(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】C3又はC4アルカンジオール、グリセロール、不揮発性植物油、ポリリシノレイン酸ポリグリセリル界面活性剤及び揮発性アルカンを含むシリコーンフリー逆エマルジョン
(51)【国際特許分類】
A61K 8/06 20060101AFI20241031BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20241031BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20241031BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20241031BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20241031BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20241031BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20241031BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/92
A61K8/31
A61K8/86
A61K8/34
A61K8/39
A61Q1/00
A61Q19/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533069
(86)(22)【出願日】2022-11-18
(85)【翻訳文提出日】2024-08-02
(86)【国際出願番号】 EP2022082414
(87)【国際公開番号】W WO2023104475
(87)【国際公開日】2023-06-15
(32)【優先日】2021-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ファブリス・シュプリンギンスフェルト
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレリー・ディク-ムートン
(72)【発明者】
【氏名】パスカル・アルノー
(72)【発明者】
【氏名】フロランス・ラロレ
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA071
4C083AA121
4C083AA122
4C083AB222
4C083AB231
4C083AB232
4C083AB241
4C083AB242
4C083AB321
4C083AB322
4C083AB332
4C083AB431
4C083AB432
4C083AB441
4C083AB442
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC101
4C083AC102
4C083AC111
4C083AC112
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC131
4C083AC172
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC662
4C083AD662
4C083BB04
4C083BB11
4C083BB14
4C083BB21
4C083BB23
4C083CC03
4C083CC11
4C083DD32
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE12
4C083FF05
(57)【要約】
本特許出願は、油中水型エマルジョンの形態のシリコーンフリー組成物であって、特に生理学的に許容される媒体中において、a)連続油性相であって、i)少なくとも1つの不揮発性植物油と;ii)少なくとも1つの揮発性アルカンとを含有する連続油性相と;b)含有する前記油性相中に分散された水性相と:c)少なくとも1つのポリリシノレイン酸ポリグリセリル界面活性剤と;d)少なくとも1つのC3又はC4アルカンジオールと;e)少なくともグリセロールとを含むシリコーンフリー組成物に関する。本発明は、ケラチン物質をコーティングする、より詳細には皮膚などのケラチン物質をメイクアップ及び/又はケアする方法において、上記で定義された組成物の、ケラチン物質への適用を含むことを特徴とする方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油中水型エマルジョンの形態のシリコーンフリー組成物であって、特に生理学的に許容される媒体中において、
a)連続油性相であって、
i)少なくとも1つの不揮発性植物油と;
ii)少なくとも1つの揮発性アルカンと
を含有する連続油性相と;
b)前記油性相中に分散された水性相と:
c)少なくとも1つのポリリシノレイン酸ポリグリセリル界面活性剤と;
d)少なくとも1つのC
3又はC
4アルカンジオールと;
e)少なくともグリセロールと
を含むシリコーンフリー組成物。
【請求項2】
前記組成物の総質量に対して5質量%~95質量%、特に10質量%~80質量%、特に15質量%~70質量%、より詳細には20質量%~65質量%で変化する含有量で油性相を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記不揮発性植物油は、マカダミア油、オリーブ油及びそれらの混合物から選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物の総質量に対して0.5質量%~50質量%、特に1質量%~25質量%の範囲、より詳細には1質量%~10質量%の範囲の不揮発性植物油を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記揮発性アルカンは、石油由来のC
8~C
16イソアルカンなどの分岐アルカンから選択され、特にイソドデカン、イソデカン又はイソヘキサデカン、より詳細にはイソドデカンから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記揮発性アルカンは、揮発性直鎖C
6~C
19アルカンから、特にn-ヘキサン(C
6)、n-ヘプタン(C
7)、n-オクタン(C
8)、n-ノナン(C
9)、n-デカン(C
10)、n-ウンデカン(C
11)、n-ドデカン(C
12)、n-トリデカン(C
13)、n-テトラデカン(C
14)及びそれらの混合物から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記揮発性直鎖アルカンは、INCI名:C9~12アルカンを有する揮発性直鎖C
9~C
12アルカンの混合物である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記揮発性直鎖アルカンは、n-ウンデカン(C
11)とn-トリデカン(C
13)との混合物である、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記揮発性アルカンは、前記組成物の総質量に対して0.5質量%~90質量%、特に1質量%~50質量%、より詳細には5質量%~40質量%の範囲の濃度で存在する、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記油性相は、少なくとも1つの追加の不揮発性炭化水素油を更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記1つ又は複数の追加の不揮発性炭化水素油は、前記組成物の総質量に対して50質量%以下、より詳細には1質量%~25質量%の範囲の濃度で存在する、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
不揮発性植物油の総量の、揮発性アルカンの総量に対する質量比は、1/40~1/1、好ましくは1/20~1/5で変化する、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
不揮発性植物油と不揮発性炭化水素油との総量の、揮発性アルカンの総量に対する質量比は、1/8~1/1、好ましくは1/4~1/1で変化する、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物の総質量に対して5質量%~80質量%、より詳細には20質量%~65質量%、更により好ましくは30質量%~55質量%で変化する含有量で水を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記グリセロールは、前記組成物の総質量に対して0.5質量%~15質量%、特に1質量%~10質量%、より詳細には3質量%~8質量%の範囲の濃度で存在する、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記ポリリシノレイン酸ポリグリセリル界面活性剤は、ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-6である、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物の総質量に対して2質量%~10質量%、特に3質量%~8質量%、より詳細には4質量%~7質量%のポリリシノレイン酸ポリグリセリル界面活性剤を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記C
