(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】ロイプロリドを含むマイク粒子およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/09 20060101AFI20241031BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20241031BHJP
A61K 9/50 20060101ALI20241031BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20241031BHJP
【FI】
A61K38/09
A61K38/08
A61K9/50
A61K47/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532892
(86)(22)【出願日】2022-11-28
(85)【翻訳文提出日】2024-05-31
(86)【国際出願番号】 KR2022018982
(87)【国際公開番号】W WO2023101348
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0171567
(32)【優先日】2021-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519140246
【氏名又は名称】インベンテージ ラボ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】INVENTAGE LAB INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100179648
【氏名又は名称】田中 咲江
(74)【代理人】
【識別番号】100222885
【氏名又は名称】早川 康
(74)【代理人】
【識別番号】100140338
【氏名又は名称】竹内 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100227695
【氏名又は名称】有川 智章
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100219313
【氏名又は名称】米口 麻子
(74)【代理人】
【識別番号】100161610
【氏名又は名称】藤野 香子
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】キム ジュヒ
(72)【発明者】
【氏名】キム ミンソン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA61
4C076BB11
4C076CC30
4C076EE24A
4C076FF31
4C076FF63
4C076GG01
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA17
4C084DB09
(57)【要約】
本発明は、ロイプロリドを含むマイク粒子およびその製造方法に関するものであって、注射剤で投薬するとき、マイクロ粒子の大きさが小さいため、痛みを抑えることができ、標的部位でロイプロリドの放出速度を調節して、初期過放出を防止し、ロイプロリドの効果を示すために、十分な量の薬物に露出して、ロイプロリドによる効果を1ヶ月以上示すことができる。また、前記マイクロ粒子は、粒子の大きさが均一で、表面が滑らか形態であり、長期間持続的にロイプロリドの放出効果を示すことができるマイクロ粒子の製造方法に関するものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロイプロリドおよび生分解性高分子を含み、
マイクロ粒子の平均直径は、40ないし100μmであり、
下記の式1による値が0.5ないし2である、
ロイプロリドを含むマイクロ粒子。
【数1】
ここで、
D10は、粒子の累積分布で最大値に対して、10%に該当する粒子の直径であり、
D50は、粒子の累積分布で最大値に対して、50%に該当する粒子の直径であり、
D90は、粒子の累積分布で最大値に対して、90%に該当する粒子の直径である。
【請求項2】
前記ロイプロリドおよび生分解性高分子は、1:2ないし1:10の重量の割合で含む、
請求項1に記載のロイプロリドを含むマイクロ粒子。
【請求項3】
注射剤で投与するとき、標的部位でロイプロリドの放出速度が調節され、初期過放出の問題がなく、
前記ロイプロリドによって、テストステロンの抑制効果が1ヶ月以上持続する、
請求項1に記載のロイプロリドを含むマイクロ粒子。
【請求項4】
下記の式2による値が1ないし15である、
請求項1に記載のロイプロリドを含むマイクロ粒子。
【数2】
ここで、
ロイプロリドを含むマイクロ粒子をビーグル犬に注射剤で投与し、ロイプロリドの血中濃度を測定したものであり、
前記1回注射によってビーグル犬に投与された酢酸ロイプロリドが11.25mgであり、
C
maxは、注射剤を投与し、24時間のロイプロリドの最大血中濃度であり、
C
24hは、注射剤を投与して24時間経過後、採血した血液内のロイプロリドの血中濃度値である。
【請求項5】
1)ロイプロリドおよび生分解性高分子を混合して第1混合物を製造するステップと、
2)溶媒に界面活性剤を溶解して第2混合物を製造するステップと、
3)前記第1混合物および第2混合物は、交差点が形成された第1マイクロチャンネルおよび第2マイクロチャンネルにそれぞれ注入して流し、前記交差点でマイクロ粒子を生成するステップと、
4)前記マイクロ粒子を、前記第2混合物を入れた水槽内に収集するステップと、
5)前記収集したマイクロ粒子に存在する有機溶媒を除去するステップと、
6)前記有機溶媒が除去されたマイクロ粒子を精製水で洗浄および凍結乾燥するステップと、を含み、
下記の式1による値が0.5ないし2である、
ロイプロリドを含むマイクロ粒子の製造方法。
【数3】
ここで、
D10は、粒子の累積分布で最大値に対して、10%に該当する粒子の直径であり、
D50は、粒子の累積分布で最大値に対して、50%に該当する粒子の直径であり、
D90は、粒子の累積分布で最大値に対して、90%に該当する粒子の直径である。
【請求項6】
前記第1混合物を第1マイクロチャンネルに注入するとき、700ないし1,300mbarの圧力条件で注入した後、10ないし30mbar/minの第1条件で圧力を上昇させ、
前記注入圧力条件が、950ないし1,500mbarに到達するとき、2ないし8mbar/minの第2条件で圧力を上昇させる、
請求項5に記載のロイプロリドを含むマイクロ粒子の製造方法。
【請求項7】
前記第2混合物は、前記第1混合物を第1マイクロチャンネルに注入するとき、圧力条件に対して2ないし4倍の圧力条件で第2マイクロチャンネルに注入される、
請求項5に記載のロイプロリドを含むマイクロ粒子の製造方法。
【請求項8】
前記5)ステップは、
