(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】3Dロボットコンクリートプリンタの衝突回避のための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
B25J 19/06 20060101AFI20241031BHJP
E04G 21/02 20060101ALI20241031BHJP
E04B 1/35 20060101ALI20241031BHJP
B33Y 50/00 20150101ALI20241031BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20241031BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20241031BHJP
B28B 1/30 20060101ALI20241031BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B25J19/06
E04G21/02
E04B1/35 L
B33Y50/00
B33Y10/00
B33Y30/00
B28B1/30
C04B28/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024547820
(86)(22)【出願日】2022-10-13
(85)【翻訳文提出日】2024-06-07
(86)【国際出願番号】 EP2022078467
(87)【国際公開番号】W WO2023066772
(87)【国際公開日】2023-04-27
(32)【優先日】2021-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520255399
【氏名又は名称】スイダンスク ウニバーシティト
【氏名又は名称原語表記】SYDDANSK UNIVERSITET
【住所又は居所原語表記】Campusvej 55, 5230 Odense M DENMARK
(71)【出願人】
【識別番号】524152676
【氏名又は名称】コボド インターナショナル エーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュレッテ クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ルンド-ニールセン ヘンリック
【テーマコード(参考)】
2E172
3C707
4G052
4G112
【Fターム(参考)】
2E172AA05
2E172DE00
3C707AS13
3C707AS21
3C707BS03
3C707BS05
3C707JU15
3C707LS20
3C707MS08
3C707MS14
4G052DA01
4G052DB12
4G052DC06
4G112PE02
(57)【要約】
【課題】
【解決手段】本発明は、3Dロボットコンクリートプリンタの衝突回避方法であって、前記方法は、コンクリート材料を塗布及び/又は処理するための経路内でツールを移動することによって、前記3Dロボットコンクリートプリンタを用いて、Gコードなどに基づき、命令を実行することによって塗布及び/又は処理プロセスを実行するステップと、モーションプランナへのコマンドに応じてツールを移動させるステップであって、前記移動はモデルベースの衝突予測システムによって支援される、ステップと、を備え、前記モデルベースの衝突予測システムは、前記3Dロボットコンクリートプリンタへの命令によるコンクリート構造物の塗布及び/又は処理から、コンクリート構造物の3Dジオメトリを推測及び生成するステップと、前記3Dジオメトリを3D衝突モデルとして使用するステップであって、前記3Dロボットコンクリートプリンタの部品が前記移動を実行する際に衝突を引き起こすかどうかをいつでもチェックすることができる、ステップと、を備え、前記コンクリート構造物の前記3D衝突モデルは、前記塗布及び/又は前記処理プロセスと並行して改良され、前記プロセス命令の実行の進行に応じて更新される方法に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3Dロボットコンクリートプリンタの衝突回避方法であって、
前記衝突回避方法は、
3DロボットコンクリートプリンタでGコードに基づくプロセス命令を実行して、コンクリート材料を塗布及び/又は加工するための経路内でツールを動作させることによって、塗布プロセス及び/又は加工プロセスを実行するステップと、
モーションプランナへのモーションコマンドに応じてツールを動作させる動作ステップであって、前記動作はモデルベース衝突予測システムによって支援される、動作ステップと、
