされ、前記ナノシリコン系複合材料の粒子サイズは0.1~200nmであり、前記ナノシリコン系複合材料内の炭素原子が原子スケールで均一に埋め込まれ、炭素原子とシリコン原子が結合して非晶質のSi-C結合を形成し、窒素原子とシリコン原子が結合して非晶質のSi-N結合を形成し、ホウ素ドーピング及び/又はリンドーピングにより、前記ナノシリコン系複合材料内のシリコン結晶に欠陥を生じさせ、
前記カーボンシェルは、ナノシリコン系複合材料が堆積された炭素マトリックスの外層に被覆される。
【0010】
好ましくは、前記カーボンシェルは、気相被覆、液相被覆又は固相被覆により調製される。
【0011】
好ましくは、前記多層複合材料がC元素を含む場合、前記多層複合材料の固体核磁気共鳴のNMRスペクトルでは、ケイ素のピークが-70ppm~-130ppmにある場合、20ppm~-20ppmの間にSi-Cの共鳴ピークが存在することが示され、Si-Cの共鳴ピークとケイ素のピークの面積比は0.1~5.0である。
【0012】
好ましくは、前記多層複合材料において、前記ナノシリコン系複合材料の質量は、全体の質量の20%~80%を占め、シリコンと複合する前記C、N、B、P元素のいずれかの質量は前記ナノシリコン系複合材料の質量の0.1%~50%を占め、
前記炭素マトリックスの質量は、全体の質量の20%~70%を占め、
前記カーボンシェルの質量は、全体の質量の0~10%を占める。
【0013】
第2の態様において、本発明の実施例は、第1の態様に記載のリチウムイオン二次電池用多層複合材料の調製方法を提供し、前記調製方法は、
炭素マトリックスが充填された反応容器に、窒素ガス、アルゴンガス、水素ガス又はこれらの任意の混合ガスである保護ガスを1~2L/minの流速で導入することと、
シランと、C、N、B、P元素のいずれかを含むガス状化合物のうちの1種以上を反応容器に導入し、前記炭素マトリックス上に気相堆積を行うことと、
気相被覆、液相被覆、固相被覆のうち少なくとも1つにより、前記堆積後の生成物に炭素被覆を施して、前記リチウムイオン二次電池用多層複合材料を得ることと、
を含み、
ここで、シランのガス流速は0.5~10L/minであり、前記ガス状化合物のガス流速は0.5~10L/min、前記堆積の温度は500~1500℃であり、堆積の時間は1~20時間である。
【0014】
好ましくは、前記反応容器は、バッチリアクター又は連続型反応装置を含み、具体的に回転炉、管状炉、ベル型炉又は流動床のいずれかを含む。
【0015】
好ましくは、前記シランは、モノシラン、ジシラン、テトラフルオロシラン、クロロシラン、ヘキサメチルジシラン、ジメチルシロキサンのうちの1種以上を含む。
【0016】
好ましくは、C元素を含むガス状化合物は、アセチレン、メタン、プロピレン、エチレン、プロパン及びガス状エタノールのうちの1種以上を含み、
N元素を含むガス状化合物は、窒素、アンモニア、尿素、メラミン及びヒドラジンのうちの1種以上を含み、
B元素を含むガス状化合物は、ジボラン、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリプロピル及び三臭化ホウ素のうちの1種以上を含み、
P元素を含むガス状化合物は、ホスフィン及び/又はオキシ塩化リンを含む。
【0017】
第3の態様において、本発明の実施例は、上記第1の態様に記載のリチウムイオン二次電池用多層複合材料を含む負極材料を提供する。
【0018】
第4の態様において、本発明の実施例は、上記第1の態様に記載のリチウムイオン二次電池用多層複合材料を含むリチウム電池を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の実施例によるリチウムイオン二次電池用多層複合材料は、炭素マトリックス、ナノシリコン系複合材料及びカーボンシェルの三層構造と複合材料との間の相互作用により、この材料に体膨脹が小さく、サイクル特性とレート特性がより優れるという特長を持たせる。特に、シランと、C、N、B、P元素のいずれかを含むガス状化合物のうちの1種以上を気相成長法で調製することによりなされたナノシリコン系複合材料は、炭素原子が原子スケールで均一に埋め込まれ、炭素原子とシリコン原子が結合して非晶質のSi-C結合を形成することで、リチウム挿入・脱離過程で、材料の構造をより安定させ、体膨脹が小さくなり、リチウム電池の負極に使用される場合、より良いサイクル特性を有する。窒素原子とシリコン原子が結合して非晶質のSi-N結合を形成することで、リチウムイオンの挿入と脱離に有利であり、リチウムイオン電池のレート特性が向上する。ホウ素ドーピング及び/又はリンドーピングにより、ナノシリコン系複合材料内のシリコン結晶に欠陥を形成させ、充電中の体膨張を緩和し、電池のサイクル特性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
