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特表2024-541607ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株及びその培養物を含む食品用発酵組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株及びその培養物を含む食品用発酵組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/135 20160101AFI20241031BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20241031BHJP
   C12R 1/01 20060101ALN20241031BHJP
【FI】
A23L33/135
C12N1/20 Z
C12R1:01
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532374
(86)(22)【出願日】2022-11-29
(85)【翻訳文提出日】2024-05-29
(86)【国際出願番号】 KR2022019030
(87)【国際公開番号】W WO2023101356
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0168677
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0142862
(32)【優先日】2022-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】513178894
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダン コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】ホン、ナ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、キョン チャン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ヒ ギョン
(72)【発明者】
【氏名】チェ、スン ヒェ
(72)【発明者】
【氏名】アン、ヒ ユン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ウニョン
(72)【発明者】
【氏名】ノ、ジ ウン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ソ-ヒョン
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018LE06
4B018MD86
4B018ME09
4B018ME14
4B018MF13
4B065AA01X
4B065AC20
4B065BA30
4B065CA42
4B065CA46
(57)【要約】
本出願は、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)CJLM119菌株又はその培養物から選択される少なくとも1つを含む発酵用組成物で発酵させ、ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株の培養物、その破砕物、その抽出物、又はそれに由来する成分から選択される少なくとも1つを含む免疫増強用又は腸健康改善用組成物に関する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)CJLM119菌株又はその培養物から選択される少なくとも1つを含む発酵用組成物。
【請求項2】
ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株又はその培養物で発酵させた発酵物を含む免疫増強用食品組成物。
【請求項3】
ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株又はその培養物で発酵させた発酵物を含む腸健康改善用食品組成物。
【請求項4】
前記発酵物は、ニンニク、トウガラシ粉及び窒素源からなる群から選択される少なくとも1つを含む組成物を発酵させたものである、請求項2又は3に記載の食品組成物。
【請求項5】
前記発酵物は、組成物の総重量に対して、ニンニクを5~9重量%含む組成物を発酵させたものである、請求項2又は3に記載の食品組成物。
【請求項6】
前記食品組成物は、TNF-α又はIL-6の発現を増大させるものである、請求項2又は3に記載の食品組成物。
【請求項7】
前記食品組成物は、有害菌の生育を抑制するものである、請求項2又は3に記載の食品組成物。
【請求項8】
前記有害菌は、エシェリキア属(Escherichia sp.)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus sp.)、サルモネラ属(Salmonella sp.)、シゲラ属(Shigella sp.)、クレブシエラ属(Klebsiella sp.)、エンテロバクテリアセエ属(Enterobacteriaceae sp.)、シュードモナス属(Pseudomonas sp.)、モラクセラ属(Moraxella sp.)、ヘリコバクター属(Helicobacter sp.)、ステノトロホモナス属(Stenotrophomonas sp.)、リステリア属(Listeria sp.)及びビブリオ属(Vibrio sp.)からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項7に記載の食品組成物。
【請求項9】
前記発酵物は、32℃~42℃で10時間~30時間発酵させたものである、請求項2又は3に記載の食品組成物。
【請求項10】
前記発酵物は、炭素源又は塩から選択される少なくとも1つをさらに含む組成物を発酵させたものである、請求項2又は3に記載の食品組成物。
【請求項11】
前記発酵物は、ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株の培養物、その破砕物、その抽出物、又はそれに由来する成分から選択される少なくとも1つを含む、請求項2又は3に記載の食品組成物。
【請求項12】
前記発酵物は、ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株もしくはその培養物で発酵させた発酵物、又は前記発酵物をさらに発酵させた発酵物が含まれるものである、請求項2又は3に記載の食品組成物。
【請求項13】
ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株又はその培養物で発酵させた発酵物を含む免疫増強用機能性食品。
【請求項14】
ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株又はその培養物で発酵させた発酵物を含む腸健康改善用機能性食品。
【請求項15】
前記発酵物は、ニンニク、トウガラシ粉及び窒素源からなる群から選択される少なくとも1つを含む組成物を発酵させたものである、請求項12又は13に記載の機能性食品。
【請求項16】
前記発酵物は、組成物の総重量に対して、ニンニクを5~9重量%含む組成物を発酵させたものである、請求項12又は13に記載の機能性食品。
【請求項17】
前記発酵物は、ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株もしくはその培養物で発酵させた発酵物、又は前記発酵物をさらに発酵させた発酵物が含まれるものである、請求項12又は13に記載の機能性食品。
【請求項18】
ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株又はその培養物で組成物を発酵させるステップを含む、組成物の免疫増強効果を高める方法。
【請求項19】
ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株又はその培養物で組成物を発酵させるステップを含む、組成物の腸健康改善効果を高める方法。
【請求項20】
ニンニク、トウガラシ粉及び窒素源からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
前記組成物は食品組成物である、請求項18又は19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)CJLM119菌株又はその培養物から選択される少なくとも1つを含む発酵用組成物で発酵させ、ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株の培養物、その破砕物、その抽出物、又はそれに由来する成分から選択される少なくとも1つを含む免疫増強用又は腸健康改善用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発酵食品とは、特定微生物の成長と酵素の作用により成分が変換された食品や飲料を意味する。乳酸菌をはじめとする有益菌は、発酵過程中に食品原料を構成する化学成分を変換することにより、栄養分のバイオアベイラビリティを高め、生物学的保存剤として食品の安全性を強化し、毒性物質及び栄養阻害因子を分解し、生理活性物質を生産することが報告されている(非特許文献1)。
【0003】
