(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】経皮吸収率に優れたヒアルロン酸フィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61L 15/28 20060101AFI20241031BHJP
A61L 15/12 20060101ALI20241031BHJP
A61L 15/22 20060101ALI20241031BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20241031BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20241031BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241031BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20241031BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20241031BHJP
A61M 35/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
A61L15/28
A61L15/12
A61L15/22
A61K8/02
A61K8/73
A61Q19/00
A61Q19/08
A23L5/00 B
A61M35/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531620
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(85)【翻訳文提出日】2024-05-28
(86)【国際出願番号】 KR2022016646
(87)【国際公開番号】W WO2023101225
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0170203
(32)【優先日】2021-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521086154
【氏名又は名称】ジンウ バイオ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】JINWOO BIO CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】636, Giheung TeraTower, 11, Seocheon-ro 201beon-gil, Giheung-gu, Yongin-si, Gyeonggi-do, 17111, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ヒ ジュ
(72)【発明者】
【氏名】クォン,ドン コン
(72)【発明者】
【氏名】ホン,ジュ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】クォン,シン ファン
【テーマコード(参考)】
4B035
4C081
4C083
4C267
【Fターム(参考)】
4B035LC16
4B035LE12
4B035LG05
4B035LG20
4B035LP24
4B035LP31
4C081AA03
4C081AA06
4C081BA12
4C081BA13
4C081BA14
4C081BB06
4C081CD081
4C081CD082
4C081DA02
4C081EA02
4C081EA03
4C083AD331
4C083AD332
4C083BB44
4C083CC02
4C083DD12
4C083EE03
4C083EE11
4C083EE50
4C083FF04
4C083FF06
4C267AA72
4C267BB02
4C267BB03
4C267BB04
4C267BB06
4C267BB13
4C267BB24
4C267CC01
4C267GG16
4C267HH08
(57)【要約】
本発明は、ヒアルロン酸フィルム及びその製造方法に係り、さらに詳細には、経皮吸収率に優れたヒアルロン酸フィルム及びその製造方法に関する。本発明のヒアルロン酸フィルムは、経皮吸収率が72~93%であることを特徴とする。本発明のヒアルロン酸フィルは、主成分が超低分子量のヒアルロン酸からなっており、経皮吸収率に優れるうえ、機械的物性にも優れるため、化粧品用パック、可食性フィルム及び医療機器用パッチ、健康機能性食品などの多様な用途に適用可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経皮吸収率が72~93%である、ヒアルロン酸フィルム。