以下、図面及び実施例を参照して本発明の実施例における技術案をより詳細に説明する。
【0021】
【
図1】本発明の実施例によるリチウムイオン二次電池用多層複合材料の概略構成図である。
【
図2】本発明の実施例によるリチウムイオン二次電池用多層複合材料の調製方法のフローチャートである。
【
図3】本発明の実施例1による多層複合材料の固体核磁気共鳴の核磁共振(NMR)スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面及び具体的な実施例を参照しながら本発明をさらに説明するが、これらの実施例は本発明をより詳細に説明するためのものにすぎず、いかなる形で本発明を制限するためのものではないと理解すべきであり、すなわち、本発明の保護範囲を制限することを意図していない。
【0023】
本発明は、リチウムイオン二次電池用多層複合材料を提案したものであり、
図1は本発明の実施例に係る多層複合材料の概略構成図である。
図1に示すように、多層複合材料は、炭素マトリックスと、ナノシリコン系複合材料と、カーボンシェルとを含み、
炭素マトリックスは、ナノシリコン系複合材料を堆積させるためのマトリックス材料であり、具体的には多孔質活性炭、カーボンナノチューブ、炭素繊維及びメソカーボンマイクロビーズのうち1種以上を含み得て、
ナノシリコン系複合材料は、シランと、C、N、B、P元素のいずれかを含むガス状化合物のうちの1種以上とを気相成長法で調製することによりなされ、ナノシリコン系複合材料の粒子サイズは0.1~200nmであり、ナノシリコン系複合材料内の炭素原子が原子スケールで均一に埋め込まれ、炭素原子とシリコン原子が結合して非晶質のSi-C結合を形成し、窒素原子とシリコン原子が結合して非晶質のSi-N結合を形成し、ホウ素ドーピング及び/又はリンドーピングにより、前記ナノシリコン系複合材料内のシリコン結晶に欠陥を生じさせ、
カーボンシェルは、ナノシリコン系複合材料が堆積された炭素マトリックスの外層に被覆される。カーボンシェルは、具体的に、気相被覆、液相被覆又は固相被覆により調製される。
【0024】
多層複合材料がC元素を含む場合、多層複合材料の固体核磁気共鳴のNMRスペクトルでは、ケイ素のピークが-70ppm~-130ppmにある場合、20ppm~-20ppm間にSi-Cの共鳴ピークが存在することが示され、Si-Cの共鳴ピークとケイ素のピークの面積比は0.1~5.0である。
【0025】
多層複合材料において、ナノシリコン系複合材料の質量は、全体の質量の20%~80%を占め、シリコンと複合する前記C、N、B、P元素のいずれかの質量は前記ナノシリコン系複合材料の質量の0.1%~50%を占め、炭素マトリックスの質量は全体の質量の20%~70%を占め、カーボンシェルの質量は全体の質量の0~10%を占める。
【0026】
本発明の材料は、
図2に示す調製方法のフローチャートにより調製される。
図2に示すように、主に以下のステップを含む。
ステップ110では、炭素マトリックスが充填された反応容器に保護ガスを1~2L/minの流速で導入し、
具体的に、反応容器は、バッチリアクター又は連続型反応装置を含み、具体的に回転炉、管状炉、ベル型炉又は流動床のいずれかを含む。導入される保護ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、水素ガス又はこれらのガスの任意の2種或いは3種の混合ガスである。
【0027】
ステップ120では、シランと、C、N、B、P元素のいずれかを含むガス状化合物のうちの1種以上を反応容器に導入し、炭素マトリックス上に気相堆積を行い、
ここで、シランは、モノシラン、ジシラン、テトラフルオロシラン、クロロシラン、ヘキサメチルジシラン、ジメチルシロキサンのうちの1種以上を含む。
