IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ケーティー・アンド・ジー・コーポレーションの特許一覧 ▶ コロン インダストリーズ、インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特表-保湿剤含有タバコ用新規フィルター 図1
  • 特表-保湿剤含有タバコ用新規フィルター 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】保湿剤含有タバコ用新規フィルター
(51)【国際特許分類】
   A24D 3/06 20060101AFI20241031BHJP
   A24D 3/14 20060101ALI20241031BHJP
   A24D 3/02 20060101ALI20241031BHJP
   A24F 40/42 20200101ALI20241031BHJP
【FI】
A24D3/06
A24D3/14
A24D3/02
A24F40/42
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533833
(86)(22)【出願日】2023-01-17
(85)【翻訳文提出日】2024-06-04
(86)【国際出願番号】 KR2023000823
(87)【国際公開番号】W WO2023140594
(87)【国際公開日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】10-2022-0007855
(32)【優先日】2022-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0006269
(32)【優先日】2023-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519217032
【氏名又は名称】ケーティー アンド ジー コーポレイション
(71)【出願人】
【識別番号】524213047
【氏名又は名称】コロン インダストリーズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マ、キェンバエ
(72)【発明者】
【氏名】アン、キ ジン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ジン チュル
(72)【発明者】
【氏名】チェオン、ボン ス
(72)【発明者】
【氏名】ハ、スンホーン
(72)【発明者】
【氏名】セオ、セウン ドン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジェオン フン
(72)【発明者】
【氏名】ジェオン、ジョン チェオル
(72)【発明者】
【氏名】ジン、サン ウー
(72)【発明者】
【氏名】フワン、イェオン ナム
【テーマコード(参考)】
4B045
4B162
【Fターム(参考)】
4B045BA02
4B045BC04
4B045BC16
4B045BD31
4B162AA03
4B162AA22
4B162AB01
4B162AB12
4B162AC08
4B162AC18
(57)【要約】
本発明は、リヨセル繊維束を含むリヨセルトウ、保湿剤およびバインダーを含むタバコ用フィルターと、これを含む喫煙物品および前記タバコ用フィルターの製造方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リヨセル繊維束を含むリヨセルトウ、保湿剤およびバインダーを含む、タバコ用フィルター。
【請求項2】
前記保湿剤は、プロピレングリコール(PG)およびグリセリンのうち1つ以上を含む請求項1に記載のタバコ用フィルター。
【請求項3】
前記保湿剤は、ブラッシュタイプ(brush type)または噴霧タイプ(spray type)で前記リヨセルトウに分散した請求項1に記載のタバコ用フィルター。
【請求項4】
前記バインダーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、エチルセルロース(EC)、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリビニルアセテート(PVAc)、デンプン、デキストリンおよびポリエステル系バインダーからなる群から選ばれた1つ以上を含み、
前記ポリエステル系バインダーは、炭素数5~12のアルキレン、炭素数5~12のアリレンおよび炭素数5~12のヘテロアリレンからなる群から選ばれた1つ以上を含む請求項1に記載のタバコ用フィルター。
