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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/192 20060101AFI20241031BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20241031BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241031BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20241031BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20241031BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20241031BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20241031BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20241031BHJP
   A61P 11/08 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20241031BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
A61K31/192
A61P11/00
A61K31/198
A61P43/00 121
A61P11/06
A61P9/12
A61P31/14
A61P31/04
A61P31/10
A61P11/08
A61K9/08
A61K9/12
A61K9/19
A61K9/14
A61K47/02
A61K9/72
A61P29/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533068
(86)(22)【出願日】2022-12-01
(85)【翻訳文提出日】2024-07-01
(86)【国際出願番号】 IB2022061638
(87)【国際公開番号】W WO2023100127
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】63/284,909
(32)【優先日】2021-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524207482
【氏名又は名称】マクロブリース コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100081053
【弁理士】
【氏名又は名称】三俣 弘文
(72)【発明者】
【氏名】アルガナラス,ルイス アルベルト
(72)【発明者】
【氏名】マルティネス リオス,ニコラス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA30
4C076AA93
4C076BB27
4C076CC15
4C076CC32
4C076CC35
4C076DD23G
4C076DD25G
4C076DD30Z
4C076DD43Z
4C076FF14
4C076FF31
4C076FF68
4C076GG06
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA24
4C206HA32
4C206KA01
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA33
4C206MA37
4C206MA63
4C206MA64
4C206MA77
4C206NA05
4C206NA10
4C206NA11
4C206NA12
4C206ZA42
4C206ZA59
4C206ZA61
4C206ZB11
4C206ZB33
4C206ZB35
4C206ZC75
(57)【要約】
【課題】呼吸器疾患の治療の為に肺上皮に投与される医薬組成物を提供する。
【解決手段】 本発明の医薬組成物は、
pH7.5-9.5の高張性水溶液中に溶けているイブプロフェンとアルギニンを含み、前記アルギニン/イブプロフェンのモル比は、1以上6.5未満であり、前記イブプロフェンの濃度は、10mMと50mMの間であり、前記アルギニンの濃度は、10mMと250mMの間である。
【選択図】 図4


【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸器疾患の治療の為に肺上皮に投与される医薬組成物において、
pH7.5-9.5の高張性水溶液中にイブプロフェンとアルギニンが溶けており、
前記アルギニン/イブプロフェンのモル比は、6.5以下である
ことを特徴とする呼吸器疾患の治療の為に肺上皮に投与される医薬組成物。
【請求項2】
前記アルギニン/イブプロフェンのモル比は、1以上である
ことを特徴とする請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記イブプロフェンの濃度は、10mMと50mMの間である
ことを特徴とする請求項1記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記イブプロフェンは、ラセミ体である
ことを特徴とする請求項1-3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記イブプロフェンは、S鏡像異性体である
ことを特徴とする請求項1-3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記イブプロフェンは、R鏡像異性体である
ことを特徴とする請求項1-3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記イブプロフェンは、ナトリウム、カリウム、リチウム、アルジネート、リシネート、ヒスチジン酸塩、及びこれらの組み合わせを含む群から選択される一価の陽イオンを対イオンとして含む
ことを特徴とする請求項1-6のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記アルギニンの濃度は、10mMと250mMの間である
ことを特徴とする請求項1-7のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記高張性水溶液のpHは、8.0-9.0の間である
ことをとする請求項1-8のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記高張性水溶液のpHは、8.5である
ことを特徴とする請求項1-8のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記医薬組成物が投与される形態は、噴霧投与又は吸入投与である
ことを特徴とする請求項1-10のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記医薬組成物が投与される状態は、液体状態、粉末状態、凍結乾燥状態からなる群から選択される
ことを特徴とする請求項1-10のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記高張性水溶液の塩濃度は、0.3Mと2.0Mの間である
ことを特徴とする請求項1-12のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記高張性水溶液の塩濃度は、0.4Mと1.1Mの間である
ことを特徴とする請求項1-12のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記高張性水溶液の塩濃度は、塩を0.5Mと1.0Mの間である
ことを特徴とする請求項1-12のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記塩は、人が消化するのに適している
ことを特徴とする請求項13-15のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、炭酸ナトリウム、それらの組み合わせからなる群から選択される
ことを特徴とする請求項13-15のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記塩は、塩化ナトリウムである
ことを特徴とする請求項13-17のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記肺疾患は、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、褒胞性線維症(CF) 肺高血圧、気管支肺異形成急性呼吸困難症候群(ARDS)、呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)、呼吸器ウイルス、真菌または細菌感染、両側肺炎、気管支拡張症を含む群から選択される
疾患である
ことを特徴とする請求項1-18のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項20】
呼吸器疾患の治療の為に肺上皮に投与される医薬組成物において、
pH7.5-9.5の高張性水溶液中にイブプロフェンとアルギニンが溶けており、
前記アルギニン/イブプロフェンのモル比は、1以上6.5未満である
ことを特徴とする呼吸器疾患の治療の為に肺上皮に投与される医薬組成物。
【請求項21】
呼吸器疾患の治療の為に肺上皮に投与される医薬組成物において、
pH7.5-9.5の高張性水溶液中にイブプロフェンとアルギニンが溶けており、
前記アルギニン/イブプロフェンのモル比は、1以上6.5未満であり、
前記イブプロフェンの濃度は、10mMと50mMの間であり、
前記アルギニンの濃度は、10mMと250mMの間である
ことを特徴とする呼吸器疾患の治療の為に肺上皮に投与される医薬組成物。
【請求項22】
請求項1-21のいずれかに記載の医薬組成物の製造方法において、
(A)酸化状態の前記イブプロフェンを40℃以上のNa2CO3の水溶液と混合し、懸濁状態を維持する為に撹拌するステップと、
(B)前記アルギニンを前記ステップ(A)に添加するステップと、
(C)pH7.5-9.5の間になるようにNaOH又はNa2CO3を添加し、前記イブプロフェンとアルギニンを完全に溶かすために撹拌し、1-100mg/mLの間の濃度のイブプロフェンと5-100mg/mLの間の濃度の塩基性アミノ酸を得るステップと、
(D)ヒト消費に適した前記塩を、前記ステップ(C)の調整物に0.3-1.0Mの間の濃度で添加するステップと、
(E)前記ステップ(D)の調整物を、0.22ミクロンの孔のフィルターで濾過するステップと
を有する
ことを特徴とする請求項1-21のいずれかに記載の医薬組成物の製造方法。
【請求項23】
(F)前記ステップ(E)で濾過された溶液を凍結乾燥するステップ
をさらに有する
ことを特徴とする請求項22に記載の製造方法。
【請求項24】
(G)適用される時点で、前記ステップ(F)で凍結乾燥された組成物を、水又は2.5%のグルコース溶液で、再懸濁させるステップ
をさらに有する
ことを特徴とする請求項23に記載の製造方法。
【請求項25】
請求項1-21に記載の医薬組成物を患者の肺上皮に有効量投与するステップ
を含む
ことを特徴とする肺疾患の治療方法。
【請求項26】
前記医薬組成物を患者に噴霧溶液として投与する
ことを特徴とする請求項25に記載の治療方法。
【請求項27】
前記医薬組成物を患者に投与する量は、1mLと25mLの間である
ことを特徴とする請求項26に記載の治療方法。
【請求項28】
前記医薬組成物を患者に投与する量は、1mLと10mLの間である
ことを特徴とする請求項26に記載の治療方法。
【請求項29】
前記医薬組成物を患者に投与する量は、1mLと5mLの間である
ことを特徴とする請求項26に記載の治療方法。
【請求項30】
前記医薬組成物を患者に投与する量は、3mLの量投与である
ことを特徴とする請求項26に記載の治療方法。
【請求項31】
前記肺疾患は、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、褒胞性線維症(CF) 肺高血圧、気管支肺異形成急性呼吸困難症候群(ARDS)、呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)、呼吸器ウイルス、真菌または細菌感染、両側肺炎、気管支拡張症を含む群から選択される
疾患である
ことを特徴とする請求項25-30のいずれかに記載の治療方法。
【請求項32】
前記患者は、低酸素症候群の患者である
ことを特徴とする請求項25-30のいずれかに記載の治療方法。
【請求項33】
前記患者のパルス測定血中酸素飽和レベルは、92%以下である
ことを特徴とする請求項25-30のいずれかに記載の治療方法。
【請求項34】
前記患者の呼吸数は、21-25回/分の間である
ことを特徴とする請求項25-33のいずれかに記載の治療方法。
【請求項35】
前記患者の呼吸数は、25-30回/分の間である
ことを特徴とする請求項25-33のいずれかに記載の治療方法。
【請求項36】
前記患者の呼吸数は、30-40回/分の間である
ことを特徴とする請求項25-33のいずれかに記載の治療方法。
【請求項37】
前記患者の呼吸数は、41回/分以上である
ことを特徴とする請求項25-33のいずれかに記載の治療方法。
【請求項38】
前記患者の心拍数は、91-110拍/分の間である
ことを特徴とする請求項25-37のいずれかに記載の治療方法。
【請求項39】
前記患者の心拍数は、111-130拍/分の間である
ことを特徴とする請求項25-37のいずれかに記載の治療方法。
【請求項40】
前記患者の心拍数は、131拍/分以上である
ことを特徴とする請求項25-37のいずれかに記載の治療方法。
【請求項41】
前記患者のNEWS2Scoreは、0-4の間である
ことを特徴とする請求項25-40のいずれかに記載の治療方法。
【請求項42】
前記患者のNEWS2Scoreは、5-6の間である
ことを特徴とする請求項25-40のいずれかに記載の治療方法。
【請求項43】
前記患者のNEWS2Scoreは、7以上である
ことを特徴とする請求項25-40のいずれかに記載の治療方法。
【請求項44】
前記患者は、挿管されている
ことを特徴とする請求項25-43のいずれかに記載の治療方法。
【請求項45】
前記患者は、挿管される前である
ことを特徴とする請求項25-43のいずれかに記載の治療方法。
【請求項46】
前記患者は、低酸素症ではない
ことを特徴とする請求項25-31のいずれかに記載の治療方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸器疾患と上皮組織の治療に用いられる医薬組成物に関する。呼吸器疾患の一例は、COVID-19感染症、急性呼吸困難症候群(ARDS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、呼吸器系ウイルス、真菌または細菌感染、褒胞性線維症(CF)である。
【背景技術】
【0002】
非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)は、様々な薬剤の群であるが、これらの薬剤群は、治療効果(鎮痛、抗炎症、解熱効果)は同じだが相対的な毒性と有効性は異なる。分子量が206.3g/モルのイブプロフェン分子と2-アリールプロピオネートの他の誘導体(ケトプロフェン、フルルビプロフェン、ナプロキセン等が含まれる)は、プロピオン酸塩(propionate)のアルファ位(alpha position)にキラル炭素(chiral carbon)を有する。
【0003】
イブプロフェンは、解熱剤として、頭痛(クラスター)、歯科用疼痛、筋肉痛、筋痛、月経不快、軽度の神経痛、術後疼痛の症状緩和のために使用される。関節炎、関節リュウマチ、痛風関節炎等の炎症を治療するためにも使用される。
L-アルギニンは、半必須の内因性アミノ酸であり、細胞分裂、創傷治癒、身体からのアンモニアの除去、免疫機能、ホルモン放出において重要な役割を果たし、一酸化窒素(NO)の唯―の生物前駆体でもある。
【0004】
【特許文献1】US10973787B2
【非特許文献1】Ricciardolo, F. L. M.et al.. (2004). Nitric Oxide in Health and Disease of the Respiratory System. Physiological Reviews, 84(3), 731-765.https://doi.org/10.1152/physrev.00034.2003
【非特許文献2】Izzo J. L. (2008). Hypertension primer: [the essentials of high blood pressure; basic science population science and clinical management] (4. ed.). Lippincott Williams & Wilkins
【非特許文献3】Pant, J. et al. (2017). Tunable Nitric Oxide Release from S-Nitroso-N-acetylpenicillamine via Catalytic Copper Nanoparticles for Biomedical Applications. ACS Applied Materials and Interfaces, 9(18), 15254-15264.https://doi.org/10.1021/acsami.7b01408
【非特許文献4】De Mel, A. (2020). Potential roles of nitric oxide in COVID-19: A perspective. Integrative Molecular Medicine, 7(3).https://doi.org/10.15761/imm.1000403
【非特許文献5】Star, R. A. (1993). Southwestern internal medicine conference: Nitric oxide. American Journal of the Medical Sciences, 306(5), 348-358. https://doi.org/10.1097/00000441-199311000-00015.
