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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】シリコーンゴム材料のための組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/06 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
C08L83/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532406
(86)(22)【出願日】2022-11-24
(85)【翻訳文提出日】2024-07-11
(86)【国際出願番号】 EP2022083121
(87)【国際公開番号】W WO2023099331
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】102021131400.3
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510054005
【氏名又は名称】ニトロヘミー、アッシヤウ、ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】シュック,リュディガー
(72)【発明者】
【氏名】リップシュレイ,イェルク
(72)【発明者】
【氏名】クルップ,アレクシス
(72)【発明者】
【氏名】クノット,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ピッチュル,ウルリヒ
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CP032
4J002CP03X
4J002CP061
4J002CP06W
4J002DJ010
4J002EW127
4J002EX056
4J002EX076
4J002EZ008
4J002GH01
4J002GJ01
4J002GJ02
(57)【要約】
本発明は、ポリオルガノシロキサン、シラン系架橋剤、複素環式アザシランおよび有機ホスホン酸を含む硬化性組成物に関する。本発明はまた、硬化性組成物の生産プロセスおよびその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)式HO-(SiRO)-H[式中、
各RおよびRは、独立に、
場合により置換されているアルキル、アルケニルもしくはアルキニル残基;
場合により置換されている脂環式残基、アリール残基もしくはアラルキル残基;または
場合により置換されている複素脂環式残基もしくはヘテロアリール残基を表し;そして
oは、5~5000の整数である]
で示されるポリオルガノシロキサン、
(b)式Si(R)(R4-m[式中、
各Rは、独立に、
場合により置換されているアルキル、アルケニルもしくはアルキニル残基;
場合により置換されている脂環式残基、アリール残基もしくはアラルキル残基;または
場合により置換されている複素脂環式残基もしくはヘテロアリール残基を表し;
mは、0~2の整数であり、各Rは、独立に、
(b1)式(I):
【化15】

(式中、
各RおよびRは、互いに独立に、
水素;
場合により置換されているアルキル、アルケニルもしくはアルキニル残基;
場合により置換されている脂環式残基、アリール残基もしくはアラルキル残基;または
場合により置換されている複素脂環式残基もしくはヘテロアリール残基を表し;
各Rは、独立に、
場合により置換されているアルキル、アルケニルもしくはアルキニル残基;
場合により置換されている脂環式残基、アリール残基もしくはアラルキル残基;または
場合により置換されている複素脂環式残基もしくはヘテロアリール残基を表し;
各Rは、独立に、
炭素;
場合により置換されている脂環式残基、アリール残基もしくはアラルキル残基;または
場合により置換されている複素脂環式残基もしくはヘテロアリール残基を表し;そして
nは、1~10の整数である)
で示されるヒドロキシカルボン酸エステル残基、
(b2)式(II):
【化16】

(式中、
各R、R、RおよびRは、互いに独立に、
水素;
場合により置換されているアルキル、アルケニルもしくはアルキニル残基;
場合により置換されている脂環式残基、アリール残基もしくはアラルキル残基;または
場合により置換されている複素脂環式残基もしくはヘテロアリール残基を表し;
は、互いに独立に、
炭素;
場合により置換されている脂環式残基、アリール残基もしくはアラルキル残基;または
場合により置換されている複素脂環式残基もしくはヘテロアリール残基を表し;そして
pは、1~10の整数である)
で示されるヒドロキシカルボキサミド残基、
(b3)カルボン酸残基-O-C(O)-R
(b4)オキシム残基-O-N=CR、および
(b5)カルボン酸アミド残基-N(R)-C(O)-R
(式中、各R、R、R、RおよびRは、互いに独立に、
水素;
場合により置換されているアルキル、アルケニルもしくはアルキニル残基;
場合により置換されている脂環式残基、アリール残基もしくはアラルキル残基;または
場合により置換されている複素脂環式残基もしくはヘテロアリール残基を表す)
からなる群より選択される]
で示される架橋剤;
(c)NおよびSiが環原子であり、互いに直接連結している、複素環式アザシラン、ならびに
(d)式R-PO(OH)[式中、
Rは、
場合により置換されているアルキル、アルケニルもしくはアルキニル残基、
場合により置換されている脂環式残基、アリール残基もしくはアラルキル残基、または
場合により置換されている複素脂環式残基もしくはヘテロアリール残基である]
で示される有機ホスホン酸を含む、硬化性組成物。
【請求項2】
前記有機ホスホン酸の、前記架橋剤の総量を基準にした量が、0.3~30mol%、好ましくは1~10mol%であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記有機ホスホン酸が、2~12個の炭素原子を有するアルキルホスホン酸、好ましくはオクチルホスホン酸であることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
金属触媒、好ましくはスズを含有しない金属触媒を追加で含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記金属触媒の該金属が、Na、Zn、Sc、Nd、Ti、Zr、Hf、V、Fe、Pt、Cu、Ga、およびBiからなる群より選択され、好ましくは、Zn、Ti、Zr、Hf、V、FeおよびBiからなる群より選択されることを特徴とする、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記金属触媒の該金属が、Zrであることを特徴とする、請求項4または5に記載の組成物。
【請求項7】
前記金属触媒が、式:
Si[式中、
各Rは、独立に、場合により置換されているC1~C20アルキル、場合により置換されているC3~C6シクロアルキル、場合により置換されているC2~C20アルケニル、場合により置換されているC6~C10アリール、-OHおよび-O-(C1~C20アルキル)からなる群より選択され、
Mは、該金属であり、
Aは、4~19の整数であり、
Bは、4~10の整数であり、
Cは、8~30の整数であり、そして
Dは、1~8の整数である]
で示される金属シロキサンであることを特徴とする、請求項4~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記金属シロキサンが、多面体金属シルセスキオキサン、特に、多面体チタンおよび/またはジルコニウムシルセスキオキサンであることを特徴とする、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記架橋剤において、各Rが、独立に、
(b1)式(I)(該残基は、請求項1に定義された通りである)で示されるヒドロキシカルボン酸エステル残基、および
(b2)式(II)(該残基は、請求項1に定義された通りである)で示されるヒドロキシカルボン酸アミド残基
からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記架橋剤のRが、式(I)(好ましくは、n=1)で示されるヒドロキシカルボン酸エステル残基であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記複素環式アザシランが、式:
【化17】

[式中、
a=0、1または2であり;
n=0~6であり;
各R、R、R、R、RおよびRは、独立に、H、または場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1~C20アルキル基、場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C2~C20アルケニル基、場合により置換されているC3~C20シクロアルキル基、場合により置換されているC4~C20シクロアルケニル基、場合により置換されている直鎖、分岐鎖もしくは環式C4~C20アルキニル基、または場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C2~C20ヘテロアルキル基、場合により置換されている直鎖、分岐鎖もしくは環式C3~C20ヘテロアルケニル基、または場合により置換されているC4~C14アリールもしくはヘテロアリール基であるか、あるいは2つの残基R、R、R、R、RおよびRは、一緒になって、5~8員環を形成する]
で示される化合物であることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記複素環式アザシランが、N-n-ブチル-1-アザ-2,2-ジメトキシ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジエトキシ-1-(3-トリエトキシシリルプロピル)アザ-2-シラシクロペンタンおよび/または2,2-ジエトキシ-1-(トリメチルシリル)アザ-2-シラシクロペンタン、好ましくはN-n-ブチル-1-アザ-2,2-ジメトキシ-2-シラシクロペンタンであることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記ポリオルガノシロキサンが、ポリジメチルシロキサンであることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の硬化性組成物を調製するためのプロセスであって、成分(a)~(d)と任意でさらなる成分が混合されることを特徴とする、プロセス。
【請求項15】
シーラント、糊、コーティング剤、接合材、埋込用樹脂、接着剤としてのまたは塗料における、請求項1~13のいずれか一項に記載の硬化性組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオルガノシロキサン、適切な脱離基を有する架橋剤および複素環式アザシランを含む硬化性組成物、硬化性組成物を調製するためのプロセス、ならびにシーラント、糊、コーティング剤、接合材、埋込用樹脂、接着剤としてのおよび塗料におけるその使用に関する。
【0002】
シリコーンゴムコンパウンドは、弾性特性を備えた材料であり、とりわけ、公衆衛生分野および建築施工において、例えば、ガラス、磁器、セラミック、石材、プラスチック、金属、木材などのような多種多様な材料のためのシーラント、接合材、コーティング剤、埋込用樹脂および接着剤として、幅広い用途を有する。RTV(常温硬化)シリコーンゴムコンパウンド、特に、単一成分RTVシリコーンゴムコンパウンド(RTV-1)としても知られる、低温硬化シリコーンゴムコンパウンドが頻繁に使用されている。これらのシリコーンゴムコンパウンドは、通常、架橋性官能基を有するポリオルガノシロキサンと適切な架橋剤(硬化剤)との塑性変形可能な混合物であり、水分のない環境で保存される。これらの混合物は、水または湿気の影響下、室温で架橋する。このプロセスは、硬化として知られている。また、シリコーンゴムコンパウンドにおいて接着促進剤も常用されている。これらは、シリコーンゴムコンパウンド(例えば、シーラントまたは接着剤)において、様々な基材に対する良好な接着性を確保するために使用される。
【0003】
低温硬化シリコーンゴムコンパウンドでは、2つ以上の架橋性官能基を有するポリオルガノシロキサン(シリコーン)が、多官能性硬化剤と一緒に一般的に使用される。ここでは、α,ω-ジヒドロキシポリオルガノシロキサンが、二官能性ポリオルガノシロキサンとして非常に重要である。架橋化剤または硬化剤は、しばしば、加水分解性のSiX基を有しており、加水分解により遊離する脱離基によって、硬化剤は、酸性系、中性系または塩基性系として分類することができる。よく知られた脱離基は、例えば、カルボン酸、アルコールおよびオキシムである。
【0004】
RTV-1シリコーンゴムコンパウンドの硬化、架橋または重合は、適切な触媒を加えることによってさらに加速させることができる。ここでは、高い触媒活性を有することから、スズ化合物が、有利な触媒であると証明されている。
【0005】
DE 10 2015 204 787 A1は、ケイ素原子に結合している少なくとも1つのヒドロキシル基を有する少なくとも1つのポリオルガノシロキサン、少なくとも1つのシラン、アミノシランおよびスズ化合物を触媒として含有する、硬化性シリコーンゴムコンパウンドを記載している。しかしながら、スズ化合物、特に、一般的に使用されているアルキルスズ化合物は、有毒であるという点で不利である。加えて、保存安定性および幅広い基材に対する接着性は、なお改善される必要がある。
【0006】
EP 3 392 313 A1は、2つの末端ヒドロキシル基を有するシリコーン化合物、金属-シロキサン-シラノール(at)化合物を含有する触媒、および対応する脱離基を有するシランを含有する架橋剤を含有する、硬化性シリコーンゴムコンパウンドを記載している。特に、触媒は、スズ不含であることもできる。しかしながら、保存安定性および様々な基材に対する接着性は、なお改善の必要性がある。
【0007】
EP 3 613 803 A1は、シリコーンゴムコンパウンドのための組成物であって、対応する脱離基を有するシランの形態の硬化剤と少なくとも1つの複素環式オルガノシランとを含む組成物を記載している。
【0008】
上述した組成物は、大気水分の存在下にて室温で硬化するRTV-1シリコーンゴムコンパウンドであるが、これらの組成物の保存安定性および様々な基材に対する接着性は、なお改善される必要がある。
【0009】
それゆえ、本発明の目的は、これらの欠点を克服すること、そして、室温で硬化し、高い保存安定性を有し、かつあらゆる汎用の材料または基材に対して良好な接着性を示すシリコーンゴム系組成物を提供することである。
【0010】
この目的は、請求項1に規定される組成物、請求項14に規定される方法、および請求項15に規定される使用によって解決される。有利な実施態様は、とりわけ、下位請求項に見いだすことができ、以下でより詳細に説明される。
【0011】
一実施態様では、本発明に係る組成物は、
(a)式HO-(SiRO)-H[式中、
各RおよびRは、独立に、
場合により置換されているアルキル、アルケニルもしくはアルキニル残基;
場合により置換されている脂環式残基、アリール残基もしくはアラルキル残基;または
場合により置換されている複素脂環式残基もしくはヘテロアリール残基を表し;そして
oは、5~5000の整数である]
で示されるポリオルガノシロキサン、
(b)式Si(R)(R4-m[式中、
各Rは、独立に、
場合により置換されているアルキル、アルケニルもしくはアルキニル残基;
場合により置換されている脂環式残基、アリール残基もしくはアラルキル残基;または
場合により置換されている複素脂環式残基もしくはヘテロアリール残基であり;
mは、0~2の整数であり、
各Rは、独立に、
(b1)式(I):
【化1】

