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特表2024-541676液体コバルトレジネート組成物及びそれを調製する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】液体コバルトレジネート組成物及びそれを調製する方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 167/06 20060101AFI20241031BHJP
   C09D 7/48 20180101ALI20241031BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20241031BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20241031BHJP
   C07F 15/06 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C09D167/06
C09D7/48
C09D7/20
C09D7/63
C07F15/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533107
(86)(22)【出願日】2022-12-05
(85)【翻訳文提出日】2024-06-19
(86)【国際出願番号】 EP2022084425
(87)【国際公開番号】W WO2023099784
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】21212234.5
(32)【優先日】2021-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524208353
【氏名又は名称】ユミコア・スペシャルティ・マテリアルズ・ブルージュ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】カール・ヴェルケムスト
(72)【発明者】
【氏名】ロブ・デ・フレーセ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・デカト
【テーマコード(参考)】
4H050
4J038
【Fターム(参考)】
4H050AA01
4H050AA02
4H050AB99
4J038JA01
4J038JA02
4J038JA24
4J038JA49
4J038JA56
4J038JA64
4J038JB13
4J038JC22
4J038JC38
4J038KA04
4J038KA06
4J038NA02
(57)【要約】
本発明は、自己酸化性塗料に使用するための又は不飽和ポリエステル樹脂における促進剤として使用するための液体組成物としての、液体コバルトレジネート組成物であって、i.前記液体組成物の総質量に対して0.5~6.0質量%のコバルトの量のコバルトレジネートと、ii.前記液体組成物の総質量に対して0.1~2.5質量%の量の1種又は複数の酸化防止剤と、iii.前記液体組成物の総質量に対して25~90質量%の量の1種又は複数の有機溶媒とを含む、液体コバルトレジネート組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己酸化性塗料に使用するための又は不飽和ポリエステル樹脂における促進剤として使用するための、液体組成物であって、
i. 前記液体組成物の総質量に対して0.5~6.0質量%のコバルトの量のコバルトレジネートと、
ii. 前記液体組成物の総質量に対して0.1~2.5質量%の量の1種又は複数の酸化防止剤と、
iii. 前記液体組成物の総質量に対して25~90質量%の量の1種又は複数の有機溶媒と
を含む、液体組成物。
【請求項2】
前記コバルトレジネートが、単量体、二量体、及び/又は三量体のコバルトレジネートを含む、請求項1に記載の液体組成物。
【請求項3】
前記酸化防止剤が、立体障害フェノール及びホスファイトからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の液体組成物。
【請求項4】
前記有機溶媒が、C8~C16脂肪族炭化水素、C5~C10脂肪族モノアルコールエーテル、飽和及び不飽和C5~C30エステル、C5~C30脂肪族モノアルコールエステル、並びにC1~C6 N-アルキルピロリドンからなる群のうちの1種又は複数を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項5】
前記液体組成物の総質量に対して1.0~6.0質量%のコバルトを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項6】
過剰なロジン材料を、前記液体組成物中の1当量のコバルトに対して0.1~1.0当量の量で更に含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項7】
前記酸化防止剤がブチル化ヒドロキシトルエンであり、前記ブチル化ヒドロキシトルエンが、前記液体組成物の総質量に対して0.5~2.5質量%の量で含まれている、請求項1から6のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項8】
前記有機溶媒が、前記液体組成物の総質量に対して40~60質量%の量で含まれ、前記コバルトレジネートが、前記液体組成物の総質量に対して60~40質量%の量でそれぞれ含まれる、請求項1から7のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項9】
前記有機溶媒が、C10~C13アルカンを含む炭化水素溶媒である、請求項1から8のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項10】
前記有機溶媒が、C6~C10脂肪族モノアルコールエーテルである、請求項1から8のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項11】
前記有機溶媒が、C10~C13アルカンを含む炭化水素溶媒とC6~C10脂肪族モノアルコールエーテルとの混合物である、請求項1から10のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項12】
