(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】生分解性ポリエステル樹脂およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 63/66 20060101AFI20241031BHJP
C08G 63/78 20060101ALI20241031BHJP
C08G 63/85 20060101ALI20241031BHJP
C08L 101/16 20060101ALN20241031BHJP
【FI】
C08G63/66 ZBP
C08G63/78
C08G63/85
C08L101/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532357
(86)(22)【出願日】2022-11-25
(85)【翻訳文提出日】2024-05-29
(86)【国際出願番号】 KR2022018852
(87)【国際公開番号】W WO2023106707
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】10-2021-0173964
(32)【優先日】2021-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】キム,ホ ソブ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ノ ウ
(72)【発明者】
【氏名】ホン,チュン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】ノ,キョン ギュ
(72)【発明者】
【氏名】パク,キ ヒョン
【テーマコード(参考)】
4J029
4J200
【Fターム(参考)】
4J029AA05
4J029AB01
4J029AB04
4J029AC02
4J029AC03
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4J029AD07
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4J200EA04
4J200EA05
(57)【要約】
本発明は、ポリエステル樹脂およびその製造方法に関する。具体的には、本発明の一実施形態では、フランジカルボン酸系化合物、脂肪族ジオール系化合物およびラクトン系化合物を含む単量体混合物の共重合体からなるポリエステル樹脂を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フランジカルボン酸系化合物、脂肪族ジオール系化合物およびラクトン系化合物を含む単量体混合物の共重合体からなる、ポリエステル樹脂。
【請求項2】
前記フランジカルボン酸系化合物は、下記化学式1で表される、請求項1に記載のポリエステル樹脂:
【化1】
前記化学式1中、
L
1およびL
2はそれぞれ独立して、単結合、または置換もしくは無置換の炭素数1~10のアルキレンである。
【請求項3】
前記脂肪族ジオール系化合物は、下記化学式2で表される、請求項1に記載のポリエステル樹脂:
【化2】
前記化学式2中、
L
3およびL
4はそれぞれ独立して、置換または無置換の炭素数1~10のアルキレンである。
【請求項4】
前記ラクトン系化合物は、下記化学式3で表される、請求項1に記載のポリエステル樹脂:
【化3】
前記化学式3中、
L
5は、置換または無置換の炭素数1~10のアルキレンである。
【請求項5】
前記ポリエステル樹脂は、数平均分子量(Mn)が50,000~200,000g/molである、請求項1に記載のポリエステル樹脂。
【請求項6】
前記ポリエステル樹脂は、分子量分布(MWD)が1.0~3.0である、請求項1に記載のポリエステル樹脂。
【請求項7】
前記ポリエステル樹脂は、CIE1976 L*a*b*表色系によるL*値が93以上であり、a*値が0~2であり、b*値が7以下である、請求項1に記載のポリエステル樹脂。
【請求項8】
前記ポリエステル樹脂は、下記数式1による固有粘度の変化量(△IV
12)が0.80~1.0である、請求項1に記載のポリエステル樹脂:
[数式1]
△IV
12=IV
1-IV
2
前記数式1中、
IV
1は25℃での固有粘度であり、IV
2は35℃での固有粘度である。
【請求項9】
前記ポリエステル樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が-60~10℃である、請求項1に記載のポリエステル樹脂。
【請求項10】
前記共重合体は、ランダム共重合体またはブロック共重合体である、請求項1に記載のポリエステル樹脂。
【請求項11】
前記ブロック共重合体は、第1オリゴマーおよび第2オリゴマーのブロック共重合体であり、
前記第1オリゴマーは、フランジカルボン酸系化合物および第1脂肪族ジオール系化合物の重合体からなり、
前記第2オリゴマーは、ラクトン系化合物および第2脂肪族ジオール系化合物の重合体からなる、請求項10に記載のポリエステル樹脂。
【請求項12】
前記ブロック共重合体は、第1オリゴマーおよび単量体のブロック共重合体であり、
前記第1オリゴマーは、フランジカルボン酸系化合物および第1脂肪族ジオール系化合物の重合体からなり、
前記単量体はラクトン系化合物である、請求項10に記載のポリエステル樹脂。
【請求項13】
前記第1オリゴマーでの、前記フランジカルボン酸系化合物および前記第1脂肪族ジオール系化合物のモル比は5:1~1:10である、請求項11または12に記載のポリエステル樹脂。
【請求項14】
前記第2オリゴマーでの、前記ラクトン系化合物および前記第2脂肪族ジオール系化合物の重合体のモル比は5:1~1:10である、請求項11に記載のポリエステル樹脂。
【請求項15】
前記第1オリゴマーおよび前記第2オリゴマーのモル比は10:1~1:10である、請求項11に記載のポリエステル樹脂。
【請求項16】
前記第1オリゴマーと前記単量体のモル比は10:1~1:10である、請求項12に記載のポリエステル樹脂。
【請求項17】
フランジカルボン酸系化合物、脂肪族ジオール系化合物およびラクトン系化合物を含む単量体混合物を共重合させる段階を含む、ポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項18】
前記単量体混合物を共重合させる段階は、
フランジカルボン酸系化合物および第1脂肪族ジオール系化合物をエステル化反応させて第1オリゴマーを製造する段階と、
ラクトン系化合物および第2脂肪族ジオール系化合物をエステル化反応させて第2オリゴマーを製造する段階と、
前記第1オリゴマーおよび前記第2オリゴマーをエステル化反応、予備重合反応および重縮合反応させる段階と、を含む、請求項17に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項19】
前記単量体混合物を共重合させる段階は、
フランジカルボン酸系化合物および脂肪族ジオール系化合物をエステル化反応させて第1オリゴマーを製造する段階と、
前記第1オリゴマーおよびラクトン系化合物単量体をエステル化反応、予備重合反応および重縮合反応させる段階と、を含む、請求項17に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項20】
前記第1オリゴマーの製造は、熱安定剤を含むチタン(Ti)系触媒の存在下で行われる、請求項18または19に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項21】
前記第2オリゴマーの製造は、アンチモン(Sb)系触媒の存在下で行われる、請求項18に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性ポリエステル樹脂、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル(polyester)樹脂は、主鎖(main chain)にエステル(ester、RO-C(=O)-R’)官能基を有する高分子樹脂をいい、様々な産業分野で包装用、ディスプレイ用、絶縁材料用など多様な用途に使用されている。
【0003】
その代表的な例としては、テレフタル酸(terephthalic acid、TPA)とエチレングリコール(ethylene glycol、EG)の反応によって製造される、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate(PET))樹脂が挙げられる。
【0004】
ただし、テレフタル酸の主原料はパラキシレンであり、これは原油を精製して製造されるものである。したがって、テレフタル酸の製造および使用は原油資源の枯渇を誘発する。また、テレフタル酸の分解時、二酸化炭素排出量が増加して環境汚染を誘発し、温暖化などの気候変化を引き起こす可能性がある。
【0005】
これに関連して、ポリエステル樹脂の製造時、テレフタル酸を2,5-フランジカルボン酸(2,5-Furandicarboxylic acid、FDCA)に代替しようとする試みが行われている。ここで、フランジカルボン酸はバイオマス由来の素材であり、原油資源の枯渇を防止し、その生分解性に起因して環境汚染、気候変化などを最小化することができる。
【0006】
ただし、フランジカルボン酸は熱安定性が低い化合物であり、これをジオール成分とエステル化反応させる工程で黄変、褐変などの熱変色を誘発する。