【請求項5】
脂肪酸カルボキシル系化合物、ソルビタンエステル系化合物、ソルベート系化合物およびエトキシ系化合物のうち1つ以上の乳化剤をさらに含む請求項1に記載のタバコ用フィルター。
【請求項6】
トリエチルシトレートをさらに含む請求項1に記載のタバコ用フィルター。
【請求項7】
前記トリエチルシトレートの含有量は、タバコ用フィルターを構成するリヨセルトウの重量に対して3重量%~7重量%である請求項6に記載のタバコ用フィルター。
【請求項8】
前記保湿剤の含有量は、前記タバコ用フィルターの長さ(mm)当たり1mg~5mg含まれる請求項1から7のいずれか一項に記載のタバコ用フィルター。
【請求項9】
前記保湿剤の含有量は、前記リヨセルトウの重量(mg)当たり0.1mg~0.5mg含まれる請求項1から7のいずれか一項に記載のタバコ用フィルター。
【請求項10】
タバコ媒質部、フィルター部およびラッパーを含む喫煙物品であって、
前記フィルター部は、リヨセル繊維を含むリヨセルトウ、保湿剤およびバインダーを含み、
前記保湿剤は、プロピレングリコール(PG)およびグリセリンのうち1つ以上を含み、ブラッシュタイプ(brush type)またはスプレータイプ(spray type)で前記リヨセルトウに分散した喫煙物品。
【請求項11】
前記フィルター部は、2以上のセグメントに分画されており、
前記2以上のセグメント中の1つ以上が、リヨセル繊維束を含むリヨセルトウ、保湿剤およびバインダーを含む請求項10に記載の喫煙物品。
【請求項12】
前記喫煙物品は、非燃焼加熱式の喫煙物品である請求項10または11に記載の喫煙物品。
【請求項13】
リヨセル繊維束を含むリヨセルトウを準備する段階(Sl)と、
保湿剤およびバインダーを混合して、混合溶液を製造する段階(S2)と、
前記混合溶液を前記リヨセルトウに分散させる段階(S3)と、を含み、
前記保湿剤は、プロピレングリコール(PG)およびグリセリンのうち1つ以上を含み、
前記バインダーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、エチルセルロース(EC)、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリビニルアセテート(PVAc)、デンプン、デキストリンおよびポリエステル系バインダーからなる群から選ばれた1つ以上を含み、
前記ポリエステル系バインダーは、炭素数5~12のアルキレン、炭素数5~12のアリレンおよび炭素数5~12のヘテロアリレンからなる群から選ばれた1つ以上を含み、
前記(S3)段階は、ブラッシュタイプ(brush type)またはスプレータイプ(spray type)で前記リヨセルトウに分散させるタバコ用フィルターの製造方法。
【請求項14】
前記(S2)段階の混合溶液に、脂肪酸カルボキシル系化合物、ソルビタンエステル系化合物、ソルベート系化合物およびエトキシ系化合物のうち1つ以上の乳化剤およびトリエチルシトレートをさらに混合する請求項13に記載のタバコ用フィルターの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保湿剤含有タバコ用新規フィルターおよびこれを適用した喫煙物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術は、喫煙充足感の要素中の1つである霧化量を増進させるために、タバコフィルターに保湿剤を添加するなどの技術を活用した。しかしながら、このような保湿剤は、高い温度で蒸気を放出させ、従来使用したタバコフィルターの素材であるセルロースアセテート(Cellulose acetate,CA)は、このような高い温度で溶解する特性を有するので、保湿剤とセルロースアセテートを同時に適用して使用しにくいという短所がある。
【0003】
したがって、前記問題点を解決するために、セルロースアセテートタバコフィルターでなく、喫煙時に煙霧量を増進させるために、紙フィルターにグリセリン、プロピレングリコールなどのような保湿剤を添加して、紙の原紙を活用した紙フィルターを使用する方案が存在する。
【0004】
しかしながら、保湿剤を添加した紙フィルターの場合にも、下記のような特有の問題点が発生する。
i)紙の原紙を使用する場合には、紙特有の異臭が発生する。
ii)フィルターの調和期間に最小2週が必要である。
iii)紙の原紙およびクリンプされた(crimped)紙の活用特性上、均一の吸引抵抗を具現しにくい。
