(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】長寿命の撥水性波透過型塗料及びその製造方法と応用
(51)【国際特許分類】
C09D 127/12 20060101AFI20241031BHJP
C09D 7/47 20180101ALI20241031BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20241031BHJP
C09D 7/41 20180101ALI20241031BHJP
【FI】
C09D127/12
C09D7/47
C09D7/61
C09D7/41
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024553744
(86)(22)【出願日】2022-08-10
(85)【翻訳文提出日】2024-08-02
(86)【国際出願番号】 CN2022111325
(87)【国際公開番号】W WO2023103433
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】202111480822.0
(32)【優先日】2021-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524213885
【氏名又は名称】海洋化工研究院有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100166729
【氏名又は名称】武田 幸子
(72)【発明者】
【氏名】王 波
(72)【発明者】
【氏名】軒 立新
(72)【発明者】
【氏名】寧 亮
(72)【発明者】
【氏名】蘇 韜
(72)【発明者】
【氏名】王 賢明
(72)【発明者】
【氏名】呉 連鋒
(72)【発明者】
【氏名】修 志鋒
(72)【発明者】
【氏名】李 鎮
(72)【発明者】
【氏名】崔 緒瑞
(72)【発明者】
【氏名】易 敏華
(72)【発明者】
【氏名】王 飛
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CD091
4J038DG262
4J038DL032
4J038HA036
4J038HA476
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA09
4J038KA20
4J038MA14
4J038NA07
4J038NA20
4J038PB09
(57)【要約】
本発明は、長寿命の撥水性波透過型塗料及びその製造方法と応用を提供する。前記長寿命の撥水性波透過型塗料は、甲成分と乙成分で製造されてなり、甲成分は、低表面エネルギー変性フルオロカーボン樹脂、低誘電フィラー、低誘電顔料、湿潤分散剤、レベリング剤及び有機溶剤を含む原料で製造されてなり、乙成分は、イソシアネート硬化剤成分であり、製造された塗料は、優れた撥水性及び誘電性能を有し、且つ施工しやすく、メンテナンスしやすく、レドームが長期間に水中で長時間に動作するという防護要求を満たすことができ、レドーム本体の吸水、漏れ、構造が破壊されるなどのリスクを低減させる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
甲成分と乙成分で製造されてなり、
前記甲成分は、低表面エネルギー変性フルオロカーボン樹脂、低誘電フィラー、低誘電顔料、湿潤分散剤、レベリング剤及び有機溶剤を含む原料で製造されてなり、
低表面エネルギー変性フルオロカーボン樹脂を100重量部とし、各成分は、重量部で、
低表面エネルギー変性フルオロカーボン樹脂 100重量部、
低誘電フィラー 16~25重量部、
低誘電顔料 1~3重量部、
湿潤分散剤 0.8~1.5重量部、
レベリング剤 0.5~1.5重量部、
有機溶剤A 20~35重量部であり、
前記乙成分は、イソシアネート硬化剤成分であり、
甲成分の-OHと乙成分の-NCOとのモル比は、1:(1.0~1.2)である、
ことを特徴とする長寿命の撥水性波透過型塗料。
【請求項2】
前記甲成分は、低表面エネルギー変性フルオロカーボン樹脂を100重量部とし、各成分は、重量部で、
低表面エネルギー変性フルオロカーボン樹脂 100重量部、
低誘電フィラー 18~22重量部、
低誘電顔料 2~3重量部、
湿潤分散剤 1.0~1.5重量部、
レベリング剤 0.8~1.2重量部、
有機溶剤A 25~30重量部であり、