5-1)15ないし20℃で、20ないし40分間100ないし300rpmの速度で1次撹拌するステップと、
5-2)30ないし40℃で、60ないし120分間100ないし300rpmの速度で2次撹拌するステップと、
5-3)40ないし45℃で、4ないし8時間100ないし300rpmの速度で3次撹拌することである、
請求項5に記載のロイプロリドを含むマイクロ粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロイプロリドを含むマイク粒子およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LHRH(黄体形成ホルモン放出ホルモン)は、GnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)としても知られており、脊椎動物の生殖係を調節する視床下部デカペプチド(pGlu-His-Trp-Ser-Tyr-Gly-Leu-Arg-Pro-Gly-NH2)である。
【0003】
これは、正中隆起および漏斗幹の視床下部-脳下垂体門脈系の毛細管に放出される。このような毛細血管網によってLHRHが脳下垂体前葉に到逹し、第2毛細血管網によって性腺刺激標的細胞に到逹する。GnRHは、Gタンパク質を通じてホスホリパーゼCにカップルリングされ、細胞内のカルシウム流動を増加させる7個の膜横断セグメントを有する受容体を通じて標的細胞のメンブレインレベルで作用する。
【0004】
前記のような作用で、性腺刺激ホルモンFSH(卵胞-刺激ホルモン)およびLH(黄体化ホルモン)の生合成および放出が誘導される。LHRH作用剤および拮抗剤は、女性の子宮内膜症、線維腫、多嚢胞性卵巣症、乳房がん、卵巣がんおよび子宮内膜がん、医療-補助された出産プロトコルの間の性腺刺激脳下垂体脱感作症の治療、男性の良性前立腺と多形成症および前立腺がんの治療、および男性または女性の性早熟症の治療に効果的であることが分かった。
【0005】
現在、用いられるLHRH作動薬(Luteinizing Hormone Releasing Hormone agonist)は、低い経口生体利用率によって一般的に静脈内または静脈下方法で投与しなければならないペプチド化合物である。
【0006】
また、LHRH作動薬は、晩成疾患の薬物であって長期間投薬しなけなければならない。LHRH作動薬系の薬物は、薬効の発現のために初期に速かに十分な量の薬物に露出する必要があると知られている。
【0007】
LHRH作動薬中の一つである酢酸ロイプロリド(leuprolide acetate)は、既存の皮下または筋肉注射時に半減期が短いため、投与後に急速な血中濃度の減少が発生して数時間以内に無くなる特性がある。これにより薬効を維持するためには毎日投与しなければならないという不便さがあり、特に注射剤という特徴により、このような不便さはさらに加重されていた。
【0008】
これを改善するために、1回投与で薬効が4週以上持続する製剤(徐放性製剤)が開発され、販売されていた。
【0009】
しかし、酢酸ロイプロリドの薬効の発現のためには、標的部位に対して投与初期に十分な量の薬物に露出する必要があると知られており、前記酢酸ロイプロリドの血中濃度が最初上昇(initial rise)後に2ないし4週間循環性性ホルモン水準(circulating sex hormone levels)を阻害するので、ロイプロリドが効果的になるためには、マイクロ粒子からの薬物初期放出率が高いことが好ましいものと知られている。
【0010】
そこで、現在市販中の製品はいずれもロイプロリドを注射剤で投薬した後、ロイプロリドの血中濃度を測定するとき、初期過放出が生じ、初期過放出が生じない場合、ロイプロリドによる効果が発現されていないと知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】韓国公開出願第10-2003-0064401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、ロイプロリドを含むマイク粒子およびその製造方法に関するものである。
【0013】
本発明の他の目的は、注射剤で投薬するとき、マイクロ粒子の大きさが小さいため、痛みを抑えることができ、標的部位でロイプロリドの放出速度を調節して、初期過放出を防止し、ロイプロリドの効果を示すために、十分な量の薬物に露出して、ロイプロリドによる効果を1ヶ月以上示すことができるロイプロリドを含むマイクロ粒子を提供するものである。
【0014】
本発明の他の目的は、前記マイクロ粒子は、粒子の大きさが均一で、表面が滑らか形態であり、長期間持続的にロイプロリドの放出効果を示すことができるマイクロ粒子の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、本発明の一実施例に係るロイプロリドを含むマイクロ粒子は、ロイプロリドおよび生分解性高分子を含み、マイクロ粒子の平均直径は、40ないし100μmであり、下記の式1による値が0.5ないし2であってもよい。
【0016】
【0017】
ここで、
D10は、粒子の累積分布で最大値に対して、10%に該当する粒子の直径であり、
D50は、粒子の累積分布で最大値に対して、50%に該当する粒子の直径であり、
D90は、粒子の累積分布で最大値に対して、90%に該当する粒子の直径である。
【0018】
前記ロイプロリドおよび生分解性高分子は、1:2ないし1:10の重量の割合で含んでもよい。
【0019】
注射剤で投与するとき、標的部位でロイプロリドの放出速度が調節され、初期過放出の問題がなく、前記ロイプロリドによって、テストステロンの抑制効果が1ヶ月以上持続することができる。
【0020】
下記の式2による値が1ないし5であってもよい。
【0021】
【0022】
ここで、
ロイプロリドを含むマイクロ粒子をビーグル犬に注射剤で投与し、ロイプロリドの血中濃度を測定したものであり、
前記1回注射によってビーグル犬に投与された酢酸ロイプロリドが11.25mgであり、
Cmaxは、注射剤を投与し、24時間のロイプロリドの最大血中濃度であり、
C24hは、注射剤を投与して24時間経過後、採血した血液内のロイプロリドの血中濃度値である。
【0023】
本発明の他の一実施例に係るロイプロリドを含むマイクロ粒子の製造方法は、1)ロイプロリドおよび生分解性高分子を混合して第1混合物を製造するステップと、2)溶媒に界面活性剤を溶解して第2混合物を製造するステップと、3)前記第1混合物および第2混合物は、交差点が形成された第1マイクロチャンネルおよび第2マイクロチャンネルにそれぞれ注入して流し、前記交差点でマイクロ粒子を生成するステップと、4)前記マイクロ粒子を、前記第2混合物を入れた水槽内に収集するステップと、5)前記収集したマイクロ粒子に存在する有機溶媒を除去するステップと、6)前記有機溶媒が除去されたマイクロ粒子を精製水で洗浄および凍結乾燥するステップと、を含み、下記の式1による値が0.5ないし2であってもよい。
