(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】医用画像の移動検出と補正の方法、システム及びコンピュータ読み可能な媒体
(51)【国際特許分類】
G01T 1/161 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
G01T1/161 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533246
(86)(22)【出願日】2022-12-05
(85)【翻訳文提出日】2024-06-03
(86)【国際出願番号】 CN2022136636
(87)【国際公開番号】W WO2023103975
(87)【国際公開日】2023-06-15
(32)【優先日】2021-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524210208
【氏名又は名称】柯▲紀▼▲綸▼
【氏名又は名称原語表記】KO, Chi-Lun
【住所又は居所原語表記】No. 1, Sec. 4, Roosevelt Rd., Taipei, Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柯▲紀▼▲綸▼
(72)【発明者】
【氏名】▲顏▼若芳
(72)【発明者】
【氏名】▲鄭▼媚方
【テーマコード(参考)】
4C188
【Fターム(参考)】
4C188EE02
4C188FF04
4C188FF07
4C188KK24
4C188LL10
(57)【要約】
【課題】医用画像の移動検出と補正の方法、システム及びコンピュータ読み可能な媒体を提供する。
【解決手段】標的器官に関する医用画像をリストモードデータに基づいて複数のフレーム画像に分割し、該複数のフレーム画像内の関心領域の複数の重心を解析して、スキャン期間中の標的器官の運動曲線を算出し、該運動曲線に基づいて医用画像の再構築および最適化を行う。これにより別途監視装置を追加的に設置することなく、人体の器官または病巣の動きを考慮して、医用画像の移動検出と補正を行うことができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的器官のリストモードデータに対応する医用画像に対して最適化処理を実行するようコマンドを出すユーザインターフェースを提供する管理プラットフォームと、
前記コマンドに基づいて前記医用画像の前記最適化処理を行う最適化装置と、を備え、
前記最適化処理は、
前記医用画像に対応するリストモードデータを、固定時間次元を有する複数のフレームに分割し、各フレームを複数のフレーム画像として画像化する工程と、
前記標的器官を含むように各前記フレーム画像内に関心領域をラベリングする工程と、
各前記フレーム画像の前記関心領域に基づいて前記標的器官の運動曲線を算出する工程と、
前記運動曲線に基づいて前記医用画像を再構築する工程と、
再構築された前記医用画像を前記ユーザインターフェースに表示する工程と、
を含むことを特徴とする、医用画像の移動検出と補正のシステム。
【請求項2】
前記最適化装置は、深層学習モジュールを備え、
各フレーム画像において前記関心領域をラベリングする工程では、
前記深層学習モジュールにより各前記フレーム画像において前記標的器官を含むバイナリセグメンテーション領域を識別する工程と、
前記深層学習モジュールにより前記バイナリセグメンテーション領域をぼかしてソフトマスクを生成する工程と、
前記深層学習モジュールにより各前記ソフトマスクを各前記フレーム画像に適用する工程と、
前記深層学習モジュールにより、各前記ソフトマスクに基づいて、各前記フレーム画像中の前記標的器官に初期の楕円球面でフィットさせる工程と、
前記深層学習モジュールにより各前記初期の楕円球面をその半径に従って予め設定された距離だけ外側に拡大し、前記関心領域を表す楕円球面を生成する工程と、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
各前記フレーム画像の前記関心領域に基づいて前記標的器官の運動曲線を算出する工程では、
前記関心領域を第1のサブ関心領域と第2のサブサブ関心領域とに分割する工程と、
前記第1のサブ関心領域の第1の重心および前記第2のサブ関心領域の第2の重心の3次元座標を前記フレーム画像の記述値としてそれぞれ抽出する工程と、
主成分分析により各前記フレーム画像の前記記述値の次元削減を行い、次元削減後の各前記記述値の最大特徴を前記標的器官の移動及び/または回転の信号とする工程と、
前記各移動及び/または回転の信号に基づいて各前記フレーム画像をグループ分けおよびフィルタリングして、前記運動曲線を算出する工程と、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記標的器官は心臓であり、各前記関心領域を前記第1のサブ関心領域及び前記第2のサブ関心領域への分割は、前記心臓の長軸に沿って短軸方向で行われることを特徴とする、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記運動曲線が人体の頭尾軸、左右軸および腹背軸のいずれか1つに対して描画され、
前記運動曲線に基づいて前記医用画像を再構築する工程では、
各前記フレーム画像から基準オブジェクトを選定する工程と、
前記運動曲線を参照として各前記フレーム画像の動作補償を行う工程と、を含み、
前記動作補償は、
前記基準オブジェクトに対して、各前記フレーム画像に含まれる前記基準オブジェクト以外の全ての画素を、それらの3次元座標に基づいて前記頭尾軸、前記左右軸及び前記腹背軸のいずれか1つにおいて調整作業する工程と、
前記調整作業後の各前記フレーム画像の統合と前記基準オブジェクトとの相関係数が最大値に達するまで、前記各フレーム画像の調整作業を繰り返し実行する工程と、
前記動作補償された各前記フレーム画像を統合して前記医用画像として再構築する工程と、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
さらに、前記各重心に基づいて前記標的器官の運動曲線を算出した後、かつ、各前記フレーム画像の各前記関心領域が前記運動曲線に正確に対応していない場合では、前記最適化装置は、前記最適化処理を実行し、また、各前記フレーム画像のうち、人体の呼吸及び/または心拍の周期段階で定義される時間及び/または位置関係が類似したフレーム画像を予め設定された数のゲーティングセット画像として統合する、各前記フレーム画像のゲーティングを行うことを特徴とする、請求項3に記載のシステム。
【請求項7】
前記運動曲線が前記人体の頭尾軸、左右軸及び腹背軸のいずれか1つに対して描画され、前記運動曲線に基づいて前記医用画像を再構築する工程では、
各前記ゲーティングセット画像から基準オブジェクトを選定する工程と、
前記運動曲線を参照として各前記ゲーティングセット画像の動作補償を行う工程と、
を含み、
各前記ゲーティングセット画像の動作補償では、
前記基準オブジェクトに対して、各ゲーティングセット画像に含まれる前記基準オブジェクト以外の全ての画素を、それらの3次元座標に基づいて前記頭尾軸、前記左右軸及び前記腹背軸のいずれか1つにおいて調整作業する工程と、
