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▶ 山▲東▼先声生物制▲薬▼有限公司の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】抗BCMAナノ抗体及びその応用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/46 20060101AFI20241031BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20241031BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20241031BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20241031BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241031BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20241031BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241031BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20241031BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241031BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 51/10 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 49/16 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 49/22 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20241031BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20241031BHJP
【FI】
C07K16/46
C12N1/15 ZNA
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N15/13
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K39/395 T
A61K48/00
A61K51/10 100
A61K51/10 200
A61K49/16
A61K49/00
A61K49/22
A61K47/68
A61K39/395 L
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533063
(86)(22)【出願日】2022-12-02
(85)【翻訳文提出日】2024-05-31
(86)【国際出願番号】 CN2022136074
(87)【国際公開番号】W WO2023098846
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】202111468274.X
(32)【優先日】2021-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202211000054.9
(32)【優先日】2022-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523079059
【氏名又は名称】山▲東▼先声生物制▲薬▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Shandong Simcere Biopharmaceutical Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.1,Heilongjiang Road,Yantai Economic and Technological Development Zone,Yantai,Shandong 264006,China
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】付 雅媛
(72)【発明者】
【氏名】游 ▲術▼▲梅▼
(72)【発明者】
【氏名】殷 博薇
(72)【発明者】
【氏名】曹 卓▲暁▼
(72)【発明者】
【氏名】唐 任宏
(72)【発明者】
【氏名】任 晋生
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA25
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA12
4C084AA13
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C085AA14
4C085AA16
4C085AA25
4C085AA26
4C085BB01
4C085BB33
4C085BB34
4C085BB35
4C085BB36
4C085BB37
4C085CC03
4C085CC31
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4C085HH01
4C085HH03
4C085HH07
4C085HH09
4C085HH11
4C085KA04
4C085KA05
4C085KA27
4C085KA28
4C085KA29
4C085KB82
4C085LL18
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
BCMAに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片であって、そのコード核酸、発現ベクター及び発現細胞、製造方法、医薬組成物、及び疾患を治療するための使用、例えば、腫瘍の治療における使用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
BCMAに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片であって、前記抗体又はその抗原結合断片は、CDR1、CDR2及びCDR3を含み、前記CDR1は、SEQ ID NO:7~21、24~31及び92~101のうちのいずれか一つの配列に示すVHHドメインのHCDR1を含み、前記CDR2は、SEQ ID NO:7~21、24~31及び92~101のうちのいずれか一つの配列に示すVHHドメインのHCDR2を含み、且つ前記CDR3は、SEQ ID NO:7~21、24~31及び92~101のうちのいずれか一つの配列に示すVHHドメインのHCDR3を含む、抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、Kabat、IMGT又はChothia番号付けシステムに基づいて確定され、
任意選択的に、前記HCDR1は、SEQ ID NO:34、37、40、42、45、48、50、52、54、56、58、64、67、71、74、77、81、84、86、87、104、107、113、116、119、121、124、127、131、134、138又は141に示すアミノ酸配列を含み、
任意選択的に、前記HCDR2は、SEQ ID NO:35、38、41、43、46、49、59、61、63、65、68、70、72、75、78、79、82、85、88、89、90、91、102、105、108、109、111、114、117、120、122、125、128、129、132、135、136、139、142、143、148、150、152、153、155又は157に示すアミノ酸配列を含み、
任意選択的に、前記HCDR3は、SEQ ID NO:36、39、44、47、51、53、55、57、60、62、66、69、73、76、80、83、103、106、110、112、115、118、123、126、130、133、137、140、144、145、146、147、149、151、154又は156に示すアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:34、35及び36、SEQ ID NO:37、38及び39、又はSEQ ID NO:40、41及び36に示すアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:42、43及び44、SEQ ID NO:45、46及び47、又はSEQ ID NO:48、49及び44に示すアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:50、35及び51、SEQ ID NO:52、38及び53、又はSEQ ID NO:54、41及び51に示すアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:34、35及び55、SEQ ID NO:56、38及び57、又はSEQ ID NO:58、41及び55に示すアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:34、59及び60、SEQ ID NO:56、61及び62、又はSEQ ID NO:58、63及び60に示すアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:64、65及び66、SEQ ID NO:67、68及び69、又はSEQ ID NO:58、70及び66に示すアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:71、72及び73、SEQ ID NO:74、75及び76、又はSEQ ID NO:77、78及び73に示すアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:34、79及び80、SEQ ID NO:81、82及び83、又はSEQ ID NO:84、85及び80に示すアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:86、35及び36に示すアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:87、88及び44に示すアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:42、88及び44に示すアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:42、89及び44に示すアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:42、90及び44に示すアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:42、91及び44に示すアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:71、102及び103、SEQ ID NO:104、105及び106、又はSEQ ID NO:107、108及び103に示すアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:71、109及び110、SEQ ID NO:104、111及び112、又はSEQ ID NO:107、108及び110に示すアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:113、114及び115、SEQ ID NO:116、117及び118、又はSEQ ID NO:119、120及び115に示すアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:121、122及び123、SEQ ID NO:124、125及び126、又はSEQ ID NO:127、128及び123に示すアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:113、129及び130、SEQ ID NO:131、132及び133、又はSEQ ID NO:134、135及び130に示すアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:113、136及び137、SEQ ID NO:138、139及び140、又はSEQ ID NO:141、142及び137に示すアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:34、143及び144、SEQ ID NO:37、38及び145、又はSEQ ID NO:40、41及び144に示すアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:34、143及び146、SEQ ID NO:56、38及び147又はSEQ ID NO:58、41及び146に示すアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:34、148及び149、SEQ ID NO:37、150及び151、又はSEQ ID NO:40、152及び149に示すアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:71、153及び154、SEQ ID NO:104、155及び156、又はSEQ ID NO:107、157及び154に示すアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
前記CDR1、CDR2及び/又はCDR3は、請求項1又は2に記載のHCDR1、HCDR2及び/又はHCDR3に1個、2個又は3個の突然変異が発生するアミノ酸配列を含み、前記突然変異は、挿入、欠失及び/又は置換から選択され、前記置換は、好ましくは、保存的アミノ酸の置換である、請求項1又は2に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
前記CDR1、CDR2及び/又はCDR3は、前述HCDR1、HCDR2及び/又はHCDR3に比べて少なくとも80、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1又は2に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
前記抗体又はその抗原結合断片は、請求項1~4のいずれか一項に記載のCDR1、CDR2及びCDR3を含む単一ドメイン抗体を含み、
好ましくは、前記単一ドメイン抗体は、SEQ ID NO:7~21、24~31及び92~101のうちのいずれか一つの配列に示すアミノ酸配列を含み、
任意選択的に、前記単一ドメイン抗体は、SEQ ID NO:7~21、24~31及び92~101のうちのいずれか一つの配列に示すアミノ酸配列に比べて多くとも20個、19個、18個、17個、16個、15個、14個、13個、12個、11個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個又は1個の突然変異が発生するアミノ酸配列を含み、前記突然変異は、挿入、欠失及び/又は置換から選択され、前記置換は、好ましくは、保存的アミノ酸の置換であり、
任意選択的に、前記単一ドメイン抗体は、SEQ ID NO:7~21、24~31及び92~101のうちのいずれか一つの配列に示すアミノ酸配列に比べて少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項6】
前記抗体は、SEQ ID NO:7~21、24~31及び92~101のうちのいずれか一つの配列に示すVHHドメインにおけるFR領域を含み、
任意選択的に、前記抗体は、SEQ ID NO:7~21、24~31及び92~101のうちのいずれか一つの配列に示すVHHドメインにおけるFR領域に比べて多くとも15個、14個、13個、12個、11個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個又は1個の突然変異が発生するアミノ酸配列を含み、前記突然変異は、挿入、欠失及び/又は置換から選択され、前記置換は、好ましくは、保存的アミノ酸の置換であり、
任意選択的に、前記抗体は、SEQ ID NO:7~21、24~31及び92~101のうちのいずれか一つの配列に示すVHHドメインにおけるFR領域に比べて少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項7】
前記抗体又はその抗原結合断片は、(1)キメラ抗体又はその断片、(2)ヒト化抗体又はその断片、又は(3)完全ヒト抗体又はその断片から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項8】
前記抗体又はその抗原結合断片は、抗体重鎖定常領域を含むか又は含まず、任意選択的に、前記抗体重鎖定常領域は、ヒト、アルパカ、マウス、ラット、ウサギ及びヒツジから選択され、任意選択的に、前記抗体重鎖定常領域は、IgG、IgM、IgA、IgE及びIgDから選択され、任意選択的に、前記IgGは、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4から選択され、任意選択的に、前記重鎖定常領域は、Fc領域、CH3領域及び完全な重鎖定常領域から選択され、好ましくは、前記重鎖定常領域は、ヒトFc領域であり、好ましくは、前記抗体又はその抗原結合断片は重鎖抗体である、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項9】
前記抗体又はその抗原結合断片には、さらに治療剤又はトレーサーがカップリングされており、好ましくは、前記治療剤は、放射性同位体、化学療法薬又は免疫調節剤から選択され、前記トレーサーは、放射線造影剤、常磁性イオン、金属、蛍光標識、化学発光標識、超音波造影剤及び光増感剤から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項10】
前記抗体又はその抗原結合断片には、さらに他の機能性分子が連結されており、好ましくは、前記他の機能性分子は、シグナルペプチド、タンパク質タグ、サイトカイン、血管新生阻害剤及び免疫チェックポイント阻害剤のうちの一つ又は複数から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項11】