【0007】
このような問題は、単純にフランジカルボン酸を脂肪族ジカルボン酸と混合してジオール成分と反応させるだけでは解決できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、優れた生分解性を示しながらも、製造工程中の熱変色が抑制されたポリエステル樹脂を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、フランジカルボン酸系化合物、脂肪族ジオール系化合物およびラクトン系化合物を含む単量体混合物;の共重合体からなるポリエステル樹脂を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、優れた生分解性を示しながらも、製造工程中の熱変色が抑制されたポリエステル樹脂を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(用語の定義)
本明細書全体で、ある部分がある構成要素を「含む」というとき、これは特に反対になる記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0012】
本明細書全体で使用される程度の用語「~(する)段階」または「~の段階」は「~のための段階」を意味しない。
【0013】
本明細書において「残基(moiety)」は、特定の化合物が化学反応に参加したとき、その化学反応の生成物に含まれ、前記特定の化合物由来の一定の部分または単位を意味する。
【0014】
例えば、前記ポリエステル樹脂において、前記フランジカルボン酸系化合物由来の「残基」は、フランジカルボン酸系化合物由来の部分を意味する。
【0015】
本明細書で使用された用語「アルキル」は、他の説明がない限り、特定数の炭素原子を有する直鎖および分枝鎖をはじめとする飽和された1価の脂肪族炭化水素基を意味する。アルキル基は、典型的に1~20個の炭素原子(「炭素数1~20のアルキル」)、好ましくは1~12個の炭素原子(「炭素数1~12のアルキル」)、より好ましくは1~8個の炭素原子(「炭素数1~8のアルキル」)、または1~6個の炭素原子(「炭素数1~6のアルキル」)、または1~4個の炭素原子(「炭素数1~4のアルキル」)を含む。アルキル基の例としてはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチルなどを含む。アルキル基は置換されていてもよいし、無置換であってもよい。別段特定されない限り、アルキル基は1つ以上のハロゲンで、アルキル残基上に存在する水素原子の総数まで置換され得る。したがって、炭素数1~4のアルキルはハロゲン化アルキル基、例えば、1~4個の炭素原子を有するフッ化アルキル基、例えば、トリフルオロメチル(-CF3)またはジフルオロエチル(-CH2CHF2)を含む。
【0016】
本明細書で任意に置換されると記載されているアルキル基は、1つ以上の置換基で置換されていてよく、置換基は別段の記載がない限り、独立して選択される。置換基の総数は、このような置換が化学的な意義を満たす程度までアルキル残基上の水素原子の総数と同じである。任意に置換されたアルキル基は、典型的に1~6個の任意の置換基、時に1~5個の任意の置換基、好ましくは1~4個の任意の置換基、より好ましくは1~3個の任意の置換基を含有することができる。
【0017】
前記アルキル基に適した任意の置換基は、非限定的に、炭素数1~8のアルキル、炭素数2~8のアルケニル、炭素数2~8のアルキニル、炭素数3~8のシクロアルキル、3~12員のヘテロシクリル、炭素数6~12のアリールおよび5~12員のヘテロアリール、ハロ、=O(オキソ)、=S(チオノ)、=N-CN、=N-ORx、=NRx、-CN、-C(O)Rx、-CO2Rx、-C(O)NRxRy、-SRx、-SORx、-SO2Rx、-SO2NRxRy、-NO2、-NRxRy、-NRxC(O)Ry、-NRxC(O)NRxRy、-NRxC(O)ORx、-NRxSO2Ry、-NRxSO2NRxRy、-ORx、-OC(O)Rxおよび-OC(O)NRxRyを含み、それぞれのRxおよびRyは独立して、水素(H)、炭素数1~8のアルキル、炭素数1~8のアシル、炭素数2~8のアルケニル、炭素数2~8のアルキニル、炭素数3~8のシクロアルキル、3~12員のヘテロシクリル、炭素数6~12のアリールまたは5~12員のヘテロアリールであるか、RxおよびRyは、それらが結合しているN原子と一緒に3~12員のヘテロシクリルまたは5~12員のヘテロアリール環を形成することができ、それぞれは任意にO、NおよびS(O)q(このとき、qは0~2である)から選択される1個、2個または3個の追加ヘテロ原子を含有することができ;それぞれのRxおよびRyはハロ、=O、=S、=N-CN、=N-OR’、=NR’、-CN、-C(O)R’、-CO2R’、-C(O)NR’2、-SOR’、-SO2R’、-SO2NR’2、-NO2、-NR’2、-NR’C(O)R’、-NR’C(O)NR’2、-NR’C(O)OR’、-NR’SO2R’、-NR’SO2NR’2、-OR’、-OC(O)R’および-OC(O)NR’2からなる群より独立して選択される1~3個の置換基で任意に置換され、このとき、それぞれのR’は独立して、水素(H)、炭素数1~8のアルキル、炭素数1~8のアシル、炭素数2~8のアルケニル、炭素数2~8のアルキニル、炭素数3~8のシクロアルキル、3~12員のヘテロシクリル、炭素数6~12のアリールまたは炭素数5~12のヘテロアリールであり;それぞれの前記炭素数1~8のアルキル、炭素数2~8のアルケニル、炭素数2~8のアルキニル、炭素数3~8のシクロアルキル、3~12員のヘテロシクリル、炭素数6~12のアリールおよび5~12員のヘテロアリールは本明細書でさらに定義した通り任意に置換され得る。
【0018】
本明細書で使用された用語「アルコキシ」は、他の説明がない限り、アルキル部分が特定数の炭素原子を有する1価-O-アルキル基を意味する。アルコキシ基は、典型的に1~8個の炭素原子(「炭素数1~8のアルコキシ」)、または1~6個の炭素原子(「炭素数1~6のアルコキシ」)、または1~4個の炭素原子(「炭素数1~4のアルコキシ」)を有する。例えば、炭素数1~4のアルコキシはメトキシ(-OCH3)、エトキシ(-OCH2CH3)、イソプロポキシ(-OCH(CH3)2)、tert-ブチルオキシ(-OC(CH3)3)などを含む。アルコキシ基はアルキルに適したもので、本明細書に記述されている同じ基によってアルキル部分上で置換されていてもよいし、無置換であってもよい。特に、アルコキシ基はアルキル部分上に存在する水素原子の総数まで1つ以上のハロ原子、特に1つ以上のフルオロ原子で任意に置換され得る。このような基は特定数の炭素原子を有し、1つ以上のハロ置換基で置換された「ハロアルコキシ」、例えば、フッ化された場合、より具体的には「フルオロアルコキシ」基と称し、典型的にこのような基は1~6個の炭素原子、好ましくは1~4個の炭素原子、時に1または2個の炭素原子、および1個、2個または3個のハロ原子を含有する(つまり、「炭素数1~6のハロアルコキシ」、「炭素数1~4のハロアルコキシ」または「炭素数1~2のハロアルコキシ」)。さらに具体的には、フッ化されたアルキル基は、典型的に1個、2個または3個のフルオロ原子で置換されたフルオロアルコキシ基、例えば、炭素数1~6、炭素数1~4または炭素数1~2のフルオロアルコキシ基と具体的に称することができる。したがって、炭素数1~4のフルオロアルコキシは、トリフルオロメチルオキシ(-OCF3)、ジフルオロメチルオキシ(-OCF2H)、フルオロメチルオキシ(-OCFH2)、ジフルオロエチルオキシ(-OCH2CF2H)などを含む。
【0019】
本明細書で使用された用語「2価の脂肪族炭化水素(つまり、アルキレン)」は、他の説明がない限り、2つの他の基を一緒に連結することができる特定数の炭素原子を有する2価ヒドロカルビル基を称する。時に、アルキレンは-(CH2)n-(このとき、nは1~8であり、好ましくはnは1~4である)を称する。特定の場合、アルキレンはまた、他の基で置換されることができ、少なくとも1の無置換度(つまり、アルケニレンまたはアルキニレン残基)または環を含むことができる。アルキレンの開放原子価は鎖の反対端部である必要はない。したがって、分枝状アルキレン基、例えば、-CH(Me)-、-CH2CH(Me)-および-C(Me)2-がまた、用語「アルキレン」の範疇に含まれ、環状基、例えば、シクロプロパン-1,1-ジイルおよび不飽和基、例えば、エチレン(-CH=CH-)またはプロピレン(-CH2-CH=CH-)も同様である。アルキレン基はアルキルに適したもので本明細書に記述したような同じ基によって置換されていてもよいし、無置換であってもよい。
【0020】
本明細書で使用された用語「任意に置換された」および「置換または無置換」は記述されている特定の基が非水素置換基を全く持たない(つまり、無置換である)か、前記基が1つ以上の非水素置換基を持つ(つまり、置換された)可能性があることを示すために相互交換的に使用される。特に明記しない限り、存在し得る置換基の総数は、記述された基の無置換の形態に存在するH原子の数と同じである。任意の置換基が二重結合を介して結合する場合(例えば、オキソ(=O)置換基)、上記基は利用可能な原子価を占めて含まれる他の置換基の総数は2だけ減少する。任意の置換基が置換基のリストから独立して選択される場合、選択された基は同一または異なる。本明細書全般にわたって、任意の置換基の数および性質は、このような置換が化学的な意義を満たす程度まで限定されることが理解されるであろう。
