(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-11
(54)【発明の名称】把持装置、ロボット把持顎及びロボット
(51)【国際特許分類】
B25J 15/00 20060101AFI20241101BHJP
【FI】
B25J15/00 F
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529388
(86)(22)【出願日】2021-11-16
(85)【翻訳文提出日】2024-05-16
(86)【国際出願番号】 CN2021130834
(87)【国際公開番号】W WO2023087130
(87)【国際公開日】2023-05-25
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522453131
【氏名又は名称】シャンハイ・フレクシブ・ロボティクス・テクノロジー・カンパニー・リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】522453142
【氏名又は名称】フレクシブ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ウェンビン・リ
(72)【発明者】
【氏名】ハオ・ジアン
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS10
3C707DS01
3C707ES03
3C707EV21
3C707MT10
(57)【要約】
本願は、把持装置(100)、ロボット把持顎(503)及びロボット(500)を開示する。前記把持装置(100)は、ブラケット(106)と、指向性乾燥接着構造を有する第1表面(111)を備えるヤモリ生体模倣接着パッド(101)と、前記ブラケット(106)と前記ヤモリ生体模倣接着パッド(101)の第1側を接続する第1接続構造(102)と、前記第1接続構造(102)との反対側に設けられ、前記ブラケット(106)と前記ヤモリ生体模倣接着パッド(101)の第2側を接続する第2接続構造(103)とを含む。前記第1接続構造(102)は伸縮可能になっている。前記第1接続構造(102)と前記第2接続構造(103)は、協働して前記ヤモリ生体模倣接着パッド(101)に対して第1方向に沿う荷重力を提供するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持装置であって、
ブラケットと、
指向性乾燥接着構造を有する第1表面を備えるヤモリ生体模倣接着パッドと、
前記ブラケットと前記ヤモリ生体模倣接着パッドの第1側を接続する伸縮式の第1接続構造と、
前記第1接続構造との反対側に設けられ、前記ブラケットと前記ヤモリ生体模倣接着パッドの第2側を接続する第2接続構造とを含みむように構成され、
前記第1接続構造と前記第2接続構造は、協働して前記ヤモリ生体模倣接着パッドに対して第1方向に沿う荷重力を提供する、ことを特徴とする把持装置。
【請求項2】
前記ブラケットに接続されるとともに前記ヤモリ生体模倣接着パッドの対向する第3側及び第4側にそれぞれに設けられる第3接続構造と第4接続構造をさらに含み、
前記第3接続構造と前記第4接続構造は、前記ヤモリ生体模倣接着パッドに対して第1方向と直交する第2方向に沿う荷重力を提供するように前記ヤモリ生体模倣接着パッドの前記第3側及び前記第4側に接触させる態様を調整可能ように構成される、ことを特徴とする請求項1に記載の把持装置。
【請求項3】
前記第3接続構造と前記第4接続構造は、前記ヤモリ生体模倣接着パッドに対して前記第2方向に沿う荷重推力を提供するように構成される、ことを特徴とする請求項2に記載の把持装置。
【請求項4】
前記第1接続構造は、前記ブラケットに回転可能に接続され、前記第2接続構造は、弾性構造である、ことを特徴とする請求項1に記載の把持装置。
【請求項5】
前記第1接続構造の伸縮範囲は調節可能である、ことを特徴とする請求項4に記載の把持装置。
【請求項6】
前記第1接続構造は、
第1ロッドと、
ネジ付きの第2ロッドと、
ネジ付きのスリーブと、を含み、
