(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】油圧パルスユニットを備えた動力工具
(51)【国際特許分類】
B25B 21/02 20060101AFI20241031BHJP
B25F 5/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B25B21/02 J
B25F5/00 D
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024532206
(86)(22)【出願日】2022-11-01
(85)【翻訳文提出日】2024-05-29
(86)【国際出願番号】 EP2022080418
(87)【国際公開番号】W WO2023094118
(87)【国際公開日】2023-06-01
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502212604
【氏名又は名称】アトラス・コプコ・インダストリアル・テクニーク・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100171675
【氏名又は名称】丹澤 一成
(72)【発明者】
【氏名】ピドケ トマス
【テーマコード(参考)】
3C064
【Fターム(参考)】
3C064AA02
3C064AB02
3C064AC05
3C064AC08
3C064BA01
3C064BA33
3C064BB01
3C064BB15
3C064CA03
3C064CA85
3C064CB08
3C064CB17
3C064CB62
3C064CB71
(57)【要約】
本明細書は、モータと;出力軸と;モータに結合され、回転軸の周りで回転可能な慣性駆動部材と、慣性駆動部材で囲まれたオイルチャンバと、出力軸に間欠的に運動エネルギーを伝達するように配置されたインパルス発生手段とを含む油圧パルスユニットと;を備えるインパルス工具に関し、慣性駆動部材は、横断壁を有する末端部をさらに備え、インパルス工具は、オイルチャンバと流体連通する受容空間を少なくとも部分的に画定するように配置された円板状要素をさらに備え、受容空間は、円板状要素と横断壁との間に形成され、インパルス工具は、受容空間と流体連通するように配置された圧縮性インサートをさらに備え、圧縮性インサートは、クローズドセル発泡体で構成される発泡体を含み、圧縮性インサートは、末端部に形成されたインサート空間に配置されている。
【選択図】
図2a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
出力軸(10)と、
前記モータに結合され、回転軸(A-A)の周りで回転可能な慣性駆動部材(21)と、前記慣性駆動部材で囲まれたオイルチャンバ(22)と、前記出力軸に間欠的に運動エネルギーを伝達するように配置されたインパルス発生手段とを含む、油圧パルスユニット(20)と、
を備えるインパルス工具であって、
前記慣性駆動部材(21)は、横断壁(24a)を有する末端部(24)をさらに備え、
前記インパルス工具は、前記オイルチャンバと流体連通する受容空間(27)を少なくとも部分的に画定するように配置された円板状要素(31)をさらに備え、前記受容空間は、前記円板状要素と前記横断壁との間に形成されており、
前記インパルス工具は、前記受容空間と流体連通するように配置された圧縮性インサート(50)をさらに備え、
前記圧縮性インサートは、クローズドセル発泡体で構成される発泡体を含み、
前記圧縮性インサートは、前記末端部(24)に形成されたインサート空間(60)に配置されている、インパルス工具。
【請求項2】
前記インサート空間は、前記受容空間に隣接して配置されている、請求項1に記載のインパルス工具。
【請求項3】
前記インサート空間は、前記末端部の長さの少なくとも2/3にわたって、前記受容空間から軸方向に延びる、請求項2に記載のインパルス工具。
【請求項4】
前記圧縮性インサートの外側境界面と前記インサート空間は合同であり、非圧縮状態の前記圧縮性インサートは、前記インサート空間全体を満たすようになっている、請求項1から3のいずれか一項に記載のインパルス工具。
【請求項5】