【0021】
本明細書においてCIE1976 L*a*b*表色系は、CIE(International Commission on Illumination、国際照明委員会)で規定され、現在世界的に標準化されている色空間に該当する。
【0022】
このようなCIE 1976 L*a*b*色空間で、L*値はCIEで明度を表し、範囲は0~100であり、その値が0であれば完全な黒色、100であれば完全な白色を意味する。a*は赤色と緑色のうちどちらに傾いているかを表し、この値が正の値、つまり、「+」であれば赤色(red)であり;負の値、つまり、「-」であれば緑色(green)である。b*は黄色と青色のうちどちらに傾いているかを表し、この値が正の値、つまり、「+」であれば黄色(yellow)であり;負の値、つまり、「-」であれば青色(blue)である。
【0023】
上記のような定義に基づいて、本発明の実現形態を詳しく説明する。ただし、これらは例示として提示されたものに過ぎず、これによって本発明が限定されず、本発明は後述する特許請求の範囲の範疇によってのみ定義される。
【0024】
(ポリエステル樹脂)
本発明の一実施形態では、フランジカルボン酸系化合物、脂肪族ジオール系化合物およびラクトン系化合物を含む単量体混合物;の共重合体からなるポリエステル樹脂を提供する。
【0025】
前記フランジカルボン酸系化合物はそれ自体で生分解性に優れ、前記ラクトン系化合物は開環重合反応(Ring opening polymerization)して生分解性に優れた化合物に転換されるので、これらを原料として使用して製造されたポリエステル樹脂は顕著に優れた生分解性を示す。
【0026】
選択的に、前記ポリエステル樹脂の製造時、熱安定剤が含まれている熱安定剤を含むチタン(Ti)系触媒の存在下で前記第1オリゴマーを製造することができる。したがって、前記各形態のポリエステル樹脂の製造工程(特に、重縮合)中の熱変色を最小化することができる。
【0027】
以下、前記ポリエステル樹脂について詳しく説明する。
【0028】
フランジカルボン酸系化合物
前記ポリエステル樹脂は、フランジカルボン酸系化合物由来の残基(以下、「フランジカルボン酸系化合物由来残基」)を含み、前記フランジカルボン酸系化合物に起因して優れた生分解性を示す。
【0029】
前記フランジカルボン酸系化合物は、下記化学式1で表される:
【0030】
【0031】
前記化学式1中、L1およびL2はそれぞれ独立して、単結合、または置換もしくは無置換の炭素数1~10のアルキレンである。
【0032】
例えば、前記フランジカルボン酸系化合物は2,5-フランジカルボン酸(2,5-Furandicarboxylic acid)であり、この場合、前記化学式1のL1およびL2は全て単結合であり得る。
【0033】
前記フランジカルボン酸系化合物由来残基は下記化学式1-1で表される:
【0034】
【0035】
前記化学式1-1中、L1およびL2はそれぞれ独立して、単結合、または置換もしくは無置換の炭素数1~10のアルキレンであり;*は結合位置を示す。
【0036】
例えば、前記フランジカルボン酸系化合物が2,5-フランジカルボン酸である場合、前記化学式1-1中のL1およびL2は全て単結合であり得る。
【0037】
脂肪族ジオール系化合物
前記ポリエステル樹脂は、脂肪族ジオール系化合物に由来する残基(以下、「脂肪族ジオール系化合物由来残基」)を含み、前記脂肪族ジオール系化合物由来残基に起因して優れた相溶性および延伸(elongation)特性を示す。
【0038】
前記脂肪族ジオール系化合物は、下記化学式2で表される:
【0039】
【0040】
前記化学式2中、L3およびL4はそれぞれ独立して、置換または無置換の炭素数1~10のアルキレンである。
【0041】
例えば、前記脂肪族ジオール系化合物は、エチレングリコールまたは1,4-ブタンジオールであり得る。この場合、前記化学式2中のL3はC1アルキレン(つまり、メチレン)であり、R4はC1アルキレン(つまり、メチレン)またはC3アルキレン(つまり、プロピレン)であり得る。
【0042】
前記脂肪族ジオール系化合物由来残基は、下記化学式2-1で表される:
【0043】
【0044】
前記化学式2-1中、R3およびR4はそれぞれ独立して、置換または無置換の炭素数1~10のアルキレンであり;*は結合位置を示す。
【0045】
例えば、前記脂肪族ジオール系化合物がエチレングリコールまたは1,4-ブタンジオールであるとき、前記化学式2-1中のR3はC1アルキレン(つまり、メチレン)であり、R4はC1アルキレン(つまり、メチレン)またはC3アルキレン(つまり、プロピレン)であり得る。
【0046】
ラクトン系化合物
前記ポリエステル樹脂は、前記ラクトン系化合物に由来する残基(以下、「ラクトン系化合物由来残基」)を含み、前記ラクトン系化合物由来残基に起因して優れた生分解性を示す。
【0047】
前記ラクトン系化合物は、下記化学式3で表される:
【0048】
【0049】
前記化学式3中、L5は置換または無置換の炭素数1~10のアルキレンである。
【0050】
例えば、前記ラクトン系化合物はカプロラクトンであり得る。この場合、前記化学式3中のL5はC5アルキレン(つまり、ペンチレン)であり得る。
【0051】
前記ラクトン系化合物由来残基は、下記化学式3-1で表される:
【0052】
【0053】
前記化学式3-1中、L5は置換または無置換の炭素数1~10のアルキレンであり;*は結合位置を示す。
【0054】
例えば、前記ラクトン系化合物がカプロラクトンであるとき、前記化学式3-1中のL5はC5アルキレン(つまり、ペンチレン)であり得る。
【0055】
共重合体の構造
前記ポリエステル樹脂を構成する共重合体は、ランダム共重合体またはブロック共重合体であるブロック共重合体であり得る。
【0056】
具体的には、前記ポリエステル樹脂は、以下の第1形態のポリエステル樹脂、第2形態のポリエステル樹脂または第3形態のポリエステル樹脂であり得る。
【0057】
1)第1形態のポリエステル樹脂:第1オリゴマーおよび第2オリゴマーのブロック共重合体であり、前記第1オリゴマーは、フランジカルボン酸系化合物および第1脂肪族ジオール系化合物の重合体からなり、前記第2オリゴマーは、ラクトン系化合物および第2脂肪族ジオール系化合物の重合体からなる。
【0058】
2)第2形態のポリエステル樹脂:第1オリゴマーおよび単量体のブロック共重合体であり、前記第1オリゴマーは、フランジカルボン酸系化合物および第1脂肪族ジオール系化合物の重合体からなり、前記単量体はラクトン系化合物である。
【0059】
3)第3形態のポリエステル樹脂:フランジカルボン酸系化合物、脂肪族ジオール系化合物およびラクトン系化合物ランダム共重合体であり、前記脂肪族ジオール系化合物は、第1脂肪族ジオール系化合物およびこれとは異なる第2脂肪族ジオール系化合物を含む。
【0060】
さらに詳細な内容は後述するが、前記第1形態のポリエステル樹脂は、前記フランジカルボン酸系化合物および前記第1脂肪族ジオール系化合物のエステル化反応生成物(第1オリゴマー)および前記ラクトン系化合物および前記第2脂肪族ジオール系化合物のエステル化反応生成物(第2オリゴマー)をエステル化反応、予備重合反応および重縮合反応させて製造することができる。
【0061】
また、前記第2形態のポリエステル樹脂は、前記フランジカルボン酸系化合物および前記第1脂肪族ジオール系化合物のエステル化反応生成物(第1オリゴマー)および前記ラクトン系化合物をエステル化反応、予備重合反応および重縮合反応させて製造することができる。
【0062】
また、前記第3形態のポリエステル樹脂は、フランジカルボン酸系化合物、第1脂肪族ジオール系化合物、第2脂肪族ジオール系化合物およびラクトン系化合物をエステル化反応、予備重合反応および重縮合反応させて製造することができる。
【0063】
前記第1形態のポリエステル樹脂および前記第2形態のポリエステル樹脂は、前記第3形態のポリエステル樹脂に比べて分子量の調節および構造設計が容易であり、物性および色特性を制御することに有利な利点がある。
【0064】
例えば、前記第1形態のポリエステル樹脂は下記化学式4-1で表され、前記第2形態のポリエステル樹脂は下記化学式4-2で表される:
【0065】
【0066】
【0067】
前記化学式4-1および4-2中、L1およびL2はそれぞれ独立して、単結合、または置換もしくは無置換の炭素数1~10のアルキレンであり;L3、L31、L32、L4、L41およびL42はそれぞれ独立して、置換または無置換の炭素数1~10のアルキレンであり;L5は置換または無置換の炭素数1~10のアルキレンであり;mおよびnはそれぞれ独立して、1~100の整数であり、m:nは1:10~10:1であり;*は結合位置を示す。
【0068】
前記m:nは10:1~1:10、8:1~1:8、6:1~1:6、または4:1~1:4であり得る。
【0069】
モル比
前記第1および第2形態のポリエステル樹脂において、前記第1オリゴマーは、前記フランジカルボン酸系化合物および前記第1脂肪族ジオール系化合物のモル比を5:1~1:10、3:1~1:7、1:1~1:3、または1:2~1:2.5に制御して製造したものであり得る。
【0070】
前記フランジカルボン酸系化合物1モル部を基準にして、前記第1脂肪族ジオール系化合物を10モル部超過で使用すると、これらのエステル化反応速度が低くなるか、最終ポリエステル樹脂の物性および生産性が低下する可能性がある。
