(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】シアン化銅を酸化銅に変換する方法及びそのシステム
(51)【国際特許分類】
C22B 15/00 20060101AFI20241031BHJP
C22B 3/44 20060101ALI20241031BHJP
C22B 3/22 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C22B15/00 107
C22B3/44 101A
C22B3/22
C22B3/44 101Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533225
(86)(22)【出願日】2022-12-05
(85)【翻訳文提出日】2024-07-04
(86)【国際出願番号】 US2022080947
(87)【国際公開番号】W WO2023102570
(87)【国際公開日】2023-06-08
(32)【優先日】2021-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524209718
【氏名又は名称】シアンコ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モヨ、パメラ
(72)【発明者】
【氏名】ディクソン、スティーブ
(72)【発明者】
【氏名】ノークロス、ロイ
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA01
4K001AA04
4K001AA09
4K001DB07
4K001DB16
4K001DB22
4K001DB23
(57)【要約】
シアン化銅を酸化銅に変換するための方法及びシステムを提供する。この方法は、シアン化銅溶液を、シアン化銅スラリーを生成するのに十分な反応条件下、沈殿タンク内で酸性溶液に接触させることと、沈殿タンクからシアン化銅スラリーを取り出すことと、第1の分離デバイス内でシアン化銅スラリーから固体のシアン化銅を分離することと、第1の分離デバイスから固体のシアン化銅を取り出すことと、固体のシアン化銅を、酸化銅スラリーを生成するのに十分な反応条件下、生産タンク内で水酸化ナトリウム溶液に接触させることと、酸化銅スラリーを生産タンクから取り出すことと、第2の分離デバイス内で酸化銅スラリーから固体の酸化銅を分離することと、固体のシアン化銅を生産タンク内で水酸化ナトリウム溶液に接触させるプロセス中に反応しなかった任意の残留水酸化ナトリウムを第2の分離デバイスから取り出すこととを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シアン化銅を酸化銅に変換する方法であって、
シアン化銅溶液を、シアン化銅スラリーを生成するのに十分な反応条件下、沈殿タンク内で酸性溶液に接触させるステップと、
前記沈殿タンクから前記シアン化銅スラリーを取り出すステップと、
任意選択で、前記沈殿タンク内で生じたガス状流出物を取り出すステップと、
第1の分離デバイス内で、前記シアン化銅スラリーから固体のシアン化銅を分離するステップと、
前記第1の分離デバイスから前記固体のシアン化銅を取り出すステップと、
任意選択で、前記第1の分離デバイス内の液体流出物を取り出すステップと、
前記固体のシアン化銅を、酸化銅スラリーを生成するのに十分な反応条件下、生産タンク内で水酸化ナトリウム溶液に接触させるステップと、
前記生産タンクから前記酸化銅スラリーを取り出すステップと、
第2の分離デバイス内の前記酸化銅スラリーから固体の酸化銅を分離するステップと、
任意選択で、前記第2の分離デバイスから前記固体の酸化銅を取り出すステップと、
任意選択で、前記固体のシアン化銅を前記生産タンク内で前記水酸化ナトリウム溶液に接触させる前記プロセス中に反応しなかった任意の残留水酸化ナトリウムを、前記第2の分離デバイスから取り出すステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記酸性溶液が硫酸、硝酸、及び塩酸からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記沈殿タンク内の前記シアン化銅溶液を溶出容器から受け取ることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
銅を含む活性炭を、前記溶出容器内で、水酸化ナトリウム及びシアン化ナトリウムの溶液に接触させて前記シアン化銅溶液を含む溶出物を生成することをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記銅を含む活性炭が金及び/または銀をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記水酸化ナトリウム及びシアン化ナトリウムの溶液が、約11~12の範囲のpH及び約0~60℃の範囲の温度である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記溶出容器内の前記水酸化ナトリウム及びシアン化ナトリウムの溶液をリサイクル溶液タンクから受け取ることをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記沈殿タンク内で生じたガス状流出物をガスクラバー内で受け取ることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ガス状流出物がシアン化水素ガスである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記シアン化水素ガスを、前記ガススクラバー内で、水酸化ナトリウム溶液に接触させてシアン化ナトリウム溶液を生成することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ガススクラバーから前記シアン化ナトリウム溶液を取り出すことをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
任意選択で、前記固体のシアン化銅を、前記生産タンク内で水に接触させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記固体のシアン化銅が、前記生産タンク内で、周囲温度で前記水酸化ナトリウム溶液と接触される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記生産タンク内でエアースパージングを行うことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記生産タンク内のNaOH:CuCNのモル比が2~0.1の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