前記コバルトレジネートが水添コバルトレジネートである、請求項1から11のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項13】
前記液体組成物がアルデヒドを含まない、請求項1から12のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の液体組成物を調製するための方法であって、以下の工程:
i. ロジン材料を100℃超の温度で有機溶媒に溶解させる工程と、
ii. コバルト源を前記溶解ロジン材料に添加し、得られた混合物を110℃超の温度に加熱し、それによってコバルトレジネートを得る工程と、
iii. 室温に冷却し、それによって液体組成物を得る工程と
を含み、
1種又は複数の酸化防止剤が、前記液体組成物の総質量に対して0.1~2.5質量%の量で添加される、方法。
【請求項15】
前記有機溶媒が、C8~C16脂肪族炭化水素、C5~C10脂肪族モノアルコールエーテル、飽和及び不飽和C5~C30エステル、C5~C30脂肪族モノアルコールエステル、並びにC1~C6 N-アルキルピロリドンからなる群のうちの1種又は複数の溶媒を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
有機二量体、三量体、又は重合体酸化合物が、工程i.の後且つ工程iiの前に前記溶解ロジン材料を含む前記有機溶媒に添加され、ジ-、トリ-、又はポリアルコールが、工程ii.の後且つ工程iiiの前に前記有機溶媒中の前記コバルトレジネートに添加される、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
a)アルキド系樹脂又は不飽和ポリエステル樹脂と、b)硬化性液体組成物の総質量に対して0.1~2.5質量%の請求項1から13のいずれか一項に記載の液体組成物とを含む、硬化性液体組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コバルトレジネート(cobalt resinate)を含む液体組成物、及びそれを製造するための方法に関する。本発明は特に、アルキド系樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂用の乾燥剤として使用するのに適した液体コバルトレジネート組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
コバルトレジネートは、塗料及びワニスにおけるドライヤーとして20世紀前半まで使用されてきた。これらのレジネートは、アルカリ金属レジネートにおけるアルカリ金属とコバルトとの交換を含む沈殿法、又はコバルト化合物とロジン材料との直接反応を含む融合法のいずれかによって調製された。沈殿法には、二段階法であるという欠点がある。融合法には、一般に、せいぜい約3質量%のコバルトしかロジン材料に組み込むことができないという欠点がある。コバルトの量を多くすると、レジネートの「ブロッキング」として知られる現象が不確定に生じる。この目的のために、US2,294,287は、部分水添ロジン酸のコバルト塩を調製するための方法を記載している。該方法は、ロジン材料を不活性雰囲気下で240℃~330℃の温度に加熱し、酢酸コバルト及び酢酸カルシウムを添加することから本質的になる。そのようにして、9%~17%のコバルト含有率を有する、透明で均一な固体コバルトレジネートが得られた。US2,572,071は、増加した金属含有率、貝殻状破面、及び向上した炭化水素への溶解性、並びに熱及び空気に対するより良好な安定性を有する金属レジネートを調製するための方法について報告している。該レジネートは、アルデヒド又はアルデヒド形成剤を組成物に添加することによって調製される。高い金属含有率及び良好な安定性が達成されるが、金属アルデヒドは強烈な色によって特徴付けられることが多く、例えば塗料での使用に適さない。
【0003】
加工性の難しさ、並びに調製及び加工が容易である合成コバルト塩をベースとする代替品の開発によって、金属レジネートへの工業的関心は消失した。合成コバルト塩をベースとするドライヤー材料が出現したために、レジネート材料には殆ど関心が払われなかったが、ロジン材料が環境的に安全であり、バイオベースであり、再生可能であることから、このタイプの材料への新たな関心が引き起こされている。けれども、ロジン材料は未だに加工が極めて難しい。これらの材料は工業的用途の範囲外であったため、それらの加工性については殆ど知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】US2,294,287
【特許文献2】US2,572,071
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特に、例えば、現在のドライヤー組成物の要件及び標準、すなわち、色堅牢度、加工性、安定性等に匹敵するドライヤー組成物を提供することを可能にする、新規な液体組成物が必要とされている。更にまた、そのような組成物の他に負けない且つ簡単な調製及び配合を可能にする、新規な調製方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、請求項1に記載の液体コバルトレジネート組成物及びそれを調製する方法を提供することによって、上述の問題の少なくとも1つに対する解決策を提供する。
【0007】
本発明による組成物は、調製の容易さ、十分に低い粘度を可能にし、更にまた良好な安定性、具体的には良好な酸化安定性、アルキド樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂との良好な混和性、並びに乾燥剤としての良好な特性を示すことが見出された。
【発明を実施するための形態】
【0008】
別段の定義がない限り、技術用語及び科学用語を含む、本発明の開示に使用される全ての用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解される意味を有する。更なる指針として、用語の定義は、本発明の教示をより良く理解するために含まれる。
【0009】
本明細書で使用される場合、以下の用語は、以下の意味を有する。
【0010】