前記インサート空間は、前記受容空間と前記末端部に形成されたオイル入口(70)との間に延びており、オイル流路(53)が、前記圧縮性インサートに形成されており、前記受容空間と前記オイル入口とを流体的に接続してオイルの流れが前記圧縮性インサートの一部を通過するのを可能にする流体通路を形成する、請求項2から4のいずれか一項に記載のインパルス工具。
【請求項6】
前記オイル流路は、前記パルスユニットをオイルで満たすためのオイル流路であり、前記オイル流路は、前記圧縮性インサートの中心軸に沿って延びている、請求項5に記載のインパルス工具。
【請求項7】
前記オイル流路は、前記パルスユニットをオイルで満たすためのオイル流路であり、前記オイル流路は、前記圧縮性インサートの中心軸に対して直交する方向に延びている、請求項5に記載のインパルス工具。
【請求項8】
前記圧縮性インサートは、前記パルスユニットの中心軸A-Aに対して回転対称であり、前記圧縮性インサートの半径R2は、前記インサートチャンバの長さに沿って、前記末端部の半径R1の半分以下である、請求項1から7のいずれか一項に記載のインパルス工具。
【請求項9】
前記圧縮性インサートの前記半径R1及び前記末端部の前記変化する半径R2のうちの少なくとも一方は、前記インサートチャンバの長さに沿って変化する、請求項8に記載のインパルス工具。
【請求項10】
前記インサートの体積V
fは、前記オイルチャンバと前記受容空間とが合わせられた総体積Vの10-30%の範囲にある、請求項1から9のいずれか一項に記載のインパルス工具。
【請求項11】
前記インサートの体積V
fは、前記合わせられた総体積Vの10-25%、好ましくは10-20%、より好ましくは10-15%の範囲にある、請求項10に記載のインパルス工具。
【請求項12】
前記クローズドセル発泡体は、永久変形なしで、20-50%の圧縮、好ましくは20-30%、より好ましくは22-27%の変形に耐える発泡材料である、請求項1から11のいずれか一項に記載のインパルス工具。
【請求項13】
前記クローズドセル発泡体のセル径は、0.15-0.35mm、好ましくは0.2-0.3mm、より好ましくは0.25-0.28mmの範囲にある、請求項1から12のいずれか一項に記載のインパルス工具。
【請求項14】
前記クローズドセル発泡体のガス留分は、85-99%の範囲にある、請求項1から13のいずれか一項に記載のインパルス工具。
【請求項15】
前記クローズドセル発泡体は、ポリフッ化ビニルで作られている、請求項1から14のいずれか一項に記載のインパルス工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ねじを締結するための動力工具に関し、より詳細には、油圧パルスユニットと、このユニット内に配置された圧縮性インサートとを有するインパルスタイプの動力工具に関する。
【背景技術】
【0002】
締結用の動力工具は、様々な産業で使用されていることが知られている。例えば、油圧パルスユニットを備えるインパルスタイプの動力工具は、連続的な大量生産に一般的に使用されている。
【0003】
このような工具の油圧ユニットはオイルで満たされている。しかしながら、これらのユニットは、作動時にオイルが加熱されるのでオイルの熱膨張に対応するように設計する必要がある。この熱膨張を吸収するために、オイル中に少量の空気を導入する解決策が提案されている。しかしなから、この種の動力工具では、公知の問題は、パルスユニットを厳密に正確なオイル量で満たすことを必然的に伴うので、オイルの膨張を吸収するための十分な量の空気がパルスユニット内に残ることになる。
【0004】
これらの問題のいくつかを軽減するために、熱膨張に対応するためにオイルチャンバと連通する空気容積を設ける試みがなされている。例えば、オイルが膨張すると、少量のオイルがそのような空気空間に流出することができるので、この空間内の空気は圧縮され、パルスユニットが冷却されると、オイルはオイルチャンバに吸い戻される。しかしながら、オイルが吸い戻される際に、空気容積からの空気がオイルチャンバに導入され、効率が損なわれるリスクがある。
【0005】
提案されている別の解決策は、熱による膨張を補うために弾性要素を使用することに関し、これにより、オイル容積中に何らかの空気を残すことなくパルスユニットを完全に満たすことができる。
