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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】医薬におけるWS635の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/12 20060101AFI20241031BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
A61K38/12
A61P17/02
A61K9/20
A61K9/48
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533326
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(85)【翻訳文提出日】2024-06-04
(86)【国際出願番号】 CN2021136859
(87)【国際公開番号】W WO2023102847
(87)【国際公開日】2023-06-15
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518339250
【氏名又は名称】中美華世通生物医薬科技(武漢)股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】WATERSTONE PHARMACEUTICALS(WUHAN)CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】B3-4, Biolake, No.666 Gaoxin Road, Eastlake National High-Tech Development Zone, Wuhan, Hubei 430075, China
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勝也
(74)【代理人】
【識別番号】100158861
【弁理士】
【氏名又は名称】南部 史
(74)【代理人】
【識別番号】100194674
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 覚史
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】ファミン チャン
(72)【発明者】
【氏名】ユェン シェン
(72)【発明者】
【氏名】ミンロン フー
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ ユー
(72)【発明者】
【氏名】シァォロン ワン
(72)【発明者】
【氏名】アーロン ヂャオ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC19
4C076FF70
4C084AA02
4C084BA18
4C084BA24
4C084BA28
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA52
4C084NA14
4C084ZA89
(57)【要約】
本発明は、必要な被験者に創傷の治癒過程を誘導または加速する方法に関し、該方法は、被験者に治療に有効な量の式(I)で示される化合物またはその立体異性体、互変異性体、N-酸化物、溶媒和物、代謝物、薬学的に許容できる塩またはプロドラッグを投与するステップを含む。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
必要な被験者の創傷の治癒過程を促進する方法であって、前記方法は、前記被験者に治療に有効な量の式Iで示される化合物またはその立体異性体、互変異性体、N-酸化物、溶媒和物、代謝物、薬学的に許容できる塩又はプロドラッグを投与するステップを含む、必要な被験者の創傷の治癒過程を促進する方法。
【化1】
【請求項2】
前記創傷は手術による創傷である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記創傷は皮膚創傷である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記創傷形成後に前記化合物を前記被験者に投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記創傷形成後14日以内に前記化合物を前記被験者に投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記創傷形成後7日以内に前記化合物を前記被験者に投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記化合物は約1000mg未満の1日投与量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記化合物は約