【非特許文献6】Tripathi, P. (2007). Nitric oxide and immune response. Indian Journal of Biochemistry & Biophysics, 44(5), 310-319
【非特許文献7】Susswein, A. J., Katzoff, A., Miller, N., & Hurwitz, I. (2004). Nitric Oxide and Memory. The Neuroscientist, 10(2), 153-162.https://doi.org/10.1177/1073858403261226.
【非特許文献8】Robbins, R. A., & Grisham, M. B. (1997). Nitric Oxide. Int. J. Biochem. Cell Bid, 29(6), 857-860. https://doi.org/10.1016/S1357-2725(96)00167-7].
【非特許文献9】Fang, W. et al. (2021). The role of NO in COVID-19 and potential therapeutic strategies. Free Radical Biology and Medicine, 163, 153-162.https://doi.org/10.1016/j.freeradbiomed.2020.12.008
【非特許文献10】NO [Tripathi, P., Tripathi, P., Kashyap, L., & Singh, V. (2007). The role of nitric oxide in inflammatory reactions. FEMS Immunology and Medical Microbiology, 51(3), 443-452. https://doi.org/10.1111/j.1574-695X.2007.00329.x].
【非特許文献11】Fang, W. et al. (2021). The role of NO in COVID-19 and potential therapeutic strategies. Free Radical Biology and Medicine, 163, 153-162.https://doi.org/10.1016/j.freeradbiomed.2020.12.008
【非特許文献12】Grasemann, H. et al. (1997). Decreased Concentration of Exhaled Nitric Oxide (NO) in Patients With Cystic Fibrosis. Pediatric Pulmonology, 24(3), 173-177. https://doi.org/10.1002/(sici)1099-0496(199709)24:3<173::aid-ppul2>3.0.co;2-o
【非特許文献13】Ho, L. P. et al. (1998). Exhaled nitric oxide is not elevated in the inflammatory airways diseases of cystic fibrosis and bronchiectasis. European Respiratory Journal, 12(6), 1290-1294.https://doi.org/10.1183/09031936.98.12061290
【非特許文献14】Keen, C. et al. (2010). Low levels of exhaled nitric oxide are associated with impaired lung function in cystic fibrosis. Pediatric Pulmonology, 45(3), 241-248.https://doi.org/10.1002/ppul.21137
【非特許文献15】Grasemann, H. et al. (2006). Inhaled L-arginine improves exhaled nitric oxide and pulmonary function in patients with cystic fibrosis. American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine, 174(2), 208-212.https://doi.org/10.1164/rccm.200509-1439OC
【非特許文献16】Grasemann, H. et al. (2013). A randomized controlled trial of inhaled l-Arginine in patients with cystic fibrosis. Journal of Cystic Fibrosis, 12(5), 468-474.https://doi.org/10.1016/j.jcf.2012.12.008
【非特許文献17】Deppisch, C. et al. (2016). Gaseous nitric oxide to treat antibiotic resistant bacterial and fungal lung infections in patients with cystic fibrosis: a phase I clinical study. Infection, 44(4), 513-520.https://doi.org/10.1007/s15010-016-0879-x]. I
【非特許文献18】Kleniewska, P., & Pawliczak, R. (2017). The participation of oxidative stress in the pathogenesis of bronchial asthma. Biomedicine and Pharmacotherapy, 94, 100-108. https://doi.org/10.1016/j.biopha.2017.07.066
【非特許文献19】Chavarr&iacute;a, A. P. et al. (2021). Antioxidants and pentoxifylline as coadjuvant measures to standard therapy to improve prognosis of patients with pneumonia by COVID-19. Computational and Structural Biotechnology Journal, 19, 1379-1390.https://doi.org/10.1016/j.csbj.2021.02.009
【非特許文献20】Adebayo, A., Varzideh, F., Wilson, S., Gambardella, J., Eacobacci, M., Jankauskas, S. S., Donkor, K., Kansakar, U., Trimarco, V., Mone, P., Lombardi, A., & Santulli, G. (2021). L-arginine and covid-19: An update. Nutrients, 13(11). https://doi.org/10.3390/nu13113951
【非特許文献21】F&ouml;rstermann, U. (2010). Nitric oxide and oxidative stress in vascular disease. Pflugers Archiv European Journal of Physiology, 459(6), 923-939.https://doi.org/10.1007/s00424-010-0808-2
【非特許文献22】Ornatowski, W. et al. (2020). Complex interplay between autophagy and oxidative stress in the development of pulmonary disease. Redox Biology, 36.https://doi.org/10.1016/j.redox.2020.101679
【非特許文献23】Zinellu, E. et al. (2021). Oxidative stress biomarkers in chronic obstructive pulmonary disease exacerbations: A systematic review. Antioxidants, 10(5), 710.https://doi.org/10.3390/antiox10050710
【非特許文献24】Farouk, A. et al. (2016). Role of oxidative stress and outcome of various surgical approaches among patients with bullous lung disease candidate for surgical interference. Journal of Thoracic Disease, 8(10), 2936-2941. https://doi.org/10.21037/jtd.2016.10.41
【非特許文献25】Bai, Y. et al. (2018). A Chinese herbal formula ameliorates pulmonary fibrosis by inhibiting oxidative stress via Upregulating Nrf2. Frontiers in Pharmacology, 9(JUN).https://doi.org/10.3389/fphar.2018.00628 -
【非特許文献26】Horvath, I. et al. (1998). Increased levels of exhaled carbon monoxide in bronchiectasis: A new marker of oxidative stress. Thorax, 53(10), 867-870. https://doi.org/10.1136/thx.53.10.867 -
【非特許文献27】Jesenak, M. et al. (2017). Oxidative stress and bronchial asthma in children-causes or consequences? Frontiers in Pediatrics, 5.https://doi.org/10.3389/fped.2017.00162 -
【非特許文献28】Nikolova, G. D. et al. (2018). Oxidative stress and related diseases. Part 1: Bronchial asthma. Bulgarian Chemical Communications, 50, 30-35 -
【非特許文献29】Fernandes, I. G. et al. (2020). SARS-CoV-2 and Other Respiratory Viruses: What Does Oxidative Stress Have to Do with It? Oxidative Medicine and Cellular Longevity, 2020. https://doi.org/10.1155/2020/8844280
【非特許文献30】Chavarr&iacute;a, A. P. et al. (2021). Antioxidants and pentoxifylline as coadjuvant measures to standard therapy to improve prognosis of patients with pneumonia by COVID-19. Computational and Structural Biotechnology Journal, 19, 1379-1390. https://doi.org/10.1016/j.csbj.2021.02.009
【非特許文献31】Cattaneo, D., & Clementi, E. (2010). Clinical Pharmacokinetics of Ibuprofen Arginine. Current Clinical Pharmacology, 5(4), 239-245. https://doi.org/10.2174/157488410793352012
【非特許文献32】Tsikas, D. et al. (2017). GC-MS and GC-MS/MS measurement of ibuprofen in 10-μL aliquots of human plasma and mice serum using [α-methylo-2H3]ibuprofen after ethyl acetate extraction and pentafluorobenzyl bromide derivatization: Discovery of a collision energy-dependent H/D isotope effect and pharmacokinetic application to inhaled ibuprofen-arginine in mice. Journal of Chromatography B: Analytical Technologies in the Biomedical and Life Sciences, 1043, 158-166.https://doi.org/10.1016/j.jchromb.2016.06.014
【非特許文献33】Garc&iacute;a, N. H. et al. (2020). Ibuprofen, a traditional drug that may impact the course of COVID-19 new effective formulation in nebulizable solution. Medical Hypotheses, 144. https://doi.org/10.1016/j.mehy.2020.110079
【非特許文献34】. [Ornatowski, W. et al. (2020). Complex interplay between autophagy and oxidative stress in the development of pulmonary disease. Redox Biology, 36. https://doi.org/10.1016/j.redox.2020.101679]
【非特許文献35】Zinellu, E. et al. (2021). Oxidative stress biomarkers in chronic obstructive pulmonary disease exacerbations: A systematic review. Antioxidants, 10(5), 710.https://doi.org/10.3390/antiox10050710
【非特許文献36】Farouk, A. et al. (2016). Role of oxidative stress and outcome of various surgical approaches among patients with bullous lung disease candidate for surgical interference. Journal of Thoracic Disease, 8(10), 2936-2941. https://doi.org/10.21037/jtd.2016.10.41
【非特許文献37】Bai, Y. et al. (2018). A Chinese herbal formula ameliorates pulmonary fibrosis by inhibiting oxidative stress via Upregulating Nrf2. Frontiers in Pharmacology, 9(JUN). https://doi.org/10.3389/fphar.2018.00628
【非特許文献38】Horvath, I. et al. (1998). Increased levels of exhaled carbon monoxide in bronchiectasis: A new marker of oxidative stress. Thorax, 53(10), 867-870. https://doi.org/10.1136/thx.53.10.867
【非特許文献39】Jesenak, M. et al. (2017). Oxidative stress and bronchial asthma in children-causes or consequences? Frontiers in Pediatrics, 5.https://doi.org/10.3389/fped.2017.00162
【非特許文献40】Nikolova, G. D. et al. (2018). Oxidative stress and related diseases. Part 1: Bronchial asthma. Bulgarian Chemical Communications, 50, 30-35
【非特許文献41】Fernandes, I. G. et al. (2020). SARS-CoV-2 and Other Respiratory Viruses: What Does Oxidative Stress Have to Do with It? Oxidative Medicine and Cellular Longevity, 2020. https://doi.org/10.1155/2020/8844280
【非特許文献42】Chavarr&iacute;a, A. P. et al. (2021). Antioxidants and pentoxifylline as coadjuvant measures to standard therapy to improve prognosis of patients with pneumonia by COVID-19. Computational and Structural Biotechnology Journal, 19, 1379-1390. https://doi.org/10.1016/j.csbj.2021.02.009
【非特許文献43】Royal College of Physicians, National Early Warning Score (NEWS) 2: Standardizing the Assessment of Acute-Illness Severity in the NHS. Updated Report of the Working Party, London: RCP, 2017.
