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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】糖脂質を含む組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/60 20060101AFI20241031BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241031BHJP
   A61Q 19/04 20060101ALI20241031BHJP
   A61Q 15/00 20060101ALI20241031BHJP
   A61Q 17/02 20060101ALI20241031BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20241031BHJP
   C07H 15/04 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
A61K8/60
A61Q19/00
A61Q19/04
A61Q15/00
A61Q17/02
A61Q17/04
C07H15/04 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532863
(86)(22)【出願日】2022-11-25
(85)【翻訳文提出日】2024-05-31
(86)【国際出願番号】 EP2022083254
(87)【国際公開番号】W WO2023099346
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】21211919.2
(32)【優先日】2021-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ユリアン リービッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ヨッヘン クライネン
(72)【発明者】
【氏名】ハンス ヘニング ヴェンク
(72)【発明者】
【氏名】カリン フュルヒ
(72)【発明者】
【氏名】マリウス メルシュマン
(72)【発明者】
【氏名】ヤーコプ ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】ハセル ヤルシンカヤ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファニー フォルクマー
【テーマコード(参考)】
4C057
4C083
【Fターム(参考)】
4C057AA17
4C057BB02
4C057CC01
4C057DD01
4C057JJ10
4C083AD391
4C083BB01
4C083BB21
4C083BB41
4C083BB46
4C083BB47
4C083BB48
4C083CC02
4C083CC17
4C083CC19
4C083EE17
(57)【要約】
本発明は、糖脂質を含む組成物および糖脂質を含む配合物の製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
20重量%~70重量%、好ましくは35重量%~60重量%、特に好ましくは40重量%~50重量%の、一般式(I)
【化1】
[式中、
およびRは、互いに独立して、2~24個の炭素原子を有する同一のまたは異なる有機基である]の少なくとも1つの糖脂質またはその塩と、
30重量%~80重量%、好ましくは40重量%~65重量%、特に好ましくは50重量%~60重量%の水と
を含む組成物であって、ここで、前記重量パーセンテージは、前記組成物全体に対するものである組成物において、25℃における前記組成物のpHが、3.5~8.0、好ましくは3.8~6.9、より好ましくは4.1~6.1、特に好ましくは4.5~5.4であることを特徴とする、組成物。
【請求項2】
