IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニコックス エス.エー.の特許一覧

特表2024-541626一酸化窒素放出ホスホジエステラーゼ5阻害剤を含有する眼科用医薬組成物及びその製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】一酸化窒素放出ホスホジエステラーゼ5阻害剤を含有する眼科用医薬組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/506 20060101AFI20241031BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20241031BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20241031BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20241031BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20241031BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20241031BHJP
【FI】
A61K31/506
A61P27/02
A61P27/06
A61K9/08
A61K47/14
A61K47/10
A61K47/18
A61K47/04
A61K47/02
A61K47/12
A61K47/38
A61K47/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532506
(86)(22)【出願日】2022-12-01
(85)【翻訳文提出日】2024-07-29
(86)【国際出願番号】 EP2022083986
(87)【国際公開番号】W WO2023099638
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】21211990.3
(32)【優先日】2021-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516217239
【氏名又は名称】ニコックス エス.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】アルミランテ,ニコレッタ
(72)【発明者】
【氏名】ブランビッラ,ステファーニア
(72)【発明者】
【氏名】ガリ,コリンナ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB24
4C076CC10
4C076DD22
4C076DD26
4C076DD38
4C076DD41
4C076DD43
4C076DD49
4C076DD51
4C076EE13
4C076EE23
4C076EE32
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC42
4C086GA07
4C086GA16
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA58
4C086NA03
4C086ZA33
(57)【要約】
本発明は、活性成分の物理的及び化学的安定性を長期間保持できる、6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル)メチルを含む点眼薬の剤形の水性眼科用製剤を開示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)0.8%~1.8%w/wの6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル、又は前記範囲内の任意の特定の値;
(ii)以下の混合物から選択される界面活性剤成分:
-4.0%~7.5%w/w リシノール酸マクロゴールグリセロール及び1.0%~6.0%w/w ステアリン酸マクロゴール40、
-4.0%~7.5%w/w リシノール酸マクロゴールグリセロール及び1.0%~7.0%w/w モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、又は
-1.0%~6.0%w/w ステアリン酸マクロゴール40及び1.0%~7.0%w/w モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン;
(iii)ポリオール類から選択される1.0%~5.0%w/wの共溶媒;
(iv)pHを4.5~7.5の範囲に調整するための緩衝系;
(v)注射用水又は精製水適量(100%w/wとする);
を含み、かつ重量オスモル濃度が、240~400mOsm/kg、好ましくは240~380mOsm/kgである眼科用製剤。
【請求項2】
(i)1.0%~1.8%w/wの6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル、又は前記範囲内の任意の特定の値;
(ii)以下の混合物から選択される界面活性剤成分:
-5.0%~7.5%w/w リシノール酸マクロゴールグリセロール及び3.0%~5.0%w/w ステアリン酸マクロゴール40、
-5.0%~7.5%w/wのリシノール酸マクロゴールグリセロール及び2.0%~5.0%w/w モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、又は
-3.0%~5.0%w/w ステアリン酸マクロゴール40及び2.0%~5.0%w/w モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン;
(iii)1.0%~4.0%w/w ポリエチレングリコール400;
(iv)pHを4.5~7.5に調整するための緩衝系;
(v)注射用水又は精製水適量(100%w/wとする);
を含み、更に0.01%~0.10%w/w EDTA及び0.01%~0.02%w/w 塩化ベンザルコニウムを含む、請求項1記載の眼科用製剤。
【請求項3】
(i)1.0%~1.5%w/wの6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル、又は前記範囲内の任意の特定の値;
(ii)以下の混合物から選択される界面活性剤成分:
-5.0%~7.5%w/w リシノール酸マクロゴールグリセロール及び3.0%~5.0%w/w ステアリン酸マクロゴール40、
-5.0%~7.5%w/w リシノール酸マクロゴールグリセロール及び2.0%~5.0%w/w モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、又は
-3.0%~5.0%w/w ステアリン酸マクロゴール40及び2.0%~5.0%w/w モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン;
(iii)ポリオール類から選択される1.0%~4.0%w/wの共溶媒;
(iv)pHを4.5~7.5の範囲に調整するための緩衝系;
(v)注射用水又は精製水適量(100%w/wとする)
を含む、請求項1記載の眼科用製剤。
【請求項4】
共溶媒が、マンニトール、グリセロール、ソルビトール又はポリエチレングリコールから選択される、請求項1~3のいずれか一項記載の眼科用製剤。
【請求項5】
共溶媒が、ポリエチレングリコール400である、請求項1~3のいずれか一項記載の眼科用製剤。
【請求項6】
緩衝系が、以下:ホウ酸とリン酸水素二ナトリウム七水和物、リン酸水素二ナトリウム七水和物とリン酸二水素ナトリウム二水和物、リン酸水素二ナトリウム七水和物とクエン酸、クエン酸三ナトリウム二水和物とクエン酸一水和物、クエン酸三ナトリウム二水和物とホウ酸、又はホウ酸から選択される、請求項1~5のいずれか一項記載の眼科用製剤。
【請求項7】
緩衝系が、ホウ酸とリン酸水素二ナトリウム七水和物又はクエン酸一水和物とクエン酸三ナトリウム二水和物又はクエン酸三ナトリウム二水和物とホウ酸又はホウ酸から選択される、請求項1~6のいずれか一項記載の眼科用製剤。
【請求項8】
更にキレート剤を含む、請求項1~7のいずれか一項記載の眼科用組成物。
【請求項9】
キレート剤が、0.01%~0.2%w/w エチレンジアミン四酢酸又はその塩である、請求項8記載の眼科用製剤。
【請求項10】
更に、塩化ベンザルコニウム、ポリクオタニウム-1、塩化ベンゼトニウム、ソルビン酸カリウム若しくはソルビン酸、又はこれらの混合物から選択される抗菌性保存料を含む、請求項1~9のいずれか一項記載の眼科用製剤。
