(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】スクロースなし天然シロップ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20241031BHJP
A23L 29/30 20160101ALI20241031BHJP
A23L 29/231 20160101ALI20241031BHJP
A23L 29/269 20160101ALI20241031BHJP
A23L 27/30 20160101ALI20241031BHJP
【FI】
A23L27/00 E
A23L29/30
A23L29/231
A23L29/269
A23L27/00 Z
A23L27/30 A
A23L27/00 101A
A23L27/30 C
A23L27/30 Z
A23L27/00 101Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532515
(86)(22)【出願日】2022-11-30
(85)【翻訳文提出日】2024-06-13
(86)【国際出願番号】 KR2022019172
(87)【国際公開番号】W WO2023101397
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0168974
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513178894
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダン コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】チョン, ジウ
(72)【発明者】
【氏名】コン, ムン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】キム, ソニ
(72)【発明者】
【氏名】リ, ミンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム, チョル ジン
【テーマコード(参考)】
4B047
【Fターム(参考)】
4B047LB08
4B047LB09
4B047LE01
4B047LG05
4B047LG17
4B047LG25
4B047LG26
4B047LG32
4B047LG37
4B047LG38
4B047LP04
4B047LP05
4B047LP06
(57)【要約】
本出願は、スクロースなし天然シロップ、前記シロップを含む食品組成物、前記シロップの製造方法、及び天然香料の香味持続性を改善する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖アルコール、天然高甘味料、天然安定剤、天然抗菌剤及び天然香料を含むスクロースなし天然シロップであって、
前記糖アルコールは、シロップ全体を100重量部として10~30重量部含まれるものであり、
前記天然高甘味料は、シロップ全体を100重量部として0.35~0.55重量部含まれるものであり、
前記糖アルコールと前記天然高甘味料は、10:1~100:1の混合比で含まれるものであり、
前記天然安定剤は、ペクチン及びキサンタンガムを含むものであり、
前記天然安定剤は、シロップ全体を100重量部として0.3~0.5重量部含まれるものであり、
前記ペクチンと前記キサンタンガムは、4:1~2:1の混合比で含まれるものであり、
前記天然抗菌剤は、カンキツ抽出物、エルオーS複合抽出物及び緑茶抽出物からなる群から選択される少なくとも1種である、シロップ。
【請求項2】
前記糖アルコールは、エリトリトール、タガトース、キシロース、アラビノース、リボース、キシリトール、ラクチトール、マルチトール及びソルビトールからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のシロップ。
【請求項3】
前記天然高甘味料は、ステビオール配糖体、スクラロース、アスパルテーム、ラカンカ抽出物、カンゾウ抽出物及びソーマチンからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のシロップ。
【請求項4】
前記シロップは、粘度(CP)が85~90CPである、請求項1に記載のシロップ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のシロップを含む食品組成物。
【請求項6】
糖アルコール、天然高甘味料、天然安定剤及び天然抗菌剤を水に溶解し、その後攪拌して原料組成物を作製するステップと、
前記原料組成物を70℃~80℃の温度範囲で10分~15分間前処理殺菌するステップと、
前記前処理殺菌した原料組成物を25℃~50℃の温度に冷却するステップと、
前記冷却したシロップ組成物に天然香料を混合してシロップ組成物を作製するステップと、
前記シロップ組成物を高温短時間殺菌法(HTST)により96℃~99℃の温度範囲で30秒~40秒間殺菌するステップとを含む、スクロースなし天然シロップの製造方法。
【請求項7】
前記糖アルコールは、シロップ全体を100重量部として10~30重量部含まれるものであり、
前記天然高甘味料は、シロップ全体を100重量部として0.35~0.55重量部含まれるものであり、
前記糖アルコールと前記天然高甘味料は、10:1~100:1の混合比で含まれるものであり、