CuCNとしての固体パーセントが5%~50%の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記生産タンク内のNaOHの投与率が、銅kg当たり少なくとも0.295kgのNaOHである、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記生産タンク内のNaOHの投与率が、銅kg当たり少なくとも0.265kgのNaOHである、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記酸化銅スラリーが酸化銅(I)及び/または酸化銅(II)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記酸化銅中で70%以上の銅が回収される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第2の分離デバイス内に存在する任意の残留水酸化ナトリウムを、前記リサイクル溶液タンク、前記ガススクラバー、前記生産タンク、またはこれらの任意の組合せに戻してリサイクルすることをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項22】
シアン化銅を酸化銅に変換するためのシステムであって、
シアン化銅溶液を酸性溶液に接触させてシアン化銅スラリーを生成するための沈殿タンクであって、
任意選択で、前記沈殿タンクが、前記シアン化銅スラリーを放出するための第1の出力ポートを有し、
任意選択で、前記沈殿タンクが、前記沈殿タンク内で生じたガス状流出物を放出するための第2の出力ポートを有する、前記沈殿タンクと、
前記シアン化銅スラリーを受け取り、前記シアン化銅スラリーから固体のシアン化銅を分離するための第1の分離デバイスであって、
任意選択で、前記第1の分離デバイスが、前記固体のシアン化銅を放出するための第3の出力ポートを有し、
任意選択で、前記第1の分離デバイスが、前記第1の分離デバイス内で生じた液体流出物を放出するための第4の出力ポートを有する、前記第1の分離デバイスと、
前記固体のシアン化銅を受け取り、前記固体のシアン化銅を水酸化ナトリウム溶液に接触させて酸化銅スラリーを生成するための生産タンクであって、
任意選択で、前記生産タンクが、前記酸化銅スラリーを放出するための第5の出力ポートを有する、前記生産タンクと、
前記酸化銅スラリーを受け取り、前記酸化銅スラリーから固体の酸化銅を分離するための第2の分離デバイスであって、
任意選択で、前記第2の分離デバイスが、前記固体の酸化銅を放出するための第6の出力ポートを有し、
任意選択で、前記第2の分離デバイスが、前記固体のシアン化銅を前記生産タンク内で前記酸化銅スラリーに変換する前記プロセス中に反応しなかった任意の残留水酸化ナトリウムを放出するための第7の出力ポートを有する、前記第2の分離デバイスとを含む、システム。
【請求項23】
前記沈殿タンクが、前記シアン化銅溶液を受け取るための第1の入力ポートと、前記酸性溶液を受け取るための第2の入力ポートとを有する、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記酸性溶液が硫酸、硝酸、及び塩酸からなる群より選択される、請求項22に記載のシステム。
【請求項25】
前記シアン化銅溶液を受け取るための前記第1の入力ポートが溶出容器に接続している、請求項22に記載のシステム。
【請求項26】
前記溶出容器が、銅を含む活性炭を受け取るための固体入力ポートと、水酸化ナトリウム及びシアン化ナトリウムの溶液を受け取るための液体入力ポートとを有する、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記銅を含む活性炭が金及び/または銀をさらに含む、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記銅を含む活性炭が、前記水酸化ナトリウム及びシアン化ナトリウムの溶液と接触されて、前記シアン化銅溶液を含む溶出物を生成する、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記水酸化ナトリウム及びシアン化ナトリウムの溶液が、約11~12の範囲のpH及び約0~60℃の範囲の温度である、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記水酸化ナトリウム及びシアン化ナトリウムの溶液を受け取るための前記液体入力ポートが、前記水酸化ナトリウム及びシアン化ナトリウムの溶液を収容するリサイクル溶液タンクに接続している、請求項22に記載のシステム。
【請求項31】
前記沈殿タンクの前記第2の出力ポートが、前記沈殿タンク内で生じた前記ガス状流出物を受け取るためのガススクラバーに接続している、請求項22に記載のシステム。
【請求項32】
前記ガス状流出物がシアン化水素ガスである、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
前記シアン化水素ガスが、前記ガススクラバー内で、水酸化ナトリウム溶液と接触されてシアン化ナトリウム溶液を生成する、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前記ガススクラバーが、前記水酸化ナトリウム溶液を受け取るための液体入力ポートと、前記シアン化ナトリウム溶液を取り出すための液体出力ポートとを有する、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
前記固体のシアン化銅を受け取るための前記生産タンクが、前記水酸化ナトリウム溶液を受け取るための第1の液体入力ポートと、任意選択で、水を受け取るための第2の液体入力ポートとを有する、請求項22に記載のシステム。
【請求項36】
前記固体のシアン化銅が、前記生産タンク内で、周囲温度で前記水酸化ナトリウム溶液と接触される、請求項22に記載のシステム。
【請求項37】
前記生産タンク内でエアースパージングを行うことをさらに含む、請求項22に記載のシステム。
【請求項38】
前記生産タンク内のNaOH:CuCNのモル比が2~0.1である、請求項22に記載のシステム。
【請求項39】
CuCNとしての固体パーセントが5%~50%の範囲である、請求項22に記載のシステム。
【請求項40】