前記乳酸菌のうち、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)は、野菜類の乳酸発酵に関与する代表的な乳酸菌として知られており、キムチなどの発酵野菜類に見られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/0297908号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Tamang JP, et al., Front Microbiol (2016), 7, 578.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願は、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)CJLM119菌株又はその培養物から選択される少なくとも1つを含む発酵用組成物で発酵させ、ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株の培養物、その破砕物、その抽出物、又はそれに由来する成分から選択される少なくとも1つを含む免疫増強用又は腸健康改善用組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願は、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)CJLM119菌株又はその培養物から選択される少なくとも1つを含む発酵用組成物を提供することを目的とする。
【0008】
また、本出願は、ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株又はその培養物で発酵させた発酵物を含む免疫増強用食品組成物を提供することを目的とする。
【0009】
さらに、本出願は、ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株又はその培養物で発酵させた発酵物を含む腸健康改善用食品組成物を提供することを目的とする。
【0010】
さらに、本出願は、ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株又はその培養物で発酵させた発酵物を含む免疫増強用機能性食品を提供することを目的とする。
【0011】
さらに、本出願は、ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株又はその培養物で発酵させた発酵物を含む腸健康改善用機能性食品を提供することを目的とする。
【0012】
さらに、本出願は、ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株又はその培養物で組成物を発酵させるステップを含む、組成物の免疫増強効果を高める方法を提供することを目的とする。
【0013】
さらに、本出願は、ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株又はその培養物で組成物を発酵させるステップを含む、組成物の腸健康改善効果を高める方法を提供することを目的とする。
【発明の効果】
【0014】
本出願の組成物は、免疫増強効果及び腸健康改善効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】マウス免疫細胞であるJ774A.1細胞を製造例1~3の発酵組成物及び比較例1~2で処理し、その後細胞毒性を確認した結果を示す図である。
図2】マウス免疫細胞であるJ774A.1細胞をロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株が5×10cfu/mL(発酵組成物A)、10cfu/mL(発酵組成物B)及び5×10cfu/mL(発酵組成物C)で含まれる発酵組成物及びその上清で処理し、その後細胞毒性を確認した結果を示す図である。
図3】マウス免疫細胞であるJ774A.1細胞をロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株又はKCTC3505菌株が1.25×10cfu/mL及び6.25×10cfu/mLで含まれる発酵組成物で処理し、その後細胞毒性を確認した結果を示す図である。
図4】マウス免疫細胞であるJ774A.1細胞をロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株又はKCTC3505菌株が1.25×10cfu/mL、2.5×10cfu/mL及び5.0×10cfu/mLで含まれる発酵組成物で処理し、その後細胞毒性を確認した結果を示す図である。
図5】マウス免疫細胞であるJ774A.1細胞を製造例1~3の発酵組成物及び比較例1~2で処理した細胞において、TNF-α(Tumor necrosis factor-α)発現量を分析した結果を示す図である(***p<0.001)。
図6】マウス免疫細胞であるJ774A.1細胞を製造例1~3の発酵組成物及び比較例1~2で処理した細胞において、IL-6(Interleukin-6)発現量を分析した結果を示す図である(***p<0.001)。
図7】マウス免疫細胞であるJ774A.1細胞をロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株が5×10cfu/mL、10cfu/mL及び5×10cfu/mLで含まれる発酵組成物で処理し、その後TNF-α発現量を分析した結果を示す図である(***p<0.001,**p<0.01)。
図8】マウス免疫細胞であるJ774A.1細胞をロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株が5×10cfu/mL、10cfu/mL及び5×10cfu/mLで含まれる発酵組成物で処理し、その後IL-6発現量を分析した結果を示す図である(***p<0.001,**p<0.01)。
図9】マウス免疫細胞であるJ774A.1細胞をロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株又はKCTC3505菌株が1.25×10cfu/mL及び6.25×10cfu/mLで含まれる発酵組成物で処理し、その後TNF-α発現量を分析した結果を示す図である(***p<0.001,##p<0.01,p<0.05)。
図10】マウス免疫細胞であるJ774A.1細胞をロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株又はKCTC3505菌株が1.25×10cfu/mL、2.5×10cfu/mL及び5.0×10cfu/mLで含まれる発酵組成物で処理し、その後TNF-α発現量を分析した結果を示す図である(**p<0.01,p<0.05)。
図11】マウス免疫細胞であるJ774A.1細胞をロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株又はKCTC3505菌株が1.25×10cfu/mL及び6.25×10cfu/mLで含まれる発酵組成物で処理し、その後IL-6発現量を分析した結果を示す図である(***p<0.001,##p<0.01,p<0.05)。
図12】マウス免疫細胞であるJ774A.1細胞をロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株又はKCTC3505菌株が1.25×10cfu/mL、2.5×10cfu/mL及び5.0×10cfu/mLで含まれる発酵組成物で処理し、その後IL-6発現量を分析した結果を示す図である(***p<0.001,**p<0.01,p<0.05)。
図13】製造例4の発酵組成物の有害菌成長抑制効果を比較した図である。 発酵組成物:Fermentation 発酵組成物の上清:Metabolite
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、これらを具体的に説明する。なお、本出願で開示される各説明及び実施形態はそれぞれ他の説明及び実施形態にも適用される。すなわち、本出願で開示される様々な要素のあらゆる組み合わせが本出願に含まれる。また、以下の具体的な記述に本出願が限定されるものではない。さらに、本明細書全体にわたって多くの論文及び特許文献が参照されており、その引用が示されている。引用された論文及び特許文献の開示内容はその全体が本明細書に参照として組み込まれており、それにより本出願の属する技術分野の水準及び本出願の内容がより明確に説明される。
【0017】
本出願の一態様は、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)CJLM119菌株又はその培養物から選択される少なくとも1つを含む発酵用組成物を提供する。
【0018】
本出願の菌株は、ロイコノストック属(Leuconostoc sp.)菌株であってもよく、具体的には、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)であってもよく、より具体的には、受託番号KCTC13043BPとして寄託したロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株(特許文献1)であってもよい。
【0019】
本出願における「培養物」とは、本出願の菌株が試験管内で成長又は生存できるように栄養分を供給する培地で前記菌株を所定期間培養して得られる、前記菌株、その代謝物、余分の栄養分などを含む培地全体を意味する。また、「培養物」は、菌株を含む組成物であり、本出願において、培養物は菌株と同じ目的で用いられる。本出願において、前記「培養物」は、「培養液」、「培養上清」、「条件培養液」又は「調整培地」と混用される。
【0020】
本出願における「培養」とは、前記微生物を適宜調節した環境条件で生育させることを意味する。本出願の培養過程は、当該技術分野で公知の好適な培地と培養条件で行うことができる。このような培養過程は、当業者であれば選択される菌株に応じて容易に調整して用いることができる。具体的には、前記培養は、回分、連続及び流加培養であるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