甲成分の-OHと乙成分の-NCOとのモル比は、1:(1.0~1.1)である、
ことを特徴とする請求項1に記載の長寿命の撥水性波透過型塗料。
【請求項3】
前記低誘電フィラーは、ナノ窒化ホウ素とシリコーン樹脂微小球との混合物であり、
ナノ窒化ホウ素の粒径は、50nm~100nmであり、
シリコーン樹脂微小球の粒径は、6μm~8μmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の長寿命の撥水性波透過型塗料。
【請求項4】
ナノ窒化ホウ素とシリコーン樹脂微小球との質量比は、(2~4):1であり、好ましくは(2.8~3.2):1である、
ことを特徴とする請求項3に記載の長寿命の撥水性波透過型塗料。
【請求項5】
前記ナノ窒化ホウ素は、パーフルオロアルキルセグメントを含むポリイソシアネートと有機溶剤Bを混合して製造された表面被覆処理剤により表面被覆処理を行われ、
前記表面被覆処理剤中のパーフルオロアルキルセグメントを含むポリイソシアネートの質量比は、5%~15%である、
ことを特徴とする請求項3に記載の長寿命の撥水性波透過型塗料。
【請求項6】
前記低誘電顔料は、パリオゲンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンのうちの少なくとも1種であり、及び/又は、
前記レベリング剤は、シリコーンポリエーテル共重合体である、
ことを特徴とする請求項1に記載の長寿命の撥水性波透過型塗料。
【請求項7】
前記有機溶剤Aと有機溶剤Bは、芳香族系溶剤、エステル系溶剤、エーテルエステル系溶剤のうちの少なくとも1種からそれぞれ個別に選択され、好ましくはキシレン、芳香族炭化水素化合物、酢酸ブチル、酢酸エチル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートのうちの少なくとも1種である、
ことを特徴とする請求項5に記載の長寿命の撥水性波透過型塗料。
【請求項8】
前記乙成分は、脂肪族イソシアネートの三量体である、
ことを特徴とする請求項1に記載の長寿命の撥水性波透過型塗料。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の長寿命の撥水性波透過型塗料の製造方法であって、
前記低表面エネルギー変性フルオロカーボン樹脂、低誘電フィラー、低誘電顔料、湿潤分散剤、有機溶剤を含む原料を混合した後に細さが20μm~30μmになるまで研磨し、レベリング剤を添加し、均一に撹拌した後に濾過して甲成分を得るステップと、
得た甲成分と乙成分を前記モル比で均一に混合して前記長寿命の撥水性波透過型塗料を得るステップと、を含む、
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の長寿命の撥水性波透過型塗料の製造方法。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の長寿命の撥水性波透過型塗料又は請求項9に記載の方法で製造された長寿命の撥水性波透過型塗料の水中レドームにおける応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料技術の分野に関し、さらに、長寿命の撥水性波透過型塗料及びその製造方法と応用に関する。
【背景技術】
【0002】
海洋探査装置は、海洋権益の保全、海洋資源の開発、海洋災害の早期警報、国家防衛整備の強化などの面で重要な役割を果たすとともに、国家の総合的な国力の重要な指標でもある。レドームは、探査システムを装置する重要な構成部分であり、その内部レーダシステムの全天候全期間の正常動作を保障するために用いられる。水中設備のレドームには、樹脂マトリックス複合材料を使用するものが多く、このような材料自体の耐水能力が低く、長時間に水中で動作し、水圧から影響を受け、海水などの腐食性媒体が基材を浸透して貫通するリスクをさらに激化させ、構造強度及び電気的性能に重大な影響を与え、ひいてはレドーム本体の水漏れを引き起こしてレーダシステムを損傷するため、水中レドームは、使用中に波透過型塗料と組み合わせて防護しなければならない。水面又は水上動作環境と異なり、水中レドームは、長時間にわたって水深変化、浸透圧の影響を受け、防護塗膜は、吸水、漏れなどの問題が発生しやすい。
【0003】