【0024】
【0025】
ここで、
D10は、粒子の累積分布で最大値に対して、10%に該当する粒子の直径であり、
D50は、粒子の累積分布で最大値に対して、50%に該当する粒子の直径であり、
D90は、粒子の累積分布で最大値に対して、90%に該当する粒子の直径である。
【0026】
前記第1混合物を第1マイクロチャンネルに注入するとき、700ないし1,300mbarの圧力条件で注入した後、10ないし30mbar/minの第1条件で圧力を上昇させ、前記注入圧力条件が、950ないし1,500mbarに到達するとき、2ないし8mbar/minの第2条件で圧力を上昇させるものであってもよい。
【0027】
前記第2混合物は、前記第1混合物を第1マイクロチャンネルに注入するとき、圧力条件に対して2ないし4倍の圧力条件で第2マイクロチャンネルに注入されてもよい。
【0028】
前記5)ステップは、5-1)15ないし20℃で、20ないし40分間100ないし300rpmの速度で1次撹拌するステップと、5-2)30ないし40℃で、60ないし120分間100ないし300rpmの速度で2次撹拌するステップと、5-3)40ないし45℃で、4ないし8時間100ないし300rpmの速度で3次撹拌するものであってもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、注射剤で投薬するとき、マイクロ粒子の大きさが小さいため、痛みを抑えることができ、標的部位でロイプロリドの放出速度を調節して、初期過放出を防止し、ロイプロリドの効果を示すために、十分な量の薬物に露出して、ロイプロリドによる効果を1ヶ月以上示すことができる。
【0030】
また、前記マイクロ粒子は、粒子の大きさが均一で、表面が滑らか形態であり、長期間持続的にロイプロリドの放出効果を示すことができるマイクロ粒子の製造方法に関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係るマイクロ粒子のSEM写真である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係るマイクロ粒子のSEM写真である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例に係るマイクロ粒子のSEM写真である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施例に係るマイクロ粒子のSEM写真である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施例に係るマイクロ粒子のSEM写真である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施例に係るマイクロ粒子のSEM写真である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施例に係るマイクロ粒子を注射剤でビーグル犬に投与した後、PK-PD結果である。
【
図8】
図8は、本発明の一実施例に係るマイクロ粒子を注射剤でビーグル犬に投与した後、PK-PD結果である。
【
図9】
図9は、本発明の一実施例に係るマイクロ粒子を注射剤でビーグル犬に投与した後、PD結果である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、ロイプロリドおよび生分解性高分子を含み、マイクロ粒子の平均直径は、40ないし100μmであり、下記の式1による値が0.5ないし2であるロイプロリドを含むマイクロ粒子に関するものである。
【0033】
【0034】
ここで、
D10は、粒子の累積分布で最大値に対して、10%に該当する粒子の直径であり、
D50は、粒子の累積分布で最大値に対して、50%に該当する粒子の直径であり、
D90は、粒子の累積分布で最大値に対して、90%に該当する粒子の直径である。
【0035】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の実施例について詳しく説明する。しかし、本発明は色々な異なる形態に具現することができ、ここで説明する実施例に限定されない。
【0036】
本発明で、「ロイプロリド(leuprolide)」は、5-Oxo-L-prolyl-Lhistidyl-L-tryptophanyl-L-seryl-L-tyrosyl-D-leucyl-L-leucyl-L-arginyl-L-prolylethylamideおよびその薬学的に許容可能な塩をいずれも含んでもよい。前記ロイプロリドは、リュープロレリン(Leuprorelin)に表現することもあり、表記にかかわらず、ロイプロリドおよびその薬学的に許容可能な塩はいずれも使用可能である。
【0037】
本発明で、「薬学的に許容可能な」とは、生理学的的に許容され、ヒトに投与されるとき、通常的にアレルギー反応またはこれと類似の反応を起こさないものを意味する。
【0038】
本発明で、「薬学的に許容可能な塩」は、薬学的に許容可能な遊離酸(freeacid)によって形成された酸付加塩を意味する。前記遊離酸としては、有機酸と無機酸を用いることができる。前記有機酸は、これに制限されるものではないが、クエン酸、酢酸、乳酸、スズ酸、マレイン酸、フマル酸、ギ酸、プロピオン酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、安息香酸、グルコン酸、メタスルホン酸、グリコール酸、コハク酸、4-トルエンスルホン酸、グルタミン酸およびアスパラギン酸を含む。また、前記無機酸は、これに制限されるものではないが、塩酸、臭素酸、硫酸およびリン酸を含む。
【0039】
本発明の一実施例に係るロイプロリドを含むマイクロ粒子は、ロイプロリドおよび生分解性高分子を含み、マイクロ粒子の平均直径は、40ないし100μmであり、下記の式1による値が0.5ないし2であってもよい。
【0040】
【0041】
ここで、
D10は、粒子の累積分布で最大値に対して、10%に該当する粒子の直径であり、
D50は、粒子の累積分布で最大値に対して、50%に該当する粒子の直径であり、
D90は、粒子の累積分布で最大値に対して、90%に該当する粒子の直径である。
【0042】
前記D10、D50およびD90は、マイクロ粒子に対する直径を測定して、これらに対し、累積分布上での最大値に対して、10%、50%および90%に該当する値を意味するものである。
【0043】
前記の式1は、請求項1で粒子の平均直径を限定するとともに、(D90-D50)と(D50-D10)の割合を限定するものであって、平均粒子分布内で、粒子の累積分布上最大値に対して、90%に該当する粒子の直径と50%に該当する粒子の直径の差と、50%に該当する粒子の直径と10%に該当する粒子との直径の差を割合で確認し、均一な粒子分布程度を確認するものであり、その値が1に近いほど均一な分布幅を意味するものである。
【0044】