前記培地に含まれる炭素源としては、グルコース、スクロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、デンプン、セルロースなどの糖及び炭水化物、大豆油、ヒマワリ油、ヒマシ油、ココナッツ油などの油脂、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸などの脂肪酸、グリセリン、エタノールなどのアルコール、酢酸などの有機酸が挙げられる。これらの物質は、単独で用いることもでき、混合物として用いることもできるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
前記培地に含まれる窒素源としては、ペプトン、酵母抽出物、肉汁、麦芽抽出物、トウモロコシ浸漬液、大豆粕、尿素などの有機窒素源、及び硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、硝酸アンモニウムなどの無機窒素源が挙げられる。これらの窒素源は、単独で用いることもでき、組み合わせて用いることもできるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
前記培地に含まれるリン源としては、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、及びそれらに相当するナトリウム含有塩が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
また、前記培地は、硫酸マグネシウム、硫酸鉄などの金属塩を含有してもよく、その他、アミノ酸、ビタミン、好適な前駆体などを含有してもよい。これらの培地又は前駆体は、培養物に回分式又は連続式で添加することができるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
培養中に水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、アンモニア、リン酸、硫酸などの化合物を培養物に好適な方式で添加することにより、培養物のpHを調整することができる。また、培養中には、脂肪酸ポリグリコールエステルなどの消泡剤を用いて気泡生成を抑制することができる。さらに、培養物の好気状態を維持するために、培養物中に酸素又は酸素含有気体を注入してもよく、嫌気及び微好気状態を維持するために、気体を注入しなくてもよく、窒素、水素又は二酸化炭素ガスを注入してもよい。
【0026】
前記培養物は、本出願の菌株を10℃~40℃で6時間~48時間培養することにより得ることができ、例えば20℃~40℃で12時間~36時間、又は30℃~40℃で16時間~24時間培養することにより得ることができる。
【0027】
本出願の培養物には、生菌培養物(すなわち、生菌を培地で培養した結果物)、前記生菌培養物において生菌を死菌化した培養物、培養濾液(すなわち、前記培養物から死菌体又は生菌体を除去した結果物)、その濃縮物又は凍結乾燥物が含まれる。
【0028】
前記培養濾液は、培養液を所定時間静置し、下層に沈んだ部分を除く上層の液体のみ採取するか、濾過により菌体を除去するか、培養液を遠心分離して下部の沈殿を除去し、上部の液体のみ採取することにより得ることができる。本出願において、前記「培養濾液」は、「上清」と混用される。
【0029】
前記菌体は、培養液を遠心分離し、下層に沈んだ部分を採取することにより得ることもでき、重力により培養液の下層に沈むので、所定時間静置し、上部の液体を除去することにより得ることもできる。
【0030】
前記濃縮物は、前記菌株の培養液自体を濃縮するか、前記培養液を遠心分離やフィルターで濾過し、その後得られた上清を濃縮することにより得ることができる。
【0031】
前記凍結乾燥物は、前記菌株の培養液自体から、又は前記培養液を凍結乾燥させることにより得ることができる。
【0032】
本出願の発酵用組成物は、様々な発酵食品の製造に用いられ、具体的には、ニンニク、トウガラシ粉、調味料などの薬味を発酵させるためのものであるが、これに限定されるものではない。
【0033】
本出願の発酵用組成物で発酵させると、免疫増強効果及び/又は腸健康改善効果を有する食品を製造することができるが、これに限定されるものではない。
【0034】
本出願の他の態様は、ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株又はその培養物で発酵させた発酵物を含む免疫増強用食品組成物を提供する。
【0035】
本出願のさらに他の態様は、ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株又はその培養物で発酵させた発酵物を含む腸健康改善用食品組成物を提供する。
【0036】
前記ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株及び培養物については前述した通りである。
【0037】
本出願の食品組成物は、前述した態様の発酵用組成物で発酵させた発酵物を含むものであってもよい。例えば、前記発酵物には、ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株又はその培養物で発酵させた発酵物が含まれる。あるいは、前記発酵物には、ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株又はその培養物で発酵させた前記発酵物をさらに発酵させた発酵物が含まれる。
【0038】
本出願の一実施例において、本出願の食品組成物は、前述した態様の発酵用組成物で発酵させたニンニク、トウガラシ粉、窒素源などを含むものであってもよい。
【0039】
本出願における「発酵」とは、微生物を用いた有機物質の酵素的又は代謝的分解をはじめとするあらゆる活性又は過程を意味する。
【0040】
本出願における「発酵物」とは、微生物を用いた発酵による酵素的又は代謝的分解の結果物を意味する。例えば、前記発酵物は、液状であってもよい。また、前記発酵物は、発酵の結果物である原液又はその上清であってもよい。
【0041】
本出願の他の実施例において、本出願の発酵物には、生菌体が含まれる。
【0042】
本出願のさらに他の実施例において、本出願の発酵物は、さらに発酵を進めたものであってもよい。例えば、本出願の発酵物を野菜などに添加してさらに発酵させることもでき、液状組成物などに添加してさらに発酵させることもできる。前記野菜の例としては、ハクサイ、ダイコンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
本出願の発酵物は、本出願の菌株又はその培養物から選択される少なくとも1つで25℃~40℃にて発酵させたものであってもよい。本出願の発酵は、本出願の菌株又はその培養物から選択される少なくとも1つで10時間~30時間発酵させるものであってもよい。
【0044】
例えば、本出願の発酵時の温度は、25℃以上、27℃以上、28℃以上及び29℃以上から選択される1つの下限、並びに/又は40℃以下、35℃以下、33℃以下及び31℃以下から選択される1つの上限から構成される範囲であってもよい。また、本出願の発酵時の時間は、10時間以上、12時間以上、14時間以上、16時間以上及び18時間以上から選択される1つの下限、並びに/又は30時間以下、28時間以下、27時間以下、26時間以下及び25時間以下から選択される1つの上限から構成される範囲であってもよい。
【0045】
本出願の発酵物は、ニンニク、トウガラシ粉及び窒素源からなる群から選択される少なくとも1つを含む組成物を発酵させたものであってもよい。一実施例として、本出願の発酵対象である組成物は、ニンニク、トウガラシ粉及び窒素源からなる群から選択される少なくとも1つを含む組成物であるが、これに限定されるものではない。他の実施例として、本出願の発酵物は、ニンニク、トウガラシ粉及び窒素源からなる群から選択される少なくとも1つを含む組成物に、本出願の菌株及び/又はその培養物を添加して発酵させたものであってもよい。
【0046】
本出願の発酵物は、ニンニク、トウガラシ粉及び窒素源からなる群から選択される少なくとも1つを含む組成物の総重量に対して、本出願の菌株及び/又はその培養物を0.5~4重量%添加して発酵させたものであってもよい。
【0047】
例えば、本出願の菌株及び/又はその培養物は、組成物の総重量に対して、1重量%以上、1.2重量%以上、1.6重量%以上及び1.8重量%以上から選択される1つの下限、並びに/又は3.5重量%以下、2.8重量%以下、2.6重量%以下及び2.2重量%以下から選択される1つの上限から構成される範囲で含まれるものであってもよい。
【0048】
本出願の発酵物は、組成物の総重量に対して、ニンニクを4~10重量%含む組成物を発酵させたものであってもよい。一実施例として、本出願の発酵対象である組成物は、ニンニク、トウガラシ粉及び窒素源からなる群から選択される少なくとも1つを含む組成物であるが、これに限定されるものではない。他の実施例として、本出願の発酵対象である、ニンニク、トウガラシ粉及び窒素源からなる群から選択される少なくとも1つを含む組成物は、組成物の総重量に対して、ニンニクを4~10重量%含むものであってもよい。
【0049】
例えば、前記ニンニクは、組成物の総重量に対して、4重量%以上、5重量%以上、6重量%以上及び6.5重量%以上から選択される1つの下限、並びに/又は10重量%以下、9重量%以下、8重量%以下及び7.5重量%以下から選択される1つの上限から構成される範囲で含まれるものであってもよい。
【0050】
