(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-11
(54)【発明の名称】シクロフィリンD関連疾患の処置方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20241101BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20241101BHJP
A61P 39/06 20060101ALI20241101BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241101BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20241101BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20241101BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20241101BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20241101BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20241101BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20241101BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20241101BHJP
A61K 31/711 20060101ALI20241101BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20241101BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20241101BHJP
【FI】
C12N15/113 130Z
C12N15/113 ZNA
A61P9/10
A61P39/06
A61P29/00
A61P17/02
A61P25/28
A61P3/10
A61P3/00
A61P21/00
A61K48/00
A61K31/7088
A61K31/711
A61K47/54
A61K47/64
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529487
(86)(22)【出願日】2022-11-17
(85)【翻訳文提出日】2024-07-11
(86)【国際出願番号】 AU2022051375
(87)【国際公開番号】W WO2023087061
(87)【国際公開日】2023-05-25
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524184242
【氏名又は名称】レゾナンス ヘルス アナリシス サービシーズ ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ボウロス, シェリフ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076CC01
4C076CC04
4C076CC09
4C076CC11
4C076CC18
4C076CC21
4C076EE59
4C076FF34
4C076FF63
4C084AA13
4C084NA03
4C084NA11
4C084NA14
4C084ZA15
4C084ZA36
4C084ZA89
4C084ZA94
4C084ZB11
4C084ZC21
4C084ZC35
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA03
4C086NA11
4C086NA14
4C086ZA15
4C086ZA36
4C086ZA89
4C086ZA94
4C086ZB11
4C086ZC21
4C086ZC35
(57)【要約】
PPIF遺伝子転写物またはその一部におけるプレmRNAスプライシングを改変するための改変骨格構造を有する単離または精製アンチセンスオリゴマー。本発明の一態様では、PPIF遺伝子転写物またはその一部のイントロンの近傍または内部の領域に相補的な標的配列を含む10~50ヌクレオチドのアンチセンスオリゴマーが提供される。本発明の別の態様では、PPIF遺伝子転写物またはその一部のエクソンの近傍または内部の領域に相補的な標的配列を含む10~50ヌクレオチドのアンチセンスオリゴマーが提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PPIF遺伝子転写物またはその一部におけるプレmRNAスプライシングを改変するための改変骨格構造を有する単離または精製アンチセンスオリゴマー。
【請求項2】
前記PPIF遺伝子転写物またはその一部において非生産的スプライシングまたは機能障害を誘導する、請求項1に記載のアンチセンスオリゴマー。
【請求項3】
改変骨格構造を有する配列番号1~44、および改変骨格構造を有する配列番号1~44に対して少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含むリストから選択される、請求項1に記載のアンチセンスオリゴマー。
【請求項4】
前記アンチセンスオリゴマーが、(i)改変骨格構造;(ii)改変糖部分;(iii)RNase Hに対する耐性;(iv)オリゴマー模倣化学を含むリストから選択される代替の化学または改変を受ける1またはそれを超えるヌクレオチド位置を含む、請求項1に記載のアンチセンスオリゴマー。
【請求項5】
前記アンチセンスオリゴマーが、(i)部分への化学的コンジュゲーション;および/または(ii)細胞透過性ペプチドによるタグ化によってさらに改変されている、請求項1に記載のアンチセンスオリゴマー。
【請求項6】
前記ヌクレオチド配列中に任意のウラシル(U)が存在する場合、前記ウラシル(U)がチミン(T)によって置換されている、請求項1に記載のアンチセンスオリゴマー。
【請求項7】
前記PPIF遺伝子転写物またはその一部のエクソンの1またはそれを超えるエクソンのスキッピングを誘導するように作用する、請求項1に記載のアンチセンスオリゴマー。
【請求項8】
PPIF遺伝子転写物におけるスプライシングを調節するための方法であって、
a)請求項1~7のいずれか一項に記載のアンチセンスオリゴマーのうちの1またはそれを超えるアンチセンスオリゴマーを提供する工程および前記オリゴマーが標的核酸部位に結合することを可能にする工程を含む方法。
【請求項9】
患者におけるPPIF発現に関連する疾患の影響を処置、予防または改善するための医薬組成物、予防用組成物、または治療用組成物であって、
a)請求項1~7のいずれか一項に記載の1またはそれを超えるアンチセンスオリゴマー、および
b)1またはそれを超える薬学的に許容され得る担体および/または希釈剤
を含む、医薬組成物、予防用組成物、または治療用組成物。
【請求項10】
PPIF発現に関連する疾患の影響を処置、予防または改善するための方法であって、
a)有効量の請求項1~7のいずれか一項に記載の1またはそれを超えるアンチセンスオリゴマー、または、1またはそれを超えるアンチセンスオリゴマーを含む医薬組成物を、患者に投与する工程を含む方法。
【請求項11】
PPIF発現に関連する疾患の影響を処置、予防または改善するための医薬を製造するための、請求項1~7のいずれか一項に記載の精製および単離されたアンチセンスオリゴマーの使用。
【請求項12】
患者におけるPPIF発現に関連する疾患の影響を処置、予防または改善するためのキットであって、適切な容器中にその使用説明書と共にパッケージングされた、請求項1~7のいずれか一項に記載の少なくともアンチセンスオリゴマーおよびその組み合わせまたはカクテルを含むキット。
【請求項13】
前記PPIF発現に関連する疾患または病理が、虚血再灌流関連損傷、酸化関連損傷、炎症関連損傷および外傷関連損傷、神経変性、糖尿病、代謝疾患、骨格筋疾患、および炎症性疾患を含むリストから選択される、請求項9に記載の組成物、請求項8もしくは10に記載の方法、請求項11に記載の使用、または請求項12に記載のキット。
【請求項14】
PPIF発現に関連する前記疾患または病理を有する前記対象がヒトである、請求項9に記載の組成物、請求項8もしくは10に記載の方法、請求項11に記載の使用または請求項12に記載のキット。
【請求項15】
配列番号35または37を含むリストから選択される、請求項1に記載のアンチセンスオリゴマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、シクロフィリンDに関連する疾患および病理の影響を処置、予防または改善するためのアンチセンスオリゴマーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
シクロフィリンD(CYPD、PPIF)は、イムノフィリンファミリーに属する遍在的に分布するタンパク質であり、そのメンバーはプロリンイミド性ペプチド結合のシス-トランス異性化を触媒する。ヒトでは、PPIF遺伝子は10番染色体に位置し、6つのエクソンを含む207アミノ酸の17.5kDaタンパク質をコードする。ミトコンドリアに関連して、CYPDは、ミトコンドリア膜透過性遷移孔(mPTP)の開口に関与している(PubMed:26387735)。ミトコンドリアCa2流入の増加などのストレス下では、CYPDは、アデニンヌクレオチドトランスロカーゼ(ANT)機構に結合してmPTP孔の開口を促進すると考えられている。このように、CYPDは、細胞死をもたらすミトコンドリアからのアポトーシス促進因子および他の因子の放出における重要なメディエーターと見なされている。
【0003】
構造的には、CYPDは、そのコアβバレル/イソメラーゼ領域においてシクロフィリンファミリーの他のメンバーと高度の相同性を示し、これはプロリン結合モチーフを構成する表面疎水性ポケットを含む。CYPDのN末端およびC末端の両方とも、他のシクロフィリンファミリーのメンバーとは有意に異なる。
【0004】
CYPDは、虚血再灌流関連損傷、酸化関連損傷、炎症関連損傷および外傷関連損傷(肝臓、脳、心臓、肺、膵臓および腎臓に影響を及ぼす)、神経変性(アルツハイマー病、パーキンソン病、運動ニューロン疾患)、糖尿病、代謝疾患(NAFLD/NASHおよび肥満)、骨格筋疾患、および炎症性疾患を含む様々なヒト疾患において重要な機能を果たすことが示されている。
【0005】
現在、CYPDは、シクロスポリンA(CsA)およびCYPDに対して活性であることが知られているそれらの誘導体などの天然に存在する免疫抑制薬の投与によって様々な疾患および病理において調節されている。しかしながら、CsAまたはその合成誘導体などの汎シクロフィリン阻害剤の使用は、その作用が有益であって処置される疾患とは無関係であるシクロフィリンメンバーの不活性化をもたらし得るので、理想的ではない可能性がある。
【0006】
特定の組織および身体全体の両方におけるCYPDのレベルを調節するための新しい処置手段または予防手段を提供する必要がある。または少なくとも、以前から知られている処置を補完する方法を提供することを含む。本発明は、シクロフィリンDに関連する疾患および病理の効果を処置、予防または改善するための改善されたまたは代替の方法を提供しようとするものである。
【0007】
背景技術の前述の説明は、本発明の理解を容易にすることのみを意図している。議論は、言及された資料のいずれかが、出願の優先日における共通の一般知識であるか、またはその一部であったことの認識または承認ではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の要旨
概して、本発明の一態様によれば、PPIF遺伝子転写物またはその一部におけるプレmRNAスプライシングを改変するための単離または精製アンチセンスオリゴマーが提供される。好ましくは、PPIF遺伝子転写物またはその一部において非生産的スプライシングを誘導するための単離または精製アンチセンスオリゴマーが提供される。
【0009】
例えば、本発明の一態様では、PPIF遺伝子転写物またはその一部のイントロンの近傍または内部の領域に相補的な標的配列を含む10~50ヌクレオチドのアンチセンスオリゴマーが提供される。本発明の別の態様では、PPIF遺伝子転写物またはその一部のエクソンの近傍または内部の領域に相補的な標的配列を含む10~50ヌクレオチドのアンチセンスオリゴマーが提供される。
【0010】
好ましくは、アンチセンスオリゴマーは、表3に示される配列を含む群から選択される。好ましくは、アンチセンスオリゴマーは、配列番号1~44、より好ましくは配列番号35または37を含むリストから選択される。
【0011】
アンチセンスオリゴマーは、好ましくは、PPIF遺伝子転写物またはその一部のエクソンの1またはそれを超えるエクソンのスキッピングを誘導するように作用する。例えば、アンチセンスオリゴマーは、エクソン3および/または4のスキッピングを誘導し得る。
【0012】
本発明のアンチセンスオリゴマーは、選択されたPPIF標的部位に結合することができるアンチセンスオリゴマーであるように選択され得、標的部位は、スプライスドナー部位、スプライスアクセプター部位またはエクソンスプライシングエレメントから選択されるmRNAスプライシング部位である。標的部位はまた、ドナーまたはアクセプタースプライス部位が標的化される場合、いくつかの隣接するイントロン配列を含んでもよい。
【0013】
より具体的には、アンチセンスオリゴマーは、配列番号1~44のいずれか1またはそれを超えるもの、より好ましくは配列番号35または37。;および/または表3に記載の配列、ならびにそれらの組み合わせまたはカクテルを含む群から選択され得る。これには、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でそのような配列にハイブリダイズすることができる配列、それに相補的な配列、PPIF遺伝子転写物におけるプレmRNAプロセシング活性を保有または調節する改変塩基、改変骨格およびその機能的短縮または伸長を含有する配列が含まれる。特定の実施形態では、アンチセンスオリゴマーは、標的配列に100%相補的であり得るか、またはオリゴヌクレオチドと標的配列との間に形成されるヘテロ二重鎖が細胞ヌクレアーゼの作用およびインビボで起こり得る他の分解様式に耐えるのに十分に安定である限り、例えばバリアントに適応するためにミスマッチを含み得る。したがって、特定のオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドと標的配列との間に、約または少なくとも約70%の配列相補性、例えば70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列相補性を有し得る。
【0014】
本発明はまた、選択された標的に結合してPPIF遺伝子転写物においてエクソン排除を誘導することができる2またはそれを超えるアンチセンスオリゴマーの組み合わせにも及び、2またはそれを超えるそのようなアンチセンスオリゴマーを含む構築物を含む。構築物は、アンチセンスオリゴマーに基づく治療に使用され得る。
【0015】
本発明は、そのなおさらなる態様によれば、本発明のアンチセンスオリゴマー配列のcDNAまたはクローン化コピー、ならびに本発明のアンチセンスオリゴマー配列を含有するベクターに及ぶ。本発明はさらに、そのような配列および/またはベクターを含有する細胞にも及ぶ。
【0016】
PPIF遺伝子転写物におけるスプライシングを調節するための方法であって、
a)本明細書に記載のアンチセンスオリゴマーのうちの1またはそれを超えるアンチセンスオリゴマーを提供する工程およびオリゴマーが標的核酸部位に結合することを可能にする工程を含む方法も提供される。
【0017】
患者におけるPPIF遺伝子発現に関連する疾患または病理の影響を処置、予防または改善するための医薬組成物、予防用組成物、または治療用組成物であって、
a)本明細書に記載の1またはそれを超えるアンチセンスオリゴマー;および