前記生産タンク内のNaOHの投与率が、銅kg当たり少なくとも0.295kgのNaOHである、請求項22に記載のシステム。
【請求項41】
前記生産タンク内のNaOHの投与率が、銅kg当たり少なくとも0.265kgのNaOHである、請求項22に記載のシステム。
【請求項42】
前記酸化銅スラリーが酸化銅(I)及び/または酸化銅(II)を含む、請求項22に記載のシステム。
【請求項43】
前記酸化銅中で70%以上の銅が回収される、請求項22に記載のシステム。
【請求項44】
前記第2の分離デバイス内に存在する任意の残留水酸化ナトリウムが、前記リサイクル溶液タンク、前記ガススクラバー、前記生産タンク、またはこれらの任意の組合せに戻してリサイクルされる、請求項31に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国仮出願第63/285,532号(2021年12月3日出願)の優先権を主張し、当該出願を参照により本明細書に援用する。
【0002】
発明の技術分野
本開示は、シアン化銅を酸化銅に変換するための改善された方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
シアン化物を用いた金鉱石の浸出は、十分に確立されたロバストで費用効果が高いプロセスである。金鉱石中に他の鉱物が存在すると、鉱山にとってプロセスが複雑になり、シアン化物を用いて金を浸出するプロセスの費用効果が低下する。ほとんどの銅鉱物は、シアン化物溶液における溶解度が良好である(Leaver & Woolf,1931)。金鉱石中に銅鉱物が存在すると、銅鉱物は金とともに同時浸出する。これによって金回収の問題が生じ、シアン化物の消費が増加する。シアン化銅は活性炭に負荷をかける可能性があり、これは金の回収に影響を及ぼす。この問題に対処するために、ほとんどの操業現場では単にシアン化物のレベルを高めており、その結果作業コストは上昇する。
【0004】
銅が金回収に及ぼす影響を最小化するための費用効果の高い方法を開発する目的でいくつかの研究(Dai,Simon & Breuer,2012)が行われた。いくつかの方法は、経済性を改善するために銅及びシアン化物の両方を回収することについて模索した。SART(硫化-酸性化-リサイクル-濃化)及びAVR(酸性化-揮発化-再中和)は、周知され工業に適用されている2つのプロセスである(Botz & Acar,2007及びLopez-Pacheco,2016)。これらのプロセスを用いると、銅は沈殿により回収され、一方シアン化物は、銅を含むシアン化物溶液の酸性化中にシアン化水素(HCN)ガスを捕捉することにより回収される。
【0005】
SART及びAVRプロセスは、清澄な溶液には有効である。しかしこれらは、カーボンインリーチ(CIL)またはカーボンインパルプ(CIP)のようなスラリー系の場合、資本集約的な固体/液体分離装置が必要であるため、難題となる。さらに、ほとんどの商業的操業において、流出物中の銅濃度は通常低く、そのため回収プロセスの経済性は低い。
【0006】
シアン化物を用いた金浸出は、通常pH10.5~11で行われる。これらのpHレベルでは、金と共溶出する銅は、ほとんどの場合トリシアン化銅錯体として存在する。この銅錯体の活性炭に対する吸着効率は低い。この低い吸着率は、プロセス水が再循環するに伴い、銅が回路内で蓄積を続けることを意味する。
【0007】
この問題には多くの研究が対処してきており、このような研究には、低シアン化物濃度のプレCILを利用して、貴金属を回収する前に活性炭上の銅を選択的に回収するプロセスを特許したSceresini(1991)が含まれる。銅が装填されたカーボンに次にコールドストリップを行って、高グレードのシアン化銅溶液を生成し、続いてこれを酸性化して、シアン化銅の沈殿物及びHCNガスを生成した。HCNガスを回収及び中和し、一方シアン化銅は硫酸で煮沸して硫酸銅を生成する。
【0008】
さらに最近では、Dixon(2017)が同じ問題に対処するために、活性炭の連続的溶出を用いて回路から銅を選択的に取り出すプロセスを提唱した。銅を含む溶出液は、次に貴金属を回収するためにMerrill Crowe回路に送られ、その後に銅がシアン化銅(CuCN)として沈殿する。
【0009】
しかしながら当技術分野では、シアン化銅を酸化銅に変換するためのより効率的で費用効果の高いプロセスが必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、シアン化銅を酸化銅に変換するための方法であって、以下:
シアン化銅溶液を、シアン化銅スラリーを生成するのに十分な反応条件下、沈殿タンク内で酸性溶液に接触させるステップと、
当該沈殿タンクから当該シアン化銅スラリーを取り出すステップと、
任意選択で、当該沈殿タンク内で生じたガス状流出物を取り出すステップと、
第1の分離デバイス内で、当該シアン化銅スラリーから固体のシアン化銅を分離するステップと、
当該第1の分離デバイスから当該固体のシアン化銅を取り出すステップと、
任意選択で、当該第1の分離デバイス内の液体流出物を取り出すステップと、
当該固体のシアン化銅を、酸化銅スラリーを生成するのに十分な反応条件下、生産タンク内で水酸化ナトリウム溶液に接触させるステップと、
当該生産タンクから当該酸化銅スラリーを取り出すステップと、
第2の分離デバイス内の当該酸化銅スラリーから固体の酸化銅を分離するステップと、
任意選択で、当該第2の分離デバイスから当該固体の酸化銅を取り出すステップと、
任意選択で、当該固体のシアン化銅を当該生産タンク内で当該水酸化ナトリウム溶液に接触させる当該プロセス中に反応しなかった任意の残留水酸化ナトリウムを、当該第2の分離デバイスから取り出すステップとを含む、方法に関する。
【0011】
また本発明は、シアン化銅を酸化銅に変換するためのシステムであって、
シアン化銅溶液を酸性溶液に接触させてシアン化銅スラリーを生成するための沈殿タンクであって、
任意選択で、当該沈殿タンクが、当該シアン化銅スラリーを放出するための第1の出力ポートを有し、
任意選択で、当該沈殿タンクが、当該沈殿タンク内で生じたガス状流出物を放出するための第2の出力ポートを有する、沈殿タンクと、
当該シアン化銅スラリーを受け取り、当該シアン化銅スラリーから固体のシアン化銅を分離するための第1の分離デバイスであって、
任意選択で、当該第1の分離デバイスが、当該固体のシアン化銅を放出するための第3の出力ポートを有し、
任意選択で、当該第1の分離デバイスが、当該第1の分離デバイス内で生じた液体流出物を放出するための第4の出力ポートを有する、第1の分離デバイスと、
当該固体のシアン化銅を受け取り、当該固体のシアン化銅を水酸化ナトリウム溶液に接触させて酸化銅スラリーを生成するための生産タンクであって、
