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特表2024-541722乾癬により誘発されたかゆみの処置における使用のためのアンチセンスオリゴヌクレオチド及び前記オリゴヌクレオチドを含むリン脂質小胞
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  • 特表-乾癬により誘発されたかゆみの処置における使用のためのアンチセンスオリゴヌクレオチド及び前記オリゴヌクレオチドを含むリン脂質小胞 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-11
(54)【発明の名称】乾癬により誘発されたかゆみの処置における使用のためのアンチセンスオリゴヌクレオチド及び前記オリゴヌクレオチドを含むリン脂質小胞
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7105 20060101AFI20241101BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20241101BHJP
   C12N 15/88 20060101ALI20241101BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241101BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20241101BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20241101BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20241101BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20241101BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20241101BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
A61K31/7105
C12N15/113 Z ZNA
C12N15/88 Z
A61K48/00
A61P17/06
A61K47/24
A61K9/127
A61K9/107
A61K9/10
A61K9/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529768
(86)(22)【出願日】2022-11-23
(85)【翻訳文提出日】2024-07-19
(86)【国際出願番号】 IB2022061349
(87)【国際公開番号】W WO2023095030
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】102021000029894
(32)【優先日】2021-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523453444
【氏名又は名称】フローネクスト エス.アール.エル.
【氏名又は名称原語表記】FLONEXT S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ナッシーニ, ロミナ
(72)【発明者】
【氏名】デ ローグ, フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】ジェッペッティ, ピエランジェロ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA06
4C076AA16
4C076AA17
4C076AA19
4C076BB31
4C076CC18
4C076CC29
4C076DD63
4C084AA13
4C084MA21
4C084MA22
4C084MA24
4C084MA28
4C084MA63
4C084NA14
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZB081
4C084ZB082
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA21
4C086MA22
4C086MA24
4C086MA28
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZB08
(57)【要約】
本発明は、ヒトmiR-203b-3pマイクロRNAの配列と相補的な、乾癬により誘発されたかゆみの処置におけるオリゴヌクレオチドの使用に関する。本発明はまた、前記オリゴヌクレオチドを含むリン脂質小胞、並びに乾癬により誘発されたかゆみの予防及び/又は処置のための前記リン脂質小胞の使用に関する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトmiR-203b-3pマイクロRNA(配列番号3)と相補的な、乾癬により誘発されたかゆみの処置における使用のためのアンチセンスオリゴヌクレオチドであって、配列(配列番号4)、又は前記配列(配列番号4)に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%に等しい同一性百分率を有する配列を有する、使用のためのアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項2】
8ヌクレオチドの中央配列5’-UUCUUAAC-3’を含む、請求項1に記載の使用のためのアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
前記中央配列UUCUUAACの1番目のウラシル(U)が、本発明に記載の使用のためのオリゴヌクレオチドにおける9番目のヌクレオチドの塩基に対応し、前記中央配列の最後のシトシン(C)が、本発明に記載の使用のためのオリゴヌクレオチドにおける16番目のヌクレオチドの塩基に対応する、請求項2に記載の使用のためのアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
前記配列(配列番号4)内の前記中央配列5’-UUCUUAAC-3’が、ヒトmiR-203b-3pマイクロRNAの前記配列(配列番号3)の中央部分5’-GUUAAGAA-3’と結合する、請求項2又は3に記載の使用のためのアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項5】
前記ヒトmiR-203b-3pマイクロRNA(配列番号3)のアンタゴミルの形態である、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のためのアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
前記配列(配列番号4)に対して少なくとも70%に等しい同一性百分率を有する前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、以下の配列:
5’-ACA ACU UGU UCUUAA CAU GUC CA-3’(配列番号5)
5’-UCA CGU ACU UCUUAA CAU UUA CA-3’(配列番号6)
5’-AUG ACU GGU UCUUAA CAG UAG UA-3’(配列番号7)
5’-AGC UCA GGU UCUUAA CAG UUC AA-3’(配列番号8)
5’-UUA AGU GGU UCUUAA CAG CUA CA-3’(配列番号9)
5’-UGC UGA GGU UCUUAA CAG ACC AA-3’(配列番号10)
5’-UCA AAC GGU UCUUAA CAG UUC AA-3’(配列番号11)
5’-UCC CGU GGU UCUUAA CAG CUC GA-3’(配列番号12)
5’-UGC AGC GGU UCUUAA CAG UUA AA-3’(配列番号13)
を含む群から選択される、請求項1に記載の使用のためのアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項7】
前記乾癬が、局面型乾癬、膿疱性乾癬、滴状乾癬、逆乾癬及び乾癬性紅皮症から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のためのアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項8】
前記乾癬が局面型乾癬である、請求項7に記載の使用のためのアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項において定義されたアンチセンスオリゴヌクレオチドを少なくとも含む、リン脂質小胞。