【請求項11】
抗菌性保存料が、塩化ベンザルコニウムである、請求項10記載の眼科用製剤。
【請求項12】
更に、グリセロール、ソルビトール、マンニトール、デキストロース、塩化ナトリウム又は塩化カリウムから選択される1つ以上の張度調整剤を含む、請求項1~11のいずれか一項記載の眼科用製剤。
【請求項13】
更に、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択される増粘剤、酸化防止剤又はこれらの混合物を含む、請求項1~12のいずれか一項記載の眼科用製剤。
【請求項14】
(i)1.0%w/w 6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル;
(ii)5.0%w/w リシノール酸マクロゴールグリセロール及び3.0%w/w ステアリン酸マクロゴール40;
(iii)2.8%w/w ポリエチレングリコール400;
(iv)0.19%w/w ホウ酸、0.51%w/w リン酸水素二ナトリウム七水和物;
(v)注射用水適量(100%w/wとする);
からなり、更に0.1%w/w エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物、0.01%w/w 塩化ベンザルコニウム及びpHを6.5~6.9に調整するためのHCl又はNaOHを含む、請求項1記載の眼科用製剤。
【請求項15】
(i)1.3%w/w 6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル;
(ii)7.5%w/w リシノール酸マクロゴールグリセロール及び5.0%w/w ステアリン酸マクロゴール40;
(iii)2.8%w/w ポリエチレングリコール400;
(iv)0.19%w/w ホウ酸、0.51%w/w リン酸水素二ナトリウム七水和物;
(v)注射用水適量(100%w/wとする);
からなり、更に0.1%w/w エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物、0.01%w/w 塩化ベンザルコニウム、及びpHを6.5~6.9に調整するためのHCl又はNaOHを含む、請求項1記載の眼科用製剤。
【請求項16】
(i)1.4%w/w 6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル;
(ii)7.5%w/w リシノール酸マクロゴールグリセロール及び5.0%w/w ステアリン酸マクロゴール40;
(iii)4.0%w/w ポリエチレングリコール400;
(iv)0.19%w/w ホウ酸、0.51%w/w リン酸水素二ナトリウム七水和物;
(v)注射用水適量(100%w/wとする);
からなり、更に0.1%w/w エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物、0.01%w/w 塩化ベンザルコニウム、及びpHを6.5~6.9に調整するためのHClを含む、請求項1記載の眼科用製剤。
【請求項17】
(i)1.8%w/w 6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル;
(ii)7.5%w/w リシノール酸マクロゴールグリセロール及び5.0%w/w モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン;
(iii)1.0%w/w ポリエチレングリコール400;
(iv)0.19%w/w ホウ酸、0.51%w/w リン酸水素二ナトリウム七水和物;
(v)注射用水適量(100%w/wとする);
からなり、更に0.1%w/w エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物、0.01%w/w 塩化ベンザルコニウム、及びpHを6.5~6.9に調整するためのHCl又はNaOHを含む、請求項1記載の眼科用製剤。
【請求項18】
(i)1.7%w/w 6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル;
(ii)7.5%w/w リシノール酸マクロゴールグリセロール及び5.0%w/w モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン;
(iii)1.0%w/w ポリエチレングリコール400;
(iv)0.19%w/w ホウ酸、0.51%w/w リン酸水素二ナトリウム七水和物;
(v)注射用水又は精製水適量(100%w/wとする);
からなり、更に0.1%w/w エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物、0.01%w/w 塩化ベンザルコニウムを含む、請求項1記載の眼科用製剤。
【請求項19】
(i)1.7%w/w 6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル;
(ii)7.5%w/w リシノール酸マクロゴールグリセロール及び5.0%w/w モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン;
(iii)1.0%w/w ポリエチレングリコール400;
(iv)0.11%w/w クエン酸一水和物及び0.73%w/w クエン酸三ナトリウム二水和物;
(v)注射用水又は精製水適量(100%w/wとする);
からなり、更に0.1%w/w エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物、0.01%w/w 塩化ベンザルコニウムを含む、請求項1記載の眼科用製剤。
【請求項20】
(i)1.7%w/w 6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル;
(ii)7.5%w/w リシノール酸マクロゴールグリセロール及び5.0%w/w モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン;
(iii)1.0%w/w ポリエチレングリコール400;
(iv)0.19%w/w ホウ酸、0.003%w/w クエン酸三ナトリウム二水和物;
(v)注射用水又は精製水適量(100%w/wとする);
からなり、更に0.1%w/w エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物、0.01%w/w 塩化ベンザルコニウムを含む、請求項1記載の眼科用製剤。
【請求項21】
(i)1.7%w/w 6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル;
(ii)7.5%w/w リシノール酸マクロゴールグリセロール及び5.0%w/w モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン;
(iii)1.0%w/w ポリエチレングリコール400;
(iv)0.11%w/w クエン酸一水和物、0.73%w/w クエン酸三ナトリウム二水和物;
(v)注射用水又は精製水適量(100%w/wとする);
からなり、更に0.1%w/w エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物、0.01%w/w 塩化ベンザルコニウムを含む、請求項1記載の眼科用製剤。
【請求項22】
(i)1.7%w/w 6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル;
(ii)7.5%w/w リシノール酸マクロゴールグリセロール及び5.0%w/w モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン;
(iii)1.0%w/w ポリエチレングリコール400;
(iv)0.11%w/w クエン酸一水和物、0.73%w/w クエン酸三ナトリウム二水和物;
(v)注射用水又は精製水適量(100%w/wとする);
からなり、更に0.1%w/w エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物、0.01%w/w 塩化ベンザルコニウムを含む、請求項1記載の眼科用製剤。
【請求項23】
緑内障、高眼圧症、眼圧上昇に関連する病態又は網膜症を処置するために使用するための、請求項1~19のいずれか一項記載の眼科用製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投与剤形中の活性物質の物理的及び化学的安定性を維持することができる6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチルを含む点眼薬の剤形の水性眼科用製剤並びにこのような眼科用製剤の製造方法に関する。