前記混合組成物が、少なくとも51重量%の、前記一般式(I)[式中、RおよびRは、(CH-CHである]の糖脂質GL-C10C10を含むことを特徴とし、ここで、前記重量パーセンテージは、存在する前記一般式(I)のすべての前記糖脂質の総和に対するものである、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも80重量%、特に好ましくは少なくとも90重量%の、前記一般式(I)の糖脂質を含むことを特徴とし、ここで、前記重量パーセンテージは、前記組成物全体の総乾燥質量に対するものである、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
存在する前記糖脂質塩のカチオンが、Li、Na、K、Mg2+、Ca2+、Al3+、NH 、第一級アンモニウムイオン、第二級アンモニウムイオン、第三級アンモニウムイオンおよび第四級アンモニウムイオンを含む群から選択され、好ましくはこれらからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が
50重量%~99重量%、好ましくは70重量%~95重量%、特に好ましくは85重量%~90重量%の糖脂質アニオン
を含むことを特徴とし、ここで、重量%は、前記組成物中に存在するOHを除くすべてのアニオンに対するものである、請求項1から4までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が
1重量%~30重量%のGL-C8C10
を含むことを特徴とし、ここで、前記重量パーセンテージは、存在する前記一般式(I)のすべての前記糖脂質の総和に対するものである、請求項1から5までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が
0.5重量%~20重量%のGL-C10C12:1
を含むことを特徴とし、ここで、前記重量パーセンテージは、存在する前記一般式(I)のすべての前記糖脂質の総和に対するものである、請求項1から6までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が
0.5重量%~20重量%のGL-C10C12
を含むことを特徴とし、ここで、前記重量パーセンテージは、存在する前記一般式(I)のすべての前記糖脂質の総和に対するものである、請求項1から7までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が
1重量%~30重量%のGL-C8C10、
0.5重量%~20重量%のGL-C10C12:1、
0.5重量%~20重量%のGL-C10C12
を含むことを特徴とし、ここで、前記重量パーセンテージは、存在する前記一般式(I)のすべての前記糖脂質の総和に対するものである、請求項1から8までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が
0重量%~5重量%のGL-C10
を含むことを特徴とし、ここで、前記重量パーセンテージは、存在する前記一般式(I)のすべての前記糖脂質の総和に対するものである、請求項1から9までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項11】
糖脂質を含む配合物の製造方法であって、
a)請求項1から10までのいずれか1項記載の糖脂質を含む組成物を提供する工程と、
b)少なくとも1つのさらなる配合成分を提供する工程と、
c)前記糖脂質を含む組成物と前記少なくとも1つのさらなる配合成分とを混合し、水の添加により、組成物全体の糖脂質含有量を0.5重量%~20重量%、好ましくは2.0重量%~15重量%、特に好ましくは3.0重量%~12重量%の糖脂質に調整する工程であって、ここで、前記重量パーセンテージは、前記配合物全体に対するものである工程と
を含む、方法。
【請求項12】
方法工程b)で提供される前記少なくとも1つのさらなる配合成分が、エモリエント剤、乳化剤、増粘剤/粘度調整剤/安定剤、UV保護フィルター、酸化防止剤、ヒドロトロープ(またはポリオール)、固形物およびフィラー、皮膜形成剤、真珠光沢添加剤、消臭剤および制汗剤の活性成分、昆虫忌避剤、セルフタンニング剤、防腐剤、コンディショニング剤、香料、染料、臭気吸収剤、化粧品の活性成分、ケア用添加剤、過脂肪剤、界面活性剤、溶媒の群から選択される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つの糖脂質の塩であって、前記塩が、Na、Li、K、Mg2+、Ca2+、Al3+、NH 、第一級アンモニウムイオン、第二級アンモニウムイオン、第三級アンモニウムイオンおよび第四級アンモニウムイオンを含む群から選択され、好ましくはこれらからなる群から選択される少なくとも1つのカチオンを含むことを特徴とする、塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、糖脂質を含む組成物、および糖脂質を含む配合物の製造方法に関する。