を含み、
前記モデルベース衝突予測システムは、
前記3Dロボットコンクリートプリンタへの命令によるコンクリート構造物の塗布及び/又は加工から、前記コンクリート構造物の3Dジオメトリを推測及び生成するステップと、
前記3Dジオメトリを3D衝突モデルとして使用して、前記3Dロボットコンクリートプリンタの部品が、前記動作ステップにおいて、衝突を引き起こすか否かを任意の時点でチェックする、ステップと、
を含み、
前記コンクリート構造物の前記3D衝突モデルは、前記塗布プロセス及び/又は前記加工プロセスと並行して改良され、前記プロセス命令の進捗状況に応じて更新される衝突回避方法。
【請求項2】
前記動作ステップは、前記ツールの動作を制御するオペレータによる手動操作、自動操作、又はセンサ誘導操作によって、実行される請求項1に記載の衝突回避方法。
【請求項3】
前記モデルベース衝突予測システムによって実行される衝突検出ステップをさらに含み、
前記衝突検出ステップにおいて、モーションコマンドに応答して動作する前記3Dロボットコンクリートプリンタの前記動作に基づいて提案された軌道が、前記コンクリート構造物に対応する前記3D衝突モデルと比較される請求項1又は2に記載の衝突回避方法。
【請求項4】
前記モデルベース衝突予測システムが前記3D衝突モデルを用いて衝突すると予測した場合、潜在的に有害なコマンドは退けられ、及び/又は、前記モデルベース衝突予測システムが前記3D衝突モデルを用いて衝突しないと予測した場合、前記モーションコマンドが目的どおりに実行される請求項1~3のいずれか1項に記載の衝突回避方法。
【請求項5】
衝突を回避するために、アルゴリズム又は更なるオペレータ入力から、別の衝突のないモーションコマンドが生成される請求項1~4のいずれか1項に記載の衝突回避方法。
【請求項6】
前記塗布プロセスは、押出機ツールを動作させることによる3Dコンクリート印刷プロセスである請求項1~5のいずれか1項に記載の衝突回避方法。
【請求項7】
3Dロボットコンクリートプリンタの衝突回避システムであって、
前記衝突回避システムは、
所定プログラムに従う完全自動化オペレーション、オペレータ用のジョイスティックおよび同様の入力デバイスからの手動オペレーション、又はセンサデータに従ってプリンタツールを動作させるセンサベースオペレーションから選択可能な入力からモーションコマンドを生成するモーションプランナと、
モーションプランナからのモーションコマンドを解釈して、物理プリンタ上で物理的に実行するモーションコントローラと、
前記モーションプランナからの前記モーションコマンドの衝突をテストし、衝突のないモーションコマンドの実行を前記モーションコントローラに許可し、衝突を引き起こすコマンドの実行を前記モーションコントローラに許可しない、モデルベース衝突予測システムと、
を備え、
前記モデルベース衝突予測システムは、
前記3Dロボットコンクリートプリンタに命令する塗布及び/又は加工プロセス制御からコンクリート構造物の3Dジオメトリを推測及び生成する推測生成部と、
前記3Dジオメトリを3D衝突モデルとして使用して、前記3Dロボットコンクリートプリンタの部品が、前記動作において、衝突を引き起こすか否かを任意の時点でチェックするチェック部と、
を備え、
前記モーションコントローラは、前記コンクリート構造物の3Dモデルを有し、前記3Dモデルは、プロセス命令の進捗状況に応じて更新される衝突回避システム。
【請求項8】
前記ツールは、プリントヘッド、コンクリート又は断熱材を注入するための注入ヘッド、及び機械加工作業を実行するための穴あけツール部材であるロボットアームアプリケーションのいずれか1つである請求項7に記載の衝突回避システム。
【請求項9】
前記物理プリンタは、前記プリントヘッドをクリーニング及び/又は交換するためのメンテナンスエリアを備える請求項8に記載の衝突回避システム。
【請求項10】
前記モデルベース衝突予測システムは、生成された前記3D衝突モデルを補足データと組み合わせる組合せ部を有し、前記補足データは、レーザースキャン及び/又はCADデータとして事前定義された3D障害物から得られるセンサデータであり、
前記3Dロボットコンクリートプリンタのワークスペースにある静的な障害物のデジタルツインを補足的3Dモデルとして、前記モデルベース衝突予測システムに追加できる請求項7に記載の衝突回避システム。
【請求項11】
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法を実行するように適合された、請求項7~10のいずれか1項に記載の衝突回避システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3Dロボットコンクリートプリンタの衝突回避のための方法及びシステムに関し、押出成形や印刷などのコンクリートの塗布及びコンクリート構造物の加工(後処理)を含む。