前記調整作業後の各前記フレーム画像の統合と前記基準オブジェクトとの相関係数が最大値に達するまで、各前記ゲーティングセット画像の調整作業を繰り返し実行する工程と、
前記動作補償された各前記ゲーティングセット画像を統合して前記医用画像として再構築する工程と、
を含むことを特徴とする、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記固定時間次元は100ミリ秒~500ミリ秒単位であることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記標的器官を撮影して前記医用画像を取得するためのスキャン装置であって、単一光子放射コンピュータ断層撮影、陽電子放射断層撮影装置、磁気共鳴画像装置及びコンピュータ断層撮影装置からなる群のうちのいずれか1つ又はそれらの組み合わせから選択されるスキャン装置と、
前記医用画像と再構築された前記医用画像とを保存する医用画像保存伝送システムと、
前記医用画像及び再構築された前記医用画像を検索や表示する診察室レポートコンピュータと、
をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
標的器官のリストモードデータに対応する医用画像を取得する工程と、
前記医用画像に対応するリストモードデータを、固定時間次元を有する複数のフレームに分割し、各前記フレームを複数のフレーム画像として画像化する工程と、
前記標的器官を含むように各前記フレーム画像内に関心領域をラベリングする工程と、
各前記フレーム画像の前記関心領域に基づいて前記標的器官の運動曲線を算出する工程と、
前記運動曲線に基づいて前記医用画像を再構築する工程と、
を含むことを特徴とする、医用画像の移動検出と補正の方法。
【請求項11】
前記標的器官を含むように各前記フレーム画像内に関心領域をラベリングする工程では、
深層学習モジュールにより各前記フレーム画像において前記標的器官を含むバイナリセグメンテーション領域を識別する工程と、
前記深層学習モジュールにより各前記バイナリセグメンテーション領域をぼかしてソフトマスクを生成する工程と、
前記深層学習モジュールにより各前記ソフトマスクを各前記フレーム画像に適用する工程と、
前記深層学習モジュールにより、各前記ソフトマスクに基づいて、各前記フレーム画像中の前記標的器官に初期の楕円球面をフィットさせる工程と、
前記深層学習モジュールにより各前記初期の楕円球面をその半径に基づいて予め設定された距離だけ外側に拡大させ、前記関心領域を表す楕円球面を生成する工程と、
をさらに含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
各前記各フレーム画像の前記関心領域に基づいて前記標的器官の運動曲線を算出する工程では、
前記関心領域を第1のサブ関心領域と第2のサブ関心領域とに分割する工程と、
前記第1のサブ関心領域の第1の重心および前記第2のサブ関心領域の第2の重心の3次元座標をフレーム画像の記述値としてそれぞれ抽出する工程と、
主成分分析により前記各フレーム画像の前記記述値の次元削減を行い、次元削減された前記各記述値の最大特徴を前記標的器官の移動及び/または回転の信号とする工程と、
前記各移動及び/または回転の信号に基づいて各前記フレーム画像をグループ分けおよびフィルタリングして、運動曲線を算出する工程と、
を含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記標的器官は心臓であり、各前記関心領域を前記第1のサブ関心領域及び前記第2のサブ関心領域への分割は、前記心臓の長軸に沿って短軸方向で行われることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記運動曲線が人体の頭尾軸、左右軸および腹背軸のいずれか1つに対して描画され、前記運動曲線に基づいて前記医用画像を再構築する工程では、
各前記フレーム画像から基準オブジェクトを選定する工程と、
前記運動曲線を参照として各前記フレーム画像の動作補償を行う工程と、を含み、
前記動作補償は、
前記基準オブジェクトに対して、前記各フレーム画像に含まれる前記基準オブジェクト以外の全ての画素を、それらの3次元座標に基づいて前記頭尾軸、前記左右軸及び前記腹背軸のいずれか1つにおいて調整作業する工程と、
前記調整作業後の各前記フレーム画像の統合と前記基準オブジェクトとの相関係数が最大値に達するまで、各前記フレーム画像の調整作業を繰り返し実行する工程と、
前記動作補償された各前記フレーム画像を統合して前記医用画像として再構築する工程と、
を含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記各重心に基づいて前記標的器官の運動曲線を算出した後、かつ、前記各フレーム画像の前記各関心領域が前記運動曲線に正確に対応していない場合では、
各前記フレーム画像のうち、人体の呼吸及び/または心拍周期段階によって定義される時間及び/または位置関係が類似したフレーム画像を、予め設定された数のゲーティングセット画像として統合する、各前記フレーム画像のゲーティングを行う工程、をさらに含むことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記運動曲線が前記人体の前記頭尾軸、前記左右軸及び前記腹背軸のいずれか1つに対して描画され、前記運動曲線に基づいて前記医用画像を再構築する工程では、
各前記ゲーティングセット画像から基準オブジェクトを選定する工程と、
前記運動曲線を参照として各前記ゲーティングセット画像の動作補償を行う工程と、を含み、
各前記ゲーティングセット画像の動作補償では、
前記基準オブジェクトに対して、各前記ゲーティングセット画像に含まれる前記基準オブジェクト以外の全ての画素を、それらの3次元座標に基づいて前記頭尾軸、左右軸及び腹背軸のいずれか1つにおいて調整作業する工程と、
前記調整作業後の各前記ゲーティングセット画像の統合と前記基準オブジェクトとの相関係数が最大値に達するまで、各前記ゲーティングセット画像の調整作業を繰り返し実行する工程と、
前記動作補償された各前記ゲーティングセット画像を統合して前記医用画像として再構築する工程と、
を含むことを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記医用画像は、スキャン装置が前記標的器官を撮影して得られたものであり、前記スキャン装置は単一光子放射コンピュータ断層撮影、陽電子放射断層撮影装置、磁気共鳴画像装置及びコンピュータ断層撮影装置からなる群のうちのいずれか1つ又はそれらの組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記固定時間次元は、100ミリ秒~500ミリ秒単位であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
コンピュータに適用され、請求項10~18のいずれか1項に記載の医用画像の移動検出と補正の方法を実行するためのコマンドが記憶されたコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医用画像化技術に関し、特に医用画像の移動検出と補正の方法、システム及びコンピュータ読み可能な媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