前記ネジ付きのスリーブは、前記第1接続構造の伸縮範囲を調節可能のように、前記第1ロッドに対して摺動可能に前記第1ロッド及び前記第2ロッドに外嵌され、前記第2ロッドは、前記スリーブにネジ嵌合によって接続され、前記スリーブ内において前記第1ロッドの摺動範囲を制限する、ことを特徴とする請求項5に記載の把持装置。
【請求項7】
前記第1ロッドの一端に第1の穴が設けられ、前記第1ロッドの他端に、前記スリーブの摺動を制限するストッパ部が設けられ、
前記第2ロッドの一端に第2の穴が設けられ、
前記第1接続構造は、それぞれ前記第1ロッドの第1の穴と前記第2ロッドの第2の穴に挿入されるとともに前記ブラケット及び前記ヤモリ生体模倣接着パッドに接続されている2つのピボットをさらに含む、ことを特徴とする請求項6に記載の把持装置。
【請求項8】
前記第1接続構造は、前記第2ロッドに外嵌されて前記第2ロッドを前記スリーブに対してロックされる第1保持ナットをさらに含む、ことを特徴とする請求項6に記載の把持装置。
【請求項9】
前記第3接続構造と前記第4接続構造は、前記ブラケット上の前記第1方向の位置が調整可能であるように構成される、ことを特徴とする請求項2に記載の把持装置。
【請求項10】
前記第3接続構造と前記第4接続構造の少なくとも一方は、
点接触部と、
前記点接触部を移動させて前記ヤモリ生体模倣接着パッドの対応する側に点接触する調節部材と、を含む、ことを特徴とする請求項2に記載の把持装置。
【請求項11】
前記点接触部はボールピンである、ことを特徴とする請求項10に記載の把持装置。
【請求項12】
前記指向性乾燥接着構造は複数のマイクロウェッジを備える、ことを特徴とする請求項10に記載の把持装置。
【請求項13】
前記第3接続構造は、前記点接触部と前記ヤモリ生体模倣接着パッドとの間の距離を保持する第2保持ナットをさらに含む、ことを特徴とする請求項10に記載の把持装置。
【請求項14】
ロボット把持顎であって、
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の把持装置を備える、ことを特徴とするロボット把持顎。
【請求項15】
ロボットであって、
請求項14に記載のロボット把持顎を備える、ことを特徴とするロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、把持機構に関し、特に把持装置、ロボット把持顎及びロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
ヤモリ生体模倣接着(Gecko biomimetic adhesive)は、ヤモリから発想した乾燥接着表面に分子間相互作用によって接着力を提供することである。従来のヤモリ生体模倣機構は、可撓性テンドン(flexible tendon)を使用して接着材を添加する。可撓性テンドンは、硬質のヤモリ生体模倣接着パッドの縁にある事前に掘削された穴に配線されて接着されるため、製造や拡大が困難であり、調整の自由度に欠ける。
【0003】
若干の従来技術において、ロープテンドンは、好ましいせん断方向(X軸)のみに沿ってヤモリ生体模倣接着パッドに設置されており、これによりせん断方向―法線方向(X-Z平面)上の荷重が最適化されるが、横せん断方向(Y方向)上の荷重能力が制限された。例えば、このようなシステムが得たせん断方向(X方向)の能力は、通常、横せん断方向(Y方向)上のせん断能力の2~3倍になり、異なる方向における荷重能力が不均衡になる。なお、ロープテンドンは、弾性による荷重(ストレッチ)下で伸長され、そのため、当該機構をロックすることができない。
【0004】
最新のメカニズムは、横せん断(Y)方向に可撓性テンドンを追加して、Y方向上の荷重能力を補償することを提案し、よってX方向及びY方向の両方においてよりバランスの取れた荷重能力を達成することが期待される。ロープテンドンの代わりにポリマーフィルムテンドンが用いられる。ロープテンドンに比べて、ポリマーフィルムの弾性がわずかに低下するため、ストレッチによる伸長率が少なくなる。
【0005】
