(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】耐食性及び環境安定性に優れた三元系溶融亜鉛めっき鋼板表面処理用組成物、これを用いて表面処理された三元系溶融亜鉛めっき鋼板及びこの製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 22/30 20060101AFI20241031BHJP
C23C 22/33 20060101ALI20241031BHJP
C23C 28/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C23C22/30
C23C22/33
C23C28/00 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531647
(86)(22)【出願日】2022-11-21
(85)【翻訳文提出日】2024-06-25
(86)【国際出願番号】 KR2022018406
(87)【国際公開番号】W WO2023101291
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0168850
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】513243815
【氏名又は名称】ノル コイル コーティングズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】チョ、 ス-ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ドン-ユン
(72)【発明者】
【氏名】チェ、 チャン-フン
【テーマコード(参考)】
4K026
4K044
【Fターム(参考)】
4K026AA07
4K026AA13
4K026AA22
4K026BA06
4K026BA08
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4K026CA39
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4K044BA10
4K044BA11
4K044BA14
4K044BA15
4K044BA21
4K044BB03
4K044BC02
4K044BC09
4K044CA11
4K044CA16
4K044CA53
(57)【要約】
本発明は、金属材料、特に建築材用途で使用される溶融亜鉛合金めっき鋼板の耐食性、環境安定性などを向上させるための表面処理用組成物、上記組成物を用いて表面処理された三元系溶融亜鉛めっき鋼板及びこの製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形分100重量%に対して、
(a)クロム化合物15~45重量%、
(b)防錆皮膜剤45~75重量%、
(c)防錆エッチング剤0.1~3.0重量%、
(d)耐食性添加剤0.1~5.0重量%、
(e)潤滑剤0.1~3.0重量%、及び
(f)消泡剤0.1~1.0重量%を含み、
前記クロム化合物は、硝酸クロム(A)及びクロム酸塩(B)溶液に(g)還元剤である亜燐酸を0.5~5.0重量%及び(h)触媒剤であるリン酸を0.1~2.0重量%含んで得るものである、三元系溶融亜鉛めっき鋼板表面処理用組成物。
【請求項2】
前記硝酸クロムとクロム酸塩の含量比(A/A+B)が0.3~0.6である、請求項1に記載の三元系溶融亜鉛めっき鋼板表面処理用組成物。
【請求項3】
前記クロム化合物の還元比(3価クロムイオン/(3価クロムイオン+6価クロムイオン))が0.75~0.90である、請求項1に記載の三元系溶融亜鉛めっき鋼板表面処理用組成物。
【請求項4】
前記防錆皮膜剤は、有機シランゾル-ゲルバインダーである、請求項1に記載の三元系溶融亜鉛めっき鋼板表面処理用組成物。
【請求項5】
前記防錆エッチング剤は、チタンフッ化水素酸、珪化フッ化水素酸及びジルコニウムフッ化水素酸からなる群から選択される一つ以上である、請求項1に記載の三元系溶融亜鉛めっき鋼板表面処理用組成物。
【請求項6】
前記耐食性添加剤は、リチウムシリカゾル、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、リチウム-カリウムシリケート及びリチウム-ソジウムシリケートからなる群から選択される一つ以上である、請求項1に記載の三元系溶融亜鉛めっき鋼板表面処理用組成物。
【請求項7】
前記潤滑剤は、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、カナウバワックス、パラフィンワックス、ポリアマイドワックス、PTFEワックス、親環境オイル(Oil)ワックス、EAAワックス及び合成EVAワックスからなる群から選択される一つ以上である、請求項1に記載の三元系溶融亜鉛めっき鋼板表面処理用組成物。
【請求項8】
前記組成物は、(i)溶剤をさらに含み、
固形分含量が5~20重量%であり、残部溶剤である、請求項1に記載の三元系溶融亜鉛めっき鋼板表面処理用組成物。
【請求項9】
前記組成物は、補助溶剤をさらに含み、
前記補助溶剤は、エチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、1-メトキシ-2-プロパノール及び2-ブトキシエタノールからなる群から選択される一つ以上を溶剤全体のうち20~40重量%含む、請求項8に記載の三元系溶融亜鉛めっき鋼板表面処理用組成物。
【請求項10】
鋼板と、
前記鋼板の少なくとも一面に形成されたZn-Mg-Al系めっき層と、
前記めっき層上に形成された表面処理コーティング層とを含み、
前記表面処理コーティング層は、請求項1乃至請求項9のいずれか一項の組成物で形成されたコーティング層である、表面処理された三元系溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項11】
前記Zn-Mg-Al系めっき層は、重量%でマグネシウム(Mg):4.0~7.0%、アルミニウム(Al):11.0~19.5%、残部Zn及びその他の不可避な不純物を含み、
下記関係式1を満たすことを特徴とする、請求項10に記載の表面処理された三元系溶融亜鉛めっき鋼板。
[関係式1]
0.26≦I(110)/I(103)≦0.65
(関係式1において、I(110)は、MgZn
2相に対する(110)面結晶ピークのX線回折積分強度を示し、前記I(103)は、MgZn
2相に対する(103)面結晶のX線回折積分強度を示す。)
【請求項12】
前記表面処理コーティング層は、0.3~1.5μmの厚さを有するものである、請求項10に記載の表面処理された三元系溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項13】
鋼板の少なくとも一面に溶融亜鉛めっき処理してZn-Mg-Al系めっき層を形成する段階と、
前記めっき層上に請求項1乃至請求項9のいずれか一項の組成物をコーティング処理する段階と、
前記コーティング処理された鋼板を乾燥処理する段階とを含む、表面処理された三元系溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【請求項14】