多重特異性抗原結合分子であって、前記多重特異性抗原結合分子は、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片、及びBCMA以外の他の抗原に結合する抗原結合分子、又は請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片とは異なるBCMAエピトープに結合するものを含み、任意選択的に、前記BCMA以外の他の抗原は、CD3(好ましくは、CD3εである)、CD16、CD137、CD258、PD-1、PD-L1、4-1BB、CD40、CD64、EGFR、VEGF、HER2、HER1、HER3、IGF-1R、ホスファチジルセリン(Phosphatidylserine、PS)、C-Met、HSA、GPRC5D、MSLN、血液脳関門受容体、GPC3、PSMA、CD33、GD2、ROR1、ROR2、FRα及びGucy2Cから選択され、
好ましくは、前記抗原結合分子は、抗体又はその抗原結合断片であり、
好ましくは、前記多重特異性抗原結合分子は、二重特異性、三重特異性又は四重特異性であり、
好ましくは、前記多重特異性抗原結合分子は、2価、3価、4価、5価又は6価である、多重特異性抗原結合分子。
【請求項12】
単離された核酸断片であって、前記核酸断片は、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片又は請求項11に記載の多重特異性抗原結合分子をコードする、核酸断片。
【請求項13】
請求項12に記載の核酸断片を含む、ベクター。
【請求項14】
宿主細胞であって、前記宿主細胞は、請求項12に記載の核酸断片又は請求項13に記載のベクターを含み、好ましくは、前記細胞は、原核細胞又は真核細胞、例えば、細菌(例えば、大腸菌)、真菌(例えば、酵母)、昆虫細胞又は哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞株又は293T細胞株)である、宿主細胞。
【請求項15】
請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合断片又は請求項11に記載の多重特異性抗原結合分子を製造する方法であって、前記方法は、請求項14に記載の細胞を培養することと、前記細胞により発現される抗体、抗原結合断片又は多重特異性抗原結合分子を単離することとを含む、方法。
【請求項16】
医薬組成物であって、前記医薬組成物は、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合断片、請求項11に記載の多重特異性抗原結合分子、請求項12に記載の核酸断片、請求項13に記載のベクター又は請求項15に記載の方法に従って製造された生成物を含み、任意選択的に、前記医薬組成物は、薬学的に許容可能なキャリア、希釈剤又は助剤をさらに含み、任意選択的に、前記医薬組成物は、追加の抗腫瘍剤をさらに含む、医薬組成物。
【請求項17】
腫瘍又は癌を治療する方法であって、前記方法は、有効量の請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合断片、請求項11に記載の多重特異性抗原結合分子、請求項12に記載の核酸断片、請求項13に記載のベクター、請求項15に記載の方法に従って製造された生成物又は請求項16に記載の医薬組成物を被験者に投与することを含み、任意選択的に、前記腫瘍又は癌は、BCMAを発現する腫瘍又は癌であり、好ましくは、前記腫瘍又は癌はB細胞リンパ腫であり、より好ましくは、多発性骨髄腫(MM)である、方法。
【請求項18】
請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合断片、請求項11に記載の多重特異性抗原結合分子、請求項12に記載の核酸断片、請求項13に記載のベクター、請求項15に記載の方法に従って製造された生成物又は請求項16に記載の医薬組成物の、腫瘍又は癌を治療する医薬品の製造における使用であって、任意選択的に、前記腫瘍又は癌は、BCMAを発現する腫瘍又は癌であり、好ましくは、前記腫瘍又は癌はB細胞リンパ腫であり、より好ましくは、多発性骨髄腫(MM)である、使用。
【請求項19】
請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合断片、請求項11に記載の多重特異性抗原結合分子、請求項12に記載の核酸断片、請求項13に記載のベクター、請求項15に記載の方法に従って製造された生成物又は請求項16に記載の医薬組成物の、腫瘍又は癌を治療するための使用であって、任意選択的に、前記腫瘍又は癌は、BCMAを発現する腫瘍又は癌であり、好ましくは、前記腫瘍又は癌はB細胞リンパ腫であり、より好ましくは、多発性骨髄腫(MM)である、使用。
【請求項20】
請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合断片、請求項11に記載の多重特異性抗原結合分子、請求項12に記載の核酸断片、請求項13に記載のベクター、請求項15に記載の方法に従って製造された生成物又は請求項16に記載の医薬組成物を含む、キット。
【請求項21】
生物学的試料におけるBCMA発現を検出する方法であって、前記方法は、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片とBCMAとの間で複合体を形成し得る条件下で、前記生物学的試料を前記の抗体又はその抗原結合断片に接触させることを含み、好ましくは、前記方法は、前記複合体の形成を検出し、試料におけるBCMAの存在又は発現レベルを指示することをさらに含む、方法。
【請求項22】
請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片の、BCMA検出試薬の製造における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2021年12月03日に中国国家知識産権局に出願された、特許出願番号が202111468274.Xであり、発明名称が「BCMAナノ抗体及びその応用」である中国特許出願、及び2022年08月19日に中国国家知識産権局に出願された、特許出願番号が20221100054.9であり、発明名称が「抗BCMAナノ抗体及びその応用」である中国特許出願の優先権を主張する。上記先願は、その全体が参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
本出願は、バイオ医薬分野に関し、具体的には、抗BCMAナノ抗体及びその応用に関する。
【背景技術】
【0003】
多発性骨髄腫(multiple myeloma、MM)は、骨髄から発生する悪性形質細胞腫であり、B細胞リンパ腫の一種であり、形質細胞腫とも呼ばれる。その特徴は、骨髄形質細胞の異常増殖にモノクローナル免疫グロブリン又は軽鎖(Mタンパク質)過剰産生を伴うことであり、ごく少数の患者は、Mタンパク質を産生しない非分泌型MMであってもよい。多発性骨髄腫は、多発性骨溶解病変、高カルシウム血症、貧血、腎臓損傷を伴うことが多い。正常な免疫グロブリンの産生が抑制されるため、様々な細菌感染が起こりやすい。
【0004】
多発性骨髄腫の発生率は、全ての腫瘍の1%を占め、血液悪性腫瘍の10~15%を占める。男女比は1.6:1であり、大多数の患者の年齢は>40歳である。多発性骨髄腫の治療は、化学療法及び造血幹細胞移植を含む。ここで、レナリドミドに代表される免疫調節剤及びボルテゾミブに代表されるプロテアーゼ阻害剤は、単剤又は併用の形で良好な薬効を示し、多発性骨髄腫患者の一般的な治療手段となっている。しかし、多発性骨髄腫は依然として治癒不能な疾患と考えられており、現在の治療手段は、多発性骨髄腫の症状を緩和するものに過ぎず、いずれも腫瘍を完全に除去することができず、ほとんどの患者は結局再発する。そのため、新たな治療法には切実な需要がある。
【0005】
B細胞成熟抗原(BCMA)は、CD269又はTNFRSF17とも呼ばれ、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーのメンバーであり、1990年代初頭に初めて発見された。該受容体は、主に成熟Bリンパ球及び形質細胞の表面に発現し、Bリンパ球の成熟のマーカータンパク質であり、他の組織細胞ではほとんど発現しない。構造的に、BCMAは、細胞外セグメント(aa1-54)、膜貫通領域(aa55-77)及び細胞内セグメント(aa78-184)という3つの主なドメインからなる。B細胞活性化因子(BAFF)及び増殖誘導リガンド(APRIL)は、BCMAの主なリガンドであり、BCMAとの相互作用によって細胞刺激シグナルを伝達し、TRAF依存性NF-κB、JNK経路を活性化し、B細胞の増殖及び生存率を増加させる。BCMAは、MM細胞において高度に発現し、多発性骨髄腫の理想的な抗原標的である。BCMAは、ヒトサル相同性が88%であり、交差結合抗体のスクリーニングには一定の困難がある。
【0006】
BCMAに対するCAR T、二重特異性抗体及びADCなどの治療療法は、重要な進展を遂げ、明るい見通しを示したが、より高効率な次世代のBCMA特異性抗体及びそれに基づくバイオ治療製品の開発には依然として差し迫った需要がある。
【発明の概要】
【0007】
本出願は、BCMAに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片、多重特異性抗原結合分子、キメラ抗原受容体、免疫エフェクター細胞、核酸断片、ベクター、宿主細胞、医薬組成物、キット、製造方法及び疾患の治療及びBCMAの検出におけるその応用を提供する。
【0008】
一態様では、本出願は、BCMAに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を提供し、ここで、前記抗体又はその抗原結合断片は、CDR1、CDR2及びCDR3を含み、前記CDR1は、SEQ ID NO:7~21、24~31及び92~101のうちのいずれか一つの配列に示すVHHドメインのHCDR1を含み、前記CDR2は、SEQ ID NO:7~21、24~31及び92~101のうちのいずれか一つの配列に示すVHHドメインのHCDR2を含み、且つ前記CDR3は、SEQ ID NO:7~21、24~31及び92~101のうちのいずれか一つの配列に示すVHHドメインのHCDR3を含む。
【0009】
別の態様では、本出願は、多重特異性抗原結合分子を提供し、ここで、前記多重特異性抗原結合分子は、前述抗体又はその抗原結合断片、及びBCMA以外の他の抗原に結合する抗原結合分子、又は前述抗体又はその抗原結合断片とは異なるBCMAエピトープに結合するものを含む。
【0010】
別の態様では、本出願は、単離された核酸断片を提供し、ここで、前記核酸断片は、前述抗体又はその抗原結合断片又は前述多重特異性抗原結合分子をコードする。
【0011】
別の態様では、本出願は、ベクターを提供し、ここで、前記ベクターは前述核酸断片を含む。
【0012】
別の態様では、本出願は、宿主細胞を提供し、ここで、前記宿主細胞は、前述核酸断片又は前述ベクターを含む。
【0013】
別の態様では、本出願は、前述抗体もしくはその抗原結合断片又は前述多重特異性抗原結合分子を製造する方法を提供し、前記方法は、前述細胞を培養することと、前記細胞により発現される抗体、抗原結合断片又は多重特異性抗原結合分子を単離することとを含む。
【0014】
別の態様では、本出願は、医薬組成物を提供し、ここで、前記医薬組成物は、前述抗体もしくはその抗原結合断片、前述多重特異性抗原結合分子、前述核酸断片、前述ベクター又は前述方法に従って製造された生成物を含む。
【0015】
別の態様では、本出願は、腫瘍又は癌を治療する方法を提供し、ここで、前記方法は、有効量の前述抗体もしくはその抗原結合断片、前述多重特異性抗原結合分子、前述核酸断片、前述ベクター、前述方法に従って製造された生成物又は前述医薬組成物を被験者に投与することを含む。
【0016】
別の態様では、本出願は、前述抗体もしくはその抗原結合断片、前述多重特異性抗原結合分子、前述核酸断片、前述ベクター、前述方法に従って製造された生成物又は前述医薬組成物の、腫瘍又は癌を治療する医薬品の製造における使用を提供する。
【0017】
別の態様では、本出願は、前述抗体もしくはその抗原結合断片、前述多重特異性抗原結合分子、前述核酸断片、前述ベクター、前述方法に従って製造された生成物又は前述医薬組成物の、腫瘍又は癌を治療するための使用を提供する。
【0018】
別の態様では、本出願は、キットを提供し、ここで、前記キットは、前述抗体もしくはその抗原結合断片、前述多重特異性抗原結合分子、前述核酸断片、前述ベクター、前述方法に従って製造された生成物又は前述医薬組成物を含む。
【0019】
別の態様では、本出願は、生物学的試料におけるBCMA発現を検出方法を提供し、ここで、前記方法は、前述抗体又はその抗原結合断片とBCMAとの間で複合体を形成し得る条件下で、前記生物学的試料を前記の抗体又はその抗原結合断片と接触させることを含む。
【0020】
別の態様では、本出願は、前述抗体又はその抗原結合断片の、BCMA検出試薬の製造における使用を提供する。
【0021】
本出願は、BCMA標的に対する高い親和性を有する抗体又はその抗原結合断片を提供し、BCMAとそのリガンドAPRILとの結合をより良く遮断することによって、BCMA抗体医薬品及び細胞治療製品により良い選択肢を提供し、多発性骨髄腫、特に再発/難治性多発性骨髄腫の治療手段の不足を補うために重要な意義を持つ。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1A】対照抗体とヒトBCMA-Hisタンパク質との結合反応のELISAによる検出を示した図である。
図1B】対照抗体とサルBCMA-Hisタンパク質との結合反応のELISAによる検出を示した図である。
図2A】REGN5459-hIgG1及びHPN217-hHcAb抗体によるH929細胞のBCMA発現量の検出のFACS結果を示した図である。
図2B】REGN5459-hIgG1及びHPN217-hHcAb抗体によるU266細胞のBCMA発現量の検出のFACS結果を示した図である。
図3】REGN5459-hIgG1抗体によるFlp-inCHO-ヒトBCMA細胞のBCMA発現量の検出のFACS結果を示した図である。
図4】REGN5459-hIgG1抗体によるFlp-inCHO-サルBCMA細胞のBCMA発現量の検出のFACS結果を示した図である。
図5】組換え候補抗体とヒトBCMA-hisタンパク質との結合反応のELISAによる検出を示した図である。
図6】組換え候補抗体とサルBCMA-hisタンパク質との結合反応のELISAによる検出を示した図である。
図7】組換え候補抗体とH929腫瘍細胞との結合反応のFACSによる検出を示した図である。
図8】組換え候補抗体とU266腫瘍細胞との結合反応のFACSによる検出を示した図である。
図9】リガンドAPRILとヒトBCMAタンパク質との結合に対する組換え候補抗体の遮断作用のリガンド結合の競合ELISAによる検出を示した図である。
図10】ヒト化候補ナノ抗体とヒトBCMA-hisタンパク質との結合反応のELISAによる検出を示した図である。
図11】ヒト化候補ナノ抗体とサルBCMA-hisタンパク質との結合反応のELISAによる検出を示した図である。
図12】ヒト化候補ナノ抗体とH929腫瘍細胞との結合反応のFACSによる検出を示した図である。
図13】ヒト化候補ナノ抗体とU266腫瘍細胞との結合反応FACSによる検出を示した図である。
図14】リガンドAPRILとヒトBCMAタンパク質との結合に対するヒト化候補ナノ抗体の遮断作用のリガンド結合の競合ELISAによる検出を示した図である。
図15】キメラ抗体とヒトBCMA-hisタンパク質との結合反応のELISAによる検出を示した図である。
図16A】キメラ抗体とH929腫瘍細胞との結合反応のFACSによる検出を示した図である。
図16B】キメラ抗体とU266腫瘍細胞との結合反応のFACSによる検出を示した図である。
図17】リガンドAPRILとヒトBCMAタンパク質との結合に対するキメラ抗体の阻断作用のリガンド結合の競合ELISAによる検出を示した図である。
【発明の詳細な説明】
【0023】
用語の定義及び説明
本明細書において特に定義しない限り、本出願に関連する科学用語及び技術用語は、当業者に理解されている意味を有する。
【0024】
また、本明細書において特に説明されていない限り、本明細書における単数形の用語は、複数形を含むべきであり、複数形の用語は、単数形を含むべきである。より具体的には、別途明らかに指摘されていない限り、本明細書及び添付される特許請求の範囲において使用される単数形「1つ」及び「このような」は、複数の指示対象を含む。
【0025】
本明細書における「含む」、「包含する」及び「有する」という用語は、同義的に使用され、スキームの包括性を示すことが意図され、前記スキームには、列挙された要素以外の他の要素が存在し得ることを意味する。同時に、本明細書で使用される「含む」、「包含する」及び「有する」という記述はまた、「……からなる」というスキームを提供することを理解すべきである。
【0026】
「及び/又は」という用語は、本明細書で使用される場合、「及び」、「又は」及び「属する用語によってリンクされる要素の全て又は任意の他の組み合わせ」の意味を含む。
【0027】
本明細書において、「BCMA」という用語は、B細胞成熟抗原(B cell maturation antigen)の略語であり、腫瘍坏死因子受容体ファミリーのメンバーに属する。BCMAは、主に後期B細胞、短寿命増殖形質芽細胞及び長寿命形質細胞の表面に発現し、初期B細胞、CD34陽性造血幹細胞及び他の正常組織細胞に発現しないが、MM細胞において高度に発現し、下流シグナル伝達経路を媒介することによって、MM細胞の生存、増殖、転移及び薬剤耐性に重要な役割を果たすため、BCMAは、MM治療の理想的な抗原標的である。
【0028】
本明細書において、「特異的結合」という用語は、抗原結合分子(例えば、抗体)が、通常、抗原及び実質的に同じ抗原に高い親和性で特異的に結合するが、関連性のない抗原に高い親和性で結合しないことを指す。親和性は、通常、平衡解離定数(equilibrium dissociation constant、KD)によって反映され、ここで、低いKDは、高い親和性を表す。抗体を例として、高い親和性は、通常、約10-6M又はそれ以下、10-7M又はそれ以下、約10-8M又はそれ以下、約10-9M又はそれ以下のKDを有することを指す。KDの計算方式は以下のとおりである:KD=Kd/Ka、ここで、Kdは解離速度を表し、Kaは結合速度を表す。平衡解離定数KDは、表面プラズモン共鳴法(例えば、Biacore)又は平衡透析アッセイのような当分野で周知の方法を用いて測定することができる。