精密医療の分野では、機能評価が可能な特徴を持つ核医学が欠かせない存在である。しかしながら、核医学は、検査時間が長く、スキャン中の患者の体や器官の移動によって画像がぼやけて不正確になったり、医師の判断に誤りがあったりすることがよくある。
【0003】
例えば、核医学における心筋血流イメージング(myocardial perfusion imaging、MPI)は、最も使用される検査項目であるが、患者の動きの影響を最も受けやすいものである。
図1に示すように、患者の心臓自体の収縮と拍動の挙動(図例101は、左から右に、それぞれ、心拍周期での心臓の短軸、垂直長軸、水平長軸等の次元での断面形態を示す模式図である)と、人間の呼吸の上下動の状況と(図例102は、左から右に、それぞれ、1つの呼吸周期段階における心臓の短軸、垂直長軸、水平長軸等の次元での断面形態を示す模式図である)の両者の影響によって、得られた心臓のMPI画像(図例103)の多くはぼやけており、診断が困難である。
【0004】
現在の技術では、上記の問題の解決策は、人体の心拍と呼吸変位を監視するための別途の監視装置を設置し、監視装置で測定された信号に基づいて医用画像(例えばMPI画像)を補正することである。しかしながら、この補正方法は、検出リソースを大量に消費するだけでなく、監視装置の設置不良、トラッキングエラー、またはスキャン装置との統合ができない可能性もある(例えば、市場に出回っている単一光子放射コンピュータ断層撮影(single photon emission computerized tomography、SPECT)装置は、通常、オプションとしての呼吸監視装置を有していない)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのため、別途の監視装置を設置することなく、人の器官や病巣の移動を考慮して医用画像の移動検出と補正を行うための技術は、この分野における解決しようとする極めて重要な課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示は、医用画像の移動検出と補正のためのシステムを提供するものであり、標的器官に関するリストモードデータを含む医用画像に対し最適化処理を実行するようコマンドを出すユーザインターフェースを提供するための管理プラットフォームと、該コマンドに基づいて医用画像の最適化処理を行う最適化装置と、を備え、該最適化装置による最適化処理は、該医用画像に対応するリストモードデータを固定時間次元を有するフレームに分割し、各フレームをフレーム画像として画像化する工程と、各フレーム画像内に標的器官を含む関心領域(volume of interest、VOI)をラベリングする工程と、各フレーム画像の各関心領域に基づいて標的器官の運動曲線を算出する工程と、該運動曲線に基づいて医用画像を最適化医用画像として再構築する工程と、該最適化医用画像をユーザインターフェースに表示する工程とを含む。
【0007】
本開示システムに係る少なくとも1つの実施形態において、該最適化装置は、深層学習モジュールを備え、該最適化装置が各フレーム画像において関心領域をラベリングする工程では、該深層学習モジュールにより各フレーム画像において標的器官を含むバイナリセグメンテーション領域を識別する工程と、該深層学習モジュールにより各バイナリセグメンテーション領域をぼかしてソフトマスクを生成する工程と、該深層学習モジュールにより各ソフトマスクを各フレーム画像に適用する工程と、該深層学習モジュールにより、各ソフトマスクに基づいて、各フレーム画像内の標的器官に初期の楕円球面をフィットさせる工程と、該深層学習モジュールにより各初期の楕円球面をその半径に基づいて予め設定された距離だけ外側に拡大し、各関心領域を表す楕円球面を生成する工程とを含む。
【0008】
本開示システムに係る少なくとも1つの実施形態において、該最適化装置が各フレーム画像の各関心領域に基づいて標的器官の運動曲線を算出する工程では、各関心領域を第1のサブ関心領域と第2のサブ関心領域とに分割する工程と、各第1のサブ関心領域の第1の重心(center of mass、COM)および各第2のサブ関心領域の第2の重心の3次元座標を各フレーム画像の記述値としてそれぞれ抽出する工程と、主成分分析により各フレーム画像の各記述値の次元削減を行い、次元削減後の各記述値の最大特徴を標的器官の移動/回転信号とする工程と、各移動/回転信号に基づいて各フレーム画像をグループ分けしフィルタリングして、運動曲線を算出する工程とを含む。
【0009】
本開示システムに係る少なくとも1つの実施形態において、該標的器官は心臓であり、各関心領域の第1のサブ関心領域および第2のサブ関心領域への分割は、心臓の長軸に沿って短軸方向で行われる。
【0010】
本開示システムに係る少なくとも1つの実施形態において、該運動曲線は、人体の頭尾軸、左右軸および腹背軸のいずれかに対して描画され、最適化装置が該運動曲線に基づいて医用画像を最適化医用画像として再構築する工程では、各フレーム画像から基準オブジェクトを選定する工程と、該運動曲線を参照として各フレーム画像の動作補償を行う工程とを含み、各フレーム画像の動作補償は、基準オブジェクトに対して、各フレーム画像に含まれる基準オブジェクト以外の全ての画素を、それらの3次元座標に基づいて頭尾軸、左右軸および腹背軸のいずれか1つにおいて調整作業する工程と、該調整作業後の各フレーム画像の統合と基準オブジェクトとの相関係数が最大値に達するまで、各フレーム画像の調整作業を繰り返す工程と、動作補償された各フレーム画像を統合して最適化医用画像として再構築する工程とを含む。本開示に係る少なくとも1つの具体的な実施形態において、該調整作業は、回転、変位、スケーリング、変形、またはそれらの任意の組み合わせを含むが、それらに限定されない。本開示に係るいくつかの具体的な実施形態において、該調整作業は、平行移動、回転、またはそれらの組み合わせである。
【0011】
本開示システムに係る少なくとも1つの実施形態において、各重心に基づいて標的器官の運動曲線を算出した後、かつ、各フレーム画像の各関心領域が運動曲線に正確に対応していない状況では、該最適化装置が最適化処理を行う工程では、各フレーム画像のうち、人体の呼吸及び/または心拍の周期段階で定義される時間及び/または位置関係が類似したフレーム画像を、予め設定された数のゲーティングセット(gated set)画像として統合する、各フレーム画像のゲーティング(gating)を行う工程をさらに含む。
【0012】
本開示システムに係る少なくとも1つの実施形態において、該運動曲線は、人体の頭尾軸、左右軸および腹背軸のいずれかに対して描画され、該最適化装置が該運動曲線に基づいて該医用画像を最適化医用画像として再構築する工程では、各ゲーティングセット画像から基準オブジェクトを選定する工程と、該運動曲線を参照として各ゲーティングセット画像の動作補償を行う工程とを含み、該各ゲーティングセット画像の動作補償では、基準オブジェクトに対して、各ゲーティングセット画像含まれる基準オブジェクト以外の全ての画素をそれらの3次元座標に基づいて頭尾軸、左右軸および腹背軸のいずれか一つにおいて調整作業する工程と、調整作業後の各ゲーティングセット画像の統合と基準オブジェクトとの相関係数が最大値に達するまで、各ゲーティングセット画像の調整作業を繰り返し実行する工程と、動作補償された各ゲーティングセット画像を統合して最適化医用画像として再構築する工程とを含む。