【非特許文献44】Chen, J., et al. (2013). Analysis of kinetics of dihydroethidium fluorescence with superoxide using xanthine oxidase and hypoxanthine assay. Annals of Biomedical Engineering, 41(2), 327-337. https://doi.org/10.1007/s10439-012-0653-x
【0005】
―酸化窒素(NO)は、L-アルギニンから、一酸化窒素合成(NOS)と称する同位酵素の群により産生されるが、肺における様々な生物学的プロセスにおいて重要な役割を果たす。この生物学的プロセスは、病原体に対する宿主防御、平滑筋弛緩、気管支拡張症、炎症を含む(非特許文献1)。
【0006】
血管内皮において、NOは抗血栓性作用および抗菌性作用を発現する。この点に関して、NOは、内皮および血小板から放出されるが、流動性を維持し、凝固を防止する上で重要な役割を果たす。NO誘導血管拡張は、「微小凝集体」の除去を助け、血小板接着および凝集を阻害し、血管閉塞を防止するのに役立つ(非特許文献2)。他方殺ウイルス効果と殺菌効果も同文献には記載されている。NOの抗菌効果は、感染誘因病原体に対し示されている。感染誘因病原体の一例は、黄色ブドウ球菌,表皮ブドウ球菌、緑膿菌、大腸菌、アシネトバクタ-、バウマニ、リステリア菌、エンテロコッカス、フェカリスである。
NOの抗菌メカニズムは、細胞外マトリックス中のアミンおよびチオールのニトロ化、細胞壁中の脂質過酸化およびチロシンニトロ化、綱胞マトリックス中のDNA切断を含む(非特許文献3)。加えて、NOの能力は、他の血管拡張薬の中でもNOに特有の呼吸コロナウイルスの複製を抑制することが報告されている(非特許文献4)。
【0007】
肺において、NOは、様々な効果を奏する(目的を果たす)。一例として、選択的肺血管拡張剤(selective pulmonary vasodilator)として機能し、酸素化を改善し、肺血管抵抗を減らす(非特許文献5-8)。
気管支/気道拡張器(bronchial/airway dilator)としては、NOは、酸素吸入と毛細血管内の血流(細胞においてガスと交換する)の増加、体内の酸素循環を促進する(非特許文献9)。
免疫系の調整剤(regulator of the immune system)としては、NOは、NOを産生しそれに応答する系においては、大量の細胞が存在する場所では、多くの機能を果たすことが確認されている(非特許文献10)。
血管抗疑固剤(vascular anticoagulant)としては、NOは、血液凝固および過剰な血小板活性化を阻害する。
抗炎症性分子(antiflammatory molcure)としては、NOは早期の非特異的免疫を介して過剰な炎症を防止し、血管の炎症および免疫細胞の増殖を調節する(非特許文献11)。
【0008】
嚢胞性線維症患者(以下「CF患者」と称する)においては、高濃度のNO吸入は、肺機能の改善に深く関与する(非特許文献12-14)。非特許文献15によれば、L-アルギニンの吸入投与治療は、CF患者の肺機能の一時的な改善をもたらすことが見出された。
後の研究例えば非特許文献16によれば、L-アルギニン吸入が良好に許容され、吐気されるNOの大幅な増加に至ることが見出された。FEV1は、生理食塩水の8mlと比較して平均56ml増加したが、この差は統計的有意差には至らない。 更に痰中に炎症マーカーの変化はなかつた。これらから得られる結論は、CF患者におけるL-アルギニン単独の反復吸入は安全であり、十分に許容される。吸入されたL-アルギニンはNO産生を増加させたが、気道炎症の変化の証拠は見出されなかった。興味深いことに、濃度100mg/mLの溶液5mLを1日2回吸入すると、結果的にL-アルギニン1gが累積で1日ドーズ量となることである。このことは、高濃度のL-アルギニンを14日間吸入治療した後は、NOS阻害剤ADMAの濃度の上昇とL‐アルギニン/ADMAの比率(NOS基質を阻害剤で割った比率)には、測定可能な増加があることを示す。この比率はCF患者において減少し、低い気道NOと相関する。しかし、研究結果によれば、L-アルギニン濃度を増加することによる潜在的効果は、L-オルニチンとADMAの両方の増加により相殺されることが見出された。L-オルニチンは細胞への輸送のためにL-アルギニンと競合し、ADMAは競合的なNOS阻害剤として作用する。
【0009】
非特許文献17は、CF患者に気体状のNOを補給して、抗生物質耐性細薗および真薗肺感染を治療する研究を発表している。この非特許文献17では、肺炎症の低減をもたらす細菌の大幅な減少と、肺機能パラメータFEV1の大幅な増加(CF患者のベースラインから抗生物質療後にめったに観察されない程度まで増加する)を主張している。しかし、長期に渡る気体状のNOによる治療では、有毒なNO2レベルの形成、MetHb、低酸素血症に至るという明らかな事実があり、これは代替治療の主な欠点である。
【0010】
一方、NOは、肺疾患の患者の器官に悪影響を及ぼすことが解っている。例えば、喘息患者は、健常人よりも高濃度のNOを吐き出し、反応性窒素種(reactive nitrogen species)は、喘息の病因および「窒素ストレス(nitrosative stress)」の発症に関与していることが知られている(非特許文献18)。COVID-19による肺炎患者では、反応性酸素種(ROS)と反応性窒素種(RNS 例、一酸化窒素NO)の高い産生が、敗血症ショックに繋がりうる(非特許文献19)。更に、NO産生に起因して損傷した細胞は、ニトロチロシン(nitrotyrosine)を発現し、このニトロチロシンが、今度は、多種類の分子と反応するために、損傷を受ける。
【0011】
要するに、NOは、肺疾患治療に有用で多くの有益な効果を有するが、過剰のNOは細胞毒性効果を奏し、酸化的損傷および細胞死を引き起こす。NOが毒性効果又は保護効果を有するか否かは、多くの要因に依存する。
【0012】
酸化ストレスは、生物系の低減された機能容量と比較して、反応性酸素種(ROS)の過剰な全身性発現(反応性中間体を迅速に中和するかまたは結果として生じる損傷を修復する)により引き起こされる。ROS濃度の増加は、生物活性NOの量を減少させるが、これは、毒性のペルオキソ基亜硝酸塩(peroxynitrite)を形成する化学的不活性化に起因する。ペルオキソ基亜硝酸塩は、内皮NO合成酵素を「切り離す」ことができ、機能不全の超酸化物生成酵素(superoxide-generating enzyme)となり、これが血管酸化ストレスを更に増す(非特許文献21)。この文脈においては、全身性又は局所的な酸化ストレスの存在(本発明の実施例を全て含む)と様々な肺疾患との間の相関が、非特許文献22-30に記載されている。その故、ROS阻害と酸化剤/抗酸化剤の不均衡の回復を標的にする病気治療も提案されている。
【0013】
本技術の現状を考慮すると、明らかなことは、低用量の活性医薬成分を使用して、呼吸器疾患における酸化ストレスを制御する治療処置が必要であることである。本発明はこの問題に対する解決策を提供し、酸化ストレス(oxdative stress)を減少させることによって、呼吸器疾患の治療効果を達成する。本発明は、酸化ストレスを低減するのに、噴霧治療用の高張力アルカリ性溶液中で
イブプロフェンとアルギニンの相乗的な組み合わせによって行う。様々な肺疾患患者において、本発明の治療効果は従来技術では達成できなかった。
【0014】
イブプロフェンとアルギニンの組み合わせに関して、イブプロフェンとアルギニンの複数の調製物は、イブブロフェン・アルギネート塩(ibuprofen arginate salt)(モル比1:1)を含むが、市販されている。その理由は、この組み合わせは、イブプロフェンの急速な吸収と高いピーク血漿濃度ならびに遊離酸形態と他の調製物に比較してtmax値が低いからである(非特許文献31)。他方で非特許文献32は、ヒト血漿サンプル内のイブプロフェンの決定方法を開示する。この方法は、塩水中のイブプロフェンとアルギニンを吸引したネズミの血清サンプル中のイブプロフェンの濃度を測定するのに用いられる。しかし、非特許文献32は、イブプロフェンとアルギニンの組み合わせが、病理学的に肺機能を改善する濃度の範囲の存在については開示も示唆もしていない。加えて、これらの調製物の全ては、イブブロフェン・アルギネート塩に基づいており、アルギニン/イブブロフェンのモル比は1である。
【0015】
これに対し、本発明の組成物は、イブプロフェンとアルギニンを含み、アルギニン/イブプロフェンのモル比は、1以上6.5以下であり、反応酸素種(reactive oxygen species)を阻止に相乗効果を有する。この医薬組成物の投与は噴霧状で行い、様々な肺疾患を治療する。
肺疾患の一例は、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、褒胞性線維症(CF) 肺高血圧、気管支肺異形成急性呼吸困難症候群(ARDS)、呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)、呼吸器ウイルス、真菌または細菌感染、両側肺炎、気管支拡張症である。
【0016】
本発明の医薬組成物は、酸素飽和、呼吸数、心拍数、血圧を改善し、肺疾患を治療するための重要な生理学的利点を示す。この組成物は、抗炎症剤(イブプロフェン)と塩基性アミノ酸(アルギニン)のような非常に単純な分子を含む。これらを所定の濃度で組み合わせた場合、イオン強度およびpH値は、一酸化窒素(NO)の合成および放出において相乗効果を示し、同時に血管拡張を改善する。
さらに、噴霧されるイブプロフェンと共に配合されるアルギニンの存在は、NOレベルに影響するだけでなく、酸化ストレスの低減に対して顕著な相乗効果を奏する。その結果、O2の飽和レベルが改善され、患者の肺機能(FEV1)が改善する。この保護戦略は、急性肺損傷(ALI)の低減に関連する。この相乗効果は、他の治療で使用されよりもはるかに低い濃度のアルギニンで達成され、効果が長く持続し、経時的に持続的な治療において阻害効果は観察されなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
更に、この医薬組成物は、抗炎症分子(イブプロフェン)を含み、Gram+細菌とGram-細菌に抗する細菌特性を示す。これは特に、細菌(例:P.awrugiNOSa, S.aureus, B.cepacia)を阻害することにより発現し、同時に脂質エンペロープ・ウイルス(lipid-envelope virus)に対する殺ウイルス効果も有する(特許文献1、非特許文献33,34)。
更に本発明の医薬組成物は、組成物中に溶けた塩を含み、特許文献1に開示された相乗的な殺菌効果と抗ウイルス効果を示し、この医薬組成物の殺菌効果と殺ウイスル効果を増進し、病原体に起因する肺疾患の治療に適したものになる。従って、本発明の目的は、呼吸器疾患の治療の為に肺上皮に投与される医薬組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の医薬組成物は、pH7.5-9.5の間の高張性水溶液(hypertonic aqueous solution)中に溶けているイブプロフェン(ibuprofen)とアルギニン(arginine)を含む。そのアルギニン/イブプロフェンのモル比は、1以上6.5以下である。好ましいモル比は1.5以上5以下である。更に好ましいモル比は2以上5以下である。最も好ましいモル比は2である。イブプロフェンの濃度は、10mMと50mMの間である。イブプロフェンはラセミ体(racemic)である。イブプロフェンはS鏡像異性体(enantinomer)又はR鏡像異性体である。イブプロフェンは、対イオン(counterion)として、以下の群から選択される一価の陽イオン(monovalent cation)を含む。以下の群は、ナトリウム、カリウム、リチウム、アルジネート、リシネート、ヒスチジン酸塩、及びこれらの組み合わせを含む。アルギニンの濃度は10mMと250mMの間である。本発明の実施例においては、高張性水溶液のpHは8.0-9.0の間であり、好ましいpHは8.5である。
【0019】