30mg~約1000mgの間の1日投与量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記化合物は約500mg~約700mgの間の1日投与量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記化合物は1日1回投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記化合物は単回投与量で1日1回投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記化合物は経口投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記化合物は錠剤、カプセルまたは注射剤で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記化合物は前記式Iで示される化合物と異なる、創傷の治癒過程を誘導または加速するための1種又は複数の他の薬剤と併用投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
必要な被験者の創傷の治癒過程の促進における、式Iで示される化合物またはその立体異性体、互変異性体、N-酸化物、溶媒和物、代謝物、薬学的に許容できる塩またはプロドラッグの使用。
【化2】
【請求項16】
前記創傷は手術による創傷である、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記創傷は皮膚創傷である、請求項15に記載の使用。
【請求項18】
前記創傷形成後に前記化合物を前記被験者に投与する、請求項15に記載の使用。
【請求項19】
前記創傷形成後14日以内に前記化合物を前記被験者に投与する、請求項15に記載の使用。
【請求項20】
前記創傷形成後7日以内に前記化合物を前記被験者に投与する、請求項15に記載の使用。
【請求項21】
前記化合物は約1000mg未満の1日投与量で投与される、請求項15に記載の使用。
【請求項22】
前記化合物は約30mg~約1000mgの間の1日投与量で投与される、請求項15に記載の使用。
【請求項23】
前記化合物は約500mg~約700mgの間の1日投与量で投与される、請求項15に記載の使用。
【請求項24】
前記化合物は1日1回投与される、請求項15に記載の使用。
【請求項25】
前記化合物は単回投与量で1日1回投与される、請求項15に記載の使用。
【請求項26】
前記化合物は経口投与される、請求項15に記載の使用。
【請求項27】
前記化合物は錠剤、カプセルまたは注射剤で投与される、請求項15に記載の使用。
【請求項28】
前記化合物は、前記式Iで示される化合物と異なる、創傷の治癒過程を誘導または加速するための1種又は複数の他の薬剤と併用投与される、請求項15に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬分野に属する。具体的に、本発明は、患者の創傷の治癒過程を促進する薬物の製造における(3S,6S,9S,12R,15S,18S,21S,24S,27R,30S,33S)-27-((2-(ジメチルアミノ)エチル)チオ)-30-エチル-33-((1R,2R,E)-1-ヒドロキシ-2-メチルヘキシル-4-エン-1-イル)-24-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)-6,9,18-トリイソブチル-3,21-ジイソプロピル-1,4,7,10,12,15,19,25,28-ノナメチル-1,4,7,10,13,16,19,22,25,28,31-ウンデカアザシクロトリトリアコンタン-2,5,8,11,14,17,20,23,26,29,32-ウンデカノン(I)(WS635、SCY-635とも呼ばれる)及びその薬物組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、微生物の侵入を防止し、温度と体液のバランスを維持するために重要な物理的障壁を形成している。皮膚外傷は一時的にこの障壁を破壊し、大きな健康上の挑戦となる可能性がある。創傷治癒は複雑な過程であり、創傷微小環境の動的な変化を特徴とし、異なるタイプの参加細胞を動員してガイドする。全体過程は、典型的に、止血、炎症、増殖及び再建という四つの連続的に重なる段階に分けられる。止血段階では、交感神経によって誘導される血管収縮と血栓形成によって出血を制御する。損傷した組織の細胞は警報信号、ケモカイン、成長因子を放出し、これにより、血液循環から免疫細胞を動員し、組織内の常在細胞の増殖を刺激し、創傷部位に免疫細胞を蓄積させる。増殖段階は、肉芽組織の形成を特徴とし、肉芽組織は新生血管、免疫細胞及び線維芽細胞からなり、創傷の再上皮化中に表皮細胞を該組織に移行させることができる。瘢痕組織の形成中に、真皮と表皮の線維芽細胞は修復後の組織を強化するために新しい細胞外マトリックスを沈着させる。種が異なれば、皮膚の構造や組成も異なり、治癒速度も異なる。