【0013】
本開示システムに係る少なくとも1つの実施形態において、該固定時間次元は、100ミリ秒~500ミリ秒単位である。
【0014】
本開示システムに係る少なくとも1つの実施形態において、標的器官を撮影して医用画像を得るためのスキャン装置であって、単一光子放射コンピュータ断層撮影、陽電子放射断層撮影(positron emission tomography、PET)装置、磁気共鳴画像(magnetic resonance imaging、MRI)装置、および、コンピュータ断層撮影(computer tomography、CT)装置のいずれか1つであるスキャン装置と、該医用画像及び該最適化医用画像の保存のための医用画像保存伝送システム(picture archiving and communication system、PACS)と、該医用画像及び該最適化医用画像の検索や表示のための診察室レポートコンピュータとをさらに備える。
【0015】
本開示は、標的器官に関するリストモード(list mode)データを含む医用画像を取得する工程と、該医用画像に対応するリストモードデータを固定時間次元を有するフレームに分割し、各フレームをフレーム画像として画像化する工程と、各フレーム画像内に標的器官を含む関心領域をラベリングする工程と、各フレーム画像の各関心領域に基づいて標的器官の運動曲線を算出する工程と、該運動曲線に基づいて医用画像を最適化医用画像として再構築する工程とを含む、医用画像の移動検出と補正の方法をさらに提供する。
【0016】
本開示方法の少なくとも1つの実施形態において、各フレーム画像における関心領域をラベリングする工程では、深層学習モジュールにより各フレーム画像において標的器官を含むバイナリセグメンテーション領域を識別する工程と、該深層学習モジュールにより各バイナリセグメンテーション領域をぼかしてソフトマスクを生成する工程と、該深層学習モジュールにより各ソフトマスクを各フレーム画像に適用する工程と、該深層学習モジュールにより、各ソフトマスクに基づいて、各フレーム画像内の標的器官に初期の楕円球面をフィットさせる工程と、該深層学習モジュールにより各初期の楕円球面をその半径に基づいて予め設定された距離だけ外側に拡大し、各関心領域を表す楕円球面を生成する工程と、を含む。
【0017】
本開示方法に係る少なくとも1つの実施形態において、各フレーム画像の各関心領域に基づいて標的器官の運動曲線を算出する工程では、各関心領域を第1のサブ関心領域と第2のサブ関心領域とに分割する工程と、各第1のサブ関心領域の第1の重心および各第2のサブ関心領域の第2の重心の3次元座標を各フレーム画像の記述値としてそれぞれ抽出する工程と、主成分分析により各フレーム画像の各記述値の次元削減を行い、次元削減後の各記述値の最大特徴を標的器官の移動/回転信号とする工程と、各移動/回転信号に基づいて各フレーム画像をグループ分けしフィルタリングして、該運動曲線を算出する工程と、を含む。
【0018】
本開示に係る方法の少なくとも1つの実施形態において、該標的器官は心臓であり、各関心領域を第1のサブ関心領域および第2のサブ関心領域への分割は、心臓の長軸に沿って短軸の方向で行われる。
【0019】
本開示に係る方法の少なくとも1つの実施形態において、該運動曲線は、人体の頭尾軸、左右軸および腹背軸のいずれかに対して描画され、該運動曲線に基づいて医用画像を最適化医用画像として再構築する工程では、各フレーム画像から基準オブジェクトを選定する工程と、該運動曲線を参照として各フレーム画像の動作補償を行う工程とを含み、各フレーム画像の該動作補償は、基準オブジェクトに対して、各フレーム画像に含まれる基準オブジェクト以外の全ての画素を、それらの3次元座標に基づいて頭尾軸、左右軸および腹背軸のいずれか1つにおいて調整作業する工程と、該調整作業後の各フレーム画像の統合と基準オブジェクトとの相関係数が最大値に達するまで、各フレーム画像の調整作業を繰り返す工程と、動作補償された各フレーム画像を統合して最適化医用画像として再構築する工程とを含む。
【0020】
本開示に係る方法の少なくとも1つの実施形態において、各重心に基づいて標的器官の運動曲線を算出した後、かつ、各フレーム画像の各関心領域が運動曲線に正確に対応していない状況では、各フレーム画像のうち、人体の呼吸及び/または心拍の周期段階で定義される時間及び/または位置関係が類似したフレーム画像を、予め設定された数のゲーティングセット(gated set)画像として統合する、各フレーム画像のゲーティング(gating)を行う工程をさらに含む。
【0021】
本開示方法に係る少なくとも1つの実施形態において、該運動曲線は、人体の頭尾軸、左右軸および腹背軸のいずれかに対して描画され、該運動曲線に基づいて該医用画像を最適化医用画像として再構築する工程では、各ゲーティングセット画像から基準オブジェクトを選定する工程と、該運動曲線を参照として各ゲーティングセット画像の動作補償を行う工程とを含み、該各ゲーティングセット画像の動作補償では、基準オブジェクトに対して、各ゲーティングセット画像に含まれる基準オブジェクト以外の全ての画素をそれらの3次元座標に基づいて該頭尾軸、該左右軸および該腹背軸のいずれか一つにおいて調整作業する工程と、調整作業後の各ゲーティングセット画像の統合と基準オブジェクトとの相関係数が最大値に達するまで、各ゲーティングセット画像の調整作業を繰り返し実行する工程と、動作補償された各ゲーティングセット画像を統合して最適化医用画像として再構築する工程とを含む。
【0022】
本開示方法に係る少なくとも1つの実施形態において、該医用画像は標的器官をスキャン装置で撮影したものであり、該スキャン装置は、単一光子放射コンピュータ断層撮影、陽電子放射断層撮影装置、磁気共鳴画像装置、および、コンピュータ断層撮影装置のいずれか1つである。
【0023】
本開示に係る方法の少なくとも1つの実施形態において、該固定時間次元は、100ミリ秒~500ミリ秒単位である。
【0024】
本開示は、コンピュータに適用され、医用画像の移動検出と補正のための上述した方法の少なくとも1つを実行するためのコマンドが記憶されたコンピュータ読み取り可能な記憶媒体をさらに提供する。
【0025】
上記のように、本開示に係る医用画像の移動検出と補正の方法、システム及びコンピュータ読み可能な媒体は、標的器官に関する医用画像をリストモードデータに基づいて複数のフレーム画像に分割し、該複数のフレーム画像内の関心領域の複数の重心を解析し、スキャン期間中の標的器官の運動曲線を算出し、そして、該運動曲線に基づいて医用画像の再構築および最適化を行うことができるため、別途の監視装置を設置することなく、人の器官や病巣の動きを考慮して医用画像の移動検出および補正を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本開示に係る具体的な実施形態について、下記の図面を参照しながら説明する。
【
図1】現在の技術によって実行される心筋血流イメージング法の実施形態を示す。
【
図2】本開示に係る医用画像の移動検出と補正のシステム構成模式図である。
【
図3】本開示に係る医用画像の移動検出と補正のシステムの実施形態模式図である。
【