【背景技術】
【0002】
一般に、従来技術では、ロボット化されたコンクリートの塗布及び/又は加工プロセスのための衝突検出方法が提供されることが知られているが、そのような3D衝突検出方法は、グローバル/静的BIMデータなど「設計どおり(as designed)」の事前利用可能なジオメトリ、ローカル/動的センサデータから「構築されたまま(as built)」のその場(in-situ)で生成されたジオメトリのいずれかに基づいている。
【0003】
特許文献1には、作業環境において目標経路に沿って移動させることを目的とした可動性ツールを備えるケーブルベースのパラレルロボットが開示されている。このツールは、好ましくはコンクリート注入用の押出ツールであり、複数のケーブル及びケーブルアクチュエータを介して固定構造物のアンカーポイントに接続される。ケーブルアクチュエータを制御して、このツールを目標経路に沿って移動させる。特許文献1には、ケーブルとプリントされたコンクリート構造物との衝突を回避するために、ツールが移動するときの、ケーブルロボットのモデルベースの衝突検出については開示されているが、手動制御に衝突検出を用いることについては開示されていない。
【0004】
3Dコンクリート印刷では、印刷プロセスを一時停止したり、クリーニングなどのメンテナンスのために印刷中の構造物から押出ツールを遠ざけたりする必要が散発的に生じる。これらの作業は通常、機械の操作を十分に理解していない現場の作業員によって行われるため、印刷されたばかりの構造物に誤ってツールを打ち込んで、印刷物やプリンタに損傷を与える危険がある。
【0005】
通常の運用では、3Dコンクリート印刷は、作業員が関わることなく実行され、印刷プログラムが、3Dロボットコンクリートプリンタに送信されて自動実行される。印刷プログラムは通常、衝突が生じないように生成される。しかしながら、予期せぬ事態により、印刷物やプリンタに偶発的な衝突が生じる可能性がある。このような事態とは、プリンタのワークスペース内の作業員、材料およびツール、並びに、印刷された構造物への追加の取り付け、及び独立して生成されたいくつかの印刷プログラムによる印刷などである。
【0006】
例えば、3Dロボットコンクリートプリンタのセットアップが、材料注入や印刷面の仕上げなどの追加の加工による印刷物の後処理に用いられる場合、他の衝突シナリオは、実際の印刷プロセスの後に発生する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2019/025698号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そのため、大規模な3D印刷オペレーション、特に、3Dコンクリート印刷タスクでは、既知の衝突検出方法は満足できるものではない。従って、本発明の目的は、3Dロボットコンクリートプリンタの衝突回避のための改良された方法及びシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1態様は、3Dロボットコンクリートプリンタの衝突回避方法であって、
前記衝突回避方法は、
3Dロボットコンクリートプリンタで、Gコードに基づくプロセス命令を実行して、、コンクリート材料を塗布及び/又は加工するための経路内でツールを動作させることによって、塗布及び/又は加工プロセスを実行するステップと、
モーションプランナへのモーションコマンドに応じてツールを動作させる動作ステップであって、前記動作はモデルベース衝突予測システムによって支援される、動作ステップと、
を含み、
前記モデルベース衝突予測システムは、
前記3Dロボットコンクリートプリンタへの命令によるコンクリート構造物の塗布及び/又は加工から、前記コンクリート構造物の3Dジオメトリを推測及び生成するステップと、
前記3Dジオメトリを3D衝突モデルとして使用して、前記3Dロボットコンクリートプリンタの部品が、前記動作ステップにおいて、衝突を引き起こすか否かを任意の時点でチェックする、ステップと、
を含み、
前記コンクリート構造物の前記3D衝突モデルは、前記塗布プロセス及び/又は前記加工プロセスと並行して改良され、前記プロセス命令の進捗状況に応じて更新される衝突回避方法が提供される。
【0010】
本発明の第2態様は、3Dロボットコンクリートプリンタの衝突回避システムであって、
前記衝突回避システムは、
所定プログラムに従う完全自動化オペレーション、オペレータ用のジョイスティックおよび同様の入力デバイスからの手動オペレーション、又はセンサデータに従ってプリンタツールを動作させるセンサベースオペレーションから選択可能な入力からモーションコマンドを生成するモーションプランナと、
