(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】ポリオレフィン製造装置
(51)【国際特許分類】
C08F 10/00 20060101AFI20241031BHJP
C08F 2/01 20060101ALI20241031BHJP
C08F 4/76 20060101ALN20241031BHJP
C08F 297/00 20060101ALN20241031BHJP
【FI】
C08F10/00
C08F2/01
C08F4/76
C08F297/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532343
(86)(22)【出願日】2022-12-01
(85)【翻訳文提出日】2024-05-29
(86)【国際出願番号】 KR2022019373
(87)【国際公開番号】W WO2023101471
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0172173
(32)【優先日】2021-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】515215276
【氏名又は名称】エスケー ジオ セントリック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】キム デ ハク
(72)【発明者】
【氏名】クァク ギル ス
(72)【発明者】
【氏名】ナ スン ジェ
(72)【発明者】
【氏名】シン サン ヨン
【テーマコード(参考)】
4J011
4J015
4J026
4J100
【Fターム(参考)】
4J011AA05
4J011DA06
4J011DB18
4J011DB32
4J015DA16
4J015DA17
4J026HA03
4J026HA27
4J026HA39
4J026HB04
4J026HB27
4J026HB39
4J026HB45
4J026HB48
4J100AA02P
4J100AA03Q
4J100CA04
4J100DA42
4J100DA47
4J100FA08
4J100FA22
4J100JA00
(57)【要約】
本発明は、単一の気相反応器を含むポリオレフィン製造装置に関する。例示的な実施形態に係るポリオレフィン製造装置は、オレフィンモノマーを連続重合してプレポリマー(prepolymer)またはポリマーを生産する装置であり、第1反応空間を含むループ反応器と、前記ループ反応器で生成された第1生成物が投入される第2反応空間を含む単一の気相反応器とを含み、前記第1反応空間に対する第2反応空間の体積比を1.2以上に調整する。これにより、気相反応器を複数備えなくても、単一の気相反応器の構成だけでインパクトポリプロピレンのような高含有量のエチレン-プロピレンゴムを含むポリオレフィンを製造することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1反応空間を含むループ反応器と、
前記ループ反応器で生成された第1生成物が投入される第2反応空間を含む単一の気相反応器とを含み、
前記第1反応空間に対する第2反応空間の体積比は1.2以上である、ポリオレフィン製造装置。
【請求項2】
前記ループ反応器は、前記第1反応空間において、液体オレフィンモノマーおよびポリオレフィンを含むスラリーから第1生成物を生成する、請求項1に記載のポリオレフィン製造装置。
【請求項3】
前記ループ反応器は、複数のループ反応器が直列に連結されている、請求項1に記載のポリオレフィン製造装置。
【請求項4】
前記ループ反応器の作動温度は50~100℃である、請求項1に記載のポリオレフィン製造装置。
【請求項5】
前記ループ反応器の作動圧力は10~100Barである、請求項1に記載のポリオレフィン製造装置。
【請求項6】
前記ループ反応器は、300~40,000ppmvの濃度の水素(H
2)雰囲気で作動される、請求項1に記載のポリオレフィン製造装置。
【請求項7】
前記気相反応器は、前記第2反応空間において、エチレン-プロピレンゴムを含むポリオレフィンを形成する、請求項1に記載のポリオレフィン製造装置。
【請求項8】
前記気相反応器の作動温度は50~100℃である、請求項1に記載のポリオレフィン製造装置。
【請求項9】
前記気相反応器の作動圧力は1~60Barである、請求項1に記載のポリオレフィン製造装置。
【請求項10】
前記ポリオレフィンは、エチレン-プロピレンゴム(EPR;Ethylene-Propylene Rubber)の含有量が30%以上である、請求項1に記載のポリオレフィン製造装置。
【請求項11】