【0029】
本明細書において、「抗原結合分子」という用語は、最も広い意味で使用され、抗原に特異的に結合する分子を指す。例示的に、抗原結合分子は、抗体又は抗体模倣体を含むが、それらに限らない。「抗体模倣体」は、抗原に特異的に結合することができるが、抗体構造とは無関係である有機化合物又は結合ドメインを指し、例示的に、抗体模倣体は、affibody、affitin、affilin、設計アンキリン反復タンパク質(DARPin)、核酸アプタマー又はKunitz型ドメインペプチドを含むが、それらに限らない。
【0030】
本明細書において、「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、免疫グロブリン重鎖可変領域からの十分な配列及び/又は免疫グロブリン軽鎖可変領域からの十分な配列を含み、それによって抗原に特異的に結合することができるポリペプチド又はポリペプチドの組み合わせを指す。本明細書において、「抗体」は、所望の抗原結合活性を示す限り、様々な形態及び様々な構造を包含する。本明細書において、「抗体」は、移植された相補性決定領域(CDR)又はCDR誘導体を有する代替タンパク質足場又は人工足場を含む。このような足場は、抗体由来の足場(それは、例えば、抗体の三次元構造を安定化するために導入された突然変異を含む)と、例えば、生体適合性ポリマーを含む全合成足場とを含む。例えば、Korndorferら,2003,Proteins:Structure,Function,and Bioinformatics,53(1):121-129(2003)、Roqueら,Biotechnol.Prog.20:639-654(2004)を参照されたい。このような足場は、非抗体由来の足場、例えば、当分野に既知の、CDR移植に用いられ得る足場タンパク質をさらに含んでもよく、テネイシン、フィブロネクチン、ペプチドアプタマーなどを含むが、それらに限らない。
【0031】
「抗体」という用語は、全抗体及びその任意の抗原結合断片(即ち「抗原結合部分」)又は一本鎖を含む。「抗体」は、ジスルフィド結合を介して互いに連結される少なくとも二本の重(H)鎖及び二本の軽(L)鎖を含む糖タンパク質、又はその抗原結合部分を指す。各重鎖は、重鎖可変領域(ここではVHと略される)及び重鎖定常領域からなる。重鎖定常領域は、3つのドメインCH1、CH2及びCH3からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(ここではVLと略される)及び軽鎖定常領域からなる。軽鎖定常領域は、一つのドメインCLからなる。VH及びVL領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域にさらに分けられてもよく、CDRは、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保守的な領域に散在している。各VH及びVLは、いずれも3つのCDR及び4つのFRで構成され、アミノ末端からカルボキシル末端へ、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序で並べられる。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用することができる結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫グロブリンと宿主組織又は因子との結合を媒介することができ、該宿主組織又は因子は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)と古典的補体系の第1の成分(C1q)とを含む。免疫グロブリン重鎖定常領域は、アミノ酸の組成及び配列順序が異なるため、その抗原性も異なる。これにより、本明細書の「免疫グロブリン」を5つのクラスに分けることができ、又は免疫グロブリンのアイソタイプ、即ちIgM、IgD、IgG、IgA及びIgEと呼ばれてもよく、その該当する重鎖は、それぞれμ鎖、δ鎖、γ鎖、α鎖とε鎖である。同じクラスIgは、そのヒンジ領域のアミノ酸組成並びに重鎖ジスルフィド結合の数及び位置の違いにより、様々なサブクラスに分けられ得、例えば、IgGはIgG1、IgG2、IgG3、IgG4に分けられ得、IgAはIgA1及びIgA2に分けられ得る。軽鎖は、定常領域により、κ鎖又はλ鎖に分けられる。5つのクラスのIgのうちの各クラスのIgは、いずれもκ鎖又はλ鎖を有し得る。
【0032】
本明細書において、「抗体」は、軽鎖を含まない抗体、例えば、ヒトコブラクダ(Camelus dromedarius)、フタコブラクダ(Camelus bactrianus)、ラマ(Lama glama)、グアナコ(Lama guanicoe)及びアルパカ(Vicugna pacos)などのラクダ科動物から産生された重鎖抗体(heavy-chain antibodies,HCAbs)並びにサメなどの軟骨魚綱に見られる免疫グロブリン新抗原受容体(Ig new antigen receptor,IgNAR)をさらに含む。
【0033】
本明細書において、「抗体」という用語は、任意の動物に由来してもよく、ヒト及び非ヒト動物を含むが、それらに限らず、前記非ヒト動物は、霊長類動物、哺乳動物、齧歯動物及び脊椎動物、例えば、ラクダ科動物、ラマ、グアナコ、アルパカ、ヒツジ、ウサギ、マウス、ラット又は軟骨魚綱(例えば、サメ)から選択される。
【0034】
本明細書において、「重鎖抗体」という用語は、従来の抗体の軽鎖を欠く抗体を指す。該用語は、具体的には、CH1ドメインの不存在下でVH抗原結合ドメインと、CH2及びCH3定常ドメインとを含むホモ二量体抗体を含むが、それらに限らない。
【0035】
本明細書において、「ナノ抗体」という用語は、重鎖抗体(ラクダなどの体内に存在する、軽鎖が天然に欠失している重鎖抗体)の可変領域をクローニングして得られた、重鎖可変領域のみからなる単一ドメイン抗体を指し、VHH(Variable domain of heavy chain of heavy chain antibody)とも呼ばれ、それは、最小の機能性抗原結合断片である。
【0036】
本明細書において、「VHHドメイン」及び「ナノ抗体(nanobody)」、「単一ドメイン抗体」(single domain antibody,sdAb)という用語は、同じ意味を有し、同義的に使用され、重鎖抗体の可変領域をクローニングして、一つの重鎖可変領域のみからなる単一ドメイン抗体を構築することを指し、それは、完全な機能を有する最小の抗原結合断片である。通常、軽鎖及び重鎖定常領域1(CH1)が天然に欠失している重鎖抗体を得てから、抗体重鎖の可変領域をクローニングすることで、一つの重鎖可変領域のみからなる単一ドメイン抗体を構築する。
【0037】
「重鎖抗体」及び「単一ドメイン抗体」、「VHHドメイン」及び「ナノ抗体」に関する更なる説明は、以下を参照されたい:Hamers-Castermanら,Nature.1993、363;446-8,Muyldermansの概説文章(Reviews in Molecular Biotechnology 74:277-302,2001)、並びに一般的な背景技術として言及されている以下の特許出願:WO 94/04678、WO 95/04079及びWO 96/34103、WO 94/25591、WO 99/37681、WO 00/40968、WO 00/43507、WO 00/65057、WO 01/40310、WO 01/44301、EP 1134231及びWO 02/48193、WO97/49805、WO 01/21817、WO 03/035694、WO 03/054016及びWO 03/055527、WO 03/050531、WO 01/90190、WO03/025020、WO 04/041867、WO 04/041862、WO 04/041865、WO 04/041863、WO 04/062551、WO 05/044858、WO 06/40153、WO 06/079372、WO 06/122786、WO 06/122787、WO 06/122825及びこれらの出願に言及されているその他の従来技術。
【0038】
本明細書において、「多重特異性」という用語は、抗体又はその抗原結合断片が、例えば、異なる抗原又は同一の抗原における少なくとも二つの異なるエピトープに結合する能力を指す。そのため、「二重特異性」、「三重特異性」、「四重特異性」のような用語は、抗体が結合できる異なるエピトープの数を指す。例えば、一般的な単一特異性IgG型抗体は、二つの同じ抗原結合部位(相補的部位)を有するため、(異なるエピトープに結合するのではなく)同じエピトープのみに結合することができる。これに対して、多重特異性抗体は、少なくとも二つの異なるタイプの相補的部位/結合部位を有するため、少なくとも二つの異なるエピトープに結合することができる。本明細書で説明したように、「相補性決定領域」は、抗体の抗原結合部位を指す。また、単一「特異性」は、単一抗体における1つ、2つ、3つ又は3つ以上の同じ相補性決定領域を指すことができる(一つの単一抗体分子における相補性決定領域/結合部位の実際の数は「価」と呼ばれる)。例えば、単一の天然IgG抗体は、二つの同じ相補的部位を有するため、単一特異的であり、二価である。これに応じて、多重特異性抗体は、少なくとも2つの(異なる)相補性決定領域/結合部位を含む。そのため、「多重特異性抗体」という用語は、一つ超えの相補的部位を有し、2つ又はそれ以上の異なるエピトープに結合する能力を有する抗体を指す。「多重特異性抗体」という用語は、以上で定義されたような二重特異性抗体を特に含むが、通常、タンパク質、例えば、3つ又はそれ以上の異なるエピトープに特に結合する抗体、足場、即ち3つ又はそれ以上の相補的部位/結合部位を有する抗体をさらに含む。
【0039】
本明細書において、「価」という用語は、抗体/抗原結合分子における所定の数の結合部位の存在を示す。そのため、「一価」、「二価」、「四価」及び「六価」という用語は、それぞれ抗体/抗原結合分子における1つの結合部位、2つの結合部位、4つの結合部位及び6つの結合部位の存在を示す。
【0040】
本明細書において、「完全長抗体」、「インタクトな抗体」及び「全抗体」は、本明細書において、同義的に使用され、天然抗体の構造と実質的に似ている構造を有することを指す。
【0041】
本明細書において、「抗原結合断片」及び「抗体断片」という用語は、本明細書において、同義的に使用され、それは、全抗体の全ての構造を有さず、全抗体の局所又は局所的変異体のみを含み、前記局所又は局所的変異体は抗原に結合する能力を有する。例示的に、本明細書において、「抗原結合断片」又は「抗体断片」は、Fab、F(ab’)2、Fab’、Fab’-SH、Fd、Fv、scFv、ダイアボディ(diabody)及び単一ドメイン抗体を含むが、それらに限らない。
【0042】
本明細書において、「キメラ抗体」という用語は、一つの供給源生物(例えば、ラット、マウス、ウサギ又はアルパカ)に由来する免疫グロブリンの可変配列、及び異なる生体(例えば、ヒト)に由来する免疫グロブリンの定常領域を有する抗体を指す。キメラ抗体を産生するための方法は、当分野で既知である。例えば、Morrison,1985,Science 229(4719):1202-7、Oiら,1986,Bio Techniques 4:214-221、Gilliesら,1985 J Immunol Methods 125:191-202を参照されたく、以上は参照により本明細書に組込まれる。
【0043】
本明細書において、「ヒト化抗体」という用語は、遺伝子操作された非ヒト抗体を指し、そのアミノ酸配列が、ヒト抗体の配列との相同性を向上させるように修飾される。通常、ヒト化抗体の全て又は一部のCDR領域は、非ヒト抗体(ドナー抗体)に由来し、全て又は一部の非CDR領域(例えば、可変領域FR及び/又は定常領域)は、ヒト免疫グロブリン(受容体抗体)に由来する。ヒト化抗体は、通常、ドナー抗体の所望の特性を保持するか又は部分的に保持し、抗原特異性、親和性、反応性、免疫細胞の活性を向上させる能力又は免疫応答を増強する能力などを含むがそれらに限らない。
【0044】
本明細書において、「完全ヒト抗体」は、FR及びCDRの両方がいずれもヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を指す。また、抗体が定常領域を含む場合、定常領域もヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する。本明細書において、完全ヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロのランダムもしくは部位特異的誘発又はインビボの体細胞突然変異によって導入された突然変異)を含んでもよい。しかしながら、本明細書において、「完全ヒト抗体」は、別の哺乳動物の類種(例えば、マウス)の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植された抗体を含まない。
【0045】
本明細書において、「可変領域」は、抗体の重鎖又は軽鎖において、抗体を抗原に結合させることに関与する領域を指し、「重鎖可変領域」は、「VH」、「HCVR」と同義的に使用され、「軽鎖可変領域」は、「VL」、「LCVR」と同義的に使用される。天然抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、一般的には、似ている構造を有し、各ドメインは、四つの保存的フレームワーク領域(FR)及び三つの超可変領域(HVR)を含む。例えば、Kindt et al.,Kuby Immunology,6th ed.,W.H.Freeman and Co.,p.91(2007)を参照されたい。単一のVH又はVLドメインは、抗原結合特異性を付与するために十分である。
【0046】
本明細書において、「相補性決定領域」は、「CDR」と同義的に使用され、通常、軽鎖及び重鎖の両方の可変ドメインに見られる超可変領域(HVR)を指す。可変ドメインのより保存的な部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。当分野で理解されているように、抗体の超可変領域を表すアミノ酸位置は、文脈及び当分野に既知の様々な定義に応じて変化することができる。可変ドメイン内のいくつかの位置は、一組の規格(例えば、IMGT又はKABAT)下の超可変領域内にあると考えられる一方、異なる組の規格(例えば、KABAT又はIMGT)下の超可変領域外にあると考えられてもよいため、ヘテロ接合超可変位置と見なされてもよい。これらの位置のうちの一つ又はそれ以上は、拡張した超可変領域に見出すこともできる。本発明は、これらのヘテロ接合超可変位置に修飾が含まれる抗体を含む。重鎖可変領域CDRはHCDRと略されてもよく、軽鎖可変領域はLCDRと略されてもよい。天然重鎖及び軽鎖の可変ドメインはそれぞれ、主にシート構造を用いる4つのフレームワーク領域を含み、それらは、3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR3)を介して連結され、この3つCDRは、シート構造を連結するループを形成し、且ついくつかの場合にシート構造の一部を形成する。各鎖におけるCDRは、FR領域を介してFR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4の順序で緊密に保持され、且つ他の抗体鎖からのCDRと抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabatら,Sequences of Protein sofImmunological Interest,National Institute of Health,Bethesda,Md.1987を参照されたく、それは参照により本明細書に組込まれる)。
【0047】
CDRに対するさらなる記述は、Kabatら,J.Biol.Chem.,252:6609-6616(1977)、Kabatら,米国保健福祉省,「Sequences of proteins of immunological interest」(1991)、Chothiaら,J.Mol.Biol.196:901-917(1987)、Al-Lazikani B.ら,J.Mol.Biol.,273:927-948(1997)、MacCallumら,J.Mol.Biol.262:732-745(1996)、AbhinandanとMartin,Mol.Immunol.,45:3832-3839(2008)、Lefranc M.P.ら,Dev.Comp.Immunol.,27:55-77(2003)、及びHoneggerとPluckthun,J.Mol.Biol.,309:657-670(2001)を参照されたい。本明細書において、「CDR」は、当分野に周知の方式でラベル付けされ定義されてもよく、Kabat番号付けシステム、Chothia番号付けシステム又はIMGT番号付けシステムを含むが、それらに限らず、使用されるツールサイトは、AbRSAウェブサイト(http://cao.labshare.cn/AbRSA/cdrs.php)、abYsisウェブサイト(www.abysis.org/abysis/sequence_input/key_annotation/key_annotation.cgi)及びIMGTウェブサイト(http://www.imgt.org/3Dstructure-DB/cgi/DomainGapAlign.cgi#results)を含むが、それらに限らない。本明細書において、CDRは、異なる定義方式のアミノ酸残基のオーバーラップ(overlap)及びサブセットを含む。
【0048】
本明細書において、「Kabat番号付けシステム」という用語は、通常、Elvin A.Kabatにより提案された免疫グロブリンアラインメント及び番号付けシステムを指す(例えば、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1991を参照されたい)。
【0049】
本明細書において、「Chothia番号付けシステム」という用語は、通常、Chothiaらにより提案された免疫グロブリン番号付けシステムを指し、それは、構造のループ領域の位置に基づいてCDR領域の境界を同定する古典的な規則である(例えば、Chothia & Lesk(1987)J.Mol.Biol.196:901-917、Chothiaら(1989)Nature 342:878-883を参照されたい)。