6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチルは、一酸化窒素放出ホスホジエステラーゼ5阻害剤(NO-PDE5阻害剤)であり、以降、化合物(I)と称される。
【背景技術】
【0002】
化合物(I)は、NO放出PDE5阻害剤、並びに高眼圧症及び緑内障などの眼内圧の上昇を伴う眼疾患の処置及び網膜症の処置のためのこれらの使用に関する、WO 2020/030489に開示されている。WO 2020/030489は、前記NO放出PDE5阻害剤を含む特定の医薬製剤を開示していない。
一般に使用される水性眼科用ビヒクル中に化合物(I)を含む眼科用製剤を調製する際の1つの障害は、その水溶解度がかなり低く(0.013mg/ml)、おおむね親油性(Clog DpH 6.7=5.76)であることである。
水性ビヒクル中での化合物(I)の溶解度を高めるための取り組みとして、化合物(I)の「塩形態」が研究された。しかし、眼科用製剤として初めに選択されるpHであったpH6.0~7.0の範囲では、試験した化合物(I)塩は、化合物(I)遊離塩基と同様の水溶解度を示した。
更に、塩の製造には追加の加工段階が必要となり、合成コストを上昇させ;更には、反応の全収率が低下する。
したがって、治療有効量の活性成分を含有し、容易に製造され、通常の取り扱い条件下で長期保存が可能であり、目による忍容性が高い化合物(I)の水性製剤が必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、以下の成分を含む水溶液の形態の眼科用組成物を提供する:
(i)活性成分としての6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル(化合物(I))、
(ii)以下から選択される2つの非イオン性界面活性剤の混合物からなる界面活性剤成分:リシノール酸マクロゴールグリセロール(Kolliphor(登録商標)EL)、ステアリン酸マクロゴール40(Myrj(商標)S40)、及びモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween(登録商標)80)、
(iii)浸透圧(重量オスモル濃度)調整剤としても機能するポリオール類から選択される共溶媒;
(iv)pHを4.5~7.5の範囲に調整するための緩衝系;
(v)注射用水又は精製水。
【0004】
本発明の眼科用組成物は、局所眼投与用の点眼剤の形態である。
本発明者らは、界面活性剤成分の組合せ及びポリオールの存在により、水性ビヒクル中での化合物(I)の溶解度を高めることができ、得られる透明な眼科用製剤は、経時的に不溶性の沈殿物が形成されることなくほぼ安定であることを見い出した。更には、動物で試験したところ、良好な忍容性が得られた。
【0005】
本発明の実施態様は、:
(i)0.8%~1.8%w/wの6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル、又は前記範囲内の任意の特定の値;
(ii)以下の混合物から選択される界面活性剤成分:
-4.0%~7.5%w/w リシノール酸マクロゴールグリセロール及び1.0%~6.0%w/w ステアリン酸マクロゴール40、
-4.0%~7.5%w/w リシノール酸マクロゴールグリセロール及び1.0%~7.0%w/w モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、又は
-1.0%~6.0%w/w ステアリン酸マクロゴール40及び1.0%~7.0%w/w モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン;
(iii)ポリオール類から選択される1.0%~5.0%w/wの共溶媒;
(iv)pHを4.5~7.5の範囲に調整するための緩衝系;
(v)注射用水又は精製水適量(100%w/wとする);
を含み、かつ重量オスモル濃度が、240~400mOsm/kg、好ましくは240~380mOsm/kgである眼科用製剤を提供する。
【0006】
本発明の別の実施態様は、:
(i)1.0%~1.8%w/wの6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル、又は前記範囲内の任意の特定の値;
(ii)以下の混合物から選択される界面活性剤成分:
-5.0%~7.5%w/w リシノール酸マクロゴールグリセロール及び3.0%~5.0%w/w ステアリン酸マクロゴール40、
-5.0%~7.5%w/wのリシノール酸マクロゴールグリセロール及び2.0%~5.0%w/w モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、又は
-3.0%~5.0%w/w ステアリン酸マクロゴール40及び2.0%~5.0%w/w モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン;
(iii)1.0%~4.0%w/w ポリエチレングリコール400;
(iv)pHを4.5~7.5に調整するための緩衝系;
(v)注射用水又は精製水適量(100%w/wとする);
を含み、更に0.01%~0.10%w/w EDTA及び0.01%~0.02%w/w 塩化ベンザルコニウムを含み、かつ重量オスモル濃度が、240~400mOsm/kg、好ましくは240~380mOsm/kgである眼科用製剤を提供する。
【0007】
本発明の実施態様は、:
(i)1.0%~1.5%w/wの6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル、又は前記範囲内の任意の特定の値;
(ii)以下の混合物から選択される界面活性剤成分:
-5.0%~7.5%w/w リシノール酸マクロゴールグリセロール及び3.0%~5.0%w/w ステアリン酸マクロゴール40、
-5.0%~7.5%w/w リシノール酸マクロゴールグリセロール及び2.0%~5.0%w/w モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、又は
-3.0%~5.0%w/w ステアリン酸マクロゴール40及び2.0%~5.0%w/w モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン;
(iii)ポリオール類から選択される1.0%~4.0%w/wの共溶媒;
(iv)pHを4.5~7.5の範囲に調整するための緩衝系;
(v)注射用水又は精製水適量(100%w/wとする)
を含み、かつ重量オスモル濃度が、240~400mOsm/kg、好ましくは240~380mOsm/kgである眼科用製剤を提供する。
【0008】
本発明の製剤において、ポリオール類の共溶媒は、好ましくはマンニトール、グリセロール、ソルビトール又はポリエチレングリコールから選択され;最も好ましくは、共溶媒はポリエチレングリコール400である。
本発明の製剤において、緩衝系は、好ましくは以下から選択される:ホウ酸とリン酸水素二ナトリウム七水和物、リン酸水素二ナトリウム七水和物とリン酸二水素ナトリウム二水和物、リン酸水素二ナトリウム七水和物とクエン酸、クエン酸三ナトリウム二水和物とクエン酸一水和物、クエン酸三ナトリウム二水和物とホウ酸、又はホウ酸。より好ましくは、緩衝系は、ホウ酸とリン酸水素二ナトリウム七水和物又はクエン酸一水和物とクエン酸三ナトリウム二水和物又はクエン酸三ナトリウム二水和物とホウ酸の混合物又はホウ酸である。
【0009】
任意選択で、眼科用組成物は、キレート剤及び抗菌性保存料などの他の賦形剤を更に含む。
好ましくは、キレート剤は、製剤中に0.01%~0.2%w/wの量で存在するエチレンジアミン四酢酸(EDTA)である。本発明の用語の範囲内では、EDTAは、エチレンジアミン四酢酸自体、並びにその塩、即ち、例えば、二ナトリウム塩及び/又はカリウム塩に関連する。
【0010】
抗菌性保存料は、塩化ベンザルコニウム(BAK)、ポリクオタニウム-1(PQ-1)、塩化ベンゼトニウムなどの第四級アンモニウム化合物、ソルビン酸カリウム若しくはソルビン酸、又はこれらの混合物から選択することができ、好ましくは、抗菌性保存料は塩化ベンザルコニウムである。
塩化ベンザルコニウムは、N-ベンジル-N-(C-C18アルキル)-N,N-ジメチルアンモニウムクロリドと記載するのが適切である。好ましくは、抗菌性保存料は塩化ベンザルコニウムである。塩化ベンザルコニウムは、溶液中に0.01%~0.02%w/wの量で存在する。