これに鑑み、従来のレドーム塗膜技術には、耐水性が低く、電気的性能の劣化が速く、耐用年数が短いなどの問題が存在し、レドームが長期間に水中で長時間に動作するという防護要求を満たすことができ、優れた電気的性能、撥水性及び撥水安定性を有することで、レドーム本体の吸水、漏れ、構造が破壊されるなどのリスクを低減させる水中レドーム用の長寿命の撥水性波透過型塗料を開発する必要がある。
【発明の概要】
【0004】
従来技術に存在する問題を解決するために、本発明は、レドームが長期間に水中で動作するという特別な需要を満たすことができる長寿命の撥水性波透過型塗料及びその製造方法と応用を提供する。
【0005】
本発明の水中レドーム用の長寿命の撥水性波透過型塗料は、その優れた電気的性能、撥水性及び撥水安定性に基づき、水中レーダシステムの全領域全期間をカバレッジする動作要求を満たすことができる。
【0006】
本発明の目的の1つは、長寿命の撥水性波透過型塗料を提供することである。
【0007】
前記長寿命の撥水性波透過型塗料は、甲成分と乙成分で製造されなり、
前記甲成分は、低表面エネルギー変性フルオロカーボン樹脂、低誘電フィラー、低誘電顔料、湿潤分散剤、レベリング剤及び有機溶剤を含む原料で製造されてなり、
低表面エネルギー変性フルオロカーボン樹脂を100重量部とし、各成分は、重量部で、
低表面エネルギー変性フルオロカーボン樹脂 100重量部、
低誘電フィラー 16~25重量部、好ましくは18~22重量部、
低誘電顔料 1~3重量部、好ましくは2~3重量部、
湿潤分散剤 0.8~1.5重量部、好ましくは1.0~1.5重量部、
レベリング剤 0.5~1.5重量部、好ましくは0.8~1.2重量部、
有機溶剤A 20~35重量部、好ましくは25~30重量部であり、
前記乙成分は、イソシアネート硬化剤成分であり、
甲成分の-OHと乙成分の-NCOとのモル比は、1:(1.0~1.2)であり、好ましくは1:(1.0~1.1)である。
【0008】
甲成分中の-OHは、低表面エネルギー変性フルオロカーボン樹脂由来のものであり、-OH含有量は、0.8mol/kgである。
【0009】
甲成分中の低表面エネルギー変性フルオロカーボン樹脂は、海洋化工研究院有限公司製のWN-50713樹脂であり、性能を表1に示す。
【0010】
【0011】
低表面エネルギー変性フルオロカーボン樹脂の性能は、表1に示すとおりであり、低表面エネルギー変性フルオロカーボン樹脂の性能は、塗膜の撥水性能のサポートであり、撥水性は、撥水角、転落角及び14日間水没(49±2℃)を含み、低表面エネルギー変性フルオロカーボン樹脂基体にフィラーを添加することにより、波透過性能のサポートを提供することができ、波透過性能は、誘電率及び損失角の正接値を含み、樹脂とフィラーは、相互に影響し、相乗作用し、発明の目的を実現する。
【0012】
本発明の好ましい実施形態において、
甲成分中の粉体は、2種類を含み、それぞれ低誘電フィラー及び低誘電顔料であり、低誘電材料とは、一般的に誘電率が10未満、損失角の正接値が0.01未満の材料であり、低誘電特性は、材料の誘電率及び損失角の正接値の低減に寄与する。
【0013】
前記低誘電フィラーは、ナノ窒化ホウ素とシリコーン樹脂微小球との混合物であり、
そのうちナノ窒化ホウ素は、好ましくはシート状であり、シリコーン樹脂微小球は、好ましくは球状であり、
ナノ窒化ホウ素の粒径は、50nm~100nmであり、
シリコーン樹脂微小球の粒径は、6μm~8μmである。
【0014】
本発明の好ましい実施形態において、
ナノ窒化ホウ素とシリコーン樹脂微小球との質量比は、(2~4):1であり、好ましくは(2.8~3.2):1である。
【0015】
窒化ホウ素は、ラメラ構造であり、シリコーン樹脂マイクロビーズは、球状構造であり、両者は、混合して互いに混ざり、異なる混合比で形成された混ざり関係は異なり、その物理的バリア能力に直接影響し、比以外で物理的バリア作用の低下、浸透防止能力の低下を引き起こしやすく、ナノ窒化ホウ素とシリコーン樹脂微小球との質量比の増加は、水に対する遮蔽及びバリア作用を向上させることができ、実験により繰り返して検証すると、質量比が(2~4):1の場合にナノシート状のナノ窒化ホウ素と球状のシリコーン樹脂微小球との相乗効果をよく体現することができ、質量比が(2.8~3.2):1の場合に性能がさらに優れる。
【0016】
ナノ窒化ホウ素とシリコーン微小球との誘電特性が異なり、適切な使用量の割合で配合して使用することにより材料の誘電特性のバランスを取ることができる。
【0017】
本発明の好ましい実施形態において、
前記ナノ窒化ホウ素は、パーフルオロアルキルセグメントを含むポリイソシアネートと有機溶剤Bを混合して製造された表面被覆処理剤により表面被覆処理を行われ、