前記組成物は、2.5~12.5μmの厚さでコーティング処理するものである、請求項13に記載の表面処理された三元系溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【請求項15】
前記コーティング処理は、バーコーティング、ロールコーティング、スプレー、浸漬、スプレースクイージング及び浸漬スクイージングからなる群から選択されるいずれか一つの方法で行われるものである、請求項13に記載の表面処理された三元系溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【請求項16】
前記乾燥は、鋼板の最終到達温度(PMT)を基準として40~200℃の温度領域で行われるものである、請求項13に記載の表面処理された三元系溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【請求項17】
前記乾燥は、熱風乾燥炉または誘導加熱炉で行われるものである、請求項13に記載の表面処理された三元系溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【請求項18】
前記熱風乾燥炉は、内部温度が100~300℃に維持されるものである、請求項17に記載の表面処理された三元系溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【請求項19】
前記誘導加熱炉は、1000~5000Aの電流が印加されるものである、請求項17に記載の表面処理された三元系溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【請求項20】
前記乾燥処理後に空冷または水冷させる段階をさらに含む、請求項13に記載の表面処理された三元系溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【請求項21】
前記製造方法は、連続工程で行われ、
前記連続工程の速度は、50~120mpmである、請求項13に記載の表面処理された三元系溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材料、特に建築材用途で使用される溶融亜鉛合金めっき鋼板の耐食性、環境安定性などを向上させるための表面処理用組成物、上記組成物を用いて表面処理された三元系溶融亜鉛めっき鋼板及びこの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に純粋な亜鉛めっき鋼板に比べて、赤錆耐食性に優れた鋼材としてマグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)などを含有した亜鉛合金層を持った鋼板は、露出面の大部分が亜鉛(Zn)又は亜鉛合金(Zn alloy)からなり、一般環境、特に湿潤雰囲気に露出した時に表面に白錆の発錆現象が生じる。また、めっき層に含有されているMg及びAlはZnより酸素親和力が高く、亜鉛に結合する酸素が不足しながら黒変現象も起こり易い。
【0003】
かかる問題点を解決するために、従来は、防錆処理の一環として、めっき処理された鋼板に6価クロムを含有したクロメート処理を実施するか、金属表面を5~100mg/m2のクロメートで前処理した後、有機皮膜を形成していた。しかし、このような表面処理を三元系亜鉛めっき鋼板に適用する場合、依然として黒色に変わるか黒点が発生するという欠陥問題があった。
【0004】
そこで、最近は6価クロムを含有しない耐食用金属コーティング剤を開発し、これによりめっき鋼板の耐食性及び耐黒変性を確保する方法を適用した。
【0005】
例えば、特許文献1~3では、3価クロムを含有する組成物に鋼板を浸漬させて化成処理するという方式で耐食性及び黒変性を確保しようとしたが、該工程を鉄鋼会社の連続工程に適用するには浸漬時間が長く、化成処理方法は耐指紋性低下などの問題を持っている。
【0006】
また、特許文献4及び5では、スプレーまたはロールコーター方式で鉄鋼会社の連続ラインに適用可能であり、耐指紋性を確保する方法を開示している。しかし、多孔質のシリカ成分を使用することにより、湿潤な雰囲気で変色発生の激しいMg、Al合金鋼板には適さない。それだけでなく、多孔質のシリカは、吸湿性質が強いため、Mg、Al、Zn合金鋼板には急激な変色発生を誘発するという問題がある。
【0007】
そして、建築材用鉄鋼素材として使用されるためには、顧客が使用する時に、屋外の高温高湿環境及び湿潤環境でも使用可能となるよう環境安定性を付与する必要性が高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国公開特許公報第10-2006-0123628号
【特許文献2】韓国公開特許公報第10-2005-0052215号
【特許文献3】韓国公開特許公報第10-2009-0024450号
【特許文献4】韓国公開特許公報第10-2004-0046347号
【特許文献5】日本公開特許公報第2002-069660号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一実施形態は、建築材用溶融亜鉛合金めっき鋼板を提供する際に、優れた耐食性及び耐黒変性、環境安定性などを付与することができる三元系溶融亜鉛めっき鋼板表面処理用組成物と、これを用いて表面処理された三元系溶融亜鉛めっき鋼板及びこの製造方法を提供しようとする。
【0010】
本発明の課題は、上述した内容に限定されない。本発明の課題は、本明細書の内容全般から理解されることができ、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、本発明の付加的な課題を理解するのに全く困難がないといえる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態は、固形分100重量%に対して、(a)クロム化合物15~45重量%、(b)防錆皮膜剤45~75重量%、(c)防錆エッチング剤0.1~3.0重量%、(d)耐食性添加剤0.1~5.0重量%、(e)潤滑剤0.1~3.0重量%及び(f)消泡剤0.1~1.0重量%を含み、
上記クロム化合物は、硝酸クロム(A)及びクロム酸塩(B)溶液に(g)還元剤である亜燐酸を0.5~5.0重量%及び(h)触媒剤であるリン酸を0.1~2.0重量%含んで得るものである三元系溶融亜鉛めっき鋼板表面処理用組成物を提供する。
【0012】
本発明の他の一実施形態は、鋼板と、上記鋼板の少なくとも一面に形成されたZn-Mg-Al系めっき層と、上記めっき層上に形成された表面処理コーティング層とを含み、
上記表面処理コーティング層は、上記の表面処理用組成物で形成されたコーティング層である表面処理された三元系溶融亜鉛めっき鋼板を提供する。
【0013】
本発明のまた他の一実施形態は、鋼板の少なくとも一面に溶融亜鉛めっき処理してZn-Mg-Al系めっき層を形成する段階と、上記めっき層上に上記の表面処理用組成物をコーティング処理する段階と、上記コーティング処理された鋼板を乾燥処理する段階とを含む表面処理された三元系溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、溶液安定性に優れた表面処理用組成物を提供することができ、かかる組成物で表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板は、耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性に優れるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の発明者らは、建築材用溶融亜鉛合金めっき鋼板、例えば三元系(Zn-Mg-Al系)溶融亜鉛めっき鋼板の耐食性、耐黒変性、環境安定性、耐アルカリ性などの特性を付与することができる溶液組成物を得るために深く研究した。