前記ポリオレフィンは、インパクトポリプロピレン(Impact PP;Impact Polypropylene)である、請求項1に記載のポリオレフィン製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン製造装置に関し、より詳細には、単一の気相反応器を含むポリオレフィン製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン共重合体のような様々な種類のポリオレフィンを生産するためのオレフィンの重合方法として、固体重合体と液体単量体で重合スラリーを形成し、気相反応器を用いてポリオレフィンを重合する方法が知られている。2つの気相流動層反応器を用いたユニポール工程は、他のポリオレフィン重合方法に比べて経済性が高く、重合媒質としてプロピレンのような単量体を使用するスラリー重合方法は、高濃度の単量体を提供することにより重合反応の速度を最大化することができる。
【0003】
一方、分子量(MW)および分子量分布(MWD)は、ポリオレフィンの物理的・機械的特性およびその適用に影響を与える。分子量が高いほど、ポリオレフィンの機械的特性は高くなるが、流動性が低下するため、製造工程に困難をもたらす。
【0004】
気相反応器で製造されるポリオレフィンの機械的および物理的特性を向上させるために、複数のスラリー重合反応器と気相反応器を連続的に連結する多段重合方法が使われている。ループ反応器(Loop Reactor)と気相反応器(GPR;Gas Phase Reactor)からなる工程において、エチレン-プロピレンゴム(EPR;Ethylene-Propylene Rubber)を30%以上含有する反応器製造熱可塑性ポリオレフィン(rTPO;reactor-made Thermoplastic Polyolefin)製品を製造するためには、少なくとも2つの気相反応器が連結されたダブルGPRシステムが必要である。
【0005】
これに関して、欧州特許登録EP 0503791 B1は、直列に連結されたダブルGPRによって比較的高い分子量を有するポリマーの製造工程を開示している。しかしながら、直列に連結された工程の各反応器における分子量、化学成分および結晶化度(crystallinity)の差異により、製造される最終ポリマーは均質性が低下することになる。また、ダブルGPRシステムの場合は、粒子搬送過程でのバルブ問題による頻繁な点検が必要であり、単一の気相反応器(Single GPR)システムと比較して、循環圧縮機(Recycle Compressor)、ガス分離/回収設備、粒子搬送設備などの追加設備が必要となる問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、単一の気相反応器を含みながらもエチレン-プロピレンゴムを高含有量で含む熱可塑性ポリオレフィンを製造できる工程効率及び安定性が向上したポリオレフィン製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
例示的な実施形態に係るポリオレフィン製造装置は、オレフィンモノマーを連続重合してプレポリマー(prepolymer)またはポリマーを生産する装置であり、第1反応空間を含むループ反応器と、前記ループ反応器で生成された第1生成物が投入される第2反応空間を含む単一の気相反応器(Single Gas Phase Reactor)とを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、前記第1反応空間に対する第2反応空間の体積比は1.2以上であってもよい。
【0009】
いくつかの実施形態では、前記ループ反応器は、前記第1反応空間において、液体オレフィンモノマーおよびポリオレフィンを含むスラリーから第1生成物を生成することができる。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記ループ反応器は、複数のループ反応器が直列に連結されてもよい。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記ループ反応器の作動温度は50~100℃であってもよい。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記ループ反応器の作動圧力は10~100Barであってもよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記ループ反応器は、300~40,000ppmvの濃度の水素(H2)雰囲気で作動することができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記単一の気相反応器は、前記第2反応空間において、エチレン-プロピレンゴムを含むポリオレフィンを形成することができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記単一の気相反応器の作動温度は50~100℃であってもよい。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記単一の気相反応器の作動圧力は1~60Barであってもよい。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記ポリオレフィンは、エチレン-プロピレンゴム(EPR;Ethylene-Propylene Rubber)の含有量が30%以上であってもよい。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記ポリオレフィンは、インパクトポリプロピレン(Impact PP;Impact Polypropylene)であってもよい。