【0006】
しかしながら、このような弾性要素は、残留変形を受ける傾向にあり、空気がオイルチャンバに入ることが見込まれ効率が低下し、さらに、多くの場合、嵩張る複雑な設計につながり、及び/又は、慣性に影響を与え、従ってパルスユニットの動作に悪影響を及ぼすという問題が残っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、油圧パルスユニットを備える動力工具の分野における改善の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、オイル容量中の低い空気比率を保証するための対策がより効率的であるインパルス工具を提供することが望ましいであろう。詳細には、そのような対策がパルスユニットの動作及び工具の複雑さに影響を与えない方法で提供されるインパルス工具を提供することが望ましいであろう。これらの問題の1又は2以上によりよく対処するために、独立請求項に定義されるような圧縮性インサートを備えるインパルス工具が提供される。好ましい実施形態は、従属請求項に定義される。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、インパルス工具が提供され、インパルス工具は、モータと、出力軸と、モータに結合され、回転軸の周りで回転可能な慣性駆動部材と、慣性駆動部材で囲まれたオイルチャンバと、出力軸に間欠的に運動エネルギーを伝達するように配置されたインパルス発生手段とを含む油圧パルスユニットと、を備え、慣性駆動部材は、横断壁を有する末端部をさらに備え、インパルス工具は、オイルチャンバと流体連通する受容空間を少なくとも部分的に画定するように配置された円板状要素をさらに備え、受容空間は、円板状要素と横断壁との間に形成される。インパルス工具は、受容空間と流体連通するように配置された圧縮性インサートをさらに備え、圧縮性インサートは、クローズドセル発泡体で構成される発泡体を含み、圧縮性インサートは、末端部に形成されたインサート空間に配置されている。
【0010】
第1の態様によれば、インパルス工具(又は動力工具又は締結工具、これらの用語は、本明細書を通じて互換的に使用される)は、圧縮性インサートを組み込んだデザインによって、上述の問題に対する発明的な解決策を提供する。より詳細には、このデザインは、弾性変形のみによって、すなわち以下に説明するように、永久変形なしで、さらにパルスユニットの効率を損なうことなく、オイルの熱膨張に対応できる比較的に大きなインサートを可能にすることによって、圧縮性インサートの適切な機能を保証する。
【0011】
本発明の圧縮性インサートは、クローズドセル発泡材料から作られる、すなわち、分離した気泡を有する材料であるため、空気がインサート内に閉じ込められ、パルスユニットの作動を妨げないことを保証し、その結果、動力工具の性能を著しく改善することができる。圧縮性インサートは、単一の均一な発泡体によって形成すること、又は互いに結合された1又は2以上の別個の発泡体を備えることができる。インサートは、発泡体を取り囲む外皮をさらに備えることができる。
【0012】
さらに、圧縮性インサートは、ユニットにオイルを満たす前の組み立て時に、パルスユニット内に配置されるようになっている。工具の停止状態、すなわち冷却状態では、圧縮性インサートは応力が加えられていない状態であり、オイルはユニットの内部空間を満たす。インパルスユニットの動作時、オイルが加熱されて膨張が起こると、隣接するインサート空間で圧縮性インサートが圧縮される。しかしながら、工具が停止すると、オイルは再び冷却され、圧縮性インサートは膨張して圧縮されていない状態に戻る。
【0013】
円板状の分離要素は、オイルチャンバと受容空間を分離し、いくつかの実施形態では、オイルチャンバと受容空間との間でオイルが流れ、流体連通を可能にする開口部を備えることができる。このように、圧縮性インサートが流体連通するように配置される別個の受容空間を設けることは、圧縮性インサートが圧力の高速変動から保護される点で有利である(温度の遅い変動とは対照的に)。インサートを高速変動から保護することで、疲労寿命が向上する可能性がある。従って、圧縮性エレメントは、いくつかの実施形態では、主オイルチャンバとは別のチャンバに配置され、いくつかの実施形態では、流体開口部又はオリフィスを介して接続され、このようなオリフィスは、迅速な圧力変動を減衰させるためにさらに貢献することになる。円板状とは、実質的に円形の円周及び直径よりかなり小さい厚さを有する構造体と理解すべきであるが、必ずしも完全に平坦面である必要はない。