【0016】
その結果、クロム化合物に加えて、防錆皮膜剤、防錆エッチング剤、耐食性添加剤、潤滑剤及び消泡剤を適正量で混合した組成物を提供することができ、該組成物の溶液安定性が高く、これを溶融亜鉛合金めっき鋼板に表面処理する場合、意図する効果が得られることを確認して、本発明を完成した。
【0017】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0018】
先ず、本発明の一実施形態による三元系溶融亜鉛めっき鋼板表面処理用組成物について具体的に説明する。
【0019】
本発明による組成物は、固形分100重量%に対して、(a)クロム化合物15~45重量%、(b)防錆皮膜剤45~75重量%、(c)防錆エッチング剤0.1~3.0重量%、(d)耐食性添加剤0.1~5.0重量%、(e)潤滑剤0.1~3.0重量%及び(f)消泡剤0.1~1.0重量%を含むことができる。
【0020】
本発明の組成物は、上記クロム化合物を得るために、(g)還元剤及び(h)触媒剤をさらに含み、上記組成物の総重量は、上記還元剤と触媒剤の含量まで含むことを意味する。
【0021】
本発明の組成物は、上記組成物の総重量を基準として固形分含量は5~20重量%である。
【0022】
後述して具体的に説明するが、上記組成物は、組成物を塗布することができる基材(substrate)の少なくとも一面にコーティング層を形成することができる。本発明における上記基材は、上述した鋼板、例えば三元系溶融亜鉛めっき鋼板であることができ、具体的に、Zn-Mg-Al系合金めっき鋼板であることができる。
【0023】
下記では、上記組成物を構成する各成分について詳しく説明する。
【0024】
(a)クロム化合物15~45重量%
本発明の組成物において、クロム化合物は必須的な成分として、耐食性及び耐黒変性などを確保する作用をする。
【0025】
上記クロム化合物は、硝酸クロム(A)とクロム酸塩(B)を溶媒(水)に溶解して製造するため、硝酸クロム(A)とクロム酸塩(B)を含む。この時、上記硝酸クロムとクロム酸塩の含量比(A/A+B)が0.3~0.6であることが好ましい。上記含量比が0.3未満であると、実現しようとする耐食性及び耐黒変性が低下し、一方、0.6を超えると、溶液安定性が低くなるという問題がある。
【0026】
さらに具体的に、上記クロム化合物は、上記硝酸クロム(A)とクロム酸塩(B)を溶解したクロム溶液に(g)還元剤である亜燐酸(Phosphorous acid)を0.5~5.0重量%で添加して、クロム酸塩が溶解されて形成される6価クロムイオンを3価クロムに還元させる。この時、還元反応が円滑に進むように(h)触媒剤としてリン酸を0.1~2.0重量%で添加することが好ましい。
【0027】
これにより、還元比(3価クロムイオン/(3価クロムイオン+6価クロムイオン))が0.75~0.90であるクロム化合物を得ることができる。上記還元比が0.75未満であると、3価クロムイオンの含量が不足し遮蔽効果による耐食性を確保することができず、耐黒変性が不足する恐れがあり、一方、その値が0.90を超えると、相対的に6価クロムイオンが不足し、自己修復効果が低下して加工部耐食性が低下するという問題がある。
【0028】
上記亜燐酸の含量が0.5重量%未満であると、クロム化合物の還元比が0.75以下に低くなるという問題があり、一方、その含量が5.0重量%を超えると、上記還元比が0.9を超えるという問題がある。
【0029】
上記触媒剤として使用されたリン酸は、フリー酸を供給することで、亜燐酸によるクロム酸塩の溶解で生成された6価クロムイオンが3価クロムイオンに円滑に還元されることを促進する役割を果たす。かかるリン酸の含量が0.1重量%未満であると、触媒作用が不十分になり、一方、その含量が2.0重量%を超えると、フリー酸が過度に存在して耐食性を阻害する恐れがある。
【0030】
ここで、上記還元剤及び触媒剤の含量は、本発明の組成物の固形分100重量%に対するものであることを明らかにしておく。
【0031】
本発明の組成物の固形分100重量%に対して、上記クロム化合物の含量が15重量%未満であると、堅固な不溶性皮膜層が薄くなり耐食性が要求されるめっき鋼板の表面において水分浸透が効果的に遮断できなくなる。その結果、黒変を誘発させ、耐食性も低下するという問題がある。一方、その含量が45重量%を超えると、耐食性の向上のために添加されるその他の成分、具体的に、防錆皮膜剤、防錆エッチング剤、耐食性添加剤、潤滑剤、消泡剤などの含量が相対的に減少して、十分な耐食性、耐黒変性、環境安定性などを確保し難いという問題がある。
【0032】
(b)防錆皮膜剤45~75重量%
本発明の組成物において防錆皮膜剤は、上記クロム化合物と共に主な成分として、基本的な耐食性、耐黒変性などを確保する役割を果たす。特に、めっき鋼板(三元系溶融亜鉛めっき鋼板)を表面処理する場合、環境安定性、特に、高温高湿環境下でクロム化合物の皮膜吸湿による皮膜剥離を防止して優れた環境安定性を維持する役割を果たす。
【0033】
上記防錆皮膜剤は、有機シランゾル-ゲルバインダーを使用することができる。
【0034】
具体的に、上記有機シランゾル-ゲルバインダーとしては、2-(3,4エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシラン、3-グリシルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシルオキシプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン及び3-ウレイドプロピルトリアルコキシシランからなるグループから選択される2種または3種以上のシリコン化合物であってよい。
【0035】
本発明の組成物の固形分100重量%に対して、上記防錆皮膜剤の含量が45重量%未満であると、堅固な皮膜層が形成できなくなり、耐食性及び環境安定性の確保が難しいという問題がある。一方、その含量が75重量%を超えると、クロム化合物の含量が減少して耐黒変性が低下するという問題がある。
【0036】
(c)防錆エッチング剤0.1~3.0重量%
本発明の組成物において防錆エッチング剤は、めっき鋼板に表面処理する場合、表面をエッチングさせて表面処理された組成物が堅固な結合を形成することにより防錆効果を増大させる役割を果たす。
【0037】
上記防錆エッチング剤は、チタンフッ化水素酸、珪化フッ化水素酸及びジルコニウムフッ化水素酸のうち1種以上であってよい。
【0038】
本発明の組成物の固形分100重量%に対して、上記防錆エッチング剤の含量が0.1重量%未満であると、エッチング作用が十分でなく、表面処理された組成物とめっき鋼板の結合が不足し、耐食性が低下する恐れがある。一方、その含量が3.0重量%を超えると、過度なエッチング作用により耐黒変性が低下するという問題がある。
【0039】
(d)耐食性添加剤0.1~5.0重量%