【請求項10】

配列(配列番号5)、(配列番号6)、(配列番号7)、(配列番号8)、(配列番号9)、(配列番号10)、(配列番号11)、(配列番号12)及び(配列番号13)を有するオリゴヌクレオチドの群から選択されるオリゴヌクレオチドを少なくとも含む、請求項9に記載のリン脂質小胞。
【請求項11】
配列(配列番号4)を有するオリゴヌクレオチド、並びに配列(配列番号5)、(配列番号6)、(配列番号7)、(配列番号8)、(配列番号9)、(配列番号10)、(配列番号11)、(配列番号12)及び(配列番号13)を有するオリゴヌクレオチドの群から選択される少なくともさらなるオリゴヌクレオチドを含む、請求項9に記載のリン脂質小胞。
【請求項12】
リポソーム、フィトソーム、ミセル又はそれらの混合物から選択される、請求項9~11のいずれか一項に記載のリン脂質小胞。
【請求項13】
リポソームの形態の、請求項12に記載のリン脂質小胞。
【請求項14】
局面型乾癬、膿疱性乾癬、滴状乾癬、逆乾癬及び乾癬性紅皮症によって誘発されたかゆみの処置における使用のための、請求項9~13のいずれか一項に記載のリン脂質小胞。
【請求項15】
前記乾癬が局面型乾癬である、請求項14に記載のリン脂質小胞。
【請求項16】
請求項9~15のいずれか一項に記載のリン脂質小胞と1種又は複数種の薬学的に好適な又は薬学的に許容される賦形剤とを少なくとも含む、医薬組成物。
【請求項17】
クリーム剤、散剤、又は軟膏剤の形態の、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
外用使用のためのクリーム剤の形態の、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
薬用貼付剤による適用のための、請求項16~18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
局面型乾癬、膿疱性乾癬、滴状乾癬、逆乾癬及び乾癬性紅皮症によって誘発されたかゆみの処置における使用のための、請求項16~19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記乾癬が局面型乾癬である、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
乾癬により誘発されたかゆみの処置の方法であって、治療有効量の請求項16~19のいずれか一項に記載の医薬組成物の、乾癬に罹患している対象の少なくとも1つの乾癬病変への外用適用を含む、処置の方法。
【請求項23】
乾癬の処置のための少なくとも1種の薬物の投与をさらに含む、請求項22に記載の処置の方法。
【請求項24】
乾癬の処置のための前記少なくとも1種の薬物が、コルチコステロイド、ビタミンD3のアナログ外用薬、カルシニューリン阻害薬及び/又はタザロテンから選択される、請求項23に記載の処置の方法。
【請求項25】
乾癬の処置のための前記少なくとも1種の薬物が、請求項16~19において定義された医薬組成物を用いる外用処置の前、後、又はそれと同時に投与される、請求項23又は24に記載の処置の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトマイクロRNA miR-203b-3pの配列と相補的な、乾癬により誘発されたかゆみ(psoriasis-induced itching)の処置におけるオリゴヌクレオチドの使用に関する。本発明はまた、前記オリゴヌクレオチドを含むリン脂質小胞、及び乾癬により誘発されたかゆみの処置のための前記リン脂質小胞の使用に言及する。
【背景技術】
【0002】
乾癬は、表皮角化細胞の過剰増殖の結果として生じる慢性炎症性皮膚疾患である。
【0003】
乾癬の最も頻度の高い形態は局面型乾癬(乾癬の形態の約80%)であり、局面型乾癬は、もっぱらではないが最も多くの場合において手足の伸筋表面に位置する白色の鱗屑で覆われた鮮紅色の局面の形成を特徴とする。局面型乾癬に加えて、他の形態の乾癬として、膿疱性乾癬、滴状乾癬、逆乾癬、及び乾癬性紅皮症が存在する。
【0004】
膿疱性乾癬は、膿性内容物を有する黄色がかった膿疱の発生によって他の全ての形態の乾癬から区別される。膿疱性乾癬はまた、発熱、倦怠感、知覚異常、及び灼熱感(burning sensation)を伴う。
【0005】
滴状乾癬は、白色の鱗屑で覆われていないピンク~赤色の発疹を特徴とする。
【0006】
逆乾癬に関して、これは、最も重度の場合では疼痛を引き起こし且つ出血するおそれもある比較的深い裂溝又は亀裂の形成によって複雑化し得る、大きなピンク色の紅斑性病変を引き起こす。
【0007】
幸いにして比較的稀であるが、乾癬の最も重度の形態は、乾癬性紅皮症である。乾癬性紅皮症は、身体表面の90%超に発症する紅斑の存在を特徴とし、乾癬性紅皮症はまた、悪寒、冷覚、かゆみ、及び燃えるような感覚(burning)、全身倦怠感、心拍数の増加、無力症、発熱、リンパ節の腫脹、並びに筋肉及び関節痛などの他の重要な症状を伴う。この形態の乾癬は、特に患者の日常生活に支障を来し、多くの場合、入院を必要とする。
【0008】
今日において利用可能な治療法の選択肢は、疾患の悪化を予防することを目的としており、乾癬の特徴的な症状であるかゆみを処置することを目的としてはいない。
【0009】
特に、提供される治療上の解決策は、局所処置、紫外(UV)光光線療法、免疫抑制薬、及び全身処置からなる。
【0010】
具体的には、局所処置は、コルチコステロイド、ビタミンD3のアナログ外用薬、カルシニューリン阻害薬及び/又はタザロテンの乾癬病変への適用に基づく。
【0011】
しかしながら、コルチコステロイドを用いる処置は、コルチコステロイドによって引き起こされる一般的な副作用(刺激、燃えるような感覚、乾燥皮膚、色素脱失)がないわけではない。したがって、コルチコステロイドは、短い期間においてのみ使用することができる。
【0012】
カルシニューリンのアナログを用いる処置は、コルチコステロイドの副作用を回避することを可能にするが、今日でさえ、カルシニューリンのアナログがリンパ腫及び皮膚癌のリスクを高める可能性があるかどうかは明らかではない。
【0013】
コルチコステロイドよりも効果が低いレチノイドであるタザロテンは、アジュバントとして使用することができ、単独療法では使用することができない。
【0014】
乾癬の処置のために利用可能な別の選択肢は、びまん性乾癬を有する患者において通例使用される光線療法(又はUV光療法)である。上記処置は、外用療法よりも制御され、何か月にもわたって寛解をもたらし得るが、上記処置の繰返しは、UVによって誘発される皮膚癌及び黒色腫の発生率を高めるおそれがある。
【0015】
免疫抑制薬(例えばヒドロキシ尿素、6-チオグアニン)は、非常に重度の副作用を引き起こし、狭い安全域を有し、したがって重度の耐性乾癬の症例にのみ用いられる。
【0016】
最後に、全身処置は、レチノイド(例えばアシトレチン)又は免疫調節剤[腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-アルファ)阻害薬、例えばエタネルセプト、アダリムマブ、インフリキシマブ及びゴリムマブ]を用いて行うことができる。しかしながら、潜在的な催奇形性及びレチノイドの体内での長期残留のために、アシトレチン療法を受ける女性は妊娠中であるべきではなく、処置の終了から少なくとも2年間は妊娠することができない。
【0017】
さらに、上で言及した免疫調節剤に関して、それらの安全性プロファイルは依然として研究中である。実際、TNF-アルファ分子はいくつかの臓器及び組織において発現するため、TNF-アルファ分子の阻害は重度の副作用を引き起こし得る。
【0018】
したがって、生物学的観点から、阻害されても重い副作用を引き起こさないと考えられる乾癬特異的バイオマーカーを同定することは有用であり得る。
【0019】
一方では副作用のない薬物がないこと、他方では乾癬を有する患者を慢性的に苦しめる症状、とりわけかゆみの存在が知られていることが、乾癬を処置するための新たな解決策の研究を促している。
【0020】
したがって、乾癬の徴候、特にかゆみを、副作用を引き起こすことなく予防及び/又は処置することができる製剤を提供する明確な必要性が存在する。
【発明の概要】
【0021】
本出願人は、乾癬、特に乾癬により誘発された掻痒(psoriasis-induced itch)の処置のための、現在の療法の欠点及び副作用を伴わない新たな療法を提供するという課題に対処した。
【0022】
本出願人は、驚くべきことに、miR-203b-3pマイクロRNA配列と相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドの投与に基づく新たな療法が、特に乾癬により誘発されたかゆみを処置することにおいて有用であることを見出した。