3又はC
4アルカンジオールは、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール又は1,3-ブタンジオールから選択される、請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記C
3又はC
4アルカンジオールは、1,3-プロパンジオールである、請求項1~18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記1つ又は複数のC
3又はC
4アルカンジオールは、前記組成物の総質量に対して0.1質量%~10質量%、特に0.5質量%~8質量%、より詳細には1質量%~5質量%の範囲の濃度で存在する、請求項1~19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
アルカンジオールの総量の、グリセロールの総量に対する質量比は、1/8~1/1、好ましくは1/4~1/1で変化する、請求項1~20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
少なくとも1つの糖アルコールを追加的に含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
前記糖アルコールは、エリスリトール、ソルビトール、トレイトール、リビトール、アラビニトール、アリトール、ズルシトール、イジトール、アルトリトール、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、キシリトール及びそれらの混合物、より詳細にはソルビトールから選択される、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記組成物の総質量に対して1質量%~15質量%、更により優先的には2質量%~12質量%、更に一層より良好には4質量%~10質量%の糖アルコールを含有する、請求項22又は23に記載の組成物。
【請求項25】
飽和及び直鎖C
7~C
14カルボン酸とグリセロールとの少なくとも1つのモノエステルを追加的に含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
飽和及び直鎖C
7~C
14カルボン酸とグリセロールとの前記モノエステルは、
- ヘプタン酸(C
7)グリセリル;
- カプリル酸(C
8)グリセリル;
- カプリル酸(C
8)/カプリン酸(C
10)グリセリル;
- カプリン酸(C
10)グリセリル;
- ラウリン酸(C
12)グリセリル;
- ミリスチン酸(C
14)グリセリル;
- それらの混合物
から選択され、より詳細にはカプリル酸グリセリルである、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記組成物の総質量に対して0.05質量%~3質量%、更により優先的には0.1質量%~2質量%、更により良好には0.2質量%~1質量%の、飽和及び直鎖C
7~C
14カルボン酸とグリセロールとのモノエステルを含有する、請求項25又は26に記載の組成物。
【請求項28】
2~6つの炭素原子、とりわけ2~4つの炭素原子を含む、特にエタノール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの直鎖又は分岐モノアルコールを追加的に含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
モノアルコールの量は、前記組成物の総質量に対して2質量%~15質量%、好ましくは4質量%~10質量%で変化する、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
好ましくは、顔料、真珠光沢剤及びそれらの混合物;特に金属酸化物から選択される無機顔料、より詳細にはコーティングされているか又はされていない二酸化チタン、酸化鉄及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの粉末着色剤を追加的に含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
少なくとも1つの充填剤、好ましくは少なくとも1つの無機充填剤、より詳細には天然又は合成雲母、炭酸カルシウム及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの充填剤を追加的に含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
少なくとも1つの親水性ゲル化剤及び/又は少なくとも1つの親油性ゲル化剤を追加的に含み、前記ゲル化剤は、好ましくは、天然であるか又は天然由来のものである、請求項1~31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
変性粘土から選択される少なくとも1つの親油性ゲル化剤、より詳細にはINCI名:ジステアルジモニウムヘクトライトを有する、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムによって修飾されたヘクトライトを含む、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
ケラチン物質をコーティングする、より詳細には皮膚などのケラチン物質をメイクアップ及び/又はケアする方法において、請求項1~33のいずれか一項に記載の組成物の、前記ケラチン物質への適用を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケラチン物質、特に皮膚のケア及び/又はメイクアップの分野のために、逆エマルジョンの形態の新しい組成物であって、その技術的性能の品質及びこれらのケラチン物質、特に皮膚に適用されるとき、ユーザーに与える感覚的な知覚に関して極めて特に有利である新しい組成物を提供することを対象とする。
【背景技術】
【0002】
化粧用組成物、例えばファンデーションは、審美性に優れた色を皮膚に付与するためだけでなく、傷跡及び色素異常症を目立たなくすることを可能にすることにより、一様でない皮膚をより美しく見せ、毛穴及びシワ等の凹凸による難点を見え難くし、ニキビ及びニキビ跡を隠蔽するためによく用いられており、この点に関して追求されている主要な特性の1つは、カバー力である。
【0003】
化粧品分野では、逆エマルジョンとも呼ばれる油中水型エマルジョンは、その美容的特性、特に適用時のその快適さに関して、ファンデーション、日焼け止め製品又は保湿クリームの分野の消費者に特に高く評価されており、この快適さは、特に「ダイレクト」水中油型エマルジョンと比較して、つっぱり感、乾燥感及び/又はべとつき並びに/若しくは脂っぽい作用が存在しないこと又はその大幅な低減によって反映される。これらの同じ逆エマルジョンは、ダイレクトエマルジョンと比較して、大量の充填剤及び/又は顔料を含有すること並びに適用中に良好な均一性を得ることも可能にする。しかしながら、そのような組成物は、一般に、安定化が難しいという不利な点を示す。
【0004】
消費者は、皮膚耐性の向上又は環境保護の理由のため、その全部又は一部が天然成分又は天然由来の成分で形成された化粧品も一層探し求めている。
【0005】
「天然化合物」という用語は、大地若しくは土壌から又は植物若しくは動物から直接、適切な場合には1つ以上の物理的方法、例えば粉砕、精錬、蒸留、精製又は濾過などを介して得られる化合物を意味するものと理解される。
【0006】
「天然由来の化合物」という用語は、1つ以上の追加の化学的若しくは工業的処理が施され、この化合物に必須の品質に影響を及ぼさない変性を引き起こす天然化合物及び/又は変換を受けた若しくは受けていない天然成分を主に含む化合物を意味するものと理解される。天然化合物の基本的な特性に影響しない修飾をもたらす追加の化学的又は工業的処理の非限定的な例として、Ecocertなどの管理団体(生物学的及び生態的な化粧製品の参照システム(Reference system for biological and ecological cosmetic products)、2003年1月)によって許可されたもの又は(非特許文献1)など、当分野で認知されているハンドブックに定義されているものが挙げられ得る。
【0007】
化粧用組成物の配合における不揮発性植物油の使用は、古くから知られている。これらの油は、皮膚軟化性及び保湿性を有し、優れた柔らかさを皮膚に付与することを可能にする。
【0008】
しかしながら、不揮発性植物油は、その高い極性のため、エマルジョンの安定性を低下させ得る。その上、これらの油は、特にそれらが高含有量で存在するとき、その適用中及び適用後、それを含む組成物に過度の脂っぽさ及びべとつき性を与える場合がある。加えて、それらは、テカリ作用の原因となり得、特にファンデーションなどの皮膚のケア又はメイクアップに関連して所望の美容的特性に有害であることが判明する場合がある。
【0009】
上述の不利な点は、化粧用組成物が、外部脂肪層を含む逆エマルジョンである場合に特に顕著となり得る。