iv)クリンプされた紙を活用して製造するので、フィルター断面の外観が綺麗ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これより、前述のような従来技術の問題点および/または限界点を克服するために、本発明は、セルロースアセテートフィルターまたは紙フィルターの代わりに、リヨセル(Lyocell)繊維を活用したタバコフィルターを適用して、保湿剤を添加して製造された、保湿剤含有タバコ用新規フィルターおよび/またはこれを含む喫煙物品を提供することを目的とする。
【0006】
しかしながら、本発明が解決しようとする課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていない他の課題は、以下の記載から該当技術分野における通常の知識を有する者に明確に理解され得る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施例によれば、リヨセル繊維束を含むリヨセルトウ、保湿剤およびバインダーを含むタバコ用フィルターを提供する。
【0008】
一態様によれば、タバコ媒質部、フィルター部およびラッパーを含む喫煙物品であって、
前記フィルター部は、リヨセル繊維を含むリヨセルトウ、保湿剤およびバインダーを含み、
前記保湿剤は、プロピレングリコール(PG)およびグリセリンのうち1つ以上を含み、ブラッシュタイプ(brush type)またはスプレータイプ(spray type)で前記リヨセルトウに分散したことを特徴とする喫煙物品を提供する。
【0009】
他の態様によれば、タバコ用フィルターの製造方法であって、
リヨセル繊維束を含むリヨセルトウを準備する段階(Sl);
保湿剤およびバインダーを混合して、混合溶液を製造する段階(S2);および
前記混合溶液を前記リヨセルトウに分散させる段階(S3);を含み、
前記保湿剤は、プロピレングリコール(PG)およびグリセリンのうち1つ以上を含み、
前記バインダーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、エチルセルロース(EC)、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリビニルアセテート(PVAc)、デンプン、デキストリンおよびポリエステル系バインダーからなる群から選ばれた1つ以上を含み、
前記ポリエステル系バインダーは、炭素数5~12のアルキレン、炭素数5~12のアリレンおよび炭素数5~12のヘテロアリレンからなる群から選ばれた1つ以上を含み、
前記(S3)段階は、ブラッシュタイプ(brush type)または噴霧タイプ(Spray type)で前記リヨセルトウに分散させることを特徴とする、タバコ用フィルターの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、セルロースネットワーク構造のリヨセル(Lyocell)繊維をトウ化を通じてフィルターロッドを形成してタバコフィルターに適用することによって、セルロースアセテート(Cellulose acetate,CA)フィルターの製造と類似し、製造されたフィルターの外観が綺麗で、紙の原紙の異臭の発生がないという効果を示す。また、リヨセル繊維のトウ化を通じて製造されたフィルターは、紙フィルターに比べて、吸引抵抗の偏差が少ないため、均一の吸引抵抗を示す。
【0011】
それだけでなく、リヨセルは、親水性であり、リヨセルの薄いトウは、繊維(fiber)ストランドからなるので、比表面積が高いため、紙フィルターに比べて親水性の保湿剤吸収が速く、吸引抵抗が安定化されるという長所があり、セルロースアセテートとは異なって、ガラス転移温度(Tg)がなく、保湿剤が蒸気を放出させる300℃以上の高温でもフィルターロッド形態で保存されることができ、保湿剤とリヨセル素材が併用可能であるという優れた効果がある。
【0012】
本発明の効果は、上記した効果に限定されるものではなく、本発明の詳細な説明または請求範囲に記載された発明の構成から推論可能なすべての効果を含むものと理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施例によるフィルターを含む、非燃焼加熱式喫煙物品の概略的な構成を示す図である。
図2】本発明の一実施例によるフィルターを含む、燃焼型喫煙物品の概略的な構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面の図1図2を参照して実施例を詳細に説明する。しかしながら、実施例には、様々な変更が加えられることができ、特許出願の権利範囲がこのような実施例により制限または限定されるものではない。実施例に対するすべての変更、均等物や代替物が権利範囲に含まれるものと理解すべきである。