本発明の式1は、マイクロ粒子の大きさ分布をより明確に確認するためのものであり、式1による値が0.5ないし2であり、0.7ないし1.5であり、0.9ないし1.3であってもよい。前記の式1による値を満足するとともに、マイクロ粒子の平均直径が40ないし100μmの場合、マイクロ粒子の大きさが平均直径値に近接して分布することを意味する。これは、均一な大きさのマイクロ粒子が注射を通じて体内に注入され、均一な大きさを有するマイクロ粒子が類似の程度に生分解され、前記マイクロ粒子の生分解によってロイプロリドの放出効果を示すことができる。
【0045】
すなわち、ロイプロリドを含むマイクロ粒子は、体内でロイプロリドの放出程度が粒子の大きさおよび比表面積と関連性が高く、比表面積を大きくするためには均一な直径を有するマイクロ粒子を用いることが必須である。前記のように、粒子の大きさが非常に均一なマイクロ粒子を用いることによって、体内注入時に、初期過放出を防止することができ、長期間持続的にロイプロリドの放出効果を示すことができ、ロイプロリドによる効果を1ヶ月以上発揮することができる。
【0046】
前記ロイプロリドおよび生分解性高分子は、1:2ないし1:10の重量の割合で含み、好ましくは、1:2ないし1:8であり、より好ましくは、1:4ないし1:7であってもよい。前記範囲内で混合して用いるとき、生分解性高分子の分解によってロイプロリドが長期間持続的に放出効果を示すことができる。
【0047】
前記生分解性高分子は、ポリ乳酸、ポリラクチド、ポリラクチック-コ-グリコール酸、ポリラクチド-コ-グリコリド(PLGA)、ポリホスファジン、ポリイミノカーボネート、ポリホスホエステル、ポリアンヒドリド、ポリオルソエステル、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシバレート、ポリヒドロキシブチレート、ポリアミノ酸およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくは、ポリラクチド-コ-グリコリド(PLGA)またはポリラクチドであるが、前記の例示に限定されない。
【0048】
本発明の他の一実施例に係るロイプロリドを含むマイクロ粒子は、下記の式2による値が1ないし15であってもよい。
【0049】
【0050】
ここで、
ロイプロリドを含むマイクロ粒子をビーグル犬に注射剤で投与し、ロイプロリドの血中濃度を測定したものであり、
前記1回注射によってビーグル犬に投与された酢酸ロイプロリドが11.25mgであり、
Cmaxは、注射剤を投与し、24時間のロイプロリドの最大血中濃度であり、
C24hは、注射剤を投与して24時間経過後、採血した血液内のロイプロリドの血中濃度値である。
【0051】
前述のように、ロイプロリドは薬効を発揮するためには、初期過放出が必須な要素に該当すると知られている。すなわち、注射剤で投与するとき、初期にロイプロリドの血中濃度が高い水準を示すことができるように、薬物初期放出率が高いことが求められた。すなわち、LHRH作動薬として十分な薬理効果を示すためには、投入初期、薬物の放出率が高い水準を示さなければならないと知られており、そのために市販中のロイプロリドに対する剤形は、初期薬物の放出率を高く示すことができるように製造されている実情である。
【0052】
これに対し、ロイプロリドのみならず、大多数の薬物は、過多露出時に副作用が発生する可能性がある。すなわち、ロイプロリドの過多放出によって、吐き気、注射部位周辺の痛症発生、頭痛、排尿障害、関節痛症などの副作用が発生する可能性がある。
【0053】
前記のような副作用が発生する恐れがあるにもかかわらず、ロイプロリドの薬効を示すためには、注射剤で投薬するとき、薬物の初期過放出が必要であると知られている。
【0054】
そのために、本発明では、前記の式2による値を満足する場合、24時間内の最大血中濃度値は、従来のロイプロリド剤形に比べて下げ、長期間ロイプロリドの持続放出効果を示すことができる。
【0055】
すなわち、前記の式2による値を導出するため、市販中の製品を購買して同一の実験を行った結果、値が50ないし60であり、高い値を示すことを確認することができ、これに対し、本発明のマイクロ粒子を投与した場合は、1ないし15であり、好ましくは、2ないし10であり、より好ましくは、3ないし8であり、大きい差を示すことを確認した。
【0056】
前記のような結果の相違は、従来のロイプロリドは、効果を発揮するためには、初期過放出が必ず必要であると知られており、式2の分子値が大きく確認されるのに対し、本発明のマイクロ粒子は、初期過放出を防止しながらも、ロイプロリドによる薬効は発揮するとともに、長期間持続的に薬物放出による効果を発揮することができる最適の血中濃度を導出したものである。
【0057】
前記の式2による値は、分子でロイプロリドの最大血中濃度値を含んでおり、最大血中濃度値が大きくなるほど式2の値が大きくなる可能性があり、逆に分母であるC24hの値が小さい場合、式2の値が大きくなる可能性がある。
【0058】
前記のように、ロイプロリドの最大血中濃度値が大きくなることによって、式2の値が大きい値を示すことは、注射剤で用いるとき、初期過放出が生じることを意味すると言え、C24hの値が小さいため、式2の値が大きくなることは、長期間薬物放出効果を示せないことを意味すると言える。
【0059】
そこで、前記の式2の値が、本発明の範囲内に含まれる場合、ロイプロリドの初期過放出を防止し、ロイプロリドによる薬効を発揮することができ、注射剤で投与するとき、1ヶ月以上ロイプロリドの薬効を持続的に発揮することができると言える。
【0060】
本発明の他の一実施例に係るロイプロリドを含むマイクロ粒子の製造方法は、1)ロイプロリドおよび生分解性高分子を混合して第1混合物を製造するステップと、2)溶媒に界面活性剤を溶解して第2混合物を製造するステップと、3)前記第1混合物および第2混合物は、交差点が形成された第1マイクロチャンネルおよび第2マイクロチャンネルにそれぞれ注入して流し、前記交差点でマイクロ粒子を生成するステップと、4)前記マイクロ粒子を、前記第2混合物を入れた水槽内に収集するステップと、5)前記収集したマイクロ粒子に存在する有機溶媒を除去するステップと、6)前記有機溶媒が除去されたマイクロ粒子を精製水で洗浄および凍結乾燥するステップと、を含み、下記の式1による値が0.5ないし2であってもよい。
【0061】
【0062】
ここで、
D10は、粒子の累積分布で最大値に対して、10%に該当する粒子の直径であり、
D50は、粒子の累積分布で最大値に対して、50%に該当する粒子の直径であり、
D90は、粒子の累積分布で最大値に対して、90%に該当する粒子の直径である。
【0063】