(式中、
各RおよびRは、互いに独立に、
水素;
場合により置換されているアルキル、アルケニルもしくはアルキニル残基;
場合により置換されている脂環式残基、アリール残基もしくはアラルキル残基;または
場合により置換されている複素脂環式残基もしくはヘテロアリール残基を表し;
各Rは、独立に、
場合により置換されているアルキル、アルケニルもしくはアルキニル残基;
場合により置換されている脂環式残基、アリール残基もしくはアラルキル残基;または
場合により置換されている複素脂環式残基もしくはヘテロアリール残基を表し;
各Rは、独立に、
炭素;
場合により置換されている脂環式残基、アリール残基もしくはアラルキル残基;または
場合により置換されている複素脂環式残基もしくはヘテロアリール残基を表し;そして
nは、1~10の整数である)
で示されるヒドロキシカルボン酸エステル残基、
(b2)式(II):
【化2】

(式中、
各R、R、RおよびRは、互いに独立に、
水素;
場合により置換されているアルキル、アルケニルもしくはアルキニル残基;
場合により置換されている脂環式残基、アリール残基もしくはアラルキル残基;または
場合により置換されている複素脂環式残基もしくはヘテロアリール残基を表し;
は、互いに独立に、
炭素;
場合により置換されている脂環式残基、アリール残基もしくはアラルキル残基;または
場合により置換されている複素脂環式残基もしくはヘテロアリール残基を表し;そして
pは、1~10の整数である)
を有するヒドロキシカルボン酸アミド残基、
(b3)カルボン酸残基-O-C(O)-R
(b4)オキシム残基-O-N=CR、および
(b5)カルボン酸アミド残基-N(R)-C(O)-R
(式中、
各R、R、R、RおよびRは、互いに独立に、
水素;
場合により置換されているアルキル、アルケニルもしくはアルキニル残基;
場合により置換されている脂環式残基、アリール残基もしくはアラルキル残基;または
場合により置換されている複素脂環式残基もしくはヘテロアリール残基を表す)
からなる群より選択される]
を有する架橋剤;
(c)NおよびSiが環原子であり、互いに直接連結している、複素環式アザシラン、ならびに
(d)式R-PO(OH)[式中、
Rは、
場合により置換されているアルキル、アルケニルもしくはアルキニル残基、
場合により置換されている脂環式残基、アリール残基もしくはアラルキル残基、または
場合により置換されている複素脂環式残基もしくはヘテロアリール残基である]
で示される有機ホスホン酸を含む。
【0012】
驚くべきことに、この組成物は、改善された保存安定性および様々なプラスチックに対する改善された接着性を示し、ここで、硬化性組成物の他の必須の特性、特に、透過硬化(through-cure)、不粘着時間、完全硬化、透明な外観、ショア硬度Aおよび様々な他の基材に対する接着性は、悪影響を受けない。
【0013】
本発明に係る硬化性組成物中の複素環式アザシランは、大気水分の存在下でのみ開環し、すなわち、そのときにのみ硬化性組成物が架橋され、それにより、反応性アミノシランをもたらすという点で、対応するシリコーンゴムコンパウンドにおける従来のアミノシランに勝る利点を有する。このように、アミノシランと架橋剤および硬化性組成物の他の成分との反応は、これらが大気水分に曝される前の時点で避けられる。このことは、保存安定性を高める。驚くべきことに、複素環式アザシランと有機ホスホン酸、特にアルキルホスホン酸との組み合わせは、保存安定性のさらに有意な改善をもたらすことが判明した。驚くべきことに、このことは、例えば、ヒドロキシカルボン酸エステル残基またはヒドロキシカルボン酸アミド残基を含有する架橋剤を使用した場合に特に当てはまり、そして、反応性の脱離基(特に、脱離基としてアルコキシ基を含有するアルコキシシランよりも反応性)を含有するため、これらの架橋剤に特に関係しているが、そのような架橋剤は、一般的に、反応性の脱離基が原因で低い保存安定性をもたらす。
【0014】
本発明の目的として、「架橋剤」または「硬化剤」は、特に、加水分解によって切り離され得る少なくとも2つの基を有する架橋性シラン化合物を意味するものと理解される。そのような架橋性シラン化合物の例は、Si(OCH、Si(CH)(OCHおよびSi(CH)(C)(OCHである。架橋剤はまた、硬化剤と呼ぶこともできる。「架橋剤」はまた、特に、複数の架橋性シラン化合物を含有し得る「架橋剤系」も含む。
【0015】
「シーラント」、「シーリング材」または「シーリングコンパウンド」は、液体~粘性形態でまたは柔軟性プロファイルもしくはシートとして、表面を、特に水、気体または他の媒体に対して封止するために塗布される、弾性物質のことを指す。
【0016】
「接着剤」という用語は、表面接着(接着)および/または内部強度(凝集)によって部品を接合する物質のことを指す。この用語は、特に、糊接着剤、ペースト接着剤、分散接着剤、溶剤接着剤、反応接着剤および接触接着剤を含む。
【0017】
「コーティング剤」は、表面をコーティングするために使用される任意の薬剤のことを意味する。
【0018】
本発明の文脈において、「埋込用樹脂」または「ケーブル埋込用樹脂」は、ケーブルおよび/またはケーブルアクセサリーを埋め込むための、高温または低温加工可能なコンパウンドである。
【0019】
「アルキル基」という用語は、飽和炭化水素残基のことを指す。特に、アルキル基は、式-C2n+1を有する。「C1~C16アルキル基」という用語は、特に、鎖中に1~16個の炭素原子を有する飽和炭化水素鎖のことを指す。アルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチルおよびエチルヘキシルである。特に、アルキル基はまた、たとえ明示されていなくとも、置換されていてよい。
【0020】
「直鎖アルキル基」は、分岐鎖を含有しないアルキル基のことを指す。直鎖アルキル基の例は、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチルおよびn-オクチルである。
【0021】
「分岐鎖アルキル基」は、直鎖ではない、すなわち、炭化水素鎖が特に分岐部を有する、アルキル基のことを指す。分岐鎖アルキル基の例は、イソプロピル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、sec-ペンチル、3-ペンチル、2-メチルブチル、イソ-ペンチル、3-メチルブタ-2-イル、2-メチルブタ-2-イル、ネオペンチル、エチルヘキシルおよび2-エチルヘキシルである。
【0022】
「アルケニル基」という用語は、少なくとも1つの二重結合を含有する炭化水素残基のことを指す。例えば、二重結合を有するアルケニル基は、特に、式-C2n-1を有する。しかしながら、アルケニル基はまた、複数の二重結合を有することもできる。「C2~C16アルケニル基」という用語は、特に、鎖中に2~16個の炭素原子を有する炭化水素鎖のことを指す。水素原子の数は、アルケニル基中の二重結合の数に応じて変動する。アルケニル基の例は、ビニル、アリル、2-ブテニルおよび2-ヘキセニルである。
【0023】
「直鎖アルケニル基」は、いかなる分岐鎖も含有しないアルケニル基のことを指す。直鎖アルケニル基の例は、ビニル、アリル、n-2-ブテニルおよびn-2-ヘキセニルである。
【0024】
「分岐鎖アルケニル基」は、直鎖ではない、すなわち、炭化水素鎖が特に分岐部を有する、アルケニル基のことを指す。分岐鎖アルケニル基の例は、2-メチル-2-プロペニル-、2-メチル-2-ブテニル-および2-エチル-2-ペンテニル-である。
【0025】
「アルキニル基」という用語は、少なくとも1つの三重結合を含有する炭化水素残基のことを指す。例えば、三重結合を有するアルキニル基は、式-C2n-3を有する。アルキニル基はまた、複数の三重結合を含有することもできる。さらに、二重結合および三重結合が存在してもよい。例は、エチニル、プロピニル、ブチニルまたはペンチニルである。アルキニル基は、置換されていても、置換されていなくてもよい。
【0026】
「アリール基」という用語は、単または多環式芳香族残基のことを指す。「芳香族」は、共役した芳香族π電子系を有する環式の平面炭化水素のことを指す。アリール基は、例えば、単環式(例えば、フェニル)、二環式(例えば、インデニル、ナフタレニル、テトラヒドロナフチルまたはテトラヒドロインデニル)および三環式(例えば、フルオレニル、テトラヒドロインデニル、フルオレニル、テトラヒドロフルオレニル、アントラセニルまたはテトラヒドロアントラセニル)環系であり、単環式環系または二環式もしくは三環式環系中の環の少なくとも1つが芳香族である。特に、C4~C14アリール基は、4~14個の炭素原子を有するアリール基を表す。特に、アリール基はまた、たとえ明示されていなくとも、置換されていてよい。
【0027】
芳香族基は、単環式、二環式、三環式または多環式であり得る。芳香族基はまた、N、OおよびSからなる群より選択される1~5個のヘテロ原子を含有し得る。これらの基はまた、ヘテロアリール基(下記参照)とも呼ばれる。芳香族基の例は、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、フラン、ピロール、チオフェン、イソオキサゾール、ピリジンおよびキノリンであり、上記例のいずれにおいても、対応する構造式への組み込みが可能となるように必要な数の水素原子が除去されている。
【0028】
「シクロアルキル基」または「脂環式残基」は、芳香族ではない単または多環式炭化水素残基を表す。特に、4~14個の炭素原子を有するシクロアルキル基は、4~14個の炭素原子を有する非芳香族炭化水素環を表す。シクロアルキル基は、飽和されていても、部分的に不飽和であってもよい。飽和シクロアルキル基は、芳香族ではなく、二重結合も三重結合も有しない。飽和シクロアルキル基と対照的に、部分的に不飽和のシクロアルキル基は、少なくとも1つの二重結合または三重結合を有し、シクロアルキル基は、芳香族ではない。特に、シクロアルキル基はまた、たとえ具体的に示されていなくとも、置換されていてよい。