図4】本開示に係る医用画像の移動検出と補正の方法のフローチャートである。
【
図5】本開示に係る医用画像の移動検出と補正の方法の部分的な実施形態である。
【
図6A】本開示に係る医用画像の移動検出と補正の方法の部分的な実施形態を示す。
【
図6B】本開示に係る医用画像の移動検出と補正の方法の部分的な実施形態を示す。
【
図6C】本開示に係る医用画像の移動検出と補正の方法の部分的な実施形態を示し、COMは重心を表す。
【
図7】本開示に係る医用画像の移動検出と補正の方法の部分的な実施形態を示し、COM1およびCOM2は、それぞれ重心1および重心2を表す。
【
図8】本開示に係る医用画像の移動検出と補正の方法の部分的な実施形態を示す。
【
図9】本開示に係る医用画像の移動検出と補正の方法の部分的な実施形態を示す。
【
図10】本開示に係る医用画像の移動検出と補正の方法の部分的な実施形態を示す。
【
図11】本開示に係る医用画像の移動検出と補正の方法の部分的な実施形態を示す。
【
図12】本開示に係る医用画像の移動検出と補正の方法の実施形態模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、当業者が本明細書に記載の内容から本願の他の利点および効果を容易に理解できるように、特定の実施例に基づいて説明する。本開示に添付された図面に示される構造、比例、サイズ等は、当業者が理解かつ読み取れるように明細書の説明に合わせるものであり、本開示において実施され得る限定条件を制限するものではない。従って、いかなる修正、変更または調整も、本開示において生成され得る効果および達成され得る目的に影響を与えるものでなければ、本開示に記載された技術的内容の範囲内に収まるものとする。
【0028】
図2は、本開示において医用画像の移動検出と補正を行うためのシステム構成模式図として観察することができる。
【0029】
少なくとも1つの実施形態において、本開示に係る管理プラットフォーム201は、医用画像に対する処理プロセスを統合するためのものであり、医用画像の受信及び送信、ユーザによる医用画像の検索の提供、並びにユーザの要求に基づいた医用画像の最適化処理の実行等を含む。いくつかの実施形態において、任意の適切なウェブページ、アプリケーションページ、ヒューマンマシンインターフェース等のユーザインターフェースを介して管理プラットフォーム201を表示でき、この明細書において特に制限はない。
【0030】
少なくとも1つの実施形態において、本開示に係る最適化装置202は、ユーザにより管理プラットフォーム201で提出されたコマンドに基づいて、対応する医用画像最適化処理(移動検出と補正を含む)のバックグラウンドサービスを実行する。いくつかの実施形態において、本開示に係る最適化装置202は、任意の適切な物理コンピュータシステム、クラウドシステム等であってもよく、管理プラットフォーム201とともに統合されたコンピュータシステムで実現されてもよく、本開示において特に制限はない。
【0031】
少なくとも1つの実施形態において、本開示に係るスキャン装置203は医用画像を撮影できる任意の検出装置であってもよく、例えば、単一光子放射コンピュータ断層撮影、陽電子放射断層撮影装置、磁気共鳴画像診断装置、コンピュータ断層撮影装置などの患者が検出したい部位(例えば、心臓、肺、冠状動脈、肝臓、胃などを含むが、これらに限定されない)の医用画像を取得する検出装置を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、本開示に係るスキャン装置203によって取得された医用画像は、それぞれに対応するリストモードデータを含むので、撮影された医用画像に対する非即時的(例えば、事後検索)の遡及的分析と補正に有用である。
【0032】
少なくとも1つの実施形態において、本開示に係る医用画像保存伝送システム204は、上記スキャン装置203で取得された医用画像及び/または最適化装置202によって最適化処理された最適化医用画像を保存する、現在の任意の病院に採用されている記憶システムであってもよい。
【0033】
少なくとも1つの実施形態において、本開示に係る診察室レポートコンピュータ205は、医用画像保存伝送システム204に保存された医用画像及び/または最適化医用画像の検索または表示を医師に提供する、診療所において医師に使用される任意の端末装置であってもよい。
【0034】
本開示に係る少なくとも1つの実施形態において、
図2に示す管理プラットフォーム201、最適化装置202、スキャン装置203、医用画像保存伝送システム204および診療所レポートコンピュータ205は、標準的な医用デジタル画像化と通信(Digital Imaging and Communications in Medicine、DICOM)で相互に通信するように構成されているため、本開示の高度なスケーラビリティが提供可能である。なお、本開示は上述した構成要素に限定されるものではない。一つの例として、作業要求に応じて、上記の構成要素の任意数の要素を同一装置に統合してもよく、単一の管理プラットフォーム201及び/または最適化装置202が複数のスキャン装置203の医用画像の最適化等をサポート可能に設計してもよく、本開示において特に制限はない。
【0035】
図3は、本開示において医用画像の移動検出と補正を実行する具体的な実施形態の模式図である。
【0036】
具体的には、少なくとも1つの実施形態において、本開示は、単一光子放射コンピュータ断層撮影装置(SPECT)を用いて撮影された心臓の医用画像の移動検出と補正を行ってもよい。例えば、本開示に係るスキャン装置203(例えば、単一光子放射コンピュータ断層撮影装置)は、心臓を右斜め前視角から左斜め後視角へスキャンし、関連するSPECT画像(すなわち、医用画像)を取得する、19個のピンホールコリメータと19個のCdZnTe(CZT)センサ(例えば、32×32画素を含むCZT素子)が取り付けられたCZTガンマカメラを備える。また、スキャン装置203によるSPECT画像の画像化プロセスは、それぞれ非対称的(例えば、-14%~23%)と対称的(例えば、-9%~9%)に設置されたデュアルエネルギーウィンドウを設定して心臓をスキャンする工程と、スキャン結果に応じて、SPECT画像に対応するリストモード及び/またはフレームモード(frame mode)データを保存する工程と、リストモード及び/またはフレームモードデータを、標準的な医用デジタル画像化および通信形態でスキャン装置203に内蔵されたワークステーション(workstation)に伝送する工程と、リストモード及び/またはフレームモードのデータを心臓の短軸、垂直長軸、水平長軸に沿ってリサンプリングして表示する工程とを含む。しかしながら、本開示に係るスキャン装置203が適用可能な仕様や機器、医用画像の取得方法の記載は、例示のみであって、本開示の内容を限定するものではない。
【0037】