【0028】
C元素を含むガス状化合物は、アセチレン、メタン、プロピレン、エチレン、プロパン及びガス状エタノールのうちの1種以上を含み、
N元素を含むガス状化合物は、窒素、アンモニア、尿素、メラミン及びヒドラジンのうちの1種以上を含み、
B元素を含むガス状化合物は、ジボラン、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリプロピル及び三臭化ホウ素のうちの1種以上を含み、
P元素を含むガス状化合物は、ホスフィン及び/又はオキシ塩化リンを含む。
【0029】
上記N元素、B元素、P元素を含む化合物自体が常温常圧で液体状又は固体状となる場合、そのガス状化合物について、キャリアガスを利用して上記元素化合物の溶液を運ぶことによりガス状化合物が形成され、反応容器に運び込まれる。
【0030】
シランのガス流速は0.5~10L/minであり、ガス状化合物のガス流速は0.5~10L/minであり、堆積温度は500~1500℃であり、堆積時間は1~20時間である。
【0031】
ステップ130では、気相被覆、液相被覆、固相被覆のうち少なくとも1つにより、堆積後の生成物に炭素被覆を施して、リチウムイオン二次電池用多層複合材料を得る。
【0032】
気相被覆、液相被覆、固相被覆は、いずれも業界でよく使用される被覆方法であり、当業者はどのように上記方法を用いて炭素被覆を達成するかについてすでに知っているため、ここでその詳細な説明を省略する。
【0033】
本発明で提案されるリチウムイオン二次電池用多層複合材料は、リチウムイオン電池の負極材料として使用され、リチウムイオン電池に適用される。
【0034】
本発明の実施例によるリチウムイオン二次電池用多層複合材料は、炭素マトリックス、ナノシリコン系複合材料及びカーボンシェルの三層構造と複合材料との間の相互作用により、この材料に体膨脹が小さく、サイクル特性とレート特性がより優れるという特長を持たせる。特に、シランと、C、N、B、P元素のいずれかを含むガス状化合物のうちの1種以上を気相成長法で調製することによりなされたナノシリコン系複合材料は、炭素原子が原子スケールで均一に埋め込まれ、炭素原子とシリコン原子が結合して非晶質のSi-C結合を形成することで、リチウム挿入・脱離過程で、材料の構造をより安定させ、体膨脹が小さくなり、リチウム電池の負極に使用される場合、より良いサイクル特性を有する。窒素原子とシリコン原子が結合して非晶質のSi-N結合を形成することで、リチウムイオンの挿入と脱離に有利であり、リチウムイオン電池のレート特性が向上する。ホウ素ドーピング及び/又はリンドーピングにより、ナノシリコン系複合材料内のシリコン結晶に欠陥を形成させ、充電中の体膨張を緩和し、電池のサイクル特性が向上する。
【0035】
本発明による技術案をより良く理解するために、以下、複数の具体的な例を挙げて本発明の上記実施例による方法を用いて多層複合材料を調製する具体的プロセス、及びそれをリチウムイオン二次電池に適用する方法及び電池特性をそれぞれ説明する。
【0036】
[実施例1]
本実施例は、リチウムイオン二次電池用多層複合材料の調製方法を提供し、以下のステップを含む。
(1)炭素マトリックスが充填された反応容器である回転炉内に、シラン堆積用の保護ガスとして、窒素ガスを1L/minの流速で導入する。
(2)モノシランと、C元素を含む化合物であるメタンをガスの形で反応容器に導入し、炭素マトリックス上に気相堆積を行う。モノシランのガス流速は、0.5L/minであり、メタンのガス流速は0.5L/minであり、堆積温度は500℃であり、堆積時間は20時間である。
(3)気相被覆により堆積後の生成物に炭素被覆を施し、リチウムイオン二次電池用多層複合材料を得る。
【0037】
[実施例2]
本実施例は、リチウムイオン二次電池用多層複合材料の調製方法を提供し、以下のステップを含む。
(1)炭素マトリックスが充填された反応容器である管状炉内に、シラン堆積用の保護ガスとして、アルゴンガスを1.5L/minの流速で導入する。
(2)ジシランと、N元素を含む化合物であるアンモニアをガスの形で反応容器に導入し、炭素マトリックス上に気相堆積を行う。ジシランのガス流速は、0.8L/minであり、アンモニアのガス流速は0.8L/minであり、堆積温度は600℃であり、堆積時間は12.5時間である。