【請求項2】
前記ヒアルロン酸が、分子量2,000~1×10
4Daのヒアルロン酸84~98.5重量%、及び分子量1×10
5~1×10
6Daのヒアルロン酸1.5~16重量%から構成されることを特徴とする、請求項1に記載のヒアルロン酸フィルム。
【請求項3】
前記ヒアルロン酸フィルムの厚さが0.01~1.5mmであることを特徴とする、請求項1に記載のヒアルロン酸フィルム。
【請求項4】
前記ヒアルロン酸がヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩又はこれらの混合物である、請求項1~3のいずれか一項に記載のヒアルロン酸フィルム。
【請求項5】
(a)分子量2,000~1×10
4Daのヒアルロン酸と、分子量1×10
5~1×10
6Daのヒアルロン酸とを混合し、溶媒に溶解させてヒアルロン酸溶液を製造するステップと、
(b)ヒアルロン酸溶液を濾過するステップと、
(c)濾過されたヒアルロン酸溶液を自動塗布機又は型枠に注入し、0.02~3mmの厚さにフィルムをキャストするステップと、
(d)キャストフィルムを30~60℃の条件で乾燥させるステップと、を含む、ヒアルロン酸フィルムの製造方法。
【請求項6】
分子量2,000~1×10
4Daのヒアルロン酸と分子量1×10
5~1×10
6Daのヒアルロン酸との重量比が84.0~98.5重量%:1.5~16重量%であることを特徴とする、請求項5に記載のヒアルロン酸フィルムの製造方法。
【請求項7】
ヒアルロン酸溶液の粘度が2,000~25,000cPsであることを特徴とする、請求項5に記載のヒアルロン酸フィルムの製造方法。
【請求項8】
ヒアルロン酸溶液のpHが2.5~3.5であることを特徴とする、請求項5に記載のヒアルロン酸フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記ヒアルロン酸がヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩又はこれらの混合物である、請求項5~8のいずれか一項に記載のヒアルロン酸フィルムの製造方法。
【請求項10】
請求項1に記載のヒアルロン酸フィルムを含む化粧品用マスクパック。
【請求項11】
請求項1に記載のヒアルロン酸フィルムを含む可食性フィルム。
【請求項12】
請求項1に記載のヒアルロン酸フィルムを含む医療機器用パッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒアルロン酸フィルム及びその製造方法に係り、さらに詳細には、経皮吸収率に優れたヒアルロン酸フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒアルロン酸又はヒアルロン酸塩は、人体の結合組織、上皮及び神経組織などに均一に分布しており、多様な生理活性を有する生体適合性材料として水分を多量含有することができ、優れた粘弾性を持っているため、皮膚再生、保湿、弾力維持及びしわ改善に対する効果が立証されることにより、最近、これを含有する抗老化関連化粧品、食品、医薬品、医療機器用フィラーなどに対する需要が急激に増加している。
【0003】
現在市販されているヒアルロン酸塩完成品は、ほとんど液状の形態で過量の水を含有しており、微生物汚染の懸念により製品化時に無菌設備で製造するか、或いは安全性の面で懸念となる防腐剤を必ず使用しなければならないため、汎用性と安全性の観点で産業的用途への拡大が難しいという問題点がある。
【0004】
したがって、ヒアルロン酸又はヒアルロン酸塩を、液相ではなく、フィルムやファイバーなどに固化させようとする研究があった。
【0005】
ヒアルロン酸又はヒアルロン酸塩は、分子量によって超低分子、低分子、中分子、高分子に分けられる。
【0006】
特開2014-114355号公報は、平均分子量1×105~4×106Daの中分子ヒアルロン酸を用いたヒアルロン酸フィルムを開示しており、また、韓国公開特許第2019-0106091号も、分子量0.1~2.5MDaの中分子及び高分子ヒアルロン酸塩フィルムを開示している。
【0007】
中分子及び高分子ヒアルロン酸塩は、皮膚コーティング効果及び機械的物性に優れるため、フィルム製造が容易であるが、皮膚透過及び吸収に困難がある。
【0008】
これに対し、ヒアルロン酸又はヒアルロン酸塩は、分子量が低いほど皮膚透過及び吸収に容易であるものの、機械的物性が低いため、フィルム製造が難しいという問題点がある。
【0009】