【0010】
これらの欠点を克服するために、これらの不揮発性植物油をシリコーン油、特に揮発性のシリコーン油と組み合わせて、それらの脂っぽさ及びべとつき性を低減させ、従って化粧用組成物の適用を有利にすることが既に提案されている。しかしながら、この解決策は、「グリーンケミストリー」に由来する化粧品、すなわち主に天然の化合物又は天然由来の化合物で構成されている化粧品を探し求めている消費者の期待にそぐわない。
【0011】
明らかな理由から、従来のエマルジョンの開発において、ユーザーのこの期待を考慮に入れることは、特にこれらの「天然」化合物と従来保持されていた化合物との間の不適合性に関して困難を引き起こし、これは、エマルジョンの安定性に有害である。
【0012】
従って、特許(特許文献1)に記載されているように、天然由来の好適な部類の界面活性剤を構成するポリリシノレイン酸ポリグリセリル界面活性剤の使用は、それがポリグリセロールと植物由来の酸とのエステル化反応から生じる限り、それを含む組成物の安定性、特に合体の問題によって反映される安定性に悪影響を及ぼし得る。
【0013】
この不利な点を克服するために、これらのエマルジョンの水性相に高レベルのポリオールを導入して、組成物の安定性を増加させることが提案されている。(特許文献2)及び(特許文献3)は、ポリリシノレイン酸ポリグリセリルを含むエマルジョン中でのポリオールの使用を記載している。
【0014】
しかしながら、この解決策は、適用時又はメイクアップ後にべたつき感を引き起こす場合があり、従って適用時の快適さ、特に滑りよさなどの適用時の容易さに関して必ずしも満足できるものではない。
【0015】
特許(特許文献4)は、Cognisの特許出願(特許文献5)に記載されるものなどの少なくとも1つの天然由来の揮発性直鎖アルカンと、少なくとも1つの炭酸カルシウムとを含む逆エマルジョンを提案している。
【0016】
特許(特許文献6)も、Cognisの特許出願(特許文献5)に記載されるものなどの少なくとも1つの揮発性直鎖アルカンと、少なくとも1つのポリリシノレイン酸ポリグリセリルと、少なくとも1つのポリオール、より詳細にはグリセロールと組み合わせたソルビトールから選択されるものとを含む逆エマルジョンを提案している。
【0017】
しかしながら、これらの組成物は、安定性の観点から、感覚特性の観点から例えばべとつき作用がないこと、良好な快適性がないこと、例えば適用の容易さ、良好な滑りなどがないことで完全に満足できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】独国特許第4409569号明細書
【特許文献2】米国特許第6013255号明細書
【特許文献3】国際公開第2008/055692号パンフレット
【特許文献4】仏国特許第2933868号明細書
【特許文献5】国際公開第2007/068371号パンフレット
【特許文献6】仏国特許第2936154号明細書
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】“Cosmetics and Toiletries Magazine”,2005,Vol.120,9:10
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
天然化合物又は天然由来の化合物を含む油中水型エマルジョンの形態において、上述の不利な点を伴わずに安定であり、良好な感覚メイクアップ特性を示し、適用時に良好な快適さを示す、ケラチン物質、特に皮膚をケア及び/又はメイクアップするための新規な化粧用組成物を見出す必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本出願企業は、その調査研究中、油中水型エマルジョンの形態のシリコーンフリー組成物を使用することにより、この目的が達成されることを予期せず発見し、その油中水型エマルジョンは、特に生理学的に許容される媒体中において、
a)連続油性相であって、
i)少なくとも1つの不揮発性植物油と;
ii)少なくとも1つの揮発性アルカンと
を含有する連続油性相と;
b)前記油性相中に分散された水性相と;
c)少なくとも1つのポリリシノレイン酸ポリグリセリル界面活性剤と;
d)少なくとも1つのC3又はC4アルカンジオールと;
e)少なくともグリセロールと
を含む。
【0022】
この発見が本発明の基礎となる。
【0023】
従って、その態様の1つによれば、本発明は、油中水型エマルジョンの形態のシリコーンフリー組成物であって、特に生理学的に許容される媒体中において、
a)連続油性相であって、
i)少なくとも1つの不揮発性植物油と;
ii)少なくとも1つの揮発性アルカンと
を含有する連続油性相と;
b)前記油性相中に分散された水性相と;
c)少なくとも1つのポリリシノレイン酸ポリグリセリル界面活性剤と;
d)少なくとも1つのC3又はC4アルカンジオールと;
e)少なくともグリセロールと
を含むシリコーンフリー組成物に関する。
【0024】
本発明は、ケラチン物質をコーティングする、より詳細には皮膚などのケラチン物質をメイクアップ及び/又はケアする方法において、上記で定義された組成物の、ケラチン物質への適用を含むことを特徴とする方法にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
定義
本発明に関連する「ケラチン物質」という用語は、特に、皮膚(身体、顔、頬、目の周り)、口唇、睫毛及び眉を意味するものと理解される。より詳細には、「ケラチン物質」という用語は、皮膚を意味するものと理解される。
【0026】
「生理学的に許容される」という用語は、好感を覚える色、匂い及び感触を呈し、消費者にこの組成物の使用を敬遠させかねない許容できない不快感(ヒリつき又はつっぱり感)を生じさせない、皮膚及び/又はその外見的な身体成長と適合性を有することを意味するものと理解される。
【0027】
本発明の意味の範囲内において、「油中水型エマルジョン」という用語は、逆エマルジョンとも称され、肉眼で巨視的に均質な混合物に見えるような、水性相が液滴形態でその中に分散している連続油性相から構成される任意の組成物を表すものと理解される。
【0028】
「シリコーン」という用語は、少なくとも1つのケイ素原子、特に少なくとも1つのSi-O基を含む任意の化合物を意味するものと理解される。
【0029】
「シリコーンフリー組成物」という用語は、組成物の総質量に対して1.0質量%未満のシリコーン化合物、実際には更に0.5質量%未満、実際には更に0.1質量%未満のシリコーン化合物を含有する任意の組成物であって、実際にはシリコーン化合物を含まない任意の組成物を意味するものと理解される。
【0030】
油性相
本発明による化粧用組成物は、少なくとも1つの不揮発性植物油と、少なくとも1つの揮発性アルカンとを含有する油性相を含む。
【0031】
「油」という用語は、周囲温度(20~25℃)及び大気圧で液体形態の任意の脂肪性物質を意味するものと理解される。
【0032】
本発明の組成物は、組成物の総質量に対して5質量%~95質量%、特に10質量%~80質量%、特に15質量%~70質量%、より詳細には20質量%~65質量%で変化する含有量の油性相を含み得る。
【0033】
a)植物油
本発明の組成物の油性相は、少なくとも1つの不揮発性植物油を含む。
【0034】
「不揮発性油」という用語は、周囲温度及び大気圧で少なくとも数時間、ケラチン物質上に留まり、且つ特に10-3mmHg(0.13Pa)未満の蒸気圧を有する油を意味するものと理解される。
【0035】
植物油は、植物製品から単一の冷間圧縮(バージンオイル)又は熱間圧縮及び精製(精製油)のいずれかによって抽出することができる。
【0036】
本発明の不揮発性植物油は、化学修飾を受けずに植物から直接抽出された油である。
【0037】
本発明に好適な不揮発性油として、アロエ油、スイートアーモンド油、杏仁油、ピーナッツ油、アルガン油、アボカド油、キャンドルナッツ油、バオバブ油、ボラージ油、ブロッコリー油、カレンジュラ油、カメリナ油、ニンジン油、ベニバナ油、麻油、菜種油、綿実油、ココナッツ油、キュウリ種子油、コムギ麦芽油、ホホバ油、シアオイル、アルファルファ油、百合油、マカダミア油、コーン油、メドウフォーム油、セントジョーンズワートオイル、ミレット油、モノイ油、ヘーゼルナッツ油、アプリコットカーネル油、クルミ油、オリーブ油、月見草油、大麦油、パーム油、パッションフラワー油、ケシ油、カシス種子油、キウイ種子油、グレープシード油、ピスタチオ油、赤栗カボチャ油、カボチャ油、キヌア油、ムスクローズ油、ゴマ油、ライムギ油、大豆油、ヒマワリ油、ヒマシ油、スイカ油及びそれらの混合物が挙げられ得る。
【0038】
一実施形態によれば、本発明に好適な不揮発性植物油は、特にマカダミア油、オリーブ油及びそれらの混合物から選択され得る。
【0039】
本発明による組成物は、組成物の総質量に対して0.5質量%~50質量%の不揮発性植物油を含み得、特に組成物の総質量に対して1質量%~25質量%の植物油、より詳細には1質量%~10質量%の不揮発性植物油を含み得る。
【0040】
b)揮発性アルカン
本発明の組成物の油性相は、少なくとも1つの揮発性アルカンを含む。
【0041】
「アルカン」という用語は、炭素原子及び水素原子のみから構成された飽和の直鎖若しくは分岐炭化水素鎖を含む任意の化合物を意味するものと理解される。