【0023】
本発明において、「アンチセンスオリゴヌクレオチド」という用語は、決定された配列と相補的な一本鎖DNA又はRNA低分子を指す。アンチセンスオリゴヌクレオチドが結合する配列は通例、特異的なヌクレオチド配列に結合することによってもはやタンパク質に翻訳されることができなくなるmRNA分子である。
【0024】
特に、本発明に記載の使用のためのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、本出願人によって乾癬におけるかゆみの原因であると同定されたマイクロRNAであるmiR-203b-3pと結合することができる。
【0025】
本発明に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドとmiR-203b-3pマイクロRNAとの結合は、miR-203b-3pマイクロRNAの活性、したがって、かゆみを抑制する。
【0026】
ヒトにおける乾癬のかゆみの処置に有効な療法を提供するために、本出願人は乾癬のマウスモデルに対して研究を行った。
【0027】
マウスに存在するmiR-203b-3pマイクロRNAは、ヒトのmiR-203b-3pマイクロRNAと1つの塩基のみが異なる配列(5番目のウラシルの代わりにシトシン(実施例2に示される(配列番号1))を有する。本出願人は、イミキモド(5%)のマウス皮膚への適用が、ヒト乾癬において観察される病変と類似した病変を誘発し、特に、PASI(乾癬面積重症度指数)(図1B及び実施例1)においてまとめて定量される応答である、表皮の肥厚、皮膚発赤、及び局面の存在をもたらしたことを見出した。マウスにおけるイミキモド(5%)を用いた処置は、かゆみも誘発した。
【0028】
本出願人は、このかゆみが、マウスmiR-203b-3pマイクロRNA配列と相補的なオリゴヌクレオチド(実施例2に示される(配列番号2))の皮下投与によって抑制されたことを見出した。
【0029】
実験の節に示すように、前記マウスmiR-203b-3pマイクロRNAの配列と完全に相補的な配列(配列番号2)を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドによってマウスmiR-203b-3pを阻害することで、マウスにおけるイミキモド(5%)を用いた処置によって誘発された乾癬病変におけるかゆみの軽減を得ることが可能である。
【0030】
この結果は、ヒトにおける乾癬によって誘発されたかゆみの処置のための新たな療法への道を開くものである。特に、本出願人は、配列(配列番号4)、又は前記(配列番号4)に対して少なくとも70%に等しい、好ましくは少なくとも75%、より一層好ましくは80%に等しい同一性百分率を有する配列を有する、ヒトに存在するmiR-203b-3pマイクロRNA配列(配列番号3)と相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドが、乾癬により誘発されたかゆみを緩和できるか、又は、病変の重症度に応じて、完全に処置できることを見出した。したがって、本発明の第1の態様は、ヒトmiR-203b-3pマイクロRNA(配列番号3)と相補的な、乾癬により誘発されたかゆみの処置における使用のためのアンチセンスオリゴヌクレオチドであって、配列(配列番号4)、又は前記配列(配列番号4)に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より一層好ましくは少なくとも80%に等しい同一性百分率を有する配列を有する、使用のためのアンチセンスオリゴヌクレオチドに関する。
【0031】
好ましい実施形態において、本発明に記載のオリゴヌクレオチドは、前記配列(配列番号4)に対して少なくとも75%の配列同一性を有する。
【0032】
特に好ましい実施形態において、本発明に記載のオリゴヌクレオチドは、前記配列(配列番号4)に対して少なくとも80%の配列同一性を有する。
【0033】
本発明に記載の使用のためのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ヒトmiR-203b-3pの中央部分5’-GUUAAGAA-3’を認識及び阻害する中央の8ヌクレオチド配列5’-UUCUUAAC-3’を含む。実際、前記中央の8ヌクレオチド配列5’-UUCUUAAC-3’は、ヒトmiR-203b-3pとの対合及びヒトmiR-203b-3pの阻害に特に関連する。
【0034】
本特許出願に記載されているアンチセンスオリゴヌクレオチドは、有利には、全ての種類の乾癬によって誘発されたかゆみの処置、好ましくは局面型乾癬によって誘発されたかゆみの処置のために使用することができる。
【0035】
本発明の第2の態様は、ヒトmiR-203b-3pマイクロRNA(配列番号3)と相補的な少なくとも1つのアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むリン脂質小胞であって、前記オリゴヌクレオチドが、配列(配列番号4)、又は前記配列(配列番号4)に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%に等しい同一性百分率を有する配列を有する、リン脂質小胞に関する。
【0036】
本発明の第3の態様は、本発明の第2の態様に記載の少なくとも1つのリン脂質小胞を含む、医薬組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1A】乾癬のマウスモデルに対して実施した実験を示す図である。
図1B】乾癬のマウスモデルに対して実施した実験を示す図である。
図2】乾癬のマウスモデルに対して実施した実験を示す図である。
図3】マウスmiR-203b-3pマイクロRNAの中央部分と完全に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドを投与した乾癬モデルマウス及び対照マウスに対する実験において得られたデータを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明は、乾癬により誘発されたかゆみの処置のための、ヒトmiR-203b-3pマイクロRNA配列と相補的なオリゴヌクレオチドの使用に関する。実際、miR-203b-3pが、乾癬により誘発されたかゆみの主な原因であることは観察されている。
【0039】
マイクロRNAは、およそ20~22ヌクレオチド長であり、転写レベル及び転写後レベルにおける遺伝子発現の調節に主に作用する、一本鎖非コードRNAの内因性低分子である。特に、マイクロRNAは、メッセンジャーRNA(mRNA)分子に存在する相補配列とオーバーラップすることによって遺伝子発現抑制を誘導する。そのような結合は、マイクロRNAのmRNA標的のタンパク質への翻訳又はマイクロRNA標的の前記mRNA標的の分解の阻止をもたらす。
【0040】
マイクロRNAは、mRNA分子を切断するか、ポリ(A)尾部を短縮することによってmRNA分子を不安定化させるか、又は標的mRNAの翻訳効率を低下させることによって作用し得る。本出願人は、驚くべきことに、miR-203b-3pマイクロRNAの新たな機能を発見した。実際、マイクロRNAが、遺伝子発現の転写後調節の機能を有するだけでなく、細胞の寿命に積極的に関与するリガンドとしても作用することが、近年観察された。
【0041】
本出願人は、有利には、乾癬のマウスモデルに対して実験を行って、マウスmiR-203b-3pマイクロRNAに関するアンチセンスオリゴヌクレオチドの、乾癬により誘発されたかゆみの処置における有効性を評価した(実験の節を参照されたい)。特に、マウスmiR-203b-3pマイクロRNAの配列(配列番号1)から、マウスmiR-203b-3pと相補的な配列(配列番号2)が得られ、この配列(配列番号2)の、乾癬のマウスモデルにおいてかゆみを軽減することにおける有効性が観察された。
【0042】
マウスmiR-203b-3pマイクロRNAの配列(配列番号1)及びマウスmiR-203b-3pマイクロRNAと相補的なオリゴヌクレオチドの配列(配列番号2)は以下に表される:
マウスmiR-203b-3pマイクロRNAの配列(配列番号1)
5’-UUG AAC UGU CAAGAA CCA CUG G-3’
マウスmiR-203b-3pマイクロRNAと相補的なオリゴヌクレオチドの配列(配列番号2)
5’-CCA GUG GUU CUUGAC AGU UCA A-3’
【0043】
本出願人は、驚くべきことに、ヒトmiR-203b-3pマイクロRNA配列と相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドの投与に基づく新たな療法が、特に乾癬に罹患している対象における乾癬により誘発されたかゆみを処置することにおいて有用であることを見出した。