任意選択で、当該生産タンクが、当該酸化銅スラリーを放出するための第5の出力ポートを有する、生産タンクと、
当該酸化銅スラリーを受け取り、当該酸化銅スラリーから固体の酸化銅を分離するための第2の分離デバイスであって、
任意選択で、当該第2の分離デバイスが、当該固体の酸化銅を放出するための第6の出力ポートを有し、
任意選択で、当該第2の分離デバイスが、当該固体のシアン化銅を当該生産タンク内で当該酸化銅スラリーに変換する当該プロセス中に反応しなかった任意の残留水酸化ナトリウムを放出するための第7の出力ポートを有する、第2の分離デバイスとを含む、システムにも関する。
【0012】
本発明は、回収された酸化銅をa)(シアン化銅の輸送と比較して)最小限の制約で容易に製錬所に輸送し、b)現場で処理して銅カソードを生産することができるため、取扱いの選択肢を増やすことができる。本発明のプロセスは、必要となる新規の設備及び試薬を最小限に抑えてほとんどのブラウンフィールドでの操業に容易に適応することができる。
【0013】
さらに、本発明はシアン化銅の輸送に関連するリスクを最小限に抑え、環境への影響を低減し、抽出プロセスが実施される同じプラント内で銅カソードを生成できるようにすることによって製造効率を高める。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明のシアン化銅を酸化銅に変換するための方法を行うための例示的なシステムを示している。
【
図2】初期NaOH:CuCN比が生成物中の銅グレードに及ぼす影響を示している。
【
図3】初期のNaOH:CuCN比がNaOH消費に及ぼす影響を示している。
【
図4】固体生成物中の残留NaOHと銅グレードとの間の関係を示している。
【
図5】濾液中の残留NaOHと銅グレードとの間の関係を示している。
【
図6】NaOHの消費率に対する生成物中の銅グレードを示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、シアン化銅を酸化銅に変換するための方法であって、以下:
シアン化銅溶液を、シアン化銅スラリーを生成するのに十分な反応条件下、沈殿タンク内で酸性溶液に接触させるステップと、
当該沈殿タンクから当該シアン化銅スラリーを取り出すステップと、
任意選択で、当該沈殿タンク内で生じたガス状流出物を取り出すステップと、
第1の分離デバイス内で、当該シアン化銅スラリーから固体のシアン化銅を分離するステップと、
当該第1の分離デバイスから当該固体のシアン化銅を取り出すステップと、
任意選択で、当該第1の分離デバイス内の液体流出物を取り出すステップと、
当該固体のシアン化銅を、酸化銅スラリーを生成するのに十分な反応条件下、生産タンク内で水酸化ナトリウム溶液に接触させるステップと、
当該生産タンクから当該酸化銅スラリーを取り出すステップと、
第2の分離デバイス内の当該酸化銅スラリーから固体の酸化銅を分離するステップと、
任意選択で、当該第2の分離デバイスから当該固体の酸化銅を取り出すステップと、
任意選択で、当該固体のシアン化銅を当該生産タンク内で当該水酸化ナトリウム溶液に接触させる当該プロセス中に反応しなかった任意の残留水酸化ナトリウムを、当該第2の分離デバイスから取り出すステップとを含む、方法に関する。
【0016】
酸性溶液は、硫酸、硝酸、及び塩酸からなる群より選択することができる。
【0017】
本発明の方法はさらに、沈殿タンク内のシアン化銅溶液を溶出容器から受け取ることを含む。銅を含む活性炭と、水酸化ナトリウム及びシアン化ナトリウムの溶液とを溶出容器内で接触させて、シアン化銅溶液を含む溶出物を生成することができる。銅を含む活性炭は、金及び/または銀をさらに含んでもよい。水酸化ナトリウム及びシアン化ナトリウムは、約11~12の範囲のpH及び約0~60℃の範囲の温度とすることができる。溶出容器内の水酸化ナトリウム及びシアン化ナトリウムの溶液は、リサイクル溶液タンクから受け取ることができる。
【0018】
本発明の方法はさらに、沈殿タンク内で生じたガス状流出物をガスクラバー内で受け取ることを含むことができる。ガス状流出物はシアン化水素ガスであり得る。シアン化水素ガスは、ガススクラバー内で水酸化ナトリウム溶液に接触させて、シアン化ナトリウム溶液を生成することができる。シアン化ナトリウム溶液は、ガススクラバーから取り出すことができる。
【0019】
本発明の方法はさらに、任意選択で、生産タンク内で固体のシアン化銅を水に接触させることを含む。固体のシアン化銅は、生産タンク内で、周囲温度で水酸化ナトリウム溶液に接触させることができ、さらに任意選択で、生産タンク内でエアースパージングを行うことができる。生産タンク内のNaOH:CuCNのモル比は2~0.1の範囲(例えば、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2)、好ましくは0.84以上とすることができる。CuCNとしての固体パーセントは5%~50%の範囲(例えば、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%)とすることができる。生産タンク内のNaOHの投与率は、銅kg当たり少なくとも0.265kg(例えば、少なくとも0.295kg)のNaOHとすることができる。
【0020】
酸化銅スラリーは、酸化銅(I)及び/または酸化銅(II)を含むことができる。酸化銅中で70%以上(例えば、75%、80%、85%、90%)の銅を回収することができる。
【0021】
第2の分離デバイス内に存在する任意の残留水酸化ナトリウムは、リサイクル溶液タンク、ガススクラバー、生産タンク、またはこれらの任意の組合せに戻してリサイクルすることができる。
【0022】
また本発明は、本発明の方法を実施するためのシステムにも関する。例えば、本発明は、シアン化銅を酸化銅に変換するためのシステムであって、
シアン化銅溶液を酸性溶液に接触させてシアン化銅スラリーを生成するための沈殿タンクであって、
任意選択で、当該沈殿タンクが、当該シアン化銅スラリーを放出するための第1の出力ポートを有し、
任意選択で、当該沈殿タンクが、当該沈殿タンク内で生じたガス状流出物を放出するための第2の出力ポートを有する、沈殿タンクと、
当該シアン化銅スラリーを受け取り、当該シアン化銅スラリーから固体のシアン化銅を分離するための第1の分離デバイスであって、
任意選択で、当該第1の分離デバイスが、当該固体のシアン化銅を放出するための第3の出力ポートを有し、
任意選択で、当該第1の分離デバイスが、当該第1の分離デバイス内で生じた液体流出物を放出するための第4の出力ポートを有する、第1の分離デバイスと、