モーションプランナからのモーションコマンドを解釈して、物理プリンタ上で物理的に実行するモーションコントローラと、
前記モーションプランナからの前記モーションコマンドの衝突をテストし、衝突のないモーションコマンドの実行を前記モーションコントローラに許可し、衝突を引き起こすコマンドの実行を前記モーションコントローラに許可しない、モデルベース衝突予測システムと、
を備え、
前記モデルベース衝突予測システムは、
前記3Dロボットコンクリートプリンタに命令する塗布及び/又は加工プロセス制御からコンクリート構造物の3Dジオメトリを推測及び生成する推測生成部と、
前記3Dジオメトリを3D衝突モデルとして使用して、前記3Dロボットコンクリートプリンタの部品が、前記動作において、衝突を引き起こすか否かを任意の時点でチェックするチェック部と、
を備え、
前記モーションコントローラは、前記コンクリート構造物の3Dモデルを有し、前記3Dモデルは、プロセス命令の進捗状況に応じて更新される衝突回避システムが提供される。
【0011】
本発明の方法及びシステムにより、モデルベースの衝突検出の基礎として、プロセスと並行して状況に応じて(on-the-fly)プリントの3Dモデルが生成されるので、システムは、プロセスの任意の時点で、手動制御状態であっても自動制御状態であってもサポートできる。
【0012】
本明細書では、3Dロボットコンクリートプリンタという用語は、3Dコンクリートの塗布及び/又は加工のためのプログラム可能なデバイスとして理解される。
【0013】
本明細書では、「コンクリート」という用語は、全てのコンクリートタイプの材料、モルタルタイプの材料、及びリサイクル材料を多く含むレシピを含むものとして理解される。
【0014】
本発明により、この方法及びシステムは、コンクリート3D印刷に関連する様々な異なる塗布プロセス及び/又は加工プロセスに使用することができ、これにより、プリンタのツールは、プリントヘッド、コンクリート材料又は断熱材を注入するための注入ヘッド、機械加工作業を実行するための穴あけツール部材などのロボットアームアプリケーションなどを備えてもよい。
【0015】
有利なことに、モデルベース衝突予測システムは、3Dロボットコンクリートプリンタに命令して、コンクリート構造物を塗布及び/又は加工することにより、コンクリート構造物の3Dジオメトリを推測及び生成するステップと、推測し生成した3Dジオメトリを3D衝突モデルとして使用して、3Dロボットコンクリートプリンタの部品が、動作する際に衝突を引き起こすか否かを任意の時点でチェックすることができる、ステップと、を含む。好ましくは、モデルベース衝突予測システムは、生成された3D衝突モデルを補足データ、特にレーザースキャンから得られるセンサデータ、CADデータなどから得られる事前定義された3D障害物データなどと組み合わせるステップをさらに含む。
【0016】
さらに、コンクリート構造物の3D衝突モデルが、塗布プロセス及び/又は加工プロセスと並行して開発されること、前記プロセス命令の進捗状況に応じて更新されることが有利である。これにより、優れた衝突回避が実現される。
【0017】
本発明の一実施形態では、ツールを動作させるステップは、動作を制御するオペレータによる手動操作、自動オペレーション、又はセンサ誘導オペレーションによって、実行される。3Dコンクリートプリントにおいては、このステップは、メンテナンスや清掃作業などの補助的な作業を実行するためにツールを移動するために、印刷プロセスの手動中断に該当する。従って、プリンタは、プリントヘッドなどをクリーニング及び/又は交換するためのメンテナンスエリアを備えてもよい。
【0018】
衝突検出ステップが、モデルベース衝突予測システムによって実行され、それにより、モーションコマンドに応答した3Dロボットコンクリートプリンタの動作に基づいて提案された軌道が、コンクリート構造物に対応する3D衝突モデルと比較されることが有利であることが判明した。
【0019】
本発明によれば、モデルベース衝突予測システムが、3D衝突モデルを用いて衝突すると予測した場合、潜在的に有害なコマンドは退けられる。その後又は代替的に、衝突を回避するために、アルゴリズム又は更なるオペレータ入力から、衝突のないモーションコマンドが生成される。モデルベース衝突予測システムが、3D衝突モデルを用いて衝突しないと予測した場合、モーションコマンドが目的どおりに実行される。
【0020】
本発明の好ましい実施形態では、塗布プロセスは、押出機ツールを動作させることによる3Dコンクリート印刷プロセスである。これには、3Dロボットコンクリートプリンタが、所定印刷パターンでコンクリートを堆積させるための押出機ツールを動作させるガントリー型3Dロボットコンクリートプリンタであることが含まれる。本発明によるシステム及び方法は、ガントリー型ロボットシステムによる3Dコンクリートプリンティングに関して特に有利であることが分かる。