前記天然安定剤は、ペクチン及びキサンタンガムを含むものであり、
前記天然安定剤は、シロップ全体を100重量部として0.3~0.5重量部含まれるものであり、
前記ペクチンと前記キサンタンガムは、4:1~2:1の混合比で含まれるものであり、
前記天然抗菌剤は、カンキツ抽出物、エルオーS複合抽出物及び緑茶抽出物からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の方法で製造したスクロースなし天然シロップ。
【請求項9】
前記方法を用いて製造したシロップは、天然香料の揮発量が減少したものである、請求項8に記載のシロップ。
【請求項10】
糖アルコール、天然高甘味料、天然安定剤及び天然抗菌剤を水に溶解し、その後攪拌して原料組成物を作製するステップと、
前記原料組成物を70℃~80℃の温度範囲で10分~15分間前処理殺菌するステップと、
前記前処理殺菌した原料組成物を25℃~50℃の温度に冷却するステップと、
前記冷却したシロップ組成物に天然香料を混合してシロップ組成物を作製するステップと、
前記シロップ組成物を高温短時間殺菌法(HTST)により96℃~99℃の温度範囲で30秒~40秒間殺菌するステップとを含む、天然香料の香味持続性を改善する方法。
【請求項11】
前記方法は、天然香料の揮発量が減少することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、スクロースなし天然シロップ、前記シロップを含む食品組成物、前記シロップの製造方法、及び天然香料の香味持続性を改善する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シロップは、通常スクロースなどの糖液をベースとし、種類によっては味や香りを出すために果物濃縮液、香料を添加することもあり、酸味を調節するためのクエン酸などの酸度調節剤、色を付けるための色素を添加して製造する。ここで用いる香料は、一般に、化合物を組み合わせて作製した合成香料と、自然状態の原物から熱水とアルコールで抽出した抽出物から構成される天然香料に分けられる。
【0003】
一方、シロップはスクロースを主原料とするので最も優れた甘味性を有するが、スクロースは1g当たり4kcalの高カロリーである。低カロリー、スクロースゼロなどの多くの甘味剤がスクロースを代替するために適用されているが、スクロースとは異なる甘味プロファイル、口当たり、スクロースと異なる甘味持続性、後味、苦味、渋味を呈するという問題や、合成添加物が大量に含まれるという問題がある。
【0004】
よって、スクロースを含有するシロップに類似した甘味、口当たり、甘味持続性などを示す、低カロリー又はスクロースゼロ天然甘味剤を含有するシロップが求められている現状である。
【0005】
しかし、スクロースなどの糖類を入れずに糖アルコールと天然高甘味料で甘味を出すと、従来のスクロースの含有量より固形分の含有量が少ないので、スクロースなどの糖類が入ったシロップより物性が水っぽく、ポンプを用いてシロップをポンピングしたときに液はねなどの現象が発生し、物性安定性が低下するという問題がある。
【0006】
また、天然香料は、合成香料に比べて人為的でない自然な味と香りが得られるという利点があるので広く用いられるが、合成香料に比べて熱に弱く、微生物安全性を確保するために高い温度に曝露すると又は長期間曝露すると香りが揮発して香りの強度が低下するという欠点がある。
【0007】
さらに、天然添加物(天然高甘味料、天然香料、天然色素など)から構成されるシロップにおいては、品質安定性と微生物安全性を確保するために保存料を添加するが、ほとんどがソルビン酸カリウムなどの合成保存料を用いており、天然添加物/原料を好む消費者の需要には合わないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2016-0007709号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】C. K. Dodt. 1996. The Essential OilsBook. Storey Books.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、カロリーを大幅に低減しながらも従来のシロップ製品の味質、物的安定性及び微生物安全性を維持し、香味の発現性、持続性に優れ、甘味、後味などの嗜好度が高いスクロースなし天然シロップ、前記シロップを含む食品組成物、前記シロップの製造方法、並びに天然香料の香味持続性を改善する方法を開発し、本出願を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本出願は、糖アルコール、天然高甘味料、天然安定剤、天然抗菌剤及び天然香料を含むスクロースなし天然シロップを提供することを目的とする。
【0012】
また、本出願は、前記スクロースなし天然シロップを含む食品組成物を提供することを目的とする。
【0013】
さらに、本出願は、前記スクロースなし天然シロップの製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
さらに、本出願は、天然香料の香味持続性を改善する方法を提供することを目的とする。
【発明の効果】
【0015】