(3)液相被覆により堆積後の生成物に炭素被覆を施し、リチウムイオン二次電池用多層複合材料を得る。
【0038】
[実施例3]
本実施例は、リチウムイオン二次電池用多層複合材料の調製方法を提供し、以下のステップを含む。
(1)炭素マトリックスが充填された反応容器であるベル型炉内に、シラン堆積用の保護ガスとして、窒素ガスを2L/minの流速で導入する。
(2)テトラフルオロシランと、B元素を含む化合物であるホウ酸トリプロピルをガスの形で反応容器に導入し、炭素マトリックス上に気相堆積を行う。テトラフルオロシランのガス流速は、1L/minであり、ホウ酸トリプロピルのガス流速は1L/minであり、堆積温度は700℃であり、堆積時間は10時間である。
(3)固相被覆により堆積後の生成物に炭素被覆を施し、リチウムイオン二次電池用多層複合材料を得る。
【0039】
[実施例4]
本実施例は、リチウムイオン二次電池用多層複合材料の調製方法を提供し、以下のステップを含む。
(1)炭素マトリックスが充填された反応容器である流動床内に、シラン堆積用の保護ガスとして、アルゴンガスを2L/minの流速で導入する。
(2)クロロシランと、P元素を含む化合物であるオキシ塩化リンをガスの形で反応容器に導入し、炭素マトリックス上に気相堆積を行う。クロロシランのガス流速は、1.25L/minであり、オキシ塩化リンガス状化合物のガス流速は1.25L/minであり、堆積温度は800℃であり、堆積時間は8時間である。
(3)気相被覆により堆積後の生成物に炭素被覆を施し、リチウムイオン二次電池用多層複合材料を得る。
【0040】
[実施例5]
本実施例は、リチウムイオン二次電池用多層複合材料の調製方法を提供し、以下のステップを含む。
(1)炭素マトリックスが充填された反応容器である管状炉内に、シラン堆積用の保護ガスとして、アルゴンガスを1.5L/minの流速で導入する。
(2)ジシランと、C、N、B及びP元素を含むガス状化合物であるメタン、アンモニア、ホウ酸トリメチル及びオキシ塩化リンをガスの形で反応容器に導入し、炭素マトリックス上に気相堆積を行う。ジシランのガス流速は、0.8L/minであり、メタン、アンモニア、ホウ酸トリメチル及びオキシ塩化リンガス状化合物のガス流速はいずれも0.2L/minであり、堆積温度は600℃であり、堆積時間は12.5時間である。
(3)液相被覆により堆積後の生成物に炭素被覆を施し、リチウムイオン二次電池用多層複合材料を得る。
【0041】
[実施例6]
本実施例は、リチウムイオン二次電池用多層複合材料の調製方法を提供し、以下のステップを含む。
(1)炭素マトリックスが充填された反応容器であるベル型炉内に、シラン堆積用の保護ガスとして、窒素ガスを2L/minの流速で導入する。
(2)テトラフルオロシランと、C、N、B及びP元素を含むガス状化合物であるプロピレン、尿素、ホウ酸トリプロピル及びホスフィンをガスの形で反応容器に導入し、炭素マトリックス上に気相堆積を行う。テトラフルオロシランのガス流速は、1L/minであり、プロピレン、尿素、ホウ酸トリプロピル及びホスフィンガス状化合物のガス流速はいずれも0.25L/minであり、堆積温度は700℃であり、堆積時間は10時間である。
(3)固相被覆により堆積後の生成物に炭素被覆を施し、リチウムイオン二次電池用多層複合材料を得る。
【0042】
[実施例7]
本実施例は、リチウムイオン二次電池用多層複合材料の調製方法を提供し、以下のステップを含む。
(1)炭素マトリックスが充填された反応容器である回転炉内に、シラン堆積用の保護ガスとして、窒素ガスを2L/minの流速で導入する。
(2)ヘキサメチルジシランと、C、N、B及びP元素を含む化合物であるプロパン、ヒドラジン、ジボラン及びホスフィンをガスの形で反応容器に導入し、炭素マトリックス上に気相堆積を行う。ヘキサメチルジシランのガス流速は、2L/minであり、プロパン、ヒドラジン、ジボラン及びホスフィンのガス流速はいずれも0.5L/minであり、堆積温度は900℃であり、堆積時間は5時間である。
(3)液相被覆により堆積後の生成物に炭素被覆を施し、リチウムイオン二次電池用多層複合材料を得る。
【0043】
[実施例8]
本実施例は、リチウムイオン二次電池用多層複合材料の調製方法を提供し、以下のステップを含む。
