(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-11
(54)【発明の名称】セラミックグリーンシート用バインダーとしての特定の気孔率を有するポリビニルアセタールの使用
(51)【国際特許分類】
C04B 35/634 20060101AFI20241101BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20241101BHJP
C08L 29/14 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
C04B35/634 200
C08K3/013
C08L29/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529681
(86)(22)【出願日】2022-11-17
(85)【翻訳文提出日】2024-05-17
(86)【国際出願番号】 EP2022082305
(87)【国際公開番号】W WO2023089046
(87)【国際公開日】2023-05-25
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512192277
【氏名又は名称】クラレイ ユーロップ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Kuraray Europe GmbH
【住所又は居所原語表記】Philipp-Reis-Strasse 4, D-65795 Hattersheim am Main, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】グレタ ベッカー
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BE061
4J002DE076
4J002DE096
4J002DE106
4J002DE136
4J002FD096
4J002GQ00
4J002GQ01
4J002GQ03
4J002GQ05
(57)【要約】
本発明は、セラミックグリーンシート用バインダーとしての特定の気孔率を有するポリビニルアセタール粉末の使用を対象とする。ポリビニルアセタールは、本明細書に従って水銀ポロシメトリーで測定した場合に1.5~5.0ml/gの全細孔容積を有し、かつ10~100μmの値を中心とする直径の細孔の主集団を有する。1つ以上の無機顔料と、1つ以上の有機溶媒と、1つ以上のバインダーと、1つ以上の可塑剤と、1つ以上の分散剤とを含む懸濁液組成物であって、バインダーがポリビニルアセタールである懸濁液組成物が製造される。セラミックグリーンシートまたはセラミック成形体の製造方法であって、ポリビニルアセタールを圧縮する工程と、製造された圧縮体を含む懸濁液組成物を製造する工程とを含む方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックグリーンシートまたはセラミック成形体製造用のバインダーとしてのポリビニルアセタールの使用であって、ポリビニルアセタールが、本明細書に従って水銀ポロシメトリーで測定した場合に1.5~5.0ml/gの全細孔容積を有し、かつ10~100μmの値を中心とする直径の細孔の主集団を有する、使用。
【請求項2】
前記本明細書に従って水銀ポロシメトリーで測定された全細孔容積が、2.0~3.5ml/gである、請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記本明細書に従って水銀ポロシメトリーで測定された全細孔容積が、2.5~3.0ml/gである、請求項1または2記載の使用。
【請求項4】
前記直径が、15~50μmの値を中心とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の使用。
【請求項5】
前記ポリビニルアセタールが、本明細書に従って水銀ポロシメトリーで測定した場合に2.0μm以下の平均細孔直径を有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の使用。