【0071】
それに対して、前記フランジカルボン酸系化合物1モル部を基準にして、前記脂肪族ジオール系化合物を1/5モル部未満で使用すると、前記フランジカルボン酸系化合物の未反応成分が過度に残留するため、これらのエステル化反応の終了時点を正確に確認することができない。したがって、エステル化反応を長く行うことになり、最終ポリエステル樹脂の熱変色を誘発するか、最終ポリエステル樹脂の物性および明度を低下させることがある。
【0072】
前記第1形態のポリエステル樹脂において、前記第2オリゴマーは、前記ラクトン系化合物および前記第2脂肪族ジオール系化合物のモル比を5:1~1:10、3:1~1:7、1:1~1:3、または1:2~1:2.5に制御して製造したものであり得る。
【0073】
前記ラクトン系化合物1モル部を基準にして、前記第2脂肪族ジオール系化合物を10モル部超過で使用すると、これらのエステル化反応速度が低くなるか、最終ポリエステル樹脂の物性および生産性が低下する可能性がある。
【0074】
それに対して、前記ラクトン系化合物1モル部を基準にして、前記脂肪族ジオール系化合物を1/5モル部未満で使用すると、ラクトン系化合物の未反応成分が過度に残留するため、これらのエステル化反応の終了時点を正確に確認することができない。したがって、エステル化反応を長く行うことになり、最終ポリエステル樹脂の熱変色を誘発するか、最終ポリエステル樹脂の物性および明度を低下させることがある。
【0075】
前記第1形態のポリエステル樹脂は、前記第1オリゴマーおよび前記第2オリゴマーのモル比を10:1~1:10、8:1~1:8、6:1~1:6、または4:1~1:4に制御して製造したものであり得る。
【0076】
また、前記第2形態のポリエステル樹脂は、前記第1オリゴマーおよび前記単量体(ラクトン系化合物)のモル比を10:1~1:10、8:1~1:8、6:1~1:6、または4:1~1:4に制御して製造したものであり得る。
【0077】
前記第1オリゴマー1モル部を基準にして、前記第2オリゴマーまたは前記単量体(ラクトン系化合物)を10モル部超過で使用すると、これらのエステル化反応速度が低くなるか、最終ポリエステル樹脂の物性および生産性が低下する可能性がある。
【0078】
それに対して、前記第1オリゴマー1モル部を基準にして、前記第2オリゴマーまたは前記単量体(ラクトン系化合物)を1/10モル部未満で使用すると、第1オリゴマーの未反応成分が過度に残留するため、これらのエステル化反応の終了時点を正確に確認することができない。したがって、エステル化反応を長く行うことになり、最終ポリエステル樹脂の熱変色を誘発するか、最終ポリエステル樹脂の物性および明度を低下させることがある。
【0079】
ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)および分子量分布(MWD)
前記ポリエステル樹脂は、数平均分子量(Mn)が50,000~200,000g/mol、60,000~180,000g/mol、70,000~150,000g/mol、80,000~130,000g/mol、90,000~110,000g/molまたは99,000~101,000g/molであり得る。
【0080】
前記ポリエステル樹脂の数平均分子量が50,000g/mol未満であれば包装材として使用するためのフィルム化加工が難しくなるだけでなく、所望のモジュラスを達成することができない。これとは異なり、200,000g/molを超える場合、粘度が高くなり、生産性および収率が低くなる。
【0081】
前記ポリエステル樹脂は、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の比、つまり、分子量分布(Molecular weight distribution、MWD)が1.0~3.0、具体的には1.1~2.5、より具体的には1.3~2.0、例えば1.6~1.9であり得る。
【0082】
前記ポリエステル樹脂が示す分子量分布が1.0未満であればプロセスコントロールが難しくなるので不良率が高くなり、工程費用が高くなる。それに対して、前記一実施形態のポリエステル樹脂の分子量分布が3.0を超える場合、不均一な分子量分布により製品の製造時に不良を誘発する可能性がある。
【0083】
ポリエステル樹脂の色特性
前記ポリエステル樹脂は、CIE1976 L*a*b*表色系によるL*値が93以上であり、a*値が0~2であり、b*値が7以下であり得る。
【0084】
例えば、前記ポリエステル樹脂色差計の測定方法は次の通りである。ポリエステル樹脂試料2gをHexafluoroisopropanol(HFIP)20mlに溶解する(0.1g/ml in HFIP)。Konica Minolta社製のCM-3700A製品で溶液色差計測定専用Tuartz cellに前記試料溶液の色差計を測定する。
【0085】
前記L*値は高い値を有するほど、白色に近い色を表すことができる。ただし、前記一実施形態のポリエステル樹脂を適用した製品の用途、目的などに応じて、前記L*値は93以上、94以上、または95以上であり、100以下、99以下、または98以下である範囲内で明度を制御することができる。
【0086】
具体的には、前記第2形態のポリエステル樹脂に比べて前記第1形態のポリエステル樹脂によるL*値がより小さいことがあり、これは、前記第2脂肪族ジオール系化合物をさらに含んで製造されたことに起因するものであり得る。
【0087】
前記a*値の場合、その値が小さくなるほど、赤色は薄くなり、緑色は濃くなり得る。ただし、前記一実施形態のポリエステル樹脂を適用した製品の用途、目的などにより、前記a*値は0以上、0.1以上、0.3以上、0.5以上、または0.7以上であり、2以下、1.8以下、1.7以下、1.5以下、または1.4以下である範囲内で赤色と緑色の程度を制御することができる。
【0088】
具体的には、前記ポリエステル樹脂に比べて前記第1形態のポリエステル樹脂によるa*値がより大きいことがあり、これは、前記第2脂肪族ジオール系化合物をさらに含んで製造されたことに起因するものであり得る。
【0089】
前記b*値の場合、7以下の範囲でその値が小さくなるほど、黄色は薄くなり、青色は濃くなり得る。特に、後述する試験例によれば、すべての比較例では前記b*値が7を超える反面、すべての実施例では前記b*値が7以下であり、その製造工程中の黄変、褐変などの熱変色が抑制されたことが分かる。
【0090】
ただし、前記ポリエステル樹脂を適用した製品の用途、目的などにより、前記b*値は7以下、6.8以下、6.6以下、または6.4以下であり、0以上、1以上、2以上、3以上、または4以上である範囲内で黄色と青色の程度を制御することができる。
【0091】
具体的には、前記第2形態のポリエステル樹脂に比べて前記第1形態のポリエステル樹脂によるb*値がより大きいことがあり、これは、前記第2脂肪族ジオール系化合物をさらに含んで製造されたことに起因するものであり得る。
【0092】
前記一実施形態のポリエステル樹脂が有する色特性は、その製造工程中の単量体の反応順序、単量体の使用量などにより調節することができる。
【0093】
ポリエステルの物理的特性
前記ポリエステル樹脂は、下記数式1による固有粘度の変化量(△IV12)が0.80~1.0、具体的には0.82~0.98dl/g、より具体的には0.85~0.95dl/g、例えば、0.87~0.92dl/gであり得る:
【0094】
[数式1]
△IV12=IV1-IV2
【0095】
前記数式1中、IV1は25℃での固有粘度であり、IV2は35℃での固有粘度である。
【0096】
前記数式1による固有粘度の変化量(△IV12)が下限値未満であれば包装材として使用するためのフィルム化加工が難しくなるだけでなく、所望のモジュラスを達成することができない。これとは異なり、上限を超える場合、粘度が高くなり、生産性および収率が低くなる。
【0097】
また、前記ポリエステル樹脂は、25℃での固有粘度が1.0~2.5dl/g、具体的には1.3~2.3dl/g、より具体的には1.5~2.0dl/g、例えば、1.8~2.0dl/gであり得る。
【0098】
また、前記ポリエステル樹脂は、35℃での固有粘度が0.5~1.5dl/g、具体的には0.7~1.3dl/g、より具体的には0.9~1.1dl/g、例えば、1.0~1.1dl/gであり得る。
【0099】
前記各温度で測定された固有粘度が下限値未満であれば包装材として使用するためのフィルム化加工が難しくなるだけでなく、所望のモジュラスを達成することができない。これとは異なり、上限を超える場合、粘度が高くなり、生産性および収率が低くなる。
【0100】
前記ポリエステル樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が-60~10℃、具体的には-55~5℃、例えば50~1℃であり得る。
【0101】
前記ガラス転移温度が-60℃未満であれば常温で物性や熱的安定性を有することができず、包装材として使用するためのポリエステル樹脂のフィルム化加工工程に限界がある。これとは異なり、前記ガラス転移温度が10℃を超えるためには分子構造の密度が高くなければならず、この場合、ポリエステル樹脂の結晶性も一緒に高くなるため透明性が低下する。
【0102】
(ポリエステル樹脂の製造方法)