【0042】
本発明に好適な「揮発性アルカン」という用語は、周囲温度(25℃)及び大気圧(760mmHg、すなわち101325Pa)において、皮膚と接触して1時間未満に蒸発し得、周囲温度で液体であり、特に蒸発率が周囲温度(25℃)及び大気圧(760mmHg)で0.01~15mg/cm2/分に及ぶ美容用のアルカンを意味するものと理解される。
【0043】
本発明の組成物の油性相で使用することができる揮発性アルカンの例として、石油起源のC8~C16イソアルカン(イソパラフィンとも呼ばれる)などの分岐アルカン、例えばイソドデカン(2,2,4,4,6-ペンタメチルヘプタンとも呼ばれる)、イソデカン、イソヘキサデカン及び例えばIsopars(登録商標)又はPermethyls(登録商標)の商品名で販売されている油が挙げられ得る。より詳細には、イソドデカンが使用されるであろう。
【0044】
本発明の組成物の油性相で使用することができる揮発性アルカンの例として、揮発性直鎖C6~C19アルカンが挙げられ得る。
【0045】
本発明に好適な直鎖アルカンの例として、Cognisの特許出願の国際公開第2007/068371号パンフレット及び国際公開第2008/155059号パンフレットに記載されるアルカン(少なくとも1つの炭素が異なるアルカンの混合物)が挙げられ得る。これらのアルカンは、脂肪アルコールから得られ、脂肪アルコール自体はコプラ油又パーム油から得られる。
【0046】
本発明に好適な直鎖アルカンの例として、n-ヘキサン(C6)、n-ヘプタン(C7)、n-オクタン(C8)、n-ノナン(C9)、n-デカン(C10)、n-ウンデカン(C11)、n-ドデカン(C12)、n-トリデカン(C13)、n-テトラデカン(C14)及びそれらの混合物が挙げられ得る。
【0047】
特に、それぞれ製品番号Parafol 12-97(登録商標)及びParafol 14-97(登録商標)でSasolによって販売されるn-ドデカン(C12)及びn-テトラデカン(C14)並びにそれらの混合物が挙げられ得る。
【0048】
一実施形態によれば、n-ドデカンとn-テトラデカンとの混合物が使用される。特に、製品番号Vegelight 1214(著作権)でBiosynthisによって販売される、85/15の質量比のドデカン/テトラデカン混合物を使用することができる。
【0049】
更に別の実施形態によれば、Vegelight Silk(著作権)でBiosynthisによって販売されている製品などのINCI名:C9-12アルカンを有する揮発性直鎖C9~C12アルカンの混合物が使用される。
【0050】
より詳細には、Cognisからの出願の国際公開第2008/155059号パンフレットの実施例1及び2で得られるものなど、並びにBASFによって商品名Cetiol Ultimate(登録商標)で販売されるものなどの、n-ウンデカン(C11)とn-トリデカン(C13)との混合物が使用される。
【0051】
好ましくは、揮発性アルカンは、組成物の総質量に対して0.5質量%~90質量%、特に1質量%~50質量%、より詳細には5質量%~40質量%の範囲の濃度で存在する。
【0052】
c)追加の不揮発性油
特定の実施形態によれば、油性相は、少なくとも1つの追加の不揮発性炭化水素油(上記の不揮発性植物油と異なる)を含み得る。
【0053】
「炭化水素油」という用語は、主に炭素及び水素原子並びに恐らくはヒドロキシル、エステル、エーテル又はカルボキシル官能基から選択される1つ以上の官能基を含有する油を意味するものと理解される。
【0054】
「不揮発性油」という用語は、周囲温度及び大気圧で少なくとも数時間、ケラチン物質上に留まり、且つ特に10-3mmHg(0.13Pa)未満の蒸気圧を有する油を意味するものと理解される。
【0055】
本発明に従って使用することができる追加の不揮発性炭化水素油の中では、オレイン酸フィトステリル、イソステアリン酸フィトステリル及びラウロイルグルタミン酸フィトステリル/オクチルドデシル(Ajinomoto、Eldew PS203);脂肪エステル、例えばセバシン酸ジイソプロピル(Stearineries Dubois、DUB DIS)、ミリスチン酸イソプロピル(Stearineries Dubois、DUB DIS)、パルミチン酸イソプロピル(Oleon、Radia 7732);脂肪酸及びグリセロールのエステルからなるトリグリセリド(特に、この脂肪酸は、C4~C36、特にC18~C36で変化する鎖長を有し得る)を挙げることができ、これらの油は、飽和若しくは不飽和及び直鎖若しくは分岐であり得、これらの油は、特にヘプタン酸トリグリセリド若しくはオクタン酸トリグリセリドであるか、又はカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドであることができ、例えばStearineries Duboisにより販売されるもの又はDynamit NobelによってMiglyol 810(登録商標)、812(登録商標)及び818(登録商標)の名称で販売されるものである。
【0056】
Aprinovaによって商品名Neossance Squalane(登録商標)で販売される製品などのスクワランも挙げられ得る。
【0057】
ジカプリリルエーテルなどの10~40個の炭素元素を有するジアルキルエーテル油、例えばEcogreen Oleochemicalsによって商品名Rofetan OE/MB(登録商標)で販売される製品又はBASFによって商品名Cetiol OE/MB(登録商標)で販売される製品も挙げられ得る。
【0058】
本発明の特定の形態によれば、スクワランとジカプリリルエーテルとの混合物が使用される。
【0059】
好ましくは、1つ又は複数の追加の不揮発性炭化水素油は、組成物の総質量に対して50質量%以下、より詳細には1質量%~25質量%の濃度で存在する。
【0060】
特定の実施形態によれば、植物油の総量の、揮発性アルカンの総量に対する質量比は、1/40~1/1、好ましくは1/20~1/5で変化する。
【0061】
特定の実施形態によれば、不揮発性植物油の総量と追加の不揮発性炭化水素油の総量との、揮発性アルカンの総量に対する質量比は、1/8~1/1、好ましくは1/4~1/1で変化する。
【0062】
水性相
水性相は、水と、任意選択的に水溶性又は水混和性の成分、例えば水溶性溶媒とを含む。
【0063】
本発明に適切な水は、コーンフラワーウォーターなどのフローラルウォーター及び/又はヴィッテル水、ルーカス水又はラ・ロッシュ・ポゼ水及び/又は温泉水などのミネラル水であり得る。
【0064】
本発明の組成物は、組成物の総質量に対して5質量%~80質量%、より詳細には20質量%~65質量%、より好ましくは更に30質量%~55質量%で変化する含有量で水を含み得る。
【0065】
本発明による組成物は、少なくともグリセロールを含有する。グリセロールは、組成物の総質量に対して0.5質量%~15質量%、特に1質量%~10質量%、より詳細には3質量%~8質量%の範囲の濃度で存在する。
【0066】
ポリリシノレイン酸ポリグリセリル界面活性剤
本発明による組成物は、少なくとも1つのポリリシノレイン酸ポリグリセリル界面活性剤を含む。
【0067】
本発明の意味では、「界面活性剤」という用語は、両親媒性化合物、すなわち異なる極性の2つの部分を呈する化合物を意味するものと理解される。一般に、一方は、親油性(油性相中に溶解又は分散可能)である。他方は、親水性(水中に溶解又は分散可能)である。乳化界面活性剤は、分子における親水性部分と脂溶性部分との比であるそれらのHLB(親水性脂溶性バランス)の値によって特徴付けられる。HLBという用語は、当業者にとって周知であり、例えば「The HLB System.A Time-Saving Guide to Emulsifier Selection」(ICI Americas Inc;1984により公開)において記載されている。油中水型エマルジョンの調製で使用される乳化界面活性剤について、そのHLB値は、一般に、8以下、より詳細には3~8の範囲である。HLBの値は、Griffin法又はDavies法によって決定され得る。
【0068】
本発明の意味内において、「ポリリシノレイン酸ポリグリセリル」という用語は、1つ以上のポリグリセロールと少なくとも1つのポリリシノレイン酸とのエステル化から得られるエステルを意味する。
【0069】
本発明に好適なポリグリセロールは、以下の一般式(I):
[化学式1]
【化1】
(式中、nは、1~11の整数、特に1~7の整数を表す)
の化合物から選択され得る。
【0070】
本明細書に好適なポリリシノレイン酸は、以下の一般式(II):
[化学式2]
【化2】
(式中、mは、0~10の整数、特に1~8の整数、より詳細には1~5の整数を表す)
の化合物から選択され得る。
【0071】
本発明に好適なポリリシノレイン酸ポリグリセリル界面活性剤は、全エステル又は部分エステルであり得る。
【0072】
好ましくは、本明細書に好適なポリリシノレイン酸ポリグリセリル界面活性剤は、部分エステルである。
【0073】
本発明の意味内において、「部分エステル」という用語は、ポリグリセロール単位の全ての-OH基がポリリシノレイン酸によってエステル化されているわけではない化合物、換言すれば、ポリグリセロール鎖上の少なくとも1つの遊離-OH基を含むポリリシノレイン酸ポリグリセリル化合物を意味するものと理解される。