【0029】
「アラルキル基」は、アリール基によって置換されているアルキル基を表す。「C5~C15アラルキル基」は、特に、アルキル基とアリール基の両方の炭素原子がその中に含有されている、5~15個の炭素原子を有するアラルキル基のことを指す。アラルキル基の例は、ベンジルおよびフェニルエチルである。特に、アラルキル基はまた、たとえ具体的に示されていなくとも、置換されていてよい。
【0030】
「環式環系」は、芳香族ではない炭化水素環のことを指す。特に、4~14個の炭素原子を有する環式環系は、4~14個の炭素原子を有する非芳香族炭化水素環系のことを指す。環式環系は、単一の炭化水素環(単環式)、2つの炭化水素環(二環式)または3つの炭化水素環(三環式)からなり得る。特に、環式環系はまた、好ましくはN、OおよびSからなる群より選択される、1~5個のヘテロ原子を含有し得る。
【0031】
「飽和環式環系」は、芳香族ではなく、二重結合も三重結合も有しない。飽和環式環系の例は、シクロペンタン、シクロヘキサン、デカリン、ノルボルナンおよび4H-ピランであり、前述の例で、いずれの場合も、対応する構造式への組み込みが可能となるように必要な数の水素原子が除去されている。例えば、構造式HO-R-CH(式中、Rは、6個の炭素原子を有する環式環系、特にシクロヘキサンである)では、構造式への組み込みを可能にするために、環式環系から、特にシクロヘキサンから2つの水素原子が除去されるだろう。
【0032】
「ヘテロアリール」基は、本明細書において使用される場合、特に、1個、2個、3個または4個の環原子が窒素、酸素または硫黄であり、残りが炭素である、5~10個の環原子の単環式または多環式芳香族環を表す。ヘテロアリール基は、置換されていても、置換されていなくてもよい。これらが置換されている場合、置換基は、上のシクロアルキルで定義された通りである。
【0033】
「複素脂環式残基」または「ヘテロシクロアルキル基」は、本明細書において使用される場合、N、OおよびSから選択される1個、2個または3個のヘテロ原子を含有し、残りの環原子が炭素である、5~10個の環原子の単環式環または縮合環のことを意味する。「ヘテロシクロアルケニル」基はまた、1つまたは複数の二重結合を含有する。しかしながら、環は、完全な共役π電子系を有しない。置換されている場合、置換基は、上のシクロアルキルで定義された通りである。
【0034】
特に規定のない限り、Nは、特に窒素を表す。さらに、特に規定のない限り、Oは、特に酸素を表す。特に指定のない限り、Sは、特に硫黄を表し、Siは、特にケイ素を表す。
【0035】
「場合により置換されている」は、対応する基中または対応する残基中の水素原子が置換基によって置き換えられていてよいことを意味する。特に、置換基は、C1~C4アルキル、メチル、エチル、プロピル、ブチル、フェニル、ベンジル、ハロゲン、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、C1~C4アルコキシ、フェノキシ、ベンジルオキシ、シアノ、ニトロおよびチオからなる群より選択され得る。基が場合により置換されていると指定されている場合、その基の0~50、特に0~20個の水素原子が、置換基によって置き換えられていてよい。基が置換されている場合、少なくとも1つの水素原子が、置換基によって置き換えられる。
【0036】
「アルコキシ」は、主炭素鎖に酸素原子を介して連結されているアルキル基を表す。
【0037】
本発明の意味の範囲内で、複素環式アザシランは、環原子としてケイ素原子と窒素原子をそれぞれ含有する環式有機化合物であると理解される。特に、それは、3員~12員環、好ましくは、5員または6員環、特に好ましくは、5員環であり得る。本発明の複素環式アザシランでは、SiおよびNは、互いに直接連結される。そのような環式または複素環式アザシランは、アミノシランではないが、対応するアミノシランが、隣接するSiおよびN原子を有する複素環式アザシランから水との反応によって開環を通じてのみ形成されるので、複素環式アミノシランとも呼ばれる。
【0038】
「ポリシロキサン」または「ポリオルガノシロキサン」という用語は、有機シリコーン化合物を表す。組成物中に含有されるポリオルガノシロキサンは、α,ω-ジヒドロキシル末端ポリオルガノシロキサンである。ホモポリマーのα,ω-ジヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンに加えて、異なる有機置換基を有するヘテロポリマーのα,ω-ジヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンを使用することもでき、ケイ素原子上に類似の有機置換基を有するモノマーのコポリマーも、ケイ素原子上に異なる有機置換基を有するモノマーのコポリマー、例えば、混合されたアルキル、アルケニルおよび/またはアリール置換基を有するものも含まれる。好ましい有機置換基は、1~8個の炭素原子を有する直鎖および分岐鎖アルキル基、特に、メチル、エチル、n-およびイソ-プロピル、n-、sec-およびtert-ブチル、ビニルならびにフェニルを含む。個々の有機置換基において、個々のまたはすべての炭素に結合した水素原子は、従来の置換基、例えば、ハロゲン原子またはヒドロキシルおよび/もしくはアミノ基などの官能基によって置換されていてよい。例えば、部分的にフッ素化されたもしくは全フッ素化された有機置換基を有するα,ω-ジヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンを使用することができ、またはケイ素原子上の有機置換基がヒドロキシルおよび/もしくはアミノ基によって置換されているα,ω-ジヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンが使用される。
【0039】
有機シリコーン化合物の好ましい例は、α,ω-ジヒドロキシル末端ポリジアルキルシロキサン、例えば、α,ω-ジヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサン、α,ω-ジヒドロキシル末端ポリジエチルシロキサンまたはα,ω-ジヒドロキシル末端ポリジビニルシロキサンなど、およびα,ω-ジヒドロキシル末端ポリジアリールシロキサン、例えばα,ω-ジヒドロキシル末端ポリジフェニルシロキサンである。5,000~120,000cSt(25℃で)の動粘度を有するポリオルガノシロキサン、特に20,000~100,000cStの粘度を有するもの、特に好ましくは40,000~90,000cStの粘度を有するものが好ましい。また、異なる粘度を有するポリジオルガノシロキサンの混合物を使用することもできる。
【0040】
「材料」または「シーラント」という用語は、本明細書において使用される場合、本発明に係る硬化された組成物のことを説明する。
【0041】
本発明の目的として、「シリコーンゴムコンパウンド」は、本発明の文脈において互換的に硬化性シリコーン組成物とも呼ばれる合成シリコーン含有ゴムコンパウンドであり、適切な架橋化剤と架橋することによって高弾性の硬化した状態に変換することができるゴム重合物、重縮合物および重付加物が含まれる。さらに、これらは、水分の排除下で保存することができる、例えばα,ω-ジヒドロキシポリオルガノシロキサンと適切な硬化剤または架橋化剤との、塑性変形可能な混合物であり、これらのシリコーンゴムコンパウンドは、水または大気湿気の影響下、室温で重合する。
【0042】
「触媒」という用語は、ある特定の反応の活性化エネルギーを低下させ、それにより反応速度を増加させる物質のことを意味する。
【0043】
組成物は、式HO-(SiRO)-Hを有する化合物と式Si(R)(R4-mを有する架橋剤とをプレポリマーの形態で含有し得る。プレポリマーは、2つの成分の反応生成物である。これらの反応は、公知であり、エンドキャッピングとも呼ばれ、例えば、WO 2016/146648 A1に記載されている通りである。
【0044】
「引張強度」は、様々な試験法を用いて決定することができるポリマーの機械的特性の1つである。「引張強度」は、試験片が引張試験において破損した瞬間の引張応力により決定することができる。
【0045】
「破断伸度」は、試験片が破断した後の初期長に対する長さの変化の比である。それは、亀裂を起こすことなく形状の変化に耐える材料の能力を表す。破断伸度は、引張試験においてDIN EN ISO 8339およびDIN 53504に従って決定される。
【0046】
「伸び応力値」は、シーラントが100%伸びたときに付着面または隣接する建築材料に対して発揮される応力を定義する。
【0047】
「セカント係数」は、応力-ひずみダイアグラムの曲線上の任意の点での応力とひずみの比である。これは、応力-ひずみ曲線上の開始から任意の点までの曲線の勾配である。
【0048】
「弾性回復力」は、伸張または変形を引き起こした力が除かれた後に柔軟ビームが完全にまたは部分的に原寸に戻る傾向のことを説明する。平均弾性回復力は、DIN EN ISO 7389に従って決定される。
【0049】
本発明の好ましい実施態様では、硬化性組成物は、
(a)式HO-(SiRO)-H[式中、RおよびRは、上で定義された通りであり、そして、oは、5~5000の整数である]
で示される少なくとも1つの化合物、
(b)式Si(R)(R4-m[式中、
各Rは、独立に、場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1~C16アルキル基、場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C2~C16アルケニル基、または場合により置換されているC4~C14アリール基であり、
mは、0~2の整数であり、
各Rは、独立に、
-式(I):
【化3】