本発明の他の一実施形態では、フランジカルボン酸系化合物、脂肪族ジオール系化合物およびラクトン系化合物を含む単量体混合物;を共重合させる段階を含む、ポリエステル樹脂の製造方法を提供する。
【0103】
これにより、上述した優れた特性のポリエステル樹脂を得ることができる。
【0104】
原料物質
前記ポリエステル樹脂の製造時、前記フランジカルボン酸系化合物、前記第1脂肪族ジオール系化合物、前記第2脂肪族ジオール系化合物および前記ラクトン系化合物を原料物質として使用する。前記各原料物質の構造などに対する説明は上述した通りである。
【0105】
反応順序
フランジカルボン酸系化合物、第1脂肪族ジオール系化合物、第2脂肪族ジオール系化合物およびラクトン系化合物をエステル化反応、予備重合反応および重縮合反応させる段階を含み、前記第3形態のポリエステル樹脂を製造することができる。
【0106】
上述したように、二酸の(diacid)成分としてフランジカルボン酸系化合物を単独で使用すると黄変または褐変したポリエステル樹脂が得られることを避けられない。また、芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸をジオール(diol)成分と一括して混合して反応させても熱変色を抑制することに限界があるだけでなく、固有粘度などの物性が低下する問題がある。
【0107】
前記問題は、反応順序の制御により解決することができる。
【0108】
具体的には、フランジカルボン酸系化合物および脂肪族ジオール系化合物をエステル化反応させて第1オリゴマーを製造する段階;ラクトン系化合物および第2脂肪族ジオール系化合物をエステル化反応させて第2オリゴマーを製造する段階;前記第1オリゴマーおよび前記第2オリゴマーをエステル化反応、予備重合反応および重縮合反応させる段階を含み、前記第1形態のポリエステル樹脂を製造することができる。
【0109】
これとは別に、フランジカルボン酸系化合物および脂肪族ジオール系化合物をエステル化反応させて第1オリゴマーを製造する段階;前記第1オリゴマーおよびラクトン系化合物単量体をエステル化反応、予備重合反応および重縮合反応させる段階を含み、前記第2形態のポリエステル樹脂を製造することができる。
【0110】
より具体的には、前記第1オリゴマーを製造する工程で、熱変色を避けられる水準に前記オリゴマーの大きさおよび分子量を制御することができる。
【0111】
このようにオリゴマーの大きさおよび分子量が制御された状態で前記第1オリゴマーを前記第2オリゴマーまたは前記ラクトン系化合物と順次反応(つまり、エステル化反応、予備重合および重縮合反応)させると、熱変色が抑制されるだけでなく、急速に固有粘度が増加する。
【0112】
要するに、前記フランジカルボン酸系化合物および前記第1脂肪族ジオール系化合物をまず、エステル化反応させ;前記ラクトン系化合物単量体またはこれと第2脂肪族ジオール系化合物のエステル化反応生成物をさらに反応させる工程を含むと、製造工程中の黄変または褐変を抑制できるだけでなく、固有粘度などの物性が改善されたポリエステル樹脂を得ることができる。
【0113】
さらに、前記各形態のポリエステル樹脂の製造時、熱安定剤が含まれている熱安定剤を含むチタン(Ti)系触媒の存在下で前記第1オリゴマーを製造することができる。これにより、前記各形態のポリエステル樹脂の製造工程(特に、重縮合)中の熱変色を最小化することができる。
【0114】
第1オリゴマーの製造段階
前記各形態のポリエステル樹脂の製造時、前記フランジカルボン酸系化合物を前記脂肪族ジオール系化合物とまず、反応させ、重合度が低い第1オリゴマーを製造する。
【0115】
前記フランジカルボン酸系化合物および前記第1脂肪族ジオール系化合物のエステル化反応中の消失または未反応の物質の量を考慮して、目的とする共重合体の組成より前記脂肪族ジオール系化合物を過剰に使用することができる。
【0116】
具体的には、前記フランジカルボン酸系化合物および前記第1脂肪族ジオール系化合物のエステル化反応段階で、前記フランジカルボン酸系化合物1モル部を基準にして、前記第1脂肪族ジオール系化合物を1/5~10モル部、1/3~7モル部、1~3モル部または2~2.5モル部を反応させることができる。
【0117】
前記フランジカルボン酸系化合物1モル部を基準にして、前記第1脂肪族ジオール系化合物を10モル部超過で使用すると、これらのエステル化反応速度が低くなるか、最終ポリエステル樹脂の物性および生産性が低下する。
【0118】
それに対して、前記フランジカルボン酸系化合物1モル部を基準にして、前記第1脂肪族ジオール系化合物を1/5モル部未満で使用すると、前記フランジカルボン酸系化合物の未反応成分が過度に残留するため、これらのエステル化反応の終了時点を正確に確認することができない。したがって、エステル化反応を長く行うことになり、最終ポリエステル樹脂の熱変色を誘発するか、最終ポリエステル樹脂の物性および明度を低下させることができる。
【0119】
前記フランジカルボン酸系化合物および前記第1脂肪族ジオール系化合物のエステル化反応により、フランジカルボン酸系化合物由来残基および第1脂肪族ジオール系化合物由来残基を含む第1オリゴマーを製造することができる。
【0120】
この工程で、熱変色を避けられる水準に前記第1オリゴマーの大きさおよび分子量を制御することができる。例えば、数平均分子量が1500~4000g/molである第1オリゴマーが形成されると、その大きさと分子量に起因して高温での分子の熱ダメージを防止し、その後の段階での熱変色を避けることができる。
【0121】
前記フランジカルボン酸系化合物および前記第1脂肪族ジオール系化合物のエステル化反応は、窒素(N2)雰囲気で行うことができる。
【0122】
また、前記フランジカルボン酸系化合物および前記第1脂肪族ジオール系化合物のエステル化反応は、160℃以上、170℃以上、または180℃以上であり、260℃以下、240℃以下、220℃以下の温度範囲で行うことができる。
【0123】
また、前記フランジカルボン酸系化合物および前記第1脂肪族ジオール系化合物のエステル化反応は、1時間以上、1.5時間以上、または2時間以上であり、8時間以下、7時間以下、または6時間以下で行うことができる。
【0124】
前記フランジカルボン酸系化合物および前記第1脂肪族ジオール系化合物のエステル化反応温度、反応時間などが上記各範囲未満であると、反応収率が低いかまたは十分な反応が起こらず、最終ポリエステルの物性が低下する。これとは異なり、前記フランジカルボン酸系化合物および前記第1脂肪族ジオール系化合物のエステル化反応温度、反応時間などが上記各範囲を超えると、解重合反応が行われてポリエステル樹脂が合成されないか、合成されたポリエステルの外観が黄変(yellow)する可能性が高くなる。
【0125】
前記フランジカルボン酸系化合物および前記第1脂肪族ジオール系化合物のエステル化反応(つまり、前記第1オリゴマーの製造)は、熱安定剤を含むチタン(Ti)系触媒の存在下で行うことができる。これにより、前記各形態のポリエステル樹脂の製造工程(特に、重縮合)中の熱変色を最小化することができる。
【0126】
第2オリゴマーの製造段階
前記第1形態のポリエステル樹脂の製造時には、前記第1オリゴマーとは別に、第2オリゴマーを製造する。具体的には、ラクトン系化合物および第2脂肪族ジオール系化合物を反応させ、重合度が低い第2オリゴマーを製造する。
【0127】
前記ラクトン系化合物および前記第2脂肪族ジオール系化合物のエステル化反応中の消失または未反応の物質の量を考慮して、目的とする共重合体の組成より前記脂肪族ジオール系化合物を過剰に使用することができる。
【0128】
具体的には、前記ラクトン系化合物および前記第2脂肪族ジオール系化合物のエステル化反応段階で、前記ラクトン系化合物1モル部を基準にして、前記第1脂肪族ジオール系化合物を1/5~10モル部、1/3~7モル部、1~3モル部または2~2.5モル部を反応させることができる。
【0129】
前記ラクトン系化合物1モル部を基準にして、前記第2脂肪族ジオール系化合物を10モル部超過で使用すると、これらのオリゴマーの分子量が低くなり、高温で行われる重縮合工程での色の変色が現れる。最終ポリエステル樹脂の物性および色相が低下する。
【0130】
それに対して、前記ラクトン系化合物1モル部を基準にして、前記第2脂肪族ジオール系化合物を1/5モル部未満で使用すると、前記ラクトン系化合物の未反応成分が過度に残留するため、これらのエステル化反応の終了時点を正確に確認することができない。したがって、エステル化反応を長く行うことになり、最終ポリエステル樹脂の熱変色を誘発するか、最終ポリエステル樹脂の物性および明度を低下させることができる。
【0131】
前記ラクトン系化合物および前記第2脂肪族ジオール系化合物のエステル化反応工程で、前記ラクトン系化合物の開環重合反応(Ring opening polymerization)が起こることができる。これにより、ラクトン系化合物由来残基および第2脂肪族ジオール系化合物由来残基を含む第2オリゴマーを製造することができる。
【0132】
この工程で、熱変色を避けられる水準に前記第2オリゴマーの大きさおよび分子量を制御することができる。例えば、数平均分子量が1500~4000g/molである第2オリゴマーが形成されると、その大きさと分子量に起因して高温での分子の熱ダメージを防止し、その後の段階での熱変色を避けることができる。
【0133】
前記ラクトン系化合物および前記第2脂肪族ジオール系化合物のエステル化反応は、窒素(N2)雰囲気で行うことができる。
【0134】