【0015】
実施例において使用した用語は、ただ説明を目的に使用されたものであり、限定しようとする意図と解釈すべきものではない。単数の表現は、門脈上明白に相異に意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、1つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性をあらかじめ排除しないものと理解すべきである。
【0016】
別途定義しない限り、技術的や科学的な用語を含んでここで使用されるすべての用語は、実施例の属する技術分野における通常の知識を有する者により一般的に理解されるものと同じ意味を有している。一般的に使用される辞書に定義されているような用語は、関連技術の門脈上有する意味と一致する意味を有するものと解釈すべきであり、本出願において明白に定義しない限り、理想的または過度に形式的な意味と解釈されない。
【0017】
また、添付の図面を参照して説明するに際して、図面符号に関係なく、同じ構成要素は、同じ参照符号を付与し、これに関する重複する説明を省略する。実施例を説明するに際して、関連した公知技術に関する具体的な説明が実施例の要旨を不明確にすることができると判断される場合、その詳細な説明を省略する。
【0018】
また、実施例の構成要素を説明するに際して、第1、第2、A、B、(a)、(b)などの用語を使用することができる。このような用語は、ただ当該構成要素を他の構成要素と区別するためのものであり、その用語により当該構成要素の本質や順番または順序などが限定されない。
【0019】
いずれか1つの実施例に含まれた構成要素と、共通の機能を含む構成要素は、他の実施例において同じ名称を使用して説明することとする。反対となる記載がない限り、いずれか1つの実施例に記載した説明は、他の実施例にも適用することができ、重複する範囲で具体的な説明を省略する。
【0020】
明細書全般において「喫煙物品」は、タバコ(シガレット)、シガーなどのように、エアロゾルを発生させることができるものを意味し得る。喫煙物品は、エアロゾル生成物質またはエアロゾル形成基質を含んでもよい。また、喫煙物品は、板状葉タバコ、刻み、再構成タバコなどタバコ原料を基礎とする固体物質を含んでもよい。喫煙物質は、揮発性化合物を含んでもよい。
【0021】
また、明細書全般において「上流」または「上流方向」は、喫煙物品1を喫煙するユーザの口部から遠ざかる方向を意味し、「下流」または「下流方向」は、喫煙物品1を喫煙するユーザの口部から近づく方向を意味する。例えば、図1に示された喫煙物品1において、タバコ物質部10は、タバコ用フィルター部20の上流または上流方向に位置する。
【0022】
また、本明細書では、喫煙物品100の燃焼型シガレットまたは電子タバコ機器などのエアロゾル生成装置(不図示)とともに使用される非燃焼加熱式シガレットである場合のうちから1つを選択して例にあげて説明しても、これに限定されずに、前記概念を全部含むことができる。
【0023】
本発明の一実施例によれば、リヨセル繊維束を含むリヨセルトウ、保湿剤およびバインダーを含むタバコ用フィルターを提供する。
【0024】
本発明のタバコ用フィルターが保湿剤を含む場合、前記保湿剤の種類としては、プロピレングリコール(propylene glycol,PG)およびグリセリン(glycerin)のうち1つ以上を含んでもよい。このような保湿剤を含むことによって、従来喫煙物品に比べて霧化量をより効果的に増進させて、ユーザにとって喫煙充足感をより向上させることができる。
【0025】
前記タバコ用フィルターに含まれる保湿剤の含有量は、タバコ用フィルターの長さを基準として示したとき、フィルターの長さ1mm当たり1mg~5mg含まれてもよく、好ましくは、3mg~5mgであってもよい。
【0026】
なお、または、前記保湿剤は、リヨセルトウの重量を基準として示すこともでき、リヨセルトウの重量1mg当たり0.1mg~0.5mg含まれてもよい。
【0027】
保湿剤の含有量が前記下限未満で含まれる場合には、保湿剤の添加による霧化量の増進効果が僅かであり、前記上限を超過して含まれる場合には、フィルターの製造後に保湿剤が流れ出て、フィルター物流調達に包装汚染が発生することがある。
【0028】