本発明の組成物において耐食性添加剤は、表面処理されためっき鋼板の加工中に発生する亀裂部位を埋める役割を果たし、これにより加工部耐食性を向上させるのに有利である。
【0040】
上記耐食性添加剤は、リチウムシリカゾル、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、リチウム-カリウムシリケート及びリチウム-ソジウムシリケートのうち1種以上であってよい。
【0041】
本発明の組成物の固形分100重量%に対して、上記耐食性添加剤の含量が0.1重量%未満であると、表面処理されためっき鋼板の加工中に亀裂の発生が増大し加工部耐食性が低下し、一方、その含量が5.0重量%を超えると、溶液安定性が劣るという問題がある。
【0042】
(e)潤滑剤0.1~3.0重量%
本発明の組成物において、潤滑剤は、上記防錆皮膜剤である有機シランゾル-ゲルバインダーが高温高湿環境下でベタつくことにより表面処理組成物の皮膜がコーティング材料(例えば、ロールなど)に粘着して異物が発生することを抑制する役割を果たす。
【0043】
上記潤滑剤としては、酸性である本発明の組成物に使用可能に非イオン性分散剤で分散されたワックス成分であることが好ましい。具体的には、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、カナウバワックス、パラフィンワックス、ポリアマイドワックス、PTFEワックス、親環境オイル(Oil)ワックス、EAAワックス、合成EVAワックスのうち1種以上であってよい。
【0044】
本発明の組成物の固形分100重量%に対して、上記潤滑剤の含量が0.1重量%未満であると、高温高湿環境下で異物欠陥が多く発生する問題があり、一方、その含量が3.0重量%を超えると、遮蔽効果が低下して耐食性が劣るという問題がある。
【0045】
(f)消泡剤0.1~1.0重量%
本発明の組成物において、消泡剤は、めっき鋼板を表面処理するために組成物を溶液状態で撹拌する過程において泡の発生による塗布性低下を抑制する役割を果たす。
【0046】
上記消泡剤としては、シリコン系消泡剤を使用することができ、非制限的な例として、ポリジメチルシロキサンを使用することができる。
【0047】
本発明の組成物の固形分100重量%に対して、上記消泡剤の含量が0.1重量%未満であると、消泡効果が十分でなく、溶液表面での気泡発生によりコーティング作業性が低下するという問題がある。一方、その含量が1.0重量%を超えると、溶液安定性が低下し、顧客社で塗装の時に表面欠陥を起こすという問題がある。
【0048】
(i)溶剤
前述した成分を全て含む本発明の組成物は、固形分含量が5~20重量%であり、残部成分として溶剤を含むことができる。本発明において上記溶剤として水を使用することができ、上記水を用いて上記組成物に添加される成分を希釈させることができる。ここで、水は脱イオン水または蒸留水を意味する。
【0049】
上記溶剤の含量は、80~95重量%であることが好ましい。上記溶剤の含量が80重量%未満であると、めっき鋼板に本発明の組成物を液状の状態でコーティング処理する際に伸び性が十分でないおそれがある。一方、その含量が95%を超えると、上記組成物をコーティング処理した後、乾燥した組成物の付着量が確保されないおそれがある。
【0050】
本発明では、上記溶剤として水以外に補助溶剤をさらに含むことが好ましく、上記補助溶剤は、エチルアルコール、メチルアルコール(Methanol)、イソプロピルアルコール(Isopropyl alcohol)、1-メトキシ-2-プロパノール及び2-ブトキシエタノールからなる群から選択される一つ以上であってよい。
【0051】
上記補助溶剤は、上記溶剤の含量全体に対して20~40重量%含むことができる。上記補助溶剤の含量が溶剤の含量全体のうち20%未満であると、溶液組成物を構成する成分が安定的に溶剤中に分散されないおそれがあり、一方、その含量が40%を超えると、耐食性が低下し溶液の匂いにより作業環境が悪くなるという問題がある。
【0052】
以下、本発明の他の一実施形態による上述した組成物を表面処理して一定のコーティング層を有する表面処理された鋼板、具体的に表面処理された三元系溶融亜鉛めっき鋼板について詳しく説明する。
【0053】
本発明において上記組成物は、めっき鋼板に表面処理することができ、好ましくは、三元系(Zn-Mg-Al系)溶融亜鉛めっき鋼板に表面処理することができる。
【0054】
即ち、本発明の表面処理された鋼板は、鋼板と、上記鋼板の少なくとも一面に形成されたZn-Mg-Al系めっき層と、上記めっき層上に形成された表面処理コーティング層とを含むことができる。
【0055】
ここで、上記鋼板は、めっき鋼板が得られる素地鋼板(base steel sheet)のもので、特に三元系(Zn-Mg-Al系)溶融亜鉛めっき鋼板が得られる鋼板であれば、如何なるものでも構わない。
【0056】
上記Zn-Mg-Al系めっき層は、その組成が重量%で、マグネシウム(Mg):4.0~7.0%、アルミニウム(Al):11.0~19.5%、残部Zn及びその他の不可避な不純物を含むことができる。
【0057】
上記めっき層内のマグネシウム(Mg)は、めっき鋼板の耐食性を向上させる役割を果たす元素として、本発明において目的とする優れた耐食性を確保するために、その含量が4.0%以上であることが好ましい。但し、上記Mgの含量が過度な場合、めっき浴内でドロスを発生させるおそれがあり、めっき層内において硬度の高い金属間化合物を形成し過ぎて鋼板の曲げ性を悪化させるおそれがあるため、その含量を7.0%に制限することができる。
【0058】
一方、上記Mgの含量を4.0%以上に添加することにより、めっき浴内でMg酸化によるドロス発生の危険性が存在するため、これを考慮して上記アルミニウム(Al)を11.0%以上含むことが好ましい。但し、上記Alの含量が過度な場合、めっき浴の融点が高くなり、それによる操業温度が過度に高くなり、めっき浴構造物の浸食及び鋼板の変性がもたらされるなど、高温作業による問題が引き起こされる可能性がある。よって、上記Alは、19.5%以下にその含量を制限することが好ましい。
【0059】
上記MgとAlを除いた残部組成は、亜鉛(Zn)であり、Zn-Mg-Al系めっき層を有するめっき鋼板を製造する過程で、不可避な不純物が意図せず混入されるおそれがある。この時、不可避な不純物は、当該技術分野の技術者であれば、その意味が容易に理解できることを明らかにしておく。
【0060】
上述したZn-Mg-Al系めっき層の組織が下記の[関係式1]を満たすことが好ましい。
[関係式1]
0.26≦I(110)/I(103)≦0.65
(関係式1において、I(110)は、MgZn2相に対する(110)面結晶ピークのX線回折積分強度を示し、上記I(103)は、MgZn2相に対する(103)面結晶のX線回折積分強度を示す。)
【0061】
本発明では、上記Zn-Mg-Al系めっき層のMgZn2相に対して上記[関係式1]で制御することで、めっき鋼板の曲げ性、白色度などを確保することができる。
【0062】
上記[関係式1]において定義される値が0.26未満であると、MgZn2相に対する(110)面結晶に比べてMgZn2相に対する(103)面結晶の存在の割合が多すぎて、曲げ性や白色度が不十分になるおそれがある。一方、上記値が0.65を超えると、MgZn2相に対する(103)面結晶に比べてMgZn2相に対する(110)面結晶の存在割合が多すぎて、乱反射の増大を誘導することができず、白色度が不十分になるという問題が生じ得る。