【0003】
現在、創傷の治癒のための治療のほとんどは局所であり、機能ドレッシング(例えば、相互作用型ドレッシングと生物活性型ドレッシング)、生物材料(例えば、異種脱細胞真皮マトリックスと組織工学皮膚)及び陰圧療法技術などを含む。従来の経口薬のほとんどは、疼痛管理、感染緩和と栄養など創傷のケアの補助的な側面を対象としており、創傷の治癒を直接促進する経口薬が著しく不足している。経口製剤が使用しやすくて且つ治癒時間を短縮できるため、創傷を効果的に治癒する経口製剤を増やすことは、傷のケアの分野で非常に有益である。
【0004】
研究報告によると、対照群に比べて、成長因子を注射したラット皮膚の開放性創傷面積が減少した。なお、顕微鏡観察によると、成長因子を注射した創傷内で、血管内皮成長因子、線維芽細胞成長因子及びインスリン成長因子が増加し、上皮細胞成長及び血管の生成を促進し、線維増生とI型コラーゲンの沈着を加速し、これにより、創傷の治癒を加速する。
【0005】
他の研究では、WTとCypD KOマウスの大動脈に対する体外血管再構成評価の結果は、CypD KOマウスの発症がより早く、創傷の閉鎖速度が顕著に速くなることを示し、これは、耳切除後14日間の創傷周囲の血管分布の増加に関連している。
【0006】
WS635(式(I)で示される化合物)はシクロスポリンA(CsA)3,4位の二重置換の非免疫抑制性誘導体であり、プロサイクリンD(CypD)と結合してmPTP開放を抑制する。このため、新型のmPTP阻害剤として、WS635をさらに研究する価値がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以下、本発明の幾つかの態様のみをまとめて、本発明はこれらの態様に限定されない。これらの態様と他の部分について、後でより完全に説明する。本明細書の全ての参考文献は引用によりすべて本明細書に組み込まれる。本明細書の開示内容と引用された参考文献との間に差別があると、本明細書の開示内容を基準とすべきである。
【0008】
研究開発の過程で、発明者は、意外にもWS635がラットの血管生成を顕著に促進できることを発見した。発明者の更なる研究によると、WS635は創傷の治癒過程を促進するために使用できる。創傷を治癒する治療剤の活性成分として、WS635は小さい毒性作用を有し、ラットに経口投与を9日間繰り返した毒性試験では、明らかな副作用がないレベル(NOAEL)投与量は80mg/kg/日である。なお、WS635はより良い安定性、薬物動態学などを有し、且つWS635は創傷を治癒する上でより有効であることが証明されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
具体的に、一態様では、本発明は、必要な被験者の創傷の治癒過程を促進する方法に関し、該方法は、被験者に治療に有効な量の式Iで示される化合物またはその立体異性体、互変異性体、N-酸化物、溶媒和物、代謝物、薬学的に許容できる塩又はプロドラッグを投与するステップ、を含む。
【化1】
【0010】
研究開発の過程で、発明者は、意外にもWS635がラットの血管生成を顕著に促進できることを発見した。本発明の実施例によれば、前記式Iで示される化合物は血管生成を促進して創傷の治癒を促進することができる。
【0011】
一実施形態において、創傷は手術による創傷である。
【0012】
一実施形態において、創傷は皮膚創傷である。
【0013】
一実施形態において、創傷形成後に化合物を被験者に投与する。
【0014】
一実施形態において、創傷形成後14日以内に化合物を被験者に投与する。
【0015】
一実施形態において、創傷形成後7日以内に化合物を被験者に投与する。
【0016】
一実施形態において、化合物は約1000mg未満の1日投与量で投与される。
【0017】
一実施形態において、化合物は約30mg~約1000mgの間の1日投与量で投与される。
【0018】
一実施形態において、化合物は約500mg~約700mgの間の1日投与量で投与される。
【0019】
一実施形態において、化合物は1日1回投与される。
【0020】
一実施形態において、化合物は単回投与量で1日1回投与される。
【0021】
一実施形態において、化合物は経口投与される。
【0022】
一実施形態において、化合物は錠剤、カプセル又は注射剤で投与される。
【0023】
一実施形態において、化合物は、式Iの化合物とは異なる、創傷の治癒過程を誘導または加速するための1種又は複数の他の薬剤と併用投与される。
【0024】
他の態様では、本発明は、必要な被験者の創傷の治癒過程の促進における式Iで示される化合物またはその立体異性体、互変異性体、N-酸化物、溶媒和物、代謝物、薬学的に許容できる塩またはプロドラッグの使用を提供する。
【化2】
【0025】
一実施形態において、創傷は手術による創傷である。
【0026】
一実施形態において、創傷は皮膚創傷である。
【0027】