一方、韓国公開特許第2019-0138907号は、分子量500~5,000,000Daのヒアルロン酸フィルムを製造することができると開示しているが、実施例では、分子量を特定していない。実際、分子量2,000Da以下の場合には、フィルムが製造されず、分子量2,000~1×104Daの場合には、フィルムが形成されるが、表面が割れて商品性が低下し、分子量3.0×104Da超過の場合には、表面が均一なフィルムが形成されるということを確認することができた。しかし、分子量3.0×104Da以上のヒアルロン酸フィルムは、経皮吸収率が低いという問題点があった。
【0010】
そこで、本発明者らは、皮膚透過及び吸収に容易なヒアルロン酸フィルムを製造するために努力した結果、2,000~1×104Daの超低分子ヒアルロン酸に1×105~1×106Daの中分子ヒアルロン酸塩を添加する場合、経皮吸収率に優れたヒアルロン酸フィルムを均一に量産することができることを確認し、本発明の完成に至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、経皮吸収率に優れたヒアルロン酸フィルムを提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、経皮吸収率に優れたヒアルロン酸フィルムの製造方法を提供することにある。
【0013】
本発明の別の目的は、経皮吸収率に優れたヒアルロン酸フィルムを含むマスクパック、可食性フィルム及び医療機器用パッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、本発明は、経皮吸収率が72~93%であるヒアルロン酸フィルムを提供する。
【0015】
本発明において、前記ヒアルロン酸は、分子量2,000~1×104Daのヒアルロン酸84.0~98.5重量%、及び分子量1×105~1×106Daのヒアルロン酸1.5~16重量%から構成されることを特徴とする。
【0016】
本発明において、前記ヒアルロン酸フィルムの厚さは0.01~1.5mmであることを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、(a)分子量2,000~1×104Daのヒアルロン酸と分子量1×105~1×106Daのヒアルロン酸とを混合し、溶媒に溶解させてヒアルロン酸溶液を製造するステップと、(b)ヒアルロン酸溶液を濾過するステップと、(c)濾過されたヒアルロン酸溶液を自動塗布機又は型枠に注入し、0.02~3mmの厚さにフィルムをキャストするステップと、(d)キャストされたフィルムを30~60℃の条件で乾燥させるステップと、を含む、ヒアルロン酸フィルムの製造方法を提供する。
【0018】
本発明において、前記分子量2,000~1×104Daのヒアルロン酸と分子量1×105~1×106Daのヒアルロン酸との重量比は、84.0~98.5重量%:1.5~16重量%であることを特徴とする。
【0019】
本発明において、ヒアルロン酸溶液の粘度は2,000~25,000cPsであることを特徴とする。
【0020】
本発明において、ヒアルロン酸溶液のpHは2.5~3.5であることを特徴とする。
【0021】
本発明において、前記ヒアルロン酸はヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩またその混合物であることを特徴とする。
【0022】
また、本発明は、前記ヒアルロン酸フィルムを含む化粧品用マスクパック、可食性フィルム及び医療機器用パッチを提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明のヒアルロン酸フィルムは、主成分が超低分子量のヒアルロン酸からなっており、経皮吸収率に優れるうえ、機械的物性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】超低分子ヒアルロン酸フィルムの写真である。
【
図2】本発明の一実施例によって製造された超低分子(8,000Da)ヒアルロン酸と、中分子(1×10
5~1×10
6Da)ヒアルロン酸とが混合されたヒアルロン酸フィルムである。
【
図3】本発明の一実施例によって製造されたヒアルロン酸フィルムの微生物安定性評価に関する写真である。
【
図4】ヒアルロン酸溶液を濾過せずに製造したヒアルロン酸フィルムの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
ヒアルロン酸又はヒアルロン酸塩は、分子量が低いほど皮膚透過及び吸収に容易であるものの、機械的物性が低いため、フィルム製造が難しいという問題点がある。
【0026】
韓国公開特許第2019-0138907号は、分子量500~5,000,000Daのヒアルロン酸フィルムを製造することができると開示しているが、明細書に記載されている方法で行った結果、分子量2,000Da以下の場合には、フィルムが製造されず、分子量2,000~10,000Daの場合には、フィルムが形成されるが、表面が割れて商品性が低下し、分子量3×104Da以上の場合には、表面が均一なフィルムが形成されることを確認することができた。しかし、分子量3×104Da以上のヒアルロン酸フィルムは、経皮吸収率が低いため、ヒアルロン酸の様々な生理活性がきちんと皮膚に伝達されないという問題点がある。