【0002】
先行技術
糖脂質は、ある種の微生物の代謝産物として得ることができる。微生物の産生宿主としては、野生株と遺伝子組換え株との双方が使用される。
【0003】
糖脂質は界面活性物質であり、その生分解性ゆえに、特にパーソナルケアや家庭用ケア分野だけでなく農業やフラッキング用途といった幅広い工業用途で環境に優しい代替品として重要である。
【0004】
室温で液体の生成物形態は、こうした用途のほとんどに最良の選択であることが実証されている。低粘度であるため、配管システムやポンプを使用した加工が保証される。一方で、水分含有量を低く抑えるためには、高濃度の活性物質が必要となる。このことは、環境に優しい配合物の製造を可能にするとともに、輸送中の活性成分1kgあたりの燃料消費量の削減など、環境面にも貢献する。
【0005】
さらに、活性物質の含有量が多いと保存が容易になるため、活性成分1kgあたりの防腐剤の使用量が減る。また、活性物質の含有量が多いと、配合物のフレキシビリティが高まる。
【0006】
Matsuyama et al. Serrations and Other Surfactants Produced by Serratia, Biosurfactants. Microbiology Monographs, vol 20, 2011には、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)が産生する糖脂質であるルビウェッチンRG1およびβ-D-グルコピラノシル3-(3’-ヒドロキシテトラデカノイルオキシ)デカノエートの構造が開示されている。
【0007】
独国特許出願公開第19648439号明細書には、手洗い用食器洗剤の製造のための糖脂質と界面活性剤との混合物の使用が開示されている。
【0008】
国際公開第2019154970号には、特定の糖脂質を含む混合組成物、配合物を製造するためのその使用、および該混合組成物を含む配合物が開示されている。
【0009】
ラムノリピドは、発酵プロセスにより生成された糖脂質として商業的に容易に入手可能である。
【0010】
欧州特許第3023431号明細書には、濃縮ラムノリピド組成物およびその製造が開示されている。しかし、該文献に記載された生成物は、高濃度で粘度の著しい増加を示す。
【0011】
さらに、欧州特許第3023431号明細書のラムノリピド含有組成物は、まさに欧州特許第3023431号明細書の実施例2に開示されているように、pH5.5未満のpH値に調整すると必ずペースト状の塊状物が生じてしまう。
【0012】
しかし、化粧品配合物は酸によって防腐処理されることが多く、その結果、配合物のpHは低くなる。同じことが多くの洗浄用配合物にも当てはまり、例えば石灰質スラッジを溶解するために酸性成分が洗浄活性剤として配合されている。
【0013】
したがって、低pHでも低粘度の高濃度糖脂質組成物が必要とされている。
【0014】
好ましくは、これらの糖脂質は、製造および取扱いを容易にするために単純な構造および/または低分子量を有する。
【0015】
発明の説明
驚くべきことに、ある種の糖脂質は、高レベルまで濃縮可能であり、低pH値で非常に低粘度であり、かつpH値4.0でも安定であることが判明した。
【0016】
したがって、本発明は、請求項1記載の糖脂質を含む組成物を提供する。
【0017】
本発明はさらに、請求項11記載の糖脂質を含む配合物の製造方法を提供する。
【0018】
本発明の利点の1つは、低pH値でも生成物が均質であることである。
【0019】
本発明の別の利点は、該組成物が希釈し易いことである。
【0020】
本発明の別の利点は、該組成物が、微生物学的安定性の向上を示すことである。
【0021】
本発明の別の利点は、該組成物が他の界面活性剤と混和し易いことである。
【0022】