【0063】
この時、上記I(110)は、積分強度の値が120~200の範囲であってよく、上記I(103)は、積分強度の値が240~300の範囲でであってよい。このように、各範囲内で上記[関係式1]の値を満たすことが好ましい。
【0064】
上述したZn-Mg-Al系めっき層の上部には、本発明の組成物を溶液状態でコーティング処理することで形成されたコーティング層を含むことができ、この時、コーティング層は、0.3~1.5μmの厚さを有することが好ましい。
【0065】
上記コーティング層の厚さが0.3μm未満であると、めっき鋼板の表面に存在する粗度の酸部位に表面処理溶液組成物が薄く塗布されて耐食性が低下するという問題があり、一方、その厚さが1.5μmを超えると、皮膜層(コーティング層)が厚く形成されることにより、加工性が劣化し溶液処理費用が上昇して経済的に不利になる。
【0066】
ここで、上記厚さは、乾燥後の厚さを意味する。
【0067】
さらに、本発明は、上記組成物を用いて表面処理された鋼板、具体的に表面処理された三元系溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法について説明する。
【0068】
さらに詳しくは、鋼板の少なくとも一面に溶融亜鉛めっき処理してZn-Mg-Al系めっき層を形成する段階と、上記めっき層上に本発明の組成物を溶液状態で塗布してコーティング処理する段階と、上記コーティング処理された鋼板を乾燥処理する段階とを含むことができる。
【0069】
本発明の組成物を溶液状態で上記鋼板に塗布する際に、一般的に使用されるコーティング法を適用することができるため、特に限定はしない。
【0070】
例えば、バーコーティング、ロールコーティング、スプレー、浸漬、スプレースクイージング、浸漬スクイージングなどの方法のうち一つの方法を選択してコーティング工程を行うことができる。
【0071】
上述したコーティング法によって組成物を塗布する場合、2.5~12.5μmの厚さで塗布することが好ましい。上述した範囲内で組成物を塗布することで、乾燥後に意図する塗膜の厚さ、好ましくは0.3~1.5μmの厚さを有するコーティング層を確保することができる。
【0072】
上記組成物でコーティング処理された鋼板を乾燥処理する工程は、素材鋼板(鋼板)の最終到達温度(PMT)を基準として40~200℃の温度範囲で行われることが好ましい。
【0073】
上記素材鋼板の最終到達温度を基準として40℃未満であると、堅固な皮膜構造形成が十分でなく、耐食性及び耐黒変性が劣るおそれがある。一方、その温度が200℃を超えると、皮膜の硬度が過度に増加して加工部耐食性が劣り、後続冷却過程で蒸発した水蒸気が乾燥設備の上部に凝縮される結露現象を起こして、製品の表面品質が劣るおそれがある。
【0074】
一方、上記乾燥は、熱風乾燥炉または誘導加熱炉で行われることができる。
上記熱風乾燥炉を用いて乾燥処理を行う場合、上記熱風乾燥炉の内部温度が100~300℃で維持されることが好ましい。また、上記誘導加熱炉を用いて乾燥処理を行う場合は、誘導加熱炉に印加される電流が1000~5000A、より有利には1500~3500Aであることが好ましい。
【0075】
上記熱風乾燥炉の内部温度が100℃未満であるか、誘導加熱炉に印加される電流が1000A未満であると、コーティング処理された組成物の皮膜結合が完璧に行われず、耐食性及び耐黒変性が劣るおそれがある。一方、上記熱風乾燥炉の内部温度が300℃を超えるか、誘導加熱炉に印加される電流が5000Aを超えると、皮膜の硬度が過度に増加して加工部耐食性が低下し、後続冷却過程で水蒸気及びヒューム(fume)の発生により作業生産性が悪くなり、蒸発した水蒸気が乾燥設備の上部に凝縮される結露現象を起こして、製品の表面品質が劣るおそれがある。
【0076】
上記により乾燥処理工程を完了することで、乾燥状態の皮膜層(コーティング層)が形成されると、追加的に空冷または水冷の冷却工程を経て最終コーティング処理された鋼板を得ることができる。
【0077】
この時、冷却工程の条件については特に限定せず、通常適用される水準であることを明らかにしておく。
【0078】
本発明において表面処理された三元系溶融亜鉛めっき鋼板を製造する方法は、連続工程からなることができ、この時、連続工程の速度は50~120mpmに制限することができる。
【0079】
上記連続工程の速度が50mpm未満であると、生産性が低下するという問題があり、一方、120mpmを超えると、鋼板表面に塗布された溶液状態の組成物が乾燥する過程で溶液が飛散して表面欠陥を誘発させるおそれがある。
【実施例】
【0080】
以下、本発明について実施例を通じてさらに詳しく説明する。しかし、かかる実施例の記載は、本発明の実施を例示するためのものであり、かかる実施例の記載によって本発明が制限されるものではない。本発明の権利範囲は、特許請求の範囲に記載された事項とこれから合理的に類推される事項によって決められるためである。
【0081】
[試験用試片の作製]
三元系(Zn-Mg-Al系)溶融亜鉛合金めっき層が重量%で、Mn:5.0%、Al:12.0%、残部Zn及び不可避な不純物からなり、[関係式1]の値が0.45である三元系溶融亜鉛めっき鋼板を7cm(横)×15cm(縦)の大きさで切断して油分を除去した。
【0082】
以後、下記によって製造された組成物を上記溶融亜鉛めっき鋼板の表面にバーコーター(bar coater)で塗布した後、PMT基準で60±20℃の条件で硬化させて試験用試片を作製した。
【0083】
[試験及び評価方法]
上記によって作製された試験用試片に対して、次のような方法を通じて平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性、異物付着性、溶液安定性を評価し、各結果を下記の表に示した。
【0084】
<平板耐食性>
ASTM B117に規定した方法に基づいて、試片を処理した後、時間経過による鋼板の白錆発生率を測定した。この時、評価基準は以下の通りである。
◎:白錆発生時までかかった時間が144時間以上
○:白錆発生時までかかった時間が96時間以上144時間未満
△:白錆発生時までかかった時間が55時間以上96時間未満
×:白錆発生時までかかった時間が55時間未満
【0085】
<加工部耐食性>
試片をエリクセン試験機(Erichsen tester)を用いて6mmの高さで押し上げた後、24時間経過した時に白錆発生程度を測定した。この時、評価基準は以下の通りである。
◎:48時間経過後に白錆発生面積5%未満
○:48時間経過後に白錆発生面積5%以上7%未満
△:48時間経過後に白錆発生面積7%以上10%未満
×:48時間経過後に白錆発生面積10%以上
【0086】
<耐黒変性>
試片を50℃の温度、相対湿度95%が維持される恒温恒湿器に120時間の間放置することで、試験前/後の試片色相変化(色差:ΔE)を観察した。この時、評価基準は以下の通りである。
◎:ΔE≦2
○:2<ΔE≦3
△:3<ΔE≦4
×:ΔE>4
【0087】
<耐アルカリ性>
試片を60℃のアルカリ脱脂溶液に2分間浸漬した後、水洗、エアブローし、浸漬前/後の色差(ΔE)を測定した。アルカリ脱脂溶液は、大韓パーカライジング株式会社のFinecleaner L 4460 A:20g/2.4L+L 4460 B:12g/2.4L(pH=12)を使用した。この時、評価基準は以下の通りである。