当該固体のシアン化銅を受け取り、当該固体のシアン化銅を水酸化ナトリウム溶液に接触させて酸化銅スラリーを生成するための生産タンクであって、
任意選択で、当該生産タンクが、当該酸化銅スラリーを放出するための第5の出力ポートを有する、生産タンクと、
当該酸化銅スラリーを受け取り、当該酸化銅スラリーから固体の酸化銅を分離するための第2の分離デバイスであって、
任意選択で、当該第2の分離デバイスが、当該固体の酸化銅を放出するための第6の出力ポートを有し、
任意選択で、当該第2の分離デバイスが、当該固体のシアン化銅を当該生産タンク内で当該酸化銅スラリーに変換する当該プロセス中に反応しなかった任意の残留水酸化ナトリウムを放出するための第7の出力ポートを有する、第2の分離デバイスとを含む、システムに関する。
【0023】
酸性溶液は、硫酸、硝酸、及び塩酸からなる群より選択することができる。
【0024】
沈殿タンクは、シアン化銅溶液を受け取るための第1の入力ポートと、酸性溶液を受け取るための第2の入力ポートとを含むことができる。シアン化銅溶液を受け取るための第1の入力ポートは、溶出容器に接続させることができる。溶出容器は、銅を含む活性炭を受け取るための固体入力ポートと、水酸化ナトリウム及びシアン化ナトリウムの溶液を受け取るための液体入力ポートとを含むことができる。銅を含む活性炭は、金及び/または銀をさらに含んでもよい。銅を含む活性炭を、水酸化ナトリウム及びシアン化ナトリウムの溶液に接触させてシアン化銅溶液を含む溶出物を生成することができる。水酸化ナトリウム及びシアン化ナトリウムの溶液は、約11~12の範囲のpH及び約0~60℃の範囲の温度とすることができる。
【0025】
本明細書で使用する場合、「ポート」という用語は、固体及び/または流体を取り入れるまたは放出するための任意の開口部を意味する。
【0026】
水酸化ナトリウム及びシアン化ナトリウムの溶液を受け取るための液体入力ポートは、水酸化ナトリウム及びシアン化ナトリウムの溶液を収容するリサイクル溶液タンクに接続させることができる。
【0027】
沈殿タンクの第2の出力ポートは、沈殿タンク内で生じたガス状流出物を受け取るためのガススクラバーに接続させることができる。ガス状流出物はシアン化水素ガスであり得る。シアン化水素ガスは、ガススクラバー内で水酸化ナトリウム溶液に接触させて、シアン化ナトリウム溶液を生成することができる。ガススクラバーは、水酸化ナトリウム溶液を受け取るための液体入力ポートと、シアン化ナトリウム溶液を取り出すための液体出力ポートとを含むことができる。
【0028】
固体のシアン化銅を受け取るための生産タンクは、水酸化ナトリウム溶液を受け取るための第1の液体入力ポートと、任意選択で、水を受け取るための第2の液体入力ポートを含むことができる。固体のシアン化銅は、生産タンク内で、周囲温度で水酸化ナトリウム溶液に接触させることができ、さらに、任意選択で、生産タンク内でエアースパージングを行うことができる。生産タンク内のNaOH:CuCNのモル比は2~0.1の範囲(例えば、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2)、好ましくは0.84以上である。CuCNとしての固体パーセントは5%~50%の範囲(例えば、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%)である。生産タンク内のNaOHの投与量は、銅kg当たり少なくとも0.265kg(例えば、少なくとも0.295kg)のNaOHである。
【0029】
酸化銅スラリーは、酸化銅(I)及び/または酸化銅(II)を含むことができる。酸化銅中で70%以上(例えば、75%、80%、85%、90%)の銅を回収することができる。
【0030】
第2の分離デバイス内に存在する任意の残留水酸化ナトリウムは、リサイクル溶液タンク、ガススクラバー、生産タンク、またはこれらの任意の組合せに戻してリサイクルすることができる。
【0031】
図1は、金及び銅が装填された活性炭から金を溶出する間に生成されるCuCNからCuO固体を抽出する方法を実施するための例示的なシステムの概略図である。活性炭は、金以外にまたは金に加えて、他の金属(例えば、銀)及び材料を含んでもよい。さらに、議論の中心とならないプロセス設備は省略されている。したがって、当業者は、
図1に示されていないポンプ、熱交換器、及びタンクが必要であり得ることを理解している。
【0032】
システム600は、リサイクル溶液タンク601、溶出容器603、CuCN沈殿タンク605、ガススクラバー607、第1の固体/液体分離容器609、CuO生産タンク611、及び第2の固体/液体分離容器613を含む。
【0033】
従来の炭素吸着プロセスから生成される金及び銅を含む活性炭は、溶出容器603に装填される。
図1に示されていないが、上記で説明したように、活性炭は、金以外にまたは金に加えて、他の金属(例えば、銀)及び/または材料を含んでもよい。リサイクルタンク601は溶出容器603に接続している。水酸化ナトリウム及びシアン化ナトリウム溶液(NaOH+NaCN)が溶出容器603の底部に注入され、NaOH+NaCN溶液は、溶出容器603内に存在する活性炭を通過する。
【0034】
溶出容器603内に存在するNaOH+NaCN溶液は、高いpH(例えば、約11~12)を有し得、溶出容器内に導入される前及び/または後に加熱される。NaOH+NaCN溶液が溶出容器内の活性炭に接触すると、特に低温(例えば0~60℃)においてシアン化銅溶液が生じる。シアン化銅溶液はシアン化銅錯体溶液であり得る。シアン化銅錯体溶液は、例えば、ジシアン化物、トリシアン化物、及びテトラシアン化物の錯体、またはこれらの組合せを含むことができる。
【0035】
シアン化銅溶液を収容する溶出容器603内で生成された溶出溶液が、CuCN沈殿タンク605に加えられる。溶出溶液をCuCN沈殿タンク605に直接加えるか、または溶出溶液を貯蔵タンク(図示せず)に供給し、溶出溶液を貯蔵タンクからCuCN沈殿タンク605に動的に加えることができる。
【0036】
例示的な実施形態において、溶出溶液をCuCN沈殿タンク605に供給する前に、金を溶出溶液から抽出することができる。すなわち、特に溶液が100~120℃以下の温度範囲内にある場合、シアン化銅錯体以外に、金が溶出容器603からの溶出溶液中に含まれ得る。溶出容器103から供給される溶出物流れに金が含まれる場合、別個のプロセスを実施し、溶液がCuCN沈殿タンク605に加えられる前に金を捕捉するように流れを迂回させることができる。
【0037】