しかしながら、ポリマーフィルムテンドンは、その剛性によって、圧縮下で屈曲効果を持ち、ヤモリ生体模倣接着パッドの望ましくないねじれを引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願の一態様は、把持装置を提供し、当該把持装置は、ブラケットと、指向性乾燥接着構造(directional dry adhesion structure)を有する第1表面を備えるヤモリ生体模倣接着パッドと、前記ブラケットと前記ヤモリ生体模倣接着パッドの第1側を接続する第1接続構造と、前記第1接続構造との反対側に設けられ、前記ブラケットと前記ヤモリ生体模倣接着パッドの第2側を接続する第2接続構造とを含むように構成される。前記第1接続構造は伸縮可能になっている。前記第1接続構造と前記第2接続構造は、協働して前記ヤモリ生体模倣接着パッドに対して第1方向に沿う荷重力を提供する。
【0007】
本願の他の態様は、把持装置を備えるロボット把持顎を提供し、当該把持装置は、ブラケットと、指向性乾燥接着構造を有する第1表面を備えるヤモリ生体模倣接着パッドと、前記ブラケットと前記ヤモリ生体模倣接着パッドの第1側を接続する第1接続構造と、前記第1接続構造との反対側に設けられ、前記ブラケットと前記ヤモリ生体模倣接着パッドの第2側を接続する第2接続構造とを含むように構成される。前記第1接続構造は伸縮可能になっている。前記第1接続構造と前記第2接続構造は、協働して前記ヤモリ生体模倣接着パッドに対して第1方向に沿う荷重力を提供する。
【0008】
本願のさらに他の態様は、ロボット把持顎を備えるロボットを提供し、当該ロボット把持顎は、把持装置を備える。当該把持装置は、ブラケットと、指向性乾燥接着構造を有する第1表面を備えるヤモリ生体模倣接着パッドと、前記ブラケットと前記ヤモリ生体模倣接着パッドの第1側を接続する第1接続構造と、前記第1接続構造との反対側に設けられ、前記ブラケットと前記ヤモリ生体模倣接着パッドの第2側を接続する第2接続構造とを含むように構成される。前記第1接続構造は伸縮可能になっている。前記第1接続構造と前記第2接続構造は、協働して前記ヤモリ生体模倣接着パッドに対して第1方向に沿う荷重力を提供する
【0009】
本開示の実施例の詳細は、以下の図面及び説明によって記載される。本開示の他の特徴、目的、及び利点は、説明書、図面、及び特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【0010】
本開示の各実施例を説明する添付の図面と結合して、本開示のあらゆる特徴は、以下の詳細な説明からより容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本願の一実施例に係る把持装置の側面図である。
【
図2】本願の一実施例に係る把持装置(ブラケットを含まず)の斜視図である。
【
図3】
図2における把持装置の底部から見た底面図である。
【
図4】本願の一実施例に係る第1接続構造の斜視図である。
【
図6】本願の一実施例に係る
図3におけるA箇所の一部を拡大した模式図である。
【
図7】
図3における線B―Bに沿った断面図である。
【
図8】
図7におけるC箇所の一部を拡大した模式図である。
【
図9】本願の一実施例に係る把持アセンブリの斜視図である。
【
図10】本願の一実施例に係る把持アセンブリの側面図である。
【
図11】本願の一実施例に係るロボットの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、図面を参照しながら本発明の具体的な実施形態を詳細に説明する。本明細書において、「一実施例」または「ある実施例」という用語が用いられるが、当該用語とともに記載された特定の特徴、構造、または特性が説明書に開示された発明主題の一実施例以上に含まれることを意味するものではない。したがって、「一実施例」または「ある実施例」という表現が明細書全体を通して様々な箇所に出現しても、必ずしも同一の実施例を参照しているわけではない。また、これらの特定の特徴、構造、または特性は、一つまたは複数の実施例において、適当な方法で組み合わせてよいものとする。
【0013】
図1~3を参照すると、本願の一実施例に係る把持装置100を説明する。
図1は、本願の一実施例に係る把持装置の側面図であり、
図2は、本願の一実施例に係る把持装置の斜視図であり、また、