【0074】
例として、本発明に好適なポリリシノレイン酸ポリグリセリルは、以下の一般式(III):
[化学式3]
【化3】
(式中、R及びR’は、区別なく、水素原子又はポリリシノレエート鎖から選択される基を表すが、但し、これらのR又はR’基の少なくとも1つは、ポリリシノレエート鎖であることを条件とする)
の化合物であり得る。
【0075】
好ましくは、ポリグリセロール鎖のR又はR’基の少なくとも1つは、水素原子である。
【0076】
一実施形態によれば、本発明に好適なポリリシノレイン酸ポリグリセリル界面活性剤は、3~8のHLB(親水性親油性バランス)を示すことができる。
【0077】
特に、本発明に好適な酸ポリグリセリル界面活性剤ポリリシノレインの例として、ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-3、特にAkoline PGPR(登録商標)の名称でKarlshamnsによって販売されるもの、又はDUB PGPRの名称でStearinerie Dubois Filsによって販売されるもの、又はDermofeel(登録商標)の名称でDr.Straetmansによって販売されるもの、又はCrester PR(登録商標)の名称でCrodaによって販売されるもの、又はImwitor 600(登録商標)の名称でSasolによって販売されるもの;Sunsoft No.818R(登録商標)の名称でTaiyo Kagaku Co.Ltdによって販売されるポリリシノレイン酸ポリグリセリル-5;Hexaglyn PR-15(登録商標)の名称でNikko Chemicals Co.Ltdによって販売されるか、又はS-Face CR-1001(登録商標)の名称でSakamoto Yakuhin Kogyo Co.Ltdによって販売されるポリリシノレイン酸ポリグリセリル-6;Decaglyn PR-20(登録商標)の名称でNikko Chemicals Co.Ltdによって販売されるポリリシノレイン酸ポリグリセリル-10が挙げられ得る。
【0078】
一実施形態によれば、これらの化合物の混合物を利用することができる。
【0079】
より詳細には、本発明に好適なポリリシノレイン酸ポリグリセリル界面活性剤は、ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-6である。
【0080】
本発明の組成物は、好ましくは、組成物の総質量に対して2質量%~10質量%のポリリシノレイン酸ポリグリセリル界面活性剤、特に3質量%~8質量%、より詳細には4質量%~7質量%のポリリシノレイン酸ポリグリセリル界面活性剤を含む。
【0081】
C3又はC4アルカンジオール
本発明による組成物は、少なくとも1つのC3又はC4アルカンジオールを含む。
【0082】
「C3又はC4アルカンジオール」という用語は、水素原子、3又は4つの炭素原子及び異なる位置での2つのヒドロキシル基のみを含む炭化水素鎖を含む任意の飽和の直鎖若しくは分岐アルカンを意味するものと理解される。
【0083】
それらは、2-メチル-1,3-プロパンジオール(INCI名メチルプロパンジオール)、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール(INCI名プロパンジオール)、1,2-ブタンジオール(若しくは1,2-ブチレングリコール)、1,4-ブタンジオール(若しくはテトラメチレングリコール)、2,3-ブタンジオール(若しくは2,3-ブチレングリコール)又は1,3-ブタンジオール(INCI名ブチレングリコール)から選択され得る。
【0084】
より詳細には、1,3-プロパンジオール(INCI名プロパンジオール)が使用される。
【0085】
本発明の組成物は、好ましくは、組成物の総質量に対して0.1質量%~10質量%のC3又はC4アルカンジオール、特に0.5質量%~8質量%、より詳細には1質量%~5質量%のC3又はC4アルカンジオールを含む。
【0086】
特定の実施形態によれば、アルカンジオールの総量の、グリセロールの総量に対する質量比は、1/8~1/1、好ましくは1/4~1/1で変化する。
【0087】
糖アルコール
本発明の特定の実施形態によれば、本発明による組成物は、少なくとも1つの糖アルコールを追加的に含む。
【0088】
「糖アルコール」という用語は、ヒドロキシル官能基のみを含む糖を意味する。これらの糖アルコールは、ケトン又はアルデヒド官能基を含むケトース及びアルドースと異なる。糖アルコールは、百科事典Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,John Wiley and Sons,“Sugar Alcohols”article,2005に詳細に記載されている。
【0089】
好ましくは、本発明による組成物で使用することができる糖アルコールは、一般式:
[化学式4]
HO-CH2-(CHOH)n-CH2-OH
(式中、nは、2~5の範囲の整数である)
に対応する。
【0090】
優先的には、糖アルコールは、エリスリトール、ソルビトール、トレイトール、リビトール、アラビニトール、アリトール、ズルシトール、イジトール、アルトリトール、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、キシリトール及びこれらの化合物の混合物から選択される。
【0091】
特に好ましくは、糖アルコールは、ソルビトール(INCI名:ソルビトール又は加水分解水添デンプン)である。
【0092】
本発明による組成物は、好ましくは、組成物の総質量に対して1質量%~15質量%の糖アルコール、更により優先的には2質量%~12質量%、更に一層より良好には4質量%~10質量%の糖アルコールを含有する。
【0093】
飽和及び直鎖C7~C14カルボン酸とグリセロールとのモノエステル
本発明の特定の実施形態によれば、本発明による組成物は、飽和及び直鎖C7~C14カルボン酸とグリセロールとの少なくとも1つのモノエステルを追加的に含む。
【0094】
本発明の組成物で使用することができる飽和及び直鎖C7~C14カルボン酸とグリセロールとのモノエステルの中では、
- 商品名Lexgard Natural GH70(登録商標)(Inolex Inc.)を有する製品などのヘプタン酸(C7)グリセリル;
- 商品名AECカプリル酸グリセリル(登録商標)(A&E Connock Perfumery&Cosmetics);Capmul 708G(著作権)(Abitec Corporation);Cremercoor GC 8(登録商標)(IOI Oleo GmbH);Dermosoft GMCY(登録商標)(Dr.Straetmans GmbH);DUB 8G(登録商標)(Stearinerie Dubois Fils);Imwitor 308(登録商標)及びImwitor 988(登録商標)(IOI Oleo GmbH);Lexgard GMCY MB(登録商標)(Inolex Inc.);Oristar GCC(Orient Stars LLC);Sunsoft 707(登録商標)及びSunsoft 700 P-2(登録商標)(Taiyo Kagaku Company Ltd.);104528 Symlite G8(登録商標)(Symrise)を有する製品などのカプリル酸(C8)グリセリル;
- 商品名AECカプリル酸/カプリン酸グリセリル(A&E Connock Perfumery&Cosmetics Ltd);Cremercoor GC810(IOI Oleo GmbH);Dub 810 G(Stearinerie Dubois Fils)を有する製品などのカプリル酸(C8)/カプリン酸(C10)グリセリル;
- 商品名Capmul MCM C-10(登録商標)(Abitec Corporation);Dermosoft GMC(登録商標)(Dr.Straetmans GmbH);AEC Glyceryl Caprate(登録商標)(A&E Connock Perfumery&Cosmetics);Lexgard GMC(登録商標)(Inolex Inc.);Sunsoft 760(Taiyo Kagaku Company Ltd)を有する製品などのカプリン酸(C10)グリセリル;
- 商品名AECラウリン酸グリセリル(登録商標)(A&E Connock Perfumery&Cosmetics);Colonial Monolaurin(登録商標)(Colonial Chemical Inc.);DUB LG(登録商標)(Stearinerie Dubois Fils);Jeechem MLD(登録商標)(Jeen International Corporation);Lauricidin(Med-Chem Labs Inc.)Monomuls 90-L 12(BASF Corporation);Oristar GL(Orient Stars LLC);Pelemol GMLA(登録商標)(Phoenix Chemical Inc.);Protachem MLD(登録商標)(Protameen Chemicals);Sunsoft 750(登録商標)(Taiyo Kagaku Company Ltd);Ultrapure GML(登録商標)(Ultra Chemical,Inc.)を有する製品などのラウリン酸(C12)グリセリル;