【0044】
したがって、本発明の第1の態様は、ヒトmiR-203b-3pマイクロRNA(配列番号3)と相補的な、乾癬により誘発されたかゆみの処置における使用のためのアンチセンスオリゴヌクレオチドであって、配列(配列番号4)、又は前記配列(配列番号4)に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%に等しい同一性百分率を有する配列を有する、使用のためのアンチセンスオリゴヌクレオチドに関する。
【0045】
本発明において、「同一性」という用語は、配列同一性、すなわち、2つのアラインメントされたオリゴヌクレオチド配列の間の(ギャップもまた考慮に入れた)正確な一致の程度を意味する。
【0046】
本発明に記載の使用のためのアンチセンスオリゴヌクレオチド配列は、以下に示され、識別子(配列番号4)と共に表される。
ヒトmiR-203b-3pマイクロRNAと相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドの配列(配列番号4)
【化1】
【0047】
本発明に記載の使用のためのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ヒトmiR-203b-3pマイクロRNAと対合し、その作用を阻害することができる。
【0048】
特に、ヒトmiR-203b-3pマイクロRNAは、以下に示され、本発明において識別子(配列番号3)と共に表される配列を有するマイクロRNAである。
ヒトmiR-203b-3pマイクロRNAの配列 - (配列番号3)
【化2】
【0049】
miR-203b-3pは、皮膚レベルにおいて高度に発現するマイクロRNAであり、皮膚形態形成の機構に関連する結果である。実際、胚性段階において、このマイクロRNAは、表皮の基底上層の細胞に高度に発現し、表皮細胞の増殖及び分化機構の調節に関連することが示されている(Sandら、MicroRNAs and the skin:tiny players in the body’s largest organ、J Dermatol Sci、2009 53:169~75;)。
【0050】
本発明に記載の使用のためのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、好ましくは23ヌクレオチドによって構成され、ヒトmiR-203b-3pマイクロRNAの配列と完全に相補的な配列(配列番号4)、又は前記配列(配列番号4)に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%に等しい同一性百分率を有する配列を有する。
【0051】
(配列番号4)は、ヒトmiR-203b-3pマイクロRNA配列(配列番号3)と完全に相補的な配列である。
【0052】
特に好ましい実施形態において、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列5’-GUUAAGAA-3’を有するヒトmiR-203b-3pマイクロRNAの中央部分と相補的な、中央の8ヌクレオチド配列5’-UUCUUAAC-3’を含む。特に、中央配列UUCUUAACの1番目のウラシル(U)は、9番目のヌクレオチドの塩基に対応し、中央配列の最後のシトシン(C)は、本発明に記載の使用のためのオリゴヌクレオチドにおける16番目のヌクレオチドの塩基に対応する。したがって、中央配列は、23ヌクレオチドの本発明に記載の使用のためのオリゴヌクレオチドにおける、9番目のヌクレオチドから16番目のヌクレオチドにわたっている。
【0053】
(配列番号4)は、CORE配列阻害薬と命名された8ヌクレオチドの中央配列5’-UUCUUAAC-3’を含む。前記中央配列、又はCORE配列阻害薬は、上で下線且つ太字で示されている、本発明に記載の使用のためのオリゴヌクレオチドの(配列番号4)の中央配列である。
【0054】
中央配列、又はCORE配列阻害薬は、ヒトmiR-203b-3pマイクロRNAの中央部分と対合し、それを阻害することができる。ヒトmiR-203b-3pマイクロRNAの中央部分は、ヒトmiR-203b-3pマイクロRNAのCORE配列であり、配列5’-GUUAAGAA-3’を有する。
【0055】
ヒトmiR-203b-3pマイクロRNAの中央部分は、ヒトmiR-203b-3pマイクロRNA配列(配列番号3)全体において下線且つ太字で示されている。
【化3】
【0056】
本発明によれば、配列(配列番号4)に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%に等しい同一性百分率を有する配列を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、乾癬により誘発されたかゆみを軽減することができる。本発明に記載の使用のためのアンチセンスオリゴヌクレオチドがヒトmiR-203b-3pマイクロRNAの中央部分を認識することは不可欠である。
【0057】
したがって、中央配列5’-UUCUUAAC-3’を含む、配列(配列番号4)に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%に等しい同一性百分率を有する配列を有する本発明に記載の使用のためのオリゴヌクレオチドは、乾癬により誘発されたかゆみを軽減することができる。
【0058】
本発明に記載の使用のためのオリゴヌクレオチド(配列番号4)に対して少なくとも70%に等しい同一性百分率を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、以下の配列:
5’-ACA ACU UGUUCU UAA CAU GUC CA-3’(配列番号5)
5’-UCA CGU ACUUCU UAA CAU UUA CA-3’(配列番号6)
5’-AUG ACU GGUUCU UAA CAG UAG UA-3’(配列番号7)
5’-AGC UCA GGUUCU UAA CAG UUC AA-3’(配列番号8)
5’-UUA AGU GGUUCU UAA CAG CUA CA-3’(配列番号9)
5’-UGC UGA GGUUCU UAA CAG ACC AA-3’(配列番号10)
5’-UCA AAC GGUUCU UAA CAG UUC AA-3’(配列番号11)
5’-UCC CGU GGUUCU UAA CAG CUC GA-3’(配列番号12)
5’-UGC AGC GGUUCU UAA CAG UUA AA-3’(配列番号13)
から選択される配列を有し得る。
【0059】
配列(配列番号5)~(配列番号7)は、ヒトmiR-203b-3pマイクロRNA(配列番号3)と完全相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチド配列(配列番号4)に対して7つの塩基の差異を有する。
【0060】
本発明において、配列(配列番号4)に対して7つの塩基の差異を有する配列は、前記配列(配列番号4)に対して70%の配列同一性を有することが意図される。
【0061】
配列(配列番号8)~(配列番号10)は、ヒトmiR-203b-3pマイクロRNA(配列番号3)と完全相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチド配列(配列番号4)に対して5つの塩基の差異を有する。
【0062】
本発明において、配列(配列番号4)に対して5つの塩基の差異を有する配列は、前記配列(配列番号4)に対して78%の配列同一性を有することが意図される。
【0063】
配列(配列番号11)~(配列番号13)は、ヒトmiR-203b-3pマイクロRNA(配列番号3)と完全相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチド配列(配列番号4)に対して3つの塩基の差異を有する。本発明において、前記配列(配列番号4)に対して3つの塩基の差異を有する配列は、前記配列(配列番号4)に対して87%の配列同一性を有することが意図される。
【0064】
一実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチドの配列(配列番号4)に対して1つ又は2つの塩基の差異を有する配列を有し得る。
【0065】
本発明において、配列(配列番号4)に対して1つ又は2つの塩基の差異を有する配列は、前記配列(配列番号4)に対して90%超の配列同一性を有することが意図される。
【0066】
さらに、前記配列(配列番号5)~(配列番号13)は、それらの全てが、配列において下線で示されている、本発明において定義された中央配列5’-UUCUUAAC-3’を含む。