一実施形態において、創傷形成後に化合物を被験者に投与する。
【0028】
一実施形態において、創傷形成後14日以内に化合物を被験者に投与する。
【0029】
一実施形態において、創傷形成後7日以内に化合物を被験者に投与する。
【0030】
一実施形態において、化合物は約1000mg未満の1日投与量で投与される。
【0031】
一実施形態において、化合物は約30mg~約1000mgの間の1日投与量で投与される。
【0032】
一実施形態において、化合物は約500mg~約700mgの間の1日投与量で投与される。
【0033】
一実施形態において、化合物は1日1回投与される。
【0034】
一実施形態において、化合物は単回投与量で1日1回投与される。
【0035】
一実施形態において、化合物は経口投与される。
【0036】
一実施形態において、化合物は錠剤、カプセルまたは注射剤で投与される。
【0037】
一実施形態において、化合物は式Iの化合物とは異なる、創傷の治癒過程を誘導または加速するための1種又は複数の他の薬剤と併用投与される。
【0038】
本明細書で開示されたいかなる実施形態は、本発明の異なる態様で説明されたものであっても、これらの実施形態が互いに矛盾しない限り、いずれも他の実施形態と組み合わせることができる。なお、互いに矛盾しない限り、1つの実施形態におけるいかなる技術的特徴は、これらの実施形態が本発明の異なる態様で説明されたものであっても、他の実施形態における対応する技術的特徴に適用できる。
【0039】
前述内容は本明細書で開示された幾つかの態様のみをまとめて、本質を制限することを意味しない。以下、これらの態様及び他の態様と実施形態をより全面的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】WS635が創傷の治癒を顕著に促進し、その効果がrb-bFGFと同等であることを示す。
図2】WS635が時間依存的に創傷の治癒率を高めることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
定義と一般用語
【0042】
以下、本発明の幾つかの実施形態を詳細に説明し、その例を添付した構造と式に示す。本発明は、請求項によって限定される本発明の範囲内に含まれ得るすべての代替、修正及び同等物をカバーすることを目的とする。当業者は、本明細書で説明されるのと同様または同等の方法と材料の多くは、本発明を実践するために使用できることを認識する。本発明は本明細書で説明される方法と材料に限定されない。引用されている文献、特許及び同様の材料の中の1つまたは複数が本発明と異なるか、矛盾すると、定義される用語、用語の使用、説明される技術などを含むが、これらに制限されなく、本発明を基準とする。
【0043】
明確化を目的にするために、本発明の特徴のいくつかは、別々の実施形態で説明されたが、これらの特徴は単一の実施形態で組み合わせて提供されてもよいことも理解されるべきである。むしろ、簡潔さのために、単一の実施形態で説明された本発明の種々の特徴は、別個に、または任意の適切なサブコンビネーションで提供されてもよい。
【0044】
特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての科学用語及び技術用語は本発明の当業者が通常理解する意味と同じである。本明細書で言及された全ての特許と出版物は引用により全体的に組み込まれる。
【0045】
本明細書で使用される文法冠詞「一」、「一つ」、「該」及び「前記」は、本明細書に別途に説明されていない限り、または文脈と明らかに矛盾している場合を除き、「少なくとも1つ」または「1つまたは複数」を含むことを意味する。このため、本明細書で使用される冠詞は該冠詞の1つまたは複数(即ち少なくとも1つ)の文法オブジェクトを指す。例えば、「実施形態」は1つまたは複数の実施形態を指す。
【0046】
「含む」という用語は、オープンな表現であり、本明細書で開示される内容を含むが、他の内容を排除しないことを意味する。
【0047】
本明細書で使用される「薬学的に許容できる」という用語は、合理的な医学的判断の範囲内で、患者の組織と接触するのに適した化合物、材料、組成物及び/又は剤型であり、多くの毒性、刺激性、アレルギー反応または他の問題や合併症がなく、合理的な利益/リスクに見合っており、期待される使用に有効であることを意味する。
【0048】