【0011】
任意選択で、塩酸及び/又は水酸化ナトリウムを眼科用組成物に加えて、最終製剤のpHを4.5~7.5の範囲のpHに調整することができる。
眼科用製剤に含まれ得る他の任意の賦形剤は、グリセロール、ソルビトール、マンニトール、デキストロース、塩化ナトリウム又は塩化カリウムなどの張度調整剤、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの増粘剤、酸化防止剤、又はこれらの混合物である。
【0012】
本発明の好ましい実施態様は、:
(i)1.0%w/w 6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル;
(ii)5.0%w/w リシノール酸マクロゴールグリセロール及び3.0%w/w ステアリン酸マクロゴール40;
(iii)2.8%w/w ポリエチレングリコール400;
(iv)0.19%w/w ホウ酸、0.51%w/w リン酸水素二ナトリウム七水和物;
(v)注射用水又は精製水適量(100%w/wとする);
からなり、更に0.1%w/w エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物、0.01%w/w 塩化ベンザルコニウム及び最終溶液のpHを6.5~6.9に調整するためのHCl又はNaOHを含む眼科用製剤を提供する。
【0013】
本発明の別の好ましい実施態様は、:
(i)1.3%w/w 6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル;
(ii)7.5%w/w リシノール酸マクロゴールグリセロール及び5.0%w/w ステアリン酸マクロゴール40;
(iii)2.8%w/w ポリエチレングリコール400;
(iv)0.19%w/w ホウ酸、0.51%w/w リン酸水素二ナトリウム七水和物;
(v)注射用水又は精製水適量(100%w/wとする);
からなり、更に0.1%w/w エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物、0.01%w/w 塩化ベンザルコニウム、及びpHを6.5~6.9に調整するためのHCl又はNaOHを含む眼科用製剤を提供する。
【0014】
本発明の別の好ましい実施態様は、:
(i)1.4%w/w 6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル;
(ii)7.5%w/w リシノール酸マクロゴールグリセロール及び5.0%w/w ステアリン酸マクロゴール40;
(iii)4.0%w/w ポリエチレングリコール400;
(iv)0.19%w/w ホウ酸、0.51%w/w リン酸水素二ナトリウム七水和物;
(v)注射用水又は精製水適量(100%w/wとする);
からなり、更に0.1%w/w エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物、0.01%w/w 塩化ベンザルコニウム、及びpHを6.5~6.9に調整するためのHCl又はNaOHを含む眼科用製剤を提供する。
【0015】
本発明の別の好ましい実施態様は、:
(i)1.8%w/w 6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル;
(ii)7.5%w/w リシノール酸マクロゴールグリセロール及び5.0%w/w モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン;
(iii)1.0%w/w ポリエチレングリコール400;
(iv)0.19%w/w ホウ酸、0.51%w/w リン酸水素二ナトリウム七水和物;
(v)注射用水又は精製水適量(100%w/wとする);
からなり、更に0.1%w/w エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物、0.01%w/w 塩化ベンザルコニウム、及びpHを6.5~6.9に調整するためのHCl又はNaOHを含む眼科用製剤を提供する。
【0016】
本発明の別の好ましい実施態様は、:
(i)1.7%w/w 6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル;
(ii)7.5%w/w リシノール酸マクロゴールグリセロール及び5.0%w/w モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン;
(iii)1.0%w/w ポリエチレングリコール400;
(iv)0.19%w/w ホウ酸、0.51%w/w リン酸水素二ナトリウム七水和物;
(v)注射用水又は精製水適量(100%w/wとする);
からなり、更に0.1%w/w エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物、0.01%w/w 塩化ベンザルコニウムを含む眼科用製剤を提供する。
【0017】
本発明の別の好ましい実施態様は、:
(i)1.7%w/w 6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル;
(ii)7.5%w/w リシノール酸マクロゴールグリセロール及び5.0%w/w モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン;
(iii)1.0%w/w ポリエチレングリコール400;
(iv)0.11%w/w クエン酸一水和物及び0.73%w/w クエン酸三ナトリウム二水和物;
(v)注射用水又は精製水適量(100%w/wとする);
からなり、更に0.1%w/w エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物、0.01%w/w 塩化ベンザルコニウムを含む眼科用製剤を提供する。
【0018】
本発明の別の好ましい実施態様は、:
(i)1.7%w/w 6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル;
(ii)7.5%w/w リシノール酸マクロゴールグリセロール及び5.0%w/w モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン;
(iii)1.0%w/w ポリエチレングリコール400;
(iv)0.19%w/w ホウ酸、0.003%w/w クエン酸三ナトリウム二水和物;
(v)注射用水又は精製水適量(100%w/wとする);
からなり、更に0.1%w/w エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物、0.01%w/w 塩化ベンザルコニウムを含む眼科用製剤を提供する。
【0019】
本発明の別の好ましい実施態様は、:
(i)1.7%w/w 6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル;
(ii)7.5%w/w リシノール酸マクロゴールグリセロール及び5.0%w/w モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン;
(iii)1.0%w/w ポリエチレングリコール400;
(iv)0.11%w/w クエン酸一水和物、0.73%w/w クエン酸三ナトリウム二水和物;
(v)注射用水又は精製水適量(100%w/wとする);
からなり、更に0.1%w/w エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物、0.01%w/w 塩化ベンザルコニウムを含む眼科用製剤を提供する。
【0020】
本発明の別の好ましい実施態様は、:
(i)1.7%w/w 6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル;
(ii)7.5%w/w リシノール酸マクロゴールグリセロール及び5.0%w/w モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン;
(iii)1.0%w/w ポリエチレングリコール400;
(iv)0.11%w/w クエン酸一水和物、0.73%w/w クエン酸三ナトリウム二水和物;
(v)注射用水又は精製水適量(100%w/wとする);
からなり、更に0.1%w/w エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物、0.01%w/w 塩化ベンザルコニウムを含む眼科用製剤を提供する。
【0021】
本発明の眼科用製剤の成分の割合は、製剤の総重量に対して表される。