【0014】
参照されるインパルス工具は、手持ち式の空気圧式インパルス工具とすること、又は電動工具、例えば電池式工具とすることができる。
【0015】
1つの実施形態によれば、インサート空間は受容空間に隣接して配置されている。これにより、オイルは、膨張する際にインサートに直接作用することができ、インサートがオイルチャンバの外側に配置されるため、パルスユニットへの影響を最小限にすることができる。
【0016】
1つの実施形態によれば、インサート空間は、末端部の長さの少なくとも2/3にわたって、受容空間から軸方向に延びる。1つの実施形態では、インサート空間は、受容空間と末端部の反対側の端壁との間に延びる。より長いデザインは、より小さな半径を可能にし、従って慣性への影響がより少なくなる。
【0017】
いくつかの実施形態では、圧縮性インサートは、インサート空間の全長に沿って延びる。1つの実施形態によれば、圧縮性インサートの外側境界面とインサート空間は合同であり、非圧縮状態の圧縮性インサートは、インサート空間全体を満たすようになっている。これにより、スペースの有効利用が達成される。
【0018】
本発明の圧縮性インサート(及び/又はインサート空間)の形状は、好ましくは、パルスユニットの強度及び動作への影響を最小限にするように選択することができる。より詳細には、高い応力を受ける材料及び/又は慣性モーメントに大きく寄与する材料に影響を与えないように選択される。これは、例えば、半径を可能な限り小さく保つことによって達成することができる。いくつかの実施形態では、要素は、要素の軸方向の長さが半径よりも大きい細長い形状を有するようにさらに設計される。長さは、例えば半径の少なくとも2倍とすることができる。さらに、インサートは、回転対称とすることができる。
【0019】
1つの実施形態によれば、圧縮性インサートは、パルスユニットの中心軸A-Aに対して回転対称であり、圧縮性インサートの半径R1は、インサートチャンバの長さに沿って、末端部の半径R2の半分以下である。回転対称とは、例えば取り付けを容易にするためのスリットなどを無視した、要素の全体的な形状を指す。
【0020】
1つの実施形態によれば、圧縮性インサートの半径R1及び末端部の変化する半径R2のうちの少なくとも一方は、インサートチャンバの長さに沿って変化する。
【0021】
1つの実施形態によれば、インサート空間は、受容空間と末端部に形成されたオイル入口との間に延びており、オイル流路は、圧縮性インサートに形成されており、受容空間とオイル入口とを流体的に接続して流体通路を形成する。これにより、オイルの流れは、インサートの一部を通過することができ、インサートがユニット内に配置された後にパルスユニットを満たすことが容易になる。
【0022】
1つの実施形態によれば、オイル流路は、パルスユニットを満たすためのオイル流路であり、オイル流路は、圧縮性インサートの中心軸に沿って延びている。このようなオイル入口は、末端部の反対側の端壁に形成された入口とすることができる。
【0023】
1つの実施形態によれば、オイル流路は、パルスユニットを満たすための圧縮性インサートの中心軸に対して直交する方向に延びるオイル流路である。このようなオイル入口は、末端部の側壁に形成された入口とすることができる。
【0024】
インサートの体積は、好ましくは、弾性変形のみを保証するために十分に大きいように選択することができるが、これは、発泡体に使用される材料、並びにパルスユニットに使用されるオイルの特性に依存する場合がある。いずれの場合でも、好ましくは、それぞれの体積は、オイルの熱膨張がインサートの適切な圧縮レベルに対応するように選択する必要があり、適切とは、いくつかの実施形態では、弾性変形のみを可能にするレベル、すなわち、インサートの永久変形が生じない、又は小さな永久変形のみを可能にするレベルと理解することができる。
【0025】
例えば、1つの実施形態によれば、インサートの体積Vfは、オイルチャンバと受容空間が合わせられた総体積Vの10-30%の範囲にある。従って、総体積Vは、使用時にパルスユニットに満たされるオイルの総体積に相当する。