本発明のさらなる利点は、化粧品配合物への該組成物の配合がより容易であることである。
【0023】
本発明の別の利点は、該組成物により、非常に低いpHでも濃縮界面活性剤配合物を調合できることである。
【0024】
本発明の別の利点は、該組成物が、その高濃度および達成可能な低pH値ゆえに発泡傾向の低減を示し、したがって輸送および送達が容易になることである。
【0025】
本発明の別の利点は、本発明の塩が水溶液として優れた泡安定化特性を有することである。
【0026】
本発明の別の利点は、該組成物が、油のような疎水性成分を容易に取り込めることである。
【0027】
本発明の別の利点は、該組成物が高い保存安定性を有することである。
【0028】
本発明のさらなる利点は、該組成物がその製造中やパイプラインでの輸送中に生じる汚染が少なく、さらに洗浄が容易になることである。
【0029】
本発明の別の利点は、該組成物の輸送に必要なエネルギーが少ないことである。
【0030】
本発明の別の利点は、該組成物が非常に低い凝固点を有することであり、これは、該組成物が低温でも加工可能なままであることを意味する。
【0031】
本発明に関連して、「糖脂質」という用語は、一般式(I)
【化1】
[式中、
mは、1または0であり、
およびRは、互いに独立して、2~24個の炭素原子を有する同一のまたは異なる有機基、特に任意に分岐状の、任意に置換された、特にヒドロキシ置換された、任意に不飽和の、特に任意に一価、二価または三価不飽和のアルキル基であって、好ましくは、ペンテニル、ヘプテニル、ノネニル、ウンデセニルおよびトリデセニルならびに(CH-CHからなる群から選択されるものであり、ここで、oは、1~23、好ましくは4~12である]の化合物またはその塩を意味すると理解される。
【0032】
各糖脂質を、以下の命名法に従って略記する:
「GL-CXCY」は、一般式(I)[式中、基RおよびRのうち一方は、(CH-CH(ここで、o=X-4)であり、残りの基RまたはRは、(CH-CH(ここで、o=Y-4)である]の糖脂質を意味すると理解される。
【0033】
そのため、使用した命名法では、「CXCY」と「CYCX」とは区別されない。
【0034】
前述の添え字Xおよび/またはYの一方に「:Z」が付されている場合、これは、各基Rおよび/またはRが、Z個の二重結合を有するX-3個またはY-3個の炭素原子を有する非分岐状の非置換炭化水素基であることを意味する。
【0035】
本発明は、
20重量%~70重量%、好ましくは35重量%~60重量%、特に好ましくは40重量%~50重量%の、一般式(I)
【化2】
[式中、
およびRは、互いに独立して、2~24個の炭素原子を有する同一のまたは異なる有機基である]の少なくとも1つの糖脂質またはその塩と、
30重量%~80重量%、好ましくは40重量%~65重量%、特に好ましくは50重量%~60重量%の水と
を含む組成物であって、ここで、重量パーセンテージは、該組成物全体に対するものである組成物において、25℃における該組成物のpHが、3.5~8.0、好ましくは3.8~6.9、より好ましくは4.1~6.1、特に好ましくは4.5~5.4であることを特徴とする組成物を提供する。
【0036】
本発明に関連する「pH」とは、ISO 4319(1977)に準拠して校正されたpH電極を用いて5分間撹拌した後に25℃で当該組成物について測定される値であると定義される。
【0037】
本発明の文脈における「総乾燥質量」という用語は、本発明による組成物から25℃、1barで液体である成分を除去した後に-当然のことながら水以外に-残る、本発明による組成物の一部を意味すると理解される。
【0038】
本発明の文脈で糖脂質の含有量を決定するためには、糖脂質アニオンの質量のみを考慮し、すなわち「一般式(I)から水素を1つ減じたもの」を考慮する。
【0039】
本発明の文脈で糖脂質の含有量を決定するためには、すべての糖脂質を酸性化によってプロトン化形態(一般式(I)参照)に変換し、HPLCで定量する。
【0040】
特に断りのない限り、所与のパーセンテージ(%)はすべて重量パーセンテージである。
【0041】