本明細書で使用される「ある(A)」、「ある(an)」、及び「その(the)」は、文脈が明らかに他のことを示さない限り、単数形と複数形の両方の指示対象を指す。例として、「ある区画」は、1つ又は1より多い区画を指す。
【0011】
本明細書で使用される「約」は、パラメータ、量、時間的な持続期間(temporal duration)等の測定可能な値を指し、指定された値から+/-20%以下、好ましくは+/-10%以下、より好ましくは+/-5%以下、更により好ましくは+/-1%以下、より一層好ましくは+/-0.1%以下の変動を、開示された発明においてそのような値が行うのに適正である限りにおいて包含することを意味する。しかし、修飾語「約」が指す値は、それ自体も具体的に開示されることを理解されたい。
【0012】
本明細書で使用される「含む(comprise)」、「含むこと(comprising)」、及び「含む(comprises)」、及び「からなる(comprised of)」は、「含む(include)」、「含むこと(including)」、「含む(includes)」、又は「含有する(contain)」、「含有すること(containing)」、「含有する(contains)」と同義であり、その後に続くもの(例えば、成分)の存在を指定する包括的又はオープンエンドの用語であり、当技術分野で公知であるか又はそこに開示されている、追加の、列挙されていない成分、特徴、要素、メンバー、工程の存在を除外又は排除するものではない。
【0013】
端点による数値範囲の列挙は、その範囲内に包含される全ての数及び端数、並びに列挙される端点を含む。全ての百分率は、別段の定義がない限り又はその使用から及びそれが使用される文脈において異なる意味が当業者に明らかでない限り、「質量%(wt.%)」と略記される質量百分率、又は「体積%(vol.%)」と略記される体積百分率であると理解されたい。
【0014】
第1の態様では、本発明は、自己酸化性塗料に使用するための又は不飽和ポリエステル樹脂における促進剤(siccative)として使用するための、液体組成物、好ましくは液体乾燥促進剤組成物であって、
i. 前記液体組成物の総質量に対して0.6~6質量%のコバルトの量のコバルトレジネートと、
ii. 前記液体組成物の総質量に対して0.05~2.5質量%の量の酸化防止剤と、
iii. 前記液体組成物の総質量に対して25~90質量%の量の有機溶媒と
を含む、液体組成物を提供する。
【0015】
前記組成物は、残量の水及び/又は添加剤、例えば希釈剤(thinning agent)を更に含んでもよい。好ましくは、コバルトレジネート、酸化防止剤、及び有機溶媒は、前記液体組成物中に、前記組成物の総質量に対して90~100質量%の総量で、より好ましくは98質量%超の量で、より好ましくは99質量%超の量で含まれる。好ましくは、前記液体組成物は、前記組成物の総質量に対して2質量%未満、好ましくは1質量%未満の量で水を含む。
【0016】
好ましくは、前記有機溶媒は、C8~C16脂肪族炭化水素、C5~C10脂肪族モノアルコールエーテル、飽和及び不飽和C5~C30エステル、C5~C30脂肪族モノアルコールエステル、並びにC1~C6 N-アルキルピロリドンからなる群のうちの1種又は複数の溶媒を含む。本発明の文脈において、「脂肪族化合物」という用語は、「脂環式化合物」も含む。
【0017】
本発明による組成物は、調製の容易さ、十分に低い粘度を可能にし、更にまた良好な安定性、具体的には良好な酸化安定性、アルキド樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂との良好な混和性、並びに乾燥剤としての良好な特性を示すことが見出された。
【0018】
本発明の文脈において、「レジネート」という用語は、ロジン酸材料のアニオン性塩基と解釈されるべきであり、ロジン材料誘導体を含めて、ロジン材料とも呼ばれる。本発明に用いられるロジン材料は、ガムロジン、ウッドロジン、パインオレオレジン、ロジン又はロジン酸を含有する材料、例えば、パインガム、熱処理ロジン、安定化ロジン、例えば、不均化ロジン、水添及び脱水素化ロジン、部分水添及び部分脱水素化ロジン、並びに重合及び部分重合ロジンを含む。
【0019】
本発明の文脈において、「コバルトレジネート」という用語は、前記コバルトレジネートと、ジ-及び/又はポリアルコール、並びに二-及び/又はポリ酸との反応によって得られる、単量体、低重合体、及び/又は重合体も含む。更にまた、本発明における使用に適したロジン材料は、脱炭酸ロジン、ロジン油、テール油、ロジン酸のエステル、例えば、アビエチン酸メチル、エステルガム、ロジン反応からの真空ストリッピング、又はコバルト塩を形成する任意のロジン含有材料であって、コバルト塩が、本明細書に記載される本発明の方法の条件下での前記ロジン含有材料と酸化コバルト、水酸化コバルト若しくはコバルト塩、例えば、塩化コバルト、硫酸コバルト等との反応で得ることができる、任意のロジン含有材料、のような材料を更に含む。コバルトレジネートは、これらのロジン、ロジン含有材料、又はロジン誘導体のいずれかから、本発明によって調製することができる。特定の実施形態では、コバルトレジネートは、一般式C40H58CoO4によって定義することができ、「コバルト(II+)(1R,4aR,4bR,10aR)-1,4a-ジメチル-7-(プロパン-2-イル)-1,2,3,4,4a,4b,5,6,10,10a-デカヒドロフェナントレン-1-カルボキシレート」という用語と同義である。当業者であれば、コバルトレジネートが、他の化合物、例えば、アビエチン酸コバルト、デヒドロアビエチン酸コバルト、イソピマル酸コバルト、レボピマル酸コバルト、ネオアビエチン酸コバルト、パルストリン酸コバルト、ピマル酸コバルト、サンダラコピマル酸コバルト、コロホニーロジンガム(colophony rosin gum)、パラフィン油を含み得ることを理解するであろう。
【0020】
本発明の特に好ましい実施形態では、「コバルトレジネート」という用語は、単量体、二量体、三量体、及び/又は低重合体のコバルトレジネートを指し、最も好ましくは、「コバルトレジネート」という用語は、単量体及び/又は二量体のコバルトレジネートを指す。低重合体のコバルトレジネートは、1超且つ20以下の単量体単位、好ましくは、1超且つ10以下の単量体単位を有すると見なされる。重合体のコバルトレジネートとは反対に、単量体及び低重合体のコバルトレジネートは、比較的高濃度のコバルトの、具体的には最大6質量%のコバルトの、液体である溶液の調製を可能にするという利点をもたらす。単量体及び低重合体のコバルトレジネートの存在は、GPC分析又はNMR技法によって実証することができる。