【請求項6】
前記ポリビニルアセタールが、本明細書に従って水銀ポロシメトリーで測定した場合に1.1~1.5μmの平均細孔直径を有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の使用。
【請求項7】
前記ポリビニルアセタールが、ポリビニルブチラールであるか、またはn-ブチルアルデヒドおよびアセトアルデヒドに由来する混合ポリビニルアセタールである、請求項1から6までのいずれか1項記載の使用。
【請求項8】
1つ以上の無機顔料と、1つ以上の有機溶媒と、1つ以上のバインダーと、1つ以上の可塑剤と、1つ以上の分散剤とを含む懸濁液組成物であって、前記バインダーが、請求項1から7までのいずれか1項記載のポリビニルアセタールである、懸濁液組成物。
【請求項9】
セラミックグリーンシートまたはセラミック成形体の製造方法であって、
a.請求項1から7までのいずれか1項記載のポリビニルアセタールを圧縮する工程と、
b.工程a.で製造された圧縮体を含む懸濁液組成物を製造する工程と
を含む、方法。
【請求項10】
前記圧縮体が、本明細書に従って測定した場合に0.55g/ml以上の嵩密度を有する、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記圧縮体が、0.25ml/g~0.75ml/gの全細孔容積を有する、請求項9または10記載の方法。
【請求項12】
請求項1から7までのいずれか1項記載のポリビニルアセタールを用いた、圧縮体の製造方法。
【請求項13】
前記圧縮体が、本明細書に従って測定した場合に0.55g/ml以上の嵩密度を有する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記圧縮体が、0.25ml/g~0.75ml/gの全細孔容積を有する、請求項12または13記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックグリーンシート用バインダーとしての特定の気孔率を有するポリビニルアセタールの使用、および該ポリビニルアセタールを用いた圧縮体の製造方法を対象とする。
【0002】
エレクトロニクス産業用のセラミックコンデンサのようなセラミック材料は、一般に、いわゆるグリーンシート、すなわちセラミック材料を含むフィルム状の薄い成形体を焼結することによって製造される。こうしたグリーンシートの製造のために、有機溶媒中の金属酸化物、可塑剤、分散剤およびバインダーの懸濁液が製造される。この懸濁液はその後、適切な工程(すなわち、ドクターブレード工程)によりキャリアフィルム上に所望の厚さで施与され、溶媒が除去される。このようにして得られるグリーンシートは、クラックがなく、平滑な表面を示し、かつなおもある程度の弾性を有していなければならない。
【0003】
セラミックグリーンシートの製造には、ポリビニルブチラール(PVB)などのポリビニルアセタールがバインダーとして頻繁に使用されている。このため、独国特許出願公開第4003198号明細書には、残留ポリ酢酸ビニル含量が0~2質量%のPVBをバインダーとして使用したセラミックグリーンフィルム用キャスティングスリップの製造が記載されている。
【0004】
近年、積層セラミックコンデンサ(MLCC)は、エレクトロニクス産業においてますます重要性を増している。MLCCは、複数の個々のコンデンサを並列に積層し、端子面を介して接触させたものである。電子部品の小型化が進んでいるため、粉末粒子のサイズはわずか10nmになることがある。そのため、そこで使用されるセラミックシートの精度向上が製造上求められている。
【0005】
懸濁液の製造に使用されるPVB樹脂は、総じて微粉末の形態で供給される。しかし、このような粉末は、健康上および/または安全上の懸念ゆえに、すべての産業環境で使用できるわけではない。したがって、これらの欠点を避けるために、PVB粉末は、特定の用途での使用前に圧縮される。
【0006】
さらに、PVB樹脂は、電子産業の厳しい要求を満たすために、非常に高い純度を示さなければならない。しかし、このようなポリマー製品を経済的に実現可能な方法で高純度まで洗浄することは容易ではない。