本発明による好ましい組成物は、該組成物が、少なくとも51重量%~好ましくは98重量%、好ましくは60重量%~95重量%、より好ましくは70重量%~90重量%、特に好ましくは75重量%~85重量%の、一般式(I)[式中、RおよびRは、(CH-CHである]の糖脂質GL-C10C10を含むことを特徴とし、ここで、重量パーセンテージは、存在する一般式(I)のすべての糖脂質の総和に対するものである。
【0042】
本発明による好ましい組成物は、該組成物が、少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも80重量%、特に好ましくは少なくとも90重量%の、一般式(I)の糖脂質を含むことを特徴とし、ここで、重量パーセンテージは、組成物全体の総乾燥質量に対するものである。
【0043】
本発明による組成物中に存在する糖脂質は、所与のpHにより少なくとも部分的に塩として存在する。
【0044】
本発明による好ましい組成物において、存在する糖脂質塩のカチオンは、Li、Na、K、Mg2+、Ca2+、Al3+、NH 、Zn2+、第一級アンモニウムイオン、第二級アンモニウムイオン、第三級アンモニウムイオンおよび第四級アンモニウムイオン、ならびにアミノ酸、好ましくはタンパク質構成アミノ酸を含む群から選択され、好ましくはこれらからなる群から選択される。
【0045】
適切なアンモニウムイオンの代表例は、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムおよび[(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム](コリン)、さらには2-アミノエタノール(エタノールアミン、MEA)、ジエタノールアミン(DEA)、2,2’,2’’-ニトリロトリエタノール(トリエタノールアミン、TEA)、1-アミノプロパン-2-オール(モノイソプロパノールアミン)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1,4-ジエチレントリアミン(ピペラジン)、アミノエチルピペラジンおよびアミノエチルエタノールアミンのカチオンである。
【0046】
特に好ましいカチオンは、Na、Li、K、Ca2+、Mg2+、NH およびテトラエチルアンモニウムカチオンを含む群から選択され、好ましくはこれらからなる群から選択され、ここで、Li、K、Ca2+、Mg2+、NH およびテトラエチルアンモニウムカチオンが最も好ましい。
【0047】
上記のカチオンの混合物もまた、本発明により存在する糖脂質塩のカチオンとして存在し得る。
【0048】
本発明による好ましい組成物は、該組成物が
50重量%~99重量%、好ましくは70重量%~95重量%、特に好ましくは85重量%~90重量%の糖脂質アニオン
を含むことを特徴とし、ここで、重量%は、組成物中に存在するOHを除くすべてのアニオンに対するものである。
【0049】
本発明による好ましい組成物が
1重量%~30重量%、好ましくは5重量%~25重量%、特に好ましくは10重量%~20重量%のGL-C8C10
を含むと有利である場合があり、したがって好ましく、ここで、重量パーセンテージは、存在する一般式(I)のすべての糖脂質の総和に対するものである。
【0050】
本発明による好ましい組成物は、該組成物が
0.5重量%~20重量%、好ましくは3重量%~17重量%、特に好ましくは5重量%~15重量%のGL-C10C12:1
を含むことを特徴とし、ここで、重量パーセンテージは、存在する一般式(I)のすべての糖脂質の総和に対するものである。
【0051】
本発明によるさらなる好ましい組成物は、該組成物が
0.5重量%~20重量%、好ましくは2重量%~15重量%、特に好ましくは3重量%~12重量%のGL-C10C12
を含むことを特徴とし、ここで、重量パーセンテージは、存在する一般式(I)のすべての糖脂質の総和に対するものである。
【0052】
本発明による特に好ましい組成物は、該組成物が
1重量%~30重量%、好ましくは5重量%~25重量%、特に好ましくは10重量%~20重量%のGL-C8C10、
0.5重量%~20重量%、好ましくは3重量%~17重量%、特に好ましくは5重量%~15重量%のGL-C10C12:1、
0.5重量%~20重量%、好ましくは2重量%~15重量%、特に好ましくは3重量%~12重量%のGL-C10C12
を含むことを特徴とし、ここで、重量パーセンテージは、存在する一般式(I)のすべての糖脂質の総和に対するものである。