【0021】
本発明の文脈において、「液体」という用語は、標準条件下、すなわち、25℃の標準温度及び1気圧の標準圧力下での組成物の状態を指す。
【0022】
好ましくは、本発明は、本発明の第1の態様による液体組成物であって、前記コバルトレジネートと前記有機溶媒とから本質的になり、酸化防止剤も更に含む、液体組成物を提供する。そのような組成物は、例えば、液体組成物の調製から生じる残量の水を更に含んでもよい。
【0023】
好ましくは、本発明は、本発明の第1の態様による液体組成物であって、コバルトレジネートが、前記液体組成物の総質量に対して少なくとも0.5質量%のコバルトの量で、好ましくは少なくとも0.6質量%、より好ましくは少なくとも0.8質量%、少なくとも1.0質量%、少なくとも2.0質量%、少なくとも3.0質量%のコバルトの量で含まれる、液体組成物を提供する。好ましくは、前記コバルトレジネートは、前記液体組成物の総質量に対して多くとも6.0質量%のコバルトの量で、より好ましくは多くとも5.5質量%、又は更には多くとも5.0質量%のコバルトの量で含まれる。最も好ましくは、コバルトレジネートは、約3.0質量%、3.5質量%、4.0質量%、4.5質量%、又は5.0質量%のコバルトの量で含まれる。
【0024】
好ましくは、本発明は、本発明の第1の態様による液体組成物であって、前記コバルトレジネートが、前記液体組成物の総質量に対して90質量%~25質量%の量で含まれる、液体組成物を提供する。より好ましくは、前記コバルトレジネートは、75質量%~25質量%の量で、更により好ましくは60質量%~40質量%の量で含まれる。最も好ましくは、前記コバルトレジネートは、約50質量%の量で含まれる。好ましい実施形態では、コバルトは、前記コバルトレジネート中に前記コバルトレジネートの総質量に対して6~10質量%の量で、好ましくは7~9質量%の量で、最も好ましくは約8質量%の量で含まれる。
【0025】
好ましくは、本発明は、本発明の第1の態様による液体組成物であって、前記有機溶媒が、C9~C10アルカンを含む炭化水素溶媒である、液体組成物を提供する。好ましくは、前記炭化水素溶媒は、前記有機溶媒の総質量に対して少なくとも30質量%の量で、より好ましくは少なくとも40質量%の量で、最も好ましくは約50質量%の量で含まれる。前記炭化水素溶媒は、n-アルカン、イソアルカン、及びシクロアルカンを含んでもよい。前記炭化水素溶媒は、好ましくはCAS番号:64742-48-9を有し、好ましくは2%未満の芳香族を含む。
【0026】
好ましくは、本発明は、本発明の第1の態様による液体組成物であって、前記有機溶媒が、C10~C13アルカンを含む炭化水素溶媒である、液体組成物を提供する。好ましくは、前記炭化水素溶媒は、前記有機溶媒の総質量に対して少なくとも30質量%の量で、より好ましくは少なくとも40質量%の量で、最も好ましくは約50質量%の量で含まれる。前記炭化水素溶媒は、パラフィン、イソパラフィン、及びシクロパラフィンを含んでもよい。前記炭化水素溶媒は、好ましくはCAS番号:64742-48-9を有し、好ましくは2%未満の芳香族を含む。
【0027】
好ましい実施形態では、本発明は、本発明の第1の態様による液体組成物であって、前記有機溶媒がC9~C10アルカンとC10~C13アルカンとの混合物を含む、液体組成物を提供する。
【0028】
好ましくは、本発明は、本発明の第1の態様による液体組成物であって、前記有機溶媒がC6~C10脂肪族モノアルコールエーテルを含む、液体組成物を提供する。好ましくは、前記C6~C10脂肪族モノアルコールエーテルは、前記有機溶媒の総質量に対して少なくとも30質量%の量で、より好ましくは少なくとも40質量%の量で、最も好ましくは約50質量%の量で含まれる。好ましくは、前記有機溶媒は、ジエチレングリコール又はジプロピレングリコールのC1~C6アルキルエーテル、より好ましくはジエチレングリコール又はジプロピレングリコールのC1~C4アルキルエーテルを含む。
【0029】
好ましくは、本発明は、本発明の第1の態様による液体組成物であって、前記有機溶媒が、C10~C13アルカンを含む炭化水素溶媒とC6~C10脂肪族モノアルコールエーテルとの混合物であり、前記炭化水素溶媒が、前記有機溶媒の総質量に対して30質量%~70質量%の量で含まれ、前記脂肪族モノアルコールエーテルが、前記有機溶媒の総質量に対して70質量%~30質量%の量でそれぞれ含まれる、液体組成物を提供する。より好ましくは、前記炭化水素溶媒は40質量%~60質量%の量で含まれ、前記脂肪族モノアルコールエーテルは60質量%~40質量%の量でそれぞれ含まれる。最も好ましくは、前記炭化水素溶媒は約50質量%の量で含まれ、前記脂肪族モノアルコールエーテルは約50質量%の量で含まれる。
【0030】
好ましくは、本発明は、本発明の第1の態様による液体組成物であって、前記有機溶媒が、1種又は複数の飽和及び/又は不飽和C5~C11エステルを含む、液体組成物を提供する。好ましいエステルは、乳酸エチルであり得る。
【0031】
好ましくは、本発明は、本発明の第1の態様による液体組成物であって、前記有機溶媒が、飽和及び不飽和C12~C30エステルの混合物、より好ましくはバイオベース及び/又はバイオソースの飽和及び不飽和C12~C30エステルの混合物を含む、液体組成物を提供する。好ましくは、前記不飽和C12~C30エステルは、有機溶媒の総質量に対して少なくとも80質量%の量で、より好ましくは少なくとも90質量%の量で、更により好ましくは少なくとも98質量%の量で含まれる。好ましくは、前記不飽和C12~C30エステルは、菜種メチルエステルである。菜種メチルエステル(RME)は、飽和及び不飽和C16~C22脂肪酸からなるメチルエステル混合物である。技術的には、菜種メチルエステルは、メタノールを使用する菜種油の化学変換によって製造される。
【0032】
好ましくは、本発明は、本発明の第1の態様による液体組成物であって、前記有機溶媒が、C1~C6 N-アルキルピロリドン、より好ましくはC4 N-アルキルピロリドンを含む、液体組成物を提供する。好ましくは、前記C1~C6 N-アルキルピロリドンは、有機溶媒の総質量に対して少なくとも80質量%の量で、より好ましくは少なくとも90質量%の量で、更により好ましくは少なくとも98質量%の量で含まれる。好ましくは、前記C1~C6 N-アルキルピロリドンはC4 N-アルキルピロリドンである。