本発明の医薬組成物は、噴霧状(霧状)又は吸引により処方される。その処方時の状態は、液体状態、粉末状態、凍結乾燥状態のいずれかである。
【0020】
一実施例においては、本発明の医薬組成物は、高張性であり塩を含む。その濃度は0.3Mと2.0Mの間である。好ましい濃度は0.4Mと1.1Mの間である。より好ましい濃度は0.5Mと1.0Mの間である。塩は人が消化するのに適している。塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、炭酸ナトリウム、それらの組み合わせからなる群から選択される。塩は塩化ナトリウム(NaCl)が最も好ましい。
【0021】
本発明の医薬組成物は、肺疾患の治療に適している。肺疾患の一例は、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、褒胞性線維症(CF)、肺高血圧、気管支肺異形成急性呼吸困難症候群(ARDS)、呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)、呼吸器ウイルス、真菌または細菌感染、両側肺炎、気管支拡張症である。
【0022】
他の実施例によれば、本発明の医薬組成物は、肺機能を改善する為に、肺上皮(pulmonary epithelium)に投与される。本発明の医薬組成物は、pH7.5-9.5の高張性水溶液中に溶けているイブプロフェンとアルギニンを含み、アルギニン/イブプロフェンのモル比は1以上6.5以下である。
【0023】
他の実施例によれば、本発明の医薬組成物は、肺機能を改善する為に、肺上皮に投与される。本発明の医薬組成物は、pH7.5-9.5の高張性水溶液中に溶けているイブプロフェンとアルギニンを含み、アルギニン/イブプロフェンのモル比は1以上6.5未満である。イブロプロフェンの濃度は10mMと50mMの間である。アルギニンの濃度は10mMと250mMの間である
【0024】
本発明の他の目的は、本発明の医薬組成物の製造方法を提供することである。本発明の医薬組成物は、殺細菌、殺ウイルス、抗炎症性の特性を示し、呼吸器疾患の治療の為に肺上皮に投与される。本発明の医薬組成物の製造方法は、以下のステップ(A)―(E)を含む。
(A)酸性状態(acid state)のイブプロフェンを40℃以上のNa2CO3の水溶液と混合し、懸濁状態を維持する為に撹拌するステップ。
(B)アルギニンを前記ステップ(A)で添加するステップ。
(C)pH7.5-9.5になるようにNaOH又はNa2CO3を添加し、イブプロフェンとアルギニンを完全に溶かすために撹拌し、1-100mg/mLの濃度のイブプロフェンと5-100mg/mLの濃度の塩基性アミノ酸を得るステップ。
(D)ヒト消費に適した塩を、前記ステップ(C)の調整物に0.3-1.0Mの濃度で添加するステップ。
(E)前記ステップ(D)の調整物を、0.22ミクロン(μm)の孔のフィルターで濾過するステップ。
【0025】
選択的事項として、本発明の医薬組成物の製造方法は以下のステップ(F)(G)を更に有する、
(F)前記ステップ(E)で濾過された溶液を凍結乾燥するステップ。
(G)適用される時点で、前記ステップ(F)で凍結乾燥された組成物を、水又は2.5%のグルコース溶液(glucose solution)で、再懸濁させるステップ。
【0026】
本発明の他の目的は、医薬組成物の有効量を患者の肺上皮に投与して肺疾患を治療する方法を提供することである。本発明の医薬組成物は、患者に噴霧状で投与する。一実施例においては、本発明の医薬組成物を1mL-25mLの間の量だけ患者に投与する。好ましい投与量は1mL-10mLの間の量である。より好ましい投与量は1mL-5mLの間の量である。より好ましい投与量は3mLである。
【0027】
肺疾患の一例は、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、褒胞性線維症(CF)、肺高血圧、気管支肺異形成急性呼吸困難症候群(ARDS)、呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)、呼吸器ウイルス、真菌または細菌感染、両側肺炎、気管支拡張症を含む群から選択される。
【0028】
患者は、低酸素症候群の患者、又はパルス測定血中酸素飽和レベルは92%以下の患者である。患者の呼吸数は25-30回/分又は30-40回/分である。患者の呼吸数は41回/分以上である。患者の心拍数は、91-110拍/分、111-130拍/分又は131拍/分以上である。患者のNEWS2スコア(score)は、0-4の間、又は5-6の間、7以上である。前記患者は、挿管されている状態又は挿管される前の状態である。患者は低酸素症ではない場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】患者9の噴霧治療前の肺活量の試験結果を示すグラフ。
図2】イブプロフェン-アルギニン溶液で噴霧した後60分経過後の患者9の肺活量の試験結果を示すグラフ。
図3】アルカリ高張性イブプロフェン(Ibu)溶液とアルギニン(Arg)溶液がLPSで刺激されたマクロファージ中の超酸化物陰イオン(superoxide anion)の生成に及ぼす阻害効果を表すグラフ。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001対対照群。
図4】アルカリ高張性イブプロフェン溶液(10μM)単独又は様々な量(5,10,20,50,65,85,100μM)のアルギニン溶液がLPSで刺激されたマクロファージ中の超酸化物陰イオンの生成に及ぼす阻害効果を表すグラフ。****p<0.0001対対照群、$p<0.05、$$$p<0.001対LPS
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の肺上皮に適用される医薬組成物は、非ステロイト系抗炎薬剤(NSAID)、塩基性アミノ酸を含み、それらがpH7.5-9.5の間のアルカリ性水溶液中に溶けている。
【0031】
非ステロイド性抗炎症薬は、イブプロフェン、ナブロキセン、フルルビプロフェン、クートプロフェン、ジクロフェナク、エトドナック、フェノプロフェン、インドメタシン、メクロフェナマート、メフェナム酸、メロキシカム、オクサプロジン、プロキシカム、スリンダック、セレコキシブ、アセチチレート化サリチレート、及びこれらの組み合わせから選択される。
前記NSAIDの濃度は、5mM―500mMの間の量であり、好ましくは5mM―180mMの間の量、更に好ましくは5mM―50mMの間の量である。前記NSAIDは、脱ブロトン化形態(deprotonated form)であり、この状態はプロトンが別の陽イオンで置換された状態を指す。前記NSAIDは、対イオンとして、ナトリウム、カリウム、リチウム、アルジネート、リシネート、ヒスチジン酸、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される一価の陽イオンを含む。一実施例では、好ましい製剤はイブプロフェンを含む。
【0032】
イブプロフェンが1つのキラル中心を有することを考えると、イブプロフェンは、鏡像異性体(光学異性体とも称するが以下「鏡像異性体」と称する)Rと鏡像異性体Sを有する。本発明では、R鏡像異性体とS鏡像異性体その混合物(ラセミ混合物)の使用が考えられる。このラセミ混合物のRとSの鏡像異性体の混合比率は1:1である。R鏡像異性体又はS鏡像異性体を指定することは、それを少なくとも90重量%、95重量%、98重量%、99重量%含むことを意味する。「光学純度(optical purity)」は、指定された鏡像異性体の両方の鏡像異性体R,Sの結合重量に対する割合を指す。
【0033】
本発明では、水溶液中に溶けるイブプロフェンは、酸形態で又は塩として添加することができる。塩は対イオンとして以下の群から選択された一価の陽イオンを含む。この群は、ナトリウム、カリウム、リチウム、アルジネート、リシネート、ヒスティデイネート及びそれらの組み合わせを含む群である。
【0034】
「塩基性アミノ酸(basic amino acid)」はpHが中性の塩基性側鎖(basic side chain)を有するアミノ酸を指す。その一例は、アルギニン、リジン(lysine)、ヒスチジン(histidine)である。この側鎖は、窒素を含み、塩基性であるアンモニアに似ている。一実施例では、前記塩基性アミノ酸の濃度は、5mM―500mMの間であり、好ましくは25mM―300mMの間、更に好ましくは50mM―250mMの間である。最も好ましいのは80mM-150mMの間である。塩基性アミノ酸は好ましくはアルギニンである。
【0035】
「水溶液(aqueous solution)」は、極性液体(polar liquid)を溶媒(好ましくは水)として使用し、中に溶けているNSAIDと塩基性アミノ酸を有する。一実施例においては、水溶液は、更に人の消費に適した塩を含む。塩の一例は、NaCO、KCl、NaClであり、より好ましくはNaClである。水溶液は、高張性(hypertonic)であり、塩の濃度は0.3M-2Mの間であり、好ましくは0.4M―1.1Mの間、更に好ましくは0.5M―1.0Mの間である。イブプロフェン/塩(イブプロフェン/アミノ酸)のモル比は、1:0.6から1:400の間である。
【0036】
更に、本発明の医薬組成物の水溶液中のpHは、7.5-9.5の間であり、好ましくはpH8-9の間であり、pH8.5が最も好ましい。
【0037】
本発明の医薬組成物は吸入(inhalation)または噴霧状態(nebulization)で投与される。「吸入」による製剤の投与とは製剤を経口又は鼻腔を通して肺に直接投与することを指す。一般的には製剤を吸入することによって行う。
【0038】
本発明の医薬組成物の投与は噴霧によって行う。具体的には、噴霧器が、液状の医薬品を微細な液滴(エアルゾル、ミスト状)にし、これをマウスピースまたはマスクを通して吸入させる。噴霧はジェット(1)又は超音波(2)によって行う。
ジェット(1)では圧縮ガスを使用して、超音波(2)では高周波振動を使用して、エアロゾル(空気中に漂う薬剤の微小粒子)を生成する。一実施例では噴霧はピストン噴霧器を用いる。一実施例では噴霧された液滴は肺胞(alveoli)に到達するのに十分な大きさである。
【0039】
別法として、医薬組成物は吸入器を用いて注入してもよい。一実施例では、医薬製剤は、定量吸入器(MDImetered dose inhaler )を介して投与される。これは、フッ化水素アルカン・エアロゾル噴霧器を用いて、医薬組成物を所定量だけ押し出す。別の実施例は、ソフトミスト吸入器(SMI soft mist inhaler)を用いて、徐動ミストの形態で所定量の医薬製剤を提供する。
【0040】
更に本発明の医薬組成物は、液体状態又は粉末のいずれかとして、凍結乾燥で調製することができる。これは、医薬組成物の最終水溶液から乾燥または凍結乾燥することで形成する。薬学的組成物の乾燥プロセスおよび凍結乾燥は従来公知である。従って詳細な説明は割愛する。
【0041】
本発明の医薬組成物は、肺疾患、ウイルス性又は非ウイルス性の肺感染に有用である。これらの肺疾患の一例は、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、褒胞性線維症(CF) 肺高血圧、気管支肺異形成急性呼吸困難症候群(ARDS)、呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)、呼吸器ウイルス、真菌または細菌感染、両側肺炎、気管支拡張症である。
【0042】
嚢胞性線維症(CF)は、主に子供に影響を与える深刻な疾患であり、肺および消化器系に粘着性粘液(sticky mucus)を蓄積させる遺伝的状態である。これは、肺感染及び食物を消化する際に問題を起こす。喘息は小児および成人の両方に影響を及ぼす気道の慢性炎症を特徴とする呼吸器系の疾患である。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、呼吸困難を引き起こす肺疾患の状態群の名称であり、喫煙する中年又は高齢者に影響を及ぼす一般的な症状である。呼吸系の疾患は徐々に悪化する傾向がある。肺高血圧症(pulmonary hypertension)は、肺(肺動脈)に血液を供給する血管の内の血圧が高い状態であり、心臓の右側を損傷する深刻な状態である。肺動脈の壁は厚くかつ硬くなり、拡張もせず、血液を通すことができなくなる。