◎:ΔE≦2
○:2<ΔE≦3
△:3<ΔE≦4
×:ΔE>4
【0088】
<異物付着性>
白色ガーゼを付着させた金属チップに荷重2.5kgを付加した状態で試片を摩擦させた後、試験前/後の白色ガーゼの白色度変化(白色度色差:ΔL)を観察した。この時、評価基準は以下の通りである。
◎:ΔL≦1.0
○:1.0<ΔL≦2.0
△:2.0<ΔL≦2.5
×:ΔL>2.5
【0089】
<溶液安定性>
それぞれの表面処理用組成物を容器に入れ50℃の恒温オーブンの中に入れ、7日間保管した後、沈殿物の発生有無を目視で観察し、粘度変化を測定した。この時、評価基準は以下の通りである。
○:沈殿発生なし、粘度変化1CP未満
△:沈殿発生なし、粘度変化1~5CP
×:沈殿発生または粘度変化5CP超
【0090】
実験1.クロム化合物の含量による物性の変化
先ず、表面処理用組成物を以下のように製造した。
硝酸クロム(A)とクロム酸塩(B)を水に溶解したクロム溶液に還元剤として亜燐酸、触媒としてリン酸を添加してクロム化合物を製造した。この時、上記硝酸クロム(A)とクロム酸塩(B)の含量比(A/(A+B))を0.5、還元比は0.85に制御した。
【0091】
該クロム化合物に防錆皮膜剤として有機シランゾル-ゲルバインダー(3-グリシルオキシプロピルメチルジエトキシシラン及び3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、防錆エッチング剤としてチタンフッ化水素酸、耐食性添加剤としてリチウムシリカゾル、潤滑剤としてポリエチレンワックス、消泡剤としてポリジメチルシロキサンを添加して組成物を製造した。各成分の含量を下記の表1に示し、この時、乾燥皮膜状態では溶媒(水、エチルアルコール)が除去されることを勘案して、固形分100%を基準として各成分の含量を記載した。
【0092】
そして、上記組成物を溶液状態で製造する際に、製造された組成物の固形分13%基準で水を61重量%、エチルアルコールを26重量%で添加した。
【0093】
下記の表1の含量によって製造された溶液組成物を塗布して乾燥処理した各試片の平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性、溶液安定性を評価し、その結果を下記の表1に併せて示した。
【0094】
【0095】
上記表1に示すように、クロム化合物と共にその他の成分が本発明で提案する含量によって含有された組成物を表面処理する場合、全ての物性において良好以上の結果を示した。
【0096】
一方、クロム化合物の含量が不十分な比較例1は、平板耐食性及び加工部耐食性が劣る結果を示し、クロム化合物の含量が過度な比較例2も、平板耐食性及び加工部耐食性と共に耐黒変性が不良な結果を示した。
【0097】
実験2.クロム化合物の含量比(A/(A+B))による物性の変化
固形分100重量%を基準でクロム化合物28重量%、防錆皮膜剤として有機シランゾル-ゲルバインダー(3-グリシルオキシプロピルメチルジエトキシシラン及び3-アミノプロピルトリエトキシシラン)を65重量%、防錆エッチング剤としてチタンフッ化水素酸を2.8重量%、耐食性添加剤としてリチウムシリカゾルを1重量%、潤滑剤としてポリエチレンワックスを0.5重量%、消泡剤としてポリジメチルシロキサンを0.2重量%で添加して組成物を製造した。この時、乾燥皮膜状態では、溶媒(水、エチルアルコール)が除去されることを勘案して、固形分100%を基準で各成分の含量を示したものである。
【0098】
上記クロム化合物は、硝酸クロム(A)とクロム酸塩(B)を水に溶解したクロム溶液に還元剤として亜燐酸を2重量%、触媒としてリン酸を0.5重量%で添加して製造した。この時、上記硝酸クロム(A)とクロム酸塩(B)の含量比(A/(A+B))を以下の表2のように変更して制御し、還元比は0.85に制御した。
【0099】
上記組成物を溶液状態で製造する際に、製造された組成物の固形分13%基準で水を61重量%、エチルアルコールを26重量%で添加した。
【0100】
下記の表2のように、硝酸クロム(A)とクロム酸塩(B)の含量比を変更して製造された溶液組成物を塗布して乾燥処理した各試片の平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、溶液安定性を評価し、その結果を下記の表2に併せて示した。
【0101】
【0102】
上記表2に示すように、硝酸クロムとクロム酸塩の含量比が本発明で提案する範囲を満たす場合(発明例4~7)には、全ての物性において良好以上の結果を示した。
【0103】
一方、上記含量比が小さ過ぎる比較例3は、平板耐食性、加工部耐食性及び耐黒変性が劣る結果を示し、その含量比が過度な比較例4の場合は、溶液安定性が劣った。
【0104】
実験3.クロム化合物の還元比による物性の変化
上記実験2で使用された組成物のクロム化合物の還元比、すなわち、3価クロムイオンと6価クロムイオンの還元比(3価クロムイオン/(3価クロムイオン+6価クロムイオン))のみを異ならせて制御した組成物を製造した。この時、硝酸クロム(A)とクロム酸塩(B)の含量比(A/(A+B))は0.5に制御した。
【0105】
以後、上記実験2と同一に製造された組成物の固形分13%基準で水61重量%、エチルアルコール26重量%を添加して溶液組成物を得た。
【0106】
下記の表3に示す異なる還元比を適用して製造された溶液組成物を塗布して乾燥処理した各試片の平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、溶液安定性を評価し、その結果を下記の表3に併せて示した。
【0107】
【0108】
上記表3に示すように、クロム化合物の還元比が本発明で提案する範囲を満たす場合(発明例8~11)には、全ての物性において良好以上の結果を示した。
【0109】
一方、クロム化合物の還元比が小さ過ぎる比較例5は、平板耐食性、加工部耐食性及び耐黒変性が劣る結果を示し、クロム化合物の還元比が過度な比較例6の場合は、加工部耐食性と溶液安定性が劣った。
【0110】
実験4.還元剤の含量による物性の変化
表面処理用組成物を次によって製造した。
硝酸クロム(A)とクロム酸塩(B)を水に溶解したクロム溶液に還元剤として亜燐酸、触媒としてリン酸を添加してクロム化合物を製造した。この時、上記硝酸クロム(A)とクロム酸塩(B)の含量比(A/(A+B))を0.5、還元比は0.85に制御した。
【0111】
該クロム化合物に防錆皮膜剤として有機シランゾル-ゲルバインダー(3-グリシルオキシプロピルメチルジエトキシシラン及び3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、防錆エッチング剤としてチタンフッ化水素酸、耐食性添加剤としてリチウムシリカゾル、潤滑剤としてポリエチレンワックス、消泡剤としてポリジメチルシロキサンを添加して組成物を製造した。 各成分の含量を下記の表4に示し、この時、乾燥皮膜状態では溶媒(水、エチルアルコール)が除去されることを勘案して、固形分100%を基準で各成分の含量を記載した。
【0112】
そして、上記組成物を溶液状態で製造する際に、製造された組成物の固形分13%基準で水を61重量%、エチルアルコールを26重量%で添加した。
【0113】