【発明の効果】
【0019】
例示的な実施形態に係るポリオレフィン製造装置は、オレフィンモノマーを連続重合してプレポリマー(prepolymer)またはポリマーを生産する装置であり、第1反応空間を含むループ反応器と、前記ループ反応器で生成された第1生成物が投入される第2反応空間を含む単一の気相反応器とを含み、前記第1反応空間に対する第2反応空間の体積比を1.2以上に調整する。これにより、気相反応器を複数備えなくても単一の気相反応器の構成だけでも、インパクトポリプロピレンのような高含有量のエチレン-プロピレンゴムを含むポリオレフィンを製造することができる。
【0020】
また、前記ポリオレフィン製造装置は、単一の気相反応器で構成されるため、循環圧縮機、ガス分離/回収設備、粒子搬送設備等の追加の設備が不要であり、工程効率及び安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、例示的な一実施形態に係るポリオレフィン製造装置の概略図である。
【
図2】
図2は、例示的な他の一実施形態に係るポリオレフィン製造装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を説明するにあたり、関連する公知技術に関する具体的な説明が本発明の要旨を不明確にする虞があると判断される場合には、その詳細な説明を省略する。また、後述する用語は、本発明における機能を考慮して定義された用語であり、使用者、運用者の意図または慣例などによって異なり得る。従って、その定義は、本明細書全般に亘る内容に基づいて行われるべきである。
【0023】
本発明の技術的思想は、特許請求の範囲により決定される。また、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に効率的に説明するための一手段に過ぎない。
【0024】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を説明する。しかし、これは例示に過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0025】
図1は、例示的な一実施形態に係るポリオレフィン製造装置の概略図である。
図2は、例示的な他の一実施形態に係るポリオレフィン製造装置の概略図である。
【0026】
図1~
図2を参照すると、例示的な実施形態に係るポリオレフィン製造装置100は、第1反応空間111を含むループ反応器110と、第2反応空間121を含む単一の気相反応器120とを含むことができる。
【0027】
前記ポリオレフィン製造装置100とは、1つ以上のオレフィン単量体がポリオレフィン製造装置100に供給され、重合反応によって製造されたポリオレフィンが回収される装置を意味する。
【0028】
前記オレフィン単量体はエチレンまたはプロピレンであってもよいが、これらに限定されず、他のオレフィン単量体を使用することもできる。他のオレフィン単量体は、例えば4~8個の炭素原子を有するオレフィンを含むことができる。これにより、エチレンまたはプロピレンの単独重合体または4~8個の炭素で構成される1つ以上のアルファオレフィン単量体と、エチレン及び/またはプロピレンとの共重合体を製造することが可能である。好ましいオレフィン単量体としては、非限定的な例として、ブタ-1-エン(but-1-ene)、イソブテン、ペンタ-1-エン(pent-1-ene)、ヘキサ-1-エン(hex-1-ene)、ヘキサジエン、イソプレン、スチレン、4-メチルペンタ-1-エン(4-methylpent-1-ene)、オクタ-1-エン(oct-1-ene)およびブタジエンを含む。
【0029】
例示的な実施形態に係るポリオレフィン製造装置100をエチレン及び/またはプロピレンとオレフィン単量体との共重合に使用する場合には、エチレン及び/またはプロピレンを共重合体の主要成分として使用することが好ましい。
【0030】
前記ループ反応器110は、第1反応空間111がループ(loop)状に配列されるパイプ状の反応器である。ループ反応器110は、反応に必要な熱伝達を容易にし、反応物の滞留時間を短くするために、表面積に対して体積比が高いことが好ましい。ループ反応器110は、複数のループ反応器110a,110bが直列に連結されるように配置されてもよい。
【0031】