【0043】
気管支肺異形成(BPD)は、新生児に影響を及ぼす慢性肺疾患の形態である。多くの場合新生児が未熟児で生まれると酸素療法を必要とする。BPDにおいては、肺および気道(気管支)が損傷し、肺(肺胞)の小さな空気袋で組織破壊(異形成)を引き起こす。急性呼吸困難症候群(ARDS)が発生するのは、流体で肺の弾性空気袋(肺泡)が満杯になった時である。その結果この流体により肺に十分な空気で行き渡らないことになる。このことは、少ない酸素しか血流に到達しないことを意味する。これは器官が機能するのに必要な酸素が器官に届かないことになる。
【0044】
呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)は 、患者が肺炎の症状を示す最近のウイルス疾患である。この場合、発熱が最も一般的な症状であり、その後咳がでる。多くの患者は、酸素飽和濃度が低く、呼吸が苦しくなる。すりガラスの不透明度を伴う両側肺は、胸部のCT画像からの最も一般的な所見である。
【0045】
本発明の薬剤は、実施例に記載した治療効果を奏する。これは酸素ストレス(oxidative stress)に作用することにより得られた。酸素ストレス(「酸化ストレス」とも称する)は、反応性酸素種(ROS reactive oxygen stress)の過剰な全体的な発現により引き起こされる。この過剰とは、反応性中間物の急速な中和又は出来た損傷の急速な修復をする生物系の容量の減少に比較して多いことを意味する。この文脈においては、全体的な又は局所的な酸素ストレスの存在と様々な肺疾患(実施例で治療された全てを含む)の間の関係は、文献に記載されている。それ故、ROS阻害と酸化体/非酸化体の不均衡の回復を目標にした治療も提案する。
【0046】
例えば、非特許文献34は、肺疾患(この一例は、慢性閉塞性肺疾患、急性肺損傷、嚢胞性線維症、特発性肺線維症、肺動脈高血圧症及び喘患である)においてROSとオートファジーの相互作用を議論し、この相互作用はこれらの肺疾患の病因において重要で複雑な役割を果たしていると結論付けている。
特に、非特許文献35は、疾患の安定相と比較して悪化したCOPD患者における酸化ストレスバイオマーカーに関連する文献を検討し、COPD患者特に悪化の影響を受けやすい患者における疾患進行のモニタリングに有用である信頼性の高い酸化ストレスバイオマーカーを同定している。
非特許文献36は、対照群と比較して、水疱性肺疾患の患者では酸化ストレスマーカーと抗酸化ビタミンレベルが大幅に高いこと、酸化ストレスが疾患の病因において重要な役割を果たしていることを見出した。
【0047】
酸化ストレスは、肺線維症肺の炎症、コラーゲン沈着、呼吸器・肺の線維症において重要な役割を果たす。遊離基活性、脂質生成物、酸化タンパク質は、呼気中、気管支肺胞洗浄液、肺線維症患者の血清および肺で同定されている(非特許文献37)。同様に、気管支拡張症の病因は酸化ストレスに関連し、酸化ストレスバイオマーカーが、気管支拡張症の患者の呼気の中に見出されていることが知られている(非特許文献38)。
【0048】
気管支喘息に関して、酸化ストレスはその病因の重要な役割を果たすことが一般的に認められている(非特許文献39)。また、呼吸路における炎症プロセスの進展及び維持は、喘息患者に見られる酸化ストレス及び亜硝酸性ストレス(nitrosative stress)に関連することが確認されている(非特許文献40)。
【0049】
更に、呼吸器ウイルスは、ヒト呼吸器合胞体ウイルス(RSV respiratory syncytial virus )、インフルエンザ・ウイルス(IV)、ヒトライノウイルス(HRV human rhinovirus)、ヒトメタニューモウイルス(HMPV human metapneumovirus)、バラインフルエンブ、アデノウイルス、コロナウイルス(CoVs)を含み、ROS生成酵素、ニコチンアミド・アデニン、ジヌクレオチド・リン酸オキシダーゼ(NADpH、オキシダーゼ、NOx)を誘導し、不均衡な抗酸化レベル(antioxidant virus)を生成する(非特許文献41)。
【0050】
最後に、COVID-19による中程度と重度の肺炎患者は敗血症(sepsis)を発症し得る。 敗血症は、前回のパンデミックの間に世界的に見て集中治療室における死亡の主導的原因であった。敗血症性ショックは敗血症の結果である。敗血症においては、ROSとRNS(一酸化窒素(NO))の高い産生がある。ROSとRNSは、複数の臓器(肺、心臓、神経、肝臓)不全を引き起こす可能性がある(非特許文献42)。
【0051】
本発明の利点は従来の文献では報告されていない。本発明の利点は、非常に低いドーズ量(用量)のNSAIDと塩基性アミノ酸を、所定の濃度、所定のpH、所定の塩濃度で組み合わせ、一酸化窒素(NO)の合成と放出及び酸化ストレスを減少させる。同時に血管拡張を改善し、結果として酸素飽和を改善し、最終的には患者の肺機能FEV1の向上を誘導する。
【0052】
技術的には、非常に低い濃度のNSAIDとアルギニン(塩基性アミノ酸)を使用すると、酸素飽和とFEV1に相乗効果を奏し、血圧の低下を促し、抗炎症薬の一般的な副作用を低減する。他方で、この製剤中の低用量のアルギニンは、非対称ジメチルアルギニン(ADMA asymmetric dimethylarginine)の増加を阻止し、高用量のアルギニンが使用されたときに現れる内皮のNOSの阻害剤となる。
【0053】
更に、本発明は、その組成物の性質により、特許文献1に記載された相乗的な殺菌及び抗ウイルス効果を達成し、この医薬組成物の殺菌効果と殺ウイルス効果を増強し、病原体によって引き起こされる肺疾患の治療をさらに適したものにする。
【0054】
本発明の別の目的は、呼吸器疾患の治療の為に肺上皮に投与される医薬組成物の製造方法を提供することである。この製造方法は、以下のステップ(A)-(E)を含む。
(A)NSAIDと水を混合し、懸濁状態を維持する為に撹拌するステップ。
(B)塩基性アミノ酸を前記ステップ(A)で添加するステップ。
(C)NaOH又はNa2CO3をpH7.5-9.5になるように添加し、イブプロフェンと塩基性アミノ酸を完全に溶かすために撹拌し、1-100mg/mLの間の濃度のNSAIDと1-250mg/mLの間の濃度の塩基性アミノ酸を得るステップ。
(D)ヒト消費に適した前記塩を、前記ステップ(C)の調整物に0.3-1.0Mの間の濃度で添加するステップ。
(E)前記ステップ(D)の調整物を、0.22ミクロンの孔のフィルターで濾過するステップ。
【0055】
本発明の一実施例においては、この製造方法は、以下のステップ(F)(G)を更に含む。
(F)前記ステップ(E)で濾過された溶液を凍結乾燥するステップ。
(G)適用される時点で、前記ステップ(F)で凍結乾燥された組成物を、水又は2.5%のグルコース溶液で、再懸濁するステップ。
【0056】
本発明の別の目的は、呼吸器疾患の治療の為に肺上皮に投与される医薬組成物の製造方法を提供することであり、この製造方法は、以下のステップ(A)-(G)を含む。
(A)NaOH又はNa2CO3を、45℃に加熱された純水の最終容積の70%の容量に、溶解するステップ。
(B)NSAID(微細粉末の)を前記ステップ(A)の溶液に添加し、溶けるまで撹拌するステップ。
(C)塩基性アミノ酸を前記ステップ(B)の溶液に添加するステップと、
(D)ヒト消費に適した塩を、前記ステップ(C)の組成物に添加し、溶けるまで撹拌するステップ。
(E)NaOH又はNa2CO3溶液を、前記ステップ(D)の溶液に、pH7.5-9.5の間になるように、添加するステップ。
(F)前記ステップ(E)で得られた溶液を室温まで冷却し、純水を前記最終容積に達するまで添加し、1-100mg/mLの間の濃度のNSAIDと、1-250mg/mLの間の濃度の塩基性アミノ酸と、0.3-1.0Mの濃度のヒト消費に適した塩を得るステップ。
(G)前記ステップ(F)の調整物を、0.22ミクロンの孔のフィルターで濾過するステップ。
【0057】
本発明のより好ましい実施例においては、この製造方法は、以下のステップ(H)(I)を含む。
(H)前記ステップ(E)で濾過された溶液を凍結乾燥するステップ。
(I)適用される時点で、前記ステップ(H)で凍結乾燥された組成物を、水又は2.5%のグルコース溶液で、再懸濁させるステップ。
【0058】
本発明の別の目的は、被験体(「患者」とも称する)の肺疾患の治療のための医薬組成物の使用である。
【0059】
用語「被験体」とは、哺乳動物好ましくは人であるが、獣医学的治療を必要とする動物である。その一例は、ペット(例、犬、猫等)、家畜(例、牛、羊、豚、馬等)、実験用動物(例、ラット、ネズミ、モルモット等)である。被験体を「患者」と総称する。
【0060】
用語「治療する」「処理」「治療」とは、肺疾患の患者に使用する場合は、肺疾患の影響又は症状を改善することと、疾患の罹患期間を短縮することを含む。患者が低酸素症状態の場合は、血中酸素濃度を治療しない場合よりも早く正常に戻すことを意味する。患者が重篤な疾患を進行中の場合は、挿管を必要とする可能性を減らすこと、挿管を必要とする時間を短くすること、回復期間を短くすること、死亡率を低下させることを意味する。
【0061】
用語「有効量」とは、肺疾患の患者に投与された時に、有益な又は所望の効果を奏する量を意味する。有益な又は所望の効果の一例は、肺疾患の影響又は症状の改善、血中酸素濃度レベルの正常化、回復時間の短縮化、重篤な患者が挿管を必要とする可能性を減らすこと、死亡率を低下させることを含む。
【0062】
患者に投与する医薬溶液の有効量の正確な量は、肺疾患の種類と重篤度、患者の特性(一般的な健康程度、年齢、性別、体重、薬物への耐性)に依る。当業者はこれらの要因に応じて適切な投与量を決定できる。適切な投与量は、公認の治療業者には知られており、患者の状態、治療される肺疾患の種類に応じて当業者が調整できる。投与される医薬組成物の量は、文献で報告されており、医師のデスク・リファレンス(2003年57版)で推奨されている。
「有効量」の一例は、開示された治療方法で使用される医薬組成物は、1mLと50mLの間の量である。或いは1mLと25mLの間の量である。別の実施例では1mLと10mLの間の量である。別の実施例では「有効量」は3mLと7mLの間の量である。別の実施例では、「有効量」は3mLである。「投与回数」は一日につき1回と5回の間である。或いは1回と3回の間である。投与時間は、5分から1時間の間、或いは5分から30分の間、別の実施例では10分と20分の間で変動する。
【0063】
呼吸器ウイルス感染の患者の内僅かであるが無視できない割合の患者は、重篤な疾患に、更には死に至る疾患(例:肺炎または急性呼吸困難症候群(ARDS))(本明組書では「重篤な疾患」と称する)に進行することがある。肺炎は、一方または両方の肺の空気袋(気嚢、肺胞)に炎症を発症させる感染である。空気袋は、流体又は膿(膿性物)で満たされると、粘液質又は痰、発熱、悪寒、呼吸困難を伴う咳を引き起こす。ARDSは、肺内の空気袋内に蓄積される流体が特徴であるが、高炎症を伴うこともある。高炎症は、「サイトカイン・ストーム」と称する状態又は全身性炎症を誘発する。これは難呼吸又は死に至ることがある。ARDSの症状には、呼吸の極端な短さと、苦しく尋常でない早い息使い、低血圧、混乱および極端な疲労感が含まれる。
【0064】
低い血中酸素飽和度レベルは、肺炎とARDSでも発症し、これらの病状に関連する重篤な症状に少なくとも一部関係する。血中酸素飽和度レベルは、肺機能と心臓機能の統合された評価を提供する。血中酸素飽和度レベルの経皮的バルス・オキシメトリによる非侵襲性測定は、疾患の重篤度の評価の日常的作業になっている。患者の血中酸素濃度が低いということは、パルス・オキシメトリによる血中酸素飽和度が95%未満を指す。この値は正常な被験者(慢性の低酸素飽和度で高炭素症の呼吸器疾患(hypercapnic respiratory disease)の患者)の正常値の下限である。酸素飽和度が92%未満は、緊急事態と見做され、緊急治療を必要とする。特に、ベースラインの正常値から急激に変化(ウイルス性肺炎患者にしばしば観察される)する場合は、緊急治療を必要とする。血中酸素濃度レベルが低い患者は、本明細書では「低酸素症(hypoxic)」とも称する。肺炎またはARDSに進行した呼吸器ウイルス感染症の患者は、開示された治療方法に従って治療されると、血中酸素化レベルが正常値に回復(ARDSに関連する重篤な症状の緩和と改善された血中酸素飽和レベルを含む)する。