【0067】
本発明に記載の使用のためのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、miR-203b-3pを認識及び結合することができるが、miR-203a-3pを認識及び結合することはできない。
【0068】
特に好ましい実施形態において、本発明に記載の使用のためのオリゴヌクレオチドは、ヒトmiR-203b-3pマイクロRNAのアンタゴミル(antagomir)である。
【0069】
バイオテクノロジーにおいて、「アンタゴミル」という用語は、目的の内因性マイクロRNAを発現抑制するために使用される、化学的に操作されたオリゴヌクレオチドのクラスを表すことが意図される。特に、アンタゴミルは、目的のマイクロRNAと完璧に相補的な合成RNA、すなわち、阻害することが意図されているマイクロRNAである。アンタゴミルの構造は、アンタゴミルを分解に対してより耐性のあるものにする修飾を有する。そのような修飾は、例えば、ヌクレオチド糖、核酸塩基又はヌクレオチド間連結の修飾であり得る。
【0070】
特に、本発明に記載の使用は、全ての種類の乾癬:局面型乾癬、膿疱性乾癬、滴状乾癬、逆乾癬及び乾癬性紅皮症によって誘発されたかゆみの処置に関する。好ましくは、ヒトmiR-203b-3pマイクロRNA(配列番号3)と相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドであって、配列(配列番号4)、又は前記(配列番号4)に対して少なくとも70%の同一性百分率を有する配列を有する、アンチセンスオリゴヌクレオチドが、局面型乾癬によって誘発されたかゆみの処置のために使用され得る。
【0071】
ヒトmiR-203b-3pマイクロRNA(配列番号3)と対合することによって、本発明に記載の使用のためのオリゴヌクレオチドは、ヒトmiR-203b-3pマイクロRNAの、乾癬により誘発されたかゆみの原因である機構に関する直接的な活性を阻害することができる。
【0072】
本発明の第2の態様は、ヒトmiR-203b-3pマイクロRNAと相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む製剤である。特に、本発明の第2の態様は、ヒトmiR-203b-3pマイクロRNA(配列番号3)と相補的な少なくとも1つのアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むリン脂質小胞であって、前記オリゴヌクレオチドが、配列(配列番号4)、又は前記配列(配列番号4)に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%に等しい同一性百分率を有する配列を有する、リン脂質小胞である。
【0073】
上に記載したように、(配列番号4)は、ヒトmiR-203b-3pマイクロRNA(配列番号3)と完全に相補的な配列である。
【0074】
本発明に記載のリン脂質小胞は、ヒトmiR-203b-3pマイクロRNAと完全に相補的な配列(配列番号4)、又は配列(配列番号4)に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%を有する配列を有するオリゴヌクレオチドのうちの1つ又は複数を含み得る。
【0075】
一実施形態において、本発明に記載の小胞は、配列(配列番号5)、(配列番号6)及び(配列番号7)を有するオリゴヌクレオチドのうちの1つ又は複数を含み得る。
【0076】
一実施形態において、本発明に記載の小胞は、配列(配列番号8)、(配列番号9)及び(配列番号10)を有するオリゴヌクレオチドのうちの1つ又は複数を含み得る。
【0077】
一実施形態において、本発明に記載の小胞は、配列(配列番号11)、(配列番号12)及び(配列番号13)を有するオリゴヌクレオチドのうちの1つ又は複数を含み得る。
【0078】
別の実施形態において、リン脂質小胞は、配列(配列番号5)、(配列番号6)及び(配列番号7)を有するオリゴヌクレオチドのうちの1つ若しくは複数、並びに/又は配列(配列番号8)、(配列番号9)及び(配列番号10)を有するオリゴヌクレオチドのうちの1つ若しくは複数、並びに/又は配列(配列番号11)、(配列番号12)及び(配列番号13)を有するオリゴヌクレオチドのうちの1つ若しくは複数を含み得る。
【0079】
さらなる実施形態において、リン脂質小胞は、アンチセンスオリゴヌクレオチド(配列番号4)、並びに/又は配列(配列番号5)、(配列番号6)及び(配列番号7)を有するオリゴヌクレオチドのうちの1つ若しくは複数、並びに/又は配列(配列番号8)、(配列番号9)及び(配列番号10)を有するオリゴヌクレオチドのうちの1つ若しくは複数、並びに/又は配列(配列番号11)、(配列番号12)及び(配列番号13)を有するオリゴヌクレオチドのうちの1つ若しくは複数を含み得る。
【0080】
本発明に記載のリン脂質小胞は、リポソーム、フィトソーム、ミセル、又はそれらの混合物、好ましくはリポソームから選択することができる。
【0081】
リポソームとは、薬理学的活性物を含む低吸収性又は低溶解性の活性物の送達のために広く活用されている送達系である。
【0082】
リポソームを構成するリン脂質の界面活性的性質のために、リポソームは、活性物質、本事例においては本発明に記載の使用のための1つ又は複数のオリゴヌクレオチドを「封入する」。
【0083】
有利には、リポソームのリン脂質層の構成成分は生体適合性であり、したがって、リポソームは有害作用を引き起こさない。
【0084】
したがって、本発明に記載の製剤が、有利には、高濃度の上に記載したアンチセンスオリゴヌクレオチドを送達することを可能にし、結果として、上記製剤が、標的マイクロRNA、すなわちヒトmiR-203b-3pマイクロRNAに作用することができ、乾癬により誘発されたかゆみの、完全な消失とはいかないまでも、軽減に寄与できることは明確である。
【0085】
一実施形態において、本発明に記載のリン脂質小胞はフィトソームである。
【0086】
フィトソームとは、ハーブ抽出物の個々の成分をホスファチジルコリンに結合させることによって調製される、リポソームと構造的に関連する放出系である。
【0087】
フィトソームは、有効成分がリン脂質によって形成された小胞構造内全体に含有されているリポソームと異なり、有効成分が、リン脂質の極性頭部に固定されており、小胞膜の不可欠な部分となっている構造である。
【0088】
別の実施形態において、本発明に記載のリン脂質小胞はミセルである。
【0089】
ミセルとは、極性頭部が外側、すなわち水性環境に向かい、尾部がミセルの内側を向いた状態でリン脂質が配置されている、球状粒子である。前記実施形態によれば、ミセルは単一層ミセル(単層)又は二重層ミセル(二重層)であり得る。
【0090】
特に好ましい実施形態において、前記リン脂質小胞はリポソームである。
【0091】
特に、本発明の好ましい実施形態に記載のリポソームは、100nm~800nmの間、好ましくは200nm~600nmの間、より一層好ましくは400nmの寸法を有する。
【0092】
さらに、前記リポソームは、好ましくは0.2~0.4の間、好ましくは0.3の多分散指数を特徴とする。
【0093】
多分散指数とは、サイズに基づく試料の不均一性の尺度である。多分散は、試料におけるサイズ分布、又は隔離若しくは分析中の試料の凝集若しくは集合に起因して生じ得る。
【0094】
リン脂質小胞は、好ましくは、トウモロコシレシチン、ヒマワリレシチン、ダイズレシチン、より好ましくはトウモロコシレシチンによって構成される。
【0095】
本発明に記載のリン脂質小胞、好ましくは、リポソームは、局面型乾癬、膿疱性乾癬、滴状乾癬、逆乾癬及び乾癬性紅皮症、好ましくは局面型乾癬によって誘発されたかゆみの処置のために使用することができる。特に、前記リン脂質小胞は、乾癬病変に対する外用使用のために使用されて、かゆみの軽減又はかゆみの完全な消失を達成することができる。
【0096】
本発明の第3の態様は、本発明の第2の態様に記載且つ上に記載した1つ又は複数のリン脂質小胞を含む医薬組成物に関する。
【0097】
一実施形態において、本発明に記載の医薬組成物は、本発明に記載の使用のための1つ又は複数のオリゴヌクレオチドを含むリポソーム、フィトソーム、及びミセルの混合物を含み得る。
【0098】
一実施形態において、組成物は、配列(配列番号4)、及び/又は配列(配列番号4)に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%に等しい同一性百分率を有する配列を有する少なくとも1つのアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む少なくとも1つのリン脂質小胞を含み得る。
【0099】