前記表面被覆処理剤中のパーフルオロアルキルセグメントを含むポリイソシアネートの質量比は、5%~15%である。
【0018】
ナノ窒化ホウ素の表面被覆処理について、
パーフルオロアルキルセグメントを含むポリイソシアネートと有機溶剤Bを混合して表面被覆処理剤を調製し、そのうちパーフルオロアルキルセグメントを含むポリイソシアネートの比率は、5~15%であり、そのほかは、有機溶剤Bであり、
本発明のパーフルオロアルキルセグメントを含むポリイソシアネートは、特許出願(特許番号はCN101143840Aであり、発明の名称は「パーフルオロアルキルセグメントを含むポリイソシアネートの製造及び応用」である)におけるパーフルオロアルキルセグメントを含むポリイソシアネートである。
【0019】
処理過程は、以下のステップの方法を含み、
(1)表面被覆処理剤を40~45℃まで昇温し、窒素を充填して10~15min保温し、
(2)1~3‰の分散助剤を滴下し、
(3)数回に分けてナノ窒化ホウ素を撹拌している処理剤に添加し、
(4)60~65℃まで昇温し、窒素を充填して3~4h保温し、
(5)室温まで降温し、
(6)吸引濾過した後、80~85℃のオーブン内で45~48h乾燥した後に使用に備え、
分散助剤は、本分野の汎用分散助剤であり、好ましくはBYK163、BYK104s又はBYK170などである。
【0020】
本発明は、ナノ窒化ホウ素の表面被覆処理方法を採用し、処理された後、ナノ窒化ホウ素の表面は疎水性であり、塗膜の耐用年数を引き上げることに役立つ。
【0021】
本発明の好ましい実施形態において、
前記低誘電顔料は、有機粉体であり、色の要求に応じて調製され、好ましくはパリオゲンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンのうちの少なくとも1種であり、及び/又は、
前記湿潤分散剤は、BYK163、BYK104s、BYK180のうちの少なくとも1種であり、及び/又は、
前記レベリング剤は、シリコーンポリエーテル共重合体であり、好ましくはBYK378、BYK390、BYK388のうちの少なくとも1種である。
【0022】
本発明の好ましい実施形態において、
前記有機溶剤Aと有機溶剤Bは、従来技術において本分野で一般的に用いられる有機溶剤を用いることができ、芳香族系溶剤、エステル系溶剤、エーテルエステル系溶剤のうちの少なくとも1種からそれぞれ個別に選択され、好ましくはキシレン、芳香族炭化水素化合物、酢酸ブチル、酢酸エチル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートのうちの少なくとも1種である。
【0023】
本発明の好ましい実施形態において、
前記乙成分は、脂肪族イソシアネートの三量体であり、好ましくはBayer社のN3375、N3390のうちの少なくとも1種である。
【0024】
本発明の目的のもう1つは、
前記低表面エネルギー変性フルオロカーボン樹脂、低誘電フィラー、低誘電顔料、湿潤分散剤、有機溶剤を含む原料を混合した後に細さが20μm~30μmになるまで研磨し、レベリング剤を添加し、均一に撹拌した後に濾過して甲成分を得るステップと、
得た甲成分と乙成分を前記モル比で均一に混合して前記長寿命の撥水性波透過型塗料を得るステップと、を含む、長寿命の撥水性波透過型塗料の製造方法を提供することである。
【0025】
本発明の目的のさらにもう1つは、長寿命の撥水性波透過型塗料の水中レドームにおける応用を提供することである。
【0026】
本発明は、具体的には以下の技術的解決手段を採用することができる。
【0027】
上記使用量に従って各種の原料を秤量し、
前記顔料フィラーを乾燥し、使用に備え、前記低表面エネルギー変性フルオロカーボン樹脂、低誘電フィラー、低誘電フィラー、湿潤分散剤、有機溶剤を混合した後にバスケットミル機に添加して研磨し、細さが20~30μmになるまで研磨すると、材料を排出する。材料を排出した後、レベリング剤を添加し、2000回転数/分間の条件で30分間撹拌して分散させ、120メッシュの濾過網で濾過し、塗料の粘度(塗料-4カップ)を試験し、計量して包装する。甲成分の各物質を均一に混合した後、モル比-OH:-NCO=1:(1.0~1.2)の割合で、計量された甲、乙成分を均一に混合し、20min静置する。
【0028】
塗装に用いる方法は、スプレー塗装又は刷毛塗装であり、
1回塗布した後の乾燥膜の塗膜の厚さを40μm~60μmに制御する。