【0050】
本明細書において、「IMGT番号付けシステム」という用語は、通常、Lefrancらにより提唱された国際免疫遺伝学情報システム(The international ImMunoGeneTics information system(IMGT))に基づく番号付けシステムを指し、Lefranc et al.,Dev.Comparat.Immunol.27:55-77,2003を参照されたい。
【0051】
本明細書において、「重鎖定常領域」は、抗体重鎖のカルボキシル末端部分を指し、それは、抗体と抗原との結合に直接関与しないが、Fc受容体との相互作用のようなエフェクター子機能を表し、抗体の可変ドメインに対してより保存的なアミノ酸配列を有する。「重鎖定常領域」は、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメイン、又はその変異体もしくは断片から選択される。「重鎖定常領域」は、「完全長重鎖定常領域」と「重鎖定常領域断片」とを含み、前者は天然抗体の定常領域と実質的に似ている構造を有する一方、後者は「完全長重鎖定常領域の一部」のみを含む。例示的に、典型的な「完全長抗体重鎖定常領域」は、CH1ドメイン-ヒンジ領域-CH2ドメイン-CH3ドメインからなり、抗体がIgEである場合、それはCH4ドメインをさらに含み、抗体が重鎖抗体である場合、それはCH1ドメインを含まない。例示的に、典型的な「重鎖定常領域断片」は、Fc又はCH3ドメインから選択される。
【0052】
本明細書において、「軽鎖定常領域」という用語は、抗体軽鎖のカルボキシル末端部分を指し、それは、抗体と抗原との結合に直接関与せず、前記軽鎖定常領域は、定常κドメイン又は定常λドメインから選択される。
【0053】
本明細書において、「Fc領域」という用語は、抗体重鎖における、定常領域の少なくとも一部を含有するC末端領域を定義するためのものである。該用語は、天然配列Fc領域と変異体Fc領域とを含む。例示的に、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226又はPro230から重鎖のカルボキシル末端に延びることができる。しかしながら、宿主細胞により産生された抗体は、翻訳後切断を受け、重鎖のC末端から一つ又は複数、特に一つ又は二つのアミノ酸を切除することができる。そのため、完全長重鎖をコードする特定の核酸分子の発現によって、宿主細胞により産生された抗体は、完全長重鎖を含んでもよく、又は完全長重鎖の切断変異体を含んでもよい。重鎖の最後の2つのC末端アミノ酸がグリシン(G446)及びリジン(K447、Kabat EUインデックスに従って番号付けされている)である場合に当てはまり得る。そのため、Fc領域のC末端リジン(Lys447)、又はC末端グリシン(Gly446)及びリジン(Lys447)は存在しても存在しなくてもよい。典型的に、IgG Fc領域は、IgG CH2及びIgG CH3ドメインを含み、任意選択的に、これに加えて、完全な又は一部のヒンジ領域をさらに含んでもよいが、CH1ドメインを含まない。ヒトIgG Fc領域の「CH2ドメイン」は、通常、約位置231におけるアミノ酸残基から約位置340におけるアミノ酸残基まで延びる。一実施形態において、炭水化物鎖はCH2ドメインに付着している。本明細書におけるCH2ドメインは、天然配列CH2ドメイン又は変異体CH2ドメインであってもよい。「CH3ドメイン」は、Fc領域における、CH2ドメインのC末端にある残基(即ちIgGの約位置341にあるアミノ酸残基から約位置447にあるアミノ酸残基まで)を含む。本明細書におけるCH3領域は、天然配列CH3ドメイン又は変異体CH3ドメイン(例えば、その一本の鎖に導入された「隆起」「節」、(knob)、及び別の鎖に対応して導入された「キャビティ」「ホール」、(hole)を有するCH3ドメインであり、米国特許No.5,821,333を参照されたく、参照により本明細書に明示的に援用される)であってもよい。本明細書で説明されるように、このような変異体CH3ドメインは、二本の異なる抗体重鎖のヘテロ二量化を促進することに用いられてもよい。
【0054】
本明細書において特に規定されていない限り、Fc領域又は定常領域におけるアミノ酸残基の番号付けは、Kabatら,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991に記載されるように、EUインデックスとも呼ばれるEU番号付けシステムに基づいて行われる。
【0055】
本明細書において、「Fc変異体」という用語は、Fcにおける適切な部位に一つ又は複数のアミノ酸置換、挿入又は欠失突然変異が存在することによってFc構造又は機能の変化を引き起こすことを指す。「Fc変異体の間の相互作用」は、突然変異によって設計されたFc変異体の間に、空間充填効果、静電誘導、水素結合作用、疎水性相互作用が形成され得ることを指す。Fc変異体の間の相互作用は、安定した異種二量体タンパク質の形成に役立つ。好ましい突然変異は設計、「Knob-into-Hole」の形態の突然変異設計である。
【0056】
Fc変異体の突然変異設計技術は、当分野において、二重特異性抗体又は異種二量体のFc融合タンパク質形態の製造に広く応用されている。代表的なものとして、Caterら(Protein Engineering vol.9 no.7 pp .617-621,1996)が提案した「Knob-into-Hole」形態;Amgen社の技術者が静電誘導(Electrostatic Steering)を利用して形成したFc含有異種二量体形態(US 20100286374 A1)、Jonathan H.Davisら(Protein Engineering,Design&Selection pp.1-8,2010)が提案した、IgG/Ig鎖交換によって形成された異種二量体形態(SEEDbodies)、Genmab社DuoBody(Science,2007.317(5844))プラットフォーム技術によって形成された二重特異性分子、Xencor社の技術者により、構造計算及びFcアミノ酸突然変異を統合し、異なる作用方式を統合して形成された異種二量体タンパク質形態(mAbs 3:6,546-557;November/December 2011)、蘇州康寧傑瑞社により、電荷ネットワークに基づくFc改造方法(CN201110459100.7)で得られた異種二量体タンパク質形態、及びFcアミノ酸変化又は機能改造手段に基づいて、異種二量体機能性タンパク質の形成を達成する他の遺伝子操作方法が挙げられる。本発明に記載のFc変異体断片におけるKnob/Hole構造は、二本のFc断片がそれぞれ突然変異し、突然変異した後に「Knob-into-Hole」の形態で結合し得ることを指す。得られた第1のFc変異体及び第2のFc変異体が「knob-into-hole」の形態で一緒に結合して異種二量体を形成することができるように、Caterらの「knob-into-hole」モデルを用いてFc領域において部位突然変異の改造を行うことが好ましい。特定の免疫グロブリンクラス及びサブクラスから特定の免疫グロブリンFc領域を選択することは、当業者が把握している範囲内である。好ましくは、ヒト抗体IgG1、IgG2、IgG3、IgG4のFc領域であり、さらに好ましくは、ヒト抗体IgG1のFc領域である。第1のFc変異体又は第2のFc変異体からランダムで任意に選択し、そのうちの一方がknobの突然変異を行い、他方がholeの突然変異を行う。
【0057】
本明細書において、「保存的アミノ酸」という用語は、通常、同一のクラスに属するか又は類似している特徴(例えば、電荷、側鎖の大きさ、疎水性、親水性、主鎖のコンホメーション及び剛性)を有するアミノ酸を指す。例示的に、下記各群のアミノ酸は、互いの保存的アミノ酸残基に属し、群内のアミノ酸残基の置換は保存的アミノ酸の置換に属する:
1)アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T)、
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、
4)アルギニン(R)、リジン(K)、ヒスチジン(H);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)、及び
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
【0058】
本明細書において、「同一性」は以下の方式によって計算して得られる:二つのアミノ酸配列又は二つの核酸配列の「同一性」の割合を確定するために、最適な比較を目的として前記配列をアラインメントする(例えば、最適なアラインメントのために第1及び第2のアミノ酸配列又は核酸配列の一方又は両方にギャップを導入するか又は比較するために非相同配列を棄却してもよい)。その後に、対応するアミノ酸位置又はヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基又はヌクレオチドを比較する。第1の配列における位置が、第2の配列中の対応する位置における同じアミノ酸残基又はヌクレオチドに占められている場合、前記分子はこの位置において同じである。この二つの配列を最適にアラインメントするために導入する必要があるギャップの数及び各ギャップの長さを考慮して、二つの配列の間の同一性の割合は、前記配列に共通する同じ位置の変化に従って変化する。
【0059】
二つの配列の間の配列比較及び同一性割合の計算は、数学的アルゴリズムを利用して実現され得る。例えば、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムに組み込まれたNeedlema及びWunsch((1970)J.Mol.Biol.48:444-453)アルゴリズム(www.gcg.comから入手可能)、Blossum 62マトリックス又はPAM250マトリックス並びにギャップ重み16、14、12、10、8、6又は4及び長さ重み1、2、3、4、5又は6を使用して、二つのアミノ酸配列の間の同一性割合を確定する。さらに例えば、GCGソフトウェアパッケージにおけるGAPプログラム(www.gcg.comから入手可能)、NWSgapdna.CMPマトリックス並びにギャップ重み40、50、60、70又は80及び長さ重み1、2、3、4、5又は6を使用して、二つのヌクレオチド配列の間の同一性割合を確定する。特に好ましいパラメータセット(及び別段の説明がない限り使用されるべきパラメータセット)は、ギャップペナルティ12、ギャップ延長ペナルティ4、フレームシフトギャップペナルティ5を用いるBlossum62スコアマトリックスである。さらに、PAM120重み付け余数表、ギャップ長さペナルティ12、ギャップペナルティ4を用い、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組込まれたE.Meyers及びW.Millerアルゴリズム((1989)CABIOS,4:11-17)を利用して、二つのアミノ酸配列又はヌクレオチド配列の間の同一性割合を確定することができる。
【0060】
追加的に又は代替的に、本発明に記載の核酸配列及びタンパク質配列は、共通データベースに対して検索を実施して、例えば、他のファミリーメンバー配列又は関連する配列を同定するために、「照会配列」としてさらに使用されてもよい。例えば、このような検索は、Altschulら,(1990)J.Mol.Biol.215:403-10のNBLAST及びXBLASTプログラム(バージョン2.0)により実行することができる。BLASTヌクレオチド検索は、本発明の核酸分子と同じヌクレオチド配列を得るために、スコア=100、ワード長さ=12であるNBLASTプログラムで実施してもよい。BLASTタンパク質検索は、本発明のタンパク質分子と同じアミノ酸配列を得るために、スコア=50、ワード長さ=3であるXBLASTプログラムで実施してもよい。比較目的のためにギャップありアライメントを得るために、ギャップBLASTをAltschulら,(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-3402に記載のように使用してもよい。BLAST及びギャップBLASTプログラムを使用する場合、対応するプログラム(例えば、XBLAST及びNBLAST)のデフォルトパラメータを使用することができる。www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。
【0061】
本明細書において、「核酸」という用語は、ヌクレオチドを含むポリマーの任意の化合物及び/又は物質を含む。各ヌクレオチドは、塩基、特にプリン又はピリミジン塩基(即ちシトシン(C)、グアニン(G)、アデニン(A)、チミン(T)又はウラシル(U))、糖(即ちデオキシリボース又はリーボス)及びリン酸基からなる。通常、核酸分子は、塩基の配列により説明され、これにより前記塩基は、核酸分子の一次構造(線状構造)を表す。塩基の配列は、通常、5’~3’で表される。本明細書において、核酸分子という用語は、例えば、相補的DNA(cDNA)とゲノムDNAとを含むデオキシリボース核酸(DNA)、リーボス核酸(RNA)、特にメッセンジャーRNA(mRNA)、DNA又はRNAの合成形態、及び二つ又はそれ以上のこれらの分子の混合を含むポリマーを包含する。核酸分子は、線状又は環状であってもよい。また、核酸分子という用語は、センス鎖とアンチセンス鎖の両方、及び一本鎖と二本鎖の形態を含む。そして、本文に記載の核酸分子は、天然に存在するか又は非天然に存在するヌクレオチドを含んでもよい。非天然に存在するヌクレオチドの例としては、誘導体化された糖又はリン酸骨格結合又は化学的に修飾された残基を有する、修飾されたヌクレオチド塩基が挙げられる。核酸分子は、DNA及びRNA分子をさらに包含し、ベクターとして本発明の抗体をインビトロ及び/又はインビボで、例えば、宿主又は患者において直接発現することに適する。このようなDNA(例えば、cDNA)又はRNA(例えば、mRNA)ベクターは、修飾されていなくても又は修飾されていてもよい。例えば、RNAベクターの安定性及び/又はコードされた分子の発現を増強するようにmRNAを化学的に修飾してもよく、それによってmRNAを被験体に注入して体内で抗体を産生することができる(例えば、Stadlerら,Nature Medicine 2017,published online 2017年6月12日,doi:10.1038/nm.4356又はEP2101823B1を参照されたい)。
【0062】
本明細書において、「単離された」核酸は、その天然環境の成分から分離された核酸分子を指す。単離された核酸は、下記細胞に含有される核酸分子を含み、前記細胞は、通常、該核酸分子を含有するが、該核酸分子は、染色体外に存在するか又はその天然染色体位置と異なる染色体位置に存在する。
【0063】
本明細書において、「ベクター」という用語は、それに連結される別の核酸を増幅させることができる核酸分子を指す。該用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、及び該ベクターが導入された宿主細胞のゲノムに統合されるベクターを含む。いくつかのベクターは、それらに操作可能に連結される核酸の発現を指導することができる。このようなベクターは、本明細書において「発現ベクター」と呼ばれる。
【0064】
本明細書において、「宿主細胞」は、細胞に外因性核酸が導入された細胞を指し、このような細胞の子孫を含む。宿主細胞は、「形質転換体」及び「形質転換された細胞」を含み、それは、継代数を考慮せず、初代の形質転換された細胞及びそれに由来する子孫を含む。子孫は、核酸物質について親細胞と完全に同じではない場合があり、突然変異を含んでもよい。本明細書において、初期に形質転換された細胞からスクリーニング又は選択されたものと同じ機能又は生物学的活性を有する変異体子孫を含む。
【0065】
本明細書において、「薬物組成物」は、それに含まれる活性成分の生物学的活性が有効であることを許容する形態で存在し、且つ前記薬物組成物が投与される被験体に対して許容されない毒性を有する他の成分を含有しない製剤を指す。
【0066】
本明細書において、「薬学的に許容されるキャリア」は、任意及び全ての溶媒、分散媒、コーティング材料、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤(例えば、抗菌剤及び抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延剤、塩、防腐剤、薬物安定剤、粘着剤、賦形剤、崩壊剤、潤滑剤、甘味剤、香料、染料など及びそれらの組み合わせを含み、それは当業者に知られている(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第18版,MackPrinting Company,1990,ページ1289-1329を参照されたい)。活性成分と適合性がない場合を除いて、治療又は薬物組成物におけるいずれかの従来のキャリアの応用は考慮される。
【0067】
本明細書において、「治療」は、外科手術又は薬物処置(surgical or therapeutic treatment)を指し、その目的は、治療対象における望ましくない生理的変化又は病変、例えば、癌及び腫瘍を予防、減速(減少)させることである。有益な又は望ましい臨床結果は、検出可能であるか検出不可能であるかを問わず、症状の軽減、疾患程度の低下、疾患状態の安定化(即ち、悪化していない)、疾患進行の遅延又は減速、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解(部分的寛解又は完全な寛解を問わず)を含むが、それらに限らない。治療を必要とする対象は、障害又は疾患に罹患している対象、及び障害又は疾患に罹患しやすい対象、又は障害又は疾患を予防しようとする対象を含む。減速、軽減、低下、緩和、寛解などの用語が言及されている場合、その意味には、除去、消失、発生しないなどの場合も含まれている。
【0068】
本明細書において、「被験体」という用語は、本明細書に記載の特定の疾患又は障害に対する治療を受ける生体を指す。例示的に、「被験体」は、疾患又は障害の治療を受ける哺乳動物、例えば、ヒト、霊長類動物(例えば、サル)又は霊長類哺乳動物を含む。
【0069】