本出願のシロップは、スクロースを代替して糖アルコール、天然高甘味料、天然安定剤、天然抗菌剤及び天然香料を含むので、カロリーを大幅に低減しながらも従来のシロップ製品の味質、物的安定性及び微生物安全性を維持し、香味の発現性、持続性に優れ、甘味、後味などの嗜好度が高いスクロースなし天然シロップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1a】11種の天然抗菌剤の微生物安全性評価結果を示す図である。
【
図1b】11種の天然抗菌剤の微生物安全性評価結果を示す図である。
【
図2】本出願のスクロースなし天然シロップの製造工程の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、これらを具体的に説明する。なお、本出願で開示される各説明及び実施形態はそれぞれ他の説明及び実施形態にも適用される。すなわち、本出願で開示される様々な要素のあらゆる組み合わせが本出願に含まれる。また、以下の具体的な記述に本出願が限定されるものではない。さらに、本明細書全体にわたって多くの論文及び特許文献が参照されており、その引用が示されている。引用された論文及び特許文献の開示内容はその全体が本明細書に参照として組み込まれており、それにより本出願の属する技術分野の水準及び本出願の内容がより明確に説明される。
【0018】
本出願の一態様は、糖アルコール、天然高甘味料、天然安定剤、天然抗菌剤及び天然香料を含むスクロースなし天然シロップを提供する。
【0019】
本出願のシロップは、スクロースを代替して糖アルコール、天然高甘味料、天然安定剤、天然抗菌剤及び天然香料を含むので、カロリーを大幅に低減しながらも従来のシロップ製品の味質、物的安定性及び微生物安全性を維持し、香味の発現性、持続性に優れ、甘味、後味などの嗜好度が高いスクロースなし天然シロップを提供することができる。
【0020】
具体的には、前記糖アルコールは、シロップ全体を100重量部として10~30重量部含まれるものであるが、これに限定されるものではない。
【0021】
前記糖アルコール含有量が上記範囲で含まれると、スクロースに類似したボディ感と甘味持続性を示す。例えば、30重量部より多く添加する場合のように、上記範囲を逸脱すると、溶液中で過飽和状態となり、保管中に結晶が析出するという問題がある。
【0022】
また、前記糖アルコールは、エリトリトール、タガトース、キシロース、アラビノース、リボース、キシリトール、ラクチトール、マルチトール及びソルビトールからなる群から選択される少なくとも1種のもの、具体的にはエリトリトールであるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
前記エリトリトールは、スクロースに最も類似した甘味プロファイルを示すことが知られている糖アルコールであり、0~0.2kcal/gと非常にカロリーが低い物質である。
【0024】
具体的には、前記天然高甘味料は、シロップ全体を100重量部として0.35~0.55重量部含まれるものであるが、これに限定されるものではない。
【0025】
天然高甘味料が上記範囲で含まれると、スクロースに最も類似した甘味強度と甘味持続性を示す。上記範囲を逸脱すると、異味/異臭が発生し、後味に残る苦味がスクロースとは異なる甘味であると認知されるので、官能的な面で適さないという問題がある。
【0026】
また、前記天然高甘味料は、ステビオール配糖体、スクラロース、アスパルテーム、ラカンカ抽出物、カンゾウ抽出物及びソーマチンからなる群から選択される少なくとも1種のもの、具体的にはステビオール配糖体であるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
より具体的には、前記ステビオール配糖体は、ステビオシド(stevioside)、レバウジオシドA、レバウジオシドB、レバウジオシドC、レバウジオシドD、レバウジオシドE、ルブソシド、ズルコシドA、ステビオサイド又はそれらの混合物であるが、上記例に限定されるものではなく、さらに具体的には、レバウジオシドAである。
【0028】
本出願における「レバウジオシドA(Rebaudioside A)」は、「レバテン」と混用され、前記レバウジオシドAは、スクロースに最も類似した甘味質及び甘味持続性を示し、前記エリトリトールと混合すると後味に苦味が残らないので甘味持続性が向上する。具体的には、前記糖アルコールと前記天然高甘味料は、10:1~100:1、具体的には15:1~90:1、より具体的には18:1~86:1の混合比で含まれるものであるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
前記糖アルコールと天然高甘味料が前記混合比で含まれると、スクロースに最も類似した甘味強度と甘味持続性を示す。上記範囲を逸脱すると、異味/異臭が発生し、後味に残る苦味がスクロースとは異なる甘味であると認知されるので、官能的な面で適さないという問題がある。
【0030】
前記天然高甘味料、具体的にはレバウジオシドAは、それ自体に苦味があることが知られている。よって、前記糖アルコール、具体的にはエリトリトールを配合することにより、天然高甘味料自体の苦味を減らし、甘味持続性を向上させ、嗜好度を向上させることができる。よって、カロリーを大幅に低減しながらも従来のシロップ製品の味質、口当たり及び物的安定性を維持するスクロースなし天然シロップを提供することができる。
【0031】
具体的には、前記天然安定剤は、ペクチン及びキサンタンガムを含むものであり、シロップ全体を100重量部として0.3~0.5重量部含まれるものであるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