下記の表4の含量によって製造された溶液組成物を塗布して乾燥処理した各試片の平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、溶液安定性を評価し、その結果を下記の表4に併せて示した。
【0114】
【0115】
上記表4に示すように、発明例12~15は、本発明で提案する含量を全て満たす組成物で表面処理された場合であり、全ての物性において良好以上の結果を示した。
【0116】
一方、還元剤の含量が不十分な比較例7は、平板耐食性、加工部耐食性及び耐黒変性が劣る結果を示し、還元剤の含量が過度な比較例8は、加工部耐食性と溶液安定性が不良な結果を示した。
【0117】
実験5.触媒の含量による物性の変化
表面処理用組成物を次によって製造した。
硝酸クロム(A)とクロム酸塩(B)を水に溶解したクロム溶液に還元剤として亜燐酸、触媒としてリン酸を添加してクロム化合物を製造した。この時、上記硝酸クロム(A)とクロム酸塩(B)の含量比(A/(A+B))を0.5、還元比は0.85に制御した。
【0118】
該クロム化合物に防錆皮膜剤として有機シランゾル-ゲルバインダー(3-グリシルオキシプロピルメチルジエトキシシラン及び3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、防錆エッチング剤としてチタンフッ化水素酸、耐食性添加剤としてリチウムシリカゾル、潤滑剤としてポリエチレンワックス、消泡剤としてポリジメチルシロキサンを添加して組成物を製造した。各成分の含量を下記の表5に示し、この時、乾燥皮膜状態では溶媒(水、エチルアルコール)が除去されることを勘案して、固形分100%を基準で各成分の含量を記載した。
【0119】
そして、上記組成物を溶液状態で製造する際に、製造された組成物の固形分13%基準で水を61重量%、エチルアルコールを26重量%で添加した。
【0120】
下記の表5の含量によって製造された溶液組成物を塗布して乾燥処理した各試片の平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、溶液安定性を評価し、その結果を下記の表5に併せて示した。
【0121】
【0122】
上記表5に示すように、発明例16~19は、本発明で提案する含量を全て満たす組成物で表面処理された場合で、全ての物性において良好以上の結果を示した。
【0123】
一方、触媒を添加していない比較例9は、平板耐食性、加工部耐食性及び耐黒変性が劣る結果を示し、触媒の含量が過度な比較例10は、平板耐食性及び加工部耐食性が不良な結果を示した。
【0124】
実験6.防錆皮膜剤の含量による物性の変化
表面処理用組成物を次によって製造した。
硝酸クロム(A)とクロム酸塩(B)を水に溶解したクロム溶液に還元剤として亜燐酸、触媒としてリン酸を添加してクロム化合物を製造した。この時、上記硝酸クロム(A)とクロム酸塩(B)の含量比(A/(A+B))を0.5、還元比は0.85に制御した。
【0125】
該クロム化合物に防錆皮膜剤として有機シランゾル-ゲルバインダー(3-グリシルオキシプロピルメチルジエトキシシラン及び3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、防錆エッチング剤としてチタンフッ化水素酸、耐食性添加剤としてリチウムシリカゾル、潤滑剤としてポリエチレンワックス、消泡剤としてポリジメチルシロキサンを添加して組成物を製造した。各成分の含量を下記の表6に示し、この時、乾燥皮膜状態では溶媒(水、エチルアルコール)が除去されることを勘案して、固形分100%を基準で各成分の含量を記載した。
【0126】
そして、上記組成物を溶液状態で製造する際に、製造された組成物の固形分13%基準で水を61重量%、エチルアルコールを26重量%で添加した。
【0127】
下記の表6の含量によって製造された溶液組成物を塗布して乾燥処理した各試片の平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、異物付着性を評価し、その結果を下記の表6に併せて示した。
【0128】
【0129】
上記表6に示すように、発明例20~23は、本発明で提案する含量を全て満たす組成物で表面処理された場合で、全ての物性において良好以上の結果を示した。
【0130】
一方、防錆皮膜剤の含量が不十分な比較例11は、平板耐食性、加工部耐食性及び異物付着性が劣る結果を示し、防錆皮膜剤の含量が過度な比較例12は、耐黒変性が不良な結果を示した。
【0131】
実験7.防錆エッチング剤の含量による物性の変化
表面処理用組成物を次によって製造した。
【0132】
硝酸クロム(A)とクロム酸塩(B)を水に溶解したクロム溶液に還元剤として亜燐酸、触媒としてリン酸を添加してクロム化合物を製造した。この時、上記硝酸クロム(A)とクロム酸塩(B)の含量比(A/(A+B))を0.5、還元比は0.85に制御した。
【0133】
該クロム化合物に防錆皮膜剤として有機シランゾル-ゲルバインダー(3-グリシルオキシプロピルメチルジエトキシシラン及び3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、防錆エッチング剤としてチタンフッ化水素酸、耐食性添加剤としてリチウムシリカゾル、潤滑剤としてポリエチレンワックス、消泡剤としてポリジメチルシロキサンを添加して組成物を製造した。各成分の含量を下記の表7に示し、この時、乾燥皮膜状態では溶媒(水、エチルアルコール)が除去されることを勘案して、固形分100%を基準で各成分の含量を記載した。
【0134】
そして、上記組成物を溶液状態で製造する際に、製造された組成物の固形分13%基準で水を61重量%、エチルアルコールを26重量%で添加した。
【0135】
下記の表7の含量によって製造された溶液組成物を塗布して乾燥処理した各試片の平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、異物付着性を評価し、その結果を下記の表7に併せて示した。
【0136】
【0137】
上記表7に示すように、発明例24~27は、本発明で提案する含量を全て満たす組成物で表面処理された場合で、全ての物性において良好以上の結果を示した。
【0138】
一方、防錆エッチング剤の含量が不十分な比較例13は、平板耐食性と加工部耐食性が劣る結果を示し、防錆エッチング剤の含量が過度な比較例14は、耐黒変性が不良な結果を示した。
【0139】
実験8.耐食性添加剤の含量による物性の変化
表面処理用組成物を次によって製造した。
【0140】
硝酸クロム(A)とクロム酸塩(B)を水に溶解したクロム溶液に還元剤として亜燐酸、触媒としてリン酸を添加してクロム化合物を製造した。この時、上記硝酸クロム(A)とクロム酸塩(B)の含量比(A/(A+B))を0.5、還元比は0.85に制御した。
【0141】
該クロム化合物に防錆皮膜剤として有機シランゾル-ゲルバインダー(3-グリシルオキシプロピルメチルジエトキシシラン及び3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、防錆エッチング剤としてチタンフッ化水素酸、耐食性添加剤としてリチウムシリカゾル、潤滑剤としてポリエチレンワックス、消泡剤としてポリジメチルシロキサンを添加して組成物を製造した。 各成分の含量を下記の表8に示し、この時、乾燥皮膜状態では溶媒(水、エチルアルコール)が除去されることを勘案して、固形分100%を基準で各成分の含量を記載した。
【0142】