(1)炭素マトリックスが充填された反応容器である管状炉内に、シラン堆積用の保護ガスとして、アルゴンガスを2L/minの流速で導入する。
(2)モノシラン、ジシラン、C、N、B及びP元素を含む化合物であるエタノール、窒素ガス、ホウ酸トリメチル及びオキシ塩化リンをガスの形で反応容器に導入し、炭素マトリックス上に気相堆積を行う。モノシラン、ジシランのガス流速は、いずれも1.2L/minであり、エタノール、窒素ガス、ホウ酸トリメチル及びオキシ塩化リンガス状化合物のガス流速は0.6L/minであり、堆積温度は1000℃であり、堆積時間は4時間である。
(3)固相被覆により堆積後の生成物に炭素被覆を施し、リチウムイオン二次電池用多層複合材料を得る。
【0044】
[実施例9]
本実施例は、リチウムイオン二次電池用多層複合材料の調製方法を提供し、以下のステップを含む。
(1)炭素マトリックスが充填された反応容器であるベル型炉内に、シラン堆積用の保護ガスとして、窒素ガスを2L/minの流速で導入する。
(2)モノシラン、ジシラン、テトラフルオロシラン、C、N、B及びP元素を含む化合物であるアセチレン、メタン、窒素ガス、アンモニア、ジボラン、ホウ酸トリメチル、ホスフィン及びオキシ塩化リンをガスの形で反応容器に導入し、炭素マトリックス上に気相堆積を行う。モノシラン、ジシラン、テトラフルオロシランのガス流速は、1.3L/minであり、アセチレン、メタン、窒素ガス、アンモニア、ジボラン、ホウ酸トリメチル、ホスフィン及びオキシ塩化リンガス状化合物のガス流速はいずれも0.5L/minであり、堆積温度は1100℃であり、堆積時間は2.5時間である。
(3)気相被覆により堆積後の生成物に炭素被覆を施し、リチウムイオン二次電池用多層複合材料を得る。
【0045】
[実施例10]
本実施例は、リチウムイオン二次電池用多層複合材料の調製方法を提供し、以下のステップを含む。
(1)炭素マトリックスが充填された反応容器である流動床内に、シラン堆積用の保護ガスとして、アルゴンガスを2L/minの流速で導入する。
(2)モノシラン、ジシラン、ヘキサメチルジシラン、C、N、B及びP元素を含む化合物であるメタン、プロピレン、アンモニア、尿素、ホウ酸トリメチル、硼酸、ホスフィン及びオキシ塩化リンをガスの形で反応容器に導入し、炭素マトリックス上に気相堆積を行う。モノシラン、ジシラン、テトラフルオロシランのガス流速は、1.7L/minであり、メタン、プロピレン、アンモニア、尿素、ホウ酸トリメチル、硼酸、ホスフィン及びオキシ塩化リンガス状化合物のガス流速はいずれも0.6L/minであり、堆積温度は1200℃であり、堆積時間は2時間である。
(3)液相被覆により堆積後の生成物に炭素被覆を施し、リチウムイオン二次電池用多層複合材料を得る。
【0046】
[実施例11]
本実施例は、リチウムイオン二次電池用多層複合材料の調製方法を提供し、以下のステップを含む。
(1)炭素マトリックスが充填された反応容器である回転炉内に、シラン堆積用の保護ガスとして、窒素ガスを2L/minの流速で導入する。
(2)モノシラン,ジシラン、ジメチルシロキサン、C、N、B及びP元素を含む化合物であるエチレン、プロパン、尿素、メラミン、ホウ酸トリプロピル、三臭化ホウ素、ホスフィン及びオキシ塩化リンをガスの形で反応容器に導入し、炭素マトリックス上に気相堆積を行う。モノシラン,ジシラン、ジメチルシロキサンのガス流速は、いずれも2.7L/minであり、エチレン、プロパン、尿素、メラミン、ホウ酸トリプロピル、三臭化ホウ素、ホスフィン及びオキシ塩化リンガス状化合物のガス流速はいずれも1L/minであり、堆積温度は1400℃であり、堆積時間は1.25時間である。
(3)固相被覆により堆積後の生成物に炭素被覆を施し、リチウムイオン二次電池用多層複合材料を得る。
【0047】
[実施例12]
本実施例は、リチウムイオン二次電池用多層複合材料の調製方法を提供し、以下のステップを含む。
(1)炭素マトリックスが充填された反応容器である管状炉内に、シラン堆積用の保護ガスとして、アルゴンガスを2L/minの流速で導入する。