前記ニンニクは、刻みニンニク、抽出物、濃縮液、粉末などの形態で本出願の組成物に含まれるが、これに限定されるものではなく、市販のニンニク、及びそれを刻んだ製品や、抽出物、濃縮液、粉末などの形態に加工した製品のいかなるものを用いてもよい。
【0051】
さらに他の実施例として、本出願の発酵対象である、ニンニク、トウガラシ粉及び窒素源からなる群から選択される少なくとも1つを含む組成物は、組成物の総重量に対して、トウガラシ粉を0.5~4重量%含むものであってもよい。
【0052】
例えば、前記トウガラシ粉は、組成物の総重量に対して、0.5重量%以上、1重量%以上、1.2重量%以上、1.6重量%以上及び1.8重量%以上から選択される1つの下限、並びに/又は4重量%以下、3.5重量%以下、2.8重量%以下、2.6重量%以下及び2.2重量%以下から選択される1つの上限から構成される範囲で含まれるものであってもよい。
【0053】
前記トウガラシ粉は、トウガラシを乾燥させて粉砕したものであるか、凍結乾燥させて粉末化したものであるが、これらに限定されるものではなく、市販のトウガラシ粉のいかなるものを用いてもよい。
【0054】
さらに他の実施例として、本出願の発酵対象である、ニンニク、トウガラシ粉及び窒素源からなる群から選択される少なくとも1つを含む組成物は、組成物の総重量に対して、窒素源を0.1~1.5重量%含むものであってもよい。
【0055】
例えば、前記窒素源は、組成物の総重量に対して、0.3重量%以上、0.6重量%以上、0.9重量%以上及び1.1重量%以上から選択される1つの下限、並びに/又は1.45重量%以下、1.4重量%以下、1.35重量%以下、1.3重量%以下から選択される1つの上限から構成される範囲で含まれるものであってもよい。
【0056】
前記窒素源は、食用のものであってもよい。前記窒素源は、一例として調味料が挙げられ、例えばTasteNrich(登録商標)(CJ第一製糖)であるが、これに限定されるものではない。
【0057】
具体的には、本出願の組成物は、ニンニクを含むものであってもよい。
【0058】
本出願の発酵物は、炭素源又は塩から選択される少なくとも1つをさらに含む組成物を発酵させたものであってもよい。
【0059】
一実施例として、本出願の発酵対象である組成物は、組成物の総重量に対して、炭素源を2~4重量%含むものであってもよい。
【0060】
例えば、前記炭素源は、組成物の総重量に対して、2.2重量%以上、2.4重量%以上、2.6重量%以上及び2.8重量%以上から選択される1つの下限、並びに/又は3.8重量%以下、3.6重量%以下、3.4重量%以下及び3.2重量%以下から選択される1つの上限から構成される範囲で含まれるものであってもよい。
【0061】
前記炭素源は、食用のものであってもよい。前記炭素源は、一例としてフルクトース、スクロース、グルコースなどが挙げられ、例えばフルクトースであり、具体的には結晶フルクトースであるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
一実施例として、本出願の発酵対象である組成物は、組成物の総重量に対して、塩を0.1~2重量%含むものであってもよい。
【0063】
例えば、前記塩は、組成物の総重量に対して、0.5重量%以上、0.8重量%以上、1重量%以上及び1.2重量%以上から選択される1つの下限、並びに/又は1.9重量%以下、1.8重量%以下、1.7重量%以下及び1.6重量%以下から選択される1つの上限から構成される範囲で含まれるものであってもよい。
【0064】
本出願の発酵物は、ショウガをさらに含む組成物を発酵させたものであってもよい。
【0065】
一実施例として、本出願の発酵対象である組成物は、組成物の総重量に対して、ショウガを0.1~1.5重量%含むものであってもよい。
【0066】
例えば、前記ショウガは、組成物の総重量に対して、0.3重量%以上、0.6重量%以上、0.9重量%以上及び1.1重量%以上から選択される1つの下限、並びに/又は1.45重量%以下、1.4重量%以下、1.35重量%以下、1.3重量%以下から選択される1つの上限から構成される範囲で含まれるものであってもよい。
【0067】
本出願の発酵物は、水をさらに含む組成物を発酵させたものであってもよい。
【0068】
本出願の一実施例において、前記水は、本出願の発酵対象である組成物に含まれる原料を全て混合し、次いで前記組成物の総重量が100重量%になるまで添加するものであってもよい。
【0069】
本出願の発酵物は、ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株の培養物、その破砕物、その抽出物、又はそれに由来する成分から選択される少なくとも1つを含むものであってもよい。
【0070】
本出願における「破砕物」とは、前記培養液又はその濃縮液に含まれる微生物の細胞壁を化学的又は物理的力で破砕することにより得られる産物を意味する。本出願において、前記「破砕物」は、「溶解物」と混用される。
【0071】
本出願における「抽出物」とは、前記培養液又はその濃縮液から微生物を除去した物質を意味する。
【0072】
また、本出願の菌株由来の成分としては、例えば菌株由来の代謝物質などが挙げられ、前記菌株由来の代謝物質などを含有する菌体を破砕することにより得られる細胞質分画物が挙げられる。その他、食品組成物に含有させるのに適した菌株の形態、製剤化方法、菌株由来の成分の分離方法などは、当業者によく知られている。
【0073】
前述した本出願の一実施例において、本出願の発酵物は、キムチの素(キムチの薬味)に含まれる成分を含ませて発酵させたものであってもよい。
【0074】
本出願の食品組成物は、免疫増強効果を有するものであってもよい。
【0075】
本出願における「免疫増強」とは、様々な特異的又は非特異的方法により免疫反応を増加させる効果を意味し、免疫調節効果をさらに含むものであってもよい。前記免疫増強効果としては、例えばマクロファージの活性を向上させることによる外部の病原菌に対する防御、死滅細胞の除去、及び免疫媒体分泌増大効果が挙げられ、免疫調節因子の活性を向上させて免疫系の活性を向上させ、新生血管生成の抑制、病原菌に対する生育抑制力の増加などにより免疫関連疾病を予防する効果などが挙げられる。
【0076】
具体的には、前記免疫増強効果は、前記免疫媒体分泌増大効果により得られるものであってもよい。
【0077】
前記免疫媒体は、一例としてTh1型前炎症性(pro-inflammatory)サイトカインが挙げられ、例えばTNF-α(Tumor necrosis factor-α)、IL-6(Interleukin-6)及びIL-1βなどであるが、これらに限定されるものではない。
【0078】
本出願の一実施例において、本出願の組成物は、TNF-α又はIL-6の発現を増大させるものであってもよい。
【0079】
本出願の食品組成物は、腸健康改善効果を有するものであってもよい。
【0080】
本出願における「腸健康改善」とは、腸内有益菌及び有害菌の菌叢を調節して腸内環境を正常な状態に維持する効果を意味する。前記腸健康改善効果としては、例えば腸内有益菌の菌叢を活性化して有害菌の菌叢を抑制する効果が挙げられ、腸の密着結合障壁機能を強化して腸の全般的な機能を改善及び活性化する効果が挙げられ、腸内の短鎖脂肪酸の含有量を増加させる効果が挙げられ、腸内の上皮細胞の増殖を誘導する効果などが挙げられる。本出願において、前記「腸健康改善効果」は、「整腸効果」と混用される。
【0081】
具体的には、前記腸健康改善効果は、前記有害菌生育抑制効果に基づいて、腸内有益菌の菌叢を活性化し、有害菌の菌叢を抑制することにより得られるものであってもよい。
【0082】
本出願の食品組成物は、有害菌の生育を抑制する効果を有するものであってもよい。
【0083】
前記有害菌は、病原性微生物であってもよい。
【0084】
前記病原性微生物は、感染すると特定疾患を引き起こすものであれば特に限定されるものではなく、一例としてエシェリキア属(Escherichia sp.)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus sp.)、サルモネラ属(Salmonella sp.)、シゲラ属(Shigella sp.)、クレブシエラ属(Klebsiella sp.)、エンテロバクテリアセエ属(Enterobacteriaceae sp.)、シュードモナス属(Pseudomonas sp.)、モラクセラ属(Moraxella sp.)、ヘリコバクター属(Helicobacter sp.)、ステノトロホモナス属(Stenotrophomonas sp.)、リステリア属(Listeria sp.)、ビブリオ属(Vibrio sp.)微生物などが挙げられ、例えば大腸菌(Escherichia coli)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、サルモネラ・エンテリティディス(Salmonella enteritidis)、サルモネラ・ティフィ(Salmonella typhi)、シゲラ・ディゼンテリエ(Shigella dysenteriae)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、ステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、ビブリオ・コレレ(Vibrio cholerae)、ビブリオ・バルニフィカス(Vibrio vulnificus)などであり、具体的には大腸菌又はスタフィロコッカス・アウレウスである。
【0085】
本出願の食品組成物は、前述した態様の発酵用組成物で発酵させた発酵物を含むものであってもよい。例えば、前記発酵物には、ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株又はその培養物で発酵させた発酵物が含まれる。あるいは、前記発酵物には、ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株又はその培養物で発酵させた前記発酵物をさらに発酵させた発酵物が含まれる。これについては前述した通りである。