図3は、
図2における把持装置の底部から見た底面図である。各要素を明示するために、
図2及び
図3の把持装置は、
図1に示すブラケット部を省略している。
【0014】
図1~3に示すように、把持対象物を取り付ける又は取り外すことが可能で、把持、輸送及びリリースなどの操作を実現する把持装置100が設置されている。当該把持装置100は、ブラケット106と、指向性乾燥接着構造を有する第1表面111を備えるヤモリ生体模倣接着パッド101と、ブラケット106とヤモリ生体模倣接着パッド101の第1側(例えば、
図1のX方向上側)を接続する第1接続構造102と、第1接続構造102との反対側に設けられ、ブラケット106とヤモリ生体模倣接着パッド101の第2側(例えば、
図1のX方向下側)を接続する第2接続構造103を含む。第1接続構造102は、伸縮可能になっている。第1接続構造102と第2接続構造103は、協働してヤモリ生体模倣接着パッド101に対してヤモリ生体模倣接着パッド101の指向性乾燥接着構造を活性化するために用いられる第1方向(X方向)に沿う荷重力を提供するように構成される。
【0015】
当該ヤモリ生体模倣接着パッド101において、第1表面111は、剥離可能な所定面積の接着材を有することができる。例えば、剥離可能な接着材として、複数のマイクロウェッジを有する指向性乾燥接着構造(以下、マイクロウェッジ構造ともいう)が採用されることができ、このマイクロウェッジを制御することで把持対象物の接着及びリリースすることを実現できる。よって、以下は、マイクロウェッジ構造を例として説明する。例えば、マイクロウェッジ構造の接着材は、表面エネルギーが低いゴム材料(例えば、PDMSシリコーン樹脂などのシリコーン樹脂材料)で製造されることが可能である。通常の場合、マイクロウェッジ構造は、直線状であり、デフォルト状態で、マイクロウェッジ構造が把持対象物の表面に接触する表面に、マイクロウェッジ構造の先端のみが含まれる。マイクロウェッジ構造と物品の表面との接触表面積が小さいため、第1表面111は、物品の表面に付着されない。把持の過程において、ヤモリ生体模倣接着パッド101のマイクロウェッジ構造が予圧動作により曲げられることによって、マイクロウェッジ構造と物品の表面との接触面積を著しく増大させ、それにより、接着材が活性化されて、物品の表面に接着することができる。
【0016】
なお、ヤモリ生体模倣接着パッド101およびマイクロウェッジ構造の装着原理についてより詳細な説明が、出願者の中国特許出願である「拡張可能な製造性を有する制御可能なヤモリ生体模倣接着把持具システム」(CN110769988A)及び「合成繊維接着剤及びキャッチャを有するロボット」(CN110730707B)を参照されたい。
【0017】
これにより、第1接続構造102と第2接続構造103が協働してヤモリ生体模倣接着パッド101に対して第1方向(X方向)に沿う荷重力を提供するように構成されることにより、ヤモリ生体模倣接着パッド101の第1方向(X方向)のバランスの取れた荷重を実現することができる。なお、第1接続構造102が伸縮可能であることにより、ヤモリ生体模倣接着パッド101のねじれを避けることができる。
【0018】
特に、いくつかの実施例では、第1接続構造102は、ブラケット106に回転可能に接続され、第2接続構造103は、弾性構造である。このような構造によれば、必要に応じてヤモリ生体模倣接着パッド101が第3方向(Z方向)に上下移動させる際、第1接続構造102は、対応して移動することができるため、ヤモリ生体模倣接着パッド101は、第3方向(Z方向)に沿った小さな動き、及び第1方向(X方向)に沿った小さな揺動を実現することができ、それにより、ヤモリ生体模倣接着パッド101は、把持された物品の表面に容易に貼り合わせる。いくつかの実施例では、第2接続構造103は、例えば弾性体やバネであってもよく、膜構造であってもよく、その具体的な材料は、必要とする性能特徴に応じて変動してもよい。
【0019】
把持装置100は、ブラケット106に接続されるとともにヤモリ生体模倣接着パッド101の第3側及び第4側にそれぞれに設けられる第3接続構造104及び第4接続構造105をさらに含む。第3側及び第4側は、互いに対向する。例えば、第3接続構造104は、ヤモリ生体模倣接着パッド101の第3側(例えば、