【0033】
好ましくは、本発明は、乾性脂肪酸、半乾性脂肪酸、又はそれらの混合物を更に含む、本発明の第1の態様による液体組成物を提供する。本発明で有用な、適切な乾性脂肪酸、半乾性脂肪酸、又はそれらの混合物は、エチレン系不飽和共役又は非共役C2~C24カルボン酸、例えば、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレン酸、リカン酸、及びエレオステアリン酸、又はそれらの混合物であり、典型的には、天然油又は合成油から誘導される脂肪酸の混合物の形態で使用される。半乾性及び乾性脂肪酸とは、それらが誘導される油と同じ脂肪酸組成を有する脂肪酸を意味する。
【0034】
本発明の組成物は、好ましくは、不活性雰囲気下、例えば、窒素又は二酸化炭素下で保管される。
【0035】
好ましくは、本発明は、本発明の第1の態様による液体組成物であって、前記コバルトレジネートが、コバルト塩と、1種又は複数の樹脂酸を含有するロジン若しくはパインガム、又は安定化ロジン、例えば、不均化ロジン、部分水添若しくは部分脱水素化ロジンとから調製される、液体組成物を提供する。好ましくは、本発明は、前記コバルトレジネートが水添コバルトレジネートである、本発明の第1の態様による液体組成物を提供する。
【0036】
一般に、特定のレジネートの金属含有率が増加するにつれ、融点が上がり、生成物の色が濃くなる。典型的には、アルデヒド、例えば、パラアルデヒド、ベンズアルデヒド、ブチルアルデヒド、又はパラホルムアルデヒドの存在下でのロジン又はロジン誘導体のコバルト塩は、少量のアルデヒドの存在下であっても、濃青色を生じる。あるアルデヒドでは、他のアルデヒドより色が濃くなる。そのような色は、例えば、コバルトレジネートを塗料組成物における乾燥剤として使用しようとする場合に不利である。好ましくは、前記液体組成物は、アルデヒド又はアルデヒド形成物の含有率を、前記組成物の総質量に対して1.0質量%未満の量で、より好ましくは0.5質量%未満、又は更には0.1質量%未満の量で有する。最も好ましくは、前記液体組成物は、アルデヒド又はアルデヒド形成物を何も含まない。最も好ましくは、前記液体組成物は、アルデヒド又はアルデヒド形成物を含まない。
【0037】
好ましくは、本発明は、本発明の第1の態様による液体組成物であって、酸化防止剤を、前記液体組成物の総質量に対して0.05~2.5質量%の量で、好ましくは0.4~1.5質量%の量で、より好ましくは0.50質量%、0.60質量%、0.80質量%、1.00質量%、1.20質量%、1.40質量%、若しくは1.50質量%の量、又はそれらの間の任意の量で更に含む、液体組成物を提供する。好ましくは、前記酸化防止剤は、ヒドロキシアルキルアミン、立体障害フェノール、ホスファイト、又はそれらのブレンドである。より好ましくは、前記酸化防止剤は、立体障害フェノール、ホスファイト、又はそれらのブレンドである。好ましくは、前記酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤、例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン及びクレゾール酸、好ましくは、立体障害フェノール系酸化防止剤;並びに/又は亜リン酸エステル酸化防止剤、例えば、トリアルキル亜リン酸エステル及びアルキル-アリール亜リン酸エステルである。特に好ましい実施形態では、前記酸化防止剤はブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)である。別の好ましい実施形態では、前記酸化防止剤はオクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(ODP)である。本発明による液体組成物は乾燥剤として使用するために開発されたが、酸化防止剤の包含は、驚くべきことに、液体組成物の乾燥特性に影響を及ぼさないことが見出された。
【0038】
好ましい立体障害フェノールは、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA);ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT);没食子酸プロピル;2,4,5-トリ-ヒドロキシブチロフェノン;チオジプロピオン酸ジラウリル;チオジプロピオン酸ジステアリル;グアヤク脂;ノルジヒドログアイアレチン酸(nordihydroguairetic acid);チオジプロピオン酸;2,2'-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェノール);2-t-ブチルフェノール;2,6-ジ-t-ブチルフェノール;4-t-ブチル-o-クレゾール;6-t-ブチル-o-クレゾール;2,6-ジメチルフェノール;2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール);2,2'-メチレンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール);カテコール;t-ブチルカテコール(butylcatecol);レゾルシノール;ヒドロキノン;4,4'-チオビス(6-t-ブチル-o-クレゾール)からなるリストから選択される。
【0039】
好ましいホスファイトは、一般式:(RO)(R1O)(R2O)P又は(R1O)(R2O)P=Oを有し、式中、R2及びR1は各々、少なくとも5個の炭素原子を含有するアリール、アルキル、シクロアルキル、アルカリル(arkaryl)、アラルキル、アルコキシ-アリール、アルコキシ-アルキル、アリールオキシアルキル、及びアルコキシシクロアルキル基、並びに前述のOH一置換バリアントからなる群から選択され、Rは、水素、並びにR1及びR2基からなる群から選択される。中性又は三置換ホスファイトが好ましい。
【0040】
好ましくは、本発明は、本発明の第1の態様による液体組成物であって、組成物の総質量に対して1.00質量%以下、好ましくは0.25質量%未満の量の水を含み、より好ましくは0.10質量%未満の水を含む、液体組成物を提供する。