本明細書において、「有効量」という用語は、細胞、組織又は対象に単独で又は別の治療剤と組み合わせて投与された場合、疾患障害又は該疾患の進行を有効に防止又は寛解することができる治療剤用量を指す。「有効量」はさらに、症状を寛解し、例えば、関連する医学的障害を治療、治癒、防止もしくは寛解するか、又はこれらの障害を治療、治癒、防止もしくは寛解する速度を増加させるのに十分な化合物の用量を指す。活性成分を個体に単独で投与する場合、治療有効用量は該成分のみを指す。ある組み合わせを適用する場合、治療有効用量は、組み合わせ、連続投与又は同時投与のいずれであっても、治療効果を導く活性成分の組み合わせ用量を指す。
【0070】
本明細書において、「癌」という用語は、哺乳動物で典型的に、無秩序な細胞成長を特徴とする生理的状態を指すか又は説明する。この定義には、良性及び悪性の癌が含まれる。本明細書において、「腫瘍」又は「腫」は、悪性又は良性を問わず、全ての腫瘍性(neoplastic)細胞成長及び増殖、並びに全ての前がん(pre-cancerous)及び癌性細胞及び組織を指す。「癌」及び「腫瘍」という用語は、本明細書で言及される場合、互いに排他的というわけではない。
【0071】
本明細書において、「EC50」という用語は、半最大有効濃度を指し、それは、特定の曝露時間後にベースラインと最大値との間の途中応答を誘導する抗体濃度を含む。EC50は、本質的に、その最大作用が観察される抗体濃度の50%を表し、当分野に既知の方法によって測定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0072】
本出願は、BCMAに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片、多重特異性抗原結合分子、キメラ抗原受容体、免疫エフェクター細胞、核酸断片、ベクター、宿主細胞、医薬組成物、キット、製造方法及び疾患の治療及びBCMAの検出におけるその応用を提供する。
【0073】
第1の態様では、本出願は、BCMAに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を提供し、前記抗体又はその抗原結合断片は、CDR1、CDR2及びCDR3を含み、前記CDR1は、SEQ ID NO:7~21、24~31及び92~101のうちのいずれか一つの配列に示すVHHドメインのHCDR1を含み、前記CDR2は、SEQ ID NO:7~21、24~31及び92~101のうちのいずれか一つの配列に示すVHHドメインのHCDR2を含み、且つ前記CDR3は、SEQ ID NO:7~21、24~31及び92~101のうちのいずれか一つの配列に示すVHHドメインのHCDR3を含む。
【0074】
いくつかの具体的な実施形態において、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、Kabat、IMGT又はChothia番号付けシステムに基づいて確定される。
【0075】
任意選択的な実施形態において、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、SEQ ID NO:34~91及び102~157に示すアミノ酸配列から選択される。
【0076】
任意選択的な実施形態において、前記HCDR1は、SEQ ID NO:34、37、40、42、45、48、50、52、54、56、58、64、67、71、74、77、81、84、86、87、104、107、113、116、119、121、124、127、131、134、138又は141に示すアミノ酸配列を含む。
【0077】
任意選択的な実施形態において、前記HCDR2は、SEQ ID NO:35、38、41、43、46、49、59、61、63、65、68、70、72、75、78、79、82、85、88、89、90、91、102、105、108、109、111、114、117、120、122、125、128、129、132、135、136、139、142、143、148、150、152、153、155又は157に示すアミノ酸配列を含む。
【0078】
任意選択的な実施形態において、前記HCDR3は、SEQ ID NO:36、39、44、47、51、53、55、57、60、62、66、69、73、76、80、83、103、106、110、112、115、118、123、126、130、133、137、140、144、145、146、147、149、151、154又は156に示すアミノ酸配列を含む。
【0079】
好ましい実施形態において、Kabat、IMGT又はChothia番号付けシステムによれば、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:34、35及び36、SEQ ID NO:37、38及び39、又はSEQ ID NO:40、41及び36に示すアミノ酸配列を含む。
【0080】
好ましい実施形態において、Kabat、IMGT又はChothia番号付けシステムによれば、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:42、43及び44、SEQ ID NO:45、46及び47、又はSEQ ID NO:48、49及び44に示すアミノ酸配列を含む。
【0081】
好ましい実施形態において、Kabat、IMGT又はChothia番号付けシステムによれば、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:50、35及び51、SEQ ID NO:52、38及び53、又はSEQ ID NO:54、41及び51に示すアミノ酸配列を含む。
【0082】
好ましい実施形態において、Kabat、IMGT又はChothia番号付けシステムによれば、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:34、35及び55、SEQ ID NO:56、38及び57、又はSEQ ID NO:58、41及び55に示すアミノ酸配列を含む。
【0083】
好ましい実施形態において、Kabat、IMGT又はChothia番号付けシステムによれば、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:34、59及び60、SEQ ID NO:56、61及び62、又はSEQ ID NO:58、63及び60に示すアミノ酸配列を含む。
【0084】
好ましい実施形態において、Kabat、IMGT又はChothia番号付けシステムによれば、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:64、65及び66、SEQ ID NO:67、68及び69、又はSEQ ID NO:58、70及び66に示すアミノ酸配列を含む。
【0085】
好ましい実施形態において、Kabat、IMGT又はChothia番号付けシステムによれば、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:71、72及び73、SEQ ID NO:74、75及び76、又はSEQ ID NO:77、78及び73に示すアミノ酸配列を含む。
【0086】
好ましい実施形態において、Kabat、IMGT又はChothia番号付けシステムによれば、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:34、79及び80、SEQ ID NO:81、82及び83、又はSEQ ID NO:84、85及び80に示すアミノ酸配列を含む。
【0087】
好ましい実施形態において、Kabat番号付けシステムによれば、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:86、35及び36に示すアミノ酸配列を含む。
【0088】
好ましい実施形態において、Kabat番号付けシステムによれば、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:87、88及び44に示すアミノ酸配列を含む。
【0089】
好ましい実施形態において、Kabat番号付けシステムによれば、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:42、88及び44に示すアミノ酸配列を含む。
【0090】
好ましい実施形態において、Kabat番号付けシステムによれば、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:42、89及び44に示すアミノ酸配列を含む。
【0091】
好ましい実施形態において、Kabat番号付けシステムによれば、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:42、90及び44に示すアミノ酸配列を含む。
【0092】
好ましい実施形態において、Kabat番号付けシステムによれば、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:42、91及び44に示すアミノ酸配列を含む。
【0093】
好ましい実施形態において、Kabat、IMGT又はChothia番号付けシステムによれば、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:71、102及び103、SEQ ID NO:104、105及び106、又はSEQ ID NO:107、108及び103に示すアミノ酸配列を含む。
【0094】
好ましい実施形態において、Kabat、IMGT又はChothia番号付けシステムによれば、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:71、109及び110、SEQ ID NO:104、111及び112、又はSEQ ID NO:107、108及び110に示すアミノ酸配列を含む。
【0095】
好ましい実施形態において、Kabat、IMGT又はChothia番号付けシステムによれば、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:113、114及び115、SEQ ID NO:116、117及び118、又はSEQ ID NO:119、120及び115に示すアミノ酸配列を含む。
【0096】
好ましい実施形態において、Kabat、IMGT又はChothia番号付けシステムによれば、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:121、122及び123、SEQ ID NO:124、125及び126、又はSEQ ID NO:127、128及び123に示すアミノ酸配列を含む。
【0097】
好ましい実施形態において、Kabat、IMGT又はChothia番号付けシステムによれば、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:113、129及び130、SEQ ID NO:131、132及び133、又はSEQ ID NO:134、135及び130に示すアミノ酸配列を含む。
【0098】
好ましい実施形態において、Kabat、IMGT又はChothia番号付けシステムによれば、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:113、136及び137、SEQ ID NO:138、139及び140、又はSEQ ID NO:141、142及び137に示すアミノ酸配列を含む。
【0099】
好ましい実施形態において、Kabat、IMGT又はChothia番号付けシステムによれば、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:34、143及び144、SEQ ID NO:37、38及び145、又はSEQ ID NO:40、41及び144に示すアミノ酸配列を含む。
【0100】
好ましい実施形態において、Kabat、IMGT又はChothia番号付けシステムによれば、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:34、143及び146、SEQ ID NO:56、38及び147、又はSEQ ID NO:58、41及び146に示すアミノ酸配列を含む。
【0101】
好ましい実施形態において、Kabat、IMGT又はChothia番号付けシステムによれば、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:34、148及び149、SEQ ID NO:37、150及び151、又はSEQ ID NO:40、152及び149に示すアミノ酸配列を含む。
【0102】
好ましい実施形態において、Kabat、IMGT又はChothia番号付けシステムによれば、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:71、153及び154、SEQ ID NO:104、155及び156、又はSEQ ID NO:107、157及び154に示すアミノ酸配列を含む。
【0103】
いくつかの具体的な実施形態において、前記CDR1、CDR2及び/又はCDR3は、前述HCDR1、HCDR2及び/又はHCDR3に1個、2個又は3個の突然変異が発生するアミノ酸配列を含み、前記突然変異は、挿入、欠失及び/又は置換から選択され、前記置換は、好ましくは、保存的アミノ酸の置換である。
【0104】
いくつかの具体的な実施形態において、前記CDR1、CDR2及び/又はCDR3は、前述HCDR1、HCDR2及び/又はHCDR3に比べて少なくとも80、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0105】
いくつかの具体的な実施形態において、前記抗体又はその抗原結合断片は、前述CDR1、CDR2及びCDR3を含む単一ドメイン抗体を含む。
【0106】
いくつかの具体的な実施形態において、前記単一ドメイン抗体は、SEQ ID NO:7~21、24~31及び92~101から選択されるいずれか一つの配列に示すアミノ酸配列を含む。
【0107】
任意選択的な実施形態において、前記単一ドメイン抗体は、SEQ ID NO:7~21、24~31及び92~101のうちのいずれか一つの配列に示す配列に比べて多くとも20個、19個、18個、17個、16個、15個、14個、13個、12個、11個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個又は1個の突然変異が発生するアミノ酸配列を含み、前記突然変異は、挿入、欠失及び/又は置換から選択され、前記置換は、好ましくは、保存的アミノ酸の置換である。
【0108】
任意選択的な実施形態において、前記単一ドメイン抗体は、SEQ ID NO:7~21、24~31及び92~101のうちのいずれか一つの配列に示す配列に比べて少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0109】
いくつかの具体的な実施形態において、前記抗体は、SEQ ID NO:7~21、24~31及び92~101のうちのいずれか一つの配列に示すVHHドメインにおけるFR領域を含む。
【0110】
任意選択的な実施形態において、前記抗体は、SEQ ID NO:7~21、24~31及び92~101のうちのいずれか一つの配列に示すVHHドメインにおけるFR領域に比べて多くとも15個、14個、13個、12個、11個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個又は1個の突然変異が発生するアミノ酸配列を含み、前記突然変異は、挿入、欠失及び/又は置換から選択され、前記置換は、好ましくは、保存的アミノ酸の置換であり、
【0111】
任意選択的な実施形態において、前記抗体は、SEQ ID NO:7~21、24~31及び92~101のうちのいずれか一つの配列に示すVHHドメインにおけるFR領域に比べて少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0112】
いくつかの具体的な実施形態において、前記抗体又はその抗原結合断片は、(1)キメラ抗体又はその断片、(2)ヒト化抗体又はその断片、又は(3)完全ヒト抗体又はその断片から選択される。
【0113】
いくつかの具体的な実施形態において、前記抗体又はその抗原結合断片は、抗体重鎖定常領域を含むか又は含まず、任意選択的に、前記抗体重鎖定常領域は、ヒト、アルパカ、マウス、ラット、ウサギ及びヒツジから選択され、任意選択的に、前記抗体重鎖定常領域は、IgG、IgM、IgA、IgE及びIgDから選択され、任意選択的に、前記IgGは、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4から選択され、任意選択的に、前記重鎖定常領域は、Fc領域、CH3領域及び完全な重鎖定常領域から選択され、好ましくは、前記重鎖定常領域は、ヒトFc領域であり、好ましくは、前記抗体又はその抗原結合断片は重鎖抗体である。
【0114】
いくつかの具体的な実施形態において、前記抗体又はその抗原結合断片にはさらに、治療剤又はトレーサーがカップリングされており、好ましくは、前記治療剤は、放射性同位体、化学療法薬又は免疫調節剤から選択され、前記トレーサーは、放射線造影剤、常磁性イオン、金属、蛍光標識、化学発光標識、超音波造影剤及び光増感剤から選択される。
【0115】
いくつかの具体的な実施形態において、前記抗体又はその抗原結合断片にはさらに、他の機能性分子が連結されており、好ましくは、前記他の機能性分子は、シグナルペプチド、タンパク質タグ、サイトカイン、血管新生阻害剤及び免疫チェックポイント阻害剤のうちの一つ又は複数から選択される。
【0116】
第2の態様では、本出願は、多重特異性抗原結合分子をさらに提供し、前記多重特異性抗原結合分子は、前述の抗体又はその抗原結合断片、及びBCMA以外の他の抗原に結合する抗原結合分子、又は前述抗体又はその抗原結合断片とは異なるBCMAエピトープに結合するものを含み、任意選択的に、前記BCMA以外の他の抗原は、CD3(好ましくは、CD3εである)、CD16、CD137、CD258、PD-1、PD-L1、4-1BB、CD40、CD64、EGFR、VEGF、HER2、HER1、HER3、IGF-1R、ホスファチジルセリン(Phosphatidylserine、PS)、C-Met、HSA、GPRC5D、MSLN、血液脳関門受容体、GPC3、PSMA、CD33、GD2、ROR1、ROR2、FRα及びGucy2Cから選択される。
【0117】
好ましい実施形態において、前記抗原結合分子は、抗体又はその抗原結合断片である。
【0118】
好ましい実施形態において、前記多重特異性抗原結合分子は、二重特異性、三重特異性又は四重特異性であってもよい。
【0119】