前記天然安定剤が上記範囲で含まれると、スクロースを溶解したものに類似した物性を示す。シロップにおいては、ポンプを用いることが多いが、当該範囲より安定剤の含有量を少なくして用いると、物性が水っぽくなってポンプ使用時に液はね現象が発生し、当該範囲より安定剤の含有量を多くして用いると、物性が固くなってポンプの使用が難しくなり、流動性が低下するという問題がある。
【0033】
より具体的には、前記ペクチンと前記キサンタンガムは、4:1~2:1、例えば3:1の混合比で含まれるものであるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
スクロースなどの糖類を入れずに糖アルコールと天然高甘味料で甘味を出すと、従来のスクロースの含有量より固形分の含有量が少ないので、スクロースなどの糖類が入ったシロップより物性が水っぽく、ポンプを用いてシロップをポンピングしたときに液はねなどの現象が発生し、物性安定性が低下するという問題がある。
【0035】
これに関して、本出願の一実施例においては、前記天然安定剤としてペクチン又はキサンタンガムを単独で用いると、十分な粘度が得られないことが確認された。また、他の組み合わせ(キサンタンガム,ローカストビーンガム)を用いると、異味/異臭が発生し、十分な粘度が得られないことが確認された。前記ペクチンと前記キサンタンガムが上記混合比で含まれると、シロップの粘度(CP)が85~90CPを維持し、従来のシロップ製品の物性安定性を維持することが確認された。
【0036】
一方、天然添加物(天然高甘味料、天然香料、天然色素など)から構成されるシロップにおいては、品質安定性と微生物安全性を確保するために保存料を添加するが、ほとんどがソルビン酸カリウムなどの合成保存料を用いており、天然添加物/原料を好む消費者の需要には合わないという問題がある。
【0037】
本出願のシロップは、天然抗菌剤を含むので、天然原料のみを用いたシロップにより、消費者の需要に合った製品を提供することができる。
【0038】
具体的には、前記天然抗菌剤は、カンキツ抽出物、エルオーS複合抽出物及び緑茶抽出物からなる群から選択される少なくとも1種のもの、具体的にはカンキツ抽出物である。
【0039】
カンキツ抽出物は、リモネン(d-limonene)化合物などを含んでおり、爽快な香りと共に抗菌効果が得られ、製品に対する消費者の嗜好性を向上させる。それだけでなく、カンキツ抽出物に含まれる残余のポリフェノール化合物、精油成分、エステル成分、カロテノイド、フラボノイド、各種ビタミンなどにより生理機能活性効果が得られる。また、カンキツ抽出物は、精油成分などによる残留活性が強いので、抗菌持続性を一層向上させる。前記カンキツ抽出物は、グリセリン45%と混合して用いるが、これに限定されるものではない。
【0040】
前記エルオーS複合抽出物とは、カテキン(茶)、クエン酸、ビタミンB1ラウリル硫酸塩、カルシウム及び精製水を含む抽出物を意味する。
【0041】
前記緑茶抽出物は、公知又は市販の緑茶抽出物が全て含まれるものであり、作製して用いることもでき、その作製方法に大きな影響を受けないので、特にその抽出物作製方法を制限する必要はない。
【0042】
前記天然抗菌剤は、シロップ全体を100重量部として0.01~0.04重量部含まれるものであるが、これに限定されるものではない。
【0043】
前記天然抗菌剤が0.01重量部未満で含まれると、抗菌活性が発現せず、0.04重量部より多く含まれると、異味/異臭が発生するという官能的な問題がある。
【0044】
上記範囲内であれば、前記天然抗菌剤は、天然香料と混合すると形成される揮発性の香りが減少し、爽快な香りが得られるという効果にさらに優れ、同時に抗菌活性をさらに向上させる。
【0045】
一方、香りを発する物質から構成される香料は、大きく天然香料と合成香料に分けられ、天然香料は動物、植物、微生物から様々な方法により得られ、合成香料は有機合成により得られる。天然香料のうち、動物素材の香料としては、主にクジラから得られるアンバーグリス、ジャコウネコから得られるシベット、ジャコウジカから得られるムスコン、ビーバーから得られるカストリウムが挙げられ、植物素材の香料としては、様々な香りを有する植物から得られるものが挙げられ、周知のものでは、ベルガモット、セージ、ユーカリ、ジャスミン、ジュニパー、ラベンダー、オレンジ、パチューリ、ペパーミント、ローズ、サンダルウッド、バニラ、イランイラン、ヒソップ、カモミール、タイム、レッドグレープフルーツ、レモン、シトラスなどが挙げられる(非特許文献1)。
【0046】
具体的には、本出願のシロップにおける前記天然香料としては、シトラス系、例えばオレンジ、レモン、ライムなどを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
本出願の他の態様は、前記スクロースなし天然シロップを含む食品組成物を提供する。
【0048】
前記スクロースなし天然シロップについては前述した通りである。
【0049】
本出願のシロップを食品組成物に用いる場合は、前記シロップをそのまま添加してもよく、他の食品組成物又は成分と共に用いてもよく、通常の方法で適宜用いられる。有効成分の混合量は、食品の味と香り、使用目的、健康などを考慮して適宜決定される。本出願の食品組成物の例としては、各種ソース、ケチャップ、ドレッシング、清涼飲料水、茶、ドリンク剤、アルコール飲料、ビタミン複合体、スープ、乳製品、キャンディー、チョコレートなどが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、シロップを含んで食品を製造することのできる組成物であれば、いかなるものでも自由に用いることができる。