図3に示すフローチャート模式図において、撮影中に(心筋血流イメージングの)患者300から放出されたγ光子301がスキャン装置203によって画像化(前記画像化工程)した後に得られた医用画像を符号302で示している。この場合、医用画像302は、診察室レポートコンピュータ205が検索できるように、医用画像保存伝送システム204に直接保存することができる。しかしながら、スキャン中の患者300の動きによって医用画像302がぼやける可能性がある状況下では、管理プラットフォーム203により、スキャン装置203から受信した医用画像302に対して、最適化装置202によりリアルタイムで、時間次元セグメンテーション303、運動重心解析304および変形モデル補正305などの処理手順を含む移動検出と補正を指示して、最適化医用画像306を得ることができる。さらに、得られた医用画像302がリストモードデータを含む場合は、後に医用画像302のぼやけが判明したときに管理プラットフォーム201により医用画像保存伝送システム204にて当該の医用画像302をアクセスし、最適化装置202により遡及的解析・補正を行うことも可能である。
【0038】
図4は、本開示に係る医用画像の移動検出と補正を実行する(例えば最適化装置202が上記の
図3における303~305の処理手順を実行する)工程フローを示しており、各工程の実施形態は、
図5~
図12および以下の説明を通じて理解できるであろう。
【0039】
本開示に係る少なくとも1つの実施形態では、ステップS10において、管理プラットフォーム201によって提供されるユーザインターフェースにより、移動検出と補正をしたい医用画像(例えば、1回のスキャンで得られた患者の心臓に関するストレス(stress)状態画像および安静(rest)状態画像のセット)を選択することができる。この場合、前記医用画像は、スキャン装置203にて患者がスキャンされたときに管理プラットフォーム201によりリアルタイムに取得してもよく、必要に応じて管理プラットフォーム201により医用画像保存伝送システム204にアクセスしてもよい。
【0040】
本開示に係る少なくとも1つの実施形態では、ステップS20において、撮影期間中の異なる呼吸及び/または心拍周期段階(または患者自身の移動)における医用画像によって撮影された標的器官(例えば心臓)の変位状況(即ち事象)を考慮し、最適化装置202は、上記の
図3に示す時間次元セグメンテーション303を実行し、医用画像に対応するリストモードデータに含まれる事象(例えば、前述のデュアルエネルギーウィンドウを使用して捕捉された事象)を、固定時間次元(例えば、500ミリ秒単位)を持つフレームに分割するとともに、上記フレームを物体面(例えば、対応する画像面に平行であり、かつマルチピンホールシステムの共通焦点で交差する前述のスキャン装置203の19個のCZTセンサの表面)へ逆投影(back-projection)して画像化する。結果は、
図5の各フレームの撮像結果(以下、フレーム画像ともいう)に示す。いくつかの実施形態において、各フレームは、100ミリ秒から500ミリ秒までの任意の値の単位で固定時間次元の分割を行うことができる。しかしながら、最適化装置202の演算能力または作業要求に応じて、フレームを他の適切な固定時間次元で分割してもよく、本開示において特に制限はない。
【0041】
本開示に係る少なくとも1つの実施形態では、ステップS30において、
図5に示すように、最適化装置202は、各フレーム画像内に標的器官(例えば心臓)を含む関心領域501をラベリングすることにより、各フレーム画像における標的器官の位置、回転角度、及び/または軸(例えば、心臓の長軸および短軸)などの変位情報を取得する。いくつかの実施形態において、標的器官を含む関心領域501は球状である。しかしながら、標的器官の形状または作業要求に応じて、関心領域501に対してその他の適切な形状でラベリングしてもよく、本開示において特に制限はない。
【0042】
本開示に係るいくつかの実施形態において、フレーム画像における心臓の心筋領域に対して関心領域をラベリングする例を挙げる。心筋領域のラベリングは、特定のアプリケーション(例えば、最適化装置202内に構築された自動化ソフトウェア)を介して医師が実施してもよく、実際の操作は、フレーム画像(例えば、上記ステップS20で取得されたもの)に心筋の中心を通る3D楕円球面をラベリングする工程と、前記3D楕円球面から球面の中心を含む3次元座標、3つの軸(即ち心臓の短軸、垂直長軸、水平長軸等の軸方向)での半径、3つの軸の回転角度、心臓の底面の長さ比と角度など、12個の球面パラメータの数値を取得する工程と、上記球形パラメータに基づいて、上記特定のアプリケーションが、医師によってラベリングされた3D楕円球面から3Dアクティブ輪郭モデルにより内側と外側のそれぞれに向けて滑らかな内表面と外表面となるようにフィッティングする工程とを含む。完成した3D楕円球面であるフィットされたフレーム画像は、即ち、心筋領域が定義された関心領域を含むフレーム画像である。
【0043】
本開示に係るいくつかの実施形態において、ステップS30での関心領域501に対するラベリングは、深層学習モジュール(例えば、最適化装置202に内蔵の深層学習モジュール)によって実現することもできる。本実施形態において、深層学習モジュールは、畳み込み層、逆畳み込み層、漏洩正規化線形活性化層、残差接続、鼓動接続等の主要な構造を含み、医師によって心筋領域がラベリングされた千組以上のフレーム画像(例えば、前記特定のアプリケーションよるラベリング)は、深層学習モジュールのトレーニングデータとして使用される。訓練済みしかつラベリング前のフレーム画像が入力された場合に当該フレーム画像の心筋領域を正確に予測できる深層学習モジュールは、ステップS30における関心領域501ラベリングに利用できる。
【0044】
図6A~
図6Cは、深層学習モジュールを関心領域501のラベリングに適用する際の段階模式図である。本開示に係る少なくとも1つの実施形態において、訓練済みの深層学習モジュールは、まず、ステップS20で生成されたフレーム画像(
図6Aに示す心臓のその短軸、垂直長軸、水平長軸等の次元での分割画面)を受信することができる。本開示に係るいくつかの実施形態において、深層学習モジュールは、フレーム画像において心臓の存在領域601を特定し(
図6Aのように、実線領域601で選出した、心臓分割領域から少なくとも5cmの正楕円(回転角度がゼロ)の範囲)、心筋領域を含むバイナリセグメンテーション領域603(
図6Bの603で示す領域)を識別する。次に、深層学習モジュールは、該バイナリセグメンテーション領域603をぼかしてソフトマスクを生成し、さらに初期のフレーム画像に該ソフトマスクを適用するで、該フレーム画像の中心筋領域以外の領域の画像活性を除外する。最後に、深層学習モジュールは、ソフトマスクに基づいて、フレーム画像上の心筋領域602に対して楕円形球面でフィッティングさせ(
図6Bの602で示す実線に対応する楕円球面横断線)、楕円球面半径を外側に2cmだけ拡大して、関心領域604を表す新しい楕円球面(
図6Cの604で示す実線に対応する領域)を生成する。
【0045】
本開示に係る少なくとも1つの実施形態では、ステップS40において、最適化装置202は、ステップS30でラベリングされた関心領域内の標的器官に対して、上記の
図3に示す運動重心分析304を実行する。本開示に係るいくつかの実施形態において、まず、各フレーム画像における標的器官(例えば心臓)の変位および回転の様子を正確に観察して、各フレーム画像における関心領域を2分割する。
図6Cと
図7の違いを参照して、関心領域の分割の実施方法を観察できる。例えば、
図6Cにおいてラベリングされた各フレーム画像の関心領域604は、このステップS40において心臓の長軸に沿って2分割され、