好ましい実施形態において、前記多重特異性抗原結合分子は、2価、3価、4価、5価又は6価であってもよい。
【0120】
第3の態様では、本出願は、単離された核酸断片をさらに提供し、前記核酸断片は、前述抗体もしくはその抗原結合断片又は多重特異性抗原結合分子をコードする。
【0121】
第4の態様では、本出願は、ベクター(vector)をさらに提供し、前記ベクターは前述核酸断片を含む。
【0122】
第5の態様では、本出願は、宿主細胞をさらに提供し、前記宿主細胞は前述のベクターを含み、好ましくは、前記細胞は、原核細胞又は真核細胞、例えば、細菌(例えば、大腸菌)、真菌(例えば、酵母)、昆虫細胞又は哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞株又は293T細胞株)である。
【0123】
第6の態様では、本出願は、前述抗体もしくはその抗原結合断片又は多重特異性抗原結合分子を製造する方法をさらに提供し、前記方法は、前述細胞を培養することと、前記細胞により発現される抗体、抗原結合断片又は多重特異性抗原結合分子を単離することとを含む。
【0124】
第7の態様では、本出願は、医薬組成物をさらに提供し、前記医薬組成物は、前述の抗体もしくはその抗原結合断片、多重特異性抗原結合分子、核酸断片、ベクター又は前述方法に従って製造された生成物を含み、任意選択的に、前記薬物組成物は、薬学的に許容されるキャリア(carrier)、希釈剤又は助剤をさらに含み、任意選択的に、前記薬物組成物は、追加の抗腫瘍剤をさらに含む。
【0125】
いくつかの実施形態において、前記薬学的に許容可能なキャリアは、免疫細胞の生存性及び機能を低下させず、抗体又はその抗原結合断片と抗原との特異的結合に影響を及ぼしないキャリアであり、細胞培地、緩衝液、生理食塩水及び平衡塩溶液などを含むが、それらに限らない。緩衝液の例としては、等張性リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩等が挙げられる。具体的な実施形態において、前記薬学的に許容可能なキャリアは、1%血清を含有するリン酸塩緩衝液である。
【0126】
前記抗腫瘍剤は、例えば、様々な化学療法薬、例えば、シクロホスファミド、イソシクロホスファミド、メルファラン、カルムスチン、ロムスチン、ニムスチン、フォテムスチンなどを含むが、それらに限らないアルキル化剤化学療法薬、メトトレキサート、フルオロウラシル、テガフール、カルモフール、フルオロデオキシウリジン、カペシタビン、ゲムシタビン、ラルチトレキセドなどを含むが、それらに限らない代謝拮抗性化学療法薬、アクチノマイシンD、マイトマイシン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、ピランドキソルビシンなどを含むが、それらに限らない抗癌性抗生物質、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、イリノテカン、トポテカン、パクリタキセル、ドセタキセルなどを含むが、それらに限らない植物系化学療法薬、ダカルバジン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチンなどを含むが、それらに限らない雑類である。
【0127】
第8の態様では、本出願は、腫瘍又は癌を治療する方法をさらに提供し、前記方法は、有効量の前述的抗体もしくはその抗原結合断片、多重特異性抗原結合分子、核酸断片、ベクター、前述方法に従って製造された生成物又は前述医薬組成物を被験者に投与することを含み、任意選択的に、前記腫瘍又は癌は、BCMAを発現する腫瘍又は癌であり、好ましくは、B細胞リンパ腫であり、より好ましくは、多発性骨髄腫(MM)である。
【0128】
第9の態様では、本出願は、前述抗体もしくはその抗原結合断片、多重特異性抗原結合分子、核酸断片、ベクター、前述方法に従って製造された生成物又は医薬組成物の、腫瘍又は前述癌を治療する医薬品の製造における使用をさらに提供し、任意選択的に、前記腫瘍又は癌は、BCMAを発現する腫瘍又は癌であり、好ましくは、B細胞リンパ腫であり、より好ましくは、多発性骨髄腫(MM)である。
【0129】
第10の態様では、本出願は、前述抗体もしくはその抗原結合断片、多重特異性抗原結合分子、核酸断片、ベクター、前述方法に従って製造された生成物又は前述医薬組成物の、腫瘍又は癌を治療するための使用をさらに提供し、任意選択的に、前記腫瘍又は癌は、BCMAを発現する腫瘍又は癌であり、好ましくは、B細胞リンパ腫であり、より好ましくは、多発性骨髄腫(MM)である。
【0130】
第11の態様では、本出願はキットをさらに提供し、前記キットは、前述の抗体もしくはその抗原結合断片、多重特異性抗原結合分子、核酸断片、ベクター、前述方法に従って製造された生成物又は前述医薬組成物を含む。
【0131】
第12の態様では、本出願は、生物学的試料におけるBCMA発現を検出する方法をさらに提供し、前記方法は、前述の抗体又はその抗原結合断片とBCMAとの間で複合体を形成し得る条件下で、前記生物学的試料を前記の抗体又はその抗原結合断片と接触させることを含み、好ましくは、前記方法は、前記複合体の形成を検出し、試料におけるBCMAの存在又は発現レベルを指示することをさらに含む。
【0132】
第13の態様では、本出願は、前述抗体又はその抗原結合断片の、BCMA検出試薬の製造における使用をさらに提供する。
【0133】
実施例
以下では、具体的な実施例を参照しながら本出願をさらに説明し、本出願の利点及び特徴は説明により明らかになるであろう。実施例に具体的な条件が明記されていない場合、従来の条件又はメーカーが提案した条件に従って実施する。使用される試薬又は機器はメーカーが明記されていない場合、いずれも市販で購入することができる一般的な製品である。
【0134】
本明細書の実施例は、例示に過ぎず、本出願の範囲を制限するものではない。当業者であれば、本出願の精神及び範囲を逸脱することなく本出願の技術案の詳細及び形態に対して修正又は置換を行うことができるが、これらの修正及び置換がいずれも本出願の保護範囲内に含まれることを理解するであろう。
【0135】
実施例1 対照抗体の製造、内因性細胞の同定及び過剰発現細胞株の製造
(A)対照抗体の製造
REGN5459及びHPN217は、いずれもヒトBCMAタンパク質を認識する抗体であり、ここで、REGN5459配列は、米国特許公開第US2020/0024356A1号に由来し、HPN217配列は、米国特許公開第US20190112381A1号に由来する。REGN5459の重鎖可変領域(VH)をシグナルペプチドとヒト由来抗体IgG1重鎖定常領域とを含む発現ベクターに組換え、軽鎖可変領域(VL)配列をシグナルペプチドとヒト由来抗体IgG1軽鎖定常領域とを含む発現ベクターに組換えして、組換えプラスミドを得て、合成された抗体をREGN5459-hIgG1と命名した。HPN217のVHH配列をシグナルペプチドとヒト由来抗体IgG1 Fcとを含む発現ベクターに組換えして、組換えプラスミドを得て、合成された抗体をHPN217-hHcAbと命名した。陰性対照抗体hIgG1は、Hen Egg Lysozyme鶏卵リゾチームに対する抗体anti-hel-hIgG1(百英から購入、カタログ番号:B117901)であり、以下ではhIgG1と略称される。
【0136】
【表1】
【0137】
対照抗体とヒトBCMA-Hisタンパク質(Acroから購入、カタログ番号:BCA-H522y)及びサルBCMA-Hisタンパク質(Acroから購入、カタログ番号:BCA-C52H7)との結合活性は、ELISAにより検出された。具体的な方法は以下のとおりである:抗原タンパク質をPBSにより最終濃度1μg/mLに希釈し、そして50μl/ウェルで96ウェルのELISAプレートに加えた。プラスチックフィルムで密封し、4℃で一晩インキュベートし、翌日、PBSでプレートを2回洗浄し、封入液[PBS+2%(w/v)BSA]を加え、室温で2時間ブロッキングした。封入液を捨て、100nMの勾配希釈された対照抗体又は陰性対照抗体を50μl/ウェルで加えた。37℃で2時間インキュベートした後、PBSでプレートを3回洗浄した。HRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)で標識される二次抗体(Merckから購入、カタログ番号:AP113P)を加え、37℃で1時間インキュベートした後、PBSでプレートを5回洗浄した。TMB基質を50μl/ウェルで加え、室温で10分間インキュベートした後、停止液(1.0M HCl)を50μl/ウェルで加えた。ELISAプレートリーダー(Multimode Plate Reader、EnSight、Perkin Elmerから購入)によりOD450nmの数値を読み取った。結果は表2、3及び図1A、1Bに示すとおりであり、REGN5459-hIgG1抗体は、ヒトBCMAタンパク質及びサルBCMAタンパク質の両方に対して良好な結合活性を有し、HPN217-hHcAbは、ヒトBCMAタンパク質と良好な結合活性を有するが、サルBCMAタンパク質と結合しない。
【0138】
【表2】
【0139】
【表3】
【0140】
(B)BCMAタンパク質を内因的に発現する細胞株の同定
H929細胞及びU266細胞をT-75細胞培養フラスコ中で対数増殖期まで拡大培養し、単細胞懸濁液になるまで細胞をピペッティングした。細胞を計数した後、遠心分離し、細胞ペレットをFACS緩衝液(PBS+2%ウシ胎児血清)により2×10細胞/ミリリットルまで再懸濁させ、50μl/ウェルで96ウェルのFACS反応プレートに加え、REGN5459-hIgG1及びHPN217-hHcAb抗体を一次抗体とし、APCで標識されるヤギ抗ヒトIgG(H+L)を二次抗体(Jacksonから購入、カタログ番号:109-605-088)とし、FACS(FACS CantoTM、BD社から購入)により検出し分析した。結果は、表4並びに図2A及び2Bに示すとおりであり、H929細胞及びU266細胞は、REGN5459-hIgG1及びHPN217-hHcAb抗体の両方に結合できることが示された。
【0141】
【表4】
【0142】
(C)ヒトBCMAタンパク質及びサルBCMAタンパク質のFlp-inCHO組換え細胞株の製造
ヒトBCMA及びサルBCMAアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列をそれぞれpcDNA5/FRTベクター(Clontechから購入)にクローニングした。ヒトBCMA NCBI Gene ID:608、サルBCMA NCBI Gene ID:712212。Flp-inCHO細胞株(中国科学院典型的培養物寄託委員会細胞バンクから購入)をそれぞれトランスフェクトした後(Lipofectamine(登録商標) 3000 Transfection Kit、Invitrogenから購入、カタログ番号:L3000-015)、600μg/ml hygromycin(ThermoFisher,カタログ番号:10687010)を含有する10%(v/v)ウシ胎児血清(ExCell Bio、カタログ番号:FND500)含有F12K Medium(Gibco,カタログ番号:21127030)培地において2週間選択的に培養し、REGN5459-hIgG1及びヤギ抗ヒトIgG(H+L)抗体(Jackson、カタログ番号:109605088)を用いて、フローサイトメータFACS CantoII(BD Biosciencesから購入)において検出し、発現量が高く、単一のピーク形状を有する細胞を増幅し、増幅後の細胞をフローサイトメトリー分析法により再検出した。成長が良く、蛍光強度が高く、均一性が高い陽性細胞集団を選択して拡大培養し続け、液体窒素で凍結保存した。表5は、ヒトBCMA陽性発現のFlp-inCHO高発現細胞集団及びサルBCMA陽性発現のFlp-inCHO高発現細胞集団がそれぞれ製造されたことを示した。図3及び図4において、横座標は、細胞蛍光強度であり、縦座標は細胞数である。
【0143】
【表5】
【0144】
実施例2 BCMAに対するアルパカナノ抗体の製造
(A)動物免疫及び血清力価の測定
免疫動物は、アルパカ1匹(Alpaca、番号NB254)であり、免疫前に予め10mL採血して陰性対照とし、初回免疫では、0.5mgのヒトBCMA(Met1-Ala54)-hFcタンパク質(Acroから購入、カタログ番号:BC7-H5254)とフロイント完全アジュバント(CFA)1mLを均一に混合した後に皮下注射し、21日目に2回目の免疫を行い、0.25mgのヒトBCMA-hFcタンパク質とフロイント不完全アジュバント(IFA)1mLを均一に混合した後に皮下注射し、42日目に3回目の免疫を行い、ヒトBCMA-hFcタンパク質及びカニクイザルBCMA(Met1-Ala53)-hFcタンパク質(Acroから購入、カタログ番号:BCA-C5253)をそれぞれ0.25mgでIFA 1mLと均一に混合した後に皮下注射し、その後、3回目の免疫の方法に従って3週間ごとに追加免疫を行った。
【0145】
各追加免疫から1週間後に採血し、ELISAにより血清抗体の力価及び特異性を検出し、結果は6に示すとおりである。ヒトBCMA-hFc及びカニクイザルサルBCMA-hFcタンパク質で免疫化されたアルパカの血清は、いずれも免疫原に対して異なる程度の結合を示し、抗原抗体反応を呈することが示された。ここで、空白対照群は1%(w/v)BSAであり、ここで、4回目の免疫及び5回目の免疫は、それぞれ4回目及び5回目の免疫後の7日目のアルパカ血清を指し、表中のデータはOD450nm値であり、kは1000を表す。
【0146】
【表6】
【0147】
(B)ファージライブラリーの構築
リンパ球単離液の取扱説明書に従って、4回目の免疫及び5回目の免疫後に採集した50mLの末梢血からPBMCを単離した。RNAiso Plus試薬によりNB254の4回目の免疫及び5回目の免疫のPBMCの総RNAを抽出した。PrimeScriptTMII 1st Strand cDNA Synthesis Kit(Takara、カタログ番号:6210A)キットを用いて逆転写し、取扱説明書に従って逆転写してcDNAを製造し、合計5μgのRNAを転写した。4回目の免疫及び5回目の免疫のcDNA原液を同じ割合で混合した後に5倍希釈してネステッド増幅を行い、タッピングによりVHH断片を回収した。ベクター及び目的断片に対してそれぞれSfiIにより50℃で一晩酵素切断を行った後に回収した。ベクターと目的断片を1:3の割合で連結した。連結生成物に対して10回のエレクトロポレーションによる形質転換を行い、エレクトロポレーションの直後にエレクトロポレーションカップに1mLの2YT培地(37℃で予熱した)を加えて蘇生し、エレクトロポレーション生成物を吸い出し、2YT培地でエレクトロポレーションカップを洗浄し、37℃、180rpmで45min蘇生し、100μLを取り、10-3及び10-4に勾配希釈し、ライブラリーにおける形質転換体の数を測定し、90mmのプレートに塗布し、残りを遠心分離し、8mLの2YT培地を加えて再懸濁させ、8枚の200mmのプレートに塗布した。翌日、計数し、ライブラリー容量を計算して2.14×10である。48個のクローンをランダムに選択して培養し、PCRにより検出してその挿入率が100%である。
【0148】
大腸菌ライブラリーを、その初期OD600=0.1~0.2になるまで2×300mLの2YT(Amp:100μg/ml、Glu:1%)培地に入れ、37℃、230rpmでOD600=0.8以上になるまで培養した。OD600に基づいて、加えたヘルパーファージM13K07の量(M13K07:大腸菌=20:1)を計算し、37℃で30min静置し感染させた後、37℃、180rpmで30min培養した。5000rpmで遠心分離して上清を除去し、2YT(100μg/mL Amp+50μg/mL Kan)培地を交換し、30℃、220rpmで一晩培養した。NEB公式ウェブサイトの手順に従ってファージライブラリーを沈殿させ、その力価を測定した。
【0149】
(C)BCMAナノ抗体に対するパニング
マイクロウェルプレートをヒトBCMA-hFcタンパク質により0.5μg/ウェルでコーティングし、合計8個のウェルであり、ファージライブラリーの投入量は2.2×1011であり、第1ラウンドの溶出生成物の力価が1.85×10であると測定した。ELISAによる同定によれば、第1ラウンドのパニング生成物は、ヒトBCMAタンパク質との結合の陽性率が89.58%であり、サルBCMAタンパク質との結合の陽性率が4.2%であり、ヒト、サルBCMAタンパク質との交差結合の陽性率が4.2%である。一般的な手順で第1ラウンドのパニング溶出生成物を増幅し、その増幅ファージの力価が1.14×1013であると測定した。第2ラウンドのパニングにおいて、マイクロウェルプレートをサルBCMAタンパク質により0.2μg/ウェルでコーティングし、合計4個のウェルであり、ファージライブラリーの投入量は2.2×1011であり、溶出生成物の力価が1.32×10であると測定した。ELISAによる同定によれば、第2ラウンドのパニング生成物は、ヒトBCMAタンパク質との結合の陽性率が92.1%であり、サルBCMAタンパク質との結合の陽性率が39.3%であり、ヒト、サルBCMAタンパク質との交差結合の陽性率が39.3%である。
【0150】
(D)シーケンシング
パニングにより合計70個のヒトサル交差陽性クローンを得て、陽性クローンに対してシーケンシング分析を行い、VHHコードタンパク質配列に基づいて系統樹配列を構築し、クラスタリング分析により、70本の配列が3つの生殖系列に属することを発見し、それぞれLab01、02、03、04、05、06、07及び08号の合計8個のクローンを選択して構築し、発現させ、同定した。
【0151】
実施例3 組換え候補抗体の構築、発現