【発明の効果】
【0029】
従来の技術と比べて、本発明の有益な効果は、以下のとおりである。
【0030】
本発明の塗料は、長寿命の撥水性波透過型塗料であり、施工しやすく、メンテナンスしやすく、レドームが長期間に水中で長時間に動作するという防護要求を満たすことができ、レドーム本体の吸水、漏れ、構造が破壊されるなどのリスクを低減させる。
【0031】
本発明の塗料は、低表面エネルギー変性フルオロカーボン樹脂を成膜物とし、エアスプレー塗装方法を用いて施工し、常温で乾燥して硬化し、従来のレドーム塗膜技術の親水性(表面に水膜が形成される)、電気的性能の劣化が速く、耐用年数が短いなどの耐用問題を解決することができる。
【0032】
本発明の塗料は、複合材料基材にスプレー塗装され、塗膜の性能特徴は、以下のとおりである。
1)水接触角は、OCA20接触角計による試験(シッティングドロップ法)によると、≧120°であり、
2)転落角は、OCA20接触角計による試験(シッティングドロップ法)によると、≦10°であり、
3)誘電率は、ベクトルネットワーク法(10GHz)によると、≦3.2であり、
4)損失角の正接値は、ベクトルネットワーク法(10GHz)によると、≦0.04であり、
5)14日間水没(49±2℃)は、撥水角≧10°、転落角≦15°である。
【0033】
水中装置用のレドームの電気的性能は、表面の連続した水膜の影響を受けて性能が急激に低下し、本発明は、優れた撥水性及び誘電性能を有し、且つ14日間水没を経た後、水接触角は依然として≧1110°であり、転落角≦15°であり、水玉は塗膜の表面に自由に転がることができ、連続した水膜を形成せず、レドームの誘電性能を劣化させず、それとともに腐食性媒体が塗膜の内部に伝導することを回避し、レドームが長期間に水中で長時間に動作するという防護要求を保障し、レドーム本体の吸水、漏れ、構造が破壊されるなどのリスクを低減させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、具体的な実施例を参照して本発明を具体的に説明し、ここで指摘すべきものとして、以下の実施例は、本発明をさらに説明するために用いられ、本発明の保護範囲を限定するものと理解できず、当業者が本発明の内容に基づいて本発明に対して行ったいくつかの本質的でない改良及び調整は、依然として本発明の保護範囲に属する。
【0035】
実施例及び比較例に用いられる原料は、いずれも通常の市販原料である。
【0036】
実施例及び比較例における部数は、いずれも重量部数である。
【0037】
【0038】
試験計器は、ドイツLAUDA Scientificの水接触角計OCA20である。
【0039】
実施例1
ナノ窒化ホウ素の表面被覆処理について、
1、表面被覆処理剤(パーフルオロアルキルセグメントを含むポリイソシアネートの質量比率は5%であり、そのほかはキシレン溶媒である)を42℃まで昇温し、窒素を充填して15min保温し、
2、1.5‰のBYK163分散剤を滴下し、
3、数回に分けてナノ窒化ホウ素を撹拌している表面被覆処理剤に添加し、
4、65℃まで昇温し、窒素を充填して4h保温し、
5、室温まで降温し、
6、吸引濾過した後、80℃のオーブン内で45h乾燥した後に使用に備え、
甲成分は、低表面エネルギー変性フルオロカーボン樹脂100重量部、ナノ窒化ホウ素14重量部、シリコーン樹脂微小球4.5重量部、パリオゲンブラック2重量部、フタロシアニンブルー0.5重量部、フタロシアニングリーン0.5重量部、BYK163 1重量部、BYK378 1重量部、酢酸ブチル27重量部であり、
前記顔料フィラーを乾燥し、使用に備え、前記低表面エネルギー変性フルオロカーボン樹脂、低誘電フィラー、低誘電フィラー、湿潤分散剤、有機溶剤を混合した後にバスケットミル機に添加して研磨し、細さが20~30μmになるまで研磨すると、材料を排出した。材料を排出した後、レベリング剤を添加し、2000回転数/分間の条件で30分間撹拌して分散させ、120メッシュの濾過網で濾過し、塗料の粘度(塗料-4カップ)を試験し、計量して包装した。
【0040】
乙成分N3375は20重量部であり、
モル比は、-OH:-NCO=1:1であり、
以上の使用料に従って甲、乙成分を均一に混合し、20min静置し、スプレー塗装方式で1回塗装し、乾燥膜の塗膜の厚さを50μmに制御し、乾燥後に性能を試験した。
【0041】
実施例2
ナノ窒化ホウ素の表面被覆処理について、