【0065】
心肺状態の第2の尺度は呼吸数である。健康な成人では、20呼吸/分以下である。肺炎またはARDSまで進行した呼吸器ウイルス感染の患者は、この正常値(最大21-25呼吸/分)より遙かに高い呼吸数である。深刻な場合は25-30呼吸/分。最悪の場合は30-40呼吸/分である。このような患者は、開示された治療方法に従って治療されると、呼吸数の正常範囲への改善が認められる。これは上記のARDS に関連する重篤な症状を緩和する要素の1つである。
【0066】
心肺状態の第3の尺度は心拍数である。健康な成人では、安静時は通常90拍/分である。肺炎またはARDSまで進行した呼吸器ウイルス感染の患者は、この値は非常に大きくなる。肺炎またはARDSまで進行した呼吸器ウイルス感染の患者は、正常値より遙かに高い心拍数91-110拍/分である。深刻な場合は111-130拍/分。最悪の場合は131拍/分以上である。このような患者は、開示された治療方法に従って治療されると、心拍数の正常範囲への改善が認められる。
【0067】
National Early Warning Score(NEWS2)は、急性疾患を発症する又は発症するかも知れない患者を識別するために、一般に受け入れられた評価ツールである。これは非特許文献43に開示されている。具体的には、NEWS2のスコアが0-4は患者の臨床リスクが低いレベルである、スコアが5-6は患者の臨床リスクが中程度である、スコアが7以上は患者の臨床リスクのレベルが高いことを示す。開示された治療方法を用いて、スコアが0-4又は5-6又は7以上の患者を治療すると、スコアを増加させる可能性を減らす、スコアを減少させる、患者を低スコアにする、といった改善された状態にする。
【0068】
特に重篤な症例では、ARDSの患者は、呼吸補助を必要とし呼吸器を付ける。この呼吸器を付けた状態を患者は「挿管済み即ち挿管されている」と称する。開示された治療方法は、血中酸素濃度を増加させ、未挿管だがその後挿管されることになる重篤な血中酸素濃度が低い患者が「挿管される」可能性を低減するのに有用である。開示された治療方法は、挿管された患者の血中酸素濃度を増加させ、それにより、回復の可能性を増加させ、患者が呼吸器を付けている時間を減らすのにも有効である。
【0069】
ある症例では、軽度の症状の肺疾患患者でも低酸素状態であり得る。即ち血中酸素濃度レベルが低いこともあり得る。血中酸素濃度レベルが低いということは、軽度の症状の患者が肺炎またはARDSなどの重篤な疾患に進行するリスクにあるという指標である。開示された治療方法は、軽度の症状の低酸素患者が、重度の症状(肺炎またはARDS等)に進行する可能性を低減するのに有効である。開示された治療方法は、低酸素濃度の患者、肺炎またはARDS等の重篤な疾患を既に発症している患者を治療するのに有効である。
【0070】
開示された治療方法は、軽度の肺疾患を煩い非低酸素濃度の患者を治療して、患者が低酸素症になり、重篤な疾患に進行する可能性を低減する。
【0071】
前述の情報と以下説明する実施例に示される結果を参照すると、本発明の組成物は、肺に影響を及ぼす様々な肺疾患の治療のための重要な改善を示すことが実証された。肺疾患の一例は、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、褒胞性線維症(CF)、肺高血圧、気管支肺異形成急性呼吸困難症候群(ARDS)、呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)、呼吸器ウイルス、真菌または細菌感染、両側肺炎、気管支拡張症を含む群から選択される。これらの病理生物学においては、イブプロフェンとアルギニン塩の混合物を含むpH8.5の本発明の組成物を噴霧状態で投与すると、抗炎症効果と血中酸素飽和、呼吸数、心拍数、血圧の改善を促す。
【0072】
実施例
実施例1:以下の実施例で行われた試験用にアルカリ高張性イブプロフェン(AHI)溶液を用意する。
通切な容器に一回分の溶液の最終容積の70%に相当する注入用水を入れる。次いで、一回分の溶液の調製に必要な量の炭酸ナトリウム(sodium carbonate)を入れ、溶解させる。このプロセスは、機械的攪拌によって実行され、容液の汚染及び損失を回避する。
【0073】
炭酸ナトリウムが溶けたら、イブプロフェンを添加し強く攪拌する。完全に溶けるまで攪拌する。
【0074】
クエン酸ナトリウム(sodium citrate)を添加し、溶けたら、塩化ナトリウム(sodium chloride)を添加し、溶液が均質になるまで適度な撹拌動作を維持する。溶液のpHを測定する。温度25度Cで溶液のpHを8.6±0.1に調節する。必要に応じて10%炭酸ナトリウム溶液を添加する。pHを調整した後、精製水を添加して最終溶液を得る。
【0075】
表1:アルカリ高張性イブプロフェン(AHI)溶液の組成物
各5ml 各5ml 濃度 濃度
(mg) (mmol)(mg/mL) (mM)
イブプロフェン 50.00 0.242 10.00 48.48
塩化ナトリウム 146.10 2.500 29.22 500.00
炭酸ナトリウム 30.00 0.283 6.00 56.61
クエン酸ナトリウム 10.00 0.039 2.00 7.55
水酸化ナトリウム 9.75 0.244 1.95 48.75
精製水 残り. 5.00 0.277 - -
【0076】
実施例2:本発明の製剤(イブプロフェンとアルギニン溶液)の調製。
本発明の実施例に使用される製剤の発明者が知りうる最適な調製方法を以下に記載する。以下のステップを有する。但しこれが唯一無二のものではない。
(A)45℃の純水の最終容積の70%の容量に、Na2CO3を溶解するステップ。
(B)イブプロフェン(微細粉末状の)を前記ステップ(A)の溶液に添加し、溶けるまで撹拌するステップ。
(C)アルギニン塩酸塩を前記ステップ(B)の溶液に添加するステップと、
(D)塩化ナトリウムを、前記ステップ(C)の溶液に添加し、溶けるまで撹拌するステップ。
(E)pH8.5になるように、前記ステップ(D)の溶液にNa2CO3を添加するステップ。
(F)前記ステップ(E)で得られた溶液を室温まで冷却し、純水をこの溶液の最終容積に達するまで添加するステップ。
(G)前記ステップ(F)で得られた調整物を、0.22ミクロン(μm)の孔のフィルターで濾過するステップ。
【0077】
表2:本発明の好ましい組成の組成物
各5ml 各5ml 濃度 濃度
(mg) (mmol)(mg/mL)(mM)
イブプロフェン 50.00 0.242 10.00 48.48
アルギニン 塩化水素 102.2 0.485 20.4 97.3
塩化ナトリウム 146.10 2.500 29.2 500.00
炭酸ナトリウム 30.00 0.283 6.00 56.61
精製水 q.s. 5.00 0.277
【0078】
実施例3:アルギニンの濃度を増加させたAHI溶液の噴霧治療がCOVID-19陽性患者の酸素飽和、心拍数、呼吸数に及ぼす効果。
この実施例および以下の実施例では、以下の略号を使用する。
「RF」は、呼吸数を指し、呼吸数/毎分で表す。
「CF」は、心拍数を指し、心拍数/毎分で表す。
「PO」は、酸素飽和度を指し、パルス・オキシオ計で測定し%で表す。
「BP」は、収縮期/拡張期血圧を指し、mmHgで表される。
「HBP」は、高血圧を意味する。
【0079】
患者1
性別:女性
年齢:62歳
入院日:2021年8月21日
退院日:2021年9月3日
診断:SARS-CoV-2による軽度の両側肺炎
病理学的個人病歴:2型糖尿病と肥満
【0080】
患者1の病状の進展
入院日:2021年8月20日(8日前からCOVID-19に罹患していた)。
PO値は92-93%。室温で酸素補給なしで測定。RF値は22。CF値は89。
患者は、酸素補給(O2,2L/h)を受け、デキサメタソン(dexmethasone)とヘパリン(heparin)での治療を受ける。
患者は、2021年8月20日から2021年8月28日にかけて、8時間毎にAHI溶液で噴霧治療を受ける。
*2021年8月28日午前11時:患者はL-アルギニン塩酸塩6mMを含有するAHI溶液3mLの噴霧治療を受ける。実質的な変化なし。6時間後PO値は93%を維持した。
*2021年8月28日午後5時:患者はL-アルギニン塩酸塩12mMを含有するAHI溶液3mLの噴霧治療を受ける。噴霧治療後、RFは22。CFは86。POは未だ93%であった。
*2021年8月28日午後11時:患者はL-アルギニン塩酸塩25mMを含有するAHI溶液3mLの噴霧治療を受ける。PO値は93-94%を維持する。
*2021年8月29日午前6時:患者はL-アルギニン塩酸塩50mMを含有するAHI溶液3mLの噴霧治療を受ける。噴霧治療後、RFは22。CFは86。POは96%に上がり、POは96%を少なくとも6時間維持した。
*2021年8月29日午前12時:患者はL-アルギニン塩酸塩100mMを含有するAHI溶液3mLの噴霧治療を受ける。噴霧治療後、RFは18-19。CFは75-76。POは再び上がり、98-99%に達し、これを8-10時間維持した。
*患者は、この治療を継続し、2021年9月3日に退院した。不定の(adventitioius)又は「追加された(added)」音は観察されなかった。患者は遙か良好な感覚を報告した。治療中に副作用は観察されなかった。
【0081】
実施例4:本発明の製剤(イブプロフェン-アルギニン溶液)の噴霧治療がCOVID-19陽性患者の酸素飽和、心拍数、呼吸数に及ぼす効果。
患者2
性別:女性
年齢:52歳
入院日:2021年8月31日
退院日:2021年9月06日
診断:SARS-CoV-2による軽度の両側肺炎
病理学的個人病歴:肥満(+);2型糖尿病(+)
【0082】
患者2の病状の進展
入院日:2021年8月31日(8日前からCOVID-19に罹患していた)。
室温でPOは91-93%。RFは20。CFは69。
患者は、酸素補給(O2,2L/h)を受け、デキサメタソンとヘパリンでのサポート治療を受ける。不定の音が観察された。カチカチした音(bibasilar crackles)右側が顕著(riggt predominance)
患者は、AHI溶液で噴霧治療を、2021年8月24日から2021年8月31日にかけて、6時間毎に受ける。
*2021年8月31日:患者は、イブプロフェン-アルギニン溶液3mLの噴霧治療を8時間毎に受ける。噴霧治療後、酸素補給無しにPOは97%であった。噴霧治療8時間後、酸素補給無しにPOは95%であった。
*患者は、この治療を継続し、2021年9月6日に退院した。この時点で、POは97%。RFは18。CFは88。この時点で不定の又は「追加された」音は観察されなかった。
【0083】
患者3
性別:男性
年齢:61歳
入院日:2021年8月21日
退院日:2021年9月26日
診断:SARS-CoV-2による中程度/重度のパターン(TAC)を有する両側肺炎
病理学的個人病歴:HBP(+)
【0084】
患者3の病状の進展
入院日:2021年8月21日。POは93%。RFは21。CFは70。
患者は、酸素補給(患者の必要に応じて断続的なO)を受け、デキサメタソンとヘパリンでの治療を受けた。観察事項:小胞の雑音(vesicular murmur)の減少、顕著な呼吸困難。患者は、AHI溶液で噴霧治療を、2021年8月14日から2021年8月21日にかけて、8時間毎に受ける。
*2021年8月21日:患者は、イブプロフェン-アルギニン溶液3mLの噴霧治療を8時間毎に受ける。POは98%に達した。噴霧治療8時間後、POは95%であった。
*患者は、この治療を継続し、2021年9月26日に退院した。この時点で、POは97%。RFは20。CFは68。この時点で、不定の又は「追加された」音は観察されなかった。
【0085】
患者4
性別:男性
年齢:52歳
入院日:2021年8月31日
退院日:2021年9月06日
診断:SARS-CoV-2による重度の両側肺炎
病理学的個人病歴:1型糖尿病
【0086】
患者4の病状の進展
入院日:2021年8月31日(8日前からCOVID-19に罹患していた)。
室温でPOは88-90%。RFは22。CFは88。