目標VHH配列をヒトIgG1 Fcの発現ベクターに組換えして、組換えプラスミド(ヒトIgG1Fcの配列はSEQ ID NO:4を参照されたい)を得た。組換え候補抗体プラスミド及びトランスフェクト試薬PEI(Polysciencesから購入、カタログ番号:24765-1)をOPTI-MEM(Gibco、カタログ番号:11058021)に加えて均一に混合した後に15min静置し、Expi293F細胞(メーカー:Thermofisher、カタログ番号:A14527)に加え、5% CO、120rpm、37℃のシェーカーに入れて培養した。トランスフェクション翌日、OPM-293 ProFeed(上海奥浦邁、カタログ番号:F081918-001)及び6g/Lグルコース(メーカー:Sigma、カタログ番号:G7528)を加えた。トランスフェクション6日目、細胞上清を収集した。上清を収集して培養し、Protein Aアフィニティーにより精製し、用いたフィーラーはMabselect SuRe(番号10054120、GE Healthcareから購入)であり、緩衝液はMabアフィニティー平衡液(PBS Buffer)、Mabアフィニティー淋洗液(1M NaClを含有するPBS緩衝液)及びMabアフィニティー溶出液(クエン酸塩緩衝液)である。超微量分光光度計(Nanodrop8000、Thermo)を用いて濃度測定を行った。SEC-HPLC法により測定対象タンパク質試料を分析して、タンパク質の分子サイズ均一性及び純度を特徴付けた。用いたHPLCはAgilent 1260であり、クロマトグラフィーカラムTSKgel G3000SWXLはTosoh Bioscienceから購入され、移動相は200mMリン酸緩衝液、pH 7.0/イソプロピルアルコール(v/v 9:1)(ロット番号:20210519001)であり、検出温度は25℃であり、流速は0.5mL/minであり、検出波長は280nmである。SEC-HPLCデータは、手動積分法によりクロマトグラムを分析し、面積正規化法に従ってタンパク質の純度を計算し、メインピークはモノマーであると考えられ、メインピーク前のクロマトグラフィーピークは凝集体と称され、メインピーク後のクロマトグラフィーピークはフラグメントと称される。結果は表7に示すとおりであり、候補抗体の最終製品の純度は高かった。
【0152】
【表7】
【0153】
実施例4 組換え候補抗体の同定
(A)BCMA組換え候補抗体とヒトBCMAタンパク質との結合及びサルBCMAタンパク質との交差結合の酵素結合免疫吸着アッセ(ELISA)による検出
具体的な方法は以下のとおりである:ヒトBCMAタンパク質(Acroから購入、カタログ番号:BCA-H522y)及びサルBCMAタンパク質(Acroから購入、カタログ番号:BCA-C52H7)をそれぞれPBSにより最終濃度1μg/mLに希釈し、そして50μl/ウェルで96ウェルのELISAプレートに加えた。プラスチックフィルムで密封し、4℃で一晩インキュベートし、翌日、PBSでプレートを2回洗浄し、封入液[PBS+2%(w/v)BSA]を加え、室温で2時間ブロッキングした。封入液を捨て、PBSでプレートを3回洗浄し、100nMの勾配希釈されたBCMAナノ組換えキメラ抗体又は陰性対照抗体を50μl/ウェルで加えた。37℃で2時間インキュベートした後、PBSでプレートを3回洗浄した。HRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)で標識される二次抗体(Merckから購入、カタログ番号:AP113P)を加え、37℃で1時間インキュベートした後、PBSでプレートを5回洗浄した。TMB基質を50μl/ウェルで加え、室温で10分間インキュベートした後、停止液(1.0M HCl)を50μl/ウェルで加えた。ELISAプレートリーダー(Multimode Plate Reader、EnSight、Perkin Elmerから購入)によりOD450nmの数値を読み取った。結果は図5図6に示すとおりであり、全ての抗体はいずれもヒトBCMAタンパク質と結合し、BCMA-Lab06及びBCMA-Lab07は、サルBCMAタンパク質に対する結合活性がなく、他の組換え候補抗体は、いずれもサルBCMAタンパク質と交差結合活性を有し、IgGサブタイプ対照はヒトIgG1である。
【0154】
(B)BCMA組換え候補抗体とBCMA発現内因性細胞との結合のフローサイトメトリー(FACS)による検出
必要な細胞をT-75細胞培養フラスコ中で対数増殖期まで拡大培養し、単細胞懸濁液になるまで細胞をピペッティングした。細胞を計数した後、遠心分離し、細胞ペレットをFACS緩衝液(PBS+2%ウシ胎児血清)により2×10細胞/ミリリットルまで再懸濁させ、50μl/ウェルで96ウェルのFACS反応プレートに加え、候補抗体の測定対象試料を50μl/ウェルで加え、4℃で1時間インキュベートした。PBS緩衝液で3回遠心分離し洗浄し、二次抗体anti-hIgG(Fc)Alexa 647(Jacksonから購入、カタログ番号:109-605-098)を50μl/ウェルで加え、氷上で1時間インキュベートした。PBS緩衝液で3回遠心分離し洗浄し、100μlを取り、FACS(FACS CantoTM、BD社から購入)により検出し、結果を分析した。ソフトウェア(FlowJo)によってデータを分析し、細胞の平均蛍光強度(MFI)を得た。次にソフトウェア(GraphPad Prism8)によって分析し、データフィッティングを行い、EC50を計算した。結果は、表8及び図7図8に示すとおりであり、BCMA-Lab05、BCMA-Lab06、BCMA-Lab08は、H929及びU266細胞との結合が悪く、他の抗体は良好に機能した。
【0155】
【表8】
【0156】
(C)リガンドAPRILとヒトBCMAタンパク質との結合に対する組換え候補抗体の遮断作用のリガンド結合の競合ELISAによる検出
抗原タンパク質をPBSにより最終濃度1μg/mLに希釈し、そして50μl/ウェルで96ウェルのELISAプレートに加えた。プラスチックフィルムで密封し、4℃で一晩インキュベートし、翌日、PBSでプレートを2回洗浄し、封入液[PBS+2%(w/v)BSA]を加え、室温で2時間ブロッキングした。封入液を捨て、PBSでプレートを3回洗浄し、200nMの勾配希釈されたBCMAナノ組換えキメラ抗体又は陰性対照抗体を50μl/ウェルで加えた。hAPRIL-biotin(Acroから購入、カタログ番号:APL-H82F5)を0.5μg/mLに希釈し、50μl/ウェルである。37℃で1.5時間インキュベートした後、PBSでプレートを3回洗浄した。HRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)で標識される二次抗体(Sigmaから購入、カタログ番号:S2438-250μg)を加え、37℃で1時間インキュベートした後、PBSでプレートを5回洗浄した。TMB基質を50μl/ウェルで加え、室温で10分間インキュベートした後、停止液(1.0M HCl)を50μl/ウェルで加えた。ELISAプレートリーダー(Multimode Plate Reader、EnSight、Perkin Elmerから購入)によりOD450nmの数値を読み取った。結果は図9に示すとおりであり、BCMA-Lab05、BCMA-Lab06及びBCMA-Lab08は遮断効果が普通であり、他の抗体は遮断効果が良好である。
【0157】
実施例5 BCMA組換え候補抗体の親和性の検出
Protein Aチップ(GE Healthcare;29-127-558)を用いて抗BCMA組換え候補抗体を捕捉した。試料及びランニング緩衝液はHBS-EP+(10mM HEPES,150mM NaCl,3mM EDTA,0.05% surfactant P20)(GE Healthcare;BR-1006-69)である。フローセルを25℃に設定した。試料ブロックを16℃に設定した。両方はいずれもランニング緩衝液で予め処理された。各サイクルにおいて、まずProtein Aチップで検出対象抗体を捕捉し、そして単一濃度のBCMA抗原タンパク質を注入し、抗体と抗原タンパク質との結合及び解離過程を記録し、最後にGlycine pH1.5(GE Healthcare;BR-1003-54)でチップの再生を完了した。溶液における異なる濃度のヒトBCMA-Hisを240秒間注射し続けることによって結合を測定し、ここで、流速は30μL/分間であり、200nMから開始し(試験の実際の濃度は詳細な結果を参照)、1:1で希釈し、合計5個の濃度があった。解離相を600秒間までモニタリングし、試料溶液からランニング緩衝液への切り替えによって誘発された。10mMのグリシン溶液(pH 1.5)を用いて30μL/分間の流速で30秒間洗浄することによって、表面を再生させた。ヤギ抗ヒトFc表面から得られた応答を減算することによってバルク屈折率(Bulk refractive index)の差異を補正した。ブランク注射(=二重参照)をも減算した。見かけのKD及び他の動態学的パラメータを計算するために、Langmuir 1:1モデルを用いた。組換え候補抗体とヒトBCMAタンパク質との結合速度(K)、解離速度(Kdis)及び結合親和性(KD)は表に示すとおりであり、ここで、REGN5459-hIgG1抗体を対照として用いた。表9に示すように、組換え候補抗体とヒトBCMAタンパク質とのKD値はいずれも1E-7M以下である。
【0158】
【表9】
【0159】
一連の実験によりスクリーニングした後、BCMA-Lab01及びBCMA-Lab02アルパカ抗体を選択して後続のヒト化改変を行った。BCMA-Lab01~BCMA-Lab08アルパカ抗体配列は、表10に示すとおりであり、Kabat、IMGT、Chothia方式により分析されたCDR配列は、表11に示すとおりである。
【0160】
【表10】
【0161】
【表11】
【0162】
実施例6 ナノ抗体のヒト化
IMGT(http://imgt.cines.fr)ヒト抗体重軽鎖可変領域の生殖系列遺伝子データバンクをアラインメントすることによって、それぞれVHHナノ抗体と相同性の高い重鎖可変領域の生殖系列遺伝子を選択してテンプレートとし、VHHナノ抗体のCDRをそれぞれ対応するヒト由来テンプレートに移植し、順にFR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4である可変領域配列を形成した。必要に応じて、骨格配列における鍵となるアミノ酸に対して復帰突然変異を行ってVHHナノ抗体に対応するアミノ酸を形成して、元の親和性を保証すれば、ヒト化モノクローナル抗体を得た。ここで、抗体のCDRアミノ酸残基は、Kabat番号付けシステムにより確定され、注釈された。
【0163】
(A)BCMA-Lab01抗体のヒト化
VHHナノ抗体BCMA-Lab01のヒト化重鎖テンプレートはIGHV3-64*04及びIGHJ3*01であり、VHHナノ抗体BCMA-Lab01のCDRをそれぞれそのヒト由来テンプレートに移植すれば、対応するヒト化バージョンを得た。必要に応じて、BCMA-Lab01のヒト化抗体のFR領域配列における鍵となるアミノ酸に対して復帰突然変異を行ってVHHナノ抗体に対応するアミノ酸を形成して、元の親和性を保証し、抗体には化学的修飾が発生しやすい部位が存在し、これらの部位に対して点突然変異を行って修飾リスクを解消した。具体的な突然変異設計は表12に示すとおりであった。
【0164】
【表12】
【0165】
BCMA-Lab01ヒト化抗体の可変領域の具体的な配列は以下のとおりである:
BCMA-Lab01-VHH1 アミノ酸配列は、SEQ ID NO:15に示すとおりである:
【化1】
BCMA-Lab01-VHH2 アミノ酸配列は、SEQ ID NO:16に示すとおりである:
【化2】
BCMA-Lab01-VHH3 アミノ酸配列は、SEQ ID NO:17に示すとおりである:
【化3】
BCMA-Lab01-VHH4 アミノ酸配列は、SEQ ID NO:18に示すとおりである:
【化4】
BCMA-Lab01-VHH5 アミノ酸配列は、SEQ ID NO:19に示すとおりである:
【化5】
BCMA-Lab01-VHH6 アミノ酸配列は、SEQ ID NO:20に示すとおりである:
【化6】
BCMA-Lab01-VHH7 アミノ酸配列は、SEQ ID NO:21に示すとおりである:
【化7】
ヒト化重鎖テンプレートIGHV3-64*04アミノ酸配列は、SEQ ID NO:22に示すとおりである:
【化8】
ヒト化重鎖テンプレートIGHJ3*01アミノ酸配列は、SEQ ID NO:23に示すとおりである:
【化9】
Kabat番号付けシステムによると、上記ヒト化ナノ抗体VHH配列の分析結果は表13に示すとおりである。
【0166】
【表13】
【0167】
(B)BCMA-Lab02抗体のヒト化
VHH単一ドメイン抗体BCMA-Lab02のヒト化重鎖テンプレートはIGHV3-7*01及びIGHJ6*01であり、VHH単一ドメイン抗体BCMA-Lab02のCDRをそれぞれヒト由来テンプレートに移植すれば、対応するヒト化バージョンを得た。必要に応じて、BCMA-Lab02のヒト化抗体のFR領域配列における鍵となるアミノ酸に対して復帰突然変異を行ってVHH単一ドメイン抗体に対応するアミノ酸を形成して、元の親和性を保証し、抗体には化学的修飾が発生しやすい部位が存在し、これらの部位に対して点突然変異を行って修飾リスクを解消した。具体的な突然変異設計は表14に示すとおりである。
【0168】
【表14】
【0169】
BCMA-Lab02ヒト化抗体の可変領域の具体的な配列は以下のとおりである:
BCMA-Lab02-VHH1 アミノ酸配列は、SEQ ID NO:24に示すとおりである:
【化10】
BCMA-Lab02-VHH2 アミノ酸配列は、SEQ ID NO:25に示すとおりである:
【化11】
BCMA-Lab02-VHH3 アミノ酸配列は、SEQ ID NO:26に示すとおりである:
【化12】
BCMA-Lab02-VHH4 アミノ酸配列は、SEQ ID NO:27に示すとおりである:
【化13】
BCMA-Lab02-VHH5 アミノ酸配列は、SEQ ID NO:28に示すとおりである:
【化14】
BCMA-Lab02-VHH6 アミノ酸配列は、SEQ ID NO:29に示すとおりである:
【化15】
BCMA-Lab02-VHH7 アミノ酸配列は、SEQ ID NO:30に示すとおりである:
【化16】
BCMA-Lab02-VHH8 アミノ酸配列は、SEQ ID NO:31に示すとおりである:
【化17】
ヒト化重鎖テンプレートIGHV3-7*01アミノ酸配列は、SEQ ID NO:32に示すとおりである:
【化18】
ヒト化重鎖テンプレートIGHJ6*01アミノ酸配列は、SEQ ID NO:33に示すとおりである:
【化19】
Kabat番号付けシステムによると、上記ヒト化単一ドメイン抗体VHH配列の分析結果は表15に示すとおりである。
【0170】
【表15】
【0171】
実施例7 ヒト化候補ナノ抗体の構築、発現及び純度測定
具体的な操作方法は実施例3を参照されたく、目標ヒト化VHH配列をヒトIgG1 Fcの発現ベクターに組換えして、組換えプラスミド(ヒトIgG1 Fcの配列はSEQ ID NO:4を参照されたい)を得た。ヒト化VHH-Fcキメラ抗体を発現させて収集して細胞上清を得て、得られた抗体の純度に対してSEC-HPLCにより定性分析を行い、結果は16に示すとおりであり、ここで「/」は検出されていないことを表す。
【0172】
【表16】
【0173】
実施例8 BCMAヒト化候補ナノ抗体の同定
(A)BCMAヒト化候補ナノ抗体とヒトBCMAタンパク質との結合及びサルBCMAタンパク質との交差結合の酵素結合免疫吸着アッセ(ELISA)による検出
具体的な方法は実施例4(A)と同様であり、結果は図10図11に示すとおりであり、BCMA-Lab02-VHH1及びBCMA-Lab02-VHH2は、ヒトBCMA及びサルBCMAタンパク質のいずれにも結合せず、残りのヒト化候補ナノ抗体はいずれも、ヒトBCMAと良好に結合し、サルBCMAタンパク質と交差結合活性を有し、IgGサブタイプ対照はヒトIgG1である。
【0174】
(B)ヒト化候補ナノ抗体とBCMA発現内因性細胞との結合のフローサイトメトリー(FACS)による検出
具体的な方法は実施例4(B)と同様であり、結果は表17及び図12図13に示すとおりであり、BCMA-Lab02-VHH1及びBCMA-Lab02-VHH2は、H929及びU266細胞に結合せず、残りのヒト化候補ナノ抗体は、H929及びU266細胞と良好に結合した。
【0175】
【表17】
【0176】
(C)リガンドAPRILとヒトBCMAタンパク質との結合に対するヒト化候補ナノ抗体の遮断作用のリガンド結合の競合ELISAによる検出
具体的な方法は実施例4(C)と同様であり、結果は図14に示すとおりであり、BCMA-Lab02-VHH1及びBCMA-Lab02-VHH2は、リガンドAPRILとヒトBCMAタンパク質との結合を遮断することができず、BCMA-Lab01VHH1及びBCMA-Lab01VHH2は、リガンドAPRILとヒトBCMAタンパク質との結合に対する遮断作用が悪く、残りのヒト化候補ナノ抗体は遮断作用が良好である。
【0177】
実施例9 BCMAヒト化候補ナノ抗体の親和性の検出
具体的な操作方法は実施例5を参照されたい。ヒト化候補ナノ抗体とヒトBCMAタンパク質との結合速度(Ka)、解離速度(Kdis)及び結合親和性(KD)は表18に示すとおりであり、ここで、REGN5459-hIgG1抗体を対照として用いた。表18に示すように、ヒト化候補ナノ抗体とヒトBCMAタンパク質とのKD値はいずれも1E-8M以下である。
【0178】
【表18】
【0179】
実施例10 BCMAに対するナノ抗体のパニング及び組換え候補抗体の同定
(A) BCMAに対するナノ抗体のパニング
実施例2(C)の方法に従って、ヒトBCMAに結合する陽性クローンをさらにパニングし、Lab09~18の合計10個のクローンを選択して構築し、発現させ、同定した。
【0180】
(B) 組換え候補抗体の構築、発現
実施例3における方法に従って、VHH-IgG1の組換え候補抗体を得て、それとともにSEC-HPLCにより同定して、候補抗体最終製品の純度はいずれも高かった。
【0181】
(C) BCMA組換え候補抗体とヒトBCMAタンパク質との結合のELISAによる検出
実施例4(A)における方法を参照して、ELISAを用いて組換え候補抗体とヒトBCMAとの結合を検出し、結果は図15に示すとおりである。図15により、全ての抗体は、いずれもヒトBCMAタンパク質に結合し、陽性対照抗体HPN217-hHcAbと同等であることが示された。
【0182】
(D) BCMA組換え候補抗体とBCMA発現内因性細胞との結合のFACSによる検出
実施例4(B)における方法に従って、FACSを用いて、組換え候補抗体とBCMA発現内因性細胞との結合を同定し、結果は、図16A、16B及び表19に示すとおりである。結果によると、H929との結合が弱く、U266と結合しないBCMA-Lab09を除いて、残りの抗体は、H929及びU266細胞との結合がいずれも強く、陽性対照抗体より強いか又は陽性対照抗体と同等である。
【0183】
【表19】
【0184】
(E) リガンドAPRILとヒトBCMAタンパク質との結合に対する組換え候補抗体の遮断作用のリガンド結合の競合ELISAによる検出