(式中、
各Rは、独立に、H、または場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1~C16アルキル基、または場合により置換されているC4~C14アリール基であり、
各Rは、独立に、H、または場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1~C16アルキル基、または場合により置換されているC4~C14アリール基であり、
は、場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1~C16アルキル基、場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C2~C16アルケニルもしくはアルキニル基、場合により置換されているC4~C14シクロアルキルもしくはシクロアルケニル基、場合により置換されているC5~C15アラルキル基、または場合により置換されているC4~C14アリール基であり、
は、C、または4~14個のC原子を有し、場合により置換されている飽和もしくは部分的に不飽和の環式環系、または4~14個のC原子を有し、場合により置換されている芳香族基であり、そして
nは、1~10の整数である)
を有するヒドロキシカルボン酸エステル残基、
-式(II):
【化4】

(式中、
各Rは、独立に、H、または場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1~C16アルキル基、または場合により置換されているC4~C14アリール基であり、
各Rは、独立に、H、または場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1~C16アルキル基、または場合により置換されているC4~C14アリール基であり、
およびRは、互いに独立に、H、または場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1~C16アルキル基、場合により置換されているC4~C14シクロアルキル基、場合により置換されているC5~C15アラルキル基、または場合により置換されているC4~C14アリール基であり、
は、C、または4~14個のC原子を有し、場合により置換されている飽和もしくは部分的に不飽和の環式環系、または4~14個のC原子を有し、場合により置換されている芳香族基であり、そして
pは、1~10の整数である)
を有するヒドロキシカルボン酸アミド残基、
-カルボン酸残基-O-C(O)-R(式中、Rは、H、または場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1~C16アルキル基、場合により置換されているC4~C14シクロアルキル基、または場合により置換されているC4~C14アリール基、または場合により置換されているC5~C15アラルキル基である)
-オキシム残基-O-N=CR(式中、RおよびRは、互いに独立に、H、または場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1~C16アルキル基、場合により置換されているC4~C14シクロアルキル基、または場合により置換されているC4~C14アリール基、または場合により置換されているC5~C15アラルキル基である)、および
-カルボン酸アミド残基-N(R)-C(O)-R(式中、Rは、H、または場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1~C16アルキル基、場合により置換されているC4~C14シクロアルキル基、または場合により置換されているC4~C14アリール基、または場合により置換されているC5~C15アラルキル基であり、Rは、H、または場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1~C16アルキル基、場合により置換されているC4~C14シクロアルキル基、または場合により置換されているC4~C14アリール基、または場合により置換されているC5~C15アラルキル基である)
からなる群より選択される]
を有する少なくとも1つの架橋剤、
(c)NおよびSiが環原子であり、互いに直接連結している、複素環式アザシラン、ならびに
(d)式R-PO(OH)[式中、
Rは、
場合により置換されているアルキル、アルケニルもしくはアルキニル残基、
場合により置換されている脂環式残基、アリール残基もしくはアラルキル残基、または
場合により置換されている複素脂環式残基もしくはヘテロアリール残基である]
で示される有機ホスホン酸を含む。
【0050】
架橋剤の総量に対する有機ホスホン酸の量は、好ましくは0.3~30mol%、特に好ましくは1~10mol%、さらに好ましくは3~8mol%、最も好ましくは5~7mol%である。
【0051】
有機ホスホン酸に対する架橋剤のモル比は、好ましくは3~350、より好ましくは5~120、最も好ましくは10~20である。複素環式アザシランの総量を基準にした有機ホスホン酸の量は、好ましくは1~30mol%、より好ましくは3~25mol%、最も好ましくは8~18mol%である。
【0052】
式R-PO(OH)で示される有機ホスホン酸において、
Rは、好ましくは、
いずれの場合も2~12個の炭素原子を有し、場合により置換されているアルキル、アルケニルもしくはアルキニル残基、
いずれの場合も6~12個の炭素原子を有し、場合により置換されている脂環式残基、アリール残基もしくはアラルキル残基、またはいずれの場合も6~12個の炭素原子を有し、場合により置換されている複素脂環式残基もしくはヘテロアリール残基を表す。
【0053】
有機ホスホン酸は、さらに好ましくは、アルキルホスホン酸であり、ここで、アルキル残基は、2~12個の炭素原子、好ましくは4~10個の炭素原子、より好ましくは6~9個の炭素原子、最も好ましくは8個の炭素原子を有する。アルキル残基は、置換されていても、置換されていなくてもよく、好ましくは、置換されておらず、かつ/または、それは、分岐鎖であっても、分岐鎖でなくてもよく、好ましくは、分岐鎖でない。有機ホスホン酸は、最も好ましくは、オクチルホスホン酸、特にn-オクチルホスホン酸である。
【0054】
式HO-(SiRO)-Hで示される化合物は、
各RおよびRが、独立に、
場合により置換されているアルキル、アルケニルもしくはアルキニル残基;
場合により置換されている脂環式残基、アリール残基もしくはアラルキル残基;または
場合により置換されている複素脂環式残基もしくはヘテロアリール残基を表し;そして
oが、5~5000の整数である、ポリオルガノシロキサンとしても知られているシリコーン化合物である。
【0055】
好ましい実施態様では、各RおよびRは、独立に、場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1~C16アルキル基、場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C2~C16アルケニル基、または場合により置換されているC4~C14アリール基を表す。
【0056】
さらに好ましい実施態様では、ポリオルガノシロキサンHO-(SiRO)-Hにおいて、oは、5~3500、より好ましくは10~3500、なおより好ましくは100~3000、特に800~2000、最も好ましくは1000~1800の整数である。
【0057】
さらなる実施態様では、ポリオルガノシロキサンHO-(SiRO)-Hは、400~5,000,000、特に3,000~2,500,000、15,000~1,000,000、30,000~750,000、50,000~500,000または110,000~150,000の重量平均分子量Mを有する。
【0058】
組成物はまた、25℃で20~500000cStの動粘度を有するポリオルガノシロキサンHO-(SiRO)-Hに関する。
【0059】
好ましい実施態様では、あるポリオルガノシロキサンHO-(SiRO)-Hは、25℃で、20~350000cSt、または20000~100000cSt、または20000~90000cSt、または20000~80000cStの動粘度を有する。
【0060】
さらに好ましい実施態様では、組成物は、RおよびRが、互いに独立に、場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1~C16アルキル基、特に、場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1~C12もしくはC1~C8アルキル基、場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C2~C16アルケニル基、特に、場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C2~C12もしくはC2~C8アルケニル基、または場合により置換されているC4~C14アリール基、特に、場合により置換されているC4~C10アリール基を含有する、ポリオルガノシロキサンHO-(SiRO)o-Hを含有する。
【0061】
特に好ましい実施態様では、本発明に係る組成物は、RおよびRが、独立に、メチル-、エチル-、プロピル-、ブチル-、トリフルオロメチル-、ビニル-、アリル-、ブテニル-、フェニル-および-ナフチル-からなる群より選択される、ポリオルガノシロキサンHO-(SiRO)-Hを含む。
【0062】
特に好ましい実施態様では、本発明に係る組成物は、ポリオルガノシロキサンが、α,ω-ジヒドロキシ-ジメチル-ポリシロキサンである、ポリオルガノシロキサンHO-(SiRO)-Hを含む。
【0063】
さらに、本発明に係る組成物は、各Rが、独立に、
・式(I):
【化5】

を有するヒドロキシカルボン酸エステル残基、
・式(II):
【化6】

を有するヒドロキシカルボン酸アミド残基、
・カルボン酸残基-O-C(O)-R
・オキシム残基-O-N=CR
・カルボン酸アミド残基-N(R)-C(O)-R
からなる群より選択される、式Si(R)(R4-mで示される架橋剤を含む。
【0064】
好ましい実施態様では、架橋剤は、式Si(R)(R4-mの残基Rを含み、各残基Rは、独立に、場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1~C12アルキル基、特に、場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1~C8アルキル基、または場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C2~C12アルケニル基、特に、場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C2~C8アルケニル基、または場合により置換されているC4~C10アリール基を含む。
【0065】
特に好ましい実施態様では、式Si(R)(R4-mで示される架橋剤の各残基Rは、独立に、メチル、エチル、プロピル、ビニル-、フェニルまたはアリル残基である。
【0066】
好ましい実施態様では、本発明に係る組成物は、各Rが、独立に、
・式(I):
【化7】