b)1またはそれを超える薬学的に許容され得る担体および/または希釈剤
を含む、医薬組成物、予防用組成物、または治療用組成物も提供される。
【0018】
組成物は、約1nM~1000nMの本発明の所望のアンチセンスオリゴマーの各々を含み得る。好ましくは、組成物は、約10nM~500nM、最も好ましくは1nM~10nMの本発明のアンチセンスオリゴマーの各々を含み得る。
【0019】
PPIF遺伝子発現に関連する疾患または病理の影響を処置、予防または改善するための方法であって、
a)有効量の本明細書に記載の1またはそれを超えるアンチセンスオリゴマー、または、1またはそれを超えるアンチセンスオリゴマーを含む医薬組成物を、患者に投与する工程を含む方法も提供される。
【0020】
PPIF遺伝子発現に関連する疾患または病理の影響を処置、予防または改善するための医薬を製造するための、本明細書に記載の精製および単離されたアンチセンスオリゴマーの使用も提供される。
【0021】
患者におけるPPIF遺伝子発現に関連する疾患または病理の影響を処置、予防または改善するためのキットであって、適切な容器中にその使用説明書と共にパッケージングされた、本明細書に記載の少なくともアンチセンスオリゴマーおよびその組み合わせまたはカクテルを含むキットも提供される。
【0022】
好ましくは、患者におけるPPIF遺伝子発現に関連する疾患または病理は、虚血再灌流関連損傷、酸化関連損傷、炎症関連損傷および外傷関連損傷(肝臓、脳、心臓、肺、膵臓および腎臓に影響を及ぼす)、神経変性(アルツハイマー病、パーキンソン病、運動ニューロン疾患)、糖尿病、代謝疾患(NAFLD/NASHおよび肥満)、骨格筋疾患、および炎症性疾患を含むリストから選択される。
【0023】
PPIF遺伝子発現に関連する疾患または病理を有する対象は、ヒトを含む哺乳動物であり得る。
ここで、本発明のさらなる態様を、添付の非限定的な実施例および図面を参照して説明する。
【0024】
図面の簡単な説明
本発明のさらなる特徴は、そのいくつかの非限定的な実施形態の以下の説明においてより完全に説明される。この説明は、単に本発明を例示する目的で含まれる。上記の本発明の広範な概要、開示または説明に対する制限として理解されるべきではない。以下、添付図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】全長CYPD mRNA配列からエクソン2または3のスキッピングを誘導するように設計されたASO(500nM、2-O-メチル骨格で合成)によるトランスフェクションの24時間後にHepG2培養物から採取した全RNAのRT-PCR分析。得られたPCR産物のアガロースゲル電気泳動(AGE)は、ASO CDm2.1、CDm2.2、CDm2.3およびCDm2.5(
図1aおよび1b)がエクソン2のサイズと一致して31bp断片の欠失を誘導し、ASO CDm3.3およびCDm3.4がエクソン3のサイズと一致して89bp断片の欠失を誘導することを示した(
図1bおよび1c)。100bpの分子量マーカーを最初のレーンにローディングした。
【
図2】全長CYPD mRNA配列からエクソン4または5のスキッピングを誘導するように設計されたASO(500nM、2-O-メチル骨格で合成)によるトランスフェクションの24時間後にHepG2培養物から採取した全RNAのRT-PCR分析。得られたPCR産物のアガロースゲル電気泳動(AGE)は、ASO CDm4.3、CDm4.4、CDm4.5およびCDm4.7(
図2aおよび2b)がそれぞれ、エクソン4のサイズと一致して97bp断片の欠失を誘導し、ASO CDm5.3およびCDm 5.4がエクソン5のサイズと一致して76bp断片の欠失を誘導することを示した(
図2bおよび2c)。100bpの分子量マーカーを最初のレーンおよび最後のレーンにローディングした。
【
図3】CDm3.4配列の「マイクロウォーキング」5’および3’によって得られたASO(250nM、MOE骨格と合成され、CDm3.41、CDm3.42、CDm3.43、CDm3.44およびCDm3.45と呼ばれる)によるトランスフェクションの24時間後にHepG2培養物から採取された全RNAのRT-PCR分析。(プライマー配列番号49/50を使用して得られた)PCR産物のアガロースゲル電気泳動(AGE)は、各ASOが可変のエクソン3欠失を誘導し、ASO CDm3.45がほぼ完全なスキッピングを誘導することを示した。NTCは、擬似トランスフェクション対照を示す。100bpの分子量マーカーを最初のレーンにローディングした。
【
図4】CDm4.4配列の「マイクロウォーキング」5’および3’によって得られたASO(250nM、MOE骨格と合成され、CDm4.41、CDm4.42、CDm4.43、CDm4.44 CDm4.45およびCDm4.46と呼ばれる)によるトランスフェクションの24時間後にHepG2培養物から採取された全RNAのRT-PCR分析。(プライマー配列番号49/50を使用して得られた)PCR産物のアガロースゲル電気泳動(AGE)は、すべてのASOが実質的なエクソン4欠失を誘導し、ASO CDm4.4およびCDm4.41が、残存FL CYPD mRNAの欠如によって証明されるように、ほぼ完全なスキッピングを誘導することを示した。NTCは、擬似トランスフェクション対照を示す。100bpの分子量マーカーを最初のレーンにローディングした。
【
図5】CDm5.3および5.4配列の「マイクロウォーキング」5’および3’によって得られたASO(250nM、MOE骨格と合成され、CDm5.31、5.32、5.33、5.34および5.32;ならびにCDm5.41、5.42および5.43と呼ばれる)によるトランスフェクションの24時間後にHepG2培養物から採取された全RNAのRT-PCR分析。(プライマー配列番号49/50を使用して得られた)PCR産物のアガロースゲル電気泳動(AGE)は、すべてのASOがほぼ完全なエクソン5欠失を誘導したことを示した。NTCは、擬似トランスフェクション対照を示す。100bpの分子量マーカーを最初のレーンにローディングした。
【
図6】CYPD mRNAおよびタンパク質発現に対するASO処理の効果。A)ASO(250nM、MOE骨格を用いて合成)CDm3.45、CDm4.4、CDm4.41、CDm 5.4、CDm5.41、CDm5.42、CDm5.3、CDm5.31およびスクランブル対照ASO 953によるトランスフェクションの24時間後にHepG2培養物から採取された全RNAのRT-PCRであり、全長CYPD mRNAからエクソン3、4または5のいずれかが欠失していることを示す:a)(プライマー配列番号48および49を使用して得られた)PCR産物のアガロースゲル電気泳動(AGE)は、エクソン3の予想サイズと一致する94bp断片の欠失を示したが、ASOスクランブル対照953はエクソン3スキッピングを誘導しなかった;b)トランスフェクションの3日後に採取し、抗CYPD抗体でプローブした溶解物のウエスタンブロットの画像;c)パーセントCYPDバンド強度(総タンパク質負荷量に対する)を示すプロット。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の説明
発明の詳細な説明
アンチセンスオリゴヌクレオチド
シクロフィリンD(CYPD)は、ペプチジルプロリルイソメラーゼF(PPIF)としても公知であり、ヒトでは10番染色体上のPPIF遺伝子によってコードされる酵素タンパク質である。本出願では、CYPDおよびPPIFという用語は、シクロフィリンB遺伝子およびタンパク質を表すために交換可能に使用される。本明細書で言及されるシクロフィリンDは、同じくCYPDと呼ばれているシクロフィリン-40と混同されるべきではない。
【0027】
CYPDタンパク質の発現は、様々な炎症性疾患および癌に関連する。CYPDは、心血管疾患(心停止、虚血再灌流傷害)、脳血管疾患(脳卒中、外傷性脳損傷、脊髄挫傷および虚血再灌流損傷)、肝疾患、腎疾患、糖尿病、神経変性(アルツハイマー病、パーキンソン病、ALS、外傷性脳損傷、脊髄損傷および多発性硬化症)、癌および老化を引き起こす多くの疾患関連過程において重要な役割を果たす。
【0028】
外部刺激に対する細胞レドックス応答の調節におけるミトコンドリアの役割を考えると、CYPDは炎症誘発性である。CYPDは血清中で検出されているので、CD147(CYPDの主要な細胞受容体)受容体と(シクロフィリンAおよびシクロフィリンBと同様の様式で)相互作用して、マクロファージ、好中球および白血球において走化性活性を誘導することができる。
【0029】
CYPDタンパク質の発現に関連する疾患および病理は、行われたそれぞれの研究で明らかにされた仮定される作用機序と共に、以下の表に見出すことができる。
【表1】
【表2-1】
【表2-2】
【0030】
本発明の第1の態様によれば、PPIF遺伝子転写物上の選択された標的に結合して、PPIF遺伝子転写物またはその一部におけるプレmRNAスプライシングを改変することができるアンチセンスオリゴマーが提供される。概して、PPIF遺伝子転写物またはその一部において標的エクソン排除および/または末端イントロン保持を誘導するための単離または精製アンチセンスオリゴマーが提供される。好ましくは、PPIF遺伝子転写物またはその一部において非生産的スプライシングを誘導するための単離または精製アンチセンスオリゴマーが提供される。
【0031】
本発明では、アンチセンスオリゴマーは、アンチセンスオリゴヌクレオチド、AOS、AONおよびAONとしても知られており、これらの用語は交換可能である。
【0032】
一態様では、PPIF遺伝子転写物またはその一部のイントロンの近傍または内部の領域に相補的な標的配列を含む10~50ヌクレオチドのアンチセンスオリゴマーが提供される。本発明の別の態様では、PPIF遺伝子転写物またはその一部のエクソンの近傍または内部の領域に相補的な標的配列を含む10~50ヌクレオチドのアンチセンスオリゴマーが提供される。
【0033】
他のアンチセンスオリゴマーに基づく治療とは対照的に、本発明は、RNase Hの動員を介してRNAの分解の増加を誘導せず、RNase Hは、PPIF遺伝子のDNAに二重鎖で結合したRNAに優先的に結合してこれを分解する。また、それは、アンチセンスオリゴマーのPPIFゲノムDNAへのハイブリダイゼーション、またはアンチセンスオリゴマーのmRNAへの結合に依存せず、複製、転写、転座および翻訳などの正常な機能を妨害することによって産生されるCYPDタンパク質の量を調節する。
【0034】
むしろ、アンチセンスオリゴマーは、PPIF遺伝子転写物またはその一部におけるプレmRNAスプライシングを改変し、エクソン「スキッピング」および/または末端イントロン保持を誘導するために使用される。この戦略は、好ましくは、総タンパク質発現を減少させるか、または機能的ドメインを欠くタンパク質を生成し、タンパク質機能の減少をもたらす。
【0035】
「単離された」とは、その天然の状態で通常付随する成分を実質的にまたは本質的に含まない材料を意味する。例えば、本明細書で使用される「単離されたポリヌクレオチド」または「単離されたオリゴヌクレオチド」は、天然に存在する状態で隣接する配列から精製または除去されたポリヌクレオチド、例えばゲノム中の断片に隣接する配列から除去されたDNA断片を指し得る。細胞に関する「単離する」という用語は、供給源対象(例えば、ポリヌクレオチドリピート疾患を有する対象)からの細胞(例えば、線維芽細胞、リンパ芽球)の精製を指す。mRNAまたはタンパク質との関連において、「単離する」とは、供給源、例えば細胞からのmRNAまたはタンパク質の回収を指す。
【0036】
アンチセンスオリゴマーは、それがハイブリダイズする標的配列に「向けられる」または「標的化される」と言うことができる。特定の実施形態では、標的配列は、前処理されたmRNAの3’または5’スプライス部位、分岐点、またはスプライシングの調節に関与する他の配列を含む領域を含む。標的配列は、エクソン内もしくはイントロン内またはイントロン/エクソン接合部にまたがっていてもよい。
【0037】
特定の実施形態では、アンチセンスオリゴマーは、標的RNA(すなわち、スプライス部位選択が調節されるRNA)に対して十分な配列相補性を有し、標的RNA(例えば、プレmRNA)の領域を効果的な方法でブロックする。例示的な実施形態では、PPIFプレmRNAのそのような遮断は、そうでなければスプライシングを調節するであろうネイティブタンパク質の結合部位をマスクすることによって、および/または標的RNAの構造を変化させることによって、スプライシングを調節するのに役立つ。いくつかの実施形態では、標的RNAは標的プレmRNA(例えば、PPIF遺伝子プレmRNA)である。
【0038】
標的RNAのスプライシングを調節するために、標的RNA配列に対して十分な配列相補性を有するアンチセンスオリゴマーとは、アンチセンスオリゴマーが、そうでなければスプライシングを調節するであろうネイティブタンパク質の結合部位のマスキングを引き起こすのに十分な配列を有すること、および/または標的RNAの三次元構造を変化させることを意味する。
【0039】
選択されたアンチセンスオリゴマーは、より短くすることができ(例えば約12塩基)、またはより長くすることができ(例えば約50塩基)、配列が標的配列とのハイブリダイゼーション時にスプライス調節を行うのに十分に相補的であり、RNAと45℃またはそれを超えるTmを有するヘテロ二重鎖を必要に応じて形成する限り、少数のミスマッチを含む。
【0040】
好ましくは、アンチセンスオリゴマーは、表3に示される配列を含む群から選択される。好ましくは、アンチセンスオリゴマーは、配列番号1~44、より好ましくは配列番号35または37の配列を含む群から選択される。
【0041】
特定の実施形態では、標的配列とアンチセンスオリゴマーとの間の相補性の程度は、安定な二重鎖を形成するのに十分である。アンチセンスオリゴマーと標的RNA配列との相補性の領域は、8~11塩基程度の短さであり得るが、12~15塩基またはそれを超える塩基、例えば10~50塩基、10~40塩基、12~30塩基、12~25塩基、15~25塩基、12~20塩基または15~20塩基であり得、これらの範囲の間のすべての整数を含む。約16~17塩基のアンチセンスオリゴマーは、一般に、固有の相補配列を有するのに十分な長さである。特定の実施形態では、本明細書で論じるように、必要な結合Tmを達成するために、最小長の相補塩基が必要とされ得る。
【0042】
特定の実施形態では、少なくとも最小数の塩基、例えば10~12塩基が標的配列に相補的である、50塩基もの長さのオリゴヌクレオチドが適切であり得る。しかしながら、一般に、細胞における促進されたまたは活性な取り込みは、約30塩基未満のオリゴヌクレオチド長で最適化される。例えば、ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(PMO)アンチセンスオリゴマーの場合、結合安定性と取り込みの最適なバランスは、一般に18~25塩基の長さで起こる。約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50塩基からなるアンチセンスオリゴマー(例えば、CPP-PMO、PPMO、PMO、PMO-X、PNA、LNA、2’-OMe、2’MOE、2’Fオリゴマー、チオモルホリノおよび他のハイブリッドオリゴマー化学)が含まれる。(PMO-ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー;CPP-細胞透過性ペプチド;PPMO-ペプチドコンジュゲートホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー;PNA-ペプチド核酸;LNA-ロックド核酸;2’-OMe-2’O-メチル改変オリゴマー;2’MOE-2’-O-メトキシエチルオリゴマー、2’F-2’フルオロ)
【0043】