図3においてY方向の右側)に設けられ、第4接続構造105は、ヤモリ生体模倣接着パッド101の第4側(例えば、
図3においてY方向のる左側)に設けられている。
【0020】
なお、第3接続構造104と第4接続構造105は、ヤモリ生体模倣接着パッド101に対して第1方向(X方向)と直交する第2方向(Y方向)に沿う荷重力を提供するように、ヤモリ生体模倣接着パッド101の第3側及び第4側に接触するように調整可能に構成される。
【0021】
さらに、第3接続構造104と第4接続構造105は、後述するように、ヤモリ生体模倣接着パッド101に第2方向に沿う荷重推力を提供するように構成されてもよい。また、第3接続構造104と第4接続構造105は、ヤモリ生体模倣接着パッド101に第2方向に沿う引張荷重力を提供するように構成されてもよい。例えば、第3接続構造104と第4接続構造105は、第2方向(Y方向)に沿ってヤモリ生体模倣接着パッド101に接続され、必要に応じてヤモリ生体模倣接着パッド101を引っ張ることで、第2方向に沿う引張荷重力を提供してもよい。
【0022】
これにより、第3接続構造104と第4接続構造105がヤモリ生体模倣接着パッド101に対して第2方向(Y方向)に沿う荷重力を提供することにより、ヤモリ生体模倣接着パッド101の第2方向(Y方向)のバランスの取れた荷重を実現するとともに、把持装置100の構造全体をよりコンパクトにすることができる。さらに、第3接続構造104と第4接続構造105がヤモリ生体模倣接着パッド101の第3側及び第4側に接触するように調整可能に構成されることにより、第3接続構造104と第4接続構造105は、必要に応じてヤモリ生体模倣接着パッド101に対して位置を調整することができる。第3接続構造104と第4接続構造105のうちの一方又は両方は、第2方向(Y方向)上の荷重推力を提供することが所望される場合に、ヤモリ生体模倣接着パッド101に当接し、ヤモリ生体模倣接着パッド101が第3方向(Z方向)に沿って上下移動する必要がある時、ヤモリ生体模倣接着パッド101から離れるようにすることができる。例えば、把持装置100が物品を把持して把持された物品を持ち上げればよい場合、第3接続構造104と第4接続構造105が、ヤモリ生体模倣接着パッド101に対して第2方向(Y方向)に沿う荷重力を提供する必要がない。この時、第3接続構造104と第4接続構造105がヤモリ生体模倣接着パッド101に接触しないように調整されることができる。把持された物品を持ち上げる方向と直交する平面(例えば、第2方向)に移動させたい場合、第3接続構造104と第4接続構造105がヤモリ生体模倣接着パッド101に対して第2方向(Y方向)に沿う荷重力を提供する必要があるため、この時、第3接続構造104と第4接続構造105がヤモリ生体模倣接着パッド101に接触するように調整されることができる。
【0023】
また、第3接続構造104と第4接続構造105は、同時にヤモリ生体模倣接着パッド101に当接することができ、そのため、必要に応じて、ヤモリ生体模倣接着パッド101の対向する両側に第2方向(Y方向)に沿う荷重推力を加えることができ、それにより、第2方向(Y方向)に沿うせん断力を発生させ、第2方向(Y方向)に加えられるせん断力の方向の瞬時性及び精度を確保することができる。
【0024】
上記の実施例では、ヤモリ生体模倣接着パッド101を例として説明したが、把持装置100は、ヤモリ生体模倣接着パッド101に設けられた他の構造、例えば、パッド部、フレキシブル層、構造フレーム、適応構造などを含むゲルアセンブリ(GA: glue assembly)を形成すると理解すべきである。同様に、当該ゲルアセンブリは、片面に剥離可能な接着材からなる表面を設けることにより、上述した技術的効果も奏することができる。なお、第1接続構造102、第2接続構造103、第3接続構造104及び第4接続構造105は、ゲルアセンブリの他の構造又は層に接続されてもよく、第1方向(X方向)又は第2方向(Y方向)に沿ってヤモリ生体模倣接着パッド101に荷重力を伝達できればよい。
【0025】
以下、