【0086】
例えば、前記発酵物は、液状であってもよい。また、前記発酵物は、発酵の結果物である原液又はその上清であってもよい。
【0087】
前記発酵物は、さらに発酵を進めたものであってもよい。例えば、本出願の発酵物を野菜などに添加してさらに発酵させることもでき、液状組成物などに添加してさらに発酵させることもできる。前記野菜の例としては、ハクサイ、ダイコンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0088】
前記発酵物が液状発酵物である場合、本出願の発酵物には、前記液状発酵物及び/又は前記液状発酵物をさらに発酵させた発酵物が全て含まれる。ここで、さらに発酵させた発酵物は、液状又は固体状の発酵物であるが、これに限定されるものではない。
【0089】
本出願の食品組成物は、食品組成物以外に、食品添加剤の形態であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0090】
本出願の食品組成物は、食品添加物をさらに含んでもよく、「食品添加物」としての適否は、特に断らない限り、食品医薬品安全処の承認を得た食品添加物公典の総則及び一般試験法などに従って当該品目に関する規格及び基準により判定する。
【0091】
前記「食品添加物公典」に収載された品目としては、例えばケトン類、グリシン、クエン酸カリウム、ニコチン酸、ケイ皮酸などの化学的合成品、柿色素、甘草抽出物、結晶セルロース、グアーガムなどの天然添加物、L-グルタミン酸ナトリウム製剤、麺類添加アルカリ剤、保存料製剤、タール色素製剤などの混合製剤類が挙げられる。
【0092】
本出願の食品としては、果実飲料、野菜類飲料、炭酸飲料、豆乳類、ヨーグルトなどの乳酸菌飲料、混合飲料などの飲料や、キムチ、キムチの素(キムチの薬味)、発酵食品類や、パン、モチ類、堅果類、キャンディー類、チョコレート類、チューインガム、ジャム類などの菓子類や、アイスクリーム類、氷菓類、アイスクリーム粉末類などのアイスクリーム製品類や、牛乳類、低脂肪牛乳類、乳糖分解牛乳、加工乳類、ヤギ乳、発酵乳類、バター乳類、濃縮乳類、乳クリーム類、バター乳、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ、粉乳類、乳清類などの乳加工品類や、食肉加工品、卵加工品、ハンバーガーなどの食肉製品類や、かまぼこ、ハム、ソーセージ、ベーコン、魚肉加工品などの魚肉製品類や、ラーメン類、乾麺類、生麺類、油湯麺類、糊化乾麺類、改良熟麺類、冷凍麺類、パスタ類などの麺類や、醤油、味噌、コチュジャン、甜麺醤、チョングッチャン、混合醤、食酢、ソース類、トマトケチャップ、カレー、ドレッシングなどの調味食品などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0093】
前記以外に、本出願の食品組成物は、様々な栄養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護コロイド、増粘剤、pH調整剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に用いられる炭酸化剤などを含有してもよい。その他に、本出願の食品組成物は、天然フルーツジュース、フルーツジュース飲料及び野菜飲料の製造のための果肉を含有してもよい。これらの成分は、独立して又は組み合わせて用いることができる。
【0094】
本出願のさらに他の態様は、ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株又はその培養物で発酵させた発酵物を含む免疫増強用機能性食品を提供する。
【0095】
本出願のさらに他の態様は、ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株又はその培養物で発酵させた発酵物を含む腸健康改善用機能性食品を提供する。
【0096】
前記ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株及び培養物については前述した通りである。
【0097】
本出願の発酵物は、本出願の菌株又はその培養物から選択される少なくとも1つで32℃~42℃にて10時間~30時間発酵させたものであってもよく、それについては前述した通りである。
【0098】
本出願の発酵物は、ニンニク、トウガラシ粉及び窒素源からなる群から選択される少なくとも1つを含む組成物を発酵させたものであってもよく、それについては前述した通りである。
【0099】
本出願の発酵物は、組成物の総重量に対して、ニンニクを5~9重量%含む組成物を発酵させたものであってもよく、それについては前述した通りである。
【0100】
本出願の発酵物は、炭素源又は塩から選択される少なくとも1つをさらに含む組成物を発酵させたものであってもよく、それについては前述した通りである。
【0101】
本出願の発酵物は、ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株の培養物、その破砕物、その抽出物、又はそれに由来する成分から選択される少なくとも1つを含むものであってもよく、それについては前述した通りである。
【0102】
本出願における「機能性食品」とは、機能性食品に関する法律による人体に有用な機能性を有する原料や成分を用いて製造及び加工した食品を意味し(第3条第1号)、「機能性」とは、人体の構造及び機能に対して栄養素を調節するか、生理学的作用などの保健用途に有用な効果を与えることを意味する(同条第2号)。
【0103】
本出願の機能性食品は、食品添加剤の形態であってもよい。
【0104】
本出願の機能性食品を食品添加剤として用いる場合は、前記機能性食品を組成物としてそのまま添加してもよく、他の食品又は食品成分と共に用いてもよく、通常の方法で適宜用いられる。有効成分は、その使用目的(予防又は改善)に応じて適宜用いられる。一般に、食品又は飲料の製造時に、本出願の機能性食品組成物は、原料に対して15重量部以下、好ましくは10重量部以下の量で添加される。しかし、健康を目的とする長期間の摂取においては、上記量は上記範囲以下であってもよく、安全性面で何ら問題がないので、有効成分は上記範囲以上の量で用いてもよい。
【0105】
また、前記機能性食品は、食品添加物をさらに含んでもよく、それについては前述した通りである。
【0106】
本出願のさらに他の態様は、ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株又はその培養物の発酵物を含む免疫増強用飼料組成物を提供する。
【0107】
本出願のさらに他の態様は、ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株又はその培養物の発酵物を含む腸健康改善用飼料組成物を提供する。
【0108】
前記ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株及び培養物については前述した通りである。
【0109】
本出願の発酵物は、本出願の菌株又はその培養物から選択される少なくとも1つで32℃~42℃にて10時間~30時間発酵させたものであってもよく、それについては前述した通りである。
【0110】
本出願の発酵物は、ニンニク、トウガラシ粉及び窒素源からなる群から選択される少なくとも1つを含む組成物を発酵させたものであってもよく、それについては前述した通りである。
【0111】
本出願の発酵物は、組成物の総重量に対して、ニンニクを5~9重量%含む組成物を発酵させたものであってもよく、それについては前述した通りである。
【0112】
本出願の発酵物は、炭素源又は塩から選択される少なくとも1つをさらに含む組成物を発酵させたものであってもよく、それについては前述した通りである。
【0113】
本出願の発酵物は、ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株の培養物、その破砕物、その抽出物、又はそれに由来する成分から選択される少なくとも1つを含むものであってもよく、それについては前述した通りである。
【0114】
本出願の飼料組成物は、飼料組成物以外に、飼料添加剤組成物の形態であってもよい。
【0115】
本出願の組成物を飼料添加剤として製造する場合、前記組成物は、20~90%の高濃縮液であってもよく、粉末又は顆粒の形態に製造してもよい。前記飼料添加剤は、クエン酸、フマル酸、アジピン酸、乳酸、リンゴ酸などの有機酸、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、酸性ピロリン酸塩、ポリリン酸塩(重合リン酸塩)などのリン酸塩、ポリフェノール、カテキン、α-トコフェロール、ローズマリー抽出物、ビタミンC、緑茶抽出物、甘草抽出物、キトサン、タンニン酸、フィチン酸などの天然抗酸化剤の1種以上をさらに含んでもよい。飼料として製造する場合、前記組成物は、通常の飼料の形態に製剤化してもよく、また、通常の飼料成分を共に含んでもよい。
【0116】
前記飼料及び飼料添加剤は、穀物、例えば粉砕又は破砕したコムギ、エンバク、オオムギ、トウモロコシ及びコメ、植物性タンパク質飼料、例えばアブラナ、マメ及びヒマワリを主成分とする飼料、動物性タンパク質飼料、例えば血粉、肉粉、骨粉及び魚粉、糖分及び乳製品、例えば各種粉乳及び乳清粉末からなる乾燥成分などをさらに含んでもよく、それ以外にも、栄養補充剤、消化吸収促進剤、成長促進剤などをさらに含んでもよい。
【0117】