【0021】
以下、添付図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、押出機などのプリントヘッドを備えたガントリー型3Dロボットコンクリートプリンタの概略斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明による衝突回避方法のフローチャートである。
【
図3】
図3は、印刷プロセス中の3D衝突回避を示す図である。
【
図4】
図4は、印刷された構造物にコンクリートを注入するためのガントリー型3Dロボットコンクリートプリンタで動作する注入ヘッドの概略斜視図である。
【
図5】
図5は、穴あけなど、印刷構造物を加工するためにガントリー型3Dロボットコンクリートプリンタで動作するロボットアームの概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して、例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている、構成、数値、処理の流れ、機能要素などは一例に過ぎず、その変形や変更は自由であって、本発明の技術範囲を以下の記載に限定する趣旨のものではない。
【0024】
図1には、ガントリー型3Dロボットコンクリートプリンタの一例が示されている。ガントリー型3Dロボットコンクリートプリンタは、3Dプリンタのワークスペース6の側面に沿って互いに平行に配置された側梁(side beam)1を備える。側梁1の間には、横梁(traverse beam)2が側梁1に沿って移動できるように、横梁2が側梁1に対して垂直な向きに移動可能に配置されている。側梁1は、側梁1がコーナーポール3を上下に移動できるように、垂直方向に向けられたコーナーポール3によって支持されてもよい。横梁2上には、押出機(extruder)等のプリントヘッド4が移動可能に配置されている。これにより、ワークスペース6上に建築構造物5を具体的にプリントするための3Dプリント用のデカルトシステム(Cartesian system)が提供される。
【0025】
ガントリー型プリンタで印刷する利点の1つは、このようなガントリー型プリンタが、例えば、作業スペースが約6.8×7.7×5.8メートル(幅×奥行き×高さ)のような大きな建物と小さな建物の両方の印刷に適していることである。階数の高い壁の印刷も問題なく、2階建ての建物の印刷も可能である。
【0026】
ガントリー型プリンタは、複雑な建築部品を細部に至るまで印刷することもできる。プリンタは、X、Y、及びZ方向に正確に制御でき、プリントヘッド4は可変速度で動作できるため、印刷速度を遅くしたり、速くしたりすることが可能である(及び、非連続印刷が必要な場合は一時停止することもできる)。印刷プロセスに応じてプリントヘッド4等のツールを交換・選択することができ、例えば、細部に至るまでの微細な印刷が必要な場合、コンクリート材料がどのように挙動するかという課題に対処するために、より小さいノズル及び/又は異なる押出機ノズル設計を選択できる。従って、ツールは、プリントヘッド、コンクリート材料又は断熱材を注入するための注入ヘッド、機械加工作業を実行するための穴あけツール部材などのロボットアームアプリケーションなどのいずれか1つとすることができる。
【0027】
建築現場での3Dコンクリート印刷に関するガントリー型プリンタの利点は、このプリンタタイプは移動可能であり、現場でも現場以外でも使用できることである。プリンタは移動可能である。
【0028】
コンクリート材料を堆積させる押出機ノズルなどのプリントヘッド4(プリントヘッドツール)の動作は、印刷プロセス中に制御される。上述したように、クリーニングなどのメンテナンスを行うために、印刷プロセスを一時停止し、現在印刷されている構造物から押出ツールを遠ざけることが散発的に必要になる。この動作はプログラムされた印刷プロセスを妨げるため、ツールがすでに印刷された構造物や現場の他の障害物と衝突する危険性がある。これを回避するために、衝突回避システム及び方法が提供される。
【0029】
従って、衝突回避方法の一実施形態を