を有するヒドロキシカルボン酸エステル残基、
・式(II):
【化8】

を有するヒドロキシカルボン酸アミド残基、
・カルボン酸残基-O-C(O)-R
・オキシム残基-O-N=CR
・カルボン酸アミド残基-N(R)-C(O)-R
(式中、
各Rは、独立に、H、または場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1~C16アルキル基、または場合により置換されているC4~C14アリール基であり、
各Rは、独立に、H、または場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1~C16アルキル基、または場合により置換されているC4~C14アリール基であり、
は、場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1~C16アルキル基、場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C2~C16アルケニルもしくはアルキニル基、場合により置換されているC4~C14シクロアルキルもしくはシクロアルケニル基、場合により置換されているC5~C15アラルキル基、または場合により置換されているC4~C14アリール基であり、
は、C、または4~14個のC原子を有し、場合により置換されている飽和もしくは部分的に不飽和の環式環系、または4~14個のC原子を有し、場合により置換されている芳香族基であり、そして
nは、1~10の整数であり;
各Rは、独立に、H、または場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1~C16アルキル基、または場合により置換されているC4~C14アリール基であり、
各Rは、独立に、H、または場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1~C16アルキル基、または場合により置換されているC4~C14アリール基であり、
およびRは、互いに独立に、H、または場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1~C16アルキル基、場合により置換されているC4~C14シクロアルキル基、場合により置換されているC5~C15アラルキル基、または場合により置換されているC4~C14アリール基であり、
は、C、または4~14個のC原子を有し、場合により置換されている飽和もしくは部分的に不飽和の環式環系、または4~14個のC原子を有し、場合により置換されている芳香族基であり、そして
pは、1~10の整数であり;
は、H、または場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1~C16アルキル基、場合により置換されているC4~C14シクロアルキル基、または場合により置換されているC4~C14アリール基、または場合により置換されているC5~C15アラルキル基であり;
およびRは、互いに独立に、H、または場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1~C16アルキル基、場合により置換されているC4~C14シクロアルキル基、または場合により置換されているC4~C14アリール基、または場合により置換されているC5~C15アラルキル基であり;そして
は、H、または場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1~C16アルキル基、場合により置換されているC4~C14シクロアルキル基、または場合により置換されているC4~C14アリール基、または場合により置換されているC5~C15アラルキル基であり、Rは、H、または場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1~C16アルキル基、場合により置換されているC4~C14シクロアルキル基、または場合により置換されているC4~C14アリール基、または場合により置換されているC5~C15アラルキル基である)
からなる群より選択される、式Si(R)(R4-mで示される架橋剤を含む。
【0067】
本発明の好ましい実施態様では、架橋剤は、残基Rを含み、各Rは、独立に、場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1~C12アルキル基、特に、場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1~C8アルキル基、または場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C2~C12アルケニル基、特に、場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C2~C8アルケニル基、または場合により置換されているC4~C10アリール基を含む。
【0068】
特に好ましい実施態様では、式Si(R)(R4-mで示される架橋剤の各残基Rは、独立に、メチル、エチル、プロピル、ビニル-、フェニルまたはアリル残基である。架橋剤のヒドロキシカルボン酸エステル残基において、各RおよびRは、好ましくは、互いに独立に、場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1~C12アルキル基、特に、場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1~C8アルキル基である。nの数は、好ましくは1~5、特に1~3の整数であり、特に好ましくはn=1である。
【0069】
本発明の好ましい実施態様では、架橋剤のヒドロキシカルボン酸エステル残基において、各RおよびRは、独立に、H、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、n-ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチルおよびtert-ブチルからなる群より、特に、Hおよびメチルからなる群より選択される。
【0070】
架橋剤のヒドロキシカルボン酸エステル残基において、Rは、好ましくは、場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1~C12アルキル基、特に、場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1~C8アルキル基、場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C2~C12アルケニルもしくはアルキニル基、特に、場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C2~C18アルケニル基、C4~C10シクロアルキル基、C5~C11アラルキル基、またはC4~C10アリール基である。
【0071】
本発明のさらに好ましい実施態様では、架橋剤のヒドロキシカルボン酸エステル残基Rは、フェニル-、トリル-、ナフチル-、ベンジル-、シクロヘキシル-、メチル-、エチル-、プロピル-、イソプロピル-、ブチル-、n-ブチル-、sec-ブチル-、イソ-ブチル-、tert-ブチル-、ペンチル-、n-ペンチル-、sec-ペンチル-、3-ペンチル-、2-メチルブチル-、イソ-ペンチル-、3-メチルブタ-2-イル-、2-メチルブタ-2-イル-、ネオペンチル-、ヘキシル-、ヘプチル-、オクチル-、エチルヘキシル-、2-エチルヘキシル-およびビニル-からなる群より選択される。メチル-、エチル-およびビニル-が特に好ましい。
【0072】
好ましい実施態様では、架橋剤のヒドロキシカルボン酸エステル残基において、Rは二価ベンゼン残基であるか、またはRはCおよびRとRはHであるか、またはRはCおよびRはHおよびRはメチル-である。
【0073】
特に好ましい実施態様では、架橋剤のRは、ヒドロキシカルボン酸エステル残基であり、nは、1~5の整数であり、特に好ましいのは、n=1~3、とりわけ1である。特に好ましいのは、架橋剤メチル-トリス(エチルラクタト)シランおよび/またはテトラ(エチルラクタト)シランである。
【0074】
一実施態様では、本発明に係る組成物中の架橋剤のヒドロキシカルボン酸アミド残基において、各RおよびRは、独立に、H、または場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1~C12アルキル基、特に、場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1~C8アルキル基である。
【0075】
架橋剤のヒドロキシカルボン酸アミド残基において、各RおよびRは、好ましくは、互いに独立に、H、メチル、エチル-、プロピル、イソプロピル、ブチル、n-ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチルおよびtert-ブチルからなる群より、特に、Hおよびメチルからなる群より選択される。
【0076】
さらなる実施態様では、架橋剤のヒドロキシカルボン酸アミド残基において、RおよびRは、独立に、H、または場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1~C12アルキル基、特に、場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1~C8アルキル基、または場合により置換されているC4~C14シクロアルキル基、またはC5~C11アラルキル基、またはC4~C10アリール基である。
【0077】
好ましい実施態様では、架橋剤のヒドロキシカルボン酸アミド残基において、RおよびRは、独立に、H、フェニル、トリル、ナフチル、ベンジル、シクロヘキシル、メチル、エチル、プロピル-、イソプロピル-、ブチル-、n-ブチル-、sec-ブチル-、イソ-ブチル-、tert-ブチル-、ペンチル-、n-ペンチル-、sec-ペンチル-、3-ペンチル-、2-メチルブチル-、イソ-ペンチル-、3-メチルブタ-2-イル-、2-メチルブタ-2-イル-、ネオペンチル-、ヘキシル-、ヘプチル-、オクチル-、エチルヘキシル-、および2-エチルヘキシル-からなる群より選択される。
【0078】
一実施態様では、架橋剤のヒドロキシカルボン酸アミド残基において、Rは二価ベンゼン残基であるか、またはRはCおよびRとRはHであるか、またはRはCおよびRはHおよびRはメチル-である。
【0079】
さらに好ましい実施態様では、架橋剤のヒドロキシカルボン酸アミド残基中のpは、1~5、特に1~3の整数であり、p=1が特に好ましい。
【0080】
本発明に係る組成物の架橋剤のカルボン酸残基において、Rは、好ましくは、H、または場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1~C12アルキル基、場合により置換されているC4~C10シクロアルキル基、または場合により置換されているC4~C10アリール基、または場合により置換されているC5~C11アラルキル基、特に、H、または場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1~C8アルキル基、場合により置換されているC4~C8シクロアルキル基、または場合により置換されているC4~C10アリール基、または場合により置換されているC5~C11アラルキル基である。
【0081】
好ましい実施態様では、架橋剤のカルボン酸残基Rは、H、フェニル-、トリル-、ナフチル-、ベンジル-、シクロヘキシル-、メチル-、エチル-、プロピル-、イソプロピル-、ブチル-、n-ブチル-、sec-ブチル-、イソ-ブチル-、tert-ブチル-、ペンチル-、n-ペンチル-、sec-ペンチル-、3-ペンチル-、2-メチルブチル-、イソ-ペンチル-、3-メチルブタ-2-イル-、2-メチルブタ-2-イル-、ネオペンチル-、ヘキシル-、ヘプチル-、オクチル-、エチルヘキシル-、および2-エチルヘキシル-からなる群より選択される。特に好ましい実施態様では、カルボン酸残基を有する架橋剤は、エチルトリアセトキシシランおよび/またはメチルトリアセトキシシランおよび/またはプロピルトリアセトキシシランである。
【0082】
さらに好ましい実施態様では、本発明に係る架橋剤のオキシム残基において、RおよびRは、独立に、H、または場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1~C12アルキル基、場合により置換されているC4~C10シクロアルキル基、または場合により置換されているC4~C10アリール基、または場合により置換されているC5~C11アラルキル基、特に、H、または場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1~C8アルキル基、場合により置換されているC4~C8シクロアルキル基、または場合により置換されているC4~C10アリール基、または場合により置換されているC5~C11アラルキル基である。
【0083】
好ましい実施態様では、架橋剤のオキシム残基において、RおよびRは、独立に、H、フェニル、トリル、ナフチル、ベンジル、シクロヘキシル、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル-、n-ブチル-、sec-ブチル-、イソ-ブチル-、tert-ブチル-、ペンチル-、n-ペンチル-、sec-ペンチル-、3-ペンチル-、2-メチルブチル-、イソ-ペンチル-、3-メチルブタ-2-イル-、2-メチルブタ-2-イル-、ネオペンチル-、ヘキシル-、ヘプチル-、オクチル-、エチルヘキシル-および2-エチルヘキシル-からなる群より選択される。特に好ましい実施態様では、オキシム残基を有する架橋剤は、メチル-トリス(2-ペンタノンオキシモ)シラン、ビニル-トリス(2-ペンタノンオキシモ)シランおよび/またはテトラ(2-ペンタノンオキシモ)シランである。
【0084】
本発明のさらに好ましい実施態様では、本発明に係る架橋剤のカルボン酸アミド残基において、RおよびRは、独立に、H、または場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1~C12アルキル基、場合により置換されているC4~C10シクロアルキル基、または場合により置換されているC4~C10アリール基、または場合により置換されているC5~C11アラルキル基、特に、H、または場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1~C8アルキル基、場合により置換されているC4~C8シクロアルキル基、または場合により置換されているC4~C10アリール基、または場合により置換されているC5~C11アラルキル基である。
【0085】
架橋剤のカルボン酸アミド残基において、RおよびRは、好ましくは、互いに独立に、H、フェニル-、トリル-、ナフチル-、ベンジル-、シクロヘキシル-、メチル-、エチル-、プロピル-、イソプロピル-、ブチル-、n-ブチル-、sec-ブチル-、イソ-ブチル-、tert-ブチル-、ペンチル-、n-ペンチル-、sec-ペンチル-、3-ペンチル-、2-メチルブチル-、イソ-ペンチル-、3-メチルブタ-2-イル-、2-メチルブタ-2-イル-、ネオペンチル-、ヘキシル-、ヘプチル-、オクチル-、エチルヘキシル-、および2-エチルヘキシル-からなる群より選択される。特に好ましい実施態様では、カルボン酸アミド残基を有する架橋剤は、メチルエトキシビス(N-メチルベンズアミド)シランである。
【0086】
さらに特に好ましい実施態様では、記載される架橋剤の混合物が、本発明に係る硬化性組成物に使用される。さらに特に好ましい実施態様では、架橋剤は、上述したような様々な残基Rを保有する。
【0087】
さらに、本発明に係る組成物は、組成物中でとりわけ接着促進剤として機能できる複素環式アザシランを含有する。また、いくつかの複素環式アザシランの混合物を使用することもできる。
【0088】
好ましい実施態様では、複素環式アザシランは、式:
【化9】