また、前記ラクトン系化合物および前記第2脂肪族ジオール系化合物のエステル化反応は、160℃以上、170℃以上、または180℃以上であり、260℃以下、240℃以下、220℃以下の温度範囲で行うことができる。
【0135】
また、前記ラクトン系化合物および前記第2脂肪族ジオール系化合物のエステル化反応は、1時間以上、1.5時間以上、または2時間以上であり、8時間以下、7時間以下、または6時間以下で行うことができる。
【0136】
前記ラクトン系化合物および前記第2脂肪族ジオール系化合物のエステル化反応温度、反応時間などが上記各範囲未満であると、反応収率が低いかまたは十分な反応が起こらず、最終ポリエステルの物性が低下する。これとは異なり、前記ラクトン系化合物および前記第2脂肪族ジオール系化合物のエステル化反応温度、反応時間などが上記各範囲を超えると、解重合反応が行われてポリエステル樹脂が合成されないか、合成されたポリエステルの外観が黄変(yellow)する可能性が高くなる。
【0137】
前記ラクトン系化合物および前記第2脂肪族ジオール系化合物のエステル化反応(つまり、前記第2オリゴマーの製造)は、アンチモン(Sb)系触媒の存在下で行うことができる。これにより、前記第2オリゴマーの製造工程(特に、重縮合)中の熱変色を最小化することができる。
【0138】
第2オリゴマーまたはラクトン系化合物;と第1オリゴマーの反応
前記第1形態のポリエステル樹脂の製造時には、前記第1オリゴマーおよび前記第2オリゴマーを順次反応(つまり、エステル化反応、予備重合および重縮合反応)させる。
【0139】
一方、前記第2形態のポリエステル樹脂の製造時には、前記第1オリゴマーおよび前記ラクトン系化合物を順次反応(つまり、エステル化反応、予備重合および重縮合反応)させる。
【0140】
この時、前記第1オリゴマー1モル部を基準にして、前記第2オリゴマーまたは前記ラクトン系化合物を1/10~10モル部、1/8~8モル部、1/6~6モル部または1/4~4モル部を反応させることができる。
【0141】
前記第1オリゴマー1モル部を基準にして、前記第2オリゴマーまたは前記ラクトン系化合物を10モル部超過で使用すると、これらのエステル化反応速度が低くなるか、最終ポリエステル樹脂の物性および生産性が低下する。
【0142】
それに対して、前記第1オリゴマー1モル部を基準にして、前記第2オリゴマーまたは前記ラクトン系化合物を1/10モル部未満で使用すると、前記第1オリゴマーの未反応成分が過度に残留するため、これらのエステル化反応の終了時点を正確に確認することができない。したがって、エステル化反応を長く行うことになり、最終ポリエステル樹脂の熱変色を誘発するか、最終ポリエステル樹脂の物性および明度を低下させることがある。
【0143】
前記第1形態のポリエステル樹脂の製造時には、前記第1オリゴマー内脂肪族ジオール系化合物由来残基;および前記第2オリゴマー内ラクトン系化合物由来残基が結合する。
【0144】
前記第2形態のポリエステル樹脂の製造時には、前記ラクトン系化合物の開環重合反応(Ring opening polymerization)が起こることができる。これにより、前記第1オリゴマー内脂肪族ジオール系化合物由来残基および前記ラクトン系化合物由来残基が結合する。
【0145】
前記第2オリゴマーまたはラクトン系化合物;と前記第1オリゴマーの反応により、前記第1オリゴマーおよび前記第2オリゴマーに比べて大きさおよび分子量が成長して第3オリゴマーを製造することができる。前記第3オリゴマーは2,000~8,000g/molの数平均分子量を有することができる。
【0146】
前記第2オリゴマーまたはラクトン系化合物;と前記第1オリゴマーのエステル化反応は、窒素(N2)雰囲気で行うことができる。
【0147】
また、前記第2オリゴマーまたはラクトン系化合物;と前記第1オリゴマーのエステル化反応は、160℃以上、170℃以上、または180℃以上であり、260℃以下、240℃以下、220℃以下の温度範囲で行うことができる。
【0148】
また、前記第2オリゴマーまたはラクトン系化合物;と前記第1オリゴマーのエステル化反応は、1時間以上、1.5時間以上、または2時間以上であり、8時間以下、7時間以下、または6時間以下で行うことができる。
【0149】
前記第2オリゴマーまたはラクトン系化合物;と前記第1オリゴマーのエステル化反応温度、反応時間などが上記各範囲未満であると、反応収率が低いかまたは十分な反応が起こらず、最終ポリエステルの物性が低下する。これとは異なり、前記第2オリゴマーまたはラクトン系化合物;と前記第1オリゴマーのエステル化反応温度、反応時間などが上記各範囲を超えると、解重合反応が行われてポリエステル樹脂が合成されないか、合成されたポリエステルの外観が黄変(yellow)する可能性が高くなる。
【0150】
一方、前記第2オリゴマーまたはラクトン系化合物;と前記第1オリゴマーのエステル化反応は、チタン(Ti)系化合物を含むエステル化反応触媒の存在下で行うこともできる。特に、前記エステル化反応触媒は、前記第2オリゴマーまたはラクトン系化合物;と前記第1オリゴマーのエステル化反応を投入し、反応初期から反応速度を改善し、ポリエステル樹脂が熱に露出する時間を短縮することができる。
【0151】
前記チタン(Ti)系化合物は、一例として、酸化チタン、チタンブトキシド、チタンアルコキシド、チタンキレート、またはこれらの混合物であり得る。
【0152】
前記エステル化反応触媒は、合成されるポリエステルのうちの中心金属原子を基準にして1ppm~100ppmを使用することができる。前記エステル化反応触媒の含有量が少なすぎると、前記エステル化反応の効率を大きく向上させることが難しくなり、反応に参加しない反応物の量が大きく増えることができる。また、前記エステル化反応触媒の含有量が多すぎると、製造されるポリエステルの外観物性が低下する。また、前記エステル化反応触媒の含有量が多すぎると、製造されるポリエステルの黄変発生および外観物性が低下する。
【0153】
前記各形態のポリエステル樹脂の製造時、前記第2オリゴマーまたはラクトン系化合物;と前記第1オリゴマーのエステル化反応後、予備重合により重合度がさらに高い重合体を製造する。
【0154】
前記予備重合工程で熱安定剤を使用することができ、これを使用すると前記予備重合工程はもちろん、それ以後の重縮合反応中の熱変色を最小化することができる。
【0155】
具体的には、前記熱安定剤は、トリメチルホスホノアセテート(trimethyl phosphonoacetate)、トリエチルホスホノアセテート(triethyl phosphonoacetate)、リン酸(phosphoric acid)、亜リン酸(phosphorous acid)、ポリリン酸(polyphosphric acid)、トリメチルホスフェート(trimethyl phosphate:TMP)、トリエチルホスフェート(triethyl phosphate)、トリメチルホスフィン(trimethyl phosphine)、トリフェニルホスフィン(triphenyl phosphine)を含むリン系熱安定剤群より選択される1つ以上を含む、
【0156】
例えば、前記熱安定剤は、前記エステル化反応触媒に対して約2倍の量で投入することができる。前記熱安定剤を上記範囲で使用すると、前記予備重合および重縮合反応中の熱変色を最小化することができる。
【0157】
前記予備重合は、温度制御条件下で行うことができる(Thermal pre-condensation)。
【0158】
具体的には、前記予備重合は、220~260℃の温度範囲に到達するまで昇温させる段階;および前記到達温度を維持し、前記第2エステル化反応生成物を予備重合させる段階を含んで行うことができる。
【0159】
また、前記昇温時の圧力が0~0.3atmに到達するまで減圧させた後、前記到達温度維持時、前記到達圧力を維持することもできる。
【0160】
前記予備重合段階は、後述する重縮合反応(Vacuum)を行う前に事前常圧から真空に変更する段階であり、常圧(1atm)→真空(0atm)に段階的に変更する段階である。前記予備重合段階が省略されると、急激な真空状態に変わる過程で前記第2エステル化反応生成物が揮発し、ドルビー現象を誘発し、最終ポリエステル樹脂の収率を減少させ、その物性にも悪影響を及ぼす可能性がある。
【0161】
前記各形態のポリエステル樹脂の製造時、前記第2オリゴマーまたはラクトン系化合物;と前記第1オリゴマーのエステル化反応および予備重合反応後、前記予備重合された重合体を重縮合反応させる。
【0162】
前記重縮合反応(poly-condensation)段階は、真空雰囲気、220~300℃の範囲および0.8~0.4torr以下の圧力下で2~6時間行うことができる。
【0163】
前記重縮合反応段階は、0atmよりもう少し真空度が高い状態で行うことができる。真空ゲージで真空度を測定し、通常0.8~0.4torrの範囲で重合が行われる。
【0164】
前記重縮合の際、重縮合反応触媒を使用することができる。
【0165】
前記重縮合触媒は、前記重縮合反応開始前に前記エステル化反応の生成物に添加することができ、前記エステル化反応前に前記ジオール成分およびジカルボン酸成分を含む混合物に添加することができ、前記エステル化反応段階の途中に添加することもできる。
【0166】
前記重縮合触媒としては、チタン系化合物、ゲルマニウム系化合物、アンチモン系化合物、アルミニウム系化合物、スズ系化合物またはこれらの混合物を使用することができる。