特定の実施形態では、アンチセンスオリゴマーは、オリゴヌクレオチドと標的配列との間に形成されるヘテロ二重鎖が細胞ヌクレアーゼの作用およびインビボで起こり得る他の分解様式に耐えるのに十分に安定である限り、標的配列に100%相補的であり得るか、または例えばバリアントに適応するためにミスマッチを含み得る。したがって、特定のオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドと標的配列との間に、約または少なくとも約70%の配列相補性、例えば70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列相補性を有し得る。
【0044】
ミスマッチは、存在する場合、典型的には、ハイブリッド二重鎖の末端領域に向かって中央よりも不安定化が少ない。許容されるミスマッチの数は、十分に理解されている二重鎖安定性の原理に従って、オリゴヌクレオチドの長さ、二重鎖中のG:C塩基対の割合、および二重鎖中のミスマッチの位置に依存する。そのようなアンチセンスオリゴマーは必ずしも標的配列に100%相補的ではないが、標的プレRNAのスプライシングが調節されるように、標的配列に安定かつ特異的に結合することが有効である。
【0045】
アンチセンスオリゴマーと標的配列との間に形成される二重鎖の安定性は、結合Tmおよび細胞の酵素的切断に対する二重鎖の感受性の関数である。相補配列RNAに関するオリゴヌクレオチドのTmは、Hames et al.,Nucleic Acid Hybridization,IRL Press,1985,pp.107-108に記載されているような、またはMiyada C.G.and Wallace R.B.,1987,Oligonucleotide Hybridization Techniques,Methods Enzymol.Vol.154 pp.94-107に記載されているような従来の方法によって測定され得る。Vol.154 pp.94-107.特定の実施形態では、アンチセンスオリゴマーは、相補配列RNAに関して、体温より高い、好ましくは約45℃または50℃より高い結合Tmを有し得る。60~80℃またはそれを超える範囲のTmも含まれる。
【0046】
バリアントの追加の例としては、配列番号1~44、より好ましくは配列番号35もしくは37、または表3に提供される配列のいずれかの全長にわたって、約または少なくとも約70%の配列同一性、例えば70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアンチセンスオリゴマーが挙げられる。
【0047】
より具体的には、選択された標的部位に結合して、PPIF遺伝子転写物またはその一部におけるプレmRNAスプライシングを改変することができるアンチセンスオリゴマーが提供される。アンチセンスオリゴマーは、好ましくは表Xに提供されるもの、または配列番号1~44、より好ましくは配列番号35または37から選択される。
【0048】
プレmRNAスプライシングの改変は、好ましくは、「スキッピング」、またはmRNAの1またはそれを超えるエクソンもしくはイントロンの除去および/または末端イントロン保持を誘導する。得られたタンパク質は、親全長CYPDタンパク質と比較した場合、内部短縮または未熟終結のいずれかに起因してより短い長さであり得るか、または末端イントロン保持に起因してより長くなり得る。これらのCYPDタンパク質は、改変されていないCYPDタンパク質のアイソフォームと呼ばれ得る。
【0049】
生成されたmRNAの残りのエクソンはインフレームであり得、元の3’末端と5’末端との間の領域に内部短縮を有することを除いて、親全長タンパク質の配列と同様の配列を有するより短いタンパク質を産生し得る。別の可能性では、エクソンスキッピングは、フレームシフトを誘導し得、タンパク質の第1の部分は親全長タンパク質と実質的に同一であるがタンパク質の第2の部分はフレームシフトに起因して異なる配列(例えば、ナンセンス配列)を有するタンパク質をもたらす。あるいは、エクソンスキッピングは、リーディングフレームの破壊および翻訳の未熟終結の存在に起因して、未熟終結タンパク質の産生を誘導し得る。さらに、アンチセンスオリゴマーは、インフレーム末端イントロン保持のために、人工的に長くされたタンパク質を産生し得る。
【0050】
エクソン2、3、4および5は、CYPDの触媒活性に関与する重要なアミノ酸をコードするので、それらの欠失は、機能しない酵素をもたらすと予想される。さらに、エクソン2または3の切除は、それぞれ6つまたは4つの未熟終止コドンを生成し、一方、エクソン4または5の切除は、それぞれ4つまたは3つの未熟終止コドンを生成する。mRNAに異常な終止コドンを導入すると、非機能的で不安定で短縮されたポリペプチド翻訳産物が生じる。この短縮されたポリペプチドは、トランスフェクションの3日後のASO処理HepG2培養物のウエスタンブロット分析によって証明されるように、迅速な分解を受けるであろう。
【0051】
1またはそれを超えるエクソンの除去はさらに、CYPDタンパク質のミスフォールディングおよび膜を通って首尾よく輸送されるタンパク質の能力の減少をもたらし得る。
【0052】
内部が短縮されたタンパク質(すなわち、1またはそれを超えるエクソンによってコードされるアミノ酸を欠くタンパク質)の存在が好ましい。CYPDタンパク質がノックアウトされる場合、身体がCYPDタンパク質の総量の減少を補償しようとするので、PPIF遺伝子転写の上昇に問題があり得る。対照的に、内部が切断されたタンパク質(好ましくは、完全なCYPDタンパク質の特徴のうちの1またはそれを超える特徴を欠く)の存在は、転写の上昇を防ぐのに十分であるはずであるが、それでもなお、機能的CYPDタンパク質の総量の減少のために治療上の利点を提供する。
【0053】
本発明のアンチセンスオリゴマー誘導性エクソンスキッピングは、CYPDタンパク質の機能を完全にまたは実質的に消失させる必要はない。好ましくは、エクソンスキッピングプロセスは、CYPDタンパク質の機能性が減少または損なわれる。
【0054】
アンチセンスオリゴマーを使用する本発明のスキッピングプロセスは、個々のエクソンをスキッピングしてもよく、または2またはそれを超えるエクソンを一度にスキッピングしてもよい。
【0055】
本発明のアンチセンスオリゴマーは、選択された標的に結合してPPIF遺伝子転写物においてエクソン排除を誘導することができる2またはそれを超えるアンチセンスオリゴマーの組み合わせであり得る。組み合わせは、2またはそれを超えるアンチセンスオリゴマーのカクテルおよび/または共に接合された2またはそれを超えるアンチセンスオリゴマーを含む構築物であり得る。
【表3-1】
【表3-2】
【0056】
PPIF遺伝子転写物におけるスプライシングを調節するための方法であって、
a)本明細書に記載のアンチセンスオリゴマーのうちの1またはそれを超えるアンチセンスオリゴマーを提供する工程およびオリゴマーが標的核酸部位に結合することを可能にする工程を含む方法も提供される。
【0057】
本発明のさらに別の態様によれば、表3または配列番号1~44、より好ましくは配列番号35もしくは37からなる群から選択される核酸配列のDNA等価物、およびそれに対して相補的な配列を含む、PPIFのためのスプライス調節標的核酸配列が提供される。
【0058】
コンセンサススプライス部位を完全にマスクするようにアンチセンスオリゴマーを設計することは、必ずしも標的エクソンのスプライシングに変化を生じさせるとは限らない。さらに、本発明者らは、アンチセンスオリゴマーを設計するとき、アンチセンスオリゴマー自体のサイズまたは長さが必ずしも主要な要因ではないことを発見した。IGTA4エクソン3などのいくつかの標的では、20塩基もの短さのアンチセンスオリゴマーが、ある場合には、同じエクソンに向けられた他のより長い(例えば25塩基)オリゴマーよりも効率的に何らかのエクソンスキッピングを誘導することができた。
【0059】
本発明者らはまた、スプライシングに向け直すためにアンチセンスオリゴマーによってブロックまたはマスクされ得る標準的なモチーフが存在しないようであることを発見した。アンチセンスオリゴマーを設計しなければならず、それらの個々の有効性を経験的に評価しなければならないことが見いだされている。
【0060】
より具体的には、アンチセンスオリゴマーは、表3に示すものから選択され得る。配列は、好ましくは、配列番号1~44、より好ましくは配列番号35または37、およびそれらの組み合わせまたはカクテルのいずれか1またはそれを超えるいずれか1またはそれを超えるものからなる群から選択される。これには、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でそのような配列にハイブリダイズすることができる配列、それに相補的な配列、PPIF遺伝子転写物におけるプレmRNAプロセシング活性を保有または調節する改変塩基、改変骨格およびその機能的短縮または伸長を含有する配列が含まれる。
【0061】
オリゴマーおよびDNA、cDNAまたはRNAは、各分子内の十分な数の対応する位置が互いに水素結合することができるヌクレオチドによって占められている場合、互いに相補的である。したがって、「特異的にハイブリダイズ可能」および「相補的」は、オリゴマーとDNA、cDNAまたはRNA標的との間で安定かつ特異的な結合が起こるように、十分な程度の相補性または対合を示すために使用される用語である。アンチセンスオリゴマーの配列は、特異的にハイブリダイズ可能なその標的配列の配列と100%相補的である必要はないことが当技術分野で理解されている。アンチセンスオリゴマーは、標的DNAまたはRNA分子への化合物の結合が標的DNAまたはRNA産物の正常な機能を妨害する場合に、および特異的結合が所望される条件下、すなわち、インビボアッセイまたは治療的処置の場合は生理学的条件下で、およびインビトロアッセイの場合はアッセイが実施される条件下で、非標的配列へのアンチセンスオリゴマーの非特異的結合を回避するのに十分な程度の相補性がある場合に特異的にハイブリダイズ可能である。
【0062】
選択的ハイブリダイゼーションは、低、中または高ストリンジェンシー条件下であり得るが、好ましくは高ストリンジェンシー下である。当業者は、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーが、塩基組成、相補鎖の長さおよびハイブリダイゼーション核酸間のヌクレオチド塩基ミスマッチの数に加えて、塩濃度、温度または有機溶媒などの条件によって影響されることを認識するであろう。ストリンジェントな温度条件は、一般に、30℃を超える、典型的には37℃を超える、好ましくは45℃を超える、好ましくは少なくとも50℃、典型的には60℃~80℃以上の温度を含む。ストリンジェントな塩条件は、通常、1000mM未満、典型的には500mM未満、好ましくは200mM未満である。しかしながら、パラメータの組み合わせは、任意の単一のパラメータの測定よりもはるかに重要である。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例は、65℃および0.1xSSC(1×SSC=0.15M NaCl、0.015Mクエン酸ナトリウムpH7.0)である。したがって、本発明のアンチセンスオリゴマーは、表3に提供される配列、または配列番号1~44、より好ましくは配列番号35または37に選択的にハイブリダイズするオリゴマーを含み得る。
【0063】
構造タンパク質中のエクソンの末端におけるコドン配置は、必ずしもコドンの末端で切断されない場合があり、その結果、mRNAのインフレーム読み取りを確実にするためにプレmRNAから1よりも多くのエクソンを欠失させる必要があり得ることが理解されるであろう。そのような状況では、複数のアンチセンスオリゴマーを本発明の方法によって選択する必要があり得、各々が、所望のエクソンおよび/またはイントロンの包含を誘導することに関与する異なる領域に向けられる。所与のイオン強度およびpHにおいて、Tmは、標的配列の50%が相補的ポリヌクレオチドにハイブリダイズする温度である。そのようなハイブリダイゼーションは、標的配列に対するアンチセンスオリゴマーの「ほぼ」または「実質的な」相補性、ならびに正確な相補性で起こり得る。
【0064】
典型的には、選択的ハイブリダイゼーションは、アンチセンスオリゴマーのヌクレオチドと、少なくとも約14ヌクレオチドのストレッチにわたって少なくとも約55%の同一性、好ましくは少なくとも約65%、より好ましくは少なくとも約75%、最も好ましくは少なくとも約90%、95%、98%または99%の同一性がある場合に起こる。記載されるように、同一性比較の長さは、より長いストレッチにわたってもよく、特定の実施形態では、多くの場合、少なくとも約9ヌクレオチド、通常は少なくとも約12ヌクレオチド、より通常は少なくとも約20、多くの場合少なくとも約21、22、23または24ヌクレオチド、少なくとも約25、26、27または28ヌクレオチド、少なくとも約29、30、31または32ヌクレオチド、少なくとも約36またはそれを超えるヌクレオチドのストレッチにわたる。
【0065】
したがって、本発明のアンチセンスオリゴマー配列は、好ましくは、本明細書中の配列表に示される配列に対して少なくとも75%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86、87、88、89または90%の同一性を有する。より好ましくは、少なくとも91、92、93、94または95%、より好ましくは少なくとも96、97、98%または99%の同一性がある。一般に、アンチセンスオリゴマーの長さが短いほど、選択的ハイブリダイゼーションを得るために必要な同一性が大きくなる。結果として、本発明のアンチセンスオリゴマーが約30個未満のヌクレオチドからなる場合、パーセンテージ同一性は、本明細書の配列表に記載のアンチセンスオリゴマーと比較して75%超、好ましくは85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95%、96、97、98%または99%超であることが好ましい。ヌクレオチド同一性比較は、GCG Wisconsin BestfitプログラムまたはGAP(Deveraux et al.,1984,Nucleic Acids Research 12,387-395)などの配列比較プログラムによって行うことができる。このようにして、本明細書に引用したものと類似または実質的に異なる長さの配列を、アラインメントへのギャップの挿入によって比較することができ、そのようなギャップは、例えば、GAPによって使用される比較アルゴリズムによって決定される。
【0066】
本発明のアンチセンスオリゴマーは、標的配列に対して減少した同一性の領域、および正確な同一性の領域を有し得る。オリゴマーがその全長について正確な同一性を有する必要はない。例えば、オリゴマーは、標的配列と同一の少なくとも4または5塩基の連続ストレッチ、好ましくは標的配列と同一の少なくとも6または7塩基の連続ストレッチ、より好ましくは標的配列と同一の少なくとも8または9塩基の連続ストレッチを有し得る。オリゴマーは、標的配列と同一の少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25または26塩基のストレッチを有し得る。オリゴマー配列の残りのストレッチは、標的配列と断続的に同一であり得る。例えば、残りの配列は、同一の塩基と、その後に続く非同一の塩基と、その後に続く同一の塩基とを有し得る。あるいは(または同様に)、オリゴマー配列は、完全な同一性よりも低いストレッチが散在するいくつかのストレッチの同一の配列(例えば、3、4、5または6塩基)を有し得る。そのような配列ミスマッチは、好ましくは、スプライススイッチング活性の喪失がないか、またはほとんどない。さらにより好ましくは、そのような配列ミスマッチは翻訳調節活性が増加している
【0067】