【0050】
本出願のさらに他の態様は、前記スクロースなし天然シロップの製造方法を提供する。
【0051】
前記スクロースなし天然シロップについては前述した通りである。
【0052】
具体的には、糖アルコール、天然高甘味料、天然安定剤及び天然抗菌剤を水に溶解し、その後攪拌して原料組成物を作製するステップと、前記原料組成物を70℃~80℃の温度範囲で10分~15分間前処理殺菌するステップと、前記前処理殺菌した原料組成物を25℃~50℃の温度に冷却するステップと、前記冷却したシロップ組成物に天然香料を混合してシロップ組成物を作製するステップと、前記シロップ組成物を高温短時間殺菌法(HTST)により96℃~99℃の温度範囲で30秒~40秒間殺菌するステップとを含む、スクロースなし天然シロップの製造方法を提供する。
【0053】
以下、具体的に本出願のスクロースなし天然シロップの製造方法について詳細に説明する。
【0054】
まず、糖アルコール、天然高甘味料、天然安定剤及び天然抗菌剤を水に溶解し、その後攪拌して原料組成物を作製する。
【0055】
具体的には、前記糖アルコールは、シロップ全体を100重量部として10~30重量部含まれるものであり、前記天然高甘味料は、シロップ全体を100重量部として0.35~0.55重量部含まれるものであり、前記糖アルコールと前記天然高甘味料は、85:1~150:1の混合比で含まれるものであり、前記天然安定剤は、ペクチン及びキサンタンガムを含むものであり、前記天然安定剤は、シロップ全体を100重量部として0.3~0.5重量部含まれるものであり、前記ペクチンと前記キサンタンガムは、4:1~2:1、例えば3:1の混合比で含まれるものであり、前記天然抗菌剤は、カンキツ抽出物、エルオーS複合抽出物及び緑茶抽出物からなる群から選択される少なくとも1種のもの、具体的にはカンキツ抽出物であるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
具体的には、前記水は精製水であるが、これに限定されるものではなく、前記溶解ステップは、60℃以上、具体的には60℃~70℃の温度範囲で糖アルコールを精製水に溶解し、その後天然高甘味料、天然安定剤及び天然抗菌剤を溶解するステップであるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
前記溶解ステップを60℃未満の温度で行うと、糖アルコールの溶解度が低く、70℃超の温度で行うと、蒸気が発生するので、生産現場で適した作業環境を整えることが困難であるという問題がある。
【0058】
前記糖アルコールは、シロップ全体に含まれる比重が大きいので、精製水に先に溶解することが効率的であり、他の原料に比べて溶解度が低いので、先に溶解することが効率的である。
【0059】
次に、前記原料組成物を70℃~80℃の温度範囲で10分~15分間前処理殺菌する。
【0060】
前記前処理殺菌ステップを70℃未満の温度で行うと、殺菌が行われず、80℃超の温度で行うと、冷却ステップが終了するまで長時間かかるので、製造工程の効率性が低下するという問題がある。
【0061】
本出願の一実施例においては、前記前処理殺菌ステップを含むことにより、前処理殺菌ステップを含まない製造方法に比べて、初期微生物制御が容易になることが確認された。
【0062】
次に、前記前処理殺菌した原料組成物を25℃~50℃の温度に冷却する。
【0063】
次に、前記冷却したシロップ組成物に天然香料を混合してシロップ組成物を作製する。
【0064】
天然香料は、合成香料に比べて人為的でない自然な味と香りが得られるという利点があるので広く用いられるが、合成香料に比べて熱に弱く、微生物安全性を確保するために高い温度に曝露すると又は長期間露出すると香りが揮発して香りの強度が低下するという欠点がある。これに関して、従来のシロップ製造方法においては、スクロースを溶解し、その後60℃以上の温度に保持した混合液に天然香料を添加するので、天然香料の揮発量が増加し、殺菌工程後の香味持続力及び嗜好度が急激に低下するという問題があった。
【0065】
本出願のシロップ製造方法においては、殺菌した原料組成物を50℃以下の温度に冷却し、その後冷却したシロップ組成物に天然香料を混合するので、殺菌工程後も香味持続力及び嗜好度が殺菌工程前と同等レベルに維持される。
【0066】
よって、本出願のシロップ製造方法は、スクロースなし天然シロップの初期微生物発生及び天然香料の揮発量を減少させることができる。
【0067】
次に、前記シロップ組成物を高温短時間殺菌法(HTST)により96℃~99℃の温度範囲で30秒~40秒間殺菌する。
【0068】
本出願の一実施例においては、96℃~99℃の温度範囲で30秒~40秒間高温短時間殺菌法を行うと、人為的に一般細菌/真菌を投入して殺菌した際に、菌の殺菌が最も良好に行われ、香り/味の変化もほとんどないことが確認された。
【0069】
本出願のさらに他の態様は、前記方法で製造したスクロースなし天然シロップを提供する。
【0070】
前記方法及びスクロースなし天然シロップについては前述した通りである。
【0071】
具体的には、前記方法を用いて製造したシロップは、天然香料の揮発量が減少したものであるが、これに限定されるものではない。