本発明のタバコフィルターを形成する骨組(支持体)として、リヨセル繊維束を含むリヨセルトウを含んでもよいし、前記バインダーは、このような骨組を形成する複数の繊維束およびこれらが構成するトウを連結する役割をする。
【0029】
従来タバコフィルターの支持体に主に使用されるセルロースアセテート(CA)フィルターの場合、前述したグリセリンのような保湿剤を添加する場合には、高温でCA素材が溶解する問題点が発生する。特に、電子タバコのように200℃以上の温度で加熱する場合、保湿剤を含有するセルロースアセテートフィルター素材が溶けて、ダンピング現象が発生し(CAは80~90℃から溶ける現象が発生する)、フィルターの外形と官能特性に影響を及ぼすという短所が存在する。特に、本発明のリヨセルフィルターと同様に、セルロースアセテートフィルターにグリセリン(保湿剤)を2mg/mm添加する場合、フィルター紙箱(tray)に液体が流れ込むという問題点が発生する。
【0030】
また、前記セルロースアセテートフィルター以外に、紙の原紙をタバコフィルターの支持体に活用することもできるが、紙の原紙から始まる特有の異臭が発生し、フィルターの調和期間として別途に最小2週間の時間が必要であるという問題点がある。また、紙フィルターは、クリンプされた(crimped)紙を活用して製作されるという点から、セルロースアセテートフィルターやリヨセルフィルターに比べて、均一の吸引抵抗を具現しにくく、フィルター断面の外観が綺麗ではないという短所が存在する。
【0031】
これに対し、本発明の一実施例によるタバコフィルターに含まれる前記リヨセルトウは、親水性のリヨセル繊維(fiber)束からなり、比表面積が高いため、親水性の保湿剤吸収が速いという長所があるだけでなく、高い温度でも溶けない特性によって、保湿剤が蒸気化される高温でもフィルターロッド形態で維持することができ、均一の吸引抵抗(小さい吸引抵抗偏差)を具現することができ、紙フィルターの異臭などの問題点が発生しないので、他の繊維素材のフィルターに比べて、保湿剤含有タバコ用フィルターとしてさらに適していると言える。
【0032】
本発明において、複数の繊維束とこれらが構成するトウを連結する役割をする前記バインダーは、具体的には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、エチルセルロース(EC)、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリビニルアセテート(PVAc)、デンプン、デキストリンおよびポリエステル系バインダーからなる群から選ばれた1つ以上を含んでもよいし、ここで、ポリエステル系バインダーは、炭素数5~12のアルキレン、炭素数5~12のアリレンおよび炭素数5~12のヘテロアリレンからなる群から選ばれた1つ以上を含んでもよい。
【0033】
また、本発明の一実施例によるフィルターは、前記繊維束を含むトウおよびバインダー以外にも、タバコ味の増進などのために、トリエチルシトレート(triethyl citrate,TEC)をさらに含んだり、フィルター製造中に混合溶液における層分離現象の改善のための乳化剤などをさらに含んでもよい。乳化剤などを通じて層分離現象が改善される場合、リヨセルトウに対する混合溶液のより均一の噴射が可能である。
【0034】
前記トリエチルシトレートは、タバコ用フィルターを構成するリヨセルトウの重量に対して3重量%~7重量%で含まれてもよく、前記乳化剤の具体的な種類としては、脂肪酸カルボキシル系化合物、ソルビタンエステル系化合物、ソルベート系化合物およびエトキシ系化合物のうち1つ以上を使用することができる。
【0035】
なお、前記プロピレングリコール、グリセリンのような保湿剤の添加は、前記リヨセルトウに保湿剤およびバインダーを含む溶液を均一に分散させることによって実現することができる。
【0036】
この場合、前記溶液の分散は、ブラッシュタイプ(brush type)またはスプレータイプ(spray type)からなってもよいが、これに制限されず、例えば、一般セルロースアセテート(CA)トウ可塑剤投入方式でリヨセルの表面に保湿剤溶液を均一に噴射したり、1流体および2流体スプレーを適用するなど様々な噴射方式を活用することができる。なお、前記ブラッシュタイプは、ブラッシュローラーの回転を通じて液体を飛ばす方式で液体が噴射される方式を意味し、前記スプレータイプは、スプレーノズル方式を通じて液体が噴射される方式を意味する。なお、Fume形成の防止およびより均一の噴射の観点から、そのうちで、好ましくは、ブラッシュタイプの噴射方式が適している。
【0037】