本発明によれば、組成物は、1種又は複数種の薬学的に好適な又は薬学的に許容される賦形剤をさらに含んでもよい。
【0100】
「薬学的に許容される」という表現は、いかなる特定の限定も設けずに、生物に投与される医薬組成物の調製に好適な任意の物質を定義することが意図される。
【0101】
「薬学的に好適な賦形剤」という表現は、全ての溶媒、希釈剤又は他のビヒクル、分散剤又は懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤又は乳化作用剤、保存剤、固体結合剤、滑沢剤などを意味することが意図される。
【0102】
薬学的に許容される賦形剤として機能し得る物質の一部の例としては、これらに限定されないが、ラクトース、グルコース及びスクロースなどの糖;トウモロコシデンプンなどのデンプン;カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロースなどのセルロース及びその誘導体、粉末状トラガカントゴム、麦芽、ゼラチン、タルク、賦形剤、例えばココアバター及び坐剤ワックス;ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及びダイズ油などの油;プロピレングリコールなどのグリコール;オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなどのエステル、寒天、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤、アルギン酸、パイロジェン不含水(apyrogenic water)、等張塩溶液、エチルアルコール及びリン酸緩衝溶液、ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムなどの他の適合性且つ非毒性の滑沢剤、着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤及び着香剤、保存剤及び抗酸化剤が挙げられる。
【0103】
薬学的形態はまた、他の伝統的な成分、例えば、保存剤、安定剤、界面活性剤、緩衝液、浸透圧調整用の塩、乳化剤、甘味料、着色剤、香料などを含有してもよい。
【0104】
本発明の第3の態様に記載の医薬組成物は、外用投与用、例えば、クリーム剤、散剤又は軟膏剤の形態に製剤化され得る。別の実施形態において、医薬組成物は、薬用貼付剤の形態での適用に有用な配合を有する。薬用貼付剤とは、皮膚に適用され、規定量の薬物を制御された一定の様式で放出する、経皮使用のための製剤である。
【0105】
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、クリーム剤の形態に製剤化される。
【0106】
好ましくはクリーム剤の形態の、そのような組成物は、1つ又は複数の乾癬病変に外用的に適用されて、かゆみの漸進的な軽減又はかゆみの完全な治癒を達成することができる。したがって、本発明に記載の組成物は、乾癬により誘発されたかゆみ、特に局面型乾癬、膿疱性乾癬、滴状乾癬、逆乾癬及び乾癬性紅皮症の外用処置のために使用することができる。
【0107】
本記載はさらに、乾癬により誘発されたかゆみの処置の方法であって、配列(配列番号4)、及び/又は配列(配列番号4)に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%に等しい同一性百分率を有する配列を有する少なくとも1つのアンチセンスオリゴヌクレオチドの外用適用を含む、処置の方法に関する。
【0108】
特に、前記乾癬により誘発されたかゆみの処置の方法は、好ましくはクリーム剤の形態の上に記載した1つ又は複数のリン脂質小胞の、乾癬に罹患している対象の少なくとも1つの乾癬病変への外用適用を含む。
【0109】
一実施形態において、処置の方法はまた、乾癬の処置のために一般的に使用されている薬物の投与を含んでもよい。
【0110】
そのような薬物の例は、コルチコステロイド、ビタミンD3のアナログ外用薬、カルシニューリン阻害薬及び/又はタザロテンである。
【0111】
上で言及した薬物のうちの1種又は複数種は、配列(配列番号4)、及び/又は配列(配列番号4)に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%に等しい同一性百分率を有する配列を有する少なくとも1つのオリゴヌクレオチドと一緒に投与されてもよい。
【0112】
好ましくはコルチコステロイド、ビタミンD3のアナログ外用薬、カルシニューリン阻害薬及び/又はタザロテンから選択される、乾癬の処置のために従来使用されている薬物のうちの1種又は複数種は、上で定義されたリン脂質小胞に場合により封入されている上で定義されたアンチセンスオリゴヌクレオチド、又は本発明の第3の態様に記載の医薬組成物を用いる外用処置の前、後、又はそれと同時に投与され得る。
【0113】
したがって、乾癬により誘発されたかゆみの処置における同時、別個又は逐次使用のための、本発明の第2の態様に記載のリン脂質小胞と、コルチコステロイド、ビタミンD3のアナログ外用薬、カルシニューリン阻害薬及び/又はタザロテンとの組合せは、目的の乾癬病変の完全な治癒を判定するのに特に効果的であり得る。
【実施例
【0114】
図面の詳細な説明は、以下の実施例に見出すことができる。
実施例1 - 乾癬のマウスモデル
マウスmiR-203b-3pマイクロRNAの、マウスmiR-203b-3pマイクロRNAと完全に相補的な配列を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドによる阻害の研究を、連続6日間のイミキモド(5%)を用いた局所(皮膚)処置によって誘発された乾癬のマウスモデルに対して行った。
【0115】
上記in vivo実験は、イタリアの法律(DLgs26/2014)及び欧州規則によって提供されるガイドライン(EU指令2010/63/EU)に準拠して実施した。研究は、Ministry of Healthによるプロトコルの承認後に行った(研究許可番号511/2021-PR)。
【0116】
Charles River(Milan、Italy)社によって供給された、5~8週齢の、体重22~25gの雄C57BL/6Jマウスを実験のために使用した。合計で24匹のマウスを使用して、以下に記載する実験を実施した。動物は、温度及び湿度が制御された環境において飼育された(12時間の暗/明サイクル、食料及び水は自由摂取)。実験は、午前8時~午後8時の間に恒温室(20~22℃)において実施した。実験の最後に、動物を、O50%/CO50%混合物の1分間の吸入によって安楽死させた。
【0117】
実験の前日に、電気カミソリを使用してマウス(24)の背中を剃毛し、残りの毛は脱毛クリームを用いて除去した。
【0118】
翌日、マウス(n=12)は、3.125mgの1日用量の活性化合物に相当する62.5mgのイミキモドクリーム(5%、アルダラ(Aldara)、3M Pharmaceuticals、UK)の外用適用を剃毛部分に受けた。使用された用量は、乾癬患者において見られる特徴に類似した特徴(特定のサイトカイン発現パターン、組織病理学的変化及び細胞浸潤)を伴う再現性のある皮膚炎症を結果的に引き起こす用量である(Van der Fitsら、2009 Imiquimod-Induced Psoriasis-Like Skin Inflammation in Mice Is Mediated via the IL-23/IL-17 Axis J Immunol、2009、182(9)5836~5845.;Yoshiki,R.ら、2014 IL-23 from Langerhans Cells Is Required for the Development of Imiquimod-Induced Psoriasis-Like Dermatitis by Induction of IL-17A-Producing γδ T Cells.J.Invest.Dermatol.134、1912~21)。
【0119】
対照動物(n=12)は、ワセリンクリームからなるイミキモドビヒクル(対照クリーム)を用いて処置した。
【0120】
クリーム剤の適用は2名の施術者によって実施され、1名が動物を動かないように押さえ、もう1名が綿棒を使用してクリーム剤の適用を行った。
【0121】
イミキモドクリーム(5%)又は対照クリームを、連続した6日間にわたって毎日、マウスの背中の剃毛した皮膚に適用した。
【0122】
図1Aは、イミキモドを用いて処置したマウス又はイミキモドビヒクルを用いて処置したマウス(対照マウスと称される)の処置予定を概略的に示す。
【0123】
図1Bにおいて観察できるように、イミキモドクリームを用いた処置はマウスに乾癬病変を引き起こした。図1Bにおいて、対照マウス及びイミキモド処置マウスについて検出したPASI(乾癬面積重症度指数)スコアを観察することが可能である。データは平均±SEMとして示す。イミキモドビヒクル(対照)に対してp<0.05、スチューデントのt検定による統計解析。