図7に示す心臓に関するサブ関心領域701、702が形成される。
図7の左側は、心臓の短軸次元での断面図であるため、観察されたサブ関心領域701、702は重なり合って表現される。次に、得られた標的器官の2つのサブ関心領域701、702により、それぞれの重心703、704を算出し、各フレーム画像における標的器官の移動の様子の追跡を補助し、撮影中の標的器官の運動曲線を得ることができる。
【0046】
図6Cに示す1つの重心605のみの関心領域604と比較して、
図7Cに示す関心領域604を2つのサブ関心領域701、702に分割して得られた2つの重心703、704により運動重心分析する利点を
図8に示す。801~803は、それぞれ標的器官(例えば心臓)が平行移動(801)、平行移動かつ回転(802)、回転(803)された様子(即ち実線パターンから破線パターンへの変化)を表し、一方、804、805は、それぞれ、単一の重心605、及び、2つの重心703、704で観察された上記801~803の効果を示す。標的器官の平行移動801が発生した場合では、単一の重心605か2つの重心703、704のいずれによっても明確に追跡できるが(例えば、重心605から605’への移動の変化、重心703、704から703’、704’への移動の変化)、標的器官に平行移動回転802または回転803等が発生した場合については、単一の重心605のみで観察される追跡効果は、明らかに2つの重心703、704で観察された追跡効果よりも劣ることが分かる。特に標的器官に回転803のみが発生した場合では、回転前後での重心605に顕著な変化(605’と一致する)はなく、標的器官の回転の様子を追跡することができない。
【0047】
しかしながら、本開示に係る運動重心の分析方法は、上記の説明に限定されるものではない。例えば、当業者は、関心領域604からサブ関心領域701、702への分割は、心臓の短軸に沿って(長軸方向で)行ってもよく、必要に応じて(例えば、標的器官の形状特性に応じて)関心領域604を2つよりも多くの関心領域に分割して、2つよりも多くの重心で標的器官の変位と回転を観察してもよい。
【0048】
ステップS40の直後、関心領域604がサブ関心領域701、702に分割された後、各フレーム画像の記述値として、各フレーム画像内の重心703、704に対応する3次元座標(例えば、「(x1,y1,z1)、(x2,y2,z2)」)を算出する。本開示に係るいくつかの実施形態において、主成分分析(principle component analysis、PCA)法を用いて、各フレーム画像の記述値の次元削減を行うことができ、各フレーム画像における標的器官の移動/回転信号として、次元削減後の記述値から最大特徴を得ることができる。本開示に係るいくつかの実施形態において、標的器官の移動/回転信号に基づいて各フレーム画像をフィルタリングすることにより、過大な高周波のノイズ信号をフィルタリングすることができるので、撮影中の標的器官の運動曲線が計算される。
【0049】
本開示に係る少なくとも1つの実施形態において、撮影中の標的器官の運動曲線を
図9に示す。
図9には、撮影中の人体の左右(X軸、
図9の上層の模式図)、腹背(Y軸、
図9の中層の模式図)、頭尾(Z軸、
図9の下層の模式図)に対する標的器官(心臓)の運動曲線の検出を示し、901は、各フレーム画像における重心703または704の上述X軸、Y軸、Z軸での相対位置変化を示す曲線(点線で示す)であり、902は、曲線901に基づいて算出されたX軸、Y軸、Z軸における重心703又は704の回転信号を示す曲線(短い破線で示す)であり、903は、各フレーム画像をグループ分けして蓄積して得られた重心703又は704のより正確な位置変化を示す曲線(実線で示す)である。
【0050】
本開示に係る少なくとも1つの実施形態では、ステップS50において、後続のステップにおける医用画像の補正の有効性を確保するために、最適化装置202は、まず、前記標的器官の運動曲線に応じて標的器官の移動量が過大であるかどうかを判断してもよく、過大である場合(例えば、標的器官の運動曲線の振幅が50mmを超える場合)には、放射線科医は、患者に対して再スキャンの実行を要求し、ステップS10~S40を繰り返して標的器官の新しい運動曲線を取得してもよい。再スキャンが不要な場合は、次のステップに進んで医用画像の変形モデル補正を行うことができる。
【0051】
上記のステップS10~S50により、医用画像の移動検出の手順を完了する。移動検出の結果に応じて、最適化装置202は、以下のステップS60~S80の説明のように、医用画像に対して上記
図3に示す変形モデル補正305を引き続き実行することができる。
【0052】
最適化装置202は、前述の運動曲線は全てのフレーム画像における関心領域(重心を基準とする)の位置の平均データであるので、まずステップS60において各フレーム画像における関心領域の位置が運動曲線と正確に対応しているか否かを確認し、各フレーム画像の関心領域が運動曲線と正確に対応していない場合には、ステップS70のゲーティング(gating)を行うことができる。正確に対応していれば、各フレーム画像に対して、ステップS80における医用画像の最適化再構築を直接行うことができる。本開示に係るいくつかの実施形態において、各フレーム画像の関心領域が運動曲線に正確に対応しているか否かにかかわらず、各フレーム画像に対してステップS70のゲーティングを直接行うことにより、標的器官の移動の様子の把握をさらに寄与し、ステップS80での医用画像の再構築最適化にかかる時間を短縮できる。
【0053】
本開示に係る少なくとも1つの実施形態において、ステップS70で説明したゲーティングは、ステップS40にて算出した標的器官(例えば心臓)の運動曲線に基づいて、各フレーム画像において時間及び/または位置関係が類似したものを統合してゲーティングセット画像を形成する。
【0054】
図10は、本開示における心臓に関する医用画像の各フレーム画像を8つのゲーティングセットに整理した実施形態を示す。上段の8つのゲーティングセットは、心臓の垂直長軸面で観察されたゲーティングセット画像であり、下段の8つのゲーティングセットは、心臓の短軸面で観察されたゲーティングセット画像である。さらに、運動曲線が人体の呼吸及び/または心拍の規則的な運動に対応し得ることを考慮し、スキャン中に患者の激しい運動がない場合、これらの8つのゲーティングセット画像は、
図10に示す左からの右への吸気/呼気の呼吸周期段階のような、呼吸及び/または心拍の各周期段階に対応することもできる。各ゲーティングセット画像は、吸気終了段階時のゲーティングセット画像(最左端のゲーティングセット画像)に対して人体の頭尾軸、左右軸、及び/または腹背軸上のいずれにおいても反復の変位関係が観察されたため、このステップS70は、呼吸ゲーティングまたは心拍ゲーティングとも呼ばれる。
【0055】
本開示に係るいくつかの実施形態において、
図10は、心臓に関する医用画像のすべてのフレーム画像から人体の呼吸周期段階に応じて8つのゲーティングセットに組み合わせた実施形態を模式的に示す(即ち、各ゲーティングセットはフレーム画像の総数の12.5%を含む)。しかしながら、医用画像の補正・最適化効果のニーズや運用上のニーズに応じて、ゲーティングセットの数を増減したり、人体の心拍周期をさらに考慮して1つのゲーテッドセット画像を追加的に形成したり、呼吸周期や心拍周期の段階を総合的に考慮して1つのゲーティングセット画像を形成したりすることもでき、本明細書において特に制限はない。