本発明の他の実施例によれば、タバコ媒質部、フィルター部およびラッパーを含む喫煙物品であって、
前記フィルター部は、リヨセル繊維を含むリヨセルトウ、保湿剤およびバインダーを含み、
前記保湿剤は、プロピレングリコール(PG)およびグリセリンのうち1つ以上を含み、ブラッシュタイプ(brush type)またはスプレータイプ(spray type)で前記リヨセルトウに分散したことを特徴とする喫煙物品を提供することができる。
【0038】
この場合、前記フィルター部は、2以上のセグメントに分けられ、第1セグメント、第2セグメントなどに分画されることができ、配置される位置に関係なく、前記2以上のセグメント中の1つが保湿剤およびリヨセルトウを含む本発明の一実施例によるタバコ用フィルターを含む場合には、本発明の喫煙物品の範囲に含まれ得る。
【0039】
図1を例にあげて説明すると、タバコ用フィルター110は、タバコ媒質部120の後端に位置し、単一のセグメントで構成されてもよく、複数個のセグメントで構成されてもよい(不図示)。第1セグメントと第2セグメントのように複数個のセグメントに分けられる場合には、第1セグメントのフィルター部は、冷却素材を含むこともでき、これを通じて、タバコ媒質部が加熱されることで、生成されたエアロゾルを冷却させることができ、ユーザは、適当な温度に冷却されたエアロゾルを吸入することができる。
【0040】
また、本発明の一実施例による喫煙物品100は、タバコ媒質部120の下端に位置するタバコ用フィルター110以外にも、タバコ媒質部120の上端に位置する前端プラグ150を含むこともでき、前記前端プラグ150は、タバコロッドが外部に離脱するのを防止したり、喫煙中にタバコロッドから液状化されたエアロゾルがエアロゾル生成装置に流れ込むのを防止する役割をすることができるものであり、本発明の一実施例によるタバコ用フィルターからなってもよい。
【0041】
また、喫煙物品を構成するタバコ媒質部は、通常、葉タバコのようにニコチンを含むタバコ物質を含み、バインダーやその他添加剤などのような賦形剤をさらに含んでもよいし、一例として、本発明のタバコ媒質部に含まれるタバコ媒質は、タバコ物質および賦形剤などを含む顆粒の形態で製造することができる。
【0042】
本発明においてタバコ物質は、エアロゾル発生基材を形成する物質であり、タバコ葉切れ、タバコ幹、タバコ処理中に発生したタバコ粉塵および/またはタバコ葉の葉片ストリップであってもよい。タバコ葉は、黄色種、バーレー種、オリエント種、シガー葉およびトーストのうちから選ばれた少なくとも1つ以上であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0043】
また、喫煙物品を構成する前記ラッパーは、タバコ媒質部を包むシガレットペーパー、フィルター部を包むフィルター巻紙などで製作することができ、タバコ媒質部とフィルターを結合するティッピングラッパーには、外部空気が流入したり内部気体が流出できるように、選択的に周方向に沿って1つ以上の穿孔が形成されていてもよく、これを通じて、シガレットの空気希釈率を具現し、主流煙成分の移行量を調節することができるという効果がある。
【0044】
本発明の一実施例による喫煙物品は、燃焼型または非燃焼加熱式喫煙物品に該当することができ、非燃焼加熱式喫煙物品に使用される場合には、エアロゾル生成装置に別途に挿入されてもよい。ここで、エアロゾル生成装置は、エアロゾル生成物品を収容できる収容溝を含んでおり、その他にも、エアロゾルを発生させることができるように前記エアロゾル生成物品を加熱するヒーターと、エアロゾル生成装置の動作を全般的に制御する制御部と、エアロゾル生成装置が動作するのに用いられる電力を提供するバッテリーと、エアロゾル生成物品がエアロゾル生成装置に挿入されたことを認識する感知器などを含んでもよい。現行エアロゾル生成装置は、一般的に200℃以上の内部/外部加熱方式を通じて、喫煙物品を加熱するという点から、本発明の一実施例による喫煙物品は、非燃焼加熱式喫煙物品であることが、効果発揮の観点から好ましいと言える。
【0045】
なお、本発明の一実施例によれば、下記の段階(Sl)~段階(S3)を含む、タバコ用フィルターの製造方法を提供する:
リヨセル繊維束を含むリヨセルトウを準備する段階(Sl);
保湿剤およびバインダーを混合して、混合溶液を製造する段階(S2);および
前記混合溶液を前記リヨセルトウに分散させる段階(S3)。
【0046】