前記ループ反応器110は、第1反応空間111において、予備重合体(prepolymer)を用いて液体オレフィンモノマー及びポリオレフィンを含むスラリーを形成することができ、スラリーからホモオレフィン単量体の単位からなるホモポリマー(Homopolymer)を形成することができる。
【0032】
前記予備重合体は、別の予備重合反応器(Prepolymerization Reactor)内で触媒、助触媒及び外部電子供与体(External Donor)とオレフィンの混合物を重合して生成することができ、重合体が触媒の表面に付着している固体重合粒子であってもよい。
【0033】
前記触媒は、所望のポリオレフィン重合体を製造することができる任意の触媒であってもよい。これに限定されないが、例えば、前記触媒は、特にチタン、ジルコニウム及び/またはバナジウム触媒などの遷移金属に基づくチーグラー・ナッタ触媒(Ziegler-Natta catalysts)であってもよい。
【0034】
前記助触媒は前記触媒を活性化し、高い触媒活性を維持することを可能にする。前記助触媒は金属アルキル化合物であってもよく、例えば、エチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、ジメチルアルミニウムクロリド、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ-イソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム、メチルアルミンオキサン(MAO)、ヘキサイソブチルアルミンオキサン(HIBAO)、テトライソブチルアルミンオキサン(TIBAO)、イソプレニルアルミニウムであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0035】
前記外部電子供与体は、ポリオレフィン重合において反応物として使用される電子供与化合物である。前記外部電子供与体は、少なくとも一対の電子を金属原子に供与できる少なくとも1つの官能基を含有し、ポリオレフィン重合における触媒システムの立体選択性、水素感受性、エチレン感受性、共単量体混入のランダム性及び触媒生産性に作用することができる。前記外部電子供与体は、例えば、ケイ素を中心原子として有するSi-OCOR、Si-OR及び/またはSi-NR2結合を含有する有機シラン化合物からなる電子供与体とRが1個~20個の炭素原子を有するアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル又はシクロアルキルであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0036】
一方、前記予備重合体は、液相/液体流の形態でポンプなどの適切な手段によってループ反応器110に投入することができる。
【0037】
前記ループ反応器110の作動温度は50~100℃であり、好ましくは55~95℃、より好ましくは60~90℃であってもよい。前記作動温度の範囲では、粒子の過熱、軟化及び凝集を抑制できるとともに、ホモポリマーへの適切な重合反応を誘導することができる。
【0038】
前記ループ反応器110の作動圧力は10~100Barであり、好ましくは20~80Bar、より好ましくは30~60Barであってもよい。製造されるホモポリマーの密度を適切に維持するために、前記作動圧力の範囲を維持することが好ましい。
【0039】
前記ループ反応器110は、ホモポリマーの分子量を調整するために、300~40,000ppmvの濃度の水素(H2)雰囲気で作動することができ、好ましくは400~35,000ppmvの濃度の水素(H2)雰囲気、より好ましくは500~30,000ppmvの濃度の水素(H2)雰囲気で作動することができる。水素の濃度を増加させると、生成されるホモポリマーのメルトフローインデックス(MI)を増加させることができる。水素の濃度を減少させると、ホモポリマーのメルトフローインデックスを減少させることができる。
【0040】
前記単一の気相反応器120は、反応ガス混合物を気相反応器120の下部から供給され、上部からガスを再び除去して流動状態に維持される内部空間で重合反応を進行する反応器であり、ループ反応器110で形成されたホモポリマーを適切な手段によって供給されて気相反応を行うことによってポリオレフィンを形成することができる。
【0041】
前記単一の気相反応器120から得られるポリオレフィンは、ランダム共重合体、ブロック共重合体またはインパクト共重合体であってもよく、インパクト共重合体は、ポリオレフィンとポリオレフィンゴムとの密接な混合物を含有することができる。例えば、ポリオレフィンゴムを含むインパクト共重合体を形成することができる。ポリオレフィンゴムの例としては、エチレン-プロピレンゴム(EPR)およびエチレン-プロピレン-ジエンモノマー三元共重合体ゴム(EPDM)が挙げられる。
【0042】