(2)モノシラン、ジシラン、テトラフルオロシラン、ヘキサメチルジシラン、C、N、B及びP元素を含む化合物であるアセチレン、プロパン、アンモニア、ヒドラジン、ホウ酸トリプロピル、三臭化ホウ素、ホスフィン及びオキシ塩化リンをガスの形で反応容器に導入し、炭素マトリックス上に気相堆積を行う。モノシラン、ジシラン、テトラフルオロシラン、ヘキサメチルジシランのガス流速は、いずれも2.5L/minであり、アセチレン、プロパン、アンモニア、ヒドラジン、ホウ酸トリプロピル、三臭化ホウ素、ホスフィン及びオキシ塩化リンガス状化合物のガス流速はいずれも1L/minであり、堆積温度は1500℃であり、堆積時間は1時間である。
(3)気相被覆により堆積後の生成物に炭素被覆を施し、リチウムイオン二次電池用多層複合材料を得る。
【0048】
[比較例1]
この比較例は、従来技術に基づくシリコン-炭素複合材料の調製方法を提供し、以下のステップを含む。
(1)エタノール系に、シリコン粒子、炭素源の前駆体であるポリビニルピロリドン、黒鉛、及び抗酸化剤であるクエン酸を加え、1:1:1:0.1の質量比ですりつぶして分散液を得る。
(2)当該分散液を噴霧乾燥してシリコン・炭素粉末を得る。
(3)さらに当該粉末に気相被覆を施して、最終的にシリコン-炭素複合材料を得る。
【0049】
上記の各実施例及び比較例で得られた複合材料と市販の黒鉛とを比例して450mAh/gの複合材料として複合し、コバルト酸リチウムとともにボタン形全固体電池として組み立てられ、1Cレートでサイクルさせてそのサイクル特性を評価した。データを表1に示す。
【0050】
【0051】
表1の結果から分かるように、比較例では、機械的に混合することにより調製されたシリコン-炭素複合材料について、初回サイクルのクーロン効率は高いが、サイクル特性が悪く、本発明の多層複合材料は、より良好なサイクル特性を有する。
【0052】
本発明は、堆積の時間と温度及びガス流速を調整することにより、材料の初回サイクルのクーロン効率及びサイクル特性をさらに向上させることができる。ガス流速及び温度が高すぎると、シランの分解が速すぎて、炭素マトリックスの表面に直接堆積し、堆積したシリコンとC、N、B、及びP元素との複合も不均一で、電池の性能に影響を与える。温度が低すぎると、シランの分解が不完全になり、C、N、B及びP元素とうまく複合できなくなり、サイクル特性に影響を与える。
【0053】
本発明の実施例によるリチウムイオン二次電池用多層複合材料は、炭素マトリックス、ナノシリコン系複合材料及びカーボンシェルの三層構造と複合材料との間の相互作用により、この材料に体膨脹が小さく、サイクル特性とレート特性がより優れるという特長を持たせる。特に、シランと、C、N、B、P元素のいずれかを含むガス状化合物のうちの1種以上を気相成長法で調製することによりなされたナノシリコン系複合材料は、炭素原子が原子スケールで均一に埋め込まれ、炭素原子とシリコン原子が結合して非晶質のSi-C結合を形成することで、リチウム挿入・脱離過程で、材料の構造をより安定させ、体膨脹が小さくなり、リチウム電池の負極に使用される場合、より良いサイクル特性を有する。窒素原子とシリコン原子が結合して非晶質のSi-N結合を形成することで、リチウムイオンの挿入と脱離に有利であり、リチウムイオン電池のレート特性が向上する。ホウ素ドーピング及び/又はリンドーピングにより、ナノシリコン系複合材料内のシリコン結晶に欠陥を形成させ、充電中の体膨張を緩和し、電池のサイクル特性が向上する。
【0054】
上述の具体的な実施形態では、本発明の目的、技術案及び有益な効果をさらに詳細に説明し、以上は本発明の具体的な実施形態にすぎず、本発明の保護範囲を制限するためのものではなく、本発明の精神及び原則内でなされたいかなる修正、均等な置換、改良などは、本発明の保護範囲に含まれるものとする。
【0055】
(付記)
(付記1)
リチウムイオン二次電池用多層複合材料であって、
前記多層複合材料は、炭素マトリックスと、ナノシリコン系複合材料と、カーボンシェルとを含み、
前記炭素マトリックスは、ナノシリコン系複合材料を堆積させるためのマトリックス材料であり、
前記ナノシリコン系複合材料は、シランと、C、N、B、P元素のいずれかを含むガス状化合物のうちの1種以上とを気相成長法で調製することによりなされ、前記ナノシリコン系複合材料の粒子サイズは0.1~200nmであり、前記ナノシリコン系複合材料内の炭素原子が原子スケールで均一に埋め込まれ、炭素原子とシリコン原子が結合して非晶質のSi-C結合を形成し、窒素原子とシリコン原子が結合して非晶質のSi-N結合を形成し、ホウ素ドーピング及び/又はリンドーピングにより、前記ナノシリコン系複合材料内のシリコン結晶に欠陥を生じさせ、