この際、使用される保湿剤およびバインダーは、上記で詳細に記述したタバコ用フィルターに含まれる保湿剤およびバインダーと実質的に同一であると認められ、前記段階(S3)における混合溶液分散方法も、前述のようなブラッシュタイプまたは噴霧タイプで実施することができる。
【0047】
以下、実施例と比較例に基づいて本発明の構成およびそれによる効果をより詳細に説明する。しかしながら、本実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0048】
-実施例
(1)製造例:液状リヨセルフィルターの製造
グリセリン保湿剤、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxypropyl methyl cellulose,HPMC)バインダーおよびトリエチルシトレートを混合して、混合溶液を製造した後、フィルター製造機械のブラッシュローラー回転を通じてスプレー液体噴射方式(三條あるいはHauni方式)を利用して、前記混合溶液をリヨセル繊維束を含むリヨセルトウに直接噴射した。その後、前記混合溶液が噴射されたリヨセルトウを巻紙で包んで、フィルターロッドを形成した。
【0049】
これを通じて、本発明の保湿剤を3mg/(フィルターの長さ(mm))含むリヨセルフィルターを製造することができた。
【0050】
(2)実験例1:液状リヨセルフィルターと液状紙フィルターの物理性評価の比較
前記製造例における方法と同一に実施するものの、下記表1のように、グリセリン保湿剤の含有量を異ならせて液状リヨセルフィルターを製造し、紙フィルターについても、グリセリン保湿剤の含有量を異ならせて液状紙フィルターを製造した。
【0051】
製造したフィルターに対する物理性を評価し、その結果を下記表1に示した。
【0052】
【表1】
(前記「重量(mg)」は、1個のフィルターに入るフィルター巻紙を除いたトウの重量を示す。)
【0053】
前記表1に示されたように、液状リヨセルフィルターは、対照区(液状紙フィルター)に比べて、フィルター調和期間が短縮される効果を示し、ひいては、フィルターの重量別のグリセリン投入時に、リヨセルフィルターが、紙フィルターに比べて、高いグリセリン含有量の保有効果を有することができるという点が分かる。
【0054】
また、液状紙フィルターの場合、グリセリン投入量0mg/mgに対して0.29mg/mgの吸引抵抗増加幅が110mmHO(92%増加率)を示すのに対し、液状リヨセルフィルターの場合、液状紙フィルターよりさらに多いグリセリン投入量を有する0.37mg/mgの場合にも、0mg/mgに対して59mmHO(24%増加率)の増加幅を示すことに過ぎないところ、液状リヨセルフィルターが、液状紙フィルターに比べて、保湿剤を添加しても均一の吸引抵抗を具現することができるという点を確認することができる。
【0055】
(3)実験例2:液状リヨセルフィルターの適用による官能評価
本発明者は、KT&G R&D内部パネル10人を対象に、保湿剤を5mg/(フィルターの長さ(mm))含む液状紙フィルター(対照区)と前記製造例を通じて製造した液状リヨセルフィルター(実施例1)を使用して製作した喫煙物品に対して、喫味強度、霧化量、刺激性、異臭、吸引力および全体タバコ味に関する官能評価(合計7点満点)を実施した(表2)。
【0056】
前記対照区と実施例1は、トウの重量当たり投入されたグリセリンの量が最大限類似した場合を比較して実験したものである(0.29mg/mg vs 0.37mg/mg)。
【0057】
【表2】
【0058】
前記表2に示されたように、実施例1の液状リヨセルフィルターを使用して製作した喫煙物品は、対照区の液状紙フィルターで製作した喫煙物品に比べて、類似したレベルの霧化量を示すが、刺激性や異臭が少なく、全体的なタバコ味がさらに優れていることを確認できるところ、従来液状紙フィルターに比べて、液状リヨセルフィルターが、保湿剤含有タバコフィルターの機能的な面から、さらに適していることが分かる。
【0059】
以上のように実施例がたとえ限定された図面により説明されたが、当該技術分野における通常の知識を有する者なら、上記に基づいて様々な技術的修正および変形を適用することができる。例えば、説明された技術が説明された方法と異なる順序で行われたり、および/または説明されたシステム、構造、装置、回路などの構成要素が説明された方法と異なる形態で結合されるかまたは組み合わせられたり、他の構成要素または均等物によって代替または置換されても、適切な結果を達成することができる。
【0060】
したがって、他の具現、他の実施例および特許請求範囲と均等なものも、後述する請求範囲の範囲に属する。
図1
図2
【国際調査報告】