【0167】
前記チタン系化合物としては、テトラエチルチタネート、アセチルトリプロピルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、ポリブチルチタネート、2-エチルヘキシルチタネート、オクチレングリコールチタネート、乳酸チタン、トリエタノールアミンチタネート、アセチルアセトネートチタネート、エチルアセトアセチックエステルチタネート、イソステアリルチタネート、チタニウムジオキシド、チタニウムジオキシド/シリコンジオキシド共重合体、チタニウムジオキシド/ジルコニウムジオキシド共重合体などが挙げられる。
【0168】
前記ゲルマニウム系化合物としては、ゲルマニウムジオキシド(germanium dioxide、GeO2)、ゲルマニウムテトラクロリド(germanium tetrachloride、GeCl4)、ゲルマニウムエチレングリコキシド(germanium ethyleneglycoxide)、ゲルマニウムアセテート(germanium acetate)、これらを利用した共重合体、およびこれらの混合物などが挙げられる。
【0169】
[発明を実施するための形態]
以下、本発明の実施例を参照して説明する。但し、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇がこれらにのみ限定されるものではない。
【0170】
[実施例1-1~1-5:第1形態のポリエステル樹脂]
実施例1-1
10L容量の第1 Autoclave反応器ホッパーに、1molの2,5-フランジカルボン酸(2,5-furandicarboxylic acid、FDCA)および2~2.5molの1,4-ブタンジオール(1,4-Butanediol、1,4-BDO)を投入した。その後、熱安定剤を含むチタン(Ti)系触媒の一種であるテトラ(2,2-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート(tetra(2,2-diallyloxymethyl-1-butyl)bis(ditridecyl)phosphite titanate、製品名:Plenact-55、製造会社:AJINOMOTO FINE TECHNO)を、Tiを基準にして50ppmの量で投入し、190℃の温度および窒素雰囲気で2~3時間、前記FDCAおよび1,4-BDOのエステル化反応を進行した。この反応により、FDCA由来残基および1,4-BDO由来残基からなる第1オリゴマーが生成された。
【0171】
これとは別に、10L容量の第2 Autoclave反応器ホッパーに、1molのカプロラクトン(Caprolactone、CL)およびエチレングリコール(Ethylene glycol、EG)を投入した。その後、アンチモン(Sb)系触媒の一種である酢酸アンチモン(Antimony acetate)を、Sbを基準にして50ppmの量で投入し、190℃の温度および窒素雰囲気で2~3時間、前記CLおよびEGのエステル化反応を進行した。この反応により、CL由来残基およびEG由来残基からなる第2オリゴマーが生成された。
【0172】
前記第1オリゴマーおよび前記第2オリゴマーの生成反応が完了すると、10L容量の第3 Autoclave反応器ホッパーに前記第2オリゴマーを投入した。ここで、第2オリゴマーの投入量は下記表1による。
【0173】
190℃の温度および窒素雰囲気で1時間、前記第1オリゴマーおよび前記第2オリゴマーのエステル化反応を進行した。
【0174】
前記第1オリゴマーおよび前記第2オリゴマーのエステル化反応により生成される流出水がさらに出なくなれば反応を終了する。前記反応終了後、重縮合触媒としてTin Alkoxide系触媒の一種であるチタンtert-ブトキシド(Titanium tert-butoxide)を、Tinを基準にして100ppmの量で投入し、熱安定剤トリエチルホスホノアセテート(triethyl phosphonoacetate)を前記重縮合触媒の2倍である200ppmを投入した。前記重縮合触媒および前記熱安定剤を投入した後、30分間攪拌し、反応器内部温度を1時間の間昇温させて220~240℃の温度範囲に到達するようにした後、真空ポンプを用いて1時間の間段階的に圧力を下げ、反応器の内部圧力が1atmから0atmに到達するようにしながら、予備重合を進行した。
【0175】
その後、220~240℃の温度範囲で0.8torr以下の高真空下で2時間~6時間反応を進行しながら、AutoclaveのTorque meterに伝達される負荷が所望の負荷に到達したときにDrainして、実施例1-1のポリエステル樹脂を得た。
【0176】
実施例1-2~実施例1-5
下記表1により第1オリゴマーおよび第2オリゴマーの投入量を変更したことを除いて、実施例1-1と同様の工程により実施例1-2~1-5の各ポリエステル樹脂を製造した。
【0177】
【0178】
[実施例2-1~2-5:第2形態のポリエステル樹脂]
実施例2-1
第2オリゴマーをカプロラクトン(Caprolactone、CL)に変更したことを除いて、実施例1-1と同様の工程により実施例2-1~2-5の各ポリエステル樹脂を製造した。ここで、カプロラクトンの投入量は下記表2による。
【0179】
【0180】
実施例3-1(FDCA+1,4-BDO+CL+EG)
2L容量の第1 Autoclave反応器ホッパーに、4.03molの2,5-フランジカルボン酸(2,5-furandicarboxylic acid、FDCA)、10.08molの1,4-ブタンジオール(1,4-Butanediol、1,4-BDO)、1.34molのカプロラクトン(Caprolactone、CL)および0.175molのエチレングリコール(Ethylene glycol、EG)を投入した。その後、Tin系触媒の一種である酸化ジブチルスズ(Dibutyltin oxide)を、Tinを基準にして50ppmの量で投入し、190℃の温度および窒素雰囲気で2~3時間、前記FDCA、1,4-BDO、Caprolactone、EGのエステル化反応を進行した。この反応により、FDCA由来残基、1,4-BDO由来残基、CL由来残基およびEG由来残基からなるオリゴマーが生成された。
【0181】
前記エステル化反応終了後、重縮合触媒としてTin Alkoxide系触媒の一種であるチタンtert-ブトキシド(Titanium tert-butoxide)を、Tinを基準にして100ppmの量で投入し、熱安定剤トリエチルホスホノアセテート(triethyl phosphonoacetate)を前記重縮合触媒の2倍である200ppmを投入した。前記重縮合触媒および前記熱安定剤を投入した後、30分間攪拌し、反応器内部温度を1時間の間昇温させて220~240℃の温度範囲に到達するようにした後、真空ポンプを用いて1時間の間段階的に圧力を下げ、反応器内部圧力が1atmから0atmに到達するようにしながら、予備重合を進行した。
【0182】
その後、220~240℃の温度範囲で0.8torr以下の高真空下で2時間~6時間反応を進行しながら、AutoclaveのTorque meterに伝達される負荷が所望の負荷に到達したときにDrainして、実施例3-1のポリエステル樹脂を得た。
【0183】
実施例3-2(FDCA+1,4-BDO+CL+EG)
下記表3に記載された組成で原料投入量を変更したことを除いて、実施例3-1と同様の工程によりポリエステル樹脂を得た。
【0184】
実施例3-3(FDCA+1,4-BDO+CL+EG)
下記表3に記載された組成で原料投入量を変更したことを除いて、実施例3-1と同様の工程によりポリエステル樹脂を得た。
【0185】
実施例3-4(FDCA+1,4-BDO+CL+EG)
下記表3に記載された組成で原料投入量を変更したことを除いて、実施例3-1と同様の工程によりポリエステル樹脂を得た。
【0186】
実施例3-5(FDCA+1,4-BDO+CL+EG)
下記表3に記載された組成で原料投入量を変更したことを除いて、実施例3-1と同様の工程によりポリエステル樹脂を得た。
【0187】
【0188】
[比較例]
比較例1-1(FDCA+1,4-BDO)
10L容量の第1 Autoclave反応器ホッパーに、4.75molの2,5-フランジカルボン酸(2,5-furandicarboxylic acid、FDCA)および11.89molの1,4-ブタンジオール(1,4-Butanediol、1,4-BDO)を投入した。その後、Tin系触媒の一種である酸化ジブチルスズ(Dibutyltin oxide)を、Tinを基準にして50ppmの量で投入し、190℃の温度および窒素雰囲気で2~3時間、前記FDCAおよび1,4-BDOのエステル化反応を進行した。この反応により、FDCA由来残基および1,4-BDO由来残基からなるオリゴマーが生成された。
【0189】
前記エステル化反応終了後、重縮合触媒としてTin Alkoxide系触媒の一種であるチタンtert-ブトキシド(Titanium tert-butoxide)を、Tinを基準にして100ppmの量で投入し、熱安定剤トリエチルホスホノアセテート(triethyl phosphonoacetate)を前記重縮合触媒の2倍である200ppmを投入した。前記重縮合触媒および前記熱安定剤を投入した後、30分間攪拌し、反応器内部温度を1時間の間昇温させて220~240℃の温度範囲に到達するようにした後、真空ポンプを用いて1時間の間段階的に圧力を下げ、反応器の内部圧力が1atmから0atmに到達するようにしながら、予備重合を進行した。