前記カーボンシェルは、ナノシリコン系複合材料が堆積された炭素マトリックスの外層に被覆される、
ことを特徴とするリチウムイオン二次電池用多層複合材料。
【0056】
(付記2)
前記カーボンシェルは、気相被覆、液相被覆又は固相被覆により調製される、
ことを特徴とする付記1に記載のリチウムイオン二次電池用多層複合材料。
【0057】
(付記3)
前記多層複合材料がC元素を含む場合、前記多層複合材料の固体核磁気共鳴のNMRスペクトルでは、ケイ素のピークが-70ppm~-130ppmにある場合、20ppm~-20ppmの間にSi-Cの共鳴ピークが存在することが示され、Si-Cの共鳴ピークとケイ素のピークの面積比は0.1~5.0である、
ことを特徴とする付記1に記載のリチウムイオン二次電池用多層複合材料。
【0058】
(付記4)
前記多層複合材料において、前記ナノシリコン系複合材料の質量は、全体の質量の20%~80%を占め、シリコンと複合する前記C、N、B、P元素のいずれかの質量は前記ナノシリコン系複合材料の質量の0.1%~50%を占め、
前記炭素マトリックスの質量は、全体の質量の20%~70%を占め、
前記カーボンシェルの質量は、全体の質量の0~10%を占める、
ことを特徴とする付記1に記載のリチウムイオン二次電池用多層複合材料。
【0059】
(付記5)
付記1~4のいずれか一つに記載のリチウムイオン二次電池用多層複合材料の調製方法であって、
炭素マトリックスが充填された反応容器に、窒素ガス、アルゴンガス、水素ガス又はこれらの任意の混合ガスである保護ガスを1~2L/minの流速で導入することと、
シランと、C、N、B、P元素のいずれかを含むガス状化合物のうちの1種以上を反応容器に導入し、前記炭素マトリックス上に気相堆積を行うことと、
気相被覆、液相被覆、固相被覆のうち少なくとも1つにより、前記堆積後の生成物に炭素被覆を施して、前記リチウムイオン二次電池用多層複合材料を得ることと、
を含み、
ここで、シランのガス流速は0.5~10L/minであり、前記ガス状化合物のガス流速は0.5~10L/min、前記堆積の温度は500~1500℃であり、堆積の時間は1~20時間である、
ことを特徴とする調製方法。
【0060】
(付記6)
前記反応容器は、バッチリアクター又は連続型反応装置を含み、具体的に回転炉、管状炉、ベル型炉又は流動床のいずれかを含む、
ことを特徴とする付記5に記載の調製方法。
【0061】
(付記7)
前記シランは、モノシラン、ジシラン、テトラフルオロシラン、クロロシラン、ヘキサメチルジシラン、ジメチルシロキサンのうちの1種以上を含む、
ことを特徴とする付記5に記載の調製方法。
【0062】
(付記8)
C元素を含むガス状化合物は、アセチレン、メタン、プロピレン、エチレン、プロパン及びガス状エタノールのうちの1種以上を含み、
N元素を含むガス状化合物は、窒素、アンモニア、尿素、メラミン及びヒドラジンのうちの1種以上を含み、
B元素を含むガス状化合物は、ジボラン、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリプロピル及び三臭化ホウ素のうちの1種以上を含み、
P元素を含むガス状化合物は、ホスフィン及び/又はオキシ塩化リンを含む、
ことを特徴とする付記5に記載の調製方法。
【0063】
(付記9)
付記1~5のいずれか一つに記載のリチウムイオン二次電池用多層複合材料を含む、
ことを特徴とする負極材料。
【0064】
(付記10)
付記1~5のいずれか一つに記載のリチウムイオン二次電池用多層複合材料を含む、
ことを特徴とするリチウムイオン電池。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン二次電池用多層複合材料であって、
前記多層複合材料は、炭素マトリックスと、ナノシリコン系複合材料と、カーボンシェルとを含み、
前記炭素マトリックスは、ナノシリコン系複合材料を堆積させるためのマトリックス材料であり、