【0041】
本発明の第1の態様による組成物は、好ましくは、不活性雰囲気下、例えば、窒素又は二酸化炭素下で保管される。
【0042】
コバルトレジネート組成物は、保護塗料において、不飽和植物油用の触媒乾燥剤として、殺菌剤、殺虫剤、殺細菌剤、木材防腐剤、表面下塗り、防カビ剤(mildew-roofing agent)、錆止め剤、湿潤及び分散剤、滑沢剤、防水剤、触媒、陶磁器用釉薬等において使用することができる。
【0043】
第2の態様では、本発明は、本発明の第1の態様による液体組成物を調製するための方法であって、以下の工程:
i. ロジン材料を100℃超の温度で有機溶媒に溶解させ、それによって溶解ロジン材料を得る工程と、
ii. コバルト源を溶解ロジン材料に添加し、得られた混合物を110℃超の温度に加熱し、それによって前記有機溶媒中のコバルトレジネートを得る工程と、
iii. 室温に冷却し、それによって液体組成物を得る工程と
を含み、1種又は複数の酸化防止剤が、前記液体組成物の総質量に対して0.1~2.5質量%の量で添加される、方法を提供する。前記酸化防止剤は、工程i.中、工程ii中、若しくは工程iii.中、工程i.の前、工程i.と工程ii.の間、工程ii.と工程iii.の間、又は工程iii.の後等、本方法のいずれの段階で添加されてもよい。
【0044】
好ましくは、本発明は、本発明の第2の態様による方法であって、前記有機溶媒が、C8~C16脂肪族炭化水素、C5~C10脂肪族モノアルコールエーテル、C5~C30飽和及び不飽和エステル、C5~C30脂肪族モノアルコールエステル、並びにC1~C6 N-アルキルピロリドンからなる群のうちの1種又は複数を含む、方法を提供する。
【0045】
好ましくは、本発明は、本発明の第2の態様による方法であって、工程i.において前記ロジン材料が激しい撹拌下で添加される、方法を提供する。好ましくは、工程ii.における加熱は真空下で行われ、且つ/或いは、酸化コバルト若しくは水酸化コバルトと樹脂酸との反応から形成された水、又はコバルト塩基と樹脂酸との反応によって形成された揮発物は留去される。
【0046】
好ましくは、本発明は、本発明の第2の態様による方法であって、前記コバルト源が、前記ロジン中の2当量のカルボン酸基に対して少なくとも0.50当量且つ1.00当量未満の量で前記溶解ロジン材料に添加される、方法を提供する。好ましくは、前記コバルト源は、前記ロジン中の2当量のカルボン酸基に対して少なくとも0.60当量且つ多くとも0.95当量の量で、より好ましくは少なくとも0.70当量且つ0.90当量未満の量で、最も好ましくは約0.72、0.74、0.76、0.78、0.80、0.82、0.84、0.86、若しくは0.88当量、又はそれらの間の任意の値の量で添加される。
【0047】
好ましくは、本発明は、本発明の第2の態様による方法であって、前記コバルト源が、前記ロジン中の2当量のカルボン酸基に対して1時間当たり多くとも4当量のコバルトの平均速度で添加される、より好ましくは1時間当たり多くとも3当量の平均速度で、更により好ましくは1時間当たり多くとも2当量のコバルトの平均速度で;且つ好ましくは1時間当たり少なくとも0.1当量、より好ましくは1時間当たり少なくとも0.2当量のコバルト、更により好ましくは1時間当たり少なくとも0.5当量の平均速度で添加される、方法を提供する。
【0048】
コバルト源は、酸化コバルト、水酸化コバルト、炭酸コバルト、塩基性炭酸コバルトであってもよく、又は有機若しくは無機酸のコバルト塩、例えば、ギ酸塩、乳酸塩、酢酸塩、塩基性酢酸塩であってもよい。好ましくは、本発明は、前記コバルト源が水酸化コバルトである、本発明の第2の態様による方法を提供する。
【0049】
好ましくは、本発明は、本発明の第2の態様による方法であって、前記有機溶媒中に形成されたコバルトレジネートが、反応温度未満の温度に冷却された後に濾過される、方法を提供する。好ましくは、前記有機溶媒中の前記コバルトレジネートは、25μmのGAFバッグフィルターを通して濾過される。
【0050】
好ましくは、本発明は、本発明の第2の態様による方法であって、有機二量体、三量体、又は重合体酸化合物が、工程i.の後且つ工程ii.の前に、前記溶解ロジン材料を含む前記有機溶媒に添加される、方法を提供する。好ましくは、前記二量体酸化合物は、二量体脂肪酸、例えば、限定するものではないが、二量体化オレイン酸であり、好ましくは、テール油から得られた不飽和脂肪酸を二量体化することによって調製される。前記酸化合物は、二量体及び三量体酸化合物の混合物を更に含んでもよい。前記有機二量体、三量体、又は重合体酸化合物は、好ましくはCAS番号61788-89-4によって特定される。
【0051】
好ましくは、本発明は、本発明の第2の態様による方法であって、ジ-又はポリアルコールが、工程ii.の後且つ工程iii.の前に、前記有機溶媒中の前記コバルトレジネートに添加される、方法を提供する。好ましくは、前記ジ-又はポリアルコールは、工程i.で添加される有機二-又はポリ酸化合物の量に対して当量で添加される。好ましくは、前記ジ-又はポリアルコールは、C2~C8アルキルジオール、例えば、限定するものではないが、直鎖状又は分枝状の、エチレン-、プロピレン-、ブチレン-、ペンチレン-、及びヘキシレングリコール、又はC3~C8アルキルトリオール、例えば、限定するものではないが、グリセロール、並びに上記の1種又は複数の混合物である。
【0052】
好ましくは、本発明は、本発明の第2の態様による方法であって、前記液体組成物が、アルキド系樹脂又は不飽和ポリエステル樹脂に、前記硬化性液体組成物の総質量に対して0.1~2.5質量%の量で、好ましくは0.2~2.0質量%の量で、より好ましくは0.5~1.5質量%の量で、更により好ましくは0.8質量%、0.9質量%、1.0質量%、1.1質量%、1.2質量%の量、又はそれらの間の任意の量で添加される、方法を提供する。
【0053】
第3の態様では、本発明は、硬化性液体組成物であって、a)アルキド系樹脂又は不飽和ポリエステル樹脂と、b)前記硬化性液体組成物の総質量に対して0.1~2.5質量%の本発明の第2の態様による液体組成物、好ましくは0.2~2.0質量%、より好ましくは0.5~1.5質量%、更により好ましくは0.8質量%、0.9質量%、1.0質量%、1.1質量%、1.2質量%、又はそれらの間の任意の量の前記液体組成物とを含む、硬化性液体組成物を提供する。