図4~5を参照しながら、本願の一実施例に係る第1接続構造200を説明する。
図4は、本願の一実施例に係る第1接続構造200の斜視図であり、
図5は、
図4における第1接続構造200の断面図である。
【0026】
図4~5に示すように、本願の一実施例に係る第1接続構造200は、第1ロッド201、ネジ付きの第2ロッド202及びネジ付きのスリーブ203を含み、ネジ付きのスリーブ203は、第1接続構造200の伸縮範囲を調節可能のように、第1ロッド201に対して摺動可能に第1ロッド201及び第2ロッド202に外嵌される。第2ロッド202は、スリーブ203にネジ嵌合によって接続され、スリーブ203において第1ロッド201の摺動範囲を制限するように構成されている。
【0027】
さらに、いくつかの実施例では、第1ロッド201の一端に、第1の穴211が設けられている。第1ロッド201の他端に、スリーブ203の摺動を制限するストッパ部212が設けられている。第2ロッド202の一端に、第2の穴213が設けられている。第1接続構造200は、2つのピボット204をさらに含む。当該2つのピボット204は、それぞれ第1ロッド201の第1の穴211と第2ロッド202の第2の穴213に挿入されるとともにブラケット106及びヤモリ生体模倣接着パッド101に接続されている。第1接続構造200は、ブラケット106およびヤモリ生体模倣接着パッド101に対してそれぞれに回動するように、ピボット204を介してブラケット106及びヤモリ生体模倣接着パッド101に接続されている。
【0028】
さらに、いくつかの実施例では、第1接続構造200は、第2ロッド202に外嵌されて第2ロッド202をスリーブ203に対してロックされる第1保持ナット205をさらに含む。
【0029】
本実施例における第1接続構造200は、従来のテンドン型のヤモリ材活性化装置に比べて、伸縮可能なロッド型構造を採用しているため、一括での製造・組立が容易であり、同様の構造の大型化も容易である。
【0030】
以下、
図3及び
図6~8を参照しながら、本願の一実施例に係る第3接続構造を説明する。
図6は、本願の一実施例に係る
図3におけるA箇所の一部を拡大した模式図であり、
図7は、
図3における線B―Bに沿った断面図であり、
図8は、
図7におけるC箇所の一部を拡大した模式図である。
【0031】
図3、6~8に示すように、本願の一実施例によれば、第3接続構造104は、ヤモリ生体模倣接着パッド101の第3側に設けられ、第4接続構造105は、ヤモリ生体模倣接着パッド101の第4側に設けられている。なお、いくつかの実施例では、第3接続構造104と第4接続構造105は、ブラケット106における第1方向(X方向)上の位置が調整可能であるように構成される。例えば、ブラケット106に溝107(
図1と
図9に示すように)が設けられてもよく、それにより、第3接続構造104と第4接続構造105は、当該溝107に沿って位置を調整することができる。具体的には、
図1と
図9に示すように、第3接続構造104又は第4接続構造105は、例えば一端のナットによってブラケット106の溝107に固定されてもよい。第3接続構造104又は第4接続構造105の位置調整が必要な場合、ナットを緩め、第3接続構造104又は第4接続構造105を溝107に沿って摺動させて、適当な位置に再びナットを締め付けてロックすることができる。
【0032】
なお、本明細書では、第3接続構造を具体例として説明したが、第3接続構造と第4接続構造は、同一又は類似の構造を有してもよい。また、第3接続構造と第4接続構造の数は、1つに限らず、ヤモリ生体模倣接着パッド101の形状設計に従って、ヤモリ生体模倣接着パッド101の対応する側に、複数設けられてもよい。なお、第3接続構造と第4接続構造は、ヤモリ生体模倣接着パッド101の両側に対称に配置されてもよく、又は非対称に配置されてもよい。
【0033】
さらに、いくつかの実施例では、第3接続構造104は、点接触部301と、点接触部301を移動させてヤモリ生体模倣接着パッド101の対応する側に点接触する調節部材302を含む。また、第3接続構造104は、点接触部301とヤモリ生体模倣接着パッド101との間の距離を保持するための第2保持ナット303をさらに含んでもよい。あるいは、当該点接触部301は、ボールピンを含む。