[式中、
a=0、1または2であり;
n=0~6であり;
各R、R、R、R、RおよびRは、独立に、H、または場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1~C20アルキル基、場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C2~C20アルケニル基、場合により置換されているC3~C20シクロアルキル基、場合により置換されているC4~C20シクロアルケニル基、場合により置換されている直鎖、分岐鎖もしくは環式C4~C20アルキニル基、または場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C2~C20ヘテロアルキル基、場合により置換されている直鎖、分岐鎖もしくは環式C3~C20ヘテロアルケニル基、または場合により置換されているC4~C14アリールもしくはヘテロアリール基であるか、あるいは2つの残基R、R、R、R、RおよびRは、一緒になって、5~8員環を形成する]
で示される化合物である。
【0089】
(Rおよび(OR2-a中のパラメーターaは、本明細書に定義されるように残基Rに対するアルコキシ残基ORの比を表す。ここで、aは、0~2の値と仮定することができる。a=0である場合、対応する複素環式オルガノシランは、残基Rを含有せず、2つのOR残基を含有する。パラメーターaはまた、1であることもできる。この場合、1つのR残基と1つのOR残基が複素環式オルガノシランのケイ素原子に直接結合する。a=2である場合、OR残基でなくR残基だけがケイ素原子に連結される。
【0090】
式(III)中の残基(Rは、それぞれ、環の大きさと直接関係しており、環の大きさは、パラメーターnによって決まる。ここでは、環原子上の可能な残基数も値nによって調整される。例えば、6員環である場合、n=2であり、残基RまたはRの数は2に従って調整される。このことは、各環原子が1つの残基を有することができることを意味する。
【0091】
複素環式アザシランは、各環原子上に異なる残基を保有することができ、式(III)の各R、R、R、R、RおよびRは、互いに独立に、H、または場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1~C20アルキル基、場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C2~C20アルケニル基、場合により置換されているC3~C20シクロアルキル基、場合により置換されているC4~C20シクロアルケニル基、場合により置換されている直鎖、分岐鎖もしくは環式C4~C20アルキニル基、または場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C2~C20ヘテロアルキル基、場合により置換されている直鎖、分岐鎖もしくは環式C3~C20ヘテロアルケニル基、または場合により置換されているC4~C14アリールもしくはヘテロアリール基である。好ましくは、各R、R、R、R、RおよびRは、独立に、H、または場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1~C10アルキル基、場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C2~C10アルケニル基、場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C2~C10ヘテロアルキル基、場合により置換されているC3~C10シクロアルキル基、または場合により置換されているC4~C8アリールもしくはヘテロアリール基である。最も好ましくは、各R、R、R、R、RおよびRは、独立に、H、場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1~C8アルキル基、場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C2~C8アルケニル基、場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C4~C8ヘテロアルキル基、場合により置換されているC4~C6シクロアルキル基、または場合により置換されているC5~C6アリールもしくはヘテロアリール基である。
【0092】
nは、好ましくは1~4であり、さらに好ましくは1~2であり、特に1である。
【0093】
本発明の好ましい実施態様では、複素環式アザシランは、以下の構造式を有する:
【化10】
【0094】
本発明に係る組成物は、上に示された化合物(複素環式アザシラン)の1つまたは複数を含有し得る。
【0095】
特に好ましい複素環式アザシランは、置換されているかまたは置換されていない、特に置換されていない、N-n-ブチル-1-アザ-2,2-ジメトキシ-2-シラシクロペンタン((BDC)、CAS No. 618914-44-6)、2,2-ジエトキシ-1-(3-トリエトキシシリルプロピル)アザ-2-シラシクロペンタン((TESPDC)、CAS No. 1184179-50-7)および/または2,2-ジエトキシ-1-(トリメチルシリル)アザ-2-シラシクロペンタン((TMS)DEC)、CAS No. 21297-72-3)である。
【0096】
好ましい実施態様では、本発明に係る組成物は、組成物の総重量を基準にして、0.1~3wt.%、好ましくは0.2~2wt.%、特に好ましくは0.3~1.5wt.%の量の複素環式アザシランを含有する。
【0097】
本発明に係る組成物は、好ましくは、本発明に係る組成物の硬化を加速させるために追加で金属触媒を含有する。特に好ましくは、本発明に係る組成物は、スズを含有しない金属触媒を含有する。これらの触媒は、有毒のスズが避けられるという点で有利である。これらは、組成物の有毒成分、特に有毒のスズを回避することで本発明の問題を解決する。驚くべきことに、本発明との関連で、スズを含有する触媒は、これらのシリコーンゴムコンパウンドにおいて特に効果的な触媒であるものの、たとえ混合物中にスズ不含触媒を用いた場合であっても、ポリオルガノシロキサンおよび架橋剤の存在下、複素環式アザシランおよび有機ホスホン酸を含有する組み合わせによって、保存安定性が増加した利点を有する硬化性組成物を提供することができ、かつ、より一層急速な架橋が起こることを見いだした。このように、硬化性組成物の他の有利な特性を同時に保持しながら、保存安定性が増加した利点とスズ不含触媒の低毒性とを組み合わせることができる。
【0098】
好ましくは、金属触媒の金属は、Na、Zn、Sc、Nd、Ti、Zr、Hf、V、Fe、Pt、Cu、Ga、およびBiからなる群より選択され、より好ましくは、Zn、Ti、Zr、Hf、V、Fe、およびBiからなる群より選択される。最も好ましくは、金属触媒の金属は、Zrである。
【0099】
本発明の好ましい実施態様では、組成物は、金属触媒として、金属シロキサン、特に、式R Si[式中、
各Rは、独立に、場合により置換されているC1~C20アルキル、場合により置換されているC3~C6シクロアルキル、場合により置換されているC2~C20アルケニル、場合により置換されているC6~C10アリール、-OHおよび-O-(C1~C20アルキル)からなる群より選択され、
Mは、金属であり、
Aは、4~19の整数であり、
Bは、4~10の整数であり、
Cは、8~30の整数であり、そして
Dは、1~8の整数である]
で示される金属シロキサンを含む。
【0100】
金属シロキサンは、好ましくは、金属シルセスキオキサン、特に、多面体金属シルセスキオキサンである。多面体金属シルセスキオキサンは、ケイ素および金属原子が、多面体、例えば、立方体の隅を少なくとも部分的に占有している、金属シルセスキオキサンであると理解される。
【0101】
金属シルセスキオキサンは、特に好ましくは、多面体チタンおよび/またはジルコニウムシルセスキオキサン、とりわけジルコニウムシルセスキオキサンである。
【0102】
好ましい実施態様では、金属シロキサン、好ましくは、金属シルセスキオキサンは、以下の式(IV):
【化11】

[式中、
、XおよびXは、独立に、SiまたはMから選択され、ここで、Mは、金属、好ましくは、スズではない金属であり、特に、Na、Zn、Sc、Nd、Ti、Zr、Hf、V、Fe、Pt、Cu、GaおよびBiからなる群より;特に好ましくは、Zn、Ti、Zr、Hf、V、FeおよびBiからなる群より選択され、
、ZおよびZは、独立に、L、R、RおよびRからなる群より選択され、ここで、Lは、-OHおよび-O-(C1~C10アルキル)、特に-O-(C1~C8アルキル)もしくは-O-(C1~C6アルキル)からなる群より選択されるか、または、Lは、-OH、-O-メチル、-O-エチル、-O-プロピル、-O-ブチル、-O-オクチル、-O-イソプロピル、および-O-イソブチルからなる群より選択され;
、R、R、R、R、RおよびRは、独立に、場合により置換されているC1~C20アルキル、場合により置換されているC3~C8シクロアルキル、場合により置換されているC2~C20アルケニル、および場合により置換されているC5~C10アリールからなる群より選択され;
およびYは、独立に、-O-M-L Δであるか、または、YおよびYは、一緒になって、-O-M(L Δ)-O-または-O-であり、ここで、Lは、-OHおよび-O-(C1~C10アルキル)、特に-O-(C1~C8アルキル)もしくは-O-(C1~C6アルキル)からなる群より選択されるか、または、Lは、-OH、-O-メチル、-O-エチル、-O-プロピル、-O-ブチル、-O-オクチル、-O-イソプロピル、および-O-イソブチルからなる群より選択され、そして、Mは、金属、好ましくは、スズではない金属、より好ましくは、Na、Zn、Sc、Nd、Ti、Zr、Hf、V、Fe、Pt、Cu、GaおよびBiからなる群より;特に好ましくは、Zn、Ti、Zr、Hf、V、Fe、Biからなる群より選択される金属であり、そして
は、-M ΔまたはMであり、QおよびQは、それぞれ、HまたはMに連結された単結合であり、ここで、Lは、-OHおよび-O-(C1~C10アルキル)、特に-O-(C1~C8アルキル)もしくは-O-(C1~C6アルキル)からなる群より選択されるか、または、Lは、-OH、-O-メチル、-O-エチル、-O-プロピル、-O-ブチル、-O-オクチル、-O-イソプロピル、および-O-イソブチルからなる群より選択され、そして、Mは、金属、好ましくは、スズではない金属、より好ましくは、Na、Zn、Sc、Nd、Ti、Zr、Hf、V、Fe、Pt、Cu、GaおよびBiからなる群より;特に好ましくは、Zn、Ti、Zr、Hf、V、Fe、Biからなる群より選択される金属であるか、または
は、-Mであり、Qは、HまたはMに連結された単結合であり、Qは、H、M Δまたは-SiRであり、ここで、Mは、金属、好ましくは、スズではない金属、より好ましくは、Na、Zn、Sc、Nd、Ti、Zr、Hf、V、Fe、Pt、Cu、GaおよびBiからなる群より;特に好ましくは、Zn、Ti、Zr、Hf、V、FeおよびBiからなる群より選択される金属であり、そして、Lは、-OHおよび-O-(C1~C10アルキル)、特に-O-(C1~C8アルキル)もしくは-O-(C1~C6アルキル)からなる群より選択されるか、または、Lは、-OH、-O-メチル、-O-エチル、-O-プロピル、-O-ブチル、-O-オクチル、-O-イソプロピル、および-O-イソブチルからなる群より選択され、そして、Rは、場合により置換されているC1~C20アルキル、場合により置換されているC3~C6シクロアルキル、場合により置換されているC2~C20アルケニル、および場合により置換されているC6~C10アリールからなる群より選択されるか、または
、QおよびQは、互いに独立に、-M Δであるか、または
は、-Si(R)-O-M Δであり、Qは、XのSi原子に連結された単結合であり、Qは、-M Δであるか、または
は、-Si(R)-O-M Δであり、Qは、XのSi原子に連結された単結合であり、Qは、XのM原子に連結された単結合である]
を有する。
【0103】
特に好ましい実施態様では、金属シルセスキオキサンは、構造式(V):
【化12】