例えば、図示されていないが、溶出容器103の出口とCuCN沈殿タンク605との間にスイッチを用意して、金が溶出容器103から出力された流れから抽出されるか分離されるかに基づきスイッチを関連付けることができる。
【0038】
CuCN沈殿タンク605において、酸性溶液を溶出溶液に加え、スターラーまたはミキサー606を用いて混合溶液を撹拌する。酸性溶液は、所望のpHレベルを有する任意の酸(例えば、硫酸、硝酸、または塩酸)とすることができる。例示的な実施形態において、酸性溶液を過剰に使用せずに最大のCuCN沈殿を達成するために、酸性溶液のpHは2~3である。
【0039】
CuCN沈殿タンク605は、CuCN沈殿タンク605内で生成されたシアン化水素(HCN)ガスをガススクラバー607に抽出するためのガス抽出システムを含むことができる。すなわち、溶出溶液は高pHでCuCN沈殿タンク605に入り、pHを下げるために酸性溶液が加えられる。CuCN沈殿タンク605内でpHが低下するに伴ってHCNガスが生成される。
【0040】
HCNガスがガススクラバー607に抽出された後、NaOH溶液をガススクラバー607内の抽出HCNガスに加えて、NaCN溶液を作出することができる。このNaCN溶液は、様々なプロセスで再利用またはリサイクルすることができる。
【0041】
HCNガスが抽出された後のCuCN沈殿タンク605内に残存する溶液はスラリーである。このスラリーは、次にCuCN沈殿タンク605から第1の固体/液体分離タンク609に出力される。例えば、第1の固体/液体分離タンク609は、残りの溶液からCuCN固体を濾過するフィルターであり得る。固体はCuO生産タンク611に入力することができ、pHがより低い残りの溶液は、第1の固体/液体分離タンク609から取り出し、プロセス全体でリサイクルすることができる。この溶液は低いpHを有し得、CuCN沈殿タンク605に戻すことができる。CuCN沈殿タンク605で使用される溶液の量は、メインプロセス溶液よりも少なくてもよく、そのため酸性溶液を容易に中和し、プロセスにリサイクルすることができる。
【0042】
CuCN固体がCuO生産タンク611に導入された後、水及びNaOHがCuO生産タンク611に加えられる。すなわち、CuOを水で再パルプ化し、その溶液をアジテーターまたはミキサー612を用いて撹拌することができる。次にNaOHがCuO生産タンク611に加えられ、得られた溶液が約1時間撹拌される。
【0043】
CuO生産タンク611から出力された溶液は、次に溶液からCuO固体を濾過で取り除くために第2の固体/液体分離タンク613に入力される。濾過された溶液は、リサイクル溶液タンク601、ガススクラバー607、CuO生産タンク611、または同様の溶液を使用する他の任意のプロセスにリサイクルして、溶液を再利用することができる。
【実施例】
【0044】
実施例
【0045】
CuCNとしての固体パーセント及び水酸化ナトリウム(NaOH):CuCNのモル比を周囲温度で変化させることにより、シアン化第一銅(CuCN)→酸化銅の変換について調べた。分析グレードのシアン化銅及び水酸化ナトリウム、ならびに1時間の反応時間を使用した。NaOHを加えた後のスラリーの温度、pH、及び酸化還元電位(ORP)の変動をモニターした。合計11回の試験を周囲温度で行った。各試験からのスラリーを反応終了時に濾過した。濾液の銅、総シアン化物、弱酸解離性(WAD)シアン化物、アルカリ度(リットル当たりグラムの水酸化ナトリウムとして)、及びpHをアッセイした。濾過した固体の銅をアッセイした。調べたパラメーターについて表1にまとめる。
【表1】
【0046】
作業の焦点は、溶液中の銅の最適かつ最高パーセントの固体及び濃度を定義することにあった。以下に基づいてCuCNから種々の酸化銅に変換した。
【化1】
【0047】
結果及び考察
【0048】
表2では、変換した生成物における銅回収率及び銅グレードを比較している。変換した生成物の色は黒色~褐色がかった黒色、緑がかった黄色に及び、このことから様々な銅化合物が存在したことが示される。生成物中の銅グレードは78~89%の範囲であり、このことからいくつかの銅化合物が存在したことが裏付けられる。
酸化第二銅(CuO)に含まれる銅の理論的グレードは79.9%、酸化第一銅(Cu
2O)の理論的グレードは88.8%である。
【表2】
【0049】
最も高い銅グレード89.4%は、固体20%及び初期NaOH:CuCNモル比0.84で達成された。生成物における対応する銅回収率は76%であった。このことから、最初のCuCNが0.84以上のモル比でCu2Oに変換されることが示される。最も高い回収率81%は固体30%で達成されている。モル比0.75は、比0.56よりもはるかに高い生成物中の銅グレードが得られている固体30%及びモル比0.75で観察された唯一の支障は、スラリーの粘性が高すぎ、結果的に撹拌が不十分だったことである。
【0050】
図2は、初期NaOH:CuCNモル比が生成物中の銅グレードに及ぼす影響を示している。モル比0.84未満では平均およそ80%の銅グレードが得られ、一方モル比0.84超では88%に近い銅グレードが得られた。これは、モル比が低いとCuOが生成され、モル比が高いとCu
2Oが生成されることを含意する。
【0051】
図3に示されているように、最初のNaOH:CuCNのモル比はNaOHの消費量にも影響を及ぼした。モル比が高いほどNaOHの消費が少なかった。モル比が0.84超の場合、50%未満のNaOHが消費される。最も高い銅グレードが得られるモル比の場合、プロセス中に消費するNaOHの量も少ない。反応中に消費されなかった任意の残りのNaOHは、CuCN変換回路または溶出回路に戻してリサイクルすることができる。
【0052】
溶液アッセイを用いて逆算アッセイを裏付けるため、濾過した固体をXRDに供した。表3を参照。XRDからは、Cuグレードが最も高い試験4ではCuOも最も多い76%であることが示された。最も多いCuOは、加熱及びエアースパージング条件により達成され、CuOグレードは78%であった。しかし、加熱及びエアースパージングでは変換率がわずか2%しか改善されなかった。この2%の増加は、加熱しない選択肢と比較して経済的に有益ではない可能性がある。
【表3】
【0053】
固体におけるリットル当たりグラム(gpl)単位での残留NaOH及び銅グレードについてさらに理解するため、固体20%条件を使用した。
図4は、リットル当たりグラムの残留NaOH及び固体銅グレードの変動を示している。CuOの生成には20gplの残留NaOHが必要である。
図5に示されているように、濾液中の銅のパーセントは、残留NaOHに依存しないことが分かった。全ての試験条件において、フィード中のおよそ25%の銅が濾液中に回収された。
【0054】