【0007】
したがって、本発明の1つの目的は、洗浄性が改善され、同時に圧縮性が改善されたセラミックグリーンシート用バインダーを提供することであった。さらなる目的は、溶解率の改善、接着性の改善、取扱性の改善、破断伸度の改善、分散効果の改善、環境、健康および安全性への影響の改善、ならびに/またはセラミックグリーンシートの製造および使用におけるより優れた経済的プロファイルをもたらすバインダーを提供することであった。
【0008】
本発明者らは、驚くべきことに、高い全細孔容積を有すると同時に平均細孔直径が小さい細孔を有するPVBを使用することにより、これらの目的および他の目的が達成されることを見出した。高い全細孔容積は、洗浄液が粉末に浸透し得るため、良好な洗浄性をもたらすと考えられる。同時に、主に比較的小さな細孔径の細孔が全細孔容積に寄与し、これは、明らかに圧縮性の改善をもたらし、すなわち、これを圧縮することで、全細孔容積が比較的低く、かつ嵩密度またはタップ密度で表される密度が比較的高い圧縮体を得ることができる。
【0009】
したがって、本発明の第1の態様は、セラミックグリーンシートまたはセラミック成形体製造用のバインダーとしてのポリビニルアセタールの使用であって、ポリビニルアセタールが、後述の条件に従って水銀ポロシメトリーで測定した場合に1.5~5.0ml/gの全細孔容積を有し、かつ10~100μmの値を中心とする直径の細孔の主集団を有する、使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明による2つのポリビニルアセタール粉末サンプル、前記ポリビニルアセタール粉末から製造した2つの圧縮体、および電子産業で現在使用されている先行技術の市販の圧縮体のポロシメトリー測定の結果を示す。
【0011】
「~の値を中心とする直径の細孔の主集団」という用語は、後述のポロシメトリー測定値を用いて細孔直径に対する累積細孔容積をプロットした曲線が、所与の値の間に変曲点を有することを意味するものとする。
【0012】
好ましくは、直径は、15~50μm、より好ましくは20~40μmの値を中心とする。また好ましくは、直径は、30~80μm、より好ましくは40~60μmの値を中心とする。
【0013】
好ましくは、全細孔容積は、1.75~4.5ml/g、より好ましくは2.0~4.0ml/g、さらにより好ましくは2.0~3.0ml/g、最も好ましくは2.5~3.0ml/gである。
【0014】
好ましくは、ポリビニルアセタールは、後述の水銀ポロシメトリーで測定した場合に2.0μm以下の平均細孔直径を有する。より好ましくは、ポリビニルアセタールは、1.0~1.5μmの平均細孔直径を有する。
【0015】
好ましくは、ポリビニルアセタールは、DIN ISO 16014 1:2019-05に準拠してゲル浸透クロマトグラフィーで測定した場合に20,000g/mol以上の分子量を有する。
【0016】
分子量は、DIN ISO 16014 1:2019-05に準拠してゲル浸透クロマトグラフィーで測定される。好ましくは、分子量は、40,000g/mol以上であり、より好ましくは50,000g/mol以上である。また好ましくは、分子量は、200,000g/mol以下であり、より好ましくは175,000g/mol以下であり、最も好ましくは150,000g/mol以下であり、特に100,000g/mol以下である。
【0017】
好ましくは、ポリビニルアセタールのアセタール基は、個々に1~7個の炭素原子を有し、すなわち、アセタール基は、1~7個の炭素原子を有するアルデヒドとの縮合反応に由来する。