1、表面被覆処理剤(パーフルオロアルキルセグメントを含むポリイソシアネートの質量比率は15%であり、そのほかはキシレン溶媒である)を45℃まで昇温し、窒素を充填して10min保温し、
2、3‰のBYK163分散剤を滴下し、
3、数回に分けてナノ窒化ホウ素を撹拌している表面被覆処理剤に添加し、
4、60℃まで昇温し、窒素を充填して3h保温し、
5、室温まで降温し、
6、吸引濾過した後、85℃のオーブン内で48h乾燥した後に使用に備え、
甲成分は、低表面エネルギー変性フルオロカーボン樹脂100重量部、ナノ窒化ホウ素15重量部、シリコーン樹脂微小球4.8重量部、パリオゲンブラック0.5重量部、フタロシアニンブルー1重量部、フタロシアニングリーン0.5重量部、BYK163 1.2重量部、BYK378 0.8重量部、酢酸ブチル15重量部、キシレン10重量部であり、
甲成分の製造方法は、実施例1と同じであり、
乙成分N3390は22重量部であり、
モル比は、-OH:-NCO=1:1であり、
以上の使用料に従って甲、乙成分を均一に混合し、20min静置し、スプレー塗装方式で1回塗装し、乾燥膜の塗膜の厚さを50μmに制御し、乾燥後に性能を試験した。
【0042】
実施例3
ナノ窒化ホウ素の表面被覆処理について、
1、表面被覆処理剤(パーフルオロアルキルセグメントを含むポリイソシアネートの質量比率は10%であり、そのほかは酢酸ブチル溶媒である)を42℃まで昇温し、窒素を充填して15min保温し、
2、1‰のBYK104s分散剤を滴下し、
3、数回に分けてナノ窒化ホウ素を撹拌する処理剤に添加し、
4、65℃まで昇温し、窒素を充填して4h保温し、
5、室温まで降温し、
6、吸引濾過した後、80℃のオーブン内で45h乾燥した後に使用に備え、
甲成分は、低表面エネルギー変性フルオロカーボン樹脂100重量部、ナノ窒化ホウ素16重量部、シリコーン樹脂微小球5.7重量部、パリオゲンブラック1重量部、フタロシアニンブルー1重量部、フタロシアニングリーン1重量部、BYK163 1.5重量部、BYK378 1.2重量部、酢酸ブチル20重量部、キシレン10重量部であり、
甲成分の製造方法は、実施例1と同じであり、
乙成分N3390は24重量部であり、
モル比は、-OH:-NCO=1:1であり、
以上の使用料に従って甲、乙成分を均一に混合し、20min静置し、スプレー塗装方式で1回塗装し、乾燥膜の塗膜の厚さを50μmに制御し、乾燥後に性能を試験した。
【0043】
比較例1
比較例1は、実施例1と比較して、ナノ窒化ホウ素とシリコーン樹脂微小球との質量比が1:1であることで実施例1と区別された。
【0044】
ナノ窒化ホウ素の表面被覆処理は、実施例1と同じであり、
甲成分は、低表面エネルギー変性フルオロカーボン樹脂100重量部、ナノ窒化ホウ素10重量部、シリコーン樹脂微小球10重量部、パリオゲンブラック2重量部、フタロシアニンブルー0.5重量部、フタロシアニングリーン0.5重量部、BYK163 1重量部、BYK378 1重量部、酢酸ブチル27重量部であり、
甲成分の製造方法は、実施例1と同じであり、
乙成分N3390は20重量部であり、
モル比は、-OH:-NCO=1:1であり、
以上の使用料に従って甲、乙成分を均一に混合し、20min静置し、スプレー塗装方式で1回塗装し、乾燥膜の塗膜の厚さを50μmに制御し、乾燥後に性能を試験した。
【0045】
比較例2
比較例2は、実施例2と比較する。
【0046】
比較例2は、主に、使用したナノ窒化ホウ素が表面被覆処理されず、フルオロカーボン樹脂が市販のGK570フルオロカーボン樹脂であることで実施例2と区別された。
【0047】
比較例2の他の原料及び使用量は、いずれも実施例2と同じであり、
比較例2の甲、乙成分の製造方法及び甲、乙成分の使用量比は、いずれも実施例2と同じである。
【0048】
使用量に従って甲、乙成分を均一に混合し、20min静置し、スプレー塗装方式で1回塗装し、乾燥膜の塗膜の厚さを50μmに制御し、乾燥後に性能を試験した。
【0049】
実施例1~3、比較例1~2の甲乙成分を均一に混合した後、20min静置した後、スプレー塗装方法で塗装し、塗膜の厚さを50μmにし、その性能を下記表3に示す。
【0050】
【0051】