図6は、NaOH消費量(フィード中の銅kg当たりのNaOH kg)と生成物中の銅グレードとの間の関係を示している。フィード中の銅キログラム当たり水酸化ナトリウム0.295キログラムを消費することで、88%超のCu(酸化第一銅)の銅生成物を生産することができる。これは、固体10%においてリットル当たり21グラム(gpl)のNaOHに相当する。
【0055】
固体の%が低いほど、0.6超のNaOH:CuCNのモル比におけるNaOH消費量が少なくなる。したがって、資本コストと操業コストとで折り合いをつけなければならない。固体パーセントが高いほど資本コストが最適化され、固体パーセントが低いほど操業コストが最適化される。フィード中の銅kg当たりNaOH 0.265kgを消費することで、約80%の銅を含む生成物(酸化第二銅)が得られる。低グレードの酸化銅を生成して回収コスト及び操業コストの両方を最適化することができる。
【0056】
結論
【0057】
CuCNからCuOへの変換は、周囲温度でNaOHを用いて達成することができる。以下の結論が引き出された。
●固体生成物において最も高い銅グレードは、NaOH:CuCNのモル比0.84以上で達成された。
●フィード中のおよそ25%の銅が濾液中に回収された。
●固体30%で最も高いレベルの銅回収率が得られたものの、スラリーの粘性が高すぎた。
●最小限求められる消費率として銅kg当たり0.265kgのNaOHが酸化第二銅の作製に必要であった。酸化第一銅には、フィード中の銅kg当たり0.295kgというより高いNaOH投与率が必要であった。
●固体パーセントが低いほどNaOH消費が少なくなるため操業コストが最適化され、固体パーセントが高いほど資本コストが最適化される。
●NaOH:CuCNのモル比が高いほど、NaOH消費率は低いものとなった。このことは、濾液をCuCN変換回路または溶出回路のいずれにも戻してリサイクルすることができることを意味する。
【0058】
シアン化銅を酸化第二銅に変換するプロセスは、出荷及び処理においてより実行可能な選択肢をもたらし、このプロセスを経済的及び環境的観点から有利にする。
【0059】
例示的な実施形態
【0060】
E1.シアン化銅を酸化銅に変換するための方法であって、
シアン化銅溶液を、シアン化銅スラリーを生成するのに十分な反応条件下、沈殿タンク内で酸性溶液に接触させるステップと、
前記沈殿タンクから前記シアン化銅スラリーを取り出すステップと、
任意選択で、前記沈殿タンク内で生じたガス状流出物を取り出すステップと、
第1の分離デバイス内で、前記シアン化銅スラリーから固体のシアン化銅を分離するステップと、
前記第1の分離デバイスから前記固体のシアン化銅を取り出すステップと、
任意選択で、前記第1の分離デバイス内の液体流出物を取り出すステップと、
前記固体のシアン化銅を、酸化銅スラリーを生成するのに十分な反応条件下、生産タンク内で水酸化ナトリウム溶液に接触させるステップと、
前記生産タンクから前記酸化銅スラリーを取り出すステップと、
第2の分離デバイス内の前記酸化銅スラリーから固体の酸化銅を分離するステップと、
任意選択で、前記第2の分離デバイスから前記固体の酸化銅を取り出すステップと、
任意選択で、前記固体のシアン化銅を前記生産タンク内で前記水酸化ナトリウム溶液に接触させる前記プロセス中に反応しなかった任意の残留水酸化ナトリウムを、前記第2の分離デバイスから取り出すステップとを含む、前記方法。
【0061】
E2.前記酸性溶液が硫酸、硝酸、及び塩酸からなる群より選択される、E1に記載の方法。
【0062】
E3.前記沈殿タンク内の前記シアン化銅溶液を溶出容器から受け取ることをさらに含む、E1またはE2に記載の方法。
【0063】
E4.銅を含む活性炭を、前記溶出容器内で、水酸化ナトリウム及びシアン化ナトリウムの溶液に接触させて前記シアン化銅溶液を含む溶出物を生成することをさらに含む、E3に記載の方法。
【0064】
E5.前記銅を含む活性炭が金及び/または銀をさらに含む、E4に記載の方法。
【0065】
E6.前記水酸化ナトリウム及びシアン化ナトリウムの溶液が、約11~12の範囲のpH及び約0~60℃の範囲の温度である、E5に記載の方法。
【0066】
E7.前記溶出容器内の前記水酸化ナトリウム及びシアン化ナトリウムの溶液をリサイクル溶液タンクから受け取ることをさらに含む、E3~E6のいずれか1つに記載の方法。
【0067】
E8.前記沈殿タンクで生じたガス状流出物をガスクラバー内で受け取ることをさらに含む、E1~E7のいずれか1つに記載の方法。
【0068】
E9.前記ガス状流出物がシアン化水素ガスである、E8に記載の方法。
【0069】
E10.前記シアン化水素ガスを、前記ガススクラバー内で、水酸化ナトリウム溶液に接触させてシアン化ナトリウム溶液を生成することをさらに含む、E9に記載の方法。
【0070】
E11.前記ガススクラバーから前記シアン化ナトリウム溶液を取り出すことをさらに含む、E10に記載の方法。
【0071】
E12.任意選択で、前記固体のシアン化銅を、前記生産タンク内で水に接触させることをさらに含む、E1~E11のいずれか1つに記載の方法。
【0072】
E13.前記固体のシアン化銅が、前記生産タンク内で、周囲温度で前記水酸化ナトリウム溶液と接触される、E1~E12のいずれか1つに記載の方法。
【0073】
E14.前記生産タンク内でエアースパージングを行うことさらに含む、E1~E13のいずれか1つに記載の方法。
【0074】
E15.前記生産タンク内のNaOH:CuCNのモル比が2~0.1の範囲(例えば、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2)、好ましくは0.84以上である、E1~E14のいずれか1つに記載の方法。
【0075】
E16.CuCNとしての固体パーセントが5%~50%の範囲(例えば、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%)である、E1~E15のいずれか1つに記載の方法。
【0076】
E17.前記生産タンク内のNaOHの投与率が、銅kg当たり少なくとも0.295kgのNaOHである、E1~E16のいずれか1つに記載の方法。
【0077】
E18.前記生産タンク内のNaOHの投与率が、銅kg当たり少なくとも0.265kgのNaOHである、E1~E17のいずれか1つに記載の方法。
【0078】
E19.前記酸化銅スラリーが酸化銅(I)及び/または酸化銅(II)を含む、E1~E18のいずれか1つに記載の方法。
【0079】
E20.前記酸化銅中で70%以上(例えば、75%、80%、85%、90%)の銅が回収される、E19に記載の方法。
【0080】