本発明の別の実施態様は、緑内障、高眼圧症、眼圧上昇に関連する病態、又は網膜症を処置するための本発明の眼科用組成物の使用を提供する。
【0022】
本発明の局所眼科用製剤は、以下の工程を含むプロセスを使用して調製することができる:
1)撹拌下で調製容器に下記:
-以下の非イオン性界面活性剤のうち2つ:リシノール酸マクロゴールグリセロール(Kolliphor EL)、ステアリン酸マクロゴール40(Myrj S40)及びモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween 80)、
-共溶媒、
-最終重量の少なくとも80%の注射用水又は精製水、
-任意選択で抗菌性保存料、
を加え、混合物を撹拌して溶液を得る工程;
2)緩衝系を加え、完全に可溶化するまで混合物を撹拌し、pHを測定して、任意選択でpHを4.5~7.5の間に調整する工程;
3)溶液を65℃に加熱し、次に6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル(化合物(I))を加えて、化合物(I)が溶解するまで混合物を撹拌する工程;
4)撹拌下で溶液を室温(RT)まで冷却する工程;
5)任意選択でキレート剤を加え、完全に可溶化するために混合物を撹拌する工程;
6)任意選択で、pH値を4.5~7.5、好ましくはpH6.5~6.9に調整する工程;
7)注射用水又は精製水で溶液の最終重量を調整する工程;
8)pHをチェックし、必要に応じて4.5~7.5に、好ましくはpH6.5~6.9に調整する工程;
9)公称孔径0.2μm以下の適切なフィルターを使用してバルク溶液を滅菌濾過する工程。
【0023】
特に、本発明の局所眼科用製剤は、以下の工程を含むプロセスを使用して調製することができる:
1)撹拌下で調製容器に下記:
-以下の非イオン性界面活性剤のうち2つ:リシノール酸マクロゴールグリセロール(Kolliphor EL)、ステアリン酸マクロゴール40(Myrj S40)及びモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween 80)、
-ポリエチレングリコール400(Kollisolv(登録商標)PEG E 400)などの共溶媒、
-最終重量の80%~90%の注射用水又は精製水、
-塩化ベンザルコニウムなどの抗菌性保存料、
を加え、混合物を撹拌して溶液を得る工程;
2)ホウ酸(HBO)とリン酸水素二ナトリウム七水和物(NaHPO・7HO)などの緩衝系を加え、完全に可溶化するまで混合物を撹拌し、pHを測定して、任意選択でHCl又はNaOHによってpHを4.5~7.5の間に調整する工程;
3)溶液を65℃に加熱し、次に6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル(化合物(I))を加えて、化合物(I)が溶解するまで混合物を撹拌する工程;
4)撹拌下で溶液を室温(RT)まで冷却する工程;
5)エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物(EDTA)などのキレート剤を加えて、完全に可溶化するために混合物を撹拌する工程;
6)任意選択で、HCl及び/又はNaOHによってpH値を4.5~7.5、好ましくはpH6.5~6.9に調整する工程;
7)注射用水又は精製水で溶液の最終重量を調整する工程;
8)pHをチェックし、必要に応じてNaOH及び/又はHClを加えることによって4.5~7.5に、好ましくは6.5~6.9に調整する工程;
9)公称孔径0.2μm以下の適切なフィルターを使用してバルク溶液を滅菌濾過する工程。
【実施例
【0024】
6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル(化合物(I))を、WO 2020/030489に開示された合成方法により調製した。リシノール酸マクロゴールグリセロール(Kolliphor EL)、ステアリン酸マクロゴール40(Myrj S40)、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween 80)及びポリエチレングリコール400(Kollisolv PEG E 400)は市販されている。界面活性剤及び共溶媒は、ヨーロッパ及び米国の薬局方の要件に準拠している。
眼科用製剤の成分の割合は、製剤の総重量に対して表される(%w/w)。
「適量(q.s.(quantum satis)(十分な量)」は、「望ましい結果を達成するために必要なだけの成分を加える」ことを意味する。
【実施例
【0025】
この実施例は、1.0%w/wの6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル(化合物(I))を含有する本発明の眼科用製剤の調製を説明する。
リシノール酸マクロゴールグリセロール(Kolliphor EL)5.0g、ステアリン酸マクロゴール40(Myrj S40)3.0g、ポリエチレングリコール400(Kollisolv PEG 400)2.8g、塩化ベンザルコニウム0.01g、及び注射用水69.9gを秤量して調製容器に入れた。全ての成分が溶解し、得られた溶液がわずかに黄色又は無色透明に見えるまで、磁気撹拌プレートを使用して混合物を撹拌した。ホウ酸(HBO)0.19g及びリン酸水素二ナトリウム七水和物(NaHPO7HO)0.51gを加え、混合物を完全に溶解するまで撹拌した。次いで系を65℃まで加熱し、次に化合物(I)1gを加え、30分間撹拌した。次いで溶液を撹拌下で室温(RT)まで冷却した。エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物(EDTA)0.10gを加え、更に撹拌して透明な溶液を得た。次いで製剤のpHを測定し、HCl水溶液(0.5M)を加えることによって6.5~6.9に調整した。最終重量100gに達するまで残りの注射用水を加え、pHを再度測定した。次いでバルク製剤を、公称孔径0.2μmの適切なフィルターを用いて滅菌条件下で濾過した。
【実施例
【0026】
この実施例は、1.3%w/wの6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル(化合物(I))を含有する本発明の眼科用製剤の調製を説明する。
リシノール酸マクロゴールグリセロール(Kolliphor EL)7.5g、ステアリン酸マクロゴール40(Myrj S40)5.0g、ポリエチレングリコール400(Kollisolv PEG 400)2.8g、塩化ベンザルコニウム0.01g、及び注射用水66.1gを秤量して調製容器に入れた。全ての成分が溶解し、得られた溶液がわずかに黄色又は無色透明に見えるまで、磁気撹拌プレートを使用して混合物を撹拌した。ホウ酸(HBO)0.19g及びリン酸水素二ナトリウム七水和物(NaHPO・7HO)0.51gを加え、全ての成分が完全に溶解するまで混合物を撹拌した。次いで系を65℃まで加熱し、次に化合物(I)1.3gを加え、続いて更に30分間撹拌した。次いで溶液を撹拌下で室温(RT)まで冷却した。エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物0.10gを加え、完全に可溶化するまで溶液を撹拌した。得られた製剤のpHを測定し、HCl水溶液(0.5M)を加えることによって6.5~6.9に調整した。最終重量100gに達するまで残りの注射用水を加え、pHを再度測定した。最後にバルク製剤を、公称孔径0.2μmの適切なフィルターを用いて滅菌条件下で濾過した。
【実施例
【0027】
この実施例は、1.4%w/wの6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル(化合物(I))を含有する本発明の眼科用製剤の調製を説明する。
リシノール酸マクロゴールグリセロール(Kolliphor EL)7.5g、ステアリン酸マクロゴール40(Myrj S40)5.0g、ポリエチレングリコール400(Kollisolv PEG 400)4.0g、塩化ベンザルコニウム0.01g、及び注射用水65.0gを秤量して調製容器に入れた。全ての成分が溶解し、得られた溶液がわずかに黄色又は無色透明に見えるまで、磁気撹拌プレートを使用して混合物を撹拌した。ホウ酸(HBO)0.19g及びリン酸水素二ナトリウム七水和物(NaHPO・7HO)0.51gを加え、完全に溶解するまで混合物を撹拌した。次いで系を65℃まで加熱し、次に化合物(I)1.4gを加え、30分間撹拌した。次いで溶液を撹拌下で室温(RT)まで冷却した。エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物0.10gを加え、完全に可溶化するまで溶液を撹拌した。得られた製剤のpHを測定し、HCl水溶液(0.5M)を加えることによって6.5~6.9に調整した。最終重量100gに達するまで残りの注射用水を加え、pHを再度測定した。次いでバルク製剤を、公称孔径0.2μmの適切なフィルターを用いて滅菌条件下で濾過した。