「調節する(modulate)」または「調節する(modulates)」という用語は、必要に応じて、定義されたおよび/または統計的に有意な量によって、1またはそれを超える定量可能なパラメータを「増加させる」または「低減させる」ことを含む。用語「増加させる(increase)」もしくは「増加させる(increasing)」、「増強する(enhance)」もしくは「増強する(enhancing)」、または「刺激する(stimulate)」もしくは「刺激する(stimulating)」、または「増大させる(augment)」および「増大させる(augmenting)」は、一般に、1つまたはアンチセンスオリゴマーまたは組成物が、アンチセンスオリゴマーなしまたは対照化合物によって引き起こされる応答と比較して、細胞または対象においてより大きな生理学的応答(すなわち、下流効果)を生成または引き起こす能力を指す。用語「低減させる(decreasing)」または「低減させる(decrease)」は、一般に、1つまたはアンチセンスオリゴマーまたは組成物が、アンチセンスオリゴマーなしまたは対照化合物によって引き起こされる応答と比較して、細胞または対象において減少した生理学的応答(すなわち、下流効果)を生成または引き起こす能力を指す。
【0068】
関連する生理学的応答または細胞応答(インビボまたはインビトロ)は、当業者には明らかであり、PPIFをコードするプレmRNAにおける特定のエクソンの排除の増加、PPIFをコードするプレmRNAの量の低減、またはそれを必要とする細胞、組織もしくは対象における機能的CYPDタンパク質の発現の低減を含み得る。「低減した(decreased)」または「減少した(reduced)」量は、典型的には統計学的に有意な量であり、アンチセンスオリゴマーが存在しない(薬剤が存在しない)場合または対照化合物を使用した場合に産生される量よりも1.1、1.2、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50倍またはそれを超える(例えば、500倍、1000倍)(その間および1より上のすべての整数および小数点、例えば1.5、1.6、1.7。1.8を含む)低減を含み得る。
【0069】
「減少させる(reduce)」または「阻害する(inhibit)」という用語は、一般に、診断分野における日常的な技術に従って測定される、本明細書に記載の疾患または病理の症候などの関連する生理学的または細胞応答を「低減させる(decrease)」、1またはそれを超えるアンチセンスオリゴマーまたは組成物の能力に関し得る。関連する生理学的または細胞応答(インビボまたはインビトロ)は、当業者には明らかであり、虚血再灌流関連損傷、酸化関連損傷、炎症関連損傷および外傷関連損傷(肝臓、脳、心臓、肺、膵臓および腎臓に影響を及ぼす)、神経変性(アルツハイマー病、パーキンソン病、運動ニューロン疾患)、糖尿病、代謝疾患(NAFLD/NASHおよび肥満)、骨格筋疾患、および炎症性疾患を含むリストから選択される疾患などの疾患または病理の症候の減少を含み得る。
【0070】
より好ましくは、肝疾患は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である。
【0071】
より好ましくは、腎疾患は、腎炎症、急性腎障害、腎線維症、糖尿病性腎症である。
【0072】
応答の「低減」は、アンチセンスオリゴマーなしまたは対照組成物によってもたらされる応答と比較して統計的に有意であり得、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%の低減(その間のすべての整数を含む)を含み得る。
【0073】
アンチセンスオリゴマーの長さは、プレmRNA分子内の意図された位置に選択的に結合することができる限り、変化し得る。そのような配列の長さは、本明細書に記載の選択手順に従って決定することができる。一般に、アンチセンスオリゴマーは、約10ヌクレオチド長から約50ヌクレオチド長までである。しかしながら、この範囲内の任意の長さのヌクレオチドがこの方法において使用され得ることが理解されるであろう。好ましくは、アンチセンスオリゴマーの長さは、10~40、10~35、15~30ヌクレオチド長または20~30ヌクレオチド長、最も好ましくは約25~30ヌクレオチド長である。例えば、オリゴマーは、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30ヌクレオチド長であり得る。
【0074】
本明細書で使用される場合、「アンチセンスオリゴマー」は、核酸塩基がワトソン・クリック塩基対合によってRNA中の標的配列にハイブリダイズして、標的配列内にオリゴヌクレオチド:RNAヘテロ二重鎖を形成することを可能にするヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体の直鎖配列を指す。用語「アンチセンスオリゴマー」、「アンチセンスオリゴヌクレオチド」、「オリゴマー」および「アンチセンス化合物」は、オリゴヌクレオチドを指すために交換可能に使用され得る。環状サブユニットは、リボースもしくは別のペントース糖、または特定の実施形態ではモルホリノ基に基づき得る(以下のモルホリノオリゴヌクレオチドの説明を参照)。当技術分野で公知の他のアンチセンス剤の中でも、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA)、および2’-O-メチルオリゴヌクレオチドも企図される。
【0075】
(i)改変骨格構造、例えば、天然に存在するオリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドに見られる標準的なホスホジエステル結合以外の骨格、および/または(ii)改変糖部分、例えば、リボース部分またはデオキシリボース部分ではなくモルホリノ部分を有するアンチセンスオリゴマーまたはオリゴヌクレオチドを含む、非天然に存在するアンチセンスオリゴマーまたは「オリゴヌクレオチド類似体」が含まれる。オリゴヌクレオチド類似体は、ワトソン・クリック塩基対合によって標準的なポリヌクレオチド塩基に水素結合することができる塩基を支持し、類似体骨格は、オリゴヌクレオチド類似体分子と標準的なポリヌクレオチド(例えば、一本鎖RNAまたは一本鎖DNA)中の塩基との間の配列特異的様式でのそのような水素結合を可能にする様式で塩基を提示する。好ましい類似体は、実質的に非荷電のリン含有骨格を有するものである。
【0076】
アンチセンスオリゴマーを生成するための1つの方法は、2’ヒドロキシリボース位置のメチル化であり、ホスホロチオエート骨格の組み込みは、RNAに表面的に類似するが、ヌクレアーゼ分解に対してはるかにより耐性の分子を生成するが、本発明の当業者は、本発明の目的で使用可能であり得る適切な骨格の他の形態を認識しているであろう。
【0077】
アンチセンスオリゴマーとの二重鎖形成中のプレmRNAおよび/またはmRNAの分解を回避するために、本方法で使用されるアンチセンスオリゴマーは、内因性RNase Hによる切断を最小化または防止するように適合され得る。この特性は、細胞内またはRNase Hを含有する粗抽出物中の非メチル化オリゴマーによるRNAの処理が、プレmRNA:アンチセンスおよび/またはmRNA:アンチセンスオリゴマー二重鎖の分解をもたらすので、非常に好ましい。そのような分解を迂回することができるかまたは誘導することができない任意の形態の改変アンチセンスオリゴマーを本方法で使用することができる。ヌクレアーゼ耐性は、部分不飽和脂肪族炭化水素鎖と、カルボン酸基、エステル基、およびアルコール基を含む1またはそれを超える極性基または荷電基とを含むように本発明のアンチセンスオリゴマーを改変することによって達成され得る。
【0078】
RNase Hを活性化しないアンチセンスオリゴマーは、公知の技術に従って作製することができる(例えば米国特許第5,149,797号を参照)。デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド配列であり得るそのようなアンチセンスオリゴマーは、オリゴマーをその1員として含有する二重鎖分子へのRNase Hの結合を立体的に妨害または防止する任意の構造改変を単に含み、その構造改変は二重鎖形成を実質的に妨害または破壊しない。二重鎖形成に関与するオリゴマーの部分は、RNase Hの結合に関与する部分とは実質的に異なるので、RNase Hを活性化しない多数のアンチセンスオリゴマーが利用可能である。例えば、そのようなアンチセンスオリゴマーは、ヌクレオチド間架橋ホスフェート残基の少なくとも1つまたは全部が改変ホスフェート、例えば、メチルホスホネート、メチルホスホロチオエート、ホスホロモルホリデート、ホスホロピペラジデート、ボラノホスフェート、アミド結合およびホスホルアミデートであるオリゴマーであり得る。例えば、ヌクレオチド間架橋リン酸残基の1つおきに、記載されるように改変され得る。別の非限定的な例では、そのようなアンチセンスオリゴマーは、ヌクレオチドの少なくとも1つまたは全部が2’低級アルキル部分(例えば、C1-C4、直鎖または分岐鎖の飽和または不飽和アルキル、例えば、メチル、エチル、エテニル、プロピル、1-プロペニル、2-プロペニルおよびイソプロピル)を含有する分子である。例えば、ヌクレオチドの1つおきに、記載されるように改変され得る。
【0079】
RNAと二重鎖化されたときに細胞RNase Hによって切断されないアンチセンスオリゴマーの例は、2’-O-メチル誘導体である。そのような2’-O-メチル-オリゴリボヌクレオチドは、細胞環境および動物組織において安定であり、RNAとのそれらの二重鎖は、それらの対応するリボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドよりも高いTm値を有する。あるいは、本発明のヌクレアーゼ耐性アンチセンスオリゴマーは、少なくとも1つの最後の3’末端ヌクレオチドがフッ素化されていてもよい。さらに代替的には、本発明のヌクレアーゼ耐性アンチセンスオリゴマーは、最後の3末端ヌクレオチド塩基の少なくとも2つの間を連結するホスホロチオエート結合を有し、好ましくは最後の4つの3’末端ヌクレオチド塩基の間を連結するホスホロチオエート結合を有する。
【0080】
スプライススイッチングの増加は、代替的なオリゴヌクレオチド化学によっても達成され得る。例えば、アンチセンスオリゴマーは、ホスホルアミデートまたはホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(PMO、PMO-X、PPMO);ペプチド核酸(PNA);ロックド核酸(LNA)ならびにアルファ-L-LNA、2’-アミノLNA、4’-メチルLNAおよび4’-O-メチルLNAを含む誘導体;エチレン架橋核酸(ENA)およびそれらの誘導体;ホスホロチオエートオリゴマー;トリシクロ-DNAオリゴマー(tcDNA);トリシクロホスホロチオエートオリゴマー;2’O-メチル改変オリゴマー(2’-OMe);2’-O-メトキシエチル(2’-MOE);2’-フルオロ(2’F)、2’-フルオロアラビノ(FANA);アンロックド核酸(UNA);ヘキシトール核酸(HNA);シクロヘキセニル核酸(CeNA);2’-アミノ(2’-NH2);2’-O-エチレンアミンまたはミクスマーもしくはギャップマーとしての前述の任意の組み合わせを含むリストから選択され得る。送達効力をさらに改善するために、上述の改変ヌクレオチドは、多くの場合、脂肪酸/脂質/コレステロール/アミノ酸/炭水化物/多糖類/ナノ粒子などと糖または核酸塩基部分にコンジュゲートされる。これらのコンジュゲートされたヌクレオチド誘導体を使用して、エクソンスキッピングアンチセンスオリゴマーを構築することもできる。ヒトPPIF遺伝子転写物のアンチセンスオリゴマー誘導性スプライス改変は、一般に、ホスホロチオエート骨格上のオリゴリボヌクレオチド、PNA、2OMeまたはMOE改変塩基のいずれかを使用している。2OMeAOはオリゴ設計に使用されるが、カチオン性リポプレックスとして送達された場合のそれらのインビトロでの効率的な取り込みのために、これらの化合物はヌクレアーゼ分解を受けやすく、インビボまたは臨床用途に理想的であるとは考えられていない。代替化学を使用して本発明のアンチセンスオリゴマーを生成する場合、本明細書中に提供した配列のウラシル(U)をチミン(T)で置き換えてもよい。
【0081】
上記のアンチセンスオリゴマーは本発明のアンチセンスオリゴマーの好ましい形態であるが、本発明は、以下に記載されるようなオリゴマー模倣物を含むがこれらに限定されない他のオリゴマーアンチセンス分子を含む。
【0082】
本発明において有用な好ましいアンチセンスオリゴマーの具体例としては、改変骨格または非天然ヌクレオシド間結合を含有するオリゴマーが挙げられる。本明細書で定義されるように、改変骨格を有するオリゴマーには、骨格中にリン原子を保持するものおよび骨格中にリン原子を有さないものが含まれる。本明細書の目的のために、当技術分野で時折言及されるように、ヌクレオシド間骨格にリン原子を有さない改変オリゴマーもアンチセンスオリゴマーと見なすことができる。
【0083】
他の好ましいオリゴマー模倣物では、ヌクレオチド単位の糖およびヌクレオシド間結合、すなわち骨格の両方が新規基で置き換えられる。塩基単位は、適切な核酸標的化合物とのハイブリダイゼーションのために維持される。そのようなオリゴマー化合物の1つである、優れたハイブリダイゼーション特性を有することが示されているオリゴマー模倣物は、ペプチド核酸(PNA)と呼ばれる。PNA化合物では、オリゴマーの糖骨格は、アミド含有骨格、特にアミノエチルグリシン骨格で置換されている。核塩基は保持され、骨格のアミド部分のアザ窒素原子に直接または間接的に結合する。
【0084】
別の好ましい化学は、任意の既知のヌクレアーゼまたはプロテアーゼによって分解されないホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(PMO)オリゴマー化合物である。これらの化合物は非荷電であり、RNA鎖に結合したときにRNase H活性を活性化しない。
【0085】
改変オリゴマーはまた、1またはそれを超える置換された糖部分を含んでもよい。オリゴマーはまた、核酸塩基(当技術分野ではしばしば単に「塩基」と呼ばれる)の改変または置換を含んでいてもよい。特定の核酸塩基は、本発明のオリゴマー化合物の結合親和性を高めるのに特に有用である。これらには、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジン、ならびに2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシルおよび5-プロピニルシトシンを含むN-2、N-6およびO-6置換プリンが含まれる。5-メチルシトシン置換は、さらにより詳細には、2’-O-メトキシエチル糖改変と組み合わせた場合、核酸二重鎖の安定性を0.6~1.2℃増加させることが示されている。
【0086】
本発明のオリゴマーの別の改変は、オリゴマーの活性、細胞分布または細胞取り込みを増強する1またはそれを超える部分またはコンジュゲートをオリゴマーに化学的に結合させることを含む。そのような部分には、脂質部分、例えばコレステロール部分、コール酸、チオエーテル、例えばヘキシル-S-トリチルチオール、チオコレステロール、脂肪族鎖、例えばドデカンジオールもしくはウンデシル残基、リン脂質、例えばジ-ヘキサデシル-rac-グリセロールもしくはトリエチルアンモニウム1,2-ジ-O-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-H-ホスホネート、ポリアミンもしくはポリエチレングリコール鎖、またはアダマンタン酢酸、パルミチル部分、ミリスチル、またはオクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ-カルボニル-オキシコレステロール部分が含まれるが、これらに限定されない。
【0087】
細胞透過性ペプチドは、細胞取り込みおよび核局在化を増強するためにホスホロジアミデートモルホリノオリゴマーに添加されている。Jearawiriyapaisarn et al.(2008),Mol.Ther.16 9,1624-1629で示したように、異なるペプチドタグが取り込み効率と標的組織特異性に影響することが示されている。
【0088】