【0054】
本発明の第3の態様による硬化性液体組成物、好ましくは自然乾燥アルキド系樹脂を希釈するのに適した有機溶媒として、脂肪族、脂環式、及び芳香族炭化水素、アルコールエーテル、アルコールエステル、並びにN-メチルピロリドンが挙げられる。しかし、それはまた、乳濁液の形態のアルキド樹脂及び当技術分野で周知であるような適切な乳化剤を含有する水性担体であってもよい。
【0055】
本発明の組成物は、着色剤、顔料、防食顔料、及び/若しくは体質顔料、並びに/又は染料を含有してもよい。それは更に、必要であれば、可塑剤、表面調整剤、抗真菌剤、殺生物剤、粘着防止剤(anti-silking agent)、皮張り防止剤、消泡剤、レオロジー調整剤、及び/又は紫外線吸収剤を含有してもよい。
【0056】
液体組成物自体の添加は、当業者に公知の従来の技法で行われる。液体は、アルキド系樹脂、塗料、インク、及びリノリウム床仕上げ材の製造中に添加されるか、又は使用前に撹拌下でそれらに添加される。
【0057】
本発明の第3の態様による組成物は、好ましくは、不活性雰囲気下、例えば、窒素又は二酸化炭素下で保管される。
【0058】
第4の態様では、本発明は、アルキド系樹脂又は不飽和ポリエステル樹脂における乾燥剤としての、本発明の第1の態様による液体組成物の使用を提供する。
【実施例
【0059】
以下の実施例は、本発明を更に明らかにすることを意図するものであり、本発明の範囲を限定する意図はどこにもない。
【0060】
(比較例1)
コバルト重合体をEP3 095 826の実施例2に従って調製し、これを比較例1とした。
【0061】
(比較例2)
2当量(544.6g)のロジンを、C10~C13アルカンを含む炭化水素溶媒700.0gに添加し、この混合物を140℃に加熱した。1時間以内に、全てのロジン固形物が溶解し、混合物を窒素雰囲気下で撹拌した。次に、1当量の水酸化コバルト(80.0g)を、撹拌を続けながら2時間にわたって5回に分けて添加した。添加後に毎回、水を真空蒸留によって蒸留し、温度を10℃ずつ上げて180℃の最終温度にした。この手順の間に、粘度が上昇し始め、最終的に、未反応の水酸化コバルトをまだ含有している、使用不可能な固体生成物を得た。
【0062】
(実施例1)
2.38当量(512.0g)のロジンを、C10~C13アルカンを含む炭化水素溶媒350.0gに添加し、この混合物を125℃に加熱した。1時間以内に、全てのロジン固形物が溶解し、混合物を窒素雰囲気下で撹拌した。次に、1当量の水酸化コバルト(56.9g)を、30分間にわたって2回に分けて添加し、125℃でもう1時間、更に反応させた。次いで、水を125℃での真空蒸留によって蒸留し、その後生成物を80℃に冷却し、25μmのGAFバッグフィルターを通して濾過した。この均一な紫青色の混合物に、0.2質量%の2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)を添加した。酸化安定性が少なくとも2日間達成され、その後緑色を帯びた着色が観察された。
【0063】
(実施例2)
2.38当量(512.0g)のロジンを、C10~C13アルカンを含む炭化水素溶媒350.0gに添加し、この混合物を125℃に加熱した。1時間以内に、全てのロジン固形物が溶解し、混合物を窒素雰囲気下で撹拌した。次に、1当量の水酸化コバルト(56.9g)を、30分間にわたって2回に分けて添加し、125℃でもう1時間、更に反応させた。次いで、水を125℃での真空蒸留によって蒸留し、その後生成物を80℃に冷却し、25μmのGAFバッグフィルターを通して濾過した。この均一な紫青色の混合物に、1質量%の2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)を添加した。この手順によって、4%のコバルト、0.8%の水を含有し、85ポアズの粘度を有する、安定な紫青色のCo-レジネート溶液を得た。GPC分析(Agilent technologies 1260 infinity II GPC、RI検出器、2本の連続Polyporeカラム、THF溶出液、30℃)をこの混合物について行うと、高分子材料が存在しないことが明らかになり、したがってアルキド塗料及びUPRにおけるドライヤーとしての更なる工業的用途に許容可能な粘度を有する生成物を得た。
【0064】
(実施例3)
184.2gの二量体酸を窒素雰囲気下で30分間130℃に加熱した。866.9gのロジンを前記二量体酸に30分の時間をかけて徐々に添加した。次に、80.0gの水酸化コバルトを5等分して、調製した混合物に90分の時間をかけて140℃で添加した。反応中に形成された水は、140℃の温度を維持しながら真空下で留去した。続いて混合物を160℃に加熱し、46.0gのグリセリンを30分の時間をかけて分けて添加した。重合反応を1時間180℃で維持し、その後全ての揮発物を180℃で留去し、生成物を140℃に冷却した。最後に、2.7gのBHT、及びC10~C13アルカンを含む炭化水素溶媒とDPMとの50/50質量%溶液550.0gを添加して、3%のコバルト、0.2%の水を含有し、35ポアズの粘度を有する、安定な紫青色のCo-レジネート重合体溶液を得た。
【0065】
(実施例4)
600.0gのCo-レジネート粉末(8% Co)を、C10~C13アルカンを含む炭化水素溶媒とDPMとの50/50質量%溶液600.0gに50℃で溶解させた。この溶液に6gのBHTを添加し、混合物を50℃でもう1時間撹拌した。これによって、4%のコバルトを含有し、1.7ポアズの粘度を有する、安定な紫青色のCo-レジネート溶液を得た。GPC分析(Agilent technologies 1260 infinity II GPC、RI検出器、2本の連続Polyporeカラム、THF溶出液、30℃)をこの混合物について行うと、高分子材料が存在しないことが明らかになり、したがってアルキド塗料及びUPRにおけるドライヤーとしての更なる工業的用途に許容可能な粘度を有する生成物を得た。
【0066】
(実施例5)
実施例1及び2からの生成物を酸化防止剤なしで製造し、様々な種類及び濃度の酸化防止剤で酸化安定性について試験した。その目的のために、生成物の30μmの膜を、管理された20℃及び相対湿度70%の気候でガラス板上に塗布し、酸化安定性について評価した。結果をTable 1(表1)にまとめる。
【0067】