- AECミリスチン酸グリセリル(登録商標)(A&E Connock Perfumery&Cosmetics);Cithrol GMM(Croda Europe);DUB MG(Stearinerie Dubois Fils);Nikkol MGM(Nikko Chemicals Co.Ltd);Oristar GMA(Orient Stars LLC);Sunsoft 8002(Taiyo Kagaku Company Ltd);を有する製品などのミリスチン酸(C14)グリセリル;並びに
- それらの混合物
が挙げられ得る。
【0095】
本発明の特定の実施形態によれば、カプリル酸グリセリルが使用される。
【0096】
本発明による組成物は、好ましくは、組成物の総質量に対して0.05質量%~3質量%の、飽和及び直鎖C7~C14カルボン酸とグリセロールとのモノエステル、更により優先的には0.1質量%~2質量%、更により良好には0.2質量%~1質量%の、飽和及び直鎖C7~C14カルボン酸とグリセロールとのモノエステルを含有する。
【0097】
モノアルコール
本発明の特定の形態によれば、本発明の組成物は、2~6つの炭素原子、特に2~4つの炭素原子を含む少なくとも1つの直鎖若しくは分岐モノアルコールを追加的に含む。
【0098】
本発明の組成物は、1つ以上のモノアルコールを含み得る。
【0099】
このモノアルコールは、例えば、式RaOH(式中、Raは、2~6つの炭素原子を含む線状又は分岐アルキル基を表す)で表すことができる。
【0100】
モノアルコールとして、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール及びそれらの混合物が挙げられ得る。
【0101】
一実施形態によれば、本発明の組成物は、イソプロパノール、エタノール及びそれらの混合物から選択されるモノアルコールを含む。
【0102】
有利な実施形態によれば、モノアルコールの量は、前記組成物の総質量に対して2質量%~15質量%、好ましくは4質量%~10質量%で変化する。
【0103】
粉末着色剤
本発明の特定の形態によれば、本発明による組成物は、少なくとも1つの粉末着色剤を追加的に含む。
【0104】
粉末着色剤は、顔料、真珠光沢剤及びそれらの混合物から選択することができる。
【0105】
「顔料」という用語は、水性媒体中で不溶であり、結果として得られる組成物及び/又は沈着物を着色及び/又は不透明化することが意図される、白色又は有色の無機又は有機粒子を意味すると理解される。これらの顔料は、白色又は有色であり、無機物質及び/又は有機物質であり得る。
【0106】
特定の実施形態によれば、本発明に従って使用される顔料は、無機顔料から選択される。
【0107】
「無機顔料」という用語は、Ullmann’s Encyclopediaの「Pigments,Inorganic」の章の定義を満たすいずれかの顔料を意味するものと理解される。本発明で使用する無機顔料の中で、酸化ジルコニウム又は酸化セリウム及びまた酸化亜鉛、酸化鉄(黒色、黄色若しくは赤色)又は酸化クロム、マンガンバイオレット、ウルトラマリンブルー、クロムハイドレート及びフェリックブルー、二酸化チタン又はアルミニウム粉末及び銅粉末などの金属粉末が挙られ得る。以下の無機顔料も使用され得る:Ta2O5、Ti3O5、Ti2O3、TiO、TiO2との混合物としてのZrO2、ZrO2、Nb2O5、CeO2又はZnSも使用され得る。
【0108】
本発明に関連して有用な顔料の径は、一般に、100nmを超え、10μmまで、好ましくは200nm~5μm、より好ましくは300nm~1μmの範囲であり得る。
【0109】
本発明の特定の形態によれば、顔料の径は、D[50]が100nmを超えることを特徴とし、10μmまで、好ましくは200nm~5μm、より好ましくは300nm~1μmの範囲であり得る。
【0110】
粒径は、MalvernからのMasterSizer 3000(登録商標)型の市販の粒径分析装置を使用した静的光散乱によって測定され、これにより、0.01μm~1000μmに及び得る広い範囲に渡る全ての粒子の粒径分布を決定することができる。データは、Mie散乱理論に基づいて処理される。この理論は、μm未満からマルチミクロン(multimicronic)までの範囲である径分布に対して最も適切であり;これにより、「有効な」粒径を決定することが可能となる。この理論は、特に、Van de Hulst,H.C.,Light Scattering by Small Particles,Chapters 9 and 10,Wiley,New York,1957による刊行物に記載されている。
【0111】
D[50]は、粒子の50体積%を示す最大サイズを表す。
【0112】
本発明の特定の形態によれば、無機顔料は親油性又は疎水性コーティングを含み、後者は、好ましくは本発明による組成物の脂肪相中に存在する。
【0113】
本発明の特定の実施形態によれば、顔料は、本発明に従い、シリコーン表面処理剤、金属石鹸、N-アシルアミノ酸又はその塩、レシチン及びその誘導体、イソプロピルトリイソステアリルチタネート、イソステアリルセバケート、天然の植物性又は動物性ワックス、極性合成ワックス、脂肪エステル、リン脂質及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの化合物によってコーティングされ得る。
【0114】
優先的な実施形態によれば、顔料は、8~22個の炭素原子を有するアシル基、例えば2-エチルヘキサノイル基、カプロイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基又はココイル基を含み得るN-アシルアミノ酸又はその塩の1つで本発明に従ってコーティングされ得る。アミノ酸は、例えば、リジン、グルタミン酸又はアラニンであり得る。これらの化合物の塩は、アルミニウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、ジルコニウム塩、亜鉛塩、ナトリウム塩又はカリウム塩であり得る。従って、特に好ましい実施形態によれば、顔料は、特にグルタミン酸誘導体及び/又はその塩の1つであり得る、より詳細にはステアロイルグルタメート、例えばステアロイルグルタミン酸アルミニウムでコーティングされ得る。ステアロイルグルタミン酸アルミニウムで処理された顔料の例として、二酸化チタン顔料並びにMiyoshi Kaseiによって商品名Nai(登録商標)で販売されている黒色、赤色及び黄色の酸化鉄顔料が挙げられる。
【0115】
好ましい実施形態によれば、顔料は、本発明に従い、イソプロピルトリイソステアリルチタネートでコーティングされ得る。トリイソステアリン酸イソプロピルチタン(ITT)で処理された顔料の例としては、Koboにより商品名BWBO-I2(登録商標)(酸化鉄CI77499及びトリイソステアリン酸イソプロピルチタン)、BWYO-I2(登録商標)(酸化鉄CI77492及びトリイソステアリン酸イソプロピルチタン)BWRO-I2(登録商標)(酸化鉄CI77491及びトリイソステアリン酸イソプロピルチタン)で販売されている顔料が挙げられる。
【0116】
本発明に従って使用され得る顔料は、有機顔料でもあり得る。
【0117】
「有機顔料」という用語は、Ullmann’s Encyclopaediaの「Pigments,Organic」の章の定義を満たす任意の顔料を意味すると理解される。有機顔料は、特に、金属錯体型のニトロソ、ニトロ、アゾ、キサンテン、キノリン、アントラキノン、フタロシアニン、イソインドリノン、イソインドリン、キナクリドン、ペリノン、ペリレン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、ジオキサジン、トリフェニルメタン又はキノフタロン化合物から選択され得る。
【0118】
有機顔料は、例えば、カーマイン、カーボンブラック、アニリンブラック、メラニン、アゾイエロー、キナクリドン、フタロシアニンブルー、ソルガムレッド、Colour IndexにおいてCI 42090、69800、69825、73000、74100及び74160の番号で分類されている青色顔料、Colour IndexにおいてCI 11680、11710、15985、19140、20040、21100、21108、47000及び47005の番号で分類されている黄色顔料、Colour IndexにおいてCI 61565、61570及び74260の記号で番号されている緑色顔料、Colour IndexにおいてCI 11725、15510、45370及び71105の番号で分類されている橙色顔料、Colour IndexにおいてCI 12085、12120、12370、12420、12490、14700、15525、15580、15620、15630、15800、15850、15865、15880、17200、26100、45380、45410、58000、73360、73915及び75470の番号で分類されている赤色顔料並びに仏国特許第2679771号明細書に記載されているようなインドール又はフェノール誘導体の酸化重合により得られる顔料から選択され得る。
【0119】
これらの顔料は、欧州特許第1184426号明細書に記載されているなどの複合顔料の形態でもあり得る。これらの複合顔料は、特に、有機顔料で少なくとも部分的にコーティングされる無機コアと、有機顔料をコアに固定させる少なくとも1つの結合剤とを含む粒子から構成され得る。