「プロドラッグ」という用語は、体内で式(I)で示される化合物に変換される化合物を指す。例えば、このような変換はプロドラッグ形態の血液中での水解または血液または組織中での酵素による母体形態への変換促進によって実現することができる。本明細書で開示された化合物のプロドラッグは例えばエステルであってもよい。プロドラッグとして使われるエステルは、フェニルエステル、脂肪族(C1-24)エステル、アシルオキシメチルエステル、炭酸エステル、カルバメート及びアミノ酸エステルである。例えば、本明細書で開示されるヒドロキシを含有する化合物はそのプロドラッグ形態で該位置がアシル化される。他のプロドラッグ形態はリン酸塩、例えば母体化合物上のヒドロキシリン酸化から誘導されるリン酸塩化合物などを含む。T. Higuchi and V. Stella, Pro-drugs as Novel Delivery Systems, Vol. 14 of the A.C.S. Symposium Series, Edward B. Roche, ed., Bioreversible Carriers in Drug Design, American Pharmaceutical Association and Pergamon Press, 1987, J. Rautio et al., Prodrugs: Design and Clinical Applications, Nature Review Drug Discovery, 2008, 7, 255-270、及びS. J. Hecker et al., Prodrugs of Phosphates and Phosphonates, Journal of Medicinal Chemistry, 2008, 51, 2328-2345の書類にプロドラッグの詳細な論述を提供し、これらの文献は引用により本明細書に組み込まれる。
【0049】
「代謝物」とは、特定の化合物またはその塩が体内で代謝によって生成される生成物である。化合物の代謝物は、当該分野で知られている通常の技術を用いて識別することができ、本明細書で説明される試験を使用してそれらの活性を確認する。このような生成物は投与される化合物の酸化、還元、加水分解、アミド化、脱アミド化、エステル化、脱エステル化、酵素切断などによって生成することができる。このため、本発明は、本明細書で開示される化合物の代謝物を含み、本明細書で開示される化合物を哺乳動物と十分に長い時間接触させることによって生成される代謝物を含む。
【0050】
「薬学的に許容できる塩」とは、本明細書で開示される化合物の有機塩または無機塩を指す。薬学的に許容できる塩は当該分野で知られているものである。例えば、S.M.BergeらはJ. Pharmaceutical Sciences, 1977,66:1-19に薬学的に許容できる塩を詳細に説明しており、引用により本明細書に組み込まれる。薬学的に許容でき且つ無毒の幾つかの非制限的な実施例は、アミノ基と無機酸(例えば塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、過塩素酸)または有機酸(例えば酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、マロン酸)からなる塩または当該分野で使用される他の方法(例えばイオン交換)を使用して形成された塩を含む。他の薬学的に許容できる塩はアジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、硫酸水素塩、硼酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、シクロペンタンプロピン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコピナン酸塩、リン酸グリセリド、グルコン酸塩、半硫酸塩、ヘプタン酸塩、カプロン酸塩、ヨウ素酸水素塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオネート、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、パルモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などを含む。適切な塩基から誘導される塩は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩及びN(C1-4アルキル)塩を含む。本発明はまた、本明細書で開示される化合物の任意の塩基性窒素含有基の四級化を想定する。このような四級アンモニウム化により、水溶性または油溶性または分散性の生成物を得ることができる。代表的なアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩は、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどを含む。必要に応じて、他の薬学的に許容できる塩は、ハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、C1-8スルホン酸塩、またはアリールスルホン酸塩などの対イオンを使用して形成される非毒性アンモニウム、第四級アンモニウム、及びアミンカチオンを含む。
【0051】