【表1】
【0068】
(実施例6)
実施例2又は比較例1に従って得られた生成物を、白色のアルキド塗料配合物に、固体アルキド樹脂に対して0.05質量%のCoの量で添加した。使用したアルキド塗料配合物を、Table 2(表2)及びTable 3(表3)に記載する。塗料配合物を、室温、不活性雰囲気下で2日間保管し、続いてガラス板上に、約75μmの一定の層厚で表面上に塗布し、乾燥させた。Elcometer (登録商標) 5300 Ball Type Drying Time Recorderを使用して、管理された20℃及び相対湿度70%の気候での白色塗料の乾燥時間を決定した。組成物の様々な乾燥状態を、ASTM D5895-03法に従って決定した。その結果をTable 4(表4)に示す。
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
【表4】
【0072】
(実施例7)
0.25gの実施例2及び比較例1(両方とも4% Co)をそれぞれ、100gの低反応性オルソフタル酸系UPR樹脂に均一に添加した。次いで1gの過酸化物硬化剤を添加し、混合物を30秒間激しく撹拌し、その後、SC4-27スピンドルを備えたBrookfield Model DV-III Ultra Rheometerでゲル化をモニタリングした。ゲル化時間(分)、ピーク発熱時間(分)、及びピーク発熱温度(℃)を測定した(Table 5(表5))。
【0073】
【表5】
【0074】
(実施例8)
実施例4からの生成物を酸化防止剤なしで製造し、様々な種類及び濃度の酸化防止剤で酸化安定性について試験した。その目的のために、生成物の30μmの膜を、管理された20℃及び相対湿度70%の気候でガラス板上に塗布し、酸化安定性について評価した。結果をTable 6(表6)にまとめる。
【0075】
【表6】
【0076】
(実施例9)
70.0gのCo-レジネート粉末(8% Co)を70.0gの菜種メチルエステルに50℃で溶解させた。この溶液に0.7gのBHTを添加し、混合物を50℃でもう1時間撹拌した。これによって、4%のコバルトを含有し、4.9ポアズの粘度を有する、安定な紫青色のCo-レジネート溶液を得た。
【0077】
(実施例10)
実施例9からの生成物を酸化防止剤なしで製造し、様々な種類及び濃度の酸化防止剤で酸化安定性について試験した。その目的のために、この生成物の30μmの膜を、管理された20℃及び相対湿度70%の気候でガラス板上に塗布し、酸化安定性について評価した。結果をTable 7(表7)にまとめる。
【0078】
【表7】
【0079】
(実施例11)
様々な量のBHT(0.5、1、2、4、又は8質量%)を用いて実施例4に従って得られた生成物を、アルキド塗料配合物に、固体アルキド樹脂に対して0.05質量%のCoの量で添加した。使用したアルキド塗料配合物を、Table 8(表8)に記載する。塗料配合物を、室温、不活性雰囲気下で3日間保管し、続いてガラス板上に、約75μmの一定の層厚で表面上に塗布し、乾燥させた。Elcometer (登録商標) 5300 Ball Type Drying Time Recorderを使用して、管理された20℃及び相対湿度70%の気候での白色塗料の乾燥時間を決定した。組成物の様々な乾燥状態を、ASTM D5895-03法に従って決定した。その結果をTable 9(表9)に示す。2質量%を超える量のBHTを添加すると、乾燥時間に明白な影響を与える。
【0080】
【表8】
【0081】
【表9】
【0082】
(実施例12)
様々な量のBHT (0.5、1、2、4、又は8質量%)を有する0.25gの実施例4(4% Co)を、100gの低反応性オルソフタル酸系UPR樹脂に均一に添加した。次いで1gの過酸化物硬化剤を添加し、混合物を30秒間激しく撹拌し、その後、SC4-27スピンドルを備えたBrookfield Model DV-III Ultra Rheometerでゲル化をモニタリングした。ゲル化時間(分)、ピーク発熱時間(分)、及びピーク発熱温度(℃)を測定した(Table 10(表10))。2質量%を超える量のBHTを添加すると、UPRの硬化時間に明白な影響を与える。
【0083】
【表10】
【0084】
(実施例13)
様々な量のDEHA (ジエチルヒドロキシルアミン、0.5、1、2、4、又は8質量%)を用いて実施例4に従って得られた生成物を、アルキド塗料配合物に、固体アルキド樹脂に対して0.05質量%のCoの量で添加した。使用したアルキド塗料配合物を、Table 11(表11)に記載する。塗料配合物を、室温、不活性雰囲気下で3日間保管し、続いてガラス板上に、約75μmの一定の層厚で表面上に塗布し、乾燥させた。Elcometer (登録商標) 5300 Ball Type Drying Time Recorderを使用して、管理された20℃及び相対湿度70%の気候での白色塗料の乾燥時間を決定した。組成物の様々な乾燥状態を、ASTM D5895-03法に従って決定した。その結果をTable 12(表12)に示す。0.5質量%を超える量のDEHAを添加すると、乾燥時間に明白な影響を与える。
【0085】
【表11】
【0086】
【表12】
【0087】
(実施例14)
様々な量のDEHA(ジエチルヒドロキシルアミン、0.5、1、2、4、又は8質量%)を有する0.25gの実施例4(4% Co)を、100gの第2の低反応性オルソフタル酸系UPR樹脂に均一に添加した。次いで1gの過酸化物硬化剤を添加し、混合物を30秒間激しく撹拌し、その後、SC4-27スピンドルを備えたBrookfield Model DV-III Ultra Rheometerでゲル化をモニタリングした。ゲル化時間(分)、ピーク発熱時間(分)、及びピーク発熱温度(℃)を測定した(Table 13(表13))。2質量%を超える量のDEHAを添加すると、UPRの硬化時間に明白な影響を与える。
【0088】
【表13】
【0089】
(比較例3)
83gの重合ロジンを160℃に加熱し、この溶融物に10gの水酸化コバルトを2.5gずつ4回に分けて窒素雰囲気下で添加した。1時間の反応後、混合物は固化し、C10~C13アルカンを含む66gの炭化水素溶媒及び1gのBHTを添加した。これによって160℃で均一な液体の混合物を得た。これは、室温に冷却した後再び固化し、よって室温では使用不可能な固体生成物を得た。
【国際調査報告】