前記飼料添加剤は、動物に単独で投与してもよく、食用担体中で他の飼料添加剤と組み合わせて投与してもよい。また、前記飼料添加剤は、トップドレッシングして、もしくはそれらを動物飼料に直接混合して、又は飼料とは別の経口剤形で容易に動物に投与することができる。前記飼料添加剤を動物飼料とは別に投与する場合、当該技術分野で周知のように、薬剤学的に許容される食用担体と組み合わせて即時放出又は徐放性剤形に製造してもよい。このような食用担体は、固体又は液体、例えばトウモロコシデンプン、ラクトース、スクロース、マメフレーク、落花生油、オリーブ油、ゴマ油及びプロピレングリコールであってもよい。固体担体を用いる場合、飼料添加剤は、錠剤、カプセル剤、散剤、トローチ剤、のど飴又は微分散形態のトップドレッシングであってもよい。液体担体を用いる場合、飼料添加剤は、ゼラチンソフトカプセル剤、シロップ剤、懸濁液、エマルジョン剤又は溶液剤の剤形であってもよい。
【0118】
また、前記飼料及び飼料添加剤は、補助剤、例えば保存剤、安定化剤、湿潤剤又は乳化剤、溶液促進剤などを含有してもよい。前記飼料添加剤は、浸漬、噴霧又は混合することにより、動物の飼料に添加して用いてもよい。
【0119】
本出願の飼料又は飼料添加剤は、哺乳類、家禽及び魚類をはじめとする多くの動物食餌に適用することができる。
【0120】
前記哺乳類として、ブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ウサギ、ヤギ、齧歯動物及び実験用齧歯動物であるマウス、ハムスター、モルモットだけでなく、ペット(例えば、イヌ、ネコ)などが挙げられ、前記家禽類として、ニワトリ、シチメンチョウ、カモ、ガチョウ、キジ、ウズラなどが挙げられ、前記魚類として、コイ、フナ、マスなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0121】
本出願のさらに他の態様は、ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株又はその培養物で、ニンニク、トウガラシ粉及び窒素源からなる群から選択される少なくとも1つを含む組成物を発酵させるステップを含む、免疫増強用組成物の製造方法を提供する。
【0122】
本出願のさらに他の態様は、ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株又はその培養物で、ニンニク、トウガラシ粉及び窒素源からなる群から選択される少なくとも1つを含む組成物を発酵させるステップを含む、腸健康改善用組成物の製造方法を提供する。
【0123】
前記ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株及び培養物については前述した通りである。
【0124】
本出願の方法により製造した組成物は、発酵物であってもよい。
【0125】
本出願の発酵物は、本出願の菌株又はその培養物から選択される少なくとも1つで32℃~42℃にて10時間~30時間発酵させたものであってもよく、それについては前述した通りである。
【0126】
本出願の発酵物は、組成物の総重量に対して、ニンニクを5~9重量%含む組成物を発酵させたものであってもよく、それについては前述した通りである。
【0127】
本出願の発酵物は、炭素源又は塩から選択される少なくとも1つをさらに含む組成物を発酵させたものであってもよく、それについては前述した通りである。
【0128】
本出願の発酵物は、ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株の培養物、その破砕物、その抽出物、又はそれに由来する成分から選択される少なくとも1つを含むものであってもよく、それについては前述した通りである。
【0129】
本出願のさらに他の態様は、ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株又はその培養物で組成物を発酵させるステップを含む、組成物の免疫増強効果を高める方法を提供する。
【0130】
本出願のさらに他の態様は、ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株又はその培養物で組成物を発酵させるステップを含む、組成物の腸健康改善効果を高める方法を提供する。
【0131】
前記ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株、培養物、免疫増強、腸健康改善については前述した通りである。
【実施例
【0132】
以下、実施例を挙げて本出願をより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は本出願を例示する好ましい実施形態にすぎず、本出願がこれらに限定されるものではない。なお、本明細書に記載されていない技術的事項は、本出願の技術分野又は類似技術分野における熟練した技術者が十分に理解し、容易に実施することのできるものである。また、本明細書全体にわたって多くの論文及び特許文献が参照されており、その引用が示されている。引用された論文及び特許文献の開示内容はその全体が本明細書に参照として組み込まれており、それにより本出願の属する技術分野の水準及び本出願の内容がより明確に説明される。
【0133】
製造例:発酵組成物の製造
まず、表1に示すように、菌株を除く原料を混合して組成物をそれぞれ製造した。組成物を製造する際に、ニンニク7重量%、ショウガ1.2重量%、トウガラシ粉2重量%、炭素源(結晶フルクトース)3重量%、塩1.5重量%、窒素源としての調味料(TasteNrich(登録商標), TNR, CJ第一製糖)1.2重量%を添加し、その後混合した。次に、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)CJLM119菌株(受託番号KCTC13043BP,特許文献1)又はロイコノストック・メセンテロイデスKCTC3505を2重量%添加し、水を100重量%になるまで添加して混合し、その後30℃で20時間培養して発酵させることにより、製造例1~4の発酵組成物及び比較例1~3を製造した。発酵後に、各発酵組成物中のロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株の菌数は2×10cfu/mLであった。
【0134】
発酵組成物の上清は、発酵が終了した発酵組成物を13,000rpmで5分間遠心分離し、上清から0.45μm syringe filterで菌体を除去することにより得た。発酵組成物中のロイコノストック・メセンテロイデス菌株は、一貫して10CFU/mL以上で優占していた。
【0135】
【表1】
【実施例1】
【0136】
発酵組成物の細胞毒性の確認
各発酵組成物において細胞毒性が現れるか否かをWST-1アッセイ(Roche)により確認した。WST-1アッセイは、cell proliferation reagent WST-1アッセイキット(Roche, USA)を用いて、製造業者の指針に従って行った。
【0137】
具体的には、動物細胞としてマウスマクロファージ株であるJ774A.1を韓国細胞株銀行(KCLB)から分譲を受けて用いた。細胞は、熱不活性化した10%ウシ胎児血清(fetal bovine serum, FBS)、1%L-グルタミン、ペニシリンG(100IU/mL)及びストレプトマイシン(100mg/mL)を添加したDMEM(Gibco, USA)培地を用いて、5%COの存在下で37℃にて培養した。細胞数が1ウェル当たり5×10細胞/ウェル(体積150μL)になるように96ウェルプレート(Corning, USA)に分注し、完全に単一層(monolayer)を形成するまで約3時間培養して実験に用いた。
【0138】
1-1.各材料における発酵組成物の細胞毒性
製造例1~3の発酵組成物及び比較例1~2を抗生物質無添加のDMEM培地で希釈し、96ウェルプレートにそれぞれ100μLずつ分注した。また、対照群として、抗生物質無添加のDMEM培地(陰性対照群)、又はLPS(Lipopolysaccharide)1μg/mLを添加した抗生物質無添加のDMEM培地(陽性対照群)を96ウェルプレートにそれぞれ100μLずつ分注した。各発酵組成物又は対照群中のJ774A.1細胞が3.3×10cells/mLになるようにシーディングした。前記96ウェルプレートを5%COの存在下で37℃にて24時間培養した。
【0139】
培養終了後に、細胞上清を除去し、WST-1をDMEMで10%に希釈して各ウェルに100μLずつ分注し、5%COの存在下で37℃にて1時間培養した。その後、Spectrophotometer(BioTek, USA)を用いて、500nmで吸光度を測定した。
【0140】
その結果、製造例1~3の発酵組成物及び比較例1~2で処理した細胞の全てにおいて、陰性対照群に比べて細胞生存率が上昇し、細胞毒性がないことが確認された(図1)。
【0141】
1-2.発酵組成物の細胞毒性
製造例4の発酵組成物を抗生物質無添加のDMEM培地で希釈し、発酵組成物中のロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株が5×10cfu/mL(発酵組成物A)、10cfu/mL(発酵組成物B)及び5×10cfu/mL(発酵組成物C)になるようにし、その後それを96ウェルプレートに100μLずつ分注した。発酵組成物A~Cの上清を抗生物質無添加のDMEMで同一希釈倍数に希釈し、その後それを96ウェルプレートに100μLずつ分注した。また、対照群として、抗生物質無添加のDMEM培地(陰性対照群)、又はLPS 1μg/mLを添加した抗生物質無添加のDMEM培地(陽性対照群)を96ウェルプレートにそれぞれ100μLずつ分注した。各発酵組成物、その上清又は対照群中のJ774A.1細胞が3.3×10cells/mLになるようにシーディングした。前記96ウェルプレートを5%COの存在下で37℃にて24時間培養した。培養後に、実施例1-1と同様に、Spectrophotometerを用いて、500nmで吸光度を測定した。