[式中、
、XおよびXは、独立に、SiまたはMから選択され、ここで、Mは、金属、好ましくは、スズではない金属、より好ましくは、Na、Zn、Sc、Nd、Ti、Zr、Hf、V、Fe、Pt、Cu、GaおよびBiからなる群より;より好ましくは、Zn、Ti、Zr、Hf、V、FeおよびBiからなる群より選択される金属であり、
、ZおよびZは、独立に、L、R、RおよびRからなる群より選択され、ここで、Lは、-OHおよび-O-(C1~C10アルキル)、特に-O-(C1~C8アルキル)もしくは-O-(C1~C6アルキル)からなる群より選択されるか、または、Lは、-OH、-O-メチル、-O-エチル、-O-プロピル、-O-ブチル、-O-オクチル、-O-イソプロピル、および-O-イソブチルからなる群より選択され;
、R、R、R、R、RおよびRは、独立に、場合により置換されているC1~C20アルキル、場合により置換されているC3~C8シクロアルキル、場合により置換されているC2~C20アルケニル、および場合により置換されているC5~C10アリールからなる群より選択され;
は、-M Δであり、ここで、Lは、-OHおよび-O-(C1~C10アルキル)、特に-O-(C1~C8アルキル)もしくは-O-(C1~C6アルキル)からなる群より選択されるか、または、Lは、-OH、-O-メチル、-O-エチル、-O-プロピル、-O-ブチル、-O-オクチル、-O-イソプロピル、および-O-イソブチルからなる群より選択され、そして、Mは、金属、好ましくは、スズではない金属、より好ましくは、Na、Zn、Sc、Nd、Ti、Zr、Hf、V、Fe、Pt、Cu、GaおよびBiからなる群より;特に好ましくは、Zn、Ti、Zr、Hf、V、FeおよびBiからなる群より選択される金属である]
を有する。
【0104】
別の特に好ましい実施態様では、金属シルセスキオキサンは、式(VI):
【化13】

[式中、
は、-M Δであり、ここで、Lは、-OHおよび-O-(C1~C10アルキル)、特に-O-(C1~C8アルキル)もしくは-O-(C1~C6アルキル)からなる群より選択されるか、または、Lは、-OH、-O-メチル、-O-エチル、-O-プロピル、-O-ブチル、-O-オクチル、-O-イソプロピル、および-O-イソブチルからなる群より選択され、そして、Mは、金属、好ましくは、スズではない金属、より好ましくは、Na、Zn、Sc、Nd、Ti、Zr、Hf、V、Fe、Pt、Cu、GaおよびBiからなる群より;特に好ましくは、Zn、Ti、Zr、Hf、V、FeおよびBiからなる群より選択される金属であり、
、ZおよびZは、独立に、場合により置換されているC1~C20アルキル、場合により置換されているC3~C8シクロアルキル、場合により置換されているC2~C20アルケニル、および場合により置換されているC5~C10アリールからなる群より選択され;
、R、RおよびRは、それぞれ独立に、場合により置換されているC1~C20アルキル、場合により置換されているC3~C8シクロアルキル、場合により置換されているC2~C20アルケニル、および場合により置換されているC5~C10アリールからなる群より選択される]
を有する。
【0105】
上記式で特に好ましいのは、X=ZrORまたはTiOR、とりわけ、ZrOR(ここで、R=C1~C12アルキルである)であり、とりわけ、ZrO-メチル、ZR-O-エチル、ZR-O-プロピル、ZR-O-ブチル、ZR-O-オクチル、ZR-O-イソプロピル、ZR-O-イソブチル、ZR-O-ブチルである。
【0106】
特に好ましい実施態様では、金属シルセスキオキサンは、構造(VII):
【化14】

[式中、
Zrは、ORに連結されており、ここで、Rは、-H、-メチル、-エチル、-プロピル、-ブチル、-オクチル、-イソプロピル、および-イソブチルからなる群より選択され、
、ZおよびZは、それぞれ互いに独立に、C1~C20アルキル、C3~C8シクロアルキル、C2~C20アルケニルおよびC5~C10アリールであり、特に、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ビニル、アリル、ブテニルおよびフェニル、ならびにベンジルからなる群より選択され、そして
、R、RおよびRは、それぞれ互いに独立に、C1~C20アルキル、C3~C8シクロアルキル、C2~C20アルケニルおよびC5~C10アリールであり、特に、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ビニル、アリル、ブテニルおよびフェニル、ならびにベンジルからなる群より選択される]
を有する。
【0107】
ポリオルガノシロキサン(a)、特にα,ω-ジヒドロキシル末端ポリジアルキルシロキサンと架橋剤との重量比は、好ましくは100:1~2:1、特に好ましくは50:1~5:1、とりわけ15:1~6:1である。
【0108】
記載した成分に加えて、本発明に係る組成物は、任意で、さらなる原料/成分、特に、従来の添加物、例えば、充填剤、可塑剤、反応性希釈剤、着色剤、チキソトロピック剤、レオロジー添加剤、湿潤剤、UV安定剤、酸化防止剤、乾燥剤などを含有し得る。好ましくは、本発明に係る硬化性組成物は、少なくとも1つのさらなる成分を含有する。
【0109】
本発明に係る組成物は、好ましくは、可塑剤を含有し得る。好ましい可塑剤は、末端キャップポリエチレングリコール、例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレングリコールジアルキルエーテル(ここで、アルキル残基は、1~4個のC原子を有する)、特に、ジエチレングリコールおよびジプロピレングリコールのジメチルおよびジエチルエーテルである。好ましい可塑剤はまた、ジウレタンであり、これは、例えば、OH末端基を有するジオールと単官能性イソシアネートとを反応させることによって生産することができる。本発明の好ましい実施態様では、ポリアルキルシロキサン、特に好ましくは、ポリジメチルシロキサンが、可塑剤として使用される。
【0110】
硬化性組成物は、好ましくは、可塑剤を、いずれの場合も組成物の総重量を基準にして、2~50wt.%の量、好ましくは、10~40wt.%の量、特に好ましくは、20~35wt.%の量で含有する。いくつかの可塑剤の混合物が使用される場合、与えられる量は、組成物中の可塑剤の総量のことを指す。
【0111】
硬化性組成物の粘度を低下させるなら、反応性希釈剤を加えることもできる。適切な反応性希釈剤は、組成物と混和性であり、ポリマーと反応性の少なくとも1つの基を有する化合物である。好ましくは、反応性希釈剤は、水分または大気酸素と反応する少なくとも1つの官能基を有する。例は、イソシアネート基、シリル基、またはビニル基などの不飽和基である。好ましい反応性希釈剤を生産するために、例えば、対応するポリオール成分を、少なくとも二官能性イソシアネートと反応させることができる。
【0112】
本発明に係る組成物は、充填剤をさらに含有し得る。適切な充填剤としては、白亜、石灰粉、沈降および/もしくはフュームドシリカ、ゼオライト、ベントナイト、炭酸マグネシウム、アルミナ、獣脂、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、石英、砂、雲母ならびに他の粉状または粉砕鉱物が挙げられる。さらに、有機充填剤、特に、木繊維、木粉、木屑、セルロース、綿、もみ殻を使用することもできる。
【0113】
本発明の特に好ましい実施態様では、シリカが、充填剤として、未処理および/または処理された形態、好ましくは疎水化された形態で、特に好ましくは、フュームド二酸化ケイ素とも呼ばれるフュームドシリカで組成物に加えられる。本発明の特に好ましい実施態様では、未処理シリカと疎水化シリカの混合物が、充填剤として硬化性組成物に加えられる。
【0114】
充填剤は、好ましくは、いずれの場合も組成物の総重量を基準にして、1~60wt.%、特に好ましくは2~20wt.%、極めて特に好ましくは5~15wt.%の量で使用される。また、いくつかの充填剤の混合物を使用することもできる。この場合、与えられる量は、組成物中の充填剤の総量のことを指す。
【0115】
用途によっては、チキソトロピー性を調製物に付与する添加物または充填剤が好ましい。そのような充填剤はまた、レオロジー助剤、例えば、水添ヒマシ油、脂肪酸アミドまたは膨潤性プラスチックとしても記載されている。
【0116】
複素環式アザシランに加えて、本発明に係る組成物は、追加の接着促進剤を含有し得る。ここでの適切な接着促進剤は、例えば、樹脂、例えば、脂肪族または石油化学樹脂および変性フェノール樹脂ならびにテルペンオリゴマーである。そのような樹脂は、例えば、感圧接着剤およびコーティング材のための接着促進剤として使用される。また、テルペン-フェノール樹脂も好適である。
【0117】
好ましくは、硬化性組成物は、酸化防止剤、UV安定剤およびデシカントからなる群より選択される少なくとも1つの安定剤を含有する。酸化防止剤は、好ましくは、最大約6wt.%、特に、最大約4wt.%で存在する。本発明との関連では、シリル基を保有し、架橋または硬化の間に生成物へと重合するUV安定剤が使用される場合が好ましい。
【0118】
また、保存性をさらに高めるために、デシカントによって、本発明に係る組成物を水分の浸透に対して安定化させることができる。水と反応して、調製物中に存在する反応性基に対して不活性基を形成するすべての化合物が、デシカントとして好適である。適切なデシカントとしては、イソシアネートおよびシラン、例えば、ビニシラン、例えば3-ビニルプロピルトリエトキシシラン、オキシモシランまたはカルバマトシランが挙げられる。しかしながら、メチル、エチルまたはビニルトリメトキシシラン、テトラメチルまたはエチルエトキシシランの使用も可能である。ビニルトリメトキシシランおよびテトラエトキシシランが特に好ましい。
【0119】
本発明の好ましい実施態様では、組成物の成分は、一緒に、特に、単相混合物の形態で混合される。
【0120】
本発明はまた、本発明に係る硬化性組成物を調製するためのプロセスであって、成分(a)~(d)と任意で他の成分が一緒に混合されるプロセスに関する。
【0121】
本発明はまた、本発明に係る硬化性組成物の、特に、シーラント、糊、コーティング剤、接合材、キャスティング材料(casting compound)、接着剤としてのおよび/または塗料における使用に関する。
【0122】
上で述べた特徴および以下に説明される特徴は、指定した組み合わせにおいてだけでなく、本発明の範囲を超えることなしに、他の組み合わせまたはそれ自体でも使用することができるものと理解される。前述の特徴の利点またはいくつかの特徴の組み合わせの利点は、単に例示であり、代替的にまたは累積的に効力を生じ得る。本発明の異なる実施態様の特徴または異なる特許請求項の特徴の組み合わせは、特許請求項の選択された参照から逸脱する可能性がある。
【0123】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するが、それに本発明が限定されることはない。
【実施例
【0124】
実施例1:
シリコーンゴムコンパウンドは、以下の処方に従って生産される:
80,000cStの粘度を有するアルファ-オメガ-ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサン 570g
粘度100cStを有するポリジメチルシロキサン 270g
未処理の高分散シリカ 50g
疎水化された高分散シリカ 50g
メチル-トリス(エチルラクタト)シラン 40.7gとテトラエチルラクタトシラン 8.7gの混合物
接着促進剤 ブチルジメトキシシクロシラン(BDC、N-n-ブチル-1-アザ-2,2-ジメトキシ-2-シラシクロペンタン) 12.0g
触媒 iBu-POSS-Zr-Oet 0.5g
オクチルホスホン酸 1.5g
【0125】
シーラントを、塗布後に空気に曝露させた:
-皮膜形成時間 5分
-結合時間 35分
-初期応力 180分後
-完全硬化 24時間後
-透明な外観
-ショア硬度A 18
-木材、塗装木材、ワニス処理した木材、アルミニウム、粉体塗装したアルミニウム、ガラス、PVC、ポリアミド、鋼鉄、コンクリートなどに対する良好な接着性。
【0126】
シーラントはまた、その優れた保存安定性も特徴とする。
【0127】
カートリッジ内にて50℃で8週間保存した後、シーラントは、依然として、最初に塗布しときと同じ特性を有している。
【0128】
実施例2:
シリコーンゴムコンパウンドは、以下の処方に従って生産される:
80,000cStの粘度を有するアルファ-オメガ-ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサン 570g
粘度100cStを有するポリジメチルシロキサン 270g
未処理の高分散シリカ 50g
疎水化された高分散シリカ 50g
メチル-トリス(エチルラクタト)シラン 49.4g
接着促進剤 ブチルジメトキシシクロシラン(BDC、N-n-ブチル-1-アザ-2,2-ジメトキシ-2-シラシクロペンタン) 12.0g
触媒 iBu-POSS-Zr-Oet 1.0g
オクチルホスホン酸 1.5g
【0129】
シーラントを、塗布後に空気に曝露させた:
-皮膜形成時間 11分
-結合時間 65分
-初期応力 280分後
-完全硬化 24時間後
-透明な外観
-ショア硬度A 17
-木材、塗装木材、ワニス処理した木材、アルミニウム、粉体塗装したアルミニウム、ガラス、PVC、ポリアミド、鋼鉄、コンクリートなどに対する良好な接着性。
【0130】
シーラントはまた、その優れた保存安定性も特徴とする。
【0131】
カートリッジ内にて50℃で8週間保存した後、シーラントは、依然として、最初に塗布しときと同じ特性を有している。
【0132】
詳細な検査および確立されているシリコーンシーラントとの比較のために、以下の実施例3および比較例を詳細に検査した。
【0133】
実施例3
実施例1および2と同様にして、以下の処方に従いシリコーンゴムコンパウンドを調製した:
【表1】
【0134】
比較例(先行技術)
【表2】
【0135】
実施例1~3および比較例からの組成物の光学特性は、塗布に関して、硬化後の機械的特性と同じく同等であった。しかしながら、実施例1~3に係るシリコーンゴムコンパウンドは、参照例と比較して改善された保存安定性および接着性を有することが見いだされた。実施例1~3に係る組成物は、50℃で保存後、8週間経っても無色のままであったが、比較例の組成物は、50℃で8週間後に黄色を帯びていた。接着性に関して、実施例1~3に係る組成物は、比較例と比較して、プレキシグラス、ポリカーボネートおよびポリスチレンに対して改善された接着性を示した。本発明に係る上の実施例の追加の利点は、有毒のスズを省くことができるという点である。
【0136】
上の比較例のシーラントと比較して、上記実施例は、本発明に係る組成物の機械的特性が、公知のシリコーンゴムコンパウンドと比較して等しく良好であると同時に、プレキシグラス、ポリカーボネートまたはポリスチレンなどのプラスチックに対する保存安定性および接着性が改善され得ることを示す。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)式HO-(SiRO)-H[式中、
各RおよびRは、独立に、
場合により置換されているアルキル、アルケニルもしくはアルキニル残基;
場合により置換されている脂環式残基、アリール残基もしくはアラルキル残基;または
場合により置換されている複素脂環式残基もしくはヘテロアリール残基を表し;そして
oは、5~5000の整数である]
で示されるポリオルガノシロキサン、
(b)式Si(R)(R4-m[式中、
各Rは、独立に、
場合により置換されているアルキル、アルケニルもしくはアルキニル残基;
場合により置換されている脂環式残基、アリール残基もしくはアラルキル残基;または
場合により置換されている複素脂環式残基もしくはヘテロアリール残基を表し;
mは、0~2の整数であり、各Rは、独立に、
(b1)式(I):
【化15】