【0072】
本出願のさらに他の態様は、天然香料の香味持続性を改善する方法を提供する。
【0073】
具体的には、糖アルコール、天然高甘味料、天然安定剤及び天然抗菌剤を水に溶解し、その後攪拌して原料組成物を作製するステップと、前記原料組成物を70℃~80℃の温度範囲で10分~15分間前処理殺菌するステップと、前記前処理殺菌した原料組成物を25℃~50℃の温度に冷却するステップと、前記冷却したシロップ組成物に天然香料を混合してシロップ組成物を作製するステップと、前記シロップ組成物を高温短時間殺菌法(HTST)により96℃~99℃の温度範囲で30秒~40秒間殺菌するステップとを含む、天然香料の香味持続性を改善する方法を提供する。
【0074】
前記原料組成物を作製するステップ、前処理殺菌するステップ、冷却するステップ、シロップ組成物を作製するステップ、及び天然香料については前述した通りである。
【0075】
具体的には、前記方法は、天然香料の揮発量が減少することを特徴とするものであるが、これに限定されるものではない。
【実施例】
【0076】
以下、実施例を挙げて本出願をより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は本出願を例示する好ましい実施形態にすぎず、本出願がこれらに限定されるものではない。なお、本明細書に記載されていない技術的事項は、本出願の技術分野又は類似技術分野における熟練した技術者が十分に理解し、容易に実施することのできるものである。
【実施例1】
【0077】
スクロースなし天然シロップの作製
表1~表3に示す構成により、比較例及び実施例1~3のスクロースシロップ、バニラシロップ及びレッドグレープフルーツシロップをそれぞれ作製した。
【0078】
具体的には、まず高温(80℃以上)で糖類又は糖アルコールを精製水に溶解し、次に残りの材料を投入して作製した。原料を混合した4種類のシロップをそれぞれ作製し、100重量部に統一するために、残りの重量は水を充填して調節した。
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
実験例1:官能試験による甘味度及び異味/異臭評価
実施例1で作製したシロップを浄水で10倍に希釈した試料を準備し、訓練されたパネルである成人専門研究員15名~18名(20~40代)により、甘味度、口当たり及び香味持続性を評価する官能試験を行った。
【0083】
試料は透明なプラスチックカップ(50ml)に入れて同時に提供し、評価の間に口をすすぐことができるように浄水を共に提供した。官能試験は、BLT(Blind Label TesT)で行い、それぞれ9段階(9点:非常に良い,5点:普通,1点:非常に悪い)で評価し、その後5段階に変換した結果を表4~表6に示す。
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
その結果、表4~表6から分かるように、比較例と比較して、全ての実施例は、甘味、口当たり及び香味持続性の全てにおいて有意差がなく、それらの値は、統計的に有意差がないものであった(p-value>0.05)。よって、全般的な嗜好度、甘味強度及び甘味嗜好度が最も良好な実施例3により、最適な糖アルコール(エリトリトール)及び天然高甘味料(レバテン)含有量を選定した。
【0088】
実験例2:粘度測定による物性評価
実施例1で選定した実施例3の最適な糖アルコール(エリトリトール)及び天然高甘味料(レバテン)含有量を含むシロップにおいて、物的安定性を維持する天然安定剤の構成及び含有量をスクリーニングすることにした。
【0089】
具体的には、Brookfield粘度計を用いて粘度を測定した。Brookfield粘度計は、回転粘度計であり、spindleにかかる流体の抵抗値を測定する機器である。その測定原理は、特定の容器に測定試料を入れ、その後流体に備えられるspindleを回転させ、発生する摩擦抵抗を測定して粘度(cp)を測定するというものである。試料を200g採取し、250mlのガラスビーカーに入れて測定した。Brookfield粘度計により、VDV-2、spindleno.1、100rpmで60秒間測定した。その結果を表7に示す。
【0090】
【0091】
その結果、表7に示すように、前記天然安定剤としてペクチン又はキサンタンガムを単独で用いると、十分な粘度が得られないことが確認された。また、他の組み合わせ(キサンタンガム,ローカストビーンガム)を用いると、異味/異臭が発生し、十分な粘度が得られないことが確認された。
【0092】
さらに、ペクチン0.3%とキサンタンガム0.1%を混合して適用すると、比較例と同程度の粘度(cp)値が確保され、信頼性を示すcp(%,torque)も80%を超える同等レベルであることが確認された。
【0093】
よって、天然安定剤の構成としてペクチンとキサンタンガムを設定し、その混合比を3:1に設定してバニラシロップ及びレッドグレープフルーツシロップに適用し、物的安定性を確認した。
【0094】
【0095】
その結果、表8に示すように、前記ペクチンと前記キサンタンガムが3:1の混合比で含まれると、シロップの粘度(CP)が85~90CPを維持し、従来のシロップ製品の物性安定性を維持することが確認された。
【0096】
実験例3:微生物安全性及び流通期限確保のための最適天然抗菌剤の選定
実験例1及び実験例2で確保した最適な糖アルコール、天然高甘味料及び天然安定剤の構成及び含有量を含む実施例3の配合において、微生物安全性と12カ月以上の流通期限を確保するために、合成保存料を代替する天然抗菌剤を選定した。