【0053】
本発明による非常に特に好ましい組成物は、該組成物が
10重量%~20重量%のGL-C8C10、
5重量%~15重量%のGL-C10C12:1、
3重量%~12重量%のGL-C10C12
を含むことを特徴とし、ここで、重量パーセンテージは、存在する一般式(I)のすべての糖脂質の総和に対するものである。
【0054】
上記のものに加え、本発明による組成物が、式GL-CXの糖脂質を少量のみ含むことが好ましい。特に、本発明による組成物は、好ましくは
0重量%~5重量%、好ましくは0.01重量%~4重量%、特に好ましくは0.1重量%~3重量%のGL-C10
を含み、ここで、重量パーセンテージは、存在する一般式(I)のすべての糖脂質の総和に対するものである。
【0055】
本発明による組成物は、その低粘度、注型性およびポンプ圧送性ゆえに、配合物、特に化粧品および家庭用ケア配合物に有利に組み込むことができる。
【0056】
したがって、本発明のさらなる主題は、糖脂質を含む配合物、特に化粧品または家庭用ケア配合物の製造方法であって、
a)本発明による糖脂質を含む組成物を提供する工程と、
b)少なくとも1つのさらなる配合成分を提供する工程と、
c)糖脂質を含む組成物と少なくとも1つのさらなる配合成分とを混合し、水の添加により、組成物全体の糖脂質含有量を0.5重量%~20重量%、好ましくは2.0重量%~15重量%、特に好ましくは3.0重量%~12重量%の糖脂質に調整する工程であって、ここで、重量パーセンテージは、配合物全体に対するものである工程と
を含む、方法である。
【0057】
方法工程a)において提供される糖脂質を含む好ましい組成物は、上記で本発明による好ましい組成物として記載されている本発明による組成物である。
【0058】
方法工程b)で提供される少なくとも1つのさらなる配合成分は、好ましくは、以下:
エモリエント剤、
乳化剤、
増粘剤/粘度調整剤/安定剤、
UV保護フィルター、
酸化防止剤、
ヒドロトロープ(またはポリオール)、
固形物およびフィラー、
皮膜形成剤、
真珠光沢添加剤、
消臭剤および制汗剤の活性成分、
昆虫忌避剤、
セルフタンニング剤、
防腐剤、
コンディショニング剤、
香料、
染料、
臭気吸収剤、
化粧品の活性成分、
ケア用添加剤、
過脂肪剤、
界面活性剤、
溶媒
の群から選択される。
【0059】
個々の群の代表例として使用可能な物質は当業者に知られており、例えば独国出願DE 102008001788.4に記載されている。この特許出願は、参照により本明細書に援用され、したがって本開示の一部を形成する。
【0060】
さらなる任意成分およびこれらの成分の使用量に関しては、当業者に知られている関連ハンドブック、例えばK.Schrader, “Grundlagen und Rezepturen der Kosmetika [Fundamentals and Formulations of Cosmetics]”, 2nd edition, page 329 to 341, Huethig Buch Verlag Heidelbergが明示的に参照される。
【0061】
各添加剤の量は、使用目的によって異なる。
【0062】
各用途向けの典型的なガイド配合物は既知の従来技術であり、例えば各基剤や活性成分の製造業者のパンフレットに記載されている。これらの既存の配合物を、総じてそのまま採用することができる。しかし、必要であれば、適合および最適化のための簡単な実験によって、複雑化することなく所望の変更を行うことができる。
【0063】
本発明はさらに、少なくとも1つの糖脂質の塩であって、該塩が、Na、Li、K、Mg2+、Ca2+、Al3+、NH 、第一級アンモニウムイオン、第二級アンモニウムイオン、第三級アンモニウムイオンおよび第四級アンモニウムイオンを含む群から選択され、好ましくはこれらからなる群から選択される少なくとも1つのカチオンを含むことを特徴とする塩を提供する。
【0064】
本発明による塩は、好ましくは、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%、特に好ましくは少なくとも95重量%の少なくとも1つのカチオンを含み、ここで、重量パーセンテージは、「糖脂質のアニオン+カチオン」の塩全体の重量から生じ、この塩全体に対するものである。