患者は、酸素補給(O2,2L/hの量で)を受け、デキサメタソンとヘパリンでの治療を受ける。患者は、発熱、頭痛、大域的低換気(global hypoventilation)の症状を呈する。不定音が観察された。患者は、AHI溶液の噴霧治療を、2021年8月26日に、6時間毎に受ける。
*2021年8月31日:患者は、イブプロフェン-アルギニン溶液3mLの噴霧治療を6時間毎に受ける。POは94%に達した。噴霧治療8時間後、POは91%であった。
*患者は、この治療を継続し、2021年9月6日に退院した。この時点で、POは97%。RFは17。CFは74。不定の又は「追加された」音は観察されなかった。
【0087】
実施例5:本発明の製剤(イブプロフェン-アルギニン溶液)の噴霧治療が療痕肺繊維症(scar pulmonary fibrosis)患者の酸素飽和、心拍数、呼吸数に及ぼす効果。
患者5
性別:女性
COVID-19検査:陰性(-)
検査日付:2021年9月10日
年齢:77歳、体重:54kg、身長:146cm
診断:療痕肺線維症、牽引気管支拡張症(traction brochiectasis)
進展::48歳の時彼女は実験室での事故で酸(べリドール、塩酸、硫酸)を吸入する。
病理学的個人病歴;手術(盲腸切除、アミラーゼ切除術、胆管切除術)、2型糖尿病(+)HBP(+)。
有害な背景:タバコ(+)(タバコを16年間1日20本吸っていたが30年前に止めた。アルコール(+)ドラッグ(+)(実験室で)
治療:アトロベント(atrovent)(イプラトロピウム(Ipratropium)ブロマイド(Bromide))SOS:物理療法。酸素補給:夜間に4リットル、昼間はそれより以下。
基礎状態:PO=91-90-86%。RF=24。CF=115。BP=110/80これは酸素バックパックを背負った状態で。酸素バックパック無しではPOは82%に減少した。
【0088】
患者5の病状の進展
患者5は、AHI溶液の噴霧治療を7月前に開始した。POは84%から90%に改善した。酸素要求度は低くなった。患者5は話すことはできず電話も無理だった。
*2021年9月10日:患者5は、イブプロフェン-アルギニン溶液3mLの噴霧治療を12時間毎に受け始める。POは96%に改善した。CFは110に減少した。
*噴霧治療1時間後、患者5のRFは24。CFは102。POは92%(酸素バックパック無しで)。患者5は、咳はしなかった。話すことはできた。主観的改善と客観的な症状の改善が見られた。
【0089】
実施例6:本発明の製剤(イブプロフェン-アルギニン溶液)の噴霧治療が慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の酸素飽和、心拍数、呼吸数に及ぼす効果。
患者6
性別:男性
COVID-19(緊急)検査:陰性(-)
入院日:2021年9月10日
退院日:2021年9月25日
年齢:79歳、体重:60kg;身長:169cm
診断:慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫、肺線維症、
進展:2007年から患者は受動喫煙者(台所、オーブンの煙)である。
病理学的個人病歴;AHIの治療開始前に、患者6は細菌性肺炎(bactrial pneumonias)を繰り返し(1年に2回)罹っていた(入院が必要)。胆嚢切除手術(cholecystectomy)を受けた。2型糖尿病、HBT
有害な背景:タバコ(+)、アルコール(+)ドラッグ(-)
治療:12時間毎にインダカテロール・カプセル(indacaterol capsules);12時間毎にヘキサラ(hexaler)(デスロラタデン, Desloratadine)
【0090】
患者6の病状の進展
2年前に、患者6は、8時間毎に5mLのAHI溶液の噴霧治療を開始した。(基礎状態:POは94%。RFは20。CFは72。BP=140/80)その後、患者6は再度入院の必要はなかった。患者6は、一度肺炎に罹患したが、抗生物質治療で治癒した。連続的に白い分泌物(white secretion)があると述べた。
*2021年9月10日:患者6は、イブプロフェン-アルギニン溶液5mLの噴霧治療を8時間毎に受け始める。噴霧治療の間、POは95-97%に達した。CFは71。噴霧治療を一時中断して、つばを吐いた。
*噴霧治療1時間後、CFは71。POは96%。臨床的症状の改善が見られた。
患者は、この治療を継続し、2021年9月25日に退院した。
【0091】
実施例7:本発明の製剤(イブプロフェン-アルギニン溶液)の噴霧治療が気管支拡張症の患者の酸素飽和、心拍数、呼吸数に及ぼす効果。
患者7
性別:女性
COVID-19(緊急)検査:陰性(-)
来院日:2021年9月10日
年齢:72歳、体重:58kg;身長:157cm
診断:中央の円筒状気管支拡張症(一部分が牽引で分離されている)投薬なしで肺疾患の病歴がある。
病気の進展:2013年から。
病理学的個人病歴:外科手術(-)糖尿病(-)HBP(+)2回の正常分娩(eutocic deliveries)
有害な背景:タバコ(-)、アルコール(-)ドラッグ(-)ストレス(+)
治療:12時間毎にセレタイド(seretide)250、フルティカソーネ/サルメテロール(fluticasone/salmeterol)投与
【0092】
患者7の病状の進展
8月前に患者7は、12時間毎の3mLのAHI溶液の噴霧治療を開始した。(基礎的ライン:POは94%、RFは18、CFは77、BP=125/70)この治療により、seretideの投与量が減少した。
*2021年9月10日:患者6は、イブプロフェン-アルギニン溶液3mLの噴霧治療を受けた。噴霧治療の間、POは99%に達した。CFは75。患者7は咳錠剤を服用しなかった。
*噴霧治療1時間後、CFは68。POは98%。臨床的症状の大きな改善が見られた。
【0093】
実施例8:本発明の好ましい製剤(イブプロフェン-アルギニン溶液)の噴霧治療の、嚢胞性肺気腫(bullous emphysema)の患者の酸素飽和、心拍数、血圧に及ぼす効果。
患者8
性別:男性
COVID-19検査:陰性(-)
検査日付:2021年9月11日
年齢:72歳、体重:65kg;身長:176cm
診断:重度の嚢胞性肺気腫
病気の進展:12年前にCOPDと診断されていた。1977年から呼吸困難(dyspnea)の症状があった。
病理学的個人病歴:外科手術(胆管切除、前立腺のアデ種、ヘルニア)糖尿病(+)HBP(+)2010年に脳血管障害。
背景:COVID-19(+)、COVID-19はAHI溶液で噴霧治療した。
有害な背景:タバコ(+)(毎日タバコ60本10年前に禁煙)アルコール(+)ドラッグ(-)
治療:インダカテロール(inducaterol), フレビア(frevia) (バデソナイド/ホルモテロール(budesonide/formoterol)、SOS酸素治療、カルベディロール(carvedilol), バルサルタン(valsartan)160mg投与。
【0094】
患者8の病状の進展
1年前に、患者は8時間毎に3mLのAHI溶液の噴霧治療を開始した。(基礎的ライン:POは90-92%。RFは24。CFは76。BP=150/90)患者8は、この治療により、めまいを感じた。しかし酸素飽和か改善した。
*2021年9月11日:患者は、イブプロフェン-アルギニン溶液3mLの噴霧治療を受けた。噴霧治療の間、POは96-97%に増えた。RFは23。CFは72。BP=150/90。治療には十分に良好であった。
*噴霧治療1時間後、POは98%。RFは21。CFは70。BP=130/80。有害な副作用は観測されず、患者は、見掛けは元気であった。
【0095】
実施例9:本発明の製剤(イブプロフェン-アルギニン溶液)の噴霧治療が気管支喘息の患者の酸素飽和、心拍数、血圧に及ぼす効果。
患者9
性別:女性
COVID-19検査:陰性
日付:2021年9月11日にイブプロフェン-アルギニン溶液の噴霧治療開始。
年齢:64歳、体重:80kg;身長:162cm
診断:重度又は中程度の気管支喘息、気管支過応答性(HRB)を伴う。
病気の進展:幼児の頃から気管支喘息を罹患する。35年前の最後の妊娠の間、呼吸不全の症状を呈し始めた。
病理学的個人病歴:呼吸不全改善の為の帝王切開、糖尿病(+)HBP(+)肥満(+)ストレス(+++)、3回の妊娠、2回の分娩
背景:COVID-19(+)無症状。
有害な背景:タバコ(-)アルコール(-)ドラッグ(-)
治療:1日に、ニューモテロール(neumoterol)、微粉化ブデソナイド(budesonide)/微粉化フォルモテロル、フマレート、ディヒドレート(fermoterol fumarate dihydrate) 投与
【0096】
患者9の病状の進展
9月前に患者は、AHI溶液の噴霧治療を開始した。(基礎的ライン:POは94%。RFは21。CFは74。BP=120/80)患者は、この治療により、ひき声を減少させた。会話は可能で、運動に伴う呼吸難と咳が減少した。眠りの質が改善した(仰向けには寝られなかった)。この治療により、ニューモテロールの投与量が減少した。患者は、気管支痙攣、嗚咽、咳の症状を依然として呈する。
*2021年9月11日:患者は、イブプロフェン-アルギニン溶液3mLの噴霧治療を受けた。噴霧治療の間、POは99%に達した。RFは12.CFは71。治療により、呼気が改善し、かゆみが減った。
*噴霧治療1時間後、POは99%。RFは13.CFは71。BP=100/60。
主観的改善と客観的な症状の改善が見られた。
*歩行テスト:安静時のPOは96%。2分間。基本的嗚咽(basal wheezing:ゼイゼイいう音)を伴う気管支喘息、POは94%。安静時と回復の後ではPOは96%。
*噴霧治療後、久しぶりに初めて患者は階段を登り、POは97%。
*更に、患者9は、肺活量のテストを、イブプロフェン-アルギニン溶液の噴霧治療の前と60分経過後に受けた。これらのテスト結果をそれぞれ図1,2に示す。
【0097】
実施例10:本発明の製剤(イブプロフェン-アルギニン溶液)の噴霧治療がCOVID-19後の肺繊維症の患者の酸素飽和、心拍数、血圧に及ぼす効果。
患者10
性別:女性
COVID-19検査:陰性
年齢:53歳、体重:83kg(COVID-19後20kg増加);身長:157cm
検査日付:2021年9月11日
診断:COVID-19後の肺繊維症。
病気の進展:2021年9月11日にCOVID-19に感染。無症状。患者は8時間毎にAHI溶液の噴霧治療を受ける。
次週は、COVID後の呼吸困難、噴霧治療で始まる。患者はスポーツウーマン(自転車、トレッキング、クロスフィット)である。
病理学的個人病歴:胆管切除手術、子宮摘出手術、COVID後のインシュリン依存性の肥満、昔2型糖尿病を患う(+)HBP(+)
治療:セルトラアイン(sertraline) トピラマーテ(topiramate)を投与(うつ病治療の為)。
有害な背景:タバコ(-)アルコール(-)ドラッグ(-)
【0098】
患者10の病状の進展
3月前に、患者10は8時間毎にAHI溶液5mLの噴霧治療を開始した。(基礎的ライン:POは92-93%。RFは24。CFは85。BP=120/90)。患者10は呼吸困難に陥っていた。
*2021年9月11日:患者9は、イブプロフェン-アルギニン溶液3mLの噴霧治療を受けた。噴霧治療の間、POは98-99%。RFは18。CFは80。患者は震えは少なかった。
*噴霧治療4時間後、POは98-99%。RFは17。CFは82。BP=110/70。患者は震えなくなり、鼻呼吸ができると言った。医療的改善が目立つ。患者は階段の上り下りができようになった。
【0099】
実施例11:本発明の製剤とpH7.0-8.5のアルギニン溶液の噴霧治療が気管支喘息患者の酸素飽和、心拍数、血圧に及ぼす効果。
患者11
性別:女性
入院日:2021年9月28日
年齢:71歳、体重:78kg;身長:162cm
COVID-19検査:陰性(-)
診断:53年前からの気管支喘息
病気の進展:喘息で、数回の酸素治療による入院を必要とした。周囲ダストに対するアレルギーHRB(+)
病理学的個人病歴:胆嚢手術、糖尿病(-)HRB(+)COVID-19(+)入院とAHI溶液による治療。COVID後の疲労、4回の妊娠、3回の分娩、1回の自然流産。
有害な背景:タバコ(+)アルコール(+)ドラッグ(-)
治療:セレタイド(seretide)ディスカス500(フルティカソーネ/サルメテロール(fluticasone/salmeterol)投与