特に、前記単一の気相反応器120は、ホモポリマー内にエチレン-プロピレンゴムを形成することにより、エチレン-プロピレンゴムを含むポリオレフィンを形成することができる。形成されたポリオレフィンは、エチレン-プロピレンゴム(EPR)を30%以上含有することができる。エチレン-プロピレンゴム(EPR)を30%以上含有するポリオレフィンは、エチレン-プロピレンゴムにより衝撃強度を顕著に強化することができる。ゴムのような性質を有するエチレン-プロピレンゴムは、硬質相のポリオレフィンマトリックス中で相分離して存在することができる。
【0043】
また、前記ポリオレフィンは、インパクトポリプロピレン(Impact PP;Impact Polypropylene)であってもよい。インパクトポリプロピレンは、エチレン-プロピレンゴム(ethylene-propylene rubber、EPR)とポリプロピレンホモポリマーからなり、衝撃強度が低い脆性のポリプロピレンホモポリマーの弱点を補うために重合された高分子である。
【0044】
前記単一の気相反応器120の作動温度は50~100℃であり、好ましくは55~95℃、より好ましくは60~90℃であってもよい。前記単一の気相反応器120の作動圧力は1~60Barであり、好ましくは3~50Bar、より好ましくは5~40Barであってもよい。高含有量のエチレン-プロピレンゴムを含むポリオレフィンを形成するために、前記の作動温度および作動圧力の範囲を維持することが好ましい。
【0045】
前記気相反応器120は、約30~70%の気相反応器レベル(GPR Level)で作動することができる。気相反応器レベル(GPR Level)は、気相反応器120の高さに対する気相反応器120内に滞留するポリマー粒子ベッド(Bed)の高さを意味する。前記気相反応器のレベルが約30%未満であると、安定した流動層の形成が困難になることがあり、約70%を超えると、一部の粒子がガス(Gas)によって反応器の上部にキャリオーバー(Carryover)される恐れがある。
【0046】
例示的な実施形態では、前記第1反応空間111に対する第2反応空間121の体積比は1.2以上であってもよい。前記体積比が1.2未満であると、ポリオレフィンに含まれるエチレン-プロピレンゴムの含有量が30%未満となる問題がある。第1反応空間111に対する第2反応空間121の体積比が1.2以上であると、ポリオレフィンに含まれるエチレン-プロピレンゴムの含有量が30%以上となり、所望の効果を達成できるため、体積比の上限は特に限定しない。いくつかの例示的な実施形態では、高分子の均一性または工程効率を考慮して、体積比の上限を5.0とし、又はいくつかの例示的な実施形態では、体積比の上限を3.0とすることができるが、これらに限定されない。
【0047】
実施例及び比較例
エチレン、プロパン希釈剤および水素を触媒と共に連続的に予備混合タンク(Premixing Tank)に投入して一定時間混合した後、プロピレンを予備重合反応器(Prepolymerization Reactor)に投入して予備重合体(Prepolymer)を形成した。
【0048】
形成された予備重合体をループ反応器に投入し、液体プロピレンと共に水素雰囲気中でスラリー反応を行うことにより、ホモポリマー(Homopolymer)を形成した。ループ反応器の作動温度は80℃、作動圧力は40bar、水素の濃度は10,000ppmvに設定した。
【0049】
形成されたホモポリマーを気相反応器に投入し、エチレン、プロピレンおよび水素雰囲気中で気相反応を行うことにより、ポリオレフィンを製造した。気相反応器の作動温度は80℃、作動圧力は10Barに設定し、気相反応器のレベル(GPR Level)は約65%に設定した。
【0050】
実施例と比較例で使用したループ反応器および気相反応器の条件を下記表1に示す。
【0051】
【0052】
最終的に得られたポリオレフィンの特性を下記表2に示す。
【0053】
EPR含有量とは、Crystex装置(Polymer Char社製)を用いて測定したXS含有量を意味する。MIは、ASTM D1238に従って、230℃の温度および2.16kgの荷重下で測定した。I-zodは、前記ポリオレフィンをモールドした試料を3.2mm厚にした後、ASTM D256に従って各温度(23℃及び-20℃)において射出試験片を測定した。曲げ強度は、ASTM D648に従って射出試験片で測定した。
【0054】
【0055】
表1及び2から、ループ反応器の反応空間に対する気相反応器の体積比が1.20以上であると、単一の気相反応器の構成だけでもエチレン-プロピレンゴム(EPR)の含有量が30%以上であるポリオレフィンを製造できることを確認した。
【0056】
したがって、例示的な実施形態に係るポリオレフィン製造装置は、ループ反応器の反応空間に対する気相反応器の体積比を前述の範囲内に調整することにより、気相反応器を複数備えなくても、単一の気相反応器の構成だけで高含有量のエチレン-プロピレンゴムを含むポリオレフィン、特にインパクトポリプロピレンを効率よく製造することができる。
【国際調査報告】