【0034】
これにより、第3接続構造104(同様に、第4接続構造105)は、金属などの硬質材料で製造され、荷重下での伸長率を大幅に低下させることができる。なお、第3接続構造104は、ヤモリ生体模倣接着パッド101と別体であるため、ヤモリ生体模倣接着パッド101が横方向の力を必要とされる場合のみに使用される。横方向の力を必要とされない場合、第3接続構造104をヤモリ生体模倣接着パッド101に点接触させ、さらに、ヤモリ生体模倣接着パッド101から離間させて接触させないことで、屈曲効果でもたらす問題が解消される。さらに、球状の点接触部301は、ヤモリ生体模倣接着パッド101に加わる推力が接触される表面に対して直交する、即ち第2方向(Y方向)に沿うことを確保することができる。あるいは、第3接続構造104のヤモリ生体模倣接着パッド101に対する第3方向(Z方向)上の位置を調整して、必要に応じて、第3方向(Z方向)の異なる位置にヤモリ生体模倣接着パッド101に推力を加えることができるようにしてもよい。このように、推力は、他の方向に余計な力成分が発生しない。それ以外の場合は、ヤモリ生体模倣接着パッド101が歪んだり、望ましくないように浮き上がったり回転したりすることが発生する。
【0035】
次に、
図9~10を参照しながら、本願の一実施例に係る把持アセンブリを説明する。
図9は、本願の一実施例に係る把持アセンブリの斜視図であり、
図10は、本願の一実施例に係る把持アセンブリの側面図である。
【0036】
把持アセンブリ400は、上記実施例のいずれかに記載の把持装置100を含んでもよい。
図9~10に示すように、把持アセンブリ400は、2つの把持装置100を含んでもよく、把持装置100は、それぞれにブラケットと、指向性乾燥接着構造を有する第1表面を備えるヤモリ生体模倣接着パッドと、ブラケットとヤモリ生体模倣接着パッドドの第1側を接続する第1接続構造と、第1接続構造との反対側に設けられ、ブラケットとヤモリ生体模倣接着パッドの第2側を接続する第2接続構造を含む。第1接続構造は、伸縮可能になっている。第1接続構造と第2接続構造は、協働してヤモリ生体模倣接着パッドに対して第1方向に沿う荷重力を提供するように構成される。
【0037】
また、把持装置100は、ブラケットに接続されるとともにヤモリ生体模倣接着パッドの第3側及び第4側にそれぞれに設けられる第3接続構造及び第4接続構造をさらに含んでもよい。第3側及び第4側は、互いに対向する。第3接続構造と第4接続構造は、ヤモリ生体模倣接着パッドに対して第1方向と直交する第2方向に沿う荷重力を提供するように、ヤモリ生体模倣接着パッドの第3側及び第4側に接触するように調整可能に構成される。
【0038】
上述した把持アセンブリ400では、第1接続構造と第2接続構造が協働してヤモリ生体模倣接着パッドに対して第1方向に沿う荷重力を提供するよう構成されることにより、ヤモリ生体模倣接着パッドの第1方向のバランスの取れた荷重を実現することができる。なお、第1接続構造が伸縮可能であるより、ヤモリ生体模倣接着パッドのねじれを避けることができる。さらに、第3接続構造と第4接続構造がヤモリ生体模倣接着パッドに対して第2方向に沿う荷重力を提供することにより、ヤモリ生体模倣接着パッドの第2方向のバランスの取れた荷重を実現するとともに、構造全体をよりコンパクトにすることができる。
【0039】
なお、
図9~10に示すように、本願の一実施例に係る把持アセンブリ400では、2つの把持装置100は、ガイドレール401を介して直列に接続されている。これにより、2つの把持装置100がガイドレール401に沿って摺動することにより、2つの把持装置100の互いの位置を変更することができ、把持対象物の外形に適応的に嵌合させることができる。
【0040】
さらに、2つ又は複数の把持装置100のうち一方の把持装置100の指向性乾燥接着構造の方向は、他方の把持装置100の指向性乾燥接着構造の方向と異なってもよい。これにより、把持装置100と物品との接着性を高めることができる。例えば、2つの把持装置100が存在する場合、それぞれの指向性乾燥接着構造の方向は、逆方向(例えば、いずれも中心に向かう)である。