通常時のPOは95%
【0100】
患者11の病状の進展
患者の基礎的ライン:POは95%。RFは17。CFは71。BP=165/100。患者は呼吸困難に陥っている。
*患者は、pH8.5の100mMのアルギニン溶液3mLの噴霧治療を受けた。噴霧治療の間、POは95%を維持した。RFは19。CFは63。BP=165/100。2時間後変化は観測されなかった。
*その後、患者は、pH8.5の100mMのアルギニン溶液3mLの噴霧治療を受けた。その後、POは95%を維持した。2時間後変化は観測されなかった。
*最後に、患者は、pH8.5のイブプロフェン-アルギニン溶液3mLの噴霧治療を受けた。噴霧治療直後、POは100%。RFは18。CFは67。噴霧治療6時間後、POは100%。RFは18。CFは68。BP=150/100。噴霧治療8時間後でもPOは依然として100%。
【0101】
実施例12:pH8-8.5の本発明の製剤とpH7.0-8.5のアルギニン溶液の噴霧治療がCOPD患者の酸素飽和、心拍数、血圧に及ぼす効果。
患者12
性別:女性
入院日:2021年9月28日
年齢:81歳、体重:75kg;身長:164cm
COVID-19検査:陰性(-)
診断:COPD、運動時呼吸困難
病理学的個人病歴:手根管症候群手術(carpat tunnel surgery)、糖尿病(-)HBP(+)COVID(+)2回の妊娠、2回の分娩
有害な背景:タバコ(+)(30年間1日20本)アルコール(-)ドラッグ(-)
治療:ニューモテロール(neumoterol) (微粉化ブデソナイド(budesonide)/微粉化フォルモテロル、フマレート、ディヒドレート(fermoterol fumarate dihydrate) 投与
【0102】
患者12の病状の進展
患者の基礎的ライン:POは93%。RFは20。CFは78。BP=135/74。患者は運動時呼吸困難に陥っている。単離されたルンチ(rhonchi)がいくらか検出された。
*患者は、pH7の100mMのアルギニン溶液3mLの噴霧治療を受けた。POは93-94%を維持した。RFは20。CFは70。BP=133/75。2時間後臨床的変化は観測されなかった。
*その後、患者は、pH8.5の100mMのアルギニン溶液3mLの噴霧治療を受けた。POは30秒間で94%から98%に増えた。その後急激に、噴霧治療の終了時には93%に落ちた。RFは21。CFは66。
*その後、患者は、pH8のイブプロフェン-アルギニン溶液3mLの噴霧治療を受けた。噴霧治療終了後直ちに、POは97%。RFは19。CFは65。BP=134/75。噴霧治療終了6時間後、POは96%。RFは20。CFは69。BP=132/73。
注意事項:この場合、実施例2のイブプロフェン-アルギニン溶液に添加するNa2CO3の量を減らすと、この溶液の最終pHは8となった。
*最後に、患者は、pH8.5のイブプロフェン-アルギニン溶液3mLの噴霧治療を受けた。治療直後は、POは96%。CFは64。噴霧治療6時間後は、POは96%。RFは24。CFは78。BP=135/75であった。噴霧治療8時間後は、POは95-98%。RFは17。CFは75。BP=130/70であった。
【0103】
実施例13:pH8.5-9の本発明の製剤とpH7.0-8.5のアルギニン溶液の噴霧治療がCOPD患者の酸素飽和、心拍数、血圧に及ぼす効果。
患者13
性別:男性
入院日:2021年9月28日
年齢:72歳、体重:120kg;身長:178cm
COVID-19検査:陰性(-)
診断:COPD15年前から、運動による呼吸困難グレード2/3、
病理学的個人病歴:ヘルニア手術、糖尿病(-)、HBP(-)、COVID-19(-)、肥満(+)
有害な背景:タバコ(+)(50年間1日20本)アルコール(-)ドラッグ(-)
治療:夜間に、ニューモテロール(neumoterol) (微粉化ブデソナイド(budesonide)/微粉化フォルモテロル、フマレート、ディヒドレート(fermoterol fumarate dihydrate) 投与
【0104】
患者13の病状の進展
患者の基礎的ライン:POは88-93%。RFは25。CFは84。BP=157/95。カチカチした音(bibasilar crackles)が観測された。
*患者は、pH7の100mMのアルギニン溶液3mLの噴霧治療を受けた。POは92-93%を維持した。変化は観測されなかった。
*その後、患者は、pH8.5の100mMのアルギニン溶液3mLの噴霧治療を受けた。5分経過後、POは94%から98%に増加したが、噴霧治療終了時には93%に減少した。
*更にその後に、患者13は、pH8.5のイブプロフェン-アルギニン溶液3mLの噴霧治療を受けた。噴霧治療直後、POは93%から98-100%に増加し、RFは24。CFは85。BP=130/87。噴霧治療6時間後、POは97%。RFは21。CFは89。BP=134/88であった。噴霧治療8時間後、POは94%。RFは22。CFは82。BP=134/90であった。
*最後に、患者は、pH9のイブプロフェン-アルギニン溶液3mLの噴霧治療を受けた。噴霧治療直後、POは99%。RFは23。CFは83。BP=132/89であった。噴霧治療6時間後、POは96%。RFは22。CFは80。BP=133/89であった。
注意:この場合、実施例2のイブプロフェン-アルギニン溶液に添加するNa2CO3の量を増やすと、溶液の最終pHは9となった。
【0105】
実施例14: 高張アルカリ・イブプロフェン(AHI)溶液と本発明の製剤(イブ-アルギ溶液)をそれぞれ噴霧治療したことによるSARS-CoV-2の両側肺炎患者に酸素飽和に及ぼす効果。
3人の患者は、SARS-CoV-2による両側肺炎を罹患しているが、PCR(+)を治療した。最初に、患者らをAHI溶液で8時間毎に48時間にわたって噴霧治療した。そして、治療反応をパルス・オキシオ計の変化分で測定した。その後、患者らを異なる濃度のアルギニンを含むイブ-アルギ溶液で噴霧治療した。これらの溶液は、実施例2に記載の製剤に添加したアルギニン塩酸塩の量を変化させて調製した。再び噴霧治療の終了時に治療反応をパルス・オキシオ計の変化分で測定した。
【0106】
表3:患者14,15,16の臨床的進展
「イブ-アルギ溶液」とは「イブプロフェン-アルギニン溶液」の略称である。
患者番号 治療1 治療1前後のPO値 治療2 治療2前後のPO値
14 AHI溶液 88-90 イブ-アルギ溶液1 90-93
15 AHI溶液 90-91 イブ-アルギ溶液2 90-95
16 AHI溶液 88-91 イブ-アルギ溶液3 92-99
注:
AHI溶液:AHI溶液を8時間毎に48時間に渡って噴霧治療
イブ-アルギ溶液1:イブ-アルギ溶液(アルギニン25mM)を1回噴霧治療
イブ-アルギ溶液2:イブ-アルギ溶液(アルギニン50mM)を1回噴霧治療
イブ-アルギ溶液3:イブ-アルギ溶液(アルギニン100mM)を1回噴霧治療
【0107】
実施例15:マウス・マクロファージにおける超酸化物陰イオン生成のインビボ判定。
酸化ストレスの反応機構は、種々の肺疾患の発生および進展において重要な因子として広く認識されているが、本発明の製剤により阻害された。イブプロフェン-アルギニンの組み合わせの酸化ストレスに対する相乗効果を測定するため、その相乗効果の範囲を決定するため、LPSによって刺激された(即ち、本発明の製剤に曝された)生細胞における反応性酸素種の阻害作用が研究され、ROSの減少と本発明の製剤の治療効果との相関関係が得られた。
【0108】
選択された方法は、超酸化物陰イオン(O2-)との相互作用から発生したDHEの蛍光を測定して、LPSにより刺激されたマウス・マクロファージの(O2-)の生成に対する様々な製剤の阻害作用を決定する。この方法が選択された理由は、(O2-)濃度を決定するのに有用であり、細胞系への損傷を予測できるからである(非特許文献44)。
【0109】
方法と材料
20-30番の通路番号の市販の細胞株RAW264.7(マウス・マクロファージ)を使用した。96枚のウエルプレートに対し、1枚当たり6万個の細胞を播種し、DMEM/F12増殖培地(Gibco)と共に一晩培養した。この増殖培地は0.1%ウシ胎児血清(1nternegocios)と抗生物質/抗真菌混合物で補充された。翌朝、増殖培地を除去し、細胞をリン酸緩衝液(PBS)で洗浄し、37℃30分間培養した。この培養は、PBS中5μMの最終濃度で、ジヒドロエチジウム(dihydroethidium)蛍光色素(DHE,lnvitrogen)で行った。この培養後、細胞を洗浄し、試験すべき溶液で1時間培養した。試験すべき溶液は、イブプロフェン(10,50,100μM)、アルギニン(5-100μMSIGMA)およびそれらの組合せで、これら全てはPBS溶液中で調製した。PBS溶液中のイブプロフェンは、実施例1の製剤の希釈よって得られ、PBS溶液中のアルギニンは、アルギニン塩酸塩で調製した。アポシニン(Apocinin)(50μM;SIGMA)と、NAD(P)Hオキシダーゼの分離剤(uncoupling agent)、超酸化物陰イオン産生の阻害剤を、対照として含めた。
【0110】
この培養後、基礎蛍光を、フルオロスカン・アセント・ブレート・リーダー(Fluorodkan Ascent plate reader)Labsystems上で、λex=458nm、λem=538nmを使用して測定した。LPS(25μg/mL:SIGMA)を、各ウェルに直接添加し、非刺激の対照を残し、37℃で60分間培養した。次いで、プレートの蛍光を再記録したが、これは基底状態と同じフィルターを使用して行った。
結果の分析のために、各ウェルについての基礎蛍光に対応する値を各最終時間値から減算した。
統計分析をGraphPad Prism 6.0ソフトウエアを用いて行った。一方向ANOVAを実施し、続けてツケイの多重比較後試験(Tukey's multiple comparison)を実施した。データは、2つの独立した実験の平均(SEM)の平均±標準誤差を表す。
【0111】
実施例16: AHI溶液とアルギニン溶液がリポ多糖(LPS:LipoPolySaccharide)で刺激されたマクロファージにおける超酸化物陰イオンの生成に及ぼす阻害効果。
マウス・マクロファージをLPS(25μM/mL)で刺激し、アルギニン50μM単独で、又はPBS生理食塩水溶液中の異なる濃度(10.50.100μM)のアルカリ高張性イブブロフェンで治療した。細胞に、37℃で30分間ジヒドロエチジウム(DHE:DiHydroEthidium)を載せ、60分間の刺激後、標準化された蛍光を基礎読みで決定した。
図3から解るように、LPS(26μM/mL)で、マウス・マクロファージ内の超酸化物陰イオンの生成を刺激した。しかしこの効果は、イブプロフェン(10.50.100μM)単独で、又はアルギニン(50μM)単独では阻害できなかった。アポシニン(Apocynin)(50μM)を、NADPHオキシターゼの阻害剤即ちO2を生成する酵素として用いた。
【0112】
実施例17: AHI溶液とアルギニンがLPSで刺激されたマクロファージにおける超酸化物陰イオンの生成に及ぼす阻害効果。
マウス・マクロファージをLPS(25μM/mL)で刺激し、高張アルカリ・イブプロフェン10μM単独又はPBS生理食塩水溶液中の異なる濃度(5,10,20,50,65,85,100μM)のアルギニンで治療した。細胞に、37℃で30分間ジヒドロェチジウム(DHE)を適用し60分間の刺激後、標準化された蛍光を基礎読みで決定した。
図4から解るように、アルギニン/イブプロフェンのモル比は、1以上6.5以下が、優れた相乗効果を奏する。即ちLPS刺激された超酸化物陰イオンの濃度の増加を阻害する。実施例16,17が明示することは、本発明の製剤が、生細胞におけるROSの濃度を低減する新たな相乗効果を奏することである。しかし、このことが起きるのは、アルギニンが所定の濃度範囲のイブプロフェン分子と一緒に溶液内に存在する場合である。
【0113】
以上の説明において、htmlへの変換に起因して、化学式において下付の数字は標準の大きさで表示されていることがある。例えば、NA2CO3はNaCOを表す。他に、MMはmMを、MLはmLを、O2はOを表す。特に記載のない限り、装置又は手段の数は、単数か複数かを問わない。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】