【0124】
PASI指数とは、乾癬の処置のために使用される処置の有効性をモニタリングするために1970年代後半に導入された皮膚科学的指数である。PASIスコアの評価においては、一部のパラメータが評価され、それらのパラメータに、0(乾癬なし)~72(最大値、重度の乾癬)まで変動するスコアが与えられる。本実験では、PASIの算出のために以下のパラメータを評価した:紅斑の外観、鱗屑形成、及び皮膚の肥厚。これらのパラメータのそれぞれを0~4の尺度で独立的に評価した:0-なし、1-軽度、2-中程度、3-著しい、4-最大。累計スコア(紅斑+鱗屑化+肥厚)を使用して、炎症の重症度を測定した(0~12の尺度)。各マウスのスコアを平均した。図1Bにおいて、イミキモド処置マウスの累計PASIスコアが0~12の尺度で7.58±1.43であることを観察することが可能である。したがって、イミキモド処置が炎症及び典型的な乾癬病変をもたらしたと結論付けることは合理的である。したがって、これらのマウスは、乾癬の、及び前記疾患を治療するのに有用な処置の研究のための良好なモデルである。
【0125】
実施例2 - マウスmiR-203b-3pマイクロRNAと完全に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドの使用
特に、本出願人は、マウスmiR-203b-3pマイクロRNAの配列(配列番号1)と相補的な配列(配列番号2)を有するオリゴヌクレオチドが、マウスmiR-203b-3pマイクロRNAの完全な配列と対合し、その作用を阻害し、かゆみの最終的な発生を阻止できることを見出した。
【0126】
識別子(配列番号1)と共に表されるマウスmiR-203b-3pマイクロRNAの配列は以下に示される:
マウスmiR-203b-3pマイクロRNAの配列(配列番号1)
【化4】
【0127】
識別子(配列番号2)と共に表されるマウスmiR-203b-3pマイクロRNA(配列番号1)と相補的なオリゴヌクレオチドの配列は以下に示される:
マウスmiR-203b-3pマイクロRNAと相補的なオリゴヌクレオチドの配列(配列番号2)
【化5】
【0128】
特に、配列(配列番号2)は、マウスmiR-203b-3pマイクロRNAの配列(配列番号1)と完全に相補的な、マウスにおける22ヌクレオチドの配列である。
【0129】
前記オリゴヌクレオチド(配列番号2)を使用して、マウスmiR-203b-3pマイクロRNAの阻害有効性を試験し、乾癬のマウスモデルにおける、乾癬により誘発されたかゆみの軽減の効果を評価し、その結果、これらの結果はヒトに応用することができた。
【0130】
(配列番号2)は、マウスmiR-203b-3pマイクロRNA(配列番号1)と完全に相補的な配列である。マウス配列(配列番号2)配列のヒトにおける対応物、すなわちヒトmiR-203b-3pマイクロRNAと完全に相補的な配列は、配列(配列番号4)を有するオリゴヌクレオチドである。
【0131】
特に、C57BL/6Jマウスを、イミキモドを用いて処置し(n=12)、対照マウスを、イミキモドビヒクル(ワセリンクリーム)を用いて処置した(n=12)。イミキモド又はイミキモドビヒクルのいずれかを用いて処置したマウスを2つのさらなる実験群に分け、そのうち、イミキモドを用いて処置した6匹のマウスとイミキモドビヒクルを用いて処置した6匹のマウスとを、イミキモド又はイミキモドビヒクル投与後、連続した6日間にわたって毎日、マウスmiR-203b-3pマイクロRNAと相補的な配列(Integrated DNA Technologies IDT、Tema Ricerche)をマウスの項部に皮内投与(1nmol、10μl)して処置した。
【0132】
加えて、イミキモドを用いて処置した6匹のマウスとイミキモドビヒクルを用いて処置した6匹のマウスとを、阻害薬ビヒクル(塩化ナトリウム、NaClの0.9%溶液によって表される、相補配列を希釈した溶液)を用いて処置した。
【0133】
相補配列(配列番号2)又はビヒクルを用いた処置は、イミキモド又はイミキモドビヒクルを用いた処置の1日目~6日目まで1日1回行った。
【0134】
7日目、すなわち、イミキモドクリーム(5%)又は対照クリームの投与、及び阻害薬として定義されたマウスmiR-203b-3pマイクロRNAと相補的な配列(配列番号2)又は阻害薬ビヒクルを用いた処置の後に、動物を30cm×30cmのアリーナに入れ、1時間の動画を記録した。
【0135】
その後、動画は施術者によって視聴され、施術者は、動物が、阻害薬として定義されたマウスmiR-203b-3pマイクロRNAと相補的な配列(配列番号2)又は阻害薬ビヒクルを用いた処置の後に、イミキモドクリーム(5%)又は対照クリームが適用された部位を後肢で引っ掻いた回数を計数した。
【0136】
動物が、マウスmiR-203b-3pマイクロRNAと相補的な配列(配列番号2)又はそのビヒクルを用いた処置の後に、イミキモドクリーム(5%)又は対照クリームの適用の部位を自身で後肢を用いて引っ掻いた回数の測定は、引っ掻いた数として定義され、かゆみの存在の指数である。
【0137】
図2の横座標において、「阻害薬」という用語は、マウスmiR-203b-3pマイクロRNAと相補的なオリゴヌクレオチド(配列番号2)を用いて行った処置を表し、「阻害薬ビヒクル」という用語は、塩化ナトリウム、NaClの0.9%溶液によって表される)、マウスmiR-203b-3pマイクロRNAと相補的なオリゴヌクレオチドを希釈した溶液を用いて行った処置を表す。
【0138】
図2において観察できるように、イミキモド(5%)を用いた処置は、対照クリームを用いて処置した動物に関する引っ掻いた数の有意な増加を誘発した。マウスmiR-203b-3pマイクロRNAと相補的な配列を用いた処置は、イミキモド(5%)を用いて処置したマウス(乾癬モデルマウス)において、イミキモドクリームが適用された(5%)部位の引っ掻いた数を減少させることができた。
【0139】
この実験は、マウスmiR-203b-3pマイクロRNAと完全に相補的な配列が、イミキモド(5%)によって誘発された乾癬のマウスモデルにおいてかゆみを軽減することができることを示す。
【0140】
データは平均±SEMとして示す。イミキモドビヒクル(対照)に対してp<0.05、§イミキモド/阻害薬ビヒクルに対してp<0.05。一元配置分散分析(ANOVA)及びボンフェローニ検定による統計解析。
【0141】
実施例3 - マウスmiR-203b-3pマイクロRNAの中央部分と完全に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドの使用
ヒトにおける使用のためのアンチセンスオリゴヌクレオチドの中央配列5’-UUCUUAAC-3’の有効性を決定するために、マウスに対する研究を、特にマウスmiR-203b-3pマイクロRNAの中央部分と相補的なオリゴヌクレオチドを試験することによって実施した。前記オリゴヌクレオチドを使用して、乾癬のマウスモデルにおける、乾癬により誘発されたかゆみの軽減の効果を評価し、その結果、これらの結果はヒトに応用することができた。
【0142】
マウスmiR-203b-3pマイクロRNAの中央部分(CORE配列)5’-GUCAAGAA-3’と相補的な5’-UUCUUGAC-3’配列を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドを得た。特に、配列5’-UUCUUGAC-3’を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、マウスmiR-203b-3pマイクロRNAのCORE配列と完全に相補的な、マウスにおける8ヌクレオチド配列である。
【0143】
本実験において使用したアンチセンスオリゴヌクレオチドは、実施例2に示したマウスmiR-203b-3pマイクロRNA配列(配列番号1)の中央部分又はCORE配列と完全に相補的な配列である。
【0144】
配列5’-UUCUUGAC-3’は、実施例2に示したマウスmiR-203b-3pマイクロRNAの中央配列と相補的なオリゴヌクレオチド(配列番号2)の中央配列、又はCORE配列阻害薬である。
【0145】
この実験のために、C57BL/6Jマウスを、イミキモドを用いて処置し(n=12)、対照マウスを、イミキモドビヒクル(ワセリンクリーム)を用いて処置した(n=12)。イミキモド又はイミキモドビヒクルを用いて処置したマウスを2つのさらなる実験群に分け、そのうち、イミキモドを用いて処置した6匹のマウスとイミキモドビヒクルを用いて処置した6匹のマウスとを、イミキモド(5%)又はイミキモドビヒクルの投与後、連続した6日間にわたって毎日、マウスmiR-203b-3pマイクロRNAの中央部分又はCORE配列と相補的な配列5’-UUCUUGAC-3’を有するアンチセンスオリゴヌクレオチド(Integrated DNA Technologies IDT、Tema Ricerche)(図3において「CORE seq阻害薬」と称される)をマウスの項部に皮内投与(1nmol、10μl)して処置した。