【0027】
本発明では、2,000~1×104Daの超低分子ヒアルロン酸に1×105~1×106Daの中分子ヒアルロン酸塩を添加する場合、経皮吸収率に優れたヒアルロン酸フィルムを均一に量産することができることを確認しようとした。
【0028】
本発明では、超低分子ヒアルロン酸と中分子ヒアルロン酸とを混合した後、精製水で溶解させて粘度2,000~25,000cPs(25℃)のヒアルロン酸溶液を製造し、自動塗布機又は型枠に注入した後、30~60℃の条件で乾燥させた。
【0029】
その結果、表面が均一なヒアルロン酸フィルムを大量に製造することができ、製造されたヒアルロン酸フィルムの経皮吸収率は72~93%であることを確認することができた。
【0030】
したがって、本発明は、一観点から、経皮吸収率72~93%のヒアルロン酸フィルムに関する。
【0031】
前記ヒアルロン酸フィルムを構成するヒアルロン酸は、分子量2,000~1×104Daのヒアルロン酸84.0~98.5重量%、及び分子量1×105~1×106Daのヒアルロン酸1.5~16重量%から構成されることを特徴とする。
【0032】
すなわち、本発明のヒアルロン酸フィルムは、分子量が超低分子に該当するヒアルロン酸のみではフィルムが形成されないため、フィルムの骨格を成すことができるよう、中分子に該当するヒアルロン酸を一緒に使用することを特徴とする。
【0033】
本発明において、超低分子に該当するヒアルロン酸の分子量は、2,000~1×104Daであり、低分子に該当するヒアルロン酸の分子量は、1×104~1×105Daであり、中分子に該当するヒアルロン酸の分子量は、1×105~1×106Daである。
【0034】
分子量2,000~1×104Daのヒアルロン酸の含有量が84.0重量%未満である場合には、フィルムが形成されるが、経皮吸収率が低くなり、ヒアルロン酸の含有量が98.5重量%を超える場合には、フィルムが形成されない。
【0035】
本発明のヒアルロン酸フィルムは、厚さが0.01~1.5mmであることを特徴とする。
【0036】
本発明において、ヒアルロン酸は、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩又はこれらの混合物であり得る。また、前記ヒアルロン酸塩は、ヒアルロン酸に塩が結合しているものであって、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸カルシウム、ヒアルロン酸カリウムなどを例示することができるが、これに限定されるものではない。
【0037】
本発明は、他の観点から、(a)分子量2,000~1×104Daのヒアルロン酸と分子量1×105~1×106Daのヒアルロン酸とを混合し、溶媒に溶解させてヒアルロン酸溶液を製造するステップと、(b)ヒアルロン酸溶液を濾過するステップと、(c)濾過されたヒアルロン酸溶液を自動塗布機又は型枠に注入し、0.02~3mmの厚さにフィルムをキャストするステップと、(d)キャストされたフィルムを30~60℃の条件で乾燥させるステップと、を含む、ヒアルロン酸フィルムの製造方法に関する。
【0038】
分子量2,000~1×104Daのヒアルロン酸と分子量1×105~1×106Daのヒアルロン酸との重量比は、84.0~98.5重量%:1.5~16重量%であることが好ましい。
【0039】
本発明において、超低分子量及び中分子量のヒアルロン酸が混合されたヒアルロン酸溶液の粘度は、2,000~25,000cPs(25℃)であることが好ましい。前記溶液の粘度は、HA分子量(Da)、HA含有量、溶媒との比率に応じて変わり得るが、粘度が2,000cPs未満の場合には、フィルム形成の困難があり、粘度が25,000cPsを超える場合には、高粘性で0.02mm~3mmの厚さにキャストされるときにフィルムの表面が不規則になるおそれがある。
【0040】
混合されたヒアルロン酸溶液を自動アプリケータ又は型枠に注入する前に、溶液の気泡及び不溶物を除去するために濾過させることが好ましい。前記濾過は、篩(網目の大きさ:0.1mm)に掛ける方式で行うことができる。
【0041】
濾過ステップを行わなければ、フィルム乾燥の際に気泡又は不溶物の周囲に亀裂が発生して不良フィルムが生成される。
【0042】
本発明において、溶媒は、ヒアルロン酸又はヒアルロン酸塩を溶解させるためのものであって、精製水又はエタノール水溶液を使用することができ、エタノール水溶液は、エタノール含有量が0.01~10体積%であることが好ましい。