表3は、実施例1~3、比較例1~2の塗膜性能試験結果であり、実施例1~3で得られた塗膜は、いずれも撥水角、転落角、誘電率、損失角の正接値の試験に合格した。撥水性波透過型塗料の14日間水没の撥水角項目の指標要求は110°以上であり、比較例1の14日間水没の撥水角は102.3°であり、項目の指標要求を達成せず、実施例1と比較して、比較例1はナノ窒化ホウ素とシリコーン樹脂微小球との質量比が1:1であり、水没した後、その塗膜撥水性(撥水角と転落角)が顕著に低下し、ナノ窒化ホウ素とシリコーン樹脂微小球との質量比が低すぎ、シート状と球状のフィラーの配合比が不適当で、相乗効果が不良であると、塗膜の浸透防止作用が低下し、物理的バリア性能が低いことを引き起こすことが示される。
【0052】
実施例2と比較して、比較例2は塗膜の撥水性(撥水角と転落角)が顕著に低下し、水没試験を経た後、撥水角が80.1°に大幅に低下し、指標要求を達成せず、転落角試験により転がらないことが示され、低表面エネルギー樹脂の選択とナノ窒化ホウ素の表面被覆処理は、水蒸気を化学的に遮蔽するという重要な役割を果たし、低表面エネルギーのフルオロカーボン樹脂の選択、及びナノ窒化ホウ素フィラー表面の化学的変性は、いずれも撥水安定性を大幅に向上させ、塗膜の浸透防止能力をより強くすることが示される。
【0053】
実施例1~3と比較して、比較例1~2の14日間水没の転落角が大幅に増加したのは、塗膜の撥水安定性(表面化学変性による化学的遮蔽作用+フィラーサイズ相乗による物理的バリア作用)が異なる程度で変化することで、塗膜の表面が親水的になり、動的な疎水性低下を示し、塗膜の表面は水玉がかかって水膜を形成しやすくて波透過率が低下するため、化学的及び物理的相乗作用による効果がより高いためである。
【0054】
実施例1~3で製造された長寿命の撥水性波透過型塗料は、優れた撥水性及び誘電特性を有し、且つ14日間水没を経た後、水接触角度は依然として≧110°であり、転落角≦15°であり、水玉は塗膜の表面に自由に転がることができ、連続した水膜を形成せず、レドームの誘電性能を劣化させず、それとともに腐食性媒体が塗膜の内部に伝導することを回避し、レドームが長期間に水中で長時間に動作するという防護要求を保障し、レドーム本体の吸水、漏れ、構造が破壊されるなどのリスクを低減させることができ、レドームが長期間に水中で長時間に動作するという防護要求を満たすことができ、レドーム本体の吸水、漏れ、構造が破壊されるなどのリスクを低減させる。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
甲成分と乙成分で製造されてなり、
前記甲成分は、低表面エネルギー変性フルオロカーボン樹脂、低誘電フィラー、低誘電顔料、湿潤分散剤、レベリング剤及び有機溶剤を含む原料で製造されてなり、
低表面エネルギー変性フルオロカーボン樹脂を100重量部とし、各成分は、重量部で、
低表面エネルギー変性フルオロカーボン樹脂 100重量部、
低誘電フィラー 16~25重量部、
低誘電顔料 1~3重量部、
湿潤分散剤 0.8~1.5重量部、
レベリング剤 0.5~1.5重量部、
有機溶剤A 20~35重量部であり、
前記乙成分は、イソシアネート硬化剤成分であり、
甲成分の-OHと乙成分の-NCOとのモル比は、1:(1.0~1.2)である、
ことを特徴とする長寿命の撥水性波透過型塗料。
【請求項2】
前記甲成分は、低表面エネルギー変性フルオロカーボン樹脂を100重量部とし、各成分は、重量部で、
低表面エネルギー変性フルオロカーボン樹脂 100重量部、
低誘電フィラー 18~22重量部、
低誘電顔料 2~3重量部、
湿潤分散剤 1.0~1.5重量部、
レベリング剤 0.8~1.2重量部、
有機溶剤A 25~30重量部であり、
甲成分の-OHと乙成分の-NCOとのモル比は、1:(1.0~1.1)である、
ことを特徴とする請求項1に記載の長寿命の撥水性波透過型塗料。
【請求項3】
前記低誘電フィラーは、ナノ窒化ホウ素とシリコーン樹脂微小球との混合物であり、
ナノ窒化ホウ素の粒径は、50nm~100nmであり、
シリコーン樹脂微小球の粒径は、6μm~8μmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の長寿命の撥水性波透過型塗料。
【請求項4】
ナノ窒化ホウ素とシリコーン樹脂微小球との質量比は、(2~4):1であり、好ましくは(2.8~3.2):1である、
ことを特徴とする請求項3に記載の長寿命の撥水性波透過型塗料。
【請求項5】
前記ナノ窒化ホウ素は、パーフルオロアルキルセグメントを含むポリイソシアネートと有機溶剤Bを混合して製造された表面被覆処理剤により表面被覆処理を行われ、
前記表面被覆処理剤中のパーフルオロアルキルセグメントを含むポリイソシアネートの質量比は、5%~15%である、