そして、上記組成物を溶液状態で製造する際に、製造された組成物の固形分13%基準で水を61重量%、エチルアルコールを26重量%で添加した。
【0143】
下記の表8の含量によって製造された溶液組成物を塗布して乾燥処理した各試片の平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、溶液安定性を評価し、その結果を下記の表8に併せて示した。
【0144】
【0145】
上記表8に示すように、発明例28~31は、本発明で提案する含量を全て満たす組成物で表面処理された場合で、全ての物性において良好以上の結果を示した。
【0146】
一方、耐食性添加剤の含量が不十分な比較例15は、加工部耐食性が不良な結果を示し、耐食性添加剤の含量が過度な比較例16は、溶液安定性が劣る結果を示した。
【0147】
実験9.潤滑剤の含量による物性の変化
表面処理用組成物を次によって製造した。
【0148】
硝酸クロム(A)とクロム酸塩(B)を水に溶解したクロム溶液に還元剤として亜燐酸、触媒としてリン酸を添加してクロム化合物を製造した。この時、上記硝酸クロム(A)とクロム酸塩(B)の含量比(A/(A+B))を0.5、還元比は0.85に制御した。
【0149】
該クロム化合物に防錆皮膜剤として有機シランゾル-ゲルバインダー(3-グリシルオキシプロピルメチルジエトキシシラン及び3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、防錆エッチング剤としてチタンフッ化水素酸、耐食性添加剤としてリチウムシリカゾル、潤滑剤としてポリエチレンワックス、消泡剤としてポリジメチルシロキサンを添加して組成物を製造した。各成分の含量を下記の表9に示し、この時、乾燥皮膜状態では溶媒(水、エチルアルコール)が除去されることを勘案して、固形分100%を基準で各成分の含量を記載した。
【0150】
そして、上記組成物を溶液状態で製造する際に、製造された組成物の固形分13%基準で水を61重量%、エチルアルコールを26重量%で添加した。
【0151】
下記の表9の含量によって製造された溶液組成物を塗布して乾燥処理した各試片の平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、異物付着性を評価し、その結果を下記の表9に併せて示した。
【0152】
【0153】
上記表9に示すように、発明例32~35は、本発明で提案する含量を全て満たす組成物で表面処理された場合で、全ての物性において良好以上の結果を示した。
【0154】
一方、潤滑剤の含量が不十分な比較例17は、異物付着性が不良な結果を示し、潤滑剤の含量が過度な比較例18は、平板耐食性と加工部耐食性が劣る結果を示した。
【0155】
実験10.消泡剤の含量による物性の変化
表面処理用組成物を次によって製造した。
【0156】
硝酸クロム(A)とクロム酸塩(B)を水に溶解したクロム溶液に還元剤として亜燐酸、触媒としてリン酸を添加してクロム化合物を製造した。この時、上記硝酸クロム(A)とクロム酸塩(B)の含量比(A/(A+B))を0.5、還元比は0.85に制御した。
【0157】
該クロム化合物に防錆皮膜剤として有機シランゾル-ゲルバインダー(3-グリシルオキシプロピルメチルジエトキシシラン及び3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、防錆エッチング剤としてチタンフッ化水素酸、耐食性添加剤としてリチウムシリカゾル、潤滑剤としてポリエチレンワックス、消泡剤としてポリジメチルシロキサンを添加して組成物を製造した。各成分の含量を下記の表10に示し、この時、乾燥皮膜状態では溶媒(水、エチルアルコール)が除去されることを勘案して、固形分100%を基準で各成分の含量を記載した。
【0158】
そして、上記組成物を溶液状態で製造する際に、製造された組成物の固形分13%基準で水を61重量%、エチルアルコールを26重量%で添加した。
【0159】
下記の表10の含量によって製造された溶液組成物を塗布して乾燥処理した各試片の平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、溶液安定性を評価し、その結果を下記の表10に併せて示した。
【0160】
【0161】
上記表10に示すように、発明例36~38は、本発明で提案する含量を全て満たす組成物で表面処理された場合で、全ての物性において良好以上の結果を示した。
【0162】
一方、消泡剤の含量が不十分な比較例19は、平板耐食性、加工部耐食性及び耐黒変性が不良な結果を示し、消泡剤の含量が過度な比較例20は、溶液安定性が劣る結果を示した。
【0163】
実験11.コーティング層厚さ及び乾燥温度による物性の変化
表面処理用組成物を次によって製造した。
【0164】
固形分100重量%を基準でクロム化合物28重量%、防錆皮膜剤として有機シランゾル-ゲルバインダー(3-グリシルオキシプロピルメチルジエトキシシラン及び3-アミノプロピルトリエトキシシラン)を65重量%、防錆エッチング剤としてチタンフッ化水素酸を2.8重量%、耐食性添加剤としてリチウムシリカゾルを1重量%、潤滑剤としてポリエチレンワックスを0.5重量%、消泡剤としてポリジメチルシロキサンを0.2重量%で添加して組成物を製造した。
【0165】
上記組成物のうちクロム化合物は、硝酸クロム(A)とクロム酸塩(B)を水に溶解したクロム溶液に還元剤として亜燐酸を2重量%、触媒としてリン酸を0.5重量%で添加して製造し、上記硝酸クロム(A)とクロム酸塩(B)の含量比(A/(A+B))は0.5に制御し、還元比は0.85に制御した。
【0166】
上記組成物を溶液状態で製造する際に、製造された組成物の固形分13%基準で水を61重量%、エチルアルコールを26重量%で添加した。
【0167】
上記によって製造された組成物を溶液状態で油分が除去された試片(7cm(横)×15cm(縦)大きさの三元系溶融亜鉛めっき鋼板)にバー(bar)コーティングした後、熱風乾燥炉(内部温度250℃)で乾燥させた。この時、コーティング層の厚さ(乾燥厚さ)とPMT基準乾燥温度を異ならせて制御し、各試片の平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性及び耐アルカリ性を評価し、その結果を下記の表11に示した。
【0168】
【0169】
上記表11に示すように、コーティング層の厚さを0.3~1.5μmで形成し、PMT基準60℃で乾燥を実施した発明例39~42は、全ての物性において良好以上の結果を示した。それだけでなく、コーティング層を0.8μmの厚さで形成し、PMT基準40~200℃で乾燥を実施した発明例43~45でも良好以上の結果を示した。
【0170】
一方、コーティング層の厚さが0.2μmと薄い比較例21の場合は、耐黒変性及び耐アルカリ性に優れず、平板耐食性及び加工部耐食性が非常に劣った。コーティング層が過度に厚く形成された比較例22は、加工部耐食性が不良な結果を示した。
【0171】
一方、乾燥時の温度がPMT基準40℃未満の比較例23は、組成物が充分に乾燥されないことにより、全ての物性で不良な結果を示した。乾燥時の温度がPMT基準200℃を超えた比較例24は、耐黒変性が不良な結果を示した。これは、乾燥工程を完了した後、最終的に冷却する間に試片から発生した水蒸気によって乾燥設備の上部に結露現象が発生し、試片表面にヒューム(fume)が落ちたことに起因したものである。
【国際調査報告】