【0065】
適切なアンモニウムイオンの代表例は、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムおよび[(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム](コリン)、さらには2-アミノエタノール(エタノールアミン、MEA)、ジエタノールアミン(DEA)、2,2’,2’’-ニトリロトリエタノール(トリエタノールアミン、TEA)、1-アミノプロパン-2-オール(モノイソプロパノールアミン)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1,4-ジエチレントリアミン(ピペラジン)、アミノエチルピペラジンおよびアミノエチルエタノールアミンのカチオンである。
【0066】
特に好ましいカチオンは、Na、Li、K、Ca2+、Mg2+、NH およびテトラエチルアンモニウムカチオンを含む群から選択され、好ましくはこれらからなる群から選択され、Li、K、Ca2+、Mg2+、NH およびテトラエチルアンモニウムカチオンが最も好ましい。
【0067】
一塩基酸、二塩基酸および脂肪酸の含有量に関するその糖脂質組成に関して、本発明による好ましい糖脂質塩は、本発明による組成物中に存在する上記で挙げられた好ましい糖脂質を有する。
【0068】
以下に提示される実施例は、本発明を例示として説明するものであって、本発明が実施例で特定された実施形態に限定されることを意図するものではなく、本発明の適用範囲は、本明細書および特許請求の範囲の全体から明らかである。
【0069】
実施例
すでに上述したように、本発明の目的は、低pHでも低粘度の高濃度糖脂質組成物を提供することであった。
【0070】
欧州特許第3023431号明細書もまた、高濃度糖脂質組成物を提供することを目的としており、特定のラムノリピドを含む組成物によってこれを達成している。
【0071】
以下の実施例において、本発明の糖脂質が欧州特許第3023431号明細書の組成物をはるかに凌駕していることが明らかに証明されている。
【0072】
実施例1:高濃度糖脂質溶液の製造
糖脂質を、国際公開第2019154970号の実施例2に従って発酵により製造した。
【0073】
10.000g、20分間の遠心分離で細胞を分離した。発酵ブロスを上清として分離し、濃HSOを加えてpH3.1に調整した。
【0074】
5.000g、20分間の2回目の遠心分離の後、水性上相を分離し、残った下相は、50重量%を超える糖脂質濃度を有する濃縮物となった。
【0075】
実施例2:KOHによる部分中和
実施例1の糖脂質濃縮物を、表1に示すように、一定の撹拌下での50重量%KOH水溶液の添加により各種pH値に調整した。
【0076】
さらに、水の添加により、表1に示すような各種濃度の糖脂質を製造した。
【0077】
平行平板型測定システムでレオメーター(MCR 302、Anton Paar Germany)を使用して、粘度を測定した。上部平板の直径は40mmであり、ギャップ距離は0.5mmであり、測定温度は25℃であった。測定を、せん断速度100s-1で行った。
【0078】
結果を表1に示す。
【0079】
驚くべきことに、糖脂質を部分的に中和することにより、非常に低粘度の高濃度組成物が得られることが判明した。
【0080】
【表1】
【0081】
これらの粘度は、全体として同様の脂肪酸基分布を有している欧州特許第3023431号明細書に開示されている対応するラムノリピドの溶液の粘度(下表参照)よりもはるかに低い:
【表2】
【0082】
実施例3:界面張力
方法の説明
界面張力を、ペンダントドロップ法に基づいてDataphysics OCA 25装置で測定した。測定を、22℃で水中に0.5%濃度の界面活性剤を入れて行った。測定時間を300秒として標準化し、各測定を2回繰り返した。
【0083】
実施例2の糖脂質(濃度:0.5%)
界面張力(pH5.9):25.6mN/m
界面張力(pH7):30.9mN/m
ジラムノリピド(濃度:0.5%)
界面張力(pH5.5):28.0mN/m
界面張力(pH7):32mN/m。
【0084】
このデータから、本発明の糖脂質が、対応するジラムノリピドよりもわずかに優れた界面活性を有することがわかる。