前記1)ステップは、第1混合物を製造するステップであって、ロイプロリドおよび生分解性高分子を有機溶媒に溶解させ、第1混合物を製造するステップであって、前記生分解性高分子は、ポリ乳酸、ポリラクチド、ポリラクチック-コ-グリコール酸、ポリラクチド-コ-グリコリド(PLGA)、ポリホスファジン、ポリイミノカーボネート、ポリホスホエステル、ポリアンヒドリド、ポリオルソエステル、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシバレート、ポリヒドロキシブチレート、ポリアミノ酸およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくは、ポリラクチド-コ-グリコリド(PLGA)であるが、前記の例示に限定されない。
【0064】
また、前記有機溶媒は水と混ざらないものであって、例えば、クロロホルム、クロロエタン、ジクロロエタン、トリクロロエタンおよびこれらの混合物からなる群から選択されたいずれか一つ以上のものであり、好ましくは、ジクロロメタンであるが、例示に限定されるものではなく、生分解性高分子およびロイプロリドを溶解させることができる有機溶媒であって、前記の例示に限定されず、当業者が容易に選択できる有機溶媒であればいずれも使用可能であると言える。
【0065】
前記1)ステップは、ロイプロリドおよび生分解性高分子を溶解させた第1混合物を製造するものであって、溶媒は、前述のように有機溶媒を用いる。これは、ロイプロリドおよび生分解性高分子の溶解特性を用い、有機溶媒を用いて完全に溶解させる。
【0066】
より具体的に、酢酸ロイプロリドを第1溶媒に溶解させ、生分解性高分子を第2溶媒に溶解させる。その後、前記第1溶媒に溶解された酢酸ロイプロリド混合物および第2溶媒に溶解された生分解性高分子混合物を混合し、第1混合物に製造した。
【0067】
前記第1混合物は、ロイプロリドおよび生分解性高分子を1:2ないし1:10の重量の割合で含む。好ましくは、1:2ないし1:8であり、より好ましくは、1:4ないし1:7であってもよい。前記ロイプロリドおよび生分解性高分子の重量の割合が1:2未満の場合、すなわち生分解性高分子を前記重量の割合より未満で含む場合には、ロイプロリドの重量に比べて生分解性高分子の重量の割合が少なく、球形の生分解性高分子粒子にロイプロリドが均一に分布して含まれている形態の徐放性粒子の製造が難しいという問題が発生し、生分解性高分子およびロイプロリドの重量の割合が1:10を超過する場合、すなわち生分解性高分子を前記重量の割合より超過して含む場合には、徐放性粒子内のロイプロリド含有量が少ないため所望の濃度の薬物投与のために多くの量の徐放性粒子を投与しなければならないという問題が発生し得る。
【0068】
より具体的に、前記第1混合物内の生分解性高分子は、15ないし25重量%含み、好ましくは、20重量%であるが、前記の例示に限定されない。
【0069】
前記2)ステップは、第2混合物を製造するステップであって、界面活性剤を水に溶解させて第2混合物を製造する。前記界面活性剤は、生分解性高分子溶液が安定したエマルジョンの形成を助けることができるものであれば制限されることなく使用可能である。具体的には、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤およびこれらの混合物からなる群から選択されたいずれか一つ以上のものであり、さらに具体的に、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、レシチン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマザ油誘導体、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアル酸ナトリウム、エステルアミン、直鎖ジアミン、脂肪族アミンおよびこれらの混合物からなる群から選択されたいずれか一つ以上のものであり、好ましくは、ポリビニルアルコールであるが、例示に限定されない。
【0070】
前記3)ステップは、ウエハ上に形成されたマイクロチャンネルに、第1混合物および第2混合物を注入して流すステップである。
【0071】
より具体的に、マイクロチャンネルは、シリコーンウエハ、または高分子フィルムからなる群から選択された素材で形成されてもよいが、前記素材の例示は、前記の例示に限定されず、マイクロチャンネルの形成の可能な素材はいずれも使用可能である。
【0072】
前記高分子フィルムは、ポリイミド(Polyimide)、ポリエチレン(Polyethylene)、フッ素化エチレンプロピレン(Fluorinated ethylene propylene)、ポリプロピレン(Polypropylene)、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene terephthalate)、ポリエチレンナフタレート(Polyethylene naphthalate)、ポリスルホン(Polysulfone)およびこれらの混合からなる群から選択されてもよいが、前記の例示に限定されない。
【0073】
一例示として、シリコーンウエハにe-beam evaporatorを用いてアルミニウムを蒸着し、フォトリソグラフィ(photolithography)技法を用いて、フォトレジスト(photoresist)をアルミニウムの上にパターニングする。その後、フォトレジストをマスクとして用いてアルミニウムエッチング(etching)し、フォトレジストを除去した後、アルミニウムをマスクとしてシリコーンをDRIE(deep ion reactive etching)でエッチングし、アルミニウムを除去した後、ウエハの上にガラスを両極接合して密封し、前記のマイクロチャンネルを製造する。
【0074】
前記のマイクロチャンネルは、平均直径が80ないし120μmであり、好ましくは、100μmであるが、例示に限定されない。マイクロチャンネルの平均直径が80μm以下の場合、製造される徐放性粒子の直径が40μm未満と小さい徐放性粒子が製造される可能性があって、有効な薬物の放出および生体内吸収に影響を及ぼす可能性がある。また、製造された徐放性粒子の大きさが100μm超過の場合、注射剤で投与するとき、異物感および痛症が増加する可能性があり、製造された粒子の粒度分布が大きくなって均一な粒度の徐放性粒子を製造しにくい。
【0075】
ただ、前記マイクロチャンネルの平均直径は、注入圧力の範囲によって変更されてもよい。また、前記マイクロチャンネルの平均直径は、粒子の平均直径と密接に関連しているが、第1混合物および第2混合物の注入圧力とも密接な関連がある。
【0076】
また、前記マイクロチャンネルの断面幅wおよび断面の高さdは、製造される徐放性粒子の平均直径d’と密接な関連がある。
図8のように、前記マイクロチャンネル断面の幅wは、徐放性粒子の平均直径d’に対して、0.7ないし1.3の割合範囲であり、マイクロチャンネル断面の高さdは、徐放性粒子の平均直径d’に対して、0.7ないし1.3の割合範囲である。
【0077】
すなわち、製造しようとする徐放性粒子の平均直径d’が決定されると、これに応じて、マイクロチャンネル断面の幅wおよび高さdの長さは、d’の0.7ないし1.3の割合範囲で設定すればこそ、所望の大きさの徐放性粒子の製造が可能である。