【0120】
顔料は、レーキでもあり得る。「レーキ」という用語は、不溶性粒子上に吸着された不溶化色素を意味し、こうして得られた集合体は、使用中に不溶性のままであると理解される。
【0121】
染料を吸着させる無機基材は、例えば、アルミナ、シリカ、ホウケイ酸カルシウムナトリウム又はホウケイ酸カルシウムアルミニウム及びアルミニウムである。
【0122】
有機染料の中で、コチニールカルミンが挙げられ得る。以下の名称で知られている製品も挙げられ得る:D&C Red 21(CI 45380)、D&C Orange 5(CI 45370)、D&C Red 27(CI 45410)、D&C Orange 10(CI 45425)、D&C Red 3(CI 45430)、D&C Red 4(CI 15510)、D&C Red 33(CI 17200)、D&C Yellow 5(CI 19140)、D&C Yellow 6(CI 15985)、D&C Green(CI 61570)、D&C Yellow 10(CI 77002)、D&C Green 3(CI 42053)又はD&C Blue 1(CI 42090)。
【0123】
レーキの例として、D&C Red 7(CI 15 850:1)の名称で知られる製品が挙げられ得る。
【0124】
好ましくは、本発明による組成物は、無機顔料タイプの粉末着色剤、特に金属酸化物、特にコーティングされているか又はされていない二酸化チタン又は酸化鉄及びそれらの混合物を含む。
【0125】
真珠光沢剤は、チタン又はオキシ塩化ビスマスで覆われた雲母などの白色真珠光沢顔料、酸化鉄を有する酸化チタンコーティング雲母、特にフェリックブルー若しくは酸化クロムを有する酸化チタンコーティング雲母又は上述のタイプの有機顔料を有する酸化チタンコーティング雲母などの着色真珠光沢顔料及びまたオキシ塩化ビスマスベースの真珠光沢顔料から選択することができる。
【0126】
好ましくは、前記着色剤は、組成物の全質量に対して0.5質量%~30質量%、好ましくは1質量%~25質量%、より詳細には3質量%~20質量%の範囲の含有量で組成物中に存在する。
【0127】
化粧用組成物
本発明は、生理学的に許容される媒体中において、上で定義されたような組成物を含む化粧用組成物にも関する。
【0128】
生理学的に許容される媒体は、通常、組成物を適用すべき支持体の性質に加えて、組成物を包装すべき外観にも適合される。
【0129】
本発明による組成物は、ケア製品及び/又はメイクアップ製品に慣用されている添加剤を追加的に含むことができ、これらは、下記などである:
- ビタミン、例えばビタミンA、E、C又はB3などの活性剤;
- サンスクリーン剤;
- 追加の着色剤;
- 充填剤;
- 親水性ゲル化剤;
- 親油性ゲル化剤;
- 芳香剤;
- 防腐剤;及び
- これらの混合物。
【0130】
本発明による組成物中に存在する添加剤の性質及び量を、本組成物に必要とされる美容特性が添加剤によって影響されないように調整することは、当業者にとって日常的な作業に過ぎない。
【0131】
追加の着色剤
本発明による組成物は、好ましくは、組成物の総質量に対して少なくとも0.01質量%の割合で少なくとも1つの追加の水溶性着色剤又は脂溶性着色剤を追加的に含み得る。
【0132】
明らかな理由から、この量は、所望の色効果の強度及び検討中の着色剤によって与えられる色の強度に関して大きく変化し易く、その調整は明らかに当業者の能力の範囲内である。
【0133】
本発明に好適である追加の着色剤は、脂溶性であり得る。
【0134】
本発明の意味内において、「脂溶性着色剤」という用語は、脂肪物質と混和性である油性相又は溶媒中で可溶性であり、色を付与することが可能である、任意の天然又は合成の、一般には有機の化合物を意味すると理解される。
【0135】
特に、本発明に好適な脂溶性染料として、例えば、DC Red 17、DC Red 21、DC Red 27、DC Green 6、DC Yellow 11、DC Violet 2、DC Orange 5、Sudan Red、カロテン(β-カロテン、リコペン)、キサントフィル(カプサンシン、カプソルビン、ルテイン)、パーム油、Sudan brown、キノリンイエロー、アナトー又はクルクミンなどの合成又は天然の脂溶性色染料が挙げられ得る。
【0136】
本発明に好適な追加の着色剤は、水溶性であり得る。
【0137】
本発明の意味内において、「水溶性着色剤」という用語は、水性相又は水混和性溶媒中で可溶性であり、色を付与することが可能な任意の天然又は合成の、一般には有機の化合物を意味すると理解される。
【0138】
特に、本発明に適切な水溶性色素として、合成又は天然の水溶性色素、例えばFDC Red 4、DC Red 6、DC Red 22、DC Red 28、DC Red 30、DC Red 33、DC Orange 4、DC Yellow 5、DC Yellow 6、DC Yellow 8、FDC Green 3、DC Green 5、FDC Blue 1、ベタニン(ビートルート)、カーマイン、銅クロロフィリン、メチレンブルー、アントシアニン(エノシアニン、ブラックキャロット、ハイビスカス又はニワトコ)、カラメル又はリボフラビンが挙げられ得る。
【0139】
充填剤
本発明による組成物は、特に、向上した安定性、耐摩耗性、カバー力及び/又はマットさの追加特性をそれに付与することを可能にする少なくとも1つの充填剤を含むことができる。
【0140】
「充填剤」という用語は、不溶性の形態で提供され、且つ組成物の媒体中に分散される、任意の形状の無色の又は白色の固体粒子を意味するものと理解されるべきである。無機又は有機性のこれらの粒子は、本組成物において粘り又は剛性及び/又はメイクアップにおいて軟らかさ及び均一性を付与することを可能にする。
【0141】
充填剤は、無機物質又は有機物質であり得る。
【0142】
好ましくは、それらは、天然充填剤又は天然由来の充填剤から選択されるであろう。
【0143】
本発明による組成物において使用される充填剤は、層状、球形、球状若しくは繊維状形態であり得るか、又はこれらの規定される形態間の中間の任意の他の形態であり得る。
【0144】
本発明による充填剤は、表面コーティングされていても又はされていなくてもよく、特に、これらは、シリコーン、アミノ酸、フッ素化誘導体又は組成物中における充填剤の分散及び相溶性を高める任意の他の物質で表面処理され得る。
【0145】
無機充填剤の例として、タルク、天然若しくは合成雲母、例えば合成フルオロフロゴパイト、シリカ、中空シリカ微小球、カオリン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素、ガラス若しくはセラミックマイクロカプセル又はシリカ及び二酸化チタンの複合材、例えばNippon Sheet Glassによって販売されているTSG(登録商標)シリーズが挙げられ得る。
【0146】
より優先的には、天然又は合成雲母、炭酸カルシウム及びそれらの混合物から選択される無機充填剤が使用されるであろう。
【0147】
有機充填剤の例として、微粒子化天然ワックス;8~22個の炭素原子、好ましくは12~18個の炭素原子を有する有機カルボン酸から誘導される金属石鹸、例えば、ステアリン酸亜鉛、マグネシウム若しくはリチウム、ラウリン酸亜鉛又はミリスチン酸マグネシウム;ラウロイルリジン;又はセルロース粉末、例えば、Cellulobeads range(登録商標)でDaitoによって販売されるものが挙げられ得る。
【0148】
好ましくは、充填剤は、組成物の総質量に対して0.5質量%~20質量%、好ましくは1質量%~15質量%、より詳細には3質量%~10質量%の範囲の含有量で組成物中に存在する。
【0149】
ゲル化剤
得ようとする組成物の粘度に応じて、親水性、すなわち水に可溶性又は分散性である1つ以上のゲル化剤及び/又は親油性、すなわち油に可溶性又は分散性である1つ以上のゲル化剤を本発明の組成物に組み込むことができる。
【0150】
好ましくは、親水性ゲル化剤及び/又は親油性ゲル化剤は、天然のゲル化剤又は天然由来のゲル化剤から選択されるであろう。
【0151】
特に、親水性ゲル化剤として、多糖バイオポリマー、例えばキサンタンガム、グアーガム、ローカストビーンガム、アカシアガム、スクレログルカン、キチン及びキトサン誘導体、カラギーナン、ジェラン、アルギネート、セルロース、例えば微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロース並びにそれらの混合物が挙げられ得る。
【0152】
例えば、親油性ゲル化剤としては、変性ケイ酸マグネシウム(RheoxからのBentone Gel VS38(登録商標))などの変性粘土、Rheoxによって「Bentone 38 CE(登録商標)」の名称で販売される製品などの塩化ジステアリルジメチルアンモニウムで修飾されたヘクトライト(CTFA名:ジステアルジモニウムヘクトライト)が挙げられ得る。
【0153】
特に好ましい実施形態によれば、油中水型エマルジョンの形態の本発明の組成物は、特に生理学的に許容される媒体中において、
a)連続油性相であって、少なくとも、
(i)ウンデカンとトリデカンとの混合物と;
(ii)マカダミア油及び/又はオリーブ油と