【0097】
具体的には、流通期限試験として10週間加速試験を行った。加速試験は、5℃、25℃、35℃、45℃の各温度で行った。日毎に有意差が現れる官能評価値から回帰方程式を算出し、流通期限を18カ月とした。
【0098】
実験に用いた天然抗菌剤は、全11種類の市販されている天然抗菌剤である。各抗菌剤の指標物質、すなわち抗菌効果を発揮する物質を表9に示す。
【0099】
【0100】
実験は、合成保存料(ソルビン酸カリウム)と同等の抗菌活性(生育阻害)効果を確認するために、ターゲット菌株に対する抗菌剤の種類別及び含有量別の最小阻害濃度試験においてMIC(Minimal Inhibitory Concentration)を測定し、それにより1次選択した抗菌剤を製品に適用し、抗菌力及び安定性を検証するMCT(MicrobialChallenge Test)を行った。全てのシロップにおいて保存料なしのときに発生した菌を用いた。その分析条件を表10に示す。
【0101】
【0102】
各抗菌剤の抗菌力とターゲット菌株に対して抗菌活性を示す最小濃度を確認するために、MIC(Minimal Inhibitory Concentration)を測定した。実験方法としてpaper disc diffusion法を用いた。その過程は次の通りである。1)増殖が完了したターゲット一般細菌、真菌、胞子を準備し、2)各天然抗菌剤を各濃度(0,100ppm,200ppm,300pm,400ppm,500ppm,1000ppm)に希釈して準備する。3)1)を滅菌蒸留水で希釈し、各培地に分注して培養し、4)培養が完了した培地に、2)に浸漬したペーパーを載置し、菌が増殖するか否かを検証した。もし、菌に対する抗菌力を有する場合はペーパーの周辺にclearzoneが生じるので、菌の増殖が抑制されたことを確認することができる。結果を
図1及び表11~表13に示す。
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
その結果、合成保存料(ソルビン酸カリウム)と同等レベルの抗菌活性を示す天然抗菌剤は後述する計6種であることが確認された。次に、前記6種を浄水で10倍に希釈して異味/異臭試験を行った。異味/異臭が現れる濃度を次の実験であるMCTに適用可能な最大濃度に選定した。
【0107】
エルオーSにおいては、300ppm~1,000ppmの濃度で抗菌力が示されたが、異味/異臭が現れる濃度が800ppmであったので、MCTに適用する濃度を300~800ppmに選定した。
【0108】
複合ハーブ抽出物Dにおいては、500ppm~1,000ppmの濃度で抗菌力が示されたが、異味/異臭が現れる濃度が500ppmであったので、MCTに適用する濃度を500ppmに選定した。
【0109】
Flavo Cにおいては、100ppm~1,000ppmの濃度で抗菌力が示されたが、異味/異臭が現れる濃度が400ppmであったので、MCTに適用する濃度を100~400ppmに選定した。
【0110】
アミドアシッドにおいては、300ppm~1,000ppmの濃度で抗菌力が示されたが、異味/異臭が現れる濃度が400ppmであったので、MCTに適用する濃度を300~400ppmに選定した。
【0111】
E-polylysineにおいては、200ppm~1,000ppmの濃度で抗菌力が示されたが、異味/異臭が現れる濃度が300ppmであったので、MCTに適用する濃度を200~300ppmに選定した。
【0112】
フレッシュDにおいては、400ppm~1,000ppmの濃度で抗菌力が示されたが、異味/異臭が現れる濃度が400ppmであったので、MCTに適用する濃度を400ppmに選定した。
【0113】
次に、MCT(MicrobialChallenge Test)を次の順序で行った。実験は、スクロースシロップ、バニラシロップ、レッドグレープフルーツシロップのうち、代表としてバニラシロップに適用して行った。適用菌株及び分析条件を表14に示す。
【0114】
【0115】
MCT(MicrobialChallenge Test)実験条件は次の通りである。1)スクロースゼロバニラシロップを作製する。2)増殖が完了した一般細菌/真菌/胞子を準備する。3)滅菌したガラス容器(100ml)に菌103cfu/mlを注入する。4)3)にスクロースゼロバニラシロップを充填温度に合わせて(80℃以上)充填する。5)冷却し、その後静置する。6)静置サンプルを冷却完了1日後から1週間単位で培養する。7)各天然抗菌剤における菌株の増殖又は減少の推移を4週間検証する。
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
その結果、表15~表17に示すように、1次選択した6種の天然抗菌剤をスクロースゼロバニラシロップに適用し、保存料なしに比べて1log以上減菌し、合成保存料と同等レベルの抗菌力を有する3種の天然添加物を選定した。その結果、エルオーS、FlavoC、Sunphenon 90LB-KRが選定された。これらのうち、異味/異臭が最も少なく、抗菌活性が最も良好な天然抗菌剤はFlavo C(カンキツ抽出物)であることが確認された。
【0120】
実験例4:最適殺菌工程の選定
従来の香りシロップの作製工程は、原料に起因する初期微生物の制御が難しく、天然香料が熱により揮発し、味と香りの強度が殺菌前より弱くなるという欠点がある。よって、初期微生物の制御と天然香料の揮発を防止するために、多段階殺菌を行うことにした。