【0078】
前記3)ステップは、第1混合物および第2混合物を交差点が形成された第1マイクロチャンネルおよび第2マイクロチャンネルに前記注入圧力条件下で流すことである。
【0079】
すなわち、第1混合物は、第1マイクロチャンネルに沿って流れ、第2混合物は、前記第1マイクロチャンネルと交差点を形成するように成形された第2マイクロチャンネルに沿って流れ、第1混合物の流れと出会うことになる。
【0080】
より具体的に、前記第1混合物を第1マイクロチャンネルに注入するとき、700ないし1,300mbarの圧力条件で注入した後、10ないし30mbar/minの第1条件で圧力を上昇させ、前記注入圧力条件が、950ないし1,500mbarに到達するとき、2ないし8mbar/minの第2条件で圧力を上昇させることができる。
【0081】
また、前記第2混合物は、前記第1混合物を第1マイクロチャンネルに注入するとき、圧力条件に対して2ないし4倍の圧力条件で第2マイクロチャンネルに注入させることができる。
【0082】
具体的に、前記マイクロチャンネルを用いた製造方法で、フローメートルを用いてマイクロチャンネル内部を流れる第1混合物、第2混合物の流速を一定の値に設定し、フィードバック制御を通じて圧力を測定したとき、第1混合物がマイクロチャンネルを一定の流速で流すために求められる圧力が時間によって徐々に上昇することを確認した。
【0083】
したがって、前記第1混合物に加える圧力を一定に上昇させる方法を用いて流速の変動性を最小化し、前記第1混合物がマイクロチャンネル内部で徐々に硬化することによって、マイク粒子分布のばらつきまたはチャンネル閉鎖の問題を防止し、目標とするマイクロ粒子の製造収率を高めることができる。
【0084】
また、前記第1混合物および第2混合物をマイクロチャンネルに注入する時の圧力条件は、製造されたマイクロ粒子の平均直径を調節するためのものであり、前記範囲を具体的に満足できない場合、製造された粒子の大きさが均一でない、または前記本発明のマイクロ粒子の平均直径範囲を満足できない、または前記の式1の値を満たすことができないという問題が発生し得る。
【0085】
すなわち、直線方向のマイクロチャンネルに注入される第1混合物より第1混合物の流れと交差点を形成する第2混合物の流れをより早い流速で流すのために、さらに高い圧力条件下で第2混合物を流す。
【0086】
前記のように、第1混合物および第2混合物の流速を異なるようにして、第2混合物の流速を第1混合物の流速より早くすることによって、第1混合物の流れと第2混合物の流れとが出会う地点で、相対的により早い流速を有する第2混合物が第1混合物を圧縮することになり、このとき、第1混合物および第2混合物の反撥力によって第1混合物内の生分解性高分子およびロイプロリドが球状のマイクロ粒子を生成することになり、より具体的に、球形の生分解性高分子にロイプロリドが均一に分布されている形態のマイクロ粒子を形成することになる。
【0087】
前記4)ステップは、マイクロ粒子を収集するステップであって、第2混合物を入れた水槽内でマイクロ粒子を収集して、初期生成されたマイクロ粒子間で凝集する現象(aggregation)を防止する。
【0088】
前記4)ステップは、前記2)ステップで製造した第2混合物、すなわち界面活性剤および水の混合溶液を用いるものであって、第2混合物を前記2)ステップで製造した後、一部はマイクロチャンネルに注入させ、他の一部は4)ステップの水槽に移動させ、収集されたマイクロ粒子間で凝集する現象を防止するために用いられる。
【0089】
前記5)ステップは、水槽内で収集されたマイクロ粒子に存在する有機溶媒を除去するためのステップであって、一定の温度条件および撹拌速度で撹拌し、徐放性粒子の表面に存在する有機溶媒を蒸発させて除去する。このとき、撹拌条件は、5-1)15ないし20℃で、20ないし40分間100ないし300rpmの速度で1次撹拌するステップと、5-2)30ないし40℃で、60ないし120分間100ないし300rpmの速度で2次撹拌するステップと、5-3)40ないし45℃で、4ないし8時間100ないし300rpmの速度で3次撹拌することである。
【0090】
前記撹拌速度は、1次および2次撹拌ステップは、温度条件および撹拌進行時間を異ならせて、撹拌工程を行う。
【0091】
前記のように、温度条件を1次撹拌工程に比べて2次撹拌工程で上昇させて撹拌することを特徴とし、温度を段階的に上昇させることによって、マイクロ粒子の表面に存在する有機溶媒の蒸発速度を調節することができる。すなわち、マイクロ粒子の表面に存在する有機溶媒を徐々に蒸発させ、滑らか表面を有するマイクロ粒子を製造することができる。
【0092】
第1混合物および第2混合物がマイクロチャンネルを流れる時の温度も15ないし20℃であり、好ましくは、17℃である。すなわち、マイクロチャンネルを流れ、交差点を形成してマイクロ粒子を生成した後、収集されたマイクロ粒子を1次撹拌するまでは一定に15ないし20℃に低温を維持する。マイクロ粒子の製造過程で低温を維持すればこそ、球形の粒子を製造および維持が可能である。すなわち、低温条件ではない場合には、一定の球状の粒子を製造しにくいという問題が発生する。
【0093】
その後、2次撹拌工程および3次撹拌工程は温度を漸進的に上昇させ、撹拌時間を増やし、マイクロ粒子の表面に存在する有機溶媒が徐々に蒸発するようにして、表面で有機溶媒が蒸発することによって、マイクロ粒子の表面に及ぶ影響を最小に抑えることができる。すなわち、急激に有機溶媒が蒸発する場合、有機溶媒の蒸発によってマイクロ粒子の表面が滑らかでなく、粗くなる問題が発生し得る。このような問題を防止するために、前記のように、温度条件を漸進的に上昇させ、撹拌工程を行う時間も増加させ、有機溶媒の蒸発速度を調節することができ、このような有機溶媒の蒸発速度の調節によって、製造されたマイクロ粒子の表面粗さを制御することができる。
【0094】
最後に、前記6)ステップは、マイクロ粒子を洗浄および乾燥するステップであって、撹拌して表面の有機溶媒を全て除去したマイクロ粒子を除菌ろ過された精製水で数回洗浄してマイクロ粒子に残存する界面活性剤を除去し、その後、凍結乾燥する。
【0095】
最終的に生成されたマイクロ粒子は、球形の生分解性高分子からなるマイクロ粒子にロイプロリドが均一に分布されている形態であり、ロイプロリドおよび生分解性高分子を1:2ないし1:10の重量の割合で含む。
【0096】
前記マイク粒子内に含まれたロイプロリドおよび生分解性高分子の重量の割合は、第1混合物での重量の割合と同一であるが、これは、マイクロ粒子を製造し、有機溶媒を全て蒸発させて除去することによって、第1混合物内での重量の割合と同一の割合でロイプロリドおよび生分解性高分子を含有するマイクロ粒子を製造することができる。
【0097】
本発明の他の一実施例に係るロイプロリドを含むマイクロ粒子を含有する注射用組成物は、ロイプロリドを含むマイクロ粒子と、懸濁溶剤とを含んでもよい。