【0056】
本開示に係る少なくとも1つの実施形態では、ステップS80において、正確に位置決めされた各フレーム画像(即ち、ステップS70での処理がなされていない医用画像の各フレーム画像)またはステップS70でのゲーティングがなされたゲーティングセット画像に基づいて、医用画像の再構築最適化が行われる。医用画像の再構築最適化の実行は、主として各フレーム画像またはゲーティングセット画像における基準オブジェクト(例えば、吸気の終了段階であるか、心拍周期の等容性収縮期であるか、または上記2つを満たすと判断された1つのフレーム画像またはゲーティングセット画像)に基づいて、残りのフレーム画像またはゲーティングセット画像の動作補償を行う。上記の人体の頭尾軸、左右軸及び/または腹背軸に対する運動曲線は、上記動作補償の際のフレーム画像またはゲーティングセット画像の調整(回転、変位、スケーリング、変形等その他の調整作業)の参考として使用される。また、再構築最適化された医用画像と基準オブジェクトとの相関係数は、この医用画像の再構築最適化の完成度の観察に使用される。
【0057】
例えば、最適化装置202は、人体の呼吸周期段階を考慮して心臓に関する医用画像の再構築及び最適化を行う場合に、上記医用画像に対応するフレーム画像またはゲーティングセット画像から吸気終了段階にある1つのフレーム画像又はゲーティングセット画像を基準オブジェクトとして選定し、運動曲線を参考して、当該基準オブジェクトに対して残りのフレーム画像又はゲーティングセット画像に含まれる全ての画素を、それらの3次元座標に基づいて人体の頭尾軸、左右軸及び/又は腹背軸において調整し(即ち、上述した回転、変位、スケーリング等の調整作業)、調整された各フレーム画像またはゲーティングセット画像を統合して最適化医用画像として再構築し、最適化医用画像が基準オブジェクトに最も近似した状態に達するまで(例えば、相関係数が最大値に達する、または、二乗平均平方根誤差が最小値に達する)前記医用画像の再構築最適化を反復して実行する。医用画像の動作補償が完了すると、
図11に示す左側図(再構築最適化なし)から右側図(再構築最適化完了)への動作補償効果が得られる。
【0058】
本開示に係るいくつかの実施形態において、ステップS80で実行される動作補償は、動作補償プログラムを、以下の数式の形式で表現しうる最大事後確率最大化(maximum a posteriori expectation maximization、MAPEM)のアルゴリズムに組み込むことによって実行される。
【数1】
【数2】
は、該医用画像に関するk番目のフレーム画像またはゲーティングセット画像の投影結果を表し、
【数3】
は前記射影結果における各画素の指数値を表し、
【数4】
は、該医用画像に関するk番目のフレーム画像またはゲーティングセット画像のモデリング用システム行列(即ち、k番目のフレーム画像またはゲーティングセット画像の移動、回転、平行移動、または変形情報に基づいて元のシステム行列を補償調整した新たなシステム行列)を表し、
【数5】
は前記投影結果における各画素の調整された指数値を表し、
【数6】
は中央平方根先験的エネルギー関数の偏微分を表し、
【数7】
は先験的に調整可能な要素を表し、
【数8】
は、現在の反復周期にて推定された医用画像の再構築結果(即ち、現在の反復周期の最適化医用画像)を表し、
【数9】
は、次の反復周期にて推定された医用画像の再構築結果(即ち、次の反復周期において使用される最適化医用画像)を表す。本開示に係るいくつかの実施形態において、所定の医用画像の最適化再構築の反復回数は、70回を基準とし(即ち、
【数10】
の最大値は70に設定される)。しかしながら、作業ニーズに応じて反復回数を増減させることも可能であり、本開示において特に制限はない。
【0059】
図12は、最適化装置202が医用画像に対して上記のステップS10~S80を実行した後の効果を模式的に示す。例えば、本開示に係る少なくとも1つの実施形態において、最適化装置202は、標的器官(例えば心臓)に関する医用画像をフレーム画像の形式に解析して分析を行い(例えば、図例1201に示すある呼吸周期段階に対応するフレーム画像、及び/または、図例1202に示すある心拍周期段階に対応するフレーム画像)、次に、標的器官の運動曲線を考慮して、各フレーム画像(またはゲーティングされたゲーティングセット画像)を人体の頭尾軸、左右軸、及び/または腹背軸に対して調整して(例えば、図例1203に示すある呼吸周期段階に対応して調整されたフレーム画像、及び/または図例1204に示すある心拍周期段階に対応して調整されたフレーム画像)、再構築された最適化医用画像1205を得ることができる。ここで、最適化装置202は、再構築された最適化医用画像1205を管理プラットフォーム201のユーザインターフェースに直接表示させ、また、再構築された最適化医用画像1205を管理プラットフォーム201により医用画像保存伝送システム204に保存させることにより、医師が診察室報告コンピュータ205を介して検索できるようにすることができる。
【0060】
本開示は、コンピュータまたはコンピューティングデバイスに、プロセッサ(例えば、CPU、GPUなど)及び/またはメモリを介してコマンドに沿って上記医用画像の移動検出と補正の方法を実行させる上記コマンドが記憶された、プロセッサ及び/またはメモリを備えるコンピュータまたはコンピューティングデバイスに適用されるコンピュータ読み可能な媒体をさらに提供する。
【0061】
上記のように、本開示に係る医用画像の移動検出と補正の方法、システム及びコンピュータ読み可能な媒体は、標的器官に関する医用画像をリストモードデータに基づいて複数のフレーム画像に分割し、前記複数のフレーム画像内の関心領域の複数の重心を解析し、スキャン中の標的器官の運動曲線を算出し、次に、前記運動曲線に基づいて医用画像の再構築および最適化を実行することができるため、別途の監視装置を追加的に設置することなく、人間の器官または病巣の動きを考慮して医用画像の移動検出と補正を行うことができる。
【0062】
上記実施形態は本開示の効果を例示的に説明するに過ぎず、本開示の範囲を限定するためのものではなく、当業者により本発明の主旨を逸脱しない範囲でそれらの実施態様に対して種々に修正や変更を施すことが可能である。従って、本開示の権利保護範囲は、後述の特許請求の範囲に示されるものである。
【符号の説明】
【0063】
101~103 図例
201 管理プラットフォーム
202 最適化装置
203 スキャン装置
204 医用画像保存伝送システム
205 診察室レポートコンピュータ
300 患者
301 γ光子
302 医用画像
303 時間次元セグメンテーション
304 運動重心分析
305 変形モデル補正
306 最適化医用画像
501 関心領域
601 領域
602 心筋領域
603 バイナリセグメンテーション領域
604 関心領域
605、605’ 重心
701、702 サブ関心領域
703、703’ 重心
704、704’ 重心
801、802、803 状況
804、805 効果
901、902、903 曲線
1201、1202、1203、1204 図例
1205 最適化医用画像
S10~S80 ステップ
【国際調査報告】