図2に示す。自動オペレーション1.1の場合、オペレータが、例えば、印刷や定期的に実行される計画的なメンテナンス作業のための、特定のプログラムを開始する。メンテナンスなどの手動オペレーション1.2の場合、オペレータは、例えば、ボタンとジョイスティックを備えたゲームコントローラーなどのコントローラーを使用できる。センサ誘導オペレーション1.3の場合、プログラム又は手動コマンドが、例えば、レーザースキャンなどのセンサデータ用いて修正され、ツールが印刷された構造物に誘導される。モーションプランナ2.1では、オペレーション1.1~1.3の出力は、ガントリーのモーションと動作にマッピングされ、スケーリングされる。ガントリー内のプリントヘッド4のモーションは、X、Y、Z軸及びプリントヘッドの角回転であり、その動作は押出機のオン/オフであってよい。3Dロボットコンクリートプリンタには、最後に(時刻tにおいて)既知の姿勢があり、これは、モーションプランナ2.1から出力されるマッピング及びスケーリングされたモーションと動作出力を追加すると、(時間t+Tにおいて)命令された姿勢をもたらす。この命令された姿勢は、シミュレートされた3Dロボットコンクリートプリンタジオメトリ3.1によって想定され、これによって、シミュレートされた3Dロボットコンクリートプリンタ、特にツール4(プリントヘッド)と横梁2は、プリンタの部品が、入力に従って時間t+Tにおいてどのように配置されるかを反映する。モデルベース衝突検出4.1のステップでは、シミュレートされた3Dコンクリートロボットプリンタの形状が、印刷された構造物、衝突モデル7.1の形状と比較される。衝突モデル7.1は、印刷プロセスと並行して開発される3Dモデルであり、印刷(7.2)の最新の進捗状況を反映している。オプションで、、例えば、3D CADデータ8.1又はセンサデータ8.2からワークスペース内の他の静的な障害物を表す他の3Dモデルを衝突モデル7.1に追加できる。センサデータは、例えば、ツールや建設作業員などの計画外の障害物を検出できる3Dプリンタに接続されたセンサから取得できる。モデルベース衝突検出ステップ4.1の結果、衝突反応が発生し、シミュレートされた3DCPシステムと印刷された構造物(又は障害物)のジオメトリが重なっている場合、入力に基づいて衝突が発生する可能性があり、この命令された姿勢の実行は許可されない(4.2)。その後、方法は2.1に戻り、例えばモーションを再計画したり、ユーザーに新しい入力を求めたりすることができる。一方、シミュレートされた3DCPシステムと印刷された構造物(又は障害物)のジオメトリが重なり合わない場合、つまり入力に基づいて衝突が発生しない場合、このコマンドの姿勢は実行が許可される(4.3)。実行が許可された全ての姿勢コマンドは、物理的なガントリーで実行するためのリストに登録される。このリストにある全ての姿勢コマンドについて、モーションコントローラ5.1によってGCodeが生成され、物理的な実行のために物理ガントリー6.1にモーションを伝達する。
【0030】
この方法の効果が
図3に示され、
図3には、印刷プロセス中のコンクリート構造物の3D衝突モデルが示されている。
図3Aの左側には、衝突する場合(つまり、
図2のステップ4.2)の例が示されている。時間tにおけるシミュレーションでは、プリントヘッド4は障害物5(建築構造物)の前に位置している。時間t+Tにおけるプリントヘッド4’の位置をシミュレートする動作テストでは、シミュレートされたプリントヘッド4’とプリント構造物5(障害物)の衝突モデルとが重なり合う。その結果、シミュレートされた動作は衝突のある動作として検出され、許可されない。
図3Bの右側には、衝突しない場合(すなわち、
図2のステップ4.3)の例が示されている。時間tにおけるシミュレーションでは、プリントヘッド4は障害物5の前に位置している。時間t+Tにおけるプリントヘッド4’の位置をシミュレートする動作テストでは、シミュレートされたプリントヘッド4’とプリント構造物5(障害物)の衝突モデルとが重なり合わない。その結果、シミュレートされた動作は衝突のない動作として検出され、許可されて実行に転送される。
【0031】
図4には、本発明の一実施形態の概略斜視図が示されており、注入ヘッド4aは、
図1に示されるタイプのガントリー型3Dロボットコンクリートプリンタから操作される。ここでは、プリントヘッド4は、印刷された構造物5にコンクリートを注入する注入ヘッド4aである。
【0032】
図5には、本発明によるガントリー型3Dロボットコンクリートプリンタの別の実施形態の概略斜視図が示されており、ロボットアーム4bは、穴あけ作業の実行など、印刷された構造物5を加工するためにガントリー型3Dロボットコンクリートプリンタから操作される。
【0033】
以上、幾つかの好ましい実施形態を参照して本発明を説明した。しかしながら、本発明による3Dロボットコンクリートプリンタの衝突回避のためのシステム及び方法の上述の例の他の実施形態又は変形例が、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく提供され得ることが、本発明によって理解される。
【国際調査報告】