【0043】
一般的に、ヒアルロン酸塩のpHは5.0~7.0であって、ヒアルロン酸溶液は、微生物汚染に脆弱であるため、これを防止するために、エタノールなどの抗菌剤を追加しなければならないが、pH2.5~3.5のヒアルロン酸を使用する場合には、微生物汚染防止効果に優れる。
【0044】
濾過されたヒアルロン酸溶液は、自動塗布機又は型枠に注入し、0.02~3mmの厚さにフィルムをキャストした後、キャストされたフィルムを30~60℃の条件で乾燥させて0.01mm~1.5mmのヒアルロン酸フィルムを製造することができる。
【0045】
キャスティング厚さが0.02mm未満である場合には、フィルム形成が難しく、キャスティング厚さが3mm超過である場合には、溶液の流動性によりキャスティング厚さが維持されないため、最終的に0.01mm~1.5mmのヒアルロン酸フィルムを製造することができる。
【0046】
キャストされたフィルムの乾燥は、30~60℃の条件で6~24時間行うことが好ましい。前記乾燥は、30~60℃で行われる限り、特に制限なく様々な乾燥方法で行われることができる。
【0047】
本発明は、別の観点から、前記ヒアルロン酸フィルムを含む化粧品用マスクパック、可食性フィルム及び医療機器用パッチなどに関する。
【実施例】
【0048】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例は、本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれらの実施例によって限定されると解釈されないのは、当技術分野における通常の知識を有する者にとって明らかであろう。
【0049】
実施例1:従来技術によるヒアルロン酸フィルムの製造
韓国公開特許第2019-0138907号に記載の方法でヒアルロン酸フィルムを製造した。すなわち、支持体としてガラスを用いて60℃に2時間加熱した。そして、ヒアルロン酸溶液の全重量に対して17重量%のヒアルロン酸を蒸留水に溶解させてヒアルロン酸溶液を製造した。前記加熱された支持体(ガラス)に、前記溶解したヒアルロン酸溶液を500μmにコーティングし、60℃で2時間乾燥させ、剥離して厚さ80μmのヒアルロン酸フィルムを製造した。このとき、使用したヒアルロン酸の分子量は500Da、2,000Da、1×105Daであった。
【0050】
その結果、ヒアルロン酸の分子量が500Daである場合には、フィルムが形成されず、ヒアルロン酸の分子量が2,000Daである場合には、フィルムが形成されるが、フィルムが滑らかではなく、ヒアルロン酸の分子量が1×105Daである場合には、表面が滑らかなフィルムが形成されることを確認することができた。
【0051】
実施例2:ヒアルロン酸フィルムの製造
実施例2-1~2-6:超低分子ヒアルロン酸フィルムの製造
分子量500~1×105Daの超低分子ヒアルロン酸塩(10~50体積%)を0.01~10体積%のエタノール水溶液に溶解させてヒアルロン酸塩溶液(100~20,000cPs)を製造し、自動塗布機のアプリケータを調節して厚さ0.02~3mmのフィルムをキャストした後、熱風乾燥機を用いて40℃で20分~24時間乾燥させ、厚さ0.01~1.5mmのヒアルロン酸塩フィルムを製造した。
【0052】
【0053】
その結果、実施例1の従来技術で製造した結果と同様に、分子量500Daの場合には、フィルムが形成されず、分子量2,000Da、8,000Da、10,000Daの場合には、フィルムが形成されるものの、フィルムが容易に割れて壊され、分子量3×104Da以上の場合には、表面が滑らかなフィルムが形成されることを確認することができた。
【0054】
実施例2-7~2-23:超低分子及び中分子を用いたヒアルロン酸フィルムの製造
下記表2に示すように、1×105~1×106Daの中分子ヒアルロン酸塩(pH6.0~7.0)と、分子量2,000~1万Daの超低分子ヒアルロン酸塩(pH6.0~7.0)とを混合した後、精製水に溶解させて粘度2,000~25,000cPsのヒアルロン酸塩溶液を製造した。製造された溶液を篩(網目の大きさ:0.1mm)に掛け、自動塗布機のアプリケータを調節して0.02~3mmの厚さにヒアルロン酸塩溶液をキャストした後、熱風乾燥機を用いて40℃で20分~24時間乾燥させて厚さ0.01~1.5mmのヒアルロン酸塩フィルムを製造した。
【0055】
【0056】
図1から、分子量2,000~1×10
4Daの超低分子ヒアルロン酸塩を単独で使用する場合、表面が割れて不均一な外形を有するため、フィルム形成が不可能であることを確認することができる。これに対し、超低分子ヒアルロン酸塩と中分子ヒアルロン酸塩とを特定の割合で混合する場合、表面が均一なフィルムの量産が可能であることを確認した(