【0121】
比較例においては、表1~表3の比較例と同一の構成でスクロースシロップ、バニラシロップ及びレッドグレープフルーツシロップをそれぞれ作製して実験に用いた。
【0122】
具体的には、まずスクロースを計量して60℃の熱水に溶解し、次いでスクロース以外の他の添加物(色素、クエン酸、香料など)を入れて混合した。その後、規格検査(Brix、pHなど)を行い、75umSUS filterで濾過し、次いで高温短時間殺菌(96~99℃,30~40秒間)を行った。次に、5umカートリッジフィルターで2次濾過し、その後80℃以上の温度でガラス瓶に充填した。その後、キャップでキャッピングして反転させ、次いで冷却した。
【0123】
実施例においては、表1~表3の実施例3と同一の構成でスクロースシロップ、バニラシロップ及びレッドグレープフルーツシロップをそれぞれ作製して実験に用いた。
【0124】
具体的には、まず糖アルコールを計量して60℃の熱水に溶解し、次いで香料を除く色素、クエン酸などの添加物を入れて混合した。次に、70~80℃で10~15分間かけて原料の前処理殺菌を行った。その後、50℃に冷却して香料を投入し、次いで規格検査(Brix、pHなど)を行い、75um SUS filterで濾過した。次に、高温短時間殺菌(96~99℃,30~40秒間)を行い、5umカートリッジフィルターで2次濾過し、その後80℃以上の温度でガラス瓶に充填した。その後、キャップでキャッピングして反転させ、次いで冷却した。
【0125】
前述した比較例及び実施例の製造方法の模式図を
図2に示す。
【0126】
次に、微生物安全性の評価を行った。
【0127】
具体的には、微生物安全性の評価は、全て培地を用いるPOURING法(注入平板法)により行った。一般細菌にはPCA、真菌にはPDA、真菌にはNA培地を用いた。
【0128】
121℃で15分間滅菌(AUTOCLAVE)した培地を45~50℃の恒温水槽に保管して固まらないようにしておき、微生物試験の対象となるシロップ試料を1ml採取し、空のペトリ皿に塗布した。恒温水槽に保管していた培地をこのペトリ皿に注入し、試料と培地がよく混ざるように徐々に混合した。
【0129】
その後、一般細菌は35℃のインキュベータで1日間、真菌は25℃のインキュベータで5日間、大腸菌群は30℃のインキュベータで2日間保管し、菌が現れるか否かを確認した。
【0130】
【0131】
表18は実施例及び比較例のスクロースシロップを用いて実験を行った結果を示す表であり、バニラシロップやレッドグレープフルーツシロップを用いた場合も結果は同様であった。
【0132】
その結果、表18に示すように、従来の工程を用いた比較例においては、一般細菌と真菌を分析したところ、初期微生物が制御されないことが確認された。それに対して、実施例においては、糖アルコールと精製水をミキシングして溶解し、その後70~80℃で10~15分間pre-sterilization(前処理殺菌)を行うことにより原料に起因する微生物発生リスクが低減することが確認された。特に、一般細菌においては1log以上の差異があり、真菌においては前処理殺菌を行うと検出されないことが確認された。
【0133】
次に、本出願の製造方法による天然香料の揮発の程度を測定するために、前記従来のシロップ製造方法(比較例)及び前記スクロースなし天然シロップ製造方法(実施例)において、高温短時間殺菌ステップの殺菌前のシロップと殺菌後のシロップをそれぞれ浄水で10倍に希釈し、専門パネル(30~40代)28名による官能調査を行い、殺菌前との有意差を得るべく、同一パネルによる差異識別検査を行った。28名により差異識別を行う場合は、正解者数が14名であれば有意差があるとみなした(信頼度95%)。
【0134】
【0135】
【0136】
表19及び表20は実施例及び比較例のスクロースシロップを用いて実験を行った結果を示す表であり、バニラシロップやレッドグレープフルーツシロップを用いた場合も結果は同様であった。
【0137】
その結果、表19及び表20に示すように、従来(比較例)はスクロースを溶解して60℃以上に保持した混合液に天然香料を添加していたので、天然香料の揮発が多く、香りの強度が殺菌前に比べて非常に弱く、全般的な嗜好度が有意に(p-value<0.05)低かった。トライアングルテストを行ったところ、正解者数が18名であり、有意差が認められるレベルであることが確認された。
【0138】
それに対して、本出願の実施例においては、50℃以下に混合液を冷却して香料を添加すると、香り強度及び全般的な嗜好度が殺菌前と同等レベルになり、差異識別を行ったところ、正解者数が3名であり、有意差がないことが確認された。
【0139】
よって、従来(比較例)の殺菌工程に比べて、本出願の殺菌工程を含む製造方法を用いると、スクロースなし天然シロップの初期微生物の発生が減少し、天然香料の揮発が低減することが確認された。
【0140】
以上の説明から、本出願の属する技術分野の当業者であれば、本出願がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。なお、上記実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本出願には、明細書ではなく請求の範囲の意味及び範囲とその等価概念から導かれる変更又は変形された形態が全て含まれるものと解釈すべきである。
【国際調査報告】