ことを特徴とする請求項3に記載の長寿命の撥水性波透過型塗料。
【請求項6】
前記低誘電顔料は、パリオゲンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンのうちの少なくとも1種であり、及び/又は、
前記レベリング剤は、シリコーンポリエーテル共重合体である、
ことを特徴とする請求項1に記載の長寿命の撥水性波透過型塗料。
【請求項7】
前記有機溶剤Aと有機溶剤Bは、芳香族系溶剤、エステル系溶剤、エーテルエステル系溶剤のうちの少なくとも1種からそれぞれ個別に選択され、好ましくはキシレン、芳香族炭化水素化合物、酢酸ブチル、酢酸エチル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートのうちの少なくとも1種である、
ことを特徴とする請求項5に記載の長寿命の撥水性波透過型塗料。
【請求項8】
前記乙成分は、脂肪族イソシアネートの三量体である、
ことを特徴とする請求項1に記載の長寿命の撥水性波透過型塗料。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の長寿命の撥水性波透過型塗料の製造方法であって、
前記低表面エネルギー変性フルオロカーボン樹脂、低誘電フィラー、低誘電顔料、湿潤分散剤、有機溶剤を含む原料を混合した後に細さが20μm~30μmになるまで研磨し、レベリング剤を添加し、均一に撹拌した後に濾過して甲成分を得るステップと、
得た甲成分と乙成分を前記モル比で均一に混合して前記長寿命の撥水性波透過型塗料を得るステップと、を含む、
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の長寿命の撥水性波透過型塗料の製造方法。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の長寿命の撥水性波透過型塗
料の水中レドームにおける応用。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0027】
上記使用量に従って各種の原料を秤量し、
前記顔料フィラーを乾燥し、使用に備え、前記低表面エネルギー変性フルオロカーボン樹脂、低誘電フィラー、低誘電顔料、湿潤分散剤、有機溶剤を混合した後にバスケットミル機に添加して研磨し、細さが20~30μmになるまで研磨すると、材料を排出する。材料を排出した後、レベリング剤を添加し、2000回転数/分間の条件で30分間撹拌して分散させ、120メッシュの濾過網で濾過し、塗料の粘度(塗料-4カップ)を試験し、計量して包装する。甲成分の各物質を均一に混合した後、モル比-OH:-NCO=1:(1.0~1.2)の割合で、計量された甲、乙成分を均一に混合し、20min静置する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0039
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0039】
実施例1
ナノ窒化ホウ素の表面被覆処理について、
1、表面被覆処理剤(パーフルオロアルキルセグメントを含むポリイソシアネートの質量比率は5%であり、そのほかはキシレン溶媒である)を42℃まで昇温し、窒素を充填して15min保温し、
2、1.5‰のBYK163分散剤を滴下し、
3、数回に分けてナノ窒化ホウ素を撹拌している表面被覆処理剤に添加し、
4、65℃まで昇温し、窒素を充填して4h保温し、
5、室温まで降温し、
6、吸引濾過した後、80℃のオーブン内で45h乾燥した後に使用に備え、
甲成分は、低表面エネルギー変性フルオロカーボン樹脂100重量部、ナノ窒化ホウ素14重量部、シリコーン樹脂微小球4.5重量部、パリオゲンブラック2重量部、フタロシアニンブルー0.5重量部、フタロシアニングリーン0.5重量部、BYK163 1重量部、BYK378 1重量部、酢酸ブチル27重量部であり、
前記顔料フィラーを乾燥し、使用に備え、前記低表面エネルギー変性フルオロカーボン樹脂、低誘電フィラー、低誘電顔料、湿潤分散剤、有機溶剤を混合した後にバスケットミル機に添加して研磨し、細さが20~30μmになるまで研磨すると、材料を排出した。材料を排出した後、レベリング剤を添加し、2000回転数/分間の条件で30分間撹拌して分散させ、120メッシュの濾過網で濾過し、塗料の粘度(塗料-4カップ)を試験し、計量して包装した。
【国際調査報告】