図2参照)。
【0057】
前記表2から、ヒアルロン酸塩溶液の粘度が2,000cPs未満である場合、フィルムの形成が難しく、25,000cPs以上のヒアルロン酸塩溶液は、高粘性を有するため、厚さ0.02~3mmの自動塗布機アプリケータでキャストが不可能であることを確認した。
【0058】
また、キャスティング厚さを3.5mmに設定してキャストする場合には、ヒアルロン酸塩溶液の厚さが維持されずに広がり、キャストが不可能であることを確認した(2-21参照)。
【0059】
実施例2-24~2-26:pHによるヒアルロン酸フィルムの製造
pH6.0~7.0のヒアルロン酸塩の代わりにpH2.5~3.5のヒアルロン酸を用いた以外は、実施例2-9、実施例2-11、実施例2-13と同様にヒアルロン酸フィルムを製造し、微生物に対する安定性を評価した。
【0060】
【0061】
製造されたヒアルロン酸及びヒアルロン酸塩フィルムをそれぞれ滅菌生理食塩水に1%の体積で溶解させ、3Mペトリフィルム(petrifilm)に1mLずつ塗布して37℃で24時間培養した後、微生物汚染有無を確認し、その結果を表4に示した。
【0062】
【0063】
表4から、pH6.0~7.0のヒアルロン酸塩を用いる場合には、フィルム製造過程で微生物に対する汚染が発生するおそれがあるが、pH2.5~3.5のヒアルロン酸を用いる場合には、微生物に対する汚染が発生しないことを分かった(
図3参照)。
【0064】
実施例2-27~2-29:濾過有無によるヒアルロン酸フィルムの製造
ヒアルロン酸塩溶液を濾過せずに、フィルムをキャストした以外は、実施例2-9、実施例2-11、実施例2-13と同様にヒアルロン酸塩フィルムを製造し、ヒアルロン酸フィルムの品質を確認した。
【0065】
【0066】
表5及び
図4から、キャストの前にヒアルロン酸溶液を篩(網目の大きさ:0.1mm)に掛けた場合には、気泡が発生せず、不純物のない良好なフィルムが形成されるが、ヒアルロン酸溶液を篩に掛けなかった場合には、フィルムに気泡が発生したか、或いは不純物が含まれていることが分かった。
【0067】
実施例3:経皮吸収率の評価
高分子ヒアルロン酸塩フィルムと実施例で製造された超低分子ヒアルロン酸塩フィルムとの経皮吸収率を比較した。高分子ヒアルロン酸塩フィルムは、分子量1.2MDaのヒアルロン酸塩を100重量%で使用した以外は、実施例2-9と同様にヒアルロン酸塩フィルムを製造し、経皮吸収率を測定した。
【0068】
「生体の皮膚吸収試験ガイドライン」に従い、フランツ型拡散セル(Franz diffusion cell、有効面積:0.64cm2、収容室の体積:5ml)装備(Logan Instruments、New Jersey、USA)を用いてシンク条件(sink condition)下で皮膚透過試験を行った。
【0069】
皮膚透過試験に使用された受容相は、pH7.4のリン酸緩衝食塩水(Phosphate buffered saline、PBS)を使用した。準備された人体皮膚の表皮層(1.5cm×1.5cm)を収容室(receptor chamber)上に角質層(stratum corneum)が上にくるようにして配置し、供与室(donor chamber)を覆ってクランプで固定した後、受容相をフランツ型拡散セルに充填し、32±1℃に維持させてヒアルロン酸フィルム溶解液100μlを一定に供与部位に塗布して透過実験を行った。透過実験実施後1時間、3時間、6時間、9時間、12時間、24時間経過したとき、受容相5mlを採取及び分析し、新しいリン酸緩衝食塩水で補充した。
【0070】
【0071】
表6から、1.2×106Daの高分子ヒアルロン酸塩を使用する場合、フィルムの経皮吸収率は33.12%であるが、超低分子及び中分子ヒアルロン酸を混合して製造したヒアルロン酸フィルムの経皮吸収率は71.50~93.63%であり、経皮吸収率がさらに優れることが分かった。特に、分子量が小さくなるほど経皮吸収率の増加率が大幅に上昇すること、及びヒアルロン酸塩フィルムの厚さが薄いほど経皮吸収率が増加することを確認した。
【0072】
以上で本発明の内容の特定部分を詳細に記述したが、当業分野における通常の知識を有する者にとって、このような具体的な技術は好適な実施例に過ぎず、これにより本発明の範囲が限定されないのは明白である。よって、本発明の実質的な範囲は、添付の特許請求の範囲とそれらの等価物によって定義されるというべきである。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明のヒアルロン酸フィルムは、主成分が超低分子量のヒアルロン酸からなっており、経皮吸収率に優れるうえ、機械的物性にも優れるため、化粧品用パック、医療機器用パッチ、健康機能性食品などの多様な用途に適用可能である。
【国際調査報告】