【0085】
実施例4:糖脂質のナトリウム塩(本発明による)
実施例1で得られた高濃度の酸性糖脂質懸濁液を、50重量%のNaOH溶液の添加によりpHが6になるまで調整した。次に水を加え、糖脂質含有量を30.0重量%とした。
【0086】
実施例5:糖脂質のアンモニウム塩(本発明による)
実施例1で得られた高濃度の酸性糖脂質懸濁液を、25重量%のNHOH溶液の添加によりpHが6になるまで調整した。次に水を加え、糖脂質含有量を30.0重量%とした。
【0087】
実施例6:糖脂質のリチウム塩(本発明による)
実施例1で得られた高濃度の酸性糖脂質懸濁液を、25重量%のLiOH溶液の添加によりpHが6になるまで調整した。次に水を加え、糖脂質含有量を30.0重量%とした。
【0088】
実施例7:糖脂質のテトラエチルアンモニウム塩(本発明による)
実施例1で得られた高濃度の酸性糖脂質懸濁液を、35重量%のN(Et)OH溶液の添加によりpHが6になるまで調整した。次に水を加え、ラムノリピド含有量を30.0重量%とした。
【0089】
実施例8:糖脂質のカリウム塩(本発明による)
実施例1で得られた高濃度の酸性糖脂質懸濁液を、50重量%のKOH溶液の添加によりpHが6になるまで調整した。次に水を加え、糖脂質含有量を30.0重量%とした。
【0090】
実施例9:糖脂質のカルシウム塩(本発明による)
実施例1で得られた高濃度の酸性糖脂質懸濁液を、25重量%のCa(OH)溶液の添加によりpHが6になるまで調整した。次に水を加え、糖脂質含有量を30.0重量%とした。
【0091】
実施例10:糖脂質のマグネシウム塩(本発明による)
実施例1で得られた高濃度の酸性糖脂質懸濁液を、25重量%のMg(OH)溶液の添加によりpHが6になるまで調整した。次に水を加え、糖脂質含有量を30.0重量%とした。
【0092】
実施例11:ジラムノリピドのカリウム塩(本発明によらない)
高濃度の酸性ラムノリピド懸濁液を、50重量%のKOH溶液の添加によりpHが6になるまで調整した。次に水を加え、ラムノリピド含有量を30.0重量%とした。
【0093】
実施例12:一価カチオンを有する糖脂質塩の泡安定性
各試料(実施例4、5、6、7、8および11)1.67gを98.33gの水と混合し、界面活性剤濃度が0.5%になるように150mLビーカー内で配合物を製造した。次に、希釈した試料20mLを100mLのメスシリンダーに移した。閉鎖したメスシリンダーを40回振とうして泡を発生させた。泡の高さを1時間観察した。泡の高さをmL単位で示す。
【0094】
【表3】
【0095】
このデータから、本発明の糖脂質塩が、対応するジラムノリピド塩よりも優れた泡安定性を有することがわかる。
【0096】
実施例13:二価カチオンを有する糖脂質塩の泡安定性
各試料(実施例9、10および11)1.67gを98.33gの水と混合し、界面活性剤濃度が0.5%になるように150mLビーカー内で配合物を製造した。次に、希釈した試料50mLを250mLのメスシリンダーに移した。閉鎖したメスシリンダーを40回振とうして泡を発生させた。泡の高さを1時間観察した。泡の高さをmL単位で示す。
【0097】
【表4】
【0098】
このデータから、本発明の糖脂質塩が、対応するジラムノリピド塩よりも優れた泡安定性を有することがわかる。
【0099】
実施例14:高濃度糖脂質塩の粘度
実施例4で得られた30%濃度の糖脂質塩(水中30%Na糖脂質塩、pH6)、実施例5で得られた30%濃度の糖脂質塩(水中30%NH 糖脂質塩、pH6)、実施例6で得られた30%濃度の糖脂質塩(水中30%Li糖脂質塩、pH6)、実施例7で得られた30%濃度の糖脂質塩(水中30%N(CHCH 塩、pH6)および実施例10で得られた30%濃度の糖脂質塩(水中30%Mg2+糖脂質、pH6)の粘度分析を行った。
【0100】
平行平板型測定システムでレオメーター(MCR 302、Anton Paar Germany)を使用して、粘度を測定した。上部平板の直径は40mmであり、ギャップ距離は0.5mmであり、測定温度は25℃であった。測定を、せん断速度100s-1で行った。
【0101】
【表5】
【0102】
ここに示した一価および二価の糖脂質塩はすべて、同じ濃度およびpHで、ジラムノリピドカリウム塩に比べて粘度が低い。
【国際調査報告】