所与の化合物のすべての位置が均一に改変される必要はなく、実際には、上述の改変のうちの1よりも多くが単一の化合物に組み込まれてもよく、またはオリゴマー内の単一のヌクレオシドに組み込まれてもよい。本発明には、キメラ化合物であるアンチセンスオリゴマーも含まれる。本発明の文脈における「キメラ」アンチセンスオリゴマーまたは「キメラ」は、アンチセンスオリゴマー、特にオリゴマーであり、各々が少なくとも1つのモノマー単位、すなわちオリゴマー化合物の場合はヌクレオチドで構成された2またはそれを超える化学的に異なる領域を含有する。これらのオリゴマーは、典型的には、ヌクレアーゼ分解に対する耐性の増加、細胞取り込みの増加、および標的核酸に対する結合親和性の増加のための追加の領域をオリゴマーまたはアンチセンスオリゴマーに付与するようにオリゴマーが改変された少なくとも1つの領域を含有する。
【0089】
アンチセンスオリゴマーおよびそのバリアントの活性は、当技術分野における日常的な技術に従ってアッセイすることができる。調査されたRNAおよびタンパク質の発現レベルは、転写された核酸またはタンパク質の発現を検出するための多種多様な周知の方法のいずれかによって評価され得る。そのような方法の非限定的な例としては、スプライシングされた形態のRNAのRT-PCRとそれに続くPCR産物のサイズ分離、核酸ハイブリダイゼーション法、例えばノーザンブロットおよび/または核酸アレイ;核酸増幅方法;タンパク質を検出するための免疫学的方法;タンパク質精製方法;およびタンパク質機能または活性アッセイの使用が挙げられる。タンパク質発現レベルは、細胞、組織または生物からのウエスタンブロットおよび/またはELISAアッセイによって、ならびに下流の機能的または生理学的効果を評価することによって評価することができる。
【0090】
2またはそれを超える異なるサイズの転写物が存在する場合、得られたタンパク質は、関連タンパク質の発現を検出するための多種多様な周知の方法のいずれかによって評価され得る。そのような方法の非限定的な例としては、タンパク質を検出するための免疫学的方法;タンパク質精製方法;質量分析;およびタンパク質機能または活性アッセイが挙げられる。
【0091】
本発明は、PPIFスプライス調節を治療レベルに導くためのPPIF遺伝子転写物のアンチセンスオリゴマー誘導性スプライススイッチング、臨床的に関連するオリゴマー化学および送達系を提供する。全長PPIF mRNA、したがってPPIF遺伝子転写からのCYPDタンパク質の量の臨床的に関連する低減は、以下によって達成される。
1)(i)イントロンエンハンサー標的モチーフ、(ii)アンチセンスオリゴマーの長さおよびオリゴマーカクテルの開発、(iii)化学の選択、および(iv)オリゴマー送達を増強するための細胞透過性ペプチド(CPP)の添加の実験評価による、線維芽細胞株を使用したインビトロでのオリゴマー精錬;および
2)1またはそれを超える欠損エクソンを有するPPIF転写物を生成するための新規アプローチの詳細な評価。
【0092】
したがって、本明細書では、PPIFプレmRNAのプロセシングを特定のアンチセンスオリゴマーで調節することができることが実証される。このようにして、CYPDタンパク質の量の機能的に有意な低減を得ることができ、それにより、虚血再灌流関連損傷、酸化関連損傷、炎症関連損傷および外傷関連損傷(肝臓、脳、心臓、肺、膵臓および腎臓に影響を及ぼす)、神経変性(アルツハイマー病、パーキンソン病、運動ニューロン疾患)、糖尿病、代謝疾患(NAFLD/NASHおよび肥満)、骨格筋疾患、および炎症性疾患を含む、PPIF遺伝子発現に関連する重篤な疾患または病理が減少する。
【0093】
本発明に従って使用されるアンチセンスオリゴマーは、固相合成の周知の技術によって都合よく作製され得る。そのような合成のための装置は、例えば、Applied Biosystems(Foster City,Calif.)を含むいくつかのベンダーによって販売されている。改変固体支持体上でオリゴマーを合成するための1つの方法は、米国特許第4,458,066号に記載されている。
【0094】
追加的または代替的に、当技術分野で公知のそのような合成のための任意の他の手段を使用することができる。ホスホロチオエートおよびアルキル化誘導体などのオリゴマーを調製するために同様の技術を使用することは周知である。そのような自動化された一実施形態では、ジエチル-ホスホラミダイトが出発材料として使用され、Beaucage,et al.,(1981)Tetrahedron Letters,22:1859-1862によって記載されているように合成され得る。
【0095】
本発明のアンチセンスオリゴマーはインビトロで合成され、生物学的起源のアンチセンス組成物、またはアンチセンスオリゴマーのインビボ合成を指示するように設計された遺伝子ベクター構築物を含まない。本発明の分子はまた、他の分子、分子構造または化合物の混合物と混合、カプセル化、コンジュゲート化または他の方法で会合されてもよい(例えばリポソーム、受容体標的分子など)。
【0096】
アンチセンスオリゴマーは、経口、局所、非経口または他の送達、特に注射送達のための製剤のために製剤化されてもよい。製剤は、送達部位または活性部位での取り込み、分布および/または吸収を補助するために製剤化され得る。
【0097】
処置方法
本発明のなおさらなる態様によれば、アンチセンスオリゴマーに基づく治療に使用するための本明細書に記載の1またはそれを超えるアンチセンスオリゴマーが提供される。好ましくは、治療は、PPIF遺伝子発現に関連する疾患または病理に対するものである。より好ましくは、PPIF遺伝子発現に関連する疾患または病理の治療は、表1のリストから選択される疾患または病理:虚血再灌流関連損傷、酸化関連損傷、炎症関連損傷および外傷関連損傷(肝臓、脳、心臓、肺、膵臓および腎臓に影響を及ぼす)、神経変性(アルツハイマー病、パーキンソン病、運動ニューロン疾患)、糖尿病、代謝疾患(NAFLD/NASHおよび肥満)、骨格筋疾患、および炎症性疾患の治療である。
【0098】
より好ましくは、肝疾患は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である。
【0099】
より好ましくは、腎疾患は、腎炎症、急性腎障害、腎線維症、および糖尿病性腎症である。
【0100】
最も好ましくは、患者におけるPPIF遺伝子発現に関連する疾患は、アルコール性肝疾患(ALD)、自己免疫性肝炎、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、C型肝炎、B型肝炎または肝細胞癌腫から選択される肝疾患である。
【0101】
より具体的には、アンチセンスオリゴマーは、表3、または配列番号1~44のいずれか1またはそれを超えるもの、より好ましくは配列番号35または37、ならびにそれらの組み合わせまたはカクテルからなる群から選択され得る。これには、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でそのような配列にハイブリダイズすることができる配列、それに相補的な配列、PPIF遺伝子転写物におけるプレmRNAプロセシング活性を保有または調節する改変塩基、改変骨格およびその機能的短縮または伸長を含有する配列が含まれる。
【0102】
本発明はまた、選択された標的に結合してPPIF遺伝子転写物においてエクソン排除を誘導することができる2またはそれを超えるアンチセンスオリゴマーの組み合わせにも及ぶ。組み合わせは、2またはそれを超えるアンチセンスオリゴマーのカクテル、アンチセンスオリゴマーに基づく治療に使用するための共に接合された2またはそれを超えるアンチセンスオリゴマーを含む構築物であり得る。
【0103】
したがって、PPIF遺伝子発現に関連する疾患または病理の影響を処置、予防または改善するための方法であって、
a)有効量の本明細書に記載の1またはそれを超えるアンチセンスオリゴマー、または、1またはそれを超えるアンチセンスオリゴマーを含む医薬組成物を、患者に投与する工程を含む方法が提供される。
【0104】
好ましくは、患者におけるPPIF遺伝子発現に関連する疾患または病理は、虚血再灌流関連損傷、酸化関連損傷、炎症関連損傷および外傷関連損傷(肝臓、脳、心臓、肺、膵臓および腎臓に影響を及ぼす)、神経変性(アルツハイマー病、パーキンソン病、運動ニューロン疾患)、糖尿病、代謝疾患(NAFLD/NASHおよび肥満)、骨格筋疾患、および炎症性疾患を含むリストから選択される。より好ましくは、疾患または病理は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、または肝細胞癌腫から選択される肝疾患である。
【0105】
したがって、本発明は、PPIF遺伝子発現に関連する疾患または病理の影響を処置、予防または改善するための方法であって、
a)有効量の本明細書に記載の1またはそれを超えるアンチセンスオリゴマー、または、1またはそれを超えるアンチセンスオリゴマーを含む医薬組成物を、患者に投与する工程を含む方法を提供する。
【0106】
好ましくは、治療は、エクソンスキッピング戦略を介して機能性CYPDタンパク質のレベルを減少させるために使用される。CYPDのレベルの減少は、好ましくは、PPIF遺伝子転写物またはその一部におけるプレmRNAスプライシングを改変することによって転写物レベルを減少させることによって達成される。
【0107】
PPIFの減少は、好ましくは、PPIF関連疾患または病理、例えば:虚血再灌流関連損傷、酸化関連損傷、炎症関連損傷および外傷関連損傷(肝臓、脳、心臓、肺、膵臓および腎臓に影響を及ぼす)、神経変性(アルツハイマー病、パーキンソン病、運動ニューロン疾患)、糖尿病、代謝疾患(NAFLD/NASHおよび肥満)、骨格筋疾患、および炎症性疾患を含むリストから選択されるPPIF遺伝子発現に関連する疾患または病理の症候の量、持続時間または重症度の減少をもたらす。
【0108】
本明細書で使用される場合、対象(例えば、ヒトなどの哺乳動物)または細胞の「処置」は、個体または細胞の自然経過を変化させる試みで使用される任意のタイプの介入である。処置には、それだけに限らないが、医薬組成物の投与が含まれ、予防的に、または病理学的事象の開始もしくは病原体との接触の後に行われ得る。また、処置される疾患または病理の進行速度を減少させること、その疾患または病理の発症を遅延させること、またはその発症の重症度を減少させることに向けられ得る「予防的」処置も含まれる。「処置」または「予防法」は、必ずしも疾患もしくは病理、またはその関連症候の完全な根絶、治癒、または予防を示すものではない。
【0109】
PPIF遺伝子発現に関連する疾患または病理を有する対象は、ヒトを含む哺乳動物であり得る。
【0110】
本発明のアンチセンスオリゴマーは、薬物治療などの代替治療と組み合わせて使用してもよい。
【0111】
したがって、本発明は、PPIF遺伝子発現に関連する疾患または病理の影響を処置、予防または改善する方法であって、本発明のアンチセンスオリゴマーを、PPIF遺伝子発現に関連する疾患または病理の影響を処置、予防または改善することに関連する別の代替治療と連続的にまたは同時に投与する方法を提供する。好ましくは、疾患または病理は、虚血再灌流関連損傷、酸化関連損傷、炎症関連損傷および外傷関連損傷(肝臓、脳、心臓、肺、膵臓および腎臓に影響を及ぼす)、神経変性(アルツハイマー病、パーキンソン病、運動ニューロン疾患)、糖尿病、代謝疾患(NAFLD/NASHおよび肥満)、骨格筋疾患、および炎症性疾患を含むリストから選択される。
【0112】
送達
本発明のアンチセンスオリゴマーはまた、PPIF遺伝子発現に関連する疾患または病理の処置の目的で利用され得る予防的または治療的として使用することもできる。したがって、1つの実施形態において、本発明は、PPIFプレmRNAにおける選択された標的に結合して、本明細書中に記載されるような効率的かつ一貫したエクソンスキッピングを、薬学的に許容され得る担体、希釈剤または賦形剤と混合された治療有効量で誘導するアンチセンスオリゴマーを提供する。
【0113】
患者におけるPPIF遺伝子発現に関連する疾患または病理の影響を処置、予防または改善するための医薬組成物、予防用組成物、または治療用組成物であって、
a)本明細書に記載の1またはそれを超えるアンチセンスオリゴマーおよび
b)1またはそれを超える薬学的に許容され得る担体および/または希釈剤
を含む、医薬組成物、予防用組成物、または治療用組成物も提供される。
【0114】
アンチセンスオリゴマーは、短い期間にわたって規則的な間隔で、例えば、2週間またはそれ以下にわたって毎日投与され得る。しかしながら、多くの場合、オリゴマーは、より長い期間にわたって断続的に投与される。投与に続いて、または同時に、抗生物質または他の治療的処置を投与してもよい。処置レジメンは、処置下の対象の免疫アッセイ、他の生化学試験および生理学的検査の結果に基づいて、示されるように調整され得る(用量、頻度、経路など)。
【0115】
投与は、処置される疾患状態の重症度および応答性に依存し得、処置の経過は数日から数ヶ月間、または治癒がもたらされるまで、または疾患状態の縮小が達成されるまで続く。あるいは、投与は、疾患の進行速度に対して滴定され得る。ベースライン進行が確立される。次いで、最初の1回の投与中止後の進行速度をモニタリングして、速度の減少があることを確認する。好ましくは、投与後に進行はない。好ましくは、進行速度が不変である場合にのみ再投与が必要である。処置の成功は、好ましくは、疾患のさらなる進行またはビジョンのいくらかの回復さえももたらさない。最適な投与スケジュールは、患者の体内の薬物蓄積の測定値から計算することができる。当業者は、最適な投薬量、投与方法論および反復率を容易に決定することができる。
【0116】
最適な投薬量は、個々のオリゴマーの相対効力に応じて異なり得、一般に、インビトロおよびインビボ動物モデルにおいて有効であることが見出されたEC50に基づいて推定することができる。
【0117】
投与の反復率は、疾患または病理の進行速度に依存する。当業者は、測定された滞留時間および体液または組織中の薬物の濃度に基づいて、投与の反復率を容易に推定することができる。処置が成功した後、疾患状態の再発を防ぐために患者に維持治療を受けさせることが望ましい場合がある。
【0118】
本発明のアンチセンスオリゴマーを使用する有効なインビボ処置レジメンは、投与期間、用量、頻度および投与経路、ならびに処置中の対象の症状(すなわち、予防的投与と、局所感染または全身感染に応答した投与)に従って変動し得る。したがって、そのようなインビボ治療は、最適な治療結果を達成するために、処置中の特定のタイプの障害に適切な試験によるモニタリング、および用量または処置レジメンの対応する調整を必要とすることが多い。
【0119】
処置は、例えば、当該分野で公知の疾患の一般的な指標によってモニタリングされ得る。本発明のインビボ投与アンチセンスオリゴマーの有効性は、アンチセンスオリゴマーの投与前、投与中および投与後に対象から採取した生物学的試料(組織、血液、尿など)から決定することができる。そのような試料のアッセイには、(1)当業者に公知の手順、例えば電気泳動ゲル移動度アッセイを使用して、標的配列および非標的配列によるヘテロ二重鎖形成の有無をモニタリングすること;(2)RT-PCR、ノーザンブロッティング、ELISAまたはウェスタンブロッティングなどの標準的な技術によって決定される、参照正常mRNAまたはタンパク質と比較して突然変異mRNAの量をモニタリングすることが含まれる。
【0120】
核内オリゴマー送達は、アンチセンスオリゴマーにとって大きな課題である。異なる細胞透過性ペプチド(CPP)は、異なる条件および細胞株においてアンチセンスオリゴマーを様々な程度に局在化し、新規CPPは、アンチセンスオリゴマーを標的細胞に送達する能力について本発明者らによって評価されている。CPPまたは「細胞取り込みを増強するペプチド部分」という用語は互換的に使用され、「輸送ペプチド」、「キャリアペプチド」、または「ペプチド形質導入ドメイン」とも呼ばれるカチオン性細胞透過性ペプチドを指す。ペプチドは、本明細書中に示されるように、所与の細胞培養集団の細胞の約または少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%以内の細胞透過を誘導する能力を有し、全身投与時にインビボで複数の組織内での高分子転座を可能にする。CPPは当技術分野で周知であり、例えば、米国特許出願第2010/0016215号に開示されており、その全体が参照により組み込まれる。
【0121】
したがって、本発明は、治療用医薬組成物を製造するために細胞透過性ペプチドと組み合わせて本発明のアンチセンスオリゴマーを提供する。