を含む連続油性相と;
b)前記油性相中に分散された水性相と;
c)ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-6と;
d)少なくとも1,3-プロパンジオールと;
e)少なくともグリセロールと
を含む。
【0154】
特定の実施形態によれば、前記組成物は、f)少なくとも1つの糖アルコール、より詳細にはソルビトールを追加的に含む。
【0155】
特定の実施形態によれば、前記組成物は、g)飽和及び直鎖C7~C14カルボン酸とグリセロールとの少なくとも1つのモノエステル、より詳細にはカプリル酸グリセリルを追加的に含む。
【0156】
特定の実施形態によれば、前記組成物は、h)酸化鉄、二酸化チタン及びそれらの混合物から選択されるか、又は少なくとも1つの親油性若しくは疎水性化合物でコーティングされた酸化鉄、少なくとも1つの親油性若しくは疎水性化合物でコーティングされた二酸化チタン及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの顔料を追加的に含む。
【0157】
特定の実施形態によれば、前記組成物は、i)少なくとも1つの無機充填剤、より詳細には天然又は合成雲母、炭酸カルシウム及びそれらの混合物から選択される無機充填剤を追加的に含む。
【0158】
特定の実施形態によれば、前記組成物は、j)天然若しくは天然由来のものである少なくとも1つの親水性ゲル化剤及び/又は天然若しくは天然由来のものである少なくとも1つの親油性ゲル化剤、より優先的には変性粘土から選択される少なくとも1つの親油性ゲル化剤、より詳細にはRheoxにより「Bentone 38 CE(登録商標)」の名称で販売される製品又はElementisからの製品「Bentone 38VCG」などの塩化ジステアリルジメチルアンモニウムで修飾されたヘクトライト(INCI名:ジステアルジモニウムヘクトライト)を追加的に含む。
【0159】
適用
一実施形態によれば、本発明の組成物は、有利には、皮膚、特に身体又は顔の皮膚、特に顔の皮膚をケアするための組成物の形態で提供することができる。
【0160】
別の実施形態によれば、本発明の組成物は、有利には、ケラチン物質、特に身体の又は顔の、特に顔の皮膚をメイクアップするための組成物の形態で提供することができる。
【0161】
従って、この実施形態の下位態様によれば、本発明の組成物は、有利には、メイクアップのためのベース組成物の形態で提供することができる。
【0162】
本発明の組成物は、有利には、ファンデーションの形態で提供することできる。
【0163】
この実施形態の別の下位態様によれば、本発明の組成物は、有利には、皮膚及び特に顔をメイクアップするための組成物の形態で提供することができる。従って、それは、アイシャドー又はフェイスパウダーであり得る。
【0164】
このような組成物は、特に、当業者の一般知識に従って調製される。
【0165】
安定性
本発明によれば、「安定なエマルジョン」という用語は、45℃で1ヶ月間巨視的及び微視的スケールで外観が変化しない均質且つ均一な(油中水型)エマルジョンを意味するものと理解される。エマルジョンは、相分離(水性相と脂肪相との分離)せず、油を放出しない。
【0166】
本発明の組成物の安定性は、以下のプロトコルの1つを用いて評価することができる。
【0167】
本発明による組成物の安定性は、例えば、水性相の小球のサイズの経時的な変化を監視することによって評価することができる。
【0168】
組成物の小球の平均サイズが経時的に増加する場合、これは不均一性の現象をもたらし、組成物の不安定性を反映している合体の問題に組成物がさらされていることを意味する。
【0169】
小球のサイズの変化のこの監視は、粒径測定によって実行することができる。
【0170】
本発明に好適なプロトコルの例として、以下のプロトコルが挙げられ得る。
【0171】
粒径の測定は、分析される組成物の25mlの試料で、それらの製造当日並びに45℃で14日間、30日間及び60日間保管した後に実行される。
【0172】
これらの測定は、光の回折によって粒径分布を決定することを可能にする、Malvern InstrumentsからのMasterSizer 2000(登録商標)粒子径分析装置を使用して行うことができる。次いで、粒径分析装置から、D[4,3]を意味し、μmで表される体積平均径の値を取得するが可能である。
【0173】
エマルジョンの安定性は、目視評価によっても評価することができる。例えば、組成物の安定性は、45℃で1ヶ月間保管した後、組成物の試料で起こる沈降の程度を観察することによって評価することができる。
【0174】
代わりに、組成物の安定性は、周囲温度(すなわち25℃)で14日間、30日間及び60日間の保管後、前記組成物の試料を10倍の倍率で観察することによって評価することができる。
【0175】
その微視的外観は、初期の外観に近いことを維持しなければならない。特に、エマルジョンの劣化(より粗いエマルジョンのバックグラウンド、多数の大きい液滴の存在によって反映される凝集、調製エッジの変性、結晶の存在)が観察されてはならない。
【0176】
代わりに、組成物の安定性は、当業者に既知の任意のプロトコルに従って評価することもできる。
【0177】
特許請求の範囲を含む本明細書全体を通して、「含む」という表現は、別段の指定がない限り、「少なくとも1つを含む」と同義であると理解すべきである。
【0178】
「...~...」及び「...~...の範囲」という表現は、特に明記されない限り、限界点が含まれることを意味するものと理解すべきである。
【0179】
以下に示す実施例及び図面により本発明をより詳細に例示する。別段の指定がない限り、示される量は、質量%で表されるものである。
【実施例】
【0180】
実施例1及び2(本発明)並びに(本発明の範囲外である)反例1、2、3、4
本発明による組成物1及び2並びに本発明の範囲外の反例1、2、3及び4を調製した。
【0181】
【0182】
【0183】
組成物の調製のためのプロトコル
本発明の組成物は、顔料を含有しない白色ベースを調製し、これに顔料調製物を第2の段階で添加することによって製造される。
【0184】
a)白色ベースの調製
油性相A1をメインビーカーに導入し、これを磁気加熱プレート(200回転/分で撹拌する磁気バー、60℃)上に配置した。
【0185】
次いで、ヘクトライトを、均質な混合物が得られるまで、15分間撹拌しながら導入した(A2)。
【0186】
混合物を、その後、周囲温度まで冷却し、撹拌しながら保持し、次いで相A3及びA4を5分間撹拌しながら添加する。最後に、相A5を、撹拌を続けながら導入する。
【0187】
水性相Bは、予め秤量したこの相の他の出発物質の混合物に、95℃に加熱した水を添加することによって調製した。
【0188】
エマルジョンを周囲温度で形成した:水性相を、撹拌速度を4500回転/分に徐々に増加させながら脂肪相に注ぎ、Mortiz型ホモジナイザーを使用して配合を行った。
【0189】
撹拌を10分間維持した。その後、アルコール(相C)を導入し、混合物を5分間撹拌し続けた。
【0190】
b)白色ベースの着色
白色ベースをビーカーに導入し、次いで相Dを撹拌しながらゆっくりと添加し、撹拌をボルテックス下で20分間維持した。Rayneri型ホモジナイザーを使用して配合を行った。
【0191】
プロトコル及び試験の結果
a)感覚的性質の評価のためのプロトコル
各組成物を25℃で24時間保管した。モデルの顔をクレンジングした後、試験される組成物0.1mlを片方の頬に適用し、円を描くようにマッサージすることにより、指で広げてファンデーションを最後まで配置させた。
【0192】
評価基準は、プレイタイム(組成物を皮膚に適用する時間)、次いで適用5分後の皮膚のべたつき感、脂っぽさ及び乾燥である。
【0193】
b)安定性の評価のためのプロトコル:
各組成物の安定性を、その巨視的外観の観察及びLeica DM2500型の顕微鏡を使用するその微視的特性の観察によって45℃で1ヶ月後に評価した。
【0194】
試験の結果を以下の表2及び3に示す。
【0195】
【0196】
試験の結果は、グリセロールとC3又はC4アルカンジオール(プロパンジオール又はブチレングリコール)と、ポリリシノレイン酸ポリグリセリル界面活性剤とを含む本発明の実施例1及び2が両方とも良好なプレイタイムを示し、適用後に滑らかな(脂っぽさがなく、乾燥していない)、且つべたつき感がない皮膚を提供し、
- 同一の組成であるが、C3又はC4アルカンジオールを含有しない反例1、
- 同一の組成であるが、グリセロールを含有しない反例2
と異なることを示している。
【0197】
【0198】
試験の結果は、グリセリンとC3又はC4アルカンジオール(プロパンジオール又はブチレングリコール)とポリリシノレイン酸ポリグリセリル界面活性剤とを含む本発明の実施例1及び2が、
- 同一の組成であるが、C3又はC4アルカンジオールを含有しない反例1、
- 同一の組成であるが、C5アルカンジオール(ペンチレングリコール)を含有する反例3、
- ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-6界面活性剤が、ジポリヒドロキシステアリン酸ポリグリセリル-2によって置き換えられている同一の組成の反例4
と異なり、安定であることを示している。
【国際調査報告】