(式中、
各RおよびRは、互いに独立に、
水素;
場合により置換されているアルキル、アルケニルもしくはアルキニル残基;
場合により置換されている脂環式残基、アリール残基もしくはアラルキル残基;または
場合により置換されている複素脂環式残基もしくはヘテロアリール残基を表し;
各Rは、独立に、
場合により置換されているアルキル、アルケニルもしくはアルキニル残基;
場合により置換されている脂環式残基、アリール残基もしくはアラルキル残基;または
場合により置換されている複素脂環式残基もしくはヘテロアリール残基を表し;
各Rは、独立に、
炭素;
場合により置換されている脂環式残基、アリール残基もしくはアラルキル残基;または
場合により置換されている複素脂環式残基もしくはヘテロアリール残基を表し;そして
nは、1~10の整数である)
で示されるヒドロキシカルボン酸エステル残基、
(b2)式(II):
【化16】

(式中、
各R、R、RおよびRは、互いに独立に、
水素;
場合により置換されているアルキル、アルケニルもしくはアルキニル残基;
場合により置換されている脂環式残基、アリール残基もしくはアラルキル残基;または
場合により置換されている複素脂環式残基もしくはヘテロアリール残基を表し;
は、互いに独立に、
炭素;
場合により置換されている脂環式残基、アリール残基もしくはアラルキル残基;または
場合により置換されている複素脂環式残基もしくはヘテロアリール残基を表し;そして
pは、1~10の整数である)
で示されるヒドロキシカルボキサミド残基、
(b3)カルボン酸残基-O-C(O)-R
(b4)オキシム残基-O-N=CR、および
(b5)カルボン酸アミド残基-N(R)-C(O)-R
(式中、各R、R、R、RおよびRは、互いに独立に、
水素;
場合により置換されているアルキル、アルケニルもしくはアルキニル残基;
場合により置換されている脂環式残基、アリール残基もしくはアラルキル残基;または
場合により置換されている複素脂環式残基もしくはヘテロアリール残基を表す)
からなる群より選択される]
で示される架橋剤;
(c)NおよびSiが環原子であり、互いに直接連結している、複素環式アザシラン、ならびに
(d)式R-PO(OH)[式中、
Rは、
場合により置換されているアルキル、アルケニルもしくはアルキニル残基、
場合により置換されている脂環式残基、アリール残基もしくはアラルキル残基、または
場合により置換されている複素脂環式残基もしくはヘテロアリール残基である]
で示される有機ホスホン酸を含む、硬化性組成物。
【請求項2】
前記有機ホスホン酸の、前記架橋剤の総量を基準にした量が、0.3~30mol%であることを特徴とする、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記有機ホスホン酸が、2~12個の炭素原子を有するアルキルホスホン酸であることを特徴とする、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
金属触媒を追加で含むことを特徴とする、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記金属触媒の該金属が、Na、Zn、Sc、Nd、Ti、Zr、Hf、V、Fe、Pt、Cu、Ga、およびBiからなる群より選択されることを特徴とする、請求項4に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記金属触媒の該金属が、Zrであることを特徴とする、請求項4に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記金属触媒が、式:
Si[式中、
各Rは、独立に、場合により置換されているC1~C20アルキル、場合により置換されているC3~C6シクロアルキル、場合により置換されているC2~C20アルケニル、場合により置換されているC6~C10アリール、-OHおよび-O-(C1~C20アルキル)からなる群より選択され、
Mは、該金属であり、
Aは、4~19の整数であり、
Bは、4~10の整数であり、
Cは、8~30の整数であり、そして
Dは、1~8の整数である]
で示される金属シロキサンであることを特徴とする、請求項4に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記金属シロキサンが、多面体金属シルセスキオキサンであることを特徴とする、請求項7に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
前記架橋剤において、各Rが、独立に、
(b1)式(I)(該残基は、請求項1に定義された通りである)で示されるヒドロキシカルボン酸エステル残基、および
(b2)式(II)(該残基は、請求項1に定義された通りである)で示されるヒドロキシカルボン酸アミド残基
からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
前記架橋剤のRが、式(I)で示されるヒドロキシカルボン酸エステル残基であることを特徴とする、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
前記複素環式アザシランが、式:
【化17】

[式中、
a=0、1または2であり;
n=0~6であり;
各R、R、R、R、RおよびRは、独立に、H、または場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1~C20アルキル基、場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C2~C20アルケニル基、場合により置換されているC3~C20シクロアルキル基、場合により置換されているC4~C20シクロアルケニル基、場合により置換されている直鎖、分岐鎖もしくは環式C4~C20アルキニル基、または場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖C2~C20ヘテロアルキル基、場合により置換されている直鎖、分岐鎖もしくは環式C3~C20ヘテロアルケニル基、または場合により置換されているC4~C14アリールもしくはヘテロアリール基であるか、あるいは2つの残基R、R、R、R、RおよびRは、一緒になって、5~8員環を形成する]
で示される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項12】
前記複素環式アザシランが、N-n-ブチル-1-アザ-2,2-ジメトキシ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジエトキシ-1-(3-トリエトキシシリルプロピル)アザ-2-シラシクロペンタンおよび/または2,2-ジエトキシ-1-(トリメチルシリル)アザ-2-シラシクロペンタンであることを特徴とする、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項13】
前記ポリオルガノシロキサンが、ポリジメチルシロキサンであることを特徴とする、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項14】
前記有機ホスホン酸の、前記架橋剤の総量を基準にした量が、1~10mol%であることを特徴とする、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項15】
前記有機ホスホン酸が、オクチルホスホン酸であることを特徴とする、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項16】
スズを含有しない金属触媒を追加で含むことを特徴とする、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項17】
前記金属触媒の該金属が、Zn、Ti、Zr、Hf、V、FeおよびBiからなる群より選択されることを特徴とする、請求項4に記載の硬化性組成物。
【請求項18】
前記金属シロキサンが、多面体チタンおよび/またはジルコニウムシルセスキオキサンであることを特徴とする、請求項7に記載の硬化性組成物。
【請求項19】
前記架橋剤のR が、式(I)(n=1)で示されるヒドロキシカルボン酸エステル残基であることを特徴とする、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項20】
前記複素環式アザシランが、N-n-ブチル-1-アザ-2,2-ジメトキシ-2-シラシクロペンタンであることを特徴とする、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか一項に記載の硬化性組成物を調製するためのプロセスであって、成分(a)~(d)と任意でさらなる成分が混合されることを特徴とする、プロセス。
【請求項22】
シーラント、糊、コーティング剤、接合材、埋込用樹脂、接着剤としてのまたは塗料における、請求項1~20のいずれか一項に記載の硬化性組成物の使用。
【国際調査報告】