より好ましくは、アセタール基は、メタナール(ホルムアルデヒド)、アセトアルデヒド、n-プロパナール(プロピオンアルデヒド)、n-ブタナール(ブチルアルデヒド)、イソブタナール(2-メチル-1-プロパナール、イソブチルアルデヒド)、n-ペンタナール(バレルアルデヒド)、イソペンタナール(3-メチル-1-ブタナール)、sec-ペンタナール(2-メチル-1-ブタナール)、tert-ペンタナール(2,2,ジメチル-1-プロパナール)、n-ヘキサナール(カプロンアルデヒド)、イソヘキサナール(2-メチル-1-ペンタナール、3-メチル-1-ペンタナール、4-メチル-1-ペンタナール)、2,2-ジメチル-1-ブタナール、2,3-ジメチル-1-ブタナール、3,3-ジメチル-1-ブタナール、2-エチル-1-ブタナール、n-ヘプタナール、2-メチル-1-ヘキサナール、3-メチル-1-ヘキサナール、4-メチル-1-ヘキサナール、5-メチル-1-ヘキサナール、2,2-ジメチル-1-ペンタナール、3,3-ジメチル-1-ペンタナール、4,4-ジメチル-1-ペンタナール、2,3-ジメチル-1-ペンタナール、2,4-ジメチル-1-ペンタナール、3,4-ジメチル-1-ペンタナール、2-エチル-1-ペンタナール、2-エチル-2-メチル-1-ブタナール、2-エチル-3-メチル-1-ブタナール、3-エチル-2-メチル-1-ブタナール、シクロヘキシルアルデヒドおよびベンズアルデヒドからなるリストに由来する。より好ましくは、アセタール基は、イソブチルアルデヒド、アセトアルデヒドおよび/またはn-ブチルアルデヒドとの縮合反応に由来する。最も好ましくは、ポリビニルアセタールは、ポリビニルブチラールであるか、またはn-ブチルアルデヒドとアセトアルデヒドとの縮合に由来する混合ポリビニルアセタールである。
【0018】
本発明の本実施形態で使用されるポリビニルアセタールの製造方法は特に限定されないが、酸性条件下でポリビニルアルコール溶液にアルデヒドを添加することによりアセタール化反応に供するという方法により製造することができる。
【0019】
好ましくは、本発明で使用されるポリビニルアセタールのアセタール化度は、50mol%以上90mol%未満であり、より好ましくはアセタール化度の下限は、60mol%超、さらにより好ましくは70mol%超、最も好ましくは80mol%超である。さらに、アセタール化度の上限は、より好ましくは90mol%以下であり、最も好ましくは85mol%以下である。
【0020】
好ましくは、本発明のポリビニルアセタール中のビニルアルコール単位のパーセンテージは、樹脂を構成する全モノマー単位に対して10~25mol%、より好ましくは15~20mol%である。
【0021】
ポリビニルアセタールのビニルアルコール含量および酢酸ビニル含量は、DIN ISO 3681(アセテート含量)およびDIN ISO 53240(PVA含量)に準拠して求めた。
【0022】
第2の態様において、本発明は、1つ以上の無機顔料と、1つ以上の有機溶媒と、1つ以上のバインダーと、1つ以上の可塑剤と、1つ以上の分散剤とを含む懸濁液組成物であって、バインダーが、上述のポリビニルアセタールである、懸濁液組成物に関する。
【0023】
好ましくは、アセタール基は、2~7個の炭素原子を有し、上述と同じアルデヒドに由来する。最も好ましくは、最も好ましくは、アセタール基は、n-ブチルアルデヒドに由来するか、またはn-ブチルアルデヒドとアセトアルデヒドとの混合物に由来する。
【0024】
無機顔料は、常誘電体原料または強誘電体原料の細かく粉砕された粒状物から選択することができ、二酸化チタン(ルチル)であって、好ましくは亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、マグネシウム、タンタル、コバルトおよび/またはストロンチウムの添加物によって修飾されたもの、ならびにMgNb2O6、ZnNb2O6、MgTa2O6、ZnTa2O6、(ZnMg)TiO3、(ZrSn)TiO4、BaTiO3およびBa2Ti9O20から選択される化合物が挙げられる。無機顔料の平均粒径は、好ましくは約0.01~1μmである。
【0025】
有機溶媒は、トルエン、キシレンなどの芳香族化合物、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコールなどのアルコール化合物、さらに好ましくはそれらの混合物から選択することができる。最も好ましくは、有機溶媒は、エタノールとトルエンの混合物である。
【0026】
適切な分散剤としては、魚油、リン酸エステル、側鎖にポリオキシアルキレン基を有する官能性ポリマー、例えばNOF America Cooperationから市販されているMALIALIM(商標)シリーズが挙げられる。