【0026】
1つの実施形態によれば、インサートの体積Vfは、合わせられた総体積Vの10-25%、好ましくは10-20%、より好ましくは10-15%の範囲にある。
【0027】
発泡体の材料は、好ましくは耐オイル性であり、高温に耐えることができ、疲労損傷に耐えることができるべきである。
【0028】
1つの実施形態によれば、クローズドセル発泡体は、永久変形なしで、20-50%の圧縮、好ましくは20-30%、より好ましくは22-27%の変形に耐えることができる発泡材料である。
【0029】
1つの実施形態によれば、クローズドセル発泡体のセル径は、0.15-0.35mm、好ましくは0.2-0.3mm、より好ましくは0.25-0.28mmの範囲にある。
【0030】
1つの実施形態によれば、クローズドセル発泡体のガス留分(gas fraction)は、85-99%の範囲にある。
【0031】
正しく選択された発泡体のセル径及びガス留分は、圧縮性インサートの適切な弾性挙動を保証するために重要である。
【0032】
1つの実施形態によれば、クローズドセル発泡体は、ポリフッ化ビニルで作られている。他の例としては、例えばシリコンゴムが挙げられる。
【0033】
本発明の第2の態様によれば、上述のいずれかの実施形態によるインパルス工具に配置されるようになっている圧縮性インサートが提供される。本発明の第2の態様の範囲内で考えられる圧縮性インサートの目的、利点及び特徴は、本発明の第1の態様で言及した上述の説明によって容易に理解される。
【0034】
本発明のさらなる目的、特徴及び利点は、以下の詳細な開示、図面及び添付の特許請求の範囲を検討すれば明らかになるであろう。当業者は、本発明の異なる特徴を組み合わせて、以下に説明する以外の実施形態を作り出すことができることを理解する。
【0035】
本発明は、添付図面を参照して、例示的な実施形態の以下の例示的かつ非限定的な詳細な説明に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】1つの実施形態による例示的な動力工具の側面図である。
【
図2a】1つの実施形態による油圧パルスユニットの断面図である。
【
図2b】1つの実施形態による例示的な圧縮性要素の斜視図である。
【
図3a】1つの実施形態による油圧パルスユニットの断面図である。
【
図3b】1つの実施形態による例示的な圧縮性要素の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
全ての図面は概略図であり、必ずしも縮尺通りではなく、一般に、本発明を明瞭にするために必要な部分のみが示されており、他の部分は省略されるか又は単に示唆される場合がある。
【0038】
図1に示す例示的なインパルス工具は、ハンドル110を備えたハウジング100で構成されるピストル型工具である。出力制御のために、工具はトリガーボタン140を備える。さらに、ハウジング内には、図示しないモータ及び四角端(square ended)出力軸10を有する油圧パルスユニット20が設けられている。
【0039】
図2a(及び
図3a)に示されるように、インパルスユニットは、モータに結合可能であり、回転軸(A-A)の周りで回転可能であり、さらにオイルチャンバ22を取り囲む、慣性駆動部材21を備える。慣性駆動部材21は、モータに結合されるようになっている後部24、すなわち末端部24を備える。出力軸10は、オイルチャンバ22内に延びるインパルス受け部を有し、インパルス発生機構を介して駆動部材21に間欠的に結合されている。インパルス機構の動作自体は、本技術分野において公知であるため、これ以上詳細には説明しない。同様の機構は、従来、例えば米国特許第6,110,045号及び米国特許第13,697,107号に記載されている。
【0040】
円板状要素31は、要素31と末端部24の横断壁24aとの間に形成された受容空間27を画定する。受容空間27は、オイルチャンバ22と流体連通しており(例えば、図示しない円板状要素に設けられた流体開口部によって)、熱膨張が生じたときにオイルがオイルチャンバ22から流入することができるチャンバとして説明することができる。
【0041】