【実施例
【0028】
この実施例は、1.8%w/wの6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル(化合物(I))を含有する本発明の眼科用製剤の調製を説明する。
リシノール酸マクロゴールグリセロール(Kolliphor EL)7.5g、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween 80)5.0g、ポリエチレングリコール400(Kollisolv PEG 400)1.0g、塩化ベンザルコニウム0.01g、及び注射用水67.1gを秤量して調製容器に入れた。全ての成分が溶解し、得られた溶液がわずかに黄色又は無色透明に見えるまで、磁気撹拌プレートを使用して混合物を撹拌した。ホウ酸(HBO)0.19g及びリン酸水素二ナトリウム七水和物(NaHPO・7HO)0.51gを加え、完全に溶解するまで混合物を撹拌した。次いで系を65℃まで加熱し、次に化合物(I)1.8gを加え、30分間撹拌した。次いで溶液を撹拌下で室温(RT)まで冷却した。エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物0.10gを加え、完全に可溶化するまで溶液を撹拌した。得られた製剤のpHを測定し、HCl水溶液(0.5M)を加えることによって6.5~6.9に調整した。最終重量100gに達するまで残りの注射用水を加え、pHを再度測定した。次いでバルク製剤を、公称孔径0.2μmの適切なフィルターを用いて滅菌条件下で濾過した。
【実施例
【0029】
実施例1に記載の製剤の安定性試験
実施例1の眼科用製剤を安定性分析のために25℃で保存した。37週間目までの様々な時点で試料を分析した。結果を表1に示す。
化合物(I)の量は、UV検出器を備えたHPLCで、2つの移動相の混合物(A:酢酸50%を加えてpH4.55に調整した酢酸アンモニウム10mM;B:メタノール)を用いて測定した。
【0030】
【表1】
【実施例
【0031】
実施例2に記載の製剤の安定性試験
実施例2の眼科用製剤を安定性分析のために25℃で保存した。8週間目までの様々な時点で試料を分析した。結果を表2に示す。
化合物(I)の量は、UV検出器を備えたHPLCで、2つの移動相の混合物(A:酢酸50%を加えてpH4.55に調整した酢酸アンモニウム10mM;B:メタノール)を用いて測定した。
【0032】
【表2】
【実施例
【0033】
実施例3に記載の製剤の安定性試験
実施例3の眼科用製剤を安定性分析のために25℃で保存した。8週間目までの様々な時点で試料を分析した。結果を表3に示す。
化合物(I)の量は、UV検出器を備えたHPLCで、2つの移動相の混合物(A:酢酸50%を加えてpH4.55に調整した酢酸アンモニウム10mM;B:メタノール)を用いて測定した。
【0034】
【表3】
【実施例
【0035】
忍容性試験
実施例1の眼科用製剤を、ヒト以外の霊長類、更にはニュージーランドホワイト(New Zealand White)ウサギで試験した。具体的には、実施例1の眼科用製剤又は対応する水性ビヒクル(5.0%w/w リシノール酸マクロゴールグリセロール及び3.0%w/w ステアリン酸マクロゴール40、2.8%w/w ポリエチレングリコール400、0.19%w/w ホウ酸、0.51%w/w リン酸水素二ナトリウム七水和物、0.1%w/w エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物、0.01%w/w 塩化ベンザルコニウム、HCl及び注射用水適量(100%w/wとする)、pH6.5~6.9)をヒト以外の霊長類には急性投与し、ニュージーランドホワイトウサギには1日2回、4週間目まで反復投与した。全ての試験群において、眼科用製剤の投与、更にはそれぞれのビヒクルの投与によって、目視検査によって判定される目立つ不快感の兆候は生じなかった。
【実施例
【0036】
この実施例は、1.7%w/wの6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル(化合物(I))を含有する本発明の眼科用製剤の調製を説明する。
リシノール酸マクロゴールグリセロール(Kolliphor EL)1.5g、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween 80)1.0g、ポリエチレングリコール400(Kollisolv PEG E400)200mg、塩化ベンザルコニウム2mg及び注射用水13.5gを秤量して調製容器に入れた。わずかに黄色又は無色透明の溶液が得られるまで、混合物を磁気撹拌プレートを使用して撹拌した。ホウ酸(HBO)38mgを加え、完全に溶解するまで混合物を撹拌した。混合物を65℃まで加熱し、次いで化合物(I)340mgを加え、混合物を30分間撹拌した。溶液を撹拌下で室温(RT)まで冷却し、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物20mgを加え、完全に可溶化するまで混合物を撹拌した。製剤のpHは5.6であった。注射用水を加えて最終重量を20gに調整した。得られた混合物は溶液であった。次いでバルク溶液を、公称孔径0.2μmの適切なフィルターを用いて滅菌条件下で濾過した。
【実施例
【0037】
この実施例は、1.7%w/wの6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル(化合物(I))を含有する本発明の眼科用製剤の調製を説明する。
リシノール酸マクロゴールグリセロール(Kolliphor EL)1.5g、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween 80)1.0g、ポリエチレングリコール400(Kollisolv PEG E400)200mg、塩化ベンザルコニウム2mg、注射用水13.5gを秤量して調製容器に入れた。わずかに黄色又は無色透明の溶液が得られるまで、混合物を磁気撹拌プレートを使用して撹拌した。クエン酸一水和物(C・HO、22mg)及びクエン酸三ナトリウム二水和物(CNa・2HO、146mg)を加え、全ての成分が溶解するまで混合物を撹拌した。混合物を65℃まで加熱し、次いで化合物(I)340mgを加え、続いて30分間連続撹拌した。次いで溶液を撹拌下で室温(RT)まで冷却した。エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物20mgを加え、溶液を撹拌して透明な溶液を得た。製剤のpHは5.8であった。注射用水を加えて最終重量を20gに調整した。得られた混合物は溶液であった。得られたバルク溶液を最終的に、公称孔径0.2μmの適切なフィルターを用いて無菌条件下で濾過した。
【実施例
【0038】
この実施例は、1.7%w/wの6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル(化合物(I))を含有する本発明の眼科用製剤の調製を説明する。
リシノール酸マクロゴールグリセロール(Kolliphor EL)1.5g、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween 80)1.0g、ポリエチレングリコール400(Kollisolv PEG E400)200mg、塩化ベンザルコニウム2mg及び注射用水13.5gを秤量して調製容器に入れた。混合物を磁気撹拌プレートを使用して撹拌し、わずかに黄色又は無色透明の溶液を得た。ホウ酸(HBO)38mg及びクエン酸三ナトリウム二水和物(CNa・2HO)0.6mgを加え、混合物を完全に溶解するまで撹拌した。混合物を65℃まで加熱し、化合物(I)340mgを加え、得られた混合物を更に30分間撹拌した。溶液を撹拌下で室温(RT)まで冷却した。エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物20mgを加え、全ての成分が完全に溶解するまで混合物を撹拌した。pHは5.6であった。注射用水を加えて最終重量を20gに調整した。得られた混合物は溶液であった。得られたバルク溶液を後で、公称孔径0.2μmの適切なフィルターを用いて滅菌条件下で濾過した。
【実施例
【0039】