【0027】
本発明によるバインダーに加えて、懸濁液は、特に、セルロース樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂のような他のバインダー;ポリエチレングリコールまたはフタル酸エステルのような可塑剤および/または消泡剤から選択される他の成分を含むことができる。
【0028】
懸濁液組成物の製造方法は特に限定されない。種々の分散方法を用いることができ、例えば、ビーズミル、ボールミル、アトライター、ペイントシェーカー、サンドミルなどの媒体型ミルを用いる方法、粉末状セラミック、分散媒、分散剤、バインダー、可塑剤などを混練する方法;および3本ロールミルを用いる方法を用いることができる。3本ロールミルを用いる方法としては、粉末状無機顔料を分散剤、バインダー、可塑剤などとともに有機溶媒(混合物)に分散させる方法が挙げられる。この混合物を、互いに独立して転動し、その間に小さな間隙を伴って互いに隣接する第1のロールと第2のロールとの間の小さな間隙に通して圧縮および混練し、その後、この混合物を、第2のロールと、転動し、第1のロールと第2のロールとの間の間隙よりも小さな間隙を伴って第2のロールに隣接する第3のロールとの間に通して、さらに圧縮および混練する。
【0029】
好ましくは、粉末状セラミック、分散剤および溶媒(混合物)は、分散剤が粉末状セラミックに吸着されるように予め混合され、分散される。第2の工程では、このようにして形成された混合物にバインダーを添加し、その後、再び混合および分散を行う。
【0030】
これらの工程で製造されるコーティング膜の乾燥膜厚は、0.25~25μmであってもよく、典型的には1~15μmである。
【0031】
本発明者らは、上述のポリビニルアセタールから圧縮体を有利に製造できることを見出した。PVB粉末は、高い全細孔容積と同時に小さい平均細孔直径を示す。高い全細孔容積は、通常は脱塩水の形態の洗浄液がより多くPVB粉末に浸透し得るため、粉末のより良好な洗浄性をもたらし、これにより、PVB粉末の、ひいては得られる圧縮体の、優れた不純物プロファイルが得られる。一方で、PVB粉末の細孔が小さいと、明らかに圧縮レベルがより高い圧縮体が得られる。
【0032】
したがって、本発明の第3の態様は、前述のポリビニルアセタールを用いた圧縮体の製造方法に関する。
【0033】
好ましくは、圧縮体は、後述の方法に従って水銀ポロシメトリーで測定された0.01~0.5μmの平均細孔直径を有する。平均細孔直径の下限は、より好ましくは0.05、0.1、または0.15μmである。平均細孔直径の上限は、より好ましくは0.4μmであり、最も好ましくは0.3μmである。特に、平均細孔直径は、0.1~0.3μmである。
【0034】
好ましくは、圧縮体は、後述の方法に従って測定した場合に0.50g/ml以上、より好ましくは0.55g/ml以上、最も好ましくは0.60g/ml以上、特に0.65g/ml以上の嵩密度を有する。
【0035】
好ましくは、圧縮体は、0.5~5mm、より好ましくは1~3mmのメジアン粒子径を有する。粒子径は、規定量の粒子を用い、光学検査によって、粒子が球形の場合には直径を、粒子が非球形の場合には最長横軸を測定して求められる。
【0036】
本明細書で使用される「圧縮体」という用語は、溶媒を使用したり粉末を溶融させたりすることなく、乾燥粉末をプレス加工する圧縮工程を経たポリビニルアセタールの圧縮粉末を示すものとする。このような圧縮工程は、溶液やスラリーを使用する湿式造粒や、ポリビニルアセタール材料の溶融物を使用する押出工程とは対照的に、乾式造粒とも呼ばれる。
【0037】
圧縮体は、従来技術で知られている工程、すなわち、液体溶液を使用せずに圧縮体を形成する工程によって製造することができる。このような工程は、圧縮される成分が水分や熱に敏感な場合に優れている。圧縮は、粉末を緻密化し、圧縮体を形成するために用いられる。この工程は総じて、スラッギングツールまたはローラーコンパクターマシンを用いて行われる。スラッギング法では、通常は「スラグ」が得られ、これは典型的には直径25mm、厚さ10~15mmである。スラグを砕くのに理想的であるのは、ハンマーミルである。圧縮された材料を分級ふるい分けによってさらに処理して、所望の粒子径を有する圧縮体を得ることができる。