【0146】
さらに、イミキモド(5%)を用いて処置した6匹のマウスとイミキモドビヒクルを用いて処置した6匹のマウスとを、アンチセンスオリゴヌクレオチドビヒクル、すなわち、塩化ナトリウム、NaClの0.9%溶液によって表される、中央配列又はCORE配列と相補的な配列(図3において「CORE seq阻害薬ビヒクル」と称される)を希釈した溶液を用いて処置した。
【0147】
アンチセンスオリゴヌクレオチドとビヒクルとを用いた処置は、イミキモド(5%)又はイミキモドビヒクルを用いた処置の1日目~6日目まで1日1回行った。
【0148】
7日目、すなわち、イミキモドクリーム(5%)又は対照クリームの投与、及びマウスmiR-203b-3pマイクロRNAの中央部分と相補的な配列を有するオリゴヌクレオチド又はビヒクルを用いた処置の後に、動物を30cm×30cmのアリーナに入れ、1時間の動画を記録した。
【0149】
次いで、動画は施術者によって視聴され、施術者は、動物が、上で定義されたアンチセンスオリゴヌクレオチド又はビヒクルを用いた処置の後に、イミキモドクリーム(5%)又は対照クリームが適用された部位を後肢で引っ掻いた回数を計数した。
【0150】
動物が自身で引っ掻いた回数の測定は、かゆみの存在の指数であり、図3において引っ掻いた数として定義されている。
【0151】
図3において観察できるように、イミキモド(5%)を用いた処置は、対照クリームを用いて処置した動物に関する引っ掻いた数の有意な増加を誘発する。マウスmiR-203b-3pマイクロRNAの中央部分と相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチド(図3において、「CORE Seq阻害薬」として示される)を用いた処置は、イミキモド(5%)を用いて処置したマウス(乾癬モデルマウス)において、イミキモド(5%)クリームが適用された部位の引っ掻いた数を減少させることができた。
【0152】
この実験は、マウスmiR-203b-3pマイクロRNAの中央部分と完全に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが、イミキモド(5%)によって誘発された乾癬のマウスモデルにおいてかゆみを軽減することができることを示す。
【0153】
データは平均±SEMとして示す。イミキモドビヒクル(対照)に対してp<0.05、§イミキモド/CORE Seq阻害薬ビヒクルに対してp<0.05。一元配置分散分析(ANOVA)及びボンフェローニ検定による統計解析。
図1A
図1B
図2
図3
【配列表】
2024541722000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-07-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号3に示されるヒトmiR-203b-3pマイクロRNAと相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む、乾癬により誘発されたかゆみの処置のための剤であって、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、配列番号4の配列、又は配列番号4の列に対して少なくとも70%に等しい同一性百分率を有する配列を有する、
【請求項2】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、8ヌクレオチドの中央配列5’-UUCUUAAC-3’を含む、請求項1に記載の
【請求項3】
前記中央配列UUCUUAACの1番目のウラシル(U)が、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドにおける9番目のヌクレオチドの塩基に対応し、前記中央配列の最後のシトシン(C)が、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドにおける16番目のヌクレオチドの塩基に対応する、請求項2に記載の
【請求項4】
記配列番号4の配列内の前記中央配列5’-UUCUUAAC-3’が、配列番号3に示されるヒトmiR-203b-3pマイクロRNAの前記配列の中央部分5’-GUUAAGAA-3’と結合する、請求項2記載の
【請求項5】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、配列番号3に示される前記ヒトmiR-203b-3pマイクロRNAのアンタゴミルの形態である、請求項1に記載の
【請求項6】
記配列番号4の配列に対して少なくとも70%に等しい同一性百分率を有する前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、以下の配列:
5’-ACA ACU UGU UCU UAA CAU GUC CA-3’(配列番号5)
5’-UCA CGU ACU UCU UAA CAU UUA CA-3’(配列番号6)
5’-AUG ACU GGU UCU UAA CAG UAG UA-3’(配列番号7)
5’-AGC UCA GGU UCU UAA CAG UUC AA-3’(配列番号8)
5’-UUA AGU GGU UCU UAA CAG CUA CA-3’(配列番号9)
5’-UGC UGA GGU UCU UAA CAG ACC AA-3’(配列番号10)
5’-UCA AAC GGU UCU UAA CAG UUC AA-3’(配列番号11)
5’-UCC CGU GGU UCU UAA CAG CUC GA-3’(配列番号12)
5’-UGC AGC GGU UCU UAA CAG UUA AA-3’(配列番号13)
を含む群から選択される、請求項1に記載の
【請求項7】
前記乾癬が、局面型乾癬、膿疱性乾癬、滴状乾癬、逆乾癬及び乾癬性紅皮症から選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の
【請求項8】
前記乾癬が局面型乾癬である、請求項7に記載の
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載された剤を少なくとも含む、リン脂質小胞。
【請求項10】
列番号5の配列、配列番号6の配列、配列番号7の配列、配列番号8の配列、配列番号9の配列、配列番号10の配列、配列番号11の配列、配列番号12の配列び配列番号13の配列を有するオリゴヌクレオチドの群から選択されるオリゴヌクレオチドを含む剤を少なくとも含む、請求項9に記載のリン脂質小胞。
【請求項11】
列番号4の配列を有するオリゴヌクレオチドを含む剤を含み列番号5の配列、配列番号6の配列、配列番号7の配列、配列番号8の配列、配列番号9の配列、配列番号10の配列、配列番号11の配列、配列番号12の配列び配列番号13の配列を有するオリゴヌクレオチドの群から選択されるオリゴヌクレオチドを含むさらなる剤を少なくとも含む、請求項9に記載のリン脂質小胞。
【請求項12】
リポソーム、フィトソーム、ミセル又はそれらの混合物から選択される、請求項9に記載のリン脂質小胞。
【請求項13】
リポソームの形態の、請求項12に記載のリン脂質小胞。
【請求項14】
局面型乾癬、膿疱性乾癬、滴状乾癬、逆乾癬及び乾癬性紅皮症によって誘発されたかゆみの処置のための、請求項9に記載のリン脂質小胞。
【請求項15】
前記乾癬が局面型乾癬である、請求項14に記載のリン脂質小胞。
【請求項16】
請求項9に記載のリン脂質小胞と1種又は複数種の薬学的に好適な又は薬学的に許容される賦形剤とを少なくとも含む、医薬組成物。
【請求項17】
クリーム剤、散剤、又は軟膏剤の形態の、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
外用使用のためのクリーム剤の形態の、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
薬用貼付剤による適用のための、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項20】
局面型乾癬、膿疱性乾癬、滴状乾癬、逆乾癬及び乾癬性紅皮症によって誘発されたかゆみの処置のための、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記乾癬が局面型乾癬である、請求項20に記載の医薬組成物。
【国際調査報告】