実施例4(C)における方法に従って、リガンドの競合ELISAを用いて、リガンドAPRILとヒトBCMAタンパク質との結合に対する組換え抗体の遮断作用を検出し、結果は図17に示すとおりである。結果によると、リガンドAPRILとヒトBCMAタンパク質との結合を遮断できないBCMA-Lab09を除いて、残りの抗体は、いずれもリガンドAPRILとヒトBCMAタンパク質との結合を良好に遮断することができ、陽性対照抗体と同等である。
【0185】
実施例11 BCMA組換え候補抗体の親和性の検出
実施例5における方法に従って、Biacoreを用いて、組換え抗体とヒトBCMAタンパク質との親和性を検出し、結果は表20に示すとおりである。結果により、全ての抗体は、ヒトBCMAタンパク質との親和性がいずれも強いことが示された。ナノ抗体の配列は表21に示すとおりであり、そのCDR配列は表22に示すとおりである。
【0186】
【表20】
【0187】
【表21】
【0188】
【表22-1】
【表22-2】
図1AB
図2AB
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16AB
図17
【配列表】
2024541668000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-06-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
BCMAに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片であって、前記抗体又はその抗原結合断片は、CDR1、CDR2及びCDR3を含み、前記CDR1は、SEQ ID NO:7~21、24~31及び92~101のうちのいずれか一つの配列に示すVHHドメインのHCDR1を含み、前記CDR2は、SEQ ID NO:7~21、24~31及び92~101のうちのいずれか一つの配列に示すVHHドメインのHCDR2を含み、且つ前記CDR3は、SEQ ID NO:7~21、24~31及び92~101のうちのいずれか一つの配列に示すVHHドメインのHCDR3を含む、抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、Kabat、IMGT又はChothia番号付けシステムに基づいて確定され、
任意選択的に、前記HCDR1は、SEQ ID NO:34、37、40、42、45、48、50、52、54、56、58、64、67、71、74、77、81、84、86、87、104、107、113、116、119、121、124、127、131、134、138又は141に示すアミノ酸配列を含み、
任意選択的に、前記HCDR2は、SEQ ID NO:35、38、41、43、46、49、59、61、63、65、68、70、72、75、78、79、82、85、88、89、90、91、102、105、108、109、111、114、117、120、122、125、128、129、132、135、136、139、142、143、148、150、152、153、155又は157に示すアミノ酸配列を含み、
任意選択的に、前記HCDR3は、SEQ ID NO:36、39、44、47、51、53、55、57、60、62、66、69、73、76、80、83、103、106、110、112、115、118、123、126、130、133、137、140、144、145、146、147、149、151、154又は156に示すアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:34、35及び36、SEQ ID NO:37、38及び39、又はSEQ ID NO:40、41及び36に示すアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:42、43及び44、SEQ ID NO:45、46及び47、又はSEQ ID NO:48、49及び44に示すアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:50、35及び51、SEQ ID NO:52、38及び53、又はSEQ ID NO:54、41及び51に示すアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:34、35及び55、SEQ ID NO:56、38及び57、又はSEQ ID NO:58、41及び55に示すアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:34、59及び60、SEQ ID NO:56、61及び62、又はSEQ ID NO:58、63及び60に示すアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:64、65及び66、SEQ ID NO:67、68及び69、又はSEQ ID NO:58、70及び66に示すアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:71、72及び73、SEQ ID NO:74、75及び76、又はSEQ ID NO:77、78及び73に示すアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:34、79及び80、SEQ ID NO:81、82及び83、又はSEQ ID NO:84、85及び80に示すアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:86、35及び36に示すアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:87、88及び44に示すアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:42、88及び44に示すアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:42、89及び44に示すアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:42、90及び44に示すアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:42、91及び44に示すアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:71、102及び103、SEQ ID NO:104、105及び106、又はSEQ ID NO:107、108及び103に示すアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:71、109及び110、SEQ ID NO:104、111及び112、又はSEQ ID NO:107、108及び110に示すアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:113、114及び115、SEQ ID NO:116、117及び118、又はSEQ ID NO:119、120及び115に示すアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:121、122及び123、SEQ ID NO:124、125及び126、又はSEQ ID NO:127、128及び123に示すアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:113、129及び130、SEQ ID NO:131、132及び133、又はSEQ ID NO:134、135及び130に示すアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:113、136及び137、SEQ ID NO:138、139及び140、又はSEQ ID NO:141、142及び137に示すアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:34、143及び144、SEQ ID NO:37、38及び145、又はSEQ ID NO:40、41及び144に示すアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:34、143及び146、SEQ ID NO:56、38及び147又はSEQ ID NO:58、41及び146に示すアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:34、148及び149、SEQ ID NO:37、150及び151、又はSEQ ID NO:40、152及び149に示すアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれSEQ ID NO:71、153及び154、SEQ ID NO:104、155及び156、又はSEQ ID NO:107、157及び154に示すアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
前記CDR1、CDR2及び/又はCDR3は、請求項1又は2に記載のHCDR1、HCDR2及び/又はHCDR3に1個、2個又は3個の突然変異が発生するアミノ酸配列を含み、前記突然変異は、挿入、欠失及び/又は置換から選択され、前記置換は、好ましくは、保存的アミノ酸の置換である、請求項1又は2に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
前記CDR1、CDR2及び/又はCDR3は、前述HCDR1、HCDR2及び/又はHCDR3に比べて少なくとも80、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1又は2に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
前記抗体又はその抗原結合断片は、請求項1又は2に記載のCDR1、CDR2及びCDR3を含む単一ドメイン抗体を含み、
好ましくは、前記単一ドメイン抗体は、SEQ ID NO:7~21、24~31及び92~101のうちのいずれか一つの配列に示すアミノ酸配列を含み、
任意選択的に、前記単一ドメイン抗体は、SEQ ID NO:7~21、24~31及び92~101のうちのいずれか一つの配列に示すアミノ酸配列に比べて多くとも20個、19個、18個、17個、16個、15個、14個、13個、12個、11個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個又は1個の突然変異が発生するアミノ酸配列を含み、前記突然変異は、挿入、欠失及び/又は置換から選択され、前記置換は、好ましくは、保存的アミノ酸の置換であり、
任意選択的に、前記単一ドメイン抗体は、SEQ ID NO:7~21、24~31及び92~101のうちのいずれか一つの配列に示すアミノ酸配列に比べて少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1又は2に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項6】
前記抗体は、SEQ ID NO:7~21、24~31及び92~101のうちのいずれか一つの配列に示すVHHドメインにおけるFR領域を含み、
任意選択的に、前記抗体は、SEQ ID NO:7~21、24~31及び92~101のうちのいずれか一つの配列に示すVHHドメインにおけるFR領域に比べて多くとも15個、14個、13個、12個、11個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個又は1個の突然変異が発生するアミノ酸配列を含み、前記突然変異は、挿入、欠失及び/又は置換から選択され、前記置換は、好ましくは、保存的アミノ酸の置換であり、
任意選択的に、前記抗体は、SEQ ID NO:7~21、24~31及び92~101のうちのいずれか一つの配列に示すVHHドメインにおけるFR領域に比べて少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1又は2に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項7】
前記抗体又はその抗原結合断片は、(1)キメラ抗体又はその断片、(2)ヒト化抗体又はその断片、又は(3)完全ヒト抗体又はその断片から選択される、請求項1又は2に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項8】
前記抗体又はその抗原結合断片は、抗体重鎖定常領域を含むか又は含まず、任意選択的に、前記抗体重鎖定常領域は、ヒト、アルパカ、マウス、ラット、ウサギ及びヒツジから選択され、任意選択的に、前記抗体重鎖定常領域は、IgG、IgM、IgA、IgE及びIgDから選択され、任意選択的に、前記IgGは、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4から選択され、任意選択的に、前記重鎖定常領域は、Fc領域、CH3領域及び完全な重鎖定常領域から選択され、好ましくは、前記重鎖定常領域は、ヒトFc領域であり、好ましくは、前記抗体又はその抗原結合断片は重鎖抗体である、請求項1又は2に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項9】
前記抗体又はその抗原結合断片には、さらに治療剤又はトレーサーがカップリングされており、好ましくは、前記治療剤は、放射性同位体、化学療法薬又は免疫調節剤から選択され、前記トレーサーは、放射線造影剤、常磁性イオン、金属、蛍光標識、化学発光標識、超音波造影剤及び光増感剤から選択される、請求項1又は2に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項10】
前記抗体又はその抗原結合断片には、さらに他の機能性分子が連結されており、好ましくは、前記他の機能性分子は、シグナルペプチド、タンパク質タグ、サイトカイン、血管新生阻害剤及び免疫チェックポイント阻害剤のうちの一つ又は複数から選択される、請求項1又は2に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項11】
多重特異性抗原結合分子であって、前記多重特異性抗原結合分子は、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片、及びBCMA以外の他の抗原に結合する抗原結合分子、又は請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片とは異なるBCMAエピトープに結合するものを含み、任意選択的に、前記BCMA以外の他の抗原は、CD3(好ましくは、CD3εである)、CD16、CD137、CD258、PD-1、PD-L1、4-1BB、CD40、CD64、EGFR、VEGF、HER2、HER1、HER3、IGF-1R、ホスファチジルセリン(Phosphatidylserine、PS)、C-Met、HSA、GPRC5D、MSLN、血液脳関門受容体、GPC3、PSMA、CD33、GD2、ROR1、ROR2、FRα及びGucy2Cから選択され、
好ましくは、前記抗原結合分子は、抗体又はその抗原結合断片であり、
好ましくは、前記多重特異性抗原結合分子は、二重特異性、三重特異性又は四重特異性であり、
好ましくは、前記多重特異性抗原結合分子は、2価、3価、4価、5価又は6価である、多重特異性抗原結合分子。
【請求項12】
単離された核酸断片であって、前記核酸断片は、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片又は請求項11に記載の多重特異性抗原結合分子をコードする、核酸断片。
【請求項13】
請求項12に記載の核酸断片を含む、ベクター。
【請求項14】
宿主細胞であって、前記宿主細胞は、請求項12に記載の核酸断片又は請求項13に記載のベクターを含み、好ましくは、前記細胞は、原核細胞又は真核細胞、例えば、細菌(例えば、大腸菌)、真菌(例えば、酵母)、昆虫細胞又は哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞株又は293T細胞株)である、宿主細胞。
【請求項15】
請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合断片又は請求項11に記載の多重特異性抗原結合分子を製造する方法であって、前記方法は、請求項14に記載の細胞を培養することと、前記細胞により発現される抗体、抗原結合断片又は多重特異性抗原結合分子を単離することとを含む、方法。
【請求項16】
医薬組成物であって、前記医薬組成物は、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合断片、請求項11に記載の多重特異性抗原結合分子、請求項12に記載の核酸断片、請求項13に記載のベクター又は請求項15に記載の方法に従って製造された生成物を含み、任意選択的に、前記医薬組成物は、薬学的に許容可能なキャリア、希釈剤又は助剤をさらに含み、任意選択的に、前記医薬組成物は、追加の抗腫瘍剤をさらに含む、医薬組成物。
【請求項17】
腫瘍又は癌を治療するための、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合断片、請求項11に記載の多重特異性抗原結合分子、請求項12に記載の核酸断片、請求項13に記載のベクター、請求項15に記載の方法に従って製造された生成物又は請求項16に記載の医薬組成物であって、任意選択的に、前記腫瘍又は癌は、BCMAを発現する腫瘍又は癌であり、好ましくは、前記腫瘍又は癌はB細胞リンパ腫であり、より好ましくは、多発性骨髄腫(MM)である、抗体もしくはその抗原結合断片、多重特異性抗原結合分子、核酸断片、ベクター、生成物又は医薬組成物。
【請求項18】
請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合断片、請求項11に記載の多重特異性抗原結合分子、請求項12に記載の核酸断片、請求項13に記載のベクター、請求項15に記載の方法に従って製造された生成物又は請求項16に記載の医薬組成物を含む、キット。
【請求項19】
生物学的試料におけるBCMA発現を検出する方法であって、前記方法は、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片とBCMAとの間で複合体を形成し得る条件下で、前記生物学的試料を前記の抗体又はその抗原結合断片に接触させることを含み、好ましくは、前記方法は、前記複合体の形成を検出し、試料におけるBCMAの存在又は発現レベルを指示することをさらに含む、方法。
【国際調査報告】