【0038】
好ましくは、圧縮体の製造工程ではローラーコンパクターが使用される。この装置では、粉末を2つの逆転ローラーに通して加圧し、圧縮シートを形成する。このシートは脆く、容易に砕けてフレークとなる。このフレークを砕いて圧縮体にするには慎重な処理が必要であり、その後、この圧縮体を希望のサイズに粉砕することができる。ローラー圧縮装置は、適切な緻密化を達成するために、幅広い圧力およびロールタイプを提供する。
【0039】
本発明の第4の態様は、セラミックグリーンシートまたはセラミック成形体の製造方法であって、
a.上述の方法によりポリビニルアセタールを圧縮する工程と、
b.工程a.で製造された圧縮体を含む懸濁液組成物を製造する工程と
を含む、方法に関する。
【実施例】
【0040】
[ポロシメトリー]
ISO 15901-1:2016に準拠して、ポロシメーター装置AutoPore V 9600(Micromeritics社から入手可能)を用いた水銀圧入ポロシメトリーにより、全細孔容積、メジアン細孔直径、平均細孔直径および嵩密度を測定した。水銀の接触角は130°であり、表面張力は485dynes/cmであった。平衡時間は10秒、初期充填圧力は0.24psiaを使用した。測定された圧力範囲は、0.24~33.063psiaであり、これは752~0.00581μmの細孔直径に相当する。全細孔容積は、この範囲で測定された累積圧入容積であると定義される。(容積に関連する)メジアン細孔直径とは、細孔容積の50%がこの値より小さいかまたは大きい細孔直径であると定義される。平均細孔直径は、細孔が完全な円柱状であると仮定し、「4×細孔容積/細孔面積」と定義される。嵩密度とは、測定セルの充填圧力が0.24psiaのときの密度であると定義される。この圧力では、水銀は封入されるだけで、サンプルを透過しない。
【0041】
[ポリビニルアセタールの合成]
ポリビニルブチラール(PVB 1)
粘度19mPas(20℃でDIN 53015に準拠して測定、水溶液中8w/w%)および加水分解度98mol%のポリビニルアルコール100質量部を、90℃に加熱しながら水1000質量部に溶解させた。40℃の温度で、65質量部のn-ブチルアルデヒドを加え、撹拌しながら5℃の温度で、250質量部の20%塩酸を加えた。この混合物を40℃まで加熱した。ポリビニルブチラール(PVB)が沈殿した後、この混合物をこの温度で48時間撹拌した。室温まで冷却した後、PVBを分離し、水で中性になるまで洗浄し、乾燥させた。ポリビニルアルコール含量12.7質量%(19.1mol%)、ポリ酢酸ビニル含量2.3質量%(1.8mol%)のPVBが得られた。
【0042】
混合ポリビニルアセタール(PVB 2)
粘度50mPas(20℃でDIN 53015に準拠して測定、水溶液中8w/w%)および加水分解度99mol%のポリビニルアルコール100質量部を、90℃に加熱しながら水1000質量部に溶解させた。40℃の温度で、200質量部の20%塩酸を加え、12℃の温度で、撹拌しながら、最初に22質量部のアセトアルデヒドを加え、次に30質量部のn-ブチルアルデヒドを加えた。この混合物を40℃まで加熱した。ポリビニルブチラール(PVB)が沈殿した後、この混合物をこの温度で48時間撹拌した。室温まで冷却した後、PVBを分離し、水で中性になるまで洗浄し、乾燥させた。ポリビニルアルコール含量12.5質量%(18.8mol%)、ポリ酢酸ビニル含量1.7質量%(1.3mol%)のPVBが得られた。
【0043】
圧縮工程 - PVB圧縮体1および2
ポリビニルブチラール粉末を、温度45℃で線圧15kN/cmのローラーコンパクターを用いて、2つの逆転水冷ローラーの間に引き込んだ。その後、得られた0.5~1.0cm厚のシートを砕き、次いで造粒機を用いてさらにサイズを小さくし、最後に分級ふるいによってメジアン粒子径1~3mmの圧縮体を得た。
【0044】
【国際調査報告】