「溶媒和物」という用語は、1つまたは複数の溶媒分子と本明細書で開示される化合物との会合体または複合体を指す。溶媒和物を形成する溶媒の実施例は、水、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノール、DMSO、酢酸エチル、酢酸、エタノールアミン及びその混合物を含むが、これらに制限されない。「水和物」という用語は、溶媒分子が水である複合体を指す。
【0052】
前記溶媒が水である場合、「水和物」という用語を使用することができる。一実施形態において、1つの水分子が本明細書で開示される化合物の1つの分子と関連付けられ、例えば水和物である。他の実施形態において、1つ以上の水分子が本明細書で開示される化合物の1つの分子と関連付けられ、例えば二水和物である。別の実施形態において、1つ以下の水分子が本明細書で開示される化合物の1つの分子と結合でき、例えば半水和物である。なお、本発明のすべての溶媒和物はいずれも本明細書で開示される化合物の非水和物形式としての生物的有効性を保持する。
【0053】
本明細書で使用される「治療に有効な量」または「治療に有効な投与量」という用語は、本明細書で開示される化合物が生物的または医学的反応(例えば、酵素またはタンパク質の活性を低下または抑制したり、症状を改善したり、乱れを軽減したり、病気の進行を遅らせたりするなど)を引き起こする量を指す。
【0054】
化合物と薬物組成物の使用
【0055】
本明細書で開示される化合物WS635または薬物組成物は創傷の治癒を効果的に促進することができる。
【0056】
本明細書で開示される化合物またはその立体異性体、互変異性体、N-酸化物、溶媒和物、代謝物、薬学的に許容できる塩またはプロドラッグまたは薬学的に許容できる組成物の「有効量」、「治療に有効な量」または「有効投与量」は、創傷の治癒を効果的に促進する量である。複雑な且つ薬学的に許容できる組成物はかなり広い投与量範囲内で有効に投与できる。例えば、1人当たりの1日の投与量は約30mg~約1000mgであり、化合物または薬学的に許容できる組成物は、1日に単回投与量または数回に分けて投与することができる。本明細書で開示される方法によれば、化合物と組成物を創傷の治癒を効果的に促進する任意の量と任意の投与経路によって投与することができる。必要な正確な量は被験者によって異なり、被験者の種類、年齢及び一般状況、感染の重症度、特定の薬剤、その投与方法などに依存する。
【0057】
幾つかの実施形態において、創傷形成後、例えば創傷形成後14日以内に本明細書に記載の化合物を被験者に投与する。本明細書に記載の化合物は約1000mg未満の1日投与量で投与することができ、例えば約30mg~約1000mgの間の1日投与量または約500mg~約700mgの間の1日投与量で投与することができる。該化合物は1日1回投与することができるか、または単回投与量で1日1回投与することができる。
【0058】
WS635及びその組成物は、人間の治療のほか、伴侶動物、外来動物、農場動物の哺乳動物などの動物の獣医治療にも使用できる。他の実施形態において、本明細書で開示される動物は馬、犬、及び猫を含む。本明細書で使用されるように、本明細書で開示される化合物はその薬学的に許容できる誘導体を含む。
【0059】
実施例
【0060】
材料と方法
【0061】
6週齢の雄性SDラット18匹をランダムに3群に分け、それぞれモデル群、被験者群、陽性対照群とし、各群は6匹であった。麻酔後に皮膚創傷の手術を行い、皮膚創傷が形成されてから2時間後に経口投与を開始した。すべてのラットは同じケージで飼育されている。手術の詳細は、すべての動物に10%ヒドロクロロアルデヒド溶液(3ml/kg)で腹腔内注射麻酔を行い、背中にペット用剃毛ナイフで脱毛し、直径2cmの円形マーカーを作成し、皮膚をアルコールで消毒した後、マーカーラインに沿って手術ハサミで全層の皮膚を切除し、創面を圧迫止血することである。モデル群は、10%DMSOのコーンオイルを経口強制経口投与し、被験者群は投与量が52.8mg/kgのWS635(10%DMSOに溶解したコーンオイル)を経口強制経口投与し、陽性対照群は局所的に262.5IU/cm(つまり、62.5μl/cm2)の組換えウシ塩基性線維芽細胞成長因子(rb-bFGF)外用溶液を毎日1回、連続7日間投与する。同じ条件で各ラットの創面をデジタル写真に撮る。プラスチック透明紙で創面をトレースし、プラスチック紙で創面をトレースした後、image Jソフトで創面面積をスキャンする。創傷面積に基づいて、創傷の治癒率(%)=(投与後面積-投与前面積)/投与前面積×100%で創傷の治癒率(%)を算出する。
【0062】
結果
【0063】
モデル群と比べて、WS635群と陽性対照群(rb-bFGF)の創傷面積は、3日と7日目にいずれも顕著に小さくなる(P<0.05,P<0.01)。WS635とrb-bFGFは顕著な差別がない(P>0.05)。投与周期内で、WS635群とrb-bFGF群の創傷の治癒率は投与時間の増加に伴って向上する。結果から、WS635の経口投与によりSDラットの創傷の治癒モデルにおける創傷の治癒を顕著に促進することができることを示す。結果を図1図2に示す。
図1
図2
【国際調査報告】