図示の実施形態では、インサート空間60は、受容空間27に隣接して配置されており、圧縮性インサート50は、このインサート空間60の中に配置されている。従って、インサート50は、パルスユニット内のオイルと流体連通している、すなわち、オイルは、圧縮性インサート50に作用し、例えば熱膨張時に圧縮性インサート50を圧縮させる。図示の実施形態では、インサート空間60は、受容空間27から末端部に形成されたオイル入口70まで軸方向に延びる。
【0042】
図示の実施形態における圧縮性インサートは、応力がかかっていない状態では、インサート空間全体を満たしている、すなわち、圧縮性インサート50の外側境界面とインサート空間60とは合同である。さらに、オイル流路51は、圧縮性インサートの中心軸に沿って延び、受容空間とオイル入口を接続する流体通路を形成しているので、パルスユニット内をオイルで満たすことができる。
【0043】
図2bは、インサートを斜視図で詳細に示す。インサートは、組み立てを容易にするために設けられたスリット51を除いて、全体的に回転対称構造を有することが分かる。圧縮性インサート50(従って合同空間60)の形状は、図示の実施形態では、パルスユニットの動作への影響を最小限にしながら、可能な限り大きなインサートを実現するようにさらに選択されている。インサートに細長い形状を与えることにより、末端部の応力領域への影響及び慣性への影響を最小限にするために、回転対称インサート50の可変半径R2は、小さく保たれる。
【0044】
図示の実施形態では、圧縮性インサート50の体積は、オイルチャンバと受容空間の合計体積(使用中のシステム内のオイルの総体積に相当)の約15%である。これは、オイルが膨張する際の変形を比較的小さくすることができ、結果として、程度の差はあるがインサートの完全な弾性変形が保証される(すなわち、永久変形は生じない)。
【0045】
図示のインサートは、クローズド発泡材料、例示的にはポリフッ化ビニルから作られている。
【0046】
図3a-3bは、本発明の第2の実施形態を示す。第1の実施形態と同様に、インサート空間60’は、受容空間27に隣接して配置され、圧縮性インサート50’は、このインサート空間60’の中に配置されている。
【0047】
この例示的な実施形態では、インサート空間は末端部24の大部分にわたって延びるが、必ずしも後部末端壁24bには到達しない。圧縮性インサートは、この例示的な実施形態でも、応力がかかっていない状態では、インサート空間全体を満たしている。
【0048】
図3bは、インサート50’を斜視図で詳細に示す。
図2bに示したインサートとは異なり、インサート50’は回転対称ではなく、パルスユニットの動作への影響を最小限にしながら、可能な限り大きなインサートを実現するための異なるアプローチが示されている。これは、インサートの中心から大きな距離の材料の量をできるだけ減らすことによる。切り欠き、又は凹部52’は、この場合、インサートの中心軸に直交する方向に延びるオイル流路を形成する。これは、オイル入口71’から入口50’を通るオイルの流れを可能にする。
【0049】
インパルスユニットの作動時、慣性駆動部材21はモータによって回転され、出力軸10にトルクインパルスが達成される。オイルが加熱されて膨張すると、一部のオイルは、オイルチャンバ22から流体開口部(図示せず)を介して受容空間27に入ることになり、その結果、隣接するインサート空間60;60’内で圧縮性インサート50;50’が圧縮される。しかしながら、工具が停止すると、オイルは冷却され、圧縮性インサートは、膨張して非圧縮状態に戻ることができる。
【0050】
本発明は、図面及び上記の説明で詳細に図示及び説明されているが、このような図示及び説明は、例示的又は例示的であり、制限的ではないと考える必要があり、本発明は、開示された実施形態に限定されない。当業者は、特許請求の範囲に定義された範囲内で多くの修正、変形及び変更が考えられることを理解する。特許請求の範囲において、単語「備える(comprising)」は、他の要素又はステップを除外せず、不定冠詞「a」又は「an」は、複数を除外しない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合せを好都合に使用できないことを示すものではない。特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も、特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