【0122】
賦形剤
本発明のアンチセンスオリゴマーは、好ましくは薬学的に許容され得る組成物で送達される。組成物は、約1nM~1000nMの本発明の所望のアンチセンスオリゴマーの各々を含み得る。好ましくは、組成物は、約1nM~500nM、10nM~500nM、50nM~750nM、10nM~500nM、1nM~100nM、1nM~50nM、1nM~40nM、1nM~30nM、1nM~20nM、最も好ましくは1nM~10nMの本発明のアンチセンスオリゴマーの各々を含み得る。
【0123】
組成物は、約1nm、2nm、3nm、4nm、5nm、6nm、7nm、8nm、9nm、10nm、20nm、50nm、75nm、100nm、150nm、200nm、250nm、300nm、350nm、400nm、450nm、500nm、550nm、600nm、650nm、700nm、750nm、800nm、850nm、900nm、950nmまたは1000nmの本発明の所望のアンチセンスオリゴマーの各々を含み得る。
【0124】
本発明はさらに、患者への送達に適した形態でのPPIF遺伝子発現関連疾患または病理などの疾患の症候の予防的または治療的処置、予防または改善を助けるように適合された1またはそれを超えるアンチセンスオリゴマーを提供する。
【0125】
「薬学的に許容され得る」という語句は、生理学的に忍容性であり、典型的には、患者に投与した場合にアレルギー反応または同様に不都合な反応、例えば胃の不調などを引き起こさない分子実体および組成物を指す。「担体」という用語は、化合物と共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。そのような医薬担体は、滅菌液体、例えば水および油、例えば石油、動物、植物または合成起源のもの、例えば落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油などであり得る。水または生理食塩水および水性デキストロースおよびグリセロール溶液が、特に注射用溶液の担体として好ましく用いられる。適切な医薬担体は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,22nd Ed.,Pharmaceutical Press,PA(2013)に記載されている。
【0126】
本発明のより具体的な形態では、治療有効量の本発明の1またはそれを超えるアンチセンスオリゴマーを薬学的に許容され得る希釈剤、防腐剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバントおよび/または担体と一緒に含む医薬組成物が提供される。そのような組成物は、様々な緩衝剤含有量(例えば、Tris-HCI、酢酸、リン酸)、pHおよびイオン強度の希釈剤、ならびに洗剤および可溶化剤(例えば、Tween(登録商標) 80、ポリソルベート80)、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、防腐剤(例えば、チメルソール、ベンジルアルコール)および増量物質(例えば、ラクトース、マンニトール)などの添加剤を含む。材料は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などのポリマー化合物の微粒子調製物中、またはリポソーム中に組み込まれ得る。また、ヒアルロン酸を用いてもよい。そのような組成物は、本発明のタンパク質および誘導体の物理的状態、安定性、インビボ放出速度およびインビボクリアランス速度に影響を及ぼし得る。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,22nd Ed.,Pharmaceutical Press,PA(2013)を参照された。組成物は、液体形態で調製されてもよく、または凍結乾燥形態などの乾燥粉末であってもよい。
【0127】
本発明に従って提供される医薬組成物は、当技術分野で公知の任意の手段によって投与され得ることが理解されるであろう。投与のための医薬組成物は、注射によって、経口的に、局所的に、または肺もしくは経鼻経路によって投与される。例えば、アンチセンスオリゴマーは、局所、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内または皮下投与経路によって送達され得る。適切な経路は、処置中の対象の症状に応じて、当業者によって決定され得る。
【0128】
局所投与のための製剤には、本開示のオリゴマーが脂質、リポソーム、脂肪酸、脂肪酸エステル、ステロイド、キレート剤および界面活性剤などの局所送達剤と混合されているものが含まれる。脂質およびリポソームには、中性(例えば、ジオレオイルホスファチジルDOPEエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルコリンDMPC、ジステアロイルホスファチジルコリン)陰性(例えば、ジミリストイルホスファチジルグリセロールDMPG)およびカチオン性(例えば、ジオレオイルテトラメチルアミノプロピルDOTAPおよびジオレオイルホスファチジルエタノールアミンDOTMA)が含まれる。局所投与または他の投与のために、本開示のオリゴマーは、リポソーム内にカプセル化または複合体化されてもよく、特にカチオン性リポソームと複合体化されてもよい。あるいは、オリゴマーは、脂質、特にカチオン性脂質に複合体化されてもよい。脂肪酸およびエステル、その薬学的に許容され得る塩、ならびにそれらの使用は、米国特許第6,287,860号および/または1999年5月20日に出願された米国特許出願番号09/315,298にさらに記載されている。
【0129】
特定の実施形態では、本開示のアンチセンスオリゴマーは、局所的または経皮的方法によって(例えば、必要に応じてリポソームにパッケージングされたそのようなアンチセンスオリゴマーを用いて、例えばエマルジョンにアンチセンスオリゴマーを組み込むことによって)送達され得る。そのような局所的または経皮的およびエマルジョン/リポソーム媒介送達方法は、当技術分野におけるアンチセンスオリゴマーの送達のために、例えば、米国特許第6,965,025号に記載されている。
【0130】
本明細書に記載のアンチセンスオリゴマーはまた、埋込み可能装置を介して送達され得る。そのような装置の設計は、当該技術分野で認識されているプロセスであり、例えば、米国特許第6,969,400号に記載されている合成インプラント設計である。
【0131】
注射、局所送達およびインプラントを含む投与用の組成物および製剤は、緩衝剤、希釈剤および他の適切な添加剤、例えば限定されないが、浸透促進剤、担体化合物および他の薬学的に許容され得る担体または賦形剤も含有し得る滅菌水溶液を含み得る。
【0132】
治療的に有用な量のアンチセンスオリゴマーの送達は、以前に公開された方法によって達成され得る。例えば、アンチセンスオリゴマーの送達は、アンチセンスオリゴマーと有効量のブロックコポリマーとの混合物を含む組成物によるものであり得る。この方法の一例は、米国特許出願US20040248833に記載されている。アンチセンスオリゴマーを核に送達する他の方法は、Mann CJ et al.(2001)Proc,Natl.Acad.Science,98(1)42-47、およびGebski et al.(2003)Human Molecular Genetics,12(15):1801-1811に記載されている。ネイキッドDNAとして、または脂質担体に複合体化された発現ベクターによって核酸分子を細胞に導入する方法は、米国特許第6,806,084号に記載されている。
【0133】
アンチセンスオリゴマーは、当技術分野で認識されている技術(例えば、トランスフェクション、エレクトロポレーション、融合、リポソーム、コロイド状ポリマー粒子ならびにウイルスベクターおよび非ウイルスベクター、ならびに当技術分野で公知の他の手段)を使用して細胞に導入することができる。選択される送達方法は、少なくとも処置される細胞および細胞の位置に依存し、当業者には明らかであろう。例えば、リポソームを向けるための表面上の特異的マーカーを有するリポソーム、標的細胞を含有する組織への直接注射、特異的受容体媒介性取り込みなどによって、局在化を達成することができる。
【0134】
アンチセンスオリゴマーをコロイド分散系で送達することが望ましい場合がある。コロイド分散系には、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、ならびに水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセル、およびリポソームまたはリポソーム製剤を含む脂質に基づく系が含まれる。これらのコロイド分散系は、治療用医薬組成物の製造に使用することができる。
【0135】
リポソームは人工膜小胞であり、インビトロおよびインビボでの送達ビヒクルとして有用である。これらの製剤は、正味のカチオン性、アニオン性または中性電荷特性を有し得、インビトロ、インビボおよびエクスビボ送達方法に有用な特性を有し得る。大きな単層小胞は、大きな高分子を含有するかなりの割合の水性緩衝液をカプセル化することができることが示されている。RNAおよびDNAを水性内部にカプセル化し、生物学的に活性な形態で細胞に送達することができる(Fraley,et al.,Trends Biochem.Sci.6:77,1981)。
【0136】
リポソームが効率的な遺伝子導入ビヒクルであるためには、以下の特徴が存在すべきである。(1)生物学的活性を損なわずに目的のアンチセンスオリゴマーの高効率でのカプセル化;(2)非標的細胞と比較して、標的細胞への優先的かつ実質的な結合;(3)標的細胞の細胞質への小胞の水性内容物の高効率での送達;(4)遺伝情報の正確かつ効果的な発現(Mannino,et al.,Biotechniques,6:682,1988)。リポソームの組成物は、通常、リン脂質、特に高相転移温度リン脂質と、通常ステロイド、特にコレステロールとの組み合わせである。他のリン脂質または他の脂質も使用され得る。リポソームの物理的特性は、pH、イオン強度、および二価カチオンの存在に依存する。カチオン性リポソームは、負に帯電したDNA分子と相互作用して安定な複合体を形成すると考えられている正に帯電したリポソームである。pH感受性または負に荷電したリポソームは、DNAと複合化するのではなく、DNAを捕捉すると考えられている。カチオン性リポソームおよび非カチオン性リポソームの両方が、DNAを細胞に送達するために使用されてきた。
【0137】
リポソームはまた、「立体的に安定化された」リポソームを含み、この用語は、本明細書で使用される場合、1またはそれを超える特殊化された脂質を含むリポソームを指し、リポソームに組み込まれた場合に、そのような特殊化された脂質を欠くリポソームと比較して循環寿命の延長をもたらす。立体的に安定化されたリポソームの例は、リポソームの小胞形成脂質部分の一部が1またはそれを超える糖脂質を含むか、またはポリエチレングリコール(PEG)部分などの1またはそれを超える親水性ポリマーで誘導体化されているものである。リポソームおよびそれらの使用は、米国特許第6,287,860号にさらに記載されている。
【0138】
当技術分野で公知のように、アンチセンスオリゴマーは、例えば、リポソーム媒介性取り込み、脂質コンジュゲート、ポリリジン媒介性取り込み、ナノ粒子媒介性取り込み、および受容体媒介性エンドサイトーシスを伴う方法、ならびに当技術分野で公知のさらなる非エンドサイトーシス送達様式、例えばマイクロインジェクション、透過処理(例えば、ストレプトリジン-O透過処理、アニオン性ペプチド透過処理)、エレクトロポレーション、および種々の非侵襲性非エンドサイトーシス送達方法(参照によりその全体が組み込まれる、Dokka and Rojanasakul,Advanced Drug Delivery Reviews 44,35-49を参照)を用いて送達され得る。
【0139】
アンチセンスオリゴマーはまた、他の薬学的に許容され得る担体または希釈剤と組み合わせて、医薬組成物を生成してもよい。適切な担体および希釈剤としては、等張食塩水、例えばリン酸緩衝食塩水が挙げられる。組成物は、局所、非経口、筋肉内、静脈内、皮下、眼内、経口、または経皮投与のために製剤化され得る。
【0140】
記載される投与経路は、当業者が任意の特定の対象および疾患または病理のための最適な投与経路および任意の投薬量を容易に決定することができるので、ガイドとしてのみ意図される。
【0141】
インビトロおよびインビボの両方で、機能的な新しい遺伝物質を細胞に導入するための複数のアプローチが試みられている(Friedmann(1989)Science,244:1275-1280)。これらのアプローチには、発現される遺伝子の改変レトロウイルスへの組み込み(Friedmann(1989)前出;Rosenberg(1991)Cancer Research 51(18)、前出:5074S-5079S);非レトロウイルスベクターへの組み込み(Rosenfeld,et al.(1992)Cell,68:143-155;Rosenfeld,et al.(1991)Science,252:431-434);またはリポソームを介した異種プロモーター-エンハンサーエレメントに連結された導入遺伝子の送達(Friedmann(1989)、前出;Brigham,et al.(1989)Am.J.Med.Sci.,298:278-281;Nabel,et al.(1990)Science,249:1285-1288;Hazinski,et al.(1991)Am.J.Resp.Cell Molec.Biol.,4:206-209;およびWang and Huang(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),84:7851-7855);リガンド特異的なカチオンに基づく輸送系へのカップリング(Wu and Wu(1988)J.Biol.Chem.,263:14621-14624)またはネイキッドDNA、発現ベクターの使用(Nabel et al.(1990)、前出);Wolff et al.(1990)Science,247:1465-1468)が含まれる。組織への導入遺伝子の直接注射は、局所的な発現のみをもたらす(Rosenfeld(1992)前出);Rosenfeld et al.(1991)前出;Brigham et al.(1989)前出;Nabel(1990)前出;and Hazinski et al.(1991)前出)。Brighamらのグループ(Am.J.Med.Sci.(1989)298:278-281 and Clinical Research(1991)39(要約))は、DNAリポソーム複合体の静脈内または気管内投与後のマウスの肺のみのインビボトランスフェクションを報告している。ヒト遺伝子治療手順の総説論文の例は以下である:Anderson,Science(1992)256:808-813;Barteau et al.(2008),Curr Gene Ther;8(5):313-23;Mueller et al.(2008).Clin Rev Allergy Immunol;35(3):164-78;Li et al.(2006)Gene Ther.,13(18):1313-9;Simoes et al.(2005)Expert Opin Drug Deliv;2(2):237-54。
【0142】
本発明のアンチセンスオリゴマーは、任意の薬学的に許容され得る塩、エステルもしくはこのようなエステルの塩、またはヒトを含む動物に投与したときに生物学的に活性な代謝産物またはその残基を(直接的または間接的に)提供することができる任意の他の化合物を包含する。したがって、一例として、本開示はまた、本発明の化合物のプロドラッグおよび薬学的に許容され得る塩、そのようなプロドラッグの薬学的に許容され得る塩、および他の生物学的等価物にも関する。
【0143】