この実施例は、1.7%w/wの6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル(化合物(I))を含有する本発明の眼科用製剤の調製を説明する。
リシノール酸マクロゴールグリセロール(Kolliphor EL)750mg、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween 80)500mg、ポリエチレングリコール400(Kollisolv PEG E 400)100mg、塩化ベンザルコニウム1mg、及び注射用水6.7gを秤量して調製容器に入れた。わずかに黄色又は無色透明の溶液が得られるまで、混合物を磁気撹拌プレートを使用して撹拌した。クエン酸一水和物(C・HO)11mg及びクエン酸三ナトリウム二水和物(CNa・2HO)73mgを加え、混合物を完全に溶解するまで撹拌した。0.5M HClを滴下することによりpHを5.0に調整した。次いで系を65℃まで加熱し、化合物(I)170mgを加え、混合物を30分間撹拌した。溶液を撹拌下で室温(RT)まで冷却した。エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物10mgを加え、混合物を完全に可溶化するまで撹拌した。注射用水を加えて最終重量を10gに調整した。得られた混合物は溶液であった。次いでバルク溶液を、公称孔径0.2μmの適切なフィルターを用いて滅菌条件下で濾過した。
【実施例
【0040】
この実施例は、1.7%w/wの6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル(化合物(I))を含有する本発明の眼科用製剤の調製を説明する。
リシノール酸マクロゴールグリセロール(Kolliphor EL)750mg、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween 80)500mg、ポリエチレングリコール400(Kollisolv PEG E400)100mg、塩化ベンザルコニウム1mg及び注射用水6.7gを秤量して調製容器に入れた。わずかに黄色又は無色透明の溶液が得られるまで、混合物を磁気撹拌プレートを使用して撹拌した。クエン酸一水和物(C・HO)11mg及びクエン酸三ナトリウム二水和物(CNa・2HO)73mgを加え、混合物を完全に溶解するまで撹拌した。0.5M HClを滴下することによってpHを4.5に調整した。混合物を65℃まで加熱し、化合物(I)170mgを加え、混合物を30分間撹拌した。溶液を撹拌下で室温(RT)まで冷却した。エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物10mgを加え、混合物を完全に可溶化するまで撹拌した。注射用水を加えて最終重量を10gに調整した。得られた混合物は溶液であった。次いでバルク溶液を、公称孔径0.2μmの適切なフィルターを用いて滅菌条件下で濾過した。
【実施例
【0041】
実施例4に記載の製剤の安定性試験
実施例4の眼科用製剤を安定性分析のために25℃で保存した。t0及び2週間目で試料を分析した。結果を表4に示す。
化合物(I)の量は、UV検出器を備えたHPLCで、2つの移動相の混合物(A:酢酸50%を加えてpH4.55に調整した酢酸アンモニウム10mM;B:メタノール)を用いて測定した。
【0042】
【表4】
【実施例
【0043】
実施例9に記載の製剤の安定性試験
実施例9の眼科用製剤を安定性分析のために25℃で保存した。14週間目までの様々な時点で試料を分析した。結果を表5に示す。
化合物(I)の量は、UV検出器を備えたHPLCで、2つの移動相の混合物(A:酢酸50%を加えてpH4.55に調整した酢酸アンモニウム10mM;B:メタノール)を用いて測定した。
【0044】
【表5】
【実施例
【0045】
実施例10に記載の製剤の安定性試験
実施例10の眼科用製剤を安定性分析のために25℃で保存した。8週間目までの様々な時点で試料を分析した。結果を表6に示す。
化合物(I)の量は、UV検出器を備えたHPLCで、2つの移動相の混合物(A:酢酸50%を加えてpH4.55に調整した酢酸アンモニウム10mM;B:メタノール)を用いて測定した。
【0046】
【表6】
【実施例
【0047】
実施例11に記載の製剤の安定性試験
実施例11の眼科用製剤を安定性分析のために25℃で保存した。8週間目までの様々な時点で試料を分析した。結果を表7に示す。
化合物(I)の量は、UV検出器を備えたHPLCで、2つの移動相の混合物(A:酢酸50%を加えてpH4.55に調整した酢酸アンモニウム10mM;B:メタノール)を用いて測定した。
【0048】
【表7】
【実施例
【0049】
実施例12に記載の製剤の安定性試験
実施例12の眼科用製剤を安定性分析のために25℃で保存した。15週間目までの様々な時点で試料を分析した。結果を表8に示す。
化合物(I)の量は、UV検出器を備えたHPLCで、2つの移動相の混合物(A:酢酸50%を加えてpH4.55に調整した酢酸アンモニウム10mM;B:メタノール)を用いて測定した。
【0050】
【表8】
【実施例
【0051】
実施例13に記載の製剤の安定性試験
実施例13の眼科用製剤を安定性分析のために25℃で保存した。15週間目までの様々な時点で試料を分析した。結果を表9に示す。
化合物(I)の量は、UV検出器を備えたHPLCで、2つの移動相の混合物(A:酢酸50%を加えてpH4.55に調整した酢酸アンモニウム10mM;B:メタノール)を用いて測定した。
【0052】
【表9】
【0053】
表1~9に報告された安定性データは、本発明の製剤が室温条件で化学的及び物理的に安定であり、したがって冷蔵保管条件が必要なく、それによって容易な薬品の供給網を助長し、薬品保管の推奨事項の患者コンプライアンスを向上させることを示している。
【0054】
比較実施例
以下の実施例は、6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル(化合物(I))を含有する眼科用製剤の調製を開示し、比較実施例20~24の眼科用製剤のビヒクルは、本発明の製剤と同じ「界面活性剤成分」及び共溶媒を含有するが、「界面活性剤成分」及び共溶媒の量は本発明の量より少ない。比較実施例25及び26の眼科用製剤は、本発明の範囲内の濃度でのみ界面活性剤を含有するが、共溶媒の濃度は本発明の製剤の共溶媒の濃度より高い。比較実施例の製剤は、1%w/wの化合物(I)(実施例20~23及び25)又は1.5%w/wの化合物(I)(実施例24及び25)を加えることによって調製して、調製の終了時に製剤の肉眼的外観及び製剤のビヒクル中に溶解した化合物(I)の量を評価した。
【実施例
【0055】
リシノール酸マクロゴールグリセロール(Kolliphor EL)350g、ステアリン酸マクロゴール40(Myrj S40)50mg、ポリエチレングリコール400(Kollisolv PEG E 400)50mg、塩化ベンザルコニウム1mg及び注射用水9.3gを秤量して調製容器に入れた。わずかに黄色又は無色の溶液が得られるまで、磁気撹拌プレートを使用して混合物を撹拌した。ホウ酸(HBO)19mg及びリン酸水素二ナトリウム七水和物(NaHPO・7HO)51mgを加え、混合物を完全に溶解するまで撹拌した。溶液を65℃まで加熱し、次いで化合物(I)100mgを加え、混合物を30分間撹拌した。混合物を撹拌下で室温(RT)まで冷却した。エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物(EDTA)10mgを加え、混合物を10分間撹拌した。注射用水を加えて最終重量を10gに調整した。pHは7.6であった。
得られた混合物は懸濁液であった。懸濁液を遠心分離し、上清溶液(ビヒクル)中の化合物(I)の量を、検量線に対してHPLCにより定量した。製剤をRTで保存し、調製の31週間後に懸濁液の試料を遠心分離し、上清溶液中の化合物(I)の量を、検量線に対してHPLCにより定量した。2つの分析の結果を以下の表(表10)に示す。
【0056】
【表10】
【実施例
【0057】
リシノール酸マクロゴールグリセロール(Kolliphor EL)350mg、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween 80)50mg、ポリエチレングリコール400(Kollisolv PEG E400)50mg、塩化ベンザルコニウム1mg及び注射用水9.3gを秤量して調製容器に入れた。わずかに黄色又は無色の溶液が得られるまで、磁気撹拌プレートを使用して混合物を撹拌した。ホウ酸(HBO)19mg及びリン酸水素二ナトリウム七水和物(NaHPO・7HO)51mgを加え、混合物を完全に溶解するまで撹拌した。溶液を65℃まで加熱し、次いで化合物(I)100mgを加え、混合物を30分間撹拌した。混合物を撹拌下で室温(RT)まで冷却した。エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物(EDTA)10mgを加え、混合物を10分間撹拌した。注射用水を加えて最終重量を10gに調整した。pHは7.6であった。