出力軸(10)と、
前記モータに結合され、回転軸(A-A)の周りで回転可能な慣性駆動部材(21)と、前記慣性駆動部材で囲まれたオイルチャンバ(22)と、前記出力軸に間欠的に運動エネルギーを伝達するように配置されたインパルス発生手段とを含む、油圧パルスユニット(20)と、
を備えるインパルス工具であって、
前記慣性駆動部材(21)は、横断壁(24a)を有する末端部(24)をさらに備え、
前記インパルス工具は、前記オイルチャンバと流体連通する受容空間(27)を少なくとも部分的に画定するように配置された円板状要素(31)をさらに備え、
前記円板状要素に設けられた開口部であって、該開口部を通ってオイルが前記オイルチャンバと前記受容空間との間で流れることができる開口部を用いて、前記オイルチャンバと前記受容空間(27)は流体連通しており、前記受容空間は、前記円板状要素と前記横断壁との間に形成されており、
前記インパルス工具は、前記受容空間と流体連通するように配置された圧縮性インサート(50)をさらに備え、
前記圧縮性インサートは、クローズドセル発泡体で構成される発泡体を含み、
前記圧縮性インサートは、前記末端部(24)に形成されたインサート空間(60)に配置されて
おり、前記インサート空間は、前記受容空間に隣接して配置されており、前記インサート空間は、前記受容空間と前記末端部に形成されたオイル入口(70)との間に延びており、オイル流路(53)が、前記圧縮性インサートに形成されており、前記受容空間と前記オイル入口とを流体的に接続してオイルの流れが前記圧縮性インサートの一部を通過するのを可能にする流体通路を形成する、インパルス工具。
【請求項2】
前記インサート空間は、前記末端部の長さの少なくとも2/3にわたって、前記受容空間から軸方向に延びる、
請求項1に記載のインパルス工具。
【請求項3】
前記圧縮性インサートの外側境界面と前記インサート空間は合同であり、非圧縮状態の前記圧縮性インサートは、前記インサート空間全体を満たすようになっている、
請求項1に記載のインパルス工具。
【請求項4】
前記オイル流路は、前記パルスユニットをオイルで満たすためのオイル流路であり、前記オイル流路は、前記圧縮性インサートの中心軸に沿って延びている、
請求項1に記載のインパルス工具。
【請求項5】
前記オイル流路は、前記パルスユニットをオイルで満たすためのオイル流路であり、前記オイル流路は、前記圧縮性インサートの中心軸に対して直交する方向に延びている、
請求項1に記載のインパルス工具。
【請求項6】
前記圧縮性インサートは、前記パルスユニットの中心軸A-Aに対して回転対称であり、前記圧縮性インサートの半径R2は、前記インサートチャンバの長さに沿って、前記末端部の半径R1の半分以下である、
請求項1に記載のインパルス工具。
【請求項7】
前記圧縮性インサートの前記半径R1及び前記末端部の前記変化する半径R2のうちの少なくとも一方は、前記インサートチャンバの長さに沿って変化する、
請求項6に記載のインパルス工具。
【請求項8】
前記インサートの体積V
fは、前記オイルチャンバと前記受容空間とが合わせられた総体積Vの10-30%の範囲にある、
請求項1に記載のインパルス工具。
【請求項9】
前記インサートの体積V
fは、前記合わせられた総体積Vの10-25%、好ましくは10-20%、より好ましくは10-15%の範囲にある、
請求項8に記載のインパルス工具。
【請求項10】
前記クローズドセル発泡体は、永久変形なしで、20-50%の圧縮、好ましくは20-30%、より好ましくは22-27%の変形に耐える発泡材料である、
請求項1に記載のインパルス工具。
【請求項11】
前記クローズドセル発泡体のセル径は、0.15-0.35mm、好ましくは0.2-0.3mm、より好ましくは0.25-0.28mmの範囲にある、
請求項1に記載のインパルス工具。
【請求項12】
前記クローズドセル発泡体のガス留分は、85-99%の範囲にある、
請求項1に記載のインパルス工具。
【請求項13】
前記クローズドセル発泡体は、ポリフッ化ビニルで作られている、
請求項1に記載のインパルス工具。
【国際調査報告】