「薬学的に許容され得る塩」という用語は、本発明の化合物の生理学的および薬学的に許容され得る塩、すなわち親化合物の所望の生物学的活性を保持し、望ましくない毒物学的効果を付与しない塩を指す。オリゴマーの場合、薬学的に許容され得る塩の好ましい例には、(a)ナトリウム、カリウム、アンモニウム、マグネシウム、カルシウムなどのカチオン、スペルミンおよびスペルミジンなどのポリアミンで形成された塩;(b)無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸などで形成された酸付加塩;(c)例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パルミチン酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ポリガラクツロン酸などの有機酸と形成される塩;および(d)塩素、臭素およびヨウ素などの元素アニオンから形成される塩が含まれるが、これらに限定されない。本発明の医薬組成物は、局所処置が望ましいか全身処置が望ましいかに応じて、および処置される領域に応じて、いくつかの方法で投与され得る。投与は、局所(眼および粘膜、ならびに直腸送達を含む)、肺(例えば、ネブライザー、気管内、鼻腔内、表皮および経皮によるものを含む、粉末またはエアロゾルの吸入または吹送によるもの)、経口または非経口経路によるものであり得る。非経口投与には、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、眼内または筋肉内の注射または注入;または頭蓋内、例えば髄腔内もしくは脳室内投与が含まれる。少なくとも1つの2’-O-メトキシエチル改変を有するオリゴマーは、投与に特に有用であると考えられる。
【0144】
単位剤形で好都合に提供され得る本発明の医薬製剤は、製薬業界で周知の従来の技術に従って調製され得る。そのような技術は、活性成分を医薬担体(複数可)または賦形剤(複数可)と会合させる工程を含む。一般に、製剤は、活性成分を液体担体もしくは細かく分割された固体担体またはその両方と均一かつ密接に会合させ、次いで、必要に応じて生成物を成形することによって調製される。
【0145】
使用
本発明の別の態様によれば、PPIF遺伝子発現に関連する疾患または病理を調節または制御するための医薬の製造における、本明細書に記載の1またはそれを超えるアンチセンスオリゴマーの使用が提供される。
【0146】
本発明はまた、PPIF遺伝子発現に関連する疾患または病理を処置、予防または改善するための医薬を製造するための、本明細書に記載の精製および単離されたアンチセンスオリゴマーの使用も提供する。
【0147】
PPIF遺伝子発現に関連する疾患または病理の影響を処置、予防または改善するための医薬を製造するための、本明細書に記載の精製および単離されたアンチセンスオリゴマーの使用も提供される。
【0148】
PPIF遺伝子発現に関連する疾患または病理を調節または制御するための、本明細書に記載の1またはそれを超えるアンチセンスオリゴマーの使用も提供される。
【0149】
本発明はまた、PPIF遺伝子発現に関連する疾患または病理を処置、予防または改善するための、本明細書に記載の精製および単離されたアンチセンスオリゴマーの使用も提供する。
【0150】
PPIF遺伝子発現に関連する疾患または病理の影響を処置、予防または改善するための、本明細書に記載の精製および単離されたアンチセンスオリゴマーの使用も提供される。
【0151】
好ましくは、PPIF遺伝子発現関連疾患または病理は、虚血再灌流関連損傷、酸化関連損傷、炎症関連損傷および外傷関連損傷(肝臓、脳、心臓、肺、膵臓および腎臓に影響を及ぼす)、神経変性(アルツハイマー病、パーキンソン病、運動ニューロン疾患)、糖尿病、代謝疾患(NAFLD/NASHおよび肥満)、骨格筋疾患、および炎症性疾患を含むリストから選択される。
【0152】
本発明は、そのなおさらなる態様によれば、本発明のアンチセンスオリゴマー配列のcDNAまたはクローン化コピー、ならびに本発明のアンチセンスオリゴマー配列を含有するベクターに及ぶ。本発明はさらに、そのような配列および/またはベクターを含有する細胞にも及ぶ。
【0153】
キット
患者におけるPPIF遺伝子発現に関連する疾患または病理の影響を処置、予防または改善するためのキットであって、適切な容器中にその使用説明書と共にパッケージングされた、本明細書に記載の少なくともアンチセンスオリゴマーおよびその組み合わせまたはカクテルを含むキットも提供される。
【0154】
好ましい実施形態では、キットは、本明細書に記載もしくは表3に示される、または配列番号1~44、より好ましくは配列番号35もしくは37に示される少なくとも1つのアンチセンスオリゴマー、または本明細書に記載のアンチセンスオリゴマーのカクテルを含有する。キットはまた、緩衝液、安定剤などの周辺試薬を含有し得る。
【0155】
したがって、患者におけるPPIF遺伝子発現に関連する疾患または病理を処置、予防または改善するためのキットであって、適切な容器中にその使用説明書と共にパッケージングされた、本明細書に記載または表3に示される少なくともアンチセンスオリゴマーおよびその組み合わせまたはカクテルを含むキットが提供される。
【0156】
患者におけるPPIF発現に伴う疾患または病理を処置、予防または改善するためのキットも提供され、このキットは、適切な容器にその使用説明書と共にパッケージングされた、配列番号1~44、より好ましくは配列番号35または37、およびそれらの組み合わせまたはカクテルのいずれか1またはそれを超えるものからなる群から選択される少なくともアンチセンスオリゴマーを含む。
【0157】
好ましくは、疾患または病理は、虚血再灌流関連損傷、酸化関連損傷、炎症関連損傷および外傷関連損傷(肝臓、脳、心臓、肺、膵臓および腎臓に影響を及ぼす)、神経変性(アルツハイマー病、パーキンソン病、運動ニューロン疾患)、糖尿病、代謝疾患(NAFLD/NASHおよび肥満)、骨格筋疾患、および炎症性疾患を含むリストから選択される。より好ましくは、疾患または病理は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、または肝細胞癌腫から選択される肝疾患である。
【0158】
キットの内容物は凍結乾燥することができ、キットはさらに、凍結乾燥成分の再構成に適した溶媒を含有することができる。キットの個々の構成要素は、別個の容器にパッケージングされ、そのような容器に関連して、医薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関によって規定された形態の通知とすることができ、その通知は、ヒトへの投与のための製造、使用または販売の機関による承認を反映する。
【0159】
キットの構成要素が1またはそれを超える液体溶液で提供される場合、液体溶液は水溶液、例えば滅菌水溶液であり得る。インビボ使用のために、発現構築物は、薬学的に許容され得る注射可能な組成物に製剤化され得る。この場合、容器手段は、それ自体が吸入器、シリンジ、ピペット、点眼器、または他のそのような装置であってもよく、そこから製剤を肺などの対象の患部に適用し、対象に注射し、またはキットの他の構成要素に適用し、それと混合することさえできる。
【0160】
一実施形態では、本発明のキットは、PPIF遺伝子転写物上の選択された標的に結合して、PPIF遺伝子転写物またはその一部におけるプレmRNAスプライシングを改変することができる治療有効量のアンチセンスオリゴマーを含む組成物を含む。代替の実施形態では、製剤は、予め測定され、予め混合され、および/または予めパッケージングされている。
【0161】
本発明のキットはまた、ユーザーコンプライアンスを容易にするように設計された説明書を含み得る。本明細書で使用される説明書は、任意のラベル、インサートなどを指し、パッケージ材料の1またはそれを超える表面に配置されてもよく、または説明書は、別個のシート、またはそれらの任意の組み合わせに提供されてもよい。例えば、一実施形態では、本発明のキットは、本発明の製剤を投与するための説明書を含む。一実施形態では、説明書は、本発明の製剤がPPIF遺伝子発現に関連する疾患または病理の処置に適していることを示す。そのような説明書はまた、投薬量についての説明書ならびに投与についての説明書を含み得る。
【0162】
アンチセンスオリゴマーおよび適切な賦形剤は、施術者または使用者が必要に応じて成分を薬学的に許容され得る組成物に製剤化できるように、個別にパッケージングすることができる。あるいは、アンチセンスオリゴマーおよび適切な賦形剤を一緒にパッケージングすることができ、それによって施術者または使用者が必要とする製剤化は最小限になる。いずれの場合でも、パッケージングは、有効成分の化学的、物理的、および審美的完全性を維持すべきである。
【0163】
一般
当業者は、本明細書に記載された本発明が具体的に記載されたもの以外の変形および改変を受けやすいことを理解するであろう。本発明は、すべてのそのような変形および改変を含む。本発明はまた、本明細書で言及または指示される工程、特徴、製剤および化合物のすべてを個別にまたは集合的に、および、ありとあらゆる組み合わせまたは任意の2つまたはそれを超える工程または特徴を含む。
【0164】
本文書に引用されている各文献、参考文献、特許出願または特許は、参照によりその全体が本明細書に明示的に組み込まれており、これは、この文書の一部として読者によって読まれ検討されるべきであることを意味する。本文書で引用された文献、参考文献、特許出願または特許が本文書で繰り返されていないことは、単に簡潔さのためである。
【0165】
本明細書中または参照により本明細書に組み込まれる任意の文書中で言及される任意の製品についての任意の製造者の説明書、説明、製品仕様書、および製品シートは、参照により本明細書に組み込まれ、本発明の実施に使用することができる。
【0166】
本発明の範囲は、本明細書に記載の特定の実施形態のいずれによっても限定されない。これらの実施形態は、例示のみを目的としている。機能的に等価な生成物、製剤および方法は、明らかに本明細書に記載の本発明の範囲内である。
【0167】
本明細書に記載の発明は、1またはそれを超える値の範囲(例えば、サイズ、変位および電界強度など)を含むことができる。値の範囲は、範囲を定義する値、および範囲への境界を定義する値に直接隣接する値と同じまたは実質的に同じ結果をもたらす範囲に隣接する値を含む、範囲内のすべての値を含むと理解される。したがって、反対のことが示されない限り、本明細書および特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、本発明によって得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。したがって、「約80%」は「約80%」を意味し、「80%」も意味する。少なくとも、各数値パラメータは、有効数字の数および通常の丸め手法に照らして解釈されるべきである。
【0168】
本明細書を通して、文脈上別段の要求がない限り、「含む(comprise)」という単語、または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などの変形は、記載された整数または整数群を含むが、任意の他の整数または整数群を除外しないことを意味すると理解される。また、本開示において、特に特許請求の範囲および/または段落において、「含む(comprises)」、「含まれる(comprised)」、「含む(comprising)」などの用語は、米国特許法においてそれに帰される意味を有することができることに留意されたい。例えば、それらは、「含む(includes)」、「含まれる(included)」、「含む(including)」などを意味することができる。「から本質的になる(consisting essentially of)」および「から本質的になる(consists essentially of)」などの用語は、米国特許法においてそれらに帰される意味を有し、例えば、それらは、明示的に列挙されていない要素を可能にするが、先行技術において見出されるか、または本発明の基本的もしくは新規な特徴に影響を及ぼす要素を除外する。
【0169】
本明細書で使用される選択された用語の他の定義は、本発明の詳細な説明の中に見出され、全体を通して適用され得る。他に定義されない限り、本明細書で使用される他のすべての科学用語および技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるのと同じ意味を有する。「活性剤」という用語は、1つの活性剤を意味してもよく、または2つまたはそれを超える活性剤を包含してもよい。
【0170】
本明細書に含まれるヌクレオチドおよびアミノ酸配列情報を含む配列同一番号(「配列番号」)は、本説明の最後に収集され、プログラムPatentln Version 3.0を使用して調製されている。各ヌクレオチドまたはアミノ酸配列は、配列表において、数字指標<210>とそれに続く配列識別子(例えば、<210>1、<210>2など)によって特定される。各ヌクレオチドまたはアミノ酸配列の長さ、配列のタイプおよび供給源生物は、それぞれ数字指標フィールド<211>、<212>および<213>で提供される情報によって示される。本明細書で言及されるヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、数字指標フィールド<400>で提供される情報とそれに続く配列識別子(例えば、<400>1、<400>2など)によって定義される。
【0171】
異なるアンチセンスオリゴマーを区別するために、アンチセンスオリゴマー命名法システムが提案され、公開された(Mann et al.,(2002)J Gen Med 4,644-654を参照されたい)。この命名法は、以下に示すように、すべてが同じ標的領域に向けられたいくつかのわずかに異なるアンチセンスオリゴマーを試験する場合に特に関連性があるようになった:
H # A/D(x:y)
最初の文字は種を示す(例えば、H:ヒト、M:マウス)。
「#」は、標的エクソン番号を示す
「A/D」は、それぞれエクソンの開始および終了におけるアクセプターまたはドナースプライス部位を示す
(x y)は、アニーリング座標を表し、「-」または「+」がそれぞれイントロン配列またはエクソン配列を示す。一例として、A(-6+18)は、標的エクソンに先行するイントロンの最後の6塩基および標的エクソンの最初の18塩基を示す。最も近いスプライス部位はアクセプターであるため、これらの座標には「A」が先行する。ドナースプライス部位におけるアニーリング座標をD(+2-18)と記載することができ、最後の2つのエクソン塩基および最初の18個のイントロン塩基は、アンチセンスオリゴマーのアニーリング部位に対応する。エクソン全体のアニーリング座標はA(+65+85)で表され、そのエクソンの開始から65番目と85番目のヌクレオチドの間の部位(両端を含む)である。
【0172】
以下の実施例は、上述の本発明を使用する方法をより完全に説明するとともに、本発明の様々な態様を実施するために企図される最良の形態を説明するのに役立つ。これらの方法は決して本発明の真の範囲を限定するものではなく、むしろ例示目的のために提示されていることを理解されたい。
【実施例】
【0173】
実施例1
アンチセンスオリゴマー(ASON)がエクソンスキッピングを媒介し、PPIFにおいてフレームシフトを誘導した
【表7】
方法
細胞培養
すべての実験は、細胞株HepG2およびHuh-7細胞(CellBank Australia)で行った。培養物をGluMaxダルベッコ改変イーグル培地(DMEM;5%CO2中、37℃で10%ウシ胎児血清[Serana]、ペニシリン[10単位/ml]およびストレプトマイシン[10ug/ml]を補充したGibco)中で増殖させた。細胞をフラスコ(T-25)内で維持し、1対6の比で3~4日ごとに継代培養した。25継代を超えて細胞を使用しなかった。
【0174】
トランスフェクション