【0098】
前記注射用組成物は、懸濁溶剤にマイクロ粒子が均一に含まれた形態であり、注射用組成物を投与するとき、体内にマイク粒子自体を注入し、ロイプロリドの長期間投与効果を示すことができる。
【0099】
より具体的に、体内にマイクロ粒子が注入されると、生分解性高分子の分解によってロイプロリドが放出される効果が示されることになり、このとき、本発明のマイクロ粒子は、生分解性高分子およびロイプロリドが均一に混合した形態であるので、長期間一定の濃度のロイプロリドの投与効果を示すことができる。
【0100】
すなわち、本発明の注射用組成物を用いて1回注射時に、1ヶ月以上体内でロイプロリドが持続的に放出されることによって、毎日服用しなければならないという問題を解決し、使用者の便宜性を高めることができる。より具体的に、本発明の注射用組成物を用いる場合、1ヶ月間ロイプロリドを持続的に放出できる長期持続剤形、3ヶ月間ロイプロリドを持続的に放出できる長期持続剤形、または6ヶ月間ロイプロリドを持続的に放出できる長期持続剤形として提供することもできる。
【0101】
前記懸濁溶剤は、等張化剤、懸濁化剤および溶剤を含む。
【0102】
より具体的に、前記等張化剤は、D-マンニトール(D-Mannitol)、マルチトール(Maltitol)、ソルビトール(Sorbitol)、ラクチトール(Lactitol)、キシリトール(Xylitol)、塩化ナトリウム(Sodium chloride)およびその混合からなる群から選択されてもよく、好ましくは、D-マンニトールであるが、前記の例示に限定されない。
【0103】
前記懸濁化剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム(Soduim Carboxymethylcellulose)、ポリソルベート 80(Polysorbate 80)、デンプン(starch)、デンプン誘導体、多価アルコール類、キトサン(chitosan)、キトサン誘導体、セルロース(cellulose)、セルロース誘導体、コラーゲン(collagen)、ゼラチン(gelatin)、ヒアルロン酸(hyaluronic acid、HA)、アルギン酸(alginic acid)、アルギン(algin)、ペクチン(pectin)、カラギーナン(carrageenan)、コンドロイチン(chondroitin)、コンドロイチンスルフェート(chondroitin sulfate)、デキストラン(dextran)、デキストランスルフェート(dextran sulfate)、ポリリシン(polylysine)、チチン(titin)、フィブリン(fibrin)、アガロース(agares)、フルラン(fluran)、キサンタンガム(xanthan gum)およびその混合からなる群から選択され、好ましくは、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびポリソルベート 80であるが、前記の例示に限定されない。
【0104】
前記溶剤は、注射用水(Injection water)を用いてもよく、注射用水として使用可能な溶剤は制限されることなくいずれも使用可能である。
【0105】
製造例1
ロイプロリドを含むマイクロ粒子の製造
酢酸ロイプロリドをジメチルスルホキシド(Dimethyl sulfoxide)に溶解してAPI混合物を製造した。ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)をジクロロメタンに溶解させ、生分解性高分子混合物を製造した。
【0106】
前記API混合物および生分解性高分子混合物を混合して第1混合物を製造した。このとき、第1混合物内の酢酸ロイプロリドおよび生分解性高分子の重量の割合は1:5である。
【0107】
界面活性剤であるポリビニルアルコールを水に混合し、ポリビニルアルコールを0.5重量%含む第2混合物を製造した。
【0108】
前記第1混合物および第2混合物をシリコーンウエハ上に形成されたマイクロチャンネルに注入して流した。
【0109】
このとき、第1混合物および第2混合物を一定の流速で流すのために、第1混合物は、1000mbarの圧力条件で始め、分当たり20mbarの上昇率で一定に圧力を上昇させる条件下で流した後、1200mbarに到逹するとき、分当たり7mbarの上昇率に変更した条件下で流し、第2混合物は、3000mbarの圧力条件下で流した。温度条件は、17℃、撹拌速度は、300rpmを維持した。
【0110】
前記第1混合物の流れおよび第2混合物の流れとが出会う交差点で生成されたマイクロ粒子を第2混合物を入れた水槽内で収集した。前記水槽内に収集されたマイクロ粒子を17℃で、30分間300rpmの速度で1次撹拌し、38℃に温度を上昇させ、1時間400rpmの速度で2次撹拌し、その後、45℃に温度を上昇させ、3時間500rpmの速度で3次撹拌した。
【0111】
撹拌を完了したマイクロ粒子を除菌ろ過された精製水で数回洗浄し、凍結乾燥してマイクロ粒子を製造した。
【0112】
製造例2
生分解性高分子として、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)およびポリ乳酸(PLA)を1.7:18.3の重量の割合でジクロロメタンに溶解して生分解性高分子混合物を製造したことを除いて、製造例1と同様の方法でマイクロ粒子を製造した。
【0113】
製造例3
生分解性高分子として、ポリ乳酸(PLA)をジクロロメタンに溶解して生分解性高分子混合物を製造したことを除いて、製造例1と同様の方法でマイクロ粒子を製造した。
【0114】
その後、製造例1のマイク粒子および製造例3のマイクロ粒子を1:3の重量の割合で混合した。
【0115】
製造例4
製造例1のマイク粒子および製造例3のマイクロ粒子を1:4の重量の割合で混合した。
【0116】
製造例5
前記第1混合物内の酢酸ロイプロリドおよび生分解性高分子の重量の割合が1:4であることを除いて、製造例1と同様の方法でマイクロ粒子を製造した。
【0117】
製造例6
前記第1混合物内の酢酸ロイプロリドおよび生分解性高分子の重量の割合が1:7であることを除いて、製造例1と同様の方法でマイクロ粒子を製造した。
【0118】
製造例7
前記第1混合物内の酢酸ロイプロリドおよび生分解性高分子の重量の割合が1:2であることを除いて、製造例1と同様の方法でマイクロ粒子を製造した。
【0119】
比較例1
比較例で、市販中のリュープリンDPS注(韓国竹田製薬)を用いた。前記リュープリンDPS注に対する具体的な情報は、下記の通りである。
【0120】
【0121】
前記マイクロ粒子は、注射剤形で製造しており、下記の懸濁溶剤を用いた。
【0122】
【0123】
実験例1
マイクロ粒子の性状の検討
製造例および比較例に対するマイクロ粒子の性状を検討するために、製造されたマイクロ粒子の性状をSEM写真を通じて検討した。
【0124】