E21.前記第2の分離デバイス内に存在する任意の残留水酸化ナトリウムを、前記リサイクル溶液タンク、前記ガススクラバー、前記生産タンク、またはこれらの任意の組合せに戻してリサイクルすることをさらに含む、E8~E20のいずれか1つに記載の方法。
【0081】
E22.シアン化銅を酸化銅に変換するためのシステムであって、
シアン化銅溶液を酸性溶液に接触させてシアン化銅スラリーを生成するための沈殿タンクであって、
任意選択で、前記沈殿タンクが、前記シアン化銅スラリーを放出するための第1の出力ポートを有し、
任意選択で、前記沈殿タンクが、前記沈殿タンク内で生じたガス状流出物を放出するための第2の出力ポートを有する、前記沈殿タンクと、
前記シアン化銅スラリーを受け取り、前記シアン化銅スラリーから固体のシアン化銅を分離するための第1の分離デバイスであって、
任意選択で、前記第1の分離デバイスが、前記固体のシアン化銅を放出するための第3の出力ポートを有し、
任意選択で、前記第1の分離デバイスが、前記第1の分離デバイス内で生じた液体流出物を放出するための第4の出力ポートを有する、前記第1の分離デバイスと、
前記固体のシアン化銅を受け取り、前記固体のシアン化銅を水酸化ナトリウム溶液に接触させて酸化銅スラリーを生成するための生産タンクであって、
任意選択で、前記生産タンクが、前記酸化銅スラリーを放出するための第5の出力ポートを有する、前記生産タンクと、
前記酸化銅スラリーを受け取り、前記酸化銅スラリーから固体の酸化銅を分離するための第2の分離デバイスであって、
任意選択で、前記第2の分離デバイスが、前記固体の酸化銅を放出するための第6の出力ポートを有し、
任意選択で、前記第2の分離デバイスが、前記固体のシアン化銅を前記生産タンク内で前記酸化銅スラリーに変換する前記プロセス中に反応しなかった任意の残留水酸化ナトリウムを放出するための第7の出力ポートを有する、前記第2の分離デバイスとを含む、前記システム。
【0082】
E23.前記沈殿タンクが、前記シアン化銅溶液を受け取るための第1の入力ポートと、前記酸性溶液を受け取るための第2の入力ポートとを有する、E22に記載のシステム。
【0083】
E24.前記酸性溶液が硫酸、硝酸、及び塩酸からなる群より選択される、E22またはE23に記載のシステム。
【0084】
E25.前記シアン化銅溶液を受け取るための前記第1の入力ポートが溶出容器に接続している、E22~E24のいずれか1つに記載のシステム。
【0085】
E26.前記溶出容器が、銅を含む活性炭を受け取るための固体入力ポートと、水酸化ナトリウム及びシアン化ナトリウムの溶液を受け取るための液体入力ポートとを有する、E25に記載のシステム。
【0086】
E27.前記銅を含む活性炭が金及び/または銀をさらに含む、E26に記載のシステム。
【0087】
E28.前記銅を含む活性炭が、前記水酸化ナトリウム及びシアン化ナトリウムの溶液と接触されて前記シアン化銅溶液を含む溶出物を生成する、E27に記載のシステム。
【0088】
E29.前記水酸化ナトリウム及びシアン化ナトリウムの溶液が、約11~12の範囲のpH及び約0~60℃の範囲の温度である、E28に記載のシステム。
【0089】
E30.前記水酸化ナトリウム及びシアン化ナトリウムの溶液を受け取るための前記液体入力ポートが、前記水酸化ナトリウム及びシアン化ナトリウムの溶液を収容するリサイクル溶液タンクに接続している、E22~E29のいずれか1つに記載のシステム。
【0090】
E31.前記沈殿タンクの前記第2の出力ポートが、前記沈殿タンク内で生じた前記ガス状流出物を受け取るためのガススクラバーに接続している、E22~E30のいずれか1つに記載のシステム。
【0091】
E32.前記ガス状流出物がシアン化水素ガスである、E31に記載のシステム。
【0092】
E33.前記シアン化水素ガスが、前記ガススクラバー内で、水酸化ナトリウム溶液と接触されてシアン化ナトリウム溶液を生成する、E32に記載のシステム。
【0093】
E34.前記ガススクラバーが、前記水酸化ナトリウム溶液を受け取るための液体入力ポートと、前記シアン化ナトリウム溶液を取り出すための液体出力ポートとを有する、E33に記載のシステム。
【0094】
E35.前記固体のシアン化銅を受け取るための前記生産タンクが、前記水酸化ナトリウム溶液を受け取るための第1の液体入力ポートと、任意選択で、水を受け取るための第2の液体入力ポートとを有する、E22~E34のいずれか1つに記載のシステム。
【0095】
E36.前記固体のシアン化銅が、前記生産タンク内で、周囲温度で前記水酸化ナトリウム溶液と接触される、E22~E35のいずれか1つに記載のシステム。
【0096】
E37.前記固体のシアン化銅が、前記生産タンク内で、約40~50℃で前記水酸化ナトリウム溶液と接触される、E22~E35のいずれか1つに記載のシステム。
【0097】
E38.前記生産タンク内でエアースパージングを行うことさらに含む、E22~E37のいずれか1つに記載のシステム。
【0098】
E39.前記生産タンク内のNaOH:CuCNのモル比が2~0.1の範囲(例えば、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2)、好ましくは0.84以上である、E22~E38のいずれか1つに記載のシステム。
【0099】
E40.CuCNとしての固体パーセントが5%~50%の範囲(例えば、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%)である、E22~E39のいずれか1つに記載のシステム。
【0100】
E41.前記生産タンク内のNaOHの投与率が、銅kg当たり少なくとも0.295kgのNaOHである、E22~E40のいずれか1つに記載のシステム。
【0101】
E42.前記生産タンク内のNaOHの投与率が、銅kg当たり少なくとも0.265kgのNaOHである、E22~E40のいずれか1つに記載のシステム。
【0102】
E43.前記酸化銅スラリーが酸化銅(I)及び/または酸化銅(II)を含む、E22~E42のいずれか1つに記載のシステム。
【0103】
E44.前記酸化銅中で70%以上(例えば、75%、80%、85%、90%)の銅が回収される、E22~E43に記載のシステム。
【0104】
E45.前記第2の分離デバイス内に存在する任意の残留水酸化ナトリウムが、前記リサイクル溶液タンク、前記ガススクラバー、前記生産タンク、またはこれらの任意の組合せに戻してリサイクルされる、E31~E44のいずれか1つに記載のシステム。
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