前記ナノシリコン系複合材料は、シランと、C、N、B、P元素のいずれかを含むガス状化合物のうちの1種以上とを気相成長法で調製することによりなされ、前記ナノシリコン系複合材料の粒子サイズは0.1~200nmであり、前記ナノシリコン系複合材料内の炭素原子が原子スケールで均一に埋め込まれ、炭素原子とシリコン原子が結合して非晶質のSi-C結合を形成し、窒素原子とシリコン原子が結合して非晶質のSi-N結合を形成し、ホウ素ドーピング及び/又はリンドーピングにより、前記ナノシリコン系複合材料内のシリコン結晶に欠陥を生じさせ、
前記カーボンシェルは、ナノシリコン系複合材料が堆積された炭素マトリックスの外層に被覆される、
ことを特徴とするリチウムイオン二次電池用多層複合材料。
【請求項2】
前記カーボンシェルは、気相被覆、液相被覆又は固相被覆により調製される、
ことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用多層複合材料。
【請求項3】
前記多層複合材料がC元素を含む場合、前記多層複合材料の固体核磁気共鳴のNMRスペクトルでは、ケイ素のピークが-70ppm~-130ppmにある場合、20ppm~-20ppmの間にSi-Cの共鳴ピークが存在することが示され、Si-Cの共鳴ピークとケイ素のピークの面積比は0.1~5.0である、
ことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用多層複合材料。
【請求項4】
前記多層複合材料において、前記ナノシリコン系複合材料の質量は、全体の質量の20%~80%を占め、シリコンと複合する前記C、N、B、P元素のいずれかの質量は前記ナノシリコン系複合材料の質量の0.1%~50%を占め、
前記炭素マトリックスの質量は、全体の質量の20%~70%を占め、
前記カーボンシェルの質量は、全体の質量の0~10%を占める、
ことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用多層複合材料。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用多層複合材料の調製方法であって、
炭素マトリックスが充填された反応容器に、窒素ガス、アルゴンガス、水素ガス又はこれらの任意の混合ガスである保護ガスを1~2L/minの流速で導入することと、
シランと、C、N、B、P元素のいずれかを含むガス状化合物のうちの1種以上を反応容器に導入し、前記炭素マトリックス上に気相堆積を行うことと、
気相被覆、液相被覆、固相被覆のうち少なくとも1つにより、前記堆積後の生成物に炭素被覆を施して、前記リチウムイオン二次電池用多層複合材料を得ることと、
を含み、
ここで、シランのガス流速は0.5~10L/minであり、前記ガス状化合物のガス流速は0.5~10L/min、前記堆積の温度は500~1500℃であり、堆積の時間は1~20時間である、
ことを特徴とする調製方法。
【請求項6】
前記反応容器は、バッチリアクター又は連続型反応装置を含み、具体的に回転炉、管状炉、ベル型炉又は流動床のいずれかを含む、
ことを特徴とする請求項5に記載の調製方法。
【請求項7】
前記シランは、モノシラン、ジシラン、テトラフルオロシラン、クロロシラン、ヘキサメチルジシラン、ジメチルシロキサンのうちの1種以上を含む、
ことを特徴とする請求項5に記載の調製方法。
【請求項8】
C元素を含むガス状化合物は、アセチレン、メタン、プロピレン、エチレン、プロパン及びガス状エタノールのうちの1種以上を含み、
N元素を含むガス状化合物は、窒素、アンモニア、尿素、メラミン及びヒドラジンのうちの1種以上を含み、
B元素を含むガス状化合物は、ジボラン、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリプロピル及び三臭化ホウ素のうちの1種以上を含み、
P元素を含むガス状化合物は、ホスフィン及び/又はオキシ塩化リンを含む、
ことを特徴とする請求項5に記載の調製方法。
【請求項9】
請求項1~
4のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用多層複合材料を含む、
ことを特徴とする負極材料。
【請求項10】
請求項1~
4のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用多層複合材料を含む、
ことを特徴とするリチウムイオン電池。
【国際調査報告】