図1および2は、製造例1ないし7のマイクロ粒子のSEM写真に関するものであり、完全球形の徐放性粒子が生成されることが確認できる。
【0125】
図3および4は、比較例1のリュープリンDPS注のSEM写真であり、ばらついた粒子が混在されていることが確認できる。
【0126】
マイクロ粒子の直径を具体的に確認するため、Microtrac粒度分析器を用いて、製造例1、製造例2および比較例1に対する分析を行った。
【0127】
【0128】
前記の表3によると、比較例1は、D10ないしD95の粒子直径が5.88μmないし52.07μmであり、多様に分布することが確認できる。これは、前述のように、初期過放出のために、多様な大きさのマイクロ粒子を含むように構成したものである。
【0129】
これに対し、本発明のマイクロ粒子は、55.29μmないし73.09μm(製造例1)および72.26μmないし95.78μm(製造例2)であり、粒子の直径分布が均一に分布することが確認できる。また、前記の式による値も、製造例1および製造例2は、1に近い値を示すことが確認できるのに対し、比較例1は、1より大きい値であり、大きさ分布が均一でないことが確認できる。
【0130】
他の比較例として、市販中のロイプロリド剤形に対して購買し、これに対する粒子の性状をSEM写真で確認した。
【0131】
図5は、ローレリンデポ注(東国製薬)に関するものであり、
図7は、ルピーアデポ注(大熊製薬)に関するものである。
【0132】
前記
図5および
図6によると、粒子の大きさが均一でなく、多様に分布していることが確認でき、粒子の表面が滑らかでなく、粗い表面状態を示すことが確認すできる。
【0133】
実験例2
薬動学特性の評価
本発明のロイプロリドを含むマイク粒子およびこれを含有する注射剤形に対する薬動学評価を確認した。
【0134】
前記マイクロ粒子は、1ヶ月以上持続放出剤形であり、注射後1ヶ月間ロイプロリドを持続的に放出してロイプロリドによる薬効を維持するか否かを確認した。
【0135】
本発明のマイクロ粒子を通じて、マウスに投与される酢酸ロイプロリドは、0.1mg/kgである。
【0136】
体内血中濃度を確認するため、10匹のマウスに注射し、24h、18h、12h、6h、0h、注射剤をマウスに投与した後、0.5h、1h、3h、6h、1day、2day、3day、4day、1week、2week、3weekおよび4weekに採血して分析した。下記のPK値は、10匹のマウスに対するPK平均値である。
【0137】
【0138】
同様の方式で、3ヶ月間薬物が持続放出されるか否かを確認するため、本発明の3ヶ月以上持続放出剤形であるマイクロ粒子を通じて、マウスに投与される酢酸ロイプロリドは0.3mg/kgに調節したことを除いて、同様の方式で実験を行った。比較例1に対しても、同様の方式で実験を行った。
【0139】
実験結果は、下記の表5の通りである。
【0140】
【0141】
前記Cmaxは、注射剤を投与し、24時間のロイプロリドの最大血中濃度であり、前記C24hは、注射剤を投与して24時間経過後、採血した血液内のロイプロリドの血中濃度値である。
【0142】
前記の表4および表5によると、本発明のマイクロ粒子は、1ヶ月剤形および3ヶ月剤形の両方で初期過放出がなく、1ヶ月または3ヶ月間ロイプロリドが持続的に放出されることが確認できる。
【0143】
前記の式による値を計算した結果でも、1ヶ月剤形は2.79であり、3ヶ月剤形は5.55であり、本発明の範囲内に含まれることが確認できるが、比較例1は、18.91であり、本発明の範囲から外れることが確認できる。
【0144】
また、比較例1は、本発明に比べて、初期過放出が多く起きることを実験を通じて確認することができる。
【0145】
実験例3
薬動学特性の評価
本発明のロイプロリドを含むマイク粒子およびこれを含有する注射剤形に対する薬動学評価を確認した。
【0146】
評価は、比較例1および本発明の製造例2の剤形をビーグル犬に投与し、採血してロイプロリドの血中濃度(PK)およびテストステロンの血中濃度(PD)を測定した。
【0147】
前記3ヶ月以上持続放出剤形として用いた製造例1のマイクロ粒子を含む注射剤は計92.64mgであり、注射剤内のロイプロリドは11.25mg含んだ。また、比較例1は、リュープリンDPS注11.25mgをビーグル犬に投与した。
【0148】
実験のために、製造例1および比較例1を各ビーグル犬5匹に投与し、投与経路は、静脈注射方式を用いた。
【0149】
前記製造例1および比較例1をビーグル犬に投与前、24h、18h、12h、6h、0h、製造例1および比較例1をビーグル犬に投与後、0h、0.25h、0.5h、1h、2h、3h、6h、12h、1day、2day、3day、4day、1week、2week、3week、4week、6week、8week、12week、13weekおよび14weekに採血し、分析した。
【0150】
採血後、5匹ビーグル犬に対するPKおよびPDの平均値を計算した。実験結果は、下記の表6、
図7ないし
図9の通りである。
【0151】
【0152】
前記Cmaxは、注射剤を投与し、24時間のロイプロリドの最大血中濃度であり、前記C24hは、注射剤を投与して24時間経過後、採血した血液内のロイプロリドの血中濃度値である。
【0153】
前記実験結果によると、本発明のマイクロ粒子を含む注射剤は、PK測定の結果、注射剤の投与後、24時間ロイプロリドの最大血中濃度が0.407ng/mlであり、比較例1は、98.570ng/mlであり、大きい差を示すことを確認した。これにより、前記の式による値が、本発明は3.42と確認され、比較例1は、52.68であり、大きい差を示すことを確認した。
【0154】
また、PD測定の結果によると、本発明のマイクロ粒子は、6週経過時点で0.5ng/mlと去勢効果が発現されることが確認できるのに対し、比較例1は、0.5ng/ml以下に現われず、実質的な去勢効果が現われないことが確認できる。
【0155】
すなわち、より具体的に、
図9は、製造例2および比較例1を投与し、PD値を確認するための比較結果であり、製造例2のPD値は、5週が経過した後、テストステロン数値が0.5ng/ml以下に現れることが確認でき、ロイプロリドによって効果が発現されることが確認できる。これに対し、比較例1の場合、14週間血中テストステロン数値を確認した結果、0.5ng/ml以上と確認され、ロイプロリドによる効果が発現されないことが確認できる。
【0156】
以上で本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、以下の請求の範囲で定義している本発明の基本概念を用いた当業者の様々な変形および改良形態も、本発明の権利範囲に属するものである。
【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明は、ロイプロリドを含むマイク粒子およびその製造方法に関するものである。
【国際調査報告】