【0190】
その後、220~240℃の温度範囲で0.8torr以下の高真空下で2時間~6時間反応を進行しながら、AutoclaveのTorque meterに伝達される負荷が所望の負荷に到達したときにDrainして、比較例1のポリエステル樹脂を得た。
【0191】
比較例1-2(CL+EG)
2L容量の第1 Autoclave反応器ホッパーに、8.76molのカプロラクトン(Caprolactone、CL)および0.175molのエチレングリコール(Ethylene glycol、EG)を投入した。その後、Tin系触媒の一種である酸化ジブチルスズ(Dibutyltin oxide)を、Tinを基準にして50ppmの量で投入し、190℃の温度および窒素雰囲気で2~3時間、前記FDCAおよび1,4-BDOのエステル化反応を進行した。この反応により、CL由来残基およびEG由来残基からなるオリゴマーが生成された。
【0192】
前記エステル化反応終了後、重縮合触媒としてTin Alkoxide系触媒の一種であるチタンtert-ブトキシド(Titanium tert-butoxide)を、Tinを基準にして100ppmの量で投入し、熱安定剤トリエチルホスホノアセテート(triethyl phosphonoacetate)を前記重縮合触媒の2倍である200ppmを投入した。前記重縮合触媒および前記熱安定剤を投入した後、30分間攪拌し、反応器内部温度を1時間の間昇温させて220~240℃の温度範囲に到達するようにした後、真空ポンプを用いて1時間の間段階的に圧力を下げ、反応器の内部圧力が1atmから0atmに到達するようにしながら、予備重合を進行した。
【0193】
その後、220~240℃の温度範囲で0.8torr以下の高真空下で2時間~6時間反応を進行しながら、AutoclaveのTorque meterに伝達される負荷が所望の負荷に到達したときにDrainして、比較例2のポリエステル樹脂を得た。
【0194】
【0195】
試験例1:ポリエステル樹脂の重量、色、および物理的特性
前記各ポリエステル樹脂試料について、以下の方法で重量、色、および物理的特性を評価し、その評価結果を下記表5~表7に示す。
【0196】
1)ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)および分子量分布(MWD):ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いてMwおよびMnを測定することにより分子量分布(「Mw/Mn」)を測定した。
【0197】
具体的には、TSKgel guardcolumn SuperAW-H+2x TSKgel SuperAWM-H(6.0×150mm)カラムを用いてTosoh社製のHLC-8420 GPC装置を用いて評価した。評価温度は40℃であり、HFIP+0.01N NaTFA展開溶媒として使用し、流速は0.3mL/minの速度で測定した。
【0198】
ポリエステル樹脂試料を含むサンプルは3mg/10mLの濃度に調製した後、10μLの量で供給した。PMMA標準を用いて形成された検定曲線を用いてMwおよびMnの値を誘導し、分子量分布(「Mw/Mn」)を求めた。
【0199】
2)色特性:Nippon Denshoku(sa-4000)社製のChip色差計を用いて、下記条件でL*、a*およびb*値を測定した。
【0200】
具体的には、ポリエステル樹脂試料2gをHexafluoroisopropanol(HFIP)20mlに溶かした(0.1g/ml in HFIP)。Konica Minolta社製のCM-3700A製品で溶液色差計測定専用Tuartz cellに上記試料溶液の色差計を測定した。
【0201】
3)固有粘度(IV):ポリエステル樹脂試料0.5gと溶媒Phenol:Tetrachloroethane 1:1(v:v)溶液10mlに溶かし、オストワルド粘度計で25℃および35℃でそれぞれIVを測定した。
【0202】
4)ガラス転移温度(Tg):TA Instrument社製のDSCを用いてN2、20psi、常温~300℃まで20℃/minの条件で測定した。
【0203】
【0204】
上記表5によれば、実施例のポリエステル樹脂はMn99,000~101,000g/molおよびMWD1.6~1.9を示す。
【0205】
一方、実施例1-1~1-5および2-1~2-5のポリエステル樹脂は、すべての原料物質(FDCA、1,4-BDO、CLおよびEG)を一括して反応させた実施例3-1~3-5に比べて、Mnは類似した水準であるが、MWDは減少したことが分かった。
【0206】
このような実施例のポリエステル樹脂は、製造時の原料物質の種類および投入量を調節することにより、MnおよびMWDを制御することができる。
【0207】
【0208】
上記表6によれば、実施例のポリエステル樹脂はCIE1976 L*a*b*表色系によるL*値が95.1~97.8であり、a*値が0.79~1.3であり、b*値が4.3~6.4である。
【0209】
特に、実施例1-1~1-5および2-1~2-5のポリエステル樹脂がCIE1976 L*a*b*表色系によって示すb*値が比較例1-1および1-2より低いことは、最終樹脂内残基(単量体)の種類を制御したことに起因する。
【0210】
さらに、実施例1-1~1-5および2-1~2-5のポリエステル樹脂がCIE1976 L*a*b*表色系によって示すb*値が実施例3-1~3-5よりも低いことは、ブロック共重合体を形成したことに起因する。
【0211】
このような実施例のポリエステル樹脂は、製造時の原料物質の種類および投入量を調節することにより、CIE1976 L*a*b*表色系によるL*値、a*値およびb*値を制御することができる。
【0212】
一方、前記第2形態のポリエステル樹脂(実施例2-1~2-5)に比べて、前記第1形態のポリエステル樹脂(実施例1-1~1-5)によるL*値がさらに小さく、a*値およびb*値はより大きいことがある。これは、前記第2脂肪族ジオール系化合物をさらに含んで製造されたことに起因するものであり得る。
【0213】
【0214】
上記表7によれば、実施例のポリエステル樹脂は、上述した数式1による固有粘度の変化量(△IV12=IV1-IV2)が0.87~0.92であり、25℃での固有粘度が1.88~1.95dl/gであり、35℃での固有粘度が1.01~1.03dl/gである。また、実施例のポリエステル樹脂は、ガラス転移温度が-46.1~0.5℃である。
【0215】
このような実施例のポリエステル樹脂は、製造時の原料物質の種類および投入量を調節することにより、各温度での固有粘度およびガラス転移温度を制御することができる。
【0216】
試験例2:ポリエステル樹脂を含むフィルム物性
前記各ポリエステル樹脂試料について、以下の方法でフィルム製造後の物性を評価し、その評価結果を下記表8に示す。
【0217】
1)透過率:ポリエステル樹脂試料を用いて、それぞれの二軸延伸フィルムを製造した。具体的には、前記ポリエステル樹脂試料を押出機で180~260℃の温度で溶融した。
【0218】
ダイ(die)を通して前記溶融物を押出してシート状に成形および急冷した。これにより得られたシートを縦方向(MD)に3.0倍延伸した後、幅方向(TD)に3.7倍延伸した。前記延伸されたフィルムに対して、寸法安定性を付与するために、張力下で120~160℃で熱固定して二軸延伸フィルムを得た。
【0219】
このように製造されたポリエステルフィルムを10cm×10cm(縦方向長さ×横方向長さ)の大きさで切断して試験片を準備した。前記試験片に対してMinolta社製のCM-3600A測定装置を用いてASTM D1003-97測定法により、前記試験片の平行透過率と拡散透過率を測定した。透過率は、平行透過率と拡散透過率を合わせた値で規定される。したがって、前記試験片の平行透過率と拡散透過率から透過率を求めた。
【0220】
2)Modulus、引張強さおよび伸び率:ポリエステル樹脂試料に対して、Microcompounder押出機を活用して押出温度120~160℃でスクリュースピードを100~120rpmとし、ASTM D638-V Type試験片を製作した。
【0221】
このように製造されたポリエステル樹脂試験片を万能試験機UTM 5566A(Instron社製)下でViceグリップを活用してLD方向に装着した。常温で5mm/minの速度で伸びながら破断が起こるまでサンプルが破断した地点への強度を引張強さとし、伸びた長さを伸び率とし、初期変形に対する荷重の傾きをTensile Modulusとした。
【0222】
【0223】
上記表8によれば、実施例のポリエステル樹脂を使用して製造されたフィルムは、透過率88.12~89.25%、Tensile Modulus110~159MPa、引張強さ16.1~60MPaおよび伸び率361~830%であった。このような実施例のポリエステル樹脂は、製造時の原料物質の種類および投入量を調節することにより、透過率、Tensile Modulus、引張強さおよび伸び率を制御することができる。
【0224】
以上、本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されず、特許請求の範囲、発明の詳細な説明および添付した図面の範囲内で多様に変形して実施することが可能であり、これも本発明の範囲に属することは当然である。
【国際調査報告】