【0142】
その結果、ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株が5×10cfu/mL(発酵組成物A)、10cfu/mL(発酵組成物B)及び5×10cfu/mL(発酵組成物C)で含まれる発酵組成物及びその上清で処理した細胞において、細胞生存率が維持され、細胞毒性がないことが確認された(図2)。
【0143】
1-3.各発酵菌株における発酵組成物の細胞毒性
製造例4の発酵組成物を抗生物質無添加のDMEM培地で希釈し、発酵組成物中のロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株が1.25×10cfu/mL、2.5×10cfu/mL、5.0×10cfu/mL及び6.25×10cfu/mLになるようにし、その後それを96ウェルプレートに100μLずつ分注した。比較例3を抗生物質無添加のDMEM培地で希釈し、発酵組成物中のロイコノストック・メセンテロイデスKCTC3505菌株が1.25×10cfu/mL、2.5×10cfu/mL、5.0×10cfu/mL及び6.25×10cfu/mLになるようにし、その後それを96ウェルプレートに100μLずつ分注した。また、対照群として、抗生物質無添加のDMEM培地(陰性対照群)、又はLPS 1μg/mLを添加した抗生物質無添加のDMEM培地(陽性対照群)を96ウェルプレートにそれぞれ100μLずつ分注した。各発酵組成物又は対照群中のJ774A.1細胞が3.3×10cells/mLになるようにシーディングした。前記96ウェルプレートを5%COの存在下で37℃にて24時間培養した。培養後に、実施例1-1と同様に、Spectrophotometerを用いて、500nmで吸光度を測定した。
【0144】
その結果、ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株又はKCTC3505菌株が1.25×10cfu/mL及び6.25×10cfu/mLで含まれる発酵組成物で処理した細胞の全てにおいて、陰性対照群に比べて細胞生存率が上昇し、細胞毒性がないことが確認された(図3)。
【0145】
また、ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株又はKCTC3505菌株が1.25×10cfu/mL、2.5×10cfu/mL及び5.0×10cfu/mLで含まれる発酵組成物で処理した細胞の全てにおいて、陰性対照群に比べて細胞生存率が上昇し、細胞毒性がないことが確認された(図4)。
【実施例2】
【0146】
発酵組成物の免疫増強効果の確認
製造例1~4の発酵組成物の免疫増強効果を評価するために、Th1型前炎症性(pro-inflammatory)サイトカインであるTNF-α(Tumor necrosis factor-α)及びIL-6(Interleukin-6)の分泌能をELISAアッセイにより確認した。
【0147】
2-1.各材料における発酵組成物の免疫増強効果
製造例1~3の発酵組成物及び比較例1~2を抗生物質無添加のDMEM培地で希釈し、96ウェルプレートにそれぞれ100μLずつ分注した。また、対照群として、抗生物質無添加のDMEM培地(陰性対照群)、又はLPS 1μg/mLを添加した抗生物質無添加のDMEM培地(陽性対照群)を96ウェルプレートにそれぞれ100μLずつ分注した。各発酵組成物又は対照群中のJ774A.1細胞が3.3×10cells/mLになるようにシーディングした。前記96ウェルプレートを5%COの存在下で37℃にて24時間培養した。
【0148】
培養終了後に、培養液を1,400rpmで10分間遠心分離し、J774A.1及びロイコノストック・メセンテロイデスの菌体を除去した細胞上清を得た。ELISAアッセイは、Duoset ELISA ancillary reagent kit 2(R&D systems, cat DY008, USA)を用いて行った。製造業者の指針に従って、TNF-α抗体とビオチン化した(biotinylated)2次抗体とを含むmouse TNF-α DuoSet ELISAキット(R&D systems, cat number DY 406-05, USA)、及びIL-6抗体とビオチン化した2次抗体とを含むMouse IL-6 DuoSet ELISAキット(R&D systems, cat number DY 410-05, USA)を用いた。ELISAプレートに常温でTNF-αcapture抗体(R&D systems, cat number 840143)とIL-6のcapture抗体(R&D systems, cat number 840171)をそれぞれ24時間コーティングし、その後細胞上清100μLとTNF-α標準溶液(R&D systems, cat number 840145)又はIL-6標準溶液(R&D systems, cat number 840173)を反応希釈液(R&D systems, cat number DY995)で希釈し、プレートに100μLずつ添加して常温で2時間培養した。その後、培養液を除去し、2次抗体であるビオチン化TNF-α抗体(R&D systems, cat number 840144)とIL-6抗体(R&D systems, cat number 840172)を添加し、常温で2時間コーティングした。発色反応は、streptavidin-conjugated horseradish peroxidase(R&D systems, cat number 893975)とその基質であるTMB(tetramethylbenzidine, R&D systems, cat number DY999)により誘導した。発色反応が進んだら、反応を停止するために、50μLの停止溶液(2N HSO)を各ウェルに添加した。ここで、発色反応により、青色から黄色に変化した。発色反応終了後に、Spectrophotometerを用いて、470nm(補正値540nm)で吸光度を測定した。
【0149】
その結果、製造例1~3の発酵組成物及び比較例1~2で処理した細胞の全てにおいて、陰性対照群に比べて、TNF-α(図5)及びIL-6(図6)の発現が有意に増加した(***p<0.001)。
【0150】
特に、ニンニクを含む組成物をロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株で発酵させた製造例1の発酵組成物において、他の発酵組成物に比べて、TNF-α及びIL-6の発現が大幅に増加し、優れた免疫増強効果を発揮することが確認され、ニンニクを含む組成物をロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株で発酵させていない比較例2に比べて、TNF-α及びIL-6の発現が大幅に増加した。
【0151】
具体的には、図5に示すように、ニンニクを含む組成物をロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株で発酵させていない比較例2で処理した細胞において、IL-6の発現が他の発酵組成物及び対照群に比べて高いが、それよりも、ニンニクを含む組成物をロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株で発酵させた製造例1で処理した細胞において、IL-6の発現が約2倍に増加し、ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株を用いて発酵させた発酵組成物において、免疫増強効果が著しく優れることが確認された。
【0152】
2-2.発酵組成物の免疫増強効果
製造例4の発酵組成物を抗生物質無添加のDMEM培地で希釈し、発酵組成物中のロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株が5×10cfu/mL、10cfu/mL及び5×10cfu/mLになるようにし、その後それを96ウェルプレートに100μLずつ分注した。各発酵組成物中のJ774A.1細胞が3.3×10cells/mLになるようにシーディングした。前記96ウェルプレートを5%COの存在下で37℃にて24時間培養した。培養後に、実施例2-1と同様に、発色反応が終了したら、Spectrophotometerを用いて、470nm(補正値540nm)で吸光度を測定した。
【0153】
その結果、ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株が5×10cfu/mL、10cfu/mL及び5×10cfu/mLで含まれる発酵組成物で処理した細胞において、陰性対照群に比べて、TNF-α(図7)及びIL-6(図8)の発現が有意に増加するか、陰性対照群と同等であった(***p<0.001,**p<0.01)。
【0154】
特に、ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株が5×10cfu/mLで含まれる発酵組成物Aにおいて、他の発酵組成物に比べて、TNF-α及びIL-6の発現が大幅に増加し、優れた免疫増強効果を発揮することが確認された。
【0155】
2-3.各発酵菌株における発酵組成物の免疫増強効果