得られた混合物は懸濁液であった。懸濁液を遠心分離し、上清溶液(ビヒクル)中の化合物(I)の量を、検量線に対してHPLCにより定量した。製剤をRTで保存し、調製の30週間後に懸濁液の試料を遠心分離し、上清溶液中の化合物(I)の量を、検量線に対してHPLCにより定量した。2つの分析の結果を以下の表(表11)に示す。
【0058】
【表11】
【実施例
【0059】
リシノール酸マクロゴールグリセロール(Kolliphor EL)350mg、ステアリン酸マクロゴール40(Myrj S40)50mg、ポリエチレングリコール400(Kollisolv PEG E400)50mg、塩化ベンザルコニウム1mg及び注射用水9gを秤量して調製容器に入れた。わずかに黄色又は無色の溶液が得られるまで、磁気撹拌プレートを使用して混合物を撹拌した。ホウ酸(HBO)19mg及びリン酸水素二ナトリウム七水和物(NaHPO・7HO)51mgを加え、混合物を完全に溶解するまで撹拌した。0.5M HClを加えることによってpHを3.1~4.2に調整した。溶液を65℃まで加熱し、次いで化合物(I)100mgを加え、混合物を30分間撹拌した。混合物を撹拌下で室温(RT)まで冷却した。エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物(EDTA)10mgを加え、混合物を1時間撹拌した。注射用水を加えて最終重量を10gに調整した。pHは4.2であった。
得られた混合物は懸濁液であった。懸濁液を遠心分離し、上清溶液(ビヒクル)中の化合物(I)の量を、検量線に対してHPLCにより定量した。製剤をRTで保存し、調製の27週間後、懸濁液の試料を遠心分離し、上清溶液中の化合物(I)の量を、検量線に対してHPLCにより定量した。2つの分析の結果を以下の表(表12)に示す。
【0060】
【表12】
【実施例
【0061】
リシノール酸マクロゴールグリセロール(Kolliphor EL)350mg、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween 80)50mg、ポリエチレングリコール400(Kollisolv PEG E 400)50mg、塩化ベンザルコニウム1mg及び注射用水9gを秤量して調製容器に入れた。わずかに黄色又は無色の溶液が得られるまで、磁気撹拌プレートを使用して混合物を撹拌した。ホウ酸(HBO)19mg及びリン酸水素二ナトリウム七水和物(NaHPO・7HO)51mgを加え、混合物を完全に溶解するまで撹拌した。0.5M HClを滴下することによってpHを3.1~4.2に調整した。溶液を65℃まで加熱し、次いで化合物(I)100mgを加え、混合物を30分間撹拌した。混合物を撹拌下で室温(RT)まで冷却した。エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物(EDTA)10mgを加え、混合物を1時間撹拌した。注射用水を加えて最終重量を10gに調整した。pHは4.2であった。
得られた混合物は懸濁液であった。懸濁液を遠心分離し、上清溶液(ビヒクル)中の化合物(I)の量を、検量線に対してHPLCにより定量した。製剤をRTで保存し、調製の27週間後、懸濁液の試料を遠心分離し、上清溶液中の化合物(I)の量を検量線に対してHPLCにより定量した。2つの分析の結果を以下の表(表13)に示す。
【0062】
【表13】
【実施例
【0063】
リシノール酸マクロゴールグリセロール(Kolliphor EL)350mg、ステアリン酸マクロゴール40(Myrj S40)50mg、ポリエチレングリコール400(Kollisolv PEG E 400)550mg、塩化ベンザルコニウム1mg及び注射用水8gを秤量して調製容器に入れた。わずかに黄色又は無色の溶液が得られるまで、磁気撹拌プレートを使用して混合物を撹拌した。ホウ酸(HBO)19mg及びリン酸水素二ナトリウム七水和物(NaHPO・7HO)51mgを加え、混合物を完全に溶解するまで撹拌した。溶液を65℃まで加熱し、次いで化合物(I)150mgを加え、混合物を30分間撹拌した。混合物を撹拌下で室温(RT)まで冷却し、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物(EDTA)10mgを加え、混合物を20分間撹拌した。注射用水を加えて最終重量を10gに調整した。pHは7.6であった。
得られた混合物は懸濁液であった。懸濁液を遠心分離し、上清溶液(ビヒクル)中の化合物(I)の量を、検量線に対してHPLCにより定量した。製剤をRTで保存し、調製の2週間後、アリコートを採取し、遠心分離し、上清溶液中の化合物(I)の量を検量線に対してHPLCにより定量した。2つの独立した分析の結果を以下の表(表14)に示す。
【0064】
【表14】
【実施例
【0065】
ステアリン酸マクロゴール40(Myrj S40)650mg、ポリエチレングリコール400(Kollisolv PEG E400)50mg、塩化ベンザルコニウム1mg及び注射用水9.1gを秤量して調製容器に入れた。わずかに黄色又は無色の溶液が得られるまで、磁気撹拌プレートを使用して混合物を撹拌した。ホウ酸(HBO)19mg及びリン酸水素二ナトリウム七水和物(NaHPO・7HO)51mgを加え、混合物を完全に溶解するまで撹拌した。溶液を65℃まで加熱し、次いで化合物(I)100mgを加え、混合物を更に30分間撹拌した。混合物を撹拌下で室温(RT)まで冷却し、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物(EDTA)10mgを更に10分間撹拌しながら加えた。注射用水を加えて最終重量を10gに調整した。pHは7.6であった。
得られた混合物は懸濁液であった。懸濁液を遠心分離し、上清溶液(ビヒクル)中の化合物(I)の量を、検量線に対してHPLCにより定量した。製剤をRTで保存し、調製の30週間後にアリコートを採取し、遠心分離し、化合物(I)の量を検量線に対してHPLCにより定量した。2つの独立した分析の結果を以下の表(表15)に示す。
【0066】
【表15】
【実施例
【0067】
ステアリン酸マクロゴール40(Myrj S40)650mg、ポリエチレングリコール400(Kollisolv PEG E400)550mg、塩化ベンザルコニウム1mg及び注射用水8.5gを秤量して調製容器に入れた。わずかに黄色又は無色の溶液が得られるまで、磁気撹拌プレートを使用して混合物を撹拌した。ホウ酸(HBO)19mg及びリン酸水素二ナトリウム七水和物(NaHPO・7HO)51mgを加え、混合物を完全に溶解するまで撹拌した。溶液を65℃まで加熱し、次いで化合物(I)150mgを加え、混合物を30分間撹拌した。混合物を撹拌下で室温(RT)まで冷却した。エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物(EDTA)10mgを加え、混合物を20分間撹拌した。注射用水を加えて最終重量を10gに調整した。pHは7.6であった。
得られた混合物は懸濁液であった。懸濁液を遠心分離し、上清溶液(ビヒクル)中の化合物(I)の量を、検量線に対してHPLCにより定量した。製剤をRTで保存し、調製の2週間後、懸濁液の試料を遠心分離し、上清溶液中の化合物(I)の量を検量線に対してHPLCにより定量した。2つの分析の結果を以下の表(表16)に示す。
【0068】
【表16】
【0069】
コメント
比較実施例の製剤は、本発明の製剤と同じ界面活性剤成分及び共溶媒を含有するが、より低い濃度で含有する(実施例20~24を参照)。あるいは、他の製剤は、本発明の製剤中よりも高濃度で界面活性剤及び共溶媒を含有する(実施例25及び26)。
比較実施例の製剤は全て懸濁液であった。
比較実施例の製剤の分析の結果、実施例20、21、24~26の製剤の上清溶液中の化合物(I)の濃度は0.8%未満であることが示された。より低いpH(pH4.2)では、化合物(I)の濃度は0.8%まで上昇したが、pHは活性成分の分解に影響を及ぼし、即ち、27週間の保存後、純度の約8~10%低下が観察された(実施例22及び23を参照のこと)。
1%w/wの本発明の化合物(I)を含有する本発明の眼科用製剤に関する、比較実施例20~26及び実施例1の安定性分析の要約を表17に示す。
【0070】
【表17】
【国際調査報告】