【0041】
図11を参照すると、本願の一実施例に係るロボット把持顎及びロボットを説明する。
図11は、本願の一実施例に係るロボットの概略構成図である。図に示すように、ロボット500は、複数の連結アーム501を含み、2つの連結アーム501毎に、それぞれの関節502を介して枢動可能に連結されてもよい。ロボット500は、ロボット把持顎503をさらに含む。ロボット把持顎503の一端は、対応する連結アーム501に連結され、ロボット把持顎503の他端に、上記のような把持装置100又は把持アセンブリ400が設けられている。これにより、ロボット500は、物品を把持又は掴むために用いられることが可能である。当業者にとって、
図11に示す構造は、ロボット500の例示的な実施例であるに過ぎないと理解する。他の実施例では、ロボット500は、例えば追加の連結アーム及びエンドエフェクタなどの、多くの要素又は少ない要素を含んでもよい。いくつかの構成要素(例えば、2つ以上の連結アーム)を組み合わせてもよく、説明された構成要素と異なるタイプの要素を採用してもよい。例えば、ロボットは、システムに対する制御を実現するためのI/Oデバイス、ネットワークアクセスデバイス、通信バス、プロセッサ、メモリ、アクチュエータ、センサをさらに備えてもよい。例えば、ロボット500は、プロセッサと、プロセッサによって実行されるとシステムを制御する命令を記憶するメモリを含んでもよい。また、メモリは、プロセッサによって実行されるとロボット把持顎503起動または非起動させて把持対象物を把持またはリリースする指示を記憶してもよい。
【0042】
本願の説明において、「中心」、「縦方向」、「横方向」、「長さ」、「幅」、「厚さ」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「頂部」、「底部」、「内」、「外」、「時計回り」、「反時計回り」、「軸方向」、「径方向」、「周方向」などの用語が示された方位又は位置関係は、図面に基づいて示された方位又は位置関係であることを理解すべき、本願の説明を簡略するためのものに過ぎず、示された装置又は素子が特定の方位を有するとともに特定の方位で構成され動作することを明示又は暗示するものではなく、本願を限定するものと理解すべきではない。
【0043】
なお、「第1」及び「第2」という用語は、説明の目的のためにのみ使用され、相対的な重要度を明示もしくは暗示するもの、又は技術的特徴の数量を暗示するものとして理解されるべきではない。したがって、「第1」及び「第2」によって制限される特徴は、そのような特徴のうちの少なくとも1つを明示的または暗示的に含み得る。本願の説明において、「複数」とは、特に明記しない限り、少なくとも2つを意味する。
【0044】
本願において、他に明確な規定及び限定がない限り、用語「設置」、「連結」、「接続」、「固定」等の用語は広義に理解されるべきであり、例えば、固定接続であってもよく、取り外し可能に接続することもよく、又は一体としてもよく、機械的に接続されてもよく、電気的に接続されてもよい、直接接続されてもよく、媒介物を介して間接的に接続されてもよく、2つの素子内に連通される又は2つの素子の間の相互作用関係であってもよいと理解されてほしい。当業者にとって、具体的な状況に応じて本出願における上記用語の具体的な意味を理解することができる。
【0045】
上記実施例の各技術的特徴は、任意の組み合わせを行うことができ、説明を簡潔にするために、上記実施例における各技術的特徴の全ての可能な組み合わせを説明するわけではない。ただし、これらの技術的特徴の組み合わせに矛盾がない限り、いずれも本明細書に記載された範囲に該当するものとする。
【0046】
上記実施例は、本願を説明する単なる実施例であり、その説明は具体的かつ詳細であるが、これにより発明の特許範囲を限定するものと理解すべきではない。なお、当業者であれば、本発明の概念から逸脱することなく、いくつの変形及び改良を行うことができ、これらの変形及び改良はいずれも本発明の保護範囲に属するということである。従って、本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲によるものとする。
【国際調査報告】