製造例4の発酵組成物を抗生物質無添加のDMEM培地で希釈し、発酵組成物中のロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株が1.25×10cfu/mL、2.5×10cfu/mL、5.0×10cfu/mL及び6.25×10cfu/mLになるようにし、その後それを96ウェルプレートに100μLずつ分注した。比較例3を抗生物質無添加のDMEM培地で希釈し、発酵組成物中のロイコノストック・メセンテロイデスKCTC3505菌株が1.25×10cfu/mL、2.5×10cfu/mL、5.0×10cfu/mL及び6.25×10cfu/mLになるようにし、その後それを96ウェルプレートに100μLずつ分注した。また、対照群として、抗生物質無添加のDMEM培地(陰性対照群)、又はLPS 1μg/mLを添加した抗生物質無添加のDMEM培地(陽性対照群)を96ウェルプレートにそれぞれ100μLずつ分注した。各発酵組成物又は対照群中のJ774A.1細胞が3.3×10cells/mLになるようにシーディングした。前記96ウェルプレートを5%COの存在下で37℃にて24時間培養した。培養後に、実施例2-1と同様に、発色反応が終了したら、Spectrophotometerを用いて、470nm(補正値540nm)で吸光度を測定した。
【0156】
その結果、ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株が1.25×10cfu/mL及び6.25×10cfu/mLで含まれる発酵組成物で処理した細胞の全てにおいて、陰性対照群に比べて、TNF-α(図9)及びIL-6(図11)の発現が有意に増加した(***p<0.001)。ロイコノストック・メセンテロイデスKCTC3505菌株が1.25×10cfu/mL及び6.25×10cfu/mLで含まれる発酵組成物で処理した細胞においては、TNF-αの発現がLM119発酵組成物(1.25×10cfu/mL,6.25×10cfu/mL)に比べて有意に低く、IL-6の発現がLM119発酵組成物(1.25×10cfu/mL)に比べて有意に低かった(図9及び図11##p<0.01,p<0.05)。
【0157】
また、ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株が1.25×10cfu/mL,2.5×10cfu/mL及び5.0×10cfu/mLで含まれる発酵組成物で処理した細胞の全てにおいて、陰性対照群に比べて、TNF-α(図10)及びIL-6(図12)の発現が有意に増加した(***p<0.001,**p<0.01,p<0.05)。ロイコノストック・メセンテロイデスKCTC3505菌株が2.5×10cfu/mLで含まれる発酵組成物で処理した細胞においては、TNF-αの発現がLM119発酵組成物(2.5×10cfu/mL)に比べて有意に低く、IL-6の発現がLM119発酵組成物(2.5×10cfu/mL及び5.0×10cfu/mL)に比べて有意に低かった(図10及び図12***p<0.001,**p<0.01,p<0.05)。
【実施例3】
【0158】
各材料における発酵組成物の有害菌成長抑制効果の確認
製造例4の発酵組成物の有害菌成長抑制効果を確認するために、食中毒誘発菌として知られる病原性微生物である大腸菌(Escherichia coli)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)をそれぞれBHI(Brain heart infusion)broth培地(BD DIFCO)に接種し、その後37℃で24時間培養して種菌を確保した。製造例4の発酵組成物がそれぞれ0、25、40及び50%(v/v)の濃度になるように希釈したBHI broth培地を準備した。96ウェルプレートに前述した希釈培地をそれぞれ200μlずつ分注し、E.coli及びS.aureus菌株をそれぞれ1×10cells/wellになるようにシーディングした。前記96ウェルプレートを37℃で24時間培養した。培養後に、Spectrophotometerを用いて、OD600値を測定した。発酵組成物の含有が0%である培地におけるOD600値と、発酵組成物を25、40及び50%(v/v)含む希釈培地におけるOD600値を比較し、発酵組成物の各濃度における有害菌生育抑制率(Inhibition ratio, %)を確認した。生育抑制率は、次の式で算出した。菌株を接種していない各希釈培地のOD600値はBlankとした。
【0159】
【数1】
【0160】
その結果、製造例1の発酵組成物は、全ての濃度において、食中毒誘発菌であるE.coli及びS.aureusに対して90%以上の強い成長抑制率を示した(図13)。
【0161】
以上の説明から、本出願の属する技術分野の当業者であれば、本出願がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。なお、上記実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本出願には、明細書ではなく請求の範囲の意味及び範囲とその等価概念から導かれる変更又は変形された形態が全て含まれるものと解釈すべきである。
【0162】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2024-06-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)CJLM119
菌株又はその培養物から選択される少なくとも1つを含む発酵用組成物。
【請求項2】
ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株又はその培養物で発酵させた発酵物を含む免疫増強用食品組成物。
【請求項3】
ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株又はその培養物で発酵させた発酵物を含む腸健康改善用食品組成物。
【請求項4】
前記発酵物は、ニンニク、トウガラシ粉及び窒素源からなる群から選択される少なくとも1つを含む組成物を発酵させたものである、請求項2又は3に記載の食品組成物。
【請求項5】
前記発酵物は、組成物の総重量に対して、ニンニクを5~9重量%含む組成物を発酵させたものである、請求項2又は3に記載の食品組成物。
【請求項6】
前記食品組成物は、TNF-α又はIL-6の発現を増大させるものである、請求項2又は3に記載の食品組成物。
【請求項7】
前記食品組成物は、有害菌の生育を抑制するものである、請求項2又は3に記載の食品組成物。
【請求項8】
前記有害菌は、エシェリキア属(Escherichia sp.)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus sp.)、サルモネラ属(Salmonella sp.)、シゲラ属(Shigella sp.)、クレブ
シエラ属(Klebsiella sp.)、エンテロバクテリアセエ属(Enterobacteriaceae sp.)、シュードモナス属(Pseudomonas sp.)、モラクセラ属(Moraxella sp.)、ヘリコバクター属(Helicobacter sp.)、ステノトロホモナス属(Stenotrophomonas sp.)、リステリア属(Listeria sp.)及びビブリオ属(Vibrio sp.)からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項7に記載の食品組成物。
【請求項9】
前記発酵物は、32℃~42℃で10時間~30時間発酵させたものである、請求項2又は3に記載の食品組成物。
【請求項10】
前記発酵物は、炭素源又は塩から選択される少なくとも1つをさらに含む組成物を発酵させたものである、請求項2又は3に記載の食品組成物。
【請求項11】
前記発酵物は、ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株の培養物、その破砕物、その抽出物、又はそれに由来する成分から選択される少なくとも1つを含む、請求項2又は3に記載の食品組成物。
【請求項12】
前記発酵物は、ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株もしくはその培養物で発酵させた発酵物、又は前記発酵物をさらに発酵させた発酵物が含まれるものである、請求項2又は3に記載の食品組成物。
【請求項13】
ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株又はその培養物で発酵させた発酵物を含む免疫増強用機能性食品。
【請求項14】
ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株又はその培養物で発酵させた発酵物を含む腸健康改善用機能性食品。
【請求項15】
前記発酵物は、ニンニク、トウガラシ粉及び窒素源からなる群から選択される少なくとも1つを含む組成物を発酵させたものである、請求項13又は14に記載の機能性食品。
【請求項16】
前記発酵物は、組成物の総重量に対して、ニンニクを5~9重量%含む組成物を発酵させたものである、請求項13又は14に記載の機能性食品。
【請求項17】
前記発酵物は、ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株もしくはその培養物で発酵させた発酵物、又は前記発酵物をさらに発酵させた発酵物が含まれるものである、請求項13又は14に記載の機能性食品。
【請求項18】
ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株又はその培養物で組成物を発酵させるステップを含む、組成物の免疫増強効果を高める方法。
【請求項19】
ロイコノストック・メセンテロイデスCJLM119菌株又はその培養物で組成物を発酵させるステップを含む、組成物の腸健康改善効果を高める方法。
【請求項20】
ニンニク、トウガラシ粉及び窒素源からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
前記組成物は食品組成物である、請求項18又は19に記載の方法。
【国際調査報告】