HepG2細胞のトランスフェクションの前日に、T-25フラスコから培地を除去し、細胞単層を5%CO2中、37℃で15分間、トリプシン処理した(EDTAを含有するTrypLE(商標)Express;Invitrogen)。滅菌移送ピペットを使用して細胞を5ml滅菌チューブに移し、18ゲージ針を繰り返し激しく通過させる(10回)ことによって細胞を塊から放出させた。細胞を滅菌15ml円錐遠心管に移し、新鮮なDMEM含有血清に再懸濁した。750rpmで2分間遠心分離した後、培地を除去し、細胞ペレットを2mlの新鮮なDMEMに再懸濁した。10ulを取り出し、等体積のトリパンブルー(0.05%)と混合し、血球計を用いて細胞濃度を決定した。細胞を血清/抗生物質を含むDMEMで希釈し、24ウェルプレートに500ulでおよそ50,000細胞/ウェルで播種した。翌日(およそ24時間後)、増殖培地を取り出し、500ulのOptiMEMと交換し、ASONで処理し(1000nM、500nMまたは250nMの所望の最終濃度まで)、RNAiMax(Invitrogen)と製造業者の指示に従って混合した。簡単に記載すると、ASONを無血清OptiMEMおよびRNAiMax(各24ウェルあたりXul)と合わせ、5分間インキュベートした。ASON/RNAiMax混合物を各ウェルに滴下し、穏やかに混合し、24時間または48時間インキュベートした後、RNA(RT-PCR用)またはタンパク質抽出(ウェスタンブロッティング用)を行った。タンパク質の収集およびさらなる細胞増殖の防止のために、OptiMEM/トランスフェクション試薬を、24時間後に1% FCSおよび抗生物質を添加したDMEMと交換した。
【0175】
RNA抽出
培地を除去し、カラム法に従ってRNeasy Mini Kit(Qiagen(キット)または全RNA Favorgen血液/細胞培養カラムキットのいずれかを製造者の説明書に従って使用して全RNAを抽出した。全RNAを滅菌水中に溶出し、Nanodrop装置(Invitrogen)を使用して定量した。
【0176】
相補的DNA(cDNA)のアニーリングおよび合成
アニーリング工程のために、全RNA(250~500ng)をWFI中0.125ugのオリゴ(dT)15(Promega)と合わせ、70℃で5分間インキュベートし、氷上(0~4℃)で5分間クエンチすることによって急速に冷却した。第1の鎖合成のために、アニールしたプライマー鋳型を、5×M-MLV RTバッファー(Promega)、10mM dNTPミックス(Promega)およびMMLV逆転写酵素、RNase H Minus、Point Mutant(Promega)と穏やかに混合した。反応物を40℃で10分間、続いて50℃で60分間インキュベートした。反応物を70℃に15分間加熱することによって不活性化した。相補的DNAをPCR増幅のための鋳型として使用したか、そうでなければ-20℃で保存した。
【0177】
第2の鎖合成およびPCR増幅
20ulの反応体積では、2ulのcDNAをCYPDプライマー(表4)および滅菌水および等体積のGO-TAQクリア2×マスターミックスと合わせた。PCR増幅反応は、以下の表5に示すサイクル条件に従って進行した。
【表4】
【表5】
【0178】
ゲル電気泳動
PCR反応物(20ul)を4ulの6×ゲルローディング緩衝液と混合し、1×TAEまたはTBE緩衝系を使用して、2~3.5%アガロースゲル中、90Vで90分間電気泳動した。ゲルをSyber Safe DNAゲル染色(Thermo Fisher)で予め染色し、Chemi-Doc System(Bio-Rad Laboratories)を使用してバンドを可視化および画像化した。100bpの分子量ラダー(Axygen)をバンドサイズ推定のために含めた。
【0179】
シーケンシング解析
ASON処理後のエクソンスキッピングを確認するために、PCRバンドをアガロースゲルから切り出し、精製し、DNAシーケンシングに供した(Australian Genome Resource Facility:AGRFによって、またはState Agricultural Biotechnology Centreによって)。
【0180】
タンパク質ゲル電気泳動
タンパク質を、Mini-Protean Tetra Cellアセンブリ(Bio-Rad Laboratories)を使用してドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE;TGX無染色系、Bio-Rad、USA)によって分析した。使用したゲルは、4%~15%勾配のMini-Protean TGXプレキャストゲル(Bio-Rad Laboratories)であった。総量5ulのタンパク質および滅菌DD水を4.75μlのLaemmli試料緩衝液(Bio-Rad Laboratories)および0.25ulのジチオスレイトール(DTT)と合わせ、70℃で10分間加熱した。分子量標準として、Precision Plus事前染色タンパク質ラダー(Bio-Rad)を使用した。試料(10μl)およびマーカーを予めすすいだゲルにローディングし、200ボルトで45分間泳動した。タンパク質バンドを、適切なフィルタを取り付けたChemDoc System(Bio-Rad)を使用して可視化した。
【0181】
ウエスタン転写および免疫ブロッティング
Turbo-Blot Turbo転写緩衝液(BioRad Laboratories)20%エタノールを使用するTurbo-Blot Turbo(BioRad-Laboratories)転写装置を使用して、SDS-PAGEゲルから0.45um低蛍光PVDF膜にタンパク質を転写した。膜をTris緩衝生理食塩水(TBS:Tris 20mM;NaCl 200mM;pH7.6)で洗浄し、TBS-T(0.1% Tween-20+ニワトリ卵白アルブミンを含むTBS[Sigma;1mg/ml])で1時間ブロックした。膜を、TBS-Tで希釈された一次抗体(マウスモノクローナル抗シクロフィリンF、1:5000)中で穏やかに揺らしながら4℃で一晩インキュベーションした。膜をTBS-Tで3回すすぎ、TBS-T含有二次抗体(HRP酵素1:25,000で標識したヤギ抗マウスIgG)中、室温で2時間インキュベートした。膜をTBS-Tで3回すすぎ、次いでTBS中でさらに5分間3回洗浄した。タンパク質バンドを、ECL試薬Clarity、BioRad)を製造者の説明書に従って使用して検出した。化学発光および蛍光イメージング設定を使用して、ChemiDoc-MPシステム(Bio-Rad)を使用してブロットを画像化した。Image Lab(BioRad)イメージングソフトウェアを使用してCYPD発現を定量し、無染色ゲル画像を使用してタンパク質負荷について正規化した。
【表6】
【0182】
結果
アンチセンスRNA配列は、全長プレmRNA CYPB転写物と相互作用し、エクソン3またはエクソン4のいずれかが成熟mRNA転写物から欠失されるように正常なスプライシングを妨害するように設計された。PPIF参照配列(NM_005729)に基づいて:エクソン2欠失は6つ未熟下流終止コドンを誘導すると予測され;エクソン3欠失は、4つの未熟下流終止コドンを誘導すると予測され;エクソン4欠失は4つの未熟下流終止コドンを誘導すると予測され、エクソン5欠失は3つの未熟下流終止コドンを誘導すると予測された。
【0183】
エクソン2欠失のために、エクソン3の5’プライムアクセプター部位、エクソン3の3’ドナー部位および/またはエクソン2内の部位のいずれかにまたがるように6つのASO(配列番号1~6)を設計した。少なくとも1回繰り返されたこれらの実験では、Hep G2細胞に500nMの各アンチセンスをトランスフェクトし、2’-O-メチル化学で合成した。トランスフェクションの24時間後に全RNAを収集し、RT-PCR分析(プライマーセット配列46/47で増幅)を行ってエクソンスキッピングの程度を評価した(
図1a)。配列CDm2.1、2.2、2.3および2.5は、同等レベルのエクソン2スキッピングを誘導し、エクソン2の欠失は、31bpの予想サイズと一致するPCR産物をもたらした(
図1b)。
【0184】
エクソン3欠失のために、エクソン3の5’プライムアクセプター部位、エクソン3の3’ドナー部位および/またはエクソン3内の部位のいずれかにまたがるように7つのASO(配列番号7~13)を設計した。少なくとも1回繰り返されたこれらの実験では、Hep G2細胞に500nMの各アンチセンスをトランスフェクトし、2’-O-メチル化学で合成した。トランスフェクションの24時間後に全RNAを収集し、RT-PCR分析(プライマーセット配列46/47で増幅)を行ってエクソンスキッピングの程度を評価した(
図1a)。配列CDm3.3およびCDm3.4は、同等レベルのエクソン4スキッピングを誘導し、エクソン4の欠失は、89bpの予想サイズと一致するPCR産物をもたらした(
図1c)。
【0185】
エクソン4欠失のために、エクソン3の5’プライムアクセプター部位、エクソン4の3’ドナー部位および/またはエクソン4内の部位のいずれかにまたがるように6つのASO(配列番号19~25)を設計した。少なくとも1回繰り返されたこれらの実験では、Hep G2細胞に500nMの各アンチセンスをトランスフェクトし、2’-O-メチル化学で合成した。トランスフェクションの24時間後に全RNAを収集し、RT-PCR分析(プライマーセット配列46/47で増幅)を行ってエクソンスキッピングの程度を評価した(
図2a)。配列CDm4.3およびCDm4.4は、同等レベルのエクソン4スキッピングを誘導し、エクソン4の欠失は、97bpの予想サイズと一致するPCR産物をもたらした(
図2b)。
【0186】
エクソン5欠失のために、エクソン3の5’プライムアクセプター部位、エクソン5の3’ドナー部位および/またはエクソン5内の部位のいずれかにまたがるように5つのASO(配列番号32~36)を設計した。少なくとも1回繰り返されたこれらの実験では、Hep G2細胞に500nMの各アンチセンスをトランスフェクトし、2’-O-メチル化学で合成した。トランスフェクションの24時間後に全RNAを収集し、RT-PCR分析(プライマーセット配列46/47で増幅)を行ってエクソンスキッピングの程度を評価した(
図2b)。配列CDm5.3およびCDm5.4は、同等レベルのエクソン5スキッピングを誘導し、エクソン5の欠失は、76bpの予想サイズと一致するPCR産物をもたらした(
図2c)。
【0187】
エクソン3のスキッピングの程度を改善するために、CDm3.4によって標的化されるプレmRNA領域を横切るマイクロウォーキングによって、重複する5つのASO(配列番号14~18)を設計した。この戦略は、オリゴヌクレオチド全長を25塩基に制限しながら、CDm3.4によって標的化される領域の5’および3’を3bp刻みでシフトさせることを伴った。少なくとも1回繰り返されたこれらの実験では、Hep G2細胞を、MOE化学で合成されたアンチセンスでトランスフェクトした(250nM)。トランスフェクションの24時間後に全RNAを収集し、RT-PCR分析(プライマーセット配列49/50を使用)を用いてエクソンスキッピングを評価した(
図3)。非トランスフェクト培養物(NTCと表記)を野生型mRNA対照として使用した。ImageLab(Biorad)を使用して、エクソン3のスキッピングのパーセントを定量化した。最良のASO配列はCDm3.45(配列番号18)であり、ほぼ完全なスキッピングを誘導したが、次の最良のASO配列は3.44であり、およそ80%のスキッピングを誘導した。
【0188】
エクソン4のスキッピングの程度を改善するために、CDm4.4によって標的化されるプレmRNA領域を横切るマイクロウォーキングによって、重複する6つのASO(配列番号26~31)を設計した。この戦略は、オリゴヌクレオチド全長を25塩基に制限しながら、CDm4.4によって標的化される領域の5’および3’を3bp刻みでシフトさせることを伴った。少なくとも1回繰り返されたこれらの実験では、Hep G2細胞を、MOE化学で合成されたアンチセンスでトランスフェクトした(250nM)。トランスフェクションの24時間後に全RNAを収集し、RT-PCR分析(プライマーセット配列49/50を使用)を用いてエクソンスキッピングを評価した(
図4)。非トランスフェクト培養物(NTCと表記)を野生型mRNA対照として使用した。ImageLab(Biorad)を使用して、エクソン4のスキッピングのパーセントを定量化した。最良のASO配列はCDm4.4(配列番号22)およびCDm4.41(配列番号18)であり、これはほぼ完全なスキッピングを誘導し、明らかな残存FL-CYPDはなかった。対照的に、ASO CDm4.42~CDm4.46は、90%を超えると推定されるスキッピングを誘導した。
【0189】
エクソン5のスキッピングの程度を改善するために、CDm5.3(配列番号37~41の5)およびCDm5.4(:配列番号42~44の3)によって標的化されるプレmRNA領域を横切るマイクロウォーキングによって、2セットの重複ASO配列を設計した。この戦略は、オリゴヌクレオチド全長を25塩基に制限しながら、CDm5.3およびCDm5.4によって標的化される領域の5’および3’を3bp刻みでシフトさせることを伴った。少なくとも1回繰り返されたこれらの実験では、Hep G2細胞を、MOE化学で合成されたアンチセンスでトランスフェクトした(250nM)。トランスフェクションの24時間後に全RNAを収集し、RT-PCR分析(プライマーセット配列49/50を使用)を用いてエクソンスキッピングを評価した(
図5)。非トランスフェクト培養物(NTCと表記)を野生型mRNA対照として使用した。ImageLab(Biorad)を使用して、エクソン5のスキッピングのパーセントを定量化した。ASO配列CDm5.4、CDm5.41、CDm5.42、CDm5.43はすべて完全なスキッピングを誘導し、明らかな残存FL-CYPDはなかった。対照的に、ASO CDm5.3 CDm5.31、CDm5.32CD、CDm5.33、CDm5.34は、90%を超えると推定されるスキッピングを誘導したが、CDm5.35は、60%を超えるスキッピングを誘導した。
【0190】
最良のASO(CDm3.45、CDm4.4、CDm4.41、CDm5.3、CDm5.31 CDm5.4、CDm5.41、CDm5.42)およびスクランブル対照953(配列番号45)を、リポフェクタミンRNAiMaxを使用して250nMでHepG2培養物にトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後に全RNAを収集し、RT-PCR分析(プライマーセット配列49/50を使用)を行ってエクソンスキッピングの程度を決定した(
図4a)。各ASOによるエクソンスキッピングの定量は以下の通りであった:CDm3.45はエクソン3の45.3%のスキッピングを誘導し;CDm4.4はエクソン4の77.3%のスキッピングを誘導し;CDm4.41はエクソン4の92.1%のスキッピングを誘導し;CDm5.4はエクソン5の98.2%のスキッピングを誘導し;CDm5.41はエクソン5の95.2%のスキッピングを誘導し;CDm5.42はエクソン5の93.6%のスキッピングを誘導し:CDm5.3はエクソン5の94.5%のスキッピングを誘導し;CDm5.31はエクソン5の93.0%のスキッピングを誘導した。二重トランスフェクションプレート(24時間でトランスフェクション混合物を1% FCS/抗生物質を含むDMEMで置き換えた)をさらに48時間インキュベートし、ウエスタンブロット分析のために細胞溶解物を回収した。ウエスタンブロット分析により、CDm3.45を除くすべてのASO処理培養物において、CYPDタンパク質がトランスフェクションの72時間後に減少したことが確認された(
図4bおよび
図4c)。シクロフィリンDタンパク質バンド密度を、NTC(擬似トランスフェクト)対照培養物に対して正規化した(
図4c)。ASO CDm5.4およびCDm5.31での処理は、CYPD発現をそれぞれ38%および54.8%に減少させた。他のASOでの処置は、括弧内に示されているようにCYPD発現を低減させた:CDm4.4(71.2%);CDm4.41(59.1%);CDm5.41(58.9%);CDm5.42(70.9%)および;CDm5.3(67.6%)。処理対照として機能したスクランブルASO(953)は、NTCと比較してCYPDの10%の減少を誘導したが、CYPDタンパク質のこの減少の原因は調査されなかったが、細胞タンパク質アウトプットに対する非特異的効果の可能性があった。
【配列表】
【国際調査報告】